JP7412867B1 - Nb合金部材の製造方法 - Google Patents

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Abstract

Figure 0007412867000001
【課題】付加製造を利用して、より機械的特性に優れた耐火Nb合金部材を製造する。
【解決手段】Hf、TaおよびWから選択される一つまたは複数の合金元素を合計で9質量%以上含む耐火Nb合金の合金粉末を準備する工程と、前記合金粉末を付加製造技術により積層して造形物を形成する工程と、前記造形物を1050℃以上、1150℃以下で熱処理して残留応力を除去する工程と、前記造形物を1300℃以上、1500℃以下で熱処理して溶体化する工程とを有するNb合金部材の製造方法。
【選択図】図1

Description

特許法第30条第2項適用 (1)掲載アドレス:https://confit.atlas.jp/guide/event/jspm2022a/subject/3-I-02/advanced(要パスワード) 掲載年月日:令和4年10月5日 (2)発表した研究集会:一般社団法人粉体粉末冶金協会 2022年度秋季大会(第130回講演大会) 主催者名:一般社団法人粉体粉末冶金協会 開催日:令和4年11月15日~11月17日 会場:同志社大学 寒梅館 発表日:令和4年11月17日 (3)掲載アドレス:https://confit.atlas.jp/guide/event/jim2023spring/subject/3M09-22-06/advanced(要パスワード) 掲載年月日:令和5年2月21日 (4)発表した研究集会:日本金属学会2023年春期(第172回)講演大会 主催者名:公益社団法人日本金属学会 開催日:令和5年3月8日~3月10日 会場:東京大学駒場Iキャンパス 発表日:令和5年3月9日 (5)発表した研究集会:Beyond Nickel-Based Superalloys IV International Conference 主催者名:Conventus Congressmanagement & Marketing GmbH 開催日:令和5年6月26日~6月30日 会場:ポツダム、ドイツ 発表日:令和5年6月30日
本発明は、付加製造および熱処理によって耐火Nb合金からなる部材を製造する方法、ならびに当該部材に関する。
耐火Nb合金は、高融点金属の一つであるNbを主成分とし、航空宇宙分野において高温に晒されるエンジン部品等に用いられている。実用化されている耐火Nb合金製部品は、一般に、鋳塊や鍛造された棒材を切削加工して造形される。しかし、多くの場合、素材から最終製品までに90%以上が削り取られることになり、コスト面で課題があった。これに対して、近年、粉体材料から複雑な形状を造形できるという特徴に着目して、付加製造による耐火Nb合金製部品の作製が盛んに研究、開発されている。
例えば、非特許文献1には、最も普及している耐火Nb合金であるC103をレーザー粉末床溶融法(L-PBF)によって積層造形して、1100℃での残留応力除去処理と熱間等方圧加圧処理(HIP)を行うことが記載されている。非特許文献2には、同じくC103合金をL-PBF法によって積層造形して、1000℃で熱処理して残留応力を除去することが記載されている。また、特許文献1には、積層造形の原料として使用可能なニオブ合金粉末が記載されている。
特開2023-078274号公報
O. R. Mirelesら、"Additive Manufacture of Refractory Alloy C103 for Propulsion Applications(推進用途向けの耐火合金C103の付加製造)"、AIAA Propulsion and Energy 2020 Forum、American Institute of Aeronautics and Astronautics、2020年8月 P. D. Awasthiら、"Mechanical properties and microstructural characteristics of additively manufactured C103 niobium alloy(付加製造されたC103ニオブ合金の機械的特性と微細構造特性)"、Materials Science & Engineering A、Elsevier B.V.、第831巻、2022年1月、文献番号142183
耐火Nb合金のような高融点の金属の付加製造では、融解した粉末が急速に凝固するため造形後の残留応力が大きいので、残留応力除去のための熱処理を行うことが不可欠である。しかし、本発明者らは実験によって、残留応力を除去しただけでは機械的特性の回復が不十分で、付加製造後の熱処理方法にはさらに改善の余地があることを見出した。
本発明は上記を考慮してなされたものであり、付加製造を利用して、より機械的特性に優れた耐火Nb合金部材を製造する方法を提供することを目的とする。
本発明のNb合金部材の製造方法は、Hf、TaおよびWから選択される一つまたは複数の合金元素を合計で9質量%以上含む耐火Nb合金の合金粉末を準備する工程と、前記合金粉末を付加製造技術により積層して造形物を形成する工程と、前記造形物を1050℃以上、1150℃以下で熱処理して残留応力を除去する工程と、前記造形物を1300℃以上、1500℃以下で熱処理して溶体化する工程とを有する。
好ましくは、前記合金粉末は質量基準での代表組成が、Nb-10Hf-1Ti、である。あるいは、好ましくは、前記合金粉末は質量基準での代表組成が、Nb-28Ta-10W-1Zr、である。あるいは、好ましくは、前記合金粉末は質量基準での代表組成が、Nb-28Ta-5W-1Zr、である。
本発明のNb合金部材は、Hf、TaおよびWから選択される一つまたは複数の合金元素を合計で9質量%以上含む耐火Nb合金からなり、断面において結晶粒を挟む2本の平行線間の距離の平均が5~45μmであり、前記結晶粒の内部にあり、径が0.1~1.0μmの柱状のセルと、前記結晶粒の粒界に析出した合金元素の酸化物の析出物とを有する。
例えば、上記Nb合金部材において、前記耐火Nb合金は、Hfを9質量%以上含み、前記析出物がHfの酸化物である。あるいは、例えば、上記Nb合金部材において、前記耐火Nb合金は、Taを25質量%以上、Wを4質量%以上、Zrを0.5質量%以上含み、前記析出物がZrの酸化物である。
本発明のNb合金部材の製造方法によれば、付加製造を利用して、より優れた機械的特性を得ることができる。
一実施形態のNb合金部材の製造方法の工程フロー図である。 造形まま材のSEM像である。 カンチレバー試験の結果を示す図である。 造形まま材の室温での引張試験結果と、残留応力除去材の室温から高温での引張試験結果である。 CP-Nb造形物の結晶粒の熱処理による変化を示すEBSD図である。 C103造形物の結晶粒の熱処理による変化を示すEBSD図である。 FS85造形物の結晶粒の熱処理による変化を示すEBSD図である。 FS85-5W造形物の結晶粒の熱処理による変化を示すEBSD図である。 造形まま材および熱処理条件を変えたC103造形物のSEM像である。 熱処理条件を変えたC103造形物のSEM-EDX像である。 応力除去処理と溶体化処理を行ったFS85部材のSEM像である。 応力除去処理と溶体化処理を行ったFS85部材のSEM-EDX像である。 応力除去処理と溶体化処理を行ったFS85-5W部材のSEM像である。 応力除去処理と溶体化処理を行ったFS85-5W部材のSEM-EDX像である。 熱処理条件の異なる試験片の室温での引張試験結果である。 応力除去処理と溶体化処理を行ったNb合金部材の真空中、高温での引張試験結果である。
本発明のNb合金部材の製造方法の一実施形態を、図1の工程フローに沿って説明する。
本実施形態で用いる耐火Nb合金粉末は、Nbを主成分とし、Hf、TaおよびWから選択される一つまたは複数の合金元素を合計で9質量%以上含む。Hf、TaおよびWはいずれも固溶強化によって、Nb合金の強度を向上させる。一方、耐火Nb合金粉末において、Hf、TaおよびWから選択される一つまたは複数の合金元素の合計は、好ましくは40質量%以下である。固溶強化元素が多すぎると、延性が失われやすいからである。耐火Nb合金粉末は、好ましくは、TiおよびZrから選択される一つまたは複数の合金元素を合計で0.5~1.5質量%含む。TiおよびZrはHfとともに、いずれもNbに優先して酸化物を形成することで、合金の高温での耐酸化性を改善する。
このような耐火Nb合金の一例は、質量基準での代表組成が「Nb-10Hf-1Ti」で表されるC103合金である。C103合金は、耐火Nb合金の中では最も多く使われている合金である。C103合金は、通常、質量基準で、Hf:9~11%、Ti:0.7~1.3%、残部:Nbおよび不可避的不純物の組成を有する。代表的な不可避的不純物としては、Zr:0.7%以下、Ta:0.5%以下、W:0.5%以下などが挙げられる。
耐火Nb合金の他の例は、質量基準での代表組成が「Nb-28Ta-10W-1Zr」で表されるFS85合金である。FS85合金は、通常、質量基準で、Ta:26~29%、W:10~12%、Zr:0.6~1.1%、残部:Nbおよび不可避的不純物の組成を有する。
耐火Nb合金のさらに他の例は、質量基準での代表組成が「Nb-28Ta-5W-1Zr」で表されるもので、これはFS85合金のWを4~6質量%に減らしたものである。なお、この合金を、以下において「FS85-5W」という。
合金粉末の粒度は、レーザー回折・散乱法によって測定された粒径の体積基準のメジアン値(d50)が好ましくは10~100μm、より好ましくは20~60μmである。また、付加製造用の原料粉末としては、薄層を形成する際の充填率を高められるようにある程度広い粒度分布を有していることが好ましい。粒径の分布幅の目安として、好ましくは(d90-d10)がd50の0.5~1.5倍である。なお、d10、d50、d90は、全体積を100%としたときの累積カーブがそれぞれ10%、50%、90%となる点の粒子径を表す。
上記合金粉末を用いて、付加製造技術により部材を造形する。付加製造の方式としては、好ましくはレーザー積層造形法(SLM法)を用いる。SLM法は粉末床溶融結合方式の一種で、原料となる合金粉末を造形ステージに敷き詰めて均一な薄層を形成し、薄層の所定位置にレーザー光を走査しながら照射して合金粉末を溶融・凝固させることを繰り返すことで、合金層を積層して、所望の形状に造形する。
SLM法で造形された造形物は、その造形方法に起因して、合金の積層方向に延びる柱状晶を多く含む。そのため、積層方向とそれに垂直な方向とでクリープなどの機械的特性が異なることとなる。以下において、造形時の積層方向をZ方向、積層方向に垂直な方向をXY方向という。なお、SLM法ではレーザー光の走査方向の偏りの影響を抑えるために、1層毎に走査方向を所定角度ずつ回転させて積層が行われるので、造形物の組織はZ方向に垂直な面内では等方的である。本明細書においても、XY方向とはZ方向に垂直であることのみを意味し、Z方向に垂直な面内での特定の方向を意味するものではない。
次に、付加製造で得られた造形物は残留応力を除去するために熱処理される。耐火Nb合金のような高融点の金属の付加製造では、融解した粉末が急速に凝固するため造形後の残留応力が大きい。残留応力を除去することで、後述する溶体化処理や、製品の仕上げのための加工処理時等に造形物が割れることを防止できる。
残留応力除去のための処理温度は、1050℃以上、1150℃以下とする。処理温度が低すぎると残留応力が十分に除去されない。一方、処理温度が高すぎるとその処理温度まで昇温する途中で造形物が割れる恐れがある。造形物を上記処理温度に保持する時間は、好ましくは30分以上、4時間以下である。保持時間が短すぎると、造形物の形状によっては、内部の温度が設定温度まで上がりきらない。一方、保持時間をこれ以上に長くしても特に効果はなく、生産性が低下する。
残留応力を除去した造形物は、次に溶体化処理される。溶体化処理は、溶質原子を均一に固溶させる。また、溶体化処理によって、造形物内の析出物が再配置され、組織が安定する。残留応力を除去した造形物は、一旦冷却して、積層造形時の土台となるプレートから切り離してから、再度溶体化処理温度まで昇温してもよいし、プレートの耐熱性が十分に高ければ、一旦冷却することなく、続けて溶体化処理温度まで昇温してもよい。
溶体化処理温度は、1300℃以上、好ましくは1350℃以上、より好ましくは1400℃以上とする。温度が高いほど溶体化処理の進行が速い。また、後述するように、1300℃以上で溶体化処理することで、析出物が再配置されて、組織が安定する。一方、溶体化処理温度は、1600℃以下、好ましくは1500℃以下とする。溶体化処理温度をこれ以上に高くしても特に効果はなく、処理コストが高くなる。
なお、溶体化処理後に700~900℃で時効処理を行ってもよい。ただし、溶体化処理後に造形物を徐冷、例えば炉冷する場合は、改めて時効処理を行う必要はない。
以上の付加製造工程、残留応力除去工程、溶体化工程によって、本実施形態のNb合金部材が得られる。得られたNb合金部材は、この後、必要に応じて研磨、切削、洗浄、乾燥、酸化抑制のための保護コーティングなどの処理を経て、最終製品となる。
次に、本実施形態の耐火Nb合金造形物の組織について説明する。
Nb合金部材の結晶粒は、断面において結晶粒を挟む2本の平行線間の距離の平均が5~45μmである。また、結晶粒の内部は、径が0.1~1.0μmの柱状のセルで埋められている。この結晶粒およびセルの形状や大きさは付加製造時に形成されたもので、その後の残留応力除去工程および溶体化工程を経ても変わらず維持されたものである。なお、本明細書においては、結晶方位のずれが15度以上である部分を結晶粒の境界としており、結晶方位のずれが15度未満である結晶粒内の柱状晶は、結晶粒とは区別してセルという。セルは、積層造形過程で、冷却によって形成される組織である。
本実施形態のNb合金部材の製造方法およびNb合金部材を、実験結果に基づいてさらに詳細に説明する。
耐火Nb合金粉末として、C103、FS85、FS85-5Wの粉末を用い、Ybファイバーレーザー(出力200W、ビーム径40μm)を備えた粉末積層造形システム(EOS GmbH、M100)を用いてSLM法により造形を行い、条件を変えて各種熱処理を行って、実施例および比較例のNb合金部材を作製した。また、比較のために商業用純Nb(CP-Nb)粉末を用いて、上記と同様に、比較例の純Nb部材を作製した。
部材の組織は、光学顕微鏡および走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した。また、SEM観察時にエネルギー分散型X線分光法(SEM-EDX)により元素の分布を測定した。結晶粒の大きさおよび結晶方位は、後方散乱電子回折(EBSD)により測定した。
部材の機械的特性は、引張試験を行い、0.2%耐力、引張強さおよび破断伸びによって評価した。なお以下において、0.2%耐力と引張強さを併せて「強度」、破断伸びを単に「伸び」という。室温、空気中での引張試験は、ASTM E8-21規格に準拠して、丸型試験片(直径3mm、標点間距離12mm)を用いて行った。試験速度は、0.2%耐力までは応力増加速度9MPa/s、それ以降はひずみ速度20%/minとした。500℃~1100℃、空気中での引張試験は、ASTM E21-20規格に準拠して、丸型試験片(直径3mm、標点間距離12mm)を用いて行った。試験速度は、0.2%耐力まではひずみ速度0.5%/min、それ以降はひずみ速度5%/minとした。1200~1400℃、真空中での引張試験は、MTS808型極超高温材料試験機により、平型試験片(厚さ2.5mm、幅3mm、標点間距離16mm)を用いて行った。試験片を50℃/minで昇温して、試験温度に達した後30min保持した後に、試験を開始した。試験速度は、0.2%耐力までクロスヘッド変位速度0.1mm/min、それ以降はクロスヘッド変位速度1mm/minとした。
表1に使用した粉末の組成および粒度を示す。表2に部材の作製条件を示す。
Figure 0007412867000002
Figure 0007412867000003
まず、造形まま材を評価した。
造形まま材の断面を光学顕微鏡で観察したところ、すべての組成で組織は緻密で、クラックや空孔は観察されなかった。造形物の密度は、すべての組成で、理論密度の99.9%以上であった。
造形まま材の断面をSEMで観察したところ、CP-Nb以外のC103、FS85、FS85-5Wでは、結晶粒内は径が0.2~0.4μmの柱状のセルで埋められていた(図2)。合金組成でのみセル組織が見られた原因は、セル境界の析出物(または偏析による組成の不均一)によって隣接するセルの融合が妨げられたためと考えられる。
造形まま材のZ方向と直交する断面をEBSDによって測定したところ、すべての組成で、Z方向に体心立方晶の[111]方向が揃っていた。この結果は、非特許文献2では、Z方向に[001]方向が揃っていたのとは異なっていた。比較のために、CP-Nb粉末を用いて、より大型の粉末積層造形システム(EOS GmbH、M290。Ybファイバーレーザー出力200W、ビーム径40μm)で造形すると、Z方向に[001]方向が揃っていた。したがって、この結晶方位の違いは、付加製造装置の特性、おそらくは凝固時の熱流の方向の相違によるものと考えられる。
次に、付加製造時の残留応力を評価するためにカンチレバー試験を行い、残留応力除去処理温度を検討した。図3を参照して、2枚の平行な短冊が一端(図3の右奥)で繋がり、残りの部分が並列する薄い壁で繋がった形状を造形して、薄い壁の部分を切断すると、短冊が反って他端(図3の左手前)が開くので、その開きを測定することで、元の造形物の残留応力の大小を評価することができる。図3に、造形まま材と、各種条件で残留応力除去処理をした試料での結果を示す。試料右奥の部分と色調の異なる部分が、ひずみの大きな部分である。
図3の結果から、CP-Nbでは、800℃×1hの熱処理で残留応力がほぼ完全に除去されること、C103では、1000℃×1hの熱処理で残留応力がかなり低減され、1100℃×1hの熱処理でほぼ完全に除去されること、FS85とFS85-5Wでは、1100℃×1hの熱処理で残留ひずみがかなり低減され、1100℃×2hの熱処理でほぼ完全に除去されることが分かった。
図4と表3に、造形まま材の室温での引張試験結果と、残留応力除去処理を行った試験片を用いて室温から1100℃まで温度を変えて行った引張試験の結果を示す。残留応力除去処理は、CP-Nbは900℃×1h、C103は1100℃×1h、FS85およびFS85-5Wは1100℃×2hの条件で行った。
いずれの試料でも、付加製造された造形物に特有の異方性がみられる。特に、合金試料では試験温度によって、Z方向とXY方向の一方または両方で伸びが極端に小さく、実用に耐えない可能性があった。室温での引張試験結果をまま材と応力除去材とで比較すると、すべての組成で応力除去によって強度が少し低下し、伸びが大きくなった。応力除去試料について、CP-Nbでは、引張試験温度が900℃以上で、強度が低下し、伸びが著しく大きくなった。合金組成では、引張試験温度が高くなるに連れて、強度、伸びともに漸減する傾向が見られた。
Figure 0007412867000004
次に、熱処理温度をさらに高くして組織を観察した。試料は、一旦1100℃で残留応力を除去した後に各温度まで昇温して、CP-Nbは再結晶化処理、合金試料は溶体化処理したものである。図5~8に、EBSDで得られた、CP-Nb、C103、FS85とFS85-5Wの結晶粒界を示す。
図5に示したCP-Nbでは、1100℃以上で再結晶化が始まり、1300℃以上では結晶粒が大きく成長した。また、図示しないが、結晶方位の測定結果からは、1400℃では結晶方位が揃っておらず、再結晶化に伴って結晶方位も変化したことが分かった。図6~8に示した合金試料では、1500℃でも再結晶化は起こらず、結晶粒の大きさにも結晶方位にも変化が見られなかった。合金試料で再結晶化が生じなかったのは、後述する析出物の影響と考えられる。
表4に、図5~8において結晶粒を挟む2本の平行線間の距離の平均と標準偏差を示す。表4中のHは図5~8の横方向、Vは図5~8の縦方向(積層方向Z)での値である。以下において、この距離を「断面における粒径」という。切断面は各結晶粒の粒径が最大の部分を通るわけではないので、断面における粒径は実際の結晶粒径より小さく、ばらつきも大きくなるが、結晶粒の大きさの定量的な指標を与える。断面における粒径は、合金組成では7.7~25.9μmの間にあり、C103よりFS85およびFS85-5Wの方が小さかった。
結晶粒径はレーザーのビーム径や出力に依存するので、大型の粉末積層造形システム(EOS GmbH、M290)を用いて、CP-Nbを造形し、900℃×1hの残留応力除去処理を行ったところ、断面における粒径は、Hが22.5μm、Vが33.9μmで、表4で組成と熱処理条件が同じ部材の約1.5~1.8倍であった。このことから、生産用の大型の装置を用いた場合は、断面における粒径は10~45μm程度になると考えられる。また、合金組成の結晶粒内を埋める柱状のセルの径も、0.3~0.8μm程度になると考えられる。
Figure 0007412867000005
図9~14に、いくつかの合金試料のSEM像およびSEM-EDX像を示す。SEM-EDX像では、輝度の高い部分(色の薄い部分)が、当該元素の多い部分である。
図9に示したC103のSEM像では、1100℃での応力除去処理後に結晶粒界およびセル境界に析出物がみられる。さらに1300℃で溶体化を行った試料では、セル境界およびセル境界の析出物が消失して、結晶粒界の析出物が大きく成長している。1400℃で溶体化処理した試料は1300℃と同じ状態を保っているように見える。図10に示したC103のSEM-EDX像から、結晶粒界の析出物はHfの酸化物、おそらくはHfOであることが分かった。このように、C103において、粒界にHfの酸化物が析出することによって再結晶化が妨げられる理由は、付加製造では原料となる粉末が不純物として酸素を多く含むためと考えられる。セル境界の析出物は、サイズが小さいため、SEM-EDXでは成分を同定できなかったが、HfやTiが微細な酸化物を形成して、分散強化剤として作用している可能性がある。
図11~12に示したFS85および図13~14に示したFS85-5Wはいずれも、1100℃×2hで応力除去して、1400℃×1hで溶体化したものである。図11と図13のSEM像では、どちらもセル構造を維持しており、セル境界の析出物も残っていた。図12と図14のSEM-EDX像から、結晶粒界の析出物はZrの酸化物、おそらくはZrOであることが分かった。このように、FS85およびFS85-5Wにおいて、粒界にZrの酸化物が析出することによって再結晶化が妨げられる理由は、C103の場合と同様に、付加製造では原料となる粉末が不純物として酸素を多く含むためと考えられる。セル境界の析出物は、サイズが小さいため、SEM-EDXでは成分を同定できなかったが、Zrが微細な酸化物を形成して、分散強化剤として作用している可能性がある。
造形まま材、応力除去処理を行った試料、応力除去および溶体化処理した試料の、室温での引張試験結果を図15および表5、1000℃での引張試験結果を表6に示す。図15には、比較のために、非特許文献2に記載された鍛造品の値を示した。FS85は造形まま材および応力除去材ではXY方向の延性に欠しいが、応力除去および溶体化処理によって改善される。C103とFS85-5Wは造形ままでも延性があり、複雑形状造形に適している。
Figure 0007412867000006
Figure 0007412867000007
次に、1100℃×2hの残留応力除去処理と1400℃×1hの溶体化処理を行った合金試料について、真空中、1200~1400℃で引張試験を行った。結果を図16と表7に示す。
どの組成でも、試験温度が高くなるにつれて強度が漸減し、伸びが漸増した。C103と、FS85およびFS85-5Wと比較すると、前者の方が伸びは大きく、後者の方が強度は高かった。すべての組成で、強度と伸びのバランスの取れた、優れた機械的特性が確認できた。
Figure 0007412867000008
以上の熱処理条件を変えた合金試料のEBSD測定とSEM観察から、約1100℃の熱処理で残留応力をほぼ除去できること、その後に1300℃以上で溶体化処理することで組織が安定することが分かった。また、1100℃での残留応力除去と1400℃での溶体化によって、真空中、1200~1400℃でも実用に耐える優れた機械的特性が得られることが確認できた。
本発明は、上記の実施形態や実施例に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で種々の変形が可能である。

Claims (3)

  1. 質量基準での代表組成が、Nb-10Hf-1Ti、である耐火Nb合金の合金粉末を準備する工程と、
    前記合金粉末を付加製造技術により積層して造形物を形成する工程と、
    前記造形物を1050℃以上、1150℃以下で熱処理して残留応力を除去する工程と、
    前記造形物を1300℃以上、1500℃以下で熱処理して溶体化する工程と、
    を有するNb合金部材の製造方法。
  2. 質量基準での代表組成が、Nb-28Ta-10W-1Zr、である耐火Nb合金の合金粉末を準備する工程と、
    前記合金粉末を付加製造技術により積層して造形物を形成する工程と、
    前記造形物を1050℃以上、1150℃以下で熱処理して残留応力を除去する工程と、
    前記造形物を1300℃以上、1500℃以下で熱処理して溶体化する工程と、
    を有するNb合金部材の製造方法。
  3. 質量基準での代表組成が、Nb-28Ta-5W-1Zr、である耐火Nb合金の合金粉末を準備する工程と、
    前記合金粉末を付加製造技術により積層して造形物を形成する工程と、
    前記造形物を1050℃以上、1150℃以下で熱処理して残留応力を除去する工程と、
    前記造形物を1300℃以上、1500℃以下で熱処理して溶体化する工程と、
    を有するNb合金部材の製造方法。
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