JP7406064B2 - 方向性電磁鋼板の製造方法及び巻鉄芯の製造方法 - Google Patents

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Description

発明は、方向性電磁鋼板に、その板幅方向に延在する溝を板長方向に所定間隔で形成する溝加工工程を含む方向性電磁鋼板の製造方法、及び、その方向性電磁鋼板を巻回して形成する鋼板巻回工程を含む巻鉄芯の製造方法に関する。
方向性電磁鋼板は、比較的小さな磁化力において磁化する際のエネルギー損失(鉄損)が低いため、例えば変圧器(トランス)の巻鉄芯を製造するために用いられている。このような巻鉄芯に用いられる方向性電磁鋼板は、低鉄損であることが求められる。
方向性電磁鋼板の鉄損を改善する方策の一つとして、方向性電磁鋼板に溝を導入することで溝周辺に磁極を発生させ、磁区を細分化し、異常渦電流損を下げることができる技術(耐SRA性磁区制御)が知られている(例えば、特許文献1~6参照)。耐SRA性とは、高温の応力緩和焼鈍「SRA(Stress Relief Annealing)」を行っても鉄損改善効果が消滅しないことを意味する。
特公昭62-54873号公報 特公昭62-53579号公報 特開平6-57335号公報 特開2003-129135号公報 特許第5234222号公報 特開平6-299244号公報
従来、耐SRA性磁区制御のための溝は、方向性電磁鋼板の全幅にわたり形成されている。
耐SRA性磁区制御のための溝を設けることにより、鉄損を低くした電磁鋼板を提供できるようになったが、この電磁鋼板を巻回して構成した巻鉄芯においては、交流通電時に騒音が発生し易い問題がある。
即ち、電磁鋼板に溝を形成した部分は巻鉄芯において空隙部分となるので、交流通電時の磁歪現象により電磁鋼板に伸縮を生じると、空隙部分が共振点となる可能性があり、低周波騒音などの騒音発生の原因となる問題がある。
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、鉄損改善率に優れ、巻鉄芯を構成した場合に騒音を抑制できる方向性電磁鋼板の製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、鉄損改善率に優れ、騒音を抑制した巻鉄芯の製造方法を提供することを目的とする。
」本形態は、板幅方向に延在する溝が板長方向に所定間隔で複数形成された方向性電磁鋼板の製造方法であって、板幅方向に沿ってレーザー光を照射して前記溝を形成する際、レーザー光の強弱を調節することにより、前記板幅方向に沿う前記溝の溝深さの標準偏差をσと定義し、前記板幅方向に沿う前記溝の平均溝深さをaveと定義すると、σ/aveで示される溝深さばらつきが0.05以上0.17以下である方向性電磁鋼板を形成する方向性電磁鋼板の製造方法。
」本形態は、前記溝深さばらつきを0.05以上0.15以下とした方向性電磁鋼板の製造方法とすることが好ましい。
本形態に係る方向性電磁鋼板の製造方法において、長さ方向に沿って鋼板を搬送する途中に、前記板幅方向に沿って板面から離間して設置した複数のレーザー装置からレーザー光を照射し、板幅方向に前記溝を形成する処理を前記板長方向に繰り返し、前記板長方向に所定の間隔で複数の溝を形成することが好ましい。
」本形態に係る巻鉄芯の製造方法は、板幅方向に延在する溝が板長方向に所定間隔で複数形成された方向性電磁鋼板を巻回して構成される巻鉄芯の製造方法であって、板幅方向に沿ってレーザー光を照射して前記溝を形成する際、レーザー光の強弱を調節することにより、前記板幅方向に沿う前記溝の溝深さの標準偏差をσと定義し、前記板幅方向に沿う前記溝の平均溝深さをaveと定義すると、σ/aveで示される溝深さばらつきが0.05以上0.17以下となる方向性電磁鋼板を形成し、この方向性電磁鋼板を巻回することを特徴とする。
」本形態に係る巻鉄芯の製造方法において、前記溝深さばらつきを0.05以上0.15以下とすることが好ましい。
方向性電磁鋼板にレーザー光を照射して溝を形成する際、レーザー光の強弱を調節することにより、溝深さに所定のばらつきを付加することができる。そして、溝深さばらつきを0.05以上0.17以下の範囲とすることで、巻鉄芯を構成した場合にその振動モードを複雑にできる結果、均一深さの溝を有する方向性電磁鋼板を用いた場合より、共振を抑制することができ、通電時に発生する騒音を抑制できる。このため、低騒音化した巻鉄芯を提供できる。
より優れた鉄損改善率を得るとともに騒音を低減するには、溝深さばらつきを0.05以上0.15以下とした方向性電磁鋼板を用いることが好ましい。
」本形態に係る巻鉄芯の製造方法において、長さ方向に沿って鋼板を搬送する途中に、前記板幅方向に沿って板面から離間して設置した複数のレーザー装置からレーザー光を照射し、板幅方向に前記溝を形成する処理を前記板長方向に繰り返し、前記板長方向に所定の間隔で複数の溝を形成した方向性電磁鋼板を巻回することが好ましい。
本発明によれば、方向性電磁鋼板の板幅方向に設けた溝の板幅方向に沿う溝深さばらつきを所定の範囲とすることにより、巻鉄芯とした場合に鉄損改善率を高い状態に維持しつつ共振を抑制して低騒音化できる方向性電磁鋼板を提供できる。
また、この方向性電磁鋼板を用いることで鉄損改善率を維持しつつ、低騒音化した巻鉄芯を提供することができる。
本実施形態に係る方向性電磁鋼板の一例構成を示す板厚方向に沿った断面図である。 本実施形態に係る巻鉄芯の一例を示す斜視図である。 図2に示す巻鉄芯を構成する方向性電磁鋼板を展開した状態の一例を示す平面図である。 図3のF4-F4線に沿う断面図である。 他の実施形態に係る方向性電磁鋼板の一例を示す断面図である。 比較例の方向性電磁鋼板において均一深さの溝を設けた場合の一例を示す断面図である。 本実施形態に係る方向性電磁鋼板と巻鉄芯の製造工程の一例を示すフローチャートである。 本実施形態に係る方向性電磁鋼板の製造工程について図7に示す工程と異なる場合の例を示すもので、(A)は冷間圧延工程の後にレーザー加工工程を行う場合の一例を示すフローチャート、(B)は脱炭焼鈍工程の後にレーザー加工工程を行う場合の一例を示すフローチャート、(C)は最終仕上げ焼鈍工程の後にレーザー加工工程を行う場合の一例を示すフローチャートである。 本実施形態に係る方向性電磁鋼板に溝を形成する場合に用いるレーザー照射装置の概要とレーザー加工中の方向性電磁鋼板を示す斜視図である。 図9に示すレーザー照射装置で溝が形成された方向性電磁鋼板の一例を示す平面図である。 実施例において製造された方向性電磁鋼板を巻回して構成される巻鉄芯について鉄損改善率と騒音改善率に関し、溝深さのばらつき(σ/ave)との相関関係を示すグラフである。 実施例において製造された方向性電磁鋼板の板幅方向位置毎の溝深さについて示す説明図である。 本実施形態に係る方向性電磁鋼板の製造方法の変形例として方向性電磁鋼板に溝を一列のみ形成する工程を示す斜視図である。 本実施形態に係る方向性電磁鋼板の製造方法の変形例として歯型ロールによって方向性電磁鋼板に溝を形成する工程を示す斜視図である。 比較例に係る巻鉄芯の構成の一例を示す斜視図である。 図15に示す巻鉄芯を構成する方向性電磁鋼板を展開した状態の一例を示す平面図である。
以下に、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について説明する。
なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合がある。
<方向性電磁鋼板の概要>
方向性電磁鋼板は、鋼板の結晶粒の磁化容易軸(体心立方晶の<100>方向)が製造工程における圧延方向に略揃っている電磁鋼板である。方向性電磁鋼板は、圧延方向に磁化が向いた磁区を、磁壁を挟んで複数配列した構造を有する。このような方向性電磁鋼板は圧延方向に磁化しやすいため、磁力線の方向がほぼ一定に流れるトランスの鉄芯材料に適している。
トランスは、通常、積みトランスと巻きトランスとに大別される。本実施形態に係る方向性電磁鋼板は、鋼板に巻き変形を加えながらトランスの形状に組み上げる巻きトランスの鉄芯材料として利用される。
図1に示すように、本実施形態に係る方向性電磁鋼板10は、鋼板本体(地鉄)12と、鋼板本体12の表裏両面に形成されたグラス被膜14と、グラス被膜14上に形成された絶縁被膜16と、を有する。
鋼板本体12は、Siを含有する鉄合金で構成されている。
変圧器用の巻鉄芯等に加工される直前の、最終的な方向性電磁鋼板10における鋼板本体12の組成は、一例として、Si;2.0質量%以上4.0質量%以下、C;0.003質量%以下、Mn;0.05質量%以上0.15質量%以下、酸可溶性Al;0.003質量%以上0.040質量%以下、N;0.002質量%以下、S;0.02質量%以下、残部がFe及び不純物である。鋼板本体12の厚さは、例えば、0.15mm以上、かつ、0.35mm以下である。
グラス被膜14は、例えば、フォルステライト(MgSiO)、スピネル(MgAl)及びコージライト(MgAlSi18)などの複合酸化物によって構成されている。グラス被膜14の厚さは、例えば、1μmである。
絶縁被膜16は、例えば、コロイド状シリカとリン酸塩(リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウムなど)を主体とするコーティング液やアルミナゾルとホウ酸を混合したコーティング液の塗膜を加熱乾燥させた被膜により構成されている。
上述した構成の方向性電磁鋼板10は、複数枚重ねられた状態で巻回され、変圧器(トランス)用の図2に示す巻鉄芯50が形成される。
図2に示すように、本実施形態に係る巻鉄芯50は、略直方体形状をなしており、中央側に空間が形成されている。図2に示すように、空間の開口部を横向き(Y軸向き)とした巻鉄芯50において、外周の横の長さはAと表記することができ、縦の長さはBと表記することができ、奥行きの長さはCと表記することができる。また、巻鉄芯50の内周の横の長さはaと表記することができ、縦の長さはbと表記することができ、内周の奥行きは外周の奥行きと同じ長さに形成されている。巻鉄芯50は、四隅に製造時に曲げ加工されたコーナ部52を有する。コーナ部52は、例えばR形状となっている。
本実施形態の巻鉄芯50は、上述の通り方向性電磁鋼板10を巻回した構成であるため、方向性電磁鋼板10を展開すると図3に示す形状となる。図3には、巻鉄芯50を構成する方向性電磁鋼板10の長さ方向の一部が示されている。なお、図2のX方向が図3の圧延方向(板長方向)に対応し、図2のY方向が図3の板幅方向に対応する。また、図3のF4-F4線に沿う断面を図4に示す。
図3、図4に示すように、方向性電磁鋼板10においては、鉄損を低減させるために、方向性電磁鋼板10の製造時の搬送方向(圧延方向)と交差する方向(図の例では90°交差方向)に延在する溝20が、鋼板本体(地鉄)12の表面に圧延方向(板長方向)に所定の間隔で複数形成されている。
本実施形態において、溝20は方向性電磁鋼板10の幅方向両端に到達されている。また、溝20において溝底には凹凸が形成され、板幅方向の位置毎に溝深さが異なるように溝20の深さにばらつきが付与されている。
これらの溝20は、図9を基に後述するようにレーザー照射装置106によりレーザー光(レーザービーム)を方向性電磁鋼板10の表面に集光照射することにより形成されたものである。図3に示す方向性電磁鋼板10において、板長方向に配列されている複数の溝20は全て同一ピッチで形成されている。
レーザー照射装置106からのレーザー光を方向性電磁鋼板10に集光照射し、レーザー光を板幅方向一端から他端に走査する間に溝20を形成する場合、レーザー照射装置106から発生させるレーザー光の出力を調整し、板幅方向の位置毎に照射するレーザー光の強度を変化させることで溝20が形成されている。
レーザー光の強度(レーザー光から鋼板に付与されるエネルギー)を変化させる場合、パルスジェネレーター等を用いて、後述するレーザー発振器102への入力電圧を変化させることにより、レーザー光のパワーを時間単位で変更しても良いし、レーザー光のフォーカス位置を時間単位で調整しても良いし、レーザー光量調節用のフィルターの偏光量などを調節してレーザー光の強度を時間単位で変更しても良い。例えば、レーザー光の走査速度(スキャン速度)は数10m/s程度であるので、方向性電磁鋼板10の幅方向一端から幅方向他端にレーザー光を走査する間に、正弦波、余弦波、三角波、ランダム信号波などに沿うようにレーザー光のパワーやフィルターの偏光量を調節することで、溝深さにばらつきを付与できる。また、レーザー照射装置に設けられている集光レンズと方向性電磁鋼板10との相対距離を時間あたり変動するように調整することによりフォーカス位置を板厚方向に調節し、溝深さを調整しても良い。
図4は一例として正弦波に合わせてレーザー光のパワーを調節し、溝20の底部に板幅方向に沿うように断面山型の凸部20Aと断面谷型の凹部20Bとを複数連続形成した形状の溝20が形成された例を描いている。
本実施形態の方向性電磁鋼板10においては、上述の溝深さのばらつきを規定の範囲に収めることが望ましい。
前記板幅方向に沿う溝20の溝深さの標準偏差をσと定義し、板幅方向に沿う溝20の平均溝深さをaveと定義すると、(σ/ave)で示される溝深さばらつきを0.05以上0.17以下とすることが好ましい。この範囲を採用するならば、方向性電磁鋼板10を用いて図2に示す巻鉄芯50を構成した場合、巻鉄芯50として14%以上の鉄損改善率を得ることができ4%以上の騒音改善率を得ることが可能となる。
また、溝深さのばらつきとして、前述の範囲内であっても0.05以上0.15以下であることがより好ましい。この範囲を採用するならば、巻鉄芯50を構成した場合、15%以上の鉄損改善率を得ることができ4%以上の騒音改善率を得ることが可能となる。
また、溝深さのばらつきの下限値として、0.07を採用し、0.07以上とすることがより好ましい。このため、溝深さのばらつきとして、0.07以上0.15以下がより好ましい。この範囲を採用するならば、巻鉄芯50を構成した場合、15%以上の鉄損改善率を得ることができ、7%以上の騒音改善率を得ることが可能となる。
なお、溝深さのばらつきを求める場合に適用する標準偏差と平均を求める場合、1つの溝に対し溝の長さ方向(板幅方向)に沿って所定の間隔で20箇所以上で深さを測定し、1つの溝における標準偏差と平均溝深さを求め、方向性電磁鋼板10の板長方向に形成されている3つ以上の溝20の平均値として算出することが好ましい。
図3、図4に示すように溝20を備えた方向性電磁鋼板10を巻回して図2に示す巻鉄芯を構成すると、巻回し積層した下層側の方向性電磁鋼板10と上層側の方向性電磁鋼板10との間に溝20の存在により空隙を生じる。
本実施形態の方向性電磁鋼板10を適用した巻鉄芯50では、板幅方向の全幅に渡り深さ一定の溝を設けた従来構造に対比し、溝深さに上述の範囲のばらつきを有する溝部20を備えた方向性電磁鋼板10を適用しているので、前述の溝深さばらつきに起因し、通電時に発生しようとする共振を抑制できる。このため、従来構造より低騒音化できる巻鉄芯50を提供できる。
溝深さのばらつきは、鉄損改善率(%)と騒音低減率(%)に関連する。
巻鉄芯を交流駆動(例えば50Hz)して最大磁束密度(例えば1.7T)で磁化した場合、方向性電磁鋼板1kgあたりの電気エネルギー損失をW17/50(W/kg)と表記することができる。
W17/50(W/kg)=トランス鉄損(W)/トランス重量(kg)
この巻鉄芯において、巻トランス鉄損は、巻鉄芯に一次素線(励磁巻線)および二次巻線(サーチコイル)をそれぞれ巻き付けて、電力計により測定することができる。
溝なしの方向性電磁鋼板を巻回して構成した巻鉄芯のトランス鉄損(W)と、所定条件の溝を備えた方向性電磁鋼板を巻回して構成した巻鉄芯のトランス鉄損(Wi)とを対比し、{(W-Wi)/W}×100(%)の関係式から、所定条件の溝を備えた方向性電磁鋼板を巻回して構成した巻鉄芯についての鉄損改善率(η)を求めることができる。
ここで、溝を全幅に有する方向性電磁鋼板を巻回して構成した巻鉄芯のトランス鉄損を(Wg)とすると、その鉄損改善率は、上記式から、(η)={(W-Wg)/W}×100(%)により求められ、後述する実施例に示すように16.6%などとなる。そのため、所定条件の溝を有する方向性電磁鋼板を巻回して構成した巻鉄芯の鉄損改善率は、この関係式から求められる鉄損改善率として14%以上を備えることが望ましいと考えられ、15%以上を備えることがより好ましいと考えられる。鉄損改善率は、巻鉄芯50として重要な指標であるから、できるだけ高いことが好ましい。
騒音低減率(%)は、巻鉄芯を交流(例えば50Hz)で最大磁束密度(例えば1.7T)で磁化した際の騒音として、均一深さの溝を有する方向性電磁鋼板を巻回して構成した巻鉄芯と、溝深さにばらつきを有する方向性電磁鋼板を巻回して構成した巻鉄芯との比較から求めることができる。
均一な溝深さの方向性電磁鋼板からなる巻鉄芯におけるトランス騒音(N)と、溝深さにばらつきを有する方向性電磁鋼板からなる巻鉄芯におけるトランス騒音(N)を比較し、{(N-N)/N}×100(%)の関係式から騒音低減率(%)を求めることができる。
この関係式から求められる騒音低減率(%)として、4%以上が望ましいと考えられる。騒音低減率(%)については、σ/aveで示される溝深さばらつきの値が向上するにつれて、低下するが、深さばらつきの範囲が0.05~0.17の範囲であれば、4~16.6%程度の騒音低減率を確保できる。
このため、前記式の関係を満足することが好ましい。
ここで、比較例として、図15、図16に示すように、巻鉄芯に使われる板幅の全幅に亘って溝120が形成され、均一な深さを有する溝120が形成された方向性電磁鋼板110、及び、この方向性電磁鋼板110を巻回して形成した巻鉄芯150を例に挙げて、方向性電磁鋼板について説明する。
方向性電磁鋼板の曲げ加工においては、通常、鋼板が圧延方向に曲げられる。
巻鉄芯150においては、方向性電磁鋼板110が内周側から外周側に巻回され、方向性電磁鋼板110が巻層毎に積層されているが、方向性電磁鋼板110の全幅に渡るように溝120が形成されていると、巻鉄芯150の積層構造の内部に複数の空隙が存在することとなる。
図16は略図のため、巻鉄芯150の最外層表面に存在する溝120のみを描いているが、巻鉄芯150を構成する方向性電磁鋼板110の全長に渡り間欠的に溝120を形成しているので、溝120による空隙は巻鉄芯150の内層側から外層側に複数存在する。また、参考のため、図6に均一な深さの溝120を備えた方向性電磁鋼板110の断面構造を示しておく。
図15に示す巻鉄芯150においてその内層側から外層側にかけて複数の空隙が存在すると、巻鉄芯150全体の剛性が低下するため、交流通電により方向性電磁鋼板110が伸縮した場合、巻鉄芯150から騒音が発生し易くなる。また、空隙が複数存在すると巻回構造の巻鉄芯150において遊びの部分が多く存在するので、滑り等に起因して巻鉄芯150から騒音が発生し易くなる。
図15、図16に示す構造に対し、図2~図4に示すように溝深さにばらつきを有する溝20を備えた方向性電磁鋼板10からなる巻鉄芯50であるならば、板幅方向に沿って溝20の深さが位置毎に異なり、共振モードが複雑になるので、共振を抑制することができ、低騒音化した巻鉄芯50を提供できる。
なお、本実施形態において説明した方向性電磁鋼板10は、レーザー照射装置に付加した正弦波に起因するパワー変動に応じ、凸部20Aと凹部20Bを有する凹凸形状の溝底形状を有したが、溝底形状はこの実施形態の例に限るものではない。
例えば、レーザー照射装置106のパワーに三角波やランダム波を送ることで、凹凸形状の異なる図5に示す断面形状の凹凸部20Cを有する方向性電磁鋼板10を製造し、これを巻鉄芯製造用の方向性電磁鋼板として用いても良い。また、歯の形状がランダムに構成された歯型ロールを用いて方向性電磁鋼板10を製造することにより、ランダムな溝深さ分布を作るよういにしても良い。
<巻鉄芯の製造方法の流れ>
図7を参照しながら、本実施形態に係る巻鉄芯50の製造方法の流れについて説明する。
巻鉄芯50の製造工程は、図7に示すように、鋳造工程S2と、熱間圧延工程S4と、焼鈍工程S6と、冷間圧延工程S8と、脱炭焼鈍工程S10と、焼鈍分離剤塗布工程S12と、最終仕上げ焼鈍工程S14と、絶縁被膜形成工程S16と、板幅方向鉄損測定工程S18と、レーザー加工工程S20と、再絶縁被膜形成工程S22と、鋼板巻回工程S30とを含む。
鋳造工程S2では、所定の組成に調整された溶鋼を連続鋳造機等に供給して、鋳塊を連続的に形成する。熱間圧延工程S4では、鋳塊を所定温度(例えば1150~1400℃)に加熱して熱間圧延を行う。これにより、所定厚さ(例えば厚さ1.8~3.5mm)の熱間圧延材が形成される。
焼鈍工程S6では、熱間圧延材に対して、例えば、加熱温度750~1200℃、加熱時間30秒~10分の条件で熱処理を行う。冷間圧延工程S8では、熱間圧延材の表面を酸洗した後に、冷間圧延を行う。これにより、所定厚さ(例えば、厚さ0.15~0.35mm)の冷間圧延材が形成される。
脱炭焼鈍工程S10では、冷間圧延材に対し、例えば、加熱温度700~900℃、加熱時間1~3分の条件で熱処理を行い、鋼板本体12を形成する。鋼板本体12の表面には、シリカ(SiO)を主体とする酸化物層が形成される。焼鈍分離剤塗布工程S12では、鋼板本体12の酸化物層の上に、マグネシア(MgO)を主体とする焼鈍分離剤を塗布する。
最終仕上げ焼鈍工程S14では、焼鈍分離剤が塗布された鋼板本体12を例えばコイル状に巻き取った状態で、バッチ式炉内に挿入して熱処理を行う。熱処理条件は、例えば、加熱温度1100~1300℃、加熱時間20~24時間である。この際、鋼板本体12の圧延方向と磁化容易軸とが一致した、いわゆるゴス粒が優先的に結晶成長する。この結果、仕上げ焼鈍の後に結晶方位性(結晶配向性)が高い方向性電磁鋼板10が得られることとなる。また、最終仕上げ焼鈍工程S14により、酸化物層と焼鈍分離剤が反応し、鋼板本体12の表面にフォルステライト(MgSiO)からなるグラス被膜14が形成される。
絶縁被膜形成工程S16では、コイル状に巻き取られた鋼板本体12を巻き解して板状に伸ばして搬送する。そして、鋼板本体12の両面に形成されたグラス被膜14の上に絶縁剤を塗布、焼付けを行い、絶縁被膜16を形成する。絶縁被膜16が形成された鋼板本体12は、コイル状に巻き取られる。
板幅方向鉄損測定工程S18では、例えば、後述するレーザー加工工程S20で溝20を板幅方向に形成する場合において、所定の間隔で分けられた領域毎の鉄損の値を前もって測定する。板幅方向鉄損測定工程S18で鉄損を測定しておくことで、続くレーザー加工工程S20において、先の測定結果に基づき、所定間隔で分けられた領域毎のレーザー加工の条件を変えることができる。
なお、板幅方向鉄損測定工程S18は必須ではなく、特に、方向性電磁鋼板10が得られる最終仕上げ焼鈍工程S14より前に、レーザー加工工程を行う場合(後述する図8(A)、図8(B)の場合)等には、板幅方向鉄損測定工程S18を省略できる。
レーザー加工工程S20では、コイル状に巻き取られた鋼板本体12を巻き解して板状に伸ばして水平搬送する。そして、後述するレーザー照射装置106によって、鋼板本体12の片面に向けてレーザー光を集光・照射し、圧延方向に搬送される方向性電磁鋼板10の圧延方向と交差する交差方向、例えば90°交差方向にレーザービームを走査する。
これにより、鋼板本体12の表面に、延在する溝20が、前記圧延方向(鋼板10の長さ方向)に所定間隔で複数形成される。なお、レーザービームの集光・照射は、鋼板本体12の表面及び裏面の両方から行ってもよい。このレーザー加工工程S20は、溝加工工程の一例である。
再絶縁被膜形成工程S22では、溝20が形成された鋼板本体12に対して、絶縁被膜形成工程S16と同様に絶縁被膜16を形成する。すなわち、2回目の絶縁被膜16を形成する。前記の一連の工程により、前記圧延方向と交差する方向に延在する溝20が、鋼板本体12(地鉄)の表面に圧延方向に所定間隔で形成された方向性電磁鋼板10が製造される。
このように、本実施形態では、鋼板本体12の表面にグラス被膜14及び絶縁被膜16を形成し、レーザービームの照射によって磁区制御された方向性電磁鋼板10を製造する。すなわち、上述した工程S2~S22が、方向性電磁鋼板10の製造工程となる。
鋼板巻回工程S30では、まず、溝20が形成された方向性電磁鋼板10を圧延方向に所定長さだけカットし、複数枚準備する。そして、複数枚の方向性電磁鋼板10を重ねた状態で巻回することで、図2に示す巻鉄芯50が製造される。すなわち、上述した工程S2~S22に、鋼板巻回工程S30を加えた工程が、巻鉄芯50の製造工程となる。
なお、以上の説明では、レーザー加工工程S20を絶縁被膜形成工程S16の後に行うこととしたが、この順序に限定されず、レーザー加工工程S20を絶縁被膜形成工程S16よりも前に行ってもよい。
例えば、方向性電磁鋼板10の製造工程において、図8(A)に示すように、冷間圧延工程S8の後に、レーザー加工工程S20を行ってもよい。この場合、図8(A)に示すように、レーザー加工工程S20の後に絶縁被膜形成工程S16を行なうので、図7に示す再絶縁被膜形成工程S22が不要となり、方向性電磁鋼板10の製造工程(結果的に、巻鉄芯50の製造工程も)を短縮できる。
また、図8(B)に示すように、脱炭焼鈍工程S10の後に、レーザー加工工程S20を行ってもよい。さらに、図8(C)に示すように、最終仕上げ焼鈍工程S14の後に、レーザー加工工程S20を行ってもよい。これらの場合においても、レーザー加工工程S20の後に絶縁被膜形成工程S16が行われるので、図7に示す再絶縁被膜形成工程S22が不要となり、方向性電磁鋼板10の製造工程(結果的に、巻鉄芯50の製造工程も)を短縮できる。
<レーザー照射装置の構成>
図9を参照しながら、方向性電磁鋼板10にレーザービームを照射して溝20を形成するレーザー照射装置100の構成の一例について説明する。この例のレーザー照射装置100は、圧延方向に一定速度で水平搬送される方向性電磁鋼板10の絶縁被膜16の上から圧延方向と交差する交差方向(例えば90°交差方向)にレーザービームを照射し、その交差方向に延在する溝20を形成する。
レーザー照射装置100は、レーザー発振器102と、伝送ファイバ104と、レーザー照射装置106とを、それぞれ複数有する。これら複数のレーザー発振器102、複数の伝送ファイバ104、複数のレーザー照射装置106の各構成はいずれも同様である。
図9に示す形態では、1つの方向性電磁鋼板10を水平搬送しながらレーザー加工した後、3本の仮想線Lに沿って切断し、4本の方向性電磁鋼板10Aを得る場合に適用するレーザー照射装置100を描いている。
レーザー照射装置100においては、1つの方向性電磁鋼板10Aに相当する幅に対し、個々のレーザー照射装置106が設置されている。また、これらレーザー照射装置106は、互いの位置の干渉を避けるために、方向性電磁鋼板10の上方空間に、方向性電磁鋼板10の板幅方向に位置ずれするように設置されている。
レーザー発振器102は、例えば高出力のレーザービームを出射することができる。伝送ファイバ104は、レーザー発振器102から出射されたレーザービームをレーザー照射装置106まで伝送する光ファイバである。
レーザー発振器102の種類としては、微小集光特性に優れ、狭い溝を形成できる観点等から、ファイバレーザーまたはディスクレーザーが好ましい。ファイバレーザーまたはディスクレーザーは、波長が近紫外域から近赤外域(例えば1μm帯)にあるため、レーザービームを光ファイバにより高効率で伝送が可能であり、レーザービームを光ファイバで伝送することで比較的コンパクトなレーザー照射装置100を実現できる。また、レーザー発振器102は連続波レーザーでもパルスレーザーでもよい。
レーザー照射装置106は、レーザー発振器102から伝送ファイバ104により伝送されたレーザービームを方向性電磁鋼板10に集光・走査させる。ここで、レーザービームの集光形状は、例えばレーザー照射に伴う溶融物の発生を抑制する観点等から、楕円形状が好ましい。
なお、図9の説明では、方向性電磁鋼板10上のレーザービームの集光形状が楕円形状であることとしたが、これに限定されない。例えば、レーザービームの集光形状が、真円形状であってもよい。
また、上述の説明では、レーザー発振器102がファイバレーザーまたはディスクレーザーであることとしたが、これらに限定されない。例えば、レーザー発振器102が、COレーザーであってもよい。
図9に示す装置では、1つの方向性電磁鋼板10Aに相当する幅に対し、レーザー照射装置106を設けている。
このうち、レーザー照射装置106が方向性電磁鋼板10Aの幅方向にレーザービームを集光照射し、走査することによって溝20を形成する。
方向性電磁鋼板10Aは板長方向に所定の速度で順次搬送されているので、レーザー照射装置106によるレーザー照射を所定の間隔で繰り返すことで方向性電磁鋼板10Aの長さ方向に所定のピッチで溝20を複数形成できる。
レーザー照射装置106からレーザー光を方向性電磁鋼板10に集光照射し、溝20を形成する場合、レーザー照射装置106から発生させるレーザー光のパワーを調整し、板幅方向の位置毎に照射するレーザー光の強度を変化させることで溝20を形成することができる。
レーザー光の強度を変化させる場合、方向性電磁鋼板10の幅方向一端から幅方向他端にレーザー光を走査する間に正弦波あるいは余弦波あるいはランダム信号波などに沿うようにレーザー光を調整するか、レーザー光のパワーやフィルターの偏光量を調節することで溝深さにばらつきを付与できる。
溝深さにばらつきを有する溝20を備えた方向性電磁鋼板10は、巻きトランスの鉄芯(巻鉄芯)として利用される。方向性電磁鋼板は元々巻鉄芯のサイズに応じた板幅で製造されるか、または、溝形成後に適宜巻鉄芯のサイズに応じた板幅に切り分けられる。そして、巻鉄芯の製造時に、巻鉄芯に好適な板幅となった方向性電磁鋼板の曲げ加工が行なわれる。
図9では、一例として、方向性電磁鋼板10の製造後に3本の仮想線Lに沿って方向性電磁鋼板10を板幅方向に4つに切断する場合を示したが、方向性電磁鋼板10を切断する数は任意で良く、後に図13を基に説明する変形例のように切断しない場合を想定しても良い。
<変形例>
前記実施形態では、図9に示すように、方向性電磁鋼板10を板幅方向に複数に切断することに対応させ、方向性電磁鋼板10に複数列の溝20を形成した。しかしながら、図13に示すように、方向性電磁鋼板10を板幅方向に複数に切断することなく一枚の鋼板として巻鉄芯に使用する場合は、方向性電磁鋼板10に対し1列に溝20を形成してもよい。
図13に示す変形例において、方向性電磁鋼板10に対し1列の溝20を形成することができる。
前記実施形態では、溝加工工程において、レーザー加工によって方向性電磁鋼板10に溝20を形成したが、例えば、エッチング加工や電子ビーム加工などのレーザー加工以外の除去加工によって方向性電磁鋼板10に溝20を形成してもよい。
また、溝加工工程では、転写加工によって方向性電磁鋼板10に溝20を形成してもよい。例えば、図14に示す変形例では、転写加工の一例として、歯型ロール30と押付ロール40を用いて方向性電磁鋼板10を板厚方向の両側から挟み込み、歯型ロール30の歯部32を方向性電磁鋼板10の表面に押し付けることにより、方向性電磁鋼板10に溝20を形成している。
本変形例では、歯型ロール30の軸長を方向性電磁鋼板10の板幅方向の長さと同等に形成し、歯型ロール30の歯部32の先端側に凹凸部を形成した構造を採用できる。
この構造の歯部32を方向性電磁鋼板10の表面に押し付けることで板幅方向の位置毎に深さの異なる溝20を形成できる。
また、図9、図10に示すように、仮想線Lに沿って方向性電磁鋼板10を板幅方向に複数に切断する場合、歯部32を歯型ロール30の軸方向に断続的に複数形成することにより、複数の溝20を板幅方向に間隔を空けて断続的に形成してもよい。
歯型ロール30を前述のように構成しても、方向性電磁鋼板10の製造後に仮想線Lで方向性電磁鋼板10を板幅方向に複数に切断することにより、図3に示す構成の方向性電磁鋼板10Aを複数得ることができる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はこれまで説明した実施形態に限定されない。
本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例を採用できることは明らかであり、これらの例についても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと解釈できる。
本実施例に係る方向性電磁鋼板を以下に記載の条件の基、製造した。
まず、方向性電磁鋼板の製造するための材料(出発材料)として、Si;3.0質量%、C;0.05質量%、Mn;0.1質量%、酸可溶性Al;0.02質量%、N;0.01質量%、S;0.01質量%、残部がFe及び不純物、といった組成のスラブを準備した。このスラブに対して、1280℃で熱間圧延を実施し、厚さ2.3mmの熱間圧延材を製出した。
次に、熱間圧延材に対し、1000℃×1分の条件で熱処理を行った。熱処理後に酸洗処理を施した上で冷間圧延を実施し、厚さ0.23mmの冷間圧延材を製出した。この冷間圧延材に対して、800℃×2分の条件で脱炭焼鈍を実施した。次に、脱炭焼鈍後の冷間圧延材の両面に、マグネシアを主成分とする焼鈍分離材を塗布した。
そして、焼鈍分離材を塗布した冷間圧延材をコイル状に巻き取った状態で、バッチ式炉に装入し、1200℃×20時間の条件で仕上げ焼鈍を実施した。これにより、表面にグラス被膜14が形成された鋼板地鉄(鋼板本体12)を製造した。次に、グラス被膜14の上に、リン酸アルミニウムからなる絶縁材を塗布、焼き付け(850℃×1分)し、1回目の絶縁被膜16を形成した。
次に、グラス被膜14及び絶縁被膜16が形成された板幅200mmの鋼板本体12に対し、レーザービームを照射し、鋼板本体12の表面板長方向に3mmピッチで溝20を形成した。
ここで、本実施例では、図13に示す構成のレーザー照射装置106において、レーザー発振器102に加える出力電圧信号を、周期Tの正弦波とし、振幅が±25%程度以内となるように調整する。例えば、電圧10Vで1000Wのレーザーパワーを出力する場合には、V(t)=10×(1+0.25sin((2π/T)t)))で規定される電圧をレーザー発振器102に付与することにより、レーザー光の出力による方向性電磁鋼板へのエネルギー付加量を変動させた。
基準の照射条件としては、レーザービーム強度を1000W、ビーム走査速度を30m/sとした。また、レーザービームの形状は楕円形状であり、ビーム径の圧延方向は0.1mmであり、ビーム径の走査方向は0.3mmである。かかる照射条件により、幅が50μmで、深さが20μmの溝を形成できた。
次に、溝20が形成された鋼板本体12に対して、2回目の絶縁被膜16を形成した。これにより、図3、図4に示す方向性電磁鋼板10と同等構成の方向性電磁鋼板を製造した。
なお、レーザービームを照射して溝を形成する場合、上述したレーザー発振器102に付与する電圧の条件を変更することで形成する凹凸部の大きさを変更し、以下の表1に示す溝深さの平均値(Ave:μm)と最大値(MAX:μm)と最小値(MIN:μm)の溝を形成し、実施例1、2の方向性電磁鋼板試料を作製した。
実施例1及び実施例2では、電圧10Vで1000Wのレーザーパワーを出力する場合を想定し、実施例1ではレーザー発振器102に付与する電圧として、V(t)=10×(1+0.25sin((2π/T)t)))(V)を用い、実施例2ではレーザー発振器102に付与する電圧として、V(t)=10×(1+0.10sin((2π/T)t))(V)を用いた。また、実施例1及び実施例2ではともに周期T=33(msec)とした。
また、対比のために深さ20μm一定の溝(比較例1)を形成した方向性電磁鋼板試料を作成し、更に、板幅方向一端と他端に溝を形成しない溝なし部を板幅方向に10mm設け、これらの溝なし部の間に、板幅方向に沿って深さ一定(20μm深さ)の溝(比較例2)を形成した方向性電磁鋼板試料を作製した。
比較例1ではレーザー発振器102に付与する電圧として、V=10(V)を用い、比較例2ではレーザー発振器102に付与する電圧として、溝部ではV=10(V)を用い、エッジ部ではV=0(V)を用いた。
実施例2、比較例1、2の試料において、上述した溝作成条件と溝深さ以外の製造条件は同等である。
Figure 0007406064000001
作製したそれぞれの方向性電磁鋼板を用いて巻鉄芯試料を試作した。巻鉄芯は図2に示す各サイズ、A=270mm、B=200mm、C=200mm、積層厚60mm、a=150mm、b=70mm、重量68kgとした。
作製した各巻鉄芯試料に対し、溝深さばらつき「標準偏差(σ)/平均溝深さ(ave)」の値と鉄損改善率(%)の相関関係を求めるとともに、溝深さばらつきと騒音低減率(%)の相関関係を求めた。
また、これらの相関関係を広い範囲で求めるために、表1に示す実施例および比較例と同様に溝深さの平均値(Ave:μm)と最大値(MAX:μm)と最小値(MIN:μm)の溝を種々形成し、実施例1、2の方向性電磁鋼板試料と同様の試料を複数作成し、これら複数の試料を用いて以下の定義に従い鉄損改善率と騒音低減率を求めた。
各例において溝深さの平均値(Ave:μm)と最大値(MAX:μm)と最小値(MIN:μm)、および、溝深さばらつきの値は、1つの溝に対し、用いた方向性電磁鋼板の板長方向に沿って20箇所で深さを測定し、3つの溝のそれぞれにおいて個々に平均値(Ave:μm)と最大値(MAX:μm)と最小値(MIN:μm)を求め、溝深さばらつきを求めるとともに、選択した全ての溝の平均値を求めた結果である。
「鉄損改善率の定義」
巻鉄芯を交流駆動(50Hz)して最大磁束密度(1.7T)で磁化した場合、方向性電磁鋼板1kgあたりの電気エネルギー損失をW17/50(W/kg)と表記することができる。
W17/50(W/kg)=トランス鉄損(W)/トランス重量(kg)
この巻鉄芯において、巻トランス鉄損は、巻鉄芯に一次素線(励磁巻線)および二次巻線(サーチコイル)をそれぞれ巻き付けて、電力計により測定した。
溝なしの方向性電磁鋼板を巻回して構成した巻鉄芯のトランス鉄損(W)と、所定条件の溝を備えた方向性電磁鋼板を巻回して構成した巻鉄芯(加工比率100%)のトランス鉄損(Wi)を対比し、{(W-Wi)/W}×100(%)の関係式から、鉄損改善率(η)を求めた。
溝なしの方向性電磁鋼板からなる試料のトランス鉄損は61.2Wであり、W17/50=0.90(W/kg)=Wに設定した。
全幅に亘り均一な深さ(20μm)の溝を有する方向性電磁鋼板(加工比率100%)からなる試料のトランス鉄損(Wg)は25.5Wであり、W17/50=0.75(W/kg)=Wgに設定した。
鉄損改善率は溝なしの方向性電磁鋼板からなる巻鉄芯を基準として、標準偏差(σ)/平均溝深さ(ave)の値が異なる種々の方向性電磁鋼板を用いて構成した複数の巻鉄芯の値を算出し、相関性を求めた。その結果を図11に示す。
鉄損改善率(η)={(W-Wg)/W}×100(%)として、均一な深さ(深さ20μm)の溝を有する方向性電磁鋼板からなる巻鉄芯の鉄損改善率は16.6%となった。
巻鉄芯を備えたトランスにおいては、鉄損改善率が重要なため、上述のように求められる鉄損改善率が14%以上必要と判断し、より望ましくは鉄損改善率が15%以上必要と判断した。
「騒音低減率の定義」
騒音低減率(%)は、巻鉄芯を交流(50Hz)で最大磁束密度(1.7T)で磁化した際の騒音として、均一深さの溝を有する方向性電磁鋼板を巻回して構成した巻鉄芯と、溝深さばらつきを有する方向性電磁鋼板を巻回して構成した巻鉄芯の騒音の比較から求めた。
均一深さの溝を有する方向性電磁鋼板からなる巻鉄芯におけるトランス騒音(N)と、溝深さばらつきを有する方向性電磁鋼板からなる巻鉄芯におけるトランス騒音(N)を比較し、{(N-N)/N}×100(%)の関係式から騒音低減率(%)を求めた。騒音低減率は、均一深さの溝を有する方向性電磁鋼板からなる巻鉄芯を基準として、溝深さばらつきを有する方向性電磁鋼板からなる巻鉄芯との比較により求めた。
均一深さ(深さ20μm)の溝を有する方向性電磁鋼板からなる試料のトランス騒音は、N=50dBAとなった。
{(N-N)/N}×100(%)の関係式から騒音低減率(%)を求めることができる。
図11に示す結果から、トランスにおいて重要な鉄損改善率を重要視し、14%以上必要と判断し、騒音低減率については、4%以上必要と判断すると、σ/aveで示される溝深さばらつきが0.05以上0.17以下の範囲が望ましいと判断できる。
なお、鉄損改善率を更に重要視し、15%以上必要と判断し、騒音低減率について4%以上必要と判断すると、σ/aveで示される溝深さばらつきが0.05以上0.15以下の範囲が望ましいと判断できる。
また、鉄損改善率を更に重要視し、15%以上必要と判断し、騒音低減率について7%以上必要と判断すると、σ/aveで示される溝深さばらつきが0.07以上0.15以下の範囲が望ましいと判断できる。
「溝深さばらつきの具体構造」
図12に実施例1、2と比較例1、2で適用した溝深さばらつきの具体構造を示す。
比較例1は、全幅に渡り深さ20μmの均一深さの溝が形成されている場合の方向性電磁鋼板の測定例を示し、比較例2は板幅方向両端に幅20mmの溝なし部を形成し、残りの部分は深さ20μm一定の溝を形成した方向性電磁鋼板の測定例を示す。
実施例1、2は、それぞれ表1に示す溝深さの平均値(Ave:μm)と最大値(MAX:μm)と最小値(MIN:μm)の溝の測定例である。
なお、本実施例では、平均溝深さが20μmとなる場合を例として示したが、平均溝深さが15μm以下であると磁区制御(異常渦電流損低減)効果が不十分となり、20μm以上でほぼ飽和(異常渦電流損が飽和)する一方、平均溝深さが35μm以上であるとヒステリシス損が劣化し、重量減による占積率(実体積/計算体積による重量)の悪化も問題になることから、平均溝深さとしては、15μm以上35μm以下であることが望ましい。
そうした平均溝深さが15μm以上35μm以下であれば、溝深さの標準偏差σを平均溝深さaveで割ることで、磁区制御効果はある程度相殺されるため、図11に示す溝深さばらつきσ/aveと鉄損改善率との関係は、平均溝深さによらず維持される。
C…板幅、10…方向性電磁鋼板、12…鋼板本体(地鉄)、14…グラス被膜、16…絶縁被膜、20…溝、20A…凸部、20B…凹部、、50…巻鉄芯、52…コーナ部、100…レーザー照射装置、102…レーザー発振器、104…電送ファイバ、106…レーザー照射装置、L…仮想線、10A…方向性電磁鋼板。

Claims (6)

  1. 板幅方向に延在する溝が板長方向に所定間隔で複数形成された方向性電磁鋼板の製造方法であって、板幅方向に沿ってレーザー光を照射して前記溝を形成する際、レーザー光の強弱を調節することにより、前記板幅方向に沿う前記溝の溝深さの標準偏差をσと定義し、前記板幅方向に沿う前記溝の平均溝深さをaveと定義すると、σ/aveで示される溝深さばらつきが0.05以上0.17以下である方向性電磁鋼板を形成する方向性電磁鋼板の製造方法。
  2. 前記溝深さばらつきを0.05以上0.15以下とする請求項に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  3. 長さ方向に沿って鋼板を搬送する途中に、前記板幅方向に沿って板面から離間して設置した複数のレーザー装置からレーザー光を照射し、板幅方向に前記溝を形成する処理を前記板長方向に繰り返し、前記板長方向に所定の間隔で複数の溝を形成する請求項または請求項に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  4. 板幅方向に延在する溝が板長方向に所定間隔で複数形成された方向性電磁鋼板を巻回して構成される巻鉄芯の製造方法であって、
    板幅方向に沿ってレーザー光を照射して前記溝を形成する際、レーザー光の強弱を調節することにより、前記板幅方向に沿う前記溝の溝深さの標準偏差をσと定義し、前記板幅方向に沿う前記溝の平均溝深さをaveと定義すると、σ/aveで示される溝深さばらつきが0.05以上0.17以下となる方向性電磁鋼板を形成し、この方向性電磁鋼板を巻回する巻鉄芯の製造方法。
  5. 前記溝深さばらつきを0.05以上0.15以下とした方向性電磁鋼板を巻回する請求項に記載の巻鉄芯の製造方法。
  6. 長さ方向に沿って鋼板を搬送する途中に、前記板幅方向に沿って板面から離間して設置した複数のレーザー装置からレーザー光を照射し、板幅方向に前記溝を形成する処理を前記板長方向に繰り返し、前記板長方向に所定の間隔で複数の溝を形成した方向性電磁鋼板を巻回する請求項または請求項に記載の巻鉄芯の製造方法。
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