JP7377049B2 - 被覆剤 - Google Patents

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Description

本開示は、被覆剤に関する。
モルタル構造物、コンクリート構造物等の、熱養生を行うことで製造される構造物は、その表面に微細なひび割れを有することが多い。構造物の表面のひび割れは、構造物の熱養生の際に生じる構造物の内部と表面との温度差や、養生中の外気温の変化等に基づく急激な温度変化により発生する。これらのひび割れは、構造上の重大な欠陥ではないものの、構造物の美観の悪化の原因となっている。また、構造物の表面におけるひび割れは、塩化物イオン等の劣化因子の浸入経路となり得るため、構造物の長期耐久性が損なわれる懸念がある。
上記構造物の多くは、日射、高低温、乾湿、風雨等の外部環境の変化、及び外部環境の変化に起因した劣化因子の浸入にさらされている。上述のような外部環境の変化によって構造物の表面における劣化が促進される場合がある。このような劣化の促進は、構造物の表面にひび割れがある場合、顕著にみられる。
そこで、ひび割れに起因する構造物の劣化を抑制する方法として、一般的には、構造物表面にタイルを貼り付ける方法や、構造物表面に耐候性塗料、吸水防止材等の被覆剤を塗布し被覆層を設ける方法などが知られている。例えば、特許文献1には、吸水防止性能を維持しつつ、塗布表面の剥がれや白化を阻止しうる土木建築材料用吸水防止材が記載されている。
特開2012-241100号公報
ところで、タイル等の光沢のある被覆層により光の反射が生じ易くなるが、そのような光の反射が不適当な場合がある。例えば、高速道路の壁高欄等にそのような被覆層を適用した場合、車のライトが被覆層で反射されることが想定され、車の運転に支障が生じる虞がある。このため、光沢が抑制された被覆剤が求められる場合がある。
しかし、従来の被覆剤では、被覆むらが生じたり、あるいは光沢が強すぎたりするなど、構造物の美観を損ねる場合がある。また、タイル等に比べてそもそも被覆層が充分な耐候性を有しない場合がある。なお、特許文献1に記載の吸水防止材は、原料が高価であることや、構造物の表面への付着性及び被覆層の耐久性が不充分であることなどから、その使用が一部の構造物に限定されてしまう。
本開示は、被覆むら及び光沢が抑制され、耐候性に優れる被覆層を形成することが可能な被覆剤を提供することを目的とする。
本開示の一側面は、合成樹脂エマルション、無機粉体、消泡剤、増粘剤及び顔料を含有する被覆剤であって、上記合成樹脂エマルションが、平均分散粒子径が100~250nmである合成樹脂粒子を含み、上記合成樹脂粒子が、ガラス転移温度が-11~-5℃であるスチレン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体を含み、上記合成樹脂エマルションの23℃における粘度が50~200mPa・sであり、pHが4~8であり、固形分濃度が30~60質量%であり、上記無機粉体が、砂、フェロニッケルスラグ、高炉スラグ微粉末、シリカフューム、炭酸カルシウム粉及びフライアッシュからなる群より選ばれる少なくとも1種を含み、上記消泡剤が鉱油系消泡剤を含み、上記増粘剤がウレアウレタン樹脂を含み、上記顔料が酸化アルミニウム及び酸化チタンを含む、被覆剤を提供する。
上記被覆剤によれば、特定の合成樹脂エマルション、特定の無機粉体、特定の消泡剤、特定の増粘剤及び特定の顔料を含有することから、被覆むらの発生及び光沢が抑制され、耐候性に優れる被覆層を形成することができる。
上記無機粉体の含有量が、合成樹脂エマルション100質量部に対して30~200質量部であり、上記消泡剤の含有量が、合成樹脂エマルション100質量部に対して0.1~5.0質量部であり、上記増粘剤の含有量が、合成樹脂エマルション100質量部に対して0.1~5.0質量部であり、上記顔料の含有量が、合成樹脂エマルション100質量部に対して1.0~20.0質量部であってもよい。
上記砂における、粒子径が150μm以上の粒子の含有量が5質量部以下であってもよく、上記砂の活性度指数が50~80%であり、フロー値比が80~110であり、密度が1.5~3.0g/cmであり、湿分が1%以下であってもよい。
上記消泡剤の比重が0.80~1.0であってもよい。また、上記増粘剤の密度が1.0~1.3g/cmであってもよい。
上記顔料が更に水を含んでいてもよく、上記顔料のpHが8.0~10.0であり、密度が1.9~2.3g/cmであってもよい。
上述の被覆剤が耐候性付与剤を更に含有してもよく、上記耐候性付与剤がベンゾトリアゾール系化合物を含んでもよい。
上記耐候性付与剤の含有量が、合成樹脂エマルション100質量部に対して0.1~10.0質量部であってよい。
上述の被覆剤が安定剤を更に含有してもよく、上記安定剤が1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジル骨格を有する化合物を含んでもよい。
上記安定剤の含有量が、上記合成樹脂エマルション100質量部に対して0.1~10.0質量部であってもよい。
本開示によれば、被覆むら及び光沢が抑制され、耐候性に優れる被覆層を形成することが可能な被覆剤を提供することができる。
図1は、実施例1~4で調製された被覆剤を用いてモルタル構造物上に形成された被覆層の外観を示す図である。 図2は、モルタル構造物(参考例1)の外観、及び比較例1で調製された被覆剤を用いてモルタル構造物上に形成された被覆層の外観を示す図である。 図3は、実施例1~4で調製された被覆剤を用いてモルタル構造物上に形成された被覆層の耐候性試験後の外観を示す図である。 図4は、モルタル構造物(参考例1)の耐候性試験後の外観、及び比較例1で調製された被覆剤を用いてモルタル構造物上に形成された被覆層の耐候性試験後の外観を示す図である。
以下、本開示の実施形態について説明する。ただし、以下の実施形態は、本開示を説明するための例示であり、本開示を以下の内容に限定する趣旨ではない。
本明細書において例示する材料は特に断らない限り、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。組成物中の各成分の含有量は、組成物中の各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。本明細書において、「~」で示される数値範囲は、特に断らない限り、それぞれの上限値及び下限値を範囲内に含む。
被覆剤の一実施形態は、合成樹脂エマルション、無機粉体、消泡剤、増粘剤及び顔料を含有する被覆剤であって、例えば構造物の表面被覆を形成するために用いることができる。構造物としては、ビル、マンション及び住宅、並びに、橋、高架道路、ダム、トンネル、及び道路等が挙げられる。構造物は、好ましくは、コンクリート及びモルタル等を含み、より好ましくはコンクリート及びモルタル等からなる。
上記合成樹脂のエマルションの分散媒は、好ましくは水及びアルコール等を含み、より好ましくは水である。エマルションは、好ましくは合成樹脂粒子が水に分散した水系エマルションである。合成樹脂は、単独重合体であってもよく、共重合体であってもよい。共重合体は3種以上のモノマーの共重合体であってもよい。共重合体は、交互共重合体、ランダム共重合体、又はブロック共重合体であってよい。合成樹脂は、市販のものを使用することもでき、又は別途調製したものを用いてもよい。
合成樹脂としては、例えば、スチレン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体等が挙げられる。この合成樹脂は、公知の重合方法によって製造することができ、交互共重合していてもよく、ランダム共重合していてもよく、グラフト共重合していてもよい。
スチレン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体における、スチレンに由来する構造単位と、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位との比率を調整してもよい。スチレンに由来する構造単位に対する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位のモル比を調整することで、合成樹脂エマルション固形分のガラス転移温度を適度なものとすることができる。
スチレン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体のガラス転移温度(Tg)は好ましくは-11~-5℃であり、より好ましくは-10.5~-5.5℃であり、更に好ましくは-10~-6℃である。スチレン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体のガラス転移温度が上記範囲内であることで、低い気温の時でも被覆層の柔軟性を確保することができ、被覆構造物の被覆むらを抑制することができる。
本明細書における合成樹脂の「ガラス転移温度」は、下記式(1)で表されるFOX式から算出される値をセルシウス温度に換算した値を意味する。
1/Tg=W/Tg+W/Tg+…+W/Tg+…+W/Tg・・・式(1)
上記式(1)中、Tgは合成樹脂のガラス転移温度(単位:K)である。Tgは、各モノマーの単独重合体のガラス転移温度を示す。Wは、各モノマーの質量分率を示し、W+W+…+W+…W=1である。Tg(単位:K)は、熱重量測定(TG)によって測定した値を用いてもよく、「POLYMER HANDBOOK THIRD EDITION」(A WILEY-INTERSCIENCE PUBLICATION)に収録された値を用いてもよい。
上記合成樹脂のエマルションの23℃における粘度は、好ましくは50~200mPa・sであり、より好ましくは70~180mPa・sであり、更に好ましくは90~160mPa・sである。エマルションの粘度が200mPa・s以下であれば、高粘度に起因する無機質粉末(無機粉体及び顔料)との混合性の悪化や、塗布時の施工性の悪化を防止できる。また、エマルションの粘度が50mPa・s以上であれば、エマルションとの混合の際に無機質粉末の沈降を防止することができ、均一に混合させることができる。
本明細書における「粘度」は、JIS K 6833-1:2008「接着剤-一般試験方法-第1部:基本特性の求め方」の記載に準じて測定される値を意味する。より具体的には、BM型粘度計(東京計器株式会社製、測定条件:ローターNo.1、12rpm、1分間)を用い、基本的には23℃の条件下で測定し得られる粘度を意味する。
上記合成樹脂のエマルションのpHは、好ましくは4~8であり、より好ましくは4.5~7.5であり、更に好ましくは5~7である。エマルションのpHが上記範囲内であることで、構造物表面への被覆剤の施工性をより向上させることができ、被覆構造物の被覆むらを抑制し、被覆層における無機粉体及び顔料の分散状態を保持する性能が向上し、ひいては色むらの発生を抑制することができる。本明細書における「pH」は、JIS K 6833-1:2008「接着剤-一般試験方法-第1部:基本特性の求め方」の記載に準じて測定される値を意味する。pHの測定は、23℃で行う。
上記合成樹脂粒子の平均分散粒子径(分散媒中に分散している合成樹脂の平均粒子径)は、好ましくは100~250nmであり、より好ましくは150~230nmであり、更に好ましくは140~210nmである。合成樹脂粒子の平均分散粒子径が上記範囲内であることで、被覆剤の構造物表面への付着性を向上させることができる。本明細書における「平均分散粒子径」は、粒子径測定装置(大塚電子株式会社製、商品名:FPAR-1000)を用いて測定される値を意味する。
上記エマルションの固形分濃度(不揮発性成分の濃度)は、好ましくは30~60質量%であり、より好ましくは35~55質量%であり、更に好ましくは40~50質量%である。固形分濃度が60質量%以下であれば、エマルションの粘性が高くなりにくく、施工性の悪化を防止することができ、また、固形分濃度が30質量%以上であれば、エマルションの粘性が低くなりにくく、無機質粉末の沈降を防止することができる。本明細書における「固形分濃度」は、JIS K 6833-1:2008「接着剤-一般試験方法-第1部:基本特性の求め方」の記載に準じて測定される値を意味する。
上記無機粉体は、例えば、砂、フェロニッケルスラグ、高炉スラグ微粉末、シリカフューム、炭酸カルシウム粉及びフライアッシュからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。無機粉体は、被覆剤の施工性を向上させる観点から、砂及びフェロニッケルスラグの少なくとも1種を含むことが好ましい。
上記砂としては、山砂、川砂、海砂、砕石粉、砕砂、及び珪砂等が挙げられる。上記砂は複数の粒子から構成され、当該砂における、粒子径が150μm以上の粒子の含有量は、砂の全量100質量部を基準として、5質量部以下であることが好ましく、3質量部以下であることがより好ましく、1質量部以下であることが更に好ましい。粒子径が150μm以上の粒子の含有量は、砂の全量100質量部を基準として、0.01質量部以上であってよく、0.1質量部以上であってよい。粒子径が150μm以上の粒子の含有量が5質量部以下であることで、被覆剤の施工によって得られる被覆層の表面平滑性を向上させることができ、粒子の粗さに起因する被覆むらを一層抑制することができる。上記砂における、粒子径が150μm以上の粒子の含有量は、例えば、砂の粉砕等によって調整することができる。本明細書における「粒子径が150μm以上の粒子の含有量」は、JIS A 5041:2009「コンクリート用砕石分」における「150μmふるい残分」を意味し、JIS A 5041:2009「コンクリート用砕石分」に記載の方法に準じて測定される値を意味する。
上記砂の材齢28日における活性度指数は、50~80%であることが好ましく、55~75%であることがより好ましく、60~70%であることが更に好ましい。上記砂の活性度指数が50%以上であることで、被覆剤の施工によって得られる被覆層の耐久性をより向上させることができる。本明細書における「活性度指数」は、JIS A 5041:2009「コンクリート用砕石分」に記載の方法に準じて測定される値を意味する。
上記砂のフロー値比は、80~110であることが好ましく、85~110であることがより好ましく、90~110であることが更に好ましい。上記砂のフロー値比が80以上であることで、粒子が細かく、被覆剤の粘性が高くなることを抑制でき、構造物表面への施工性を向上させることができる。本明細書における「フロー値比」は、JIS A 5041:2009「コンクリート用砕石分」に記載の方法に準じて測定される値を意味する。
上記砂の密度は、1.5~3.0g/cmであることが好ましく、1.6~2.9g/cmであることがより好ましく、1.7~2.8g/cmであることが更に好ましい。上記砂の密度が3.0g/cm以下であることで、被覆剤中での砂の沈降を一層抑制することができる。また、上記砂の密度が1.5g/cm以上であることで、被覆剤の施工によって得られる被覆層の耐久性をより向上させることができる。本明細書における「密度」は、JIS A 5041:2009「コンクリート用砕石分」に記載の方法に準じて測定される値を意味する。
上記砂の湿分は、1%以下であることが好ましく、0.75%以下であることがより好ましく、0.5%以下であることが更に好ましく、0.4%以下であることが更により好ましい。上記砂の湿分が1%以下であることで、被覆剤の製造時の砂の計量を容易なものとすることができ、被覆剤の保管における安定性に優れる。上記砂の湿分は、例えば、乾燥等の方法によって調整することができる。本明細書における「湿分」は、JIS A 5041:2009「コンクリート用砕石分」に記載の方法に準じて測定される値を意味する。
上記フェロニッケルスラグは、ステンレス鋼等の原料となるフェロニッケルの製造時に排出される残留物である。フェロニッケルスラグは、珪酸と酸化カルシウムとを主成分とする物質であり、具体的な構成成分として、酸化カルシウム、二酸化ケイ素、酸化鉄、及び酸化マグネシウム等を含み、安定した結晶構造を有する。上記フェロニッケルスラグは、黒色の粉末である。そのため、フェロニッケルスラグの含有量を調整することによって、被覆剤の色調を調整することができる。
上記フェロニッケルスラグに占める、粒子径が150μm以上のスラグの含有量は、フェロニッケルスラグの全量100質量部を基準として、10~50質量部であることが好ましく、15~40質量部であることがより好ましく、20~30質量部であることが更に好ましい。粒子径が150μm以上のスラグの含有量が50質量部以下であることで、被覆剤の施工によって得られる被覆層の表面平滑性を向上させることができ、粒子の粗さに起因する被覆むら及び色むらを一層抑制することができる。また、粒子径が150μm以上のスラグの含有量が10質量部以上であることで、粒子径の細かさに起因する被覆剤の粘度上昇を抑制することができ、被覆剤の施工性を向上させることができる。粒子径が150μm以上のスラグの含有量は、例えば、フェロニッケルスラグの粉砕等によって調整することができる。本明細書における「粒子径が150μm以上のスラグの含有量」は、JIS R 5201:2015「セメントの物理試験方法」に記載の方法に準じて測定される値を意味する。
上記フェロニッケルスラグの粒度指数は、100~300であることが好ましく、130~270であることが好ましく、160~240であることが更に好ましい。フェロニッケルスラグの粒度指数が300以下であることで、粒子径の細かさに起因する被覆剤の粘度上昇を抑制することができ、被覆剤の施工性を向上させることができる。また、フェロニッケルスラグの粒度指数が100以上であることで、粒子径の粗さに起因する被覆むら及び色むらを一層抑制することができる。本明細書における「粒度指数」は、JIS Z 2601:1993「鋳物砂の試験方法」に規定される指数を意味し、粒度係数(所定の大きさの粒子1gあたりの総比表面積)にしたがって、全粒度に亘っての平均の表面積を意味する。
上記フェロニッケルスラグのモース硬さは、5~10であることが好ましく、6~9であることがより好ましく、7~8であることが更に好ましい。フェロニッケルスラグのモース硬さが5以上であることで、被覆剤の施工によって得られる被覆層の耐久性を向上させることができる。本明細書における「モース硬度」は、JIS Z 0312:2004「ブラスト処理用非金属系研削材」に記載の方法に準拠して測定される値を意味する。
上記高炉スラグ微粉末は、モルタル及びコンクリートの製造に一般的に用いられる高炉スラグを粉砕することによって得られるものを用いることができる。上記高炉スラグ微粉末のブレーン比表面積は、2750~10000cm/g程度であってよい。高炉スラグ微粉末としては、例えば、JIS A 6206:2013「コンクリート用高炉スラグ微粉末」に規定される、高炉スラグ微粉末3000、高炉スラグ微粉末4000、高炉スラグ微粉末6000及び高炉スラグ微粉末8000を使用することができる。
本明細書における「ブレーン比表面積」は、JIS R 5201:2015「セメントの物理試験方法」に記載の方法に準拠して測定される値を意味する。
上記シリカフュームは、アルカリ溶液中で溶解する非晶質のSiOを主成分とするものを用いることができる。シリカフュームのBET比表面積は、施工性に優れ、被覆むらが少ない被覆剤を得る観点から、100000~250000cm/gであることが好ましく、150000~200000cm/gであることが更に好ましい。本明細書における「BET比表面積」は、JIS Z 8830:2013「ガス吸着による粉体(固体)の比表面積測定方法」に記載の方法に準拠して測定される値を意味する。
上記炭酸カルシウム粉は、炭酸カルシウムを主成分として含む粉体である。炭酸カルシウム粉としては、例えば、石灰石又は化学的に製造された炭酸カルシウムを粉砕し、分級したものを用いることができる。炭酸カルシウム粉のブレーン比表面積は、施工性に優れ、被覆むらが少ない被覆剤を得る観点から、1000~5000cm/gであることが好ましく、2000~4000cm/gであることが更に好ましい。
上記フライアッシュは、石炭火力発電所にて微粉炭を燃焼した際に生成する灰であって、電気集塵機等で回収される廃棄物を用いることができる。フライアッシュとしては、例えば、JIS A 6201:2015「コンクリート用フライアッシュ」に規定されるフライアッシュII種を用いることができる。
上記無機粉体の含有量は、合成樹脂エマルション100質量部に対して、30~200質量部であることが好ましく、40~180質量部であることがより好ましく、50~170質量部であることが更に好ましい。無機粉体の含有量が200質量部以下であることで、被覆剤の粘度上昇を抑制することができ、構造物への施工性を向上させることができる。また、無機粉体の含有量が30質量部以上であることで、被覆剤中で無機粉体が沈降することを抑制することができる。
上記消泡剤は、鉱油系消泡剤を含む。鉱油系消泡剤は、混合物であってよい。鉱油系消泡剤は、例えば、鉱油、及び界面活性剤の混合物であってよい。界面活性剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、及び非イオン性界面活性剤等であってよい。
上記消泡剤のpHは、2.5%の水溶液とした場合に、8.0~10.0であることが好ましい。上記消泡剤の25℃における比重は、0.80~1.0であることが好ましい。上記消泡剤としては、pHが8.0~10.0であり、比重が0.80~1.0であるものがより好ましい。
上記消泡剤の含有量は、合成樹脂エマルション100質量部に対して、0.1~5.0質量部であることが好ましく、0.2~4.0質量部であることがより好ましく、0.4~2.0質量部であることが更に好ましく、0.4~1.0質量部であることが極めて好ましい。消泡剤の含有量が0.1質量部以上であることで、被覆剤の施工時における気泡の発生を抑制することができ、被覆層の美観を向上させることができる。消泡剤の含有量が5.0質量部以下であることで、充分な消泡性を維持しつつ、コストを抑えることができる。
上記増粘剤は、ウレアウレタン樹脂を含む。増粘剤は、溶剤を含む溶液であってもよく、他に塩化リチウム等の化合物を含んでいてもよい。溶剤としてはN-メチル-2-ピロリドンが例示できる。上記増粘剤の20℃における密度は、1.0~1.3g/cmであることが好ましい。
増粘剤の含有量は、合成樹脂エマルション100質量部に対して、0.1~5.0質量部であることが好ましく、0.2~4.0質量部であることがより好ましく、0.4~2.0質量部であることが更に好ましく、0.4~1.0質量部であることが極めて好ましい。増粘剤の含有量が0.1質量部以上であることで、被覆剤中の無機粉体の沈降を抑制することができる。増粘剤の含有量が5.0質量部以下であることで、被覆剤の施工性を向上させることができる。
上記顔料は、酸化アルミニウム及び酸化チタンを含む。上記顔料は、例えば、白色顔料等であってよい。酸化チタンは、二酸化チタンであってよい。上記顔料が二酸化チタンを含む場合、二酸化チタンの含有量は、顔料全量を基準として50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましい。上記顔料は、市販のものを用いてもよく、別途調製したものを用いてもよい。上記顔料を別途調製する場合、例えば、ルチル鉱石及びイルメナイト等の鉱石を原料として用い、塩素法又は硫酸法によって化学的に製造される無機化合物を用いてよい。
上記顔料は、例えば、水等の液体を加えて、液状又はペースト状に調製してもよい。すなわち上記顔料は、液状又はペースト状顔料であってもよい。上記顔料に水を加えてペースト状に調製した場合、pHは、8.0~10.0であることが好ましい。上記ペースト状顔料の密度は、1.9~2.3g/cmであることが好ましい。上記ペースト状顔料としては、pHが8.0~10.0であり、密度が1.9~2.3g/cmであるものがより好ましい。上記顔料は、更に界面活性剤等を含んでいてもよい。この場合、顔料は、界面活性剤を0.5~1.0質量%及び水を29~39質量%含むよう調製することができる。
上記顔料の含有量は、合成樹脂エマルション100質量部に対して、1.0~20.0質量部であることが好ましく、1.0~15.0質量部であることがより好ましく、3.0~15.0質量部であることが更に好ましく、5.0~10.0質量部であることが極めて好ましい。顔料の含有量が1.0質量部以上であることで、被覆剤の施工によって得られる被覆層と、構造物の表面との間の色差を一層低減することができ、被覆構造物を美観に優れたものとすることができる。顔料の含有量が20.0質量部以下であることで、顔料の微粒子が凝集することを抑制することができ、被覆剤の施工によって得られる被覆層の表面平滑性を向上させることができ、粒子の粗さに起因する被覆むらを一層抑制することができる。
上述の被覆剤は、合成樹脂エマルション、無機粉体、消泡剤、増粘剤及び顔料に加えて、その他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、例えば、耐候性付与剤、安定剤及び分散剤などが挙げられる。
上記耐候性付与剤は、例えば、紫外線吸収剤などを含んでもよい。上記耐候性付与剤は、ベンゾトリアゾール系化合物を含んでもよい。上記ベンゾトリアゾール系化合物は、ポリ(オキシエチレン)基を有してもよい。
上記耐候性付与剤は、α-3-(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-tert-ブチル-4-ヒドロシキフェニル)プロピオニル-ω-ヒドロキシポリ(オキシエチレン)、及びα-3-(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-Tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル-ω-3-(3-(2H-ベンゾトリゾール-2-イル)-5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシポリ(オキシエチレン)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでもよい。
上記耐候性付与剤の溶解度は、好ましくは7.0~9.0mg/Lである。上記耐候性付与剤の20℃における密度は、好ましくは1.0~1.3g/cmである。上記耐候性付与剤としては、溶解度が7.0~9.0mg/Lであり、密度が1.0~1.3g/cmであるものがより好ましい。本明細書における「溶解度」は水に対する溶解度を意味し、水1Lあたりに溶解可能な物質の量を示す。本明細書における「密度」は、JIS K 0061:2001「化学製品の密度及び比重測定方法」に記載の方法に準じて測定される値を意味する。
耐候性付与剤の含有量は、合成樹脂エマルション100質量部に対して、0.1~10.0質量部であることが好ましく、0.3~5.0質量部であることがより好ましく、0.5~2.6質量部であることが更に好ましく、0.6~1.5質量部であることが極めて好ましい。耐候性付与剤の含有量が0.1質量部以上であることで、被覆剤の施工によって得られる被覆層の紫外線による劣化を抑制することができる。耐候性付与剤の含有量が10.0質量部以下であることで、コストを抑えることができる。
安定剤は、例えば、立体障害アミン光安定剤を用いることができる。安定剤は、1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン骨格、及び2,2,6,6-テトラメチルピペリジン骨格からなる群より選択される少なくとも1種の骨格を有する化合物を含むことが好ましく、1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン骨格を有する化合物を含むことがより好ましい。
上記安定剤は、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)デカンジオアート、及びメチル(1,2,2,6,6-ペンチメタル-4-ピペリジル)セバケートからなる群より選択される少なくとも1種を含んでもよい。
上記安定剤の20℃における粘度は、100~600mPa・sであることが好ましい。上記安定剤の密度は、0.9~1.1g/cmであることが好ましい。上記安定剤としては、粘度が100~600mPa・sであり、密度が0.9~1.1g/cmであるものがより好ましい。
上記安定剤の含有量は、合成樹脂エマルション100質量部に対して、0.1~10.0質量部であることが好ましく、0.3~5.0質量部であることがより好ましく、0.5~2.6質量部であることが更に好ましく、0.6~1.5質量部であることが極めて好ましい。安定剤の含有量が0.1質量部以上であることで、被覆剤の施工によって得られる被覆層の紫外線による劣化を抑制することができる。安定剤の含有量が10.0質量部以下であることで、コストを抑えることができる。
上記分散剤としては、例えば、脂肪酸の金属塩、脂肪酸エステル、及び低融点樹脂等が挙げられる。被覆剤が分散剤を含有することで、無機粉体等の沈降をより一層抑制することができる。
上述の被覆剤の23℃における粘度は、例えば、4000Pa・s以下であることが好ましく、3000Pa・s以下であることがより好ましく、2000Pa・s以下であることが更に好ましい。上述の被覆剤の23℃における粘度は、例えば、500Pa・s以上であってよい。上述の被覆剤の23℃における粘度が上記範囲内であることで、構造物表面への施工性をより向上させることができ、また当該被覆剤によって得られる被覆層を美観に優れたものとすることができる。本明細書における「粘度」は、実施例に記載の方法で測定することができる。
被覆剤の調製方法の一実施形態は、合成樹脂エマルション、無機粉体、消泡剤、増粘剤及び顔料を混合する工程を有する。
被覆剤の施工方法の一実施形態は、構造物の表面の少なくとも一部に上述の被覆剤又は上述の被覆剤を含む(被覆剤を希釈した)溶液を施工し、被覆剤含有層を設ける工程(以下、施工工程ともいう)と、被覆剤含有層から水を含む溶剤の含有量を低減して被覆層を設ける工程(以下、溶媒量低減工程ともいう)とを有する。施工は、例えば、塗布及びスプレー等で行ってもよい。塗布は、刷毛又はローラーを用いて行ってもよい。また、一度塗布が完了した面に対して上述の被覆剤を更に塗布し、重ね塗りを行ってもよい。
上述の被覆剤を含む溶液は、上述の被覆剤と、溶媒とを含む。溶媒は、水であってもよく、アルコール等の溶媒であってもよい。被覆剤の施工が屋内で行われる場合があることから、溶媒は水であることが好ましい。
上記被覆剤及び上記被覆剤を含む溶液は、無機粉体の沈降をより一層抑制し、被覆剤の施工によって得られる被覆層の外観をより向上させる観点から、被覆剤の施工の直前に調製することが好ましい。すなわち、上述の被覆剤の施工方法は、被覆剤を調製する工程を更に備えてもよい。
上述の被覆剤の施工対象としては、例えば、住宅、ビル等の構造物であってよい。上記構造物は、屋外又は屋内に設置されるものであってよい。上記構造物は、例えば、コンクリート及びモルタル等から構成されていてよく、コンクリート構造物及びモルタル構造物等であってよい。
被覆剤の施工量(例えば、塗布量)は、50~600g/mであることが好ましく、100~400g/mであることが更に好ましい。
溶媒量低減工程における溶媒量低減手段としては、例えば、自然乾燥、及び加熱乾燥が挙げられる。溶媒量低減工程において低減させる溶媒には、被覆剤を構成する合成樹脂エマルションに含有される分散媒も含む。溶媒量低減工程における環境温度は、例えば、10~40℃であってよい。溶媒量低減工程の時間は、例えば、1~5時間であってよい。
被覆層の厚さは、例えば、0.05~2.00mmであってよく、又は、0.10~1.20mmであってよい。被覆層の厚さが0.05mm以上であることで、衝撃によって生じ得る被覆層の削れ及びはがれ等の発生が抑制できる。被覆層の厚さが2mm以下であることで、乾燥時の被覆層の収縮による被覆剤のひび割れを抑制できる。
本開示の被覆剤は、耐候性及び付着性に優れているので、既設の建設構造物への施工性に優れ、塗装むらを抑制することができる。また、本開示の被覆剤は、無機粉体の種類や含有量を調整することによって、色の調整が容易である。更に、本開示の被覆剤は、安価且つ汎用性が高く、施工後も耐久性が高く、外部環境由来の劣化因子から建設構造物を保護することができる。
以上、幾つかの実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に何ら限定されるものではない。また、上述した実施形態についての説明内容は、互いに適用することができる。
以下、実施例及び比較例を参照して本開示の内容をより詳細に説明する。ただし、本開示は、下記の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
<モルタル構造物の作製>
容器に、764質量部の普通ポルトランドセメント(宇部三菱セメント株式会社製、ブレーン比表面積:3260cm/g、密度:3.16g/cm、SO量:2.31%)と、細骨材として1212質量部の混合砂(表乾密度:2.62g/cm、吸水率:1.69%、粗粒率:2.66%)と、混和材として9.17質量部の高性能AE減水剤(BASFジャパン社製、商品名:マスターグレニウムSP8S)とを測り取り、251質量部の水(水道水)を加え、混練して混練物を得た。なお、高性能AE減水剤の量は、セメントに対する含有割合が1.20質量%となるように調整した。得られた混練物を板状に成形し、20℃の水中で水中養生することでモルタル構造物(高強度、呼び強度:50N/mm以上)を作製した。得られたモルタル構造物は、塗布面が縦:10cm、横:20cmの板状であった。
<被覆剤の調製>
容器に、100質量部の合成樹脂エマルション、150質量部の無機粉体、0.43質量部の消泡剤、0.43質量部の増粘剤、及び8.7質量部の顔料を量り取り、撹拌装置を用いて800rpmで無機粉体等が充分に分散するまで30分間、撹拌混合することで、被覆剤を調製した。
<被覆構造物の作製(モルタル構造物表面への被覆剤の施工)>
上述のとおり調製した被覆剤を、刷毛(刷毛幅:30mm)を用いて、上記モルタル構造物の表面(縦:10cm、横:20cmの平面)上に塗工し、塗工層を設けた。塗工量は約300g/mとなるように調整した。その後、塗工層を室温で1時間乾燥させて、被覆構造物(被覆層を備える構造物)を得た。被覆層の厚さは約0.2mmであった。
(実施例2~4)
表1に示すとおりに原材料及びその配合量を変更したこと以外は、実施例1と同様にして被覆剤を調製した。表1における数値の単位は質量部である。得られた被覆剤を用いて、実施例1と同様にして被覆構造物を作製した。
(比較例1)
実施例1で用いた合成樹脂エマルションと同じ合成樹脂エマルションを用いて、合成樹脂エマルションのみからなる被覆剤を用意した。次に、当該被覆剤を用いて、実施例1と同様にして被覆構造物を作製した。
Figure 0007377049000001
表1に記載の各原材料は、以下に示すとおりである。
[合成樹脂エマルション]
スチレン-アクリル酸アルキルエステル共重合体を含有するエマルション(スチレン-アクリル酸アルキルエステル共重合体のガラス転移温度:-8℃、エマルションの23℃における粘度:120mPa・s、エマルションのpH:7、アクリル酸アルキルエステル共重合体粒子の平均分散粒子径:180nm、固形分濃度:47質量%)
[無機粉体]
砕石粉(粒子径が150μm以上の粒子の含有量:全量100質量部に対して0.3質量部、活性度指数:68%、フロー値比:91、密度:2.73g/cm、湿分:0.33%以下)
[消泡剤]
鉱油、ステアリン酸マグネシウム、及び非イオン性界面活性剤の混合物(pH:8.0~10.0(2.5%aq)、引火点:165℃、25℃における比重:0.90)
[増粘剤]
塩化リチウム及びウレアウレタン樹脂を含むN-メチル-2-ピロリドン溶液(20℃における密度:1.12g/cm、初留点:203℃、引火点:85.9℃)
[顔料]
酸化チタン(IV)と酸化アルミニウムとの混合物(酸化チタン60~70質量%、酸化アルミニウム2質量%未満、及び水のペースト状混合物、pH:8.5~9.5、密度:2.0~2.2g/cm
[耐候性付与剤]
α-3-(3-(2H-ベンゾトリゾール-2-イル)-5-tert-ブチル-4-ヒドロシキフェニル)プロピオニル-ω-ヒドロキシポリ(オキシエチレン)、及びα-3-(3-(2H-ベンゾトリゾール-2-イル)-5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル-ω-3-(3-(2H-ベンゾトリゾール-2-イル)-5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシポリ(オキシエチレン)を含む紫外吸収剤(沸点:166℃、融点:-40℃、20℃における密度:1.17g/cm
[安定剤]
ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)デカンジオアート及びメチル(1,2,2,6,6-ペンチメタル-4-ピペリジル)セバケートを含む立体障害アミン光安定剤(ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)デカンジオアートが70~80質量%、メチル(1,2,2,6,6-ペンチメタル-4-ピペリジル)セバケートが15~30質量%となるように配合されたものであり、密度:0.99g/cm、20℃における粘度:400mPa・sである。)
〔被覆剤の評価〕
実施例1~4及び比較例1で調製した被覆剤について、23℃における粘度、均一性(沈殿抑制性)及び構造物表面への施工性の評価を行った。
<被覆剤の23℃における粘度の評価>
実施例1~4及び比較例1で調製した被覆剤を用いて、BM型粘度計(東京計器株式会社製、測定条件:ローターNo.1、12rpm、1分間)を用い、23℃の条件下によって粘度を測定し、以下の基準で評価した。結果を表2に示す。
A:粘度が2000Pa・s以下である。
B:粘度が2000Pa・s超、3000Pa・s以下である。
C:粘度が3000Pa・s超、4000Pa・s以下である。
D:粘度が4000Pa・s超である。
<被覆剤の均一性の評価>
実施例1~4及び比較例1で調製した被覆剤について、均一性を目視で観察し、以下の基準で評価した。結果を表2に示す。
A:沈殿がない。
B:沈殿が僅かに確認される。
C:沈殿が確認される。
D:沈殿が多く確認される。
<被覆剤の構造物表面への施工性の評価>
実施例1~4及び比較例1で調製した被覆剤を刷毛(刷毛幅:30mm)で施工した際の、被覆剤の伸びを以下の基準で評価した。なお、当該評価は訓練された10名のパネルにより行い、その評価の平均を採用した。結果を表2に示す。
A:被覆剤の伸びが非常に良好である。
B:被覆剤の伸びが良好である。
C:被覆剤の伸びが悪い。
〔被覆層の性能評価〕
実施例1~4及び比較例1で作製した被覆構造物について、被覆層の被覆むら、被覆層の光沢、被覆層のハンター色差、及び被覆層の耐候性の評価を行った。なお、以下の評価では、各評価の参考のため実施例1で作製したモルタル構造物自体を参考例1とした。また、図1~図4は、各被覆構造物及びモルタル構造物において観察された表面の一例を示す。
<被覆層の被覆むらの評価>
実施例1~4及び比較例1で作製した被覆構造物の表面を目視観察し、以下の基準で評価した。結果を表3に示す。
A:被覆むらがない。
B:被覆むらがごく僅かに観察される。
C:被覆むらが観察される。
D:被覆むらが多く観察される。
<被覆層の光沢度の評価>
実施例1~4及び比較例1で作製した被覆構造物、並びに参考例1のモルタル構造物について、後述する耐候性試験において3サイクル試験終了後の被覆層表面の光沢度を光沢度計によって測定し、以下の基準で評価した。結果を表3に示す。
A:光沢度が3以下である。
B:光沢度が3超、10以下である。
C:光沢度が10超、30以下である。
D:光沢度が30超である。
<被覆層の色差(ΔE)の評価>
実施例1~4及び比較例1で作製した被覆構造物、並びに参考例1のモルタル構造物について、後述する耐候性試験前の被覆層又はモルタル構造物表面と、耐候性試験において3サイクル試験終了後の被覆層又はモルタル構造物表面との色差を、色差計によって測定し、三刺激値からハンター色差式(ΔE=[(ΔL)+(Δa)+(Δb)1/2を用いて色差を算出した。ΔL、Δa及びΔbは、それぞれ耐候性試験前後のL値の差、a値の差、及びb値の差を表す。色差を以下の基準で評価した。結果を表3に示す。
A:色差が5.0以下である。
B:色差が5.0超、15以下である。
C:色差が15超である。
<被覆層の耐候性の評価>
実施例1~4及び比較例1で作製した被覆構造物、並びに参考例1のモルタル構造物について耐候性の評価を行った。具体的には、被覆構造物及びモルタル構造物の表面に紫外光(ランプ出力:30W/cm、波長:220nm超)を2時間照射して、その後、水中に2時間浸漬した。これを1サイクルとして3サイクル試験を実施した。各サイクル後の表面を目視観察した。被覆構造物及びモルタル構造物の最終的な表面の外観に基づき、以下の基準で評価した。結果を表3に示す。
A:表面に異常が観察されない。
B:表面に僅かに変色及びつけ引けが観察されたが、ひび割れは観察されない。
C:表面に目立った変色及びつけ引けが観察されたが、ひび割れは観察されない。
D:表面に膨れが観察される、又は表面にひび割れが観察される。
Figure 0007377049000003
図1及び図2に示すとおり、実施例1~4で調製した被覆剤を用いて被覆層を設けた場合、被覆むらがなく、さらには色むらの発生が抑制され、光沢も抑制されることが確認された。図1は、実施例1~4で調製された被覆剤を用いてモルタル構造物上に形成された被覆層の外観を示す図である。図2は、モルタル構造物(参考例1)の外観、及び比較例1で調製された被覆剤を用いてモルタル構造物上に形成された被覆層の外観を示す図である。
図3及び図4に示すとおり、実施例1~4で調製した被覆剤を用いて被覆層を設けた場合、耐候性試験の後であっても被覆層上に異常が観察されなかった。また、被覆層形成後の色の変化も抑制されていた。実施例1~4で調製した被覆剤を用いることで、耐候性に優れる被覆層を設けられることが確認された。図3は、実施例1~4で調製された被覆剤を用いてモルタル構造物上に形成された被覆層の耐候性試験後の外観を示す図である。図4は、モルタル構造物(参考例1)の耐候性試験後の外観、及び比較例1で調製された被覆剤を用いてモルタル構造物上に形成された被覆層の耐候性試験後の外観を示す図である。図4に示されるとおり、本開示にかかる被覆剤を用いて形成される被覆層を有しないモルタル構造物の表面、及び合成樹脂エマルションのみで形成される被覆層を有する被覆構造物では、紫外線照射によるひび割れ等の発生や、変色が確認された。
本開示によれば、被覆むらの発生及び光沢が抑制され、耐候性に優れる被覆層を形成することが可能な被覆剤を提供することができる。

Claims (8)

  1. 合成樹脂エマルション、無機粉体、消泡剤、増粘剤及び顔料を含有する被覆剤であって、
    前記合成樹脂エマルションが、平均分散粒子径が100~250nmである合成樹脂粒子を含み、前記合成樹脂粒子が、ガラス転移温度が-11~-5℃であるスチレン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体を含み、
    前記合成樹脂エマルションの23℃における粘度が50~200mPa・sであり、pHが4~8であり、固形分濃度が30~60質量%であり、
    前記無機粉体が、砂、フェロニッケルスラグ、高炉スラグ微粉末、シリカフューム、炭酸カルシウム粉及びフライアッシュからなる群より選ばれる少なくとも1種であり
    前記消泡剤が鉱油系消泡剤を含み、
    前記増粘剤がウレアウレタン樹脂を含み、
    前記顔料が酸化アルミニウム及び酸化チタンである、被覆剤。
  2. 前記無機粉体の含有量が、前記合成樹脂エマルション100質量部に対して30~200質量部であり、
    前記消泡剤の含有量が、前記合成樹脂エマルション100質量部に対して0.1~5.0質量部であり、
    前記増粘剤の含有量が、前記合成樹脂エマルション100質量部に対して0.1~5.0質量部であり、
    前記顔料の含有量が、前記合成樹脂エマルション100質量部に対して1.0~20.0質量部である、請求項1に記載の被覆剤。
  3. 前記砂における、粒子径が150μm以上の粒子の含有量が5質量部以下であり、前記砂の活性度指数が50~80%であり、フロー値比が80~110であり、密度が1.5~3.0g/cmであり、湿分が1%以下である、請求項1又は2に記載の被覆剤。
  4. 前記消泡剤の比重が0.80~1.0であり、前記増粘剤の密度が1.0~1.3g/cmである、請求項1~3のいずれか一項に記載の被覆剤。
  5. 耐候性付与剤を更に含有し、前記耐候性付与剤がベンゾトリアゾール系化合物である、請求項1~のいずれか一項に記載の被覆剤。
  6. 前記耐候性付与剤の含有量が、前記合成樹脂エマルション100質量部に対して0.1~10.0質量部である、請求項に記載の被覆剤。
  7. 安定剤を更に含有し、前記安定剤が1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン骨格を有する化合物である、請求項1~のいずれか一項に記載の被覆剤。
  8. 前記安定剤の含有量が、前記合成樹脂エマルション100質量部に対して0.1~10.0質量部である、請求項に記載の被覆剤。
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