JP7403781B1 - メタン発酵装置、及びメタン発酵方法 - Google Patents

メタン発酵装置、及びメタン発酵方法 Download PDF

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【課題】発酵装置の小型化、及びバイオガスの有用性向上が図られたメタン発酵装置、及びメタン発酵方法を提供する。【解決手段】メタン発酵装置1は、発酵原料のうち第1発酵原料を収容する第1収容部と、前記第1収容部よりも上層に設けられ、発酵原料のうち第2発酵原料を収容し、前記第1収容部に収容された前記第1発酵原料が供給されてバイオガスを生成する第2収容部と、前記第1収容部と前記第2収容部との間に設けられ、前記第2収容部に供給された前記第1発酵原料のうち、少なくとも一部を前記第1収容部へ落下させることにより前記第2発酵原料と分離する分離機構と、を備え、前記第1収容部は、前記第2収容部において生成された前記バイオガスが供給されることを特徴とする。【選択図】図1

Description

この発明は、農産残さや畜産糞尿等のバイオマス資源を発酵させるために用いるメタン発酵装置、及びメタン発酵方法に関する。
従来、バイオマス資源をエネルギー資源として有効活用するための方法として、メタン発酵技術が研究されている。日本は、家畜用飼料として年4,000万トンの穀物を諸外国から輸入しており、日本国土に約0.8億トン/年(農水省、2016年)の畜産系廃棄物が残留物として生じている。これら有機系廃棄物が有効に再資源化されないまま焼却や埋立てなどによって処理されることで、窒素循環の破綻の一因となり、河川や湖沼、海洋等の環境汚染を引き起こすおそれがある。そのため、バイオマス資源の有効活用は、環境保全の面において極めて重要である。
バイオマス資源をメタン発酵させることで、燃料として活用可能なバイオガスと、営農に活用可能な堆肥及び液肥とを回収することができる。私たちの生活に欠かせないエネルギーである化石燃料、及び農作物の生育に必須な栄養素であるリン資源は、いずれも枯渇性資源である。国際情勢によってはこれらの価格が高騰し、営農コストの大幅増など、国民生活や経済産業活動全般へ悪影響を及ぼすおそれがある。そのため、廃棄物からエネルギー資源を回収し、有効活用することは、社会経済安定化の面においても重要である。
従来のメタン発酵技術によれば、バイオガスは、主成分としてメタンが約60%、二酸化炭素が40%、その他微量成分として硫化水素やアンモニア等の有害ガスが含まれる。そのため、有毒ガスを除去する装置が必要とされるため、メタン発酵装置が大型化する傾向にあり、メタン発酵装置を設置する立地面積の確保の困難さ等によって、畜産廃棄物のバイオマスエネルギープラントの普及が制限されてきた。そのため、メタン発酵技術の普及に向けては、メタン発酵装置を構成する各種装置の小型化が求められる。
また、メタン発酵には、発酵後の消化液について放流基準を満たすように処理する施設が必要とされる。その処理施設の設備投資及びランニングコストは、メタン発酵装置の設備投資及びランニングコストと比較して2~3倍ほど高く、コスト全体の約50%~70%を占めるため、畜産廃棄物のバイオマスエネルギープラントの普及に向けてはコストの改善も課題となる。コスト改善の一手段として、発酵原料である有機系廃棄物からより多くのエネルギー資源を回収し、生成するバイオガスを高純度化する等有用性を高めることで、発酵残さの処理量を低減する方法が挙げられる。
特許文献1には、密閉されたメタン発酵槽と、メタン発酵槽から生じるバイオガス及び発酵液(消化液)を貯留する発酵液貯留槽と、貯留槽から発酵槽へ発酵液を循環させるポンプ1台と、を備える発酵装置が開示されている。
特開2006-167608号公報
特許文献1に開示された発酵装置によれば、少ない動力でメタン発酵槽内に大きな攪拌効果が得られ、メタン発酵が効果的に促進される旨が開示されている。しかしながら、特許文献1に開示された発酵装置によれば、湿式メタン発酵を採用しているため、基質の流動性を確保するためにメタン発酵の必要量に対して余分な水分を収容できる発酵槽が必要となり、発酵装置の小型化を図ることができない問題がある。また、生成するバイオガスの有用性向上については開示されていない。
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、発酵装置の小型化、及びバイオガスの有用性向上が図られたメタン発酵装置、及びメタン発酵方法を提供することにある。
第1発明におけるメタン発酵装置は、発酵原料のうちTS(固形物濃度)が15%未満の第1発酵原料を収容する第1収容部と、前記第1収容部よりも上層に設けられ、発酵原料のうちTSが15%以上の第2発酵原料を収容し、前記第1収容部に収容された前記第1発酵原料が供給されてバイオガスを生成する第2収容部と、前記第1収容部と前記第2収容部との間に設けられ、前記第2収容部に供給された前記第1発酵原料のうち、少なくとも一部を前記第1収容部と前記第2収容部とを連通する孔を通過させて前記第1収容部へ落下させることにより前記第2発酵原料と分離する分離機構と、を備え、前記第1収容部は、前記第2収容部において生成された前記バイオガスが供給され、前記第1収容部と前記第2収容部とは、一のメタン発酵槽の一部の区域であることを特徴とする。
第2発明におけるメタン発酵装置は、少なくとも酸素を含む気体を前記第2収容部に供給される前記第1発酵原料に吹き込むことにより、酸素ナノバブル水を生成する気泡発生装置をさらに備え、前記第2収容部は、前記気泡発生装置により生成された前記酸素ナノバブル水が供給されることを特徴とする。
第3発明におけるメタン発酵装置は、前記第1収容部又は前記第2収容部にアルカリ廃水を供給するアルカリ廃水供給装置をさらに備えることを特徴とする。
第4発明におけるメタン発酵装置は、少なくとも酸素を含む気体を前記第1収容部又は前記第2収容部に供給される前記アルカリ廃水に吹き込むことにより、酸素ナノバブル水を生成する気泡発生装置をさらに備え、前記第1収容部又は前記第2収容部は、前記気泡発生装置により生成された前記酸素ナノバブル水が供給されることを特徴とする。
第5発明におけるメタン発酵装置は、前記第1収容部は、前記第1収容部に収容された前記第1発酵原料から消化液を生成し、前記第2収容部は、前記第1収容部において生成された前記消化液が供給され、前記分離機構は、前記第2収容部に供給された前記消化液のうち、少なくとも一部を前記第1収容部へ流下させることにより前記第2発酵原料と分離することを特徴とする。
第6発明におけるメタン発酵装置は、少なくとも酸素を含む気体を前記第2収容部に供給される前記消化液に吹き込むことにより、酸素ナノバブル水を生成する気泡発生装置をさらに備え、前記第2収容部は、前記気泡発生装置により生成された前記酸素ナノバブル水が供給されることを特徴とする。
第7発明におけるメタン発酵方法は、第1収容部と当該第1収容部よりも上層の第2収容部とを一部の区域とする一のメタン発酵槽において、発酵原料のうちTS(固形物濃度)が15%未満の第1発酵原料を収容する前記第1収容部に収容された前記第1発酵原料を、前記発酵原料のうちTSが15%以上の第2発酵原料を収容する前記第2収容部に供給してバイオガスを生成する原料供給工程と、前記原料供給工程において前記第2収容部に供給された前記第1発酵原料のうち、少なくとも一部を前記第1収容部と前記第2収容部とを連通する孔を通過させて前記第1収容部へ落下させることにより前記第2発酵原料と分離する分離工程と、前記原料供給工程において生成されたバイオガスを前記第1収容部に供給するバイオガス供給工程と、を備えることを特徴とする。
第1発明~第6発明によれば、発酵原料のうち第2発酵原料を収容し、第1収容部に収容された第1発酵原料が供給されてバイオガスを生成する第2収容部と、第2収容部に供給された第1発酵原料のうち、少なくとも一部を第1収容部へ落下させることにより第2発酵原料と分離する分離機構と、を備え、第1収容部は、第2収容部において生成されたバイオガスが供給される。すなわち、第2収容部において生成されるバイオガスは、第1収容部に収容される第1発酵原料及び第1発酵原料の発酵による生成物に接触し、バイオガス中の硫化水素及びアンモニアが溶出し得る。このため、生成したバイオガスの脱硫処理及びアンモニア除去処理を行う機器を設ける必要がない。これにより、メタン発酵装置の小型化を図ることができる。また、生成されたバイオガス中の二酸化炭素も同様に溶出するため、メタン濃度が純化された、発熱量の高いバイオガスを生成することができる。これにより、ガスの運送・保管等に要するコストが低減されるなど、バイオガスの有用性向上を図ることができる。
特に、第2発明によれば、少なくとも酸素を含む気体を第1発酵原料に吹き込むことにより、酸素ナノバブル水を生成する気泡発生装置をさらに備え、第2収容部は、酸素ナノバブル水が供給される。このため、メタン生成菌が活性化し、メタン生成量の向上により、メタン濃度が純化された、発熱量の高いバイオガスをさらに生成することができる。これにより、バイオガスのさらなる有用性向上を図ることができる。
特に、第3発明によれば、第1収容部又は第2収容部にアルカリ廃水を供給するアルカリ廃水供給装置をさらに備える。このため、アルカリ廃水を含む発酵原料をメタン発酵させることができる。これにより、発酵資源のVS(有機物濃度)あたりのバイオガス生成量の向上を図ることができる。
特に、第4発明によれば、少なくとも酸素を含む気体をアルカリ廃水に吹き込むことにより、酸素ナノバブル水を生成する気泡発生装置をさらに備え、第2収容部は、酸素ナノバブル水が供給される。このため、メタン生成菌が活性化し、メタン生成量の向上により、メタン濃度が純化された、発熱量の高いバイオガスをさらに生成することができる。これにより、バイオガスのさらなる有用性向上を図ることができる。
特に、第5発明によれば、第2収容部は、第1収容部において生成された消化液が供給され、分離機構は、第2収容部に供給された消化液のうち、少なくとも一部を第1収容部へ流下させることにより第2発酵原料と分離する。すなわち、第1収容部において生成される消化液は、第1収容部よりも上層の第2収容部に供給された後、第1収容部に流下する。このため、メタン発酵を促進するために発酵原料等を攪拌する攪拌器を設ける必要がない。これにより、メタン発酵装置の小型化を図ることができる。また、第1収容部において生成される消化液は、第2収容部に収容される第2発酵原料及び第2発酵原料の発酵による生成物との接触により、溶出したNPK成分(肥料成分)をより多く含み得る。このため、NPK成分の含有量が向上し、より良質なバイオ液肥として活用することができる。これにより、液肥施用に伴う労力が省力化されるなど、液肥の有用性向上を図ることができる。
特に、第6発明によれば、少なくとも酸素を含む気体を消化液に吹き込むことにより、酸素ナノバブル水を生成する気泡発生装置をさらに備え、第2収容部は、酸素ナノバブル水が供給される。このため、メタン生成菌が活性化し、メタン生成量の向上により、メタン濃度が純化された、発熱量の高いバイオガスをさらに生成することができる。これにより、バイオガスのさらなる有用性向上を図ることができる。
第7発明によれば、第1収容部に収容された第1発酵原料を第2収容部に供給してバイオガスを生成する原料供給工程と、原料供給工程において第2収容部に供給された第1発酵原料のうち、少なくとも一部を第1収容部へ落下させることにより第2発酵原料と分離する分離工程と、原料供給工程において生成されたバイオガスを第1収容部に供給するバイオガス供給工程と、を備える。すなわち、第2収容部において生成されるバイオガスは、第1収容部に収容される第1発酵原料及び第1発酵原料の発酵による生成物に接触し、バイオガス中の硫化水素及びアンモニアが溶出し得る。このため、生成したバイオガスの脱硫処理及びアンモニア除去処理を行う機器を設ける必要がない。これにより、メタン発酵装置の小型化を図ることができる。また、生成されたバイオガス中の二酸化炭素も同様に溶出するため、メタン濃度が純化された、発熱量の高いバイオガスを生成することができる。これにより、ガスの運送・保管等に要するコストが低減されるなど、バイオガスの有用性向上を図ることができる。
図1は、第1実施形態のメタン発酵装置の構成の一例を示す模式図である。 図2は、第1実施形態のメタン発酵装置の構成の変形例を示す模式図である。 図3は、第1実施形態のメタン発酵装置の動作の一例を示すフローチャートである。 図4は、第1実施形態のメタン発酵装置の動作の一例を示す模式図である。 図5は、第2実施形態のメタン発酵装置の構成の一例を示す模式図である。 図6は、第2実施形態のメタン発酵装置の動作の一例を示す模式図である。 図7は、本実施形態のメタン発酵装置で生成したバイオガスのメタン濃度の日別推移を示すグラフである。 図8は、本実施形態のメタン発酵装置でのメタン発酵60日後のバイオガスに含まれる成分濃度を示すグラフであり、図8(a)がアンモニア濃度を、図8(b)が硫化水素濃度を示すグラフである。 図9は、本実施形態及び比較例のメタン発酵装置でのメタン発酵60日後の発酵残さ削減率を示すグラフである。 図10は、本実施形態のメタン発酵装置でのメタン発酵60日後のバイオガスのメタン濃度を示すグラフである。 図11は、未粉砕の基質ごとに本実施形態のメタン発酵装置で生成したバイオガス生成量の日別推移を示すグラフである。 図12は、粉砕後の基質ごとの本実施形態のメタン発酵装置で生成したバイオガス生成量の日別推移を示すグラフである。
以下、本発明の実施形態としてのメタン発酵装置の一例について、図面を参照しながら詳細に説明をする。各図における構成は、説明のため模式的に記載されており、例えば各構成の大きさや、構成毎における大きさの対比等については、図とは異なってもよい。
(第1実施形態:メタン発酵装置1)
図1を参照して、本実施形態におけるメタン発酵装置1の一例を説明する。
メタン発酵装置1は、メタン発酵槽10を備える。メタン発酵装置1は、例えばメタン発酵装置1が生成したバイオガスを採集するバイオガス採集タンク3と外部接続される。
メタン発酵装置1は、例えば図1に示すように、第1収容部11と、第1収容部11よりも上層の第2収容部12と、第1収容部11と第2収容部12との間の分離機構13を備える。
メタン発酵装置1は、第1収容部11に収容された発酵原料を第1収容部11から排出する原料排出口111と、原料排出口111から排出された発酵原料を第2収容部12に供給する原料供給口121と、第2収容部12において生成されたバイオガスを第2収容部12から排出するバイオガス排出口122と、バイオガス排出口122から排出されたバイオガスを第1収容部11に供給するバイオガス供給口112と、原料排出口111と原料供給口121とを接続する第1接続配管21と、バイオガス排出口122とバイオガス供給口112とを接続する第2接続配管と、を有する。原料供給口121は、例えば第2収容部12内に均一に発酵原料を供給するために、第2収容部12に複数設けられてもよい。なお、図示は省略したが、バイオガス排出口122、原料排出口111、及びバイオガス供給口112についても、同様に複数設けられてもよい。
<メタン発酵槽10>
メタン発酵槽10は、槽内のバイオマス資源を発酵原料として発酵させ、バイオガスと消化液とを生成する。メタン発酵槽10は、例えば内部に分離機構13が設けられており、分離機構13によって槽内が複数の区域に分離されている。一部の区域において発酵原料を乾式メタン発酵により発酵させ、他の区域において発酵原料を湿式メタン発酵により発酵させる。
ここで、発酵原料となるバイオマス資源とは、動植物から生まれる資源を指し、本実施形態においては、特に再生可能な有機性資源を含む産業廃棄物を想定している。バイオマス資源としては、例えば動物のふん尿(鶏ふん、牛ふん、豚ふん等)、動植物系残さ(もみ殻、食品残さ等)が用いられる。
メタン発酵槽10は、例えば第1収容部11と、第1収容部11よりも上層の第2収容部12と、第1収容部11と第2収容部12との間の分離機構13を有する。
<第1収容部11>
第1収容部11は、メタン発酵槽10内の発酵原料を湿式メタン発酵により発酵させる区域である。第1収容部11は、発酵原料の湿式メタン発酵により、バイオガスと消化液とを生成する。第1収容部11は、第2収容部12に収容される流動体が、連続的又は断続的に孔130を通過して流下することで収容される。このため、第1収容部11に収容される発酵原料は、湿式メタン発酵に適したTS(固形物濃度)15%未満に保たれやすい。また、第2収容部12に収容される流動体の落下(又は液体成分の流下)により、第1収容部11内が攪拌される。
メタン発酵装置1は、第1収容部11に収容される流動体を第2収容部12に連続的又は断続的に供給する。すなわち、第2収容部12に収容される発酵資源は、第1収容部11に収容される流動体と連続的又は断続的に接触することで、攪拌と同様の効果を得ることができる。このため、乾式メタン発酵の従来課題であった流動性の低さを、攪拌装置を用いることなく解消することができる。一方で、第2収容部12に収容される流動体は、第2収容部12に収容される発酵資源と繰り返し接触することで、発酵資源のNPK成分が溶出しやすくなる。このため、湿式メタン発酵の従来課題であった栄養成分の少なさを解消でき、良質なバイオ液肥として活用できる。このように、メタン発酵装置1は、第2収容部12内の乾式メタン発酵と、第1収容部11内の湿式メタン発酵を有機的に組み合わせることで、双方の従来課題を解決しつつ、乾式メタン発酵の利点であるメタン生成量の高さを効果的に発揮することができる。
<第2収容部12>
第2収容部12は、メタン発酵槽10内の発酵原料を乾式メタン発酵により発酵させる区域である。第2収容部12は、発酵原料の乾式メタン発酵により、バイオガスと消化液とを生成する。
第2収容部12は、孔130が設けられた分離機構13を介して、第1収容部11より上層に設けられる。第2収容部12に収容される流動体は、連続的又は断続的に孔130を通過して第1収容部11に落下する。このため、第2収容部12に収容される発酵原料は、乾式メタン発酵に適したTS15%以上に保たれやすい。また、流動体を自由落下させることにより流動体と固形体とに分離できるため、第2収容部12にTS15%未満の発酵原料を収容しても、第2収容部12内の乾式メタン発酵に差し支えない。
<分離機構13>
分離機構13は、メタン発酵槽10に収容される発酵原料を、乾式メタン発酵により発酵させる発酵原料と、湿式メタン発酵により発酵させる発酵原料と、に分離する。分離機構13は、例えばメタン発酵槽10の内壁に接して設けられる。分離機構13は、例えば所定の間隔で、第2収容部12と第1収容部11とを連通する孔130が1以上設けられる。分離機構13は、第2収容部12に収容された発酵原料のうち孔130の幅よりも小さい固形体、又は流動体を第1収容部11に落下させることで、発酵原料を分離する。
分離機構13の材質としては、第2収容部12に収容される発酵原料を支持できる程度の強度を有する素材が用いられ、例えばポリエチレン等の合成樹脂が用いられる。分離機構13の厚さは、例えば0.1mm~50mmである。分離機構13に設けられる孔130の幅は、例えば0.05mm~10mmである。
<第1接続配管21>
第1接続配管21は、メタン発酵槽10に接続される。第1接続配管21は、原料排出口111と原料供給口121とを接続する。第1接続配管21には、例えば送水ポンプ211が設けられる。送水ポンプ211の駆動により、原料排出口111から排出された発酵原料は、第1接続配管21内を流動し、原料供給口121に供給される。第1接続配管21の材質は、例えばポリエチレンパイプが用いられる。
<第2接続配管22>
第2接続配管22は、第1接続配管21とは独立して、メタン発酵槽10に接続される。第2接続配管22は、バイオガス排出口121とバイオガス供給口132とを接続する。第2接続配管22には、例えばバイオガス採集タンク3とダイアフラムポンプ221が設けられる。バイオガス採集タンク3の操作により、バイオガス排出口121から排出されたバイオガスは、第2接続配管22内を流動し、バイオガス採集タンク3内に採集される。また、ダイアフラムポンプ221の駆動により、採集されたバイオガス採集タンク3に収容されるバイオガスは、第2接続配管22内を流動し、バイオガス供給口132に供給される。第2接続配管22の材質は、例えば第1接続配管21と同様のものが用いられる。
<バイオガス採集タンク3>
バイオガス採集タンク3は、メタン発酵装置1を構成するメタン発酵槽10内で生成されたバイオガスを採集するためのタンクである。バイオガス採集タンク3は、第2接続配管22を介してメタン発酵装置1と外部接続される。バイオガス採集タンク3は、例えばメタン発酵装置1の一部を構成してもよい。
バイオガス採集タンク3は、メタン発酵装置1から生成されるバイオガスの採集及び排出のみを行い、バイオガス採集タンク3内でバイオガスの生成は行わない。バイオガス採集タンク3の材質としては、例えば公知のガスホルダーと同等の鋼材、ポリ塩化ビニル等の樹脂材料が用いられる。
(第1実施形態:メタン発酵装置1の変形例)
メタン発酵装置1は、例えば図2に示すように、可搬型機器を構成してもよい。可搬型機器は、例えばメタン発酵装置1と、第1接続配管21と、第2接続配管22と、バイオガス採集タンク3と、図示しない車両と、を含む移動体である。車両は、例えば1トントラック、5トントラック及び8トントラック等である。可搬型機器は、例えば下部に複数の車輪10a、10bをさらに有し、図示しない車両にけん引されてもよい。図示しない車両でけん引可能な可搬型機器の寸法は、例えば幅2.0m以下、奥行き4.0m以下、高さ3.0m以下である。可搬型機器は、図示しない車両にけん引される他、図示しない車両に積載されてもよい。
可搬型機器は、例えば各接続配管21、22とは独立した、又は各接続配管21、22に接続された、メタン発酵槽10の第1収容部11内の消化液を外部に出力するための消化液出力配管23をさらに有してもよい。また、可搬型機器は、例えば各接続配管21、22とは独立した、又は各接続配管21、22に接続された、バイオガス採集タンク3内のバイオガスを外部に出力するためのバイオガス出力配管24をさらに有してもよい。なお、車輪10a、10bは、ストッパー付き車輪が用いられてもよく、何れかがアジャスターに置き換えられてもよい。
可搬型機器は、メタン発酵装置1とバイオガス採集タンク3とを上下方向に積み重ねて配置してもよい。このとき、メタン発酵装置1の設置面積を確保しやすく、第2収容部12へ消化液を供給する消化液供給口121や分離機構13の孔130を多く設けやすい。すなわち、メタン発酵槽10内の原料及び消化液が循環しやすく、メタン発酵装置1の攪拌力を向上させることができる。これにより、発酵資源のVSあたりのバイオガス生成量の向上を図ることができる。
可搬型機器を構成するメタン発酵装置1と、第1接続配管21と、第2接続配管22と、バイオガス採集タンク3と、はいずれも、従来の鋼材が用いられる少なくとも一部を、公知の合成樹脂材料に置き換えることができる。可搬型機器の各種部材にポリ塩化ビニル及びポリエチレン等の軽量な合成樹脂材料を用いることで、重量を人力での運搬又は車両等の移動体への積載による運搬等が可能な重量まで軽量化することができる。可搬型機器により、例えば畜産農場や野菜農場等の発酵原料の発生地点において、発酵原料をメタン発酵装置1内に収容することができ、発酵原料の回収運搬等、発酵前の工程の省力化又は短縮化が可能となる。この場合、発酵原料を発生地点から運搬する間においてメタン発酵を行うことができ、発酵期間の短縮化を図ることができる。これにより、時間あたりのバイオマスエネルギー生成効率の向上を図ることができる。また、鋼材の一部を合成樹脂材料に置き換えることで、メタン発酵装置1の低コスト化も図ることができる。
可搬型機器を畜産農場や野菜農場等で動作させる場合、可搬型機器は、上記の消化液出力配管23を介して、消化液を農地内の貯留タンクに充填したり、農地に直接散布したりすることができる。また、後述のとおりメタン発酵装置1内の発酵残さを曝気することで得られる堆肥を運搬することなく農作物に利活用することができる。また、可搬型機器をガス燃焼装置の設置場所近くで動作させる場合、可搬型機器は、上記のバイオガス出力配管24を介して、バイオガスを燃焼装置近くの貯留タンクに充填したり、ガス燃焼装置に直接供給したりすることができる。
可搬型機器は、上記の移動体の例の他、例えばメタン発酵槽10の上部に取っ手が設けられ、人力での運搬が可能とされてもよい。可搬型機器は、例えば公知のコンポスト容器と同程度の寸法及び重量で構成することができる。人力で運搬可能な可搬型機器の寸法は、例えば幅0.8m以下、奥行き0.8m以下、高さ1.0m以下である。
(第1実施形態:メタン発酵装置1の動作の一例)
図3~図4を参照して、本実施形態におけるメタン発酵装置1の動作の一例を説明する。
メタン発酵装置1の動作は、例えば図3に示すように、原料供給工程S11と、分離工程S12と、バイオガス供給工程S13と、を備える。分離工程S12と、バイオガス供給工程S13とは、一方が先に実施されてもよく、同時に実施されてもよい。
<事前準備>
事前準備として、例えば図4(a)に示すように、第1収容部11に第1発酵原料4を収容し、第2収容部12に第2発酵原料5を収容する。メタン発酵槽10内にはメタン生成菌が予め収容され、例えば第1発酵原料4中又は第2発酵原料5中に存在する。ここで、第1収容部11に収容される第1発酵原料4を第1発酵原料4aとする。また、メタン発酵槽10内を、メタン発酵が促進する嫌気性環境下となるように調整する。
<第1発酵原料4>
第1発酵原料4は、第1収容部11に予め収容される。第1発酵原料4は、第2収容部12内において湿式メタン発酵される。第1発酵原料4は、例えばバイオマス資源のうち、TSが15%未満の流動体が用いられる。
<第2発酵原料5>
第2発酵原料5は、第2収容部12に予め収容される。第2発酵原料5は、第2収容部12内において乾式メタン発酵される。第2発酵原料5は、例えばバイオマス資源のうち、TSが15%以上の固形体が用いられる。
<原料供給工程S11>
原料供給工程S11において、メタン発酵装置1は、例えば図4(b)に示すように、送水ポンプ211を動作させて第1発酵原料4を第1収容部11から排出する。ここで、第1収容部11から排出される第1発酵原料4を第1発酵原料4bとする。第1発酵原料4bは、原料排出口111を通過して第1収容部11から排出された後、第1接続配管21内を流動して原料供給口121を通過し、第2収容部12に供給される。第1発酵原料4bは、例えば第2収容部12に収容される第2発酵原料5の上方から、第2発酵原料5に接触するように供給される。ここで、第2収容部12に供給される第1発酵原料4を第1発酵原料4cとする。
第1発酵原料4cと接触した第2発酵原料5は、メタン生成菌の作用によりメタン発酵が促進される。その結果、第2発酵原料5が乾式メタン発酵され、第2収容部12内においてバイオガス及び消化液が生成される。第2発酵原料5から生じたバイオガスは、ガス排出口122を通過し、第2接続配管22を流動してバイオガス採集タンク3に収容される。
<分離工程S12>
分離工程S12において、メタン発酵装置1は、例えば図4(c)に示すように、第1発酵原料4cの少なくとも一部を、分離機構13に設けられた孔130を通過させて、第2収容部12よりも下層に設けられた第1収容部11に落下させる。ここで、第2収容部12から孔130を通過して第1収容部11に落下する第1発酵原料4を第1発酵原料4dとする。
また、第2発酵原料5から生じた消化液は、第1発酵原料4dと同様に、分離機構13に設けられた孔130を通過して、第2収容部12よりも下方に位置する第1収容部11に流下する。第1収容部11に流下した消化液は、第1発酵原料4aとともに、又は第1発酵原料4aの代わりに、原料排出口111を通過して第1収容部11から排出され、第1接続配管21内を流動して原料供給口121を通過し、第2収容部12に供給される。
すなわち、第1収容部11において生成される消化液は、第1収容部11よりも上層の第2収容部12に供給された後、第1収容部11に流下する。この場合、メタン発酵を促進するために発酵原料等を攪拌する攪拌器を設ける必要がない。これにより、メタン発酵装置の小型化を図ることができる。また、第1収容部11において生成される消化液は、第2収容部12に収容される第2発酵原料5及び第2発酵原料5の発酵による生成物との接触により、溶出したNPK成分をより多く含み得る。このため、NPK成分の含有量が向上し、より良質なバイオ液肥として活用することができる。これにより、液肥施用に伴う労力が省力化されるなど、液肥の有用性向上を図ることができる。なお、消化液の循環による消化液の良質化については、後述の実験において実験データに基づいて述べる。
<バイオガス供給工程S13>
バイオガス供給工程S13において、メタン発酵装置1は、例えば図4(b)に示すように、ダイアフラムポンプ221を動作させて、バイオガス採集タンク3に収容されたバイオガスを第1収容部11に供給する。バイオガスは、例えば図4(b)中の一点鎖線矢印で示すように、バイオガス供給口132を通過して第1収容部11に供給され、第1発酵原料4a及び第1発酵原料4aから生成された消化液のうち少なくとも何れかに接触する。ここで、メタン発酵によるバイオガスはメタンガスと二酸化炭素とを主成分としており、メタンガスの方が二酸化炭素よりも比重が低いため上方に移動しやすい。すなわち、第1収容部11中のバイオガスは、分離機構13に設けられた孔130を通過して、第1収容部11に移動する。その後、バイオガスは、第2収容部12中のバイオガス排出口122を通過し、メタン発酵槽10から排出されてバイオガス採集タンク3に収容される。
すなわち、第2収容部12において生成されるバイオガスは、第1収容部11に収容される第1発酵原料4a及び第1発酵原料4aの発酵による生成物に接触し、バイオガス中の硫化水素及びアンモニアが溶出し得る。この場合、生成したバイオガスの脱硫処理及びアンモニア除去処理を行う機器を設ける必要がない。これにより、メタン発酵装置1の小型化を図ることができる。また、生成されたバイオガス中の二酸化炭素も同様に溶出するため、メタン濃度が純化された、発熱量の高いバイオガスを生成することができる。これにより、ガスの運送・保管等に要するコストが低減されるなど、バイオガスの有用性向上を図ることができる。なお、バイオガスの循環によるバイオガスの良質化については、後述の実験において実験データに基づいて述べる。
上述した各工程を実施し、本実施形態におけるメタン発酵装置1の動作は終了する。なお、メタン発酵装置1では、例えば上述した各工程を繰り返し実施してもよい。
なお、メタン発酵装置1は、メタン生成菌の活動速度に対して各発酵原料4、5が過剰に存在する場合、すなわち有機物負荷が過剰である場合、メタン発酵に伴いメタン発酵槽10内が酸性に偏り、メタン発酵の好適な中性環境又は弱アルカリ性環境(例えばpHが6.5~8.2の間)から酸性環境となる、いわゆる酸敗現象が生じるおそれがある。これは、メタン発酵の中間反応プロセスである有機酸生成プロセスに起因する。メタン発酵槽10内が酸性環境(例えばpHが5以下)となる場合、メタン生成菌の活性が低下し、メタン発酵が阻害されるおそれがある。このため、メタン発酵装置1を動作する際、メタン発酵槽10内のpHを測定し、必要に応じて図示しない供給口からアルカリ性のpH調整剤をメタン発酵装置1に供給することで、メタン発酵槽10内を、メタン発酵の好適な環境に保つように調整することが好ましい。
pH調整剤としては、例えば石灰や水酸化カルシウム等が用いられる。pH調整剤を供給することにより、メタン発酵槽10内は例えばpH7~8程度の弱アルカリ性の環境に調整される。これにより、有機酸生成プロセスの速度が適度に抑制され、メタン発酵槽10内をメタン発酵の好適な環境に保つことができる。
pH調整剤の供給方法としては、例えば第1収容部11への供給、第2収容部12への供給、及び第1接続配管21への供給の何れかの方法で実施される。
第2収容部12へpH調整剤を供給する場合、pH調整剤は、例えば第2収容部12に設けられる図示しない供給口を通過して、第2収容部12に供給される。このとき、第2収容部12中の乾式メタン発酵により生じた消化液が還元される。例えば、消化液中の酢酸が、pH調整剤中のカルシウム成分と反応して弱アルカリ性の酢酸カルシウムが生成される。これにより、メタン発酵槽10内のpHが上昇し、メタン発酵の好適な環境に保たれやすい。
第1収容部11へpH調整剤を供給する場合、pH調整剤は、例えば第1収容部11に設けられる図示しない供給口を通過して第1収容部11に供給される。このとき、第1収容部11中の湿式メタン発酵により生じた消化液が還元される。これにより、メタン発酵槽10内のpHが上昇し、メタン発酵の好適な環境に保たれやすい。
第1接続配管21へpH調整剤を供給する場合、pH調整剤は、例えば第1接続配管21に接続される図示しないpH調整剤供給装置を介して第1接続配管21に供給される。このとき、第1接続配管21中を流動する消化液が還元される。これにより、メタン発酵槽10内のpHが上昇し、メタン発酵の好適な環境に保たれやすい。また、pH調整剤は、例えば第1接続配管21内を流動する第1発酵原料4と混合され、第1発酵原料4と共に第2収容部12に供給されてもよい。このとき、第2収容部12中の乾式メタン発酵により生じた消化液が還元される。
(第1実施形態:メタン発酵装置1の動作の変形例)
上述のpH調整剤として、アルカリ廃水を用いる。ここで、アルカリ廃水とは、生コンクリート製造工場、コンクリート製品製作工場、工事現場等において、セメント、モルタル、コンクリート等のセメント系組成物の洗浄を行う際に発生する洗浄水を指す。
メタン発酵装置1は、図示しないアルカリ廃水供給装置をさらに備える。アルカリ廃水供給装置は、例えば第1収容部11、第2収容部12、及び第1接続配管21の何れかと接続され、アルカリ廃水を供給する。この場合、アルカリ廃水を含む発酵原料をメタン発酵させることができる。これにより、発酵資源のVSあたりのバイオガス生成量の向上を図ることができる。
本実施形態におけるアルカリ廃水は、pH10~15程度の廃水が用いられる。アルカリ廃水は、上記の発生箇所から回収した後に、pH調整やろ過等の処理を行わずに、そのままメタン発酵装置1のpH調整剤として用いることができる。アルカリ廃水の効用については、後述の実験において実験データに基づいて述べる。
なお、メタン発酵装置1の動作終了後に、第2収容部12を大気開放し、第2収容部12内に残った第2発酵原料5の発酵残さを曝気することで、当該発酵残さを堆肥として使用することができる。これにより、メタン発酵装置1から生じる廃棄物の減量化を図ることができる。また、発酵残さを堆肥化装置に運搬することなく、メタン発酵装置1で堆肥化することができるため、堆肥化の所要期間の短縮化を図ることができる。
本実施形態によれば、発酵原料のうち第2発酵原料5を収容し、第1収容部11に収容された第1発酵原料4が供給されてバイオガスを生成する第2収容部12と、第2収容部12に供給された第1発酵原料4のうち、少なくとも一部を第1収容部11へ落下させることにより第2発酵原料5と分離する分離機構13と、を備え、第1収容部11は、第2収容部12において生成されたバイオガスが供給される。すなわち、第2収容部12において生成されるバイオガスは、第1収容部11に収容される第1発酵原料4及び第1発酵原料4の発酵による生成物に接触し、バイオガス中の硫化水素及びアンモニアが溶出し得る。このため、生成したバイオガスの脱硫処理及びアンモニア除去処理を行う機器を設ける必要がない。これにより、メタン発酵装置1の小型化を図ることができる。また、生成されたバイオガス中の二酸化炭素も同様に溶出するため、メタン濃度が純化された、発熱量の高いバイオガスを生成することができる。これにより、ガスの運送・保管等に要するコストが低減されるなど、バイオガスの有用性向上を図ることができる。
また、本実施形態によれば、第1収容部11又は第2収容部12にアルカリ廃水を供給するアルカリ廃水供給装置をさらに備える。このため、アルカリ廃水を含む発酵原料をメタン発酵させることができる。これにより、発酵資源のVS(有機物濃度)あたりのバイオガス生成量の向上を図ることができる。
また、本実施形態によれば、第2収容部12は、第1収容部11において生成された消化液が供給され、分離機構13は、第2収容部12に供給された消化液のうち、少なくとも一部を第1収容部11へ流下させることにより第2発酵原料5と分離する。すなわち、第1収容部11において生成される消化液は、第1収容部11よりも上層の第2収容部12に供給された後、第1収容部11に流下する。このため、メタン発酵を促進するために発酵原料等を攪拌する攪拌器を設ける必要がない。これにより、メタン発酵装置1の小型化を図ることができる。また、第1収容部11において生成される消化液は、第2収容部12に収容される第2発酵原料5及び第2発酵原料5の発酵による生成物との接触により、溶出したNPK成分をより多く含み得る。このため、NPK成分の含有量が向上し、より良質なバイオ液肥として活用することができる。これにより、液肥施用に伴う労力が省力化されるなど、液肥の有用性向上を図ることができる。
また、本実施形態によれば、第1収容部11に収容された第1発酵原料4を第2収容部12に供給してバイオガスを生成する原料供給工程S11と、原料供給工程S11において第2収容部12に供給された第1発酵原料4のうち、少なくとも一部を第1収容部11へ落下させることにより第2発酵原料5と分離する分離工程S12と、原料供給工程S11において生成されたバイオガスを第1収容部11に供給するバイオガス供給工程S13と、を備える。すなわち、第2収容部12において生成されるバイオガスは、第1収容部11に収容される第1発酵原料4及び第1発酵原料4の発酵による生成物に接触し、バイオガス中の硫化水素及びアンモニアが溶出し得る。このため、生成したバイオガスの脱硫処理及びアンモニア除去処理を行う機器を設ける必要がない。これにより、メタン発酵装置1の小型化を図ることができる。また、生成されたバイオガス中の二酸化炭素も同様に溶出するため、メタン濃度が純化された、発熱量の高いバイオガスを生成することができる。これにより、ガスの運送・保管等に要するコストが低減されるなど、バイオガスの有用性向上を図ることができる。
(第2実施形態:メタン発酵装置1の一例)
図5を参照して、本実施形態におけるメタン発酵装置1の一例を説明する。本実施形態は、メタン発酵装置1が気泡発生装置6をさらに備える点で、第1実施形態とは異なる。なお、上述の内容と同様の構成については、説明を省略する。
メタン発酵装置1は、例えば図5に示すように、気泡発生装置6をさらに備える。
<気泡発生装置6>
気泡発生装置6は、メタン発酵槽10と接続される。気泡発生装置6は、例えば第1接続配管21を介して、メタン発酵槽10と接続される。
気泡発生装置6は、少なくとも酸素を含む気体を流動体に吹き込むことにより、酸素ナノバブル水を生成する。気泡発生装置6は、例えば第1接続配管21内を流動する流動体又に気泡を吹き込む。気泡発生装置6は、例えば第1接続配管21内を流動する第1発酵原料4又は消化液に気泡を吹き込むことにより、酸素ナノバブル水(酸素ナノバブル含有第1発酵原料又は酸素ナノバブル含有消化液)を生成する。
気泡発生装置6による酸素ナノバブル水の生成方法は、例えば酸素や空気等の気体を加圧して、第1発酵原料4又は消化液中に過飽和で溶解させ、急減圧により、液中にマイクロバブルとナノバブルを発生させ、マイクロバブル浮上分離後、ナノバブルのみ液中に残留させることにより実現し得る。ただし、酸素ナノバブル水は、ナノオーダー(1μm以下)の直径の酸素ガスの微細気泡を含有する水のことを指しており、ナノオーダーの酸素ガスの微細気泡に加え、マイクロオーダー(1~100μm)の微細酸素ガスを含有するマイクロナノバブル水としてもよい。また、気泡発生装置6は、酸素ナノバブル又は空気ナノバブルのいずれか一方或いはその両方を含む少なくともナノサイズの微細気泡として酸素を含有する酸素ナノバブル水を生成してもよい。酸素ナノバブル水の具体例としては、直径200nm以下の気泡のうち平均直径50nm~100nmの気泡が9割程度含まれ、気泡の濃度が2×108個/L~6×109個/Lである。
酸素ナノバブル水の生成方式としては、例えば酸素気体と水を混合し、高速で旋回させることで酸素の気泡を作る「旋回流方式」、酸素気体に圧力をかけ、水中に溶け込ませて、一気に開放することで酸素の気泡を作る「加圧溶解方式」、オリフィス等の微細孔へ酸素気体に圧力をかけて通すことで酸素の気泡を作る「微細孔方式」、超音波でキャビテーションを起こして水中の酸素気体を膨張させて酸素の気泡を作る「超音波方式」、突起物が設けられた気液流路内において気体を旋回させ粉砕して気泡を作る「スタティックミキサー式」、気液流路内に急激な圧力変化を形成して気泡を作る「エゼクター式」又は「ベンチュリ―式」等が例示される。しかし、酸素ナノバブル水の生成方式は、特に限定されるものではなく、マイクロオーダー(1~100μm)の微細酸素ガスを含有するマクロナノバブル水を生成できる手段であればよい。
酸素をナノバブル状の微細な気泡とすることにより、通常の蒸留水よりもT1緩和時間(核磁化によって水の運動(核スピン)が活発になってから静かな状態に戻るまでの時間)の向上、すなわち運動性が高められ、メタン発酵槽10に収容される物質の移動性が高まる。これにより、メタン発酵槽10内において酸素ナノバブル水、各発酵原料4、5、消化液及びバイオガスが接触しやすくなり、メタン発酵がより促進され得る。
(第2実施形態:メタン発酵装置1の動作の一例)
図6を参照して、本実施形態におけるメタン発酵装置1の動作の一例を説明する。
<事前準備>
事前準備として、例えば図6(a)に示すように、メタン発酵槽10に接続された気泡発生装置6を予め起動し、第1接続配管211内を流動する流動体に気泡を吹き込めるように調整する。
<原料供給工程S11>
原料供給工程S11において、メタン発酵装置1は、例えば図6(b)に示すように、送水ポンプ211を動作させて第1収容部11から第1発酵原料4を排出する(第1発酵原料4b)。第1発酵原料4bは、原料排出口111を通過して第1収容部11から排出された後、第1接続配管21内を流動して、第1接続配管21に接続された気泡発生装置6により、少なくとも酸素を含む気体を吹き込む。その結果、第1発酵原料4bから第1発酵原料4b’が生成される。ここで、第1発酵原料4b’は、例えば酸素ナノバブル水である。
第1発酵原料4b’は、原料供給口121を通過し、第2収容部12に供給される。第1発酵原料4b’は、例えば第2収容部12に収容される第2発酵原料5の上方から、第2発酵原料5に接触するように供給される。ここで、第2収容部12に供給される第1発酵原料4を第1発酵原料4c’とする。第1発酵原料4c’は、例えば第1発酵原料4b’と同様の酸素ナノバブル水である。
第1発酵原料4c’と接触した第2発酵原料5は、メタン生成菌の作用によりメタン発酵が促進される。その結果、第2発酵原料5が乾式メタン発酵され、第2収容部12内においてバイオガス及び消化液が発生する。第2発酵原料5から生じたバイオガスは、ガス排出口122を通過し、第2接続配管22を流動してバイオガス採集タンク3に収容される。
第1発酵原料4c’は、例えば図6(c)に示すように、少なくとも一部が、分離機構13に設けられた孔130を通過して、第2収容部12よりも下層に設けられた第1収容部11に落下する。ここで、第2収容部12から孔130を通過して第1収容部11に落下する第1発酵原料4を第1発酵原料4d’とする。第1発酵原料4d’は、例えば第1発酵原料4b’と同様の酸素ナノバブル水である。また、第2発酵原料5から生じた消化液は、第1発酵原料4d’と同様に、分離機構13に設けられた孔130を通過して、第2収容部12よりも下層に設けられた第1収容部11に落下する。第1収容部11に落下した消化液は、第1発酵原料4aとともに、又は第1発酵原料4aの代わりに、原料排出口111を通過して第1収容部11から排出され、第1接続配管21内を流動して、第1接続配管21に接続された気泡発生装置6により、少なくとも酸素を含む気体を吹き込む。その結果、消化液から酸素ナノバブル含有消化液が生成される。生成された酸素ナノバブル含有消化液は、原料供給口121を通過し、第2収容部12に供給される。
すなわち、少なくとも酸素を含む気体を第1発酵原料4に吹き込むことにより、酸素ナノバブル水を生成する気泡発生装置をさらに備え、第2収容部12は、酸素ナノバブル水が供給される。この場合、メタン生成菌が活性化し、メタン生成量の向上により、メタン濃度が純化された、発熱量の高いバイオガスをさらに生成することができる。これにより、バイオガスのさらなる有用性向上を図ることができる。酸素ナノバブル水の効用については、後述の実験において実験データに基づいて述べる。
なお、本実施形態においては、気泡発生装置6を用いて、第2収容部12に供給される第1発酵原料4から酸素ナノバブル水を生成し、第2収容部12に供給する例を説明したが、これに限定されない。気泡発生装置6は、例えば第1収容部11又は第2収容部12に供給されるアルカリ廃水に、少なくとも酸素を含む気体を吹き込むことにより酸素ナノバブル水を生成し、第1収容部11又は第2収容部12に供給してもよい。また、気泡発生装置6は、例えば第2収容部12に供給される消化液に、少なくとも酸素を含む気体を吹き込むことにより酸素ナノバブル水を生成し、第2収容部12に供給してもよい。これらの方法により生成された酸素ナノバブル水を用いることでも、同様にメタン生成量が向上し得る効果を奏することができる。
また、予め酸素ナノバブル水に浸漬させた第2発酵原料5を用いる方法によっても、同様にメタン生成量が向上し得る効果を奏することができる。
本実施形態によれば、少なくとも酸素を含む気体を第1発酵原料4に吹き込むことにより、酸素ナノバブル水を生成する気泡発生装置6をさらに備え、第2収容部12は、酸素ナノバブル水が供給される。このため、メタン生成菌が活性化し、メタン生成量の向上により、メタン濃度が純化された、発熱量の高いバイオガスをさらに生成することができる。これにより、バイオガスのさらなる有用性向上を図ることができる。
また、本実施形態によれば、少なくとも酸素を含む気体をアルカリ廃水に吹き込むことにより、酸素ナノバブル水を生成する気泡発生装置6をさらに備え、第2収容部12は、酸素ナノバブル水が供給される。このため、メタン生成菌が活性化し、メタン生成量の向上により、メタン濃度が純化された、発熱量の高いバイオガスをさらに生成することができる。これにより、バイオガスのさらなる有用性向上を図ることができる。
また、本実施形態によれば、少なくとも酸素を含む気体を消化液に吹き込むことにより、酸素ナノバブル水を生成する気泡発生装置6をさらに備え、第2収容部12は、酸素ナノバブル水が供給される。このため、メタン生成菌が活性化し、メタン生成量の向上により、メタン濃度が純化された、発熱量の高いバイオガスをさらに生成することができる。これにより、バイオガスのさらなる有用性向上を図ることができる。
以下に、上述した実施形態のメタン発酵装置1を用いた場合のメタン発酵の効果に関する実験結果を説明する。
<実施例1:バイオガス及び消化液の良質化>
本実験では、メタン発酵装置1を用いて、生成されるバイオガスの循環によるバイオガス良質化の効果、及び生成される消化液の循環による消化液良質化の効果について確認した。
<<実験条件>>
まず、本実験のメタン発酵条件について説明する。発酵原料については、第1発酵原料4として鶏ふんを、第2発酵原料5として籾殻を用いた。また、発酵原料全体のTSは約35%、発酵原料のVSは約20%、発酵原料のC/N比は32であった。ここで、C/N比とは、物質中の炭素(C)と窒素(N)の質量比を指す。メタン発酵においては通常C/N比25程度となるように原料を希釈して調整されるが、メタン発酵装置1では原料の希釈を行わない。また、発酵温度を35℃、発酵期間を60日とした。
バイオガスの循環条件としては、2時間ごとに1時間の間欠運転により、50mL/minの量を循環させた。消化液の循環条件としては、6時間ごとに5分間の間欠運転により、200mL/minの量を循環させた。なお、メタン発酵装置1は攪拌装置を備えていないため、攪拌子による攪拌を行わない。
バイオガスの成分評価方法としては、バイオガス採集タンク3に採集されたバイオガスの一部を回収し、GC-TCD(ガスクロマトグラフィー/熱伝導度型検出器)と株式会社島津製作所(登録商標)製のカラム「GC-8A」とを用いたガスクロマトグラフィー質量分析法により成分分析した。これにより、バイオガス中のメタンガス濃度、アンモニア濃度、及び硫化水素濃度を数値化することができる。メタンガス濃度については、メタン発酵期間60日間の推移を日別で測定した。アンモニア濃度及び硫化水素濃度については、メタン発酵期間60日後のバイオガス中の濃度について、消化液とバイオガスとを循環させた場合(Liquid-gas recirculation)と、消化液及びバイオガスを循環させない場合(No recirculation)と、消化液のみを循環させた場合(Liquid recirculation)とを、それぞれ比較した。
消化液の成分評価方法としては、メタン発酵期間60日後の消化液を液肥として用いて20日間水耕栽培したレタスの重量等と、公知の栄養液を用いて水耕栽培したレタスの重量等と、を比較した。なお、公知の栄養液としては、OATアグリオ株式会社(登録商標)製「ジャストワン液肥」を用いた。
また、メタン発酵開始時のTS(発酵原料の固形物量)と、メタン発酵期間60日後のTS(固形残さ)とから得られるTS削減率についても合わせて測定し、メタン発酵に伴う固形残さについて比較した。TS削減率の算出方法は、「(メタン発酵開始時のTS-メタン発酵期間60日後のTS)/メタン発酵開始時のTS」とした。
<<実験結果:メタン濃度>>
次に、本実施例の実験結果について説明する。バイオガスのメタン濃度について、メタン発酵期間60日間の推移を図7に示す。
図7によれば、メタン発酵装置1により生成したバイオガスは、メタン発酵20日間の時点で、メタン濃度(Methane content)が約85%となり、その後も85%以上を維持していた。従来のメタン発酵装置により生成したバイオガスのメタン濃度については、「メタンガス化施設整備マニュアル 平成29年3月(環境省)」によれば、国内メタンガス化施設の稼働実績として53~72%とされている。したがって、メタン発酵装置1により生成したバイオガスのメタン濃度は、従来のメタン発酵装置により生成したバイオガスのメタン濃度よりも高いといえる。
また、図示を省略したが、メタン発酵装置1により生成したバイオガスの総量は、メタン発酵期間60日間時点で合計100m3/tのバイオガスが生成された。なお、「m3/t」とは発酵原料の投入量に対するバイオガスの総量を示しており、以下も同様とする。
以上の実験結果によれば、メタン発酵装置1を用いてバイオガス及び消化液を循環させることにより、メタン濃度が純化された、発熱量の高いバイオガスを生成することができる。これにより、ガスの運送・保管等に要するコストが低減されるなど、バイオガスの有用性向上を図ることができる。
<<実験結果:アンモニア濃度及び硫化水素濃度>>
また、バイオガスのメタン発酵期間60日後のアンモニア濃度を図8(a)に、硫化水素濃度を図8(b)に示す。なお、「Liquid-gas recirculation」の発酵方法を本発明例1、「No recirculation」の発酵方法を比較例1、「Liquid recirculation」の発酵方法を比較例2とする。
図8(a)によれば、本発明例1のアンモニア濃度(NH3 concentration in biogas)は0.83ppmであった。また、比較例1のアンモニア濃度は74ppmであった。また、比較例2のアンモニア濃度は12ppmであった。したがって、バイオガス及び消化液を循環させるメタン発酵装置により生成したバイオガスのアンモニア濃度は、バイオガス及び消化液を循環させないメタン発酵装置、及び消化液のみ循環させるメタン発酵装置により生成したバイオガスのアンモニア濃度よりも低いといえる。なお、「Ammonia inhibition and toxicity in anaerobic digestion: A critical review. Journal of Water Process Engineering, Volume 32, December 2019, 100899」によれば、バイオガス中のアンモニア濃度が60ppm(60mg/L)の場合においてメタン生成を阻害されるため、比較例1の発酵方法ではアンモニア除去処理用機器を設ける必要があるが、比較例2及び本発明例1においては当該機器を設ける必要がない。また、本発明例1の発酵方法は、比較例2の発酵方法よりもさらにアンモニア濃度を低減できることから、メタン発酵の効率化をより確実に行うことができる。
また、図8(b)によれば、本発明例1の硫化水素濃度(H2S concentration in biogas)は8ppmであった。また、比較例1の硫化水素濃度は520ppmであった。また、比較例2の硫化水素濃度は150ppmであった。したがって、バイオガス及び消化液を循環させるメタン発酵装置により生成したバイオガスの硫化水素濃度は、バイオガス及び消化液を循環させないメタン発酵装置、及び消化液のみ循環させるメタン発酵装置により生成したバイオガスの硫化水素濃度よりも低いといえる。なお、「別海町バイオマス利活用計画等策定 第V章 バイオガス改質・エネルギー機器導入の為の実証計画 平成18年(北海道別海町)」によれば、バイオガスを燃料とするガス燃焼機器について、機器の耐用年数低下を避けるために、硫化水素濃度が10ppm以下となるまで十分な脱硫を行う必要があるとしており、比較例1及び比較例2の発酵方法では脱硫処理用機器を設ける必要があるが、本発明例1においては当該機器を設ける必要がない。
以上の実験結果によれば、メタン発酵装置1を用いてバイオガス及び消化液を循環させることにより、生成されるバイオガス中のアンモニア濃度及び硫化水素を大幅に低減することができるため、生成したバイオガスの脱硫処理及びアンモニア除去処理を行う機器を設ける必要がない。これにより、メタン発酵装置の小型化を図ることができる。
<<実験結果:固形残さ削減量>>
また、メタン発酵期間60日後におけるメタン発酵槽10内の発酵原料のTS削減率(TS reduction)を図9に示す。図9によれば、本発明例1の発酵方法によれば、固形残さが1000m3/tから250m3/tまで削減され、すなわちTS削減率が75%であった。また、比較例1の発酵方法によれば、固形残さが1000m3/tから600m3/tまで削減され、すなわちTS削減率は40%であった。したがって、バイオガス及び消化液を循環させるメタン発酵装置でメタン発酵した際の固形残さの削減率は、バイオガス及び消化液を循環させないメタン発酵装置でメタン発酵した際の固形残さの削減率よりも高いといえる。
以上の実験結果によれば、メタン発酵装置1を用いてバイオガス及び消化液を循環させることにより、メタン発酵後の固形残さを低減することができる。これにより、メタン発酵装置1から生じる廃棄物の減量化を図ることができる。
また、従来のメタン発酵は、畜産系廃棄物の窒素含有量が1.5%~3%と高く、C/N比が15程度であることから、メタン菌発酵の活動環境として最適なC/N比25に調整するために発酵原料を水で10倍希釈していたため、発酵槽の小型化が困難であった。本発明のメタン発酵装置1では、この希釈を行わないため、発酵槽の小型化を図ることができる。
また、従来のメタン発酵は、メタン生成菌が好気性微生物より増殖速度が遅いため、反応槽の水理学的滞留時間(HRT)が15日~60日程度必要とされる。本発明のメタン発酵装置1によれば、メタン発酵期間約5日目からメタン発酵が進行しバイオガスが生成され始める。このため、より短期間でバイオガスを得ることができる。
また、従来のメタン発酵は、「Effect of nano-bubble water on high solid anaerobic digestion of pig manure: Focus on digestion stability, methanogenesis performance and related mechanisms(2020年)」によれば、湿式発酵によるバイオガス生成量が約10m3/t以下、乾式発酵によるバイオガス生成量が10~50m3/tであった。本発明のメタン発酵装置1によれば、メタン発酵期間14日間で100m3/tのバイオガスを生成できる。このため、バイオガスの生成効率の向上を図ることができる。
また、従来のメタン発酵は、「Anaerobic digestion of cow dung for biogas production, VOL. 7, NO. 2, FEBRUARY 2012」によれば、TS削減率が49%とされている。本発明のメタン発酵装置1によれば、メタン発酵期間60日間で固形残さが1000m3/tから250m3/tまで削減され、すなわちTS削減率は75%であった。これは、従来のTS削減率の約2倍に相当する。また、発酵残さの一部を堆肥として用いることで、廃棄物をさらに低減することができる。
また、本実施例によれば、バイオガス成分のアンモニア濃度は10ppm以下であった。これは、消化液中へのアンモニアの溶出に起因する。アンモニアは、メタン生成菌に対しても毒性を有し、消化液に溶出することで、メタン生成菌によるメタン生成を阻害し得ることから、メタン発酵槽内において除去されることが好ましい。また、消化液に微量空気を導入することで、溶存するアンモニアを硝酸化することができる。すなわち、アンモニア除去装置を設ける必要がない。本発明のメタン発酵装置1によれば、メタン発酵装置の小型化、初期投資額及びランニングコストの低減を図ることができる。
また、本実施例によれば、バイオガス成分の硫化水素濃度は1ppm以下であった。これは、消化液中への硫化水素の溶出に起因する。また、消化液に微量空気を導入することで、溶存する硫化水素を単質硫又は硫酸イオンに変換することができる。すなわち、脱硫塔を設ける必要がない。本発明のメタン発酵装置1によれば、メタン発酵装置の小型化、初期投資額及びランニングコストの低減を図ることができる。
<<実験結果:消化液のNPK成分含有量>>
次に、メタン発酵装置1で生成した消化液の概要について説明する。消化液に含まれるNPK成分について、具体的な数値を[表1]に示す。
[表1]によれば、本発明例1の発酵方法により生成された消化液は、TN(全窒素濃度)が6.3%、TP(全リン濃度)が4.3%、TK(全カリウム濃度)が2.0%、溶存CO2が11,530mgC/Lであった。また、比較例1の発酵方法により生成された消化液は、TNが3.1%、TPが2.3%、TKが1.2%、溶存CO2が3,656mgC/Lであった。したがって、メタン発酵装置1により生成した消化液のNPK成分の含有量は、従来のメタン発酵装置により生成した消化液のNPK成分の含有量よりも向上したといえる。また、メタン発酵装置1により生成した消化液のCO2溶存量は、従来のメタン発酵装置により生成した消化液のCO2溶存量よりも向上したといえる。すなわち、植物の光合成に必要なCO2をより多く供給できるため、植物の成長の促進を図ることができる。
また、メタン発酵装置1で生成した消化液を用いて20日間水耕栽培したレタスの概要と、公知の栄養液を用いて20日間水耕栽培したレタスの概要について、具体的な数値を[表2]に示す。なお、本発明例1で生成した消化液を水道水で50倍希釈した液体を本発明例2、同消化液を水道水で100倍希釈した液体を本発明例3、同消化液を水道水で200倍希釈した液体を本発明例4、公知の水耕栽培栄養液を水道水で200倍希釈した液体を比較例3とする。
[表2]によれば、本発明例2の液体を用いて水耕栽培したレタスの葉新鮮重量は28.1[g]であった。また、本発明例3の液体を用いて水耕栽培したレタスの葉新鮮重量は33.2[g]であった。また、本発明例4の液体を用いて水耕栽培したレタスの葉新鮮重量は36.1[g]であった。また、比較例3の液体を用いて水耕栽培したレタスの葉新鮮重量は10.5[g]であった。すなわち、メタン発酵装置1で生成した消化液は、同程度の希釈を行った公知の栄養液と比較して、水耕栽培の液肥として用いた際のレタスの葉新鮮重量が約3.6倍に増加する。
以上の実験結果によれば、メタン発酵装置1を用いてバイオガス及び消化液を循環させることにより、生成された消化液のNPK成分含有量が向上し、より良質なバイオ液肥として活用することができる。これにより、液肥の有用性向上を図ることができる。
また、従来のメタン発酵は、「Volatile fatty acids (VFAs) production from swine manure through short-term dry anaerobic digestion and its separation from nitrogen and phosphorus resources in the digestate(2016年)」によれば、生成される消化液のTNが0.46%、TPが0.36%であった。本発明のメタン発酵装置1によれば、メタン発酵期間60日間でTNが6.3%、TPが4.3%と、NPK成分の含有量が約10倍の消化液を生成できる。このため、より短期間で高純度のバイオ液肥を得ることができる。また、メタン発酵槽から排出した消化液を調整処理する必要なく、そのまま液肥として使用することができる。
<実施例2:ナノバブル化した消化液と、バイオガスとを循環する場合に生成されるバイオガス成分>
次に、メタン発酵装置1で生成した消化液に空気を吹き込んでナノバブル化した酸素ナノバブル含有消化液を循環させる場合の、バイオガス良質化の効果について確認した。なお、消化液の代わりに酸素ナノバブル含有消化液を用いること以外は、実施例1の条件と同様である。
次に、本実施例の実験結果について説明する。バイオガスのメタン発酵期間60日後のメタン濃度を図10に示す。なお、「ナノバブル添加」を本発明例5、「添加なし」を本発明例6とし、「mL/g-VS」とは投入した発酵原料1gあたりのメタン収率を指す。本発明例5と本発明例6とは、いずれも本発明例1の発酵方法(Liquid-gas recirculation)によりメタン発酵させた。
図10によれば、本発明例5のメタン収率(Methane yield)は、230mL/g-VSaddedであった。また、本発明例6のメタン収率は、175mL/g-VSaddedであった。すなわち、本発明例6は、本発明例5よりも約30%高いメタン収率を示した。したがって、バイオガス及び酸素ナノバブル含有消化液を循環させるメタン発酵装置により生成したバイオガスのメタン収率は、バイオガス及び(酸素ナノバブルを含有しない)消化液を循環させるメタン発酵装置により生成したバイオガスのメタン収率よりも高いといえる。
以上の実験結果によれば、少なくとも酸素を含む気体を消化液に吹き込むことにより、酸素ナノバブル水を生成する気泡発生装置を備えるメタン発酵装置1を用いて酸素ナノバブル含有消化液を供給する場合、メタン発酵槽10内のメタン生成菌が活性化し、メタン生成量の向上により、メタン収率を約30%増加する。このため、メタン濃度が純化された、発熱量の高いバイオガスをさらに生成することができる。これにより、バイオガスのさらなる有用性向上を図ることができる。また、本実施例では少なくとも酸素を含む気体を消化液に吹き込む例を説明したが、当該気体を第1発酵原料4又は第2発酵原料5に吹き込む場合においても同様に、メタン濃度が純化された、発熱量の高いバイオガスをさらに生成することができ、バイオガスのさらなる有用性向上を図ることができるのは勿論である。
<実施例3:アルカリ廃水を用いる場合に生成されるバイオガス成分>
次に、アルカリ廃水を用いて発酵原料をメタン発酵装置1でメタン発酵させる場合の、メタン濃度純化及びバイオガス生成量(mL/g-VS)向上の効果を確認した。
本実験では、第2発酵原料5を予め浸漬したうえで、浸漬方法ごとにバイオガス生成量及びメタン濃度を比較した。浸漬方法としては、浸漬用水(浸漬に用いる液体)を複数用意し、それぞれ第2発酵原料5を浸漬した。浸漬用水としては、アルカリ廃水と、水道水と、アルカリ水と、を用いた。第2発酵原料5としては、未粉砕の籾殻と、ミキサーにより粉砕した籾殻と、を用いた。また、気泡発生装置6を用いて浸漬用水に空気を吹き込んで空気ナノバブルを生成する場合のバイオガス生成量についても確認した。なお、本実施例では第2収容部12において生成されたバイオガスを第1収容部11に供給する操作を行っていないため、以降の実験内容については参考値(比較例)として説明するが、実施例1に記載のとおりバイオガスを循環させることでバイオガスの生成効率が向上することから、メタン発酵装置1に本実施例を適用してバイオガスの生成効率向上を図ることができるのは勿論である。
未粉砕の籾殻を用いる場合の第2発酵原料5については、空気ナノバブルを生成したアルカリ廃水で24時間浸漬した未粉砕の籾殻の第2発酵原料5を示す「pretreated URH-AHMCAW(Uncrushed Rice Husk Air-High Mobility Cement Alkaline Wastewater)」、空気ナノバブルを生成したアルカリ水(0.1%水酸化カルシウム溶液)で24時間浸漬した未粉砕の籾殻の第2発酵原料5を示す「pretreated URH-AHMAW(Uncrushed Rice Husk Air-High Mobility Alkaline Water)」、空気ナノバブルを生成した水道水で24時間浸漬した未粉砕の籾殻の第2発酵原料5を示す「pretreated URH-AHMTW(Uncrushed Rice Husk Air-High Mobility Tap Water)」、アルカリ廃水で24時間浸漬した未粉砕の籾殻の第2発酵原料5を示す「pretreated URH-CAW(Uncrushed Rice Husk Cement Alkaline Wastewater)」、アルカリ水で24時間浸漬した未粉砕の籾殻の第2発酵原料5を示す「pretreated URH-AW(Uncrushed Rice Husk Alkaline Water)」、水道水で24時間浸漬した未粉砕の籾殻の第2発酵原料5を示す「pretreated URH-TW(Uncrushed Rice Husk Tap Water)」、以上を用いた。
アルカリ廃水としては、使用後のコンクリートミキサー内の洗浄廃水を、集水槽、濾過槽、及び沈殿槽を通過させた後で、中和槽を通過する前の廃水を用いた。
本実験で用いるアルカリ廃水をイオンクロマトグラフィーにより調べたところ、アルカリ廃水中の微量元素組成は、Tiが37.87mg/L、Srが1.21mg/L、Liが0.31mg/L、Alが0.26mg/L、Crが0.02mg/Lであった。なお、Mg、Co、Cu、Fe、Ni、Zn、Cd、Pbは、検出限界以下であった。このうち、Ti、Sr、Liは、メタン発酵に用いる従来のアルカリ水には含まれない成分と考えられる。「Combinations of alkaline hydrogen peroxide and lithium chloride/N,N-dimethylacetamide pretreatments of corn stalk for improved biomethanation, Environmental Research Volume 186, July 2020, 109563」に記載のAliら(2020)の研究では、LiClをリグノセルロースの前処理に使用することで、リグノセルロースバイオマスに含まれるリグニンの分解力が高くなり、その基質でメタン発酵を行うと、メタン生産が改善されたと報告されている。このことから、前処理されたリグノセルロースバイオマスを用いる場合、メタン発酵の初期段階において微生物や酵素の成長が促進され、加水分解速度や酸分解生成速度が促進されたと考える。このため、Li成分を含むアルカリ廃水が、バイオガス生産量向上、メタンガス生成速度向上及びメタン濃度の向上に寄与しているものと考えられる。
また、本実験で用いるアルカリ廃水中の主なイオン成分は、Na+が0.002~0.003%、K+が0.002~0.01%、Ca2+が0.05~0.2%、Cl-が0.001%、SO42-が0.03~0.1%であった。
アルカリ水としては、市販の99.9%水酸化カルシウム試薬を調製して0.1%水酸化カルシウム溶液を用いた。
具体的な浸漬方法としては、メタン発酵装置1とは別の浸漬容器に、籾殻と浸漬用水との重量比が1:1とになるように投入し、容器のふたを閉めた。その後、浸漬温度35℃にセットしたインキュベーターに置き、浸漬時間24hの間放置した。浸漬時間経過後、浸漬容器内の液体を別の容器に取り出し、浸漬容器内の籾殻を浸漬後の第2発酵原料5として用いた。
メタン発酵の条件は、TS濃度15%程度、発酵温度35℃、発酵期間55日間とした。また、メタン発酵槽10内がpH7~8となるように、アルカリ廃水を投入して調整した。また、浸漬後の第2発酵原料5と、鶏ふんと、消化汚泥(種菌)と、の重量比を3:1:0.8で調整した。なお、本実験で用いる鶏ふんとしては、第2発酵原料5を基質とした場合のバイオガス生成量を計測するために、約2か月間室温で放置し、自然分解によりTS(固形物濃度)とVS(有機物濃度)と、C/N比とを極力低下させものを使用した。
気泡発生装置6としては、pH10以上のアルカリ廃水に対応可能な公知のナノバブル発生装置を用いた。気泡発生装置6で液体に空気を吹き込むことにより、ナノバブル水を生成した。
実験の結果は図11~図12に示すとおりである。
未粉砕の籾殻と、各浸漬用水とを組み合わせた基質(Substrates)ごとのバイオガス生成量(Cumulative biogas production)は、図11のとおりである。また、図11に関して、メタン発酵55日後のVS1gあたりバイオガス生成量の具体的な数値を[表3]に示す。
本実験によれば、空気ナノバブルが生成された浸漬用水で浸漬した基質である「pretreated URH-AHMCAW(比較例4)」、「pretreated URH-AHMAW(比較例5)」、及び「pretreated URH-AHMTW(比較例6)」のバイオガス生成量の方が、空気ナノバブルを含まない浸漬用水で浸漬した基質である「pretreated URH-CAW(比較例7)」、「pretreated URH-AW(比較例8)」及び「pretreated URH-TW(比較例9)」のバイオガス生成量よりも多い傾向にあった。空気ナノバブルを含む浸漬用水で浸漬した基質においては、アルカリ廃水7で浸漬した比較例4の基質の方が、アルカリ水で浸漬した比較例5、及び水道水で浸漬した比較例6の基質よりも、バイオガス生成量が多い傾向にあった。また、空気ナノバブルを含まない浸漬用水で浸漬した基質においては、アルカリ廃水7で浸漬した比較例7の基質の方が、アルカリ水で浸漬した比較例8、及び水道水で浸漬した比較例9の基質よりも、バイオガス生成量が多い傾向にあった。
また、本実験によれば、メタン発酵55日後のVS1gあたりバイオガス生成量は、比較例4が99mL、比較例5が83mL、比較例6が77mLであった。すなわち、VS1gあたりのバイオガス生成量は、空気ナノバブルを含むアルカリ廃水で浸漬した第2発酵原料5を用いる場合、空気ナノバブルを含むアルカリ水で浸漬した第2発酵原料5を用いる場合と比べて約19%増加し、空気ナノバブルを含む水道水で浸漬した第2発酵原料5を用いる場合と比べて約29%増加する。
また、本実験によれば、メタン発酵55日後のVS1gあたりのバイオガス生成量は、比較例7が75mL、比較例8が73mL、比較例9が68mLであった。すなわち、VS1gあたりのバイオガス生成量は、アルカリ廃水で浸漬した第2発酵原料5を用いる場合、気泡発生装置6により空気を吹き込まなくとも、アルカリ水で浸漬した第2発酵原料5を用いる場合と比べて約3%増加し、水道水で浸漬した第2発酵原料5を用いる場合と比べて約10%増加する。また、気泡発生装置6により空気を吹き込んだアルカリ廃水で浸漬した第2発酵原料5を用いる場合、空気を吹き込まないアルカリ廃水で浸漬した第2発酵原料5を用いる場合と比べて約32%増加する。
粉砕後の籾殻と、各浸漬用水とを組み合わせた基質(Substrates)ごとのバイオガス生成量(Cumulative biogas production)は、図12のとおりである。また、図12に関して、メタン発酵55日後のVS1gあたりバイオガス生成量の具体的な数値を[表4]に示す。なお、「increase rate(増加率)」とは、[表3]において未粉砕の原料を同様の浸漬方法で浸漬した基質を用いた場合のバイオガス生成量に対する、本実施例のバイオガス生成量の増加率を示している。
本実験によれば、バイオガス生成量が最も多い基質は、空気ナノバブルを含むアルカリ廃水で浸漬した「pretreated CRH-AHMCAW(比較例10)」であった。未粉砕の籾殻の場合と異なり、空気ナノバブルを含む「pretreated CRH-AHMAW(比較例11)」及び「pretreated CRH-AHMTW(比較例12)」と、空気ナノバブルを含まない「pretreated CRH-CAW(比較例13)」、「pretreated CRH-AW(比較例14)」及び「pretreated CRH-TW(比較例15)」と、のバイオガス生成量が同程度であった。
また、本実験によれば、メタン発酵55日後のVS1gあたりのバイオガス生成量は、比較例10が102mL、比較例11が88mL、比較例12が88mL、比較例13が86mL、比較例14が85mL、比較例15が90mLであった。何れにおいても、未粉砕の第2発酵原料5を用いる場合と比べてバイオガス生成量が増加した。しかしながら、粉砕後の第2発酵原料5を用いた比較例11~15のバイオガス生成量は、未粉砕の第2発酵原料5を用いた比較例4のバイオガス生成量よりも低い値であった。ここで、未粉砕の籾殻を基質とする比較例4は、粉砕後の籾殻を基質とする比較例11~15よりもバイオガス生成量が多い。すなわち、空気ナノバブルを含むアルカリ廃水で浸漬することで、第2発酵原料5を粉砕することを要しない。このため、第2発酵原料5を粉砕するための粉砕機を用いる必要がない。これにより、メタン発酵装置1の小型化を図ることができる。
以上の実験結果によれば、本発明は、アルカリ廃水で浸漬されたバイオマス資源を効率よくメタン発酵させることができ、VSあたりのバイオガス生成量の向上を図ることができる。
<実施例4:消化液を循環させる場合の浸漬方法ごとのバイオガス生成量の比較>
次に、実施例3と同様の基質のうち未粉砕の基質を用いて、メタン発酵により生じた消化液を第1収容部11と第2収容部12との間で循環させる場合について、投入したVS1gあたりバイオガス生成量(mL/g-VS)を測定し、実施例3と比較した。
浸漬方法としては、メタン発酵装置1に備わる第2収容部12に、籾殻と浸漬用水との重量比が1:1とになるように投入した。その後、浸漬温度35℃となるようにメタン発酵槽10内の温度を調整し、籾殻投入から12時間後に、第2収容部12から分離機構13を介して第1収容部11に落下した浸漬用水を含む、第1収容部11内の液体の約8割を、第2収容部12に圧送し、さらに12時間放置した。すなわち、浸漬時間は実施例3と同様に24時間とした。また、第2発酵原料5について、浸漬用水で浸漬しない未粉砕の籾殻の第2発酵原料5を示す「Untreated URH(Uncrushed Rice Husk)」を追加した。その他の条件は、実施例3と同様とした。すなわち、本実施例においても第2収容部12において生成されたバイオガスを第1収容部11に供給する操作を行っていないため、以降の実験内容については参考値(比較例)として説明するが、メタン発酵装置1に本実施例を適用してバイオガスの生成効率及びメタン濃度の向上を図ることができるのは勿論である。
本実験の結果として、メタン発酵55日後のVS1gあたりバイオガス生成量の具体的な数値を[表5]に示す。なお、「increase rate(増加率)」とは、実施例3において同様の基質を用いた場合のバイオガス生成量に対する本実施例のバイオガス生成量の増加率を示している。
本実験によれば、VS1gあたりバイオガス生成量は、比較例16が123mLであった。これは、第2発酵原料5を浸漬しない比較例22のバイオガス生成量と比較して約84%の増加に相当する。また、VS1gあたりのバイオガス生成量は、空気ナノバブルを含むアルカリ廃水で浸漬した第2発酵原料5について消化液を循環させて発酵させる場合(比較例16)、空気ナノバブルを含むアルカリ廃水7で浸漬した第2発酵原料5について消化液を循環させずに発酵させる場合(比較例4)と比べて約24.2%増加した。また、アルカリ廃水で浸漬した第2発酵原料5について消化液を循環させて発酵させる場合(比較例19)、アルカリ廃水7で浸漬した第2発酵原料5について消化液を循環させずに発酵させる場合(比較例7)と比べて約20.0%増加した。同様に、アルカリ廃水以外の浸漬用水で浸漬した第2発酵原料5について消化液を循環させて発酵させる比較例17、18、20、21についても、消化液を循環させずに発酵させる比較例5、6、8、9と比べてバイオガス生成量が増加した。
また、本実験の結果として、生成したバイオガス中のメタンガス濃度について、メタン発酵日数別の推移に関する具体的な数値を[表6]に示す。
本実験によれば、比較例16のメタンガス濃度は、Day15時点で80%超まで濃縮されており、比較例17~22よりも高い濃度を維持している。また、比較例19のメタンガス濃度は、Day25時点で約80%まで濃縮されており、比較例20~22よりも高い濃度を維持している。すなわち、空気ナノバブルを含むアルカリ廃水で浸漬した第2発酵原料5を用いる場合(比較例16)、メタンガス濃度は、空気ナノバブルを含むアルカリ廃水で浸漬した第2発酵原料5を用いる場合(比較例17)、空気ナノバブルを含む水道水で浸漬した第2発酵原料5を用いる場合(比較例18)、空気ナノバブルを含まない浸漬用水で浸漬した第2発酵原料5を用いる場合(比較例19~21)、及び浸漬用水で浸漬しない第2発酵原料5を用いる場合(比較例22)と比べて高い傾向にあることがわかった。また、空気ナノバブルを含まない場合においても同様に、アルカリ廃水で浸漬した第2発酵原料5を用いる場合(比較例19)、メタンガス濃度は、アルカリ水で浸漬した第2発酵原料5を用いる場合(比較例20)、水道水で浸漬した第2発酵原料5を用いる場合(比較例21)及び浸漬用水で浸漬しない第2発酵原料5を用いる場合(比較例22)と比べて高い傾向にあることがわかった。
以上の実験結果によれば、本発明は、アルカリ廃水で浸漬されたバイオマス資源をさらに効率よくメタン発酵させることができ、VSあたりのバイオガス生成量のさらなる向上を図ることができる。また、メタンガス濃度が高められ、バイオガスの有用性向上を図ることができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
1 メタン発酵装置
10 メタン発酵槽
11 第1収容部
111 消化液排出口
112 バイオガス供給口
12 第2収容部
121 消化液供給口
122 バイオガス排出口
13 分離機構
130 孔
21 第1接続配管
211 送水ポンプ
22 第2接続配管
221 ダイアフラムポンプ
3 バイオガス採集タンク
4 第1発酵原料
5 第2発酵原料
6 気泡発生装置
S11 消化液供給工程
S12 分離工程
S13 バイオガス供給工程

Claims (7)

  1. 発酵原料のうちTS(固形物濃度)が15%未満の第1発酵原料を収容する第1収容部と、
    前記第1収容部よりも上層に設けられ、発酵原料のうちTSが15%以上の第2発酵原料を収容し、前記第1収容部に収容された前記第1発酵原料が供給されてバイオガスを生成する第2収容部と、
    前記第1収容部と前記第2収容部との間に設けられ、前記第2収容部に供給された前記第1発酵原料のうち、少なくとも一部を前記第1収容部と前記第2収容部とを連通する孔を通過させて前記第1収容部へ落下させることにより前記第2発酵原料と分離する分離機構と、
    を備え、
    前記第1収容部は、前記第2収容部において生成された前記バイオガスが供給され
    前記第1収容部と前記第2収容部とは、一のメタン発酵槽の一部の区域であること
    を特徴とするメタン発酵装置。
  2. 少なくとも酸素を含む気体を前記第2収容部に供給される前記第1発酵原料に吹き込むことにより、酸素ナノバブル水を生成する気泡発生装置をさらに備え、
    前記第2収容部は、前記気泡発生装置により生成された前記酸素ナノバブル水が供給されること
    を特徴とする請求項1に記載のメタン発酵装置。
  3. 前記第1収容部又は前記第2収容部にアルカリ廃水を供給するアルカリ廃水供給装置をさらに備えること
    を特徴とする請求項1又は2に記載のメタン発酵装置。
  4. 少なくとも酸素を含む気体を前記第1収容部又は前記第2収容部に供給される前記アルカリ廃水に吹き込むことにより、酸素ナノバブル水を生成する気泡発生装置をさらに備え、
    前記第1収容部又は前記第2収容部は、前記気泡発生装置により生成された前記酸素ナノバブル水が供給されること
    を特徴とする請求項3に記載のメタン発酵装置。
  5. 前記第1収容部は、前記第1収容部に収容された前記第1発酵原料から消化液を生成し、
    前記第2収容部は、前記第1収容部において生成された前記消化液が供給され、
    前記分離機構は、前記第2収容部に供給された前記消化液のうち、少なくとも一部を前記第1収容部へ流下させることにより前記第2発酵原料と分離すること
    を特徴とする請求項1又は2に記載のメタン発酵装置。
  6. 少なくとも酸素を含む気体を前記第2収容部に供給される前記消化液に吹き込むことにより、酸素ナノバブル水を生成する気泡発生装置をさらに備え、
    前記第2収容部は、前記気泡発生装置により生成された前記酸素ナノバブル水が供給されること
    を特徴とする請求項5に記載のメタン発酵装置。
  7. 第1収容部と当該第1収容部よりも上層の第2収容部とを一部の区域とする一のメタン発酵槽において、発酵原料のうちTS(固形物濃度)が15%未満の第1発酵原料を収容する前記第1収容部に収容された前記第1発酵原料を、前記発酵原料のうちTSが15%以上の第2発酵原料を収容する前記第2収容部に供給してバイオガスを生成する原料供給工程と、
    前記原料供給工程において前記第2収容部に供給された前記第1発酵原料のうち、少なくとも一部を前記第1収容部と前記第2収容部とを連通する孔を通過させて前記第1収容部へ落下させることにより前記第2発酵原料と分離する分離工程と、
    前記原料供給工程において生成されたバイオガスを前記第1収容部に供給するバイオガス供給工程と、
    を備えること
    を特徴とするメタン発酵方法。
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