JP7419785B2 - 非晶性熱可塑性樹脂フィルム、コンデンサ用金属化フィルム、フィルムロール、及びコンデンサ - Google Patents

非晶性熱可塑性樹脂フィルム、コンデンサ用金属化フィルム、フィルムロール、及びコンデンサ Download PDF

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Description

本発明は、非晶性熱可塑性樹脂フィルム、コンデンサ用金属化フィルム、及びコンデンサに関する。
従来、電子機器、電気機器などにおいて、例えば高電圧コンデンサ、各種スイッチング電源、コンバータ及びインバータ等のフィルタ用コンデンサ及び平滑用コンデンサ等として、樹脂フィルムを利用したコンデンサが使用されている。このようなコンデンサにおいては、樹脂フィルムはコンデンサ用誘電体フィルムとして、例えば、(i)当該誘電体フィルム上に、例えば、金属蒸着、スパッタリング等の真空めっき、または金属含有ペーストの塗工・乾燥、金属箔や金属粉の圧着等の方法で、金属層等の導電層を設けた所謂「金属化フィルム」とする方法、(ii)金属層等の導電層を設けない当該誘電体フィルムと、金属箔または(i)と同様の方法等で金属層を設けた金属化フィルム等の他の導電体を積層すること、等の方法でコンデンサを構成している。コンデンサ用誘電体フィルムは、近年需要が高まっている電気自動車及びハイブリッド自動車等の駆動モーターを制御するインバータ電源機器用コンデンサとしても利用されている。
上記の用途において、例えば自動車用として用いられるコンデンサなどは、高温環境で使用されるため、コンデンサ用誘電体フィルムとしては、高温下においても高い絶縁破壊強さを有するものが求められる。さらに近年、自動車用としての要求温度は以前よりも上昇しており、要求温度は120℃を超え、140℃に達する場合もある。
例えば、特許文献1には、高い耐熱性を有する芳香族ポリエーテルスルホン樹脂を主成分とするフィルムを誘電性薄膜として使用したプラスチックフィルムコンデンサが開示されている。
特開昭60-68505号公報
前記の通り、高温環境で使用されるコンデンサには、高温下において高い絶縁破壊強さを有するコンデンサ用誘電体フィルムが求められる。
また、コンデンサを小型化かつ高容量化する(すなわち、コンデンサ用誘電体フィルムを用いたコンデンサの単位体積当たりの静電容量を高める)ためには、コンデンサ用誘電体フィルムの厚みを可能な限り薄くすることが求められる。
さらに、コンデンサ用誘電体フィルムは、通常、長尺のフィルムの巻取体として連続的に生産され、保管、流通される。また、コンデンサ用誘電体フィルムに金属層を積層してコンデンサ用金属化フィルムを製造する際や、コンデンサに利用する際などには、コンデンサ用誘電体フィルムを巻取体から巻き出しながら、所望の幅に切断(スリット加工)され、再度、小型の巻取体を得る工程が行われる。このようなコンデンサ用誘電体フィルムのスリット加工工程において、コンデンサ用誘電体フィルムの滑り性が低いと、巻き出しや巻き取りの際に、コンデンサ用誘電体フィルムにズレや皺が形成されるという問題が生じる。
このような状況下、本発明は、高温下において高い絶縁破壊強さを有し、厚みが薄く、さらに、優れたスリット加工適性を有する非晶性熱可塑性樹脂フィルムを提供することを主な目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、ガラス転移温度(Tg)が所定範囲にあり、かつ、主鎖にスルホニル基(-SO2-)を含む非晶性熱可塑
性樹脂と、シリカ及び炭酸カルシウムからなる群より選択された少なくとも1種の粒子とを含む樹脂フィルムによって構成された非晶性熱可塑性樹脂フィルムであって、当該粒子の平均粒子径を所定範囲とし、かつ、フィルム全体に占める当該粒子の含有率を所定範囲に設定した上で、厚みを9.5μm以下と薄くすると、高温下において高い絶縁破壊強さを有し、厚みが薄く、さらに、優れたスリット加工適性を有する非晶性熱可塑性樹脂フィルムが得られることを見出した。当該非晶性熱可塑性樹脂フィルムは、高温下における高い絶縁破壊強さを備えているため、例えば自動車用コンデンサなどの高温環境で使用されるコンデンサに好適に用いることができる。また、当該非晶性熱可塑性樹脂フィルムは、厚みが9.5μm以下と非常に薄いため、単位体積当たりの静電容量が大きい。さらに、当該非晶性熱可塑性樹脂フィルムは、優れたスリット加工適性を有するため、生産性に優れている。本発明は、かかる知見に基づいてさらに検討を重ねることにより完成したものである。
すなわち、本発明には、以下のものが含まれる。
項1. ガラス転移温度(Tg)が170℃以上230℃以下であり、主鎖にスルホニル基を含む非晶性熱可塑性樹脂と、シリカ及び炭酸カルシウムからなる群より選択された少なくとも1種の粒子と、を含む非晶性熱可塑性樹脂フィルムであって、
前記粒子の平均粒子径が、0.1μm以上1.5μm以下であり、
前記粒子の含有率が0.1質量%以上1.5質量%以下であり、
厚みが9.5μm以下である、非晶性熱可塑性樹脂フィルム。
項2. コンデンサ用誘電体フィルムである、項1に記載の非晶性熱可塑性樹脂フィルム。
項3. 140℃環境での絶縁破壊強さが300VDC/μm以上である、項1又は2に記載の非晶性熱可塑性樹脂フィルム。
項4. 125℃環境での絶縁破壊強さが400VDC/μm以上である、項1~3のいずれか1項に記載の非晶性熱可塑性樹脂フィルム。
項5. 前記非晶性熱可塑性樹脂フィルムは、延伸フィルムにより構成されている、項1~4のいずれか1項に記載の非晶性熱可塑性樹脂フィルム。
項6. 項1~5のいずれか1項に記載の非晶性熱可塑性樹脂フィルムが捲回されてなるフィルムロール。
項7. 項1~5のいずれか1項に記載の非晶性熱可塑性樹脂フィルムの片面又は両面に金属膜を有する、コンデンサ用金属化フィルム。
項8. 項1~5に記載の非晶性熱可塑性樹脂フィルムを含む、コンデンサ。
本発明によれば、高温下において高い絶縁破壊強さを有し、厚みが薄く、さらに、スリット加工適性に優れた非晶性熱可塑性樹脂フィルムを提供することができる。また、本発明によれば、当該非晶性熱可塑性樹脂フィルムを利用したフィルムロール、厚みが薄いために小型化かつ高容量化されたコンデンサ用金属化フィルム、及びコンデンサを提供することもできる。
本実施形態に係る非晶性熱可塑性樹脂フィルムは、ガラス転移温度(Tg)が170℃以上230℃以下であり、主鎖にスルホニル基を含む非晶性熱可塑性樹脂と、シリカ及び炭酸カルシウムからなる群より選択された少なくとも1種の粒子と、を含む非晶性熱可塑性樹脂フィルムであって、前記粒子の平均粒子径が、0.1μm以上1.5μm以下であり、非晶性熱可塑性樹脂フィルムを100質量%とした場合の前記粒子の含有率が0.1質量%以上1.5質量%以下であり、厚みが9.5μm以下であることを特徴としている。
本実施形態に係る非晶性熱可塑性樹脂フィルムは、このような構成を備えていることにより、高温下において高い絶縁破壊強さを有し、厚みが薄く、さらに、スリット加工適性に優れるという特性を発揮する。本実施形態に係る非晶性熱可塑性樹脂フィルムは、高温下における高い絶縁破壊強さ(例えば、125℃環境での絶縁破壊強さが300VDC/μm以上、さらには140℃環境での絶縁破壊強さが300VDC/μm以上)を備えているため、コンデンサ用誘電体フィルムとして好適に用いることができ、特に、高温環境で使用されるコンデンサに好適に用いることができる。また、本実施形態に係る非晶性熱可塑性樹脂フィルムは、厚みが9.5μm以下と非常に薄いため、前記フィルムを誘電体とするフィルムコンデンサとしたときに単位体積当たりの静電容量が大きい。さらに、本実施形態に係る非晶性熱可塑性樹脂フィルムは、優れたスリット加工適性を有するため、生産性に優れている。本実施形態に係る非晶性熱可塑性樹脂フィルムは、フィルムコンデンサとしたときの単位体積当たりの静電容量を大きくするため、フィルムの厚さが9.5μm超え(例えば10μm、11μm、20μm等)は想定していない。
以下、本実施形態に係る非晶性熱可塑性樹脂フィルム、当該非晶性熱可塑性樹脂フィルムを利用した、コンデンサ用金属化フィルム、及びコンデンサについて詳述する。なお、本明細書において、数値範囲の「~」とは、以上と以下とを意味する。即ち、α~βという表記は、α以上β以下、或いは、β以上α以下を意味し、範囲としてα及びβを含む。また、本明細書において、各成分の含有率を示す「質量%」は、断りがない限り非晶性熱可塑性樹脂フィルムを100質量%とした場合の含有量の割合を示す。
1.非晶性熱可塑性樹脂フィルム
本実施形態に係る非晶性熱可塑性樹脂フィルムは、非晶性熱可塑性樹脂と、シリカ及び炭酸カルシウムからなる群より選択された少なくとも1種の粒子を含むフィルムにより構成されている。具体的には、本実施形態に係る非晶性熱可塑性樹脂フィルムは、ベース樹脂としての非晶性熱可塑性樹脂に、シリカ及び炭酸カルシウムの少なくとも一方の粒子が分散された樹脂フィルムである。
非晶性熱可塑性樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が170℃以上230℃以下であり、かつ、主鎖にスルホニル基(-SO2-)を含む。高温下において高い絶縁破壊強さを有
し、厚みが薄く、さらに、スリット加工適性に優れるという特性を好適に発揮しつつ、さらに、非晶性熱可塑性樹脂フィルムの連続製膜性を高める(具体的には、フィルムを破断無く製膜可能な長さを長くする)観点から、好ましくは175~225℃、より好ましくは180~222℃、さらに好ましくは180~200℃、特に好ましくは180~190℃が挙げられる。
本実施形態において、ガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定される値であり、具体的には、実施例に記載の方法により測定される。
なお、本実施形態において、「非晶性熱可塑性樹脂」とは、示差走査熱量計(DSC)を用いた測定(具体的には実施例に記載の方法により測定される)におて、ガラス転移温度(Tg)を有するが、明確な融解に伴う吸熱ピーク(融点)を有しない樹脂である。主鎖にスルホニル基(-SO2-)を含む非晶性熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルスルホン等が挙げられる。
当該非晶性熱可塑性樹脂は更に、高温下において高い絶縁破壊強さを有し、厚みが薄く、さらに、スリット加工適性に優れるという特性を好適に発揮する観点から、主鎖に式:-[Ph-C(CH32-Ph]-で表される繰り返し単位を有する非晶性熱可塑性樹脂が好ましい。
なお、式:-[Ph-C(CH32-Ph]-は、化学式で以下のように表記される。
Figure 0007419785000001
非晶性熱可塑性樹脂フィルムに含まれる当該非晶性熱可塑性樹脂は、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
ポリスルホンとしては、特に制限されず、公知のものを使用することができ、市販品を使用することもできる。ポリスルホンの市販品としては、例えば、BASF社製の商品名ウルトラゾーン(登録商標)(例えば、ウルトラゾーン(登録商標)S6010、ウルトラゾーン(登録商標)S3010、ウルトラゾーン(登録商標)S2010)、Solvey社製の商品名ユーデル(登録商標)(例えば、ユーデル(登録商標)P-1700)などが挙げられる。
ポリスルホンのガラス転移温度(Tg)としては、170℃以上230℃以下の範囲にあればよいが、好ましくは160~195℃、より好ましくは170~190℃、さらに好ましくは180~190℃が挙げられる。また、ポリスルホンの質量(重量)平均分子量としては、特に制限されないが、例えば1万~10万程度、好ましくは1.5万~8万程度が挙げられる。また、ポリスルホンのMVR(メルトボリュームフローレート:Melt volume-flow rate)は、好ましくは50cm3/10分以下、より好ましくは35cm3/10分以下が挙げられる。MVRの下限については、例えば20cm3/10分が挙げられる。
なお、本実施形態において、樹脂の質量(重量)平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)装置を用いて測定することができる。また、ポリスルホンのMVRは、ISO 1133の規定に準拠し、温度360℃、荷重10kgの条件で測定された値である。
ポリエーテルスルホンとしては、特に制限されず、公知のものを使用することができ、市販品を使用することもできる。ポリエーテルスルホンの市販品としては、例えば、BASF社製の商品名ウルトラゾーン(登録商標)(例えば、ウルトラゾーン(登録商標)E2010、ウルトラゾーン(登録商標)E3010)などが挙げられる。
ポリエーテルスルホンのガラス転移温度(Tg)としては、170℃以上230℃以下の範囲にあればよいが、好ましくは200~230℃、より好ましくは210~230℃、さらに好ましくは220~230℃が挙げられる。また、ポリエーテルスルホンの質量(重量)平均分子量としては、特に制限されないが、例えば1万~10万程度、好ましくは1.5万~8万程度が挙げられる。
ポリフェニルスルホンとしては、特に制限されず、公知のものを使用することができ、市販品を使用することもできる。ポリフェニルスルホンの市販品としては、例えば、BASF社製の商品名ウルトラゾーン(登録商標)(例えば、ウルトラゾーン(登録商標)P3010)、Solvey社製の商品名レーデル(登録商標)(例えば、レーデル(登録商標)R-5100)などが挙げられる。
ポリフェニルスルホンのガラス転移温度(Tg)としては、170℃以上230℃以下の範囲にあればよいが、好ましくは195~225℃、より好ましくは205~225℃、さらに好ましくは215~225℃が挙げられる。また、ポリフェニルスルホンの質量(重量)平均分子量としては、特に制限されないが、例えば1万~10万程度、好ましくは1.5万~8万程度が挙げられる。
本実施形態に係る非晶性熱可塑性樹脂フィルムにおける当該非晶性熱可塑性樹脂の含有率としては、例えば55質量%以上、好ましくは60~99.9質量%、より好ましくは65~99.5質量%、さらに好ましくは70~99.0質量%が挙げられる。
なお、本実施形態に係る非晶性熱可塑性樹脂フィルムは、本発明の効果を阻害しなければ、ガラス転移温度(Tg)が170℃以上230℃以下であり、かつ、主鎖にスルホニル基を含むの非晶性熱可塑性樹脂とは異なる他の樹脂を含んでいてもよい。このような他の樹脂としては、ガラス転移温度(Tg)が170℃未満の非晶性熱可塑性樹脂、ガラス転移温度(Tg)が230℃超の非晶性熱可塑性樹脂、170℃以上230℃以下であり、かつ、主鎖にスルホニル基を含まない非晶性熱可塑性樹脂、結晶性熱可塑性樹脂等が挙げられる。
他の樹脂としての非晶性熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリカーボネート、非晶性ポリスチレン、アクリル樹脂、ABS樹脂、ポリフェニレンエーテル、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、熱可塑性非晶性ポリイミド、非晶性シクロオレフィンポリマー、非晶性シクロオレフィンコポリマー等が挙げられる。
他の樹脂としての結晶性熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリメチルペンテン、シンジオタクチックポリスチレン、ポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール、液晶ポリマー、結晶性シクロオレフィンポリマー、結晶性シクロオレフィンコポリマー、フッ素樹脂などが挙げられる。
本実施形態に係る非晶性熱可塑性樹脂フィルムに他の樹脂が含まれる場合、その含有率としては、40質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下が挙げられる。本実施形態に係る非晶性熱可塑性樹脂フィルムに含まれる樹脂は、実質的にガラス転移温度(Tg)が170℃以上230℃以下であり、かつ、主鎖にスルホニル基を含む非晶性熱可塑性樹脂のみ(例えば、非晶性熱可塑性樹脂フィルムに含まれる樹脂に占める、ガラス転移温度(Tg)が170℃以上230℃以下であり、かつ、主鎖にスルホニル基を含む非晶性熱可塑性樹脂の割合が99質量%以上である)であって良い。
シリカとしては、平均粒子径が0.1~1.5μmの範囲にあれば、特に制限されず、公知のものを使用することができ、市販品を使用することもできる。シリカとしては、合成非晶質シリカが好ましい粒子径のものが得られ易く好ましい。シリカの形状としては、特に制限されず、例えば、単粒子からなる球状シリカ、複数の1次粒子から2次粒子や3次粒子を形成する不定形シリカなどであってよいが、単粒子からなる球状シリカが好ましい。
炭酸カルシウムとしては、平均粒子径が0.1μm以上1.5μm以下の範囲にあれば、特に制限されず、公知のものを使用することができ、市販品を使用することもできる。炭酸カルシウムとしては、軽質炭酸カルシウムが、好ましい粒子径のものが得られ易く好ましい。
本実施形態に係る非晶性熱可塑性樹脂フィルムの高温下における絶縁破壊強さを高め、厚みを薄くしつつ、スリット加工適性をより高める観点から、シリカ及び炭酸カルシウムからなる群より選択された少なくとも1種の粒子の平均粒子径としては、それぞれ、好ましくは0.2~1.5μm、より好ましくは0.3~1.2μm、さらに好ましくは0.5~1.0μmが挙げられる。
本実施形態において、シリカ及び炭酸カルシウムからなる群より選択された少なくとも1種の粒子の平均粒子径は、以下の方法により測定された値である。
(平均粒子径)
平均粒子径は、フィルムの表面を、超高分解能電界放出型走査電子顕微鏡装置((FE
-SEM) 日立ハイテクノロジーズ製S-5200)を用い、片面から10点(両面併せて20点)の粒子を倍率2万倍、加速電圧8kV、ビーム電流10μA、検出器は反射電子検出器を使用して観察し、観察画像を取得する。その観察画像から画像解析ソフトを用いてその最長径を測定し、その測定値を平均した平均粒子径を求める。なお本方法では、フィルム表面から約3μm以上深い位置の粒子は、ぼやけてしまうので測定できない。しかしこのような深い位置にある粒子は滑剤として機能しないため、本実施形態においては測定の対象とはしない。
本実施形態の非晶性熱可塑性樹脂フィルムにおけるシリカ及び炭酸カルシウムからなる群より選択された少なくとも1種の粒子の含有率(シリカと炭酸カルシウムの両者を含む場合には、両者の合計含有率)の割合は、0.1~1.5質量%の範囲にあれば、特に制限されない。本実施形態に係る非晶性熱可塑性樹脂フィルムの高温下における絶縁破壊強さを高め、厚みを薄くしつつ、スリット加工適性をより高め、さらに連続製膜性を向上させる観点から、好ましくは0.12~1.5質量%、より好ましくは0.2~1.2質量%、さらに好ましくは0.2~1.0質量%、特に好ましくは0.2~0.7質量%が挙げられる。
本実施形態に係る非晶性熱可塑性樹脂フィルムの厚みとしては、9.5μm以下であればよいが、コンデンサの体積を小さくし、かつ、静電容量を高める観点から、好ましくは9.0μm以下、より好ましくは8.5μm以下、さらに好ましくは6.0μm以下が挙げられる。絶縁破壊強さ(VDC)やスリット加工適性をより高め、さらに連続製膜性を向上させる観点から、本実施形態に係る非晶性熱可塑性樹脂フィルムの厚みの下限としては、例えば1.5μm、好ましくは2.0μm、より好ましくは2.5μmが挙げられる。
誘電体フィルムの厚み、コンデンサの体積、および静電容量の関係について、以下に詳細に説明する。誘電体フィルムは、厚さが薄いほど、単位体積当たりの静電容量を大きくできる。より具体的に説明すると、平板コンデンサの静電容量Cは、誘電率ε、電極面積S、誘電体厚さd(樹脂フィルムの厚さd)を用いて、以下のように表される。
C=εS/d
ここで、フィルムコンデンサの場合、電極の厚さは、誘電体フィルムの厚さと比較して3桁以上薄いため、電極の体積を無視すると、コンデンサの体積Vは、以下のように表される。
V=Sd
従って、上記2つの式より、単位体積当たりの静電容量C/Vは、以下のように表される。
C/V=ε/d2
ここで誘電率εは使用する材料により決まる。そうすると材料を変更しない限りは、上記式から分かるように、単位体積当たりの静電容量(C/V)は、樹脂フィルム厚さを薄くすると、その二乗に反比例して単位体積当たりの静電容量(C/V)が向上することが分かる。
上記説明は、理解を容易にするために理想化している。つまり実際には、例えばフィルム間にわずかな空隙が存在する場合があることや、電極端でのフリンジ効果の影響があること、また捲回型コンデンサであること等により、面積に応じて単位体積当たりの静電容量(C/V)の値に変化が見られる。しかしながら一般的には、単位体積当たりの静電容量(C/V)は、誘電体フィルム厚さによって決まるということが理解できる。
以上より、前記誘電体フィルムの厚さは、絶縁破壊強さ(VDC),スリット加工適性、および連続製膜性が担保される範囲内で、なるべく薄くすることが好ましい。
非晶性熱可塑性樹脂フィルムの厚みは、外側マイクロメータ(株式会社ミツトヨ製 高精度デジマチックマイクロメータ MDH-25MB)を用いて、JIS K 7130:1999 A法に準拠して測定される値である。
本実施形態に係る非晶性熱可塑性樹脂フィルムの125℃環境での絶縁破壊強さとしては、高温下における絶縁破壊強さの観点から、好ましくは300VDC/μm以上、より好ましくは320VDC/μm以上、さらに350VDC/μm以上、特に400VDC/μm以上が挙げられる。なお、本実施形態に係る非晶性熱可塑性樹脂フィルムの125℃環境での絶縁破壊強さの上限に制限は無いがとしては、例えば600VDC/μmが挙げられる。125℃環境での絶縁破壊強さは、以下の測定方法によって測定される値である。
(125℃環境での絶縁破壊強さ)
JIS C2151:2006の17.2.2(平板電極法)に準じた測定装置を用意する。ただし下部電極として、JIS C2151:2006の17.2.2に記載の弾性体の替わりに導電ゴム(星和電機株式会社製E12S10)を電極として用い、アルミ箔の巻き付けは行わないものとする。測定環境は設定温度125℃の強制循環式オーブン内とし、電極およびフィルムは同オーブン内で30分調温した後に使用する。電圧上昇は0Vから開始して100V/秒の速度とし、電流値が5mAを超えた時を破壊時とする。絶縁破壊電圧測定回数は20回とし、絶縁破壊電圧値VDCを、フィルムの厚み(μm)で割り、その20回の計算結果中の上位2点および下位2点を除いた16点の平均値を、絶縁破壊強さ(VDC/μm)とする。
また、本実施形態に係る非晶性熱可塑性樹脂フィルムの140℃環境での絶縁破壊強さとしては、高温下における絶縁破壊強さの観点から、好ましくは300VDC/μm以上、より好ましくは320VDC/μm以上、さらに350VDC/μm以上が挙げられる。なお、本実施形態に係る非晶性熱可塑性樹脂フィルムの140℃環境での絶縁破壊強さの上限に制限は無いがとしては、例えば600VDC/μmが挙げられる。140℃環境での絶縁破壊強さは、測定環境を設定温度140℃の強制循環式オーブン内としたこと以外は、125℃環境での絶縁破壊強さと同様にして実施、算出する。
また、本実施形態に係る非晶性熱可塑性樹脂フィルムの23℃環境での絶縁破壊強さとしては、好ましくは300VDC/μm以上、より好ましくは320VDC/μm以上、さらに350VDC/μm以上が挙げられる。なお、本実施形態に係る非晶性熱可塑性樹脂フィルムの23℃環境での絶縁破壊強さの上限に制限は無いが、例えば650VDC/μmが挙げられる。23℃環境での絶縁破壊強さは、125℃と同様の測定を、設定温度125℃の強制循環式オーブン内ではなく、23℃、相対湿度50%の環境下にて実施して算出する。
本実施形態に係る非晶性熱可塑性樹脂フィルムは、未延伸フィルムであってもよいし、延伸フィルムであってもよい。本実施形態に係る非晶性熱可塑性樹脂フィルムのスリット加工適性をより高め、さらに連続製膜性を向上させる観点からは、未延伸フィルムであることが好ましい。一方、高温下における絶縁破壊強さを高め、厚みを薄くする観点からは延伸フィルムが好ましい。非晶性熱可塑性樹脂フィルムが延伸フィルムである場合、一軸延伸フィルムであってもよいし、二軸延伸フィルムであってもよい。
本実施形態に係る非晶性熱可塑性樹脂フィルムは、単層であってもよいし、複層であってもよい。単層であるとフィルム厚みを薄くし易く好ましい。一方、複層であると、表層にのみシリカおよび/又は炭酸カルシウムを添加することで、少ない添加量で効果が得られ易くなり、絶縁破壊強さも高くなりやすく好ましい。本実施形態に係る非晶性熱可塑性樹脂フィルムが複層である場合、同一又は異なる非晶性熱可塑性樹脂フィルムが2層以上積層された構成を有していてもよい。
また、本実施形態に係る非晶性熱可塑性樹脂フィルムは、アルミニウム箔などの金属箔や、他の樹脂フィルムなどによって形成された基材の上に積層された状態であってもよいが、好ましくは基材の上に形成されておらず、本実施形態に係る非晶性熱可塑性樹脂フィルム単体として製造(好ましくは、製膜後、単独で巻芯に巻き取り、巻取体とする)し、後述するコンデンサ用金属化フィルムやコンデンサの製造に供されることが好ましい。
本実施形態に係る非晶性熱可塑性樹脂フィルムは、添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、本発明の効果を阻害しないことを限度として、特に制限されず、公知の非晶性熱可塑性樹脂フィルムに配合されている添加剤を使用することができる。添加剤には、例えば、酸化防止剤、塩素吸収剤や等の必要な安定剤、滑剤(前述のシリカ及び炭酸カルシウムとは異なるもの)、可塑剤、難燃化剤、着色剤等が含まれる。本実施形態に係る非晶性熱可塑性樹脂フィルムは、そのような添加剤を、本実施形態の非晶性熱可塑性樹脂フィルムに悪影響を与えない量で含むことができる。なお、本実施形態に係る非晶性熱可塑性樹脂フィルムは、シリコーン樹脂等の球状架橋高分子樹脂粒子は使用しないことが好ましい。
「酸化防止剤」は、本実施形態の非晶性熱可塑性樹脂フィルムを得ることができる限り、特に制限されることはない。酸化防止剤は、一般的に2種類の目的で使用される。一つの目的は、押出機内での熱劣化及び酸化劣化を抑制することであり、他の目的は、コンデンサフィルムとしての長期使用における劣化抑制及びコンデンサ性能向上に寄与することである。
「塩素吸収剤」は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されることはない。塩素吸収剤を使用すると、重合触媒等に由来して樹脂に微量含有される塩素を補足し、後述の金属蒸着膜の塩素化を抑制してコンデンサの性能を高めやすい。塩素吸収剤として、例えば、ステアリン酸カルシウムなどの金属石鹸等を例示できる。
「滑剤」は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されない。滑剤として、例えば、第一級アミド(ステアリン酸アミド等)、第二級アミド(N-ステアリルステアリン酸アミド等)、エチレンビスアミド(N,N'-エチレンビスステアリン酸アミド等)、ポリ
エチレンワックス等の各種ワックス類等を例示できる。なお、本実施形態に係る非晶性熱可塑性樹脂フィルムにおいては、シリカ及び炭酸カルシウムが滑剤としても機能するため、シリカ及び炭酸カルシウムと異なる滑剤は実質的に含まない(例えば、滑剤に占めるシリカ及び炭酸カルシウムの割合が、99質量%以上である)ことが好ましい。
「可塑剤」は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されない。可塑剤として、例えば、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)等を例示できる。
「難燃化剤」は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されない。難燃化剤として、例えば、ハロゲン化合物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、リン酸塩、ボレート、アンチモン酸化物等を例示できる。
「着色剤」は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されない。着色剤として、例えば、二酸化チタン、カーボンブラック、タルク、クロム化合物、硫化亜鉛等の無機着色剤や、アゾ系、キナクリドン系、フタロシアニン系等の有機着色剤が例示できる。
本実施形態の非晶性熱可塑性樹脂フィルムは、厚みが9.5μm以下と薄く、高温下において高い絶縁破壊強さを有することから、高温環境で使用され、小型、さらには、高容量(例えば、5μF以上、好ましくは10μF以上、さらに好ましくは20μF以上)のコンデンサに極めて好適に使用することができる。
本実施形態の非晶性熱可塑性樹脂フィルムは、ガラス転移温度(Tg)が170℃以上230℃以下であり、かつ、主鎖にスルホニル基を含む非晶性熱可塑性樹脂と、平均粒子径が0.1μm以上1.5μm以下シリカ及び炭酸カルシウムからなる群より選択された少なくとも1種の粒子を0.1~1.5質量%の範囲で含む樹脂組成物を、厚みが9.5μmのフィルム状に成形することによって製造することができる。
ガラス転移温度(Tg)が170℃以上230℃以下であり、主鎖にスルホニル基を含む非晶性熱可塑性樹脂と、平均粒子径が0.1μm以上1.5μm以下の粒子の詳細については、それぞれ、前述の通りである。
また、樹脂組成物を、厚みが9.5μmのフィルム状に成形する方法としても、特に制限されず、公知のフィルム成形方法を採用することができる。例えば、押出機へ供給した樹脂組成物を、加熱により溶融状態とし、フィルターでろ過した後、Tダイを用いてフィルム状に押出し、所定の表面温度に設定したロールに接触固化させて成形する方法が挙げられる。フィルム状に成形した後、巻芯の周囲に巻き取ることにより、本実施形態の非晶性熱可塑性樹脂フィルムは、巻取体(フィルムロール)とすることができる。
樹脂組成物の組成は、複数の樹脂組成物の混合(樹脂混合)により調整することもできる。例えば、シリカ及び炭酸カルシウムからなる群より選択された少なくとも1種の粒子を配合した非晶性熱可塑性樹脂と、当該粒子を配合していない非晶性熱可塑性樹脂とを混合することによって、樹脂組成物中の当該粒子の含有率を、前記樹脂組成物を100質量%としたときの0.1~1.5質量%に調整することができる。
複数の樹脂組成物を混合する方法としては、特に制限はないが、複数の樹脂組成物のペレットを、ミキサー等を用いてドライブレンドする方法や、複数の樹脂組成物のペレットを、混練機に供給し、溶融混練してブレンド樹脂を得る方法などがあるが、いずれでも構わない。
ミキサーや混練機にも特に制限は無く、また、混練機も、1軸スクリュータイプ、2軸スクリュータイプあるいは、それ以上の多軸スクリュータイプの何れでも良く、さらに、2軸以上のスクリュータイプの場合、同方向回転、異方向回転のどちらの混練タイプでも構わない。
溶融混練によるブレンドの場合は、良好な混練さえ得られれば、混練温度にも特に制限はないが、一般的には、230~400℃、好ましくは、310~380℃、より好ましくは320~370℃の範囲である。樹脂の混練混合の際の劣化を抑制するため、混練機に窒素などの不活性ガスをパージしても構わない。
樹脂組成物を溶融状態としてフィルム状に成形する際の押出温度や、冷却ロールの表面温度は、非晶性熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)などに応じて適宜調整する。押出温度としては、例えば230~400℃、好ましくは310~380℃、より好ましくは320~370℃程度が挙げられる。また、冷却ロールの表面温度としては、例えば80~230℃、好ましくは120~190℃、より好ましくは130~180℃程度が挙げられる。
溶融状態の樹脂組成物を冷却ロールに接触固化させる際の密着方法は、エアナイフ、静電ピンニング、弾性体ロールニップ、金属ロールニップ、弾性金属ロールニップ等、公知の方法が使用可能である。
本実施形態の非晶性熱可塑性樹脂フィルムを延伸フィルムとする場合には、前記の樹脂組成物をフィルム状に成形した後、さらにフィルムを延伸する。延伸倍率としては、特に制限されず、MD方向については1.1~4.0倍程度、TD方向については1.1~4.0倍程度が挙げられる。なお、前述の通り、延伸フィルムは1軸延伸フィルムとしてもよいし、2軸延伸フィルムとしてもよい。
延伸時の温度は、非晶性熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)などに応じて適宜調整する。延伸温度としては、例えば100~270℃程度が挙げられる。
延伸後の厚み精度を良くする観点から、Tg+2℃~Tg+70℃の範囲、または、Tg-90℃~Tg-2℃の範囲が好ましく、Tg+5℃~Tg+65℃の範囲、または、Tg-80℃~Tg-5℃の範囲がより好ましい。すなわち、延伸時の好ましい温度としては、ガラス転移温度よりも高い温度範囲の場合と、ガラス転移温度よりも低い温度範囲の場合がある。
延伸後のフィルムには、残留応力の緩和や熱収縮率の調整等を目的にアニール処理を行ってよく、その温度は、Tg-1℃~Tg-60℃の範囲が好ましく、Tg-3℃~Tg-50℃の範囲がより好ましい。アニール処理に加えて、延伸倍率を下げる緩和処理を行っても良い。
2.コンデンサ用金属化フィルム
本実施形態に係るコンデンサ用金属化フィルムは、本実施形態に係る非晶性熱可塑性樹脂フィルムの片面又は両面に金属膜を有する。
本実施形態の非晶性熱可塑性樹脂フィルムは、コンデンサとして加工するために片面又は両面に電極としての金属膜を付けることができる。そのような電極は、本発明が目的とするコンデンサを得ることができる限り特に限定されることは無く、通常コンデンサを製造するために使用される電極を用いることができる。
コンデンサには、小型及び軽量化が一層要求されるので、本実施形態の樹脂フィルムの片面もしくは両面に直接電極を形成(金属化)して金属化フィルムとすることが好ましい。
本実施形態の樹脂フィルムの表面を金属化する方法として、例えば、金属蒸着、スパッタリング等の真空めっき、または金属含有ペーストの塗工・乾燥、金属箔や金属粉の圧着等の方法で、金属層(電極)を設ける。なかでも、コンデンサの小型及び軽量化の一層の要求に答えるには、真空蒸着法及びスパッタリング法が好ましく、生産性及び経済性などの観点から、真空蒸着法が好ましい。真空蒸着法として、一般的にるつぼ方式やワイヤー方式などを例示することができるが、本発明が目的とするコンデンサを得ることができる限り特に限定されることはなく、適宜最適なものを選択することができる。
電極に用いられる金属は、例えば、亜鉛、鉛、銀、クロム、アルミニウム、銅、及びニッケルなどの金属単体、それらの複数種の混合物、及びそれらの合金などを使用することができるが、環境、経済性及びコンデンサ性能などを考慮すると、亜鉛及びアルミニウムが、好ましい。
金属蒸着膜の膜抵抗は、コンデンサの電気特性の点から、1~100Ω/□程度が好ましい。この範囲内でも高めであることがセルフヒーリング(自己修復)特性の点から望ましく、膜抵抗は5Ω/□以上であることがより好ましく、10Ω/□以上であることが更に好ましい。また、コンデンサとしての安全性の点から、膜抵抗は50Ω/□以下であることがより好ましく、30Ω/□以下であることが更に好ましい。真空蒸着法にて電極(金属蒸着膜)を形成する際、その膜抵抗は、例えば当業者に既知の四端子法によって金属蒸着中に測定することができる。金属蒸着膜の膜抵抗は、例えば蒸発源の出力を調整して蒸発量を調整することによって調節することができる。
本実施形態の非晶性熱可塑性樹脂フィルムの片面に金属蒸着膜を形成する際、フィルムを巻回した際にコンデンサとなるよう、フィルムの片方の端部から一定幅は蒸着せずに絶縁マージンが形成される。さらに、コンデンサ用金属化フィルムとメタリコン電極との接合を強固にするため、絶縁マージンと逆の端部に、ヘビーエッジ構造を形成することが好ましく、ヘビーエッジの膜抵抗は通常1~8Ω/□程度であり、1~5Ω/□程度であることが好ましい。ヘビーエッジの金属膜の厚さは特に限定されないが、1~200nmが好ましい。
形成する金属蒸着膜の蒸着パターン(マージンパターン)には特に制限はないが、コンデンサの保安性等の特性を向上させる点からは、フィッシュネットパターン、Tマージンパターン等のいわゆる特殊マージンを含むパターンとしてヒューズを形成することが好ましい。特殊マージンを含む蒸着パターンで金属蒸着膜を本実施形態の非晶性熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片面に形成すると、得られるコンデンサの保安性が向上し、コンデンサの破壊、ショートの抑制等の点からも効果的であり、好ましい。
マージンを形成する方法としては、蒸着時にテープによりマスキングを施すテープ法、オイルの塗布によりマスキングを施すオイル法等、公知の方法を何ら制限なく使用することができる。
本実施形態の金属化フィルム上には、金属蒸着膜の物理的保護、吸湿防止、酸化防止等を目的に保護層を設けても良い。保護層としては、好ましくはシリコーンオイルやフッ素オイル等が使用できる。
本実施形態の金属化フィルムは、後述の本実施形態のコンデンサに加工され得る。
3.コンデンサ
本実施形態に係るコンデンサは、本実施形態の非晶性熱可塑性樹脂フィルムおよび/又は金属化フィルムを含む。
このようなコンデンサにおいては、本発明のフィルムはコンデンサ用誘電体フィルムとして、例えば、(i)前述の金属化フィルムを使用する方法、(ii)電極を設けない本発明のフィルムと、他の導電体(例えば、金属箔、片面もしくは両面を金属化した本発明のフィルム、片面もしくは両面を金属化した紙及び他のプラスチックフィルム等)を積層すること、等の方法でコンデンサを構成できる。
コンデンサを作製する工程では、フィルムの巻き付け加工が行われる。例えば、本実施形態の金属化フィルムにおける金属膜と、本実施形態の非晶性熱可塑性樹脂フィルムとが交互に積層されるように、更には、絶縁マージン部が逆サイドとなるように、2枚1対の本実施形態の金属化フィルムを重ね合わせて巻回する。この際、2枚1対の本実施形態の金属化フィルムを1~2mmずらして積層することが好ましい。あるいは、金属化されていない非晶性熱可塑性樹脂フィルムと、金属箔または他の金属化フィルム等の他の導電体を積層してもよい。用いる巻回機は特に制限されず、例えば、株式会社皆藤製作所製の自動巻取機3KAW-N2型等を利用することができる。フィルムの巻き付け加工は上記方法に限定されず、他の方法、例えば、両面蒸着した本実施形態のフィルム(その場合、ヘビーエッジは表面、裏面で反対側の端部に配置されるようにする)と、未蒸着の本実施形態のフィルム(両面蒸着した本実施形態のフィルムより2~3mm狭幅とする)を交互に積層して巻回しても良い。
扁平型コンデンサを作製する場合、巻回後、通常、得られた巻回物に対してプレスが施される。プレスによってコンデンサの巻締まり・素子成形を促す。層間ギャップの制御・安定化を施す点から、与える圧力は、本実施形態の非晶性熱可塑性樹脂フィルムの厚み等によってその最適値は変わるが、例えば2~20kg/cm2である。
続いて、巻回物の両端面に金属を溶射してメタリコン電極を設けることによって、コンデンサを作製する。
コンデンサに対して、更に所定の熱処理が施される。すなわち、本実施形態では、コンデンサに対し、非晶性熱可塑性樹脂のTgを超えない範囲で、80~190℃の温度で1時間以上、大気化あるいは真空下にて熱処理を施す工程(以下、「熱エージング」と称することがある)を含む。
コンデンサに対して熱処理を施す上記工程において、熱処理の温度は、非晶性熱可塑性樹脂のTgよりも10℃~100℃低い範囲が好ましく、15℃~80℃低い範囲がより好ましい。上記の温度で熱処理を施すことによって熱エージングの効果が得られる。具体的には、本実施形態の金属化フィルムに基づくコンデンサを構成するフィルム間の空隙が減少し、コロナ放電が抑制される。あるいは、非晶性熱可塑性樹脂フィルムが持つ歪み(内部応力)が解消される。その結果、耐電圧性が向上するものと考えられる。熱処理の温度が所定温度より低い場合には、熱エージングによる上記効果が十分に得られない。一方、熱処理の温度が所定温度より高い場合には、非晶性熱可塑性樹脂フィルムに熱分解や酸化劣化等が生じることがある。
コンデンサに対して熱処理を施す方法としては、例えば、真空雰囲気下で、恒温槽を用いる方法や高周波誘導加熱を用いる方法等を含む公知の方法から適宜選択してもよい。具体的には、恒温槽を用いる方法を採用することが好ましい。
熱処理を施す時間は、機械的及び熱的な安定を得る点で、1時間以上とすることが好ましく、10時間以上とすることがより好ましいが、熱シワや型付等の成形不良を防止する点で、72時間以下とすることがより好ましい。
熱エージングを施したコンデンサのメタリコン電極には、通常、リード線が
接合される。接合方法は特に限定されないが、例えば溶接、超音波溶着およびハンダ付けによって行うことができる。また、耐候性を付与し、とりわけ湿度劣化を防止するため、コンデンサをケースに封入してエポキシ樹脂でポッティングすることが好ましい。
前述の通り、本実施形態の非晶性熱可塑性樹脂フィルムは、厚みが9.5μm以下と薄く、高温下において高い絶縁破壊強さを有することから、高温環境で使用され、小型、さらには、高容量(例えば、5μF以上、好ましくは10μF以上、さらに好ましくは20μF以上)コンデンサに極めて好適に使用することができる。すなわち、本実施形態の非晶性熱可塑性樹脂フィルムを利用した、本実施形態のコンデンサは、高温環境で好適に使用され、小型、さらには、高容量のコンデンサとすることができる。従って、本実施形態のコンデンサは、電子機器、電気機器などに使用されている、高電圧コンデンサ、各種スイッチング電源、コンバータ及びインバータ等のフィルタ用コンデンサ及び平滑用コンデンサ等として利用することができる。また、本実施形態のコンデンサは、近年需要が高まっている電気自動車及びハイブリッド自動車等の駆動モーターを制御するインバータ電源機器用コンデンサとしても好適に利用することができる。
以下に実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。但し、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、特記しない限り、部及び%はそれぞれ「質量部」及び「質量%」を示す。
〔測定方法及び評価方法〕
実施例及び比較例における、各種測定方法及び評価方法は、次のとおりである。
(1)ガラス転移温度(Tg)
パーキン・エルマー社製入力補償型DSC、DiamondDSCを用い、以下の手順により算出した。各樹脂を5mg量り取り、アルミニウム製のサンプルホルダーに詰め、DSC装置にセットした。窒素流下、30℃から300℃まで20℃/分の速度で昇温し、300℃で5分間保持し、20℃/分で30℃まで冷却し、30℃で5分間保持した。その後再び20℃/分で300℃まで昇温する際のDSC曲線より、ガラス転移温度を求めた。JIS K7121:1987の9.3(1)に定める中間点ガラス転移温度をガラス転移温度とした。
(2)フィルム厚み
外側マイクロメータ(株式会社ミツトヨ製 高精度デジマチックマイクロメータ MDH-25MB)を用いて、JIS K 7130:1999 A法に準拠して測定した。
(3)絶縁破壊強さ
(125℃環境での絶縁破壊強さ)
JIS C2151:2006の17.2.2(平板電極法)に準じた測定装置を用意する。ただし下部電極として、JIS C2151:2006の17.2.2に記載の弾性体の替わりに導電ゴム(星和電機株式会社製E12S10)を電極として用い、アルミ箔の巻き付けは行わないものとする。測定環境は設定温度125℃の強制循環式オーブン内とし、電極およびフィルムは同オーブン内で30分調温した後に使用する。電圧上昇は0Vから開始して100V/秒の速度とし、電流値が5mAを超えた時を破壊時とする。絶縁破壊電圧測定回数は20回とし、絶縁破壊電圧値VDCを、フィルムの厚み(μm)で割り、その20回の計算結果中の上位2点および下位2点を除いた16点の平均値を、絶縁破壊強さ(VDC/μm)とする。
(140℃環境での絶縁破壊強さ)
測定環境を設定温度140℃の強制循環式オーブン内としたこと以外は、125℃環境での絶縁破壊強さと同様にして実施、算出する。
(23℃環境での絶縁破壊強さ)
125℃と同様の測定を、設定温度125℃の強制循環式オーブン内ではなく、23℃、相対湿度50%の環境下にて実施して算出する。
なお、後述する比較例4の非晶性熱可塑性樹脂フィルムは厚みが厚かったため、各温度における絶縁破壊強さが、いずれも測定限界以上であったため、表1において、測定結果を「-」と表記した。
(4)スリット加工適性
幅350mm以上の巻取を、幅30mm、長さ500mになるように、スリット速度50m/分でスリット加工を行い、両側の耳を除いて幅方向10個の小巻取に分割した。小巻取につき、端面のズレとシワの状態を確認し、端面のズレが2mm以上有るか、あるいは、巻き戻して確認した時に折れ跡が消えないレベルのシワ入りが有る(ただし巻芯から100m以内のものは除く)ものをNG小巻取とした。得られた10個のうち、NG小巻取の個数によって、下記の基準によってスリット加工適性を評価した。
<基準>
◎:NG小巻取が0個であり、スリット加工適性が非常に高い
〇:NG小巻取が1~5個であり、スリット加工適性が高い
△:NG小巻取が6~8個であり、スリット加工適性が低い
×:NG小巻取が9~10個であり、スリット加工適性が非常に低い
(5)連続製膜性
各実施例に記載の条件にて製膜し、破断無く製膜可能な製膜長より、下記の基準によって連続製膜性を評価した。
◎:製膜長が1000m以上であり、連続製膜性が非常に高い
〇:製膜長が500m以上1000m未満であり、連続製膜性が高い
△:製膜長が250m以上500m未満であり、連続製膜性がやや低い
×:製膜長が250m未満であり、連続製膜性が低い
(6)ロール径
円柱形状の巻芯(円径断面の直径が12mm)に、各実施例・比較例にて得られたフィルムを2枚重ねで長さ30m分を捲回(2枚重ねているため合計長さ60m分を使用)し、ロール状にした。そのロールの両方の側面の直径(真円でない場合は最長径)を測定し、その測定値を平均した値をロール径とした。ロール径が小さいほど、フィルムコンデンサとした際に、より小型で、同程度の比誘電率を持つ誘電体フィルムを使用したものとしては静電容量の大きい(すなわち、単位体積当たりの静電容量が大きい)コンデンサが作製可能であるため好ましい。
ロール直径30mm未満:小型コンデンサ用として好適である。
ロール直径30mm以上:小型コンデンサ用としては不適である。
(7)(平均粒子径)
平均粒子径は、フィルムの表面を、超高分解能電界放出型走査電子顕微鏡装置((FE
-SEM) 日立ハイテクノロジーズ製S-5200)を用い、片面から10点(両面併せて20点)の粒子を倍率2万倍、加速電圧8kV、ビーム電流10μA、検出器は反射電子検出器を使用して観察し、観察画像を取得する。その観察画像から画像解析ソフトを用いてその最長径を測定し、その測定値を平均した平均粒子径を求める。なお本方法では、フィルム表面から約3μm以上深い位置の粒子は、ぼやけてしまうので測定できない。しかしこのような深い位置にある粒子は滑剤として機能しないため、本実施形態においては測定の対象とはしない。
[実施例1]
[マスターバッチの作製]
非晶性熱可塑性樹脂として、市販のポリスルホン(PSU)樹脂〔BASFジャパン(株)製:商品名ウルトラゾーン(登録商標)S6010、ガラス転移温度187℃〕と、平均粒子径1.0μmのシリカ球状微粒子〔(株)日本触媒製:商品名シーホスター(登録商標)KE-P100〕とを(樹脂):(微粒子)=90:10の質量比で計量し混合したドライブレンド体を押出機へ供給し、樹脂温度330℃で溶融した後、ストランドダイを用いて押出した。ストランドを冷却した後ペレット状にカットし、マスターバッチを作製した。
[未延伸フィルムの作製]
ポリスルホン(PSU)樹脂〔BASFジャパン(株)製:商品名ウルトラゾーン(登録商標)S6010、ガラス転移温度187℃〕とマスターバッチとを(樹脂):(マスターバッチ)=95:5の質量比で計量し混合したドライブレンド体(ドライブレンド体中のシリカ球状微粒子の含有率は0.5質量%)を押出機へ供給し、樹脂温度330℃で溶融した後、目開き5μmのフィルターを通し、Tダイを用いて押出し、表面温度を140℃に保持した鏡面金属ロール(冷却ロール)に静電ピンニングにて接触固化させてフィルム状に成形し、巻き取った。このとき、厚みが8.0μmとなるよう、押出量と引取速度を調整して、非晶性熱可塑性樹脂フィルムを得た。ポリスルホン(PSU)樹脂〔BASFジャパン(株)製:商品名ウルトラゾーン(登録商標)S6010〕について、ISO 1133の規定に準拠し、温度360℃、荷重10kgの条件で測定されたMVR(Melt volume-flow rate)は、30cm3/10分であった。
[実施例2]
実施例1のマスターバッチの作製において、平均粒子径1.0μmのシリカ球状微粒子の代わりに、平均粒子径0.5μmのシリカ球状微粒子〔(株)日本触媒製:商品名シーホスター(登録商標)KE-P50〕を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、非晶性熱可塑性樹脂フィルムを得た。
[実施例3]
実施例1の未延伸フィルムの作製において、ポリスルホンとマスターバッチとのドライブレンド体中のシリカ球状微粒子の含有率が0.25質量%となるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして、非晶性熱可塑性樹脂フィルムを得た。
[実施例4]
実施例1の未延伸フィルムの作製において、ポリスルホンとマスターバッチとのドライブレンド体中のシリカ球状微粒子の含有率が0.12質量%となるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして、非晶性熱可塑性樹脂フィルムを得た。
[実施例5]
実施例1の未延伸フィルムの作製において、ポリスルホンとマスターバッチとのドライブレンド体中のシリカ球状微粒子の含有率が1.40質量%となるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして、非晶性熱可塑性樹脂フィルムを得た。
[実施例6]
[一軸延伸フィルムの作製]
実施例1と同様に作製した未延伸フィルムを縦延伸機に導入し、MD方向に1.5倍延伸した。その後フィルムをクリップで保持し、220℃オーブンで10秒間熱処理を行った。厚み5.3μmの一軸延伸フィルムを巻き取った。延伸時のフィルム温度は200℃とした。
[実施例7]
[二軸延伸フィルムの作製]
実施例6と同様に作製した一軸延伸フィルムをテンターに導入し、温度245℃のオーブン内にて、TD方向に1.5倍延伸した。その後フィルムをクリップで保持したまま220℃オーブンで10秒間熱処理を行った。厚み3.6μmの二軸延伸フィルムを巻き取った。
[実施例8]
実施例1のマスターバッチ及び未延伸フィルムの作製において、それぞれ、ポリスルホンの代わりに、ポリエーテルスルホン(PES)〔BASFジャパン(株)製:商品名ウルトラゾーン(登録商標)E2010、ガラス転移温度225℃〕を用いたこと、マスターバッチの作製において、平均粒子径1.0μmのシリカ球状微粒子の代わりに、平均粒子径0.1μmのシリカ球状微粒子〔信越化学工業(株)製:商品名信越シリコーン(登録商標):OSG-100〕を用いたこと、及び、マスターバッチ及び未延伸フィルムの作製において、樹脂温度360℃で溶融したこと、未延伸フィルムの作製において鏡面金属ロールの表面温度を170℃に保持したこと以外は、実施例1と同様にして、非晶性熱可塑性樹脂フィルムを得た。
[実施例9]
実施例1のマスターバッチ及び未延伸フィルムの作製において、それぞれ、ポリスルホンの代わりに、ポリフェニルスルホン(PPSU)〔BASFジャパン(株)製:商品名ウルトラゾーン(登録商標)P3010、ガラス転移温度220℃〕を用いたこと、マスターバッチの作製において、平均粒子径1.0μmのシリカ球状微粒子の代わりに、平均粒子径0.1μmのシリカ球状微粒子〔信越化学工業(株)製:商品名信越シリコーン(登録商標):OSG-100〕を用いたこと、及び、マスターバッチ及び未延伸フィルムの作製において、樹脂温度360℃で溶融したこと、未延伸フィルムの作製において鏡面金属ロールの表面温度を160℃に保持したこと以外は、実施例1と同様にして、非晶性熱可塑性樹脂フィルムを得た。
[実施例10]
[一軸延伸フィルムの作製]
延伸時のフィルム温度を120℃とした以外は、実施例6と同様にして、厚み5.3μmの一軸延伸フィルムを巻き取り、非晶性熱可塑性樹脂フィルムを得た。
[実施例11]
[二軸延伸フィルムの作製]
実施例10と同様に作製した一軸延伸フィルムをテンターに導入し、温度245℃のオーブン内にて、TD方向に1.5倍延伸した。その後フィルムをクリップで保持したまま220℃オーブンで10秒間熱処理を行った。厚み3.6μmの二軸延伸フィルムを巻き取った。
[実施例12]
実施例11のマスターバッチ及び未延伸フィルムの作製において、それぞれ、ポリスルホンとして〔BASFジャパン(株)製:商品名ウルトラゾーン(登録商標)S6010〕の代わりに、中粘度のポリスルホンである〔BASFジャパン(株)製:商品名ウルトラゾーン(登録商標)S3010、ガラス転移温度187℃〕を用いたこと以外は、実施例11と同様にして、非晶性熱可塑性樹脂フィルムを得た。中粘度のポリスルホンである〔BASFジャパン(株)製:商品名ウルトラゾーン(登録商標)S3010〕について、ISO 1133の規定に準拠し、温度360℃、荷重10kgの条件で測定されたMVR(Melt volume-flow rate)は、40cm3/10分であった。
[比較例1]
実施例1のマスターバッチの作製において、シリカ球状微粒子を配合しなかった(すなわち、非晶性熱可塑性樹脂フィルムのシリカ球状微粒子の含有率が0.00質量%)こと以外は、実施例1と同様にして、非晶性熱可塑性樹脂フィルムを得た。
[比較例2]
実施例1の未延伸フィルムの作製において、ポリスルホンとマスターバッチとのドライブレンド体中のシリカ球状微粒子の含有率が2.00質量%となるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして、非晶性熱可塑性樹脂フィルムを得た。
[比較例3]
実施例8の未延伸フィルムの作製において、ポリエーテルスルホンとマスターバッチとのドライブレンド体中のシリカ球状微粒子の含有率が30.00質量%となるようにしたこと、及び未延伸フィルムの作製において、厚みが5.0μmとなるよう、押出量と引取速度を調整したこと以外は、以外は、実施例8と同様にして、非晶性熱可塑性樹脂フィルムを得た。
[比較例4]
実施例9の未延伸フィルムの作製において、ポリフェニルスルホンとマスターバッチとのドライブレンド体中のシリカ球状微粒子の含有率が1.00質量%となるようにしたこと、及び未延伸フィルムの作製において、厚みが55.0μmとなるよう、押出量と引取速度を調整したこと以外は、実施例9と同様にして、非晶性熱可塑性樹脂フィルムを得た。
[比較例5]
実施例9のマスターバッチの作製において、平均粒子径0.1μmのシリカ球状微粒子の代わりに、平均粒子径2.0μmのシリカ球状微粒子〔水澤化学工業(株)製:商品名シルトン(登録商標)JC-20〕を用いたこと以外は、実施例9と同様にして、非晶性熱可塑性樹脂フィルムを得た。
[比較例6]
実施例1のマスターバッチ及び未延伸フィルムの作製において、それぞれ、ポリスルホンの代わりに、ポリフェニレンサルファイド(PPS)〔DIC(株)製:商品名PPSMA520、ガラス転移温度88℃〕を用いたこと、マスターバッチ及び未延伸フィルムの作製において、樹脂温度310℃で溶融したこと、以外は、実施例1と同様にして、未延伸フィルムを得た。得られた未延伸フィルムを縦延伸機に導入し、MD方向に3.0倍延伸して一軸延伸フィルムを得た。延伸時のフィルム温度は100℃とした。次いで一軸延伸フィルムをテンターに導入し、温度100℃のオーブン内にて、TD方向に3.2倍延伸し、ついで温度220℃のオーブン内で熱処理を行い、厚み3.6μmの二軸延伸フィルムを巻き取り、結晶性熱可塑性樹脂フィルムを得た。
[比較例7]
実施例1のマスターバッチ及び未延伸フィルムの作製において、それぞれ、ポリスルホンの代わりに、ポリイミド(PI)〔三井化学(株)製:商品名オーラム(登録商標)PL500A、ガラス転移温度250℃〕を用いたこと、マスターバッチ及び未延伸フィルムの作製において、樹脂温度400℃で溶融したこと、及び、鏡面金属ロールの表面温度を220℃に保持したこと以外は、実施例1と同様にして、厚み10.0μmの結晶性熱可塑性樹脂フィルムを得た。
[比較例8]
比較例1のマスターバッチ及び未延伸フィルムの作製において、それぞれ、ポリスルホンの代わりに、ポリエーテルイミド(PEI)〔SABICジャパン合同会社製:商品名ULTEM(登録商標)、ガラス転移温度215℃〕を用いたこと、マスターバッチ及び未延伸フィルムの作製において、樹脂温度360℃で溶融したこと、及び、鏡面金属ロールの表面温度を170℃に保持したこと以外は、比較例1と同様にして、非晶性熱可塑性樹脂フィルムを得た。
[実施例1~9及び比較例1~8の追加説明]
実施例1~8及び比較例1~8のフィルムは、いずれも単層で構成されている。また、実施例1~7及び比較例1~2のフィルムを構成する樹脂(ベース樹脂ともいう)はPSUであり、実施例8及び比較例3のフィルムを構成する樹脂はPESであり、実施例9及び比較例4~5のフィルムを構成する樹脂はPPSUであり、比較例6のフィルムを構成する樹脂はPPSであり、比較例7のフィルムを構成する樹脂はPIであり、比較例8のフィルムを構成する樹脂はPEIである。
Figure 0007419785000002
実施例1~12の非晶性熱可塑性樹脂フィルムは、ガラス転移温度(Tg)が170℃以上230℃以下であり、主鎖にスルホニル基を含む非晶性熱可塑性樹脂と、シリカ及び炭酸カルシウムからなる群より選択された少なくとも1種の粒子を含んでおり、当該粒子の平均粒子径が0.1μm以上1.5μm以下であり、当該粒子の含有率が0.1質量%以上1.5質量%以下であり、厚みが9.5μm以下である。実施例1~12の非晶性熱可塑性樹脂フィルムは、高温下において高い絶縁破壊強さを有し、厚みが薄いため巻回時のロール径が小さく、さらに、スリット加工適性に優れることが分かる。

Claims (7)

  1. ガラス転移温度(Tg)が170℃以上230℃以下であり、主鎖にスルホニル基を含む非晶性熱可塑性樹脂と、シリカ及び炭酸カルシウムからなる群より選択された少なくとも1種の粒子と、を含む非晶性熱可塑性樹脂フィルムであって、
    前記粒子の平均粒子径が、0.1μm以上1.5μm以下であり、
    前記粒子の含有率が0.1質量%以上1.5質量%以下であり、
    厚みが9.5μm以下であり、
    前記非晶性熱可塑性樹脂の含有率は、85質量%超であり、
    前記非晶性熱可塑性樹脂は、ポリスルホン(PSU)であり、
    コンデンサ用誘電体フィルムである、非晶性熱可塑性樹脂フィルム。
  2. 140℃環境での絶縁破壊強さが300VDC/μm以上である、請求項に記載の非晶性熱可塑性樹脂フィルム。
  3. 125℃環境での絶縁破壊強さが400VDC/μm以上である、請求項1又は2に記載の非晶性熱可塑性樹脂フィルム。
  4. 前記非晶性熱可塑性樹脂フィルムは、延伸フィルムにより構成されている、請求項1~のいずれか1項に記載の非晶性熱可塑性樹脂フィルム。
  5. 請求項1~のいずれか1項に記載の非晶性熱可塑性樹脂フィルムが捲回されてなるフィルムロール。
  6. 請求項1~のいずれか1項に記載の非晶性熱可塑性樹脂フィルムの片面又は両面に金属膜を有する、コンデンサ用金属化フィルム。
  7. 請求項1~に記載の非晶性熱可塑性樹脂フィルムを含む、コンデンサ。
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