JP7375450B2 - 半導体処理用組成物及び処理方法 - Google Patents

半導体処理用組成物及び処理方法 Download PDF

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Description

本発明は、半導体処理用組成物及びそれを用いた処理方法に関する。
半導体装置の製造に活用されるCMP(Chemical Mechanical Polishing)に用いられる化学機械研磨用のCMPスラリーは、研磨粒子(砥粒)の他、エッチング剤等を含有する。研磨粒子が凝集して粗大粒子が発生すると研磨傷の原因になる。このため、例えばシクロデキストリンを用いた包接化合物を活用し、CMPスラリーの安定性を向上させる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、半導体装置の製造においては、CMP工程などの後に、研磨屑や有機残渣等の汚染を半導体基板の表面から除去する洗浄工程が必須である。半導体基板の表面には、タングステン、コバルト等の金属配線材料が露出しているため、洗浄工程においては、このような金属配線材料が露出している被研磨面の腐食を抑制する必要がある。半導体基板の表面の腐食を抑制する技術としては、例えばシクロデキストリンを用いた包接化合物を活用する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特開2009-302255号公報 特表2019-507207号公報
しかしながら、近年の更なる回路構造の微細化に伴い、被処理体の金属配線等に与える腐食を更に抑制し、被処理体の表面より汚染を効果的に除去できる処理技術が要求されている。また、半導体装置の生産安定性をより高めるためには、処理剤の貯蔵安定性を向上させる必要もある。
そこで、本発明に係る幾つかの態様は、上記課題の少なくとも一部を解決することで、貯蔵安定性に優れ、被処理体の金属配線等に与える腐食を抑制し、被処理体の表面より汚染を効果的に除去できる半導体処理用組成物、及びそれを用いた処理方法を提供するものである。
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下のいずれかの態様として実現することができる。
本発明に係る半導体処理用組成物の一態様は、
(A)シクロデキストリン及びシクロデキストリン誘導体よりなる群から選ばれる少なくとも1種と、
(B)双性イオン構造を有する化合物と、
(C)液状媒体と、
を含有し、
前記(A)成分の含有量をM[質量%]、前記(B)成分の含有量をM[質量%]としたときに、M/M=3~15である。
前記態様の半導体処理用組成物は、1~100倍に希釈して使用してもよい。
前記いずれかの態様の半導体処理用組成物において、
前記(B)成分が、カルボキシル基及びスルホン酸基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基と、炭素数12以上18以下のアルキル基とを有する化合物であってもよい。
前記いずれかの態様の半導体処理用組成物において、
前記シクロデキストリン誘導体が、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン及び2-ヒドロキシエチル-β-シクロデキストリンから選ばれる少なくとも1種であってもよい。
前記いずれかの態様の半導体処理用組成物において、
さらに、有機酸を含有してもよい。
前記いずれかの態様の半導体処理用組成物において、
さらに、水溶性高分子を含有してもよい。
本発明に係る処理方法の一態様は、
配線材料としてタングステンを含む配線基板を、前記いずれかの態様の半導体処理用組成物を用いて処理する工程を含む。
本発明に係る処理方法の一態様は、
配線基板の配線材料としてタングステンを含み、前記配線基板を化学機械研磨した後に前記いずれかの態様の半導体処理用組成物を用いて処理する工程を含む。
本発明に係る半導体処理用組成物によれば、長期間貯蔵しても研磨特性又は洗浄特性の劣化が少なく、安定して半導体製造を行うことができる。また、本発明に係る半導体処理用組成物によれば、被処理体の金属配線等に与える腐食を抑制し、被処理体の表面より汚染を効果的に除去することができる。本発明に係る半導体処理用組成物は、配線材料としてタングステンやコバルトを含む配線基板を処理する場合に特に有効である。
本実施形態に係る処理方法に用いられる配線基板の作製プロセスを模式的に示す断面図である。 本実施形態に係る処理方法に用いられる配線基板の作製プロセスを模式的に示す断面図である。
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、下記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含む。
1.半導体処理用組成物
本発明の一実施形態に係る半導体処理用組成物は、(A)シクロデキストリン及びシクロデキストリン誘導体よりなる群から選ばれる少なくとも1種(本明細書において、「(A)成分」ともいう。)と、(B)双性イオン構造を有する化合物(本明細書において、「(B)成分」ともいう。)と、(C)液状媒体と、を含有し、前記(A)成分の含有量をM[質量%]、前記(B)成分の含有量をM[質量%]としたときに、M/M
=3~15である。本実施形態に係る半導体処理用組成物は、必要に応じて純水や有機溶媒などの液状媒体で希釈して用いることを目的とした濃縮タイプであってもよいし、希釈せずにそのまま用いることを目的とした非希釈タイプであってもよい。本明細書において、濃縮タイプもしくは非希釈タイプであることを特定しない場合には、「半導体処理用組成物」との用語は、濃縮タイプ及び非希釈タイプの両方を含む概念として解釈される。
また、本実施形態に係る半導体処理用組成物は、化学機械研磨用のCMPスラリー、CMP終了後などの被処理体の表面に存在するパーティクルや金属不純物などを除去するための洗浄剤、レジストを用いて処理された半導体基板からレジストを剥離するためのレジスト剥離剤、金属配線等の表面を浅くエッチングして表面汚染を除去するためのエッチング剤等の処理剤として使用することができる。
すなわち、本発明における「処理剤」とは、上述の濃縮タイプの半導体処理用組成物に液状媒体を添加して希釈することにより調製されたもの若しくは上述の非希釈タイプの半導体処理用組成物自体であって、実際に被処理面を処理する際に用いられる液剤のことをいう。上述の濃縮タイプの半導体処理用組成物は、通常、各成分が濃縮された状態で存在する。そのため、各ユーザーが、上述の濃縮タイプの半導体処理用組成物を液状媒体で希釈して処理剤を調製し、または非希釈タイプの半導体処理用組成物を処理剤としてそのまま使用し、その処理剤を化学機械研磨用のCMPスラリー、半導体表面を洗浄するための洗浄剤、レジスト剥離剤、エッチング剤として使用に供することができる。以下、本実施形態に係る半導体処理用組成物に含まれる各成分について詳細に説明する。
1.1.(A)シクロデキストリン及びシクロデキストリン誘導体
本実施形態に係る半導体処理用組成物は、(A)シクロデキストリン及びシクロデキストリン誘導体よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する。ここで、シクロデキストリンは、数分子のD-グルコースがグルコシド結合によって結合し、環状構造をとった環状オリゴ糖の一種である。グルコースが5個以上結合したものが知られており、一般的なものはグルコースが6~8個結合したものである。シクロデキストリンとしては、グルコースが6個結合しているα-シクロデキストリン、グルコースが7個結合しているβ-シクロデキストリン、グルコースが8個結合しているγ-シクロデキストリンを好ましく使用することができる。
シクロデキストリン誘導体は、上述のようなシクロデキストリンが有する水酸基を修飾したものである。シクロデキストリン誘導体としては、例えば、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、2-ヒドロキシエチル-β-シクロデキストリンなどを好ましく使用することができる。
濃縮タイプのCMPスラリーにおいては、(A)成分の含有量の下限値は、半導体処理用組成物の全質量を100質量%としたときに、好ましくは0.01質量%であり、より好ましくは0.03質量%であり、特に好ましくは0.05質量%である。一方、(A)成分の含有量の上限値は、半導体処理用組成物の全質量を100質量%としたときに、好ましくは0.5質量%であり、より好ましくは0.3質量%であり、特に好ましくは0.2質量%である。非希釈タイプのCMPスラリーにおいては、(A)成分の含有量の下限値は、半導体処理用組成物の全質量を100質量%としたときに、好ましくは0.005質量%であり、より好ましくは0.01質量%であり、特に好ましくは0.02質量%である。一方、(A)成分の含有量の上限値は、半導体処理用組成物の全質量を100質量%としたときに、好ましくは1質量%であり、より好ましくは0.5質量%であり、特に好ましくは0.1質量%である。(A)成分の含有量が前記範囲にあると、(A)成分の環状構造内側の疎水性空洞に(B)成分を効果的に包接することができるため、沈澱を生じることなく、貯蔵安定性を高めることができる。
濃縮タイプのその他の処理剤(例えば、洗浄剤)においては、(A)成分の含有量の下限値は、半導体処理用組成物の全質量を100質量%としたときに、好ましくは0.1質量%であり、より好ましくは0.2質量%であり、特に好ましくは0.3質量%である。一方、(A)成分の含有量の上限値は、半導体処理用組成物の全質量を100質量%としたときに、好ましくは10質量%であり、より好ましくは7質量%であり、特に好ましくは5質量%である。非希釈タイプのその他の処理剤(例えば、洗浄剤)においては、(A)成分の含有量の下限値は、半導体処理用組成物の全質量を100質量%としたときに、好ましくは0.005質量%であり、より好ましくは0.01質量%であり、特に好ましくは0.02質量%である。一方、(A)成分の含有量の上限値は、半導体処理用組成物の全質量を100質量%としたときに、好ましくは1質量%であり、より好ましくは0.5質量%であり、特に好ましくは0.1質量%である。(A)成分の含有量が前記範囲にあると、CMP終了後などの被処理体の表面に存在するパーティクルや金属不純物などを(A)成分の環状構造内側の疎水性空洞に包接して除去できるため、被処理体上の残渣汚染を低減させつつ、半導体処理用組成物に由来する残渣汚染の発生を抑制できる。
1.2.(B)双性イオン構造を有する化合物
本実施形態に係る半導体処理用組成物は、(B)双性イオン構造を有する化合物を含有する。ここで、双性イオン構造とは、組成物中で正電荷を有することのできる官能基を1つ以上と、組成物中で負電荷を有することのできる官能基を1つ以上とを、それぞれ同一分子内に持つ化合物のことをいう。このような双性イオン構造を有する化合物としては、例えば、組成物中でアンモニウムカチオンなどの正電荷を生成するための官能基と、カルボキシラートアニオンなどの負電荷を生成するための官能基とを、同一分子内に有する分子内塩化合物が挙げられる。
(B)成分としては、このような双性イオン構造を有する化合物であれば特に限定されないが、カルボキシル基及びスルホン酸基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基と、炭素数12以上18以下のアルキル基と、を有する双性イオン構造であることが好ましく、下記一般式(1)で表される化合物であることがより好ましい。
Figure 0007375450000001
上記式(1)中、R及びRはそれぞれ独立して、置換又は非置換の炭素数1~6のアルカンジイル基を表すが、炭素数1~4のアルカンジイル基であることが好ましく、炭素数1~2のアルカンジイル基であることがより好ましい。上記式(1)中、Rは炭素数12以上18以下のアルキル基を表す。
特に上記一般式(1)で表される化合物は、分子の両末端にカルボキシル基を有している。このような構造を有する(B)成分は、金属イオンに対して高い配位能力を有するため、金属配線材料等の腐食を効果的に抑制することができる。
(B)成分の具体例としては、例えば、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパ
ラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、セリン、トレオニン、チロシン、バリン、トリプトファン、ヒスチジン、2-アミノ-3-アミノプロパン酸、N-[2-[(2-アミノエチル)ドデシルアミノ]エチル]グリシン等のアミノ酸;リジンベタイン、オルニチンベタイン、ホマリン、トリゴネリン、アラニンベタイン、タウロベタイン、フェニルアラニルベタインカルニチン、ホモセリンベタイン、バリンベタイン、トリメチルグリシン(グリシンベタイン)、スタキドリン、γ-ブチロベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、ヤシ酸アミドプロピルベタイン、グルタミン酸ベタイン、ラウリルアミノジ酢酸ナトリウム、ラウリルアミノジプロピオン酸ナトリウム等が挙げられ、これらから選択される1種以上を用いることができる。
濃縮タイプのCMPスラリーにおいては、(B)成分の含有量の下限値は、半導体処理用組成物の全質量を100質量%としたときに、好ましくは0.002質量%であり、より好ましくは0.005質量%であり、特に好ましくは0.01質量%である。一方、(B)成分の含有量の上限値は、半導体処理用組成物の全質量を100質量%としたときに、好ましくは0.2質量%であり、より好ましくは0.1質量%であり、特に好ましくは0.05質量%である。非希釈タイプのCMPスラリーにおいては、(B)成分の含有量の下限値は、半導体処理用組成物の全質量を100質量%としたときに、好ましくは0.001質量%であり、より好ましくは0.002質量%であり、特に好ましくは0.005質量%である。一方、(B)成分の含有量の上限値は、半導体処理用組成物の全質量を100質量%としたときに、好ましくは0.2質量%であり、より好ましくは0.1質量%であり、特に好ましくは0.05質量%である。(B)成分の含有量が前記範囲にあると、(A)成分の環状構造内側の疎水性空洞に(B)成分を効果的に包接することができるため、沈澱を生じることなく、貯蔵安定性を高めることができる。
濃縮タイプのその他の処理剤(例えば、洗浄剤)においては、(B)成分の含有量の下限値は、半導体処理用組成物の全質量を100質量%としたときに、好ましくは0.01質量%であり、より好ましくは0.03質量%であり、特に好ましくは0.06質量%である。一方、(B)成分の含有量の上限値は、半導体処理用組成物の全質量を100質量%としたときに、好ましくは5質量%であり、より好ましくは3質量%であり、特に好ましくは1質量%である。非希釈タイプのその他の処理剤(例えば、洗浄剤)においては、(B)成分の含有量の下限値は、半導体処理用組成物の全質量を100質量%としたときに、好ましくは0.005質量%であり、より好ましくは0.01質量%であり、特に好ましくは0.02質量%である。一方、(B)成分の含有量の上限値は、半導体処理用組成物の全質量を100質量%としたときに、好ましくは0.2質量%であり、より好ましくは0.1質量%であり、特に好ましくは0.05質量%である。(B)成分の含有量が前記範囲にあると、CMP終了後などの被処理体の表面に存在するパーティクルや金属不純物などを効果的に低減又は除去でき、かつ、金属配線材料等の金属を腐食させ難くすることができる。
1.3.(A)成分と(B)成分との含有比率
本実施形態に係る半導体処理用組成物における(A)成分と(B)成分との含有比率は、(A)成分の含有量をM[質量%]、(B)成分の含有量をM[質量%]としたときに、M/Mの値の下限値は、好ましくは3.0であり、より好ましくは3.5である。M/Mの値の上限値は、好ましくは15.0であり、より好ましくは14.5である。
本実施形態に係る半導体処理用組成物中においては、(A)成分の環状構造内側の疎水性空洞内に(B)成分を取り込むことにより、包接化合物を形成すると推測される。(A
)成分と(B)成分との含有比率であるM/Mの値が前記範囲にあると、包接化合物を形成していない(A)成分や(B)成分の含有量を抑制することができるため、(B)成分が高濃度で半導体処理用組成物中に存在する場合でも、(B)成分の析出を抑制し、濃縮タイプの半導体処理用組成物の特性を変質することなく、長期間の貯蔵を可能にすると推測される。また、M/Mの値が前記範囲にあると、包接化合物を形成していない(B)成分の含有量を抑制できるため、半導体処理工程において、被処理面に露出した銅やタングステンなどの金属材料が(B)成分を核とする凝集生成物に由来する残渣の発生を抑制できると考えられる。
これに対して、M/Mの値が前記範囲を超える場合、処理後の被処理体に(A)成分が付着・残留して欠陥となり、被処理体である半導体回路の電気特性の悪化による歩留まりの低下等が誘発されるため好ましくない。一方、M/Mの値が前記範囲未満である場合、被処理面に露出した銅やタングステンなどの金属材料と半導体処理用組成物中に存在する包接化合物を形成していない(B)成分とにより、銅やタングステンなどの金属材料上に(B)成分が付着・残留して欠陥となり、被処理面の平坦性や電気特性が劣化してしまうと考えられる。また、(B)成分の含有量に対し(A)成分の含有量が少なすぎるため、(B)成分が過剰となることで沈澱が生じ、貯蔵安定性が損なわれる場合がある。
なお、配線材料としてタングステンを有する被処理体のCMPでは、鉄イオン及び過酸化物(過酸化水素、ヨウ素酸カリウムなど)を含有するCMPスラリーが使用される場合がある。このCMPスラリー中に含まれる鉄イオンが被処理体の表面に吸着しやすいため、被研磨面は鉄汚染されやすい。この場合、本実施形態に係る半導体処理用組成物を用いて被研磨面を洗浄することにより、洗浄工程においてタングステン酸カリウムやタングステン酸ナトリウムのような易溶性の塩の生成が促進される。これにより、配線基板上の金属汚染を低減でき、被処理体の腐食を低減しながら研磨残渣を効率的に除去できると考えられる。
1.4.液状媒体(C)
本実施形態に係る半導体処理用組成物は、主成分として液状媒体(C)を含有する。液状媒体(C)の種類は、被処理体に対して研磨、洗浄、エッチング、レジスト剥離等の処理剤の使用目的に応じて適宜選択することができる。
本実施形態に係る半導体処理用組成物をCMPスラリー又は洗浄剤として用いる場合、液状媒体(C)としては、水を主成分とした水系媒体であることが好ましい。このような水系媒体としては、水、水及びアルコールの混合媒体、水及び水との相溶性を有する有機溶媒を含む混合媒体が挙げられる。これらの水系媒体の中でも、水、水及びアルコールの混合媒体を用いることが好ましく、水を用いることがより好ましい。
本実施形態に係る半導体処理用組成物をエッチング剤又はレジスト剥離剤として用いる場合、液状媒体(C)としては、有機溶媒を主成分とした非水系媒体であることが好ましい。このような非水系媒体としては、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、及びアミド系溶剤等の極性溶剤や、炭化水素系溶剤等の半導体処理工程で用いることのできる公知の有機溶媒を挙げることができる。
ケトン系溶剤としては、例えば、1-オクタノン、2-オクタノン、1-ノナノン、2-ノナノン、アセトン、2-ヘプタノン、4-ヘプタノン、1-ヘキサノン、2-ヘキサノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセトニルアセトン、イオノン、ジアセトニルアルコール、アセチルカービノール、アセトフェノン、
メチルナフチルケトン、イソホロン、プロピレンカーボネート、γ-ブチロラクトン等が挙げられる。
エステル系溶剤としては、例えば、鎖状のエステル系溶剤として、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、メトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、2-メトキシブチルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、4-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、3-エチル-3-メトキシブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、2-エトキシブチルアセテート、4-エトキシブチルアセテート、4-プロポキシブチルアセテート、2-メトキシペンチルアセテート、3-メトキシペンチルアセテート、4-メトキシペンチルアセテート、2-メチル-3-メトキシペンチルアセテート、3-メチル-3-メトキシペンチルアセテート、3-メチル-4-メトキシペンチルアセテート、4-メチル-4-メトキシペンチルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、炭酸エチル、炭酸プロピル、炭酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、ピルビン酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピル、メチル-3-メトキシプロピオネート、エチル-3-メトキシプロピオネート、エチル-3-エトキシプロピオネート、プロピル-3-メトキシプロピオネート等が挙げられる。また、環状のエステル系溶剤としては、γ-ブチロラクトン等のラクトン類等が挙げられる。
エーテル系溶剤としては、例えば、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤;ジイソペンチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アニソール、パーフルオロ-2-ブチルテトラヒドロフラン、パーフルオロテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等が挙げられる。
アミド系溶剤としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等が挙げられる。上記の他の極性溶剤としては、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
炭化水素系溶剤としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン、2,2,4-トリメチルペンタン、2,2,3-トリメチルヘキサン、パーフルオロヘキサン、パーフルオロヘプタン、リモネン、及びピネン等の脂肪族炭化水素系溶剤;トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、1-メチルプロピルベンゼン、2-メチルプロピルベンゼン、ジメチルベンゼン、ジエチルベンゼン、エチルメチルベンゼン、トリメチルベンゼン、エチルジメチルベンゼン、ジプロピルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤が挙げられる。
1.5.その他の成分
本実施形態に係る半導体処理用組成物は、上述の成分の他、研磨、洗浄、エッチング、レジスト剥離等の処理剤の使用目的に応じて適宜必要な成分を含有してもよい。このような成分としては、砥粒、水溶性高分子、有機酸、アミン、pH調整剤、界面活性剤等が挙げられる。
1.5.1.砥粒
本実施形態に係る半導体処理用組成物をCMPスラリーとして使用する場合、砥粒を含有することが好ましい。砥粒としては、例えば、シリカ、セリア、アルミナ、ジルコニア、チタニア等の無機粒子が挙げられる。これらの中でもシリカ粒子が好ましい。
シリカ粒子としては、コロイダルシリカ、ヒュームドシリカ等が挙げられる。これらの中でもコロイダルシリカが好ましい。コロイダルシリカは、スクラッチ等の研磨欠陥を低減する観点から好ましく用いられる。コロイダルシリカとしては、例えば特開2003-109921号公報等に記載されている方法で製造されたものを使用することができる。また、特開2010-269985号公報や、J.Ind.Eng.Chem.,Vol.12,No.6,(2006)911-917等に記載されているような方法で表面修飾されたコロイダルシリカを使用してもよい。
砥粒の含有割合は、被処理体に対して使用されるCMPスラリーの全質量を100質量%としたときに、好ましくは0.01質量%以上4質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以上1.5質量%以下であり、特に好ましくは0.5質量%以上1質量%以下である。砥粒の含有割合が前記範囲である場合には、被処理体に対する実用的な研磨速度を得ることができる。
1.5.2.水溶性高分子
本実施形態に係る半導体処理用組成物は、いずれの使用目的の処理剤であっても、水溶性高分子を含有することができる。水溶性高分子を含有することにより、被処理体の表面に吸着して被膜が形成されるため、被処理体の腐食をより低減できる場合がある。なお、本発明において「水溶性」とは、20℃の水100gに溶解する質量が0.1g以上であることをいう。
水溶性高分子としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、及びこれらの塩;スチレン、α-メチルスチレン、4-メチルスチレン等のモノマーと、(メタ)アクリル酸、マレイン酸等の酸モノマーとの共重合体や、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸等をホルマリンで縮合させた芳香族炭化水素基を有する繰り返し単位を有する重合体及びこれらの塩;ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリアクリルアミド、ポリビニルホルムアミド、ポリエチレンイミン、ポリビニルオキサゾリン、ポリビニルイミダゾール、ポリアリルアミン等のビニル系合成ポリマー;ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、加工澱粉などの天然多糖類の変性物;等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの水溶性高分子は、1種単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
本実施形態で用いられ得る水溶性高分子の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1千以上150万以下、より好ましくは3千以上120万以下である。なお、本明細書中における「重量平均分子量」とは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によって測定されたポリエチレングリコール換算の重量平均分子量のことを指す。
水溶性高分子の含有割合は、半導体処理用組成物の常温における粘度が2mPa・s以
下となるように調整するとよい。半導体処理用組成物の常温における粘度が2mPa・sを超えると、粘度が高くなりすぎることで被処理体に半導体処理用組成物を安定して供給できない場合がある。半導体処理用組成物の粘度は、添加する水溶性高分子の重量平均分子量や含有量により影響を受けるので、それらのバランスを考慮しながら調整するとよい。
本実施形態に係る半導体処理用組成物を洗浄剤として使用する場合、水溶性高分子の含有割合は、CMP後の被処理体の表面に露出している銅やタングステン等の金属配線材、酸化シリコン等の絶縁材、窒化タンタルや窒化チタン等のバリアメタル材等の材質や、使用されたCMPスラリーの組成により適宜変更することができる。
また、本実施形態に係る半導体処理用組成物を洗浄剤として使用する場合、濃縮タイプの半導体処理用組成物の希釈度合によっても、水溶性高分子の含有割合を適宜変更することができる。水溶性高分子の含有割合は、濃縮タイプの半導体処理用組成物を希釈して調製される処理剤もしくは非希釈タイプの半導体処理用組成物(処理剤)の全質量を100質量%としたときに、好ましくは0.001質量%以上1質量%以下であり、より好ましくは0.01質量%以上0.1質量%以下である。水溶性高分子の含有割合が前記範囲内にあると、腐食の抑制とCMPスラリー中に含まれていたパーティクルや金属不純物の配線基板上からの除去効果との両立が促進されて、より良好な被処理体が得られやすい。
1.5.3.有機酸
本実施形態に係る半導体処理用組成物は、いずれの使用目的の処理剤であっても、(B)成分以外の有機酸を含有することができる。なお、本明細書における「有機酸」は、上述の水溶性高分子を含まない概念である。
有機酸としては、カルボキシル基、スルホ基等の酸性官能基を1個以上有することが好ましい。有機酸の具体例としては、クエン酸、マレイン酸、リンゴ酸、酒石酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、エチレンジアミン四酢酸、アクリル酸、メタクリル酸、安息香酸、フェニル乳酸、ヒドロキシフェニル乳酸、ヒドロキシマロン酸、フェニルコハク酸、ナフタレンスルホン酸、及びこれらの塩が挙げられる。これらの有機酸は、1種単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
有機酸の中でも、下記一般式(2)で表される化合物を好ましく使用することができる。
Figure 0007375450000002

(上記一般式(2)中、Rは、炭素数1~20の有機基を表す。)
上記一般式(2)中のRにおける炭素数1~20の有機基としては、例えば炭素数1~20の飽和脂肪族炭化水素基、炭素数1~20の不飽和脂肪族炭化水素基、環状飽和炭化水素基を有する炭素数6~20の有機基、不飽和環状炭化水素基を有する炭素数6~20の有機基、カルボキシル基を有する炭素数1~20の炭化水素基、ヒドロキシル基を有する炭素数1~20の炭化水素基、カルボキシル基とヒドロキシル基の両方を有する炭素
数1~20の炭化水素基、アミノ基を有する炭素数1~20の炭化水素基、アミノ基とカルボキシル基の両方を有する炭素数1~20の炭化水素基、複素環基を有する炭素数1~20の有機基等を挙げることができ、これらの中でも飽和脂肪族炭化水素基を有する炭素数1~20の有機基、不飽和脂肪族炭化水素基を有する炭素数1~20の有機基又はカルボキシル基を有する炭素数1~20の炭化水素基が好ましく、アリール基を有する炭素数6~20の有機基又はカルボキシメチル基が特に好ましい。
上記一般式(2)で表される化合物の具体例としては、クエン酸、マロン酸、マレイン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、フタル酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、イミノジ酢酸等が挙げられる。これらの中でも、クエン酸、マロン酸、マレイン酸、酒石酸、リンゴ酸、及びコハク酸よりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、クエン酸、マロン酸、及びリンゴ酸よりなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましく、クエン酸及びマロン酸であることが特に好ましい。このような(B)成分であれば、汚染を特に低減又は除去することができる場合がある。上記例示した化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
本実施形態に係る半導体処理用組成物を洗浄剤として使用する場合、有機酸の含有割合は、CMP後の被処理体の表面に露出している銅やタングステン等の金属配線材、酸化シリコン等の絶縁材、窒化タンタルや窒化チタン等のバリアメタル材等の材質や、使用されたCMPスラリーの組成により適宜変更することができる。
さらに、本実施形態に係る濃縮タイプの半導体処理用組成物の希釈度合によっても、有機酸の含有割合を適宜変更することができる。有機酸の含有割合は、濃縮タイプの半導体処理用組成物を希釈して調製される処理剤もしくは非希釈タイプの半導体処理用組成物(処理剤)の全質量を100質量%としたときに、好ましくは0.0001質量%以上1質量%以下であり、より好ましくは0.0005質量%以上0.5質量%以下である。有機酸の含有割合が前記範囲内にあると、配線材料表面に付着した不純物をより効果的に除去できる場合がある。また、過度のエッチングの進行をより効果的に抑制し、良好な被処理体が得られる場合がある。
1.5.4.アミン
本実施形態に係る半導体処理用組成物を洗浄剤として使用する場合、アミンを含有することが好ましい。アミンは、エッチング剤としての機能を有している。そのため、アミンを添加することにより、CMP終了後の洗浄工程において、配線基板上の金属酸化膜(例えば、CuO、CuO及びCu(OH)層)や有機残渣(例えばBTA層)をエッチングして除去できると考えられる。
洗浄剤に使用するアミンは、水溶性アミンであることが好ましい。「水溶性」の定義については、上述の通りであり、20℃の水100gに溶解する質量が0.1g以上であることをいう。アミンとしては、例えば、アルカノールアミン、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン等が挙げられる。
アルカノールアミンとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N-メチル-N,N-ジエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン、N,N-ジブチルエタノールアミン、N-(β-アミノエチル)エタノールアミン、N-エチルエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等が挙げられる。第一級アミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルア
ミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、1,3-プロパンジアミン等が挙げられる。第二級アミンとしては、ピペリジン、ピペラジン等が挙げられる。第三級アミンとしては、トリメチルアミン、トリエチルアミン等が挙げられる。これらのアミンは、1種単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
これらのアミンの中でも、配線基板上の金属酸化膜や有機残渣をエッチングする効果が高い点で、モノエタノールアミン、モノイソプロパノールアミンが好ましく、モノエタノールアミンがより好ましい。
本実施形態に係る半導体処理用組成物を洗浄剤として使用する場合、アミンの含有割合は、CMP後の被処理体の表面に露出している銅やタングステン等の金属配線材、酸化シリコン等の絶縁材、窒化タンタルや窒化チタン等のバリアメタル材等の材質や、使用されたCMPスラリーの組成により適宜変更することができる。
さらに、本実施形態に係る濃縮タイプの半導体処理用組成物の希釈度合によっても、アミンの含有割合を適宜変更することができる。アミンの含有割合は、濃縮タイプの半導体処理用組成物を希釈して調製される処理剤もしくは非希釈タイプの半導体処理用組成物(処理剤)の全質量を100質量%としたときに、好ましくは0.0001質量%以上1質量%以下であり、より好ましくは0.0005質量%以上0.5質量%以下である。アミンの含有割合が前記範囲内にあると、CMP終了後の洗浄工程において、配線基板上の金属酸化膜や有機残渣をより効果的にエッチングして除去することができる。
1.5.5.pH調整剤
配線材料として銅を含む被処理面を処理するための半導体処理用組成物の場合、pHの下限値は、好ましくは9であり、より好ましくは10であり、pHの上限値は、好ましくは14である。配線材料としてタングステンを含む被処理面を処理するための半導体処理用組成物の場合、pHの下限値は、好ましくは2であり、pHの上限値は、好ましくは7であり、より好ましくは6である。
本実施形態に係る半導体処理用組成物において、上述した成分を添加することによっても所望のpHが得られない場合には、pHを上記範囲内に調整するためにpH調整剤を別途添加してもよい。pH調整剤としては、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸等の無機酸;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属の水酸化物;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の有機アンモニウム塩;アンモニア等の塩基性化合物が挙げられる。これらのpH調整剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
本発明において、pHとは水素イオン指数のことを指し、その値は25℃、1気圧の条件下で市販のpHメーター(例えば、株式会社堀場製作所製、卓上型pHメーター)を用いて測定することができる。
1.5.6.界面活性剤
本実施形態に係る半導体処理用組成物は、いずれの使用目的の処理剤であっても、界面活性剤((A)成分及び(B)成分を除く。)を含有することができる。界面活性剤としては、ノニオン性界面活性剤又はアニオン性界面活性剤を好ましく使用することができる。界面活性剤を添加することにより、CMPスラリー中に含まれていたパーティクルや金属不純物を配線基板上から除去する効果が高まり、より良好な被処理面が得られる場合がある。
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリ
オキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアリールエーテル;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。上記例示したノニオン性界面活性剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸等のアルキルベンゼンスルホン酸;アルキルナフタレンスルホン酸;ラウリル硫酸等のアルキル硫酸エステル;ポリオキシエチレンラウリル硫酸等のポリオキシエチレンアルキルエーテルの硫酸エステル;ナフタレンスルホン酸縮合物;アルキルイミノジカルボン酸;リグニンスルホン酸等が挙げられる。これらのアニオン性界面活性剤は、塩の形態で使用してもよい。この場合、カウンターカチオンとしては、例えばナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン等が挙げられるが、カリウムやナトリウムが過剰に含まれることを防止する観点からアンモニウムイオンが好ましい。
配線材料としてタングステンを有する被処理体のCMPでは、鉄イオン及び過酸化物(過酸化水素、ヨウ素酸カリウムなど)を含有するCMPスラリーが使用される場合がある。このCMPスラリー中に含まれる鉄イオンが被処理体の表面に吸着しやすいため、被処理体の表面は鉄汚染されやすい。この場合、鉄イオンはプラスにチャージするため、半導体処理用組成物にアニオン性界面活性剤を添加することにより、被処理体の表面の鉄汚染を効果的に除去できる場合がある。
界面活性剤の含有割合は、CMP後の被処理体の表面に露出している銅やタングステン等の金属配線材、酸化シリコン等の絶縁材、窒化タンタルや窒化チタン等のバリアメタル材等の材質や、使用されたCMPスラリーの組成により適宜変更することができる。
さらに、本実施形態に係る濃縮タイプの半導体処理用組成物の希釈度合によっても、界面活性剤の含有割合を適宜変更することができる。界面活性剤の含有割合は、濃縮タイプの半導体処理用組成物を希釈して調製される処理剤もしくは非希釈タイプの半導体処理用組成物(処理剤)の全質量を100質量%としたときに、好ましくは0.001質量%以上1質量%以下であり、より好ましくは0.005質量%以上0.5質量%以下である。界面活性剤の含有割合が前記範囲内にあると、CMPスラリー中に含まれていたパーティクルや金属不純物を配線基板上から除去する効果が高まり、より良好な被処理面が得られる場合がある。
1.6.半導体処理用組成物の調製方法
本実施形態に係る半導体処理用組成物は、特に制限されず、公知の方法を使用することにより調製することができる。具体的には、水や有機溶媒等の液状媒体に上述した各成分を溶解させて、ろ過することにより調製することができる。上述した各成分の混合順序や混合方法については特に制限されない。
本実施形態に係る半導体処理用組成物の調製方法では、必要に応じて、デプスタイプまたはプリーツタイプのフィルタでろ過して粒子量を制御することが好ましい。ここで、デプスタイプのフィルタとは、深層ろ過または体積ろ過タイプのフィルタとも称される高精度ろ過フィルタである。このようなデプスタイプのフィルタは、多数の孔が形成されたろ過膜を積層させた積層構造をなすものや、繊維束を巻き上げたものなどがある。デプスタ
イプのフィルタとしては、具体的には、プロファイルII、ネクシスNXA、ネクシスNXT、ポリファインXLD、ウルチプリーツプロファイル等(全て、日本ポール社製)、デプスカートリッジフィルタ、ワインドカートリッジフィルタ等(全て、アドバンテック社製)、CPフィルタ、BMフィルタ等(全て、チッソ社製)、スロープピュア、ダイア、マイクロシリア等(全て、ロキテクノ社製)等が挙げられる。
プリーツタイプのフィルタとしては、不織布、ろ紙、金属メッシュなどからなる精密ろ過膜シートをひだ折り加工した後、筒状に成形するとともに前記シートのひだの合わせ目を液密にシールし、かつ、筒の両端を液密にシールして得られる筒状の高精度ろ過フィルタが挙げられる。具体的には、HDCII、ポリファインII等(全て、日本ポール社製)、PPプリーツカートリッジフィルタ(アドバンテック社製)、ポーラスファイン(チッソ社製)、サートンポア、ミクロピュア等(全て、ロキテクノ社製)等が挙げられる。
2.処理剤
上述のように、各ユーザーは、濃縮タイプの半導体処理用組成物を液状媒体で希釈して処理剤を調製することもできるし、または非希釈タイプの半導体処理用組成物を処理剤としてそのまま使用することもできる。そして、その処理剤は、化学機械研磨用のCMPスラリー、半導体表面を洗浄するための洗浄剤、レジスト剥離剤、またはエッチング剤として使用に供することができる。
ここで、希釈に用いられる液状媒体は、上述の半導体処理用組成物に含有される液状媒体と同義であり、上記例示した液状媒体の中から処理剤の種類に応じて適宜選択することができる。
濃縮タイプの半導体処理用組成物に液状媒体を加えて希釈する方法としては、濃縮タイプの半導体処理用組成物を供給する配管と液状媒体を供給する配管とを途中で合流させて混合し、この混合された処理剤を被処理面に供給する方法がある。この混合は、圧力を加えた状態で狭い通路を通して液同士を衝突混合させる方法;配管中にガラス管などの充填物を詰め液体の流れを分流分離、合流させることを繰り返し行う方法;配管中に動力で回転する羽根を設ける方法など通常行われている方法を採用することができる。
また、濃縮タイプの半導体処理用組成物に液状媒体を加えて希釈する別の方法としては、濃縮タイプの半導体処理用組成物を供給する配管と液状媒体を供給する配管とを独立に設け、それぞれから所定量の液を被処理面に供給し、被処理面上で混合する方法がある。さらに、濃縮タイプの半導体処理用組成物に液状媒体を加えて希釈する別の方法としては、1つの容器に、所定量の濃縮タイプの半導体処理用組成物と所定量の液状媒体を入れ混合してから、被処理面にその混合した処理剤を供給する方法がある。
濃縮タイプの半導体処理用組成物に液状媒体を加えて希釈する際の希釈倍率としては、濃縮タイプの半導体処理用組成物1質量部を、液状媒体を添加して1~500質量部(1~500倍)に希釈することが好ましく、20~500質量部(20~500倍)に希釈することがより好ましく、30~300質量部(30~300倍)に希釈することが特に好ましい。なお、上述の濃縮タイプの半導体処理用組成物に含有される液状媒体と同じ液状媒体で希釈することが好ましい。このように半導体処理用組成物を濃縮された状態とすることにより、処理剤をそのまま運搬し保管する場合と比較して、より小型な容器での運搬や保管が可能になる。その結果、運搬や保管のコストが低減できる。また、そのまま処理剤を濾過等するなどして精製する場合よりも、より少量の処理剤を精製することになるので、精製時間の短縮化を行うことができ、これにより大量生産が可能になる。
3.処理方法
本発明の一実施形態に係る処理方法は、配線材料として銅又はタングステンを含む配線基板を、上述の半導体処理用組成物(処理剤)を用いて処理する工程を含む。より詳しくは、本実施形態に係る処理方法の一態様としては、配線材料として銅又はタングステンを含む配線基板を、上述の半導体処理用組成物(CMPスラリー)を用いて研磨する工程を含む態様が挙げられる。また、本実施形態に係る処理方法の一態様としては、配線基板の配線材料としてタングステンを含み、前記配線基板を化学機械研磨した後に上述の半導体処理用組成物(洗浄剤)を用いて洗浄する工程を含む態様が挙げられる。以下、本実施形態に係る処理方法の一例について、図面を用いながら詳細に説明する。
3.1.配線基板の作製
図1は、本実施形態に係る処理方法に用いられる配線基板の作製プロセスを模式的に示す断面図である。かかる配線基板は、以下のプロセスを経ることにより形成される。
図1は、CMP処理前の被処理体を模式的に示す断面図である。図1に示すように、被処理体100は、基体10を有する。基体10は、例えばシリコン基板とその上に形成された酸化シリコン膜から構成されていてもよい。さらに、基体10には、図示していないが、トランジスタ等の機能デバイスが形成されていてもよい。
被処理体100は、基体10の上に、配線用凹部20が設けられた絶縁膜12と、絶縁膜12の表面並びに配線用凹部20の底部及び内壁面を覆うように設けられたバリアメタル膜14と、配線用凹部20を充填しかつバリアメタル膜14の上に形成された金属膜16と、が順次積層されて構成される。
絶縁膜12としては、例えば、真空プロセスで形成された酸化シリコン膜(例えば、PETEOS膜(Plasma Enhanced-TEOS膜)、HDP膜(High Density Plasma Enhanced-TEOS膜)、熱化学気相蒸着法により得られる酸化シリコン膜等)、FSG(Fluorine-doped silicate glass)と呼ばれる絶縁膜、ホウ素リンシリケート膜(BPSG膜)、SiON(Silicon oxynitride)と呼ばれる絶縁膜、Siliconnitride(Si)等が挙げられる。
バリアメタル膜14としては、例えば、タンタル、チタン、コバルト、ルテニウム、マンガン、及びこれらの化合物等が挙げられる。バリアメタル膜14は、これらの1種から形成されることが多いが、タンタルと窒化タンタルなど2種以上を併用することもできる。
金属膜16は、図1に示すように、配線用凹部20を完全に埋めることが必要となる。そのためには、通常、化学蒸着法又は電気めっき法により、10,000~15,000Åの金属膜を堆積させる。金属膜16の材料としては、銅又はタングステンが挙げられるが、銅の場合には純度の高い銅だけでなく、銅を含有する合金を使用することもできる。銅を含有する合金中の銅含有量としては、95質量%以上であることが好ましい。
3.2.研磨工程
次いで、図1の被処理体100のうち、配線用凹部20に埋没された部分以外の金属膜16をバリアメタル膜14が露出するまでCMPにより高速研磨する(第1研磨工程)。さらに、表面に露出したバリアメタル膜14をCMPにより研磨する(第2研磨工程)。このようにして、図2に示すような配線基板200が得られる。
第1研磨工程及び第2研磨工程のいずれの工程においても、上述の半導体処理用組成物(化学機械研磨用のCMPスラリー)を用いることができる。上述の半導体処理用組成物
をCMPスラリーとして用いることで、CMP終了後の配線材料やバリアメタル材料に与える腐食を抑制するとともに、被処理体の表面より汚染を効果的に除去することができる。上述の半導体処理用組成物は、配線材料としてタングステンやコバルトを含む配線基板を処理する場合に特に有効である。
3.3.洗浄工程
次いで、図2に示す配線基板200の表面(被処理面)を上述の半導体処理用組成物(洗浄剤)を用いて処理する。上述の半導体処理用組成物を洗浄剤として用いることで、CMP終了後の配線材料やバリアメタル材料に与える腐食を抑制するとともに、被処理体の表面より汚染を効果的に除去することができる。
配線基板の配線材料としてタングステンを含み、前記配線基板を特開平10-265766号公報等に記載されている鉄イオン及び過酸化物を含有する組成物(フェントン試薬)を用いて化学機械研磨した後に、上述の半導体処理用組成物(洗浄剤)を用いて洗浄工程を行うと非常に効果的である。配線材料としてタングステンを有する被処理体のCMPでは、高酸化力を有する酸化剤として鉄イオン及び過酸化物(過酸化水素、ヨウ素酸カリウムなど)を含有するCMPスラリーが使用される場合がある。このCMPスラリー中に含まれる鉄イオンが被処理体の表面に吸着しやすいため、被処理体の表面は鉄汚染されやすい。この場合、希フッ酸を用いて被処理体の表面を処理することで鉄汚染を除去することができるが、被研磨面の表面がエッチングされてしまい腐食を受けやすい。しかしながら、上述の半導体処理用組成物を用いて洗浄工程を行うことにより、CMP終了後に被処理体の表面に存在する鉄イオンなどを(A)成分の環状構造内側の疎水性空洞に包接して除去し、かつ、(B)成分の作用により金属配線材料等の金属を腐食させ難くすることができる。
洗浄方法としては、特に制限されないが、配線基板200に上述の半導体処理用組成物(洗浄剤)を直接接触させる方法により行われる。洗浄剤を配線基板200に直接接触させる方法としては、洗浄槽に洗浄剤を満たして配線基板を浸漬させるディップ式;ノズルから配線基板上に洗浄剤を流下しながら配線基板を高速回転させるスピン式;配線基板に洗浄剤を噴霧して洗浄するスプレー式等の方法が挙げられる。また、このような方法を行うための装置としては、カセットに収容された複数枚の配線基板を同時に処理するバッチ式処理装置、1枚の配線基板をホルダーに装着して処理する枚葉式処理装置等が挙げられる。
洗浄工程において、洗浄剤の温度は、通常室温とされるが、性能を損なわない範囲で加温してもよく、例えば40~70℃程度に加温することができる。
また、上述の洗浄剤を配線基板200に直接接触させる方法に加えて、物理力による処理方法を併用することも好ましい。これにより、配線基板200に付着したパーティクルによる汚染の除去性が向上し、処理時間を短縮することができる。物理力による処理方法としては、洗浄ブラシを使用したスクラブ洗浄や超音波洗浄が挙げられる。
さらに、洗浄工程の前及び/又は後に、超純水又は純水による洗浄を行ってもよい。
4.実施例
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、本実施例における「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
4.1.実施例1~10、比較例1~4
4.1.1.半導体処理用組成物(濃縮タイプのCMPスラリー)の調製
ポリエチレン製容器に、表1に示す(A)成分及びイオン交換水を投入した後、表1に示す(B)成分を投入し15分間攪拌した。その後、表1に示す水溶性高分子、有機酸を投入した後、砥粒、pH調整剤の順に投入し、さらに15分間攪拌することにより、実施例1~10及び比較例1~4の半導体処理用組成物(濃縮タイプのCMPスラリー)を得た。
4.1.2.評価方法
<安定性評価>
上記で得られた半導体処理用組成物を無色透明なガラス容器に50g加え、調製直後及び20℃の恒温保管庫にて1月静置後の状態をそれぞれ目視で観察した。評価基準は以下の通りである。
(評価基準)
・A(良好):沈澱物の堆積が見られず、良好な状態である。
・B(不良):凝集物の発生や、容器の底に沈澱物が堆積しており、実用に供することができず不良な状態である。
<腐食特性評価>
タングステン(W)をスパッタ法で表面に成膜した8インチのシリコンウエハ(膜厚2,000Åのタングステン膜が積層された8インチ熱酸化膜付きシリコン基板)を1cm×3cmに切断し金属ウエハ試験片とした。この試験片について、NPS株式会社製、金属膜厚計「Σ-5」を用いてシート抵抗値を測定し、シート抵抗値と金属膜の体積抵抗率から下記式によって膜厚をあらかじめ算出しておいた。
膜の厚さ(Å)=[金属膜の体積抵抗率(Ω・m)÷シート抵抗値(Ω)]×1010
次に、調製直後の半導体処理用組成物、及び、20℃の恒温保管庫にて1月静置後の半導体処理用組成物を、それぞれ表1に記載の希釈倍率となるように超純水を用いて希釈した後、ポリエチレン容器に100g投入した。その後、35質量%過酸化水素水を、過酸化水素に換算して1質量%となるように加え15分攪拌した。さらに40℃に保ち、その組成物にタングステンを成膜した金属ウエハ試験片を60分間浸漬処理した。その後、流水で10秒間洗浄し乾燥した。浸漬処理後の金属ウエハ試験片を再度膜厚測定し、減少した膜厚量を浸漬時間の60分間で割ることでエッチング速度(単位:Å/min)を算出した。評価基準は以下の通りである。評価結果を表1に示す。
(評価基準)
・A:エッチング速度が5Å/min未満であり、研磨工程中のタングステンの腐食が効果的に抑制できている。非常に良好である。
・B:エッチング速度が5Å/min以上10Å/minであり、実用に供することができる程度に研磨工程中のタングステンの腐食が抑制できている。良好である。
・C:エッチング速度が10Å/min以上であり、研磨工程中のタングステンの腐食が大きく、実用に供することができない。不良である。
・D:沈澱物が発生したため、評価を実施できなかった。非常に不良である。
<欠陥評価>
調製直後の半導体処理用組成物、及び、20℃の恒温保管庫にて1月静置後の半導体処理用組成物を、表1に記載の希釈倍率に超純水を用いてそれぞれ希釈した後、ポリエチレン製容器に500g投入し、35質量%過酸化水素水を、過酸化水素に換算して1質量%となるように加え、15分間攪拌することで化学機械研磨用組成物を得た。膜厚2,000Åのタングステン膜が積層された8インチ熱酸化膜付きシリコン基板を3cm×3cmにカットしウエハ試験片とした。このウエハ試験片を被研磨体として、以下の研磨条件で化学機械研磨処理を60秒間実施した。
(研磨条件)
・研磨装置:ラップマスターSFT社製「LM-15C」
・研磨パッド:ロデール・ニッタ株式会社製「IC1000/K-Groove」
・定盤回転数:90rpm
・ヘッド回転数:90rpm
・ヘッド押し付け圧:3psi
・化学機械研磨用組成物の供給速度:100mL/分
続いて、イオン交換水の供給速度が500mL/分となる洗浄条件で、研磨パッド上での水洗浄処理を10秒間実施した。上記の方法で化学機械研磨処理された金属ウエハ試験片を、Bruker Corporation製の走査型原子間力顕微鏡(AFM)であるDimension FastScanを用いて、フレームサイズ10μmにて5か所観察した。得られた5か所の画像について画像解析ソフトを用いて10nm以上の高さを持つ付着物の合計を欠陥数とした。評価基準は以下の通りである。評価結果を表1に示す。
(評価基準)
・A:欠陥数が30個未満である。非常に良好な研磨結果である。
・B:欠陥数が30個以上50個未満である。実用に供することができる良好な研磨結果である。
・C:欠陥数が50個以上である。実用に供することができない不良な研磨結果である。・D:沈澱物が発生したため、評価を実施できなかった。非常に不良である。
4.1.3.評価結果
下表1に、半導体処理用組成物(濃縮タイプのCMPスラリー)の組成及び評価結果を示す。
Figure 0007375450000003
上表1において、各成分の数値は質量%を表す。各実施例及び各比較例において、各成分の合計量は100質量%となり、残量はイオン交換水である。
上表1に示す通り、(A)成分の含有量M[質量%]と(B)成分の含有量M[質量%]の比M/Mが3~15である半導体処理用組成物(濃縮タイプのCMPスラリー)のタングステン膜に対する腐食特性は良好であり、当該組成物を用いたCMP工程後の欠陥評価についても良好な結果であった。また、実施例1~10の半導体処理用組成物は、20℃で1月保管した後も沈澱物の発生が認められず、安定性に優れていた。20℃で1月保管後の実施例1~10の半導体処理用組成物は、腐食特性及び欠陥評価についても良好な結果であった。
一方、比較例1の半導体処理用組成物のように、M/Mが15を超える場合には、タングステン膜上に欠陥が生じやすい傾向が認められた。比較例2の半導体処理用組成物のように、M/Mが3未満の場合には、20℃で1月保管した後に沈澱物の発生が認められ、安定性が損なわれやすく、タングステン膜上に欠陥が生じやすい傾向が認められた。比較例3の半導体処理用組成物のように、(A)成分を含有しない場合には、調製直後から沈澱物の発生が認められ、安定性が極めて悪く、タングステン膜上に欠陥が生じやすい傾向が認められた。比較例4の半導体処理用組成物のように、(B)成分を含有しない場合には、腐食抑制能が不良であった。
4.2.実施例11~20、比較例5~8
4.2.1.半導体処理用組成物(濃縮タイプの洗浄剤)の調製
ポリエチレン製容器に、表2に示す(A)成分及びイオン交換水を投入した後、表2に示す(B)成分を投入し15分間攪拌した。その後、表2に示す水溶性高分子、有機酸、アミンを投入した後、pH調整剤を投入し更に15分間撹拌することにより、実施例11~20及び比較例5~8の半導体処理用組成物(濃縮タイプの洗浄剤)を得た。
4.2.2.評価方法
<安定性評価>
「4.1.2.評価方法」の<安定性評価>と同様の方法及び評価基準により評価を行った。結果を表2に示す。
<腐食特性評価>
タングステン(W)をスパッタ法で表面に成膜した8インチのシリコンウエハ(膜厚2,000Åのタングステン膜が積層された8インチ熱酸化膜付きシリコン基板)を1cm×3cmに切断し金属ウエハ試験片とした。この試験片について、NPS株式会社製、金属膜厚計「Σ-5」を用いてシート抵抗値を測定し、シート抵抗値と金属膜の体積抵抗率から下記式によって膜厚をあらかじめ算出した。
膜の厚さ(Å)=[金属膜の体積抵抗率(Ω・m)÷シート抵抗値(Ω)]×1010
次に、調製直後の半導体処理用組成物、及び、20℃の恒温保管庫にて1月静置後の半導体処理用組成物を、それぞれ表2に記載の希釈倍率になるように超純水を用いて希釈した後、ポリエチレン製容器に100g投入した。その後、それらを25℃に保ち、それぞれの半導体処理用組成物にタングステンを成膜した金属ウエハ試験片を60分間浸漬処理した。その後、流水で10秒間洗浄し乾燥した。浸漬処理後の金属ウエハ試験片を再度膜厚測定し、減少した膜厚量を浸漬時間の60分間で割ることでエッチングレート(ER,単位:Å/min)を算出した。評価基準は以下の通りである。評価結果を表2に示す。(評価基準)
・A:エッチング速度が1.5Å/min未満であり、洗浄工程中のタングステンの腐食が効果的に抑制できている。非常に良好である。
・B:エッチング速度が1.5Å/min以上5Å/min未満であり、実用に供することができる程度に洗浄工程中のタングステンの腐食が抑制されている。良好である。
・C:エッチング速度が5Å/min以上であり、洗浄工程中のタングステンの腐食速度が大きく、実用に供することができない。不良である。
・D:沈澱物が発生したため、評価を実施できなかった。非常に不良である。
<欠陥評価>
コロイダルシリカ水分散体PL-3(扶桑化学工業株式会社製)をシリカに換算して1質量%に相当する量になるようにポリエチレン製容器に投入し、全構成成分の合計が100質量%となるようにイオン交換水、及びpH調整剤としてマレイン酸を加え、pHを3に調整した。さらに、酸化剤として35質量%過酸化水素水を、過酸化水素に換算して1質量%となるように加えて15分間撹拌し、化学機械研磨用組成物を得た。膜厚2,000Åのタングステン膜が積層された8インチ熱酸化膜付きシリコン基板を3cm×3cmにカットしウエハ試験片とした。このウエハ試験片を被研磨体として、以下の研磨条件で化学機械研磨処理を60秒間実施した。
(研磨条件)
・研磨装置:ラップマスターSFT社製「LM-15C」
・研磨パッド:ロデール・ニッタ株式会社製「IC1000/K-Groove」
・定盤回転数:90rpm
・ヘッド回転数:90rpm
・ヘッド押し付け圧:3psi
・化学機械研磨用組成物の供給速度:100mL/分
続いて、イオン交換水の供給速度が500mL/分となる洗浄条件で、研磨パッド上での水洗浄処理を10秒間実施した。上記の方法で化学機械研磨処理されたウエハ試験片を、Bruker Corporation製の走査型原子間力顕微鏡(AFM)であるDimension FastScanを用いて、フレームサイズ10μmにて5か所観察した。得られた5か所の算術平均粗さの平均値が0.2nm以下の平坦な表面であることを確認できたウエハ試験片を選別し、以下の欠陥評価に用いた。
調製直後の半導体処理用組成物、及び、20℃の恒温保管庫にて1月静置後の半導体処理用組成物を、それぞれ表2に記載の希釈倍率になるように超純水を用いて希釈した後、50mLをガラスビーカーに加え25℃に保温した。その後、上記で化学機械研磨処理されたウエハ試験片を15分間浸漬し、流水で10秒間洗浄し乾燥させた後、AFMを用いてフレームサイズ10μmにて5か所観察した。得られた5か所の画像について画像解析ソフトを用いて2nm以上の高さを持つ付着物の合計を欠陥数とした。評価基準は以下の通りである。評価結果を表2に示す。
(評価基準)
・A:欠陥数が100個未満である。非常に良好な研磨結果である。
・B:欠陥数が100個以上500個未満である。実用に供することができる良好な研磨結果である。
・C:欠陥数が500個以上である。実用に供することができない不良な研磨結果である。
・D:沈澱物が発生したため、評価を実施できなかった。非常に不良である。
4.2.3.評価結果
下表2に、半導体処理用組成物(濃縮タイプの洗浄剤)の組成及び評価結果を示す。
Figure 0007375450000004
上表2において、各成分の数値は質量%を表す。各実施例及び各比較例において、各成
分の合計量は100質量%となり、残量はイオン交換水である。ここで、上表1及び上表2の各成分についての説明を補足する。
<(A)シクロデキストリン及びシクロデキストリン誘導体>
・α-シクロデキストリン:富士フイルム和光純薬株式会社製、商品名
・β-シクロデキストリン:富士フイルム和光純薬株式会社製、商品名
・2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン:富士フイルム和光純薬株式会社製、商品名
・2-ヒドロキシエチル-β-シクロデキストリン:富士フイルム和光純薬株式会社製、商品名
<(B)双性イオン構造を有する化合物>
・ラウリルアミノジ酢酸ナトリウム:日油株式会社製、商品名「ニッサンアノン(R)LA」
・ラウリン酸アミドプロピルベタイン:花王株式会社製、商品名「アンヒトール20AB」
・ドデシルアミノエチルアミノエチルグリシン:三洋化成工業株式会社製、商品名「レボン S」
・ラウリルヒドロキシスルホベタイン:花王株式会社製、商品名「アンヒトール20HD」
<砥粒>
・PL-3:扶桑化学工業株式会社製、商品名「PL-3」、コロイダルシリカ、平均二次粒径70nm
<水溶性高分子>
・ポリアクリル酸:東亜合成株式会社製、商品名「AC-10L」、Mw=50,000・ポリスチレンスルホン酸:Akzo Nobel社製、商品名「Versa-TL 71」、Mw=75,000
<有機酸>
・マロン酸:十全株式会社製、商品名「マロン酸」
・マレイン酸:扶桑化学工業株式会社製、商品名「含水マレイン酸」
・リンゴ酸:昭和化工株式会社、商品名「DL-リンゴ酸」
・クエン酸:林純薬工業株式会社製、商品名「クエン酸(結晶)」
<アミン>
・ピペラジン:東ソー株式会社製、商品名「Piperazine」
<pH調整剤>
・KOH:関東化学株式会社製、商品名「KOH(水酸化カリウム水溶液) 48%」
・リン酸:ラサ工業株式会社製、商品名「リン酸」
上表2に示す通り、(A)成分の含有量M[質量%]と(B)成分の含有量M[質量%]の比M/Mが3~15である半導体処理用組成物(濃縮タイプの洗浄剤)のタングステン膜に対する腐食特性は良好であり、CMP工程後の当該組成物を用いた洗浄工程後の欠陥評価についても良好な結果であった。また、実施例11~20の半導体処理用組成物は、20℃で1月保管した後も沈澱物の発生が認められず、安定性に優れていた。20℃で1月保管後の実施例11~20の半導体処理用組成物は、腐食特性及び欠陥評価についても良好な結果であった。
一方、比較例5の半導体処理用組成物のように、M/Mが15を超える場合には、タングステン膜上に欠陥が生じやすい傾向が認められた。比較例6の半導体処理用組成物のように、M/Mが3未満の場合には、20℃で1月保管した後に沈澱物の発生が認められ、安定性が損なわれやすく、タングステン膜上に欠陥が生じやすい傾向が認められた。比較例7の半導体処理用組成物のように、(A)成分を含有しない場合には、調製直
後から沈澱物の発生が認められ、安定性が極めて悪く、タングステン膜上に欠陥が生じやすい傾向が認められた。比較例8の半導体処理用組成物のように、(B)成分を含有しない場合には、腐食抑制能が不良であった。
上表1及び上表2の結果によれば、M/Mが3~15の範囲内である半導体処理用組成物である場合に、1.5倍以上100倍以下の濃縮形態での貯蔵安定性が保証され、なおかつ使用時に所定の濃度に希釈して使用することで、タングステン膜に対する良好な腐食抑制能と欠陥抑制能とを両立可能であることを示している。
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
10…基体、12…絶縁膜、14…バリアメタル膜、16…金属膜、20…配線用凹部、100…被処理体、200…配線基板

Claims (8)

  1. (A)シクロデキストリン及びシクロデキストリン誘導体よりなる群から選ばれる少なくとも1種と、
    (B)双性イオン構造を有する化合物と、
    (C)液状媒体と、
    を含有し、
    前記(B)成分が、カルボキシル基及びスルホン酸基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基と、炭素数12以上18以下のアルキル基とを有する化合物であり、
    前記(A)成分の含有量をM[質量%]、前記(B)成分の含有量をM[質量%]としたときに、M/M=3~15である、化学機械研磨、洗浄、レジスト剥離、又はエッチングにおいて使用するための半導体処理用組成物。
  2. 1~100倍に希釈して使用する、請求項1に記載の半導体処理用組成物。
  3. 前記液状媒体が水である、請求項1または請求項2に記載の半導体処理用組成物。
  4. 前記シクロデキストリン誘導体が、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン及び2-ヒドロキシエチル-β-シクロデキストリンから選ばれる少なくとも1種である、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の半導体処理用組成物。
  5. さらに、有機酸を含有する、請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の半導体処理用組成物。
  6. さらに、水溶性高分子を含有する、請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の半導体処理用組成物。
  7. 配線材料としてタングステンを含む配線基板を、請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の半導体処理用組成物を用いて化学機械研磨、洗浄、レジスト剥離、又はエッチングする工程を含む、処理方法。
  8. 配線基板の配線材料としてタングステンを含み、前記配線基板を化学機械研磨した後に請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の半導体処理用組成物を用いて化学機械研磨、洗浄、レジスト剥離、又はエッチングする工程を含む、処理方法。
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