JP7398144B2 - 電位差発生デバイス - Google Patents

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Description

本発明は、互いに異なる水素吸蔵金属等からなり、かつ厚さがナノサイズ(1000nm未満)でなる第1層と第2層とが積層されたナノ構造体を備えた電位差発生デバイスに関する。
近年、水素吸蔵金属等により形成されたナノ構造体が水素の吸蔵と放出とを行うことにより熱を発生する発熱現象が報告されている(非特許文献1参照)。この発熱現象は、化学反応よりも大きい熱エネルギーを得ることができるため、有効な熱源あるいは電源への利用が期待されている。
本願発明者等は、水素吸蔵金属等からなる台座と、台座の表面に形成された多層膜とを有する発熱体を備えた発熱装置を先に提案した(特許文献1参照)。多層膜は、水素吸蔵金属等からなり、かつ厚さが1000nm未満でなる第1層と、第1層とは異種の水素吸蔵金属等からなり、かつ厚さが1000nm未満でなる第2層とが積層され、第1層と第2層との間に異種物質界面が形成された構成を有している。上記のような水素吸蔵金属等により形成された発熱体は、ヒータにより加熱されることで、異種物質界面を水素が量子拡散により透過または拡散し、熱を発生させる。
A. Kitamura, A. Takahashi, K. Takahashi, R. Seto, T. Hatano, Y. Iwamura, T. Itoh, J. Kasagi, M. Nakamura, M. Uchimura, H. Takahashi, S. Sumitomo, T. Hioki, T. Motohiro, Y. Furuyama, M. Kishida, H. Matsune, "Excess heat evolution from nanocomposite samples under exposure to hydrogen isotope gases", International Journal of Hydrogen Energy 43 (2018) 16187-16200.
国際公開第2018/230447号
特許文献1の発熱体が発生する熱は、例えばタービンを用いることで電力に変換して利用することができる。しかしながら、熱を電力に変換する際に熱損失が発生するという問題がある。このため、熱を介さず、直接的に発電を行うことができる新たな発電デバイスの開発が望まれている。
本願発明者等は、様々な研究の結果、水素吸蔵金属等により形成されたナノ構造体に水素を吸蔵させ、水素を量子拡散させることにより、ナノ構造体の表面から荷電粒子が放出されるという新たな知見を得た。本発明は、このような新たな知見に基づいてなされたものであり、直接発電を行うことができる電位差発生デバイスを提供することを目的とする。
本発明の電位差発生デバイスは、水素吸蔵金属、水素吸蔵合金、またはプロトン導電体からなる台座と、前記台座に設けられた多層膜とを有するナノ構造体と、前記ナノ構造体に設けられた第1の電極と、前記多層膜に対向して設けられた第2の電極とを備え、前記多層膜は、水素吸蔵金属または水素吸蔵合金からなり、かつ厚さが1000nm未満でなる第1層と、前記第1層とは異種の水素吸蔵金属、水素吸蔵合金、またはセラミックスからなり、かつ厚さが1000nm未満でなる第2層とが積層され、前記第1層と前記第2層との間に異種物質界面が形成された構成を有し、前記ナノ構造体が加熱されることで、前記異種物質界面を水素が量子拡散により透過または拡散し、前記多層膜から荷電粒子を放出し、前記荷電粒子を前記第2の電極に捕捉させることで、前記第1の電極と前記第2の電極との間に電位差を生じさせる。
本発明によれば、水素吸蔵金属等により形成されたナノ構造体に水素を吸蔵させ、水素を量子拡散させることにより直接発電を行うことができる電位差発生デバイスを提供することができる。
電位差発生デバイスの概略を示す概略図である。 ナノ構造体の構成を示す断面図である。 ナノ構造体が荷電粒子を放出するメカニズムを説明するための説明図である。 別のナノ構造体の構成を示す断面図である。 更に別のナノ構造体の構成を示す断面図である。 検証試験を行った実験装置の概略を示す概略図である。 実験装置のナノ構造体およびヒータの構成を説明するための説明図である。
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態を説明する。以下の説明および図面では、共通の構成については共通の符号を付している。共通の符号を付した構成については適宜説明を省略する。
[電位差発生デバイス]
図1において、電位差発生デバイス10は、容器11、ヒータ12、電源13、温度センサ14、制御部15、ナノ構造体16A、第1の電極17、および第2の電極18を備えている。電位差発生デバイス10は、ナノ構造体16Aが水素を吸蔵した状態でヒータ12による加熱が行われることで、水素の量子拡散が起きる過程で放出された荷電粒子を捕捉し、第1の電極17と第2の電極18との間に電位差を生じさせるように構成されている。第1の電極17と第2の電極18との間に電力で駆動する各種電気機器等の負荷が接続されることで、電位差に起因した電流が負荷に流れる。「電位差発生デバイス」は、互いに異なる水素吸蔵金属等からなり、かつ厚さがナノサイズ(1000nm未満)でなる第1層と第2層とが積層されたナノ構造体に水素を吸蔵させ、第1層と第2層との間に形成された異種物質界面に水素を量子拡散させることにより直接発電を行うことができる新規な発電デバイスであり、「量子水素電池」とも言う。電位差発生デバイス10の詳細な構成を以下に説明する。
容器11は、上部11aと底部11bと側部11cにより構成された中空の容器である。容器11は、上部11aと底部11bの少なくともいずれかが側部11cに対し着脱自在に構成されており、側部11cに対し上部11aと底部11bとが取り付けられることにより密閉される。本実施形態では、容器11の内部に、ヒータ12、電源13、温度センサ14、制御部15、ナノ構造体16A、第1の電極17、および第2の電極18が収容されるが、電源13と制御部15は容器11の外部に設けてもよい。容器11の内部には、当該容器11の内部の圧力を検出する圧力センサ(図示なし)が設けられている。真空ポンプ等の真空発生装置(図示なし)を用いることで、容器11の内部が真空状態とされる。水素系ガスを貯蔵した水素タンク等の水素導入装置(図示なし)を用いることで、容器11の内部に水素系ガスが導入される。水素系ガスとは、水素の同位体を含むガスのことである。水素系ガスとしては、重水素ガスと軽水素ガスとの少なくともいずれかが用いられる。軽水素ガスは、天然に存在する軽水素と重水素の混合物、すなわち、軽水素の存在比が99.985%であり、重水素の存在比が0.015%である混合物を含む。以降の説明において、軽水素と重水素とを区別しない場合には「水素」と記載する。
容器11は、正極端子21と負極端子22とを有する。図1では、上部11aに負極端子22が設けられ、底部11bに正極端子21が設けられているが、正極端子21と負極端子22の位置は特に限定されず適宜設計することができる。容器11は、炭素鋼、オーステナイト系ステンレス鋼、耐熱性非鉄合金鋼等の耐熱性および耐圧性を有する材料や、Ni、Cu、Mo等の輻射熱を反射する材料により形成される。容器11の形状は、特に限定されず、円筒状、楕円筒状、角筒状等としてよい。
ヒータ12は、供給される電力に応じて昇温し、ナノ構造体16Aを加熱する。ヒータ12は、本実施形態では、セラミックスで形成された基体の内部に導体が設けられた構成を有する板状のセラミックヒータである。電源13は、ヒータ12と電気的に接続されており、ヒータ12に対し電力を供給する。温度センサ14は、ナノ構造体16Aの温度を検出する。温度センサ14は、本実施形態では、ヒータ12に内蔵された熱電対であり、ヒータ12を介してナノ構造体16Aの温度を検出するように構成されている。制御部15は、電源13および温度センサ14と電気的に接続されており、温度センサ14の検出結果に基づき電源13の出力を制御し、ナノ構造体16Aを所望の温度とする。
ナノ構造体16Aは、水素吸蔵金属、水素吸蔵合金、またはプロトン導電体からなる台座24と、台座24に設けられた多層膜(ナノ構造膜とも言う)25Aとを有する。図1では台座24の一方の面に多層膜25Aが設けられているが、台座24の両面に多層膜25Aが設けられてもよい。
ナノ構造体16Aは、本実施形態では板状の部材である。ナノ構造体16Aは、遮蔽板27を介して、ヒータ12の両面に設けられている。遮蔽板27は、一方の面がナノ構造体16Aの台座24と接触し、他方の面がヒータ12と接触している。遮蔽板27は、例えばSiO板が用いられる。ナノ構造体16Aは、ホルダー28により、ヒータ12および遮蔽板27と一体化されている。ホルダー28は、ナノ構造体16Aの多層膜25Aの表面(図1における台座24と反対側の面)が露出するように、ナノ構造体16Aを保持する。ホルダー28は、例えばセラミックスにより形成される。
第1の電極17は、ナノ構造体16Aに設けられている。図1ではナノ構造体16Aの台座24に第1の電極17が設けられている。第1の電極17は、負極端子22と電気的に接続されている。第1の電極17は、導電性、耐熱性、および耐圧性を有する材料により形成される。第1の電極17の材料としては、例えば、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、バナジウム(V)、チタン(Ti)、ニオブ(Nb)、鉄(Fe)、モリブデン(Mo)、白金(Pt)、ジルコニウム(Zr)、タンタル(Ta)、タングステン(W)等とこれらの金属をベースとした合金が挙げられる。
第2の電極18は、多層膜25Aに対向して設けられている。第2の電極18は、多層膜25Aの表面に対し直交する方向(図1における紙面左右方向)に所定の隙間をあけて配置されている。本実施形態では、第2の電極18は、容器11の内壁に固定された図示しない支持部材により支持されている。第2の電極18は、正極端子21と電気的に接続されている。第2の電極18は、導電性、耐熱性、および耐圧性を有し、かつ、後述する多層膜25Aの表面から放出された荷電粒子を捕捉できる材料により形成される。第2の電極18の材料としては、例えば、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、モリブデン(Mo)、白金(Pt)、タンタル(Ta)、タングステン(W)等とこれらの金属をベースとした合金が挙げられる。
[ナノ構造体]
図2を用いて、ナノ構造体16Aの構成を詳細に説明する。
台座24を構成する材料の一例を以下に記載する。水素吸蔵金属としては、例えば、Ni、Pd、V、Nb、Ta、Ti等が用いられる。水素吸蔵合金としては、例えば、LaNi、CaCu、MgZn、ZrNi、ZrCr、TiFe、TiCo、MgNi、MgCu等が用いられる。プロトン導電体としては、例えば、BaCeO系(例えばBa(Ce0.950.05)O3-6)、SrCeO系(例えばSr(Ce0.950.05)O3-6)、CaZrO系(例えばCaZr0.950.053-α)、SrZrO系(例えばSrZr0.90.13-α)、βAl、βGa等が用いられる。台座24は、多孔質体または水素透過膜により構成してもよい。多孔質体は、水素系ガスの通過を可能とするサイズの孔を有する。多孔質体は、例えば、金属、非金属、セラミックス等により形成される。多孔質体は、水素系ガスと多層膜25Aとの反応を阻害しない材料により形成されることが好ましい。水素透過膜は、例えば、水素吸蔵金属または水素吸蔵合金により形成される。水素透過膜は、メッシュ状のシートを有するものを含む。
多層膜25Aは、水素吸蔵金属または水素吸蔵合金からなり、かつ厚さが1000nm未満でなる第1層31と、第1層31とは異種の水素吸蔵金属、水素吸蔵合金、またはセラミックスからなり、かつ厚さが1000nm未満でなる第2層32とが積層され、第1層31と第2層32との間に異種物質界面36が形成された構成を有する。
多層膜25Aは、図2では、台座24の表面に第1層31と第2層32とがこの順で交互に積層された構成を有しているが、これに限られず、台座24の表面に第2層32と第1層31とがこの順で交互に積層された構成を有するものでもよい。第1層31および第2層32の各層数は適宜変更してもよい。多層膜25Aとしては、第1層31と第2層32とをそれぞれ1層以上有し、異種物質界面36が1つ以上形成されていればよい。
第1層31は、例えば、Ni、Pd、Cu、Mn、Cr、Fe、Mg、Co、これらの合金のうち、いずれかにより形成される。第1層31を形成する合金は、Ni、Pd、Cu、Mn、Cr、Fe、Mg、Coのうち2種以上からなる合金であることが好ましい。第1層31を形成する合金として、Ni、Pd、Cu、Mn、Cr、Fe、Mg、Coに添加元素を添加させた合金を用いてもよい。
第2層32は、例えば、Ni、Pd、Cu、Mn、Cr、Fe、Mg、Co、これらの合金、SiCのうち、いずれかにより形成される。第2層32を形成する合金とは、Ni、Pd、Cu、Mn、Cr、Fe、Mg、Coのうち2種以上からなる合金であることが好ましい。第2層32を形成する合金として、Ni、Pd、Cu、Mn、Cr、Fe、Mg、Coに添加元素を添加させた合金を用いてもよい。
第1層31と第2層32との組み合わせとしては、元素の種類を「第1層31-第2層32」として表すと、Pd-Ni、Ni-Cu、Ni-Cr、Ni-Fe、Ni-Mg、Ni-Coであることが好ましい。第2層32をセラミックスとした場合は、「第1層31-第2層32」が、Ni-SiCであることが好ましい。
第1層31の厚みと第2層32の厚みは、それぞれ1000nm未満であることが好ましい。第1層31と第2層32の各厚みが1000nm以上となると、水素が多層膜25Aを透過し難くなる。また、第1層31と第2層32の各厚みが1000nm未満であることにより、バルクの特性を示さないナノ構造を維持することができる。第1層31と第2層32の各厚みは、500nm未満であることがより好ましい。第1層31と第2層32の各厚みが500nm未満であることにより、完全にバルクの特性を示さないナノ構造を維持することができる。
ナノ構造体16Aに対し水素系ガスが供給することで、ナノ構造体16Aの台座24および多層膜25Aに水素が高密度に吸蔵される。ナノ構造体16Aは、水素系ガスの供給が停止されても、台座24および多層膜25Aに水素を吸蔵した状態を維持できる。ナノ構造体16Aが加熱されると、台座24および多層膜25Aに吸蔵されている水素がホッピングしながら量子拡散する。水素は軽く、ある物質Aと物質Bの水素が占めるサイト(オクトヘドラルやテトラヘドラルサイト)をホッピングしながら量子拡散していくことが分かっている。
図3は、面心立法構造の水素吸蔵金属により形成された第1層31および第2層32を有するナノ構造体16Aにおいて、第1層31の金属格子中の水素原子が、異種物質界面36を透過し、第2層32の金属格子中に移動する様子を示している。
図3に示すように、ナノ構造体16Aが加熱されることで、第1層31と第2層32との間に形成された異種物質界面36を水素が量子拡散により透過または拡散し、多層膜25Aから荷電粒子CPが放出される。本実施形態において、荷電粒子CPは、正の電荷を帯びたイオンである。荷電粒子CPは、ナノ構造体16Aを構成する元素(Ni、Cu等)の原子核が飛び出したものと考えられる。多層膜25Aから放出された荷電粒子CPは、多層膜25Aに対向して設けられた第2の電極18(図1参照)に捕捉される。この結果、荷電粒子CPを捕捉した第2の電極18が正電位となり、ナノ構造体16Aの台座24に設けられた第1の電極17が負電位となり、第1の電極17と第2の電極18との間に電位差が生じる。
また、ナノ構造体16Aが加熱されることで、異種物質界面36を水素が量子拡散により透過または拡散し、当該ナノ構造体16Aを加熱するときの温度以上の熱(以下、過剰熱という)が発生する。
ナノ構造体16Aの製造方法の一例を説明する。まず板状に形成された台座24を準備し、次にスパッタリング法を用いて台座24上に多層膜25Aを形成する。これにより、板状のナノ構造体16Aを製造できる。台座24を形成する際は、第1層31と第2層32の各層よりも厚めに形成することが好ましい。台座24の材料としてはNiが好ましい。第1層31と第2層32は、真空状態で連続的に形成することが好ましい。これにより第1層31と第2層32との間に自然酸化膜が形成されず、異種物質界面36のみが形成される。ナノ構造体16Aの製造方法としては、スパッタリング法に限られず、蒸着法、湿式法、溶射法、電気めっき法等を用いることができる。
ナノ構造体16Aは、本実施形態では板状に形成されているが、これに限定されない。ナノ構造体は、例えば、筒状または有底筒状に形成されてもよい。有底筒状のナノ構造体の製造方法の一例を説明する。まず有底筒状に形成された台座を準備し、次に湿式成膜法を用いて台座の外面に多層膜を形成する。これにより、有底筒状のナノ構造体を製造できる。湿式成膜法としては、スピンコート法、スプレーコート法、ディッピング法等が用いられる。また、多層膜は、ALD法(Atomic Layer Deposition)を用いて形成してもよいし、台座を回転させる回転機構を備えたスパッタリング装置を用いて、台座を回転させながら、台座に多層膜を形成してもよい。なお、多層膜は、台座の外面に設ける場合に限られず、台座の内面、または台座の両面に設けてもよい。筒状のナノ構造体も同様の製造方法により製造することができる。
ナノ構造体16Aは、本実施形態では、台座24と多層膜25Aとで構成されているが、これに限られない。
図4は、別のナノ構造体16Bの構成を示す断面図である。図4に示すように、ナノ構造体16Bは、台座24と、台座24に設けられた多層膜25Bとを有する。図4では台座24の一方の面に多層膜25Bが設けられているが、台座24の両面に多層膜25Bが設けられてもよい。
多層膜25Bは、第1層31と、第2層32と、第1層31および第2層32とは異種の水素吸蔵金属、水素吸蔵合金、またはセラミックスからなり、かつ厚さが1000nm未満でなる第3層33とが積層され、第1層31と第3層33との間に異種物質界面37が形成された構成を有する。
多層膜25Bは、図4では、台座24の表面に、第1層31、第2層32、第1層31、第3層33が順に積層された構成を有しているが、これに限られず、台座24の表面に第2層32と第3層33とが任意の順に配され、かつ第2層32と第3層33との間に第1層31が設けられた構成を有するものであればよい。例えば、多層膜25Bは、台座24の表面に、第1層31、第3層33、第1層31、第2層32が順に積層された構成を有するものでもよい。第1層31、第2層32、および第3層33の各層数は適宜変更してもよい。多層膜25Bとしては、第3層33を1層以上有し、異種物質界面37が1つ以上形成されていればよい。
第3層33は、例えば、Ni、Pd、Cu、Cr、Fe、Mg、Co、これらの合金、SiC、CaO、Y、TiC、LaB、SrO、BaOのうちいずれかにより形成される。第3層33を形成する合金は、Ni、Pd、Cu、Cr、Fe、Mg、Coのうち2種以上からなる合金であることが好ましい。第3層33を形成する合金として、Ni、Pd、Cu、Cr、Fe、Mg、Coに添加元素を添加させた合金を用いてもよい。
特に、第3層33は、CaO、Y、TiC、LaB、SrO、BaOのいずれかにより形成されることが好ましい。CaO、Y、TiC、LaB、SrO、BaOのいずれかにより形成される第3層33を有するナノ構造体16Bは、水素の吸蔵量が増加し、異種物質界面36および異種物質界面37を透過する水素の量が増加し、荷電粒子CPの放出量が増加するとともに、過剰熱の高出力化を図れる。CaO、Y、TiC、LaB、SrO、BaOのいずれかにより形成される第3層33は、厚みが10nm以下であることが好ましい。第3層33の厚みが10nm以下であることにより、水素を容易に透過させ、かつ、透過する水素の量をより増加できる。CaO、Y、TiC、LaB、SrO、BaOのいずれかにより形成される第3層33は、完全な膜状に形成されずに、アイランド状に形成されてもよい。また、第1層31と第3層33は、真空状態で連続的に形成することが好ましい。これにより第1層31と第3層33との間に自然酸化膜が形成されず、異種物質界面37のみが形成される。
第1層31と第2層32と第3層33との組み合わせとしては、元素の種類を「第1層31-第3層33-第2層32」として表すと、Pd-CaO-Ni、Pd-Y-Ni、Pd-TiC-Ni、Pd-LaB-Ni、Ni-CaO-Cu、Ni-Y-Cu、Ni-TiC-Cu、Ni-LaB-Cu、Ni-Co-Cu、Ni-CaO-Cr、Ni-Y-Cr、Ni-TiC-Cr、Ni-LaB-Cr、Ni-CaO-Fe、Ni-Y-Fe、Ni-TiC-Fe、Ni-LaB-Fe、Ni-Cr-Fe、Ni-CaO-Mg、Ni-Y-Mg、Ni-TiC-Mg、Ni-LaB-Mg、Ni-CaO-Co、Ni-Y-Co、Ni-TiC-Co、Ni-LaB-Co、Ni-CaO-SiC、Ni-Y-SiC、Ni-TiC-SiC、Ni-LaB-SiCであることが好ましい。
ナノ構造体16Bが加熱されることで、異種物質界面36および異種物質界面37を水素が量子拡散により透過または拡散し、多層膜25Bから荷電粒子CPが放出されるとともに、過剰熱が発生する。ナノ構造体16Bは、ナノ構造体16Aと同様の製造方法により製造できる。電位差発生デバイス10は、ナノ構造体16Aの代わりに、ナノ構造体16Bを備えてもよい。
図5は、更に別のナノ構造体16Cの構成を示す断面図である。図5に示すように、ナノ構造体16Cは、台座24と、台座24に設けられた多層膜25Cとを有する。図5では台座24の一方の面に多層膜25Cが設けられているが、台座24の両面に多層膜25Cが設けられてもよい。
多層膜25Cは、第1層31と、第2層32と、第3層33と、第1層31、第2層32および第3層33とは異種の水素吸蔵金属、水素吸蔵合金、またはセラミックスからなり、かつ厚さが1000nm未満でなる第4層34とが積層され、第1層31と第4層34との間に異種物質界面38が形成された構成を有する。
多層膜25Cは、図5では、台座24の表面に、第1層31、第2層32、第1層31、第3層33、第1層31、第4層34が順に積層された構成を有しているが、これに限られず、台座24の表面に第2層32と第3層33と第4層34とが任意の順に配され、かつ第2層32と第3層33と第4層34との間に第1層31がそれぞれ設けられた構成を有するものであればよい。例えば、多層膜25Cは、台座24の表面に、第1層31、第4層34、第1層31、第3層33、第1層31、第2層32の順に積層された構成を有するもの等でもよい。第1層31、第2層32、第3層33、および第4層34の各層数は適宜変更してもよい。多層膜25Cとしては、第4層34を1層以上有し、異種物質界面38が1つ以上形成されていればよい。
第4層34は、例えば、Ni、Pd、Cu、Cr、Fe、Mg、Co、これらの合金、SiC、CaO、Y、TiC、LaB、SrO、BaOのうちいずれかにより形成される。第4層34を形成する合金は、Ni、Pd、Cu、Cr、Fe、Mg、Coのうち2種以上からなる合金であることが好ましい。第4層34を形成する合金として、Ni、Pd、Cu、Cr、Fe、Mg、Coに添加元素を添加させた合金を用いてもよい。
特に、第4層34は、CaO、Y、TiC、LaB、SrO、BaOのいずれかにより形成されることが好ましい。CaO、Y、TiC、LaB、SrO、BaOのいずれかにより形成される第4層34を有するナノ構造体16Cは、水素の吸蔵量が増加し、異種物質界面36、異種物質界面37、および異種物質界面38を透過する水素の量が増加し、荷電粒子CPの放出量が増加するとともに、過剰熱の高出力化を図れる。CaO、Y、TiC、LaB、SrO、BaOのいずれかにより形成される第4層34は、厚みが10nm以下であることが好ましい。第4層34の厚みが10nm以下であることにより、水素を容易に透過させ、かつ、透過する水素の量をより増加できる。CaO、Y、TiC、LaB、SrO、BaOのいずれかにより形成される第4層34は、完全な膜状に形成されずに、アイランド状に形成されてもよい。また、第1層31と第4層34は、真空状態で連続的に形成することが好ましい。これにより第1層31と第4層34との間に自然酸化膜が形成されず、異種物質界面38のみが形成される。
第1層31と第2層32と第3層33と第4層34との組み合わせとしては、元素の種類を「第1層31-第4層34-第3層33-第2層32」として表すと、Ni-CaO-Cr-Fe、Ni-Y-Cr-Fe、Ni-TiC-Cr-Fe、Ni-LaB-Cr-Feであることが好ましい。
ナノ構造体16Cが加熱されることで、異種物質界面36、異種物質界面37、および異種物質界面38を水素が量子拡散により透過または拡散し、多層膜25Cから荷電粒子CPが放出されるとともに、過剰熱が発生する。ナノ構造体16Cは、ナノ構造体16Aと同様の製造方法により製造できる。電位差発生デバイス10は、ナノ構造体16Aの代わりに、ナノ構造体16Cを備えてもよい。
[作用および効果]
電位差発生デバイス10は、水素吸蔵金属等により形成され、かつ厚さがナノサイズ(1000nm未満)でなる第1層31と第2層32とが積層されたナノ構造体16Aを備え、ナノ構造体16Aの台座24に第1の電極17が設けられ、ナノ構造体16Aの多層膜25Aに対向するように第2の電極18が設けられている。ナノ構造体16Aが加熱されることで、第1層31と第2層32との間に形成された異種物質界面36を水素が量子拡散により透過または拡散し、多層膜25Aから荷電粒子CPが放出される。放出された荷電粒子CPが第2の電極18に捕捉されることで、第1の電極17と第2の電極18との間に電位差が生じる。第1の電極17と第2の電極18との間に負荷を接続することで、電位差に起因した電流が負荷に流れる。以上のように、電位差発生デバイス10は、ナノ構造体16Aに水素を吸蔵させ、水素を量子拡散させることにより直接発電を行うことができる。
[検証試験]
図6に示す実験装置50を作製し、多層膜25Aから荷電粒子CPが放出されているか否かについて検証試験を行った。
実験装置50は、容器11、ヒータ12、電源13、温度センサ14、制御部15、ナノ構造体16A、ガス導入部51、ガス排出部52、圧力センサ53、および温度センサ54を備えている。実験装置50では、2つのナノ構造体16Aを用いた。各々のナノ構造体16Aは、板状の部材であり、平面視において一辺の長さが25mmの正方形に形成されている。図6では、2つのナノ構造体16Aのうち、一方のナノ構造体16Aのみが示されており、他方のナノ構造体16Aは紙面奥側に隠れている。
容器11は、コバールガラス等の赤外線透過材料で形成されたビューポート11dを有している。ヒータ12は、厚さ2.2mmの板状のセラミックヒータであり、平面視において一辺の長さが25mmの正方形に形成されている。ヒータ12は、温度センサ14を内蔵している。ヒータ12は、容器11の外部に設けられた電流電圧計56を介して、電源13と接続している。電流電圧計56は、電源13からヒータ12へ印加する入力電力を検出する。
ガス導入部51は、水素系ガスを貯留するガス貯留部57と、ガス貯留部57と容器11とを接続するガス導入管58と、ガス導入管58に設けられ、水素系ガスの流量および圧力を調整する調整バルブ59、60とを有している。
ガス排出部52は、ドライポンプ等の真空発生装置61と、真空発生装置61と容器11とを接続するガス排出管62と、水素系ガスの流量および圧力を調整する調整バルブ63とを有している。
圧力センサ53は、容器11の内部の圧力を検出する。圧力センサ53は、図示していないが制御部15と電気的に接続されている。制御部15は、図示していないが真空発生装置61と電気的に接続されており、圧力センサ53の検出結果に基づき真空発生装置61を制御し、容器11の内部の真空排気を行う。これにより、容器11の内部の圧力が制御される。
温度センサ54は、容器11の外部に設けられた赤外線放射温度計であり、容器11のビューポート11dを介して、ナノ構造体16Aの表面の温度を検出する。温度センサ54は、2つのナノ構造体16Aの温度をそれぞれ検出するために2つ設けられている。図6では、2つのナノ構造体16Aのうちの一方のナノ構造体16Aの温度を検出する温度センサ54を示している。2つのナノ構造体16Aのうちの他方のナノ構造体16Aの温度を検出する温度センサ54については図示を省略している。
図7は、図6に示す実験装置50のナノ構造体16Aおよびヒータ12の構成を説明するための説明図である。図7に示すように、ナノ構造体16Aは、ヒータ12の両面に1つずつ配置した。ヒータ12と各々のナノ構造体16Aとの間には遮蔽板27を設けた。遮蔽板27は、厚さ0.3mmのSiO板を用いた。ナノ構造体16Aは、台座24をヒータ12側に向け、遮蔽板27に接触させた状態で、ホルダー28を用いてヒータ12と一体化した。台座24は、Niからなり、厚さ0.1mmのNi基板を用いた。ホルダー28は、フェローテックセラミックス社製のホトベール(登録商標)を用いた。ホルダー28は、ナノ構造体16Aを構成する多層膜25Aの表面を露出させる円形の開口を有している。ホルダー28の厚みtは1.5mmとし、開口の半径rは10mmとした。
検証試験の方法について説明する。まず、ナノ構造体16Aを容器11に導入し、容器11の内部の真空排気を行った。次に、ヒータ12でナノ構造体16Aをベーキングし、ナノ構造体16Aの表面に付着した水等を除去した。次に、容器11の内部へ水素系ガスを導入し、ナノ構造体16Aに水素を吸蔵させた。水素系ガスを導入する際の条件は、80℃~500℃、100Pa以上とした。次に、容器11の内部の真空排気を行うとともに、ヒータ12を昇温し、ナノ構造体16Aの表面温度を600℃とした。
検証試験では、水素系ガスの純度またはナノ構造体16Aの構成を変えて、実験1~実験4を行った。実験1に用いたナノ構造体16Aは、台座24の表面に、Cuからなり厚さ2nmの第1層31とNiからなり厚さ14nmの第2層32とをそれぞれ6層積層した多層膜25Aを形成したものである。実験1に用いた水素系ガスの純度は、7N(99.99999%以上)とした。実験2は、実験1と同じ条件で行った。実験3は、水素系ガスの純度を5N(99.999%以上)としたこと以外は、実験1および実験2と同じ条件で行った。実験4は、Cuからなる第1層31の厚みを3nmとし、Niからなる第2層32の厚みを13nmとしたこと以外は、実験1および実験2と同じ条件で行った。
検証試験では、上記のようにヒータ12を用いてナノ構造体16Aを加熱することで、水素を量子拡散させ、荷電粒子CPを放出させた。荷電粒子CPの放出時間は、10日間とした。荷電粒子CPは、多層膜25Aの表面の中心から半球状に放出されると仮定した。ホルダー28の厚みtを1.5mm、開口の半径rを10mmとしたので、立体角Ωは、2πrt/(4πr/2)=t/r=0.15と求められる。荷電粒子CPがホルダー28に付着する付着率η(検出効率とも言う)は0.1とした。よって、立体角Ωに付着率ηを乗じて求められるΩηは、0.015である。
ナノ構造体16Aから放出されてホルダー28に付着した荷電粒子CPを、ICP-MS(Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometry)法により分析した。ICP-MS法では、多摩化学工業(株)製のTAMAPURE 硝酸AA-10を純水で5倍希釈した20mLの硝酸水溶液を用いて、ホルダー28に付着(捕捉)されている荷電粒子CPを溶離し、溶離液中の金属の濃度を測定した。この測定の結果、荷電粒子CPとしてCuとNiが多く放出されていること分かった。
(1)実験1の測定結果
表1は、実験1の測定結果をまとめたものである。
Figure 0007398144000001
表1において、「Cu(A)」と「Ni(A)」は一方のナノ構造体16AにおけるCuとNiについての測定結果を示し、「Cu(B)」と「Ni(B)」は他方のナノ構造体16AにおけるCuとNiについての測定結果を示す。濃度(ppb)は、ICP-MS法で検出された濃度である。濃度(mg/L)は、濃度(ppb)から算出した。溶液量は、ICP-MS法に用いた硝酸水溶液の量である。検出元素は、濃度×溶液量として算出した。検出元素モル数は、6.02×1023×検出元素/原子量として算出した。放出元素モル数は、検出元素モル数/立体角/付着率として算出した。
評価試験では、電流に基づく平均電気出力の評価(電流評価)と、総電力量に基づく平均電気出力の評価(エネルギー評価)とを行った。
表2は、実験1における電流評価とエネルギー評価の条件と結果をまとめたものである。平均のエネルギーを5MeVと想定し、電力への変換効率を10%とした。
Figure 0007398144000002
電流評価において、電流は、1.6×10-19×放出元素モル数×平均イオン価数/総放出時間として算出した。電流評価における平均電気出力は、想定エネルギー×電力変換効率×電流として算出した。エネルギー評価において、総電力量(J)は、電気素量(1.6×10-19)×放出元素モル数×平均イオン価数×想定エネルギーとして算出した。エネルギー評価における平均電気出力(W)は、総電力量×電力変換効率/総放出時間として算出した。実験1では、電流評価とエネルギー評価とのいずれにおいても、「Cu(A)」と「Ni(A)」と「Cu(B)」と「Ni(B)」との各平均電気出力を合計した電気出力は15.4(W)と求められた。
実験1の結果から、ナノ構造体16Aから荷電粒子CPが放出されることが確認できた。ナノ構造体16Aを用いて電位差発生デバイス10を構成することで、放出された荷電粒子CPが第2の電極18に捕捉され、第1の電極17と第2の電極18との間に電位差を生じさせることができる。
(2)実験2の測定結果
表3は、実験2の測定結果をまとめたものである。
Figure 0007398144000003
表4は、実験2における電流評価とエネルギー評価の条件と結果をまとめたものである。
Figure 0007398144000004
実験1と同様に、電流評価における平均電気出力と、エネルギー評価における平均電気出力とを算出した。実験2では、電流評価とエネルギー評価とのいずれにおいても、「Cu(A)」と「Ni(A)」と「Cu(B)」と「Ni(B)」の各平均電気出力を合計した電気出力は8.0(W)と求められた。
実験2の結果から、実験1と同様に、ナノ構造体16Aから荷電粒子CPが放出されることが確認できた。ナノ構造体16Aを用いて電位差発生デバイス10を構成することで、放出された荷電粒子CPが第2の電極18に捕捉され、第1の電極17と第2の電極18との間に電位差を生じさせることができる。
(3)実験3の測定結果
表5は、実験3の測定結果をまとめたものである。
Figure 0007398144000005
表6は、実験3における電流評価とエネルギー評価の条件と結果をまとめたものである。
Figure 0007398144000006
実験3では、電流評価とエネルギー評価とのいずれにおいても、「Cu(A)」と「Ni(A)」と「Cu(B)」と「Ni(B)」の各平均電気出力を合計した電気出力は0.7(W)と求められた。
実験3の結果から、実験1および実験2と同様に、ナノ構造体16Aから荷電粒子CPが放出されることが確認できた。ナノ構造体16Aを用いて電位差発生デバイス10を構成することで、放出された荷電粒子CPが第2の電極18に捕捉され、第1の電極17と第2の電極18との間に電位差を生じさせることができる。
水素系ガスの純度を5N(99.999%以上)とした実験3は、水素系ガスの純度を7N(99.99999%以上)とした実験1と比べると、得られる電気出力が低い。この結果から、水素系ガスに含まれるHO、CO、N等の不純物が荷電粒子CPの発生に影響を与えていることが分かった。水素系ガスに含まれる不純物の濃度を変えることで、荷電粒子CPの放出量を制御できる。電位差発生デバイス10を設計する際に、水素系ガスに含まれる不純物の濃度を変えることで、所望の電気出力を得ることができる。実験1~実験3の結果から、水素系ガスの純度は、5N以上7N以下が好ましいことが分かる。
(4)実験4の測定結果
表7は、実験4の測定結果をまとめたものである。
Figure 0007398144000007
表8は、実験4における電流評価とエネルギー評価の条件と結果をまとめたものである。
Figure 0007398144000008
実験4では、電流評価とエネルギー評価とのいずれにおいても、「Cu(A)」と「Ni(A)」と「Cu(B)」と「Ni(B)」の各平均電気出力を合計した電気出力は1.9(W)と求められた。
実験4の結果から、実験1~実験3と同様に、ナノ構造体16Aから荷電粒子CPが放出されることが確認できた。ナノ構造体16Aを用いて電位差発生デバイス10を構成することで、放出された荷電粒子CPが第2の電極18に捕捉され、第1の電極17と第2の電極18との間に電位差を生じさせることができる。
第1層31の厚みを3nmとし、第2層32の厚みを13nmとした実験4は、第1層31の厚みを2nmとし、第2層32の厚みを14nmとした実験1と比べると、得られる電気出力が低い。この結果から、第1層31の厚みと第2層32の厚みの比率が荷電粒子CPの発生に影響を与えていることが分かった。第1層31の厚みと第2層32の厚みの比率を変えることで、荷電粒子CPの放出量を制御できる。電位差発生デバイス10を設計する際に、第1層31の厚みと第2層32の厚みの比率を変えることで、所望の電気出力を得ることができる。
本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
電位差発生デバイス10は、上記実施形態ではヒータ12を用いてナノ構造体16Aを加熱するように構成されているが、これに限定されない。電位差発生デバイス10は、ヒータ12と電源13を用いる代わりに、車両や発電プラント等の廃熱を利用してナノ構造体16Aを加熱するように構成してもよい。例えば、廃熱により加熱された熱媒体が流れる流路を備えることで、熱媒体によりナノ構造体16Aを加熱することができる。この場合、制御部15は、温度センサ14で検出されたナノ構造体16Aの温度に基づき、熱媒体の流量を制御することで、ナノ構造体16Aを所望の温度とする。
ヒータ12は、上記実施形態では板状のセラミックヒータであるが、これに限定されず、筒状のヒータでもよい。ナノ構造体16Aが筒状または有底筒状に形成されている場合は、ナノ構造体16Aの内部に筒状のヒータを配置することで、ナノ構造体16Aを効率的に加熱できる。
第1の電極17は、上記実施形態ではナノ構造体16Aの台座24に設けられているが、これに限定されない。第1の電極17は、多層膜25Aに設けてもよい。第1の電極17は、例えば、シリコン基板に不純物をドープして導電性を付与したものを用いてもよい。また、台座24を導電性の材料で形成することにより、当該台座24を第1の電極として用いてもよい。
第2の電極18は、上記実施形態では容器11の内壁に固定された図示しない支持部材により支持されているが、これに限定されない。第2の電極18は、例えばホルダー28に支持されるように構成してもよい。また、ナノ構造体の多層膜の表面と第2の電極との間に絶縁体を別途設け、この絶縁体により第2の電極が支持されるように構成してもよい。第2の電極18は、例えば、シリコン基板に不純物をドープして導電性を付与したものを用いてもよい。
電位差発生デバイス10により得られる電力は各種の用途に用いることができる。例えば、コンパクトで可動部(回転体等)がないという電位差発生デバイス10の特徴を生かして、電気自動車等の移動体で現在バッテリー駆動している機器を常に充電する用途が考えられる。電位差発生デバイス10の容量を適切に選択することで、充電の必要が無いドローン、ロボット、電気自動車、潜水艦、飛行機、宇宙船等が実現することが期待できる。また、離島やジャングル、深海等のアクセスが容易でない場所での通信インフラ用の電源等への応用も可能である。
ナノ構造体16Aが発生する熱(過剰熱)は各種の用途に用いることができる。ナノ構造体16Aと熱的に接続された熱電変換部を用いることで、ナノ構造体16Aの熱を熱電変換部で電力に変換できる。熱電変換部で変換された電力は、ヒータ12に供給してもよい。電位差発生デバイス10は、熱電変換部で変換された電力をヒータ12に供給することで、省電力化が図れる。電位差発生デバイス10の始動時にのみ電源13をONとし、ナノ構造体16Aから荷電粒子CPが放出された後に電源13をOFFとした場合でも、熱電変換部で変換された電力を用いて電位差発生デバイス10を動かし続けることが可能となる。
ナノ構造体16Aが発生する過剰熱は、熱媒体を用いて回収することができる。熱媒体は、ナノ構造体16Aにより加熱され、高温となる。高温の熱媒体は、例えば、家庭用暖房、家庭用給湯器、自動車用ヒータ、農業用暖房機、ロードヒータ、海水淡水化用熱源、地熱発電補助熱源等に用いられる。熱媒体としては、気体または液体を用いることができ、熱伝導率に優れかつ化学的に安定したものが好ましい。気体としては、例えば、ヘリウムガス、アルゴンガス、水素ガス、窒素ガス、水蒸気、空気、二酸化炭素等が用いられる。液体としては、例えば、水、溶融塩(KNO(40%)-NaNO(60%)等)、液体金属(例えばPb)等が用いられる。また、熱媒体として、気体または液体に固体粒子を分散させた混相の熱媒体を用いてもよい。固体粒子は、金属、金属化合物、合金、セラミックス等である。金属としては、銅、ニッケル、チタン、コバルト等が用いられる。金属化合物としては、上記金属の酸化物、窒化物、ケイ化物等が用いられる。合金としては、ステンレス、クロムモリブデン鋼等が用いられる。セラミックスとしては、アルミナ等が用いられる。
ナノ構造体16Aが発生する過剰熱の用途としては、熱交換機や動力ユニット等が挙げられる。熱交換機としては、例えば、熱媒体と気体との間で熱交換を行う装置、熱媒体と液体との間で熱交換を行う装置、熱媒体と固体との間で熱交換を行う装置が挙げられる。熱媒体と気体との間で熱交換を行う装置は、空調、燃焼装置に供給する空気の予熱、乾燥用熱風や加熱用熱風の生成等に用いられる。燃焼装置としては、ボイラー、ロータリーキルン、金属の熱処理炉、金属加工用加熱炉、熱風炉、窯業用焼成炉、石油精製塔、乾留炉、乾燥炉等が挙げられる。熱媒体と液体との間で熱交換を行う装置は、ボイラーの熱源、油加熱、化学反応槽等に用いられる。熱媒体と固体との間で熱交換を行う装置は、二重管式ロータリー加熱機、二重管内における粒子状物質の加熱等に用いられる。動力ユニットとしては、ガスタービン、蒸気タービン、スターリングエンジン、ORCS(Organic Rankine Cycle System)等が挙げられる。
10 電位差発生デバイス
11 容器
12 ヒータ
13 電源
14 温度センサ
15 制御部
16A,16B,16C ナノ構造体
17 第1の電極
18 第2の電極
24 台座
25A,25B,25C 多層膜
31 第1層
32 第2層
33 第3層
34 第4層
36,37,38 異種物質界面

Claims (3)

  1. 水素吸蔵金属、水素吸蔵合金、またはプロトン導電体からなる台座と、前記台座に設けられた多層膜とを有するナノ構造体と、
    前記ナノ構造体に設けられた第1の電極と、
    前記多層膜に対向して設けられた第2の電極と
    を備え、
    前記多層膜は、水素吸蔵金属または水素吸蔵合金からなり、かつ厚さが1000nm未満でなる第1層と、前記第1層とは異種の水素吸蔵金属、水素吸蔵合金、またはセラミックスからなり、かつ厚さが1000nm未満でなる第2層とが積層され、前記第1層と前記第2層との間に異種物質界面が形成された構成を有し、
    前記ナノ構造体が加熱されることで、前記異種物質界面を水素が量子拡散により透過または拡散し、前記多層膜から荷電粒子を放出し、
    前記荷電粒子を前記第2の電極に捕捉させることで、前記第1の電極と前記第2の電極との間に電位差を生じさせる電位差発生デバイス。
  2. 前記ナノ構造体に供給される水素系ガスの純度は、5N以上7N以下である請求項1に記載の電位差発生デバイス。
  3. 前記ナノ構造体の温度を検出する温度センサと、
    前記ナノ構造体を加熱するヒータと、
    前記温度センサにより検出された温度に基づき、前記ヒータを制御する制御部と
    を備える請求項1に記載の電位差発生デバイス。
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