JP7390166B2 - 動力工具 - Google Patents

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Description

本発明は、オイルユニットを用いたインパクトドライバ等の動力工具に関する。
オイルユニットを用いたインパクトドライバ等の動力工具においては、モータの回転を、オイルユニットにより断続的な衝撃トルク(インパクト)としてスピンドルから出力する。このオイルユニットは、例えば特許文献1に開示される構造が知られている。この構造は、オイルが封入されてモータの回転が伝達されるケース内に、スピンドルの後部を回転可能に収容している。また、ケースの中心で一体回転するカムをスピンドルの後部に挿入させると共に、カムの外側で当該後部内に、一対のボールとブレードとをそれぞれ放射方向へ移動可能に収容している。
このオイルユニットでは、ケースが回転すると、これと一体のカムも回転して後部内でボールを介してブレードを径方向外側へ押し出す。ケースの所定の位相で後部内がカムによりシールされると、オイル圧によってブレードは押し出し位置にとどまる。そのままケース内の突起がブレードに衝突することで衝撃トルク(インパクト)が発生する。続けてケースと共にカムが回転すると、後部内のオイルが流出してオイル圧が低下するため、ブレードは後部内に後退して突起を相対的に乗り越える。このブレードの押し出し、突起との衝突、後退を繰り返してインパクトが断続的に発生する。
特開2019-48383号公報
オイルユニットには、スピンドルの軸心に、ケース内と連通する貫通孔が形成されて、貫通孔内に形成したネジ部に、出力(圧力)を調整するための圧力調整バルブ(調圧構造)が螺合している。貫通孔の先端は、ビット挿入孔となっており、先端側から差し込んだ工具で圧力調整バルブを回転させて軸方向にねじ送りすることで、流路面積を変更してオイルユニットの出力が調整できるようになっている。
この圧力調整バルブによる出力調整後は、前方からビット挿入孔にビットピース(ビット保持部)を挿入して圧力調整バルブの前方を塞ぎ、圧力調整バルブの操作を安易に行えないようにする場合がある。しかし、ビットピースには、ビット挿入孔に挿入したビットの後端が当接するため、被加工材に押し当てられたビットを介してビットピースが圧力調整バルブに押し付けられると、ビットからビットピースを介して伝わる振動によって圧力調整バルブが偶発的に回転してしまうことがある。この場合、オイルユニットの出力が不意に変化して作業者に違和感を生じさせたり、モータへの負荷が増大して耐久性を低下させたりするおそれがある。
そこで、本発明は、ビット保持部を設けても調圧構造の偶発的な動作を防止でき、良好な使用感及びモータの耐久性を維持できる動力工具を提供することを目的としたものである。
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、動力工具であって、
モータと、
モータにより駆動し、オイルが封入されるオイルユニットと、
オイルユニットから突出する出力軸と、
出力軸に形成され、先端がビット挿入孔となる貫通孔と、
ビット挿入孔よりも奥側で貫通孔に設けられ、封入されたオイルの圧力を調整可能な調圧構造と、
ビット挿入孔に設けられ、挿入されたビットの後部を保持可能なビット保持部と、を有し、
調圧構造は、貫通孔に形成された雌ネジ部に螺合するネジ部と、ネジ部と同軸で形成されて貫通孔を閉塞するシール部とからなり、ネジ部をビット挿入孔側に向けてオイルユニット側から貫通孔に収容されて、回転操作によって貫通孔内で軸方向にねじ送りすることで圧力を調整可能な弁部材であり、
弁部材は、雌ネジ部の奥側で貫通孔内に形成されたストッパにシール部が当接してビット挿入孔側への移動を規制されることで、貫通孔内でビット保持部と接触不能に設けられていることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、上記構成において、ビット挿入孔は、貫通孔における弁部材が設けられる部分よりも大径に形成され、ビット保持部がビット挿入孔の内底面に当接して奥側への移動を規制されることで、弁部材と接触不能となっていることを特徴とする。
請求項に記載の発明は、上記構成において、ネジ部は、シール部よりも小径に形成されて雌ネジ部に螺合していることを特徴とする。
請求項に記載の発明は、上記構成において、シール部には、複数のOリングが外装されていることを特徴とする。
請求項に記載の発明は、上記構成において、ビット保持部は、出力軸の先端側からビット挿入孔に挿入されてビットの後部を受ける筒状部材であることを特徴とする。
請求項に記載の発明は、上記構成において、筒状部材における出力軸の先端側は、当該先端側へ向かって拡開するテーパ状であることを特徴とする。
請求項に記載の発明は、上記構成において、筒状部材に、Oリングが外装されていることを特徴とする。
上記目的を達成するために、請求項8に記載の発明は、動力工具であって、
モータと、
モータにより駆動し、オイルが封入されるオイルユニットと、
オイルユニットから突出する出力軸と、
出力軸の先端に形成されるビット挿入孔と、
ビット挿入孔よりも奥側でビット挿入孔に連設され、ビット挿入孔よりも小径となる調圧孔と、
調圧孔内に没入状態で設けられ、封入されたオイルの圧力を調整可能な圧力調整バルブと、
ビット挿入孔の内底面に設けられるリング状の肩部と、
ビット挿入孔に設けられて肩部に当接し、挿入されたビットの後部を保持可能なビットピースと、を有し、
ビットピースが、肩部により奥側への移動を規制されることで、調圧孔内に没入する圧力調整バルブと接触不能に設けられていることを特徴とする。
本発明によれば、被加工材に押し当てられたビットを介してビット保持部又はビットピースが奥側へ押圧されても、弁部材又は圧力調整バルブの偶発的な動作を防止することができる。よって、ビット保持部又はビットピースを設けても、オイルユニットの出力が不意に変化して作業者に違和感を生じさせたり、モータへの負荷が増大したりすることがなくなり、良好な使用感及びモータの耐久性を維持することができる。
インパクトドライバの側面図である。 インパクトドライバの中央縦断面図である。 (A)はオイルユニットの中央縦断面図、(B)はA-A線断面図である。 図3のB-B線断面図である。 スピンドルとビットピースと圧力調整バルブとを分解して示す中央縦断面図である。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、動力工具の一例である充電式のインパクトドライバ1の側面図である。図2はインパクトドライバ1の中央縦断面図である。
インパクトドライバ1は、本体部2とグリップ部3とを有する。本体部2は、中心軸を前後方向として延び、ブラシレスモータ20及びオイルユニット22を収容する。グリップ部3は、本体部2から下方に突出する。グリップ部3の下端には、バッテリー装着部4が設けられている。バッテリー装着部4には、電源となるバッテリーパック5が前方から取り付け可能である。
インパクトドライバ1のハウジングは、本体ハウジング6とユニットケース7とからなる。本体ハウジング6は、本体部2の後部とグリップ部3とバッテリー装着部4とを一体化している。ユニットケース7は、本体ハウジング6の前方に組み付けられて本体部2の前部となる先細り筒状である。本体ハウジング6は、左右一対の半割ハウジング6a,6bをネジ8,8・・によって組み付けて形成される。ユニットケース7の外側には、樹脂製のケースカバー9が外装される。ケースカバー9の前方には、ゴム製のバンパ10が外装されている。
グリップ部3の上部には、スイッチ11が収容される。スイッチ11は、トリガ12を前方へ突出させている。スイッチ11の上側には、ブラシレスモータ20の回転の正逆切替ボタン13が設けられている。本体部2の前方を照射するライト14が設けられている。バッテリー装着部4内には、端子台15が収容されている。端子台15は、バッテリーパック5と電気的に接続される。端子台15の上側には、コントローラ16が配置されている。コントローラ16は、制御回路基板17を備えて端子台15と平行に配置されている。コントローラ16の上側には、スイッチパネル18が設けられている。スイッチパネル18には、ライト14のON/OFFスイッチや打撃力の切替ボタン等が設けられている。スイッチパネル18は、バッテリー装着部4の上面に露出している。
本体部2には、後側から順に、ブラシレスモータ20、減速機構21、オイルユニット22が収容されている。オイルユニット22は、スピンドル23を保持している。スピンドル23の前端は、オイルユニット22から前方へ突出している。
ブラシレスモータ20は、ステータ24とロータ25とを有する。ブラシレスモータ20は、筒状のステータ24の内側にロータ25を備えるインナロータ型である。ステータ24は、筒状のステータコア26を備える。ステータコア26は、複数の積層鋼板から形成される。ステータ24は、インシュレータ27,27を備える。インシュレータ27,27は、ステータコア26の軸方向前後の端面にそれぞれ固定される。ステータ24は、複数のコイル28,28・・を有する。複数のコイル28,28・・は、インシュレータ27,27を介してステータコア26に巻回される。前側のインシュレータ27には、センサ回路基板29が取り付けられている。センサ回路基板29は、ロータ25に設けたセンサ用永久磁石33の位置を検出して回転検出信号を出力する。各コイル28は、インシュレータ27に保持されるヒュージング端子と電気的に接続されることで三相結線される。
ロータ25は、回転軸30とロータコア31とを備える。回転軸30は、ロータコア31の軸心に設けられる。ロータコア31は、回転軸30の周囲で円筒状に配置される。ロータコア31は、複数の鋼板を積層してなる。また、ロータ25には、筒状の永久磁石32,32・・が固定される。永久磁石32,32・・は、ロータコア31の外側で極性を交互に変えて配置される。ロータ25には、センサ用永久磁石33,33・・が固定される。センサ用永久磁石33,33・・は、永久磁石32,32・・の前方で放射状に固定される。
回転軸30の後端は、軸受34に保持される。軸受34は、本体ハウジング6の後部内面に保持されている。軸受34の前方で回転軸30には、ファン35が取り付けられている。ファン35の外側で本体部2の左右の側面には、複数の排気口36,36・・が形成されている。排気口36の前方で本体部2の左右の側面には、前吸気口37Aが形成されている。前吸気口37Aは、ケースカバー9の左右後端に形成されている。前吸気口37Aの後方には、複数の後吸気口37B,37B・・が形成されている。後吸気口37Bは、ブラシレスモータ20の前部外側に当たる位置に形成されている。
本体ハウジング6内でブラシレスモータ20の前側には、ギヤケース38が保持される。ギヤケース38は、円盤状で、軸受保持部39を備える。軸受保持部39は、軸受40を介して回転軸30の前端を支持している。回転軸30の前端には、ピニオン41が取り付けられている。ピニオン41は、ギヤケース38を貫通して前方へ突出している。
減速機構21は、インターナルギヤ42と、複数の遊星歯車43,43・・と、キャリア44とを含む。インターナルギヤ42は、ギヤケース38の前部に固定される。複数の遊星歯車43,43・・は、インターナルギヤ42の内側に噛み合う。キャリア44は、遊星歯車43を支持する。インターナルギヤ42の前端は、ユニットケース7の後端に挿入されている。インターナルギヤ42の前端は、内側に保持した軸受45を介してオイルユニット22の後ケース51を支持している。
複数の遊星歯車43,43・・は、ピニオン41を中心に配置されてピニオン41と噛み合う。キャリア44は、オイルユニット22の後ケース51と結合されている。
図3にも示すように、オイルユニット22は、前ケース50と、後ケース51と、スピンドル23とを備える。
前ケース50は、ユニットケース7の内側に配置され、前方へ向けて段階的に先細りとなる筒状である。前端部52には、スピンドル23が貫通する軸心孔53が形成される。前端部52とスピンドル23との間には、シール部材52aが設けられる。
軸心孔53の径方向外側で前端部52には、一対のネジ孔54,54が貫通形成されている。各ネジ孔54には、閉栓となるネジ55が前方からねじ込まれている。前端部52の内面には、リング状の前室56が形成されている。前室56は、各ネジ孔54と連通する。前室56内には、チューブ57が収容されている。チューブ57は、空気が封入された中空で、前室56内へリング状の形で収容されている。チューブ57の後方には、仕切板58が設けられている。仕切板58は、外周に複数の切欠き59,59・・を備えている。仕切板58の後方には、後室60が形成され、前室56と後室60とは切欠き59を介して連通する。
後ケース51は、中央部61と側壁部62とを備える。中央部61は、軸受45に支持される円盤状を有している。側壁部62は、中央部61の周縁から前方に突出する円筒状を有している。側壁部62が前ケース50内に後方からねじ込まれて前ケース50と結合される。側壁部62と前ケース50との間には、シール部材62aが設けられる。
側壁部62の前端は、仕切板58に当接している。前ケース50の内面には、段部63が設けられて、側壁部62と段部63との間で仕切板58が固定される。
図4に示すように、側壁部62の内周面には、一対の突起64,64が形成されている。突起64,64は、後ケース51の軸心を中心とした点対称位置に配置されて中心側へ隆起している。突起64,64は、中心側へ行くに従って周方向の幅が狭くなるテーパ状の横断面形状を有している。
後ケース51の中央部61の中心には、凹部65が形成される。凹部65は、中央が深く、その外側が浅くなって2段階に凹む形状となっている。凹部65の中央には、カム66が前向きに固定されている。カム66の後部は、二面幅部66aとなっている。カム66の前部は、最も太い中心から直径方向で外側へ行くに従って徐々に薄肉となる扁平部66bとなっている。二面幅部66aと扁平部66bとは、正面視で突起64,64の中心同士を結ぶ直線と直交する向きとなっている。
スピンドル23は、軸心に貫通孔70を有している。貫通孔70の後部は、後室60内に位置する内圧室71となっている。内圧室71は、横断面円形を有し、カム66が相対回転可能に挿入されている。スピンドル23の後端部は、カム66の外側で後ケース51の凹部65に支持されている。スピンドル23の中間部は、ユニットケース7に軸受72を介して支持されている。スピンドル23の前端には、ドライバビット等のビットB(図2)を着脱するためのスリーブ73が設けられている。
貫通孔70の前部は、ビットBを挿入する前側のビット挿入孔74と、ビット挿入孔74よりも小径となる後側の調圧孔75となっている。ビット挿入孔74の後端には、ビットピース76が挿入されている。ビットピース76は、ビットBの後端を受けるために内径が前方へ向かってテーパ状に拡開する筒状部材である。ビットピース76は、ビット挿入孔74の内底面に形成されるリング状の肩部77に当接して後方への移動が規制される。ビットピース76の外周には、ビット挿入孔74の内面との間をシールするOリング78が外装されている。
調圧孔75には、圧力調整バルブ80が挿入されている。圧力調整バルブ80は、前側にネジ部81を、後側にシール部82を有する弁部材である。ネジ部81は、シール部82よりも僅かに小径となっている。ネジ部81の前面には、ドライバー等の工具を係止するための係止溝83が形成されている。シール部82には、調圧孔75の内面との間をシールする2つのOリング84,84が外装されている。
調圧孔75の前部には、圧力調整バルブ80のネジ部81が螺合する雌ネジ部85が形成されている。調圧孔75の後部は、シール部82が挿入される大径部86となっている。雌ネジ部85と大径部86との間には、リング状のストッパ87が形成されている。
図5に示すように、ビットピース76は、スピンドル23の前側から組み付けられる。圧力調整バルブ80は、スピンドル23の後側から組み付けられる。ビットピース76は、ビット挿入孔74に前方から挿入されると、前述のように肩部77に当接する位置でビット挿入孔74内に収容される。圧力調整バルブ80は、調圧孔75に後方から挿入されて、ネジ部81が雌ネジ部85に螺合する位置で調圧孔75内に収容される。この状態でシール部82は大径部86を閉塞する。
こうして組み付けられる圧力調整バルブ80と、前ケース50と、後ケース51と、ネジ55と、スピンドル23等とにより、前室56及び後室60を含む密閉空間が形成される。この密閉空間内にオイルが封入される。オイルの封入は、ネジ孔54を通じて行われる。
そして、ビットピース76を組み付ける前に係止溝83を介して圧力調整バルブ80を回転させると、ネジ部81がねじ送りされて圧力調整バルブ80が軸方向に進退動する。この軸方向の位置により、オイル圧(出力)を調整することができる。
但し、ねじ送りの前方側では、大径のシール部82がストッパ87に当接する位置で前進が規制される。この規制位置では、図3に示すように、ネジ部81の前端は、肩部77に当接して後退が規制されるビットピース76の後端から離れてビットピース76と非接触となっている。
雌ネジ部85は、大径部86よりも小径となっているので、ビットピース76が当接する肩部77の面積が大きくなり、ビットピース76の後退規制は確実に行える。
図4に示すように、スピンドル23の後部90は、後ケース51の直径方向に延びる扁平な横断面形状となっている。但し、後部90の長手寸法は、後ケース51の突起64,64の対向面間の寸法よりも短くなっている。後部90は、仕切板58と後ケース51の中央部61との間に位置している。後部90の前面と後面とには、図3(B)に示すように、前連通孔91と後連通孔92とがそれぞれスピンドル23の直径方向に形成されている。前連通孔91は、後部90と仕切板58との当接状態で貫通孔70と後室60内とを連通させる。後連通孔92は、後部90と中央部61との当接状態で貫通孔70と後室60内とを連通させる。
後部90内でカム66の外側には、一対の保持孔93,93が形成されている。保持孔93,93は、貫通孔70と連通してスピンドル23の直径方向に形成される。各保持孔93には、ボール94,94が配置されている。各ボール94は、保持孔93内で放射方向へ移動可能で、中心側へ移動した際にはカム66の扁平部66bに接触可能となっている。
後部90の長手方向両端には、一対の保持溝95,95が形成されている。保持溝95,95は、保持孔93,93と連通している。保持溝95,95は、後部90の長手方向両端及び前後に開口するように前後方向に貫通形成されている。
各保持溝95内に、ブレード96が配置されている。各ブレード96は、保持溝95の周方向の幅に略収まる幅と、保持溝95の前後方向の全長に亘って収まる長さとを有している。各ブレード96は、保持溝95内でスピンドル23の径方向へ移動可能に保持されている。各ブレード96は、中心側へ移動した際はボール94に接触可能となっている。各ブレード96の径方向外側の端部は、径方向外側へ行くに従って幅が小さくなるテーパ状となっている。各ブレード96は、前後方向に貫通する透孔97を備えている。
図4に示すように、後部90の内圧室71内でカム66の扁平部66bが後部90の長手断面と平行な向きとなった際には、カム66によってボール94,94がそれぞれ径方向外側へ押し出される。これと同時に、ボール94,94によってブレード96,96もそれぞれ径方向外側へ押し出される。このときブレード96,96は、後ケース51の内周面に近接し、周方向で突起64,64と干渉する位置となる。
以上の如く構成されたインパクトドライバ1の動作を説明する。
スピンドル23のビット挿入孔74にビットBを装着した状態で、使用者がグリップ部3を把持してトリガ12を引く。すると、スイッチ11がON動作してバッテリーパック5からブラシレスモータ20のステータ24へ三相電流が供給されてロータ25が回転する。すなわち、制御回路基板17のマイコンが、センサ回路基板29の回転検出素子から出力されるロータ25のセンサ用永久磁石33の位置を示す回転検出信号を得てロータ25の回転状態を取得する。そして、マイコンが、取得した回転状態に応じて各スイッチング素子のON/OFFを制御し、ステータ24の各コイル28に対し順番に三相電流を流す。よって、ロータ25と共に回転軸30が回転する。
回転軸30の回転は、ピニオン41を介して遊星歯車43,43・・に伝わる。そして、インターナルギヤ42内を公転する遊星歯車43,43・・により減速されて、キャリア44からオイルユニット22の後ケース51に伝わる。よって、後ケース51と前ケース50とが共に回転する。
オイルユニット22では、図4の矢印方向へ後ケース51と共にカム66が回転する。すると、カム66の扁平部66bがボール94,94を介してブレード96,96を後部90からの突出方向へ押し出す。回転が進んで後連通孔92と内圧室71との間がカム66の扁平部66bにより開放されると、内圧室71内にオイルが流れ込む。よって、各保持孔93から各保持溝95へオイルが流れ、ボール94,94及びブレード96,96の押し出しが促進される。
後ケース51と共にカム66がさらに回転し、扁平部66bが後部90と平行となる図4の位相では、ボール94,94及びブレード96,96を最外まで押し出す。
後ケース51とカム66とがさらに回転すると、突起64,64がブレード96,96に当接する。
この位相では、後連通孔92と内圧室71との間は扁平部66bにより閉塞され、内圧室71内のオイル圧が高まる。このため、ブレード96,96は押し出し位置で保持される。よって、突起64,64がブレード96,96に衝突することでスピンドル23に衝撃トルク(インパクト)が発生する。
衝撃トルク発生後は、突起64,64とブレード96,96とのテーパ同士の案内によって、各ブレード96は中心側へ後退する。このとき内圧室71内のオイルは各部品の隙間から後室60内へ流出し、ブレード96,96の後退を許容する。よって、後退したブレード96,96が相対的に突起64,64を乗り越える。
そして、再び図4に戻り、後ケース51と共に回転したカム66がブレード96,96の押し出しを開始する。
この繰り返しによって後ケース51の1回転で2回の衝撃トルクが発生することになる。
こうしてスピンドル23のビット挿入孔74に装着したビットBでネジ締め等の作業を行うことができる。このとき、ビットBを被加工材に押し付けると、ビット挿入孔74内でビットBが奥側に押され、ビットBを受けるビットピース76には押し込み力が加わる。しかし、ビットピース76はビット挿入孔74内の肩部77によって後退が規制されているので、ビットピース76が後退して圧力調整バルブ80に接触するおそれはない。
また、ユニットケース7の出力を調整するために圧力調整バルブ80が前側へ回し切られていても、シール部82がストッパ87に当接してネジ部81はビットピース76の後方に位置している。よって、圧力調整バルブ80がビットピース76に接触するおそれもない。
一方、回転軸30が回転すると、ファン35が回転し、前吸気口37A及び後吸気口37Bから排気口36への空気の流れが形成される。よって、ブラシレスモータ20やオイルユニット22等の内部機構が冷却される。
上記形態1のインパクトドライバ1は、ブラシレスモータ20(モータ)と、ブラシレスモータ20により駆動し、オイルが封入されるオイルユニット22と、オイルユニット22から突出するスピンドル23(出力軸)とを有する。また、インパクトドライバ1は、スピンドル23に形成され、先端がビット挿入孔74となる貫通孔70と、ビット挿入孔74よりも奥側で貫通孔70に設けられ、封入されたオイルの圧力を調整可能な圧力調整バルブ80(調圧構造)と、ビット挿入孔74に設けられ、挿入されたビットBの後部を保持可能なビットピース76(ビット保持部)とを有する。そして、圧力調整バルブ80とビットピース76とは、貫通孔70内で接触不能に設けられている。
この構成により、被加工材に押し当てられたビットBを介してビットピース76が後方へ押圧されても、圧力調整バルブ80の偶発的な動作を防止することができる。よって、ビットピース76を設けても、オイルユニット22の出力が不意に変化して作業者に違和感を生じさせたり、ブラシレスモータ20への負荷が増大したりすることがなくなり、良好な使用感及びブラシレスモータ20の耐久性を維持できる。
特に、ビット挿入孔74は、貫通孔70における調圧孔75(圧力調整バルブ80が設けられる部分)よりも大径に形成され、ビットピース76がビット挿入孔74の肩部77(内底面)に当接して奥側への移動を規制されることで、圧力調整バルブ80と接触不能となっている。よって、肩部77によりビットピース76の後退を確実に規制して圧力調整バルブ80との接触を防止することができる。
また、圧力調整バルブ80は、貫通孔70に形成された雌ネジ部85に螺合するネジ部81と、ネジ部81と同軸で形成されて貫通孔70を閉塞するシール部82とからなり、回転操作によって貫通孔70内で軸方向にねじ送りすることで圧力を調整可能な弁部材となっている。そして、圧力調整バルブ80は、貫通孔70内に形成されたストッパ87に当接してビット挿入孔74側への移動を規制されることで、ビットピース76と接触不能となっている。よって、ストッパ87により圧力調整バルブ80の前進を確実に規制してビットピース76との接触を防止することができる。
また、圧力調整バルブ80は、ネジ部81をビット挿入孔74側に向けてユニットケース7側から貫通孔70に収容される。よって、貫通孔70内での圧力調整バルブ80の前方への移動規制を容易に行うことができる。
また、ネジ部81は、シール部82よりも小径に形成されて雌ネジ部85に螺合しており、貫通孔70内で雌ネジ部85の奥側に、シール部82が当接するストッパ87が形成されている。よって、ネジ部81とシール部82との径差を利用してストッパ87による圧力調整バルブ80の移動規制を確実に行うことができる。
以下、変更例を説明する。
まず、ビットピースと圧力調整バルブとの形状は上記形態に限らない。
例えばビットピースでは、軸方向の長さを長くしたり、Oリングを数を増やしたり、逆にOリングを省略したりしてもよい。
圧力調整バルブでは、ネジ部とシール部との径差を設けず、圧力調整バルブの前側で貫通孔内に設けたストッパで移動規制を図ることもできる。よって、ネジ部とシール部との前後の向きは逆でもよいし、前方からスピンドルに組み付けてもよい。Oリングの数の増減も可能である。
また、オイルユニットも、ブレードは、一対に限らず、一つとしたり、三つ以上としたり等、適宜増減可能である。ケースとスピンドルとの相対回転によりブレードをケース内で揺動させて油圧を制御するオイルユニット(例えば、スピンドルに、半径方向外向きに付勢される1又は複数のブレードを配置して、オイル室を形成するケースの回転によりブレードの片面に間欠的に高い流体圧を作用させて、ブレードが回転方向に傾斜しながらケース内に設けられたシール部とスピンドルに設けた溝とによってシールされることでスピンドルに押し付けられ、それによってスピンドルが衝撃的に回転するオイルユニット)も採用できる。
また、オイルユニットは、前ケースと後ケースとの分割構造でなく、左右の分割構造であってもよい。3つ以上の部品から構成してもよい。仕切板をなくして前室と後室とに分割せず、チューブを省略してもよい。
モータもブラシレスに限らず、整流子モータ等も採用できる。バッテリーパックを電源としないAC工具であっても本発明は適用可能である。
1・・インパクトドライバ、2・・本体部、3・・グリップ部、6・・本体ハウジング、7・・ユニットケース、16・・コントローラ、17・・制御回路基板、20・・ブラシレスモータ、21・・減速機構、22・・オイルユニット、23・・スピンドル、30・・回転軸、50・・前ケース、51・・後ケース、56・・前室、58・・仕切板、60・・後室、64・・突起、66・・カム、70・・貫通孔、71・・内圧室、74・・ビット挿入孔、75・・調圧孔、76・・ビットピース、77・・肩部、80・・圧力調整バルブ、81・・ネジ部、82・・シール部、85・・雌ネジ部、86・・大径部、87・・ストッパ、96・・ブレード、B・・ビット。

Claims (8)

  1. モータと、
    前記モータにより駆動し、オイルが封入されるオイルユニットと、
    前記オイルユニットから突出する出力軸と、
    前記出力軸に形成され、先端がビット挿入孔となる貫通孔と、
    前記ビット挿入孔よりも奥側で前記貫通孔に設けられ、封入されたオイルの圧力を調整可能な調圧構造と、
    前記ビット挿入孔に設けられ、挿入されたビットの後部を保持可能なビット保持部と、を有し、
    前記調圧構造は、前記貫通孔に形成された雌ネジ部に螺合するネジ部と、前記ネジ部と同軸で形成されて前記貫通孔を閉塞するシール部とからなり、前記ネジ部を前記ビット挿入孔側に向けて前記オイルユニット側から前記貫通孔に収容されて、回転操作によって前記貫通孔内で軸方向にねじ送りすることで圧力を調整可能な弁部材であり、
    前記弁部材は、前記雌ネジ部の奥側で前記貫通孔内に形成されたストッパに前記シール部が当接して前記ビット挿入孔側への移動を規制されることで、前記貫通孔内で前記ビット保持部と接触不能に設けられている動力工具。
  2. 前記ビット挿入孔は、前記貫通孔における前記弁部材が設けられる部分よりも大径に形成され、前記ビット保持部が前記ビット挿入孔の内底面に当接して奥側への移動を規制されることで、前記弁部材と接触不能となっていることを特徴とする請求項1に記載の動力工具。
  3. 前記ネジ部は、前記シール部よりも小径に形成されて前記雌ネジ部に螺合していることを特徴とする請求項1又は2に記載の動力工具。
  4. 前記シール部には、複数のOリングが外装されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の動力工具。
  5. 前記ビット保持部は、前記出力軸の先端側から前記ビット挿入孔に挿入されて前記ビットの後部を受ける筒状部材であることを特徴とする請求項1乃至の何れかに記載の動力工具。
  6. 前記筒状部材における前記出力軸の先端側は、当該先端側へ向かって拡開するテーパ状であることを特徴とする請求項に記載の動力工具。
  7. 前記筒状部材に、Oリングが外装されていることを特徴とする請求項5又は6に記載の動力工具。
  8. モータと、
    前記モータにより駆動し、オイルが封入されるオイルユニットと、
    前記オイルユニットから突出する出力軸と、
    前記出力軸の先端に形成されるビット挿入孔と、
    前記ビット挿入孔よりも奥側で前記ビット挿入孔に連設され、前記ビット挿入孔よりも小径となる調圧孔と、
    前記調圧孔内に没入状態で設けられ、封入されたオイルの圧力を調整可能な圧力調整バルブと、
    前記ビット挿入孔の内底面に設けられるリング状の肩部と、
    前記ビット挿入孔に設けられて前記肩部に当接し、挿入されたビットの後部を保持可能なビットピースと、を有し、
    前記ビットピースが、前記肩部により奥側への移動を規制されることで、前記調圧孔内に没入する前記圧力調整バルブと接触不能に設けられている動力工具。
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