JP7435979B2 - Cltを用いた既存建物の耐震補強構造 - Google Patents
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Description
耐震補強として、建物の積載荷重を軽量化して建築物に対する地震による入力を低減させる方法や、ブレースなどを用いて建物の構造強度を補強する方法がある。ほかに、免震装置などを採用する方法などがある。
特許文献2(特開2015-190120号公報)には、建物の屋上階及び外壁を残して、建物の下層部より上方の階である中層部、上層部に設けられている床スラブの一部又は全部を撤去し、建物の重量を低減して、建物に生じる地震力を低減させる耐震改修方法が開示されている。
特許文献3(特許第5575561号公報)には、柱および梁によって画成された構面内に、棒状の木質材料の内部に長手方向に沿って金属製の芯材が組み込まれた複数本の補強部材を、斜め格子状に配置し、それぞれの両端部を柱または梁に連結した軽量な補強部材を用いて耐震性能を向上させる耐震構造が開示されている。
既存スラブを解体して既存の梁に設けられた線材とCLT版の木口面に植設されたボルトを配置した接合部に、充填材を充填して接合していることを特徴とする耐震補強構造。
2.CLT版は、既存梁の側面に取り付けた仮受用ブラケットの上に位置していることを特徴とする1.記載の耐震補強構造。
3.既存躯体が鉄筋コンクリートであり、線材がスラブ筋であって、該スラブ筋は上下複数段に露出しており、その間に立面視でボルトが空き重ね状態に配されていることを特徴とする1.又は2.記載の耐震補強構造。
4.既存の躯体を有する建物の壁を、CLT版を用いて改修した耐震補強構造であって、
同一面内に設置された複数のCLT版で1枚の耐震壁が構成され、
各CLT版は、上側の木口面又は下側の木口面に植設されたボルトと既存躯体に打設したアンカーを対向して突出させて、充填材で充填した接合部で接合されていることを特徴とする耐震補強構造。
5.隣接するCLT版の木口部の接合部は、上下反対側にあることを特徴とする4.記載の耐震補強構造。
6.隣接するCLT版は、表面から打設された線状の接合具で接合されていることを特徴とする4.又は5.記載の耐震補強構造。
本発明は、既存建物をリノベーションやコンバージョン等で再利用する際に、改正された建築基準などに合わせた耐震改修を行う際に適用される。本発明は、耐震性に加えて、建築空間に木質の風合いを付加し意匠性も向上することができる。
本発明は、床版の接合あるいは壁版の接合を簡略化した、補強構造である。
線材は、例えば既存のRC梁に設けた配筋(既存のスラブ主筋又はあと施工アンカーなど)や既存の鉄骨梁に設けた(既設、又は、新設)ボルトである。
既存のRC梁では、既存のスラブ主筋とCLT側に設けたボルトを重ね配筋して接合することができる。接合部にコンクリートを打設する際に、CLT版を仮受けする仮受け用ブラケットやアングル材を型枠として利用することができる。
既存建物の床版を撤去して、CLT版の床に置き換えることで、建物の床面積を保ちつつ、躯体の重量を軽減している。
耐震補強したCLTの表面を仕上げ面とすることができるので、改修後は建築空間内に木質感が付与される。
既存建物の壁の改修においては、CLT版を既存壁に付加あるいは置き換えることで、CLTの剛性を建物に付加して耐震性が向上している。
床同様に、壁面も耐震補強したCLTの表面を仕上げ面とすることができるので、改修後は建築空間内に木質感が付与される。
図1は、RC造の既存躯体11を有する建物1に対して耐震補強構造を施した耐震改修建築物の例を示し、(a)正面縦断面図、(b)側面縦断面図である。
床スラブをCLT版に改修した耐震補強構造10と壁をCLT版に改修した耐震補強構造20が示されている。図示では、耐震補強構造10が2、3階に設置され、耐震補強構造20が2列設置されている。補強構造は、全体に施すこともでき、部分的に施すこともできる。
1階から上階に向けて耐震補強を行う壁面を耐震補強構造20として示している。改修しない壁部分を既存梁13として示している。本改修では1階床を構成するスラブは改修せずに既存スラブ12としている。
床補強である耐震補強構造10は、2階床の大部分に設置される。
壁補強である耐震補強構造20は、図2と同様の箇所に設置される。
既存梁13に接合されている既存スラブを除去し、CLT版2に置換するものである。 既存梁13とCLT版2との間に接合部6を設けて両者を結合する。
接合部6は、既存梁13から伸びるスラブ筋41を接合部6の幅程度の長さに残し、一方、CLT版に挿入したボルト51の頭を接合部6の幅程度の長さ分飛び出させて、スラブ筋41とボルト51を交差させて配置する。接合部6にはグラウトなどのセメント系材料を充填材61として充填する。
接合部に鉄筋が空き重ね状態に配置された状態で、充填材で固められるので、強固な結合状態が完成する。
既存梁13にL型の仮受け用ブラケット71を取り付けて、この仮受けブラケット71の上にCLT版の端部を載せて、接合部6分の隙間が生ずるように仮セットする。仮受け用ブラケット71は型枠を兼用する。
仮受け用ブラケット71は、既存梁13に貫通孔73を穿ち、この貫通孔73に通しボルト72を通して、仮受け用ブラケット71を固定する。
図4に示される床短辺側の耐震補強構造と同様に、既存梁13とCLT版2の端部24には隙間があって、スラブ筋41とボルト51が高さ違いに配置された空き重ね状態に配置されており、充填材で固められている。
この長辺側では、接合部6の下部に型枠7を設けて、型枠の下面をサポート74で支えて、充填材61を充填する。
図示は、既存壁18に併設する形でCLT版を取り付けたものである。ただし、既存壁を取り壊してCLT版に置換することもできる。また、新たに、CLT壁を設けることもできる。
既存梁13側から接合部6に向けて、あと施工アンカー42を設けて、ボルト52の頭部があと施工アンカー42と重なるように配置される。このような状態で充填材61を充填して接合部6を硬化させて、耐震補強構造20を形成する。
上部の既存梁13側では、CLT端部が既存梁に接触しており、特に、ボルト接合などは行われていない。ただし、独立したCLT壁などを設ける場合は、上下にあと施工アンカーとボルトによる強固な接合を構築することができる。
CLT版2a、2bの表面側から、他方のCLT版の側面に向けて線状の接合具(釘やボルトなど)53を打ち込んで、互いに強固に結合して複数のCLT版が一体化した耐震補強構造20が形成されている。
この耐震補強構造を設けることにより、躯体荷重を軽量化することができ、床面積を必要以上に少なくすることなく、耐震補強改修をすることができ、既存の建物を有効に再利用することが可能になる。
CLTの外面を意匠に利用することにより、意匠用の仕上げ加工を省略することもできる。
鉄骨梁14は、上下のフランジ15とウェヴ16からなるH型鋼である。フランジ15に載っていたコンクリート製の既存スラブを除去し、CLT版2に置換するものである。鉄骨梁14とCLT版2との間に接合部6を設けて両者を結合する。
接合部6は、鉄骨梁14の上のフランジ15にスタッドボルト43を設ける一方、CLT版に挿入したボルト51が接合部6に飛び出ており、スタッドボルト43とボルト51の間に鉄筋62が配置されている。接合部6にはグラウトなどのセメント系材料を充填材61として充填する。
図7の図示ではCLT版2の木口面からボルト51が接合部6に飛び出ている。このボルト51とスタッドボルト43を回線するように鉄筋62を配置して、鉄骨梁14とCLT版2が結合される。
図示では、ボルト51とスタッドボルト43が離れているが、両者が重なるように配置することもできる。
施工において、鉄骨梁14のフランジ15の端面17にL型アングル材75を取り付けて、L型アングル材75にCLTの端部を載せて、接合部6の幅の分の間隔を設けて仮セットする。L型アングル材75は型枠を兼用する。この隙間に、コンクリートを充填して耐震補強構造30Aを形成する。
L型アングル材75は、溶接などによって取り付けることができる。
11 既存躯体
12 既存スラブ
13 既存梁
14 鉄骨梁
15 フランジ
16 ウェヴ
17 端面
18 既存壁
2 CLT版
21 木口面
24 端部
3 床
41 スラブ筋
42 あと施工アンカー
43 スタッドボルト
51、52 ボルト
53 線状の接合具
6 接合部
61 充填材
62 鉄筋
7 型枠
71 仮受用ブラケット
72 ボルト
73 貫通孔
74 サポート
75、76 L型アングル材
77 受け面
8 耐震壁
10、20、30A、30B、30C 耐震補強構造
Claims (3)
- 既存の躯体を有する建物の床を、CLT版を用いて改修した耐震補強構造であって、
既存スラブを解体して既存の梁に設けられた線材とCLT版の木口面に植設されたボルトを配置した接合部に、充填材を充填して接合していることを特徴とする耐震補強構造。 - CLT版は、既存梁の側面に取り付けた仮受用ブラケットの上に位置していることを特徴とする請求項1記載の耐震補強構造。
- 既存躯体が鉄筋コンクリートであり、線材がスラブ筋であって、該スラブ筋は上下複数段に露出しており、その間に立面視でボルトが空き重ね状態に配されていることを特徴とする請求項1又は2記載の耐震補強構造。
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