JP7377441B2 - 冷媒組成物及び冷却装置 - Google Patents

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本発明は、冷媒組成物及び冷却装置に関する。
一般に、フラーレンやその誘導体は潤滑剤として用いられており、例えば、特許文献1には、電動要素と、電動要素により駆動され、摺動部を有し、冷媒を圧縮する圧縮要素とを備えており、摺動部を潤滑させる冷凍機油に直径が100pmから10nmのフラーレンが添加されている冷媒圧縮機が開示されている。さらに、この文献には、フラーレンが潤滑油組成物(冷凍機油)に最大限溶解する割合は、0.1から0.2%であることが開示されている。
特許文献2には、圧縮機から吐出された気相冷媒中に含まれる冷凍機油をオイルセパレータで分離し、分離された冷凍機油は油戻し配管を通じて圧縮機吸入側に戻されることが開示されている
特許文献3には、液状フラーレン誘導体及びその製造方法、並びに、液状フラーレン誘導体を含む導電性組成物、及び、液状フラーレン誘導体が少なくともその構成の一部とされている電気・電子素子、が開示されている。しかし、前記誘導体の冷媒への適用に関しては何も開示されていない。
国際公開第2017/141825号 特開平11-173706号公報 特許第5121710号公報
特許文献1に記載のように、フラーレンは冷凍機油の性能を向上させるための成分として好ましく用いられている。しかし、フラーレンは、冷凍機油に対する溶解度は高くなく、また、ノンフロン冷媒として使用される炭化水素にはほとんど溶解しないため、使用中の環境変化などでフラーレンが固形分として析出する虞がある。このような析出が生じると、特許文献2に記載のオイルセパレータで冷凍機油成分を戻せなくなったり、油戻し配管を詰まらせたり、種々の障害が生じ兼ねない。
本発明は、以上の事情に鑑みてなされたものであり、前記障害が生じにくい冷媒組成物を提供することを課題としている。
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
[1] 炭化水素冷媒とフラーレン誘導体とを含む冷媒組成物であって、
前記フラーレン誘導体は下記式(1)
Figure 0007377441000001
(式中、FLNはフラーレン骨格を表し、mは1~3の整数を表し、Rはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数2以下の炭化水素基を表し、R、RおよびRは、それぞれ独立にアルキル系置換基を表し、前記アルキル系置換基は、アルキル基(C2n+1)、アルコキシ基(OC2n+1)、および、チオアルキル基(SC2n+1)からなる群から選ばれる基であり、nは、12~24の整数を表す。)
で表される構造を有する化合物であり、前記炭化水素冷媒に対する前記フラーレン誘導体の質量比が、10-6~10-2である冷媒組成物。
[2] 前記炭化水素冷媒が、プロパン、n-ブタン及びイソブタンから選ばれる少なくとも1種である前項[1]に記載の冷媒組成物。
[3] 前記フラーレン骨格がC60またはC70である前項[1]または[2]に記載の冷媒組成物。
[4] 前項[1]~[3]のいずれかに記載の冷媒組成物を有する冷却装置。
本発明によれば、析出しにくいフラーレン誘導体を含む冷媒成物を提供することができる。そのため、前記析出に起因する障害を避けることができる。
以下、本発明の一実施形態を挙げて詳細に説明する。なお、本発明はその要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
本実施形態の冷媒組成物は、炭化水素冷媒とフラーレン誘導体を含む。
(炭化水素冷媒)
前記冷媒組成物中の冷媒としては、球温暖化防止の観点から、炭化水素が挙げられる。炭化水素としては炭素数3~6の炭化水素が好ましく、より好ましくはプロパン、n-ブタン及びイソブタンである。
(フラーレン誘導体)
フラーレンはフラーレン骨格のみで構成される化合物であり、フラーレン誘導体はフラーレン骨格に官能基の導入等がなされたものである。
本実施形態のフラーレン誘導体は、下記式(1)
Figure 0007377441000002
(式中、FLNはフラーレン骨格を表し、mは1~3の整数を表し、Rはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数2以下の炭化水素基を表し、R、RおよびRは、それぞれ独立にアルキル系置換基を表し、前記アルキル系置換基は、アルキル基(C2n+1)、アルコキシ基(OC2n+1)、および、チオアルキル基(SC2n+1)からなる群から選ばれる基であり、nは、12~24の整数を表す。)
で表される構造を有する化合物である。
このようなフラーレン誘導体は、液体(油状物質)として得られやすく、また、炭化水素への溶解性が高い。そのため、固形分として析出し難く、前述の油戻し配管を詰まらせたりするなどの障害が生じにくい。なお、フラーレン誘導体が液体かどうかは、常温常圧(20℃、0.1MPa)で判断を行う。さらに、前記冷媒組成物の使用環境が判明している場合は、その使用環境の範囲内で、前記フラーレン誘導体は液体であることが好ましい。
前記フラーレン誘導体の構造中のフラーレン骨格FLNは、特に限定されず、C60やC70、さらに高次のフラーレンであってもよく、原料となるフラーレンの入手しやすさの観点から、C60やC70が好ましく、C60がより好ましい。前記フラーレン誘導体としては、これら誘導体の混合物であってもよい。この場合、前記誘導体中のC60を有する誘導体が50質量%以上であることが好ましい。
、RおよびRが表すアルキル系置換基は、アルキル基、アルコキシ基、および、チオアルキル基から選ばれる基が挙げられる。これらの中では、合成のしやすさや工業的な原料の入手のしやすさの面で、アルコキシ基が好ましい。これら基の炭素数は、フラーレン誘導体の溶解性の観点から12以上であり、一方、フラーレン誘導体自身が液状として得やすくするには24以下であり、好ましくは20以下である。
1つのフラーレン骨格が有する誘導体置換基の数、すなわち前記式(1)中のmは、大きいほど、前記溶解性が高くなるが、フラーレン誘導体の合成が煩雑になる。そのため、必要な溶解性が得られる限りmを大きくしない方がよく、合成の容易さと溶解度とのバランスを勘案するとmは1~3であり、1~2がより好ましい。
前記式(1)のRは水素原子又は炭素数2以下の炭化水素基である。Rとしては、原料の入手のしやすさからメチル基が好ましい。
さらに、前記冷媒に対する前記フラーレン誘導体の質量比は、10-6~10-2であり、好ましくは10-6~10-3であり、より好ましくは10-5~10-3である。前記フラーレン誘導体の質量比は、少なすぎると潤滑特性が得にくくなり、多すぎると経済的ではない。
(冷却装置)
本実施形態の冷媒組成物は、冷却装置(冷凍装置、冷蔵装置等)、特に、冷媒を圧縮する冷媒圧縮装置に好ましく適用できる。前記冷媒組成物に含まれるフラーレン誘導体はそれ自身で潤滑剤として作用するので、前記装置に冷凍機油は、必須ではなく、使用しても少量で済む。そのため、例えば、JIS K 2211 2009の6.6項に記載の低温析出性に関する問題などは回避しやすくなる。
以上、本発明の好ましい実施形態について述べたが、本発明は特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
(フラーレン誘導体)
以下のフラーレン誘導体A,B,B2,C及びDについて、特許文献3に記載の方法で分析及び合成を行った。ただし、原料のフラーレンとしてC60(フロンティアカーボン(株)製、nanom(登録商標)SUH)を用いた。また、得られた誘導体A,B,B2及びCは常温常圧(20℃、0.1MPa)で液状であったが、誘導体Dは固体であった。
フラーレン誘導体A: 前記式(1)において、R、RおよびRが-O(CH11CHであり、mが1であり、FLNがC60である化合物N-メチル-2[2,4,6-トリ(ドデシルオキシ)フェニル]フレロピロリジンであり、特許文献3の実施例1の方法で得た。
フラーレン誘導体B: 前記式(1)において、R、RおよびRが-O(CH15CHであり、mが1であり、FLNがC60である化合物N-メチル-2[2,4,6-トリ(ヘキサデシルオキシ)フェニル]フレロピロリジンであり、特許文献3の実施例2の方法で得た。
フラーレン誘導体B2: 前記式(1)において、R、RおよびRが-O(CH15CHであり、mが2~3であり、FLNがC60である化合物の混合物であり、特許文献3の実施例2の方法でフラーレン誘導体Bをカラムクロマトグラフィーで精製する際、フラーレン誘導体Bの不純物として分離されたものである。
フラーレン誘導体C: 前記式(1)において、R、RおよびRが-O(CH19CHであり、mが1であり、FLNがC60である化合物N-メチル-2[2,4,6-トリ(エイコシルオキシ)フェニル]フレロピロリジンであり、特許文献3の実施例3の方法で得た。
フラーレン誘導体D: 前記式(1)において、R、RおよびRが-O(CHCHであり、mが1であり、FLNがC60である化合物N-メチル-2[2,4,6-トリ(オクチルオキシ)フェニル]フレロピロリジンであり、特許文献3の比較例1の方法で得た。
(析出試験)
試料とするフラーレン誘導体1質量部とイソブタン99質量部とを混合し冷媒組成物を得た。この冷媒組成物を攪拌しながら真空ポンプで減圧し、体積が約1/30になるまで濃縮した。濃縮後の固形分の析出物の有無を観察した。これらの操作は、-18℃の環境で行った。
(実施例1~6、比較例1)
フラーレン誘導体A,B,B2,C及びDのそれぞれについて析出試験を行った。結果を表1に示した。
(比較例2)
フラーレンC60(フロンティアカーボン(株)製、nanom(登録商標)SUH)フラーレンについて析出試験を行った。しかし、フラーレンC60はイソブタンに溶解せず、析出試験結果は得られなかった。
(比較例3)
フラーレン誘導体を用いなかったことを除き、前記析出試験と同様に操作及び観察を行った。結果を表1に示した。
Figure 0007377441000003
表1より、析出試験において、各実施例では、炭化水素冷媒に対する各フラーレン誘導体の質量比が10-2と高濃度であるにもかかわらず、析出が見られなかった。
この結果は、各実施例で用いたフラーレン誘導体は、液体であり、かつ、冷媒に対する溶解度も高いので、固形分の析出がしにくかったと考えられる。

Claims (4)

  1. 炭化水素冷媒とフラーレン誘導体とを含む冷媒組成物であって、
    前記フラーレン誘導体は下記式(1)
    Figure 0007377441000004
    (式中、FLNはフラーレン骨格を表し、mは1~3の整数を表し、Rはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数2以下の炭化水素基を表し、R、RおよびRは、それぞれ独立にアルキル系置換基を表し、前記アルキル系置換基は、アルキル基(C2n+1)、アルコキシ基(OC2n+1)、および、チオアルキル基(SC2n+1)からなる群から選ばれる基であり、nは、12~24の整数を表す。)
    で表される構造を有する化合物であり、前記炭化水素冷媒に対する前記フラーレン誘導体の質量比が、10-6~10-2である冷媒組成物。
  2. 前記炭化水素冷媒が、プロパン、n-ブタン及びイソブタンから選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の冷媒組成物。
  3. 前記フラーレン骨格がC60またはC70である請求項1または2に記載の冷媒組成物。
  4. 請求項1~3のいずれかに記載の冷媒組成物を有する冷却装置。

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