JP7371823B1 - 耐火物の状態可視化方法、耐火物の補修方法および耐火物の状態可視化装置 - Google Patents
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Abstract
Description
一番内側の耐火物である耐火レンガは、炉心側から損耗するほか、内部に亀裂が発生する場合がある。特に、高炉の炉底部の耐火レンガは、休風時であっても常に溶銑に晒されるため、損耗が激しい。耐火レンガの損耗や亀裂の発生は、炉体寿命を短命化させる。
このため、耐火レンガの状態を把握することは、炉を保守管理するうえで重要であることから、従来、耐火レンガの残厚を計測する方法が提案されている(特許文献1~2)。
炉を保守管理するうえでは、耐火レンガの残厚だけでなく、耐火レンガの内部に発生した亀裂なども含めて、耐火レンガの状態を視覚的に把握できることが望ましい。
[1]耐火物を有する炉壁に弾性波を入力するステップと、上記弾性波の反射波を受信するステップと、上記反射波の周波数特性を求めるステップと、上記周波数特性から距離特性を求めるステップと、上記距離特性に基づいて、上記耐火物における反射位置の尤度を示すマップを生成するステップと、を含む、耐火物の状態可視化方法。
[2]上記距離特性は、複数の距離特性を含み、上記複数の距離特性ごとに作成される個々のマップを合成して上記マップを生成する、上記[1]に記載の耐火物の状態可視化方法。
[3]上記[1]または[2]に記載の耐火物の状態可視化方法によって生成されたマップに基づいて、耐火物を補修する、耐火物の補修方法。
[4]耐火物を有する炉壁に弾性波を入力する入力部と、上記弾性波の反射波を受信する受信部と、上記反射波の周波数特性を求め、上記周波数特性から距離特性を求め、上記距離特性に基づいて、上記耐火物における反射位置の尤度を示すマップを生成する制御部と、を備える、耐火物の状態可視化装置。
以下、耐火物の状態可視化装置(単に「状態可視化装置」ともいう)を説明する。以下の説明は、耐火物の状態可視化方法および耐火物の補修方法の説明も兼ねる。
従来、高炉の炉壁は、鉄皮、不定形耐火物および耐火レンガ(定形耐火物)を、この順に有する3層構造であるが、現在、高炉のほとんどは、CS(Cooling Stave)構造高炉である。
図1に示すように、CS構造高炉(以下、単に「高炉」ともいう)の炉壁11は、5層構造である。すなわち、炉壁11は、外側から内側(図1中の左側から右側)にかけて、鉄皮12、不定形耐火物13、銅板14、不定形耐火物15および耐火レンガ16(定形耐火物)を、この順に有する。
なお、不定形耐火物としては、スタンプ材およびキャスタブル耐火物があり、両者は組成および施工法が互いに異なる。具体的には、スタンプ材は、炭素材が主成分であり、ランマーを用いて突き固めるのに対して、キャスタブル耐火物は、アルミナセメントが主成分であり、乾燥により固める。
しかし、CS構造高炉においては、上述した冷却構造を有することで断熱性に優れるため、伝熱計算によって耐火レンガの残厚を推定することが難しい場合がある。
このため、以下に説明する状態可視化装置1の使用が好ましい。これにより、残厚を含めて、耐火レンガの状態を把握できる。
ただし、図2において、炉壁11を構成する部材のうち、鉄皮12および耐火レンガ16を除く部材(不定形耐火物13など)の図示は省略している。
状態可視化装置1は、少なくとも、入力部101、受信部102および制御部103を備える。一例として、入力部101はインパクトハンマー、受信部102は加速度計、制御部103は、アンプ、オシロスコープおよびPC(パーソナルコンピュータ)により構成される。
加速度計である受信部102は、鉄皮12の表面上に配置するが、一例として、図3に示すように、鉄皮12の表面上の4点(点A1、点A3、点C1、点C3)に、矩形を形成するように配置する。
図2に示すように、鉄皮12の表面(例えば、受信部102が配置された各点)を、インパクトハンマーである入力部101で叩き、耐火レンガ16を含む炉壁11を加振する。これにより、炉壁11に弾性波21が入力される。以下、便宜的に、入力部101によって叩かれる鉄皮12の表面上の点を「打点」と呼ぶ場合がある。
図4は、振幅スペクトル(測定点:点C1、打点:点A1)のイメージ図であり、縦軸が振幅(強度)、横軸が周波数を示す。一例として、図4の振幅スペクトルにおいては、低周波側のピークが終端18での反射によるピークであり、高周波側のピークが亀裂19での反射によるピークである。
図5は、距離特性グラフ(測定点:点C1、打点:点A1)のイメージ図であり、縦軸が振幅(強度)、横軸が測定点からの距離を示す。
マップとしては、2次元または3次元のマップが好ましい。
本実施形態では、マップの例(図6~図8)として、ヒートマップを示す。ヒートマップとは、2次元の数値データ(行列データ)の個々の値を色や濃淡として表現した、可視化グラフの一種である。
(a)測定点が1つのマップ:例えば後述する図6~図7に示すマップであり、距離特性グラフ(例えば図5)を、測定点を中心に円周状に並べたもの、または、測定点を中心に球状に重ねたものである。
(b)測定点が複数のマップ:例えば後述する図8または図17に示すマップであり、複数の上記(a)のマップを、距離と測定点の座標(位置関係)との関係を維持したまま合成したものである。測定点が複数であるため、尤度の精度はより優れる。
ヒートマップは、3次元ヒートマップでもよいし、状態可視化装置1Aの使用者が選定した任意断面の2次元ヒートマップでもよい。
制御部103は、具体的には、例えば、図5の距離特性グラフを、その原点0を点C1として、XZ平面に描画する。こうして、距離特性グラフの各距離(横軸)における強度(縦軸)の強弱がXZ平面に描かれたマップ(図6)が得られる。
まず、制御部103は、耐火レンガ16を、格子状に分割する。ここで、各々の格子を「ボクセル」と呼び、ボクセルの集合を「ボクセル群」と呼ぶ。1ボクセルのサイズ(例:1辺の長さ)は、特に限定されず、例えば、格子状(立方体状)の1ボクセルの1辺の長さが1mmであってもよい。
図9は、ボクセル群A02を示すイメージ図である。図9には、鉄皮12の表面上の点C1に配置された受信部102も図示している。
制御部103は、ボクセル群A02に含まれる1つのボクセルA01と点C1との距離dを算出する。次いで、制御部103は、距離特性グラフ(図5)を参照し、このボクセルA01に対して、距離dに対応する振幅(強度)vを、値として反映する処理を実行する。この処理を、ボクセル群A02の全てのボクセルについて実行する。これにより、点C1から等距離に位置するボクセルには、同じ振幅(強度)の値が設定され、点C1を中心とする同心球状に同じ振幅(強度)が設定される。
制御部103は、ボクセル群A02に含まれるボクセルのうち、点C1および点A1を通るXZ平面上のボクセルのみを抽出する。これにより、2次元ヒートマップ(図6)が生成される。
図6のマップにおいては、例えば、強度(縦軸)が弱いほど薄く、強いほど濃く描かれる。強度の違いを、カラーを用いて表してもよい。
黒帯が亀裂19および終端18のどちらであるかの判断は、測定点である点C1からの距離で判断する。例えば、点C1から近い黒帯が亀裂19を、遠い黒帯が終端18を含む可能性が高い。
具体的には、図6では、図5のグラフにおける左側のピーク(亀裂19の位置を含む可能性が高いピーク)を太線で示し、右側のピーク(終端18の位置を含む可能性が高いピーク)を、それよりも太い太線(極太線)で示している。
例えば、まず、測定点が点C1、打点が点C3である場合の2次元ヒートマップを得る。次いで、測定点が点C1、打点が点A3である場合の2次元ヒートマップを得る。更に、測定点が点C1、打点が点A1、点C3および点A3以外である場合の2次元ヒートマップを得る。
例えば、制御部103は、まず、測定点が点A1、打点が点C1である場合について、図4~図6に基づいて説明した処理と同様の処理を実行して、2次元ヒートマップ(図7)を得る。
図7は、点A1の受信部102の受信結果に基づくマップ(測定点:点A1、打点:点C1)のイメージ図であり、図3に示す炉壁11の点C1および点A1を通るXZ平面を示している。
図7でも、図6と同様に、便宜的に、距離特性グラフにおける亀裂19の位置を含む可能性が高い箇所を太線で示し、終端18の位置を含む可能性が高いピークを極太線で示している。
まず、制御部103は、耐火レンガ16を、格子状に分割する。
図10は、ボクセル群A02(図9)とは別のボクセル群B02を示すイメージ図である。図10には、点A1に配置された受信部102も図示されている。
制御部103は、ボクセル群B02に含まれるボクセルB01と点A1との距離dを算出する。次いで、制御部103は、図示しない距離特性グラフ(測定点:点A1、打点:点C1)を参照し、このボクセルB01に対して、距離dに対応する振幅(強度)vを、値として反映する処理を実行する。この処理を、ボクセル群B02の全てのボクセルについて実行する。これにより、点A1から等距離に位置するボクセルは、同じ振幅(強度)の値が設定され、点A1を中心とする同心球状に同じ振幅(強度)が設定される。
制御部103は、ボクセル群B02に含まれるボクセルのうち、点C1および点A1を通るXZ平面上のボクセルのみを抽出する。これにより、2次元ヒートマップ(図7)が生成される。
例えば、まず、測定点が点A1、打点が点C3である場合の2次元ヒートマップを得る。次いで、測定点が点A1、打点が点A3である場合の2次元ヒートマップを得る。更に、測定点が点A1、打点が点A1、点C3および点A3以外である場合の2次元ヒートマップを得る。
図8は、合成マップのイメージ図であり、具体的には、図6と図7とを合成したマップ(合成マップ)であり、図3に示す炉壁11の点C1および点A1を通るXZ平面を示している。
図8において、2本の太線は、図6と図7との中間位置に示されている。
制御部103は、ボクセル群A02(図9)とボクセル群B02(図10)とにおける同座標のボクセル(例えば、ボクセルA01およびボクセルB01)に設定されている振幅(強度)の値を加算し、新たな強度値(合成値)として算出する。
算出された合成値は、ボクセル群A02(図9)およびボクセル群B02(図10)とは別のボクセル群C02(図示せず)におけるボクセルA01およびボクセルB01と同座標のボクセルC01(図示せず)に設定される。
そして、制御部103は、新たなボクセル群C02から、合成値が設定されたボクセルのうち、点C1および点A1を通るXZ平面上のボクセルのみを抽出する。これにより、2次元ヒートマップ(図8)が生成される。
次いで、XZ平面のマップと、YZ平面のマップとから、3次元のマップを得る。
得られたマップは、終端18の位置(すなわち、耐火レンガ16の残厚)だけでなく、亀裂19の位置の情報も含むものであり、これにより、作業者は、高炉の操業中に、耐火レンガ16の状態を、視覚的に把握できる。
すなわち、耐火レンガ16の状態が可視化されたマップを参照することで、耐火レンガ16の補修時期を決定し、耐火レンガ16を補修できる。
例えば、マップを参照することで、耐火レンガ16に亀裂19の発生が認められた場合は、予定されていた補修時期よりも前に、耐火レンガ16を補修できる。
もっとも、耐火レンガ16の状態を、より精度良く把握する観点からは、受信部102の個数は、2個以上が好ましい。
なお、以下に説明する処理は、測定点ごとに打点が複数ある場合に実行される処理であるが、測定点ごとに打点が1つであってもよい。
まず、各測定点(例えば、点C1、点A1、点C3、点A3)に配置された受信部102が、反射波22を加速度信号として受信する(ステップS11)。このとき、測定点ごとに、各打点からの反射波22を受信する。
次に、制御部103は、反射波22を振幅スペクトル(図4参照)に変換し(ステップS12)、振幅スペクトルを距離特性グラフ(図5参照)に変換し(ステップS13)、更に、距離特性グラフに基づいてマップ(図6または図7参照)を作成する(ステップS14)。
全測定点で全打点のマップが作成されていなければ、上記処理を繰り返す(ステップS15のNO)。全測定点で全打点のマップが作成されたならば(ステップS15のYES)、制御部103は、作成された個々のマップを合成して、合成マップ(図8参照)を作成する(ステップS16)。更に、制御部103は、作成した合成マップを、後述する表示部104に表示させる(ステップS17)。
全測定点で全打点からの反射波22が受信されたならば(ステップS22のYES)、制御部103は、各々の反射波22を、振幅スペクトル(図4参照)に変換する(ステップS23)。
全ての反射波22が振幅スペクトルに変換されたならば(ステップS24のYES)、制御部103は、各々の振幅スペクトルを距離特性グラフ(図5参照)に変換する(ステップS25)。
全ての振幅スペクトルが距離特性グラフに変換されたならば(ステップS26のYES)、制御部103は、各々の距離特性グラフに基づいて、マップ(図6または図7参照)を作成する(ステップS27)。
全ての距離特性グラフについて、マップが作成されたならば(ステップS28のYES)、制御部103は、作成された個々のマップを合成して、合成マップ(図8参照)を作成する(ステップS29)。更に、制御部103は、作成した合成マップを、後述する表示部104に表示させる(ステップS30)。
ただし、状態可視化装置を適用できる炉(工業用炉)としては、これに限定されず、例えば、鉄皮および耐火物(耐火レンガ)を有する炉壁を備える炉が挙げられ、その具体例としては、CS構造高炉以外の高炉(3層構造の高炉)、電気炉、転炉、取鍋(RH炉など)、トピードカー、ガス化溶融炉などが挙げられる。
次に、別の実施形態(「実施形態A」と呼ぶ)に係る状態可視化装置1Aについて、図13~図18を用いて説明する。
図13は、状態可視化装置1Aの機能ブロック図である。
図13に示すように、状態可視化装置1Aは、入力部101、受信部102、制御部103、および、表示部104を備える。
入力部101は、インパクトハンマー、加振機などによって構成される。
入力部101がインパクトハンマーで構成される場合、例えば、想定される共振周波数の最大値を計測できる周波数特性を有するインパクトハンマーを用いる。共振周波数の想定値は、シミュレーションによって算出し得る。
受信部102は、例えば、加速度計によって構成される。
受信部102が加速度計で構成される場合、鉄皮12(図1参照)の法線方向の加速度を検出できる加速度計を用いることが好ましい。
制御部103は、状態可視化装置1Aの全体を制御する。
制御部103は、例えば、1つ以上のプロセッサから構成される。
制御部103は、集積回路(ICチップ)などに形成された論理回路(ハードウェア)によって構成されていてもよい。
制御部103は、CPU(Central Processing Unit)を用いてソフトウェアによって構成されていてもよい。
制御部103は、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)などによって構成されていてもよい。
周波数解析部201は、例えば、FFTアナライザで構成される。距離特性算出部202、記憶部203およびマップ生成部204は、例えば、パーソナルコンピュータ(PC)で構成される。
制御部103には、上述した各部どうし間でデータをやり取りするためのデータバスが設けられていてもよい。
制御部103を構成する各部のうち、一部が別の端末(図示せず)に設けられていてもよい。
周波数解析部201は、受信部102が受信した反射波を受け取り、周波数解析して、周波数特性を算出する。
出力する周波数特性としては、例えば、振幅スペクトルを用いるが、これに限定されず、例えば、入力部101から入力した弾性波と、受信部102で受信した反射波とから計算される周波数応答関数を用いてもよい。
周波数解析の方法としては、例えば、離散フーリエ変換(Discrete Fourier Transform、DFT)や、DFTを高速実行する高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform、FFT)が挙げられるが、これに限定されず、ウェーブレット変換により解析してもよい。
周波数解析部201は、受信部102から受け取った反射波を、そのまま周波数解析して、振幅スペクトルを取得してもよい。また、周波数解析部201は、帯域通過フィルタを用いて、特定の周波数帯の信号のみを周波数解析して、振幅スペクトルを取得してもよい。更に、周波数解析部201は、受け取った反射波から窓関数を用いて切り出した信号を周波数解析して、振幅スペクトルを取得してもよい。
周波数解析部201が周波数特性を算出する方法として、離散フーリエ変換を用いる方法を説明する。
時刻tにおいて、受信部102が計測した加速度信号の標本化番号をn、加速度信号を標本化した信号をa(n)とする。このとき、a(n)の離散フーリエ変換A(k)は、下記式(1)により算出できる。
ゲート長Nの下限値は、観測する最大の周波数fmaxと、耐火レンガ16の最大厚さに基づく弾性波の往復時間Tと、周波数解析に用いる弾性波の往復回数mとにより算出できる。加速度信号の標本化間隔をΔtとすると、観測する最大の周波数fmaxは、下記式(2)により算出できる。
A(k)の振幅スペクトルは、A(k)の絶対値|A(k)|により算出できる。
距離特性算出部202は、周波数解析部201が算出した周波数特性を、距離特性に変換する。
周波数特性を距離特性に変換する方法としては、例えば、音速と周波数とから算出した波長を距離として用いてもよいし、事前にシミュレーションにより耐火レンガ16の厚さと周波数との関係を取得して記憶部203に記憶しておき、記憶部203から厚さと周波数との関係を読み込んで、周波数を距離に変換してもよい。
距離特性算出部202が距離特性を算出する方法として、音速を用いて距離特性を算出する方法を説明する。
周波数解析部201で算出した振幅スペクトル|A(k)|の標本化番号kにおける周波数fkは、下記式(4)により算出できる。
記憶部203は、例えば、受信部102が計測した加速度信号、制御部103が有する各部の処理結果、処理に利用する種々のデータを保存する。
記憶部203は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ハードディスクなどの記憶装置によって構成される。
マップ生成部204は、距離特性算出部202が算出した距離特性に基づいて、耐火レンガ16における弾性波21の反射位置の尤もらしさ(すなわち、反射位置の尤度)を示すマップを生成する。
本実施形態では、以下に説明するように、マップ生成部204は、まず、距離特性算出部202が算出した距離特性を用いて、反射位置の尤度を算出し、次いで、算出した反射位置の尤度を示すマップを生成する。
マップ生成部204が、耐火レンガ16の任意の点Rでの反射位置の尤度を算出する方法を、図14および図15を参照して説明する。
図14は、鉄皮12に受信部102が取り付けられた状態の炉壁11を示す斜視図である。図15は、距離特性算出部202が算出した距離特性のイメージ図である。
図14において、受信部102の取り付け位置の空間座標は(xp,yp,zp)であり、耐火レンガ16における任意の点Rの空間座標は(xr,yr,zr)である。
このとき、耐火レンガ16の点Rと、受信部102の取り付け位置との距離drは、下記式(7)により算出できる。
ここで、max(x)は、括弧内で最大の要素を算出する関数である。
図16は、鉄皮12にM個の受信部102が取り付けられた状態の炉壁11を示す斜視図である。
図16において、受信部102の取り付け位置の空間座標は(xp0,yp0,zp0),(xp1,yp1,zp1),…,(xpM-1,ypM-1,zpM-1)であり、耐火レンガ16における任意の点Rの空間座標は(xr,yr,zr)である。
このとき、耐火レンガ16の点Rと、m番目の受信部102の取り付け位置との距離drmは、下記式(9)により算出できる。
マップ生成部204は、反射位置の尤度の大小を可視化したマップを生成する。
マップとしては、2次元または3次元のマップが好ましい。本実施形態では、マップの例として、ヒートマップを選んでいる。本実施形態のヒートマップは、測定点からの距離を縦軸および横軸とし、振幅(強度)を濃淡で描画している。ヒートマップは、反射位置の尤度の大小を色相で表現してもよい。ヒートマップは、3次元ヒートマップでもよいし、状態可視化装置1Aの使用者が選定した任意断面の2次元ヒートマップでもよい。
表示部104は、マップ生成部204が生成したヒートマップ401や、状態可視化装置1Aを操作するためのUI(User Interface)などを表示する。
図17は、ヒートマップ401を表示する表示部104を示す模式図である。
表示部104は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)や有機ELディスプレイ(Organic Electro Luminescence Display、OELD)などによって構成される。
状態可視化装置1Aで実行される処理について、図18を用いて説明する。
図18は、状態可視化装置1Aでの処理の流れの一例を示すフローチャートである。
まず、受信部102は、反射波の信号を受信する(ステップS100)。
次に、周波数解析部201は、受信部102から反射波の信号を受け取り、受け取った信号を周波数解析して、振幅スペクトルを算出する(ステップS101)。
次に、距離特性算出部202は、周波数解析部201が算出した振幅スペクトルを、距離特性に変換する(ステップS102)。
次に、マップ生成部204は、距離特性算出部202が算出した距離特性を用いて、耐火レンガ16における反射位置の尤度を算出する(ステップS103)。
マップ生成部204は、耐火レンガ16における全ての点で反射位置の尤度を算出したか否かを判定し(ステップS104)。全ての点で反射位置の尤度を算出していない場合は(ステップS104のNO)、反射位置の尤度の算出を繰り返し実行する(ステップS103)。
次いで、制御部103は、表示部104を駆動制御して、マップ生成部204が生成したマップを表示部104に表示させる(ステップS106)。本実施形態では、制御部103は、表示部104を駆動制御して、マップ生成部204が生成したヒートマップ401を表示部104に表示させる。
次に、更に別の実施形態(「実施形態B」と呼ぶ)を説明する。
実施形態Bについては、実施形態Aと異なる点のみ説明する。具体的には、実施形態Bは、距離特性算出部202が、実施形態Aとは異なる。
距離特性算出部202が、事前にシミュレーションにより耐火レンガ16の厚さと周波数との関係を取得して記憶部203に記憶しておき、記憶部203から厚さと周波数の関係を読み込んで、周波数を距離に変換する方法について、以下に説明する。
距離特性算出部202が距離特性を算出する方法として、有限要素法による加振シミュレーション結果を用いて距離特性を算出する方法を説明する。
有限要素法は、微分方程式を近似的に解くための数値解析手段であり、連続体を有限の大きさの要素に分割して計算する。連続体における超音波伝播運動は、下記式(11)に示す微分方程式により表現される。
上記式(11)を有限の大きさの要素に分割した場合、時刻tnにおける超音波伝播運動は、下記式(12)により表現される。
距離特性算出部202は、生成したそれぞれの3次元モデルを用いて、上記式(12)の超音波伝播運動を、逐次的に計算する。
耐火レンガ16の厚さTの3次元モデルを用いて、超音波伝播運動をシミュレーションし、その結果、加速度計測位置{xp}において観測した加速度信号を、aTxp(n)とする。このとき、aTxp(n)の離散フーリエ変換ATxp(k)は、下記式(13)により算出できる。
距離特性算出部202は、ATxp(k)より、耐火レンガ16の厚さTにおける共振周波数fTを、下記式(14)により算出する。
ここで、argmax(x)は、括弧内の要素を最大にするargmax下部のパラメータを算出する関数である。
距離特性算出部202は、それぞれの耐火レンガ16の厚さTで、上記式(14)の計算を実施することにより、耐火レンガ16の厚さTと、共振周波数fとを変換する関数を導出する。
距離特性算出部202は、求めたい厚さの分解能ごとの耐火レンガ16の厚さでシミュレーションし、耐火レンガ16の厚さと共振周波数とを一対一対応させる関数を導出してもよい。また、代表点でシミュレーションし、耐火レンガ16の厚さと共振周波数とを変換する近似式を導出してもよい。
11:炉壁
12:鉄皮
13:不定形耐火物
14:銅板
15:不定形耐火物
16:耐火レンガ
17:穴
18:終端
19:亀裂
21:弾性波
22:反射波
101:入力部
102:受信部
103:制御部
104:表示部
201:周波数解析部
202:距離特性算出部
203:記憶部
204:マップ生成部
401:ヒートマップ(マップ)
Claims (4)
- 耐火物を有する炉壁に弾性波を入力するステップと、
前記弾性波の反射波を受信するステップと、
前記反射波の周波数特性を求めるステップと、
前記周波数特性から距離特性を求めるステップと、
前記距離特性に基づいて、前記耐火物における反射位置の尤度を示すマップを生成するステップと、を含む、耐火物の状態可視化方法。 - 前記距離特性は、複数の距離特性を含み、
前記複数の距離特性ごとに作成される個々のマップを合成して前記マップを生成する、請求項1に記載の耐火物の状態可視化方法。 - 請求項1または2に記載の耐火物の状態可視化方法によって生成されたマップに基づいて、耐火物を補修する、耐火物の補修方法。
- 耐火物を有する炉壁に弾性波を入力する入力部と、
前記弾性波の反射波を受信する受信部と、
前記反射波の周波数特性を求め、前記周波数特性から距離特性を求め、前記距離特性に基づいて、前記耐火物における反射位置の尤度を示すマップを生成する制御部と、
を備える、耐火物の状態可視化装置。
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-
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