以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
また、本明細書及び特許請求の範囲では、便宜上、図1等に示されるように、可動コネクタの幅方向、左右方向を「X(方向)」、奥行き方向、前後方向を「Y(方向)」、高さ方向、上下方向を「Z(方向)」として記載する。そして、可動コネクタのZ方向における回路基板側を下側とし、可動コネクタ側を上側として記載する。しかしながら、それらは、可動コネクタ等の嵌合接続の方向や回路基板に対する実装の仕方を限定するものではない。ここでの可動コネクタは、「端子配列方向」がX方向、「接続対象物との接触方向」がY方向、「接続対象物の挿抜方向」がZ方向となるように配置されている。
(第1実施形態)
まず、本発明の第1実施形態に係る可動コネクタの構成の概略について、図1乃至図4を使用しながら説明する。
本実施形態の可動コネクタ100は、回路基板P(図2参照)に実装されて、接続対象物としての不図示のプラグコネクタを回路基板Pに導通接続するソケットコネクタに適用される。可動コネクタ100は、図1で示すように、「第1のハウジング」としての固定ハウジング102と、「第2のハウジング」としての可動ハウジング104と、複数の端子110とを備えている。可動コネクタ100は、回路基板Pの一方面である上面に実装される。プラグコネクタは、可動コネクタ100の一態様となるソケットコネクタの上方から挿入して導通接続するように構成されている。なお、本明細書及び特許請求の範囲に「第1の」、「第2の」と記載する場合、それらは、発明の異なる構成要素を区別するために用いるものであり、特定の順序や優劣等を示すために用いるものではない。
固定ハウジング102は、樹脂成形体で形成されている。固定ハウジング102は、図1及び図2に示すように、1対の側壁部102aと当該側壁部102aの対向する端部を連結する1対の連結部102bとを有する枠状に構成され、その内側が可動ハウジング104を配置する収容部102cとなっている。
側壁部102aは、図1に示すように、中央側に凸状に隆起する凸状部102a1が設けられている。側壁部102aの凸状部102a1が設けられている部位の内側には、図2に示すように、Z方向における下端から上方に向かって溝状に欠落した固定側端子固定溝102a2がX方向に沿って複数並んで形成されている。固定側端子固定溝102a2には、図2に示すように、端子110の固定ハウジング用固定部112が嵌合されて、固定ハウジング102に対して端子110を固定している。
また、本実施形態では、側壁部102aの下端側には、図1及び図3に示すように、並列した複数の端子110の両端外側に1対の保護壁102dが側壁部102aの外面側及び底面側に対して凸状になるように設けられている。保護壁102dは、図2に示すように、側壁部102aの下端側を跨ぐように設けられており、可動コネクタ100の輸送時に端子110の一端に設けられる基板接続部111が梱包パッケージの壁等に衝突するのを防いでいる。
連結部102bには、図1に示すように、Z方向に凸状に隆起する規制部102b1が固定ハウジング102の側壁部102aの内側に沿うように設けられている。規制部102b1には、可動ハウジング104のZ方向への移動を規制する固定金具106の両端側に有する係止部106aが係止される係止溝102b2が設けられている。
可動ハウジング104は、図1に示すように、X方向及びY方向で固定ハウジング102の収容部102cに収容可能な大きさの樹脂成形体にて形成されている。本実施形態では、可動ハウジング104は、収容部102cの上方から挿入されてから、可動部となる可動片113を備える端子110を固定ハウジング102及び可動ハウジング104の下方から複数挿入する。このように複数の端子110を固定ハウジング102と可動ハウジング104に取り付けることによって、可動ハウジング104は、複数の端子110を介して固定ハウジング102の収容部102cの空間内を三次元方向に変位可能に支持されて、フローティング機能を有するようになっている。
可動ハウジング104は、角筒状に形成された外壁104aを有している。外壁104aのX方向とY方向とにおける中央の上端には、上方に向かって開口するプラグコネクタ等の接続対象物の挿入口104bが形成されている。可動ハウジング104には、挿入口104bから外壁104aのZ方向における中央付近に至るまでの範囲に空隙が形成されている。この空隙は、端子110と、プラグコネクタが有するプラグ端子とが導通接触する接触室104cとして構成されている。挿入口104bは、X方向における両端については、Z方向における上方に向かって傾斜する誘導傾斜面を有するとともに、Y方向における両端についてはZ方向における下方に向かって傾斜する誘導傾斜面を有している。
外壁104aのX方向における両外側面には、Y方向における中央かつZ方向における下部からX方向における両外方に向かってそれぞれ突出する直方体状の変位規制突起104dが形成されている。変位規制突起104dは、図1及び図3に示すように、固定ハウジング102の連結部102bの規制部102b1の内側に突出して配置される。また、本実施形態では、可動ハウジング104の底面側の四隅には、図3に示すように、脚部104eが凸状に設けられている。
可動ハウジング104のX方向における変位は、図3及び図4に示すように、可動ハウジング104の底面側に設けられている脚部104eが固定ハウジング102の連結部102bの内周面側に接触することで規制される。また、可動ハウジング104のY方向における変位は、図1及び図3に示すように、可動ハウジング104の下方のX方向に突出する変位規制突起104dが固定ハウジング102の連結部102bの規制部102b1に接触することで規制される。さらに、可動ハウジング104のZ方向における変位は、図4に示すように、変位規制突起104dが固定金具106の天板部106bと固定ハウジング102の連結部102bの上面側に接触することで規制される。
可動ハウジング104は、図2及び図3で示すように、Y方向における中心を対称としてY方向における両外側の下端には、上方に位置する接触室104cに向かって貫通する貫通孔104fがX方向に沿って複数並んで形成されている。そして、貫通孔104fのそれぞれのY方向における両外側おいて、Z方向における下端から上方に向かって溝状に欠落した可動側端子固定溝104gがX方向に沿って複数並んで形成されている。可動側端子固定溝104gの下端側には、図2に示すように、端子110の基部114が固定されており、基部114の先端側に有する接触部115が可動側端子固定溝104gの上端側でY方向に変位可能となるように支持されている。
なお、本実施形態では、可動コネクタ100として、接続対象物となるプラグコネクタが挿抜される開口を有するソケットコネクタに適用した例について説明しているが、本実施形態の可動コネクタ100は、他の態様の可動コネクタにも適用可能である。例えば、本実施形態の可動コネクタ100は、接続対象物側に開口を有し、当該開口に嵌合される態様のフローティング機能を有する可動コネクタにも適用できる。
次に、本実施形態の可動コネクタに備わる端子の構成について、図5乃至図8を使用しながら説明する。なお、図6(B)では、図6(A)のC-C線断面図として、端子の直線部に対して垂直方向で切断した断面図を示している。また、図8では、端子を構成する端子片の平面図として端子を折り曲げる前の展開図を示す。
本実施形態の可動コネクタ100は、図5に示すように、複数の端子110を有しており、Y方向に沿って2行、X方向に沿って4列の合計8本の端子110で構成されている。これらの複数の端子110は、可動コネクタのX方向とY方向とにおける中心点を軸として点対称に配置されている。そして、複数の端子110は、それぞれが主にY方向とZ方向とに沿って伸長するように配置されている。端子110は、Y方向における前方に向かって伸長する前側端子110Aと、後方に向かって伸長する後側端子110Bとに区分することができる。前側端子110Aと後側端子110Bとは、図5に示すように、それぞれが可動コネクタ100のX方向に沿って等間隔に複数配置されている。前側端子110Aと後側端子110Bとは、同様の構造を有しているので、以下では、Y方向における前方に向かって伸長する前側端子110Aを示して端子110について説明する。
端子110は、図5、図6(A)及び図7に示すように、その一方の端部から他方の端部に向かって順に、基板接続部111と、固定ハウジング用固定部112と、可動片113と、基部114と、接触部115とを有している。本実施形態の端子110は、図8に示すように、平板の導電性金属板をプレス加工で打ち抜いた端子片110aを板厚方向に屈曲して形成されている曲げ端子として形成したものである。そして、端子110の各機能部及びその形状は、打ち抜いた導電性金属片が屈曲加工されて一体に形成されている。すなわち、本実施形態の端子110は、単一部品として形成されたものである。
基板接続部111は、図6(A)等に示すように、端子110の一方の端部に形成されている。基板接続部111は、固定ハウジング102の下方かつ正面から前方に突出するように配置されている(図1及び図2参照)。基板接続部111は、回路基板Pに対してはんだ付けで固定される(図2参照)。
固定ハウジング用固定部112は、基板接続部111から上方に向かって伸長している。固定ハウジング用固定部112には、X方向における両端の板縁部から、X方向における両外方に向かってそれぞれ突出するテーパ状の固定側突起112aが複数形成されている。固定ハウジング用固定部112は、固定ハウジング102の固定側端子固定溝102a2に対して圧入固定される(図2参照)。なお、本実施形態では、図6(A)等に示すように、固定ハウジング用固定部112に固定側突起112aが4つ設けられている例について説明しているが、固定側突起112aの個数は、4つに限定されない。
可動片113は、固定ハウジング102に対して可動ハウジング104を変位可能に支持する可動部としての機能を有している。可動片113は、図6(A)に示すように、第1の曲部113aと、第1の直線部113bと、第2の曲部113cと、第2の直線部113dと、第3の曲部113eとを有している。
可動片113は、端子110の材料とする導電性金属板の板面の面方向が端子配列方向であるX方向に沿って配置されている。また、導電性金属片をプレス加工で打ち抜いた破断面がX方向と面するように配置されている。すなわち、可動片113は、その板幅方向がX方向に沿うようにして、Y方向及びZ方向に伸長している。このようにして、可動片113は、端子配列方向に板面を向けることなく伸長する。
第1の曲部113aは、固定ハウジング用固定部112の上端からY方向における前方に向かって屈曲している。第1の直線部113bは、第1の曲部113aの一端からZ方向における下方かつY方向における前方に向かって伸長している。第2の曲部113cは、第1の直線部113bの一端からZ方向における下方かつY方向における前方に向かって屈曲している。第2の直線部113dは、第2の曲部113cの一端からY方向に向かって伸長している。第3の曲部113eは、第2の直線部113dの一端からZ方向における上方かつY方向における前方に向かって屈曲している。
可動片113は、第1の曲部113a、第1の直線部113b及び第2の曲部113cを有することによって、第2の直線部113d及び第3の曲部113eを固定ハウジング102の側壁部102aから離間させている。これによって、可動ハウジング104が固定ハウジング102に対してY方向における前後に大きく変位した場合でも、端子110、特に第1の直線部113bを可動ハウジング104の外壁104aに衝突しにくくすることができる。また、弾性手段として機能する可動片113の長さを確保するので、第1の直線部113bの固定ハウジング用固定部112への接触も防止できる。
このように、本実施形態では、可動コネクタ100は、可動片113によって可動ハウジング104が固定ハウジング102に対して三次元方向(X方向、Y方向及びZ方向並びにこれらを組み合わせた方向)に変位可能として支持される。このため、プラグコネクタ等の接続対象物との嵌合接続時におけるプラグ端子の挿入位置のずれを可動ハウジング104の変位によって吸収して、可動コネクタ100(ソケットコネクタ)と接続対象物(プラグコネクタ)とを正しく嵌合接続することができる。また、可動コネクタ100は、プラグ端子が正規の接触位置で導通接続した嵌合接続状態で、プラグ端子や回路基板Pが振動や衝撃によって変位した場合には、可動ハウジング104の変位によって振動等を吸収することができる。
また、可動片113には、図6(A)及び図6(B)に示すように、第1の直線部113bの一端面113b1から延出してから屈曲する形状となっているインピーダンス調整部116が設けられている。本実施形態では、インピーダンス調整部116は、図6(B)に示すように、第1の直線部113bと共に構成される断面がU字型となるように屈曲して折り返して設けられている。
なお、本実施形態では、インピーダンス調整部116は、第1の直線部113bと共に構成される断面がX方向に対して線対称となるU字型に屈曲して折り返される形状となっているが、線対称とならないJ字型に屈曲して折り返される形状としてもよい。また、インピーダンス調整部116は、第1の直線部113bの一端面113b1から直ぐに屈曲せずに、ある程度の長さの直線状の延出を経てから屈曲する断面形状としてもよい。さらに、本実施形態では、インピーダンス調整部116は、端子110の幅方向の大型化を抑制するために、第1の直線部113bとインピーダンス調整部116とのなす角度が90度未満となるように屈曲して設けられていればよい。このため、インピーダンス調整部116は、例えば、第1の直線部113bと共に構成される断面がV字型としてもよい。
また、インピーダンス調整部116の一端116aには、図6(A)及び図7等に示すように、第2の曲部113cに沿うように伸長する延長調整部117が設けられている。本実施形態では、延長調整部117は、第2の曲部113cに沿いながら第2の直線部113dのX方向における前端まで伸長するように設けられている。さらに、延長調整部117の基端側には、図7等に示すように、インピーダンス調整部116を曲げ易くするために、スリット117aが形成されている。
基部114は、第3の曲部113eの上端からZ方向における上方に向かって鉛直に伸長している。基部114は、Z方向に沿って複数の固定突起114aを有している。固定突起114aは、いずれもX方向における両端の板縁部から、X方向における両外方に向かってそれぞれテーパ状に突出するように形成されている。基部114は、可動ハウジング104の可動側端子固定溝104gに挿入される。その際に、固定突起114aは、可動側端子固定溝104gに対して圧入固定される。これによって、基部114は、可動ハウジング104に固定されるように構成されている。このように、可動片113と接触部115との間に位置する基部114が確実に可動ハウジング104に固定されるため、可動片113及び接触部115がそれぞれ変位することで生じる応力は、基部114を越えて反対側に伝達するのを抑制できる。
接触部115は、基部114の可動側端子固定溝104gへの挿入に伴って可動ハウジング104の貫通孔104fに収容されており、プラグ端子に対して導通接続する。接触部115は、図6(A)等で示すように、接触側曲部115aと、接触側直線部115bと、接触片部115cとを有している。
次に、本実施形態の可動コネクタ100の作用について、図面を使用しながら説明する。
前述したように、本実施形態では、端子110は、他の部位と比べてインピーダンスが高くなり易い可動片113の一端面113b1から延出してから屈曲するインピーダンス調整部116を有する構成となっている。このため、可動片113の断面積を増加させることによって、可動片113のインピーダンスを確実に低下させながら、可動片の一端面から直線状に延出する関連技術の形状と比べて、端子110の幅方向(X方向)の大型化を抑制することができる。なお、本明細書中における可動片113の「断面積」とは、可動片113の実際の断面積に加えて、可動片113の断面の外枠の有効スペースを示す投影面積も含むものとする。
特に、本実施形態では、可動片113の第1の直線部113bの一端面113b1から延出させたインピーダンス調整部116を折り返すように屈曲させる形状としている。このため、可動片113の第1の直線部113bの断面積をより大きく確保しながら、端子110の幅方向の大型化を必要最小限に留められるようなる。従って、より効果的に端子110の幅方向の大型化を抑制しながらインピーダンスを確実に低下させられるので、可動コネクタ100の大型化を抑制しながら、可動片113のインピーダンスを確実に低下させて安定した高速伝送を実現できる。
また、本実施形態では、可動片113の直線部となる第1の直線部113bにおける一端面113b1からインピーダンス調整部116が延出している。すなわち、可動ハウジング104が変位に伴って可動片113が変位する際の支点となるばね部として機能する曲部でなく、直線部からインピーダンス調整部116が延出している。このため、可動片113が弾性的に変位しづらくなることなく、第1の直線部113bにおける断面積を増加させることによって、可動片113のインピーダンスを確実に低下させて安定した高速伝送を実現できる。
さらに、本実施形態では、図7に示すように、可動片113には、インピーダンス調整部116の一端116aから曲部(第2の曲部113c)に沿って伸長する延長調整部117が設けられている。このため、可動片113の直線部113bだけでなく、曲部113cの断面積も確保されるようになるので、可動片113のインピーダンスをより効果的に低下させて安定した高速伝送を実現できる。
また、本実施形態では、端子110として金属板から直線部113b、113dと曲部113a、113c、113eとを有する可動片113を備える曲げ端子を形成する際に、図8に示すように、第1の直線部113bの一端面113b1から延出するインピーダンス調整部116を残すように金属板を打ち抜いて端子片110aを形成する。そして、端子片110aを板厚方向に屈曲して可動片113を形成してから、インピーダンス調整部116を板厚方向に屈曲させて、端子110が形成される。なお、端子片110aを形成してから先にインピーダンス調整部116を板厚方向に屈曲させた後に、端子片110aを板厚方向に屈曲して可動片113を形成しても良い。
このように、本実施形態では、端子110を形成する際に、インピーダンス調整部116を設けて可動片113の断面積を確保してから、可動片113を屈曲させている。このため、可動コネクタ100の大型化を抑制しながら、可動片のインピーダンスを確実に低下させて安定した高速伝送を実現可能な可動コネクタを効率的に製造できるようになる。
また、本実施形態では、図8に示すように、インピーダンス調整部116の一端116aから延出する延長調整部117を有するように端子片110aを形成している。すなわち、ばね部となる曲部113cの断面積を拡大するために、延長調整部117を曲部113cの一端から直接延出させずに、インピーダンス調整部116の一端116aから延出するように形成してから、延長調整部117を曲部113cに沿うように曲げている。このため、ばね部として機能する曲部113cの弾性的機能を損なうことなく、曲部113cも含めて可動片113の断面積を拡大してインピーダンスを低下させることができる。
なお、本実施形態では、空気中に露出していることから端子110の他の部位と比べてインピーダンスが高くなり易い可動片113のうち、少なくとも可動片113の直線部か曲部の一端面から延出するようにインピーダンス調整部116が設けられていればよい。例えば、第1の直線部113bの一端面から延出するようにインピーダンス調整部116が設けられていればよい。すなわち、図9に示すように、端子110´は、インピーダンス調整部116が可動片113の第1の直線部113bの一端面のみから延出するように、必要最小限に設けられていればよい。
また、本実施形態の可動コネクタ100は、他の形状の端子120にも適用できる。例えば、図10に示すように、可動片123が複数の曲部123a、123c、123e、123g、123i、123k、123mと、複数の直線部123b、123d、123f、123h、123j、123lを有する形状の端子120にも適用できる。
端子120は、図10及び図11に示すように、その一方の端部から他方の端部に向かって順に、基板接続部121と、固定ハウジング用固定部122と、可動片123と、基部124と、接触部125とを有している。本実施形態の端子120は、図12に示すように、平板の導電性金属板をプレス加工で打ち抜いた端子片120aを板厚方向に屈曲して形成されている曲げ端子として形成したものである。そして、端子120の各機能部及びその形状は、打ち抜いた導電性金属片が屈曲加工されて一体に形成されている。すなわち、本実施形態の端子120は、単一部品として形成されたものである。なお、本実施形態では、基板接続部121と固定ハウジング用固定部122と基部124と接触部125の構成及び機能に関しては、前述した第1実施形態の端子110と同様であるので、その説明は、省略する。
可動片123は、端子120の材料とする導電性金属板の板面の面方向が端子配列方向であるX方向に沿って配置されている。また、導電性金属片をプレス加工で打ち抜いた破断面がX方向と面するように配置されている。すなわち、可動片123は、その板幅方向がX方向に沿うようにして、Y方向及びZ方向に伸長している。このようにして、可動片123は、端子配列方向に板面を向けることなく伸長する。
本実施形態の端子120は、図10に示すように、可動片123が第1の曲部123aと、第1の直線部123bと、第2の曲部123cと、第2の直線部123dと、第3の曲部123eと、第3の直線部123fと、第4の曲部123gと、第4の直線部123hと、第5の曲部123iと、第5の直線部123jと、第6の曲部123kと、第6の直線部123lと、第7の曲部123mとを有している。
第1の曲部123aは、固定ハウジング用固定部122の上端からY方向における前方に向かって屈曲している。第1の直線部123bは、第1の曲部123aの一端からZ方向における上方に向かって伸長している。第2の曲部123cは、第1の直線部123bの一端からZ方向における上方かつY方向における前方に向かって屈曲している。第2の直線部123dは、第2の曲部123cの一端からY方向における前方に向かって伸長している。第3の曲部123eは、第2の直線部123dの一端からZ方向における下方かつY方向における前方に向かって屈曲している。第3の直線部123fは、第3の曲部123eの一端からZ方向における下方に向かって伸長している。第4の曲部123gは、第3の直線部123fの一端からZ方向における下方かつY方向における前方に向かって屈曲している。第4の直線部123hは、第4の曲部123gの一端からY方向における前方に向かって伸長している。第5の曲部123iは、第4の直線部123hの一端からZ方向における上方かつY方向における前方に向かって屈曲している。第5の直線部123jは、第5の曲部123iの一端からZ方向における上方に向かって伸長している。第6の曲部123kは、第5の直線部123jの一端からZ方向における上方かつY方向における前方に向かって屈曲している。第6の直線部123lは、第6の曲部123kの一端からY方向における前方に向かって伸長している。第7の曲部123mは、第6の直線部123lの一端からZ方向における上方かつY方向における前方に向かって屈曲している。本実施形態では、端子120の可動片113によって可動ハウジング104が固定ハウジング102に対して三次元方向(X方向、Y方向及びZ方向並びにこれらを組み合わせた方向)に変位可能として支持される。
そして、本実施形態では、各直線部123b、123d、123f、123h、123j、123lの一端面側から延出するように、インピーダンス調整部126a、126b、126c、126d、126e、126fがそれぞれ設けられている。インピーダンス調整部126a、126b、126c、126d、126e、126fは、図10及び図11に示すように、それぞれ折り返すように屈曲している。
このように、可動片123が複数の直線部123b、123d、123f、123h、123j、123lを有する形状の端子120の各直線部123b、123d、123f、123h、123j、123lにインピーダンス調整部126a、126b、126c、126d、126e、126fを設けることによって、各直線部123b、123d、123f、123h、123j、123lの断面積をより大きく確保できるようになるので、可動片123のインピーダンスをより確実に低下させて、安定した高速伝送を実現できる。なお、本実施形態では、可動片123の各直線部123b、123d、123f、123h、123j、123lのそれぞれにインピーダンス調整部126a、126b、126c、126d、126e、126fを設けているが、少なくとも2つ以上の直線部にインピーダンス調整部を設けて断面積をより大きく確保できるようになっていればよい。
また、本実施形態では、端子120として金属板から可動片123に複数の曲部123a、123c、123e、123g、123i、123k、123mと、複数の直線部123b、123d、123f、123h、123j、123lとを有する曲げ端子を形成する際に、図12に示すように、各直線部123b、123d、123f、123h、123j、123lの一端面側から延出するインピーダンス調整部126a、126b、126c、126d、126e、126fを残すように金属板を打ち抜いて端子片120aを形成する。そして、端子片120aを板厚方向に屈曲して可動片123を形成してから、インピーダンス調整部126を板厚方向に屈曲させて、端子120が形成される。なお、端子片120aを形成してから先にインピーダンス調整部126を板厚方向に屈曲させた後に、端子片120aを板厚方向に屈曲して可動片123を形成しても良い。
このように、本実施形態では、端子120を形成する際に、インピーダンス調整部126を設けて可動片123の断面積を確保してから、インピーダンス調整部126を屈曲させている。このため、可動コネクタ100の大型化を抑制しながら、可動片123のインピーダンスを確実に低下させて安定した高速伝送を実現可能な可動コネクタ100を効率的に製造できるようになる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る可動コネクタの構成の概略について、図13及び図14を使用しながら説明する。なお、図13(B)は、図13(A)のD-D線断面図として、端子の直線部に対して垂直方向で切断した断面図を示している。
本実施形態では、端子210に設けられているインピーダンス調整部216の形状が第1実施形態と異なる。また、可動コネクタ100の固定ハウジング102と可動ハウジング104の構成及び動作は、第1実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
端子210は、図13(A)及び図14に示すように、その一方の端部から他方の端部に向かって順に、基板接続部211と、固定ハウジング用固定部212と、可動片213と、基部214と、接触部215とを有している。本実施形態の端子210は、平板の導電性金属板をプレス加工で打ち抜いた端子片を板厚方向に屈曲して形成されている曲げ端子として形成したものである。そして、端子210の各機能部及びその形状は、打ち抜いた導電性金属片が屈曲加工されて一体に形成されている。すなわち、本実施形態の端子210は、単一部品として形成されたものである。なお、本実施形態の端子210は、他の形状の端子にも適用可能であり、例えば、前述した図10に示すような可動片が複数の曲部と、複数の直線部を有する形状の端子にも適用できる。
基板接続部211は、図13(A)等に示すように、端子210の一方の端部に形成されている。基板接続部211は、固定ハウジング102(図1及び図2参照)の下方かつ正面から前方に突出するように配置されている。基板接続部211は、回路基板P(図2参照)に対してはんだ付けで固定される。
固定ハウジング用固定部212は、基板接続部211から上方に向かって伸長している。固定ハウジング用固定部212には、X方向における両端の板縁部から、X方向における両外方に向かってそれぞれ突出するテーパ状の固定側突起212aが複数形成されている。固定ハウジング用固定部212は、固定ハウジング102の固定側端子固定溝102a2に対して圧入固定される(図2参照)。なお、本実施形態では、図13(A)等に示すように、固定ハウジング用固定部212に固定側突起212aが3つ設けられている例について説明しているが、固定側突起212aの個数は、3つに限定されない。
可動片213は、固定ハウジング102に対して可動ハウジング104を変位可能に支持する可動部としての機能を有している。可動片213は、図13(A)に示すように、第1の曲部213aと、第1の直線部213bと、第2の曲部213cと、第2の直線部213dと、第3の曲部213eとを有している。
可動片213は、端子210の材料とする導電性金属板の板面の面方向が端子配列方向であるX方向に沿って配置されている。また、導電性金属片をプレス加工で打ち抜いた破断面がX方向と面するように配置されている。すなわち、可動片213は、その板幅方向がX方向に沿うようにして、Y方向及びZ方向に伸長している。このようにして、可動片213は、端子配列方向に板面を向けることなく伸長する。
第1の曲部213aは、固定ハウジング用固定部212の上端からY方向における前方に向かって屈曲している。第1の直線部213bは、第1の曲部213aの一端からZ方向における下方かつY方向における前方に向かって伸長している。第2の曲部213cは、第1の直線部213bの一端からZ方向における下方かつY方向における前方に向かって屈曲している。第2の直線部213dは、第2の曲部213cの一端からY方向に向かって伸長している。第3の曲部213eは、第2の直線部213dの一端からZ方向における上方かつY方向における前方に向かって屈曲している。
可動片213は、第1の曲部213a、第1の直線部213b及び第2の曲部213cを有することによって、第2の直線部213d及び第3の曲部213eを固定ハウジング102の側壁部102aから離間させている。これによって、可動ハウジング104が固定ハウジング102に対してY方向における前後に大きく変位した場合でも、端子210、特に第1の直線部213bを可動ハウジング104の外壁104aに衝突しにくくすることができる。また、弾性手段として機能する可動片213の長さを確保するので、第1の直線部213bの固定ハウジング用固定部212への接触も防止できる。
このように、本実施形態では、可動片213によって可動ハウジング104が固定ハウジング102に対して三次元方向(X方向、Y方向及びZ方向並びにこれらを組み合わせた方向)に変位可能として支持される。このため、プラグコネクタ等の接続対象物との嵌合接続時におけるプラグ端子の挿入位置のずれを可動ハウジング104の変位によって吸収して、可動コネクタ100(ソケットコネクタ)と接続対象物(プラグコネクタ)とを正しく嵌合接続することができる。また、可動コネクタ100は、プラグ端子が正規の接触位置で導通接続した嵌合接続状態で、プラグ端子や回路基板Pが振動や衝撃によって変位した場合には、可動ハウジング104の変位によって振動等を吸収することができる。
また、可動片213には、図13(A)及び図13(B)に示すように、第1の直線部213bの一端面213b1から延出してから屈曲する形状となっているインピーダンス調整部216が設けられている。本実施形態では、インピーダンス調整部216は、図13(B)に示すように、第1の直線部213bと共に構成される断面がL字型となるように屈曲して設けられている。すなわち、本実施形態では、インピーダンス調整部216を第1の直線部213bに対して鉛直に屈曲させる形状としている。
なお、本実施形態では、インピーダンス調整部216は、第1の直線部213bと共に構成される断面がL字型に屈曲して折り返される形状となっているが、インピーダンス調整部216と第1の直線部213bとのなす角度が90度に限定されない。すなわち、本実施形態では、インピーダンス調整部216は、端子210の幅方向の大型化を抑制するために、第1の直線部213bとインピーダンス調整部216とのなす角度が90度以上の鈍角となるような形状としてもよい。
基部214は、第3の曲部213eの上端からZ方向における上方に向かって鉛直に伸長している。基部214は、Z方向に沿って複数の固定突起214aを有している。固定突起214aは、いずれもX方向における両端の板縁部から、X方向における両外方に向かってそれぞれテーパ状に突出するように形成されている。基部214は、可動ハウジング104の可動側端子固定溝104gに挿入される。その際に、固定突起214aは、可動側端子固定溝104gに対して圧入固定される。これによって、基部214は、可動ハウジング104に固定されるように構成されている。このように、可動片213と接触部215との間に位置する基部214が確実に可動ハウジング104に固定されるため、可動片213及び接触部215がそれぞれ変位することで生じる応力は、基部214を越えて反対側に伝達するのを抑制できる。
接触部215は、基部214の可動側端子固定溝104gへの挿入に伴って可動ハウジング104の貫通孔104fに収容されており、プラグ端子に対して導通接続する。接触部215は、図13(A)等で示すように、接触側曲部215aと、接触側直線部215bと、接触片部215cとを有している。
次に、本実施形態の可動コネクタの作用について説明する。前述したように、本実施形態では、端子210は、他の部位と比べてインピーダンスが高くなり易い可動片213の一端面213b1から延出してから屈曲するインピーダンス調整部216を有する構成となっている。このため、可動片213の断面積を増加させることによって、可動片213のインピーダンスを確実に低下させながら、可動片の一端面から直線状に延出する関連技術の形状と比べて、端子210の幅方向(X方向)の大型化を抑制することができる。
特に、本実施形態では、可動片213の第1の直線部213bの一端面213b1から延出させたインピーダンス調整部216を第1の直線部213bに対して鉛直に屈曲させる形状としている。このため、可動片213の第1の直線部213bの断面積をより大きく確保しながら、端子210の幅方向の大型化を抑制できるようになる。また、本実施形態では、隣接する端子間でインピーダンス調整部216を近接させられるので、インピーダンスを低下させながら、端子の幅方向の大型化を抑制できるようになる。従って、より効果的に端子210の幅方向の大型化を抑制しながらインピーダンスを確実に低下させられるので、可動コネクタ100の大型化を抑制しながら、可動片213のインピーダンスを確実に低下させて安定した高速伝送を実現できる。
また、本実施形態では、第1実施形態と同様に、可動片213の直線部となる第1の直線部213bにおける一端面213b1からインピーダンス調整部216が延出している。すなわち、可動ハウジング104が変位に伴って可動片213が変位する際の支点となるばね部となる曲部でなく、直線部からインピーダンス調整部216が延出している。このため、可動片213が弾性的に変位しづらくなることなく、第1の直線部213bにおける断面積を増加させることによって、可動片213のインピーダンスを確実に低下させて安定した高速伝送を実現できる。
さらに、本実施形態では、端子210として金属板から直線部213b、213dと曲部213a、213c、213eとを有する可動片213を備える曲げ端子を形成する際に、第1の直線部213bの一端面213b1から延出するインピーダンス調整部216を残すように金属板を打ち抜いて端子片を形成する。そして、端子片を板厚方向に屈曲して可動片213を形成してから、インピーダンス調整部216を板厚方向に屈曲させて、端子210が形成される。なお、端子片を形成してから先にインピーダンス調整部216を板厚方向に屈曲させた後に、端子片を板厚方向に屈曲して可動片213を形成しても良い。
このように、本実施形態では、端子210を形成する際に、インピーダンス調整部216を設けて可動片213の断面積を確保してから、インピーダンス調整部216を鉛直方向に屈曲させている。このため、可動コネクタ100の大型化を抑制しながら、可動片213のインピーダンスを確実に低下させて安定した高速伝送を実現可能な可動コネクタを効率的に製造できるようになる。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る可動コネクタの構成の概略について、図15及び図16を使用しながら説明する。
本実施形態では、端子310に設けられているインピーダンス調整部316の形状が前述した第1実施形態と異なる。また、可動コネクタ100の固定ハウジング102と可動ハウジング104の構成及び動作は、第1実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
端子310は、図15及び図16に示すように、その一方の端部から他方の端部に向かって順に、基板接続部311と、固定ハウジング用固定部312と、可動片313と、基部314と、接触部315とを有している。本実施形態の端子310は、平板の導電性金属板をプレス加工で打ち抜いた端子片を板厚方向に屈曲して形成されている曲げ端子として形成したものである。そして、端子310の各機能部及びその形状は、打ち抜いた導電性金属片が屈曲加工されて一体に形成されている。すなわち、本実施形態の端子310は、単一部品として形成されたものである。なお、本実施形態の端子310は、他の形状の端子にも適用可能であり、例えば、前述した図10に示すような可動片が複数の曲部と、複数の直線部を有する形状の端子にも適用できる。
基板接続部311は、図15等に示すように、端子310の一方の端部に形成されている。基板接続部311は、固定ハウジング102(図1及び図2参照)の下方かつ正面から前方に突出するように配置されている。基板接続部311は、回路基板P(図2参照)に対してはんだ付けで固定される。
固定ハウジング用固定部312は、基板接続部311から上方に向かって伸長している。固定ハウジング用固定部312には、X方向における両端の板縁部から、X方向における両外方に向かってそれぞれ突出するテーパ状の固定側突起312aが複数形成されている。固定ハウジング用固定部312は、固定ハウジング102の固定側端子固定溝102a2に対して圧入固定される(図2参照)。なお、本実施形態では、図15に示すように、固定ハウジング用固定部312に固定側突起312aが3つ設けられている例について説明しているが、固定側突起312aの個数は、3つに限定されない。
可動片313は、固定ハウジング102に対して可動ハウジング104を変位可能に支持する可動部としての機能を有している。可動片313は、図15に示すように、第1の曲部313aと、第1の直線部313bと、第2の曲部313cと、第2の直線部313dと、第3の曲部313eとを有している。
可動片313は、端子310の材料とする導電性金属板の板面の面方向が端子配列方向であるX方向に沿って配置されている。また、導電性金属片をプレス加工で打ち抜いた破断面がX方向と面するように配置されている。すなわち、可動片313は、その板幅方向がX方向に沿うようにして、Y方向及びZ方向に伸長している。このようにして、可動片313は、端子配列方向に板面を向けることなく伸長する。
第1の曲部313aは、固定ハウジング用固定部312の上端からY方向における前方に向かって屈曲している。第1の直線部313bは、第1の曲部313aの一端からZ方向における下方かつY方向における前方に向かって伸長している。第2の曲部313cは、第1の直線部313bの一端からZ方向における下方かつY方向における前方に向かって屈曲している。第2の直線部313dは、第2の曲部313cの一端からY方向に向かって伸長している。第3の曲部313eは、第2の直線部313dの一端からZ方向における上方かつY方向における前方に向かって屈曲している。
可動片313は、第1の曲部313a、第1の直線部313b及び第2の曲部313cを有することによって、第2の直線部313d及び第3の曲部313eを固定ハウジング102の側壁部102aから離間させている。これによって、可動ハウジング104が固定ハウジング102に対してY方向における前後に大きく変位した場合でも、端子310、特に第1の直線部313bを可動ハウジング104の外壁104aに衝突しにくくすることができる。また、弾性手段として機能する可動片313の長さを確保するので、第1の直線部313bの固定ハウジング用固定部312への接触も防止できる。
このように、本実施形態では、可動片313によって可動ハウジング104が固定ハウジング102に対して三次元方向(X方向、Y方向及びZ方向並びにこれらを組み合わせた方向)に変位可能として支持される。このため、プラグコネクタ等の接続対象物との嵌合接続時におけるプラグ端子の挿入位置のずれを可動ハウジング104の変位によって吸収して、可動コネクタ100(ソケットコネクタ)と接続対象物(プラグコネクタ)とを正しく嵌合接続することができる。また、可動コネクタ100は、プラグ端子が正規の接触位置で導通接続した嵌合接続状態で、プラグ端子や回路基板Pが振動や衝撃によって変位した場合には、可動ハウジング104の変位によって振動等を吸収することができる。
また、可動片313には、図15及び図16に示すように、第1の直線部313bの両端面313b1、313b2から延出してから屈曲する形状となっているインピーダンス調整部316(316a、316b)が設けられている。本実施形態では、インピーダンス調整部316は、図16に示すように、断面が延出方向に沿って山部と谷部が交互に連続する波形形状を有するように屈曲して設けられている。
なお、本実施形態では、インピーダンス調整部316は、断面が延出方向に沿って山部と谷部が交互に連続する波形形状となっているが、インピーダンス調整部316の断面形状は、波形形状に限定されない。すなわち、本実施形態では、インピーダンス調整部316は、端子310の幅方向の大型化を抑制しながら、より可動片313のインピーダンスを確実に低下させるために、第1の直線部313bの両端面313b1、313b2から延出してから屈曲する形状となっていれば、他の形状としてもよい。また、本実施形態では、インピーダンス調整部316は、第1の直線部313bの両端面313b1、313b2から延出してから屈曲する形状となっているが、何れか一方の端面313b1、313b2から設けられている形状にも適用できる。
基部314は、第3の曲部313eの上端からZ方向における上方に向かって鉛直に伸長している。基部314は、Z方向に沿って複数の固定突起314aを有している。固定突起314aは、いずれもX方向における両端の板縁部から、X方向における両外方に向かってそれぞれテーパ状に突出するように形成されている。基部314は、可動ハウジング104の可動側端子固定溝104gに挿入される。その際に、固定突起314aは、可動側端子固定溝104gに対して圧入固定される。これによって、基部314は、可動ハウジング104に固定されるように構成されている。このように、可動片313と接触部315との間に位置する基部314が確実に可動ハウジング104に固定されるため、可動片313及び接触部315がそれぞれ変位することで生じる応力は、基部314を越えて反対側に伝達するのを抑制できる。
接触部315は、基部314の可動側端子固定溝104gへの挿入に伴って可動ハウジング104の貫通孔104fに収容されており、プラグ端子に対して導通接続する。接触部315は、図15で示すように、接触側曲部315aと、接触側直線部315bと、接触片部315cとを有している。
次に、本実施形態の可動コネクタの作用について、図17及び図18を使用しながら説明する。
前述したように、本実施形態では、端子310は、他の部位と比べてインピーダンスが高くなり易い可動片313の直線部313bの対向する両端面313b1、313b2から延出してから屈曲するインピーダンス調整部316(316a、316b)を有する構成となっている。このため、可動片313の断面積を大幅に増加させることによって、可動片313のインピーダンスを確実に低下させながら、可動片の両端面から直線状に延出する関連技術の形状と比べて、端子310の幅方向(X方向)の大型化を抑制することができる。
特に、本実施形態では、インピーダンス調整部316a、316bは、可動片313の第1の直線部313bの対向する両端面313b1、313b2から延出されて、その断面形状が延出方向に沿って山部と谷部が交互に配列された波形形状を有するように屈曲して設けられている。このため、可動片313の第1の直線部313bの断面積を更に大きく確保しながら、端子310の幅方向の大型化を抑制できるようになる。従って、より効果的に端子310の幅方向の大型化を抑制しながらインピーダンスを確実に低下させられるので、可動コネクタ100の大型化を抑制しながら、可動片313のインピーダンスを確実に低下させて安定した高速伝送を実現できる。
また、本実施形態では、図17に示すように、インピーダンス調整部316a、316bは、隣接する端子310同士で互いに重なるように近接して対向する配置となっている。すなわち、隣接する端子310同士を近接させて、インピーダンス調整部316a、316bが広い面積で対向されている。このため、可動片313の直線部313bの断面積をより大きく確保した上で、隣接する端子間のインピーダンス調整部316a、316bの対向部位を広く確保して互いに近接できる。これによって、可動片313のインピーダンスをより確実に低下させて、安定した高速伝送を実現できる。
さらに、本実施形態では、可動片313の直線部となる第1の直線部313bにおける対向する両端面313b1、313b2からインピーダンス調整部316a、316bがそれぞれ延出している。すなわち、可動ハウジング104が変位に伴って可動片313が変位する際の支点となるばね部となる曲部でなく、直線部からインピーダンス調整部316が延出している。このため、可動片313が弾性的に変位しづらくなることなく、第1の直線部313bにおける断面積をより大きく増加させることによって、可動片313のインピーダンスを確実に低下させて安定した高速伝送を実現できる。
また、本実施形態では、端子310として金属板から直線部313b、313dと曲部313a、313c、313eとを有する可動片313を備える曲げ端子を形成する際に、図18に示すように、第1の直線部313bの両端面313b1、313b2から延出するインピーダンス調整部316a、316bを残すように金属板を打ち抜いて端子片310aを形成する。そして、端子片310aを板厚方向に屈曲して可動片313を形成してから、インピーダンス調整部316a、316bを板厚方向で波形形状となるように屈曲させて、端子310が形成される。なお、端子片310aを形成してから先にインピーダンス調整部316a、316bを板厚方向で波形形状となるように屈曲させた後に、端子片310aを板厚方向に屈曲して可動片313を形成しても良い。
このように、本実施形態では、端子310を形成する際に、インピーダンス調整部316a、316bを設けて可動片313の断面積を確保してから、インピーダンス調整部316を波形形状に屈曲させている。このため、可動コネクタ100の大型化を抑制しながら、可動片313のインピーダンスを確実に低下させて安定した高速伝送を実現可能な可動コネクタを効率的に製造できるようになる。
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態に係る可動コネクタの構成の概略について、図19乃至図21を使用しながら説明する。
本実施形態では、端子410に設けられているインピーダンス調整部416の形状が前述した第1実施形態と異なる。また、可動コネクタ100の固定ハウジング102と可動ハウジング104の構成及び動作は、第1実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
端子410は、図19及び図21に示すように、その一方の端部から他方の端部に向かって順に、基板接続部411と、固定ハウジング用固定部412と、可動片413と、基部414と、接触部415とを有している。本実施形態の端子410は、平板の導電性金属板をプレス加工で打ち抜いた端子片を板厚方向に屈曲して形成されている曲げ端子として形成したものである。そして、端子410の各機能部及びその形状は、打ち抜いた導電性金属片が屈曲加工されて一体に形成されている。すなわち、本実施形態の端子410は、単一部品として形成されたものである。なお、本実施形態の端子410は、他の形状の端子にも適用可能であり、例えば、前述した図10に示すような可動片が複数の曲部と、複数の直線部を有する形状の端子にも適用できる。
基板接続部411は、図19等に示すように、端子410の一方の端部に形成されている。基板接続部411は、固定ハウジング102(図1及び図2参照)の下方かつ正面から前方に突出するように配置されている。基板接続部411は、回路基板P(図2参照)に対してはんだ付けで固定される。
固定ハウジング用固定部412は、基板接続部411から上方に向かって伸長している。固定ハウジング用固定部412には、X方向における両端の板縁部から、X方向における両外方に向かってそれぞれ突出するテーパ状の固定側突起412aが複数形成されている。固定ハウジング用固定部412は、固定ハウジング102の固定側端子固定溝102a2に対して圧入固定される(図2参照)。なお、本実施形態では、図19に示すように、固定ハウジング用固定部412に固定側突起412aが3つ設けられている例について説明しているが、固定側突起412aの個数は、3つに限定されない。
可動片413は、固定ハウジング102に対して可動ハウジング104を変位可能に支持する可動部としての機能を有している。可動片413は、図19に示すように、第1の曲部413aと、第1の直線部413bと、第2の曲部413cと、第2の直線部413dと、第3の曲部413eとを有している。
可動片413は、端子410の材料とする導電性金属板の板面の面方向が端子配列方向であるX方向に沿って配置されている。また、導電性金属片をプレス加工で打ち抜いた破断面がX方向と面するように配置されている。すなわち、可動片413は、その板幅方向がX方向に沿うようにして、Y方向及びZ方向に伸長している。このようにして、可動片413は、端子配列方向に板面を向けることなく伸長する。
第1の曲部413aは、固定ハウジング用固定部412の上端からY方向における後方に向かって屈曲している。第1の直線部413bは、第1の曲部413aの一端からZ方向における下方かつY方向における後方に向かって伸長している。第2の曲部413cは、第1の直線部413bの一端からZ方向における下方かつY方向における後方に向かって屈曲している。第2の直線部413dは、第2の曲部413cの一端からY方向における後方に向かって伸長している。第3の曲部413eは、第2の直線部413dの一端からZ方向における上方かつY方向における後方に向かって屈曲している。
可動片413は、第1の曲部413a、第1の直線部413b及び第2の曲部413cを有することによって、第2の直線部413d及び第3の曲部413eを固定ハウジング102の側壁部102aから離間させている。これによって、可動ハウジング104が固定ハウジング102に対してY方向における前後に大きく変位した場合でも、端子410、特に第1の直線部413bを可動ハウジング104の外壁104aに衝突しにくくすることができる。また、弾性手段として機能する可動片413の長さを確保するので、第1の直線部413bの固定ハウジング用固定部412への接触も防止できる。
このように、本実施形態では、可動片413によって可動ハウジング104が固定ハウジング102に対して三次元方向(X方向、Y方向及びZ方向並びにこれらを組み合わせた方向)に変位可能として支持される。このため、プラグコネクタ等の接続対象物との嵌合接続時におけるプラグ端子の挿入位置のずれを可動ハウジング104の変位によって吸収して、可動コネクタ100(ソケットコネクタ)と接続対象物(プラグコネクタ)とを正しく嵌合接続することができる。また、可動コネクタ100は、プラグ端子が正規の接触位置で導通接続した嵌合接続状態で、プラグ端子や回路基板Pが振動や衝撃によって変位した場合には、可動ハウジング104の変位によって振動等を吸収することができる。
また、可動片413には、図19及び図20に示すように、第1の直線部413bの対向する両端面413b1、413b2から延出してから屈曲する形状となっているインピーダンス調整部416(416a、416b)が設けられている。本実施形態では、インピーダンス調整部416a、416bは、図19及び図20に示すように、第1の直線部413bの対向する両端面413b1、413b2から延出してから屈曲させた際に、インピーダンス調整部416a、416bのそれぞれが空隙部416cを介して対向する配置となっているように屈曲して設けられている。
すなわち、本実施形態では、インピーダンス調整部416は、図19に示すように、一端面側上端部416a1と、一端面側下端部416a2と、一端面側調整部416aと、対向面側上端部416b1と、対向面側下端部416b2と、対向面側調整部416bと、を有する。一端面側上端部416a1は、第1の直線部413bの上端側の一端面413b1から延出してから屈曲する形状となっている。一端面側下端部416a2は、第1の直線部413bの下端側の一端面413b1から延出してから屈曲する形状となっている。一端面側調整部416aは、一端面側上端部416a1と一端面側下端部416a2との間に設けられている板状の部材である。対向面側上端部416b1は、第1の直線部413bの上端側の一端面413b1に対向する対向面413b2から延出してから屈曲する形状となっている。対向面側下端部416b2は、第1の直線部413bの下端側の一端面413b1に対向する対向面413b2から延出してから屈曲する形状となっている。対向面側調整部416bは、対向面側上端部416b1と対向面側下端部416b2との間に設けられている板状の部材である。そして、本実施形態では、一端面側調整部416aと対向面側調整部416bは、空隙部416cを介して対向する配置となっている。
このように、インピーダンス調整部416を構成する一端面側調整部416aと対向面側調整部416bは、それぞれ第1の直線部413bの一端面413b1と対向面413b2とから延出してから屈曲する際に、第1の直線部413bの両端部側を除いた部分が空隙部416cとなるように折り曲げられている。その際に、インピーダンス調整部416a、416bを第1の直線部413bの中心線側から2つに分けてから、図19に示すように、双方のインピーダンス調整部416(一端面側調整部416a、対向面側調整部416b)の上端部416a1、416b1と下端部416a2、416b2を介して、インピーダンス調整部416(一端面側調整部416a、対向面側調整部416b)をY方向に沿って互いに平行となるように折り曲げられている。
基部414は、第3の曲部413eの上端からZ方向における上方に向かって鉛直に伸長している。基部414は、Z方向に沿って複数の固定突起414aを有している。固定突起414aは、いずれもX方向における両端の板縁部から、X方向における両外方に向かってそれぞれテーパ状に突出するように形成されている。基部414は、可動ハウジング104の可動側端子固定溝104gに挿入される。その際に、固定突起414aは、可動側端子固定溝104gに対して圧入固定される。これによって、基部414は、可動ハウジング104に固定されるように構成されている。このように、可動片413と接触部415との間に位置する基部414が確実に可動ハウジング104に固定されるため、可動片413及び接触部415がそれぞれ変位することで生じる応力は、基部414を越えて反対側に伝達するのを抑制できる。
接触部415は、基部414の可動側端子固定溝104gへの挿入に伴って可動ハウジング104の貫通孔104fに収容されており、プラグ端子に対して導通接続する。接触部415は、図19で示すように、接触側曲部415aと、接触側直線部415bと、接触片部415cとを有している。
次に、本実施形態の可動コネクタの作用について、図22及び図23を使用しながら説明する。
前述したように、本実施形態では、端子410は、他の部位と比べてインピーダンスが高くなり易い可動片413の対向する両端面413b1、413b2から延出してから屈曲するインピーダンス調整部416(416a、416b)を有する構成となっている。このため、可動片413の断面積を大幅に増加させることによって、可動片413のインピーダンスを確実に低下させながら、可動片の一端面から直線状に延出する関連技術の形状と比べて、端子410の幅方向(X方向)の大型化を抑制することができる。
特に、本実施形態では、インピーダンス調整部416a、416bは、可動片413の第1の直線部413bの両端面413b1、413b2から延出させて屈曲させた際に、インピーダンス調整部416a、416bのそれぞれが空隙部416cを介して対向する配置となっている。このため、本実施形態では、図22(A)に示すように、図22(B)に示す第2実施形態のインピーダンス調整部216と同じ長さのインピーダンス調整部416を延出させてから屈曲させると、本実施形態のインピーダンス調整部416のY方向の幅d1が第2実施形態のインピーダンス調整部216のY方向の幅d2と比べて大きいことが分かる。このことから、本実施形態では、直線部413bの断面積をより大きく確保した上で、限られたスペースで隣接する端子間の接触を回避させられるので、可動コネクタ100の大型化を抑制しながらインピーダンスをより確実に低下させて、安定した高速伝送を実現できる。
また、本実施形態では、可動片413の直線部となる第1の直線部413bにおける対向する両端面413b1、413b2からインピーダンス調整部416a、416bがそれぞれ延出している。すなわち、可動ハウジング104の変位に伴って可動片413が変位する際の支点となるばね部となる曲部でなく、直線部からインピーダンス調整部416が延出している。このため、可動片413が弾性的に変位しづらくなることなく、第1の直線部413bにおける断面積をより大きく増加させることによって、可動片413のインピーダンスを確実に低下させて安定した高速伝送を実現できる。
さらに、本実施形態では、端子410として金属板から直線部413b、413dと曲部413a、413c、413eとを有する可動片413を備える曲げ端子を形成する際に、図23に示すように、第1の直線部413bの両端面413b1、413b2から延出するインピーダンス調整部416a、416bを残すように金属板を打ち抜いて端子片410aを形成する。その際に、第1の直線部413bの中心線上にスリット413b3を入れて、かつ、第1の直線部413bとインピーダンス調整部416a、416bの両端部の内側にスリット416dを形成してから、インピーダンス調整部416a、416bの上端部416a1、416b1と下端部416a2、416b2を介して、インピーダンス調整部416a、416bをY方向に沿って互いに平行となるように折り曲げる。
このように、本実施形態では、端子410を形成する際に、インピーダンス調整部416a、416bを設けて可動片413の断面積を確保してから、インピーダンス調整部416a、416bが互いに平行になるように屈曲させている。このため、可動コネクタ100の大型化を抑制しながら、可動片413のインピーダンスを確実に低下させて安定した高速伝送を実現可能な可動コネクタを効率的に製造できるようになる。
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態に係る可動コネクタの構成の概略について、図24及び図25を使用しながら説明する。
本実施形態では、端子510の構成が金属板を板厚方向に打ち抜いて形成されている抜き端子である点で金属板を板厚方向に屈曲して形成されている曲げ端子である第1実施形態と異なる。また、可動コネクタ100の固定ハウジング102と可動ハウジング104の構成及び動作は、第1実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
端子510は、図24及び図25に示すように、その一方の端部から他方の端部に向かって順に、基板接続部511と、固定ハウジング用固定部512と、可動片513と、基部514と、接触部515とを有している。本実施形態の端子510は、平板の導電性金属板をプレス加工で打ち抜いて、抜き端子として形成したものである。そして、端子510の各機能部及びその形状は、打ち抜いた導電性金属片が屈曲加工されて一体に形成されている。すなわち、本実施形態の端子510は、単一部品として形成されたものである。なお、本実施形態の端子510は、他の形状の端子にも適用可能であり、例えば、前述した図10に示すような可動片が複数の曲部と、複数の直線部を有する形状の端子にも適用できる。
基板接続部511は、図24等に示すように、端子510の一方の端部に形成されている。基板接続部511は、固定ハウジング102(図1及び図2参照)の下方かつ正面から前方に突出するように配置されている。基板接続部511は、回路基板P(図2参照)に対してはんだ付けで固定される。
固定ハウジング用固定部512は、基板接続部511から上方に向かって伸長している。固定ハウジング用固定部512には、Y方向における板縁部から、Y方向に向かって突出するテーパ状の固定側突起512aが形成されている。固定ハウジング用固定部512は、固定ハウジング102の固定側端子固定溝102a2に対して圧入固定される(図2参照)。
可動片513は、固定ハウジング102に対して可動ハウジング104を変位可能に支持する可動部としての機能を有している。可動片513は、図24に示すように、第1の直線部513aと、第1の曲部513bと、第2の直線部513cと、第2の曲部513dと、第3の直線部513eと、第3の曲部513f、及び第4の直線部513gとを有している。可動片513は、端子510の材料とする導電性金属板の厚さ方向が端子配列方向であるX方向に沿って配置されている。また、導電性金属片をプレス加工で打ち抜いた破断面がY方向と面するように配置されている。すなわち、可動片513は、その板厚方向がX方向に沿うようにして、Y方向及びZ方向に伸長している。
第1の直線部513aは、固定ハウジング用固定部512の下端側からY方向における前方に向かって伸長している。第1の曲部513bは、第1の直線部513aの一端からZ方向における上方かつY方向における前方に向かって屈曲している。第2の直線部513cは、第1の曲部513bの一端からZ方向における上方に向かって伸長している。第2の曲部513dは、第2の直線部513cの一端からY方向における前方に向かって屈曲している。第3の直線部513eは、第2の曲部513dの一端からZ方向における下方に向かって伸長している。第3の曲部513fは、第3の直線部513eの一端からY方向における前方に向かって屈曲している。第4の直線部513gは、第3の曲部513fの一端からY方向における前方に向かって伸長している。
可動片513は、第1の直線部513a、第1の曲部513b、第2の直線部513c、第2の曲部513d、第3の直線部513e、及び第3の曲部513fを有することによって、第4の直線部513gを固定ハウジング102の側壁部102aから離間させている。これによって、可動ハウジング104が固定ハウジング102に対してY方向における前後に大きく変位した場合でも、端子510、特に第3の直線部513eを可動ハウジング104の外壁104aに衝突しにくくすることができる。また、弾性手段として機能する可動片513の長さを確保するので、第2の直線部513cの固定ハウジング用固定部512への接触も防止できる。
このように、本実施形態では、可動片513によって可動ハウジング104が固定ハウジング102に対して三次元方向(X方向、Y方向及びZ方向並びにこれらを組み合わせた方向)に変位可能として支持される。このため、プラグコネクタ等の接続対象物との嵌合接続時におけるプラグ端子の挿入位置のずれを可動ハウジング104の変位によって吸収して、可動コネクタ100(ソケットコネクタ)と接続対象物(プラグコネクタ)とを正しく嵌合接続することができる。また、可動コネクタ100は、プラグ端子が正規の接触位置で導通接続した嵌合接続状態で、プラグ端子や回路基板Pが振動や衝撃によって変位した場合には、可動ハウジング104の変位によって振動等を吸収することができる。
また、可動片513には、図24及び図25に示すように、第3の直線部513eの一端面513e1から延出してから屈曲する形状となっているインピーダンス調整部516が設けられている。本実施形態では、インピーダンス調整部516は、図24及び図25に示すように、第3の直線部513eに対して屈曲して折り返される形状となるように設けられている。
なお、本実施形態では、インピーダンス調整部516は、第3の直線部513eに対して断面が屈曲して折り返される形状となっているが、屈曲して完全に折り返される形状としなくてもよい。すなわち、本実施形態では、インピーダンス調整部516は、端子510の幅方向の大型化を抑制するために、第3の直線部513eとインピーダンス調整部516とのなす角度が90度未満となるような鋭角や、第3の直線部513eとインピーダンス調整部516とのなす角度が90度以上となるような鈍角に屈曲して設けられていればよい。このため、インピーダンス調整部516は、例えば、第3の直線部513eと共に構成される断面がV字型となるように屈曲した形状としてもよい。
基部514は、第4の直線部513gの一端からZ方向における上方に向かって鉛直に伸長している。基部514は、Z方向に沿って複数の固定突起514aを有している。固定突起514aは、いずれもY方向における板縁部から、Y方向における前方に向かってそれぞれテーパ状に突出するように形成されている。基部514は、可動ハウジング104の可動側端子固定溝104gに挿入される。その際に、固定突起514aは、可動側端子固定溝104gに対して圧入固定される。これによって、基部514は、可動ハウジング104に固定されるように構成されている。このように、可動片513と接触部515との間に位置する基部514が確実に可動ハウジング104に固定されるため、可動片513及び接触部515がそれぞれ変位することで生じる応力は、基部514を越えて反対側に伝達するのを抑制できる。
接触部515は、基部514の可動側端子固定溝104gへの挿入に伴って可動ハウジング104の貫通孔104fに収容されており、プラグ端子に対して導通接続する。
次に、本実施形態の可動コネクタの作用について、図26を使用しながら説明する。
前述したように、本実施形態では、端子510は、他の部位と比べてインピーダンスが高くなり易い可動片513の一端面513e1から延出してから屈曲するインピーダンス調整部516を有する構成となっている。このため、可動片513の断面積を増加させることによって、可動片513のインピーダンスを確実に低下させながら、可動片の一端面から直線状に延出する関連技術の形状と比べて、端子510の幅方向(Y方向)の大型化を抑制することができる。
特に、本実施形態では、可動片513の第3の直線部513eの一端面513e1から延出させたインピーダンス調整部516を第3の直線部513eに対して折り返して屈曲させる形状としている。このため、可動片513の第3の直線部513eの断面積をより大きく確保しながら、端子510の幅方向の大型化を抑制できるようになる。従って、より効果的に端子510の幅方向の大型化を抑制しながらインピーダンスを確実に低下させられるので、可動コネクタ100の大型化を抑制しながら、可動片513のインピーダンスを確実に低下させて安定した高速伝送を実現できる。
また、本実施形態では、第1実施形態と同様に、可動片513の直線部となる第3の直線部513eにおける一端面513e1からインピーダンス調整部516が延出している。すなわち、可動ハウジング104が変位に伴って可動片513が変位する際の支点となるばね部となる曲部でなく、直線部からインピーダンス調整部516が延出している。このため、可動片513が弾性的に変位しづらくなることなく、第3の直線部513eにおける断面積を増加させることによって、可動片513のインピーダンスを確実に低下させて安定した高速伝送を実現できる。
さらに、本実施形態では、端子510として金属板から直線部513a、513c、513e、513gと、曲部513b、513d、513fとを有する可動片513を備える抜き端子を形成する際に、図26に示すように、第3の直線部513eの一端面513e1から延出するインピーダンス調整部516を残すように金属板を打ち抜いて端子片510aを形成する。そして、インピーダンス調整部516を板厚方向に折り返すように屈曲させて、端子510が形成される。
このように、本実施形態では、端子510を形成する際に、インピーダンス調整部516を設けて可動片513の断面積を確保してから、インピーダンス調整部516を折り返すように屈曲させている。このため、可動コネクタ100の大型化を抑制しながら、可動片513のインピーダンスを確実に低下させて安定した高速伝送を実現可能な可動コネクタを効率的に製造できるようになる。
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態に係る可動コネクタの構成の概略について、図27及び図28を使用しながら説明する。
本実施形態の端子610は、前述した第1乃至第4実施形態の曲げ端子に適用される。すなわち、本実施形態では、端子610が複数本をまとめてユニット状に形成されている点で、単一部品として形成されている第1実施形態と異なる。また、可動コネクタ100の固定ハウジング102と可動ハウジング104の構成及び動作は、第1実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
端子610は、図27に示すように、その一方の端部から他方の端部に向かって順に、基板接続部611と、固定ハウジング用固定部612と、可動片613と、基部614と、接触部615と、連結部617とを有している。本実施形態では、平板の導電性金属板をプレス加工で打ち抜いた端子片を板厚方向に屈曲して形成されている曲げ端子として、複数の端子610が端子ユニット610aとして、まとめて形成したものである。そして、端子610の各機能部及びその形状は、打ち抜いた導電性金属片が屈曲加工されて一体に形成されている。すなわち、本実施形態の端子610は、複数本をまとめてユニット状に形成されたものである。なお、本実施形態の端子610は、他の形状の端子にも適用可能であり、例えば、前述した図10に示すような可動片が複数の曲部と、複数の直線部を有する形状の端子にも適用できる。
基板接続部611は、図27に示すように、端子610の一方の端部に形成されている。基板接続部611は、固定ハウジング102(図1及び図2参照)の下方かつ正面から前方に突出するように配置されている。基板接続部611は、回路基板P(図2参照)に対してはんだ付けで固定される。
固定ハウジング用固定部612は、基板接続部611から上方に向かって伸長している。固定ハウジング用固定部612には、X方向における両端の板縁部から、X方向における両外方に向かってそれぞれ突出するテーパ状の固定側突起612aが複数形成されている。固定ハウジング用固定部612は、固定ハウジング102の固定側端子固定溝102a2に対して圧入固定される(図2参照)。なお、本実施形態では、図27に示すように、固定ハウジング用固定部612に固定側突起612aが3つ設けられている例について説明しているが、固定側突起612aの個数は、3つに限定されない。
可動片613は、固定ハウジング102に対して可動ハウジング104を変位可能に支持する可動部としての機能を有している。可動片613は、図27に示すように、第1の曲部613aと、第1の直線部613bと、第2の曲部613cと、第2の直線部613dと、第3の曲部613eとを有している。
可動片613は、端子610の材料とする導電性金属板の板面の面方向が端子配列方向であるX方向に沿って配置されている。また、導電性金属片をプレス加工で打ち抜いた破断面がX方向と面するように配置されている。すなわち、可動片613は、その板幅方向がX方向に沿うようにして、Y方向及びZ方向に伸長している。このようにして、可動片613は、端子配列方向に板面を向けることなく伸長する。
第1の曲部613aは、固定ハウジング用固定部612の上端からY方向における前方に向かって屈曲している。第1の直線部613bは、第1の曲部613aの一端からY方向における前方に向かって伸長している。第2の曲部613cは、第1の直線部613bの一端からZ方向における下方かつY方向における前方に向かって屈曲している。第2の直線部613dは、第2の曲部613cの一端からZ方向における下方かつY方向における前方に向かって伸長している。第3の曲部613eは、第2の直線部613dの一端からZ方向における下方かつY方向における前方に向かって屈曲している。
可動片613は、第1の曲部613a、第1の直線部613b、第2の曲部613c、及び第2の直線部613dを有することによって、第3の曲部613eを固定ハウジング102の側壁部102aから離間させている。これによって、可動ハウジング104が固定ハウジング102に対してY方向における前後に大きく変位した場合でも、端子610、特に第2の直線部613dを可動ハウジング104の外壁104aに衝突しにくくすることができる。また、弾性手段として機能する可動片613の長さを確保するので、第2の直線部613dの固定ハウジング用固定部612への接触も防止できる。
このように、本実施形態では、可動片613によって可動ハウジング104が固定ハウジング102に対して三次元方向(X方向、Y方向及びZ方向並びにこれらを組み合わせた方向)に変位可能として支持される。このため、プラグコネクタ等の接続対象物との嵌合接続時におけるプラグ端子の挿入位置のずれを可動ハウジング104の変位によって吸収して、可動コネクタ100(ソケットコネクタ)と接続対象物(プラグコネクタ)とを正しく嵌合接続することができる。また、可動コネクタ100は、プラグ端子が正規の接触位置で導通接続した嵌合接続状態で、プラグ端子や回路基板Pが振動や衝撃によって変位した場合には、可動ハウジング104の変位によって振動等を吸収することができる。
また、可動片613には、図27及び図28に示すように、第2の直線部613dの一端面613d1から延出してから屈曲する形状となっているインピーダンス調整部616が設けられている。本実施形態では、インピーダンス調整部616は、図27に示すように、第2の直線部613dに対して屈曲して折り返される形状となるように設けられている。
なお、本実施形態では、インピーダンス調整部616は、第2の直線部613dに対して断面が屈曲して折り返される形状となっているが、屈曲して完全に折り返される形状としなくてもよい。すなわち、本実施形態では、インピーダンス調整部616は、端子610の幅方向の大型化を抑制するために、第2の直線部613dとインピーダンス調整部616とのなす角度が90度未満となるような鋭角や、第2の直線部613dとインピーダンス調整部616とのなす角度が90度以上となるような鈍角に屈曲して設けられていればよい。このため、インピーダンス調整部616は、例えば、第2の直線部613dと共に構成される断面がV字型となるように屈曲した形状としてもよい。
基部614は、第3の曲部613eの一端からZ方向における上方に向かって鉛直に伸長している。基部614は、Z方向に沿って複数の固定突起614aを有している。固定突起614aは、いずれもX方向における両端の板縁部から、X方向における両外方に向かってそれぞれテーパ状に突出するように形成されている。基部614は、可動ハウジング104の可動側端子固定溝104gに挿入される。その際に、固定突起614aは、可動側端子固定溝104gに対して圧入固定される。これによって、基部614は、可動ハウジング104に固定されるように構成されている。このように、可動片613と接触部615との間に位置する基部614が確実に可動ハウジング104に固定されるため、可動片613及び接触部615がそれぞれ変位することで生じる応力は、基部614を越えて反対側に伝達するのを抑制できる。
接触部615は、基部614の可動側端子固定溝104gへの挿入に伴って可動ハウジング104の貫通孔104fに収容されており、プラグ端子に対して導通接続する。
連結部617は、複数の端子610を所定の間隔を介してユニット状にまとめるための板状部材である。本実施形態では、連結部617は、基部614と接触部615との間に設けられており、各基部614とは、基部側接続部617aと介して接続され、各連結部617とは、連結部側接続部617bと介して接続されている。また、連結部617には、図27に示すように、ねじ止め等で固定するための複数の孔部617c、617dが設けられている。
次に、本実施形態の可動コネクタの作用について、図28を使用しながら説明する。
前述したように、本実施形態では、端子610は、他の部位と比べてインピーダンスが高くなり易い可動片613の直線部613dの一端面613d1から延出してから屈曲するインピーダンス調整部616を有する構成となっている。このため、可動片613の断面積を増加させることによって、可動片613のインピーダンスを確実に低下させながら、可動片の一端面から直線状に延出する関連技術の形状と比べて、端子610の幅方向(X方向)の大型化を抑制することができる。
特に、本実施形態では、可動片613の第2の直線部613dの一端面613d1から延出させたインピーダンス調整部616を第2の直線部613dに対して屈曲させて折り返す形状としている。このため、可動片613の第2の直線部613dの断面積をより大きく確保しながら、端子610の幅方向の大型化を抑制できるようになる。従って、より効果的に端子610の幅方向の大型化を抑制しながらインピーダンスを確実に低下させられるので、可動コネクタ100の大型化を抑制しながら、可動片613のインピーダンスを確実に低下させて安定した高速伝送を実現できる。
また、本実施形態では、第1実施形態と同様に、可動片613の直線部となる第2の直線部613dにおける一端面613d1からインピーダンス調整部616が延出している。すなわち、可動ハウジング104が変位に伴って可動片613が変位する際の支点となるばね部となる曲部でなく、直線部からインピーダンス調整部616が延出している。このため、可動片613が弾性的に変位しづらくなることなく、第2の直線部613dにおける断面積を増加させることによって、可動片613のインピーダンスを確実に低下させて安定した高速伝送を実現できる。
さらに、本実施形態では、端子610として金属板から直線部613b、613dと、曲部613a、613c、613eとを有する可動片613を備える曲げ端子を形成する際に、連結部617を介して連結される複数の端子610のそれぞれに対して、第2の直線部613dの一端面613d1から延出するインピーダンス調整部616を残すように金属板を打ち抜いて端子片を形成する。そして、端子片を板厚方向に屈曲して可動片613を形成してから、インピーダンス調整部616を板厚方向に屈曲させて、複数の端子610を束ねた端子ユニット610aが形成される。なお、端子片を形成してから先にインピーダンス調整部616を板厚方向に屈曲させた後に、端子片を板厚方向に屈曲して可動片613を形成しても良い。
このように、本実施形態では、端子610を形成する際に、連結部617を介して複数の端子610をまとめてユニット状にした上で、各端子610の可動片613のそれぞれにインピーダンス調整部616を設けて可動片613の断面積を確保してから、インピーダンス調整部616を可動片613の直線部613dに対して折り返すように屈曲させている。このため、可動コネクタ100の大型化を抑制しながら、可動片613のインピーダンスを確実に低下させて安定した高速伝送を実現可能な可動コネクタをより効率的に製造できるようになる。
また、本実施形態では、各端子610の可動片613のそれぞれにインピーダンス調整部616が設けられているので、各端子610の間に有する空隙618が大きくなる。このため、本実施形態では、2つの端子ユニット610aを形成してから、一方の端子ユニット610aの端子610間に有する空隙618に、他方の端子ユニット610aの端子610が配置されるように、端子ユニット610aを2回に分けて固定ハウジング102に取り付けることによって、より効率的に端子610のピッチ間隔の小さい可動コネクタ100を容易に製造できるようになる。すなわち、より小型化、高集約化が進んだ可動コネクタ100を効率的に製造できるようになる。
なお、上記のように本発明の各実施形態及び各実施例について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは、当業者には、容易に理解できるであろう。従って、このような変形例は、全て本発明の範囲に含まれるものとする。
例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、可動コネクタの構成、動作も本発明の各実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。