JP7396571B2 - 角膜インプラント - Google Patents

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Description

本説明は、被験者の角膜の曲率における不規則性を矯正することを目的とする角膜インプラントに関する。
角膜インプラントは、角膜に対して実質的に規則的な曲率を与えることにより、例えば視力またはコントラスト感度を損なう光学収差を低減または除去することをことが意図される最適な光学的状況を復元することを目的とする埋め込み型装置である。
曲率の不規則性により引き起こされる角膜収差を治療する既知であり今まで使用される治療方法には、以下のようなものがある。
1.コンタクトレンズ(LC):角膜の外部表面と直接接触するように配置されるレンズであり、異なる剛性および酸素透過性を有する材料で作られる。コンタクトレンズは、容易に適用可能であり、全体的な眼の屈折異常を正確に矯正することが可能であるが、コンタクトレンズを着用する被験者により感染されるリスク、レンズの表面との接触が原因で、高度の円錐角膜または結膜レベルでの免疫反応の発達した場合の不耐性などのいくつかの欠点を有する。
2.ICRS(角膜内リングセグメント):ポリマー材料、主にPMMAにおける、可変的な直径と厚さとを有する、円形リングのセグメント。角膜実質層の厚さに挿入されるこれらの装置は、軽度の近視(角膜の光学領域の平坦化に続く)または円錐角膜の治療を目的としている。ICRSは、インプラントの可逆性(容易に取り外し可能であること)および自由な光学領域の温存を保証する。しかしながら、ICRSは、角膜に規則的な曲率を与える能力が限定されており、押出のリスクが比較的高く、角膜の厚さに関して装置の厚さが大きいのに起因する角膜の前面または後面の不規則性を持続させ、並びにストローマ線維症を誘導する。
3.エキサイマーレーザを用いるアブレーション治療:25年間屈折分野において適用された技術であり、表面処理(PRK)とストローマ処理(LASIK)の両方として使用可能である。この技術を用いて角膜を規則化することは、組織の削減により生じる。この介入処理の主な利点は、角膜レベルで移植される異物が存在しないことである。しかしながら、アブレーション治療は、角膜後面の形状を変更させる可能性なしに、組織を取り除くことにより、角膜の前方面を再形成することのみが可能であり、これは、不規則であるときは、かなりの光学収差(円錐角膜の場合など)を引き起こし得る。更に、この治療は、残りの角膜の厚さが不十分な場合において、角膜の拡張を引き起こし得、角膜の厚さが限られている場合には適切な矯正が保証されない。
4.切開屈折手術技術を用いる治療(放射状角膜切開および弓形角膜切開):切開が行われた領域を屈曲させ、且つ、切開部位に隣接する領域を平坦化することを目的として、部分的に角膜の厚さの切開を実行すること。これらの技術は、角膜の厚さを低減させることがないが、本質的に屈折結果の予測性が低いことと、2次角膜拡張を誘導するリスクが高いこととを特徴とするので、アブレーション治療に対して有利であり得る。
1980年代以降、角膜の曲率を矯正するために、様々な種類の角膜インプラントが開発され、既知の技術の欠点を克服し得るようになった。
説明されたように、例えばUS-A-5 645 582,US-A-4 671 276,WO-A-2006/113634およびUS-A-2002/0013622において、全体リング角膜インプラントが開発された。
これらの角膜インプラント装置は、ICRSより良いが、それらは放射状断面でサイズが減ることが特徴であるので、角膜上に予め画定された曲率を与える能力が低下するという主な欠点を依然として有する。これは、それらが非常に屈曲されているとき、それらが移植された角膜部分を平坦化させることがそれらの主な役割であることを意味する。これらのリング構造の低減された幅は、それらが放射状方向に沿って非常に狭い表面上にそれらの作用を加えるので、それらが角膜に対して正確な形状を画定することを防止する。
中央開口部を備える円形の角膜インプラントが、例えば、US-A-2014/0074232に説明されている。例えば、WO-2011/069059, WO-A-93/12735およびUS-A-2006/0271185などのように、自由な中央孔を有するまたは光学レンズと結合されるように提供された不透明な円形マスクからなる他の種類の角膜インプラントが既知である。これらのインプラントは、例えば、老眼を矯正するために有用な戦略である人間の目の焦点の深さを増やすことを目的とする。中央開口部は、眼の視度を通過する近軸光線を選択することによりピンホールの役目を果たす。更に、これらの装置は、それらが移植される眼の解剖学的構造の曲率に従う構造を有する。
現在、角膜曲率の不規則性の十分な治療が可能な角膜インプラントはまだ利用可能ではない。
これらの仮定を考慮すると、したがって、既知の移植可能な角膜装置に対して角膜に実質的に規則的な曲率を与えることが可能、改善された且つより有効な解決手段が必要である。
本発明によると、上述の目的は、本説明の不可欠な部分を形成する添付請求項において具体的に想起されている解決手段のおかげで実現される。
本発明の一実施形態は、被験者の角膜の曲率における不規則性を矯正することを目的とする角膜インプラントに関し、ここでインプラントは、インプラントと接触することが意図される角膜部分に規則的な曲率を与えるように構成された略ドーム状の構造物を有する。構造物は、外周リングと内側網状構造とを備え、これらは順に、一連の固体部分と一連のボイド部分とを形成するように互いに交差する少なくとも1つの第1および1つの第2の一連のビームを備え、ここで、第1の一連のビームは、それぞれの第1端部によって外周リングに接続され、ここで網状構造のメッシュ内におけるボイド部分の総面積は、網状構造の表面積の50%から99.9%の間である。
本発明は、添付の図を参照して、非限定的な説明例により、ここで詳細に説明される:
本説明の角膜インプラントの2つの異なる実施形態の斜視図である。 本説明の対象である角膜インプラントの2つの異なる実施形態の斜視図である。 本説明の対象である角膜インプラントの2つの異なる実施形態の平面図である。 本説明の対象である角膜インプラントの2つの異なる実施形態の平面図である。 本説明の対象である角膜インプラントの異なる実施形態の断面図である。 本説明の対象である角膜インプラントの異なる実施形態の断面図である。
本発明はここで、非限定的な説明例により、詳細に説明される。
以下の説明では、実施形態の完全な理解を提供するために、多数の具体的な詳細が存在する。実施形態は、具体的な詳細の1または複数がなくても、または他の方法、コンポーネント、材料等によっても、実際に実装され得る。他の場合には、実施形態の特定の態様を不明瞭にすることを回避すべく、周知の構造、材料または動作は、示されないまたは詳細に説明されない。
本明細書の全体にわたって、「一実施形態」または「実施形態」に対する参照は、実施形態に関連して説明された特定の構成、構造または特徴が少なくとも一実施形態に含まれるということを意味する。したがって、この明細書の全体の様々な点における「特定の実施形態において」または「一実施形態において」という表現の出現は、必ずしも常に同じ実施形態を指すとは限らない。更に、特定の詳細、構造、または特徴は、1または複数の実施形態において、任意の適切な方法で組み合わせることができる。
ここで使用される見出しは、便宜上で使用されるものに過ぎず、実施形態の目的または意味を解釈するものではない。
本説明の対象である角膜インプラントは、角膜の不規則な構造を患う患者を治療することを目的とする。ここで説明される角膜インプラントは、実際に、その構造の剛性と、インプラント自体の3D構造を安定化することが可能な連続する外周リングの存在とのおかげで、角膜自体の病的な変形を矯正すべく角膜にその曲率を与えることが可能である。
さらに、ここで説明される角膜インプラントにおける外周リングの使用と、存在する場合、実質的に連続しており途切れない最内周リングの使用とは、移植工程中に角膜実質層にインプラントを滑り込ませることを可能にして、外科的インプラント方法を実質的に非侵襲的なものにする。自由な端部で形成されるマージンは不規則な表面を構成し、角膜層の間に滑り込ませるには適切でないので、インプラントにおいて欠点を与える。
更に、本説明の対象である角膜インプラントは、目に光が入ることを完全に干渉しないためにまたは少なくとも最小限のみ干渉するために、その表面の広い領域を実質的に自由にまたは空にするように設計された。
本説明の一実施形態において、角膜インプラントは、インプラントに接触することが意図されている角膜部分に規則的な曲率を与えるように構成されたドーム状の構造物を有する。構造物は、外周リングと内側網状構造とを備え、これらは順に、互いに交差する少なくとも1つの第1および1つの第2の一連のビームを備え、ここで、第1の一連のビームは、それぞれの第1端部によって外周リングに接続され、ここで網状構造のメッシュ内におけるボイド部分の総面積は、網状構造の表面積の50%から99.9%の間である。
図1を参照して、参照番号1で識別された角膜インプラントは、外周リング10と内側網状構造20とを備える略ドーム状の構造物2を有する。
外周リングは連続する表面を有する。この特徴は、上記に強調されたように、インプラントの挿入を非侵襲的にすることを可能にする。
内側網状構造20は、互いに交差する少なくとも1つの第1の一連のビーム21と1つの第2の一連のビーム22とを備え、ここで第1の一連のビーム21および第2の一連のビーム22の両方は、外周リング10に接続された両端31、32、33、34を有する。
第1および第2の一連の交差するビーム21、22は、外周リング10に対して放射状方向に延在する。外周リング10は、円形または楕円形の構造と仮定し得ることが好ましい。
図1に示されるように、構造物には、外周リングと同軸にある内側円形開口部がない。この実施形態に従って中央開口部なしにインプラントを製造することは、角膜表面の均一な矯正に有利であり、十分な治療結果を迅速に実現する。
ドーム状の構造物2は、図5Aおよび図5Bに示されるように、矢状断面に上昇を生じさせて実質的に半円形または半楕円形の輪郭、または、患者の必要に基づくカスタマイズされた輪郭にするような曲率を有し得る。
網状構造20のメッシュ内のボイド部分24の総面積は、網状構造20の全体の表面積の50%から99.9%の間であり、好ましくは75%から98%の間である。
別の実施形態において、内側網状構造は、最内周リングを備え得る。最内周リングの存在は、構造の安定性を高めることをもたらし得る。
図2は、図1に示された角膜インプラント1の変形例の実施形態を示し、ここで同じ参照番号は類似の要素を指示する。
インプラント1の内側網状構造20は、角膜インプラント1の実質的に空の中央領域を作成するように、内周リング11を備える。この実施形態は、第1および第2の一連のビーム21、22の一部、特に、最内周リング11と交差する位置にあるビーム21、22は、最内周リング11に接続されるそれぞれの第2端部32、34と、それぞれの第2端部32、34によって外周リング10に接続される第1および第2の一連のビーム21、22の残りの部分とを有すると想定する。
外周リング10および最内周リング11は、円形または楕円形の構造と仮定し得、同軸にあることが好ましい。内側網状構造20は、結果的に、円形または楕円形のリング構成を有する。
図2示されるように、第1の一連のビーム21および第2の一連のビーム22は、外周リング10に対して放射状方向に延在する。
また、中央開口部を提供する図2の実施形態においては、角膜の曲率も角膜の自由中央部において規則化される。この結果は、インプラントの環状網状構造により周囲角膜の環状部分に与えられる形状の規則性の結果として得られる。
更に、外周リング10および内周リング11の存在は、インプラントの立体構造的安定性をより大きくして、これは特に不規則な表面を有する角膜を効果的に治療することをもたらす。
図3に示されるような角膜インプラント1のさらなる実施形態によると、第2の一連のビーム22は、互いに実質的に同心円状に配置された環状ビームを備える。
第1の一連のビーム21は、外周リング10に対して実質的に放射状方向に延在しており、外周リング10に接続されたそれぞれの第1端部31と、最内周リング11に接続されたそれぞれの第2端部32とを有する。
図4に示されるような別の実施形態において、角膜インプラント1の内側網状構造20は、第3の一連のビーム40を備え、これは、最内周リング11により画定された円周または境界線より大きい円周または境界線を画定する、外周リング10に接続されたそれぞれの第1端部41と環状ビーム22に接続されたそれぞれの第2端部42とを有する。
図4に示される実施形態によるインプラントには安定性および柔軟性が提供され、規則的な角膜曲率を効果的に与えるのに適切にする。特に図4において、この環状ビーム22は、最内周リング11から始まる第1環状ビームにより表される。しかしながら、様々な実施形態において、このビーム22は、最内周リング11から径方向により離れている環状ビームにより表されることもできる。
第1および第3の一連のビーム21、40は、外周リング10に対して実質的に放射状方向に延在する。
図3および図4に示される実施形態を参照すると、第1の一連のビーム21は、外周リング10と最内周リング11と共に、円形または楕円形の環の円弧としての構成を実質的に含む構造物2の複数のセクターを画定し、これらのセクターは実質的に互いに等しいのが好ましい。
本説明の対象である角膜インプラント1は、直径が1mmから20mmの間の、好ましくは5mmから10mmの間の円形状で外周リング10を示すことが好ましい。
最内周リング10は、存在する場合、直径が0.1mmから10mmの間の、好ましくは0.5mmから7mmの間の円形状を有することが好ましい。
ビーム21、22、40、外周リング10および/または最内周リング11は、円形または多角形の断面を有し得、好ましくは多角形の辺の数が3より大きいまたはそれに等しい多角形を有し(例えば、三角形、正方形、長方形、五角形等)、より好ましくは長方形である。
この円形または多角形の断面を有する外周リング10および/または最内周リング11は、この断面寸法を周辺リング10、11の平面において有するか、もっと厳密に言えば、好ましくは10μmから500μmの範囲内にあり、より好ましくは30μmより大きく300μm未満である幅を有する。
ビーム21、22、40は、好ましくは10μmから250μmの範囲内の幅を有し、より好ましくは40μmより大きく150μm未満の範囲内の幅を有する。
逆に、外周リング10、最内周リング11およびビーム21、22、40は、この断面寸法を周辺リング10、11の幅または平面に対して垂直の方向において有するか、もっと厳密に言えば、5μmから250μmの範囲内の、より好ましくは10μmを上回る且つ1000μm未満の厚さを有する。
これらのリングおよび/またはビームの断面が円形であるとき、これらの2つのサイズは実質的に同様である。網状構造20は、同一平面のビーム21、22、40またはいくつかの重なり合う平面を有し得る。
互いに交差するビーム21、22、40は、上記フィールドにおける網状構造の厚さに等しい厚さを有してもよく、または、それらは網状構造の厚さの半分に等しい厚さを有してもよい。後者の場合、網状構造20は、ビームの交点領域においてのみ上記フィールドの厚さを示す。
網状構造20のメッシュ内のボイド部分24は、好ましくは100μmから2,000μmの間の幅を有し、より好ましくは500μmより大きく1,500μm未満1,500の幅を有する。
本説明の対象である角膜インプラントは、機械的特徴および構造的特徴を有し、特に、角膜にその曲率を与えるなど、角膜組織の剛性より優れる剛性を有する。インプラントのこの構造的特徴は、角膜実質層の厚さ内または角膜上皮下におけるインプラントの外科的移植に続いて、変形された角膜を規則的な形状に変換することにより、最適な光学的状況を復元する、例えば、視力またはコントラスト感度などの損なわれた光学収差を矯正することを可能にする。
ヤング率を測定することにより評価される人間の角膜の剛性は、0.01MPaから10MPa、好ましくは0.1MPaから1MPaの値をもたらす。
一般的に、本説明の対象である角膜インプラントの剛性は、好ましくは1MPaより大きく、より好ましくは10MPaより大きく、さらに一層好ましくは10MPaから300GPaの範囲内に含まれる。
また、装置は、その剛性に起因して、インプラントが角膜実質層内に挿入された場合(ここで、前方および後方は、角膜内の角膜インプラント1の挿入位置を参照して分かる)に角膜前面と角膜後面との両方により生成される光学収差の減少と、エキサイマーまたはフェムト秒レーザまたはリング状の角膜インプラントまたは更には組織などの非剛性材料の作られるインプラントによるアブレーションでは得られない矯正とを可能にする。インプラントが角膜上皮の下に配置されている場合において、角膜上皮が再生する場合、その形状を仮定してそれはインプラントを覆って組み込む。
更に、角膜切開を想定し得る外科的治療に続いて、切断前の角膜組織より低い構造抵抗を示す角膜組織は、定量的に高い光学結果を用いて角膜インプラントにより与えられる新たな形状により良好に適合する。換言すると、その内に角膜インプラント1が挿入された角膜は、角膜インプラント1により与えられる光学的矯正の経時的な矯正メンテナンスに適切な構造剛性を有する。
更に、ここで説明される角膜インプラント1の剛性を考慮すると、インプラントは、移植中(例えば、外科医によるインプラントの操作に起因する)または日常的使用(例えば、患者が目をこすることに起因する)において生じる応力によっても、そのドーム状の構造を維持することが可能である。
装置は、例えば、テンプルレンズまたはコンタクトレンズでは矯正できない、もしくは、コンタクトレンズを許容しない被験者においては矯正できない光学収差を引き起こす、角膜の曲率の不規則性を伴う全ての病理において、好ましくは有用なストローマの透明性を用いて指示される。
更に、本説明の対象である装置は、健康な被験者の角膜曲率を変化させて屈折異常を矯正すべく移植され得る。
装置が標的とする患者の主なカテゴリは、非炎症性角膜拡張(例えば、円錐角膜、および角膜屈折の外科的処置に続くペルシード角膜変性もしくは角膜拡張など)を患う被験者と、全層角膜移植または深部前方表層角膜移植を受ける、不正又は強度の乱視を有する被験者とを含む。
本説明の対象である角膜インプラント1の使用は、以下の利点が得られることを可能にする。
網状構造の機械的剛性のおかげで、角膜インプラント1は、エキサイマーまたはフェムト秒レーザを用いるアブレーション治療の場合に生じるように、ICRS(角膜内リングセグメント)の使用により生じるものとは対照的に、且つ組織アブレーションなしに、事前に画定された曲率を加えることと取得することとにより角膜がモデル化されることを可能にし、ここで、角膜の最終的な構造が正確に予測可能でなく、治療が不可逆的である。
更に、網状構造自体の総面積に対する網状構造のメッシュのボイド部分24の領域が広いおかげで、本説明の対象である角膜インプラントは、i)インプラントの前方および後方にある角膜組織によって酸素および他の分子の通を干渉せず(または最大でも無視できる非常にわずかな程度まで)、ii)入射光を5%から10%減少させることと、低次収差(乱視)および高次収差(コマおよびトレフォイルなど)の減少の観点でインプラント1により得られる利点と比較した場合、はるかに無視できる回折現象とを伴う。
角膜インプラント1が目の節点の近くに位置決められるおかげで、このインプラントは、患者により実質的に認識されない。
本説明の対象である角膜インプラント1は、好ましくは角膜実質層内において、または、角膜上皮下の角膜実質層の前方面に固定可能に移植可能である。また、インプラントは、角膜組織にダメージを与えることなく(またはダメージを最小限にして)容易に移植され取り外し可能であり、手術後の期間における痛みを大幅に軽減し、視覚回復を加速させて、従って、患者の生活の質を向上させる。
外周リング10の直径、最内周リング11の直径(存在する場合)、ドーム状の構造物2の曲率の半径、並びに、周辺リング10、11および/またはビーム21、22および40の厚さとして意図される角膜インプラント1の寸法は、患者の具体的な必要と角膜の形態学に適合するような方法で選択される。
[角膜インプラント移植モード]
本説明の対象であるインプラントは、角膜組織の除去を伴わない保存的且つ付加的な屈折手術により、患者の角膜に移植され得る。
装置は、好ましくは角膜実質層に移植可能であるが、角膜上皮またはボーマン膜の下の角膜実質層の前方面に取り付けることもできる。
角膜実質層内に移植される場合、好ましくは角膜前面に対して、10μmから700μm、好ましくは70μmから400μmの間の範囲内の定量化可能な深さを有するフェムト秒レーザを使用してストローマに円形ポケットが形成されるか、または、3mmから11mmの、好ましくは5mmから9mmの間の範囲内の定量化可能な直径と、50μmから500μmの、好ましくは70μmから400μmの間の厚さとを有するフラップが、マイクロケラトームまたはフェムト秒レーザにより調製される。
フラップまたはポケットに対する前方層の自由な縁部は、ステッチ、または金属クリップ、またはフィブリン接着剤を用いて、隣接組織に取り付けられることが可能である。
また、エキサイマーまたはフェムト秒レーザを用いて組織を切除し、その中に角膜インプラントを続いて挿入することにより、角膜実質層における角膜インプラント1と正確に一致する形状のネガを取得することが可能である。
[角膜インプラントの作製に使用可能な材料]
角膜インプラント1は、金属および関連する合金(例えば、チタン(1級または2級チタンなど)、ニッケル、コバルト、クロム、タンタル、金、銀、鉄およびそれらの合金、例えば鋼、ニチノール、Ti6Al4V、AISI 301(登録商標)等といったもの)、を使用して作られ得る。これは、金属が好ましくは非磁性のもの、炭素、およびその化合物であり、好ましくは無機ポリマー、セラミック材料および相対的な組み合わせであるからである。
また、角膜インプラント1は、上述の材料がハイドロキシアパタイト、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、フィブロイン、キチン、セルロース、キトサン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、コラーゲン(人または動物)、ハイドロコロイド、ハイドロゲル、Crabyon(登録商標)、銀などの他の化合物とさらに混合されたものを使用して作られ得る。
また、角膜インプラント1には、好ましくは抗炎症性、抗菌性、および/またはインプラントの周りの線維性反応を阻害または制御することを目的とする薬理学的に有効な成分を任意選択的に備える外部の生体適合性および/または生物分解性コーティングが提供され得る。
外部コーティングは、埋め込み型装置/プロテーゼにより有効な成分を解放させるために、動物の体に移植可能なプロテーゼの分野で既知である化合物および/または組成物を使用して作られ得る。角膜インプラント1の生体適合性および/または生物分解性コーティングを作製するのに特に好ましい材料は、ハイドロキシアパタイト、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、フィブロイン、キチン、セルロース、キトサン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、コラーゲン(人または動物)、ハイドロコロイド、ハイドロゲル、Crabyon(登録商標)、銀および相対的な組み合わせから選択される。
[角膜インプラントを作製する方法]
以下では、純粋に非限定的な例により、図1に示されるような角膜インプラントを製造するいくつかの方法が説明される。
A)市販の純チタンシート(Lamina S.p.A製の0.05mmの厚さを有するCP,ASTM B265,Grade2)を原料として使用する。チタンシートは、網状構造20と周辺リング10とを生成すべく、レーザ処理により切断加工を受ける。
レーザ処理は、超短波パルス源を有するStarFemto FXレーザ(Rofin Baasel Lasertech GmbH&Co.KG)を用いて、以下の工程パラメータで実行される。
‐波長:1030nm
‐集束光学部品:F100
‐Galvoスキャナヘッド:S14
‐Galvoスキャナヘッドのスキャン速度:200mm/秒
‐フィールドサイズ:40mm×40mm
‐パルス期間:250fs
‐パルスエネルギー:20μJ
‐繰り返し数:20kHz
また、レーザ処理は、StarFiber 180FC fiber source(Rofin Baasel Lasertech GmbH&Co.KG)を使用して実行され得る。切断精度の観点における結果は、StarFemto FXレーザで得られた解決手段と同じく良好であるが、熱入力を考慮すると、超短波パルス源を搭載するStarFemto FXレーザを用いて得られた結果と比較して、切断壁の変形および質の低下とが存在する。
続いて、表面をクリーンし、表面から望ましくない汚染物質を除去すべく、当該技術分野において広く既知である技術に従って、化学的電解研磨処理が実行される。
電解研磨後の部品は、部品の色変化の導入が必要なとき、不動態化/陽極酸化処理を受けることができる。
個々のチタン部品の陽極酸化処理は、以下の手順に従って実行される:部品は、室温で10秒、10%硫酸アンモニウムの塩基性水溶液に挿入される。適用される可能性は、所望の色によって変化し、徹底されていない例として、適用される可能性および得られる色について以下の指示を報告する。
‐ダークブラウン:12Vから15V
‐紫:35Vから40V
‐淡青色:25Vから30V
‐青色:30V
‐黄色:40V
網状構造を略ドーム状の構造に与えるべく、部品は、引き抜き加工と、ダイとパンチにより形成された金型を用いる後続のコイニング加工とを受ける。ダイおよびパンチは、調質材(K100)で作製される。
角膜インプラントのプロトタイプを製造するために、引き抜き工程およびコイニング工程は、正確な機械的実験用トグルを有し、パンチング精度が+/-10μmであり、圧力値9Kgである機械的プレス(GECHTER、5HKPU)を使用して実行されることが好ましい。
小規模な一連の製造の場合、引き抜き工程およびコイニング工程は、パンチャーの電動降下(ALFAMATIC、COLOMBO)、+/-10μmのパンチング精度、圧力値9Kgを有するプレスを使用して実行されるのが好ましい。
この段階の最後に、製造工程の最後の角膜インプラントの表面に依然として存在する任意のさらなる残留物を除去すべく、後続の最終洗浄(例えば、超音波浴)が提供され得る。
また、角膜インプラントは、インプラント自体の表面モルフォロジーを変更する目的を有する1または複数の機械的工程、レーザ工程、化学的工程または他の工程を受けることができる。いくつかの可能な工程は、ショットピーニング、コランダムサンドブラスティングおよび不動態化処理(酸化物フィルムのパッシブ層に腐食に対する最大抵抗を与え、その形成を促進する)である。
B)原料が電気溶接網ネットで形成される場合において、これは、網状構造20を分離して周辺リング10を作成すべく、レーザ処理による切断加工を受ける。
続いて、製造方法は、電解研磨、陽極酸化、引き抜きおよびインプラント表面モルフォロジーを変更することを意図する任意の追加処理などの、シートの形での原料の使用に関して既に先に説明された複数の段階の全てまたは一部のみを実行すると想定できる。
C)また、角膜インプラントは、最終的なインプラントの3Dプリンティングによって生成され得、または、本説明の対象であるインプラントが次にロストワックス鋳造により得られるワックスで生成され得る。後者の場合において、ワックスモデルは、必要な材料の最終コンポーネントを製造する通常のロストワックス鋳造技術によって使用される。
[角膜インプラントのヤング率の決定]
本発明の対象である装置のヤング率を決定すべく、例えば、1)装置が続いて作製される材料のプレート上、2)装置を構成する単一のビーム上、または3)最終装置上における張力テストなどの、専門家には既知の異なる種類のテストを実行することが可能である。
場合1)において、テスト対象の材料の張力破壊荷重に対して適切なサイズの引張テスト機を使用することが望ましい。この場合、使用可能なロードセルは、2,000kNまで到達ことができる。
場合2)において、好ましくは10Nから10kNの範囲内のロードセルを備える適切なサイズの引張テスト機を使用することが望ましく、装置ビームと同じ技術により得られる代表的なビームであって、テストを実行するのに十分な、好ましくは20mmより長い長さのビームを有する必要がある。
場合3)において、場合1)と同じ方法を使用することが可能である。その一方、張力テストの最初の部分で適用された荷重がドーム状の装置の平坦化してそれを平面にするために使用され、ヤング率を決定するための指標にはならないことを留意されたい。
もちろん、本発明の原理に影響することなく、構造的な詳細および実施形態は、単に例として本明細書に説明および例示されたものに対して大幅に変化し得、これにより、以降の請求項において特定されるような本発明の目的から逸脱することはない。

Claims (3)

  1. 被験者の角膜曲率の不規則性を矯正するために設計された角膜インプラントであって、前記角膜インプラントは、前記角膜インプラントと接触するように設計された角膜部分に規則的な曲率を与えるように構成されたドーム状の構造物を備え、前記構造物は、外周リング、最内周リング、及び、前記外周リングと前記最内周リングとの間の内側網状構造を有し、前記内側網状構造は、互いに交差する少なくとも1つの第1の一連のビームと1つの第2の一連のビームとを含み、前記第1の一連の前記ビームは、前記外周リングに接続されたそれぞれの第1端部を含み、前記内側網状構造のメッシュ内のボイド部分の全体の領域は、前記内側網状構造の表面積の50%から99.9%の間であり、
    前記第2の一連の前記ビームは、互いに同心円状に配置された環状ビームを含み、前記内側網状構造はさらに、第3の一連のビームを含み、前記第3の一連の前記ビームは、前記外周リングに接続されたそれぞれの第1端部、及び、前記最内周リングによって画定される円周または境界線より大きい円周または境界線を画定する環状ビームに接続されたそれぞれの第2端部を含む、
    角膜インプラント。
  2. 前記第1の一連の前記ビームおよび前記第3の一連の前記ビームのうち少なくとも1つは、前記外周リングに対して放射状方向に延在する、請求項1に記載の角膜インプラント。
  3. 前記外周リングと前記最内周リングとは同軸にある、請求項1から2のいずれか一項に記載の角膜インプラント。
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