JP7433554B2 - バイタル測定装置、バイタル測定方法及びバイタル測定システム - Google Patents
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Description
アンテナから送信されたマイクロ波が、被測定者だけでなく、室内の壁に反射されたような場合、当該信号処理装置により生成される複素信号は、被測定者による反射波に係る複素信号と、壁による反射波に係る複素信号とが重ね合わされた信号となる。壁は、静止物であるため、壁による反射波に係る複素信号の位相は、一定である。一方、被測定者の胸部は、呼吸に伴って往復運動するため、被測定者による反射波に係る複素信号の位相は、時間の経過に伴って変化する。当該信号処理装置は、生成した複素信号の中から、位相が一定の複素信号を除去することで、被測定者による反射波に係る複素信号を取得し、被測定者による反射波に係る複素信号から、被測定者のバイタルを検出する。
図1は、実施の形態1に係るバイタル測定装置20を含むバイタル測定システムを示す構成図である。
図2は、実施の形態1に係るバイタル測定装置20のハードウェアを示すハードウェア構成図である。
図1に示すバイタル測定システムは、センサ10及びバイタル測定装置20を備えている。
センサ10は、N個のアンテナ11-1~11-N、信号送信部12、N個のサーキュレータ13-1~13-N及びN個の信号受信部14-1~14-Nを備えている。Nは、2以上の整数である。
アンテナ11-1~11-Nのそれぞれは、送受信アンテナである。
図1に示すバイタル測定システムでは、MIMO(Multiple-Input Multiple-Output)によって受信信号の分解能を高めるために、センサ10が、N個のアンテナ11-1~11-Nを備えている。そして、アンテナ11-1~11-Nのそれぞれが、送信アンテナと受信アンテナとを兼ねている。しかし、これは一例に過ぎず、センサ10が、送信アンテナと受信アンテナとを別々に備えていてもよい。
アンテナ11-1~11-Nにおける送信波の送信順序は、決まっている。例えば、アンテナ11-1、アンテナ11-2、・・・、アンテナ11-Nの順番に送信順序が決まっている。ただし、これは一例に過ぎず、例えば、アンテナ11-N、・・・、アンテナ11-2、アンテナ11-1の順番に送信順序が決まっていてもよい。
アンテナ11-n(n=1,・・・,N)は、サーキュレータ13-nから出力された送信信号に係る送信波を対象物体が存在している空間に放射する。アンテナ11-nから放射された送信波は、対象物体によって反射される。対象物体の中には、空間に存在している1人以上の被測定者kのほか、空間を形成している部屋の壁、又は、空間に存在している机等の静止物が含まれる。k=1,・・・,Kであり、Kは、1以上の整数である。
アンテナ11-1~11-Nのそれぞれは、対象物体による反射波を受信し、反射波の受信信号をサーキュレータ13-nに出力する。
信号送信部12は、N個のアンテナ11-1~11-Nの中から、送信波を放射させる1つのアンテナ11-nを順番に選択する。
信号送信部12は、選択したアンテナ11-nから送信波を空間に放射させるために、選択したアンテナ11-nと接続されているサーキュレータ13-nに送信信号を出力する。
信号発生器12aは、例えば、時間の経過に伴って周波数が変化する送信信号、又は、パルスの送信信号を発生させる。時間の経過に伴って周波数が変化する送信信号としては、例えば、アップチャープの信号、又は、ダウンチャープの信号がある。
信号発生器12aは、送信信号を出力先選択部12bに出力する。
出力先選択部12bは、N個のサーキュレータ13-1~13-Nの中で、次に送信波を放射させる順番のアンテナ11-nと接続されているサーキュレータ13-nに対して、信号発生器12aにより発生された送信信号を出力する。
また、サーキュレータ13-nは、アンテナ11-nから出力された受信信号を信号受信部14-nに出力する。
信号受信部14-nは、デジタル信号である受信データS(t,g,h,c)をバイタル測定装置20に出力する。
tは、アンテナ11-nによる反射波の受信時刻である。gは、送信波を放射したアンテナ11-nを識別する変数であり、g=1,・・・,Nである。hは、反射波を受信したアンテナ11-nを識別する変数であり、h=1,・・・,Nである。cは、アンテナ11-1~11-Nによる送信波の送信サイクルを識別する変数であり、c=1,・・・,Cである。Cは、2以上の整数である。
信号取得部21は、例えば、図2に示す信号取得回路31によって実現される。
信号取得部21は、信号受信部14-1~14-Nのそれぞれから、反射波の受信信号として、受信データS(t,g,h,c)を取得し、受信データS(t,g,h,c)をフーリエ変換部22に出力する。
フーリエ変換部22は、信号取得部21によって、信号受信部14-1~14-Nからの受信データS(t,g,h,c)が取得される毎に、それぞれの受信データS(t,g,h,c)を時間方向にフーリエ変換する。フーリエ変換としては、例えば、高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)、又は、離散フーリエ変換(DFT:Discrete Fourier Transform)がある。
フーリエ変換部22は、それぞれのフーリエ変換後の信号S(r,g,h,c)をマップ算出部23に出力する。rは、バイタル測定装置20からの距離ビンを識別する変数である。r=1,・・・,Rである。Rは、2以上の整数である。
マップ算出部23は、フーリエ変換部22によって、それぞれの受信データS(t,g,h,c)がフーリエ変換される毎に、それぞれのフーリエ変換後の信号S(r,g,h,c)を用いて、バイタル測定装置20からのそれぞれの距離ビンr(r=1,・・・,R)に対応する複素電力CP(r,az,el,c)の2次元方位マップを算出する。
マップ算出部23は、それぞれの距離ビンrに対応する複素電力CP(r,az,el,c)の2次元方位マップをバイタル推定部24に出力する。
バイタル推定部24は、存在位置特定部25及びバイタル推定処理部26を備えている。
バイタル推定部24は、マップ算出部23によって、それぞれの距離ビンr(r=1,・・・,R)に対応する複素電力CP(r,az,el,c)の2次元方位マップが算出される毎に、2次元方位マップを取得する。
バイタル推定部24は、それぞれの距離ビンrに対応する複素電力CP(r,az,el,c)の2次元方位マップの時間変化に基づいて、対象物体に含まれる被測定者k(k=1,・・・,K)が存在している位置を特定する。
バイタル推定部24は、それぞれの被測定者kが存在している位置についての複素電力CP(r,az,el,c)の位相の時間変化から、それぞれの被測定者kのバイタルを推定する。
存在位置特定部25は、それぞれの距離ビンrに対応する複素電力CP(r,az,el,c)の2次元方位マップの時間変化に基づいて、それぞれの被測定者k(k=1,・・・,K)が存在している位置を特定する。
存在位置特定部25は、それぞれの被測定者kが存在している位置についての複素電力CP(r,az,el,c)の位相の時間変化を示す位相変化信号θ(r,c)をバイタル推定処理部26に出力する。
バイタル推定処理部26は、存在位置特定部25から出力されたそれぞれの被測定者k(k=1,・・・,K)についての位相変化信号θ(r,c)に基づいて、それぞれの被測定者kのバイタルを推定する。
呼吸数推定部27は、それぞれの被測定者kについての位相変化信号θ(r,c)に基づいて、それぞれの被測定者kの呼吸数RRを推定する。
心拍数推定部28は、それぞれの被測定者kについての位相変化信号θ(r,c)に基づいて、それぞれの被測定者kの心拍数HRを推定する。
信号取得回路31、フーリエ変換回路32、マップ算出回路33及びバイタル推定回路34のそれぞれは、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又は、これらを組み合わせたものが該当する。
ソフトウェア又はファームウェアは、プログラムとして、コンピュータのメモリに格納される。コンピュータは、プログラムを実行するハードウェアを意味し、例えば、CPU(Central Processing Unit)、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサ、あるいは、DSP(Digital Signal Processor)が該当する。
バイタル測定装置20が、ソフトウェア又はファームウェア等によって実現される場合、信号取得部21、フーリエ変換部22、マップ算出部23及びバイタル推定部24におけるそれぞれの処理手順をコンピュータに実行させるためのプログラムがメモリ41に格納される。そして、コンピュータのプロセッサ42がメモリ41に格納されているプログラムを実行する。
図4は、バイタル測定装置20の処理手順であるバイタル測定方法を示すフローチャートである。
信号送信部12の信号発生器12aは、送信信号として、例えば、周波数変調連続波(FMCW:Frequency Modulated Continuous Wave)方式、又は、高速チャープ変調(FCM:Fast-Chirp Modulation)方式に従って、アップチャープの信号、又は、ダウンチャープの信号を生成する。
図1に示すバイタル測定システムでは、信号発生器12aが、図5に示すように、それぞれの送信サイクルc(c=1,・・・,C)において、アンテナ11-1~11-Nの数分だけ、アップチャープの信号Tx(n)を繰り返し生成している。したがって、信号発生器12aは、全部で、N×C個のアップチャープの信号Tx(n)を生成している。
図5は、それぞれの送信サイクルc(c=1,・・・,C)において、信号発生器12aにより生成されるアップチャープの信号Tx(1)~Tx(N)を示す説明図である。図5の例では、N=3である。
信号発生器12aは、生成したアップチャープの信号Tx(n)(n=1,・・・,N)の周波数を高周波数帯の信号にアップコンバートし、アップコンバート後の信号を送信信号Tx’(n)として、出力先選択部12bに出力する。高周波数帯としては、例えば、30~300GHz程度のミリ波帯である。
出力先選択部12bは、N個のサーキュレータ13-1~13-Nの中で、次に送信波を放射する順番のアンテナ11-nと接続されているサーキュレータ13-nに対して、送信信号Tx’(n)を出力する。
出力先選択部12bは、例えば、次に送信波を放射する順番のアンテナ11-nがアンテナ11-1であれば、送信信号Tx’(1)をサーキュレータ13-1に出力し、次に送信波を放射する順番のアンテナ11-nがアンテナ11-2であれば、送信信号Tx’(2)をサーキュレータ13-2に出力する。
また、出力先選択部12bは、例えば、次に送信波を放射する順番のアンテナ11-nがアンテナ11-Nであれば、送信信号Tx’(N)をサーキュレータ13-Nに出力する。
アンテナ11-n(n=1,・・・,N)は、サーキュレータ13-nから送信信号Tx’(n)を受けると、送信信号Tx’(n)に係る電波である送信波を対象物体が存在している空間に放射する。アンテナ11-nから放射された送信波は、対象物体によって反射される。即ち、アンテナ11-nから放射された送信波は、それぞれの被測定者kによって反射されるほか、空間を形成している壁等によって反射される。
それぞれの送信サイクルc(c=1,・・・,C)において、N個のアンテナ11-1~11-Nの中の1つのアンテナが、送信波を順番にN回空間に放射するため、アンテナ11-1~11-Nのそれぞれは、それぞれの送信サイクルcにおいて、反射波をN回受信する。
アンテナ11-n(n=1,・・・,N)は、それぞれの反射波の受信信号をサーキュレータ13-nに出力する。
サーキュレータ13-n(n=1,・・・,N)は、アンテナ11-nから出力された受信信号を信号受信部14-nに出力する。
信号受信部14-nは、受信信号に対する受信処理として、例えば、受信信号の周波数を中間周波数帯の周波数にダウンコンバートする処理のほか、周波数変換後の受信信号をアナログ信号からデジタル信号に変換する処理を行う。
信号受信部14-nは、それぞれの送信サイクルcにおいて、N個のデジタル信号である受信データS(t,g,h,c)のそれぞれをバイタル測定装置20に出力する。
これにより、それぞれの送信サイクルc(c=1,・・・,C)において、信号受信部14-1~14-Nから、全部でN×N(=G×H)個の受信データS(t,g,h,c)がバイタル測定装置20に与えられる。
信号取得部21は、それぞれの送信サイクルcにおいて、N×N個の受信データS(t,g,h,c)をフーリエ変換部22に出力する。
フーリエ変換部22は、それぞれの送信サイクルcにおいて、N×N個の受信データS(t,g,h,c)の中から、反射波を受信したそれぞれのアンテナ11-n(n=1,・・・,N)に係るN個の受信データS(t,g,h=n,c)の取り出しを行う。
フーリエ変換部22は、それぞれの送信サイクルcにおいて、それぞれのアンテナ11-nに係るN個の受信データS(t,g,h=n,c)のそれぞれを時間方向にフーリエ変換する(図4のステップST2)。
それぞれの送信サイクルcにおいて、それぞれのアンテナ11-nに係るN個の受信データS(t,g,h=n,c)のそれぞれが、フーリエ変換部22によってフーリエ変換されることで、N個のフーリエ変換後の信号S(r,g,h,c)が生成される。
フーリエ変換部22によるフーリエ変換後の信号S(r,g,h,c)は、図6に示すように、距離ビンrに対応する複素電力を示す信号である。
図6は、或る送信サイクルcにおけるN個のフーリエ変換後の信号S(r,g,h,c)を示す説明図である。
図6において、横軸は、距離ビンを示し、縦軸は、複素電力を示している。
フーリエ変換部22は、それぞれの送信サイクルcにおいて、N個のフーリエ変換後の信号S(r,g,h,c)をマップ算出部23に出力する。
マップ算出部23は、それぞれの送信サイクルcにおいて、図7に示すように、それぞれのフーリエ変換後の信号S(r,g,h,c)から、それぞれの距離ビンr(r=1,・・・,R)に対応する複素電力CP(r,az,el,c)の2次元方位マップを算出する(図4のステップST3)。
図7は、それぞれの距離ビンr(r=1,・・・,R)に対応する複素電力CP(r,az,el,c)の2次元方位マップを示す説明図である。
図7において、横軸は、アジマス方向を示し、縦軸は、エレベーション方向を示している。
具体的には、マップ算出部23は、それぞれのフーリエ変換後の信号S(r,g,h,c)について、距離ビンr毎に、DBF(Digital Beam Forming)による2次元測角処理を行う。マップ算出部23が2次元測角処理を行うことで、2次元方位(az,el)についての複素電力CP(r,az,el,c)を示す2次元方位マップが得られる。ここでの2次元測角処理は、アジマス方向とエレベーション方向との2次元測角処理である。また、マップ算出部23は、測角手法として、DBFを用いている。しかし、これは一例に過ぎず、マップ算出部23は、Capon法等の他の測角手法を用いて、2次元測角処理を行うようにしてもよい。なお、2次元測角処理自体は、公知の技術であるため詳細な説明を省略する。
それぞれの送信サイクルcにおいて、マップ算出部23が、N個のフーリエ変換後の信号S(r,g,h,c)を取得しているため、距離ビンrの数が例えばR=1000個であれば、N個のフーリエ変換後の信号S(r,g,h,c)から、N×1000個の2次元方位マップが算出される。
マップ算出部23は、それぞれの距離ビンrに対応するN個の2次元方位マップの合成処理を行う。それぞれの距離ビンrに対応するN個の2次元方位マップの合成処理としては、例えば、N個の2次元方位マップに含まれている同一の2次元方位同士の複素電力CP(r,az,el,c)の加算処理、あるいは、同一の2次元方位同士の複素電力CP(r,az,el,c)の平均処理がある。
マップ算出部23は、それぞれの送信サイクルcにおいて、それぞれの距離ビンrに対応する合成処理後の2次元方位マップをバイタル推定部24に出力する。
存在位置特定部25は、それぞれの距離ビンrに対応する合成処理後の2次元方位マップの時間変化に基づいて、対象物体に含まれる被測定者k(k=1,・・・,K)が存在している位置を特定する(図4のステップST4)。
以下、存在位置特定部25による位置の特定処理を具体的に説明する。
図8は、同一の距離ビンrに属し、かつ、同一の2次元方位(az,el)に属している複素電力CP(r,az,el,c)における位相の時間変化を示す説明図である。図8では、複素電力CP(r,az,el,c)が、複素信号空間において、円周上の往復運動を行っている。
図8において、●は、送信サイクルc=1~Cにおける複素電力CP(r,az,el,c)の位相θ(r,az,el,c)を示し、C個の●がプロットされている。
具体的には、存在位置特定部25は、送信サイクルc(c=1,・・・,C)の複素電力CP(r,az,el,c)を示す複素データがscであるとして、以下の式(1)に示す評価関数J(α,β)が最小になるα,βを求めることで、最適なフィッティング円Circ(r,az,el)を算出する。αは、フィッティング円Circ(r,az,el)の中心であり、βは、フィッティング円Circ(r,az,el)の半径である。scの下付きのcは、送信サイクルを示す変数である。
存在位置特定部25によるフィッティング円Circ(r,az,el)の算出数は、R×AZ×ELである。AZは、複素データscにおけるアジマス方向の分解能に対応するセル数、ELは、複素データscにおけるエレベーション方向の分解能に対応するセル数である。
ここでは、存在位置特定部25が、Kasa fitと呼ばれる円フィッティング手法を用いて、フィッティング円Circ(r,az,el)を算出している。しかし、これは一例に過ぎず、存在位置特定部25が、Pratt fit、Taubin fit、又は、Hyper fit等の円フィッティング手法を用いて、フィッティング円Circ(r,az,el)を算出するようにしてもよい。
α(r,az,el)は、フィッティング円Circ(r,az,el)の中心であり、β(r,az,el)は、フィッティング円Circ(r,az,el)の半径である。
存在位置特定部25は、算出したR×AZ×EL個のフィッティング円Circ(r,az,el)の半径βと、第1の閾値Th1とを比較する。第1の閾値Th1は、存在位置特定部25の内部メモリに格納されていてもよいし、バイタル測定装置20の外部から与えられるものであってもよい。
存在位置特定部25は、算出したR×AZ×EL個のフィッティング円Circ(r,az,el)の中で、半径βが第1の閾値Th1以上となるフィッティング円Circ(r,az,el)を探索する。
存在位置特定部25は、半径βが第1の閾値Th1以上となる1つ以上のフィッティング円Circ(r,az,el)の中で、フィッティング誤差E(az,el)が第2の閾値Th2以下となるフィッティング円Circ(r,az,el)を探索する。
存在位置特定部25は、送信サイクルc=1~Cにおける、それぞれの被測定者kが存在している位置についての複素電力CP(r,az,el,c)から、図9に示すような、複素電力CP(r,az,el,c)における位相の時間変化を示す位相変化信号θ(r,c)を算出する。
存在位置特定部25は、被測定者kが存在している位置についての複素電力CP(r,az,el,c)から位相変化信号θ(r,c)を算出する方法として、例えば、AD(Arctangent Demodulation)法、又は、CSD(Complex Signal Demodulation)法を用いることができる。
図9において、横軸は、送信サイクルcに対応する時間、縦軸は、距離ビンrにおける複素電力CP(r,az,el,c)の位相[rad]を示している。
存在位置特定部25は、それぞれの被測定者kについての位相変化信号θ(r,c)を呼吸数推定部27及び心拍数推定部28のそれぞれに出力する。
呼吸数推定部27は、それぞれの被測定者kについての位相変化信号θ(r,c)をフーリエ変換することで、それぞれの被測定者kの呼吸数RRを推定する(図4のステップST5)。
以下、呼吸数推定部27による呼吸数RRの推定処理を具体的に説明する。
呼吸数推定部27は、それぞれの被測定者kについての位相変化信号θ(r,c)をスロータイム方向にフーリエ変換することで、図10に示すような呼吸スペクトルSRR(r,sf)を得る。スロータイムは、送信波の送信時刻である。呼吸スペクトルSRR(r,sf)は、位相変化信号θ(r,c)のフーリエ変換結果であり、sfは、スロータイム方向の周波数である。
図10は、呼吸スペクトルSRR(r,sf)の一例を示す説明図である。
図10において、横軸は、呼吸数RR[bpm]、縦軸は、呼吸スペクトル[dB]である。
呼吸数推定部27は、第3の閾値Th3以上の呼吸スペクトルSRRに対応する呼吸数RRの中で、第4の閾値Th4以上の呼吸数RRを探索する。第4の閾値Th4は、呼吸数推定部27の内部メモリに格納されていてもよいし、バイタル測定装置20の外部から与えられるものであってもよい。
呼吸数推定部27は、第3の閾値Th3以上の呼吸スペクトルSRRに対応する呼吸数RRの中で、第4の閾値Th4以上の呼吸数RRが、被測定者kの呼吸数RRであると推定する。
心拍数推定部28は、それぞれの被測定者kについての位相変化信号θ(r,c)に基づいて、被測定者kの心拍数HRを推定する(図4のステップST6)。
以下、心拍数推定部28による心拍数HRの推定処理を具体的に説明する。
次に、心拍数推定部28は、それぞれの呼吸信号除去後の位相変化信号θ’(r,c)を連続ウェーブレット変換することで、図11に示すようなスカログラムを得る。スカログラムは、呼吸信号除去後の位相変化信号θ’(r,c)の連続ウェーブレット変換結果である。
図11は、スカログラムの一例を示す説明図である。
図11において、横軸は、送信サイクルcであり、縦軸は、周波数[Hz]である。
スカログラムには、図11に示すように、心拍信号が生じている位置に縞状が現れる。
図12は、スロータイム方向の2次元スペクトルW(r,f,sf)の一例を示す説明図である。
図12において、横軸は、心拍数HR[bpm]、縦軸は、周波数[Hz]である。
2次元スペクトルW(r,f,sf)には、図12に示すように、複数の周波数成分fに心拍信号が分散している。心拍信号が分散している高周波領域のスペクトルを最大比合成することで、心拍信号が強調されている心拍スペクトルSHR(r,sf)が得られる。
心拍数推定部28は、以下の式(10)に示すように、第1の固有ベクトルu1が示す方向に、行列Uを射影することで最大比合成を行い、図14に示すような心拍スペクトルSHR(r,sf)を得る。
図13において、横軸は、心拍数HR[bpm]、縦軸は、周波数[Hz]である。
図14は、心拍数推定部28により得られる心拍スペクトルSHR(r,sf)の一例を示す説明図である。
図14において、横軸は、心拍数HR[bpm]、縦軸は、心拍スペクトル[dB]である。
心拍数推定部28は、第5の閾値Th5以上の心拍スペクトルSHRに対応する心拍数HRが、被測定者kの心拍数HRであると推定する。
また、存在位置特定部25が、それぞれの被測定者kが存在している位置として、フィッティング誤差E(az,el)が第2の閾値Th2以下となるフィッティング円Circ(r,az,el)に係る距離ビンr、アジマス方向az及びエレベーション方向elのそれぞれを特定するようにしてもよい。
実施の形態2では、信号取得部21により取得された受信信号に含まれている、移動体による反射波に係る信号を抑圧する信号抑圧部29を備えているバイタル測定装置20について説明する。
図16は、実施の形態2に係るバイタル測定装置20のハードウェアを示すハードウェア構成図である。図16において、図2と同一符号は同一又は相当部分を示すので説明を省略する。
信号抑圧部29は、例えば、図16に示す信号抑圧回路35によって実現される。
信号抑圧部29は、信号取得部21によって、信号受信部14-1~14-Nからの受信データS(t,g,h,c)が取得される毎に、それぞれの受信データS(t,g,h,c)に含まれている、移動体による反射波に係る信号を抑圧する。
信号抑圧部29は、それぞれの信号抑圧後の受信データS’(t,g,h,c)をフーリエ変換部22に出力する。
信号取得回路31、信号抑圧回路35、フーリエ変換回路32、マップ算出回路33及びバイタル推定回路34のそれぞれは、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、又は、これらを組み合わせたものが該当する。
バイタル測定装置20が、ソフトウェア又はファームウェア等によって実現される場合、信号取得部21、信号抑圧部29、フーリエ変換部22、マップ算出部23及びバイタル推定部24におけるそれぞれの処理手順をコンピュータに実行させるためのプログラムが図3に示すメモリ41に格納される。そして、図3に示すプロセッサ42がメモリ41に格納されているプログラムを実行する。
図1に示すバイタル測定システムでは、信号発生器12aが、図5に示すように、それぞれの送信サイクルc(c=1,・・・,C)において、アップチャープの信号Tx(1)~Tx(N)を生成している。
図15に示すバイタル測定システムでは、信号発生器12aが、図17に示すように、それぞれの送信サイクルc(c=1,・・・,C)において、信号Tx(1)~Tx(N)をQ回繰り返し生成する。即ち、信号発生器12aは、それぞれの送信サイクルcにおいて、ヒットq(q=1,・・・,Q)の信号Tx(1)~Tx(N)を生成する。Qは、2以上の整数である。即ち、信号発生器12aは、それぞれの送信サイクルcにおいて、ヒット数Qの信号Tx(1)~Tx(N)を生成する。
図17は、信号発生器12aにより生成されるヒット数Qのアップチャープの信号Tx(1)~Tx(N)を示す説明図である。図17の例では、N=3である。ヒット数Qは、例えば16である。
このため、アンテナ11-n(n=1,・・・,N)は、それぞれの送信サイクルc(c=1,・・・,C)において、Q個の送信信号Tx’(n)に係る送信波のそれぞれを対象物体が存在している空間に放射する。
アンテナ11-nから送信波が放射された空間に、対象物体として、被測定者k(k=1,・・・,K)のほかに、移動体が存在していれば、移動体による反射波についてもアンテナ11-1~11-Nに入射される。
被測定者kは、例えば、ベッドに寝ている概ね静止状態の人間、又は、椅子等に座っている概ね静止状態の人間である。移動体は、送信波が放射された空間内を移動している人間等である。
アンテナ11-n(n=1,・・・,N)は、それぞれの送信サイクルcにおいて、対象物体による反射波を受信する。即ち、アンテナ11-n(n=1,・・・,N)は、それぞれの送信サイクルcにおいて、被測定者k及び移動体のそれぞれによる反射波を受信する。
アンテナ11-n(n=1,・・・,N)は、それぞれの送信サイクルcにおいて、被測定者k及び移動体のそれぞれによる反射波の信号を含むN×Q個の受信信号のそれぞれをサーキュレータ13-nに出力する。
サーキュレータ13-nは、それぞれの送信サイクルcにおいて、アンテナ11-nから出力されたN×Q個の受信信号を信号受信部14-nに出力する。
信号受信部14-nは、それぞれの送信サイクルcにおいて、N×Q個の受信データS(t,g,h,c)のそれぞれをバイタル測定装置20に出力する。
これにより、送信サイクルc=1~Cにおいて、信号受信部14-1~14-Nから、全部でN×Q×C個の受信データS(t,g,h,c)がバイタル測定装置20に与えられる。
信号取得部21は、それぞれの送信サイクルcにおいて、N×Q個の受信データS(t,g,h,c)のそれぞれを信号抑圧部29に出力する。
信号抑圧部29は、それぞれの送信サイクルcにおいて、N×Q個の受信データS(t,g,h,c)のそれぞれに含まれている、移動体による反射波に係る信号を抑圧する。
信号抑圧部29は、それぞれの送信サイクルcにおいて、信号抑圧後の信号として、N×Q個の受信データSY(t,g,h,c)をフーリエ変換部22に出力する。
以下、信号抑圧部29による信号抑圧処理を具体的に説明する。
図18Aにおいて、横軸は、時間を示し、縦軸は、振幅を示している。MIMO(Multiple-Input Multiple-Output)による仮想チャネル数は、G×Hである。
受信データS(t,g,h,c)には、図18Aに示すように、受信系ハードウェアに起因するDC(Direct Current)オフセット成分が重畳されている。
信号取得部21から信号抑圧部29に与えられる受信データS(t,g,h,c)の数は、それぞれの送信サイクルc(c=1,・・・,C)において、N×Q個である。
図18Bは、ADオフセット補正後の受信データS’(t,g,h,c)を示している。
図18Bにおいて、横軸は、時間を示し、縦軸は、振幅を示している。
信号抑圧部29によって、受信データS’(t,g,h,c)が平均化されることで、受信データS’(t,g,h,c)に含まれている、移動体による反射波に係る信号が抑圧される。
信号抑圧部29は、それぞれの送信サイクルcにおいて、N個の受信データS(t,g,h,c)として、N個の信号抑圧後の受信データSY(t,g,h,c)をフーリエ変換部22に出力する。
図18Cは、移動体による反射波に係る信号抑圧後の受信データSY(t,g,h,c)を示している。
図18Cにおいて、横軸は、時間を示し、縦軸は、振幅を示している。
フーリエ変換部22以降の処理は、図1に示すバイタル測定装置20と同様であるため、説明を省略する。
実施の形態3では、信号取得部21により取得された受信信号に基づいて、移動体を検出する移動体検出部30を備えるバイタル測定装置20について説明する。
図20は、実施の形態3に係るバイタル測定装置20のハードウェアを示すハードウェア構成図である。図20において、図16と同一符号は同一又は相当部分を示すので説明を省略する。
移動体検出部30は、例えば、図20に示す移動体検出回路36によって実現される。
移動体検出部30は、信号取得部21により取得された受信データS(t,g,h,c)に含まれている、移動体による反射波に係る信号を抽出する。
移動体検出部30は、移動体による反射波に係る信号に基づいて、移動体を検出する。
信号取得回路31、信号抑圧回路35、フーリエ変換回路32、マップ算出回路33、バイタル推定回路34及び移動体検出回路36のそれぞれは、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、又は、これらを組み合わせたものが該当する。
バイタル測定装置20が、ソフトウェア又はファームウェア等によって実現される場合、信号取得部21、信号抑圧部29、フーリエ変換部22、マップ算出部23、バイタル推定部24及び移動体検出部30におけるそれぞれの処理手順をコンピュータに実行させるためのプログラムが図3に示すメモリ41に格納される。そして、図3に示すプロセッサ42がメモリ41に格納されているプログラムを実行する。
移動体検出部30は、N×C個の受信データS(t,g,h,c)に基づいて、空間に存在している移動体の追尾処理を実施することで、時刻の経過に伴って変化する、移動体の存在位置を推定する。移動体の追尾処理自体は、公知の技術であるため詳細な説明を省略する。
例えば、空間に存在している移動体の数が1つであれば、1つの移動体の存在位置を推定する。例えば、2つの移動体として、第1の移動体と第2の移動体とが空間に存在していれば、第1の移動体の存在位置と、第2の移動体の存在位置とを推定する。
移動体検出部30は、移動体の存在位置の推定結果に基づいて、移動体が存在している2次元方位を検出する。2次元方位は、バイタル測定装置20から移動体を見たアジマス方向と、バイタル測定装置20から移動体を見たエレベーション方向とである。
Claims (10)
- 対象物体による反射波を受信するアンテナから、前記反射波の受信信号を取得する信号取得部と、
前記信号取得部により取得された受信信号を時間方向にフーリエ変換するフーリエ変換部と、
前記フーリエ変換部によるフーリエ変換後の信号を用いて、バイタル測定装置からの複数の距離ビンのそれぞれに対応する複素電力の2次元方位マップを算出するマップ算出部と、
前記マップ算出部により算出されたそれぞれの距離ビンに対応する複素電力の2次元方位マップの時間変化に基づいて、前記対象物体に含まれる被測定者が存在している位置を特定し、前記被測定者が存在している位置についての複素電力の位相の時間変化から、前記被測定者のバイタルを推定するバイタル推定部と
を備えたバイタル測定装置。 - 前記対象物体の中に、1人以上の被測定者が含まれており、
前記バイタル推定部は、
前記マップ算出部により算出されたそれぞれの距離ビンに対応する複素電力の2次元方位マップの時間変化に基づいて、それぞれの被測定者が存在している位置を特定し、それぞれの被測定者が存在している位置についての複素電力の位相の時間変化を示す位相変化信号を出力する存在位置特定部と、
前記存在位置特定部から出力されたそれぞれの位相変化信号に基づいて、それぞれの被測定者のバイタルを推定するバイタル推定処理部とを備えていることを特徴とする請求項1記載のバイタル測定装置。 - 前記存在位置特定部は、
前記マップ算出部により算出された複数の2次元方位マップのそれぞれに含まれている複数の複素電力の中から、距離ビンが互いに同一であり、かつ、2次元方位が互いに同一である複素電力の組を複数抽出し、それぞれの組に含まれている複数の複素電力についての位相の時間変化を描くフィッティング円を算出し、被測定者が存在している位置として、算出した複数のフィッティング円の中で、第1の閾値以上の半径を有するフィッティング円に係る組に含まれている複素電力の位置を特定することを特徴とする請求項2記載のバイタル測定装置。 - 前記存在位置特定部は、
前記マップ算出部により算出された複数の2次元方位マップのそれぞれに含まれている複数の複素電力の中から、距離ビンが互いに同一であり、かつ、2次元方位が互いに同一である複素電力の組を複数抽出し、それぞれの組に含まれている複数の複素電力についての位相の時間変化を描くフィッティング円を算出し、被測定者が存在している位置として、算出した複数のフィッティング円の中で、フィッティング円の誤差であるフィッティング誤差が第2の閾値以下であるフィッティング円に係る組に含まれている複素電力の位置を特定することを特徴とする請求項2記載のバイタル測定装置。 - 前記存在位置特定部は、
前記マップ算出部により算出された複数の2次元方位マップのそれぞれに含まれている複数の複素電力の中から、距離ビンが互いに同一であり、かつ、2次元方位が互いに同一である複素電力の組を複数抽出し、それぞれの組に含まれている複数の複素電力についての位相の時間変化を描くフィッティング円を算出し、被測定者が存在している位置として、算出した複数のフィッティング円の中で、第1の閾値以上の半径を有し、かつ、フィッティング円の誤差であるフィッティング誤差が第2の閾値以下であるフィッティング円に係る組に含まれている複素電力の位置を特定することを特徴とする請求項2記載のバイタル測定装置。 - 前記バイタル推定処理部は、
前記存在位置特定部から出力されたそれぞれの位相変化信号に基づいて、それぞれの被測定者の呼吸数を推定する呼吸数推定部と、
前記存在位置特定部から出力されたそれぞれの位相変化信号に基づいて、それぞれの被測定者の心拍数を推定する心拍数推定部とを備えていることを特徴とする請求項2記載のバイタル測定装置。 - 前記信号取得部により取得された受信信号に含まれている、移動体による反射波に係る信号を抑圧する信号抑圧部を備え、
前記フーリエ変換部は、
前記信号抑圧部による信号抑圧後の受信信号を時間方向にフーリエ変換することを特徴とする請求項1記載のバイタル測定装置。 - 前記信号取得部により取得された受信信号に基づいて、前記移動体を検出する移動体検出部を備えたことを特徴とする請求項7記載のバイタル測定装置。
- 信号取得部が、対象物体による反射波を受信するアンテナから、前記反射波の受信信号を取得し、
フーリエ変換部が、前記信号取得部により取得された受信信号を時間方向にフーリエ変換し、
マップ算出部が、前記フーリエ変換部によるフーリエ変換後の信号を用いて、バイタル測定装置からの複数の距離ビンのそれぞれに対応する複素電力の2次元方位マップを算出し、
バイタル推定部が、前記マップ算出部により算出されたそれぞれの距離ビンに対応する複素電力の2次元方位マップの時間変化に基づいて、前記対象物体に含まれる被測定者が存在している位置を特定し、前記被測定者が存在している位置についての複素電力の位相の時間変化から、前記被測定者のバイタルを推定する
バイタル測定方法。 - アンテナと、
前記アンテナから、対象物体が存在している空間に送信波を放射させる信号送信部と、
前記対象物体による反射後の送信波である反射波を受信する前記アンテナから、前記反射波の受信信号を取得する信号取得部と、
前記信号取得部により取得された受信信号を時間方向にフーリエ変換するフーリエ変換部と、
前記フーリエ変換部によるフーリエ変換後の信号を用いて、バイタル測定装置からの複数の距離ビンのそれぞれに対応する複素電力の2次元方位マップを算出するマップ算出部と、
前記マップ算出部により算出されたそれぞれの距離ビンに対応する複素電力の2次元方位マップの時間変化に基づいて、前記対象物体に含まれる被測定者が存在している位置を特定し、前記被測定者が存在している位置についての複素電力の位相の時間変化から、前記被測定者のバイタルを推定するバイタル推定部と
を備えたバイタル測定システム。
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