(第1の実施形態)
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、第1の実施形態における光通信システム1の構成を示すブロック図である。図1において、実線の接続線は、光ファイバによる接続であることを示しており、破線の接続線は、実線の接続線とは別に設けられる通信回線を示している。
光通信システム1は、分岐ファイバ多元接続を行う光通信システムである。光通信システム1は、光通信装置2、N個の光通信装置3-1~3-i~3-N、波長分散補償装置4、光伝送路5及び波長分散補償量設定装置6を備える。ここで、Nは、2以上の整数であり、iは1~Nの中のいずれかの値である。DUである光通信装置3-1~3-i~3-Nの各々は、例えば、光通信システム1が提供する通信サービスの利用者の建物内に設置される。
光通信装置2は、中央局の建物内に設置されるCUである。光通信装置2は、図2に示すように、光信号を送信する光送信部20を備えている。光送信部20は、電気信号生成部21と光信号生成部22を備える。電気信号生成部21は、情報源である送信データを符号化し、符号化した送信データを電気信号の波形に変換することにより送信データの電気信号を生成して出力する。光信号生成部22は、光ファイバに接続しており、電気信号生成部21が出力する送信データの電気信号を光信号に変換する。光信号生成部22は、変換した光信号を光ファイバに送出する。光信号生成部22は、波長分散補償量設定装置6から波長分散検出用の光信号の送出を指示する指示信号を受けると、予め定められる波長分散検出用の光信号を生成して光ファイバに送出する。
光通信装置3-1~3-i~3-Nは、異なる位置に分散して設置されるDUである。光通信装置3-1~3-i~3-Nの各々は、同一の構成を有している。図3は、光通信装置3-iの内部構成を示すブロック図である。光通信装置3-iは、光信号を受信する光受信部30-iを備えている。光受信部30-iは、光信号受信部31-iと電気信号処理部32-iを備える。光信号受信部31-iは、接続する光ファイバを通じて光信号を受信する。光信号受信部31-iは、受信した光信号を電気信号に変換して電気信号処理部32-iに出力する。電気信号処理部32-iは、光信号受信部31-iが出力する電気信号を復号して送信データを復元する。また、電気信号処理部32-iは、光信号受信部31-iが光信号を受信した場合、光信号受信部31-iが受信した光信号に関する情報を波長分散補償量設定装置6に送信する。ここで、光信号に関する情報とは、例えば、光信号の波形の形状の情報等である。
図1に戻り、光伝送路5は、分岐点において分岐する光ファイバにより複数の光通信装置3-1~3-Nを収容し、波長分散補償装置4が送出する光信号を光通信装置3-1~3-Nまで伝送する。光伝送路5は、光ファイバ伝送路51、光増幅器52及び分岐点に設置される光分岐器53を備える。光ファイバ伝送路51は、光信号の伝送媒体であり、伝送する光信号の信号品質に影響を与える波長分散を生じさせる長さの伝送路である。
光増幅器52は、光信号の増幅を行う。なお、図1では、光ファイバ伝送路51の端に光増幅器52が接続される例を示しているが、光ファイバ伝送路51の途中に光増幅器52が挿入されていてもよいし、光増幅器52以外に光スイッチや再生中継機などのデバイスが光ファイバ伝送路51に接続されたり、光ファイバ伝送路51の途中に挿入されていたりしていてもよい。
光分岐器53は、1:N分岐の光分岐器であり、光増幅器52に光ファイバを介して接続する一端をN個の経路に分岐する。光分岐器53が分岐するN個の経路の各々は、光ファイバを介して光通信装置3-1~3-Nの各々に接続する。光分岐器53としては、例えば、光スプリッタが適用される。
波長分散補償装置4は、波長分散補償部40を備える。波長分散補償部40は、例えば、DCFやFBG-DCM等の波長分散補償モジュール(CDCM)を予め複数備えている。複数の波長分散補償モジュールの各々は、異なる波長分散補償量を与える。波長分散補償部40は、波長分散補償量設定装置6から設定される波長分散補償量に応じた波長分散補償モジュールを選択し、選択した波長分散補償モジュールを光通信装置2と、光ファイバ伝送路51とに接続する。ここで、波長分散補償量に応じた波長分散補償モジュールを選択とは、当該波長分散補償量に一致する波長分散補償を行う波長分散補償モジュールがあれば、当該波長分散補償モジュールを選択し、当該波長分散補償量に一致する波長分散補償を行う波長分散補償モジュールがなければ、波長分散補償量に近い波長分散補償量を補償できる波長分散補償モジュールを選択することである。
波長分散補償量設定装置6は、破線の接続線で示される通信回線により、光通信装置2の光信号生成部22と、光通信装置3-1~3-Nの電気信号処理部32-1~32-Nの各々と、波長分散補償装置4の波長分散補償部40とに接続する。波長分散補償量設定装置6は、光通信装置2の光信号生成部22が送出する波長分散検出用の光信号に関する情報、すなわち、波長分散の影響を受けていない波長分散検出用の光信号の波形の形状の情報等を内部の記憶領域に予め記憶させている。
波長分散補償量設定装置6は、波長分散補償部40に設定する波長分散補償量の算出を行う際、波長分散検出用の光信号の送出を指示する指示信号を光通信装置2の光信号生成部22に送信する。
波長分散補償量設定装置6は、光通信装置3-1~3-Nの光信号受信部31-1~31-Nの各々が光信号を受信した際に、電気信号処理部32-1~32-Nが送信する光信号に関する情報を受信する。波長分散補償量設定装置6は電気信号処理部32-1~32-Nの各々から受信した波長分散の影響を受けている光信号に関する情報と、内部の記憶領域が予め記憶する波長分散の影響を受けていない波長分散検出用の光信号に関する情報とに基づいて、光通信装置3-1~3-Nの各々に至る経路において伝搬する光信号に生じている波長分散量Dn(n=1,2,…,N)を算出する。
波長分散補償量設定装置6は、算出したN個の波長分散量D1~DNに基づいて、波長分散補償部40に設定する波長分散補償量DCDCMを算出する。波長分散補償量設定装置6は、算出した波長分散補償量DCDCMを波長分散補償部40に設定する。
(第1の実施形態の光通信システムによる処理)
図4は、波長分散補償量設定装置6による処理の流れを示すフローチャートである。波長分散補償部40において波長分散補償量が設定されておらず、波長分散補償を行わない状態において、波長分散補償量設定装置6は、波長分散検出用の光信号の送出を指示する指示信号を光通信装置2の光信号生成部22に送信する(ステップS1)。
光通信装置2の光信号生成部22は、波長分散補償量設定装置6から指示信号を受けると、予め定められる波長分散検出用の光信号を生成して光ファイバに送出する。光通信装置2の光信号生成部22が送出した光信号は、波長分散補償部40、光ファイバ伝送路51、光増幅器52を経由して光分岐器53に到達する。光分岐器53は、一端で受けた光信号をN個の光信号に分岐する。光通信装置3-1~3-Nの光信号受信部31-1~31-Nの各々は、光分岐器53が分岐したN個の光信号の各々を受信する。電気信号処理部32-1~32-Nは、光信号受信部31-1~31-Nの各々が受信した光信号に関する情報を波長分散補償量設定装置6に送信する。
波長分散補償量設定装置6は、電気信号処理部32-1~32-Nから受信する波長分散の影響を受けている光信号に関する情報と、内部の記憶領域が予め記憶する波長分散の影響を受けていない波長分散検出用の光信号に関する情報とに基づいて、光通信装置2から光通信装置3-1~3-Nの各々に至る経路を伝搬する光信号に生じている波長分散量D1~DNを算出する(ステップS2)。
波長分散補償量設定装置6は、算出したN個の波長分散量D1~DNに基づいて、波長分散補償部40に設定する波長分散補償量DCDCMを算出する(ステップS3)。例えば、波長分散補償量設定装置6は、N個の波長分散量D1~DNの平均値を波長分散補償量DCDCMとして算出する。波長分散補償量設定装置6は、算出した波長分散補償量DCDCMを波長分散補償部40に設定する(ステップS4)。波長分散補償部40は、波長分散補償量設定装置6から設定された波長分散補償量DCDCMに応じた波長分散補償モジュールを選択し、選択した波長分散補償モジュールを光通信装置2と、光ファイバ伝送路51とに接続する。この処理により、波長分散補償量DCDCMを補償するのに適切な波長分散補償モジュールが、光通信装置2と、光ファイバ伝送路51とが接続される。
この状態において、光通信装置2が、光通信装置3-1~3-Nに対して送信データの送信を開始する。すなわち、光通信装置2の電気信号生成部21が情報源である送信データを符号化し、符号化した送信データを電気信号の波形に変換することにより送信データの電気信号を生成して光信号生成部22に出力する。光信号生成部22は、当該電気信号を光信号に変換する。光信号生成部22は、変換した光信号を光ファイバに送出する。
波長分散補償装置4の波長分散補償部40は、光通信装置2の光信号生成部22が送出した光信号を受信すると、受信した光信号に対して波長分散補償量DCDCMの波長分散補償を行う。波長分散補償部40は、波長分散補償を行った光信号を光伝送路5に送出する。光伝送路5の光ファイバ伝送路51は、波長分散補償部40が送出した光信号を伝送し、光増幅器52は、光ファイバ伝送路51が伝送した光信号を増幅する。光分岐器53は、光増幅器52が送出する光信号をN個の光信号に分岐し、分岐したN個の光信号を光通信装置3-1~3-Nの各々に至る光ファイバに送出する。
光通信装置3-1~3-Nの光信号受信部31-1~31-Nの各々は、光ファイバを通じて光分岐器53が分岐した光信号を受信する。光信号受信部31-1~31-Nの各々は、受信した光信号を電気信号に変換する。光信号受信部31-1~31-Nの各々は、変換した電気信号を各々に対応する電気信号処理部32-1~32-Nに出力する。電気信号処理部32-1~32-Nは、電気信号を取り込み、取り込んだ電気信号を復号して送信データを復元する。
上記の第1の実施形態の光通信システム1は、第1の光通信装置である光通信装置2と、各々が第2の光通信装置である光通信装置3-1~3-Nと、光通信装置2に接続する波長分散補償装置4と、光伝送路5とを備えている。光伝送路5は、波長分散補償装置4に接続し、波長分散補償装置4に接続する経路が分岐点において複数の経路に分岐し、分岐した経路の各々が、光通信装置3-1~3-Nの各々に接続し、経路を通じて光信号を伝送する。波長分散補償装置4は、1個の波長分散補償部40を備えており、波長分散補償部40は、例えば、光通信装置2から光通信装置3-1~3-Nの各々に至る経路を伝搬する光信号に生じる波長分散量D1~DNの平均値を波長分散補償量DCDCMとして補償する。
これにより、光通信装置3-1~3-Nは、光通信装置3-1~3-Nの各々に至る経路を伝搬する光信号に生じている波長分散量D1~DNのうち、波長分散補償量DCDCMの分が補償された光信号を受信することが可能になる。光通信システム1では、CUである光通信装置2に波長分散補償装置4を接続するため、光通信装置2の近く、例えば、中央局の建物内に波長分散補償装置4を設置することができる。そのため、光通信システム1では、図11に示した光通信システム100aのように、波長分散補償を行うために、人をDUの設置位置まで派遣する必要がない。
波長分散補償量設定装置6を備えることにより、人手を介さずに、光通信装置2から光通信装置3-1~3-Nの各々に至る経路を伝搬する光信号に生じているN個の波長分散量D1~DNに応じた波長分散補償量DCDCMを波長分散補償部40に設定することができる。
光通信装置3-1~3-Nの台数分、波長分散補償部40を備えるのではなく、1個の波長分散補償部40を用いており、少ない設備で波長分散補償を行うことができる。したがって、第1の実施形態における光通信システム1は、人に要するコスト及び設備に要するコスト等のシステムの構築に要するコストを抑えつつ波長分散補償を行うことにより信号品質を向上させることを可能にしている。
なお、上記の第1の実施形態では、波長分散補償量設定装置6は、例えば、N個の波長分散量D1~DNの平均値を波長分散補償量DCDCMとして算出するようにしているが、N個の波長分散量D1~DNから得られる平均値以外の他の特性を示す指標値を波長分散補償量DCDCMとして算出するようにしてもよい。
上記したように、波長分散補償部40は、波長分散に起因する信号品質劣化をある基準値以下に抑圧可能である。したがって、補償可能な波長分散範囲は、その基準値に対応する範囲に限定されることになる。そのため、光通信装置2と、光通信装置3-1~3-Nの各々との間の波長分散量が、波長分散補償部40が補償する波長分散補償量の範囲内となるように、光通信装置2と、光通信装置3-1~3-Nとが選定されている必要がある。
(第2の実施形態)
図5は、第2の実施形態における光通信システム1aの構成を示すブロック図である。図5において、第1の実施形態と同一の構成については同一の符号を付し、以下、異なる構成について説明する。光通信システム1aは、光通信装置2、光通信装置3-1~3-N、波長分散補償装置4a、光伝送路5-1,5-2及び波長分散補償量設定装置6aを備える。
第1の実施形態の光通信システム1では、波長分散補償部40に設定する波長分散補償量DCDCMを、光通信装置2から光通信装置3-1~3-Nの各々に至る経路を伝搬する光信号に生じている波長分散量D1~DNの平均値としていた。光通信装置2と、光通信装置3-1~3-Nの各々との間の距離の差のバラツキが大きくない状態であれば、波長分散量D1~DNのバラツキが大きくないため、第1の実施形態の光通信システム1を適用し、波長分散量D1~DNの平均値を波長分散補償量DCDCMとすることで、光通信装置2が送信して光通信装置3-1~3-Nが受信する光信号に対して有効な波長分散補償を行うことができる。
これに対して、例えば、光通信装置2と、光通信装置3-1~3-Nの各々との間の距離の差のバラツキが大きい場合、1個の波長分散補償部40を備えるだけでは十分な波長分散補償を行うことができない場合が想定される。
このような場合を想定して、第2の実施形態の光通信システム1aでは、光通信装置3-1~3-Nを、例えば、2つのグループに分けてグループごとに適切な波長分散補償を行うようにしている。図5に示す例では、Nは、偶数であるものとし、各グループに含まれる数が同数になるように、光通信装置3-1~3-N/2と、光通信装置3-(N/2+1)~3-Nという2つのグループに分けている。グループの分類基準は、例えば、光通信装置2からの距離であり、予め基準となる距離を設定し、光通信装置3-1~3-N/2は、基準となる距離以下の位置に設置されているグループであり、光通信装置3-(N/2+1)~3-Nは、基準となる距離を超える位置に設置されているグループである。
波長分散補償装置4aは、光分岐器41と、波長分散補償部40-1,40-2とを備えている。光分岐器41は、1:2分岐の光分岐器であり、光通信装置2に光ファイバを介して接続する一端を、2個の経路に分岐する。光分岐器41が分岐する2個の経路の各々は、波長分散補償部40-1,40-2に接続する。光分岐器41としては、例えば、光スプリッタが適用される。
波長分散補償部40-1,40-2は、第1の実施形態の波長分散補償部40と同一の構成を有しており、波長分散補償量設定装置6aによって各々に設定される波長分散補償量DCDCM#1,DCDCM#2に応じた波長分散補償モジュールを選択することにより、各々が受信する光信号に対して波長分散補償を行う。波長分散補償部40-1は、光ファイバを介して光伝送路5-1に接続し、波長分散補償部40-2は、光ファイバを介して光伝送路5-2に接続する。
光伝送路5-1,5-2の各々は、以下の点を除き、第1の実施形態の光伝送路5と同一の構成を有している。第1の実施形態の光伝送路5が備える光分岐器53は、1:N分岐である。これに対して、光伝送路5-1,5-2の各々が備える光分岐器53-1,53-2は、1:N/2分岐、すなわち、光増幅器52-1,52-2に光ファイバを介して接続する一端をN/2個の経路に分岐する構成を有している。光分岐器53-1が分岐するN/2個の経路の各々は、光ファイバを介して光通信装置3-1~3-N/2の各々に接続する。光分岐器53-2が分岐するN/2個の経路の各々は、光ファイバを介して光通信装置3-(N/2+1)~3-Nの各々に接続する。
波長分散補償量設定装置6aは、以下の点を除いて、第1の波長分散補償量設定装置6と同一の構成を有している。第1の波長分散補償量設定装置6は、波長分散補償部40に通信回線を介して接続しているが、波長分散補償量設定装置6aは、波長分散補償部40-1,40-2の各々に通信回線を介して接続する。
第1の実施形態の波長分散補償量設定装置6は、算出したN個の波長分散量D1~DNに基づいて、波長分散補償部40に設定する波長分散補償量DCDCMを算出する。波長分散補償量設定装置6は、算出した波長分散補償量DCDCMを波長分散補償部40に設定していた。これに対して、波長分散補償量設定装置6aは、N/2個の波長分散量Dn(n=1,2,…,N/2)に基づいて、波長分散補償部40-1に設定する波長分散補償量DCDCM#1を算出する。波長分散補償量設定装置6aは、N/2個の波長分散量Dn(n=(N/2+1),(N/2+2),…,N)に基づいて、波長分散補償部40-2に設定する波長分散補償量DCDCM#2を算出する。
(第2の実施形態の光通信システムによる処理)
図6は、波長分散補償量設定装置6aによる処理の流れを示すフローチャートである。波長分散補償部40-1,40-2において波長分散補償量が設定されておらず、波長分散補償を行わない状態において、波長分散補償量設定装置6aは、波長分散検出用の光信号の送出を指示する指示信号を光通信装置2の光信号生成部22に送信する(ステップSa1)。
光通信装置2の光信号生成部22は、波長分散補償量設定装置6aから指示信号を受けると、予め定められる波長分散検出用の光信号を生成して光ファイバに送出する。波長分散補償装置4aの光分岐器41は、光通信装置2の光信号生成部22が送出した光信号を2個の光信号に分岐する。
光分岐器41が分岐した一方の光信号は、波長分散補償部40-1、光ファイバ伝送路51-1、光増幅器52-1を通じて光分岐器53-1に到達する。光分岐器53-1は、一端で受けた光信号をN/2個の光信号に分岐する。光通信装置3-1~3-N/2の光信号受信部31-1~31-N/2の各々は、光分岐器53-1が分岐したN/2個の光信号を受信する。電気信号処理部32-1~32-N/2は、光信号受信部31-1~31-N/2の各々が受信した光信号に関する情報を波長分散補償量設定装置6aに送信する。
光分岐器41が分岐した他方の光信号は、波長分散補償部40-2、光ファイバ伝送路51-2、光増幅器52-2を通じて光分岐器53-2に到達する。光分岐器53-2は、一端で受けた光信号をN/2個の光信号に分岐する。光通信装置3-(N/2+1)~3-Nの光信号受信部31-(N/2+1)~31-Nの各々は、光分岐器53-2が分岐したN/2個の光信号を受信する。電気信号処理部32-(N/2+1)~32-Nは、光信号受信部31-(N/2+1)~31-Nの各々が受信した光信号に関する情報を波長分散補償量設定装置6aに送信する。
波長分散補償量設定装置6aは、電気信号処理部32-1~32-Nから受信する波長分散の影響を受けている光信号に関する情報と、内部の記憶領域が予め記憶する波長分散の影響を受けていない波長分散検出用の光信号に関する情報とに基づいて、光通信装置3-1~3-Nの各々に至る経路を伝搬する光信号に生じている波長分散量D1~DNを算出する(ステップSa2)。
波長分散補償量設定装置6aは、N/2個の波長分散量Dn(n=1,2,…,N/2)に基づいて、波長分散補償部40-1に設定する波長分散補償量DCDCM#1を算出する。波長分散補償量設定装置6aは、N/2個の波長分散量Dn(n=(N/2+1),(N/2+2),…,N)に基づいて、波長分散補償部40-2に設定する波長分散補償量DCDCM#2を算出する(ステップSa3)。例えば、波長分散補償量設定装置6aは、波長分散量D1~DNの平均値を波長分散補償量DCDCM#1として算出し、波長分散量DN/2+1~DNの平均値を波長分散補償量DCDCM#2として算出する。
波長分散補償量設定装置6aは、算出した波長分散補償量DCDCM#1を波長分散補償部40-1に設定し、算出した波長分散補償量DCDCM#2を波長分散補償部40-2に設定する(ステップSa4)。波長分散補償部40-1は、波長分散補償量設定装置6aから設定された波長分散補償量DCDCM#1に応じた波長分散補償モジュールを選択し、選択した波長分散補償モジュールを光通信装置2と、光ファイバ伝送路51-1とに接続する。波長分散補償部40-2は、波長分散補償量設定装置6aから設定された波長分散補償量DCDCM#2に応じた波長分散補償モジュールを選択し、選択した波長分散補償モジュールを光通信装置2と、光ファイバ伝送路51-2とに接続する。
この状態において、光通信装置2が、光通信装置3-1~3-Nに対して送信データの送信を開始する。すなわち、光通信装置2の電気信号生成部21が情報源である送信データを符号化し、符号化した送信データを電気信号の波形に変換することにより送信データの電気信号を生成して光信号生成部22に出力する。光信号生成部22は、当該電気信号を光信号に変換する。光信号生成部22は、変換した光信号を光ファイバに送出する。波長分散補償装置4aの光分岐器41は、光通信装置2の光信号生成部22が送出した光信号を2個の光信号に分岐する。
波長分散補償装置4aの波長分散補償部40-1は、光分岐器41が分岐した一方の光信号を受信すると、受信した光信号に対して波長分散補償量DCDCM#1の波長分散補償を行う。波長分散補償部40-1は、波長分散補償を行った光信号を光伝送路5-1に送出する。
波長分散補償装置4aの波長分散補償部40-2は、光分岐器41が分岐した他方の光信号を受信すると、受信した光信号に対して波長分散補償量DCDCM#2の波長分散補償を行う。波長分散補償部40-2は、波長分散補償を行った光信号を光伝送路5-2に送出する。
光伝送路5-1,5-2の光ファイバ伝送路51-1,51-2は、各々に接続する波長分散補償部40-1,40-2が送出した光信号を伝送し、光増幅器52-1,52-2は、各々に接続する光ファイバ伝送路51-1,51-2が伝送した光信号を増幅する。光分岐器53-1,53-2は、各々に接続する光増幅器52-1,52-2が送出する光信号をN/2個の光信号に分岐し、分岐したN/2個の光信号を光通信装置3-1~3-N/2,3-(N/2+1)~3-Nの各々に至る光ファイバに送出する。
光通信装置3-1~3-N/2の光信号受信部31-1~31-N/2の各々は、光ファイバを通じて光分岐器53-1が分岐した光信号を受信する。光信号受信部31-1~31-N/2は、受信した光信号を電気信号に変換する。光信号受信部31-1~31-N/2は、変換した電気信号を各々に対応する電気信号処理部32-1~32-N/2に出力する。電気信号処理部32-1~32-N/2は、電気信号を取り込み、取り込んだ電気信号を復号して送信データを復元する。
光通信装置3-(N/2+1)~3-Nの光信号受信部31-(N/2+1)~31-Nの各々は、光ファイバを通じて光分岐器53-2が分岐した光信号を受信する。光信号受信部31-(N/2+1)~31-Nは、受信した光信号を電気信号に変換する。光信号受信部31-(N/2+1)~31-Nは、変換した電気信号を各々に対応する電気信号処理部32-(N/2+1)~32-Nに出力する。電気信号処理部32-(N/2+1)~32-Nは、電気信号を取り込み、取り込んだ電気信号を復号して送信データを復元する。
上記の第2の実施形態の光通信システム1aにおいて、波長分散補償装置4aは、光分岐器41と、波長分散補償部40-1,40-2とを備えており、光分岐器41は、光通信装置2に接続する経路を光伝送路5-1,5-2の数に一致する数の経路に分岐する。波長分散補償部40-1,40-2は、光伝送路5-1,5-2の各々に対応して備えられており、各々が、光分岐器41が分岐した経路のいずれか1つと、各々に対応する光伝送路5-1,5-2とを一対一に接続する。波長分散補償部40-1は、光通信装置2から光通信装置3-1~3-N/2の各々に至る経路を伝搬する光信号に生じる波長分散量の平均値を波長分散補償量として補償する。波長分散補償部40-2は、光通信装置2から光通信装置3-(N/2+1)~3-Nの各々に至る経路を伝搬する光信号に生じる波長分散量の平均値を波長分散補償量として補償する。
これにより、光通信装置3-1~3-N/2は、光通信装置3-1~3-N/2の各々に至る経路を伝搬する光信号に生じている波長分散量D1~DN/2のうち、波長分散補償量DCDCM#1の分が補償された光信号を受信することが可能になる。光通信装置3-(N/2+1)~3-Nは、光通信装置3-(N/2+1)~3-Nの各々に至る経路を伝搬する光信号に生じている波長分散量DN/2+1~DNのうち、波長分散補償量DCDCM#2の分が補償された光信号を受信することが可能になる。
光通信システム1aでは、CUである光通信装置2に波長分散補償装置4aを接続するため、光通信装置2の近く、例えば、中央局の建物内に波長分散補償装置4aを設置することができる。そのため、光通信システム1では、図11に示した光通信システム100aのように、波長分散補償を行うために、人をDUの設置位置まで派遣する必要がない。
波長分散補償量設定装置6aを備えることにより、人手を介さずに、光通信装置2から光通信装置3-1~3-N/2の各々に至る経路を伝搬する光信号に生じているN/2個の波長分散量D1~DN/2に応じた波長分散補償量DCDCM#1を波長分散補償部40-1に設定し、光通信装置2から光通信装置3-(N/2+1)~3-Nの各々に至る経路を伝搬する光信号に生じているN/2個の波長分散量DN/2+1~DNに応じた波長分散補償量DCDCM#2を波長分散補償部40-2に設定することができる。
光通信装置3-1~3-Nの台数分、波長分散補償部40を備えるのではなく、2個の波長分散補償部40-1,40-2を用いており、少ない設備で波長分散補償を行うことができる。したがって、第2の実施形態における光通信システム1aは、人に要するコスト及び設備に要するコスト等のシステムの構築に要するコストを抑えつつ波長分散補償を行うことにより信号品質を向上させることを可能にしている。
第2の実施形態の光通信システム1aでは、例えば、光通信装置2と、光通信装置3-1~3-Nの各々との間の距離の差のバラツキが大きい場合であっても、第1の実施形態の光通信システム1よりも適切な波長分散補償を行うことを可能にしている。例えば、上記したように、光通信装置2からの距離を基準として、基準となる距離以下の位置に設置されている光通信装置3-1~3-N/2のグループと、基準となる距離を超える位置に設置されている光通信装置3-(N/2+1)~3-Nのグループとに分けるようにする。このようにグループ分けすることにより、N/2個の波長分散量D1~DN/2における値のバラツキを小さくすることができ、N/2個の波長分散量DN/2+1~DNにおける値のバラツキも小さくすることができる。
そのため、第1の実施形態の光通信システム1のように1つの波長分散補償量DCDCMを利用して波長分散補償を行うよりも、第2の実施形態の光通信システム1aのように波長分散量D1~DN/2に対応する波長分散補償量DCDCM#1と、波長分散量DN/2+1~DNに対応する波長分散補償量DCDCM#2とを利用して波長分散補償を行う方が、より適切な波長分散補償を行うことができることになる。
上記の第2の実施形態の光通信システム1aは、2つの光伝送路5-1,5-2を備えるため、例えば、光ファイバ伝送路51-1,51-2の距離を異なる距離にすることができる。そのため、光通信装置3-1~3-N/2のグループと、光通信装置3-(N/2+1)~3-Nのグループとが存在する位置が大きく異なるような環境に適用することが可能である。
なお、上記の第2の実施形態の光通信システム1aでは、光通信装置3-1~3-Nを2つのグループに分ける分類基準として、光通信装置2からの距離を基準としているが、基準は、光通信装置2からの距離に限られるものではなく、それ以外のパラメータを基準としてもよい。
上記の第2の実施形態の光通信システム1aでは、グループごとの光通信装置3-1~3-Nの数をN/2個ずつの同数にしているが、1つのグループに含まれる光通信装置3-1~3-Nの数をグループごとに異なる数にしてもよい。光通信装置3-1~3-Nを3つ以上のグループに分けるようにしてもよい。ただし、グループの数は、複数の光通信装置3-1~3-Nを収容する際に光ファイバ伝送路を共有するという分岐ファイバ多元接続のメリットを維持するために、N未満の数にする必要がある。
上記の第2の実施形態では、波長分散補償量設定装置6aは、例えば、N/2個の波長分散量D1~DN/2の平均値を波長分散補償量DCDCM#1として算出し、N/2個の波長分散量DN/2+1~DNの平均値を波長分散補償量DCDCM#2として算出するようにしている。これに対して、波長分散補償量設定装置6aは、N/2個の波長分散量D1~DN/2、または、N/2個の波長分散量DN/2+1~DNから得られる平均値以外の他の特性を示す指標値を波長分散補償量DCDCM#1、または、波長分散補償量DCDCM#2として算出するようにしてもよい。
上記したように、波長分散補償部40-1,40-2は、波長分散に起因する信号品質劣化をある基準値以下に抑圧可能である。したがって、補償可能な波長分散範囲は、その基準値に対応する範囲に限定されることになる。そのため、光通信装置2と、光通信装置3-1~3-N/2の各々との間の波長分散量が、波長分散補償部40-1が補償する波長分散補償量の範囲内となり、光通信装置2と、光通信装置3-(N/2+1)~3-Nの各々との間の波長分散量が、波長分散補償部40-2が補償する波長分散補償量の範囲内となるように光通信装置2と、光通信装置3-1~3-Nとが選定されている必要がある。
(第3の実施形態)
図7は、第3の実施形態における光通信システム1bの構成を示すブロック図である。図7において、第1の実施形態と同一の構成については同一の符号を付し、以下、異なる構成について説明する。光通信システム1bは、光通信装置2b、光通信装置3-1~3-N、波長分散補償装置4b、光伝送路5b及び波長分散補償量設定装置6bを備える。
第2の実施形態の光通信システム1aでは、光通信装置3-1~3-Nを2つのグループに分けてグループごとに異なる波長分散補償量DCDCM#1,DCDCM#2を適用して波長分散補償を行うようにしていた。このようにすることで、例えば、光通信装置2と、光通信装置3-1~3-Nの各々との間の距離の差のバラツキが大きい場合であっても、例えば、光通信装置2からの距離に基づいて、光通信装置3-1~3-Nを2つのグループに分けることで、グループごとに適切な波長分散補償を行うことが可能になる。
これに対して、図11に示した光通信システム100aと同程度の精度で波長分散補償を行うためには、光通信装置3-1~3-Nの各々に至る経路を伝搬する光信号に生じている波長分散量D1~DNの各々に対して個別に波長分散補償を行う必要がある。第2の実施形態の光通信システム1aの構成を拡張して、光通信装置3-1~3-NをN個のグループに分けるという手段も考えられるが、この場合、N個の光伝送路5-1~5-Nを備えることになり、複数の光通信装置3-1~3-Nを収容する際に光ファイバ伝送路を共有するという分岐ファイバ多元接続のメリットを生かせなくなってしまう。
そこで、第3の実施形態の光通信システム1bでは、波長分割多重、すなわち、WDM(Wavelength Division Multiplexing)の技術を利用することで、 分岐ファイバ多元接続のメリットを維持しつつ、波長分散量D1~DNの各々に対して個別に波長分散補償を行うことを可能としている。
光通信装置2bは、図8に示すようにN個の光送信部20-1~20-Nと、波長多重部23とを備えている。光通信装置2bにおいて、光送信部20-1~20-Nの各々は、電気信号生成部21-1~21-Nと、光信号生成部22-1~22-Nとを備える。電気信号生成部21-1~21-Nの各々は、第1の実施形態の電気信号生成部21と同一の構成であり、光信号生成部22-1~22-Nの各々は、第1の実施形態の光信号生成部22と同一の構成である。
波長多重部23は、光信号生成部22-1~22-Nの各々に接続し、光信号生成部22-1~22-Nが出力するN個の光信号の各々を、N個の異なる波長の光信号に変換する。波長多重部23は、変換した異なる波長の光信号を多重化し、波長分散補償装置4bに接続する光ファイバに送出する。
なお、光通信装置2bの光送信部20-1~20-Nの各々と、波長分散補償装置4bの波長分散補償部40-1~40-Nの各々と、光通信装置3-1~3-Nの各々とは、予め一対一に対応付けられている。ここでは、枝番号「-n」が一致する光送信部20-n、波長分散補償部40-n、光通信装置3-nが一対一に対応付けられているものとする(ただし、n=1,2,…,Nである)。この場合、「光送信部20-1、波長分散補償部40-1、光通信装置3-1」,「光送信部20-2、波長分散補償部40-2、光通信装置3-2」,…,「光送信部20-N、波長分散補償部40-N、光通信装置3-N」というN通りの組み合わせの各々に対して、N個の異なる波長が割り当てられることになる。
図7に戻り、波長分散補償装置4bは、光合分波器42、N個の波長分散補償部40-1~40-N及び光合分波器43を備える。光合分波器42,43は、例えば、1:N分岐のWDMカプラであり、一端において受けるN個の波長が波長多重された光信号を波長ごとに分波し、分波したN個の光信号の各々をN個の異なる経路に分岐し、分岐した経路の端であるN個の他端の各々から送出する。光合分波器42,43は、N個の他端の各々において受けるN個の異なる波長の光信号を合波して一端から送出する。
光合分波器42の一端は、光通信装置2bに光ファイバを介して接続し、N個の他端の各々は、波長分散補償部40-1~40-Nの各々に接続する。光合分波器43の一端は、光ファイバ伝送路51に光ファイバを介して接続し、N個の他端の各々は、波長分散補償部40-1~40-Nの各々に接続する。
波長分散補償部40-1~40-Nの各々は、第1の実施形態の波長分散補償部40と同一の構成を有しており、波長分散補償量設定装置6bによって各々に設定される波長分散補償量DCDCM#1~DCDCM#Nに応じた波長分散補償モジュールを選択することにより、各々を通過する光信号に対して波長分散補償を行う。
光伝送路5bは、光ファイバ伝送路51、光増幅器52及び光合分波器54を備える。光合分波器54は、光合分波器42,43と同様の構成を有しており、例えば、1:N分岐のWDMカプラが適用される。光合分波器54の一端は、光ファイバを介して光増幅器52に接続し、N個の他端の各々は、光通信装置3-1~3-Nの各々に接続する。
上記したように、光送信部20-nと、波長分散補償部40-nと、光通信装置3-nとは予め一対一に対応付けられており、波長多重部23は、光送信部20-nと、波長分散補償部40-nと、光通信装置3-nとの組み合わせの各々に対して、異なる波長を割り当てる。したがって、光送信部20-nが送出した光信号に対して波長多重部23が割り当てた波長の光信号が、波長分散補償部40-nを経由して、光通信装置3-nに到達するように、光合分波器42,43の他端が、波長分散補償部40-1に接続され、光合分波器54の他端が、光通信装置3-1に接続されているものとする。
波長分散補償量設定装置6bは、以下の点を除いて、第1の波長分散補償量設定装置6と同一の構成を有している。第1の波長分散補償量設定装置6は、波長分散補償部40に通信回線を介して接続しているが、波長分散補償量設定装置6bは、波長分散補償部40-1~40-Nの各々に通信回線を介して接続する。
第1の実施形態の波長分散補償量設定装置6は、算出したN個の波長分散量D1~DNに基づいて、波長分散補償部40に設定する波長分散補償量DCDCMを算出し、算出した波長分散補償量DCDCMを波長分散補償部40に設定していた。これに対して、波長分散補償量設定装置6bは、光通信装置3-nに対応する波長分散量Dnの各々を波長分散補償量DCDCM#nとし、波長分散補償量DCDCM#nの各々を、各々に対応する波長分散補償部40-nに設定する。
(第3の実施形態の光通信システムによる処理)
図9は、波長分散補償量設定装置6bによる処理の流れを示すフローチャートである。波長分散補償部40-1~40-Nにおいて波長分散補償量が設定されておらず、波長分散補償を行わない状態において、波長分散補償量設定装置6bは、波長分散検出用の光信号の送出を指示する指示信号を光通信装置2bの光信号生成部22-1~22-Nの各々に送信する(ステップSb1)。
光通信装置2bの光信号生成部22-1~22-Nは、波長分散補償量設定装置6bから指示信号を受けると、予め定められる波長分散検出用の光信号を生成して波長多重部23に送出する。波長多重部23は、光信号生成部22-1~22-Nが送出するN個の光信号を、N個の異なる波長の光信号に変換する。波長多重部23は、変換した異なる波長の光信号を波長多重して光ファイバに送出する。
波長分散補償装置4bの光合分波器42は、光通信装置2bに光ファイバを介して接続する一端で受けた波長多重されている光信号をN個の波長に分波する。光合分波器42は、分波したN個の波長の波長分散検出用の光信号の各々を波長分散補償部40-1~40-Nに送出する。
波長分散補償部40-1~40-Nは、波長分散補償量が波長分散補償量設定装置6bによって設定されていないため、光合分波器42から受けた波長分散検出用の光信号をそのまま送出する。光合分波器43は、波長分散補償部40-1~40-Nが送出するN個の異なる波長の波長分散検出用の光信号を合波して光伝送路5bに送出する。
光合分波器43が送出する波長多重されている光信号は、光ファイバ伝送路51、光増幅器52を通じて光合分波器54に到達する。光合分波器54は、光増幅器52に光ファイバを介して接続する一端で受けた波長多重されている光信号をN個の波長に分波する。光合分波器54は、分波したN個の異なる波長の波長分散検出用の光信号の各々をN個の他端の各々から送出する。
光通信装置3-1~3-Nの光信号受信部31-1~31-Nの各々は、光合分波器54がN個の他端の各々から送出した光信号を受信する。電気信号処理部32-1~32-Nは、光信号受信部31-1~31-Nの各々が受信した光信号に関する情報を波長分散補償量設定装置6bに送信する。
波長分散補償量設定装置6bは、電気信号処理部32-1~32-Nから受信する波長分散の影響を受けている光信号に関する情報と、内部の記憶領域が予め記憶する波長分散の影響を受けていない波長分散検出用の光信号に関する情報とに基づいて、光通信装置3-1~3-Nの各々に至る経路を伝搬する光信号に生じている波長分散量D1~DNを算出する(ステップSb2)。
波長分散補償量設定装置6bは、算出した波長分散量D1~DNの各々を波長分散補償量DCDCM#1~DCDCM#Nとする(ステップSb3)。波長分散補償量設定装置6bは、波長分散補償量DCDCM#1~DCDCM#Nの各々を、対応する波長分散補償部40-1~40-Nに設定する(ステップSb4)。波長分散補償部40-1~40-Nの各々は、波長分散補償量設定装置6bから設定された波長分散補償量DCDCM#1~DCDCM#Nに応じた波長分散補償モジュールを選択し、選択した波長分散補償モジュールを光通信装置2bと、光ファイバ伝送路51とに接続する。
この状態において、光通信装置2bが、光通信装置3-1~3-Nの各々に対して送信データの送信を開始する。なお、第1及び第2の実施形態の光通信装置2は、単一の波長の光信号を送信するため、光通信装置3-1~3-Nに対して同一の送信データを送信する構成になっているが、第3の実施形態の光通信装置2bは、N個の波長の光信号を送信するため、光通信装置3-1~3-Nの各々に対して異なる送信データを送信することができる点で、第1及び第2の実施形態とは異なる。そのため、光通信装置2bの電気信号生成部21-1~21-Nの各々が取り込む情報源である送信データは、異なっていてもよいし、同一の送信データであってもよい。
電気信号生成部21-1~21-Nの各々は、取り込んだ送信データを符号化し、符号化した送信データを電気信号の波形に変換することにより送信データの電気信号を生成し、生成した電気信号を各々に対応する光信号生成部22-1~22-Nに出力する。光信号生成部22-1~22-Nの各々は、各々に対応する電気信号生成部21-1~21-Nが出力する電気信号を光信号に変換する。光信号生成部22-1~22-Nの各々は、変換した光信号を波長多重部23に送出する。
波長多重部23は、光信号生成部22-1~22-Nが送出するN個の光信号を、N個の異なる波長の光信号に変換する。波長多重部23は、変換した異なる波長の光信号を波長多重して光ファイバに送出する。
波長分散補償装置4bの光合分波器42は、光通信装置2bに光ファイバを介して接続する一端で受けた波長多重されている光信号をN個の波長に分波する。光合分波器42は、分波したN個の波長の光信号の各々を波長分散補償部40-1~40-Nに送出する。
波長分散補償部40-1~40-Nの各々は、各々が受信する光合分波器42が送出した光信号に対して、各々に設定された波長分散補償量DCDCM#1~DCDCM#Nの波長分散補償を行う。波長分散補償部40-1~40-Nの各々は、波長分散補償を行った光信号を光合分波器43に送出する。光合分波器43は、波長分散補償部40-1~40-Nが送出するN個の異なる波長の光信号を合波して光伝送路5bに送出する。
光伝送路5bの光ファイバ伝送路51は、光合分波器43が送出した光信号を伝送し、光増幅器52は、光ファイバ伝送路51が伝送した光信号を増幅する。光合分波器54は、光増幅器52に光ファイバを介して接続する一端で受けた波長多重されている光信号をN個の波長に分波する。光合分波器54は、分波したN個の波長の光信号の各々をN個の他端より送出する。
光通信装置3-1~3-Nの光信号受信部31-1~31-Nの各々は、光合分波器54がN個の他端より送出した光信号を受信する。光通信装置3-1~3-Nの光信号受信部31-1~31-Nの各々は、受信した光信号を電気信号に変換する。光通信装置3-1~3-Nの光信号受信部31-1~31-Nの各々は、変換した電気信号を各々に対応する電気信号処理部32-1~32-Nに出力する。電気信号処理部32-1~32-Nは、電気信号を取り込み、取り込んだ電気信号を復号して、各々に対応する電気信号生成部21-1~21-Nが送信した送信データを復元する。
上記の第3の実施形態の光通信システム1bにおいて、波長分散補償装置4bは、一端が光通信装置2bに接続する光合分波器42と、一端が光伝送路5bに接続する光合分波器43と、光合分波器42の他端の各々と、光合分波器43の他端の各々とを一対一に接続する波長分散補償部40-1~40-Nと、を備える。光伝送路5bの分岐点には、光合分波器54が適用されており、異なる波長の各々と、波長分散補償部40-1~40-Nの各々と、光通信装置3-1~3-Nの各々とは一対一に対応付けられている。波長分散補償部40-1~40-Nの各々は、各々に対応する光通信装置3-1~3-Nと、光通信装置2bとの間の経路を伝搬する光信号に生じる波長分散量を波長分散補償量として補償する。
これにより、光通信装置3-1~3-Nは、光通信装置3-1~3-Nの各々に至る経路を伝搬する光信号に生じている波長分散量D1~DNと同一量の波長分散補償量DCDCM#1~DCDCM#Nに基づいて補償された光信号を受信することが可能になる。
光通信システム1bでは、CUである光通信装置2bに波長分散補償装置4bを接続するため、光通信装置2bの近く、例えば、中央局の建物内に波長分散補償装置4bを設置することができる。そのため、光通信システム1では、図11に示した光通信システム100aのように、波長分散補償を行うために、人をDUの設置位置まで派遣する必要がない。
波長分散補償量設定装置6bを備えることにより、人手を介さずに、光通信装置2bから光通信装置3-1~3-Nの各々に至る経路を伝搬する光信号に生じているN個の波長分散量D1~DNを波長分散補償量DCDCM#1~DCDCM#Nとして波長分散補償部40-1~40-Nに設定することができる。したがって、第3の実施形態における光通信システム1bは、人に要するコスト等のシステムの構築に要するコストを抑えつつ波長分散補償を行うことにより信号品質を向上させることを可能にしている。
光通信システム1bは、第1及び第2の実施形態の光通信システム1,1aとは異なり、光通信装置3-1~3-Nと同一の数の波長分散補償部40-1~40-Nを用いて、光通信装置3-1~3-Nの各々に至る経路を伝搬する光信号に生じている波長分散量D1~DNを個別に補償するため、第1及び第2の実施形態の光通信システム1,1aよりも精度の高い波長分散補償を行うことができ、図11に示した光通信システム100aと同程度の精度で波長分散補償を行うことが可能になる。
上記したように、波長分散補償部40-1~40-Nは、波長分散に起因する信号品質劣化をある基準値以下に抑圧可能である。したがって、補償可能な波長分散範囲は、その基準値に対応する範囲に限定されることになる。そのため、光通信装置2bの光送信部20-1~20-Nの各々と、各々に対応する光通信装置3-1~3-Nとの間の波長分散量が、各々に対応する波長分散補償部40-1~40-Nが補償する波長分散補償量の範囲内となるように、光通信装置2と、光通信装置3-1~3-Nとが選定されている必要がある。
なお、上記の第1から第3の実施形態では、光通信装置2,2bは、光信号の送信のみを行い、光通信装置3-1~3-Nは、光信号の受信のみを行うようにしているが、本発明は、当該実施の形態に限られない。例えば、光通信システム1,1aにおいて、光通信装置2が、図3に示した光受信部30-iに相当する光受信部30を備え、光通信装置3-1~3-Nの各々が、図2に示した光送信部20に相当する光送信部20-1~20-Nを備えて、光通信装置2と光通信装置3-1~3-Nとが光信号の送受信を行うようにしてもよい。
光通信システム1bにおいて、光通信装置2bが、図3に示した光受信部30-iに相当する光受信部30-1~30-Nを備え、光通信装置3-1~3-Nの各々が、図2に示した光送信部20に相当する光送信部20-1~20-Nを備えて、光通信装置2bと光通信装置3-1~3-Nとが光信号の送受信を行うようにしてもよい。ただし、この場合、光通信装置3-1~3-Nが備える光送信部20-1~20-Nは、それぞれ異なる波長の光信号を生成して送出する構成を備える必要があり、それに伴い、光合分波器42,43,54は、光送信部20-1~20-Nが送出する異なる波長の光信号を合分波する構成を有する必要がある。
光通信装置2,2bと光通信装置3-1~3-Nとが光信号の送受信を行う場合、波長分散補償量設定装置6,6a,6bは、逆方向の経路、すなわち、光通信装置3-1~3-Nから光通信装置2,2bに至る経路を伝搬する光信号に生じている波長分散量を算出する必要がある。例えば、波長分散補償量設定装置6,6a,6bは、光通信装置3-1~3-Nに波長分散検出用の光信号を光通信装置2,2bに対して送出させて、光通信装置2,2bが備える電気信号処理部32,32-1~32-Nから、各々が受信した波長分散の影響を受けている光信号に関する情報を受けて、逆方向におけるN個の波長分散量を算出するようにしてもよい。
ただし、光通信装置2,2bから光通信装置3-1~3-Nに至る経路と、光通信装置3-1~3-Nから光通信装置2,2bに至る経路の両方において同一の波長分散が生じているとみなせる場合には、両方の経路についての波長分散量を算出するのではなく、いずれか一方向の経路における波長分散量を算出し、算出した波長分散量を他の方向の経路における波長分散量としてもよい。
上記の第1及び第2の実施形態では、光分岐器53,41,53-1,53-2として光スプリッタを適用するとしているので、同一の光信号の光パワーを分岐する構成、すなわち、光通信装置2は、単一の波長で同一の送信データを光通信装置3-1~3-Nに送信する構成になっているが、本発明の構成は、当該実施の形態に限られない。例えば、第1の実施形態の光通信システム1の場合、光通信装置2に替えて、第3の実施形態の光通信装置2bを適用し、光分岐器53に替えて、1:N分岐の光合分波器、具体的には、1:N分岐のWDMカプラを適用するようにしてもよい。第2の実施形態の光通信システム1aの場合、光通信装置2に替えて、第3の実施形態の光通信装置2bを適用し、光分岐器41に替えて、1:2分岐の光合分波器、具体的には、1:2分岐のWDMカプラを適用し、光分岐器53-1,53-2に替えて、1:N/2分岐の光合分波器、具体的には、1:N/2分岐のWDMカプラを適用するようにしてもよい。このような構成にすることで、第1及び第2の実施形態において、光通信装置2bは、光通信装置3-1~3-Nに対して、異なる送信データを送信することが可能になる。
上記の第1から第3の実施形態では、波長分散補償装置4,4a,4bが備える波長分散補償部40,40-1~40-Nは、予め複数の波長分散補償モジュールを備えており、波長分散補償量設定装置6,6a,6bから設定される波長分散補償量に応じた波長分散補償モジュールを選択するようにしている。なお、将来的に、波長分散補償量を任意に変更することができる可変波長分散補償モジュールが入手できるようになれば、そのような可変波長分散補償モジュールを波長分散補償部40,40-1~40-Nとして適用してもよい。また、本発明の構成として、人手によって波長分散補償量を調整する波長分散補償モジュールを利用するようにしてもよい。この場合、例えば、波長分散補償量設定装置6,6a,6bを中央局の建物内に設置しておき、光通信システム1,1a,1bの管理者が、波長分散補償量設定装置6,6a,6bが算出する各経路の波長分散量を参照して、適切な波長分散補償量が得られるように波長分散補償モジュールを調整する。なお、波長分散補償量設定装置6,6a,6bが各経路の波長分散量を算出する場合、波長分散補償部40,40-1~40-Nの箇所は、光ファイバによって直結されている状態となる。管理者は、調整した波長分散補償モジュールを波長分散補償部40,40-1~40-Nとして挿入する。波長分散補償部40,40-1~40-Nを挿入する位置が、中央局の建物内であれば、管理者による全ての作業は中央局の建物内において行うことができる。そのため、第1から第3の実施形態において、人手によって波長分散補償量を調整する波長分散補償モジュールを利用する場合であっても、人をDUの設置位置まで派遣する必要はなく、人に要するコスト等のシステムの構築に要するコストを抑えつつ波長分散補償を行うことにより信号品質を向上させることが可能になる。
上述した実施形態における波長分散補償量設定装置6,6a,6b、光通信装置2,2b、光通信装置3-1~3-Nをコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。