以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。ただし、以下の説明は、本発明の一態様を示すものであって、本発明の範囲内で任意に変更可能である。各図において同じ符号を付したものは、同一の部材を示しており、適宜説明が省略されている。また、各図においてX、Y、Zは、互いに直交する3つの空間軸を表している。本明細書では、これらの軸に沿った方向をX方向、Y方向、及びZ方向とする。各図の矢印が向かう方向を正(+)方向、矢印の反対方向を負(-)方向として説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る液体噴射装置の一例であるインクジェット式記録装置を模式的に示す図である。
図1に示すように液体噴射装置の一例であるインクジェット式記録装置1は、液体の一種であるインクをインク滴として印刷用紙等の媒体Sに噴射・着弾させて、当該媒体Sに形成されるドットの配列により画像等の印刷を行う印刷装置である。なお、媒体Sとしては、記録用紙の他、樹脂フィルムや布等の任意の材質を用いることができる。
以下において、X、Y、Zの3つの空間軸のうち、後述するヘッドユニット2の移動方向(換言すると、主走査方向)をX軸とし、当該主走査方向と直交した媒体Sの搬送方向をY軸とし、ヘッドユニット2のノズル35が形成されたノズル面に平行な面をXY平面とし、ノズル面、すなわち、XY平面に交差する(本実施形態では、直交する)方向をZ軸とし、インク滴はZ軸に沿った+Z方向に噴射されるものとする。また、本実施形態では、+Z方向が本発明における「第1方向」に相当し、-Z方向が「第2方向」に相当する。また、本実施形態では、+Y方向が本発明における「第3方向」に相当し、-Y方向が「第4方向」に相当する。また、本実施形態では、-X方向が本発明における「第5方向」に相当し、+X方向が本発明における「第6方向」に相当する。
インクジェット式記録装置1は、液体容器3と、媒体Sを送り出す搬送機構4と、制御部である制御ユニット5と、移動機構6と、ヘッドユニット2と、を具備する。
液体容器3は、ヘッドユニット2から噴射される複数種類(例えば、複数色)のインクを個別に貯留する。液体容器3としては、例えば、インクジェット式記録装置1に着脱可能なカートリッジ、可撓性のフィルムで形成された袋状のインクパック、インクを補充可能なインクタンクなどが挙げられる。また、特に図示していないが、液体容器3には、色や種類の異なる複数種類のインクが貯留されている。
制御ユニット5は、特に図示していないが、例えば、CPU(Central Processing Unit)またはFPGA(Field Programmable Gate Array)等の制御装置と半導体メモリ等の記憶装置とを含んで構成される。制御ユニット5は、記憶装置に記憶されたプログラムを制御装置が実行することでインクジェット式記録装置1の各要素、すなわち、搬送機構4、移動機構6、ヘッドユニット2等を統括的に制御する。
搬送機構4は、制御ユニット5によって制御されて媒体SをY方向に搬送するものであり、例えば、搬送ローラー4aを有する。なお、媒体Sを搬送する搬送機構4は、搬送ローラー4aに限らず、ベルトやドラムによって媒体Sを搬送するものであってもよい。
移動機構6は、制御ユニット5によって制御されてヘッドユニット2を±X方向に往復させる。移動機構6によってヘッドユニット2が往復する±X方向は、媒体Sが搬送される-Y方向に交差する方向である。
具体的には、本実施形態の移動機構6は、搬送体7と搬送ベルト8とを具備する。搬送体7は、ヘッドユニット2を収容する略箱形の構造体、所謂、キャリッジであり、搬送ベルト8に固定される。搬送ベルト8は、±X方向に沿って架設された無端ベルトである。制御ユニット5による制御のもとで搬送ベルト8が回転することでヘッドユニット2が搬送体7と共に±X方向に沿って図示しないガイドレールに沿って往復移動する。なお、液体容器3をヘッドユニット2と共に搬送体7に搭載することも可能である。
ヘッドユニット2の主走査方向である±X方向における一側、本実施形態では、+X方向側の領域には、ヘッドユニット2のノズル35の開口が形成された面であるノズル面(後述)を払拭する払拭部材としてのワイパー10が配設されている。このワイパー10としては、例えばゴムやエラストマー等の弾性・可撓性を有する部材により構成される。ワイピング動作では、ワイパー10の先端部がノズル面に接触した状態で両者が相対移動することにより当該ワイパー10によってノズル面が払拭される。なお、ノズル面を払拭する機構としては、例えば、不織布等のシート状のワイパーにより払拭する構成のもの等、周知の種々の構成のものを採用することができる。
また、搬送体7の待機位置であるホームポジションである+X方向側には、上記ワイパー10に隣接してキャップ11が配設されている。キャップ11は、ヘッドユニット2のノズル面に当接し得るトレイ状に形成されている。このキャップ11では、キャップ11内の空間が封止空部として機能し、この封止空部内にヘッドユニット2の後述するノズル35を臨ませた状態でノズル面に密着可能に構成されている。また、このキャップ11には、図示しない廃液チューブを介してポンプが接続されており、このポンプの駆動によってキャップ11の封止空部内を負圧化することができる。
ここで、本実施形態のヘッドユニット2について、さらに図2を参照して説明する。なお、図2は、本発明のヘッドユニットの一例を示す斜視図である。また、同図においては、3つのヘッドモジュール18のうちの1つが分解された状態で示されている。
ヘッドユニット2は、保持部材13と複数のヘッドモジュール18とを具備する。本実施形態では、保持部材13は、複数のヘッドモジュール18を支持する板状部材である。保持部材13は、搬送体7に対して固定されている。複数のヘッドモジュール18は、X方向に並設された状態で保持部材13に固定されている。なお、保持部材13は、搬送体7と同じ部材であってもよい。つまり、略箱型の構造体である搬送体7の+Z方向側の壁である底壁が、保持部材13であってもよい。
複数のヘッドモジュール18の各々は、接続ユニット15と支持部材16と分配流路17と複数、本実施形態では、6個の液体噴射ヘッドであるインクジェット式記録ヘッド20とを具備する。以下、インクジェット式記録ヘッド20を単に記録ヘッド20とも言う。なお、ヘッドユニット2を構成するヘッドモジュール18の数や、ヘッドモジュール18を構成する記録ヘッド20の数は、本実施形態で例示したものに限定されるものではない。また、保持部材13としては、記録ヘッド20に設けられた後述する軸部が螺合可能な固定ネジ孔62を有する第1保持部材13Aと、後述する固定ネジが挿通可能な第2貫通孔86を有する第2保持部材13B(図21参照)と、の2種類があり、ヘッドモジュール18は、これら第1保持部材13A及び第2保持部材13Bの何れにも固定することができるように構成されている。この点の詳細については後述する。また、図2には、保持部材の一例として第1保持部材13Aを例示してある。
ここで、本実施形態のヘッドモジュール18について、さらに図3及び図4を参照して説明する。なお、図3は、ヘッドモジュール18の一例を示す正面図である。図4は、ヘッドモジュールの斜視図である。また、図4においては、ヘッドモジュールのうち記録ヘッド及び保持部材が図示され、他の構成部材の図示は省略されている。また、図3及び図4では、1つのヘッドモジュールを代表として図示しているが、他のモジュールも同様の構成となっている。
本実施形態におけるヘッドモジュール18は、接続ユニット15の+Z方向側に位置する板状の支持部材16に複数の記録ヘッド20が+X方向に2列で配置され、複数の記録ヘッド20の側方に分配流路17が配置されている。分配流路17は、液体容器3から供給されるインクを、ヘッドモジュール18が有する複数の記録ヘッド20にそれぞれ分配する流路が内部に形成された構成部材である。本実施形態において、分配流路17は、Y方向に沿って長尺に形成され、3つの記録ヘッド20に共通に設けられている。
接続ユニット15は、ケーシング21と中継基板22と複数の駆動基板23とを具備する。ケーシング21は、中継基板22と複数の駆動基板23とを収容する略箱形の構造体である。各駆動基板23は、記録ヘッド20毎に対応した配線基板である。後述する圧電アクチュエーター43を駆動するための駆動信号を生成する信号生成回路が駆動基板23に実装され、インクの吐出の有無をノズル毎に指定する制御信号と電源電圧とが駆動信号とともに駆動基板23からヘッドモジュール18に供給される。なお、前述の信号生成回路は、駆動基板23に設けられるのではなく、後述するヘッドチップ38の夫々に設けられる構成でもよい。中継基板22は、制御ユニット5と複数の駆動基板23との間で電気信号や電源電圧を中継するための配線基板であり、複数の記録ヘッド20に共用される。ケーシング21の底面には、駆動基板23毎に電気的に接続されたコネクター24が設けられている。
ヘッドモジュール18は、記録ヘッド20と連結ユニット25とを備えている。記録ヘッド20は、液体容器3から分配流路17を介して供給されるインクを媒体Sに噴射する。本実施形態における記録ヘッド20は、弁機構ユニット27を備えている。弁機構ユニット27は、分配流路17から供給されるインクの流路の開閉を制御する弁機構を有している。弁機構ユニット27は、記録ヘッド20の側面から+X方向に張り出すように設けられている。この弁機構ユニット27の底面には、+Z方向、すなわち、記録ヘッド20のノズル面側に向けて、導入針28が突出するように設けられている。この導入針28は、同じく記録ヘッド20の側面に配置された分配流路17の内部に挿入される。そして、この導入針28を通じて分配流路17内の流路と弁機構ユニット27内の流路とが相互に連通するように構成されている。なお、導入針28が弁機構ユニット27から-Z方向、すなわち、ノズル面とは反対側に向けて突出するように設けられ、弁機構ユニット27の上方に配置された分配流路17に挿入される構成を採用することもできる。
保持部材13は、ヘッドモジュール18を構成している各記録ヘッド20を支持する板状部材である。保持部材13は、本実施形態においては、第1保持部材13Aである。+Y方向に並べられた複数の記録ヘッド20は、ヘッド群29を構成しており、このヘッド群29が+X方向に2列並べて配置されて保持部材13に固定されている。本実施形態では、各ヘッド群29は3つの記録ヘッド20によって構成されており、保持部材13には、2つのヘッド群29が固定されている。もちろん、ヘッド群29を構成する記録ヘッド20の数や保持部材13に固定されるヘッド群29の数はこれに限定されるものではない。なお、本実施形態では、ヘッド群29を構成する3つの記録ヘッド20を、第1記録ヘッド20A、第2記録ヘッド20B、及び第3記録ヘッド20Cと称する。
保持部材13には、各記録ヘッド20に対応して開口部30が形成されている。開口部30は、保持部材13の厚さ方向である+Z方向に貫通して設けられており、詳しくは後述する記録ヘッド20のインク滴が吐出されるノズル35が設けられたノズル面側が挿入可能な開口面積で設けられている。また、開口部30は、各記録ヘッド20に対応して独立して設けられている。即ち、開口部30は、記録ヘッド20に対応して+X方向に3つ並設された列が、+Y方向に2列設けられている。なお、+X方向に並設された複数の記録ヘッド20のノズル面が1つの共通の開口部30から露出していてもよい。
記録ヘッド20は、ノズル面側が保持部材13の-Z方向側から開口部30に挿入された状態で保持部材13に固定される。すなわち、記録ヘッド20のノズル面は、+Z方向を向くようにして、開口部30によって保持部材13から露出する。この状態で、記録ヘッド20は保持部材13にネジ留めされる。すなわち、記録ヘッド20は、液体であるインク滴を+Z方向に向かって噴射するように配置されている。
ここで、本実施形態の記録ヘッド20について、さらに図5~図9を参照して説明する。なお、図5は、記録ヘッドを斜め上方から見た斜視図である。図6は、記録ヘッドを斜め下方から見た分解斜視図である。図7は、記録ヘッドの上面図である。図8は、記録ヘッドの側面図である。図9は、図8の第1軸部71A側を拡大した図である。また、図7において、後述する凸部66、67、68、69、及び、軸部71の図示は省略されている。
記録ヘッド20は、-Z方向に積層された第1ケース33と第2ケース34とから構成されたヘッドケース32を備えている。本実施形態では、ヘッドケース32が本発明における「筐体部」に相当する。また、本実施形態では、本発明における第1方向である+Z方向側に第1ケース33が配置され、第1方向と反対方向である第2方向である-Z方向側に第2ケース34が配置されている。図6に示されるように、第1ケース33内には、複数のヘッドチップ38が収容されている。ヘッドチップ38は、ヘッドユニット2が静止した状態で+Z方向における媒体Sに向けてインクを吐出するノズル35が形成されたノズルプレート36を有している。
ここで、本実施形態のヘッドチップ38について、さらに図10を参照して説明する。なお、図10は、ヘッドチップの一例を説明する断面図である。
本実施形態におけるヘッドチップ38は、ノズルプレート36、連通板39、圧力室形成基板40、振動板45、コンプライアンス基板41、圧電アクチュエーター43、及びホルダー42等の複数の構成部材が積層されて接着剤等によって接合されてユニット化されている。
本実施形態における圧力室形成基板40は、ノズルプレート36に形成された複数のノズル35のそれぞれに連通する複数の圧力室44を有する。圧電アクチュエーター43は、各圧力室44に対応して複数設けられている。圧電アクチュエーター43は、対応する圧力室44内のインクに圧力変動、即ち、当該圧力室44と連通するノズル35からのインクの噴射に必要なエネルギーを生じさせるエネルギー発生素子であり、圧力発生素子でもある。圧力室44と圧電アクチュエーター43との間には、振動板45が設けられており、この振動板45によって圧力室44の-Z方向側の開口が封止されて当該圧力室44の一部が区画されている。なお、圧力室形成基板40と振動板45とが一体形成されていてもよい。そして、この振動板45上における各圧力室44に対応する領域に圧電アクチュエーター43がそれぞれ積層されている。本実施形態の圧電アクチュエーター43は、例えば、振動板45上に、不図示の第1電極、圧電体層及び第2電極が順次積層されてなる。このように構成された圧電アクチュエーター43は、第1電極と第2電極との間に両電極の電位差に応じた電界が付与されると撓み変形する。
圧力室形成基板40の+Z方向側の面には、-Z方向側から+Z方向に向かって見た平面視において圧力室形成基板40よりも広い面積を有する連通板39が接合されている。本実施形態の連通板39には、圧力室44とノズル35とを連通するノズル連通口46と、各圧力室44に共通して設けられた共通液室47と、この共通液室47と圧力室44とを連通する個別連通口48と、が形成されている。共通液室47は、ノズル35が並設された方向である±Y方向に沿って延在する空間である。本実施形態においては、ノズルプレート36に設けられた2つのノズル35の列にそれぞれ対応して2つの共通液室47が形成されている。個別連通口48は、各圧力室44にそれぞれ対応してノズル列方向である±Y方向に沿って複数形成されている。この個別連通口48は、圧力室44のノズル連通口46と連通する部分とは反対側の端部と連通する。
連通板39の+Z方向側の面の略中央部分には、複数のノズル35が形成されたノズルプレート36が接合される。本実施形態におけるノズルプレート36は、+Z方向側から-Z方向に向かってみた平面視で連通板39よりも小さい外形の板材である。このノズルプレート36は、連通板39の+Z方向側の面において、共通液室47の開口から外れた位置であって、ノズル連通口46が開口した領域に、これらのノズル連通口46と複数のノズル35とがそれぞれ連通する状態で接着剤等により接合される。本実施形態におけるノズルプレート36には、複数のノズル35が+Y方向に並設されてなるノズル列が合計2つ形成されている。また、連通板39の+Z方向側の面において、ノズルプレート36から外れた位置にコンプライアンス基板41が接合される。このコンプライアンス基板41は、連通板39の+Z方向側の面に位置決めされて接合された状態で、連通板39の+Z方向側の面における共通液室47の開口を封止している。このコンプライアンス基板41は、可撓変形することで、インク流路内、特に共通液室47内の圧力変動を緩和する機能を有する。
圧力室形成基板40及び連通板39は、ホルダー42に固定されている。このホルダー42の内部において、圧力室形成基板40を間に挟んだ両側には、連通板39の共通液室47と連通する導入液室49が形成されている。また、ホルダー42の-Z方向側の面には、各導入液室49と連通する導入口50がそれぞれ開設されている。導入口50は、第2ケース34の内部に収容された不図示の流路部材が有する流路を介して、弁機構ユニット27と連通する。このため、弁機構ユニット27から送られてきたインクは、当該流路部材、導入口50、導入液室49、及び共通液室47へと導入され、共通液室47から個別連通口48を通じて各圧力室44に供給される。
そして、上記構成のヘッドチップ38では、導入液室49から共通液室47及び圧力室44を通ってノズル35に至るまでの流路内がインクで満たされた状態で、圧電アクチュエーター43が駆動されることにより、圧力室44内のインクに圧力変動が生じ、この圧力変動によって所定のノズル35からインクが噴射される。なお、ヘッドチップ38としては、例示した構成には限られず、周知の種々の構成のものを採用することができる。圧力室44内のインクに圧力変動を生じさせるエネルギー発生素子としては、例えば、電気機械変換機能を呈する圧電材料を有する圧電アクチュエーターの変形によって流路の容積を変化させて流路内のインクに圧力変化を生じさせてノズル35からインク滴を吐出させるものを用いることができる。また、エネルギー発生素子としては、流路内に発熱素子を配置して、発熱素子の発熱で発生するバブルによってノズル35からインク滴を吐出させるものを用いることができる。さらに、エネルギー発生素子としては、振動板と電極との間に静電気力を発生させて、静電気力によって振動板を変形させてノズル35からインク滴を吐出させるいわゆる静電式アクチュエーターなどを使用することができる。
図6に示されるように、複数、本実施形態においては、4つのヘッドチップ38は、ノズル列方向を+Y方向に沿わせた姿勢で、且つ、+X方向における位置を交互にずらした状態、換言すると、互い違いにした状態で+Y方向に沿って配置されてヘッドケース32に保持されている。即ち、+Y方向に並設されたヘッドチップ38の列が+X方向に2列並設され、2列のヘッドチップ38の列が互いに±Y方向に所定ピッチだけずらして配置されている。このようにヘッドチップ38が+Y方向に沿って互い違いに配置されることで、ヘッドチップ38のノズル35が+Y方向において部分的に重複して配置されるので、+Y方向に亘って連続したノズル35の列を形成することができる。
このようなヘッドチップ38の配置に合わせて、図7に示されるように、記録ヘッド20は、第2方向である-Z方向から見た際、すなわち、記録ヘッド20を-Z方向側から+Z方向に向かって見た平面視における外形形状が規定されている。なお、本実施形態では記録ヘッド20の最外周は筐体部であるヘッドケース32の外周であるため、記録ヘッド20の外形形状とは、筐体部であるヘッドケース32の外形形状と一致する。したがって、図7には、記録ヘッド20を-Z方向側から+Z方向側に見た場合の平面図を示す。
具体的には、図7に示されるように、記録ヘッド20を-Z方向側から+Z方向に向かって見た平面視において、第1部分P1と、第1部分P1と隣接し第1部分P1から第3方向である+Y方向に突出する第2部分P2と、第1部分P1と隣接し第1部分P1から第4方向である-Y方向に突出する第3部分P3と、を有する。なお、第1部分P1は、図7中においてハッチングされた部分を指す。
第2部分P2及び第3部分P3の第5方向である-X方向における各寸法は、第1部分P1の-X方向における寸法である幅の半分以下である。つまり、-X方向において、第2部分P2の幅W2は、第1部分P1の幅W1の半分以下(W2≦W1/2)であり、第3部分の幅W3は、第1部分P1の幅W1の半分以下(W3≦W1/2)である。本実施形態では、第2部分P2の幅W2は、第1部分P1の幅W1の半分よりも小さく(W2<W1/2)、第3部分の幅W3は、第1部分P1の幅W1の半分よりも小さい(W3<W1/2)。
また、第2部分P2は、第5方向である-X方向における第1部分P1の中心Cvに対して、-X方向に配置されている。また、第3部分P3は、第5方向である-X方向における第1部分P1の中心Cvに対して、第6方向である+X方向に配置されている。本実施形態では、図7に示す中心Cvを通りY方向に伸びる中心線Cに対して、第2部分P2は-X方向側に配置され、第3部分P3は+X方向側に配置されている。また、本実施形態では、第1部分P1は、-Z方向からの平面視において矩形状を有するため、-X方向における中心Cvで示したが、特にこれに限定されない。-Z方向からの平面視において第1部分P1が矩形状以外の形状、例えば、三角形状や5角形状などの多角形状、平行四辺形状などの場合には、第1部分P1の-X方向の中心とは、第1部分P1を-Z方向から平面視した際の-X方向の最大幅における中心とすればよく、第2部分P2はこの中心よりも-X方向に配置され、第3部分P3はこの中心よりも+X方向に配置されていればよい。
そして、後述する第1軸部71Aは、第2部分P2の+Y方向の端部に配置され、後述する第2軸部71Bは、第3部分P3の-Y方向の端部に配置されている。
このような記録ヘッド20の-Z方向から平面視した際の外形形状を換言すると、当該記録ヘッド20を内包する最小面積の仮想的な長方形をRとした場合、当該長方形Rの長辺E1はヘッドケース32の±Y方向に沿う辺に重なり、長方形Rの短辺E2はヘッドケース32の±X方向に沿う辺に重なっている。また、図7中では、長方形Rの中心Cv(即ち、仮想的な中心)を通り、長方形Rの長辺E1に平行な中心線(即ち、仮想的な中心線)をCとする。
ヘッドケース32の平面形状は、中心Cvを有し、中心線Cが通過する第1部分P1と、中心線Cが通過しない第2部分P2及び第3部分P3とを備えている。第2部分P2及び第3部分P3の-X方向における寸法、即ち幅W2、W3は、それぞれ、第1部分P1の-X方向における寸法である幅W1の半分以下(W2≦W1/2、W3≦W1/2)で設定されている。なお、本実施形態では、第2部分P2及び第3部分P3の-X方向における幅W2、W3は、それぞれ、第1部分P1の-X方向における寸法である幅W1の半分よりも小さく(W2<W1/2、W3<W1/2)設定されている。そして、第2部分P2は、第1部分P1の+Y方向側において、中心線Cよりも-X方向側に偏らせて設けられており、第3部分P3は、第1部分P1の-Y方向側において、中心線Cよりも+X方向側に偏らせて、第2部分P2とは中心Cvを挟んで対角配置されている。本実施形態における記録ヘッド20は、-Z方向からの平面視で、矩形状、即ち、長方形Rを基準形状として、対角の一対を略矩形状に切り欠き、Cvを中心とした概ね点対称な形状を有する。
このように第2部分P2、第3部分P3を±X方向の両側から突出して設けることで、上述したようにヘッドチップ38を+Y方向に互い違いに配置した際に、ヘッドチップ38を第2部分P2及び第3部分P3に配置することができる。したがって、記録ヘッド20を±Y方向に並設させた際に隣り合う記録ヘッド20において一方の記録ヘッド20の第3部分P3のヘッドチップ38と、他方の記録ヘッド20の第2部分P2のヘッドチップ38とを±X方向で重なる位置に配置することができ、複数の記録ヘッド20によって±Y方向に沿って一直線上に配置された一連のノズル35の列を形成することができる。
図6に示されるように、第1ケース33には、当該第1ケース33の+Z方向側の面に開口する凹形状を有する収容部52が形成されており、固定板51に固定された複数のヘッドチップ38が収容部52内に収容される。また、収容部52の開口は固定板51によって封止される。すなわち、固定板51と収容部52とによって形成された空間の内部にヘッドチップ38が収容される。なお、収容部52は、ヘッドチップ38毎に設けられていてもよく、複数のヘッドチップ38に亘って共通に設けられていてもよい。固定板51は、例えば、金属製の板状部材からなり、各ヘッドチップ38に対応した位置に、当該ヘッドチップ38のノズルプレート36を露出する露出開口部53が設けられている。露出開口部53は、本実施形態では、ヘッドチップ38毎に独立して設けられている。本実施形態において、この固定板51の下面、即ち、印刷動作において媒体Sと対向する面と、この固定板51の露出開口部53内のノズルプレート36の露出面が、本発明における「ノズル面」に相当する。また、本実施形態のノズル面は、+Z方向側から-Z方向に向かって見た平面視において、±Y方向が長手方向となる形状を有する。
また、図7に示されるように、第2部分P2に対応する第1ケース33の±Y方向における第1部分P1側とは反対側である+Y方向の端部には、+Y方向に向かって突出した第1フランジ部54が設けられている。この第1フランジ部54の-Z方向側の面には、円筒部59が突出するように設けられており、この円筒部59の内部には、ネジ挿通孔54aが、+Z方向において第1フランジ部54及び円筒部59を貫通する状態で形成されている。このため、ネジ挿通孔54aは、Z方向における+Z方向側と、-Z方向側とにそれぞれ開口を有している。また、第3部分P3に対応する第1ケース33の±Y方向における第1部分P1側とは反対側である-Y方向の端部には、-Y方向に向かって突出した第2フランジ部55が設けられている。この第2フランジ部55の-Z方向側の面には、第1フランジ部54と同様に円筒部59が突出するように設けられており、この円筒部59の内部には、ネジ挿通孔55aが、+Z方向において第2フランジ部55及び円筒部59を貫通する状態で形成されている。この第1フランジ部54に設けられたネジ挿通孔54aが、本発明における「第1貫通孔」の一部に相当し、第2フランジ部55に設けられたネジ挿通孔55aが、本発明における「第3貫通孔」の一部に相当する。
本実施形態における第1保持部材13Aには、これらのネジ挿通孔54a、55aに対応して、即ち、記録ヘッド20が位置決めされて配置された状態において+Z方向に見たときにネジ挿通孔54a、55aにそれぞれ重なる位置に、ネジ孔である固定ネジ孔62が形成されている。具体的には、固定ネジ孔62は、第1保持部材13Aの-Z方向側の面、換言すると、記録ヘッド20が保持される保持面79から+Z方向側の面に向けて第1保持部材13Aの板厚の途中まで形成されている(図14参照)。なお、この固定ネジ孔62は、第1保持部材13Aを+Z方向に貫通して設けられていてもよい。これに対し、後述する第2保持部材13Bにおいて、ネジ挿通孔54a、55aに対応する位置には、固定ネジ孔62の代わりに、当該第2保持部材13Bの板厚を+Z方向に貫通した第2貫通孔86が形成されている。そして、本実施形態では、第1保持部材13Aに記録ヘッド20を固定する際には、ネジ挿通孔54aを挿通させた詳しくは後述する第1軸部71Aの第1雄ネジ部78を固定ネジ孔62に螺合させることで、第1保持部材13Aに記録ヘッド20を固定することができる。また、本実施形態では、ネジ挿通孔55aを挿通させた詳しくは後述する第2軸部71Bの第3雄ネジを固定ネジ孔62に螺合させることで、第1保持部材13Aに記録ヘッドを固定することができる。すなわち、本実施形態では、2本の軸部71によって記録ヘッド20は、第1保持部材13Aにネジ留め固定される。また、本実施形態では、第2保持部材13Bに記録ヘッド20を固定する際に、第2貫通孔86に+Z方向側から挿入した固定ネジ85を、第2貫通孔86内で後述する第1軸部71Aの第1雌ネジ部77に螺合させることで、第2保持部材13Bに記録ヘッド20を固定することができる。また、本実施形態では、第2貫通孔86に+Z方向側から挿入した固定ネジ85を、第2貫通孔86内で後述する第2軸部71Bの第2雌ネジに螺合させることで、第2保持部材13Bに記録ヘッド20を固定することができる。すなわち、本実施形態では、2本の軸部71によって記録ヘッド20は、第2保持部材13Bにネジ留め固定される。
このように、第2部分P2の端部と第3部分P3の端部のそれぞれに第1フランジ部54と第2フランジ部55とが形成され、第1フランジ部54と第2フランジ部55とにそれぞれネジ挿通孔54a、55aが形成されているので、両端部のネジ挿通孔54a、55a同士の中心間距離をより長くすることができる。すなわち、ノズル面の長手方向である±Y方向において、+Y方向と-Y方向とのそれぞれにネジ挿通孔54a、55aが設けられている。これにより、ネジ挿通孔54a、55aを挿通した第1軸部71A及び第2軸部71Bによって保持部材13に記録ヘッド20を固定することで、保持部材13上で記録ヘッド20を高精度に配置することができると共に安定して固定することができる。特に、保持部材13に複数の記録ヘッド20が固定される構成では、各記録ヘッド20のノズル35の相対位置をより高精度に規定することができる。また、ネジ挿通孔54a、55aが設けられた部分である第1フランジ部54と第2フランジ部55とが、記録ヘッド20の本体から当該記録ヘッド20のノズル面の短辺方向である±X方向に突出しないため、複数の記録ヘッド20を長辺方向である±Y方向に並べた際に、ヘッドモジュール18やこれを備えるヘッドユニット2の±X方向の寸法の小型化を図ることができる。
第2フランジ部55は、長方形Rの角部に対応する部分が切り欠かれた切欠部56を有し、また、この切欠部56と第1ケース33の本体部との間の領域に、第2フランジ部55を+Z方向に貫通する状態で位置決め孔61が形成されている点で、第1フランジ部54とは異なっている。この第2フランジ部55の切欠部56とは、±Y方向における第1部分P1を挟んで反対側であって、当該第1部分P1の一側である+Y方向側には、第3フランジ部57が形成されている。この第3フランジ部57には、第2フランジ部55の位置決め孔61と対をなす位置決め孔61が第3フランジ部57を+Z方向に貫通する状態で形成されている。そして、保持部材13には、これらの位置決め孔61に対応して、位置決め貫通孔63が+Z方向を貫通する状態で形成されている(図4参照)。保持部材13に記録ヘッド20を固定する際に、例えば治具等に設けられた図示しない位置決めピンを位置決め貫通孔63及び位置決め孔61に挿通させることで、保持部材13に対する記録ヘッド20の相対位置を規定すること、すなわち、位置決めができる。なお、位置決め孔61と対応する位置決め貫通孔63の何れか一方に替えて位置決めピンを立設し、当該位置決めピンを他方の孔に挿通させることで位置決めを行う構成を採用することもできる。
ここで、第2フランジ部55の切欠部56は、-Z方向側から+Z方向に向かって見た平面視において、第3フランジ部57の形状に倣った形状を呈している。より詳しくは、第3フランジ部57の形状と相似で尚且つ、少し大きい形状に設定されている。これにより、記録ヘッド20を±Y方向に並設させた際に隣り合う記録ヘッド20において一方の記録ヘッド20の第3フランジ部57が、他方の記録ヘッド20の第2フランジ部55の切欠部56内に配置されるため、これらのフランジ部同士が干渉することなく記録ヘッド20を±Y方向に沿って配置することができる。
これらの第1フランジ部54,第2フランジ部55,第3フランジ部57は、±Z方向において第1ケース33の第2ケース34側である-Z方向側に設けられている。そして、第1フランジ部54,第2フランジ部55,第3フランジ部57は、記録ヘッド20のノズル面側を保持部材13の開口部30に挿入した際に、開口部30が形成された領域よりも外側に外れた位置まで突出して設けられている。このため、記録ヘッド20のノズル面側を保持部材13の開口部30に挿入した際に、これらの第1フランジ部54,第2フランジ部55,第3フランジ部57が保持部材13の-Z方向側の保持面79に当接することで、記録ヘッド20の保持部材13に対する+Z方向の位置が規定される。
第2ケース34の内部には、特に図示しないが、ヘッドチップ38の圧電アクチュエーター43と電気的に接続された配線や、ヘッドチップ38にインクを供給するための前述した流路部材等が配置されている。本実施形態では、第2ケース34の-Z方向側の面には、外部配線が接続される接続部64が突出して設けられている。
また、第2ケース34の+Y方向側の端部、すなわち、第2部分P2に対応する部分の端部には、-Z方向側から+Z方向に向かって見た平面視において第1フランジ部54と同様の形状を有する第1凸部66と第2凸部67とが、±Z方向において互いに間隔を空けて並設されている。また、第1凸部66と第2凸部67とは、第1フランジ部54の厚さよりも±Z方向において厚く形成されている。そして、第1凸部66と第2凸部67との±X方向における両側には凹形状に肉抜きされた肉抜き部70が設けられている。同様に、第2ケース34の-Y方向側の端部、すなわち、第3部分P3に対応する部分の端部には、-Z方向側から+Z方向に向かって見た平面視において第1凸部66及び第2凸部67と±Y方向における左右対称の形状を有する第3凸部68と第4凸部69とが±Z方向において互いに間隔を開けて並設されている。この第3凸部68と第4凸部69とは、第1凸部66と第2凸部67と同様に、第2フランジ部55よりも±Z方向に厚く形成されており、±X方向における両側には肉抜き部70が設けられている。
すなわち、ヘッドケース32の+Y方向側には、第1フランジ部54、第1凸部66、及び第2凸部67が+Y方向に向かって突出して設けられており、ヘッドケース32のY方向における-Y方向側には、第2フランジ部55、第3凸部68、及び第4凸部69が-Y方向に向かって突出して設けられている。なお、以下においては、これら第1フランジ部54、第2フランジ部55、第1凸部66、第2凸部67、第3凸部68及び第4凸部69を、適宜、凸部と総称する。
本実施形態において、ヘッドケース32の±Y方向における両端部には、それぞれ1本ずつ軸部71が装着されている。本実施形態では、2つの軸部71のうち+Y方向側を第1軸部71Aと称し、-Y方向側を第2軸部71Bと称する。また、本実施形態では、第1軸部71Aと第2軸部71Bとは同じ構成を有する。第1軸部71Aは、ヘッドケース32の+Y方向側に設けられた第1凸部66、第2凸部67及び第1フランジ部54のそれぞれに±Z方向に貫通して設けられたネジ挿通孔66a、ネジ挿通孔67a及びネジ挿通孔54aに挿通されている。また、第2軸部71Bは、ヘッドケース32の-Y方向側に設けられた第3凸部68、第4凸部69及び第2フランジ部55のそれぞれに±Z方向に貫通して設けられたネジ挿通孔68a、ネジ挿通孔69a及びネジ挿通孔55aに挿通されている。すなわち、本実施形態では、ネジ挿通孔66a、ネジ挿通孔67a及びネジ挿通孔54aが、本発明における「第1貫通孔」に相当する。また、ネジ挿通孔68a、ネジ挿通孔69a及びネジ挿通孔55aが、本発明における「第3貫通孔」に相当する。
ここで、本実施形態の軸部71のうち、ヘッドケース32の+Y方向側の端部に設けられた第1軸部71Aについて、さらに図14を参照して説明する。なお、図14は、図9の領域Aを拡大した断面図である。図9及び図14に示すように、本実施形態の第1軸部71Aは、軸本体72と円筒部材73とを具備する。軸本体72は、第1方向である+Z方向に沿って伸びるものであり、本体部74と第2雄ネジ部75とつまみ部76とを具備する。軸本体72を構成する本体部74、第2雄ネジ部75及びつまみ部76は、本実施形態では、一体的、すなわち、一つの部品で設けられているが、これらをそれぞれ別体として互いに接合や螺合させることにより一体化してもよい。
本体部74は、-Z方向側に設けられた大径部74aと、大径部74aよりも+Z方向側に設けられた小径部74bと、を有する。大径部74aの外径D1は、小径部74bの外径D2よりも大きい。大径部74aと小径部74bとは同軸上に設けられており、大径部74aと小径部74bとの間には外径差によって+Z方向を向く段差面が設けられている。この大径部74aと小径部74bとの間に設けられた+Z方向を向く段差面が、第1フランジ部54の-Z方向側のネジ挿通孔54aが開口する開口面と当接する第1面74cとして機能する。つまり、大径部74aの外径D1は、第1フランジ部54に設けられたネジ挿通孔54aの内径D3よりも大きく、小径部74bの外径D2は、ネジ挿通孔54aの内径D3よりも小さい。このため、軸本体72をネジ挿通孔54aに-Z方向側の開口から挿入した際に、第1面74cが第1フランジ部54のネジ挿通孔54aが開口する-Z方向側の開口面に当接することで、軸本体72の+Z方向側への移動が規制される。なお、本体部74は、第1凸部66のネジ挿通孔66a、第2凸部67のネジ挿通孔67a及び第1フランジ部54のネジ挿通孔54aに亘って挿通されている。具体的には、本体部74の大径部74aが、第1凸部66のネジ挿通孔66a及び第2凸部67のネジ挿通孔67aに挿通されている。したがって、ネジ挿通孔66a及びネジ挿通孔67aは、大径部74aの外径D1よりも若干大きな内径D4を有し、ネジ挿通孔66a及びネジ挿通孔67aの内径D4は、第1フランジ部54のネジ挿通孔54aの内径D3よりも大きい。なお、ネジ挿通孔66a及びネジ挿通孔67aの内径D4が大径部74aの外径D1より大きければ、ネジ挿通孔66aの内径D4とネジ挿通孔67aの内径D4とが異なる大きさでも構わない。
第2雄ネジ部75は、本体部74のZ方向における先端側、すなわち、小径部74bの+Z方向側の端部に設けられたものであり、外周面に雄ネジ、換言すると、ネジ山が設けられた部分である。本実施形態では、軸本体72の第2雄ネジ部75が、「第2雄ネジ」に相当する。第2雄ネジ部75は、第1フランジ部54に設けられたネジ挿通孔54aの内径D3よりも小さな外径D5を有する。このため、第2雄ネジ部75を第1フランジ部54のネジ挿通孔54aに-Z方向側から+Z方向側に向かって挿入することができる。このようにネジ挿通孔54aに挿入された第2雄ネジ部75は、ネジ挿通孔54aに対して+Z方向側に、すなわち、第1フランジ部54のネジ挿通孔54aの+Z方向側の開口面よりも+Z方向側に配置されている。なお、第2雄ネジ部75の外径D5とは、最も大きな部分における直径のことである。
また、本体部74の小径部74bの外径D2は、第2雄ネジ部75の外径D5よりも大きく設定されており、小径部74bと第2雄ネジ部75との間には外径差により+Z方向を向く段差面が形成されている。この小径部74bと第2雄ネジ部75との間に設けられた+Z方向を向く段差面が、第2雄ネジ部75と円筒部材73とを螺合させた際に、円筒部材73の-Z方向側の端面と当接して円筒部材73の-Z方向への移動を規制する第2面75aとして機能する。
つまみ部76は、本体部74のZ方向における基端部側、すなわち、大径部74aの-Z方向側の端部に設けられている。また、つまみ部76は、第1凸部66のネジ挿通孔66aに対して-Z方向側に配置されている。そして、本実施形態のつまみ部76は、本体部74の大径部74aの外径D1よりも大きな外径D6を有する。また、つまみ部76の外径D6は、ネジ挿通孔66a及びネジ挿通孔67aの内径D4よりも大きく設定されている。このため、軸本体72を第1凸部66のネジ挿通孔66aに-Z方向側から挿入した際に、つまみ部76が、第1凸部66のネジ挿通孔66aが-Z方向側に開口する開口面に当接して、軸本体72の+Z方向側への移動が規制される。したがって、軸本体72が、ネジ挿通孔66aよりも+Z方向側に移動するのを抑制して、軸本体72がネジ挿通孔66a、ネジ挿通孔67a及びネジ挿通孔54aから+Z方向に抜け落ちるのを抑制することができる。
また、つまみ部76は、その外周面に細かな凹凸状の加工、所謂、ローレットが施されている。このように、つまみ部76の表面にローレットを施すことで、つまみ部76を把持して軸本体72を回転させる際につまみ部76が滑るのを低減することができる。なお、つまみ部76の表面は、ローレットに限定されず、シボ加工、無定形状の凹凸模様などを設けるようにしてもよい。
また、つまみ部76の-Z方向側の面には、十字孔76a、一例として、JIS B 1012:1985に規定されるねじ用十字孔であり、一般的にプラスと呼称される十文字の孔が設けられている。このようにつまみ部76の-Z方向側の面に十字孔76aを設けることにより、十字孔76aを介してドライバー等の工具によって第1軸部71Aを保持部材13に強固に締結することができる。なお、つまみ部76の-Z方向の面に形成される孔は、十字孔76aに限定されず、例えば、一般的にマイナスと呼称される一文字の溝である「すりわり」、十字孔の一つが長くなってすりわりと同じ形となっている孔である「プラスマイナス孔」、六角形状の開口の「六角孔」、四角形状の開口の「四角孔」等であってもよく、また、通常の工具では回せない特殊な溝や孔などであってもよい。
ここで、本実施形態の円筒部材73について、さらに図11を参照して説明する。なお、図11は、円筒部材の断面図である。
図9、図11及び図14に示すように、円筒部材73は、軸方向である±Z方向の両端部が外部に開口した中空形状を有する。円筒部材73には軸本体72の第2雄ネジ部75が螺合する第1雌ネジ部77が設けられている。第1雌ネジ部77は、円筒部材73の内周面に雌ネジ、換言すると、第2雄ネジ部75のネジ山が嵌合可能な谷状の溝が形成された部分である。本実施形態では、円筒部材73の第1雌ネジ部77が、「第1雌ネジ」に相当する。そして、上述のように、円筒部材73の第1雌ネジ部77と軸本体72の第2雄ネジ部75とを螺合させて、円筒部材73を軸本体72に対して-Z方向に進行させた際に、円筒部材73の-Z方向側の端面が軸本体72の第2面75aに当接することで、円筒部材73の軸本体72に対する-Z方向への進行が規制される。したがって、本実施形態の第1軸部71Aでは、第2面75aと円筒部材73の端面とが、軸本体72に対して円筒部材73が-Z方向に進行するのを規制する「規制部」として機能する。第1軸部71Aに、円筒部材73が軸本体72に対して-Z方向に進行するのを規制する規制部を設けることで、軸本体72と円筒部材73とを互いに強固に締結することができると共に、軸本体72を回転させた際に円筒部材73を同時に回転させることができ、軸本体72が空回りするのを抑制することができる。
また、円筒部材73には、第1雄ネジ部78が設けられている。第1雄ネジ部78は、円筒部材73の外周面に第1雄ネジ、換言すると、固定ネジ孔62に嵌合可能なネジ山が形成された部分である。本実施形態では、円筒部材73の第1雄ネジ部78が、「第1雄ネジ」に相当する。すなわち、円筒部材73は、内周面に第1雌ネジ部77が設けられ、外周面に第1雄ネジ部78が設けられている。このような円筒部材73としては、例えば、イリサート(登録商標)を用いることができる。つまり、円筒部材73として、イリサート(登録商標)を用いることで、円筒部材73を製造する必要がなく、容易に且つ安価に入手することが可能である。
このような円筒部材73は、軸本体72の先端に設けられた第2雄ネジ部75に、内周面に設けられた第1雌ネジ部77が螺合することで、軸本体72の先端に固定される。このため、第1軸部71Aは、第1方向である+Z方向側に「第1雄ネジ」である第1雄ネジ部78と「第1雌ネジ」である第1雌ネジ部77とを有する。また、円筒部材73は、ネジ挿通孔66a、ネジ挿通孔67a及びネジ挿通孔54aに挿通された軸本体72の+Z方向側の端部に設けられた第2雄ネジ部75に螺合するため、円筒部材73は、ネジ挿通孔66a、ネジ挿通孔67a及びネジ挿通孔54aよりも+Z方向側に配置されている。また、円筒部材73は、最も+Z方向側に設けられたネジ挿通孔、すなわち、第1フランジ部54のネジ挿通孔54aの内径D3よりも大きな外径D7を有する。なお、円筒部材73の外径とは、第1雄ネジ部78の外径のことである。このように円筒部材73の外径D7を、ネジ挿通孔54aの内径D3よりも大きく設定することで、つまみ部76を把持して軸部71を持ち上げた際に、円筒部材73の-Z方向側の端面が、第1フランジ部54のネジ挿通孔54aが開口する+Z方向側の開口面に当接して、第1軸部71Aの-Z方向への移動が規制される。したがって、第1軸部71Aが、予期せぬタイミングでヘッドケース32から抜け落ちるのを抑制することができる。また、つまみ部76を把持するだけで、記録ヘッド20を持ち上げることができ、記録ヘッド20のハンドリングや記録ヘッド20の保持部材13への位置決め固定を容易に行うことができる。特に、保持部材13に複数の記録ヘッド20を高密度に並べて配置する場合に、つまみ部76を把持して記録ヘッド20のハンドリングを行うことで、記録ヘッド20の保持部材13に対する位置決めや固定を容易に行うことができる。以上の通り、つまみ部76を把持するだけで、記録ヘッド20の交換を簡単に行うことができる。
なお、軸本体72は、軸方向である±Z方向において第1面74cと第2面75aとの距離L1が、第1フランジ部54に設けられたネジ挿通孔54aのZ方向の距離L2よりも長くなるように設けられている。これにより、ネジ挿通孔54aに挿通した軸本体72の第2雄ネジ部75に円筒部材73を螺合させた際に、円筒部材73の-Z方向側の端面を第2面75aに当接させることができ、円筒部材73と軸本体72とを互いに強固に締結することができる。したがって、軸本体72を回転させた際に、円筒部材73を同時に回転させることができる。
また、本実施形態では、円筒部材73は、最も+Z方向側に設けられたネジ挿通孔54aの内径D3よりも大きな外径D7を有するものを用いるようにしたが、特にこれに限定されず、円筒部材73の外径D7は、第1貫通孔であるネジ挿通孔66a、ネジ挿通孔67a及びネジ挿通孔54aから選択される少なくとも一つの内径よりも大きければよい。これにより、円筒部材73を第1凸部66、第2凸部67及び第1フランジ部54の何れか一つに当接させて、第1軸部71Aがヘッドケース32から抜け落ちるのを抑制することができる。ちなみに、詳しくは後述するが、このような円筒部材73の軸本体72への取り付けは、軸本体72をネジ挿通孔66a、ネジ挿通孔67a及びネジ挿通孔54aに-Z方向側から挿入した後、第1フランジ部54よりも+Z方向側に突出した軸本体72の第2雄ネジ部75に円筒部材73を螺合させることで行うことができる。
また、図11に示すように、円筒部材73の第1雄ネジ部78の外径D7と、第1雌ネジ部77の谷の径D8との差は、1.0mm以上(D7-D8≧1.0mm)であることが好ましい。このように、円筒部材73の第1雄ネジ部78の外径D7と、第1雌ネジ部77の谷の径D8との差を1.0mm以上とすることで、円筒部材73の剛性を向上することができる。また、円筒部材73の第1雄ネジ部78は、第1雌ネジ部77よりも1サイズ以上大きいことが好ましい。これは例えば、JIS B 0205:2001で規定されるメートルネジのネジの呼び径において、第1雌ネジ部77がM3、すなわち、谷の径D8が3.0mmの場合には、第1雄ネジ部78の呼び径はM4、すなわち、外径D7は4.0mm以上であることが好ましい。つまり、第1雄ネジ部78が第1雌ネジ部77よりも1サイズ以上大きいとは、呼び径が整数、例えば、M1、M2、M3、M4、M5、M6、M8、M10、M12、M14、M16等のネジ群に対して1サイズ以上大きいものを言う。ちなみに、円筒部材73は、第1雄ネジ部78の外径D7と、第1雌ネジ部77の谷の径D8との差を1.0mm以上とすることで、円筒部材73の第1雄ネジ部78の外径D7を規定するネジ山の頂点部mと、第1雌ネジ部77の谷の径を規定する谷の最深部d2との間のXY平面における厚みtを0.5mm以上とすることができる。
また、例えば、M3の第1雌ネジ部77を用いた場合の締め付けトルクの狙い値は1.1N・m、M4の第1雄ネジ部78を用いた場合の締め付けトルクの狙い値は2.7N・mである。これに対して、例えば、外周がM4、内周がM3のイリサート(商標登録)の強度は、M3が3.3N・m、M4が5.0N・mであるため、締め付けトルクの狙い値以上の強度を持つイリサート(商標登録)を円筒部材73として用いることができる。つまり、円筒部材73としては、締め付けトルクの狙い値よりも大きな強度のものを用いる必要がある。
また、本実施形態の軸部71のうち、ヘッドケース32の-Y方向側の端部に設けられた第2軸部71Bは、第1軸部71Aと同じ構成を有する。なお、第1軸部71Aが挿通するネジ挿通孔66aが設けられた第1凸部66、ネジ挿通孔67aが設けられた第2凸部67及びネジ挿通孔54aが設けられた第1フランジ部54は、それぞれ、第2軸部71Bが挿通するネジ挿通孔68aが設けられた第3凸部68、ネジ挿通孔69aが設けられた第4凸部69及びネジ挿通孔55aが設けられた第2フランジ部55に対応する。また、第2軸部71Bは、第1軸部71Aと同じ軸本体72と円筒部材73とを具備する。このため、第1軸部71Aの第1雄ネジである第1雄ネジ部78及び第1雌ネジである第1雌ネジ部77は、それぞれ第2軸部71Bの「第3雄ネジ」及び「第2雌ネジ」に対応する。また、第2軸部71Bとこれに対応するネジ挿通孔68a、ネジ挿通孔69a及びネジ挿通孔55aとの各寸法の関係についても、第1軸部71Aとこれに対応するネジ挿通孔66a、ネジ挿通孔67a及びネジ挿通孔54aとの各寸法の関係と同じである。
ここで、本実施形態の記録ヘッド20の製造方法について、図12及び図13を参照して説明する。なお、図12及び図13は、本実施形態の液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの製造方法を示す要部側面図である。
まず、図12に示すように、第1軸部71Aを構成する軸本体72の第2雄ネジ部75側を、ネジ挿通孔66a、ネジ挿通孔67a及びネジ挿通孔54aに-Z方向側から挿入する。
次に、図13に示すように、ネジ挿通孔54aを挿通してネジ挿通孔54aよりも+Z方向側に位置する第2雄ネジ部75に円筒部材73の第1雌ネジ部77を螺合させる。
これにより、図8及び図9に示す、第1軸部71Aを有する記録ヘッド20を製造することができる。また、このように製造した記録ヘッド20は、円筒部材73が第1フランジ部54に当接して、第1軸部71Aのヘッドケース32に対する-Z方向側への移動が規制される。したがって、第1軸部71Aのつまみ部76を把持するだけで、記録ヘッド20を吊り下げて保持することができる。また、第1軸部71Aは、つまみ部76が第1凸部66に当接して、第1軸部71Aのヘッドケース32に対する+Z方向側への移動が規制されるため、予期せぬタイミングで第1軸部71Aがヘッドケース32から抜け落ちるのを抑制することができる。なお、第2軸部71Bについても第1軸部71Aと同様の方法によりヘッドケース32に取り付けることができる。
ここで記録ヘッド20を第1保持部材13Aに固定する場合について説明する。なお、図14は、図9における領域Aを拡大した断面図である。また、図14においては、第1フランジ部54側における第1保持部材13Aとの固定状態における周辺構造が図示されているが、第2フランジ部55側の周辺構造は図示されたものとは左右対称で概ね同様となっている。
図14に示すように、第1フランジ部54の+Z方向側の面は、第1保持部材13Aと当接する当接面80となっている。
記録ヘッド20を第1保持部材13Aに固定する場合、第1軸部71Aのつまみ部76を-Z方向側から+Z方向に向かって見た平面視において時計回りに回転させることで、軸本体72と共に円筒部材73を回転させて、円筒部材73に設けられた第1雄ネジ部78を第1保持部材13Aの固定ネジ孔62に螺合させる。そして、さらに第1軸部71Aを締め込むことで、第1フランジ部54が第1面74cと保持面79との間に挟み込まれて、第1フランジ部54の当接面80が第1保持部材13Aの保持面79に当接した状態となる。同様にして、-Y方向側の第2軸部71Bによるネジ止めにより、第2フランジ部55が第1面74cと保持面79との間に挟み込まれた状態となる。これにより、記録ヘッド20が第1保持部材13Aに固定される。つまり、本実施形態における記録ヘッド20は、±Y方向の両側に設けられた2本の軸部71、すなわち、第1軸部71Aと第2軸部71Bとによって保持部材13に固定される。この固定状態では、記録ヘッド20、より詳しくは、第1フランジ部54および第2フランジ部55は、第1軸部71Aの第1面74c及び第2軸部71Bの第1面74cと第1保持部材13Aとにより挟持される。また、本実施形態では、第1軸部71Aは、記録ヘッド20のノズル面の長手方向である±Y方向の+Y方向に配置され、第2軸部71Bは、-Y方向に配置されている。特に、本実施形態では、第1軸部71Aは、第2部分P2の+Y方向の端部に配置され、第2軸部71Bは、第3部分P3の-Y方向の端部に配置されている。このため、第1軸部71Aと第2軸部71Bとをできるだけ離れた位置に配置することができ、記録ヘッド20を第1保持部材13Aに安定して固定することができる。
次に、記録ヘッド20を第2保持部材13Bに固定する場合について説明する。図15は、記録ヘッド20を第2保持部材13Bに固定した場合の第1フランジ部54の周辺を示す断面図である。なお、図14と同一の構成については同一の符号を付してあり、その説明については適宜省略する。また、同図においても図14と同様に、第1フランジ部54の周辺構造が図示されているが、第2フランジ部55側の周辺構造は図示されたものとは左右対称で概ね同様となっている。
第2保持部材13Bにおいて、第1保持部材13Aにおける固定ネジ孔62に対応する位置には、第2貫通孔86が、当該第2保持部材13Bを板厚方向である+Z方向に貫通して設けられている。すなわち、第2貫通孔86は、-Z方向から+Z方向に向かって見た平面視においてネジ挿通孔54aと重なる位置に形成されている。
この第2貫通孔86は、円筒部材73の第1雄ネジ部78の外径D7(図14参照)よりも大きな内径D9に設定された挿通部90と、当該挿通部90の内径D9及び固定ネジ85の頭部87の外径D10よりも大きい内径D11に設定された凹部89とを有する。
凹部89は、第2保持部材13Bにおける記録ヘッド20を保持する保持面79とは反対側の+Z方向側の面に形成されており、+Z方向側から-Z方向側に向けて第2貫通孔86に挿通された固定ネジ85の頭部87が収容されるように構成されている。この凹部89は、+Z方向側から-Z方向に向かって見た平面視において例えば円形を呈する窪みである。この凹部89の平面形状は、固定ネジ85の雄ネジ部88が第2貫通孔86内で第1軸部71Aの第1雌ネジ部77に螺合される際、または、第1雌ネジ部77から雄ネジ部88が取り外される際に、頭部87が凹部89内で雄ネジ部88の軸を中心として回転可能な形状であれば、円形には限られない。この凹部89のZ方向の深さは、頭部87のZ方向における厚さと同程度か、もしくは、当該厚さよりも深く設定されている。
一方、挿通部90は、凹部89の-Z方向側の面から保持面79に亘って一定の内径D9で+Z方向に貫通する貫通孔であり、凹部89と同軸上に配置されている。なお、頭部87の平面視における形状は、円形又は六角形等の形状を採用することができる。また、第2保持部材13Bの他の構成については第1保持部材13Aと同様となっている。
固定ネジ85は、第1軸部71Aの第1雌ネジ部77に螺合可能なネジであり、雄ネジ部88と頭部87とを有している。固定ネジ85の雄ネジ部88は、円筒部材73に設けられた第1雌ネジ部77に螺合可能な大きさ及びピッチを有する。この固定ネジ85の頭部87には、十字孔、すりわり、六角孔又は四角孔が設けられ、これらの孔にドライバー等の工具を嵌合させて雄ネジ部88を軸中心として固定ネジ85を回転させる構成を採用することができる。
固定ネジ85の雄ネジ部88の±Z方向の長さは、第2貫通孔86内において円筒部材73の第1雌ネジ部77に螺合した際に第2雄ネジ部75の先端面と当接しない長さを有する。これにより、固定ネジ85の頭部87が第2保持部材13Bに当接するよりも前に、固定ネジ85が円筒部材73の第1雌ネジ部77内で第2雄ネジ部75に当接するのを抑制することができ、固定ネジ85による記録ヘッド20の第2保持部材13Bへの固定不良を抑制することができる。
そして、記録ヘッド20を第2保持部材13Bに固定する場合、予め記録ヘッド20が第2保持部材13Bに位置決めされて、第1軸部71Aの円筒部材73を第2貫通孔86内に挿入した状態で、固定ネジ85の雄ネジ部88を第2保持部材13Bの+Z方向側から第2貫通孔86に挿入し、固定ネジ85を+Z方向側から-Z方向に向かって見た平面視で時計回りに回転させる。このように固定ネジ85を第2貫通孔86内で回転させることで、第2貫通孔86内で固定ネジ85の雄ネジ部88を円筒部材73の第1雌ネジ部77に螺合させる。そして、さらに固定ネジ85を締め込むことで、第1フランジ部54が第1面74cと固定ネジ85の頭部87との間に挟まれて第1フランジ部54の当接面80が第2保持部材13Bの保持面79に当接した状態、すなわち、記録ヘッド20が第2保持部材13Bに固定された状態となる。第2フランジ部55側でも同様にして固定ネジ85を+Z方向側から第2貫通孔86に挿入し、雄ネジ部88を第2貫通孔86内に挿入された第2軸部71Bの円筒部材73の第1雌ネジ部77に螺合させることで、第2フランジ部55が第1面74cと固定ネジ85の頭部87との間に挟まれた状態となる。これにより第2フランジ部55の当接面80が第2保持部材13Bの保持面79に当接した状態、すなわち、記録ヘッドが第2保持部材13Bに固定された状態となる。つまり、本実施形態では、1つの記録ヘッド20は、±Y方向の両側に設けられた2本の固定ネジ85と2本の軸部71、すなわち、第1軸部71A及び第2軸部71Bとによって第2保持部材13Bに固定される。
この固定状態では、固定ネジ85の頭部87の全体は凹部89に収容されて、第2保持部材13Bの+Z方向側の面からは突出しないように構成されている。これにより、インクジェット式記録装置1に搭載されたワイパー10等の払拭部材でノズル面を払拭する際に、当該ノズル面を円滑に払拭することができる。例えば、固定ネジ85の頭部87がノズル面より+Z方向側、すなわち、印刷動作における媒体S側に突出した構成では、ワイパー10等の払拭部材でノズル面を払拭する際に、払拭部材に頭部87が接触することで、円滑に払拭できなかったり、払拭部材を損傷したりする虞がある。本実施形態では、固定ネジ85の頭部87がノズル面よりも+Z方向側に突出していないため、ノズル面を円滑に払拭することができると共に、払拭部材が損傷するのを抑制することができる。また、ノズル面に付着したインク、例えば、ノズル35からのインクの噴射の際にミスト化したものが付着したものも含む、が頭部87に集まり、集まったインクが頭部87から媒体S等に垂れ落ちる不具合を低減することができる。さらに、媒体Sが固定ネジ85の頭部87に接触してインクジェット式記録装置1内で詰まってしまう、所謂ジャムを引き起こす虞を低減することができる。また、本実施形態では、第1軸部71Aは、記録ヘッド20のノズル面の長手方向である±Y方向の+Y方向に配置され、第2軸部71Bは、-Y方向に配置されている。特に、本実施形態では、第1軸部71Aは、第2部分P2の+Y方向の端部に配置され、第2軸部71Bは、第3部分P3の-Y方向の端部に配置されている。このため、第1軸部71Aと第2軸部71Bとをできるだけ離れた位置に配置することができ、記録ヘッド20を第2保持部材13Bに安定して固定することができる。
このように、本発明に係る記録ヘッド20における第1軸部71Aは、+Z方向側に第1雄ネジ部78と第1雌ネジ部77との両方を有するため、記録ヘッド20を保持部材13に固定する際に+Z方向側と-Z方向側とのそれぞれの方向からネジ留めすることが可能となる。つまり、-Z方向側から+Z方向に向かって見た平面視で第1軸部71Aに重なる位置に固定ネジ孔62を有する第1保持部材13Aに記録ヘッド20を固定する場合、換言すると、記録ヘッド20の固定対象が第1保持部材13Aである場合は、-Z方向側から第1軸部71Aを操作することで記録ヘッド20を第1保持部材13Aに固定することができる。また、-Z方向側から+Z方向に向かって見た平面視で第1軸部71Aに重なる位置に第2貫通孔86を有する第2保持部材13Bに記録ヘッド20を固定する場合、換言すると、記録ヘッド20の固定対象が第2保持部材13Bである場合は、第2貫通孔86の+Z方向側から固定ネジ85を挿通して、+Z方向側から固定ネジ85を操作することで、記録ヘッド20を第2保持部材13Bに固定することができる。このように、第1保持部材13Aに記録ヘッド20を固定する場合も、第2保持部材13Bに記録ヘッド20を固定する場合も、何れの場合であっても第1軸部71Aを用いることができる。したがって、固定対象に拘わらず、第1軸部71Aを有する記録ヘッド20を出荷すればよいため、固定対象によって出荷する記録ヘッド20を区別する必要がなく、記録ヘッド20の製造や、在庫管理、出荷作業等を簡略化することができる。また、第1軸部71Aは、記録ヘッド20の固定対象に拘わらずにネジ留めに仕様されるため、固定対象によって不要となることがなく、廃棄処分等の煩雑な作業も不要となる。
以上説明したように、本実施形態の液体噴射ヘッドであるインクジェット式記録ヘッド20では、第1方向である+Z方向に液体であるインクを噴射するノズルを有するノズル面と、+Z方向に沿って伸びる軸本体72を有する第1軸部71Aと、第1軸部71Aが挿通される第1貫通孔であるネジ挿通孔66a、67a、54aを有する筐体部であるヘッドケース32と、を備え、第1軸部71Aの+Z方向側には、第1雄ネジである第1雄ネジ部78及び第1雌ネジである第1雌ネジ部77を有する。
このように、記録ヘッド20の第1軸部71Aは、+Z方向側に第1雄ネジ部78と第1雌ネジ部77との両方を有するため、記録ヘッド20を固定対象である保持部材13に固定する際に+Z方向側と-Z方向側とのそれぞれの方向からネジ留めすることが可能となる。このため、記録ヘッド20を保持する固定対象に合わせて、異なる構成の記録ヘッド20を用意する必要がない。したがって、固定対象に拘わらず、第1軸部71Aを有する記録ヘッド20を出荷すればよいため、固定対象によって出荷する記録ヘッド20を区別する必要がなく、記録ヘッド20の製造、在庫管理、出荷作業等を簡略化することができる。また、第1軸部71Aは、記録ヘッド20の固定対象に拘わらずにネジ留めに仕様されるため、固定対象によって不要となることがなく、廃棄処分等の煩雑な作業も不要となる。
また、本実施形態のインクジェット式記録ヘッド20では、第1軸部71Aは、内周面に第1雌ネジである第1雌ネジ部77が形成された中空の円筒部材73を有し、軸本体72には、第1方向である+Z方向側に第2雄ネジである第2雄ネジ部75が形成され、軸本体72と円筒部材73とは、第2雄ネジ部75と第1雌ネジ部77とが螺合することで固定され、第1雄ネジ部78は、円筒部材73の外周面に形成されていることが好ましい。
このように、第1軸部71Aを軸本体72と円筒部材73とで構成することで、軸本体72に第1雌ネジ部を形成しなくてよく、第1軸部71Aを容易に形成することができる。
また、本実施形態のインクジェット式記録ヘッド20では、円筒部材73は、第1貫通孔であるネジ挿通孔66a、67a、54aに対して第1方向である+Z方向に配置され、円筒部材73の外径D7は、ネジ挿通孔66a、67a、54aの内径、例えば、ネジ挿通孔54aの内径D3よりも大きいことが好ましい。これによれば、第1軸部71Aを把持して、第1軸部71Aを-Z方向に持ち上げた際に、円筒部材73が、ネジ挿通孔54aが開口する+Z方向側の開口面に当接して、第1軸部71Aの-Z方向への移動が規制される。したがって、第1軸部71Aを把持するだけで、記録ヘッド20を持ち上げることができ、比較的狭い空間、特に、複数の記録ヘッド20が近接して配置される空間に記録ヘッド20を容易に配置することができる。また、予期せぬタイミングで、第1軸部71Aがネジ挿通孔54aから外れるのを抑制することができる。また、記録ヘッド20を+Z方向側から保持部材13にネジ留めする際にも、また、記録ヘッド20を-Z方向側から保持部材13にネジ留めする際にも、-Z方向側に設けられた第1軸部71Aを用いて記録ヘッド20を-Z方向側でハンドリングすることができ、保持部材13に対して記録ヘッド20を容易に高密度に配置することができ、作業性を向上することができる。
また、本実施形態のインクジェット式記録ヘッド20では、円筒部材73は、第2雄ネジである第2雄ネジ部75と第1雌ネジである第1雌ネジ部77とが螺合することで、軸本体72に対して第1方向である+Z方向とは反対方向である第2方向である-Z方向へ進行し、第1軸部71Aは、軸本体72に対して円筒部材73が-Z方向へ進行するのを規制する規制部として、軸本体72の第1面74cと円筒部材73の端面とを有する。このように第1軸部71Aに、円筒部材73が、軸本体72の-Z方向への進行を規制する規制部を設けることで、円筒部材73と軸本体72とを強固に締結することができる。また、規制部を設けることで、軸本体72を回転させた際に、軸本体72と共に円筒部材73を回転させることができ、軸本体72が円筒部材73に対して空回りするのを抑制することができる。したがって、円筒部材73の保持部材13への螺合や、円筒部材73への固定ネジ85の螺合を容易に行うことができる。
また、本実施形態のインクジェット式記録ヘッド20では、第1雄ネジである第1雄ネジ部78の外径D7と、第1雌ネジである第1雌ネジ部77の谷の径D8との差が、1.0mm以上であることが好ましい。このように第1雄ネジ部78の外径D7と第1雌ネジ部77の谷の径D8との差を1.0mm以上とすることで、第1雄ネジ部78と第1雌ネジ部77との間の円筒部材73の厚さを0.5mm以上とすることができ、円筒部材73の剛性を向上することができる。
また、本実施形態のインクジェット式記録ヘッド20では、第1雄ネジである第1雄ネジ部78は、液体噴射ヘッドであるインクジェット式記録ヘッド20を保持する第1保持部材13Aとインクジェット式記録ヘッド20とを固定するために使用され、第1雌ネジである第1雌ネジ部77は、インクジェット式記録ヘッド20を保持する第2保持部材13Bとインクジェット式記録ヘッド20とを固定するために使用されることが好ましい。
このように、記録ヘッド20の第1軸部71Aは、+Z方向側に第1雄ネジ部78と第1雌ネジ部77との両方を有するため、記録ヘッド20を固定対象である保持部材13に固定する際に+Z方向側と-Z方向側とのそれぞれの方向からネジ留めすることが可能となる。上述した例では、記録ヘッド20の固定対象が第1保持部材13Aである場合は、-Z方向側から第1軸部71Aを操作することで記録ヘッド20を第1保持部材13Aに固定することができる。また、記録ヘッド20の固定対象が第2保持部材13Bである場合は、第2貫通孔86の+Z方向側から固定ネジ85を挿通して、+Z方向側から固定ネジ85を操作することで、記録ヘッド20を第2保持部材13Bに固定することができる。このため、記録ヘッド20を保持する固定対象に合わせて、異なる構成の記録ヘッド20を用意する必要がない。したがって、固定対象に拘わらず、第1軸部71Aを有する記録ヘッド20を出荷すればよいため、固定対象によって出荷する記録ヘッド20を区別する必要がなく、記録ヘッド20の製造、在庫管理、出荷作業等を簡略化することができる。また、第1軸部71Aは、記録ヘッド20の固定対象に拘わらずにネジ留めに仕様されるため、固定対象によって不要となることがなく、廃棄処分等の煩雑な作業も不要となる。
また、本実施形態のインクジェット式記録ヘッド20では、第1方向である+Z方向に沿って伸びる軸本体72を有する第2軸部71Bを備え、筐体部であるヘッドケース32は、第2軸部71Bが挿通される第3貫通孔であるネジ挿通孔68a、69a、55aを有し、第2軸部71Bの+Z方向側には、第3雄ネジ及び第2雌ネジを有し、第1軸部71Aは、ノズル面に対して当該ノズル面の長手方向の±Y方向の第3方向である+Y方向に配置され、第2軸部71Bは、ノズル面に対して+Y方向とは反対方向である第4方向である-Y方向に配置されていることが好ましい。このように、第1軸部71Aをノズル面の長手方向である±Y方向の+Y方向側に配置し、第2軸部71Bを-Y方向側に配置することで、記録ヘッド20を固定対象にネジ留めするのに使用される第1軸部71A及び第2軸部71Bをできるだけ離れた位置に配置することができる。したがって、2つの軸部71によって記録ヘッド20を固定対象に高精度に位置決めすることができると共に固定対象に安定して固定することができる。また、第1軸部71A及び第2軸部71Bを記録ヘッド20のノズル面の短辺方向である±X方向から突出しないように配置することができるため、複数の記録ヘッド20を長辺方向である±Y方向に並べた際に、ヘッドモジュール18やこれを備えるヘッドユニット2の±X方向の寸法の小型化を図ることができる。
また、本実施形態のインクジェット式記録ヘッド20では、筐体部であるヘッドケース32は、第1方向である+Z方向とは反対方向である第2方向である-Z方向から見て、第1部分P1と、第1部分P1と隣接し第1部分P1から第3方向である+Y方向に突出する第2部分P2と、第1部分P1と隣接し第1部分P1から第4方向である-Y方向に突出する第3部分P3と、を有し、第2部分P2及び第3部分P3の+Y方向に直交する第5方向である-X方向における各寸法は、第1部分P1の-X方向における寸法の半分以下であり、第2部分P2は、-X方向における第1部分P1の中心Cvに対して-X方向に配置され、第3部分P3は、-X方向における第1部分P1の中心Cvに対して-X方向とは反対方向である第6方向である+X方向に配置されている。また、第1軸部71Aは、第2部分P2の+Y方向の端部に配置され、第2軸部71Bは、第3部分P3の-Y方向の端部に配置されていることが好ましい。このように、第1軸部71Aを第2部分P2の+Y方向の端部に配置し、第2軸部71Bを第3部分P3の-Y方向の端部に配置することで、記録ヘッド20を固定対象にネジ留めするのに使用される第1軸部71A及び第2軸部71Bをできるだけ離れた位置に配置することができる。したがって、2つの軸部71によって記録ヘッド20を固定対象に安定して固定することができる。また、第1軸部71A及び第2軸部71Bを記録ヘッド20のノズル面の短辺方向である±X方向から突出しないように配置することができるため、複数の記録ヘッド20を長辺方向である±Y方向に並べた際に、ヘッドモジュール18やこれを備えるヘッドユニット2の±X方向の寸法の小型化を図ることができる。
また、本実施形態の液体噴射装置の一例であるインクジェット式記録装置1では、上記に記載のインクジェット式記録ヘッド20と、第1雄ネジである第1雄ネジ部78に螺合するネジ孔である固定ネジ孔62が設けられ、記録ヘッド20を保持する第1保持部材13Aと、を備える。このようなインクジェット式記録装置1では、記録ヘッド20の第1軸部71Aを-Z方向側から操作して、第1軸部71Aの第1雄ネジ部78を第1保持部材13Aの固定ネジ孔62に螺合させて記録ヘッド20を第1保持部材13Aにネジ留めすることができる。
また、本実施形態の液体噴射装置の一例であるインクジェット式記録装置1では、上記に記載のインクジェット式記録ヘッド20と、第1雌ネジである第1雌ネジ部77に螺合するネジである固定ネジ85と、固定ネジ85が挿通する第2貫通孔86が設けられ、記録ヘッド20を保持する第2保持部材13Bと、を備える。このようなインクジェット式記録装置1では、固定ネジ85を+Z方向側から操作して、第1軸部71Aの第1雌ネジ部77に固定ネジ85を螺合させて、記録ヘッド20を第2保持部材13Bにネジ留めすることができる。また、-Z方向から固定ネジ85を操作する場合であっても、第1軸部71Aを用いて記録ヘッド20を-Z方向側でハンドリングすることができ、第2保持部材13Bに対して記録ヘッド20を容易に高密度に配置することができ、作業性を向上することができる。
また、本実施形態の液体噴射ヘッドであるインクジェット式記録ヘッド20の製造方法では、円筒部材73は、軸本体72が第1貫通孔であるネジ挿通孔66a、67a、54aに挿通された後に、軸本体72に固定される。このように、円筒部材73は、軸本体72がネジ挿通孔66a、67a、54aに挿通された後に軸本体72に固定されるため、円筒部材73の外径D7が、ネジ挿通孔66a、67a、54aの内径よりも大きいものを用いることができる。すなわち、円筒部材73の外径D7が、ネジ挿通孔66a、67a、54aの内径よりも大きいものを用いても、軸本体72をネジ挿通孔66a、67a、54aに挿通させることができる。
また、本実施形態の液体噴射ヘッドであるインクジェット式記録ヘッド20の製造方法では、円筒部材73は、軸本体72が第1貫通孔であるネジ挿通孔66a、67a、54aに挿通された後に、軸本体72に固定される。このような製造方法によって、ネジ挿通孔66a、67a、54aに挿通した軸本体72に、ネジ挿通孔66a、67a、54aの内径、例えば、ネジ挿通孔54aの内径D3よりも大きい外径D7を有する円筒部材73を固定することができる。
以上、本発明の実施形態1について説明したが、本発明の基本的な構成は上述した物に限定されるものではない。
本実施形態では、円筒部材73の第1雄ネジ部78と第1雌ネジ部77とは、同じピッチで且つ同じ位置、つまりZ方向の同じ位置に谷の最深部が配置されるように形成されているが、特にこれに限定されない。ここで、円筒部材の変形例を図16及び図17に示す。なお、図16及び図17は、円筒部材の変形例を示す断面図である。
図16に示すように、円筒部材73には、第1雄ネジ部78のピッチPt1と第1雌ネジ部77のPt2とは同じピッチで設けられている。また、円筒部材73の第1雄ネジ部78と第1雌ネジ部77とは、それぞれの谷の最深部d1、d2が+Z方向で互いに異なる位置となるように、ねじ山が互いに±Z方向にずれた位置に配置されている。本変形例では、第1雄ネジ部78の山の頂点部mと、第1雌ネジ部77の谷の最深部d2とが+Z方向に同じ位置となるように配置されている。これにより、円筒部材73の厚みが薄くなる部分を低減して、円筒部材73の強度を向上することができる。つまり、第1雄ネジ部78の谷の最深部d1と、第1雌ネジ部77の谷の最深部d2とが+Z方向で同じ位置となると、円筒部材73の最深部d1と最深部d2とで挟まれた部分の厚みが、円筒部材73の最も薄い部分となり、最深部d1と最深部d2とで挟まれた部分に応力が集中して変形や破壊される虞がある。第1雄ネジ部78の谷の最深部d1と、第1雌ネジ部77の谷の最深部d2とを+Z方向で異なる位置に配置することで、円筒部材73の厚さを厚くして、応力集中による変形や破壊を抑制することができる。したがって、円筒部材73の強度を向上することで、円筒部材73を軸本体72や保持部材13に固定する際に、円筒部材73の変形や締め付けトルクの不足による保持部材13に対する記録ヘッド20の位置ずれを抑制することができる。なお、第1雄ネジ部78の谷の最深部d1と第1雌ネジ部77の谷の最深部d2とが+Z方向で異なる位置であれば、第1雄ネジ部78のねじ山の頂点部mと第1雌ネジ部77の谷の最深部d2とは+Z方向に異なる位置に設けられていてもよい。
以上説明したように、本実施形態の記録ヘッド20では、第1雄ネジである第1雄ネジ部78の谷の最深部d1と、第1雌ネジである第1雌ネジ部77の谷の最深部d2とは、第1方向である+Z方向に垂直な方向において重ならないことが好ましい。これによれば、円筒部材73の厚みが薄くなる部分を低減して、円筒部材73の強度を向上して変形や破壊を抑制することができる。
また、円筒部材73の第1雄ネジ部78と第1雌ネジ部77とは、異なるピッチで設けられていてもよい。具体的には、図17に示すように、円筒部材73には、第1雄ネジ部78と第1雌ネジ部77とが設けられている。第1雌ネジ部77のピッチPt2は、第1雄ネジ部78のピッチPt1よりも小さい(Pt1>Pt2)。また、第1雄ネジ部78のピッチPt1と、第1雌ネジ部77のピッチPt2とは、Pt 1 /Pt 2 が整数にならない条件を満たす値であるのが好ましい。このように、Pt 1 /Pt 2 が整数にならないようにすることで、第1雄ネジ部78の谷の最深部d1と、第1雌ネジ部77の谷の最深部d2とが+Z方向で同じ位置になり難く、すなわち、d1とd2とが+Z方向に垂直な方向、つまり、XY平面における面内方向で重なり難く、円筒部材73の強度を向上することができる。ちなみに、第1雄ネジ部78のピッチPt1が第1雌ネジ部77のピッチPt2の整数倍の場合、第1雌ネジ部77の谷の最深部d2が数個置きに第1雄ネジ部78の谷の最深部d1と+Z方向に垂直な方向の重なる位置に配置されてしまう。Pt
1 /Pt
2 が整数にならないようにすることで、第1雄ネジ部78の谷の最深部d1と第1雌ネジ部77の谷の最深部d2とが+Z方向に垂直な方向で重なる回数を低減させて、円筒部材73の強度が低下する部分を抑制し、応力集中による変形や破壊を抑制することができる。
なお、第1雌ネジ部77のピッチPt 2 は、第1雄ネジ部78のピッチPt1の1/2より大きく、Pt1よりも小さいことが好ましい(Pt1/2<Pt2<Pt1)。このように、第1雌ネジ部77のピッチPt2を、第1雄ネジ部78のピッチPt1の1/2より大きく、Pt1よりも小さくすることで、Pt 1 /Pt 2 が整数にならないようにすることができる。また、上述した例では、第1雄ネジ部78のピッチPt1が、第1雌ネジ部77のピッチPt2よりも大きくなるようにしたが、特にこれに限定されず、第1雄ネジ部78のピッチPt1が、第1雌ネジ部77のピッチPt2よりも小さくてもよい。この場合には、Pt 2 /Pt 1 が整数にならないことが好ましく、第1雄ネジ部78のピッチPt1は、第1雌ネジ部77のピッチPt2の1/2より大きく、Pt2よりも小さいことが好ましい(Pt2/2<Pt1<Pt2)。
以上説明したように、本実施形態の記録ヘッド20では、第1雄ネジである第1雄ネジ部78のピッチPt1と第1雌ネジである第1雌ネジ部77のピッチPt2とが異なることが好ましい。これによれば、第1雄ネジ部78の谷の最深部d1と第1雌ネジ部77の谷の最深部d2とが+Z方向の同じ位置に配置され難くすることができるため、円筒部材73の+Z方向に垂直な方向の厚みが薄くなる部分を低減することができ、円筒部材73の強度を向上することができる。したがって、円筒部材73の強度を向上することで、円筒部材73を軸本体72や保持部材13に固定する際に、円筒部材73の変形や締め付けトルクの不足による保持部材13に対する記録ヘッド20の位置ずれを抑制することができる。
また、本実施形態では、円筒部材73は、第2雄ネジ部75に螺合することで-Z方向に進行し、円筒部材73の端面を軸本体72の第2面75aに当接させることで、円筒部材73の-Z方向側への移動を規制するようにしたが、円筒部材73の軸本体72に対する-Z方向への移動を規制する規制部はこれに限定されるものではない。ここで、第1軸部71Aの変形例を図18~図20に示す。なお、図18及び図19は、第1軸部の変形例を示す要部断面図である。図20は、第1軸部の変形例を示す円筒部材の断面図である。
図18に示すように、円筒部材73には、内部を2つの空間に区画する壁部73aが設けられている。円筒部材73は、第2雄ネジ部75に螺合することで-Z方向に進行し、円筒部材73の壁部73aを第2雄ネジ部75の先端に当接させることで、軸本体72に対して円筒部材73の-Z方向への進行が規制される。すなわち、図18に示す第1軸部71Aでは、円筒部材73の壁部73aと第2雄ネジ部75の+Z方向側の先端面とが、軸本体72に対して円筒部材73が-Z方向に進行するのを規制する「規制部」として機能する。
また、図19に示すように、円筒部材73の内部に設けられた壁部に開口を設けるようにしてもよい。すなわち、円筒部材73の内部には、中心に向かって突出する突起部73bが、周方向に亘って連続して設けられている。なお、突起部73bは、円筒部材73の内部に周方向に亘って連続して設けられているものに限定されず、断続的に設けられていてもよい。円筒部材73は、第2雄ネジ部75に螺合することで-Z方向に進行し、円筒部材73の突起部73bを第2雄ネジ部75の先端に当接させることで、軸本体72に対して円筒部材73の-Z方向への進行が規制される。すなわち、このような構成の第1軸部71Aでは、円筒部材73の突起部73bと第2雄ネジ部75の+Z方向側の先端面とが、軸本体72に対して円筒部材が-Z方向に進行するのを規制する「規制部」として機能する。
また、図20に示すように、円筒部材73の内周面に設けられた第1雌ネジ部77は、-Z方向側と+Z方向側とで、ネジの進行方向が反転していてもよい。すなわち、第1雌ネジ部77は、-Z方向側に正ネジ(別名、右ネジとも言う)となる正ネジ部77aを有し、+Z方向側に逆ネジ(別名、左ネジとも言う)となる逆ネジ部77bを有する。このような構成では、円筒部材73の正ネジ部77aを軸本体72の第2雄ネジ部75(図14参照)に螺合させることで円筒部材73は軸本体72に対して-Z方向に進行する。また、第2雄ネジ部75は、逆ネジ部77bに螺合することができないため、円筒部材73の軸本体72に対する-Z方向への進行は、正ネジ部77aと逆ネジ部77bとの境界部分で規制される。すなわち、第1軸部71Aは、円筒部材73の第1雌ネジ部77の逆ネジ部77bと、軸本体72の第2雄ネジ部75(図14参照)とが、軸本体72に対して円筒部材73が-Z方向に進行するのを規制する「規制部」として機能する。
このように第1軸部71Aに上述した何れの規制部を設けた場合であっても、軸本体72と円筒部材73とを強固に締結することができると共に、軸本体72を、軸を中心として回転させるだけで、円筒部材73を軸本体72と共に回転させることができる。したがって、第1軸部71Aの軸本体72を操作して、円筒部材73を保持部材13に固定することができる。
さらに、本実施形態の第1軸部71Aは、第1面74cを軸本体72の本体部74に有するものとしたが、特にこれに限定されない。ここで、本実施形態の記録ヘッド20の変形例を図21及び図22に示す。なお、図21及び図22は、記録ヘッドの変形例を示す要部断面図である。
図21に示すように、第1軸部71Aは、軸本体72と円筒部材73とを有する。軸本体72は、本体部74と第2雄ネジ部75とつまみ部76とを有する。本体部74は、Z方向に亘って同じ外径を有する。また、つまみ部76は、本体部74の外径よりも大きい外径を有する。このため、つまみ部76と本体部74との間には外径差によって段差面が形成されている。また、つまみ部76は、ネジ挿通孔66aの内径よりも大きな外径を有する。このため、つまみ部76と本体部74との間に設けられた段差面が第1凸部66のネジ挿通孔66aの-Z方向側の開口面に当接する第1面74cとして機能する。このような第1軸部71Aを有する記録ヘッド20を第2保持部材13Bに固定する場合、第1軸部71Aの第1雄ネジ部78を第2保持部材13Bの第2貫通孔86内に-Z方向側から挿入し、第2貫通孔86の+Z方向側から固定ネジ85を第1雌ネジ部77に螺合させる。これにより、第1凸部66が第1面74cと固定ネジ85の頭部87との間に挟まれて、第1フランジ部54の当接面80が第2保持部材13Bの保持面79に当接した状態、すなわち、記録ヘッド20が第2保持部材13Bに固定された状態となる。なお、図21では、記録ヘッド20を第2保持部材13Bにネジ留め固定する構成を例示したが、記録ヘッド20を第1保持部材13Aにネジ留め固定する場合も同じである。
ただし、記録ヘッド20を第2保持部材13Bに第1軸部71Aと固定ネジ85とを用いてネジ留め固定する場合、固定ネジ85の頭部87と第2保持部材13Bとが当接する位置と、第1面74cとヘッドケース32とが当接する位置とは、±Z方向において比較的近い位置に設けた方が、比較的遠い位置に配置する場合と比較して、記録ヘッド20の構成部品の歪み・反りを抑制することができる。すなわち、固定ネジ85の頭部87と第2保持部材13Bとが当接する位置に対して、第1面74cとヘッドケース32とが当接する位置を+Z方向に比較的遠い位置に配置すると、両者の間の構成部品に歪み・反りが生じ、歪み・反りの応力によって構成部品内の流路の接続不良によるインクの流出やインク滴の吐出方向のずれ等の不具合が生じる虞がある。これに対して、上述した図15に示す構成のように、第1フランジ部54を挟むように第1面74cと、固定ネジ85の頭部87とを設けることで、+Z方向に比較的近い位置に配置された第1面74cと固定ネジ85との間でヘッドケース32を強固に且つ高精度に挟み込むことができる。したがって、図15に示す構成では、ヘッドケース32の変形を抑制して、応力による流路の接続不良によるインクの流出やインク滴の吐出方向のずれ等を抑制することができる。
また、図22に示すように、第1軸部71Aの円筒部材73の外径D7(図14参照)を、第2保持部材13Bの第2貫通孔86の内径、本実施形態では、挿通部90の内径D9(図15参照)よりも大きくして、円筒部材73の+Z方向側の端面73cを第2保持部材13Bの保持面79に当接させるようにしてもよい。また、円筒部材73の+Z方向側の端面73cを第2保持部材13Bの保持面79に当接させる場合、円筒部材73の-Z方向側の端面73dを第2面75aと当接させないようにすればよい。なお、第1軸部71Aは、図21と同様の構成となっている。すなわち、第1軸部71Aは、軸本体72と円筒部材73とを有する。軸本体72は、本体部74と第2雄ネジ部75とつまみ部76とを有する。本体部74は、Z方向に亘って同じ外径を有する。また、つまみ部76は、本体部74の外径よりも大きい外径を有する。このため、つまみ部76と本体部74との間には外径差によって段差面が形成されている。また、つまみ部76は、ネジ挿通孔66aの内径よりも大きな外径を有する。このため、つまみ部76と本体部74との間に設けられた段差面が第1凸部66のネジ挿通孔66aの-Z方向側の開口面に当接する第1面74cとして機能する。
つまり、このような記録ヘッド20を第2保持部材13Bに固定する場合、円筒部材73は、第2貫通孔86の+Z方向側から挿入された固定ネジ85によって第2保持部材13Bの保持面79に端面73cを当接させた状態で保持される。また、第2保持部材13Bにネジ留め固定された円筒部材73に軸本体72の第2雄ネジ部75を螺合させることで、第2保持部材13Bの保持面79と軸本体72の第1面74cとの間でヘッドケース32を挟み込んで、第1フランジ部54の当接面80が保持面79に当接した状態、すなわち、第2保持部材13Bに記録ヘッド20を固定することができる。
このように円筒部材73の+Z方向側の端面73cを第2保持部材13Bの保持面79に当接させることで、円筒部材73の端面73cと固定ネジ85の頭部87との±Z方向における距離を短くすることができる。したがって、第2保持部材13Bに円筒部材73を強固に且つ高精度に固定することができる。
また、円筒部材73の+Z方向側の端面73cを第2保持部材13Bの保持面79に当接させる場合、第2貫通孔86の内径を比較的小さくすることができるため、第2保持部材13Bを省スペースに設けることができ、第2貫通孔86同士の干渉や、第2保持部材13Bの第2貫通孔86と開口部30との間における剛性の低下などを抑制することができる。
以上説明したように、本実施形態の液体噴射装置の一例であるインクジェット式記録装置1では、上記記載の記録ヘッド20と、第1雌ネジである第1雌ネジ部77に螺合するネジである固定ネジ85と、固定ネジ85が挿通する第2貫通孔86が設けられ、記録ヘッド20を保持する第2保持部材13Bと、を備え、円筒部材73の外径D7は、第2貫通孔86の内径よりも大きいことが好ましい。このように円筒部材73の外径D7を第2貫通孔86の内径よりも大きくすることで、円筒部材73の+Z方向側の端面73cを第2保持部材13Bの-Z方向側の保持面79に当接させて、第2保持部材13Bに円筒部材73を固定することができる。このため、円筒部材73の端面73cと固定ネジ85の頭部87との±Z方向の距離を短くして安定した固定を行わせることができる。また、第2貫通孔86の開口面積を比較的小さくすることができるため、第2保持部材13Bを省スペースに設けることができ、第2貫通孔86同士の干渉や、第2保持部材13Bの第2貫通孔86と開口部30との間における剛性の低下などを抑制することができる。
さらに、本実施形態では、第1軸部71Aの円筒部材73に設けられた第1雄ネジ部78を、第1保持部材13Aに設けられた固定ネジ孔62に螺合させることで、記録ヘッド20を第1保持部材13Aに固定するようにしたが、特にこれに限定されない。ここで、本実施形態の記録ヘッド20の変形例を図23に示す。なお、図23は、記録ヘッドの変形例を示す要部断面図である。
図23に示すように、記録ヘッド20を第1保持部材13Aに固定する場合、記録ヘッド20の第1軸部71Aの軸本体72から円筒部材73を取り外し、軸本体の第2雄ネジ部を、第1保持部材13Aの固定ネジ孔62に螺合させる。すなわち、図23に示す例では、軸本体72の第2雄ネジ部75が、第1軸部71Aの「第1雄ネジ」に相当する。
また、第1保持部材13Aに設けられた固定ネジ孔62は、第1保持部材13Aの-Z方向側に設けられた凹部62aと、凹部62aの底面に開口する雌ネジ部62bと、を具備する。
凹部62aは、軸本体72の本体部74の外径、すなわち、小径部74bの外径よりも大きな内径を有する。また、雌ネジ部62bは、軸本体72の第2雄ネジ部75が螺合する大きさ及びピッチで設けられている。このように、凹部62aの内径を小径部74bの外径よりも大きくすることで、軸本体72の第2面75aが第1保持部材13Aの保持面79に当接することなく、第2雄ネジ部75を雌ネジ部62bに螺合させることができる。なお、本変形例では、軸本体72は、軸方向である+Z方向において第1面74cと第2面75aとの距離L1が、第1フランジ部54に設けられたネジ挿通孔54aのZ方向の距離L2よりも長いため、第1保持部材13Aに凹部62aを設けたが、当該距離L1が、当該距離L2よりも短ければ、第1保持部材13Aに凹部62aを設ける必要はない。
また、固定ネジ孔62の雌ネジ部62bは、上述した図14に示す第1保持部材13Aの円筒部材73が螺合する固定ネジ孔62に比べて小さな内径とすることができる。したがって、固定ネジ孔62を省スペースに設けることができ、固定ネジ孔62同士の干渉や固定ネジ孔62と開口部30との間における剛性の低下などを抑制することができる。
なお、記録ヘッド20を第2保持部材13Bに固定する場合には、図15に示す構成と同様に、軸本体72に円筒部材73を固定した状態、すなわち、第1軸部71Aを用いて円筒部材73の第1雌ネジ部77と固定ネジ85とを螺合させることで、記録ヘッド20を第2保持部材13Bに固定すればよい。
このように、記録ヘッド20を第1保持部材13Aに固定する際に、軸本体72から円筒部材73を取り外す場合であっても、固定対象に拘わらず、第1軸部71Aを有する記録ヘッド20を出荷すれば良いため、固定対象によって出荷する記録ヘッド20を区別する必要がなく、記録ヘッド20の製造及び在庫管理、出荷作業等を簡略化することができる。
以上説明したように、図23に示す本変形例の液体噴射ヘッドであるインクジェット式記録ヘッド20は、第1方向である+Z方向に液体であるインクを噴射するノズル35を有するノズル面と、+Z方向に沿って伸びる軸本体72を有する第1軸部71Aと、第1軸部71Aが挿通される第1貫通孔であるネジ挿通孔66a、67a、54aを有する筐体部であるヘッドケース32と、を備え、第1軸部71Aは、+Z方向側に第1雄ネジである第2雄ネジ部75が形成された軸本体72を有し、第2雄ネジ部75は、中空の円筒部材73の内周面に形成された第1雌ネジである第1雌ネジ部77と螺合することで軸本体72と円筒部材73とを固定することが可能であり(図14参照)、第2雄ネジ部75は、インクジェット式記録ヘッド20を保持する第1保持部材13Aとインクジェット式記録ヘッド20との固定、または、円筒部材73と軸本体72との固定に使用され、第1雌ネジ部77は、円筒部材73と軸本体72との固定、かつ、インクジェット式記録ヘッド20を保持する第2保持部材13Bとインクジェット式記録ヘッド20との固定に使用される。
このように、記録ヘッド20の軸本体72は、そのまま第1保持部材13Aに-Z方向側から固定することも、円筒部材73を追加した第1軸部71Aの状態で+Z方向側から第2保持部材13Bに固定することもできる。すなわち、円筒部材73を追加するだけで、異なる固定対象である第1保持部材13Aと第2保持部材13Bとに対して+Z方向側と-Z方向側とのそれぞれの方向からネジ留めすることが可能となる。このため、記録ヘッド20を保持する固定対象に合わせて、異なる構成の記録ヘッド20を用意する必要がない。したがって、固定対象に拘わらず、第1軸部71Aを有する記録ヘッド20を出荷すればよいため、固定対象によって出荷する記録ヘッド20を区別する必要がなく、記録ヘッド20の製造、在庫管理、出荷作業等を簡略化することができる。また、第1軸部71Aは、記録ヘッド20の固定対象に拘わらずにネジ留めに仕様されるため、固定対象によって不要となることがなく、廃棄処分等の煩雑な作業も不要となる。
また、本変形例のインクジェット式記録ヘッド20では、円筒部材73は、第1貫通孔であるネジ挿通孔66a、67a、54aに対して第1方向である+Z方向に配置され、円筒部材73の外径D7は、ネジ挿通孔66a、67a、54aの内径、例えば、ネジ挿通孔54aの内径D3よりも大きいことが好ましい。これによれば、第1軸部71Aを把持して、第1軸部71Aを-Z方向に持ち上げた際に、円筒部材73が、ネジ挿通孔54aが開口する+Z方向側の開口面に当接して、第1軸部71Aの-Z方向への移動が規制される。したがって、第1軸部71Aを把持するだけで、記録ヘッド20を持ち上げることができ、比較的狭い空間、特に、複数の記録ヘッド20が近接して配置される空間に記録ヘッド20を容易に配置することができる。また、予期せぬタイミングで、第1軸部71Aがネジ挿通孔54aから外れるのを抑制することができる。
また、本変形例のインクジェット式記録ヘッド20では、円筒部材73は、第1雄ネジである第2雄ネジ部75と第1雌ネジである第1雌ネジ部77とが螺合することで、軸本体72に対して第1方向である+Z方向とは反対方向である第2方向である-Z方向へ進行し、第1軸部71Aは、軸本体72に対して円筒部材73が-Z方向へ進行するのを規制する規制部として、軸本体72の第1面74cと円筒部材73の端面とを有する。このように第1軸部71Aに、円筒部材73が、軸本体72の-Z方向への進行を規制する規制部を設けることで、円筒部材73と軸本体72とを強固に締結することができる。また、規制部を設けることで、軸本体72を回転させた際に、軸本体72と共に円筒部材73を回転させることができ、軸本体72が円筒部材73に対して空回りするのを抑制することができる。したがって、円筒部材73の保持部材13への螺合や、円筒部材73への固定ネジ85の螺合を容易に行うことができる。
また、本変形例に示すインクジェット式記録ヘッド20では、第1雄ネジである第2雄ネジ部75は、第1方向である+Z方向へ向けて第1保持部材13Aに設けられたネジ孔である固定ネジ孔62に挿通されると共に固定ネジ孔62に螺合されることで、記録ヘッド20と第1保持部材13Aとを固定し、第1雌ネジ部77は、+Z方向と反対方向である-Z方向へ向けて第2保持部材13Bに設けられた第2貫通孔86に挿通されるネジである固定ネジ85と螺合することで、記録ヘッド20と第2保持部材13Bとを固定することが好ましい。これによれば、記録ヘッド20は、第1軸部71Aによって異なる固定対象である第1保持部材13Aと第2保持部材13Bとに対して+Z方向側と-Z方向側とのそれぞれの方向からネジ留めすることが可能となる。
(実施形態2)
図24は、本発明の実施形態2に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドと第1保持部材との側面図である。また、図25は、図24の要部を拡大した断面図である。また、図26は、記録ヘッドと第2保持部材との要部を拡大した断面図である。なお、上述した実施形態と同様の部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
図示するように、本実施形態の第1軸部71Aは、軸本体72のみを有する。すなわち、第1軸部71Aは、円筒部材73を有さず、軸本体72のみで構成されている。第1軸部71Aを構成する軸本体72は、本体部74と、本体部74の+Z方向側の端部の外周面に設けられた第1雄ネジ部78と、軸本体72の+Z方向側の端面に開口する第1雌ネジ部77と、本体部74の-Z方向側の端部に設けられたつまみ部76と、を有する。第1雌ネジ部77は、本体部74の+Z方向側の端部の内周面に雌ネジ、換言すると、谷状の溝が設けられた部分である。つまり、第1軸部71Aである軸本体72には、+Z方向の端部に第1雄ネジ部78と第1雌ネジ部77とが一体的に設けられている。本実施形態では、軸本体72の第1雄ネジ部78が「第1雄ネジ」に相当する。また、軸本体72の第1雌ネジ部77が「第1雌ネジ」に相当する。
本体部74は、上述した実施形態1と同様に大径部74aと小径部74bとを有する。また、大径部74aと小径部74bとの間には、第1面74cが設けられている。
第1雄ネジ部78の外径D7は、ネジ挿通孔54aの内径D3よりも小さい。なお、上述した実施形態1と同様に、ネジ挿通孔66a、67aの内径D4は、ネジ挿通孔54aの内径D3よりも大きい。このため、軸本体72は、第1凸部66のネジ挿通孔66a、第2凸部67のネジ挿通孔67a、第1フランジ部54のネジ挿通孔54aに-Z方向側から+Z方向側に向かって挿入することができる。
また、軸本体72のネジ挿通孔66aとネジ挿通孔67aとの間の外周には、ストッパー91が設けられている。ストッパー91は、軸本体72の外周、本実施形態では、本体部74の大径部74aの外周に固定されたE型止め輪などの止め輪からなり、大径部74aの外周に設けられた不図示の溝に嵌合する。このようなストッパー91は、ネジ挿通孔66a及びネジ挿通孔67aの内径D4よりも大きい外径を有する。つまり、ストッパー91は、大径部74aの図示しない溝から大径部74aの外側に突出して設けられている。このため、ストッパー91は、-Z方向側から+Z方向に向かって見た平面視において、軸本体72よりも外側に突出した突出部91aを有する。したがって、軸本体72を-Z方向に移動させた際に、ストッパー91の突出部91aが、第1凸部66のネジ挿通孔66aが+Z方向に開口する開口面に当接し、軸本体72のヘッドケース32に対する-Z方向への移動が規制される。換言すると、筐体部であるヘッドケース32は、第1軸部71Aが挿通される第3貫通孔としてネジ挿通孔66aと、ネジ挿通孔66aが+Z方向に開口する開口面と、を有する。そして、第1軸部71Aの一部であるつまみ部76は、最も-Z方向側に設けられたネジ挿通孔66aが-Z方向に開口する開口面よりも-Z方向に配置されている。これにより、つまみ部76がネジ挿通孔66a内に入り込み、つまみ部76が把持し難くなるのを抑制することができる。また、第1軸部71Aの一部であるつまみ部76は、ヘッドケース32の最も-Z方向の面、本実施形態では、接続部64を除くヘッドケース32の-Z方向側の面よりもさらに-Z方向に配置されていることが好ましい。このように、つまみ部76を、ヘッドケース32の最も-Z方向の面よりもさらに-Z方向に配置することで、つまみ部76を把持し易くすることができ、記録ヘッド20のハンドリング性を向上することができる。また、軸本体72の+Z方向の端部と-Z方向の端部との間には、第1軸部71Aがヘッドケース32に対して-Z方向への移動を規制するストッパー91が設けられている。ストッパー91は、-Z方向側から+Z方向に向かって見た平面視において、軸本体72よりも外側に飛び出ている突出部91aを有する。突出部91aは、ネジ挿通孔66aに対して+Z方向に設けられ、ネジ挿通孔66aの+Z方向側の開口面と当接するようになっている。
このように第1軸部71Aにストッパー91を設けることで、第1軸部71Aを把持して記録ヘッド20を-Z方向側に持ち上げた際に、ストッパー91の突出部91aが第1凸部66のネジ挿通孔66aが+Z方向に開口する開口面に当接して、第1軸部71Aがネジ挿通孔66aの-Z方向に移動するのが規制される。このため、第1軸部71Aを把持して記録ヘッド20を-Z方向側に持ち上げた際に、第1軸部71Aから記録ヘッド20が抜け落ちるのを抑制した状態で記録ヘッド20を吊り下げることができる。このように第1軸部71Aによって記録ヘッド20を吊り下げることにより、つまみ部76を把持した状態で記録ヘッド20のハンドリングや記録ヘッド20の保持部材13への位置決め固定を容易に行うことができる。特に、保持部材13に複数の記録ヘッド20を高密度に並べて配置する場合に、つまみ部76を把持して記録ヘッド20のハンドリングを行うことで、記録ヘッド20の保持部材13に対する位置決めや固定を容易に行うことができる。また、本実施形態の軸部71のうち、ヘッドケース32の-Y方向側の端部に設けられた第2軸部71Bは、第1軸部71Aと同じ構成を有する。
ここで、このような記録ヘッド20を第1保持部材13Aに固定する場合について説明する。なお、図25は、図24における領域Aの断面図である。また、図25においては、第1フランジ部54側における第1保持部材13Aとの固定状態における周辺構造が図示されているが、第2フランジ部55側の周辺構造は図示されたものとは左右対称で概ね同様となっている。
図25に示すように、記録ヘッド20を第1保持部材13Aに固定する場合、第1軸部71Aを構成する軸本体72のつまみ部76を-Z方向側から+Z方向に向かって見た平面視において時計回りに回転させて、第1雄ネジ部78を第1保持部材13Aの固定ネジ孔62に螺合させる。そして、さらに第1軸部71Aを締め込むことで、第1フランジ部54が第1面74cと保持面79との間に挟み込まれて、第1フランジ部54の当接面80が第1保持部材13Aの保持面79に当接した状態となる。同様にして、-Y方向側の第2軸部71Bによるネジ止めにより、第2フランジ部55が第1面74cと保持面79との間に挟み込まれた状態となる。これにより、記録ヘッド20が第1保持部材13Aに固定される。つまり、本実施形態における記録ヘッド20は、±Y方向の両側に設けられた2本の軸部71、すなわち、第1軸部71Aと第2軸部71Bとによって保持部材13に固定される。この固定状態では、記録ヘッド20、より詳しくは、第1フランジ部54および第2フランジ部55は、第1軸部71Aの第1面74c及び第2軸部71Bの第1面74cと第1保持部材13Aとにより挟持される。また、本実施形態では、第1軸部71Aは、記録ヘッド20のノズル面の長手方向である±Y方向の+Y方向に配置され、第2軸部71Bは、-Y方向に配置されている。特に、本実施形態では、第1軸部71Aは、第2部分P2の+Y方向の端部に配置され、第2軸部71Bは、第3部分P3の-Y方向の端部に配置されている(図7参照)。このため、第1軸部71Aと第2軸部71Bとをできるだけ離れた位置に配置することができ、記録ヘッド20を第1保持部材13Aに安定して固定することができる。また、実施形態2の第1軸部71Aは、軸本体72に直接、第1雄ネジ部78を設けたため、実施形態1の円筒部材73に第1雄ネジ部78を設ける場合に比べて、第1雄ネジ部78の外径を小さくすることができる。したがって、第1雄ネジ部78が螺合する第1保持部材13Aの固定ネジ孔62を比較的小さな内径とすることができ、固定ネジ孔62を省スペースに設けることができ、固定ネジ孔62同士の干渉や固定ネジ孔62と開口部30との間における剛性の低下などを抑制することができる。
次に、記録ヘッド20を第2保持部材13Bに固定する場合について説明する。図26は、記録ヘッド20を第2保持部材13Bに固定した場合の第1フランジ部54の周辺構造を示す断面図である。なお、図25と同一の構成については同一の符号を付してあり、その説明については適宜省略する。また、同図においても図25と同様に、第1フランジ部54の周辺構造が図示されているが、第2フランジ部55側の周辺構造は図示されたものとは左右対称で概ね同様となっている。
第2保持部材13Bにおいて、第1保持部材13Aにおける固定ネジ孔62に対応する位置には、第2貫通孔86が、当該第2保持部材13Bの板厚方向であるZ方向を貫通して設けられている。すなわち、第2貫通孔86は、-Z方向側から+Z方向に向かって見た平面視においてネジ挿通孔54aと重なる位置に形成されている。
この第2貫通孔86は、第1雄ネジ部78の外径D7(図25参照)よりも大きな内径D9に設定された挿通部90と、当該挿通部90の内径D9及び固定ネジ85の頭部87の外径D10よりも大きい内径D11に設定された凹部89とを有する。また、第2保持部材13Bのその他の構成については第1保持部材13Aと同様となっている。
そして、記録ヘッド20を第2保持部材13Bに固定する場合、予め記録ヘッド20が第2保持部材13Bに位置決めされて、第1軸部71Aの第1雌ネジ部77を第2貫通孔86内に挿入した状態で、固定ネジ85の雄ネジ部88を第2保持部材13Bの+Z方向側から第2貫通孔86に挿入し、固定ネジ85を+Z方向側から-Z方向側に向かって見た平面視で時計回りに回転させる。これにより、第2貫通孔86内で雄ネジ部88を第1雌ネジ部77に螺合させる。そして、さらに固定ネジ85を締め込むことで、第1フランジ部54が第1面74cと固定ネジ85の頭部87との間に挟まれて第1フランジ部54の当接面80が第2保持部材13Bの保持面79に当接した状態、すなわち、記録ヘッド20が第2保持部材13Bに固定された状態となる。第2フランジ部55側でも同様にして固定ネジ85を+Z方向側から第2貫通孔86に挿入し、雄ネジ部88を第2貫通孔86内に挿入された第2軸部71Bの第1雌ネジ部77に螺合させる。これにより第2フランジ部55は、第1面74cと固定ネジ85の頭部87との間に挟まれて、第2フランジ部55の当接面80が第2保持部材13Bの保持面79に当接した状態、すなわち、記録ヘッドが第2保持部材13Bに固定された状態となる。つまり、本実施形態では、1つの記録ヘッド20は、±Y方向の両側に設けられた2本の固定ネジ85と2本の軸部71、すなわち、第1軸部71A及び第2軸部71Bとによって第2保持部材13Bに固定される。
また、この固定状態では、上述した実施形態1と同様に、固定ネジ85の頭部87の全体は凹部89に収容されて、第2保持部材13Bの+Z方向側の面からは突出しないように構成されている。
このように、本発明に係る記録ヘッド20における第1軸部71Aは、+Z方向側に第1雄ネジ部78と第1雌ネジ部77との両方を有するため、記録ヘッド20を保持部材13に固定する際に+Z方向側と-Z方向側とのそれぞれの方向からネジ留めすることが可能となる。つまり、-Z方向側から+Z方向に向かって見た平面視において第1軸部71Aに重なる位置に固定ネジ孔62を有する第1保持部材13Aに記録ヘッド20を固定する場合、換言すると、記録ヘッド20の固定対象が第1保持部材13Aである場合は、-Z方向側から第1軸部71Aを操作することで記録ヘッド20を第1保持部材13Aに固定することができる。また、-Z方向側から+Z方向に向かって見た平面視において第1軸部71Aに重なる位置に第2貫通孔86を有する第2保持部材13Bに記録ヘッド20を固定する場合、換言すると、記録ヘッド20の固定対象が第2保持部材13Bである場合は、第2貫通孔86の+Z方向側から固定ネジ85を挿通して、+Z方向側から固定ネジ85を操作することで、記録ヘッド20を第2保持部材13Bに固定することができる。このように、第1保持部材13Aに記録ヘッド20を固定する場合も、第2保持部材13Bに記録ヘッド20を固定する場合も、何れの場合であっても第1軸部71Aを用いることができる。したがって、固定対象に拘わらず、第1軸部71Aを有する記録ヘッド20を出荷すればよいため、固定対象によって出荷する記録ヘッド20を区別する必要がなく、記録ヘッド20の製造や、在庫管理、出荷作業等を簡略化することができる。また、第1軸部71Aは、記録ヘッド20の固定対象に拘わらずにネジ留めに仕様されるため、固定対象によって不要となることがなく、廃棄処分等の煩雑な作業も不要となる。
以上説明したように、本実施形態の液体噴射ヘッドであるインクジェット式記録ヘッド20では、第1方向である+Z方向に液体であるインクを噴射するノズルを有するノズル面と、+Z方向に沿って伸びる軸本体72を有する第1軸部71Aと、第1軸部71Aが挿通される第1貫通孔であるネジ挿通孔66a、67a、54aを有する筐体部であるヘッドケース32と、を備え、第1軸部71Aの+Z方向側には、第1雄ネジである第1雄ネジ部78及び第1雌ネジである第1雌ネジ部77を有する。
このように、記録ヘッド20の第1軸部71Aは、+Z方向側に第1雄ネジ部78と第1雌ネジ部77との両方を有するため、記録ヘッド20を固定対象である保持部材13に固定する際に+Z方向側と-Z方向側とのそれぞれの方向からネジ留めすることが可能となる。このため、記録ヘッド20を保持する固定対象に合わせて、異なる構成の記録ヘッド20を用意する必要がない。したがって、固定対象に拘わらず、第1軸部71Aを有する記録ヘッド20を出荷すればよいため、固定対象によって出荷する記録ヘッド20を区別する必要がなく、記録ヘッド20の製造、在庫管理、出荷作業等を簡略化することができる。また、第1軸部71Aは、記録ヘッド20の固定対象に拘わらずにネジ留めに仕様されるため、固定対象によって不要となることがなく、廃棄処分等の煩雑な作業も不要となる。
また、本実施形態のインクジェット式記録ヘッド20では、第1雄ネジである第1雄ネジ部78及び第1雌ネジである第1雌ネジ部77は、軸本体72に形成されている。このように軸本体72に第1雄ネジ部78及び第1雌ネジ部77を設けることで、部品点数を減らしてコストを低減することができる。
なお、本実施形態では、第1軸部71Aの第1雄ネジ部78と第1雌ネジ部77とは、同じピッチで且つ同じ位置、つまり±Z方向の同じ位置に谷の最深部が配置されるように形成されているが、特にこれに限定されない。すなわち、本実施形態の第1雄ネジ部78と第1雌ネジ部77についても、上述した実施形態1の変形例の図16及び図17に示す円筒部材73と同じ構成とすることができる。これにより、軸本体72の第1雄ネジ部78及び第1雌ネジ部77が形成された部分の強度を向上することができる。
(他の実施形態)
以上、本願の各実施形態について説明したが、本発明の基本的な構成は上述したものに限定されるものではない。
例えば、上述した各実施形態および変形例では、第1軸部71Aは、第1凸部66のネジ挿通孔66a、第2凸部67のネジ挿通孔67aに挿通される構成であったが、第1軸部71Aはネジ挿通孔66a、67aに挿通されない構成であってもよい。第2軸部71Bについても同様に、第2軸部71Bは、第3凸部68のネジ挿通孔68a及び第4凸部69のネジ挿通孔69aに挿通される構成であったが、第2軸部71Bは、ネジ挿通孔68a、69aに挿通されない構成であってもよい。
また、上述した各実施形態および変形例では、第1軸部71Aはつまみ部76を有さなくてもよい。同様に、第2軸部71Bはつまみ部76を有さなくてもよい。なお、実施形態2では、第1軸部71Aにつまみ部76を設けなくても、ストッパー91が、第2凸部67のネジ挿通孔67aが-Z方向に開口する開口面に当接して、第1軸部71Aのネジ挿通孔67aに対する+Z方向への移動が規制される。このため、第1軸部71Aがネジ挿通孔67aから抜け落ちるのを抑制することができる。また、実施形態1では、第1軸部71Aにつまみ部76を設けない場合には、実施形態2と同様のストッパー91を設けるのが好ましい。
また、上述した各実施形態および変形例では、第1雄ネジ部78と第1雌ネジ部77とがX方向で重なる位置に配置するようにしたが、特にこれに限定されず、第1雄ネジ部78と第1雌ネジ部77とがX方向で完全に重ならない位置となるようにZ方向に互いにずれた位置に形成されていてもよい。これにより、円筒部材73又は軸本体72の剛性を向上することができる。つまり、第1軸部71Aの+Z方向側に第1雄ネジ及び第1雌ネジを有するとは、第1軸部71Aの+Z方向に、第1雄ネジと第1雌ネジとがZ方向に並んで配置されているものも含むものである。
また、上述した各実施形態および変形例では、軸部71である第1軸部71Aと第2軸部71Bとは、同じ構成としたが、特にこれに限定されず、第1軸部71Aと第2軸部71Bとは異なる構成としてもよい。例えば、記録ヘッド20のY方向の両側のそれぞれに、上述した実施形態1の第1軸部71Aと、実施形態2の第1軸部71Aと同様の構成を有する第2軸部71Bとを設けるようにしてもよい。
さらに、本願は、広く液体噴射ヘッド全般を対象としたものであり、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種のインクジェット式記録ヘッド等の記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等にも適用することができる。
また、液体噴射装置の一例としてインクジェット式記録装置1を挙げて説明したが、上述した他の液体噴射ヘッドを用いた液体噴射装置にも用いることが可能である。
また、液体噴射装置の一例として、媒体Sの搬送方向±Y方向に直交する±X方向に複数の液体噴射ヘッドを並設することで、印字幅が媒体Sの±X方向の幅よりも大きいラインヘッドプリンターを用いてもよい。この場合、液体噴射ヘッドの長手方向が±X方向になるようにして、複数の液体噴射ヘッドを並設しても構わない。
また、本願は、前述した各実施形態および各変形例の構成を矛盾の無い範囲で適宜組み合わせてもよい。