JP7368678B1 - Cd4+t細胞集団中の特定の細胞亜集団の相対量の測定方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】CD4+T細胞集団中の特定の細胞亜集団の相対量をより効率的に測定する方法およびそのためのキットを提供する。【解決手段】本発明は、被験体由来のサンプル中のCD4+T細胞集団中のCCR4-CCR6+細胞亜集団の相対量の決定方法であって、 前記CD4+T細胞集団中のCXCR3-細胞亜集団を選択する工程と、前記CXCR3-細胞亜集団において、CCR4-細胞亜集団とCCR4+細胞亜集団との境界を設定する工程と、前記境界を用いて、CD4+T細胞集団中のCCR4-CCR6+細胞亜集団の相対量を測定する工程とを包含する、方法を提供する。【選択図】なし

Description

本発明は、CD4T細胞集団中の医学的に重要な細胞亜集団の相対量の測定に関する。
CD4T細胞集団中には、いくつかの医学的に重要な細胞集団が存在することが知られている。例えば、CD4CD62Llow細胞亜集団や、CCR4CCR6細胞亜集団の相対量は、特に癌治療への応答性のために有用な、医学的に重要な細胞亜集団である(特許文献1、特許文献2)。
これらの細胞亜集団は、典型的には、末梢血を8ml以上採血し、採血した場所で遠心機等を用いて実験的な手技を持つ人がPBMC(末梢血単核細胞)まで分離して凍結してから、その凍結細胞を測定機関に輸送し、輸送後に必要に応じて保管した後に、培養して染色し、FACS測定が行われることによって分離される。
国際公開第2018/147291号 国際公開第2022/054796号
本発明は、CD4T細胞集団中の特定の細胞亜集団の相対量をより効率的に測定する方法およびそのためのキットを提供することを課題とする。
本発明者らは、CD4T細胞集団中のCCR4CCR6細胞亜集団の相対量を測定するために、まずCXCR3の細胞群を分離することが有利であることを見出した。
本発明者らはまた、全血サンプルによって首尾よくCD4T細胞集団中の特定の細胞亜集団の相対量を測定するための、好ましいサンプルの保管条件を見出した。
本発明は例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
被験体由来のサンプル中のCD4T細胞集団中のCCR4CCR6細胞亜集団の相対量の決定方法であって、
前記CD4T細胞集団中のCXCR3細胞亜集団を選択する工程と、
前記CXCR3細胞亜集団において、CCR4細胞亜集団とCCR4細胞亜集団との境界を設定する工程と、
前記境界を用いて、CD4T細胞集団中のCCR4CCR6細胞亜集団の相対量を測定する工程と
を包含する、方法。
(項目2)
前記サンプルは前記被験体の末梢血の全血サンプルまたは末梢血単核球(PBMC)サンプルである、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記サンプルは全血サンプルである、項目2に記載の方法。
(項目4)
前記サンプルは、前記被験体からの採取後1日以上保管されたものである、項目3に記載の方法。
(項目5)
前記サンプルは、前記被験体からの採取後1日~6日保管されたものである、項目4に記載の方法。
(項目6)
前記サンプルは、前記被験体からの採取後1日~3日保管されたものである、項目4に記載の方法。
(項目7)
前記サンプルは、約10℃~約40℃で保管されたものである、項目4に記載の方法。
(項目8)
前記サンプルは、約12℃~約25℃で保管されたものである、項目4に記載の方法。
(項目9)
前記サンプルは、約10μl~約500μlである、項目3に記載の方法。
(項目10)
被験体由来のサンプル中のCD4T細胞集団中のCCR4CCR6細胞亜集団の相対量の決定方法であって、
前記被験体の全血サンプルを用意する工程と、
前記全血サンプルのCD4T細胞集団中のCCR4CCR6細胞亜集団の相対量を測定する工程と
を包含する、方法。
(項目11)
前記サンプルは、前記被験体からの採取後1日以上保管されたものである、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記サンプルは、前記被験体からの採取後1日~6日保管されたものである、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記サンプルは、前記被験体からの採取後1日~3日保管されたものである、項目11に記載の方法。
(項目14)
前記サンプルは、約10℃~約40℃で保管されたものである、項目11に記載の方法。
(項目15)
前記サンプルは、約12℃~約25℃で保管されたものである、項目11に記載の方法。
(項目16)
前記サンプルは、約10μl~約500μlである、項目10に記載の方法。
(項目17)
CD4に対する検出剤、CCR4に対する検出剤、およびCCR6に対する検出剤を含む、項目1~16のいずれか一項に記載の方法において使用するためのキット。
(項目18)
CXCR3に対する検出剤をさらに含む、項目17に記載のキット。
(項目19)
前記検出剤が抗体である、項目16に記載のキット。
本発明によれば、CD4T細胞集団中の医学的に重要な細胞亜集団(例えば、CCR4CCR6細胞亜集団またはCD62Llow細胞亜集団)のより正確な測定が可能になる。
また、採血する場所が限られる問題(遠心機等があって手技のある人がいる)、およびPBMCまでの分離の上手な人材・機関とそうでないところの差が大きいという問題が解決され、採血場所での手間なく施設間で変動の少ないサンプル取得が可能になる。
図1は、全血およびPBMCのCXCR3ヒストグラムとCCR4 vs CCR6の散布図を示す。 図2は、全血の保存期間を変えた場合のCXCR3ヒストグラムとCCR4 vs CCR6散布図を示す。 図3は、温度、日数を変えて保存した場合のCD4 vs CD8の散布図を示す。 図4は、温度、日数を変えて保存した場合のCD4細胞に対するCD62Lのヒストグラムを示す。 図5は、温度、日数を変えて保存した場合のCD8細胞に対するCD62Lのヒストグラムを示す。 図6は、温度、日数を変えて保存した場合のTh7Rを示す。 図7は、温度、日数を変えて保存した場合のCD4細胞についてのCCR7とCD45RAの散布図を示す。 図8は、温度、日数を変えて保存した場合のCD8細胞についてのCCR7とCD45RAの散布図を示す。 図9は、全血、および保存全血からPBMC分離して凍結保存後に測定したものの比較を示す。 図10は、CD4細胞のCCR4、CCR6、およびCXCR3の発現を保存方法ごとに比較した図を示す。 図11Aは、CD4細胞についてのCCR6 vs CCR4散布図を示し、ゲートは示していない。 図11Bは、CD4CXCR3細胞についてのCCR6 vs CCR4散布図を示し、ゲートは示していない。 図11Cは、CD4細胞についてのCCR6 vs CCR4散布図を示し、ゲートも示している。 図11Dは、CD4CXCR3細胞についてのCCR6 vs CCR4散布図を示し、ゲートも示している。 図12は、自己微量採血検体のWB panel3染色の結果を示す。 図13は、ヒトCD4 T細胞のTh分化を表す模式図である。 図14は、末梢血CD4T細胞クラスターと、各区画に発現しているケモカインレセプターを表す模式図である。
以下、本開示を最良の形態を示しながら説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本開示の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
以下に本明細書において特に使用される用語の定義および/または基本的技術内容を適宜説明する。
本明細書において、「約」とは、後に続く数値の±10%を意味する。
本明細書において、「バイオマーカー」とは、通常の生物学的過程、病理学的過程、もしくは治療的介入に対する薬理学的応答の指標として、客観的に測定され評価される特性をいう。
本明細書において「がん」または「癌」は、互換可能に用いられ、異型性が強く、増殖が正常細胞より速く、周囲組織に破壊性に浸潤し得あるいは転移をおこし得る悪性腫瘍またはそのような悪性腫瘍が存在する状態をいう。本発明においては、癌は固形癌および造血器腫瘍を含み、例えば非小細胞肺癌、小細胞肺癌、腎癌、ホジキン病、頭頸部癌、乳癌、胃癌、悪性黒色腫、大腸癌、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、消化管間質腫瘍、膵神経内分泌種腫瘍、皮膚癌などを含むがそれらに限定されない。
本明細書において、「がん免疫療法」または「癌免疫療法」とは、生物の有する免疫機構などの生体防御機構を用いて癌を治療する方法をいう。
本明細書において、「抗腫瘍免疫応答」とは、生体内の腫瘍に対する任意の免疫応答をいう。
本明細書において、「相関」するとは、2つの事象が統計学的に有意な相関関係を有することをいう。例えば、「Aと相関するBの相対量」とは、事象Aが発生した場合に、Bの相対量が統計学的に有意に影響を受ける(例えば、増加ないし減少すること)ことをいう。
本明細書において、「細胞亜集団」とは、多様な特性の細胞を含む細胞集団中の、何らかの共通する特徴を有する任意の細胞の集合を指す。特定の名称が当技術分野で知られているものについては、かかる用語を用いて特定の細胞亜集団に言及することもでき、任意の性質(例えば、細胞表面マーカーの発現)を記載して特定の細胞亜集団に言及することもできる。
本明細書において、細胞に関する用語「相対量」は、「割合」と互換可能に使用される。代表的には、用語「相対量」および「割合」は、特定の細胞集団(例えば、CD4T細胞集団)を形成する細胞の数に対する、所期の細胞亜集団(例えば、CCR4CCR6細胞亜集団)を形成する細胞の数を意味する。
本明細書において、「相対値」とは、ある値について、他の値を比較の対象として算出される値をいう。
本明細書において使用される場合、用語「検出剤」とは、広義には、目的の物質(例えば、細胞表面マーカーなど)を検出できるあらゆる因子をいう。
本明細書において、ある細胞亜集団の「量」とは、ある細胞の絶対数と、細胞集団における割合の相対量とを包含する。
本明細書において「フローサイトメトリー」とは、液体中に懸濁する細胞、個体およびその他の生物粒子の粒子数、個々の物理的・化学的・生物学的性状を計測する技術をいう。フローサイトメトリーの結果は、代表的には、FSCをX軸に、SSCをY軸にとったドットプロットとして表現され得る。各細胞は図の中の一つのドット(点)で示されており、それらの位置は、FSCとSSCとの相対値によって決められる。比較的サイズが小さく内部構造が単純なリンパ球は左下部に、サイズが大きく内部に顆粒を持つ顆粒球は右上部に、またサイズは大きいが内部構造が単純な単球はリンパ球と顆粒球の間に、それぞれお互いに分離した集団を作って表示される。またフローサイトメトリーの結果は、ヒストグラムやドットプロットなどで表すことができる。
本明細書において「被験体」とは、任意の動物であり得、典型的には哺乳動物である。哺乳動物は、限定しないが、家畜動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、及びウマ)、霊長類(例えば、ヒト、及びサルなどの非ヒト霊長類)、ウサギ、及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)を含む。特定の実施態様において、被験体はヒトである。
本明細書において、「癌治療」とは、癌患者に対して腫瘍を除去または縮小させるために行われる任意の治療を指し、がん免疫療法、放射線療法、分子標的薬治療、外科的手術、細胞移入、またはこれらの治療の任意の組み合わせなどを含むがこれらに限られるものではない。
(Th7R)
本明細書において、「エフェクター細胞」とは、抗原刺激を受けていないナイーブ細胞が分化して実際に免疫に関わる働きを得た免疫細胞をいい、特にヒトのヘルパーT細胞では主にTh1、Th2、Th17の3種類が知られている。それぞれインターフェロンγ(IFNγ)やインターロイキン17(IL-17)など特徴的なサイトカインを放出することができる。またTh1はT-betを、Th2はGATA-3を発現するなど、各Thサブセットに特徴的な転写因子が存在するが、T-betとGATA-3の両方を発現している細胞も存在し、そのような細胞は「Th1/Th2」または「Th1/2」と表現される。本明細書において「Th1/Th17」または「Th1/17」はTh1に特徴的なT-betと、Th17に特徴的なRORγtの両方を発現している。
またTh1、Th2、Th17などのエフェクター細胞は、発現するケモカインレセプター(CCR)の種類によっても分類することができ、例えばTh1はCXCR3を、Th2はCCR4を、Th17はCCR4及びCCR6を、それぞれ発現している。Thサブセットの分類は例えば図13(Annual Review of Immunology,Vol.34:317-334 Heterogeneity of Human CD4 T Cells Against Microbes,Fig.1)のように表すことができる。本明細書において「Th1/Th17」または「Th1/17」はTh1に特徴的なCXCR3と、Th17に特徴的な2つのCCRのうちCCR6を発現している。また本明細書において、CCR6 SP(Single positive)とは、CCRによるThタイプ分類において従来は分類されていなかったタイプであり、CCR4、CCR6、及びCXCR3のうちCCR6のみを発現するThサブセットである。また本明細書において、TP(Triple positive)とは、CCRによるThタイプ分類において従来は分類されていなかったタイプであり、CCR4、CCR6、及びCXCR3の3つを発現するThサブセットである。
国際公開第2022/054796号において、Thクラスターの中でも、Th1/17とCCR6 SP CD4T細胞クラスターが無増悪生存期間と高い相関を示すことがわかった。各区画に発現しているケモカインレセプターを図にまとめたものが図14である(国際公開第2022/054796号の図17に対応)。この図からも明らかなとおり、破線で囲っている部分がCD62Llowの細胞集団であり、この中には、ケモカインレセプターの発現が異なる4つのクラスター(C、D、E、H)が存在することがわかる。この中の区画DがCXCR3CCR4CCR6で表されるTh1/17であり、区画HがCXCR3CCR4CCR6で表されるCCR6 SPである。
本明細書において「Th7R」とは、Th1/17細胞亜集団(CD4CXCR3CCR4CCR6)と、CCR6 SP細胞亜集団(CD4CXCR3CCR4CCR6)とを組み合わせた細胞亜集団である。血中Th7R細胞亜集団は、全身性免疫を司っているものと考えられ、例えば、癌免疫療法の効果予測、特に免疫チェックポイント阻害剤(抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗CTLA-4抗体等)の効果予測、化学放射線治療、または分子標的薬(例えば、上皮成長因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼ阻害剤)治療等の癌治療に対する応答予測に使用できる他、B型肝炎患者、クラミジア肺感染症マウスモデル、日和見感染症患者、デング熱患者、アセチルコリン抗体陽性重症筋無力症患者に見られるなど、医学的に重要な細胞亜集団である。
このように、Th7RはCXCR3細胞亜集団とCXCR3細胞亜集団の双方を包含する概念であるため、CD4細胞亜集団の中のTh7R細胞の割合を測定する際には、基本的にはCXCR3が発現されているかどうかを測定することは必須ではない。しかしながら、本明細書に開示されるとおり、CXCR3細胞亜集団に対してCCR4のゲーティングを行うことにより、CXCR3について発現を確認せずにCD4細胞全体に対してCCR4のゲーティングを行う場合よりも明確にゲートを決定することができた(実施例5参照)。したがって、Th7R細胞亜集団を測定する際には、
1.CD4T細胞集団中のCXCR3細胞亜集団を選択し、
2.CXCR3細胞亜集団において、CCR4細胞亜集団とCCR4細胞亜集団との境界を設定(ゲーティング)し、
3.設定された境界(ゲート)を用いて、CD4T細胞集団中のCCR4CCR6細胞亜集団の相対量を測定する、
という一連の工程が好ましいことが本発明によって明らかになった。
(癌)
本発明において対象とされる癌としては、メラノーマ(悪性黒色腫)、非小細胞肺癌、腎細胞癌、悪性リンパ腫(ホジキンリンパ腫または非ホジキンリンパ腫)、頭頸部癌、泌尿器科癌(膀胱癌、尿路上皮癌、前立腺癌)、小細胞肺癌、胸腺癌、胃癌、食道癌、胃食道接合部癌、肝癌(肝細胞癌、肝内胆管細胞癌)、原発性脳腫瘍(膠芽腫、中枢神経系原発リンパ腫)、悪性胸膜中皮腫、婦人科癌(卵巣癌、子宮頸癌、子宮体癌、)、軟部肉腫、胆道癌、多発性骨髄腫、乳癌、大腸癌などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
(全血サンプル)
T細胞の分画・分離のためのサンプルは、常法によって、被験体から適切に採取することができる。例えば、被験体の末梢血、骨髄、腫瘍組織、造血組織、脾臓、正常組織、リンパ液等から行うことができる。末梢血からのサンプル採取は、非侵襲的で簡便であるため、有利であり得る。
本発明においては、末梢血由来の全血サンプルまたはそこから調製されたPBMCサンプルが使用され得、好ましくは全血サンプルが使用され得る。全血サンプルは、抗凝固剤入採血管で採血され得る。本発明においては、当該分野で公知の任意の抗凝固剤を使用することができるが、好ましくはヘパリン、EDTA、クエン酸ナトリウム、ACD-Aなどであり、より好ましくはヘパリンであり得る。
本明細書の実施例から明らかなように、測定する対象の細胞マーカーによって全血サンプルの好ましい保管条件は変動し得る。Th7Rについては、広範な温度帯で、また長期間保管しても測定結果の変動が少なかった。したがって、CD4細胞中のTh7Rを測定する場合には、全血サンプルを約10℃~約40℃で、より好ましくは約12℃~約25℃で保管することができる。また、Th7Rを測定する場合には、約12℃~約25℃で保管した場合、全血サンプルを採血から1週間以内(好ましくは6日以内、より好ましくは採血から3日以内)であれば十分に測定することができ、これは以下に説明する他のマーカーの場合と比較すれば予想外である。また、採血後ただちに測定が行えるかどうかは採血場所や採血施設に依存するため、採血の直後でなく1日以上経過した後にも安定して測定を行うことができる点は利点であり得る。従って、本発明において、Th7R測定のための全血サンプルの保管期間は、例えば1日~1週間、1日~6日、1日~3日等であり得る。
CD4細胞中のCD62Llowを測定する場合には、Th7Rの場合よりも高い温度帯の方が好ましいことが分かった。具体的には、CD62Llowを測定する場合には、全血サンプルを約15℃~約40℃、より好ましくは約18℃~約37℃で保管することができる。また、CD62Llowを測定する場合には、約18℃~約37℃で保管した場合、全血サンプルを採血から1週間以内(好ましくは採血から3日以内)であれば十分に測定することができる。また、採血後ただちに測定が行えるかどうかは採血場所や採血施設に依存するため、採血の直後でなく1日以上経過した後にも安定して測定を行うことができる点は利点であり得る。従って、CD4細胞中のCD62Llowを測定するための全血サンプルの保管期間は、例えば1日~1週間、1日~6日、1日~3日等であり得る。
特定の実施形態において、Th7R・CD62Llow細胞亜集団の割合を測定することが有利であり得る。その場合には、約18℃~約25℃で保管することにより、採血から1週間以内(好ましくは採血から3日以内)であれば十分に測定することができる。従って、Th7R・CD62Llow細胞亜集団を測定するための全血サンプルの保管期間は、例えば1日~1週間、1日~6日、1日~3日等であり得る。
他方、CD4細胞中のCCR7は採血から2日を超えると、採血直後のサンプルにおける測定結果からの変動が大きくなるため、CD4細胞中のCCR7を測定する場合には、全血サンプルの3日以上の保管に適さないことが分かった。2日までであれば保管温度は18℃~25℃が安定していた。
CD8+細胞については、CD8の蛍光強度の強さが安定しているのは2日が限度であった。2日以内の短期間においては、18~25℃の温度が適していた。
このように、細胞の種類や測定対象とするマーカーの種類によって、全血サンプルの保管温度や保管可能期間は変動するが、Th7Rについては予想外に広範な温度範囲(約10℃~約40℃で、より好ましくは約12℃~約25℃)で長期(1週間以内、好ましくは6日以内、より好ましくは採血から3日以内、例えば1日~1週間、1日~6日、1日~3日等)保管することができることが明らかになった。
全血サンプルの採血量は当該分野で一般的に実施されている量を採用することができるが、典型的には約16ml以下などである。しかしながら、本明細書の実施例6に示されているように、100μl程度の微量であっても、Th7Rの測定は安定して達成することができた。この量であれば、被験体自身で採血ができることになり、被験体への負担も小さいため有利である。そのため、本発明の好ましい実施形態において、全血サンプル量は約10μl以上、約50μl以上、より好ましくは約100μl以上であり、そして約500μl以下、より好ましくは約200μl以下であり、好ましくは約100μl~150μlであり得る。本発明の全血サンプル採取のために使用可能なキットとしては、MBSキャピラリー(ヘパリンリチウム、100-150μl採取ライン)(株式会社マイクロブラッドサイエンス)、微量採血管ヘパリンリチウム(分離剤なし)250μ「マイクロヘルスチューブ」(株式会社ヘルス・ウェーブ・ジャパン)、キャピジェクトII(テルモ)、BDマイクロテイナ(登録商標)微量採血管BDマイクロガードTMキャップ付きなどが挙げられるが、これらに限定されない。
これまでTh7Rの特定のためには、医療従事者が採血し、直ちにPBMCに分離してから、必要に応じて凍結保存し、測定する場所に検体を輸送していた。この場合、採血した場所において安全キャビネット、冷却遠心分離機、超低温冷凍機が、測定場所において安全キャビネット、冷却遠心分離機、CO2培養器、超低温冷凍機、液体窒素タンク等の専門的な設備が必要であった。採血した場所で測定するとしても、安全キャビネットと冷却遠心分離機は必要であったし、測定に用いた残りを保存するのであれば超低温冷凍機と液体窒素タンクも必要であった。ところが、本発明のように全血サンプルを用いることができる場合、採血した場所で測定するのであれば、微量遠心分離機のみでよい。全血サンプルを用い、その後測定施設にサンプルを輸送するのであれば、採血場所において装置は不要である。このことは、従来の方法に比較して顕著な利点を有する。
比較例に示すように、抗凝固処理血液に安定化剤を加えて細胞を固定化した場合にはCD4やCXCR3の検出に問題があったため、本明細書において全血サンプルにおいて見いだされたTh7Rの効率的な測定法は予想外に有利であった。
好ましい実施形態において、全血サンプルはフローサイトメーター等の測定機器による測定の前に、溶血処理や遠心操作の一方または両方を行わない。全血サンプルにおける白血球(本発明においてはT細胞)の解析においては、大量に存在する赤血球のデータの漏れこみが問題となり得る。多くの場合、赤血球を除去するために、溶血処理や遠心操作を行うが、それらの操作は煩雑であり、また細胞へのダメージやロス、凝集を起こすことがあり得る。本発明においては、血液を溶血も洗浄もせず簡単に血液を測定する方法(No-Wash,No-Lyse法)を用いても良い。No-Wash,No-Lyse法においては、全血を分注(5~10μl程度)し、抗体反応を行い、バッファーで希釈したのちに測定を行う。測定においては、バイオレットレーザーを使用し白血球を分離してもよいし、トリガー染色で白血球を分離してもよい。
例えば、ブルーレーザーとバイオレットレーザーの側方散乱光(Side Scatter: SSC)を同時に使用することで、全血サンプルから白血球を分離することが可能である。白血球と赤血球ではバイオレットレーザーにおいて、異なる散乱特性があり、赤血球はバイオレットレーザーの光を吸収するために、白血球に比べ光強度が低くなる。
あるいは、白血球とその他の細胞を区別する染色を行うことで、全血サンプルから白血球を分離することが可能である。白血球マーカーであるCD45抗体や各細胞群特異的なマーカーを使用することで、赤血球などをゲートアウトできる。また赤血球や血小板は核を持たないことから、生きたまま核を特異的に染色できる細胞透過性色素(InvitrogenTM、VybrantTM、DyeCycleTM色素など)を使用することで、白血球だけを特異的に染色できる。
(PBMC)
Th7R等の細胞亜集団を測定する場合、採血から細胞の分画・測定までに長期間(例えば1週間超)が要される場合には、PBMCを単離して凍結し、それを細胞の分画・測定の際に融解し、必要に応じて培養して使用することができる。この際に、本明細書の実施例5に示されるとおり、全血採取後に時間が経過したあとにPBMC分離を行うと、Th7Rの測定には好ましくない。したがって、本発明においては、単離PBMCからTh7R等の細胞マーカーの測定を行う場合には、採血後3時間以内に、より好ましくは2時間以内にPBMC単離を行い、それを凍結保存することが好ましい。
PBMCの単離および凍結保存は、当該分野で公知の方法によって行うことができ、例えばバキュティナスピッツTMを用いて単核球を分離し、液体窒素を用いて凍結保存することができる(実施例1を参照のこと)。
(細胞の分画・分離)
CXCR3CCR4CCR6T細胞亜集団や、CXCR3CCR4CCR6 T細胞亜集団等の細胞亜集団のそれぞれの細胞数を計測するには、全体の細胞からそれぞれの細胞の亜集団以外の細胞を実験的に除いておいて求めてもよい。例えば、CD4 Effector Memory T cellアイソレーションキット、ヒト(Militenyi Biotech社)などのように、所定の抗体を用いることなく、末梢血から目的のT細胞亜集団に相当する細胞を分離してもよい。例えば、CD4 Effector Memory T cellアイソレーションキット、ヒト(Militenyi Biotech社)を用いると、CD4抗体とCD62L抗体を用いずに、末梢血からCD4CD62Llow T細胞亜集団に相当する細胞を分離することができる。全体の生細胞数を数えて記録しておき、またこのキットを用いて得られた細胞数を数え、記録することができる。同様なキットとして、CD4+CD25+CD127dim/-Regulatory T cellアイソレーションキット、ヒト(Militenyi Biotech社)、CD25CD49d-Regulatory T cellアイソレーションキット、ヒト(Militenyi Biotech社)も選択できる。本発明の一実施形態においては、目的のT細胞亜集団のそれぞれの細胞数を計測することができるものであれば、いずれのキットも使用できる。
また、抗体を用いなくてもよい。抗体は、個々の細胞に発現している分子を特異的に認識して結合できるものであって、さらに抗体が細胞表面上、または細胞内で発現している分子に結合しているときに発色できるようにして検出し、発色している細胞の数を計測する。ここで、それらの細胞表面上、または細胞内で発現している分子はタンパク質であるので、そのタンパク質を発現している場合にはそれをコードしているmRNAも細胞内にできている。すなわち、個々の細胞内のmRNAを調べて、注目しているタンパク質分子をコードしているmRNAの有無を調べればよい。これを可能にしているのが、シングル・セルの遺伝子発現解析、つまり1細胞レベルのmRNA解析である。単細胞の遺伝子発現解析としては、たとえば、1)Quartz-Seqにより次世代シーケンシングを行う方法、2)Fluidigm C1 SystemやICELL8 Single-Cell Systemを用いて細胞を単離してSMART-Seq v4でライブラリー調製する方法、3)セルソーターで細胞を分離し、Ambion Single Cell-to-CTキットを用い定量PCRで計測する方法、4)CyTOF SYSTEM(Standard Biotools社)などが挙げられる。
すなわち、血液を取得し、生細胞数を数え、セルソーター等で細胞を分離する。分離した個々の細胞に対し、例えば、Ambion Single Cell-to-CTキットを用い、特定の遺伝子について発現量を定量PCR法の装置で計測することができる。その結果に基づいて、個々の細胞がCXCR3CCR4CCR6 T細胞亜集団や、CXCR3CCR4CCR6T細胞亜集団のどの亜集団に該当するかを調べて、それぞれの亜集団に該当した細胞の数を数えることもできる。
本発明における、細胞亜集団の割合の測定、または基準値や閾値との比較は、規定されたシグナルを有する標準サンプルを用いて行ってもよい。所定の細胞亜集団に対応する蛍光シグナルを生じるように調製された標準(例えば、蛍光色素を付着させた粒子)と、細胞集団を含むサンプルとの間でのシグナルを比較し、標準との比較によって、サンプル中の細胞亜集団の量または割合を測定することができる。また、所定の基準値や閾値に対応する蛍光シグナルを生じるように調製された標準(例えば、蛍光色素を付着させた粒子)と、細胞集団を含むサンプルとの間でのシグナルを比較し、標準との比較によって、サンプル中のT細胞組成における本発明のマーカーの有無もしくは量を判定することが可能である。
本発明において、特定のマーカーについて、high(高発現)またはlow(低発現)を判定する場合、当業者は、当技術分野で一般的に用いられている発現強度の分類基準を用いて行うことができる。例えば、CD62Lについて、PE標識抗ヒトCD62L抗体を用いた場合の10E2のシグナルに対応するシグナル強度を境界として、CD62LlowとCD62Lhighとを明瞭に分割することが可能である(WO2018/147291)。
本発明の一実施形態において、当業者は、示される細胞の表面マーカーを適切に識別して、細胞を分画または計数することが可能である。
本明細書において「フローサイトメトリー」とは、液体中に懸濁する細胞,個体およびその他の生物粒子の粒子数,個々の物理的・化学的・生物学的性状を計測する技術をいう。フローサイトメトリー技術を用いて種々の細胞の解析が行われるようになっている。特に、血液細胞の分化の判定が、フローサイトメトリー技術により可能となっている。このような分化判定は、研究用のほか診断にも利用されはじめている。フローサイトメトリーの利点としては、例えば、芽球の占める割合を把握しやすいこと、特異性および感度が高いこと、再現性が高いこと、多数の細胞を解析することができること、所要時間が短いことなどが挙げられる。
この技術を用いた装置は、「フローサイトメーター」という。フローサイトメーターは、細胞の均一な浮遊液より、浮遊物(細胞)の光学特性を測定する機器である。細胞は液流に乗ってレーザー光の焦点を通過するが、その通過時に毎秒500~4,000個の細胞より前方散乱光、側方散乱光、及び1つ以上の異なる波長の蛍光の光学特性を、個々の細胞について同時に測定し、それら細胞の大きさ、内部構造、及び細胞膜・細胞質・核内に存在する種々の抗原あるいは核酸量等の、生物学的特性を迅速、かつ正確に測定することができる。
散乱光とは、レーザーが細胞に当たって周囲に散乱した光である。前方散乱光(Forward Scatter:FSC)はレーザー光軸に対して前方で検出し、散乱光強度は細胞の表面積に比例する。すなわち、相対的にFSCの値が大きければ細胞も大きく、FSCの値が小さければ細胞も小さいと考えられる。側方散乱光(Side Scatter:SSC)はレーザー光軸に対して90度(直角)の位置で検出し、細胞の顆粒や細胞内構造の状態に散乱光強度が比例する。すなわち、相対的にSSCの値が大きければ細胞の内部構造は複雑であり、SSCの値が小さければ細胞の内部構造は単純であると考えられる。
フローサイトメトリーの結果は、代表的には、FSCをX軸に、SSCをY軸にとったドットプロットとして表現され得る。各細胞は図の中の一つのドット(点)で示されており、それらの位置は、FSCとSSCとの相対値によって決められる。比較的サイズが小さく内部構造が単純なリンパ球は左下部に、サイズが大きく内部に顆粒を持つ顆粒球は右上部に、またサイズは大きいが内部構造が単純な単球はリンパ球と顆粒球の間に、それぞれお互いに分離した集団を作って表示される。
蛍光とは、細胞に標識されている蛍光色素が照射されたレーザー光によって励起され、エネルギーを放出する際生じた光をいう。フローサイトメーター(例えば、製品名:Becton & Dickinson FACSCalibur)は、代表的には、488nmの単一波長レーザー光と635nmの単一波長レーザー光とを照射する。細胞はそれ自体も弱い蛍光を発する性質を有しているが(自家蛍光)、実際に細胞の持つ分子を蛍光を用いて特異的に検出しようとする場合は、あらかじめ何らかの形で細胞あるいはその持つ分子に蛍光色素を結合させる必要がある。例えば、FITC(Fluorescein isothiocyanate)は、488nmの励起光を吸収し、主に530nmの蛍光(緑色)を発する。抗体にあらかじめFITCを標識しておけば、細胞の表面に存在する抗原量に応じて結合する抗体量に差が生じ、その結果FITCの蛍光強度が異なってくるため、その細胞の表面に存在する抗原量を推定することができる。例示的に使用され得るFACSCaliburは、異なる蛍光波長域を検出できる4本の蛍光検出器を搭載しており、異なった波長の光を発する複数の蛍光色素を用意しておけば、最大4つの異なる抗原を同時に検出することが可能である。488nmの単一波長レーザー光によって励起されるFITC以外の蛍光色素として、PE(phycoerythrin)は主に585nmの蛍光を発し、PerCP(peridinin chlorophyll protein)およびPE-Cy5(carbocyanin-5)は主に670nmの蛍光を発する。635nmの単一波長レーザー光によって励起される蛍光色素であるAPC(allophycocyanin)は、主に670nmの蛍光を発する。これらの蛍光色素が種々の抗体と組み合わされ、細胞の二重染色や三重染色に用いられる。Tリンパ球の表面に発現しているCD4、CD8、CD62L、CD25、CCR4、CCR6、CXCR3分子などを、これらと特異的に反応するモノクローナル抗体で検出することができる。
本発明の方法において、細胞マーカーの発現様式の決定は、フローサイトメーター、遺伝子解析、CyTOF等のマーカータンパク質の発現の分布を解析するための任意の手法によって行われ得る。典型的には、本発明の方法における細胞マーカーの発現様式の決定は、ヒストグラムやドットプロットなどの、フローサイトメーター(フローサイトメトリーともいう)の結果を示す細胞分布図上で行うことができる。特に、CXCR3細胞亜集団の細胞分布図において、CCR4細胞亜集団とCCR4細胞亜集団との境界を設定(ゲーティング)し、その境界(ゲート)を利用してCD4T細胞集団中のCCR4CCR6細胞亜集団の相対量を測定する。
厳密にいうと、フローサイトメーターには、細胞を解析するだけの機器と、解析した細胞を分取(ソーティング)することが可能な機器の2種類があり、後者は「FACS」と呼ばれる。本明細書において「FACS」とは、fluorescence-activated cell sorterの略で、レーザー光線を使ってリンパ球などの遊離細胞の表面抗原の解析をしたり、表面抗原の有無などによって、ある特定の細胞を分取する方法において用いられる装置をいう。
フローサイトメトリーの結果は、検出した光学的情報から1つ測定項目に対して、または2以上の測定項目毎に、ヒストグラム、ドットプロット(散布図)などの、粒子に由来する光の分布図として細胞を分布させて表すことができる。本明細書において「ヒストグラム」とは、フローサイトメーターを用いた蛍光測定において、各パラメータの光信号の強度をX軸に、細胞数をY軸にとったグラフをいう。このような形態により、総計で1万個以上の細胞を計数することが可能である。本明細書において「ドットプロット」とは、二種類の蛍光色素の蛍光強度をX軸とY軸にとったプロットをいう。二重染色および三重染色をした場合には、それぞれの蛍光強度をXあるいはY軸におき、個々の細胞が二次元グラフ上の一つ一つの点に対応するような表示方法を用いて解析することができる。本明細書において「ゲーティング」、「境界を設定する」、または「ゲートする」とは、このそれぞれの分布図に対して、測定項目に応じて適切な測定を行うために、分布図の中に測定項目に応じた一定の分布領域を選択することをいう。
例えば、末梢血もしくは骨髄液を採取後、溶血法か比重遠心法にて赤血球を除いた後に蛍光標識抗体(目的とする抗原に対する抗体とそのコントロール抗体)と反応させ、十分に洗浄してからフローサイトメトリーを用いて観察することができる。検出された散乱光や蛍光は電気信号に変換されコンピュータにより解析される。その結果は、FSCの強さは細胞の大きさを表しSSCの強さは細胞内構造を表すことによりリンパ球、単球、顆粒球を区別することが可能である。その後、必要に応じて目的とする細胞集団にゲーティングし、それらの細胞における細胞マーカー発現様式を検討する。
本発明の方法の実施において、当業者は、示される細胞の表面マーカーを適切に識別して、細胞を分画または計数することが可能である。
No-Wash,No-Lyse法について上述したとおり、本発明は全血またはPBMCを対象としてT細胞中の特定の細胞亜集団の比率を測定することを目的とするものであるため、CD45抗体を添加することによって、データ解析を容易にしてもよい。CD45抗体は、T細胞を含むリンパ球に反応し、赤血球と血小板には反応しないため、計測対象をCD45bright細胞亜集団に限定することによって赤血球や血小板などの不要な細胞を解析対象から排除することができる。
(キット)
本発明の一実施形態において、本発明のキットは、本発明の方法に従って用意されたサンプルに使用するための、CD4、CCR4、およびCCR6に対する検出剤を含むことができ、他の実施形態において、本発明のキットはさらにCXCR3、CD62Lに対する検出剤を含むこともできる。1つの実施形態では、検出剤は抗体である。好ましくは、抗体は適切に標識されマーカーの検出を容易にする。
(一般技術)
本明細書において用いられる分子生物学的手法、生化学的手法、微生物学的手法は、当該分野において周知であり慣用されるものであり、例えば、Sambrook J.et al.(1989).Molecular Cloning: A Laboratory Manual,Cold Spring Harborおよびその3rd Ed.(2001);Ausubel,F.M.(1987).Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.AssociatESand Wiley-Interscience;Ausubel,F.M.(1989).Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley-Interscience;Innis,M.A.(1990).PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications,Academic Press;Ausubel,F.M.(1992).Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates;Ausubel,F.M.(1995).Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates;Innis,M.A.et al.(1995).PCR Strategies,Academic Press;Ausubel,F.M.(1999).Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Wiley,and annual updates;Sninsky,J.J.et al.(1999).PCR Applications: Protocols for Functional Genomics,Academic Press、別冊実験医学「遺伝子導入&発現解析実験法」羊土社、1997などに記載されており、これらは本明細書において関連する部分(全部であり得る)が参考として援用される。
本明細書において「または」は、文章中に列挙されている事項の「少なくとも1つ以上」を採用できるときに使用される。「もしくは」も同様である。本明細書において「2つの値」の「範囲内」と明記した場合、その範囲には2つの値自体も含む。
本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。
以上、本発明を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本発明を限定する目的で提供したのではない。従って、本発明の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
(測定パネル)
本実施例においては、以下表1のパネル(WB panel2またはWB panel3)を用いた。
(実施例1 全血法とPBMCを分離する方法の比較)
抗凝固剤(ヘパリンナトリウム)入採血管で採血したものを全血とし、全血をすぐにPBMC分離して凍結保存した場合と比較した。解析したサンプルは、同じ被験体(H-34)から採血で得た8mlの血液をヘパリン処理したものであり、これを二分し、一方はヘパリン処理後の全血とし、他方はPBMCの分離に用いた。
全血の方は、100μlの全血に対し、染色用抗体を添加し、15分間遮光して室温で染色した。次に2mlの溶血試薬(Lysing solution)(Becton Dickinson,Cat.349202)を添加し、10分間遮光して室温に置くことによって赤血球を溶血処理した。次に、500×g、室温で5分間遠心分離し上清を捨てた。さらに2mlの2%FBS/PBSを加えて懸濁してから、同じ条件で遠心分離した。この懸濁、遠心分離をもう一度繰り返し、上清を除いてから、250μlの2%FBS/PBSに懸濁し、測定した。
他方、PBMC取得のため、残りの全血を15mlコニカルチューブへ移し、血液量に対し2倍量の生理食塩水を加えて混合した。この混合液を2本のLeucosepリンパ球分離チューブ(Greiner、Cat.163288-013)へ分注し、800×g、室温で15分間遠心分離した。上部の血漿と細胞からなる層をピペッティングで攪拌し、Leucosepリンパ球分離チューブ2本分を50mlのコニカルチューブ1本に回収した。回収した細胞液に15mlの5%FBS/PBSを加えて、500×g、4℃で5分間遠心分離し、上清を除去後、10mlの5%FBS/PBSを加えて懸濁し、細胞数をカウントしてから当日測定分と凍結分とに細胞液を分配した。
当日測定分は、再度10mlの5%FBS/PBSを加えて遠心分離してから、上清を除去後、50μlのPBSを加えて懸濁し、さらにFACS tubeに移して、直ちに染色用抗体を添加し、20分間遮光して室温で染色した。その後1mlの2%FBS/PBSを加えて懸濁してから、500×g、4℃で5分間遠心分離し、上清を除去後、250μlの2%FBS/PBSを加えて懸濁し、測定した(これをPBMC染色工程とする)。以上をFreshのPBMCとした。
凍結分は、500×g、4℃で5分間遠心分離し、上清を除去後、セルバンカー2を1ml加えて懸濁した。これをクライオチューブに全量分注し、4℃に冷却してあるBICELLに入れた後、速やかに-80℃のディープフリーザーに入れた。翌日、液体窒素タンクに移し凍結保存した。5日後、37℃の恒温水槽で融解してから12mlの10%FBS/RPMI1640培地(ナカライテスク、Cat.30264-85)に懸濁し、500×g、4℃で5分間遠心分離し、上清を除去した。再度10mlの10%FBS/RPMI1640培地を加えて懸濁し、細胞数をカウントした後細胞液を二分した。一方は500×g、4℃で5分間遠心分離し、上清を除去した後PBSを100μl加えて懸濁し、PBMC染色工程を実施して測定した。これをFrozenとした。また、もう一方は細胞液を24穴プレートに分注して37℃、5%CO存在下で48時間培養した。その後、細胞を含む培養液を15mlのコニカルチューブに全量回収し、PBSを加えて10mlにメスアップした後、細胞数をカウントした。その後、500×g、4℃で5分間遠心分離し、上清を除去した後100μlのPBSを加えて懸濁し、PBMC染色工程を実施して測定を行った。これをPBMC Cultureとした。以後も同じである。
CD45、CD4、CCR4、CCR6、CXCR3の抗体を用いて染色し(表1WB panel2)、BD Fortessa X-20を用いて測定した。測定結果をFlowJoTM(Becton Dickinson)で解析し、図を描いた。
全血とPBMCのFreshの図は似ている(図1)。つまり上の行から順に、CD4細胞全体についてCCR4 vs CCR6の散布図を描いたもの、CD4細胞についてCXCR3のヒストグラムを描いたもの、そのヒストグラムにおけるCXCR3を集めてCCR4 vs CCR6の散布図を描いたもの、同じくCXCR3を集めてCCR4 vs CCR6の散布図を描いたもの、以上のどれも全血とFreshのパターンは似ている。
ところが、PBMC の Frozenはどの図においても、全血やPBMCのFreshとは異なる。PBMCのCultureについては、3つ(CD4、CXCR3、CXCR3)のCCR4 vs CCR6の散布図において、CCR6はPBMCのFreshとFrozenの中間のパターンを示すが、CCR4はPBMCのFreshやFrozenに比べると減る。またCXCR3のヒストグラムはPBMCのFrozenに近い。
以上より、以下の事項が明らかになった。
・全血はPBMCのFreshと似ている。
・PBMCを凍結保存すると、全血やFreshとは異なり、培養後もFreshとは異なる。
・CXCR3の分離は、凍結保存後悪くなり、培養しても戻らない。
・CCR4の数は凍結保存しても減らないが、培養後に減る。
・CCR6の数は凍結保存後減り、培養後はやや戻るが採血直後よりは少ない。
(実施例2 保存期間の影響の検討)
本実施例においては、全血の保存期間を変えて測定し、保存期間の影響を調べた。
全血は、採血直後、室温(20~22℃)で3日保管したもの、および室温で6日保管したものを用意した。直後または保管してから、溶血させ、染色、測定を行った。実施例1において用意した全血サンプル(H-30)と、それとは別の日に採血した全血サンプル(H-34)とをそれぞれ用いて実験を行った。測定パネルには、WB panel2を用いた(表1)。採血直後、保管後において大きな違いは認められなかった(図2)。
さらにサンプル数を増やし、Th7Rの細胞数のカウントを行って、全血の保存日数を比較した。
全血は、実施例1において用意した全血サンプル(H-30)と、それとは別の日に採血した全血サンプル(H-34)とを引き続き使用した。結果を表2に示す。この表のH-34は図2の結果を数値で示したものである。
表2においては、全血とPBMCの比較も行った(表2下段「2.全血法0日目、全血からPBMC分離後のFresh、Frozen、Cultureのデータ」)。PBMCの処理方法は実施例1において述べたとおりである。表2下段のH-34は実施例1(図1)の結果を数値で示したものである。測定パネルとしてWB panel2を用いた。図1に相当するヒストグラムと散布図を、各検体について作成した。FlowJoを用いて図を描き、細胞数を取得した。CXCR3とCXCR3の細胞数は、CXCR3のヒストグラムにおいて取得した。
表2上段(1.全血を0、3、6日間室温保存)においては、CD4全体を10,000個以上取得してから、後で表の作成時にCD4全体を10,000個となるように調整した。
表2下段(2.全血法0日目、全血からPBMC分離後のFresh、Frozen、Cultureのデータ)においては、FlowJoにてCD4全体を10,000個前後取得した上で得られた数を示してある。
Th1/17は、CXCR3についてのCCR4 vs CCR6の散布図においてCCR4CCR6の領域の細胞数である。CXCR3に対する割合を示した。
CCR6 SP(Single positive)は、CXCR3についてのCCR4 vs CCR6の散布図においてCCR4CCR6の領域の細胞数である。CXCR3に対する割合を示した。
Th7Rは、Th1/17とCCR6 SPの合計の個数を示した。
Th1は、CXCR3についてのCCR4 vs CCR6の散布図においてCCR4CCR6の領域の細胞である。CXCR3に対する割合を示した。
CCR4CCR6は、CXCR3についてのCCR4 vs CCR6の散布図においてCCR4CCR6の領域の細胞である。CXCR3に対する割合を示した。
TP(Triple positive)は、CXCR3についてのCCR4 vs CCR6の散布図においてCCR4CCR6の領域の細胞である。CXCR3に対する割合を示した。
TN(Triple negative)は、CXCR3についてのCCR4 vs CCR6の散布図においてCCR4CCR6の領域の細胞である。CXCR3に対する割合を示した。
Th2は、CXCR3についてのCCR4 vs CCR6の散布図においてCCR4CCR6の領域の細胞である。CXCR3に対する割合を示した。
Th17は、CXCR3についてのCCR4 vs CCR6の散布図においてCCR4CCR6の領域の細胞である。CXCR3に対する割合を示した。
(考察)
1.全血の保存日数による違い
全血を採血当日に測定、3日室温保存後測定、6日室温保存後測定したものを比較したところ、保存期間が長くなるとともに、CXCR3が減少したが、Th1/17のCXCR3に占める割合は微増の傾向にあった(表2)。CXCR3は増加し、CCR6 SPのCXCR3に占める割合も増加した。またTh1/17とCCR6 SPの和であるTh7Rはやや増加した。つまりCXCR3は減少、CXCR3は増加、Th7RであるCCR4CCR6の合計は増加した。ただし図2からわかるように、いずれも増減はわずかであり、後に述べるようにPBMCのFrozenやCultureに比べると、PBMCのFreshのデータに近い。すなわち、他の処理法に比べると全血の保存中の変化は小さいことが分かる。
CXCR3に占めるTh1、およびCXCR3に占めるTN、つまりCCR4CCR6の割合はやや増加した。したがってCCR4CCR6の割合は増加した。
CXCR3中のCCR4CCR6の割合、およびCXCR3中のTh2の割合は減少した。つまりCCR4CCR6の割合は減少した。
CXCR3に占めるTP(CCR4CCR6)の割合、およびCXCR3に占めるTh17の割合はいずれも減少した。
先のTh1/17、CCR6 SPの結果と合わせて、CCR4 vs CCR6においての割合を見ると、CXCR3が-であるか+であるかに関わらず、割合の増減傾向は一致しており、CCR4CCR6とCCR4CCR6が増加、CCR4CCR6とCCR4CCR6が減少した。つまりCCR4が減少、CCR4が増加した。ただしPBMCと比べた場合ほどの違いはなかった。
2.全血とPBMCの比較
全血はPBMCのFreshと比較すると、CXCR3が多く、CXCR3が少なかった(表2)。またTh1/17、CCR6 SPがやや多く、Th7Rもやや多かった。しかし差としては小さかった。
またCCR4 vs CCR6で分けた領域の細胞の割合について見ると、全血はPBMCのFreshと比較すると、Th1、TP、TNはほぼ同じ、CXCR3+CCR4+CCR6-は少ない、Th2はやや少ない、Th17はやや少ないという結果であった。しかしながら、この違いはPBMCのFrozenやCultureとの比較に比べると、差は小さい。
次にPBMCのFrozenとCultureを含めて比較する。CXCR3については、Freshに比べてPBMCのFrozenは、検体によって異なるが、Cultureでは大きく減る。反対にCXCR3のFrozenはFreshに近く、CultureはFreshより多い。Th1/17のCXCR3+に対する割合について見ると、PBMCのFrozenはFreshよりも著しく少なく、CultureはFrozenより多いがFreshよりは少ない。CCR6 SPの割合はTh1/17と似ていて、Frozenは著しく少なく、CultureはFreshよりやや少ない程度である。Th7Rの個数については、FrozenはFreshより著しく少なく、CultureはFrozenよりは多いがFreshよりは少ない。
すなわち、CXCR3の数は培養後に大きく減ったため、Th1/17の個数は凍結保存後に大きく減り、培養後わずかに増えるが分離直後程度までは戻らなかった。他方、凍結保存によってCCR6 SPの割合は大きく減り、培養後CCR6 SPの割合は凍結保存前程度まで増える検体と少しだけ増える検体があった。また、CD4+細胞の数を固定して測定した状況において、分離直後に比べて培養後にはCXCR3の数が増え、CCR6 SPの数は検体によって増えたものと減少したものがある。このため、Th1/17とCCR6 SPの和であるTh7Rは凍結保存後減り、培養後増えるが、分離直後までは戻らなかった。つまり、Th7RをPBMCで測定する場合、分離直後の凍結保存前に測定することが望ましい。
次にPBMCのFrozenとCultureを含めて、CCR4 vs CCR6におけるCCR4CCR6以外の領域にある細胞について比較した。Th1のCXCR3に対する割合はFreshに比べて、Frozenでやや増え、CultureはFrozenよりやや低いがFreshよりは高い。CCR4CCR6の割合は、Frozenで増え、Cultureでは著しく減った。TPの割合は、Frozenで著しく減り、Cultureでは増えたがFreshよりかなり小さい。CXCR3のTN、Th2、Th17については、CCR4とCCR6の発現パターンがCXCR3の場合に対応するそれぞれTh1、CCR4CCR6、TPの増減と同じ傾向にあった。このことはTh1/17とCCR6 SPとの関係にも当てはまる。つまり凍結保存や培養の影響は、CXCR3の有無に関連しなかった。まとめるとCCR4の細胞は、凍結保存の影響を受けないが培養すると減少した。CCR6の細胞は、凍結保存すると減少し、培養すると回復した。しかしCCR4CCR6はCCR4細胞、CCR6細胞の両方の減少の影響があり、凍結保存で減少し、培養した後の回復がなかった。
(実施例3 保存期間の影響(2))
実施例2のデータを使用し、Th7Rの細胞数のカウントでの比較を行った。
表3の左側(全血)は表2上段(1.全血を0、3、6日間室温保存)と同じ測定のものであり、右側(全血とPBMC)は表2下段(2.全血法0日目、全血からPBMC分離後のFresh、Frozen、Cultureのデータ)と同じ測定のものである。測定においてはWB panel2(表1)を用いた。
ここでは、CXCR3による分離は行わず、CD4全体に対して、CCR4 vs CCR6の散布図を描いた。この図は図1と図2に示した。図1と図2に示したもの以外もFlowJoで同様の図を描き、細胞数を計数した。CXCR3を分離しないので、Th7Rの細胞数のみ示した(表3)。
全血については、採血直後、保存後に大きな違いは認められなかった。すなわち採血後6日経過しても測定に問題が起こらなかった。
PBMCのFreshのTh7Rについては、全血に比べてやや少ない程度であった。
PBMCのFrozenのTh7Rは、全血やFreshよりも大きく減った。その後得られたCultureの数は、全血やFreshの程度には戻らなかった。
すなわち、PBMCに分離する場合、Th7Rの測定は分離直後に行う必要がある。全血を保存後PBMC分離した場合、望ましい測定結果が得られなかった(実施例5参照)ので、採血直後にPBMCを分離し、すぐに測定することが望ましい。一方、全血であれば6日後でも採血直後と同程度の結果が得られるので、6日の間に室温で輸送してから測定することも可能であることが明らかになった。
(実施例4 保存温度の影響(3))
本実施例においては、全血の保存における最適な温度帯を調べた。試験は2回行った。1回目の試験では、10、15、20、25、30、37℃において、1、2、3、6日経過後に測定した。2回目の試験では、12、15、18℃において、1、3、6日経過後に測定した。ヘパリン処理した血液を250μlずつCRYOtubeに分注し、各温度に設定した水浴またはインキュベータ中で保存した。測定にはWB panel2およびWB panel3を用いた(表1)。
1回目の試験では、15℃保存の場合に、水滴が蓋内部に付着し、血液部分が濃縮された可能性が考えられた。そのため温度維持に工夫を導入して水滴が付かないようにした2回目の試験を行った。
1.CD4、CD8の発現について
温度、日数を変えて保存した場合のCD4 vs CD8の散布図を図3に示す。横軸がCD4の分布、縦軸がCD8の分布を示す。
図3の枠内の条件を安定であると評価した。CD4の染色についてはCD4の頻度と染色パターンから見ると、12℃から25℃の間で3日間安定であった。またCD8については、どの温度においても2日を経過するとCD8の蛍光強度が下がり、発現量が下がったと思われる。なお、以降の解析では蛍光強度の低下に応じてCD8としてゲートする範囲を移動させた。
2.CD4におけるCD62Lの発現について
CD4細胞に対し、CD62Lの染色パターンをヒストグラムで表した(図4)。横軸がCD62の分布、縦軸が計数を示す。
図4の枠内の条件を安定であると評価した。CD62Llowについては、温度が高い方が、日数が経過した場合の分離が良好であることがわかった。また、37℃に近いと保存日数が増加しても染色は安定していた。
3.CD8におけるCD62Lの発現について
CD8細胞に対し、CD62Lの染色パターンをヒストグラムで表した(図5)。横軸がCD62の分布、縦軸が計数を示す。
図5の枠内の条件を安定であると評価した。CD8細胞は、CD8の位置が低下した場合、それに応じて範囲をずらしてCD8細胞を選択した。CD4細胞の場合と同様に、37℃に近いと保存日数が増加しても染色は安定していたが、2日を超えると全体的に蛍光強度の強さが減少した。
4.CD4におけるTh7Rの発現について
CD4細胞に対して、CCR4CCR6画分に入る細胞、つまりTh7R細胞に注目したヒストグラムを求めた(図6)。横軸がCCR6の分布、縦軸がCCR4の分布を示す。
図6の枠内の条件を安定であると評価した。Th7Rは保存日数3日を含む長い保存期間において、幅広い温度の保存で良好に測定できた。
5.CD4におけるCCR7、CD45RAの発現について
CD4細胞に対して、CCR7とCD45RAの散布図を作成した(図7)。すなわち、セントラルメモリー、エフェクターメモリー、ナイーブの細胞を観察した。横軸がCCR7の分布、縦軸がCD45RAの分布を示す。
図7の枠内の条件を安定であると評価した。CCR7の染色の分離は、保存日数を追うごとに悪くなった。そのため、エフェクターメモリー細胞(CCR7CD45RA)やエフェクター細胞(CCR7CD45RA)は増加した。CD45RAに関しては、低温であると発現が低下する傾向にあり、20℃付近であると頻度は安定していた。よって、ナイーブ細胞(CCR7CD45RA)は20℃付近が良好で、それより低くても高くても頻度が減少した。
6.CD8におけるCCR7、CD45RAの発現について
CD8細胞に対して、CCR7とCD45RAの散布図を作成した(図8)。すなわち、セントラルメモリー、エフェクターメモリー、ナイーブ、EMRAの細胞を観察した。横軸がCCR7の分布、縦軸がCD45RAの分布を示す。
図8の枠内の条件を安定であると評価した。保存日数が2日目まではCCR7、CD45RAの発現が良好で、1日とほぼ同等であったが、2日目以降になるとCCR7の発現は大幅に減少し、CD45RAも緩やかに減少した。
7.まとめ
CD8細胞の測定については、CD8の蛍光強度の強さが安定しているのは2日が限度であった。2日以下の短期間においては、18~25℃の温度が適していた。
CD4については12℃から25℃の間で3日間安定であったが、CD4細胞における各マーカーの安定性については個別に変動した。
CD62Lについては温度が高い方が、日数が経過した場合の分離が良好であり、37℃付近が保存日数が増加しても安定していた。
CCR7の染色の分離は、保存日数を追うごとに悪くなった。温度としては18℃~25℃が安定していた。
Th7Rは保存日数3日を含む長い保存期間において、幅広い温度(12℃~25℃)の保存で良好に測定できた。
(実施例5 保存全血からのPBMC分離)
全血を測定した後に残余検体の利用性を検討した。前述の通り、全血のまま保存するといくつかの細胞マーカーについては劣化していき測定できない。そこで、保存後、PBMCに分離し、保存することを検討した。
健常人2名からヘパリン採血管を用いて採血した。次の4通りを用意した。
#1:採血直後に測定。
#2:#1を3日間室温(20.4-21.0℃)で保存後に測定。
#3:#2からPBMC分離して、23日間凍結保存し、融解後測定。
#4:#3を48時間培養し、測定。
測定にはWB panel2を用いた(表1)。
結果を図9に示す。
以下の表4に、保存方法ごとに得られた細胞頻度を示す。なお、表4においての各項目は以下を示す。
CD45: CD45のSingletsに対する比率
Lymphocytes: LymphocytesのCD45に対する比率
CD4: CD4のLymphocytesに対する比率
CXCR3: CXCR3のCD4に対する比率
Th1/17: Th1/17のCD4に対する比率
CXCR3: CXCR3のCD4に対する比率
CCR6 SP: CCR6 SPのCD4に対する比率
CD4細胞のCCR4、CCR6、CXCR3発現を保存方法ごとに比較した結果を図10に示す。
図9と図10は同じ検体である。表4は2検体の細胞頻度を示した。図9と表4によると、#3の保存全血から分離したPBMCにおいてはCXCR3細胞が著しく減った。#4の培養により若干増えたが、#1や#2の全血に比べると少なかった。
CXCR3CCR4CCR6であるTh1/17は、CXCR3と同じ傾向にあった。ただし培養後の割合は培養前に近かった。
またCCR6 SP(CXCR3CCR4CCR6)もCXCR3にもかかわらず、CXCR3と同様の傾向があった。
そこでどのマーカーが検体の処理条件による影響を受けたかを明らかにするために、図10を示した。#1の採血直後と、#2から#4を比較した。この図によると、#2全血3日間保存は#1とどのマーカーも変わらなかった。またCCR4は、#3も#4も#1と変わらなかった。しかし、CCR6とCXCR3は、#3と#4は#1に比べて著しく減った。#4は#3に比べ若干CCR6とCXCR3が増えたが、#1や#2に比べると少なかった。
以上より、3日後のPBMC分離は、CXCR3およびCCR6の細胞の量が減るため、CXCR3とCCR6の測定には好ましくない可能性が示された。したがって、全血を保存後に分離したPBMCはTh7R測定には適さない。保存するためには、採血直後に血液を2つに分け、一方をCD8も含めて全血検体として測定する場合は2日以内、またはCD8を測定しない全血検体の場合は3日以内に測定し、残りの血液は採血直後にPBMCに分離して凍結保存することが望ましい。
(実施例6 CXCR3測定の重要性)
Th7Rの定義は、CCR4CCR6CD4であり、CXCR3もCXCR3も含む。そのため本実施例において、Th7Rの測定においてはCXCR3測定は不要とも考えられるところ、CXCR3の測定に意義があるかどうかを調べた。
健常人6名からヘパリン採血管を用いて採血し、WB panel2(表1)を用いて直ちに測定を行った。データ解析と作図はFlowJoを用いた。結果を図11A~11Dに示す。図11はCD4またはCXCR3細胞についてのCCR6 vs CCR4散布図である。
図11A:CD4T細胞。ゲートを示していない。
図11B:CXCR3CD4T細胞。ゲートを示していない。
図11C:図11Aと同じ。CXCR3において作成したゲートを示した。
図11D:図11Bと同じ。CXCR3において作成したゲートを示した。
図11Bによると、検体によるが概ね、CXCR3CCR4highCCR6細胞が1つの集団として明瞭となり、CXCR3CCR4medCCR6細胞の集団と分かれる。他方、図11Aによると、CD4全体に対して描いた散布図においては、CCR4highCCR6細胞とCCR4medCCR6細胞の2つの集団の切れ目がわかりにくい。このため、図11Bにおいては、CCR4highの集団のゲートを決めやすく、この図においてゲートを決めたものが図11Dであり、そのゲートを図11Cにも記載した。
したがって、CXCR3を測定したほうがCXCR3に対してCCR4CCR6のゲートを作りやすい。そのため、CCR4CCR6の集団の特定には、CXCR3を測定したほうが望ましいことが明らかになった。この傾向はPBMCよりも全血サンプルを用いた場合の方が顕著であり、採血から3日以上経過した場合には特に、PBMCよりも全血サンプルの方がCXCR3に対してCCR4CCR6のゲートを決めやすかった。
(実施例7 微量採血デバイスを用いた自己採血検体の測定)
これまでの実験により、全血に対する測定が可能であり、また少量でできることも判明した。そこで本実施例においては、微量採血デバイスの利用の可能性を検討した。この本実施例で用いたような微量採血デバイスによれば、被験体自身で採血ができ、簡便である。
採血は、BDセーフティランセット(Becton Dickinson)を用いて自身の指先を穿刺し、血液をMBSキャピラリー(ヘパリンリチウム、100-150μl採取ライン)(株式会社マイクロブラッドサイエンス)で採取することによって行った。採血後、直ちにWB panel3(表1)で染色し、測定した。測定結果を図12に示す。100μl~150μlのごく微量の採血でも問題なく測定が可能であった。
150μlの血液(3滴程度)を自身で採血した検体の測定が可能となった。この手法により、医療従事者が不在でも、実験室において採血し、すぐに測定が可能である。従来のPBMCを用いた方法では、培養が必要なパネルもあったため、急いでコントロールが必要となっても対応できなかった。また日々、コントロールを用意するには、健常者から16ml程度を頻繁に採血する必要があった。しかしこの方法を用いれば、コントロールが急いで必要な場合に3滴採血すれば済む。
(比較例 細胞の固定化)
抗凝固処理済みの血液にパラホルムアルデヒド(PFA)もしくはBD Cell FIX(10.0%ホルムアルデヒド、3.55%メタノール、0.93%アジ化ナトリウムを含む溶液)を添加し、所定の温度で3日間保存後PBMC処理を行った後染色し、測定を行った。
(1)パラホルムアルデヒド
被験体2名(H-15、H-34)から4mlの採血管(ニプロ、Cat.31-764)4本ずつ血液を得て、ヘパリンナトリウム処理した。それぞれを1mlずつ10本に分注した。これに4%パラホルムアルデヒド・リン酸緩衝液にPBSを加えて、パラホルムアルデヒドの最終濃度が0.5%、1%、1.5%、2%になるように2本ずつ調製し、2本には何も加えなかった。0から2%の濃度のものを1本ずつ4℃または室温にて、3日間放置した。
パラホルムアルデヒド濃度が0から2%のものについては、いずれも室温にしてから血液の2倍の生理食塩水を加えた。これらをLeucosepリンパ球分離チューブ(Greiner、Cat.163288-013)に加えた。
以上のチューブに対し、室温で800xg、15分間の遠心分離を行った。上部の血漿と細胞からなる層をピペッティングで攪拌し、15mlのコニカルチューブ1本に回収した。回収した懸濁液に回収した懸濁液と同量以上または5mlの5%FBS/PBSを加えて、500xg、4℃で5分間遠心分離し、上清を除去後、10mlの5%FBS/PBSを加えて懸濁し、細胞数をカウントした。
また同じ日に8mlのBDバキュテイナ(抗凝固剤及び分離剤入り採血管(BD、Cat.362753))2本ずつ血液を得て、ヘパリンナトリウム処理した。2,200×g、20℃、20分遠心分離し、上部の血漿と細胞からなる層をピペッティングで攪拌し、50mlのコニカルチューブ1本に回収した。回収した懸濁液に15mlの5%FBS/PBSを加えて、500xg、4℃で5分間遠心分離し、上清を除去後、10mlの5%FBS/PBSを加えて懸濁し、細胞数をカウントした。この8mlのバキュテイナで採血した分については、当日測定分と凍結分とに懸濁液を分配した。
3日間放置した分、および8mlのBDバキュテイナ当日測定分は、カウント後、遠心分離してから、上清を除去後、50μlのPBSを加えて懸濁し、さらにFACStubeに移して、直ちに染色用抗体を添加し、20分間遮光して4℃で染色した。その後1mlの2%FBS/PBSを加えて懸濁してから、500xg、4℃で5分間遠心分離し、上清を除去後、250μlの2%FBS/PBSを加えて懸濁し、測定した。
8 mlのBDバキュテイナ凍結分は、500xg、4℃で5分間遠心分離し、上清を除去後、クライオチューブ1本あたり約5.0×10個/mlの細胞濃度になるようにセルバンカー2を加えて懸濁した。これをクライオチューブに1mlずつ分注し、4℃に冷却してあるBICELLに入れた後、速やかに-80℃のディープフリーザーに入れた。翌日、液体窒素タンクに移し凍結保存した。2日後、37℃の恒温水槽で融解してから12mlの10%FBS/RPMI1640培地(ナカライテスク、Cat.30264-85)に懸濁し、500xg、4℃で5分間遠心分離し、上清を除去した。再度10mlの10%FBS/RPMI1640培地を加えて懸濁し、細胞数をカウントした後、細胞液を24穴プレートに分注して37℃、5%CO2存在下で48時間培養した。その後、細胞を含む培養液を15mlのコニカルチューブに全量回収し、細胞数をカウントした。その後、500xg、4℃で5分間遠心分離し、上清を除去した後100μLのPBSを加えて懸濁し、PBMC染色工程を実施して測定を行った。これをPBMC Cultureとした。以後も同じである。サンプル一覧は次の通りである。
No.検体名 3日放置の内容、またはその他の処理
1 H-15 PBMC分離後凍結保存、解凍後2日間培養(PBMC Culture)
2 H-15 PBMC分離後保存なし(PBMC Fresh)
3 H-15 2%パラホルムアルデヒド、4°C
4 H-15 1.5%パラホルムアルデヒド、4°C
5 H-15 1%パラホルムアルデヒド、4°C
6 H-15 0.5%パラホルムアルデヒド、4°C
7 H-15 0%パラホルムアルデヒド、4°C
8 H-15 2%パラホルムアルデヒド、室温
9 H-15 1.5%パラホルムアルデヒド、室温
10 H-15 1%パラホルムアルデヒド、室温
11 H-15 0.5%パラホルムアルデヒド、室温
12 H-15 0%パラホルムアルデヒド、室温
13 H-34 PBMC分離後凍結保存、解凍後2日間培養(PBMC Culture)
14 H-34 PBMC分離後保存なし(PBMC Fresh)
15 H-34 2%パラホルムアルデヒド、4°C
16 H-34 1.5%パラホルムアルデヒド、4°C
17 H-34 1%パラホルムアルデヒド、4°C
18 H-34 0.5%パラホルムアルデヒド、4°C
19 H-34 0%パラホルムアルデヒド、4°C
20 H-34 2%パラホルムアルデヒド、室温
21 H-34 1.5%パラホルムアルデヒド、室温
22 H-34 1%パラホルムアルデヒド、室温
23 H-34 0.5%パラホルムアルデヒド、室温
24 H-34 0%パラホルムアルデヒド、室温
結果は以下のとおりであった。
<CD4>
室温:PFAを最終濃度2~1%添加したものは全てCD4の発現が確認できなかった。1%添加したものについても弱い発現しか確認されなかった。
4℃:PFAを最終濃度2~1%添加したものは全てCD4の発現が確認できなかった。0.5%添加したものについても弱い発現しか確認されなかった。
<CXCR3>
室温:CD4が発現していなかったことからCXCR3のはっきりとした二峰性の確認はできなかった。
4℃:二峰性にはなるがPFAの濃度が2%から0.5%に最終濃度が下がっていくにつれて1%をピークにCXCR3の割合が上がっていく傾向にあり、発現が安定しなかった。
<CCR6>
発現が確認できたサンプルの中でPFAを添加したものについては、PFA添加なしのCCR6の発現が10程度であったのに比べて、10以上とかなり高い発現が確認され、発現が安定しなかった。
<CCR4>
発現が確認できたサンプルの中でPFAを添加したものについては、PFA添加なしと比べると、発現範囲が狭まり、分離が悪くなった。
(2)BD Cell FIX
被験体2名(H-15、H-34)から4mlの採血管1本ずつ血液を得て、ヘパリンナトリウム処理した。それぞれを1mlずつ4本に分注した。これにBD Cell FIX(BD、Cat.340181:発売停止、現在はStabilizing Fixative 3X Concentrateとして販売)を2%FBS/PBSで希釈した溶液を加え、最終希釈割合がx4、x10、x20、となるようにし、1本には何も加えなかった。これらを4°Cで、3日間放置した。
以後はパラホルムアルデヒドの場合と同様である。つまりPBMCを分離した。サンプル一覧は以下のとおりである。
No. 検体名 処理
25 H-15 Cell FIXなし, 4°C、3日間
26 H-15 x4 Cell FIX, 4°C、3日間
27 H-15 x10 Cell FIX, 4°C、3日間
28 H-15 x20 Cell FIX, 4°C、3日間
29 H-34 Cell FIXなし, 4°C、3日間
30 H-34 x4 Cell FIX, 4°C、3日間
31 H-34 x10 Cell FIX, 4°C、3日間
32 H-34 x20 Cell FIX 4°C、3日間
結果は以下のとおりであった。
4倍希釈:リンパ球リージョンが全く見えない。
10倍希釈:かろうじてリンパ球リージョンは見える。
20倍希釈:CD4の発現も見えるが、通常の発現位置よりも低く、CXCR3のカットオフも左へシフトしていて安定しなかった。
以上のとおり、抗凝固処理血液に安定化剤を加えて細胞を固定化した場合には特にCD4やCXCR3の検出に問題があったため、全血サンプルにおいて見いだされたTh7Rの効率的な測定法が有利である。
本発明は、CD4T細胞集団中の医学的に重要な細胞亜集団の相対量の測定のために使用され得る。

Claims (19)

  1. 被験体由来のサンプル中のCD4T細胞集団中のCCR4CCR6細胞亜集団の相対量の決定方法であって、
    前記CD4T細胞集団中のCXCR3細胞亜集団を選択する工程と、
    前記CXCR3細胞亜集団において、CCR4細胞亜集団とCCR4細胞亜集団との境界を設定する工程と、
    前記境界を用いて、CD4T細胞集団中のCCR4CCR6細胞亜集団の相対量を測定する工程と
    を包含する、方法。
  2. 前記サンプルは前記被験体の末梢血の全血サンプルまたは末梢血単核球(PBMC)サンプルである、請求項1に記載の方法。
  3. 前記サンプルは全血サンプルである、請求項2に記載の方法。
  4. 前記サンプルは、前記被験体からの採取後1日以上保管されたものである、請求項3に記載の方法。
  5. 前記サンプルは、前記被験体からの採取後1日~6日保管されたものである、請求項4に記載の方法。
  6. 前記サンプルは、前記被験体からの採取後1日~3日保管されたものである、請求項4に記載の方法。
  7. 前記サンプルは、約10℃~約40℃で保管されたものであり、「約」は後に続く数値の±10%である、請求項4に記載の方法。
  8. 前記サンプルは、約12℃~約25℃で保管されたものであり、「約」は後に続く数値の±10%である、請求項4に記載の方法。
  9. 前記サンプルは、約10μl~約500μlであり、「約」は後に続く数値の±10%である、請求項3に記載の方法。
  10. 被験体由来のサンプル中のCD4T細胞集団中のCCR4CCR6細胞亜集団の相対量の決定方法であって、
    前記被験体の全血サンプルを用意する工程と、
    前記全血サンプルのCD4T細胞集団中のCCR4CCR6細胞亜集団の相対量を測定する工程と
    を包含する、方法。
  11. 前記サンプルは、前記被験体からの採取後1日以上保管されたものである、請求項10に記載の方法。
  12. 前記サンプルは、前記被験体からの採取後1日~6日保管されたものである、請求項11に記載の方法。
  13. 前記サンプルは、前記被験体からの採取後1日~3日保管されたものである、請求項11に記載の方法。
  14. 前記サンプルは、約10℃~約40℃で保管されたものであり、「約」は後に続く数値の±10%である、請求項11に記載の方法。
  15. 前記サンプルは、約12℃~約25℃で保管されたものであり、「約」は後に続く数値の±10%である、請求項11に記載の方法。
  16. 前記サンプルは、約10μl~約500μlであり、「約」は後に続く数値の±10%である、請求項10に記載の方法。
  17. CD4に対する検出剤、CCR4に対する検出剤、およびCCR6に対する検出剤を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法において使用するためのキット。
  18. CXCR3に対する検出剤をさらに含む、請求項17に記載のキット。
  19. 前記検出剤が抗体である、請求項1に記載のキット。
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