以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
<車両用制御システム>
まず、本発明の一実施形態に係る車両用制御システム10の構成について図1を参照して説明する。
車両用制御システム10は、車両(以下、説明の便宜上、「自車両」と記載する。)1に搭載されて、自車両1の運転を支援する機能に関わる制御などを行うシステムである。この自車両1の運転を支援する機能の一つに、自車両1と自車両1の周囲の衝突可能性がある物標(本実施形態では自車両1の進行方向にある障害物)との衝突を回避または衝突による被害を軽減するためのAEB(Advanced Emergency Braking)機能がある。このAEB機能には、自動ブレーキの作動前に衝突の可能性を警報する衝突警報機能と、ドライバに衝突を回避するための行動を促すために、自車両1を1次ブレーキ用指示減速度で減速させる1次ブレーキ機能(緩ブレーキ機能)と、衝突の回避及び衝突による被害の軽減のために、自車両1を1次ブレーキ用指示減速度よりも大きい2次ブレーキ用指示減速度で減速させる2次ブレーキ機能(強ブレーキ機能)が含まれており、自車両1と障害物との衝突の可能性が高くなるにつれて、衝突警報機能、1次ブレーキ機能、2次ブレーキ機能の順に作動するように制御される。
車両用制御システム10には、図1に示すように、演算用ECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)11及び制御用ECU12などの複数のECUが備えられている。演算用ECU11及び制御用ECU12などの複数のECU夫々は、マイコン(マイクロコントローラ)を備えており、マイコンには、CPU及びメモリが内蔵されている。演算用ECU11及び制御用ECU12などの複数のECU夫々は、他のECUとCAN(Controller Area Network)通信プロトコルなどによる双方向通信が可能に接続されている。なお、演算用ECU11による演算処理及び制御用ECU12による制御処理の詳細については後述する。
車両用制御システム10には、自車両1の前方を監視する前方監視センサとして利用するためのカメラ13が備えられている。カメラ13は、例えば、左右両眼のイメージセンサにより構成され、所定のフレームレートで画像を連続して撮像可能なステレオカメラであり、自車両1の前方を広角で撮像可能なように、例えば、車室内の前部中央のルームミラーの前方に設置されている。カメラ13は、左右両眼のイメージセンサから入力される一対の画像データを出力信号として出力する。カメラ13の出力信号は、CANなどにより構成される車載ネットワークを介して演算用ECU11に入力される。なお、左右両眼のイメージセンサにより撮像された各画像で同一対象物に対応する対象画素を抽出し、その一対の画像間での対象画素の位置のずれ量を検出して、三角測量の原理で同一対象物までの距離を算出するとともに当該同一対象物の方向を算出することが可能である。
車両用制御システム10には、車速センサ14が備えられている。車速センサ14は、自車両1における車軸の回転数に比例して発生されるパルス信号の数量を計測することによって自車両1の車速を計測することが可能になっており、計測した車速を示す車速信号を出力信号として出力する。車速センサ14の出力信号(車速信号)は、CANなどにより構成される車載ネットワークを介して演算用ECU11に入力される。
車両用制御システム10には、油圧式のブレーキシステムが搭載されている。ブレーキシステムは、ブレーキペダル、ブレーキブースタ、マスタシリンダ、ブレーキアクチュエータ15及び各車輪に設けられるブレーキを含む。ブレーキペダルは、運転席に着座した運転者の右足での足踏み操作が便利な位置に配置されている。ブレーキペダルが踏まれると、そのブレーキペダルに入力された踏力がブレーキブースタに伝達される。ブレーキブースタでは、エンジンの吸気系に発生する負圧が利用され、その負圧と大気圧との圧力差によりブレーキペダルの踏力が増幅される。ブレーキブースタで増幅された力がブレーキブースタからマスタシリンダに伝達され、その力に応じた油圧がマスタシリンダから発生する。マスタシリンダの油圧がブレーキアクチュエータ15に伝達され、ブレーキアクチュエータ15から各車輪に設けられたブレーキのホイールシリンダに油圧が供給されて、その油圧により、各ブレーキから車輪に制動力(ブレーキ力)が付与される。また、ブレーキアクチュエータ15には、電動ポンプが内蔵されており、自動ブレーキ(1次ブレーキ、2次ブレーキ)の作動時には、電動ポンプがバッテリからの電力で駆動されて、電動ポンプで発生した油圧が各ホイールシリンダに供給される。なお、本実施形態では、アクセルペダルが別途設けられている。
車両用制御システム10には、警報器16が備えられている。警報器16は、各種の警報を出力するものであり、その警報は、光により出力されてもよいし、音または音声により出力されてもよい。
続いて、図1の演算用ECU11による演算処理及び図1の制御用ECU12による制御処理について説明する。
演算用ECU11は、カメラ13を構成する左右両眼のイメージセンサで撮像された最新のフレームでの画像に基づいて、自車両1の進行方向の障害物(物標)の検出を行い、障害物を検出した場合には当該画像に基づいて検出した当該障害物の種別(「自動車」、「追従二輪車(自車両1が追従するドライバが搭乗しているバイクや自転車などの二輪車)」、「人」、「横断二人車(自車両1の前方を横断するドライバが搭乗しているバイクや自転車などの二輪車)」、「その他(ガードレール、壁などの地物)」を判別する(本発明の「物標種別判別手段」による処理に相当)。例えば、当該判別は、複数の画像(自動車、追従二輪車、人、横断二人車、その他(ガードレール、壁など))を用意しておいて、パターンマッチングなどにより行う。なお、障害物の種別「自動車」が本発明の物標の種別「自動車」に相当し、障害物の種別「追従二輪車」、「横断二輪車」が、本発明の物標の種別「車輪を有する乗り物の特徴及び人の特徴を併せ持つ複合体」に相当し、障害物の種別「人」が本発明の物標の種別「人」に相当する。
また、演算用ECU11は、CANなどにより構成される車載ネットワークを介して受信した情報に基づいて、自車両1がそのままの速度で走行し続けた場合に、自車両1が障害物に衝突するまでの予測時間である衝突予測時間(以下、「現在のTTC」と記載する。TTC:Time to Collision)を算出する。
演算用ECU11による現在のTTCの算出は例えば次のようにして行われる。演算用ECU11は、カメラ13を構成する左右両眼のイメージセンサで撮像された最新のフレームでの一対の画像を基に、最新のフレームでの(現時点での)自車両1の進行方向における自車両1から障害物上の箇所までの距離である対障害物距離(対物標距離)を算出する。また、演算用ECU11は、最新のフレームでの対障害物距離及び1フレーム前のフレームでの対障害物距離と、両フレーム間の時間とに基づいて、現時点での自車両1の進行方向における自車両1と障害物との相対速度である対障害物相対速度を算出する。そして、演算用ECU11は、算出した現時点での対障害物距離を、算出した現時点での対障害物相対速度で除算し、除算結果を現在のTTCとする(本発明の「衝突予測時間算出手段」による処理に相当)。
また、演算用ECU11は、CANなどにより構成される車載ネットワークを介して受信した情報に基づいて、衝突警報機能を作動させるタイミングの目標となる目標時間である衝突警報用目標TTC、1次ブレーキ機能を作動させるタイミングの目標となる目標時間である1次ブレーキ用目標TTC、及び、2次ブレーキ機能を作動させるタイミングの目標となる目標時間である2次ブレーキ用目標TTCの各目標TTCを算出する。
演算用ECU11による各目標TTCの算出の一連の処理は例えば次のようにして行われる。
演算用ECU11は、自車両1の進行方向における自車両1と障害物との相対速度である対障害物相対速度が0となるまでに自車両1が走行することになる制動距離を算出する。この制動距離の算出は例えば次のようにして行われる。演算用ECU11は、上記した演算処理により、現時点での対障害物距離を算出し、算出した対障害物距離などを利用して現時点での対障害物相対速度を算出する。演算用ECU11には、車速センサ14から現時点での自車両1の車速(自車速)を示す車速信号が入力される。演算用ECU11が備えるメモリには、自車両1の自車速及び対障害物相対速度に、二次ブレーキ機能で用いる2次ブレーキ用指示減速度に対応したブレーキ力を付与した場合の制動距離(正の値)を対応付けたマップデータ(以下、「制動距離マップデータ」と記載する。)が記憶されており、演算用ECU11は、制動距離マップデータを用いて、受信した現時点での自車両1の自車速及び算出した現時点での対障害物相対速度に対応する制動距離を算出する(本発明の「制動距離算出手段」による処理に相当)。なお、制動距離に、2次ブレーキ開始条件(現在のTTCが2次ブレーキ用目標TTC以下になること)の成立時点から2次ブレーキのブレーキ力が実際に付与されるまでの時間遅れの間の自車両1の走行距離、2次ブレーキの付与開始から2次ブレーキ用指示減速度に達するまでの時間遅れの間の自車両1の走行距離、2次ブレーキ用指示減速度に達してから対障害物相対速度が0になるまでの間の自車両1の走行距離などを含むように、制動距離マップデータは作成されている。
演算用ECU11は、ドライバがブレーキペダルを踏むブレーキ操作中の場合、ブレーキ力に基づく減速度(例えば、自車両1の複数の自車速を用いて算出した減速度)に基づいて補正距離を算出する。この補正距離の算出は例えば次のようにして行われる。演算用ECU11が備えるメモリには、ドライバのブレーキ操作によるブレーキ力に基づく減速度に、正の値である補正距離を対応付けたマップデータ(以下、「補正距離マップデータ」と記載する。)が記憶されており、演算用ECU11は、補正距離マップデータを用いて、ドライバのブレーキ操作により付与されているブレーキ力に基づく現時点での減速度(ブレーキ力に関する指標)に対応する補正距離を算出する(本発明の「補正距離算出手段」による処理に相当)。ただし、ドライバがブレーキ操作中でない場合には、演算用ECU11により補正距離の算出は行われず、後述の2次ブレーキ用目標TTCなどの算出では補正距離に「0」が用いられる。上述のブレーキ力に関する指標は、ブレーキ液圧であってもよいし、ブレーキ操作量であってもよい。
演算用ECU11は、対障害物相対速度を0とすることを目標にする、対障害物距離の検出が行われることになる障害物上の箇所からの自車両の進行方向と反対方向における目標距離を、判別した障害物の種別に基づいて決定する。この目標距離の決定は例えば次のようにして行われる。演算用ECU11が備えるメモリには、障害物の種別が「自動車」である場合の正の値である目標距離(自動車用)、「追従二輪車」である場合の正の値である目標距離(追従二輪車用)、「人」である場合の正の値である目標距離(人用)、「横断二輪車」である場合の正の値である目標距離(横断二輪車用)が記憶されており、演算用ECU11は、当該メモリの記憶内容を用いて、目標距離を、判別した障害物の種別が「自動車」である場合には目標距離(自動車用)に、「追従二輪車」である場合には目標距離(追従二輪車用)に、「人」である場合に目標距離(人用)に、「横断二輪車」である場合に目標距離(横断二輪車用)に決定する(本発明の「目標距離決定手段」による処理に相当)。
本実施形態では、目標距離(自動車用)<目標距離(人用),目標距離(横断二輪車用)<目標距離(追従二輪車用)となるように設定されており、目標距離(人用)<目標距離(横断二輪車用)又は目標距離(人用)=目標距離(横断二輪車用)又は目標距離(人用)>目標距離(横断二輪車用)となるように設定されている。
目標距離(自動車用)の一例及び目標距離(追従二輪車用)の一例は図2(a)及び(b)に示す通りである。目標距離(自動車用)TADは、図2(a)に例を示すように、対障害物距離の検出が行われることになる障害物である自動車TA上の箇所(自動車TAの自車両1側の端部)TA1を起点として、自車両1の進行方向と反対方向への距離であり、例えば0.5(m)などの正の値で設定されている。また、目標距離(追従二輪車用)TBDは、図2(b)に例を示すように、対障害物距離の検出が行われることになる障害物である追従二輪車TB上の箇所(追従二輪車TBに搭乗しているドライバの自車両1側の端部)TB1を起点として、自車両1の進行方向と反対方向への距離であり、TBD>TADとなる、例えば1.5(m)などの正の値で設定されている。起点となる追従二輪車TB上の箇所TB1は、追従二輪車TBの自車両1側の端部TB2よりも自車両1から離れた前方側になる。
演算用ECU11は、制動距離、補正距離、目標距離などを利用して、衝突警報用目標TTC、1次ブレーキ用目標TTC、及び、2次ブレーキ用目標TTCの各目標TTCを算出する。この各目標TTCの算出は例えば次のようにして行われる。演算用ECU11は、2次ブレーキ用目標TTC=(制動距離-補正距離+目標距離)÷現時点の対障害物相対速度を算出する。この算出に使われる補正距離は、ドライバがブレーキ操作中の場合には補正距離マップデータを用いて算出される補正距離(正の値)であり、ドライバがブレーキ操作中でない場合には「0」である。また、この算出に使われる目標距離は、障害物の種別に応じて決定される目標距離である。演算用ECU11には、車速センサ14から現時点での自車両1の車速(自車速)を示す車速信号が入力される。演算用ECU11が備えるメモリには、自車両1の自車速に、1次ブレーキ機能を2次ブレーキ機能よりも先に作動させる1次ブレーキ用先出時間を対応付けたマップデータ(以下、「1次ブレーキ用先出時間マップデータ」と記載する。)が記憶されており、演算用ECU11は、1次ブレーキ用先出時間マップデータを用いて、現時点の自車両1の自車速に対応する1次ブレーキ用先出時間を算出し、1次ブレーキ用目標TTC=2次ブレーキ用目標TTC+1次ブレーキ用先出時間を算出する。なお、1次ブレーキ用目標TTCの算出及び/又は2次ブレーキ用目標TTCの算出が本発明の「目標時間算出手段」による処理に相当する。また、演算用ECU11が備えるメモリには、自車両1の自車速に、衝突警報機能を2次ブレーキ機能よりも先に作動させる衝突警報用先出時間を対応付けたマップデータ(以下、「衝突警報用先出時間マップデータ」と記載する。)が記憶されており、演算用ECU11は、衝突警報用先出時間マップデータを用いて、現時点の自車両1の自車速に対応する衝突警報用先出時間を算出し、衝突警報用目標TTC=2次ブレーキ用目標TTC+衝突警報用先出時間を算出する。なお、1次ブレーキ用先出時間マップデータ及び衝突警報用先出時間マップデータにおいて、同じ自車速では、衝突警報用先出時間>1次ブレーキ用先出時間となるように設定されている。
なお、同じ自車速での1次ブレーキ用先出時間を障害物の種別にかかわらず同じ値にしてもよいし、同じ自車速での障害物の種別に基づく1次ブレーキ用先出時間の夫々が他の障害物の種別に基づく1次ブレーキ用先出時間の少なくとも一つと異なるようにしてもよい。また、同じ自車速での衝突警報用先出時間を障害物の種別にかかわらず同じ値にしてもよいし、同じ自車速での障害物の種別に基づく衝突警報用先出時間の夫々が他の障害物の種別に基づく衝突警報用先出時間の少なくとも一つと異なるようにしてもよい。
以上が、演算用ECU11による各目標TTCの算出の一連の処理の一例である。
また、演算用ECU11は、現在のTTCが衝突警報用目標TTC以下になると、衝突警報機能を実行すべき旨の信号を制御用ECU12へ送信し、制御用ECU12は、演算用ECU11から衝突警報機能を実行すべき旨の信号を受信すると衝突警報機能の実行制御を行い、これにより警報器16から警報が出力される。また、現在のTTCが1次ブレーキ用目標TTC以下になると、1次ブレーキ機能を実行すべき旨の信号を制御用ECU12へ送信し、制御用ECU12は、演算用ECU11から1次ブレーキ機能を実行すべき旨の信号を受信すると1次ブレーキ機能の実行制御を行い、これにより1次ブレーキがかかる。1次ブレーキ機能の実行制御では自車速に応じた1次ブレーキ用指示減速度が用いられ、1次ブレーキ作動中の1次ブレーキ用指示減速度は固定されている。また、現在のTTCが2次ブレーキ用目標TTC以下になると、2次ブレーキ機能を実行すべき旨の信号を制御用ECU12へ送信し、制御用ECU12は、演算用ECU11から2次ブレーキ機能を実行すべき旨の信号を受信すると2次ブレーキ機能の実行制御を行い、これにより1次ブレーキがかかる。2次ブレーキ機能の実行制御では1次ブレーキ用指示減速度よりも大きい2次ブレーキ用指示減速度が用いられ、2次ブレーキ作動中の2次ブレーキ用指示減速度は固定されている。なお、この1次ブレーキ機能に関する処理及び/又は2次ブレーキ機能に関する処理が、本発明の「自動ブレーキ作動手段」による処理に相当する。
<車両用制御システムにおいて行われる車両制御処理の処理フロー>
続いて、車両用制御システムにおいて行われる車両制御処理の処理フローについて図3から図5を参照しつつ詳細に説明する。図3の車両制御処理の処理フローは、所定周期(例えば、5ms)により実行される。
車両制御処理では、まず、演算用ECU11は、カメラ13を構成する左右両眼のイメージセンサで撮像された最新のフレームでの画像に基づいて、自車両1の進行方向に障害物が有るか否かを判定する(ステップS1)。自車両1の進行方向に障害物が無いと判定された場合には(ステップS1のNO)、車両制御処理の処理フローを終了する。
ステップS1において自車両1の進行方向に障害物が有ると判定された場合には(ステップS1のYES)、ステップS2の処理に進み、演算用ECU11は、カメラ13を構成する左右両眼のイメージセンサで撮像された最新のフレームでの画像に基づいて、障害物の種別が「自動車」であるか否かを判定する(ステップS2)。
ステップS2の判定処理において障害物の種別が「自動車」であると判定された場合には(ステップS2のYES)、演算用ECU11は、上記した制動距離の算出処理内容により、正の値である制動距離(自動車用)を算出し(ステップS3)、ステップS4の処理に進む。
演算用ECU11は、ドライバがブレーキ操作中であるか否かを判定する(ステップS4)。ドライバがブレーキ操作中であると判定した場合には(ステップS4のYES)ステップS5の処理に進み、一方、ドライバがブレーキ操作中でないと判定した場合には(ステップS4のNO)ステップS6の処理に進む。
演算用ECU11は、上記した補正距離の算出処理内容により、現時点での減速度に対応する正の値である補正距離を算出し(ステップS5)、ステップS6の処理に進む。
演算用ECU11は、上記した目標距離の決定処理内容により、演算用ECU11が備えるメモリに障害物の種別「自動車」に対応付けられて記憶されている正の値である目標距離(自動車用)を読み出して、目標距離を読み出した目標距離(自動車用)に決定し(ステップS6)、ステップS7の処理に進む。
演算用ECU11は、上記した各目標TTC(衝突警報用目標TTC、1次ブレーキ用目標TTC、2次ブレーキ用目標TTC)の算出処理内容により、各目標TTCを算出し(ステップS7)、ステップS26の処理に進む。
ステップS2の判定処理において障害物の種別が「自動車」でないと判定された場合には(ステップS2のNO)、ステップS8の処理に進み、演算用ECU11は、カメラ13を構成する左右両眼のイメージセンサで撮像された最新のフレームでの画像に基づいて、障害物の種別が「追従二輪車」であるか否かを判定する(ステップS8)。
ステップS8の判定処理において障害物の種別が「追従二輪車」であると判定された場合には(ステップS8のYES)、演算用ECU11は、上記した制動距離の算出処理内容により、正の値である制動距離(追従二輪車用)を算出し(ステップS9)、ステップS10の処理に進む。
演算用ECU11は、ドライバがブレーキ操作中であるか否かを判定する(ステップS10)。ドライバがブレーキ操作中であると判定した場合には(ステップS10のYES)ステップS11の処理に進み、一方、ドライバがブレーキ操作中でないと判定した場合には(ステップS10のNO)ステップS12の処理に進む。
演算用ECU11は、上記した補正距離の算出処理内容により、現時点での減速度に対応する正の値である補正距離を算出し(ステップS11)、ステップS12の処理に進む。
演算用ECU11は、上記した目標距離の決定処理内容により、演算用ECU11が備えるメモリに障害物の種別「追従二輪車」に対応付けられて記憶されている正の値である目標距離(追従二輪車用)を読み出して、目標距離を読み出した目標距離(追従二輪車用)に決定し(ステップS12)、ステップS13の処理に進む。
演算用ECU11は、上記した各目標TTC(衝突警報用目標TTC、1次ブレーキ用目標TTC、2次ブレーキ用目標TTC)の算出処理内容により、各目標TTCを算出し(ステップS13)、ステップS26の処理に進む。
ステップS8の判定処理において障害物の種別が「追従二輪車」でないと判定された場合には(ステップS8のNO)、ステップS14の処理に進み、演算用ECU11は、カメラ13を構成する左右両眼のイメージセンサで撮像された最新のフレームでの画像に基づいて、障害物の種別が「人」であるか否かを判定する(ステップS14)。
ステップS14の判定処理において障害物の種別が「人」であると判定された場合には(ステップS14のYES)、演算用ECU11は、上記した制動距離の算出処理内容により、正の値である制動距離(人用)を算出し(ステップS15)、ステップS16の処理に進む。
演算用ECU11は、ドライバがブレーキ操作中であるか否かを判定する(ステップS16)。ドライバがブレーキ操作中であると判定した場合には(ステップS16のYES)ステップS17の処理に進み、一方、ドライバがブレーキ操作中でないと判定した場合には(ステップS16のNO)ステップS18の処理に進む。
演算用ECU11は、上記した補正距離の算出処理内容により、現時点での減速度に対応する正の値である補正距離を算出し(ステップS17)、ステップS18の処理に進む。
演算用ECU11は、上記した目標距離の決定処理内容により、演算用ECU11が備えるメモリに障害物の種別「人」に対応付けられて記憶されている正の値である目標距離(人用)を読み出して、目標距離を読み出した目標距離(人用)に決定し(ステップS18)、ステップS19の処理に進む。
演算用ECU11は、上記した各目標TTC(衝突警報用目標TTC、1次ブレーキ用目標TTC、2次ブレーキ用目標TTC)の算出処理内容により、各目標TTCを算出し(ステップS19)、ステップS26の処理に進む。
ステップS14の判定処理において障害物の種別が「人」でないと判定された場合には(ステップS14のNO)、ステップS20の処理に進み、演算用ECU11は、カメラ13を構成する左右両眼のイメージセンサで撮像された最新のフレームでの画像に基づいて、障害物の種別が「横断二輪車」であるか否かを判定する(ステップS20)。
ステップS20の判定処理において障害物の種別が「横断二輪車」であると判定された場合には(ステップS20のYES)、演算用ECU11は、上記した制動距離の算出処理内容により、正の値である制動距離(横断二輪車用)を算出し(ステップS21)、ステップS22の処理に進む。
演算用ECU11は、ドライバがブレーキ操作中であるか否かを判定する(ステップS22)。ドライバがブレーキ操作中であると判定した場合には(ステップS22のYES)ステップS23の処理に進み、一方、ドライバがブレーキ操作中でないと判定した場合には(ステップS22のNO)ステップS24の処理に進む。
演算用ECU11は、上記した補正距離の算出処理内容により、現時点での減速度に対応する正の値である補正距離を算出し(ステップS23)、ステップS24の処理に進む。
演算用ECU11は、上記した目標距離の決定処理内容により、演算用ECU11が備えるメモリに障害物の種別「横断二輪車」に対応付けられて記憶されている正の値である目標距離(横断二輪車用)を読み出して、目標距離を読み出した目標距離(横断二輪車用)に決定し(ステップS24)、ステップS25の処理に進む。
演算用ECU11は、上記した各目標TTC(衝突警報用目標TTC、1次ブレーキ用目標TTC、2次ブレーキ用目標TTC)の算出処理内容により、各目標TTCを算出し(ステップS25)、ステップS26の処理に進む。
演算用ECU11は、上記した現在のTTCの算出処理内容により、現在のTTCを算出し(ステップS26)、ステップS27の処理に進む。
演算用ECU11は、現在のTTCが衝突警報用目標TTC以下であるか否かを判定する(ステップS27)。現在のTTCが衝突警報用目標TTC以下でないと判定した場合には(ステップS27のNO)、車両制御処理の処理フローを終了する。
一方、現在のTTCが衝突警報用目標TTC以下であると判定した場合には(ステップS27のYES)、演算用ECU11は、衝突警報機能が未作動の場合には、衝突警報機能の作動を決定し、制御用ECU12は警報器16から警報を出力するための制御を行い(ステップS28)、ステップS29の処理に進む。
演算用ECU11は、現在のTTCが1次ブレーキ用目標TTC以下であるか否かを判定する(ステップS29)。現在のTTCが1次ブレーキ用目標TTC以下でないと判定した場合には(ステップS29のNO)、車両制御処理の処理フローを終了する。
一方、現在のTTCが1次ブレーキ用目標TTC以下であると判定した場合には(ステップS29のYES)、演算用ECU11は、1次ブレーキ機能が未作動であり、2次ブレーキ機能が未作動の場合には、1次ブレーキ機能の作動を決定し、制御用ECU12は1次ブレーキ用指示減速度にて1次ブレーキ機能を作動するための制御を行い(ステップS30)、ステップS31の処理に進む。1次ブレーキ機能作動中の1次ブレーキ用指示減速度は固定値である。
演算用ECU11は、現在のTTCが2次ブレーキ用目標TTC以下であるか否かを判定する(ステップS31)。現在のTTCが2次ブレーキ用目標TTC以下でないと判定した場合には(ステップS31のNO)、車両制御処理の処理フローを終了する。
一方、現在のTTCが2次ブレーキ用目標TTC以下であると判定した場合には(ステップS31のYES)、演算用ECU11は、2次ブレーキ機能が未作動の場合には、2次ブレーキ機能の作動を決定し、制御用ECU12は2次ブレーキ用指示減速度にて2次ブレーキ機能を作動するための制御を行い(ステップS32)、車両制御処理の処理フローを終了する。2次ブレーキ機能作動中の2次ブレーキ用指示減速度は固定値である。
ステップS20の判定処理において障害物の種別が「横断二輪車」でないと判定された場合には(ステップS20のNO)、この場合、障害物の種別は「その他」であり、演算用ECU11は、衝突警報用目標TTCを算出し(ステップS33)、ステップS34の処理に進む。障害物の種別が「その他」である場合の衝突警報用目標TTCは自車速に応じて予め定められて記憶されている。なお、障害物の種別が「その他」である場合の衝突警報用目標TTCは、これに限定されるものではなく、例えば、自車速によらず一定値としてもよい。
演算用ECU11は、上記した現在のTTCの算出処理内容により、現在のTTCを算出し(ステップS34)、ステップS35の処理に進む。
演算用ECU11は、現在のTTCが衝突警報用目標TTC以下であるか否かを判定する(ステップS35)。現在のTTCが衝突警報用目標TTC以下でないと判定した場合には(ステップS35のNO)、車両制御処理の処理フローを終了する。
一方、現在のTTCが衝突警報用目標TTC以下であると判定した場合には(ステップS35のYES)、演算用ECU11は、衝突警報機能の作動を決定し、制御用ECU12は警報器16から警報を出力するための制御を行い(ステップS36)、車両制御処理の処理フローを終了する。
<効果>
以上の実施形態によれば、対障害物相対速度を0とすることを目標にする、自車両1との対障害物距離の検出が行われることになる障害物上の箇所(例えば、図2(a)において符号TA1で示す箇所、図2(b)において符号TB1で示す箇所)からの自車両1の進行方向と反対方向における目標距離を、当該障害物の種別に基づいて決定するため、障害物の種別に応じた適正な目標距離の位置で対障害物相対速度を0にでき、障害物の種別にかかわらず自車両1と障害物との衝突の回避や衝突被害の軽減を図ることが可能になる。
また、対障害物相対速度が、障害物の自車両1側の端部から自車両1の進行方向と反対方向に、所定の距離(例えば、1m)よりも大きい、大きめの距離離れた位置で0となるようなタイミングで、自動ブレーキ(1次ブレーキ、2次ブレーキ)が作動すると、自ら自車両1の速度を落とそうとするドライバに対してお節介になったり、ドライバが自動ブレーキ(1次ブレーキ、2次ブレーキ)を過信してしまったりするという問題が生じるが、障害物の種別に応じて目標距離を適切に設定することにより、対障害物相対速度が大きめの距離離れた位置で0となるような早めのタイミングで自動ブレーキが作動することを回避でき、当該問題を解消可能である。
また、自動ブレーキ(1次ブレーキ、2次ブレーキ)の減速度にフィードバック制御を用いた複雑な制御を行わずに、自動ブレーキ(1次ブレーキ、2次ブレーキ)作動中の自動ブレーキ(1次ブレーキ、2次ブレーキ)の指示減速度(1次ブレーキ用指示減速度、2次ブレーキ用指示減速度)を固定とすることで、目標距離の位置で対障害物相対速度を0とするための複雑な制御を回避して車両用制御システム10のコストの増大を抑制できる。
また、障害物の種別が「自動車」の場合、自動車ののっぺりとした形状などにより、自動車の自車両1側の端部位置の特定が容易であり、自車両1と自動車の自車両側の端部位置との対障害物距離の検出が可能である。一方で、障害物の種別が「追従二輪車」の場合、追従二輪車の形状などにより、追従二輪車の自車両側の端部の特定が困難となることが想定され、自車両1と追従二輪車の自車両側の端部よりも自車両1から離れた箇所(例えば、図2(b)において符号TB1で示す箇所などの追従二輪車のうちのドライバの自車両1側の端部)との対障害物距離を検出してしまう可能性がある。また、障害物の種別が「人」の場合、人は動きが一定でないために、自車両と人との衝突を回避することを可能にする自車両1と人との対障害物距離が分かりにくい。上記の実施形態によれば、目標距離(追従二輪車用)、目標距離(人用)及び目標距離(横断二輪車)を目標距離(自動車用)よりも大きくなるように決定することにより、障害物の種別にかかわらず衝突の回避や衝突被害の軽減を図ることが可能になる。
また、自動ブレーキ(1次ブレーキ、2次ブレーキ)を作動させるか否かを決定するに際して、ドライバのブレーキ操作に基づいて付与されるブレーキ力に基づく減速度が考慮されるため、自動ブレーキ(1次ブレーキ、2次ブレーキ)の不要な作動を抑制でき、自ら自車両1の速度を落とそうとするドライバに対して自動ブレーキ(1次ブレーキ、2次ブレーキ)がお節介となることを防止できる。
また、自車両1の前方を監視する前方監視センサ(本実施形態では、カメラ13)が変更となり、追従二輪車などの障害物との対障害物距離や対障害物相対速度などの検出仕様が変更になった場合であっても、障害物の種別に応じた目標距離を調整するだけの簡易な変更を行うことにより、障害物との衝突の回避や衝突被害の軽減を図ることができる。
<変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
例えば、上記の実施形態では、障害物の種別「車輪を有する乗り物の特徴及び人の特徴を併せ持つ複合体」の例として「追従二輪車」、「横断二輪車」を例に挙げて説明したがこれに限定されるものではなく、「人が搭乗している一輪車」、「人が乗っているスケボー」、「人が乗っているキックボード」などであってもよい。
また、上記した実施形態では、自車両1の前方を監視する前方監視センサとして、ステレオカメラで構成されるカメラ13を用いているが、これに限定されるものではなく、例えば、障害物の種別の判別用に単眼カメラを用い、対障害物距離や対障害物相対速度の検出用にミリ波レーダ、レーザレーダなどのレーダを用いるようにしてもよい。
また、上記の実施形態では、AEBにおける目標距離を障害物の種別に応じて変更するようにしているが、例えば、全車速ACC(Adaptive Cruise Control)における追従停止時の車間距離を障害物の種別に応じて変更するようにしてもよい。この場合、例えば、障害物の種別が「追従二輪車」である場合の車間距離を、障害物の種別が「自動車」である場合の車間距離よりも大きくなるように設定するようにする。このようにすれば、障害物の種別にかかわらず、全車速ACCでの追従走行中の適正な車間距離の保持や追従停止時の衝突の回避や衝突被害の軽減を図ることができる。
また、上記の実施形態で説明した内容を、エンジンを発電するためだけに利用し、車の駆動は電気モーターを使用する、ワンペダルモードと2ペダルモードとの切替機能を有するシリーズハイブリッド車などの各種ハイブリッド車に適用することができる。なお、ワンペダルモードは、アクセル及びブレーキを一つのペダルで行うモード(ペダルを踏み込むとその踏み込みに応じた駆動力により加速し、ペダルの踏み込みを緩めるとその緩めに応じた回生ブレーキ力により減速するモード)である。また、2ペダルモードは、アクセル及びブレーキを夫々アクセルペダル及びブレーキペダルで行うモード(アクセルペダルを踏み込むとその踏み込みに応じた駆動力により加速し、ブレーキペダルを踏み込むとその踏み込みに応じたブレーキ力により減速するモード)である。この場合、上述のブレーキ力を付与する付与手段におけるドライバの操作は、ワンペダルモードにおいてはペダルの踏み込みを緩めることであってもよく、2ペダルモードにおいてはブレーキペダルの踏み込むことであってもよい。
また、上記の実施形態で説明した内容を、アクセルガソリン車、電気自動車、シリーズハイブリッド車以外のハイブリッド車などの各種車両に適用することができる。
また、上記の実施形態では、自車両1が前方方向の走行中に自車両1の進行方向(自車両1の前方)の障害物の種別に応じて目標距離を変更するものであるが、これに限定されるものではなく、自車両1が後方方向の走行中に(バック中に)自車両1の進行方向(自車両の後方)の障害物の種別に応じて目標距離を変更するようにしてもよい。この場合、目標距離(自動車用)<目標距離(人用),目標距離(横断二輪車用)<目標距離(追従二輪車用)となるように設定されており、目標距離(人用)<目標距離(横断二輪車用)又は目標距離(人用)=目標距離(横断二輪車用)又は目標距離(人用)>目標距離(横断二輪車用)となるように設定されるようにする。
また、上記の実施形態で説明した内容や上記の変形例で説明した内容を適宜組み合わせるようにしてもよい。
その他、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
本発明は、自動ブレーキに関わる自車両の制御を行う車両用制御装置に広く適用可能である。