JP7411410B2 - 緩衝材、靴底および靴 - Google Patents

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Description

本発明は、衝撃を緩和する緩衝材、当該緩衝材を備えた靴底、および、当該靴底を備えた靴に関する。
従来、衝撃を緩和するための各種の緩衝材が知られており、これら各種の緩衝材が用途に応じて使用されている。たとえば、靴においては、着地時に生じる衝撃を緩和する目的で、靴底に緩衝材が設けられる場合がある。この靴底に設けられる緩衝材としては、一般に樹脂製またはゴム製の部材が利用される。
近年においては、靴底に格子構造やウェブ構造を有する部位を設け、材料的にのみならず、構造的に緩衝性能を高めた靴も開発されている。格子構造を有する部位が設けられた靴底を備えた靴が開示された文献としては、たとえば米国特許公開公報第2018/0049514号明細書(特許文献1)がある。
一方で、特表2017-527637号公報(特許文献2)には、三次元積層造形法を用いて製造される三次元物体として、内部に空洞を有する多面体や三重周期極小曲面等の幾何学的な面構造を基準にこれに厚みを付けたものが製造可能であることが記載されており、当該三次元物体を弾性材料にて構成することにより、たとえばこれを靴底に適用できることが開示されている。
米国特許公開公報第2018/0049514号明細書 特表2017-527637号公報
ここで、上述した如くの幾何学的な面構造を基準にこれに厚みを付けた構造を有する緩衝材は、格子構造やウェブ構造を有する部位を含む緩衝材に比べて、高い圧縮剛性を有しているという構造上の特徴を有している。
しかしながら、三重周期極小曲面を基準にこれに厚みを付けた構造を有する緩衝材においては、その構造に起因して、外力を受けた場合に局所的に応力集中が発生してしまうという問題がある。この局所的な応力集中は、耐久性の低下の原因となる。
したがって、本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、各種の用途に使用することが可能な、緩衝性能に優れるとともに耐久性にも優れた緩衝材を提供することを目的とし、また、当該緩衝材を備えた靴底、および、当該靴底を備えた靴を提供することを目的とする。
本発明に基づく緩衝材は、並行する一対の曲面によって外形が規定される壁にて形作られた立体的形状を単位構造体とし、当該単位構造体が少なくとも一方向において規則的にかつ連続的に繰り返し配列されてなる立体構造物を含む弾性体からなる単一の造形物として構成されたものである。上記立体構造物は、三重周期極小曲面を基準にこれに厚みを付けたものからなり、少なくとも特定の平面に沿って切断した場合に蛇行状に延在する断面形状が現れる部位である蛇行部を有している。上記本発明に基づく緩衝材は、上記蛇行部の方向転換点を補強する補強部を備えている。上記補強部は、他の部分に比して上記方向転換点の厚みを増すために当該方向転換点の入隅部に突状に設けられた付加厚み部にて構成されており、上記付加厚み部は、上記入隅部を横切るように延在している。
本発明に基づく靴底は、上述した本発明に基づく緩衝材を備えてなるものである。
本発明に基づく靴は、上述した本発明に基づく靴底と、上記靴底の上方に設けられたアッパーとを備えてなるものである。
本発明によれば、各種の用途に使用することが可能な、緩衝性能に優れるとともに耐久性にも優れた緩衝材を提供することが可能になり、また、当該緩衝材を備えた靴底、および、当該靴底を備えた靴を提供することが可能になる。
実施の形態1に係る緩衝材の一部破断斜視図である。 図1に示す緩衝材の正面図である。 図1に示す緩衝材の平面図である。 図1に示す緩衝材の断面図である。 比較例1,2および実施例に係る緩衝材の緩衝性能をシミュレーションした結果を示すグラフである。 比較例1,2に係る緩衝材と実施例に係る緩衝材との変形の仕方の違いを表わした模式断面図である。 図6の一部を拡大して示した図である。 第1および第2変形例に係る緩衝材の要部の形状を示す模式断面図である。 実施の形態2に係る緩衝材の一部破断斜視図である。 図9に示す緩衝材の断面図である。 関連形態に係る緩衝材の一部破断斜視図である。 図11に示す緩衝材の断面図である。 実施の形態3に係る靴底およびこれを備えた靴の斜視図である。 図13に示す靴底の側面図である。 図13に示す靴底における緩衝材の配置例を表わした模式図である。
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る緩衝材の一部破断斜視図である。図2は、図1中に示す矢印II方向から見た緩衝材の正面図である。図3は、図1中に示す矢印III方向から見た緩衝材の平面図である。また、図4は、図3中に示すIV-IV線に沿った緩衝材の断面図である。以下、これら図1ないし図4を参照して、本実施の形態に係る緩衝材1Aについて説明する。
図1ないし図4に示すように、緩衝材1Aは、複数の単位構造体U(特に図1参照)を有する立体構造物Sを含んでいる。複数の単位構造体Uの各々は、並行する一対の曲面によって外形が規定される壁10にて形作られた立体的形状を有している。
ここで、図1においては、理解を容易とするために、参照符号Uを厳密な意味においては単位構造体に付しておらず、当該単位構造体が占有する空間である直方体形状の単位空間に付している。
複数の単位構造体Uは、幅方向(図中に示すX方向)、奥行き方向(図中に示すY方向)および高さ方向(図中に示すZ方向)の各々に沿って規則的にかつ連続的に繰り返し配列されている。図1ないし図4においては、幅方向、奥行き方向および高さ方向においてそれぞれ隣接する3つの単位構造体Uのみを抜き出して示しており、その破断面には、斜線を付している。
なお、本実施の形態においては、幅方向、奥行き方向および高さ方向においてそれぞれ多数の単位構造体Uが設けられてなる緩衝材1Aを例示して説明を行なうが、幅方向、奥行き方向および高さ方向における単位構造体Uの繰り返しの数は、特にこれが制限されるものではなく、これら3つの方向のうちの少なくとも一方向に沿って2つ以上配列されていればよい。
上述したように、複数の単位構造体Uの各々は、壁10によって形作られた立体的形状を有している。そのため、これら複数の単位構造体Uが互いに連続して接続されることにより、立体構造物Sもまた、これら壁10の集合体によって構成されている。
ここで、緩衝材1Aに含まれる立体構造物Sは、幾何学的な面構造を基準にこれに厚みを付けた構造を有している。本実施の形態に係る緩衝材1Aにおいては、当該面構造は、数学的に定義される三重周期極小曲面の一種であるシュワルツP構造である。なお、極小曲面とは、与えられた閉曲線を境界にもつ曲面の中で面積が最小のものと定義される。
図4に示すように、シュワルツP構造を基準にこれに厚みを付けた立体構造物Sは、これを特定の平面に沿って切断した場合に蛇行状に延在する断面形状が現れる部位である蛇行部11を有している。当該特定の平面は、本実施の形態においては、図3において紙面と直交しかつIV-IV線と平行な平面である。
蛇行部11は、立体構造物Sの構造上、幅方向に沿って延在するもの、奥行き方向に沿って延在するもの、および、高さ方向に沿って延在するものの合計で3種類が存在することになるが、ここでは、図4に示す断面において現れる、高さ方向(すなわちZ方向)に沿って延在する蛇行部11に着目している。
この高さ方向に延在する蛇行部11は、当該高さ方向に沿って位置する複数の方向転換点12を有しており、当該方向転換点12においては、入隅部13と出隅部14とがそれぞれ設けられている。このうち、入隅部13は、上記断面形状において、壁10の表面上において凹状の形状を有するように現れる部位であり、出隅部14は、上記断面形状において、壁10の表面上において凸状の形状を有するように現れる部位である。
ここで、この高さ方向に延在する蛇行部11は、隣り合う蛇行部との間の距離が当該高さ方向における位置によって異なっており、上述した距離は、高さ方向に沿って移動するにつれて周期的に大きくなったり小さくなったりする。
このうち、上述した距離が最も小さくなる部分の壁10には、隣り合う蛇行部11の方向転換点12同士を挟み込むようにリング状の補強部20が設けられている。このようにして設けられた複数のリング状の補強部20は、壁10とは別の部材として構成された付加部材からなり、これら複数の補強部20の各々は、上述した方向転換点12の入隅部13を横切るように位置している。
なお、図1ないし図4においては、複数のリング状の補強部20の具体的な形状および配置位置の理解が容易となるように、当該複数の補強部20については、立体構造物Sのうちの図示のために抜き出して示した部分(すなわち、幅方向、奥行き方向および高さ方向においてそれぞれ隣接する3つの単位構造体Uのみを抜き出して示したもの)よりも外側に配置される部分についても、これを破断させることなく図示している。
ここで、緩衝材1Aの製造方法は、特にこれが制限されるものではないが、緩衝材1Aは、たとえば三次元積層造形装置を用いた造形によって製造することができる。この三次元積層造形装置を用いた造形によって緩衝材1Aを製造する場合には、上述した壁10の材質とリング状の補強部20の材質とは、同じになる。ただし、熱溶融積層(FDM)方式の三次元積層造形装置を用いた場合には、上述した壁10の材質とリング状の補強部20の材質とを異ならせることも可能である。
緩衝材1A(すなわち壁10およびリング状の補強部20)の材質としては、弾性力に富んだ材料であれば基本的にどのような材料であってもよいが、樹脂材料またはゴム材料であることが好ましい。より具体的な材質としては、緩衝材1Aを樹脂製とする場合には、たとえばエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)等の熱可塑性樹脂とすることができ、また、たとえばポリウレタン(PU)等の熱硬化性樹脂とすることができる。一方、緩衝材1Aをゴム製とする場合には、たとえばブタジエンゴムとすることができる。
緩衝材1Aは、ポリマー組成物にて構成することもできる。その場合にポリマー組成物に含有させるポリマーとしては、たとえばオレフィン系エラストマーやオレフィン系樹脂等のオレフィン系ポリマーが挙げられる。オレフィン系ポリマーとしては、たとえばポリエチレン(たとえば直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等)、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-1-ヘキセン共重合体、プロピレン-4-メチル-1-ペンテン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、エチレン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-4-メチル-ペンテン共重合体、エチレン-1-ブテン共重合体、1-ブテン-1-ヘキセン共重合体、1-ブテン-4-メチル-ペンテン、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-メタクリル酸エチル共重合体、エチレン-メタクリル酸ブチル共重合体、エチレン-メチルアクリレート共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-ブチルアクリレート共重合体、プロピレン-メタクリル酸共重合体、プロピレン-メタクリル酸メチル共重合体、プロピレン-メタクリル酸エチル共重合体、プロピレン-メタクリル酸ブチル共重合体、プロピレン-メチルアクリレート共重合体、プロピレン-エチルアクリレート共重合体、プロピレン-ブチルアクリレート共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、プロピレン-酢酸ビニル共重合体のポリオレフィン等が挙げられる。
また、上記ポリマーは、たとえばアミド系エラストマーやアミド系樹脂等のアミド系ポリマーであってもよい。アミド系ポリマーとしては、たとえばポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド66、ポリアミド610等が挙げられる。
また、上記ポリマーは、たとえばエステル系エラストマーやエステル系樹脂等のエステル系ポリマーであってもよい。エステル系ポリマーとしては、たとえばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。
また、上記ポリマーは、たとえばウレタン系エラストマーやウレタン系樹脂等のウレタン系ポリマーであってもよい。ウレタン系ポリマーとしては、たとえばポリエステル系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン等が挙げられる。
また、上記ポリマーは、たとえばスチレン系エラストマーやスチレン系樹脂等のスチレン系ポリマーであってもよい。スチレン系エラストマーとしては、スチレン-エチレン-ブチレン共重合体(SEB)、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SBS)、SBSの水素添加物(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体(SEBS))、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体(SIS)、SISの水素添加物(スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン共重合体(SEPS))、スチレン-イソブチレン-スチレン共重合体(SIBS)、スチレン-ブタジエン-スチレン-ブタジエン(SBSB)、スチレン-ブタジエン-スチレン-ブタジエン-スチレン(SBSBS)等が挙げられる。スチレン系樹脂としては、たとえばポリスチレン、アクリロニトリルスチレン樹脂(AS)、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂(ABS)等が挙げられる。
また、上記ポリマーは、たとえばポリメタクリル酸メチルなどのアクリル系ポリマー、ウレタン系アクリルポリマー、ポリエステル系アクリルポリマー、ポリエーテル系アクリルポリマー、ポリカーボネート系アクリルポリマー、エポキシ系アクリルポリマー、共役ジエン重合体系アクリルポリマーならびにその水素添加物、ウレタン系メタクリルポリマー、ポリエステル系メタクリルポリマー、ポリエーテル系メタクリルポリマー、ポリカーボネート系メタクリルポリマー、エポキシ系メタクリルポリマー、共役ジエン重合体系メタクリルポリマーならびにその水素添加物、ポリ塩化ビニル系樹脂、シリコーン系エラストマー、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、クロロプレン(CR)、天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)等であってもよい。
以上において説明した本実施の形態に係る緩衝材1Aは、高さ方向(すなわち、複数のリング状の補強部20の軸方向と平行な方向)において緩衝機能が発揮されるように構成されたものであり、当該方向に沿って外力が加えられた場合に、緩衝性能に優れるとともに耐久性にも優れた緩衝材となる。これは、緩衝材1Aの構造的特徴(形状的特徴)によるところが大きい。以下、この点について、本発明者が行なった検証試験の結果に基づいて詳細に説明する。
図5は、比較例1,2および実施例に係る緩衝材の緩衝性能をシミュレーションした結果を示すグラフである。図6は、当該シミュレーション結果に基づいた比較例1,2に係る緩衝材と実施例に係る緩衝材との変形の仕方の違いを表わした模式断面図である。ここで、図6(A1)~図6(A4)は、外力を徐々に増加させた場合の比較例1,2に係る緩衝材の変形の仕方を表わしたものであり、図6(B1)~図6(B4)は、外力を徐々に増加させた場合の実施例に係る緩衝材の変形の仕方を表わしたものである。また、図7(A)および図7(B)は、それぞれ図6(A4)および図6(B4)を拡大して示した図である。
検証試験においては、比較例1,2および実施例に係る緩衝材のモデルをそれぞれ具体的に設計し、これらモデルに対して所定方向に沿って外力が加わった場合を想定し、その場合の挙動についてシミュレーションによって個別に解析を行なった。より具体的には、これらモデルのそれぞれについて、いわゆる応力-歪み曲線を得るとともに、外力が加わった場合の緩衝材の形状変化について検証を行なった。
ここで、実施例に係る緩衝材は、本実施の形態に係る緩衝材1Aそのものであり、壁10と複数のリング状の補強部20とによって構成されたものである。一方、比較例1,2に係る緩衝材は、いずれも本実施の形態に係る緩衝材1Aから複数のリング状の補強部20を取り除いた構造のものであり、壁10のみによって構成されたものである。
このうち、比較例1に係る緩衝材は、単位構造体Uの幅方向の寸法、奥行き方向の寸法および高さ方向の寸法をそれぞれ10mmとしたものであり、壁10の厚みtを1.4mmとしたものである。なお、この場合の占積率Vは、約30%である。
また、比較例2に係る緩衝材は、単位構造体Uの幅方向の寸法、奥行き方向の寸法および高さ方向の寸法をそれぞれ10mmとしたものであり、壁10の厚みtを1.8mmとしたものである。なお、この場合の占積率Vは、約40%である。
一方、実施例に係る緩衝材は、単位構造体Uの幅方向の寸法、奥行き方向の寸法および高さ方向の寸法をそれぞれ10mmとしたものであり、壁10の厚みtを1.4mmとしたものである。なお、この場合の占積率Vは、比較例1の場合に比べて複数のリング状の補強部20を有する分だけ大きく、比較例2と同等の約40%である。
また、比較例1,2および実施例に係る緩衝材に加える外力の方向は、いずれも高さ方向(すなわち、実施例に係る緩衝材においては、複数のリング状の補強部20の軸方向と平行な方向)とした。なお、比較例1,2および実施例に係る緩衝材の材質は、いずれもウレタン系アクリルポリマーを想定した。
図5を参照して、比較例1に係る緩衝材と比較例2に係る緩衝材との比較から分かるように、壁10のみからなる緩衝材にあっては、壁10の厚みtを変更することにより、緩衝材の圧縮剛性を変化させることが可能になる。具体的には、壁10の厚みtが大きいほど圧縮剛性が大きくなり、壁10の厚みtが小さいほど圧縮剛性が小さくなる。
その反面、壁10の厚みtを変更した場合には、これに伴って占積率Vも増加することになるため、壁10の厚みtが大きいほど占積率Vが増加して緩衝材が重くなり、壁10の厚みtが小さいほど占積率Vが減少して緩衝材が軽くなる。したがって、圧縮剛性の確保と軽量化とはいわゆるトレードオフの関係を有していることになる。
ここで、図6(A1)~図6(A4)に示すように、比較例1,2に係る緩衝材1Xにおいては、高さ方向(すなわちZ方向)に沿って加わる外力が増加することに伴い、当初から湾曲した断面形状を有する蛇行部11の方向転換点12において特に大きな変形が発生する。この方向転換点12における変形は、外力が増加するに伴って顕著となり、最終的には、蛇行部11が高さ方向に沿って潰れて壁10同士が互いに接触した状態となる。
このとき、図7(A)に示すように、方向転換点12の入隅部13においては、壁10の表面近傍において高い圧縮応力が加わることになり、方向転換点12の出隅部14においては、壁10の表面近傍において高い引張応力が加わることになる。すなわち、特に方向転換点12の近傍において、局所的に応力集中が発生することになる。この局所的な応力集中は、当該部分における緩衝材1Xの破損に繋がることになり、その結果、緩衝材1Xにおいては、高い耐久性を期待することが困難となる。
一方、図6(B1)~図6(B4)に示すように、実施例に係る緩衝材1Aにおいても、高さ方向(すなわちZ方向)に沿って加わる外力が増加することに伴い、当初から湾曲した断面形状を有する蛇行部11の方向転換点12において特に大きな変形が発生する。この方向転換点12における変形は、外力が増加するに伴って大きくなるものの、ある程度変形が進行した時点でそれ以上の変形が抑制されるようになる。
すなわち、図7(B)に示すように、方向転換点12においてある程度変形が進行した後には、方向転換点12の入隅部13に沿って配置されたリング状の補強部20に当該入隅部13の表面が接触することになる。すなわち、リング状の補強部20は、壁10によって概ね高さ方向において挟み込まれることになる。
そのため、方向転換点12のそれ以上の変形が物理的に阻害されることになり、これに伴って蛇行部11のうちの方向転換点12以外の部分に応力が分散される。したがって、複数のリング状の補強部20を縫うように蛇行部11が配置されることになり、方向転換点12の入隅部13および出隅部14における応力集中が緩和できることになる。
以上において説明した検証試験の結果によれば、実施例に係る緩衝材1Aとすることにより、高さ方向(すなわち、複数のリング状の補強部20の軸方向と平行な方向)に沿って外力が加えられた場合において高い緩衝性能を発揮するとともに、高い耐久性をも発揮することができる緩衝材とすることができることが分かる。
したがって、上述した本実施の形態に係る緩衝材1Aとすることにより、各種の用途に使用することが可能な、緩衝性能に優れるとともに耐久性にも優れた緩衝材とすることができる。
(第1および第2変形例)
図8(A)および図8(B)は、それぞれ第1および第2変形例に係る緩衝材の要部の形状を示す模式断面図である。以下、これら図8(A)および図8(B)を参照して、上述した実施の形態1に基づいた第1および第2変形例に係る緩衝材1A1,1A2について説明する。
図8(A)に示すように、第1変形例に係る緩衝材1A1は、上述した実施の形態1に係る緩衝材1Aが有していた複数のリング状の補強部20を有しておらず、これに代えて壁10の所定位置に複数の付加厚み部15が設けられてなるものである。この複数の付加厚み部15の各々は、蛇行部11の方向転換点12の入隅部13に突状に設けられている。また、複数の付加厚み部15の各々は、当該入隅部13を横切るように延在している。
付加厚み部15は、他の部分に比して方向転換点12の厚みを増すために設けられたものであり、上述した実施の形態1におけるリング状の補強部20に代替して補強部を構成している。この付加厚み部15を設けることにより、外力が加えられることによって方向転換点12においてある程度変形が生じた後においては、方向転換点12のそれ以上の変形が当該付加厚み部15によって物理的に阻害されることになるため、これによって方向転換点12における応力集中の発生が抑制できる。
図8(B)に示すように、第2変形例に係る緩衝材1A2は、上述した実施の形態1に係る緩衝材1Aが有していた複数のリング状の補強部20を有しておらず、これに代えて壁10の所定位置に複数の付加厚み部15’が設けられてなるものである。この複数の付加厚み部15’の各々は、上述した緩衝材1A1が有していた付加厚み部15とは異なり、突起状の形状を有しておらず、蛇行部11の方向転換点12の入隅部13を埋め込むように設けられている。また、複数の付加厚み部15’の各々は、当該入隅部13を横切るように延在している。
付加厚み部15’は、他の部分に比して方向転換点12の厚みを増すために設けられたものであり、上述した実施の形態1におけるリング状の補強部20に代替して補強部を構成している。この付加厚み部15’を設けることにより、外力が加えられることによって方向転換点12においてある程度変形が生じた後においては、方向転換点12のそれ以上の変形が当該付加厚み部15’によって物理的に阻害されることになるため、これによって方向転換点12における応力集中の発生が抑制できる。
したがって、これら第1および第2変形例に係る緩衝材1A1,1A2とした場合にも、上述した実施の形態1に係る緩衝材1Aと同様に、各種の用途に使用することが可能な、緩衝性能に優れるとともに耐久性にも優れた緩衝材とすることができる。
(実施の形態2)
図9は、実施の形態2に係る緩衝材の一部破断斜視図である。図10は、図9中に示すX-X線に沿った緩衝材の断面図である。以下、これら図9および図10を参照して、本実施の形態に係る緩衝材1Bについて説明する。
図9および図10に示すように、緩衝材1Bは、複数の単位構造体U(特に図9参照)を有する立体構造物Sを含んでいる。複数の単位構造体Uの各々は、並行する一対の曲面によって外形が規定される壁10にて形作られた立体的形状を有している。
複数の単位構造体Uは、幅方向(図中に示すX方向)、奥行き方向(図中に示すY方向)および高さ方向(図中に示すZ方向)の各々に沿って規則的にかつ連続的に繰り返し配列されている。図9および図10においては、幅方向、奥行き方向および高さ方向においてそれぞれ隣接する3つの単位構造体Uのみを抜き出して示しており、その破断面には、斜線を付している。
上述したように、複数の単位構造体Uの各々は、壁10によって形作られた立体的形状を有している。そのため、これら複数の単位構造体Uが互いに連続して接続されることにより、立体構造物Sもまた、これら壁10の集合体によって構成されている。
ここで、緩衝材1Bに含まれる立体構造物Sは、幾何学的な面構造を基準にこれに厚みを付けた構造を有している。本実施の形態に係る緩衝材1Bにおいては、当該面構造は、数学的に定義される三重周期極小曲面の一種であるジャイロイド構造である。
図10に示すように、ジャイロイド構造を基準にこれに厚みを付けた立体構造物Sは、これを特定の平面に沿って切断した場合に蛇行状に延在する断面形状が現れる部位である蛇行部11を有している。当該特定の平面は、本実施の形態においては、YZ平面である。
蛇行部11は、立体構造物Sの構造上、幅方向に沿って延在するもの、奥行き方向に沿って延在するもの、および、高さ方向に沿って延在するものの合計で3種類が存在することになるが、ここでは、図10に示す断面において現れる、高さ方向(すなわちZ方向)に沿って延在する蛇行部11に着目している。
この高さ方向に延在する蛇行部11は、当該高さ方向に沿って位置する複数の方向転換点12を有しており、当該方向転換点12においては、入隅部13と出隅部14とがそれぞれ設けられている。このうち、入隅部13は、上記断面形状において、壁10の表面上において凹状の形状を有するように現れる部位であり、出隅部14は、上記断面形状において、壁10の表面上において凸状の形状を有するように現れる部位である。ここで、この高さ方向に延在する蛇行部11は、隣り合う蛇行部との間の距離が一定となるように位置している。
蛇行部11のうちの入隅部13に対応する位置には、補強部20が設けられている。この補強部20は、上述した高さ方向に沿って延在する蛇行部11とは異なる蛇行部である、幅方向(すなわちX方向)に沿って延在する蛇行部に沿って蛇行状に配置されてなるものであり、この蛇行状の補強部20は、幅方向に沿って位置する複数の入隅部13を横切るように延在している。
このように構成された本実施の形態に係る緩衝材1Bとした場合にも、上述したように応力集中が発生する部位である蛇行部11の方向転換点12の入隅部13を横切るように蛇行状の補強部20が配置された構造を有しているため、方向転換点12に生じ得る応力集中が当該蛇行状の補強部20によって緩和できることになり、結果として緩衝性能に優れるとともに耐久性にも優れた緩衝材とすることができる。
(関連形態)
図11は、関連形態に係る緩衝材の一部破断斜視図である。図12は、図11に示すXII-XII線に沿った緩衝材の断面図である。以下、これら図11および図12を参照して、関連形態に係る緩衝材1Cについて説明する。
図11および図12に示すように、緩衝材1Cは、複数の単位構造体U(特に図11参照)を有する立体構造物Sを含んでいる。複数の単位構造体Uの各々は、並行する一対の平面によって外形が規定される壁10にて形作られた立体的形状を有している。
複数の単位構造体Uは、幅方向(図中に示すX方向)、奥行き方向(紙面と交差する方向)および高さ方向(図中に示すZ方向)の各々に沿って規則的にかつ連続的に繰り返し配列されている。図11および図12においては、幅方向、奥行き方向および高さ方向においてそれぞれ隣接する2つの単位構造体Uのみを抜き出して示しており、その破断面には、斜線を付している。なお、図11においては、奥行き方向であるY方向が、上述したように紙面と交差する方向に延びており、その表記上、Z方向を表わす座標軸と重なってしまうため、これを表わす座標軸を図示していない。
上述したように、複数の単位構造体Uの各々は、壁10によって形作られた立体的形状を有している。そのため、これら複数の単位構造体Uが互いに連続して接続されることにより、立体構造物Sもまた、これら壁10の集合体によって構成されている。
ここで、緩衝材1Cに含まれる立体構造物Sは、幾何学的な面構造を基準にこれに厚みを付けた構造を有している。本関連形態に係る緩衝材1Cにおいては、当該面構造は、内部に空洞を有する多面体の一種であるオクテット構造である。
本関連形態に係る緩衝材1Cは、三次元積層造形装置を用いた造形によって製造される。その場合、製造上の理由から、緩衝材1Cの内部に設けられる上述した空洞は、これを壁10によって完全には密閉することができない。そのため、複数の壁10の各々の所定位置には、貫通孔16が形成されることになる。この貫通孔16が設けられた部分近傍の壁10は、壁10の他の部分に比較して脆弱であるため、外力が加えられた場合により大きく変形して応力集中が発生し易い部位となる。
そのため、本関連形態に係る緩衝材1Cにおいては、隣り合う貫通孔16同士を挿通するように、リング状の補強部20が設けられており、これによって応力集中が発生することが抑制されている。すなわち、このリング状の補強部20が貫通孔16を挿通していることにより、高さ方向に沿って外力が加えられることによって当該貫通孔16が設けられた部分近傍の壁10の変形がある程度進行した後においては、リング状の補強部20が貫通孔16を規定する部分の壁10に接触することになり、それ以上の当該壁10の変形が物理的に阻害されることになる。そのため、貫通孔16が設けられた部分近傍の壁10において応力集中が発生することが抑制できる。
したがって、本関連形態に係る緩衝材1Cとした場合にも、補強部20によって壁10の特定の部位に応力集中が発生することが抑制できることになり、結果として緩衝性能に優れるとともに耐久性にも優れた緩衝材とすることができる。
なお、図11および図12においては、複数のリング状の補強部20の具体的な形状および配置位置の理解が容易となるように、当該複数の補強部20については、立体構造物Sのうちの図示のために抜き出して示した部分(すなわち、幅方向、奥行き方向および高さ方向においてそれぞれ隣接する2つの単位構造体Uのみを抜き出して示したもの)よりも外側に配置される部分についても、これを破断させることなく図示している。
(実施の形態3)
図13は、実施の形態3に係る靴底およびこれを備えた靴の斜視図であり、図14は、図13に示す靴底の側面図である。また、図15は、図13に示す靴底における緩衝材の配置例を表わした模式図である。ここで、図15(A)は、図14中に示すXVA-XVA線に沿った靴底の模式的な断面図である。以下、これら図13ないし図15を参照して、本実施の形態に係る靴底110およびこれを備えた靴100について説明する。なお、本実施の形態に係る靴底110は、上述した実施の形態1に係る緩衝材1Aを具備してなるものである。
図13に示すように、靴100は、靴底110と、アッパー120とを備えている。靴底110は、足の足裏を覆う部材であり、略偏平な形状を有している。アッパー120は、挿入された足の甲側の部分の全体を少なくとも覆う形状を有しており、靴底110の上方に位置している。
アッパー120は、アッパー本体121と、シュータン122と、シューレース123とを有している。このうち、シュータン122およびシューレース123は、いずれもアッパー本体121に固定または取り付けられている。
アッパー本体121の上部には、足首の上部と足の甲の一部とを露出させる上側開口部が設けられている。一方、アッパー本体121の下部には、一例としては、靴底110によって覆われる下側開口部が設けられており、他の例としては、当該アッパー本体121の下端が袋縫いされること等で底部が形成されている。
シュータン122は、アッパー本体121に設けられた上側開口部のうち、足の甲の一部を露出させる部分を覆うようにアッパー本体121に縫製、溶着あるいは接着またはこれらの組み合わせ等によって固定されている。アッパー本体121およびシュータン122としては、たとえば織地や編地、不織布、合成皮革、樹脂等が用いられ、特に通気性や軽量性が求められる靴においては、ポリエステル糸を編み込んだダブルラッセル経編地が利用される。
シューレース123は、アッパー本体121に設けられた足の甲の一部を露出させる上側開口部の周縁を足幅方向において互いに引き寄せるための紐状の部材からなり、当該上側開口部の周縁に設けられた複数の孔部に挿通されている。アッパー本体121に足が挿入された状態においてこのシューレース123を締め付けることにより、アッパー本体121を足に密着させることが可能になる。
図13ないし図15に示すように、靴底110は、ミッドソール111と、アウトソール112と、緩衝材1Aとを有している。ミッドソール111は、靴底110の上部に位置しており、アッパー120に接合されている。アウトソール112は、その下面に接地面112a(図14参照)を有しており、靴底110の下部に位置している。緩衝材1Aは、これらミッドソール111とアウトソール112との間の所定位置に介装されている。
ミッドソール111は、適度な強度を有しつつも緩衝性に優れていることが好ましく、当該観点から、ミッドソール111としては、たとえば樹脂製またはゴム製のフォーム材とすることができ、特に好適にはエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)等の熱可塑性樹脂、ポリウレタン(PU)等の熱硬化性樹脂、ブタジエンゴム等からなるフォーム材とすることができる。
アウトソール112は、耐摩耗性やグリップ性に優れていることが好ましく、当該観点から、アウトソール112としては、たとえばゴム製とすることができる。なお、アウトソール112の下面である接地面112aには、上述したグリップ性を高める観点から、トレッドパターンが付与されていてもよい。
図14に示すように、靴底110は、平面視した状態における長軸方向である前後方向(図中の左右方向)に沿って、足の足趾部と踏付け部とを支持する前足部R1、足の踏まず部を支持する中足部R2、および、足の踵部を支持する後足部R3に区画される。また、図15(A)に示すように、靴底110は、平面視した状態における長軸方向と交差する方向である足幅方向に沿って、足のうちの解剖学的正位における正中側(すなわち正中に近い側)である内足側の部分(図中に示すS1側の部分)と、足のうちの解剖学的正位における正中側とは反対側(すなわち正中に遠い側)である外足側の部分(図中に示すS2側の部分)とに区画される。
ここで、本実施の形態に係る靴100にあっては、ミッドソール111に所定形状の切り欠き部が設けられており、当該切り欠き部に緩衝材1Aが収容されることにより、緩衝材1Aが靴底110の厚み方向においてミッドソール111とアウトソール112とによって挟み込まれた状態で固定されている。
具体的には、図14および図15(A)に示すように、ミッドソール111には、靴底110の周縁に沿うように中足部R2と後足部R3に跨がって平面視略U字状の切り欠き部が設けられており、当該切り欠き部を埋め込むように全体として平面視略U字状に形成された緩衝材1Aが配置されている。より詳細には、緩衝材1Aは、中足部R2の内足側の縁部、後足部R3の内足側の縁部、後足部R3の後方側の縁部、後足部R3の外足側の縁部、および、中足部R2の外足側の縁部に沿って配置されている。
緩衝材1Aの材質としては、上述した実施の形態1において説明したように、特にこれが制限されるものではないが、たとえば樹脂材料またはゴム材料とすることができ、特に好適にはエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)等の熱可塑性樹脂、ポリウレタン(PU)等の熱硬化性樹脂、ブタジエンゴム等とすることができる。また、オレフィン系ポリマー、アミド系ポリマー、エステル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、スチレン系ポリマー、アクリル系ポリマー等のポリマー組成物とすることもできる。
ここで、図14に示すように、緩衝材1Aは、その高さ方向(すなわち、複数のリング状の補強部20の軸方向と平行な方向であり、換言すれば蛇行部11の延在方向である図中のZ方向(図1ないし図4等参照))が靴底110の接地面112aと直交するように配置されている。このように構成することにより、着地時において足裏および地面から靴底110に付与される荷重が緩衝材1Aが大きい変形量をもって変形することによって吸収され、靴底110から足裏に対して印加される荷重が減少し、高い緩衝性能が得られることになる。
また、ここではその詳細な説明を省略するが、緩衝材1Aは、上述したように複数のリング状の補強部20を有することで応力集中が発生することが抑制されたものであるため、当該応力集中による破損の発生が抑制されており、従来に比してその耐久性が確保されたものである。
したがって、本実施の形態に係る靴底110およびこれを備えた靴100とすることにより、緩衝性能に優れるとともに耐久性にも優れた靴底およびこれを備えた靴とすることができる。
なお、緩衝材1Aは、互いに独立した複数の部材が組み合わされて相互に接合等されることによって全体として上述したような平面視略U字状の形状に形成されていてもよいが、より好ましくは、その全体が一部材として構成されることで上述した平面視略U字状の形状に形成されていることが好ましい。特に後者の構成を採用する場合には、直方体形状からなる単位構造体Uを複数備えた緩衝材1Aを、部位毎における緩衝性能の偏りを排除しつつ、如何に非直方体形状の切り欠き部に対してレイアウトするかが重要となる。
以下、図15(A)ないし図15(E)を参照して、立方体形状の単位空間を占有する単位構造体Uを複数備えた緩衝材を、当該複数の単位構造体Uの一部または全部を、大きな形状変更を伴わずに僅かに形状変更させることのみにより、部位毎における緩衝性能の偏りを排除しつつ非直方体形状の領域にレイアウトすることを可能にする、具体的な設計の一手法について説明する。
まず、図15(A)に示すように、緩衝材が配置される領域のうち、単位構造体Uの大きさを調整しつつ、当該単位構造体Uの数を、幅方向、奥行き方向および高さ方向の少なくともいずれかにおいて増減させることでそのまま配列させることが可能な領域A1と、それが困難な領域A2とに分ける。具体的には、本実施の形態においては、緩衝材1Aが配置される領域のうち、靴底110の内足側および外足側の周縁に沿って直線状に延在する領域が、上記領域A1に該当し、靴底110の後端側の周縁に沿って曲線状に延在する領域が、上記領域A2に該当する。
ここで、領域A1においては、図15(B)に示す如くの一辺の長さがLに調整された立方体形状からなる単位空間を占有する単位構造体Uを互いに隣り合うように複数配列することとする。これにより、当該領域A1は、大きさが調整された複数の単位構造体Uによって隙間なく敷き詰められることになる。
一方、領域A2においては、図15(C)に示す如くの、対向する三組の面のうち、特定の一組の面が互いに非平行になるように形状変更された単位空間を占有するように構成された単位構造体U’を互いに隣り合うように複数配列することとする。ここで、当該単位構造体U’は、たとえば幅方向に延在する単位空間の4つの辺のうちの隣り合う一対の辺が他の辺の長さLよりも僅かに短いL’になるように調整した、当該調整後の単位空間を占有するように形状変更したものである。このような僅かな形状変更は、単位構造体の緩衝性能を大きく異ならしめるものとはならない。
なお、このような形状を有する単位構造体U’は、その大きさや向きを個別に調整しつつこれを並べて配置することにより、上述した曲線状に延在する領域である上記領域A2に沿って概ね隙間なくこれを敷き詰めることができる。そのため、このような僅かな形状変更を加えるのみにより、当該領域A2においても上述した領域A1と同等の緩衝性能が発揮されるようになる。
したがって、このように設計方法を採用することにより、立方体形状の単位空間を占有する単位構造体Uを複数備えた緩衝材を、当該複数の単位構造体Uの一部または全部を、大きな形状変更を伴わずに僅かに形状変更させることのみにより、部位毎における緩衝性能の偏りを排除しつつ非直方体形状の領域にレイアウトすることが可能になる。
そのため、当該設計方法に従って緩衝材を設計し、これに基づいて三次元積層造形装置を用いて当該緩衝材を製造することとすれば、その全体が一部材として構成された外形が様々な形状の緩衝材を容易に得ることができる。
なお、上述した設計方法において、さらに複雑な湾曲形状の領域に緩衝材を敷き詰める場合には、図15(D)に示す如くの、対向する三組の面のうち、特定の二組の面が互いに非平行になるように形状変更された単位空間を占有するように構成された単位構造体U1を互いに隣り合うように複数配列することとすればよい。
ここで、当該単位構造体U1は、たとえば幅方向に延在する単位空間の4つの辺のうちの隣り合う一対の辺が他の辺の長さLよりも僅かに短いL’になるように調整するとともに、さらにたとえば高さ方向に延在する単位空間の4つの辺のうちの隣り合う一対の辺が他の辺の長さLよりも僅かに短いL”になるように調整した、当該調整後の単位空間を占有するように形状変更したものである。このような僅かな形状変更は、単位構造体の緩衝性能を大きく異ならしめるものとはならない。
なお、このような形状を有する単位構造体U1は、その大きさや向きを個別に調整しつつこれを並べて配置することにより、上述した複雑な湾曲形状の領域に沿って概ね隙間なくこれを敷き詰めることができる。そのため、このような僅かな形状変更を加えるのみにより、当該領域においても上述した領域A1と同等の緩衝性能が発揮されるようになる。
また、上述した設計方法において、直線状に延びる領域に緩衝材を敷き詰める場合には、図15(B)に示す如くの単位構造体Uに代えて、図15(E)に示す如くの単位構造体U2を互いに隣り合うように複数配列してもよい。ここで、当該単位構造体U2は、対向する三組の面が平行である一方、特定の一組の面の形状が平行四辺形となるように調整した、当該調整後の単位空間を占有するように形状変更したものである。
なお、図示する単位構造体U2においては、たとえば高さ方向に位置する一組の面の各々を角度θだけ幅方向に沿って傾斜させることにより、当該一組の面の形状を平行四辺形にしている。このような僅かな形状変更は、単位構造体の緩衝性能を大きく異ならしめるものとはならない。したがって、当該単位構造体U2を敷き詰めた場合にも、部位毎における緩衝性能の偏りを排除しつつ緩衝材を隙間なくレイアウトすることが可能になる。
(実施の形態等における開示内容の要約)
上述した実施の形態1ないし3およびその変形例において開示した特徴的な構成を要約すると、以下のとおりとなる。
本開示のある態様に従った緩衝材は、並行する一対の曲面によって外形が規定される壁にて形作られた立体的形状を単位構造体とし、当該単位構造体が少なくとも一方向において規則的にかつ連続的に繰り返し配列されてなる立体構造物を含むものである。上記立体構造物は、三重周期極小曲面を基準にこれに厚みを付けたものからなり、少なくとも特定の平面に沿って切断した場合に蛇行状に延在する断面形状が現れる部位である蛇行部を有している。上記本開示のある態様に従った緩衝材は、上記蛇行部の方向転換点を補強する補強部を備えている。
上記本開示のある態様に従った緩衝材にあっては、上記補強部が、上記方向転換点の入隅部を横切るように配置された付加部材にて構成されていてもよい。
上記本開示のある態様に従った緩衝材にあっては、上記補強部が、他の部分に比して上記方向転換点の厚みを増すために当該方向転換点の入隅部に設けられた付加厚み部にて構成されていてもよい。
上記本開示のある態様に従った緩衝材にあっては、上記立体構造物が、シュワルツP構造またはジャイロイド構造を有していてもよい。
上記本開示のある態様に従った緩衝材は、樹脂材料およびゴム材料のいずれかにて構成されていてもよい。
上記本開示のある態様に従った緩衝材は、オレフィン系ポリマー、アミド系ポリマー、エステル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、スチレン系ポリマー、アクリル系ポリマー、および、メタアクリル系ポリマーからなる群より選ばれる1種以上を含有するポリマー組成物にて構成されていてもよい。
本開示のある態様に従った靴底は、上述した本開示のある態様に従った緩衝材を備えてなるものである。
上記本開示のある態様に従った靴底にあっては、上記蛇行部の延在方向が接地面と直交するように、上記緩衝材が配置されていてもよい。
本開示のある態様に従った靴は、上述した本開示のある態様に従った靴底と、上記靴底の上方に設けられたアッパーとを備えてなるものである。
(その他の形態等)
上述した実施の形態1においては、緩衝材に含まれる立体構造物の面構造として、これが三重周期極小曲面の一種であるシュワルツP構造である場合を例示して説明を行なったが、当該面構造は、シュワルツD構造であってもよい。
また、上述した実施の形態1および2においては、蛇行部とは別部材からなる付加部材にて補強部を構成してなる緩衝材を例示して説明を行ない、上述した第1および第2変形例においては、蛇行部の入隅部に付加厚み部を設けることで意図的に蛇行部と一体に補強部が設けられてなる緩衝材を例示して説明を行なったが、必ずしもこれらのいずれかである必要はない。すなわち、製造上、これらが意図せずに一部または全部において一体化されてしまっていてもよいし、製造上、これらが意図せずに一部または全部において別部材として構成されてしまっていてもよい。
また、上述した実施の形態3においては、実施の形態1に係る緩衝材を靴底およびこれを備えた靴に適用した場合を例示して説明を行なったが、これに代えて、実施の形態2に係る緩衝材または関連形態に係る緩衝材あるいは実施の形態1に基づいた第1および第2変形例に係る緩衝材を靴底およびこれを備えた靴に適用することとしてもよい。
また、上述した実施の形態3においては、靴底の中足部および後側部の周縁に沿って緩衝材を配置した場合を例示して説明を行なったが、緩衝材を設ける位置はこれに限定されるものではなく、適宜変更が可能である。たとえば靴底の全面に緩衝材を設けるようにしてもよいし、互いに独立した複数の緩衝材が靴底の所定位置に分離されて設けられるようにしてもよい。また、当該靴が使用される競技の種類や用途に応じて、靴底の内足側の部分および外足側の部分のいずれかのみに緩衝材が配置されてもよい。さらには、緩衝材は、ミッドソールとアッパーとの間に設けることとしてもよい。ここで、靴底の全面に緩衝材を設けるようにする場合には、ミッドソールに代えてその全体を緩衝材に置き換えることとしてもよい。
また、靴底に対する配置位置に応じて緩衝材の壁の厚みを異ならしめてもよいし、靴底に対する配置位置に応じて緩衝材の面構造を異ならしめてもよい。たとえば、靴底のある部分には、面構造がシュワルツP構造である緩衝材を配置し、靴底の他のある部分には、面構造がジャイロイド構造である緩衝材を配置することとしてもよい。
さらには、上述した実施の形態3においては、本発明に係る緩衝材を靴の靴底に適用した場合を例示して説明を行なったが、本発明に係る緩衝材は、他の緩衝用途に使用することができる。たとえば、本発明に係る緩衝材は、梱包材や、建築物(たとえば住宅等)の床材、舗装路の表面材、ソファーや椅子等の表面材、タイヤ等、様々な用途に使用することができる。
また、上述した実施の形態1ないし3およびその変形例ならびに関連形態において開示した特徴的な構成は、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において、相互に組み合わせることが可能である。
このように、今回開示した上記実施の形態およびその変形例はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
1A~1C,1A1,1A2 緩衝材、10 壁、11 蛇行部、12 方向転換点、13 入隅部、14 出隅部、15,15’ 付加厚み部、16 貫通孔、20 補強部、100 靴、110 靴底、111 ミッドソール、112 アウトソール、112a 接地面、120 アッパー、121 アッパー本体、122 シュータン、123 シューレース、R1 前足部、R2 中足部、R3 後足部、S 立体構造物、U,U’,U1,U2 単位構造体。

Claims (7)

  1. 並行する一対の曲面によって外形が規定される壁にて形作られた立体的形状を単位構造体とし、当該単位構造体が少なくとも一方向において規則的にかつ連続的に繰り返し配列されてなる立体構造物を含む弾性体からなる単一の造形物として構成された緩衝材であって、
    前記立体構造物は、三重周期極小曲面を基準にこれに厚みを付けたものからなり、少なくとも特定の平面に沿って切断した場合に蛇行状に延在する断面形状が現れる部位である蛇行部を有し、
    前記蛇行部の方向転換点を補強する補強部を備え
    前記補強部が、他の部分に比して前記方向転換点の厚みを増すために当該方向転換点の入隅部に突状に設けられた付加厚み部にて構成され、
    前記付加厚み部が、前記入隅部を横切るように延在している、緩衝材。
  2. 前記立体構造物が、シュワルツP構造またはジャイロイド構造を有している、請求項1に記載の緩衝材。
  3. 樹脂材料およびゴム材料のいずれかからなる、請求項1または2に記載の緩衝材。
  4. オレフィン系ポリマー、アミド系ポリマー、エステル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、スチレン系ポリマー、アクリル系ポリマー、および、メタアクリル系ポリマーからなる群より選ばれる1種以上を含有するポリマー組成物からなる、請求項に記載の緩衝材。
  5. 請求項1からのいずれかに記載の緩衝材を備えてなる、靴底。
  6. 前記蛇行部の延在方向が接地面と直交するように、前記緩衝材が配置されている、請求項に記載の靴底。
  7. 請求項またはに記載の靴底と、
    前記靴底の上方に設けられたアッパーとを備えてなる、靴。
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