JP7370034B1 - 冷却衣服 - Google Patents

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Abstract

【課題】着用者に対し、より長い時間、持続的に冷却効果をもたらすことができる冷却衣服を提供する。【解決手段】冷却衣服1は、冷却流体Nを循環させる管路に、ペルチェ素子ユニット31により冷却流体Nとの間で熱交換可能な熱交換部30を配した冷却流体循環経路2を衣服本体に備え、冷却流体Nを貯留する貯留部50を有し、冷却流体循環経路2は、管路の一端側の流入部72と他端側の流出部73をそれぞれ貯留部50内に連通させ、ポンプにより、貯留部50に貯留された冷却流体Nを、熱交換部30を経て、流出部73より管路71に循環させ、流入部72から貯留部50内に還流させる系統で、衣服本体の内面側に配されている。熱交換部30は、ペルチェ素子ユニット31で吸熱下になる冷却面32を、貯留部50の内部空間50Sに向けた配置態様の下、放熱面で生じる発熱を、衣服本体の外面側から大気中に放熱可能に配設されている。【選択図】図6

Description

本発明は、着用者の身体を冷やす冷却衣服に関する。
人にとって不快な猛暑日は近年、年間を通じて数多くあり、このような猛暑日には、熱中症の防止策として、小まめな水分補給をはじめ、適度な冷房装置の使用が、奨励されている。しかしながら、冷房装置の設備がない、または冷房の効きが十分でない等の理由により、猛暑下の屋外で働く作業者や、屋内の蒸し暑い環境下で働く作業者、炎天下でレクリエーションやスポーツ、観戦等を行っている人は、冷房装置で涼を取ることはできない。そこで、避暑を求める人向けに、冷却機能を備えた衣服が普及し、近年では、冷水を循環させる冷却経路を衣服本体に装着した冷却衣服も開発されている。その一例が、特許文献1に開示されている。
特許文献1は、ウェアに適用する熱交換装置であり、液体循環通路の系統上にある熱交換パッドをウェアに有し、ペルチェ素子を有した熱交換ユニットにより、液体循環通路を循環する液体との間で熱交換を行い、熱交換パッドを流通する熱交換後の液体(冷却水)により、暑さを感じている着用者を冷却して体温調整を行う熱交換装置である。特許文献1の熱交換装置は、軽量化を図るため、液体循環通路に流体を貯留するためのタンクを備えていない。
特開2023-4963号公報
しかしながら、特許文献1は、液体(冷却水)のタンクを備えず、冷却水を、液体循環通路を循環する分だけとしている上に、着用者の体温調整で高温化した冷却水を、熱交換ユニット内のペルチェ素子による吸熱だけで、熱交換を行っている。そのため、特許文献1の熱交換装置を猛暑下で使用する場合、熱交換ユニットが、冷却水の循環を伴いながら、この熱交換装置を具備したウェアの着用者にとって、身体を効果的に冷却できると感じる低い温度まで、冷却水の温度を下げることができない虞がある。それ故に、身体の効果的な冷却を求める着用者とって、特許文献1の熱交換装置を具備したウェアの使い勝手は良くない。
ところで、特許文献1の熱交換装置を具備したウェアのように、この種の冷却衣服は、例えば、高層ビル建設現場での作業や、送電線用鉄塔等の構造物で高所作業を行う作業者等にも使用される。このような作業者は、高所にある作業現場に一旦移動すると、一般的には、作業中、ほとんど地上と行き来をせず、高所の作業現場に、比較的長時間に亘り留まり続ける傾向にある。特に、このような作業者向けの冷却衣服の場合、循環する冷却水により、着用者の身体を効果的に冷却できている冷却持続時間が短いと、冷却衣服を着た作業者が、炎天下で高所の作業現場にいる間に、十分な冷却効果を身体に得られないまま、やむを得ない状況下で作業を継続しなければならず、作業者には不快感が生じる。それ故に、作業者は、冷やした冷却水を持続的に循環させ、より長い時間、効果的に身体を冷やすことができる冷却衣服を希求していた。
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、着用者に対し、より長い時間、持続的に冷却効果をもたらすことができる冷却衣服を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明に係る冷却衣服は、以下の構成を有する。
(1)ポンプにより冷却流体を循環させる管路に、ペルチェ素子により該冷却流体との間で熱交換可能な熱交換部を配設してなる冷却流体循環経路を、衣服本体に備えた冷却衣服において、前記冷却流体を貯留可能な有底袋状の貯留部を有し、前記冷却流体循環経路は、前記管路に対し、一端側の流入部と他端側の流出部をそれぞれ前記貯留部内に連通可能に接続し、前記ポンプにより、前記貯留部に貯留された前記冷却流体を、前記熱交換部を経て、前記流出部より前記管路に循環させ、前記流入部から前記貯留部内に還流させる系統で、前記衣服本体の内面側に配されていること、前記熱交換部は、前記ペルチェ素子で吸熱下になる冷却面を、前記貯留部の内部空間に向けた配置態様の下、前記冷却面の反対側にある放熱面で生じる発熱を、前記衣服本体の外面側から大気中に放熱可能に配設されていること、前記流入部と前記熱交換部は、いずれも前記貯留部の底側に設けられ、前記熱交換部が、高温化して前記流入部から前記貯留部に流入した前記冷却流体を、前記ペルチェ素子での吸熱に基づく熱交換を伴って低温化することで、前記流入部側より温度を下げた状態の前記冷却流体が、前記貯留部から前記流出部に流出されること、を特徴とする。なお、着用者が本発明に係る冷却衣服の使用を開始するにあたり、冷却流体循環経路に注入して貯留部に貯める冷却流体の温度は、目安として、例えば、十数℃より低く、凝固しない液体状の物性を維持できる温度帯域内である。冷却流体が水の場合には、その温度T(℃)は、例えば、0<T<12乃至15近傍である。
(2)(1)に記載する冷却衣服において、当該冷却衣服は、凝固可能な物性の冷却物質を前記貯留部に収容した状態の下、前記冷却流体を前記冷却物質で冷やして使用するものであること、を特徴とする。
(3)(2)に記載する冷却衣服において、前記貯留部は、前記冷却物質をペットボトル内に収容した状態にある冷却物質入りペットボトルを、出し入れ自在な態様で収容可能であり、前記冷却流体循環経路では、前記貯留部に貯留された前記冷却流体が、前記冷却物質入りペットボトルとの接触を介して、前記流出部より前記管路を通じて、前記流入部から前記貯留部に還流されること、当該冷却衣服は、前記貯留部内に貯留された前記冷却流体に、前記冷却物質入りペットボトルを浸漬した状態で、使用するものであること、を特徴とする。
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載する冷却衣服において、前記熱交換部は、前記ペルチェ素子の前記冷却面を、または前記冷却面に密着させた金属製の伝熱部材を、前記貯留部の内部空間をなす壁部に取り付けて形成されていること、を特徴とする。
(5)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載する冷却衣服において、電気的に制御可能な制御手段を備え、前記制御手段は、前記ペルチェ素子の前記冷却面に呈する吸熱の温度を、複数の段階に分けて可変できること、を特徴とする。
(6)(5)に記載する冷却衣服において、前記貯留部に貯留した前記冷却流体の温度を検知可能な検知手段を有し、前記制御手段は、前記検知手段の出力信号で得られる前記冷却流体の状態に応じて、前記ペルチェ素子の前記冷却面に呈する吸熱の温度を調節できること、を特徴とする。
(7)(1)乃至(6)のいずれか1つに記載する冷却衣服において、前記貯留部は、前記衣服本体の前記外面に形成された包囲部で被覆され、前記包囲部には、前記放熱面を外気と接触可能に形成された排熱部が設けられていること、を特徴とする。
(8)(1)乃至(7)のいずれか1つに記載する冷却衣服において、前記衣服本体は、着用者上体に装着するベストであること、を特徴とする。
上記構成を有する本発明に係る冷却衣服の作用・効果について説明する。
(1)ポンプにより冷却流体を循環させる管路に、ペルチェ素子により該冷却流体との間で熱交換可能な熱交換部を配設してなる冷却流体循環経路を、衣服本体に備えた冷却衣服において、冷却流体を貯留可能な有底袋状の貯留部を有し、冷却流体循環経路は、管路に対し、一端側の流入部と他端側の流出部をそれぞれ貯留部内に連通可能に接続し、ポンプにより、貯留部に貯留された冷却流体を、熱交換部を経て、流出部より管路に循環させ、流入部から貯留部内に還流させる系統で、衣服本体の内面側に配されていること、熱交換部は、ペルチェ素子で吸熱下になる冷却面を、貯留部の内部空間に向けた配置態様の下、冷却面の反対側にある放熱面で生じる発熱を、衣服本体の外面側から大気中に放熱可能に配設されていること、流入部と熱交換部は、いずれも貯留部の底側に設けられ、熱交換部が、高温化して流入部から貯留部に流入した冷却流体を、ペルチェ素子での吸熱に基づく熱交換を伴って低温化することで、流入部側より温度を下げた状態の冷却流体が、貯留部から流出部に流出されること、を特徴とする。
この特徴により、冷却流体(水等)は、冷却流体循環経路を常に循環しているが、貯留部の内部空間では、既に貯留されている冷却流体が、例えば、十数℃より低い温度下になっているペルチェ素子の冷却面により、身体を効果的に冷やす温度(水温)まで冷却されている。そのため、本発明に係る冷却衣服の着用者の身体から熱を奪い、一例として25~30℃近傍まで高温化した状態の冷却流体が、流入部から貯留部の内部空間に還流されても、貯留部の内部空間で、既にペルチェ素子の冷却面によって、一例として10℃を下回る温度まで低温化された冷却流体が、常に流出部から管路に送出される。それ故に、着用者が、本発明に係る冷却衣服の使用開始以降、冷却流体が、貯留部の内部空間を含む冷却流体循環経路を繰り返し循環している間、流出部から管路に送出される冷却流体は、ペルチェ素子の冷却面により、着用者にとって快適さを得られる温度(例えば、十数℃)に常に低温化できていることから、本発明に係る冷却衣服は、より長い時間、着用者の身体を持続的に冷却し続けることができる。
従って、本発明に係る冷却衣服によれば、着用者に対し、より長い時間、持続的に冷却効果をもたらすことができている、という優れた効果を奏する。
(2)に記載する冷却衣服において、当該冷却衣服は、凝固可能な物性の冷却物質を貯留部に収容した状態の下、冷却流体を冷却物質で冷やして使用するものであること、を特徴とする。
この特徴により、冷却流体(水等)は、ペルチェ素子の作動ON/OFF状態に拘わらず、貯留部の内部空間に貯留している間に、冷却物質(氷、飲料水による凝固物等)で冷すことができているため、冷却流体循環経路には、着用者にとって快適な温度に低温化した冷却流体が、流動するようになる。
(3)に記載する冷却衣服において、貯留部は、冷却物質をペットボトル内に収容した状態にある冷却物質入りペットボトルを、出し入れ自在な態様で収容可能であり、冷却流体循環経路では、貯留部に貯留された冷却流体が、冷却物質入りペットボトルとの接触を介して、流出部より管路を通じて、流入部から貯留部に還流されること、当該冷却衣服は、貯留部内に貯留された冷却流体に、冷却物質入りペットボトルを浸漬した状態で、使用するものであること、を特徴とする。
この特徴により、貯留部の内部空間に貯留した高温化状態の冷却流体(水等)は、ペットボトル内の冷却物質(氷、飲料水による凝固物等)との熱交換により、冷却されて低温化すると共に、ペルチェ素子の冷却面に呈する吸熱で冷却されて低温化する。それ故に、貯留部の内部空間を含む冷却流体循環経路では、着用者が、本発明に係る冷却衣服の使用を開始すると、冷却流体は当初、冷却物質から熱を奪われて冷却されるが、冷却物質の融解により、冷却流体が、一例として20℃を上回る高温まで上昇しても、ペルチェ素子の冷却面に呈する吸熱で冷却される。そのため、本発明に係る冷却衣服の使用中、冷却流体は常時、貯留部の内部空間を含む冷却流体循環経路を循環している間、身体を効果的に冷やす温度に保たれ易くなっており、本発明に係る冷却衣服による持続的な冷却効果は、経時的に安定している。
(4)に記載する冷却衣服において、熱交換部は、ペルチェ素子の冷却面を、または冷却面に密着させた金属製の伝熱部材を、貯留部の内部空間をなす壁部に取り付けて形成されていること、を特徴とする。
この特徴により、貯留部の内部空間に貯留した冷却流体(水等)は、ペルチェ素子の冷却面に呈する吸熱に対し、熱伝導のロスを抑えて、より短い時間で効率良く冷却される。
(5)に記載する冷却衣服において、電気的に制御可能な制御手段を備え、制御手段は、ペルチェ素子の冷却面に呈する吸熱の温度を、複数の段階に分けて可変できること、を特徴とする。
この特徴により、制御手段は、吸熱の温度を、冷却流体(水等)の温度に応じて、適切に調整することで、ペルチェ素子に対し、出力時に無駄な消費電力を伴わずに、電力を供給することができる。
(6)に記載する冷却衣服において、貯留部に貯留した冷却流体の温度を検知可能な検知手段を有し、制御手段は、検知手段の出力信号で得られる冷却流体の状態に応じて、ペルチェ素子の冷却面に呈する吸熱の温度を調節できること、を特徴とする。
この特徴により、制御手段は、高温化した冷却流体(水等)の温度に応じて、ペルチェ素子の出力を制御して、冷却面に呈する吸熱の温度を可変させることができる。そのため、電源部は、より長い時間にわたって、電力をペルチェ素子に供給し続けることができるようになり、冷却流体の温度に応じて吸熱の温度調節を可変させると、吸熱の温度を可変させない場合に比べ、着用者を効果的に冷却できる持続時間を、例えば、2~3倍程、長くすることができる。
(7)に記載する冷却衣服において、貯留部は、衣服本体の外面に形成された包囲部で被覆され、包囲部には、放熱面を外気と接触可能に形成された排熱部が設けられていること、を特徴とする。
この特徴により、放熱面で生じる数十℃程の発熱が、本発明に係る冷却衣服の着用者の背中側から後方に放たれるため、着用者は、放熱面での発熱による影響をほとんど受けることなく、本発明に係る冷却衣服は、着用者への快適性を損なわない。
(8)に記載する冷却衣服において、衣服本体は、着用者上体に装着するベストであること、を特徴とする。
この特徴により、本発明に係る冷却衣服は、着用者への身動きを大きく損なうことなく、冷却流体循環経路を循環する冷却流体(水等)により、特に暑さを感じる首筋や頚椎付近、及び脇の下にある動脈等を含め、着用者上体をくまなく、効果的に冷やすことができる。
実施形態に係る冷却衣服を示す斜視図である。 図1に示す冷却衣服の正面図である。 図1に示す冷却衣服の背面図である。 図1に示す冷却衣服を展開した状態で示す平面図である。 実施形態に係る冷却衣服の貯留部に冷却物質入りペットボトルを出し入れする要領を示す説明図であり、包囲部にペルチェ素子ユニットを固設していない状態を示す図である。 実施形態に係る冷却衣服の貯留部に冷却物質入りペットボトルを収容した状態を側視で示す説明図である。 図6中、A部の拡大図である。 図6に続き、貯留部に冷却物質入りペットボトルを収容した状態を、斜視で示す説明図である。 実施形態に係る冷却衣服に具備する制御ユニットの構成を示すブロック図である。 実施形態に係る冷却衣服の制御ユニットにより、温度センサの検知温度と、流入部側と流出部側との水温差に基づく、ペルチェ素子ユニットの吸熱温度の制御に関し、一例で示すタイミングチャートである。 実施形態に係る冷却衣服において、冷却物質入りペットボトルと共に、ペルチェ素子ユニットの冷却面で冷却流体を冷やす様子を模式的に示す説明図である。
以下、本発明に係る冷却衣服について、実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。本発明に係る冷却衣服は、例えば、猛暑下の屋外で働く作業者や、屋内の蒸し暑い環境下で働く作業者、炎天下でのレクリエーションやスポーツ、観戦等を行っている人等、着用者の身体を冷やすために使用される。この冷却衣服の形態は、作業時に着衣する作業服のほか、娯楽やレジャー、イベントや行事、スポーツ、ジョギング、自転車等をはじめ、様々な用途で着用可能な多目的の上着・ベスト等である。
<冷却衣服1の概要>
はじめに、冷却衣服1の概要について、図1~図5を用いて簡単に説明する。図1は、実施形態に係る冷却衣服を示す斜視図であり、図1に示す冷却衣服の正面図を図2に、背面図を図3に、図1に示す冷却衣服を展開した状態で示す平面図を図4に、それぞれ示す。図5は、実施形態に係る冷却衣服の貯留部に冷却物質入りペットボトルを出し入れする要領を示す説明図であり、包囲部にペルチェ素子ユニットを固設していない状態を示す図である。図1~図5に示すように、冷却衣服1は、例えば、水、飲料水等、凝固可能な冷却物質Mをペットボトル90内に収容した状態にある冷却物質入りペットボトル90Xを、立ち姿勢の態様で出し入れ自在に収容可能な有底袋状の貯留部50を、衣服本体10に有し、この衣服本体10の内面10a側に冷却流体循環経路2を備えている。
<衣服本体10について>
次に、衣服本体10について、説明する。冷却衣服1では、衣服本体10は、本実施形態では、着用者上体に装着するベストの形態で形成され、例えば、ナイロン(nylon)、ポリエステル(polyester)等、耐熱性、耐強度、蒸散性に優れた合成樹脂繊維製の生地からなる。衣服本体10の内面10aは、メッシュ状の生地で形成されている。
図1及び図2に示すように、衣服本体10は、左右に分割された前身頃11、後身頃12、肩部13、襟部14、脇腹部15等を有し、肩部13からせり上がった襟部14は、着用者の首回りを覆う態様となっている。脇腹部15は、前身頃11と後身頃12との間の脇下部分で、左右両側の前身頃11に連結していると共に、後身頃12と連結している。
また、図2に示すように、衣服本体10は、左側の前身頃11と右側の前身頃11との間には、前身頃11と後身頃12とから延出された一対のベルト(ベルト25A、ベルト25B)を2組有し、2組とも、ベルト25A、ベルト25B同士が、移動カン26を介して長さ調整可能に連結されている。また、前身頃11と後身頃12から延出した一対のベルト(ベルト25A、ベルト25B)は、着脱自在に連結することができている。
図2及び図3に示すように、衣服本体10は、左右両側とも前身頃11の腹部付近に、ファスナで開閉可能な第1ポケット21を、貯留部50上方の肩部13に、ファスナで開閉可能な第2ポケット22を、後身頃12の腰部付近に、ファスナで開閉可能な第3ポケット23を、それぞれ外面側に具備している。第1ポケット21~第3ポケット23はいずれも、2枚の袋布をパッチ状に重合してなる。
<冷却流体循環経路2について>
図1~図5に示すように、冷却衣服1は、ポンプ74により冷却流体Nを循環させる管路71に、ペルチェ素子ユニット31(ペルチェ素子)により、冷却流体Nとの間で熱交換可能な熱交換部30を配設した冷却流体循環経路2を有する。冷却流体循環経路2は、管路71と、この管路71の一端側に流入部72と、その反対の他端側に流出部73とをそれぞれ貯留部50内に連通可能に接続し、管路71内に冷却流体N(本実施形態では、水)を送出させるポンプ74等を有する。ポンプ74は、第3ポケット23内に収容されている。流入部72と流出部73は、後に詳述する貯留部50に配設されている。冷却流体循環経路2は、ポンプ74により、貯留部50に貯留された冷却流体Nを、熱交換部30を経て、流出部73より管路71に循環させ、流入部72から貯留部50内に還流させる系統で構成されている。
冷却流体循環経路2は、衣服本体10の内面10a側に配設されている。管路71は、可撓性を有した樹脂製で、長尺状のチューブからなり、後身頃12から肩部13、左右双方の前身頃11を経て、再び後身頃12に戻る循環経路をなしている。冷却流体循環経路2では、左右双方の前身頃11、後身頃12、及び肩部13で、ガイド部27が、衣服本体10の内面10aに設けられている。ガイド部27は、短冊状の部材の長手方向両端部を、衣服本体10の内面10aに固着してアーチ状に形成され、管路71は、ガイド部27を挿通して保持されている。
<貯留部50について>
図1及び図5に示すように、貯留部50は、第2ポケット22内に収容されている。貯留部50は、冷却流体Nを液密に貯留可能な有底袋状に形成されている。具体的には、貯留部50は、防水性と可撓性を有した合成樹脂製のシート材により、袋状に形成されており、その一部に収容口53が設けられている。収容口53は、貯留部50の内部空間50Sを、衣服本体10の外部と連通可能に形成されている。収容口53には、蓋体54が、衣服本体10の外面側にある口金55と、紐56で連結して設けられている。蓋体54は、収容口53を液密に閉塞すると共に、貯留部50の内部空間50Sとその外部との間で、冷却物質入りペットボトル90X及び冷却流体Nの出入りを行うときに開放される。
本実施形態では、冷却衣服1は、凝固可能な冷却物質M(水や飲料水等)を貯留部50に収容した状態の下、冷却流体Nを冷却物質Mで冷やして使用するものである。具体的には、冷却衣服1は、貯留部50内に貯留した冷却流体Nに、冷却物質Mをペットボトル90内に収容した状態にある冷却物質M入りペットボトル90を浸漬した状態で、使用するものである。そのため、収容口53は、ペットボトル90(冷却物質入りペットボトル90X)を自在に出し入れできる大きさになっていると共に、貯留部50は、冷却物質入りペットボトル90Xを、収容口53を通じて内部空間50Sに収容可能に形成されている。
冷却衣服1の使用にあたり、貯留部50には、冷却物質入りペットボトル90Xのほか、冷却流体循環経路2を流通させる冷却流体Nが、収容口53から内部空間50Sに充填される。すなわち、冷却流体循環経路2では、予め貯留部50に冷却流体Nが充填されると共に、冷却物質入りペットボトル90Xを収容した上で、ポンプ74により、貯留部50に貯留した冷却流体Nが、熱交換部30を通過すると共に、冷却物質入りペットボトル90Xの外周面90aとの接触を介して、流出部73より管路71を流れて、流入部72から貯留部50内に還流される。貯留部50の内部空間50Sに対し、流入部72は、底52側に設けられ、流出部73は、流入部72より上方の収容口53側に設けられている。
<熱交換部30について>
次に、熱交換部30について、図6~図9を用いて説明する。図6は、実施形態に係る冷却衣服の貯留部に冷却物質入りペットボトルを収容した状態を、側視で示す説明図であり、図6中、A部の拡大図を図7に示す。図8は、図6に続き、貯留部に冷却物質入りペットボトルを収容した状態を、斜視で示す説明図である。
図6~図8に示すように、熱交換部30は、ペルチェ素子ユニット31を用いて構成されている。熱交換部30は、ペルチェ素子で吸熱下になる冷却面32を、貯留部50の内部空間50Sに向けた配置態様の下、冷却面32の反対側にある放熱面33で生じる発熱を、衣服本体10の外面10b側から大気中に放熱可能に配設されている。熱交換部30は、貯留部50の底52側に設けられ、本実施形態では、ペルチェ素子の冷却面32を、貯留部50の内部空間50Sをなす壁部51に装着されている。貯留部50は、衣服本体10の外面10b(図3参照)に形成された包囲部57で被覆され、包囲部に57は、ペルチェ素子の放熱面33を外気Arと接触可能に形成された排熱部58が設けられている。
具体的に説明する。ペルチェ素子ユニット31が、冷却流体循環経路2のうち、貯留部50の内部空間50Sの底52側で、流入部72と近接した部位に配設されている。ペルチェ素子ユニット31は、冷却面32及び放熱面33を含むペルチェ素子と、ペルチェ素子に向けて吸気する吸気部34と、カバー部材に形成された内側フランジ35と、吸気部34を形成する凸部36と、外側フランジ38を形成した締結具37等を有する。ペルチェ素子ユニット31は、ペルチェ素子をカバー部材の中に収納されている。ペルチェ素子は、板状の半導体熱電素子の一種である。ペルチェ素子に直流電流が供給されると、ペルチェ素子の平板部では、ペルチェ効果により、一面(冷却面)が、例えば、十数℃より低い温度下にある所定の低温度で吸熱した状態になると同時に、その反対側の他面(放熱面)が、例えば、数十℃より高い温度下にある所定の高温度で発熱した状態となる。
図6~図8に示すように、ペルチェ素子ユニット31は、衣服本体10の包囲部57にある開口59Hに凸部36を挿通し、内側フランジ35を、開口59Hに外周にある外周縁部59に当接させた状態の下、凸部36の内側フランジ35と締結具37の外側フランジ38との間に外周縁部59を挟む込み、凸部36と締結具37との締結により、包囲部57に固着した状態で装着される。この固設状態の下、包囲部57にある排熱部58では、ペルチェ素子ユニット31の吸気部34が、包囲部57の外側に配置されるため、ペルチェ素子の放熱面33からの発熱Houtは、外気Arに向けて放熱される。
他方で、ペルチェ素子ユニット31の冷却面32は、パッキン等のシール部39により、貯留部50の内部空間50Sをなす壁部51と液密な状態で取り付けられており、内部空間50Sにある冷却流体N(水)が、冷却面32と壁部51との間から貯留部50の外側に漏洩するのを防止できている。
なお、衣服本体10の洗濯等で、ペルチェ素子ユニット31を衣服本体10から取り外すときには、凸部36と締結具37との締結を解除すると共に、貯留部50の壁部51からペルチェ素子ユニット31の冷却面32を取り外す必要がある。そのため、シール部39は、貯留部50の壁部51に対し、ペルチェ素子ユニット31の冷却面32の取り付けとその取り外しを繰り返しても、壁部51と冷却面32との液密状態を保持できる構造で形成されていることが好ましい。
<温度センサ85について>
図8に示すように、貯留部50には、本実施形態では、温度センサ85L(85)(検知手段)が、内部空間50Sの底52側で、流入部72に近接した部位に配設されている。温度センサ85L(85)は、貯留部50に貯留した冷却流体N(水)の状態(温度)を検知可能なセンサである。温度センサ85L(85)は、貯留部50の底52付近に滞留する冷却流体N(水)の水温を検知する。温度センサ85は、例えば、5℃のように、定量的な計測値で水温の状態を検知する機能を有するセンサのほか、例えば、「低温状態モード」のように、水温の状態を定性的に検知する機能を有するセンサであっても良い。
なお、温度センサ85は、本実施形態では、一例として、貯留部50に対し、流入部72の近接部位に設けたが、温度センサ85の配設有無や、配設箇所は、本実施形態に限定されるものではなく、温度センサ85を配設しない場合を含めて、適宜変更可能である。例えば、図8に示すように、流入部72の近接部位に設けた温度センサ85L(85)により、貯留部50の底52付近に滞留する冷却流体N(水)の水温を検知すると共に、貯留部50内の流出部73に近接した部位に設けた温度センサ85H(85)により、管路71に流通する冷却流体N(水)の水温を検知して、流入部72側と流出部73側との冷却流体N(水)の水温差が検知されても良い。
<制御ユニット80について>
図9は、実施形態に係る冷却衣服に具備する制御ユニットの構成を示すブロック図である。図2及び図9に示すように、冷却衣服1は、制御ユニット80(制御手段)を備え、制御ユニット80は、制御部81と、操作部82と、表示部83等を有する。制御ユニット80内では、操作部82と表示部83が、制御部81と電気的に接続されている。
ペルチェ素子ユニット31では、ペルチェ素子は、配線により、制御ユニット80を介して、電源部(図示省略)と電気的に接続されている。電源部は、ペルチェ素子ユニット31のペルチェ素子に電力を供給する一次電池や二次電池等の蓄電池である。電源部と配線とは、例えば、USB(Universal Serial Bus)接続等、コネクタを介した接続により、自在に着脱可能となっている。電源部の電力は、配線を通じて制御ユニット80に供給される。
制御部81は、ペルチェ素子ユニット31のペルチェ素子や、貯留部50内の温度センサ85、冷却流体循環経路2内のポンプ74に対し、電気的に制御を行う制御手段である。具体的には、制御部81は、例えば、ペルチェ素子への通電時の電流制御、ペルチェ素子に印加する電圧制御、デューティ制御等により、ペルチェ素子で吸熱する温度を制御している。なお、制御部81は、必要に応じて、ポンプ74により、冷却流体循環経路2を流動する冷却流体Nの圧送(循環)流量を制御しても良い。
操作部82は、制御ユニット80上にある押下部を、所定の操作モードに基づいて、指で軽く押すことにより、ペルチェ素子ユニット31に対し、ペルチェ素子への通電のオン/オフの切替え操作と、冷却面32での吸熱温度を制御部81で制御するための操作を可能とした態様で構成されている。表示部83は、制御ユニット80上にある表示部で、操作部82で行う操作に対応して、複数種の色から選択的に発光可能とした態様で構成されている。
また、制御部81は、その制御機能の一つとして、ペルチェ素子の冷却面32に呈する吸熱温度を、本実施形態では、温度センサ85の出力信号で得られる冷却流体Nの状態に応じて、ペルチェ素子の冷却面32に呈する吸熱温度を、複数段階に可変して調節できる。
具体的に説明する。図10は、実施形態に係る冷却衣服の制御ユニットにより、温度センサの検知温度と、流入部側と流出部側との水温差に基づく、ペルチェ素子ユニットの吸熱温度の制御に関し、一例で示すタイミングチャートである。
制御部81は、ペルチェ素子ユニット31の冷却面32で吸熱する温度として、図10に示すように、低温状態(図10では、「低温」と表記)、中温状態(図10では、「中温」と表記)、及び高温状態(図10では、「高温」と表記)と、本実施形態では、3段階に制御可能となっている。低温状態は、ペルチェ素子において、フルに出力して吸熱可能な100%の状態であり、ペルチェ素子で最も低い温度下で吸熱された冷熱となっている。高温状態は、ペルチェ素子において、低温状態と比べ、半分程の出力で吸熱可能な50%(一例)の状態であり、ペルチェ素子で最も高い温度下で吸熱された冷熱となっている。中温状態は、ペルチェ素子において、高温状態と低温状態との中間の出力で吸熱可能な75%(一例)の状態であり、高温状態より低く、かつ低温状態より高い温度帯域内にある温度下で吸熱された冷熱となっている。なお、冷却面32での吸熱制御は、3段階に限定されるものではなく、2段階以上であれば、種々変更可能である。
温度センサ85L(85)は、本実施形態では、凝固した状態にある冷却物質M(水や飲料水等)の温度(零度近傍)との対比で、例えば、概ね2℃以内の温度差に相当する温度帯域の「低温モード」(図10では、検知温度「低温」と表記)、概ね3℃前後の温度差に相当する温度帯域の「中温モード」(図10では、検知温度「中温」と表記)、及び概ね5℃を上回る温度差に相当する温度帯域の「高温モード」(図10では、検知温度「高温」と表記)等に応じた検知信号を、制御部81に出力する。
制御部81は、冷却流体Nに対し、流出部73側と流入部72側との相対的な温度差(水温差)について、温度センサ85L(85)の出力信号で、「低温モード」の検知結果より、水温差2℃程度までの第1の場合(図10では、水温差「小」と表記)、「中温モード」の検知結果より、水温差3℃前後程度までの第2の場合(図10では、水温差「中」と表記)、及び「高温モード」の検知結果より、水温差5℃を上回る第3の場合(図10では、水温差「大」と表記)等に応じて、ペルチェ素子の吸熱温度を制御する。なお、第1の場合から第3の場合に挙げた各水温差の数値は、あくまでも一例の目安であり、本実施形態で限定されるものではなく、適宜変更可能である。
図10に示すタイミングチャートでは、第1の場合は、時刻t0から時刻t1までの状況に相当する。第1の場合では、制御部81は、温度センサ85L(85)からの「低温モード」の出力信号に基づいて、ペルチェ素子ユニット31の冷却面32での吸熱温度を、高温状態に設定する。また、第2の場合は、時刻t1から時刻t2までの状況に相当する。第2の場合では、制御部81は、温度センサ85L(85)からの「中温モード」の出力信号に基づいて、ペルチェ素子ユニット31の冷却面32での吸熱温度を、中温状態に設定する。また、第3の場合は、時刻t2以降の状況に相当する。第3の場合では、制御部81は、温度センサ85L(85)からの「高温モード」の出力信号に基づいて、ペルチェ素子ユニット31の冷却面32での吸熱温度を、低温状態に設定する。
なお、貯留部50に温度センサ85を配設していない冷却衣服1の場合、その着用者が、制御ユニット80の操作部82を手動で操作して、ペルチェ素子ユニット31の冷却面32での吸熱温度に対し、3段階(低温状態、中温状態、高温状態)の中から所望の温度状態を選択しても良い。
次に、熱交換部30の役割について、図11を用いて詳細に説明する。図11は、実施形態に係る冷却衣服において、冷却物質入りペットボトルと共に、ペルチェ素子ユニットの冷却面で冷却流体を冷やす様子を模式的に示す説明図である。
図11に示すように、冷却流体循環経路2では、循環経路をなす管路71全体の流路を含んだ上で、貯留部50の内部空間50Sに貯留できるよう、冷却流体N(水等)が貯留部50に充填される。また、冷却物質M(水や飲料水等)を凝固させた状態(または、例えば、零度に近い低温に冷やされた液体状態)の冷却物質入りペットボトル90Xが、図6、図8、及び図11に示すように、立ち姿勢により、貯留した冷却流体Nに浸漬した状態で、貯留部50の内部空間50Sに収容されてから、冷却衣服1は使用される。
内部空間50Sに貯留した冷却流体Nは、図2~図4に示すように、ポンプ74により、流出部73から管路71内の流路に継続的に送出される。冷却流体Nは、管路71内の流通を経て、再び貯留部50の内部空間50Sに還流される。このとき、冷却流体N(水)は、当該冷却衣服1の着用者の身体から熱を奪って、流入部72から内部空間50Sに還流されているため、流出部73の送出時の水温に比べ、高温化している。
高温化した冷却流体Nは、図6、図8、及び図11に示すように、流入部72から内部空間50Sに流入後、冷却物質入りペットボトル90Xの外周面90aと接触しながら内部空間50Sを流通する。そのため、高温化した冷却流体Nは、ポンプ74による送出流量を維持したまま、冷却物質入りペットボトル90Xの外周面90aを介して、冷却物質Mとの間で熱交換を行うことにより、冷却されて低温化し、冷却衣服1の着用者にとって、快適さを感じる適温に調整される。内部空間50Sで低温化した冷却流体Nは、管路71に向けて流出部73から送出され、着用者を持続的に冷やすことができている。
しかしながら、冷却物質入りペットボトル90Xの内部では、図11に示すように、凝固していた冷却物質M(氷等)は、経時的に融解して、融液(液体)である冷却融解物質K(水等)に変化してしまう。冷却物質Mが、凝固状態から融液状態に相変化後、冷却融解物質Kの温度は次第に上昇していくため、高温化した冷却流体Nに対し、冷却融解物質Kによる冷却効果は、相変化前の冷却物質Mに比べ、徐々に低下する。それ故に、冷却衣服1では、冷却物質Mが融解し始めて以降、着用者への効果的な冷却ができなくなる。
このような冷却物質Mの融解により、着用者を効果的に冷却できなくなる場合や、冷却物質入りペットボトル90X(冷却物質M)で冷却流体Nを冷却しない場合等で、熱交換部30は、高温化している冷却流体Nを貯留部50の内部空間50Sで冷やす。すなわち、図6、図8、及び図11に示すように、熱交換部30は、高温化して流入部72から貯留部50の内部空間50Sに流入した冷却流体Nを、ペルチェ素子ユニット31のペルチェ素子による吸熱に基づき、熱交換を伴って低温化することにより、流入部72側より温度を下げた状態の冷却流体Nが、貯留部50の内部空間50Sから流出部73を経て、冷却流体循環経路2の管路71に流出される。
図10及び図11に示すように、特に冷却物質Mが融解し始めて以降、ペットボトル90内で冷却物質Mと冷却融解物質Kが共存した状態になっている場合や、冷却融解物質Kだけの状態になっている場合に、熱交換部30では、ペルチェ素子ユニット31による吸熱が行われる。具体的には、高温化している冷却流体Nが、流入部72から貯留部50の内部空間50Sに流入し、内部空間50Sから流出部73を通じて管路71に向けて送出されるとき、流入部72から流入した直後で高温状態にある冷却流体Nは、図10に示す細斜線図示入り矢印のように、一例として、10℃を下回る温度下になっている冷却面32に沿う流れで、この冷却面32を通過する。
冷却面32を通過した冷却流体Nは、冷却面32との接触で冷却されて低温化しており、図10中、大クロス図示入り矢印と粗斜線図示入り矢印に示すように、ペットボトル90の外周面90aに沿う周方向の流れを伴いながら、図10に示す小クロス図示入り矢印に示すように、流出部73に向けて流れ、管路71に向けて流出部73から送出される。
かくして、冷却物質入りペットボトル90Xで冷却物質M(氷等)の融解に起因して、冷却流体Nへの冷却効果が低下した場合でも、ペットボトル90内の冷却融解物質Kに代えて、熱交換部30では、ペルチェ素子ユニット31の冷却面32に呈する吸熱により、高温化している冷却流体Nが、冷却されて低温化する。また、元々冷却物質入りペットボトル90Xを用いず、冷却物質M(氷等)で冷却流体Nを冷さない場合でも、熱交換部30では、高温化している冷却流体Nが、ペルチェ素子ユニット31の冷却面32に呈する吸熱により、冷却されて低温化する。
なお、冷却物質入りペットボトル90Xを用いた場合に、ペットボトル90内が、凝固した冷却物質Mで満たされ、冷却物質Mが融解していない状態であっても、熱交換部30を作動して、内部空間50Sの冷却流体Nが、冷却物質入りペットボトル90Xの冷却物質Mと共に、ペルチェ素子ユニット31の冷却面32の吸熱により、冷却されても良い。このような冷却衣服1の使い方であれば、冷却物質Mの融解が、ペルチェ素子ユニット31によって抑制され、冷却衣服1では、着用者を快適な温度に冷却できる持続時間を、より長くすることができる。但し、ペルチェ素子ユニット31では、冷却面32での吸熱温度が零℃以下にする必要がある。
次に、本実施形態に係る冷却衣服1の作用・効果について説明する。
本実施形態に係る冷却衣服1は、ポンプ74により冷却流体Nを循環させる管路71に、ペルチェ素子ユニット31により該冷却流体Nとの間で熱交換可能な熱交換部30を配設してなる冷却流体循環経路2を、衣服本体10に備えた冷却衣服において、冷却流体Nを貯留可能な有底袋状の貯留部50を有し、冷却流体循環経路2は、管路71に対し、一端側の流入部72と他端側の流出部73をそれぞれ貯留部50内に連通可能に接続し、ポンプ74により、貯留部50に貯留された冷却流体Nを、熱交換部30を経て、流出部73より管路71に循環させ、流入部72から貯留部50内に還流させる系統で、衣服本体10の内面10a側に配されていること、熱交換部30は、ペルチェ素子ユニット31で吸熱下になる冷却面32を、貯留部50の内部空間50Sに向けた配置態様の下、冷却面32の反対側にある放熱面33で生じる発熱Houtを、衣服本体10の外面10b側から大気中に放熱可能に配設されていること、流入部72と熱交換部30は、いずれも貯留部50の底52側に設けられ、熱交換部30が、高温化して流入部72から貯留部50に流入した冷却流体Nを、ペルチェ素子ユニット31での吸熱に基づく熱交換を伴って低温化することで、流入部72側より温度を下げた状態の冷却流体Nが、貯留部50から流出部73に流出されること、を特徴とする。
この特徴により、冷却流体N(水)は、冷却流体循環経路2を常に循環しているが、貯留部50の内部空間50Sでは、既に貯留されている冷却流体Nが、例えば、十数℃より低い温度下になっているペルチェ素子ユニット31の冷却面32により、身体を効果的に冷やす温度(水温)まで冷却されている。そのため、当該冷却衣服1の着用者の身体から熱を奪い、一例として25~30℃近傍まで高温化した状態の冷却流体Nが、流入部72から貯留部50の内部空間50Sに還流されても、貯留部50の内部空間50Sで、既にペルチェ素子ユニット31の冷却面32によって、一例として10℃を下回る温度まで低温化された状態の冷却流体Nが、常に流出部73から管路71に送出される。それ故に、着用者が、冷却衣服1の使用開始以降、冷却流体Nが、貯留部50の内部空間50Sを含む冷却流体循環経路2を繰り返し循環している間、流出部73から管路71に送出される冷却流体Nは、ペルチェ素子ユニット31の冷却面32により、着用者にとって快適さを得られる温度(例えば、十数℃)に常に低温化できていることから、冷却衣服1は、より長い時間、着用者の身体を持続的に冷却し続けることができる。
ところで、例えば、高層ビル建設現場での作業や、送電線用鉄塔等の構造物で高所作業を行う作業者等が、冷却衣服1を使用することも想定される。このような作業者は、高所にある作業現場に一旦移動すると、一般的には、作業中、ほとんど地上と行き来をせず、高所の作業現場に、比較的長時間に亘り留まり続ける傾向にある。このような作業者が、冷却衣服1のような冷却衣服をする場合、循環する冷却水により、着用者の身体を効果的に冷却できている冷却持続時間が短いと、冷却衣服を着た作業者が、炎天下で高所の作業現場にいる間に、十分な冷却効果を身体に得られないまま、やむを得ない状況下で作業を継続しなければならず、作業者には不快感が生じてしまう。
これに対し、冷却衣服1は、冷やした冷却流体N(水)を持続的に循環させ、より長い時間、効果的に身体を冷やすことができる。そのため、高所作業を行う作業者等が、冷却衣服1を着用して作業を行っている間、冷却衣服1による冷却効果を途中で失うことはなく、快適さを維持しながら作業を終えることが可能になる。それ故に、作業者等にとって冷却衣服1の使い勝手は良い。
従って、本実施形態に係る冷却衣服1によれば、着用者に対し、より長い時間、持続的に冷却効果をもたらすことができている、という優れた効果を奏する。
また、本実施形態に係る冷却衣服1では、当該冷却衣服1は、凝固可能な物性の冷却物質Mを貯留部50の内部空間50Sに収容した状態の下、冷却流体Nを冷却物質Mで冷やして使用するものであること、を特徴とする。
この特徴により、冷却流体Nは、ペルチェ素子ユニット31の作動ON/OFF状態に拘わらず、貯留部50の内部空間50Sに貯留している間に、冷却物質Mで冷すことができているため、冷却流体循環経路2には、着用者にとって快適な温度に低温化した冷却流体Nが、流動するようになる。
また、本実施形態に係る冷却衣服1では、貯留部50は、冷却物質Mをペットボトル90内に収容した状態にある冷却物質入りペットボトル90Xを、出し入れ自在な態様で収容可能であり、冷却流体循環経路2では、貯留部50に貯留された冷却流体Nが、冷却物質入りペットボトル90Xとの接触を介して、流出部73より管路71を経て、流入部72から貯留部50に還流されること、当該冷却衣服1は、貯留部50内に貯留された冷却流体Nに、冷却物質入りペットボトル90Xを浸漬した状態で、使用するものであること、を特徴とする。
この特徴により、貯留部50の内部空間50Sに貯留した高温化状態の冷却流体Nは、ペットボトル90内の冷却物質Mとの熱交換により、冷却されて低温化すると共に、ペルチェ素子ユニット31の冷却面32に呈する吸熱Hinで冷却されて低温化する。それ故に、貯留部50の内部空間50Sを含む冷却流体循環経路2では、着用者が冷却衣服1の使用を開始すると、冷却流体Nは当初、冷却物質Mから熱を奪われて冷却されるが、冷却物質Mの融解により、冷却流体が、一例として20℃を上回る高温まで上昇しても、ペルチェ素子ユニット31の冷却面32に呈する吸熱Hinで冷却される。そのため、冷却衣服1の使用中、冷却流体Nは常時、貯留部50の内部空間50Sを含む冷却流体循環経路2を循環している間、身体を効果的に冷やす温度に保たれ易くなっており、冷却衣服1による持続的な冷却効果は、経時的に安定している。
また、本実施形態に係る冷却衣服1では、ペルチェ素子ユニット31の冷却面32を、貯留部50の内部空間50Sをなす壁部51に取り付けて形成されていること、を特徴とする。
この特徴により、貯留部50の内部空間50Sに貯留した冷却流体Nは、ペルチェ素子ユニット31の冷却面32に呈する吸熱Hinに対し、熱伝導のロスを抑えて、より短い時間で効率良く冷却される。
また、本実施形態に係る冷却衣服1では、電気的に制御可能な制御ユニット80を備え、制御ユニット80は、ペルチェ素子ユニット31の冷却面32に呈する吸熱Hinの温度を、3段階に分けて可変できること、を特徴とする。
この特徴により、制御ユニット80は、吸熱Hinの温度を、冷却流体Nの温度に応じて、適切に調整することで、ペルチェ素子に対し、出力時に無駄な消費電力を伴わずに、電力を供給することができるようになる。
また、本実施形態に係る冷却衣服1では、貯留部50に貯留した冷却流体Nの温度を検知可能な温度センサ85有し、制御ユニット80は、温度センサ85の出力信号で得られる冷却流体Nの状態に応じて、ペルチェ素子ユニット31の冷却面32に呈する吸熱Hinの温度を調節できること、を特徴とする。
この特徴により、制御ユニット80は、高温化した冷却流体Nの温度に応じて、ペルチェ素子の出力を制御して、冷却面32に呈する吸熱Hinの温度を可変させることができる。そのため、電源部は、より長い時間にわたって、電力をペルチェ素子に供給し続けることができるようになり、冷却流体Nの温度に応じて吸熱Hinの温度調節を可変させると、吸熱の温度を可変させない場合に比べ、着用者を効果的に冷却できる持続時間を、例えば、2~3倍程、長くすることが可能になる。
また、本実施形態に係る冷却衣服1では、貯留部50は、衣服本体10の外面10bに形成された包囲部57で被覆され、包囲部57には、放熱面33を外気Arと接触可能に形成された排熱部58が設けられていること、を特徴とする。
この特徴により、放熱面33で生じる数十℃程の発熱が、冷却衣服1の着用者の背中側から後方に放たれるため、着用者は、放熱面33での発熱による影響をほとんど受けることなく、冷却衣服1は、着用者への快適性を損なわない。
また、本実施形態に係る冷却衣服1では、衣服本体10は、着用者上体に装着するベストであること、を特徴とする。
この特徴により、冷却衣服1は、着用者への身動きを大きく損なうことなく、冷却流体循環経路2を循環する冷却流体Nにより、特に暑さを感じる首筋や頚椎付近、及び脇の下にある動脈等を含め、着用者上体をくまなく、効果的に冷やすことができる。
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できる。
例えば、実施形態では、ベストの形態で形成した冷却衣服1を挙げたが、本発明に係る冷却衣服は、実施形態に限定されるものではなく、例えば、長袖の上着、ジャケット等、種々変更可能である。
また、実施形態では、貯留部50の壁部51に、ペルチェ素子ユニット31の冷却面32を直に取り付けて、シール部39により壁部51と冷却面32とを液密な状態とした。しかしながら、貯留部50の内部空間50Sに熱交換部30を装着するにあたり、ペルチェ素子の冷却面32に密着させた金属製の伝熱部材が、貯留部50の壁部51に液密な状態で取付けられていても良い。この場合には、伝熱部材は、例えば、銅、アルミニウム等、金属の中でも、熱伝導率の高い材質で形成されていることが好ましい。冷却面32で吸熱する熱の損失が、より小さく抑制できるからである。
また、実施形態では、冷却物質M(水や飲料水等)をペットボトル90内に収容した状態の冷却物質入りペットボトル90Xで、冷却流体N(水)を冷やす冷却衣服1を挙げた。しかしながら、冷却物質は、氷のほか、いわゆる保冷剤として、例えば、酢酸ナトリウム三水和物に挙げられる酢酸塩水和物等を主成分に添加剤を加えて、潜熱蓄熱材の凝固点を零度近傍に調整された潜熱蓄熱材組成物であっても良く、このような潜熱蓄熱材組成物が、袋詰めされた状態で、貯留部の内部空間に収容されていても良い。
また、実施形態では、冷却衣服1の外形を、図1~図4に示す形状としたが、冷却衣服1の外形形状は、実施形態に限定されるものではなく、適宜変更可能である。また、冷却流体循環経路2をなすチューブの配置態様についても、実施形態に限定されるものではなく、適宜変更可能である。
1 冷却衣服
2 冷却流体循環経路
10 衣服本体(ベスト)
10a 衣服本体の内面
10b 衣服本体の外面
30 熱交換部
31 ペルチェ素子ユニット(ペルチェ素子)
32 冷却面
33 放熱面
50 貯留部
50S 内部空間
51 壁部
52 貯留部の底
57 包囲部
58 排熱部
71 管路
72 流入部
73 流出部
74 ポンプ
80 制御ユニット(制御手段)
85 温度センサ(検知手段)
90 ペットボトル
90X 冷却物質入りペットボトル
M 冷却物質
N 冷却流体
Ar 外気
Hin 吸熱
Hout 発熱

Claims (8)

  1. ポンプにより冷却流体を循環させる管路に、ペルチェ素子により該冷却流体との間で熱交換可能な熱交換部を配設してなる冷却流体循環経路を、衣服本体に備えた冷却衣服において、
    前記冷却流体を貯留可能な有底袋状の貯留部を有し、
    前記冷却流体循環経路は、前記管路に対し、一端側の流入部と他端側の流出部をそれぞれ前記貯留部内に連通可能に接続し、前記ポンプにより、前記貯留部に貯留された前記冷却流体を、前記熱交換部を経て、前記流出部より前記管路に循環させ、前記流入部から前記貯留部内に還流させる系統で、前記衣服本体の内面側に配されていること、
    前記熱交換部は、前記ペルチェ素子で吸熱下になる冷却面を、前記貯留部の内部空間に向けた配置態様の下、前記冷却面の反対側にある放熱面で生じる発熱を、前記衣服本体の外面側から大気中に放熱可能に配設されていること、
    前記流入部と前記熱交換部は、いずれも前記貯留部の底側に設けられ、
    前記熱交換部が、高温化して前記流入部から前記貯留部に流入した前記冷却流体を、前記ペルチェ素子での吸熱に基づく熱交換を伴って低温化することで、前記流入部側より温度を下げた状態の前記冷却流体が、前記貯留部から前記流出部に流出されること、
    を特徴とする冷却衣服。
  2. 請求項1に記載する冷却衣服において、
    当該冷却衣服は、凝固可能な物性の冷却物質を前記貯留部に収容した状態の下、前記冷却流体を前記冷却物質で冷やして使用するものであること、
    を特徴とする冷却衣服。
  3. 請求項2に記載する冷却衣服において、
    前記貯留部は、前記冷却物質をペットボトル内に収容した状態にある冷却物質入りペットボトルを、出し入れ自在な態様で収容可能であり、
    前記冷却流体循環経路では、前記貯留部に貯留された前記冷却流体が、前記冷却物質入りペットボトルとの接触を介して、前記流出部より前記管路を通じて、前記流入部から前記貯留部に還流されること、
    当該冷却衣服は、前記貯留部内に貯留された前記冷却流体に、前記冷却物質入りペットボトルを浸漬した状態で、使用するものであること、
    を特徴とする冷却衣服。
  4. 請求項1または請求項2に記載する冷却衣服において、
    前記熱交換部は、前記ペルチェ素子の前記冷却面を、または前記冷却面に密着させた金属製の伝熱部材を、前記貯留部の内部空間をなす壁部に取り付けて形成されていること、
    を特徴とする冷却衣服。
  5. 請求項1または請求項2に記載する冷却衣服において、
    電気的に制御可能な制御手段を備え、
    前記制御手段は、前記ペルチェ素子の前記冷却面に呈する吸熱の温度を、複数の段階に分けて可変できること、
    を特徴とする冷却衣服。
  6. 請求項5に記載する冷却衣服において、
    前記貯留部に貯留した前記冷却流体の温度を検知可能な検知手段を有し、
    前記制御手段は、前記検知手段の出力信号で得られる前記冷却流体の状態に応じて、前記ペルチェ素子の前記冷却面に呈する吸熱の温度を調節できること、
    を特徴とする冷却衣服。
  7. 請求項1または請求項2に記載する冷却衣服において、
    前記貯留部は、前記衣服本体の前記外面に形成された包囲部で被覆され、前記包囲部には、前記放熱面を外気と接触可能に形成された排熱部が設けられていること、
    を特徴とする冷却衣服。
  8. 請求項1または請求項2に記載する冷却衣服において、
    前記衣服本体は、着用者上体に装着するベストであること、
    を特徴とする冷却衣服。
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