以下、実施形態に係る荷役装置、および物品把持機構について、図1から図13を参照して説明する。荷役装置は、物品を荷役する装置であり、例えば物流センタなどで稼働する物流システムを構成する装置の一つである。物品は、宅配物、小包、郵便物等を含む荷物、各種の部品や製品など、荷役の対象となり得る有形物である。物品は、物品そのものの他、その物品を梱包や包装した状態の有形物を含む。物品の態様(形状、大きさ、重量、材質など)は、一律ではなく多種多様である場合を想定するが、一律であってもよい。物品には、その材質(梱包状態や包装状態を含む)として形態が自由に変形しない物品(以下、箱物という)と、形態が自由に変形する物品(以下、柔軟物という)の双方が含まれる。荷役には、荷下ろしや荷積みなどのような移動を伴う物品に対する各種の作業が含まれる。
箱物は、荷役作業中に自重により変形せず、一定の形態を保つ。例えば、各面が平坦の段ボールなどの梱包容器に収容された箱状の物である。梱包容器は、六面体に限らず、六面体の特定の角や辺が平面とされている多面体も含む。これに対し、柔軟物は、荷役作業中に自重により変形し、形態を変える。例えば、ビニールフィルムや包装紙などで包装された衣類や食品類のように比較的軽量な扁平の物であるが、これらに限定されない。
図1および図2には、本実施形態の荷役装置1を模式的に示す。図1は、荷役装置1を垂直方向の上方から模式的に示す図である。垂直方向は、水平面(一例として物流センタの建屋の床面)と直交する方向である。図2は、荷役装置1のブロック図である。
図1および図2に示すように、荷役装置1は、検出装置2と、物品移動装置3と、制御装置4とを備える。
検出装置2は、集積領域11から所望の領域(以下、移動先領域という)12への物品5の移動を制御するために必要な各種の検出を行い、検出結果(取得データ)を制御装置4に与える。集積領域は、例えば荷下ろしされた各種の物品が次工程に搬送される前に一時的に集積される領域である。集積領域の物品5は、整然と集積されていてもよいし、ばら積みされていてもよく、一つ一つ単体で載置されていてもよい。移動先領域は、例えば物品を仕分工程や組立工程などに搬送するための領域である。集積領域11および移動先領域12は、例えば物品5を収容する箱やケージ、ベルトコンベアやローラコンベア、台車などの搬送装置、仕分けや組み立てなどの作業台である。図1には、集積領域11として作業台、移動先領域12としてベルトコンベアのセルを適用した例を示す。
本実施形態において、検出装置2は、検出部21と解析部22を有する。
検出部21は、集積領域11における物品群5sの集積態様を検出する。物品群5sは、集積領域11に集積されている物品5の集合体であるが、集積されている物品5が一つのみである場合も含めて規定される。集積されている物品5が一つのみである場合には、例えば集積された物品5が当初から一つのみである場合のほか、複数の物品5が一つずつ集積領域11から移動先領域12に順次移動され、最終的に一つになっている(移動されていない物品5が一つだけ残っている)場合などが含まれる。
物品群5sの集積態様は、例えば集積された各物品5の位置、輪郭、大きさ、向き、姿勢、重なり、境界、材質などの態様である。これらの集積態様を検出するべく、本実施形態では、検出部21としてRGBカメラを適用している。RGBカメラは、集積領域11に集積された物品群5sのカラー画像を撮像する。したがって、RGBカメラは、集積領域11が画角内に収まり、ピントを合わせられる所定位置に配置されている。例えば、集積領域11を区画するフレームや物流センタの建屋の天井や壁面、あるいは物品移動装置3、後述する物品把持機構6のベース部61などの任意の位置に、RGBカメラは配置可能である。これにより、RGBカメラは、物品群5sの集積態様を色覚的に捉え、鮮明に物品群5sの集積態様を把握可能とされている。ただし、検出部21には、RGBカメラに代えてもしくは加えて、3Dカメラ、複数の2Dカメラ、分光カメラなどを適用してもよい。検出部21は、検出結果、一例としてRGBカメラが撮像した画像のデータを解析部22に付与する。
解析部22は、検出部21の検出結果(一例として画像データ)を解析し、物品群5sの集積態様を解析する。具体的には、物品群5sの集積態様を示す画像データを解析し、集積された各物品5の位置、輪郭、大きさ、向き、姿勢、重なり、境界、材質などをそれぞれ特定するための情報(解析データ)を出力する。
画像データの解析方法としては、例えばRGB各色の強さ、色相、彩度、明度などの値を閾値判定し、その境界線(エッジ)がなす形状に基づいて物品5の輪郭や境界を判定する手法などが適用可能である。物品群5sにおける物品5の切り分け(後述する選択物品の特定)手法としては、例えばエッジが閉曲線をなす場合、その閉曲線の内部を一つの物品5とする手法などが適用可能である。また、切り分けた物品5の形状、位置、姿勢の解析(判定)手法としては、閉曲線内の画像をデータベース(マスタデータ)内の物品データと照合する手法などが適用可能である。また、例えば検出部21として3Dカメラを適用した場合、取得した点群データを解析することで、物品群5sにおける物品5の切り分けと、切り分けた物品5の形状、位置、姿勢を判定することが可能である。
解析部22は、出力した解析データを制御装置4に付与する。制御装置4は、付与された物品群5sの集積態様の解析データに基づいて、物品群5sの中から把持する物品5を選択する(詳細は後述)。なお、解析部22は、検出装置2ではなく、制御装置4の構成要素の一つに含ませてもよい。
物品移動装置3は、荷役装置1において物品5を移動させる装置であり、集積領域11から物品5をピッキングし、移動先領域12に移動させる。図1に示すように、物品移動装置3は、基台部31と、アーム部32と、ツール(エンドエフェクタなどとも呼ばれる)33とを備え、アーム部32が基台部31に対して変位するいわゆるピッキングロボット(以下、ロボットアーム3という)である。ただし、物品移動装置3は、スカラロボット(水平多関節ロボット)やXYZステージなどとすることも可能であり、物品5の移動範囲に応じた可動範囲を有する物品移動装置3を適用すればよい。
基台部31は、例えば物流センタの建屋の床面に位置決め固定される。ただし、基台部31は、このように位置決め固定されることなく、床面に対して移動可能となっていてもよい。例えば、床面に敷設したガイドレールなどに沿って基台部31をスライド可能に支持する構成、リニアステージや自走台車に載置した構成などとしてもよい。これにより、ロボットアーム3を床面に対して必要に応じて移動させることが可能となる。
アーム部32は、基台部31との接続部位である基端から先端まで、複数の関節部で連結されて伸長している。アーム部32は、関節部によって複数に細分され、各部分が関節部において所定の軸まわりに回動する。これにより、アーム部32は、基台部31に対して所望の姿勢とされ、所定範囲内において自由に変位(動作)する。所定範囲(つまり、可動範囲)には、物品5の集積領域11および物品5の移動先である移動先領域12が含まれる。したがって、アーム部32の各部分を軸まわりに任意の角速度や角加速度で回動させることで、アーム部32を集積領域11および移動先領域12に対して変位させることが可能となる。なお、関節部および軸の数は、アーム部32に要求される動作精度や可動範囲などに応じて任意に設定すればよい。
ツール33は、アーム部32の先端(アーム先端部32a)に着脱自在に取り付けられており、物品5を解放可能に把持する物品把持機構6を備える。把持は、例えば吸着、挟持など、物品5の保持態様全般を包含する概念として規定される。本実施形態では一例として、ツール33は、エアによって物品5の吸着と解放を行う。これにより、ツール33は、集積領域11から物品5を物品把持機構6で吸着し、吸着した物品5を移動先領域12で解放することで、物品5を集積領域11から移動先領域12へ移動させることが可能とされている。
図3および図4には、物品把持機構6の概略的な構成を水平方向(一例として物流センタの建屋の床面と平行な方向)から示す。図3は、後述する初期状態における物品把持機構6の態様を概略的に示す図である。図4は、後述するリップ変形部7によってリップ62bを変形させた状態における物品把持機構6の態様を概略的に示す図である。
図2から図4に示すように、物品把持機構6は、ベース部61、吸着部62、真空発生器63、コンプレッサ64、電磁弁65、圧力センサ66、第1の配管67、第2の配管68、および継手69などを含んで構成される。これにより、ロボットアーム3は、集積領域11から物品5を物品把持機構6で把持(具体的には吸着部62で吸着)し、把持した物品5を移動先領域12で解放することで、物品5を集積領域11から移動先領域12へ移動させることが可能とされている。
ベース部61は、アーム先端部32aに取り付けられ、物品把持機構6の各構成部材を支持する。ベース部61の形態は、アーム部32の動作に支障がなければ特に限定されない。図3および図4には、ベース部61を一部に開放部分を有する箱体とした例を示すが、ベース部61は枠体などであってもよい。ベース部61は、物品把持機構6の各構成部材を支持可能な剛性を有する金属製であればよいが、必要な剛性を有していれば樹脂製などでも構わない。
吸着部(以下、吸着パッドという)62は、容易に変形可能な素材、例えばシリコーンやポリ塩化ビニルなどの低硬度のゴム素材で形成されている。一例として、吸着パッド62の剛性は、箱物よりも低く、柔軟物よりも高ければよいが、柔軟物より低くてもよい。吸着パッド62は、筒体62aとリップ62bを有し、リップ62bで物品5を吸着させて把持する。物品5が把持された状態では、筒体62aとリップ62bと物品5の被吸着面とにより外部から閉ざされる系(端的には吸着パッド62の内部)の内圧が低下した状態とされている。物品5の被吸着面は、吸着パッド62に物品5を吸着させる際、リップ62bが物品5に接触する面である。
筒体62aは、軸芯Aの伸長方向(以下、軸芯方向という)の一端(基端)621から他端(先端)622まで所定長さで連続して構成されている。本実施形態では一例として、筒体62aの一部は、形態が変化自在の変態部62cとなっている。ただし、筒体62aは、全体が変態部であってもよいし、変態部が省略されていてもよい。
変態部62cは、筒体62aの基端621側から先端622側へ向けて蛇腹構造をなしている。これにより、変態部62cは、軸芯方向に伸縮可能となるとともに、蛇腹の谷に沿って屈曲して変形可能となっている。変態部62cの蛇腹の山と谷の数は、特に限定されず、例えば物品5の態様(大きさ、形状、重量、材質(梱包状態や包装状態を含む)など)に応じて任意に設定される。また、変態部62cの形状は、先太り(末広がり)、直線状(ストレート状)、先細りなど、例えば物品5の態様に応じて最適な形状とされる。
リップ62bは、吸着パッド62の先端部分であり、変態部62cに連続して設けられている。リップ62bは、軸芯Aから筒体62aの外縁方向へ開口し、筒体62a(変態部62c)の先端622で面状に広がっている。図5には、先端側からみた吸着パッド62の構成を概略的に示す。図5に示すように、先端側からみたリップ62bの形状は、軸芯Aと同心の外円C1と内円C2とで規定される面状をなしている。リップ62bの中心部には、筒体62a(変態部62c)の筒内と連通する開口62dが軸芯方向に貫通している。
真空発生器63は、吸着パッド62の内部(変態部62cの筒内)を負圧もしくは大気開放(真空破壊)する。真空発生器63は、例えばエジェクタであり、圧縮空気が供給されることで真空を発生させる。これに代えて、真空発生器63は、真空ポンプや真空ブロアなどであってもよい。コンプレッサ64は、圧縮空気を真空発生器63に供給する。コンプレッサ64は、第1の配管67、電磁弁65を介して真空発生器63に接続されている。第1の配管67は、継手69で中継されてコンプレッサ64と電磁弁65とを接続している。継手69は、ベース部61の外部と内部との間で第1の配管67を中継する。真空発生器63は、第2の配管68を介して吸着パッド62に接続されている。第1の配管67および第2の配管68は、例えばゴム製のチューブ、樹脂製あるいは金属製の配管部材などである。これらの配管経路は特に限定されず、任意に配管可能である。
電磁弁65は、開閉することでコンプレッサ64から真空発生器63への圧縮空気の供給状態と供給停止状態とを切り換える。具体的には、電磁弁65が開いた状態では、コンプレッサ64から第1の配管67を介して真空発生器63に圧縮空気が供給される。これにより、真空発生器63が第2の配管68を介して吸着パッド62を真空引きし、第2の配管68および吸着パッド62の内部が負圧とされる。一方、電磁弁65が閉じた状態では、コンプレッサ64から真空発生器63への圧縮空気の供給が停止する。これにより、真空発生器63が吸着パッド62を真空破壊し、第2の配管68および吸着パッド62の内部が大気開放される。本実施形態では一例として、電磁弁65の開閉制御は、制御装置4が行う。なお、電磁弁65は、物品把持機構6ではなく、ロボットアーム3の配管構造の一部として構成されていてもよい。
圧力センサ66は、第2の配管68に接続され、吸着パッド62の内部の圧力(内圧)を測定し、測定値を出力する。吸着パッド62の内圧の測定値(内圧値)は、吸着パッド62で物品5を吸着する際、リップ62bが適切に物品5に密着しているか否かを示す指標となる。圧力センサ66が出力した内圧値は、制御装置4に与えられる。制御装置4は、付与された吸着パッド62の内圧値に基づいて、リップ62bが適切に物品5に密着しているか否かを判定する(詳細は後述)。
なお、圧力センサ66に代えてもしくは加えて、第2の配管68内の圧縮空気の流量を測定する流量センサを第2の配管68に接続してもよい。流量センサを用いることで、圧力センサ66と比べて測定の応答性を高めることができる。また、これらに代えてもしくは加えて、物品把持機構6は対象物までの距離を測定可能な光学センサを含んでいてもよい。例えば、吸着パッド62が物品5を吸着する方向(軸芯方向)へ向け、ベース部61に光学センサを配置し、かかる方向の物品5との離間距離を光学センサで測定してもよい。これにより、光学センサで測定された物品5との離間距離に基づいてリップ62bが適切に物品5に密着しているか否かの判定を補足できる。例えば、測定された離間距離が変態部62cが収縮しない通常形状の吸着パッド62の軸芯方向の長さ以下であれば、リップ62bが適切に物品5に密着していると判定可能である。また、真空発生器63、電磁弁65、圧力センサ66は、ベース部61に収容されていなくともよく、例えばベース部61の外側、ロボットアーム3の基台部31、ロボットアーム3を囲む防護柵などに配置されていてもよい。
上述した各構成部材に加え、物品把持機構6は、図2から図4に示すように、リップ62bを必要に応じて変形させるための動作機構として、リップ変形部7をさらに備える。
リップ変形部7は、リップ62bに外力を与えてリップ62bを変形させる。リップ変形部7の構成は特に限定されないが、本実施形態では一例として、押圧部材71と、連結部材72と、支持部材73と、駆動部材74とを有するリンク機構とされている。
押圧部材71は、ベース部61に対して変位してリップ62bを押圧し、変形させる。押圧部材71は、リップ62bを第1の状態に遷移させる第1の位置と、リップ62bを第2の状態に遷移させる第2の位置との間を変位する。
第1の状態はリップ62bに外力を与えてリップ62bを変形させる状態(図4に示す状態)であり、第2の状態はリップ62bに外力を与えずリップ62bを変形させない状態(図3に示す状態)である。本実施形態において、第1の状態ではリップ62bを押圧して変形させ、第2の状態ではリップ62bを押圧することなく、変形前の通常形状に戻す(換言すれば、通常形状のまま維持する)。すなわち、第1の位置は、押圧部材71がリップ62bを押圧する位置(以下、押圧位置という)に相当し、第2の位置は、押圧部材71がリップ62bを押圧せずにリップ62bから退避する位置(以下、退避位置という)に相当する。
押圧位置では、物品5に吸着した吸着パッド62の変態部62cが収縮した状態(以下、収縮状態という)となる。収縮状態は、物品5に吸着した吸着パッド62の変態部62cがそれ以上収縮できない状態であり、最も収縮した状態であるが、これとほぼ同程度まで収縮した状態も含む。押圧位置において、押圧部材71は、変態部62cが収縮状態となっている吸着パッド62のリップ62bを押圧する。これに対し、退避位置では、変態部62cが収縮状態もしくは最も伸長した状態(以下、伸長状態という)のいずれかとなっている。伸長状態は、吸着パッド62の内部が大気開放(真空破壊)されて、変態部62cが収縮せずに通常形状となっている状態である。退避位置において、押圧部材71は、変態部62cが収縮状態および伸長状態のいずれであってもリップ62bを押圧しない。ただし、リップ62bが物品5に吸着している状態(変態部62cの収縮状態)では、吸着した物品5の被吸着面に当接して、該物品5を支持する。被吸着面は、リップ62bに吸着される物品5上の面であり、後述する目標把持位置を有する面である。
図6には、押圧部材71の概略的な構成を水平方向(一例として物流センタの建屋の床面と平行な方向)から示す。図6に示すように、押圧部材71は、連結部材72で駆動部材74に連結され、支持部材73でベース部61に支持されている。図3、図4および図6に示す例では、押圧部材71は中途で屈曲した棒状の部材(以下、押圧バー71という)である。押圧バー71は、基端から先端まで、基部711、作用部712、当接部713が連続して構成されている。
基部711は、連結部材72との連結位置から支持部材73での支持位置まで連続している。基部711における連結部材72との連結位置には、後述する連結軸721が挿通される貫通孔714が形成されている。作用部712は、基部711に対して屈曲して支持部材73での支持位置から連続して伸びている。支持部材73での支持位置、つまり基部711と作用部712との連続位置には、支持部材73で支持される被支持体(以下、カムフォロアという)715が起立している。図3、図4および図6に示す例では、カムフォロア715は、基部711と作用部712との連続位置から円柱状に起立している。
基部711と作用部712との間の角度(図4に示す角度θ1。以下、屈曲角という)は、当接部713のリップ62bへの当接方向が軸芯Aに近づくように軸芯Aに対して傾く所定範囲に設定されている。すなわち、作用部712は、当接部713がリップ62bを押圧する方向が軸芯Aに近づく方向となるように支持位置(基部711との連続位置)から伸びている。これにより、当接部713がリップ62bに当接する角度(以下、当接角という)、つまり当接時の水平面(一例として、物流センタの建屋の床面)に対する当接部713の傾斜角度(図4に示す角度θ2)は、90°よりも小さくなる。換言すれば、屈曲角θ1と当接角θ2は、当接角θ2が鋭角となるようにそれぞれ設定されていればよい。
当接部713は、作用部712の先端(伸長端)に設けられ、リップ62bと当接する部分であり、リップ62bに当接してリップ62bを変形させる部分である。当接部713は、リップ62bに当接した際、リップ62bを変形させやすい形状および材質とされている。このため、当接部713は、リップ62bに対して線接触により近い接触状態となる形状であることが好ましい。ただし、面接触や点接触(鋸刃状の複数頂点や単一頂点)となる形状は、特段排除されない。本実施形態では一例として、当接部713は、図6に示すように先端部(リップ62bとの当接側の端部)が先細りした略台形柱状に構成されている。先端には、所定の曲率(0.3程度)を持たせればよい。また、当接部713は、当接時にリップ62bを破損させない程度にリップ62bよりも剛性の高い樹脂などで形成されていればよい。なお、基部711、作用部712およびカムフォロア715は、当接部713と同一の素材で形成されていてもよいし、異なる素材で形成されていてもよい。
当接部713は、リップ62bの径方向に長手の形態をなしており、軸芯Aに対して放射状にリップ62bと当接する。その当接長さ(図4に示すL71)は、リップ62bの幅(図5に示すW62)の範囲内で適切な寸法に設定される。当接部713の当接長さL71は、当接部713がリップ62bの径方向に沿ってリップ62bと当接する長さである。リップ62bの幅W62は、リップ62bの径方向の長さであり、リップ62bにおける軸芯Aと同心の外円C1と内円C2との径差である。一例として、当接部713の当接長さL71は、リップ62bの幅W62の半分程度の寸法とされている。リップ62bに当接した状態では、当接部713の当接長さL71方向の一端がリップ62bの外円C1とほぼ重なった状態となる。
このような形態とすることで、図4に示すように押圧バー71が第1の位置(押圧位置)に変位すると、当接部713は、リップ62bに当接してリップ62bを放射状に押圧する。その結果、リップ62bは、当接部713による押圧部位がそれ以外の部位よりも沈み込み、全体が周方向に波打つように変形する。これにより、例えば吸着パッド62が柔軟物に吸着した際、柔軟物を掴むような形状にリップ62bが変形するため、吸着姿勢を安定させることができる。また、リップ62bに加わる負荷がほぼ均等に分散されるため、リップ62bの耐久性の向上を図ることが可能となる。
一方、図3に示すように押圧バー71が第2の位置(退避位置)に変位すると、当接部713は、リップ62bを押圧することなく、リップ62bから離間する。その結果、リップ62bは、全体が波打つように変形した状態から変形前の通常形状に戻る(別の捉え方をすれば、通常形状を保つ)。また、退避位置では、当接部713は、リップ62bが吸着した物品5の被吸着面と接触部位がほぼ面一となって当接して物品5を支持する(後述する図11に示す状態)。
連結部材72は、連結軸721と、連結軸721を支持する軸受722を有している。連結軸721は、基部711の貫通孔714に挿通され、連結軸721まわりに回動可能に押圧バー71を軸受722に連結する軸体である。図3、図4および図6に示す例では、一本の連結軸721が二本の押圧バー71を軸受722に連結している。図7に示すように、連結される各押圧バー71には、基部711に相互に互い違いの段差を有する噛合部716が形成されている。図7は、押圧バー71の概略的な構成を垂直方向の上方から示す図である。これにより、二本の押圧バー71は、軸芯A上の点を対称点としてほぼ点対称に配置され、共通の連結軸721まわりにそれぞれ互いに逆回りに回動可能に連結される。したがって、これらの押圧バー71により、軸芯Aに対して点対称の位置でリップ62bをそれぞれ押圧して変形させることが可能となる。ただし、噛合部716は省略可能である。軸受722は、連結軸721を支持し、連結軸721を支持した状態で駆動部材74(具体的には後述するピストンロッド742)に取り付けられている。これにより、軸受722は、連結軸721とともに、駆動部材74によってベース部61に対して変位する(詳細は後述)。
支持部材73は、第1の位置(押圧位置)と第2の位置(退避位置)とに変位可能に、所定位置で押圧バー71をベース部61に支持する。所定位置は限定されないが、図3および図4に示す例では、基部711と作用部712との連続位置、換言すれば押圧バー71の屈曲位置である。支持部材73は、ベース部61に設けられた支持体731と、支持体731に形成されてカムフォロア715を移動させるガイド732を有している。
支持体731は、ベース部61に対する押圧バー71の支持位置を規定するために設けられている。ガイド732は、支持体731に形成された溝(以下、カム溝732という)であり、押圧バー71がリップ62bを押圧して変形させる際、ベース部61に対する押圧バー71の変位の起点と終点を規定する。一例として、起点は退避位置であり、終点は押圧位置であるが、逆でもよい。すなわち、カム溝732は、上述した第1の状態に対応する位置と第2の位置に対応する位置との間で押圧バー71を移動させる。
カム溝732は、押圧バー71の変位の起点から終点に至る直線状に伸びており、押圧バー71が変位する際にカムフォロア715を摺接させながら移動(摺動)させる。押圧バー71の変位の起点から終点に至るカム溝732の経路は、軸芯Aと交差する方向(図3および図4に示す例では軸芯Aに近づく方向)に沿って設けられている。図3および図4に示す例では、カム溝732は、伸長方向の両端733,734に曲線部を有する長円形(オーバル)の輪郭形状とされている。曲線部の曲率は、円柱状をなすカムフォロア715の柱回りの曲率とよりも僅かに小さい。曲線部同士を繋ぐ直線状の輪郭部の差渡し間隔は、円柱状をなすカムフォロア715の直径よりも僅かに大きい。
カム溝732の一端733は、ベース部61に対する押圧バー71の変位起点(退避位置)を規定する。図3には、押圧バー71が退避位置に位置した状態を示す。この状態では、カムフォロア715はカム溝732の一端733に接触する。これに対し、カム溝732の他端734は、ベース部61に対する押圧バー71の変位終点(押圧位置)を規定する。図4には、押圧バー71が押圧位置に位置付けられた状態を示す。この状態では、カムフォロア715はカム溝732の他端734に接触する。
駆動部材74は、押圧バー71、連結部材72、支持部材73に動力を与え、第1の位置(押圧位置)と第2の位置(退避位置)とに押圧バー71を変位させる。駆動部材74は、任意の構成とすることができるが、一例として直動アクチュエータである。図3、図4および図6に示す例では、エアシリンダを駆動部材74として適用している。エアの供給源としては、コンプレッサ64を真空発生器63と共用している。ただし、リップ変形部7は、真空発生器63とは別系統のエア供給源をエアシリンダ専用に備えていてもよい。また、駆動部材74は、油圧シリンダ、その他の直動アクチュエータ、例えば電磁ソレノイドなどの電気的な手段であってもよい。あるいは、DCモータなどの回転駆動手段から任意の機構で直動に変換する手段であってもよいし、当接部713の位置を円弧軌道で変位させる手段であってもよい。
駆動部材(以下、エアシリンダという)74は、シリンダ本体741と、シリンダ本体741に対して進退するピストンロッド742とを有している。シリンダ本体741は、シリンダ(気室)、ピストン、エア給排管など(いずれも図示省略)を備え、ピストンロッド742の進退方向が軸芯方向と一致するようにベース部61に支持されている。ピストンロッド742は、シリンダ本体741のシリンダに給排されたエアによって、シリンダ内を進退する。ピストンロッド742には、軸受722が取り付けられている。これにより、ピストンロッド742がシリンダ本体741に対して進退することで、軸受722が軸芯方向に進退(図3、図4および図6に示す例では上下動)する。その結果、リンク機構であるリップ変形部7(押圧バー71、連結部材72、支持部材73)が動作され、押圧バー71が退避位置と押圧位置の間を変位する。
図3に示す例では、ピストンロッド742がシリンダ本体741に対して初動位置に位置しており、この場合、押圧バー71が退避位置に位置付けられる。図4に示す例では、ピストンロッド742がシリンダ本体741に対して初動位置から終動位置まで上方へ移動する、換言すればピストンロッド742がシリンダ本体741に引き込まれることで、押圧バー71が押圧位置に位置付けられる。別の捉え方をすれば、ピストンロッド742がシリンダ本体741に対して終動位置から初動位置まで下方へ移動する、換言すればピストンロッド742がシリンダ本体741から押し出されることで、図3に示す例のように押圧バー71が退避位置に位置付けられる。例えばこれとは逆に、ピストンロッド742がシリンダ本体741に引き込まれることで押圧バー71が退避位置に位置付けられ、シリンダ本体741から押し出されることで押圧バー71が押圧位置に位置付けられる構成であってもよい。この場合、例えばカム溝732の他端734が押圧バー71の変位起点(退避位置)を規定し、一端733が押圧バー71の変位終点(押圧位置)を規定する構成であればよい。
本実施形態では、図8に示すように四本の押圧バー71、二つの連結軸721、一つの軸受722、四つの支持部材73が一つのエアシリンダ74によって動作されるリンク機構が構成されている。図8は、リップ変形部7の概略的な構成を垂直方向の上方から示す図である。かかるリンク機構において、押圧バー71aと押圧バー71cは、連結軸721aによって連結され、押圧バー71bと押圧バー71dは、連結軸721bによって連結されている。これらの押圧バー71a~71dは、軸受722を介してピストンロッド742に取り付けられている。ピストンロッド742に取り付けられた状態においては、押圧バー71aが支持部材73a、押圧バー71bが支持部材73b、押圧バー71cが支持部材73c、押圧バー71dが支持部材73dによって、それぞれベース部61に支持されている。四本の押圧バー71a~71dは、軸芯Aを中心とした周方向に90°間隔で配置されている。このように配置されることで、四本の押圧バー71a~71dは、軸芯Aを中心とした四方からベース部61に対してそれぞれ変位する。これにより、四本の押圧バー71a~71dによってリップ62bを四箇所で押圧し、変形させることが可能となる。その結果、リップ62bは、全体が周方向にほぼ均等に波打つように変形する。
図2に示すように、制御装置4は、検出装置2、ロボットアーム3、物品把持機構6の動作を制御し、荷役装置1の運転管理を行う。制御装置4は、CPU、メモリ、記憶装置(不揮発メモリ)、入出力回路、タイマなどを含み、所定の演算処理を実行する。例えば、制御装置4は、各種データを入出力回路により読み込み、記憶装置からメモリに読み出したプログラムを用いてCPUで演算処理し、処理結果に基づいて検出装置2、ロボットアーム3、物品把持機構6の動作制御を行う。制御装置4は、検出装置2、ロボットアーム3、および物品把持機構6と有線もしくは無線で接続され、動作制御にあたって、これらとの間で各種データや演算結果などを送受信している。
制御装置4は、計画部41と、制御部42とを有する。
計画部41は、検出装置2を動作制御して物品5の集積態様を検出させ、その検出結果の解析データを入出力回路により読み込むとともに、メモリから読み出したプログラムを用いてCPUで演算し、演算結果に基づいてロボットアーム3の動作計画を策定する。また、計画部41は、ロボットアーム3の動作計画に基づいて、物品把持機構6(真空発生器63、コンプレッサ64、電磁弁65、圧力センサ66、リップ変形部7(駆動部材74))の動作計画を策定する。計画部41は、策定したこれらの動作計画の情報(動作指令)を制御部42に付与する。
制御部42は、付与された動作指令に基づいて、ロボットアーム3、物品把持機構6の動作を制御する。具体的には、制御部42は、ロボットアーム3の動作指令に基づいてロボットアーム3を動作させ、物品5を集積領域11から移動先領域12に移動させる。また、制御部42は、物品把持機構6の動作指令に基づいて、真空発生器63、コンプレッサ64、電磁弁65、圧力センサ66を動作制御するとともに、圧力センサ66が測定した吸着パッド62の内圧値に応じてCPUで演算し、演算結果に基づいて吸着パッド62に物品5を把持(吸着)させる。併せて、制御部42は、物品把持機構6(リップ変形部7)の動作指令に基づいて、コンプレッサ64およびエアシリンダ74を動作制御するとともに、入出力回路から読み込んだ動作状況のデータに応じてCPUで演算し、リップ62bを押圧させるべく、演算結果に基づいてリップ変形部7(リンク機構)を動作させる。これらの動作制御にあたって、制御部42は、動作指令に基づいてメモリから所定のプログラムを読み出す。
なお、本実施形態では一例として、計画部41はロボットアーム3および物品把持機構6の動作計画を策定しているが、制御装置4はこれらの動作計画を個別に策定する複数の計画部を有していてもよい。また、制御部42は、ロボットアーム3および物品把持機構6の動作を制御しているが、制御装置4はこれらの動作を個別に制御する複数の制御部を有していてもよい。あるいは、計画部41の機能を果たす制御装置と、制御部42の機能を果たす制御装置とを物理的に分離させてもよい。
このような構成をなす荷役装置1の動作、具体的には物品5を集積領域11から移動先領域12に移動させる処理(以下、物品移動処理という)について、検出装置2、ロボットアーム3、および物品把持機構6に対する制御装置4の制御フローに従って説明する。図9には、物品移動処理における検出装置2、ロボットアーム3、および物品把持機構6に対する制御装置4の制御フローを示す。
物品移動処理を開始する場合、ロボットアーム3および物品把持機構6は、それぞれ初期状態とされている。ロボットアーム3の初期状態は、アーム部32が基準位置に位置付けられた状態である。基準位置は、例えば集積領域11および移動先領域12のいずれともアーム部32が干渉しない位置である。物品把持機構6の初期状態は、吸着パッド62の内部が大気開放(真空破壊)され、押圧バー71が退避位置に位置付けられた状態である。このため、初期状態では、電磁弁65が閉じているとともに、真空発生器63、コンプレッサ64、エアシリンダ74は、いずれも停止している。
物品5を集積領域11から移動先領域12に移動させるにあたって、制御装置4は、集積領域11における物品群5sの集積態様を検出装置2に検出させる(S101)。具体的には、計画部41に動作制御されて、検出部21(一例としてRGBカメラ)は、集積領域11における物品群5sの集積態様を示す画像を撮像する。検出部21は、検出結果(撮像した画像のデータ)を解析部22に付与する。撮像画像の枚数は任意であり、一枚であってもよいし、焦点距離や画角を適宜変更した複数枚であってもよい。
解析部22は、検出部21から付与された検出結果(画像データ)を解析する(S102)。解析により、解析部22は、集積領域11に集積された物品群5sの各物品5の位置、輪郭、大きさ、向き、姿勢、重なり、境界、材質などの態様をそれぞれ特定するための情報(解析データ)を出力し、計画部41に付与する。
計画部41は、付与された解析データに基づいて、物品存否条件を判定する(S103)。物品存否条件は、集積領域11に物品5が集積されているか否かを判定するための条件である。例えば、解析データとして、物品5の態様を具体的に示す何らかのデータが付与されている場合、計画部41は、集積領域11には少なくとも一つ以上の物品5が存在しており、物品存否条件が成立すると判定する。これに対し、解析データとして、物品5の態様を具体的に示す何らのデータも付与されていない場合、計画部41は、集積領域11には、物品5が存在しておらず、物品存否条件が成立しないと判定する。この場合、計画部41には、例えば集積領域11である作業台などの画像の解析データのみが付与されている。
物品存否条件が成立しない場合、計画部41は、ロボットアーム3および物品把持機構6の動作計画を策定することなく、物品移動処理を終了する。
一方、S103において物品存否条件が成立する場合、計画部41は、集積領域11から移動させる物品5(以下、選択物品という)を物品群5sの中から選択する(S104)。計画部41は、解析データに対応する所定の選択基準に基づいて物品群5sの中から選択物品を特定する。選択基準は、例えば物品群5sにおける高さ位置、ロボットアーム3からの距離、他の物品5との隙間、集積領域11における位置、物品5の材質(梱包状態や包装状態を含む)などである。具体的には、物品群5sの中で最も高い位置にあるもの、ロボットアーム3から最も近い位置にあるもの、他の物品5から最も離れているもの、集積領域11の中央付近にあるもの、把持(吸着)しやすい物品5として予め規定された材質を有するものなどを、計画部41は選択物品として特定する。あるいは、これらを複合的な選択基準として、計画部41は選択物品を特定してもよい。また、計画部41は、解析データに基づいて選択物品の位置、輪郭、大きさ、向き、姿勢、重なり、境界、材質(梱包状態や包装状態を含む)などの属性データをそれぞれ特定する。
選択物品を特定すると、計画部41は、選択物品の目標把持位置を設定する(S105)。目標把持位置は、吸着パッド62で選択物品を吸着させる際、吸着パッド62が選択物品を安定して吸着可能な位置であり、選択物品上でリップ62bを接触させる位置である。例えば、選択物品上における軸芯Aとの交点(仮想点)が目標把持位置に当たる。具体的には、軸芯Aを選択物品の重心を通るように位置付けたとき、該軸芯Aと選択物品の表面との交点が目標把持位置として設定される。目標把持位置が設定される選択物品の表面(被吸着面)は、水平面(一例として物流センタの建屋の床面)と平行であればよいが、これに限らず、水平面に垂直な面や斜めの面なども含む。このため、選択物品は、集積態様にかかわらず、鉛直上方、水平方向、それ以外の方向のいずれからでも吸着パッド62で吸着され得る。したがって、集積態様に応じた最適な方向から吸着パッド62で選択物品が吸着可能とされている。
目標把持位置を設定すると、計画部41は、ロボットアーム3および物品把持機構6の動作計画を策定する。ロボットアーム3の動作計画の策定にあたって、計画部41は、経路存否条件を判定する(S106)。経路存否条件は、吸着パッド62の把持基準位置が目標把持位置と一致するようにアーム部32を動作させるとともに、目標把持位置(把持基準位置)から移動先領域12へ、さらに移動先領域12(後述する目標解放位置)から基準位置に至るまでアーム部32を動作させる経路が存在するか否かを判定するための条件である。経路存否条件は、例えば想定経路上をアーム部32が変位した場合、支障となる別の物品5や他の障害物が存在するか否かなどによって判定される。支障となる別の物品5などが存在せず、動作経路が確保できる場合、計画部41は経路存否条件が成立すると判定する。これに対し、支障となる別の物品5が存在し、動作経路が確保できない場合、計画部41は経路存否条件が成立しないと判定する。
経路存否条件が成立しない場合、計画部41は、選択物品の選択を再び行う(S104)。この場合、計画部41は、一旦特定した選択物品以外の物品5の中から別の選択物品を特定する。
一方、S106において経路存否条件が成立する場合、計画部41は、確保可能な動作経路に基づいてロボットアーム3の動作計画を策定し、ロボットアーム3の動作計画に基づいて物品把持機構6の動作計画を策定する(S107)。また、計画部41は、策定したこれらの動作計画の情報(動作指令)を制御部42に付与する。
ロボットアーム3および物品把持機構6の動作計画が付与されると、制御部42は、これらの動作計画に基づいて、ロボットアーム3および物品把持機構6を動作制御する。ここでは、制御部42は吸着パッド62の内圧を負圧とする(S108)。吸着パッド62の内圧を負圧とするにあたって、制御部42は、電磁弁65を開くとともに、コンプレッサ64、真空発生器63、および圧力センサを作動させる。これにより、制御部42は、コンプレッサ64から真空発生器63に圧縮空気を供給させ、吸着パッド62の内部を真空引きして負圧にさせる。その際、圧力センサ66は、吸着パッド62の内圧を測定し、測定値を制御部42に付与する。以下、このように吸着パッド62の内部が負圧である場合に成立する条件を第1の制御条件という。
第1の制御条件が成立する場合、制御部42は、属性条件を判定する(S109)。属性条件は、物品5の材質に基づいて該物品5の形態の変形性の有無を判定するための条件であり、具体的には選択物品が柔軟物であるか否かを判定するための条件である。属性条件の判定にあたって、制御部42は、計画部41が特定した選択物品の属性データを取得する。属性データに基づいて、属性条件は、例えば選択物品の材質が吸着パッド62で吸着した際、自重により変形して形態を変えるものであるか否か、あるいは選択物品がビニールフィルムや包装紙などで包装されているか否かなどによって判定される。吸着パッド62で吸着した際に自重により変形して形態を変える材質である場合、あるいはビニールフィルムや包装紙などで包装されている場合、制御部42は、選択物品が変形性を有する物品5(柔軟物)であり、属性条件が成立すると判定する。これに対し、吸着パッド62で吸着した際に自重により変形して形態を変える材質ではない場合、あるいはビニールフィルムや包装紙などで包装されていない場合、制御部42は選択物品が変形性を有する物品5(柔軟物)ではなく(一例として箱物であり)、属性条件が成立しないと判定する。
属性条件が成立する場合、制御部42は、押圧バー71を退避位置から押圧位置に変位させる(S110)。すなわち、押圧バー71は、初期状態の位置である退避位置から押圧位置に位置付けられる。押圧バー71を変位させるにあたって、制御部42は、コンプレッサ64およびエアシリンダ74を作動させ、コンプレッサ64からエアシリンダ74に圧縮空気を供給させる。これにより、ピストンロッド742がシリンダ本体741に対して進退し、カムフォロア715がカム溝732の一端733から他端734に移動する。その結果、押圧バー71が押圧位置に変位し、当接部713がリップ62bを放射状に押圧して変形させる。以下、このようにリップ62bが変形している場合に成立する条件を第2の制御条件という。
一方、S109において、属性条件が成立しない場合、制御部42は、押圧バー71を退避位置に位置付ける(S111)。押圧バー71は、初期状態では退避位置に位置付けられているため、この時点では退避位置に位置付けられていることになる。したがってここでは、制御部42は押圧バー71が退避位置に位置付けられていることを確認し、退避位置以外の位置に位置付けられている場合には押圧バー71を退避位置に戻す。その際、制御部42は、コンプレッサ64およびエアシリンダ74を作動させ、コンプレッサ64からエアシリンダ74に圧縮空気を供給させる。押圧バー71が退避位置に位置付けられている場合、リップ62bは変形しておらず、第2の制御条件は成立しない。
押圧バー71が押圧位置もしくは退避位置のいずれかに位置付けられた状態で、制御部42は、アーム部32を動作させて吸着パッド62に選択物品を把持(吸着)させる(S112)。以下、このようなアーム部32の動作を把持動作という。把持動作は、選択物品が変形性を有する物品5(柔軟物)である場合には、第1の制御条件と第2の制御条件とがいずれも成立することを条件に行われる。これに対し、選択物品が変形性を有しない物品5(一例として箱物)である場合、把持動作は、第1の制御条件が成立するとともに第2の制御条件が成立しないことを条件に行われる。
把持動作において、制御部42は、計画部41が策定した動作経路に従って、吸着パッド62の把持基準位置が目標把持位置と一致するようにアーム部32を動作させる。その間、制御部42は、例えば吸着パッド62を選択物品の上方に位置付けるとともに、リップ62bを選択物品に向けさせる。続けて、制御部42は、把持基準位置が目標把持位置と重なるようにアーム部32を下降させる。吸着パッド62は、内圧が負圧となっているため、リップ62bを選択物品に密着させた状態で選択物品に吸着する。
次いで、制御部42は、把持適否条件を判定する(S113)。把持適否条件は、吸着パッド62で選択物品が適切に把持されているか否かを判定するための条件である。把持適否条件の判定にあたって、制御部42は、圧力センサ66から付与された吸着パッド62の内圧値を所定の閾値(以下、把持適正値という)と比較する。把持適正値は、例えば選択物品の大きさや重量、周囲環境などに応じて設定されており、記憶装置に保持され、把持適否条件の判定時にパラメータとしてメモリに読み出される。特に限定されないが、把持適正値の目安は、ゲージ圧が-20kPaから-40kPa程度の範囲内の値であればよい。また、把持適正値は、一定値であっても、選択物品の大きさや重量に応じて設定された変動値であってもよい。
本実施形態では一例として、内圧値が把持適正値以下である場合、制御部42は、吸着パッド62で選択物品が適切に把持されており、把持適否条件が成立すると判定する。これに対し、内圧値が把持適正値を超えている場合、制御部42は、吸着パッド62で選択物品が適切に把持されておらず、把持適否条件が成立しないと判定する。ただし、内圧値が把持適正値である場合における把持適否条件の成否は、上記とは逆であってもよい。
把持適否条件が成立しない場合、制御部42は、アーム部32を再び把持動作させる(S112)。なお、この場合、例えば所定時間経過後に物品移動処理を終了させるタイムアウト処理や、所定回数だけ把持動作を繰り返しても、把持適否条件が成立しない場合には物品移動処理を終了させるリトライ処理などを組み合わせてもよい。さらにまた、制御部42は、所定の異常処理を実行してもよい。例えば、警告灯の点灯(点滅)、警告音の鳴動、警告メッセージの表示などの警告を行うことで、把持動作時に生じたエラーの周知徹底を図ることが可能となる。
一方、S113において、把持適否条件が成立する場合、制御部42は、アーム部32を動作させて移動先領域12まで変位させる(S114)。以下、このようなアーム部32の動作を解放動作という。アーム部32を解放動作させるにあたって、制御部42は、計画部41が策定した動作経路に従ってアーム部32を動作させる。その間、制御部42は、例えば吸着パッド62に吸着された選択物品を集積領域11から引き上げ、吸着パッド62の把持基準位置が目標解放位置と一致するようにアーム部32を動作させる。目標解放位置は、吸着パッド62に吸着された選択物品を解放する際、吸着パッド62から選択物品を適切に解放可能な位置であり、例えば移動先領域12の載置面の鉛直上方の任意の位置である。目標解放位置は、一定位置であっても、選択物品の大きさや重量に応じて設定された変動位置であってもよい。
次いで、制御部42は、吸着パッド62の内部を大気開放(真空破壊)する(S115)。吸着パッド62の内部を大気開放するにあたって、制御部42は、電磁弁65を閉じ、コンプレッサ64から真空発生器63への圧縮空気の供給を停止させる。これにより、吸着パッド62の内部が真空破壊し、大気開放される。その際、圧力センサ66は、吸着パッド62の内圧を測定し、測定値を制御部42に付与する。
続けて、制御部42は、解放適否条件を判定する(S116)。解放適否条件は、吸着パッド62から選択物品が適切に解放されているか否かを判定するための条件である。解放適否条件の判定にあたって、制御部42は、圧力センサ66から付与された吸着パッド62の内圧値を所定の閾値(以下、解放適正値という)と比較する。解放適正値は、例えば選択物品の大きさや重量、周囲環境などに応じて設定されており、記憶装置に保持され、把持適否条件の判定時にパラメータとしてメモリに読み出される。特に限定されないが、解放適正値の目安は、大気圧と同程度、例えばゲージ圧が0kPaから-5kPa程度の範囲内の値であればよい。また、解放適正値は、一定値であっても、選択物品の大きさや重量に応じて設定された変動値であってもよい。
本実施形態では一例として、内圧値が解放適正値以上である場合、制御部42は、吸着パッド62から選択物品が適切に解放されており、解放適否条件が成立すると判定する。これに対し、内圧値が解放適正値未満である場合、制御部42は、吸着パッド62から選択物品が適切に解放されておらず、把持適否条件が成立しないと判定する。ただし、内圧値が解放適正値である場合おける解放適否条件の成否は、上記とは逆であってもよい。
解放適否条件が成立しない場合、制御部42は、アーム部32を再び解放動作させる(S115)。なお、この場合、例えば所定時間経過後に物品移動処理を終了させるタイムアウト処理や、所定回数だけ解放動作を繰り返しても、解放適否条件が成立しない場合には物品移動処理を終了させるリトライ処理などを組み合わせてもよい。さらにまた、制御部42は、所定の異常処理を実行してもよい。例えば、警告灯の点灯(点滅)、警告音の鳴動、警告メッセージの表示などの警告を行うことで、解放動作時に生じたエラーの周知徹底を図ることが可能となる。
一方、S116において、解放適否条件が成立する場合、制御部42は、アーム部32を動作させて基準位置まで変位させる(S117)。以下、このようなアーム部32の動作を退避動作という。アーム部32を退避動作させるにあたって、制御部42は、計画部41が策定した動作経路に従ってアーム部32を動作させ、基準位置まで戻す。その際、押圧バー71が押圧位置に位置付けられていれば、退避位置に戻す。これにより、ロボットアーム3および物品把持機構6は、それぞれ初期状態に戻される。
アーム部32を退避動作させると、制御部42は、計画部41が策定したロボットアーム3および物品把持機構6の動作計画における一連の制御(物品移動処理)が正常終了したことを示す信号を計画部41に送信する。かかる制御が正常終了することで、制御装置4は、次の物品5を集積領域11から移動先領域12に移動させるための物品移動処理(S101からS117)を引き続き行う。
すなわち、制御装置4は、集積領域11に物品5が集積されている間、つまりS103において物品存否条件が成立している間、所定の制御を繰り返す。そして、集積領域11に集積された物品5がなくなると、つまりS103において物品存否条件が不成立となると、物品移動処理(S101からS117)を終了する。
このように本実施形態の物品把持機構6、および物品把持機構6を備えた荷役装置1によれば、物品5の属性条件に応じて、つまり選択物品が柔軟物であるか否かに応じて押圧バー71を変位させることができる。すなわち、梱包状態や包装状態を含めた選択物品の材質に基づいて押圧バー71を変位させ、吸着パッド62のリップ62bを変形させることができる。
図10、図11、図12には、選択物品が柔軟物、被吸着面51が平坦面である箱物、被吸着面51が平坦面ではない(湾曲面である)箱物である場合における物品把持機構6における把持態様の一例をそれぞれ示す。各図(a)は水平方向から、各図(b)は垂直方向の上方から把持態様をそれぞれ概略的に示す図である。
図10(a),(b)に示すように、選択物品が柔軟物5aである場合、押圧バー71は、押圧位置に位置付けられる。このとき、当接部713がリップ62bを放射状に押圧して変形させる。本実施形態では一例として、リップ62bは、四本の押圧バー71a~71dによって四箇所で押圧され、全体が周方向にほぼ均等に波打つように変形する。これにより、吸着時に柔軟物5aが自重で変形した場合であっても、柔軟物5aの変形に追従してリップ62bを変形させることができる。その際、リップ62bは、当接部713を起点として柔軟物5aを掴むように変形するため、リップ62bの形態を当接部713である程度維持し、柔軟物5aに対する把持力(吸着力)を適切に高めることができる。
図11(a),(b)に示すように、選択物品が平坦面状の被吸着面51を持つ箱物5bである場合、押圧バー71は、退避位置に位置付けられる。このとき、当接部713は、リップ62bを押圧することなく、被吸着面51に当接して箱物5bを支持する。被吸着面51は、箱物5bの表面のうち、目標把持位置を有する面である。本実施形態では一例として、箱物5bは、四本の押圧バー71a~71dの当接部713によって四箇所で支持される。これにより、リップ62bで把持(吸着)された箱物5bが移動される際、箱物5bの振動などが抑制され、その姿勢を安定させることができる。
図12(a),(b)に示すように、選択物品が平坦面状ではない被吸着面51、一例として湾曲面状の被吸着面51を持つ箱物5cである場合、押圧バー71は、退避位置に位置付けられる。このとき、当接部713は、リップ62bを押圧することなく、被吸着面51に当接可能な状態に位置付けられる。したがって、箱物5cにリップ62bが吸着した際、被吸着面51が湾曲している場合であっても、当接部713が妨げとなることなく、湾曲した被吸着面(湾曲面)51に沿ってリップ62bの全体を適切に変形させることができる。これにより、箱物5cに対する把持力(吸着力)を適切に高めることができる。また、リップ62bで把持(吸着)された箱物5cが移動時に振動した場合であっても、振動する箱物5cに当接部713を当接させることができるため、振動を最小限に抑えることが可能となる。これにより、移動時における箱物5cの姿勢を安定させることができる。なお、リップ62bを吸着させて持ち上げられた際、平坦状の被吸着面51が選択物品の自重により撓んで湾曲状に変形した場合も、図12(a),(b)に示す状態と同様の状態となる。したがって、この場合においても、箱物5cの移動時に同様の姿勢の安定効果を得ることができる。
このように本実施形態によれば、把持対象の物品5としてビニールフィルム等で包装された柔軟物5a、段ボール箱等で梱包された箱物5b,5cなど、多種多様な材質の物品5が混在する場合であっても、形態の変形有無に関わらず、これらの物品5を適切に把持できる。したがって、多種多様な材質の物品5に対応する各種の吸着パッド62、端的には各種のツール33を特段必要とせず、特に柔軟物5aや変形する箱物5cが把持対象の物品5に含まれる場合であっても、これらを単一の吸着パッド62で適切に把持することが可能となる。このため、例えば把持対象の物品5に対応してツール33を交換するツールチェンジャなどが不要となり、荷役装置1の小型化、物品移動処理の処理速度の向上(高速化)、コスト削減などを図ることができる。高速化の面では、吸着パッド62の柔軟性に起因する移動時の物品5の振動を押圧バー71で抑制可能であるため、高速移動にも十分に耐え得る。
以上、本発明の実施形態を説明したが、上述した実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
例えば、物品把持機構6における各構成部材の数は、把持対象の物品5の態様(形状、大きさ、重量、材質など)に応じて任意の数とすればよい。図13に示す変形例のように、物品把持機構6は複数の吸着パッド62を備えていてもよい。これにより、複数の吸着パッド62で物品5を吸着でき、移動時における物品5の姿勢をより安定させることができる。本変形例において、物品把持機構6のリップ変形部7は、連結部材72の軸受722および駆動部材(エアシリンダ)74を複数の吸着パッド62で共通化している。また、各吸着パッド62は、共通の真空発生器63、コンプレッサ64、電磁弁65、圧力センサ66に接続され、内部が負圧もしくは大気開放(真空破壊)される。これらの共通化された部材は、吸着パッド62ごとに個別に備えられていてもよい。本変形例においては、例えば選択物品上におけるアーム先端部32aの回動中心軸A1との交点(仮想点)が目標把持位置に当たる。なお、図13に示す変形例において、上述した本実施形態(図1から図12)と同一もしくは類似の構成については、図面上で同一符号を付して説明を省略する。
また、押圧バー71の本数は、偶数でなくともよく、奇数であってもよい。例えば、三本の押圧バー71が軸芯A上の点を中心として略同一位相(周方向に略等間隔)で配置される形態であってもよい。この場合、これらの押圧バー71を例えばボールジョイントやユニバーサルジョイントなどで連結し、リップ62bを押圧する方向が軸芯Aに近づく方向となるように、三本の押圧バー71を駆動部材(エアシリンダ)74で連動させればよい。なお、押圧バー71が偶数本である場合であっても、これらの押圧バー71をボールジョイントやユニバーサルジョイントなどで連結することは可能である。ここで、押圧バー71が一本である形態は特段排除されないが、リップ62bの全体をより適切に変形させるためには、押圧バー71は二本以上であることが望ましい。
本実施形態においては、リンク機構であるリップ変形部7により、リップ62bを変形させている。リップ変形部7に適用する機構は、上述したリンク機構には限定されない。本実施形態では、押圧バー71を屈曲角θ1で屈曲させ、リップ62bに対する当接部713の当接角θ2が鋭角となるようにカムフォロア715をカム溝732に沿って移動させるリンク機構としている。これに代えて、例えば押圧バーを屈曲させずに直状とし、該押圧バーをその伸長方向に沿って移動させる単純な直動機構であってもよい。押圧バーの移動方向は、リップを押圧する方向が軸芯Aに近づく方向とすればよいが、軸芯Aと平行な方向(上下方向)とすることも可能である。
また、本実施形態においては、リンク機構であるリップ変形部7によりリップ62bを変形させており、リップ62bは、リップ変形部7から外力(押圧力)を与えられて変形する。これに代えてもしくは加えて、リップ自身が変形可能となるものであってもよい。例えば、通電、加熱、圧縮空気の給排などにより、剛性が変化(硬化や軟化)あるいは伸縮するような素材を一部に含ませて、リップを構成することが可能である。この場合、物品5の属性条件に応じて、つまり選択物品が柔軟物であるか否かに応じて通電、加熱、圧縮空気の給排などを制御し、リップを変形させればよい。