以下、図面と共に本発明に係る構造物解析システムの実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
図1に本実施形態に係る構造物解析システム10を示す。構造物解析システム10は、構造物の動きが適切なものであるかを判定(評価)するための解析を行うシステム(装置)である。解析対象の構造物は、例えば、図1に示すような橋梁30である。橋梁30の部分のうち、特に上部構造である桁31と下部構造である橋台32とをつなぐ構造部材である支承部33,34を解析対象とする。図1に示す2つの支承部33,34のうち、一方の支承部33は、ピンローラー(可動支承部)であり、ピン33aによる回転移動及びローラー33bによる水平移動が可能である。なお、ローラー33bは多くの場合、防塵カバー等で隠れている。もう一方の支承部34は、ピン(固定支承部)であり、ピン34aによる回転移動が可能である。ピン33a,34aの軸方向は、桁31の長さ方向と垂直かつ水平な方向(図1の奥行方向)となるように設けられており、支承部33,34の回転は、ピン33a,34aを回転軸として行われる。構造物解析システム10による支承部33,34の解析は、支承部33,34毎に行われる。
橋梁30に車両が通行した際等、橋梁30に荷重がかかった場合、橋梁30は振動する。橋梁30の振動に応じて支承部33,34は動くが、支承部33,34に異常が生じている(例えば、劣化が生じている)と支承部33,34の動きが適切でないものとなるおそれがある。構造物の動きが適切なものであるかを判定することで、構造物の状態、具体的には、構造物に異常が生じている(例えば、劣化が生じている)か否かを判定することができる。当該判定の結果は、例えば、構造物の補強又は改修等の判断に用いられる。
なお、解析対象となる構造物は、橋梁30の支承部33,34に限られず、建築物等の任意の構造物であってもよい。解析対象となる構造物の全体、あるいは構造物の部分は、橋梁30の支承部33,34のような可動機能を有する可動機構であってもよい。又は、解析対象となる構造物、あるいは構造物の部分は、本来動かない、即ち、可動機能を有していない不可動機構であってもよい。以下の説明では、解析対象の構造物を橋梁30のピンローラーである支承部33として説明する。
構造物解析システム10は、例えば、サーバ装置等のコンピュータによって実現される。また、構造物解析システム10は、複数のサーバ装置、即ち、コンピュータシステムによって実現されてもよい。構造物解析システム10は、通信機能を有しており、他の装置との間で情報の送受信を行うことができる。
構造物解析システム10は、カメラ20で撮像された動画像を用いて支承部33を解析する。カメラ20は、解析対象の支承部33を撮像して、支承部33の動画像を取得する撮像装置である。カメラ20は、支承部33を撮像できる位置に予め固定的に設置される。より具体的には、カメラ20は、後述する支承部33の動きが動画像で捉えられる位置に設置される。例えば、カメラ20は、支承部33のピン33aを正面から捉えられる位置、即ち、支承部33のピン33aによる回転の回転軸と撮像方向とが一致する位置に設置される。カメラ20としては、支承部33の解析に用いることが可能な程度の解像度で撮像を行うことが可能な周知のカメラを用いることができる。図1に示すように、解析対象の支承部33,34毎に複数のカメラ20が設けられてもよい。
構造物解析システム10とカメラ20とは、有線若しくは無線、又はそれら両方の通信網を介して互いに情報の送受信を行うことができる。カメラ20は、予め設定されたフレームレート(fps)で支承部33を撮像して、撮像した動画像を構造物解析システム10に送信する。なお、カメラ20は、本発明に係る構造物解析システムの構成要素であってもよい。即ち、この場合、本発明に係る構造物解析システムは、図1に示す構造物解析システム10とカメラ20とを含んで構成される。また、構造物解析システム10とカメラ20とは一体の装置(例えば、スマートフォン)であってもよい。
図1に示すように、構造物解析システム10は、機能的には、動画像取得部11と、速度ベクトル検出部12と、確率密度算出部13と、判定部14とを備えて構成される。
動画像取得部11は、解析対象の構造物である支承部33を撮像した動画像を取得する機能部である。動画像取得部11は、カメラ20から送信される、支承部33を撮像した動画像を受信して取得する。構造物解析システム10による支承部33の解析は、支承部33の動き(変動、変位)に基づいて行われる。本実施形態のように解析対象の構造物が橋梁30の一部である場合、上述したように橋梁30の上を自動車等の車両が通過すると、当該車両の通過に応じて橋梁30が振動する。当該振動による支承部33の動きに基づいて、支承部33の解析が行われる。なお、橋梁30に振動を生じさせる要因は、必ずしも車両の通過である必要はない。解析対象の構造物が橋梁30の一部以外のものである場合、何らかの要因で生じる構造物の振動に基づいて判定が行われればよい。
動画像取得部11は、受信した動画像のうち、設定された時間帯の部分のみを解析に用いる動画像として取得してもよい。当該時間帯は、例えば、橋梁30の上を車両が通過して橋梁30に振動が生じる時間帯である。当該時間帯は、構造物解析システム10の管理者等によって指定されてもよいし、物体認識等の従来技術に基づいて構造物解析システム10が特定してもよい。動画像取得部11は、取得した動画像を速度ベクトル検出部12に出力する。
速度ベクトル検出部12は、動画像取得部11によって取得された動画像に基づいて、解析対象の構造物である支承部33の複数の箇所についての変位の速度及び方向を示す速度ベクトルを検出(算出)する機能部である。速度ベクトルを検出する複数の箇所は、ROI(Region of Interest)として予め設定されている。速度ベクトルを検出する複数の箇所は、例えば、図2に示すように、動画像の支承部33が写っている部分に格子状に設定される。図2は、動画像を構成するフレーム(画像)であり、当該フレームにおいて速度ベクトルが検出される複数の箇所は、速度ベクトルの起点となっている箇所(位置)である。なお、速度ベクトルを検出する複数の箇所は、必ずしも上記のように設定される必要はなく、構造物に応じて構造物を適切に解析できる任意の箇所に設定されればよい。
カメラ20は、固定的に設定されているため、速度ベクトルを検出する支承部33の箇所は、動画像において概ね特定の位置に写る。速度ベクトル検出部12は、動画像を構成する各フレーム(画像)の上記の複数の箇所について、基準となる画像からの画像の位置ずれを、変位を示す値である変位量として算出する。基準となる画像は、例えば、車両が通行していない時間帯の画像である。変位量は、フレームの二次元のそれぞれの方向(X方向及びY方向)のものである。構造物解析システム10では、例えば、フレームの座標系において支承部33の解析が行われればよい。但し、それ以外の座標系が用いられてもよい。
変位量の算出は、従来の技術(例えば、ブロック・マッチング法又はデジタル画像相関法)によってサブピクセル単位で行うことができる。速度ベクトル検出部12は、各フレームの上記の複数の箇所について、動画像を構成する連続するフレームのうち1つ前のフレームの対応する箇所との変位量の差分を取って速度ベクトルを検出する。この速度ベクトルの検出によって、動画像を構成する各フレームの上記の複数の箇所それぞれの速度ベクトルが得られる。速度ベクトル検出部12は、検出した速度ベクトルを示す情報を確率密度算出部13に出力する。
確率密度算出部13は、速度ベクトル検出部12によって検出された複数の箇所についての速度ベクトルから、解析対象の構造物である支承部33における位置に応じた瞬間回転中心(ICR:instantaneous center of rotation)が存在する確率密度を算出する機能部である。確率密度算出部13は、速度ベクトルの検出対象となった箇所を起点とする当該速度ベクトルに対応する線分の垂直二等分線を算出して、算出した垂直二等分線の交点に基づいて確率密度を算出してもよい。図2において、色の濃淡で示されているものが、位置に応じたICRが存在する確率密度であるICRの確率密度分布である。図2では、色が濃い程、確率密度が大きいことを示している。図2は、支承部33の動きが回転の場合の例である(以下の例についても特段の説明がない場合、回転を例として説明する)。
確率密度算出部13は、例えば、動画像を構成するフレーム毎に以下のようにICRの確率密度分布を算出する。確率密度算出部13は、速度ベクトル検出部12から、フレーム毎に検出された各箇所における速度ベクトルを示す情報を入力する。図3(a)に示すように、確率密度算出部13は、各速度ベクトルの検出対象となった箇所を起点とする当該速度ベクトルに対応する線分Vを算出する。続いて、確率密度算出部13は、当該線分Vの垂直二等分線Pを算出する。確率密度算出部13は、複数の垂直二等分線Pの交点IをICRの候補点として算出する。図3(b)に示すように、確率密度算出部13は、全ての垂直二等分線Pの交点Iを算出する。続いて、図3(c)に示すように、確率密度算出部13は、カーネル密度推定又は点密度推定・線密度推定等の方法で交点I(ICRの候補点)を標本として確率密度分布Dを、ICRの確率密度分布として算出する。カーネルは、予め設定されており、正規分布等でよい。交点Iが密集している座標がICRとして相応しい座標といえる。図2と同様に図3(c)では、色が濃い程、確率密度が大きいことを示している。
ICRは、理論的には、速度ベクトルに対応する線分Vの垂直二等分線Pの交点Iで算出される。しかしながら、速度ベクトルは測定誤差を必ず含むため、図3(b)に示すように、複数の位置の交点Iが算出され、これらの位置は必ずしも正確なICRの位置にはなっていない。そのため、本実施形態では、上記のようにICRの確率密度分布を算出している。確率密度分布を用いることで測定誤差がICRの推定に与える影響を低減することができる。ICRの確率密度分布は、例えば、座標系における位置(具体的には、座標系を区切った領域)毎の確率密度の値として得られる。なお、ICRの確率密度分布は、上記以外の形式の情報であってもよい。また、ICRの確率密度分布は、複数の箇所についての速度ベクトルから算出されるものであれば、上記以外の方法によって算出されてもよい。
支承部33におけるICRの確率密度は、ピン33aによる回転であればピン33a周辺に集まる。また、ローラー33bによる平行移動であれば、支承部33におけるICR(上記の交点Iに相当)は、無限遠にある。
確率密度算出部13は、フレーム毎に算出したICRの確率密度分布を示す情報を判定部14に出力する。なお、確率密度算出部13によって算出されるICRの確率密度分布を支承部33の解析結果としてもよい。その場合、確率密度算出部13は、算出したICRの確率密度分布を支承部33の解析結果として出力してもよい。例えば、確率密度算出部13は、図2に示すように、ICRの確率密度分布を色の濃淡で表して動画像のフレームに重畳して表示出力するようにしてもよい。即ち、ICRの確率密度分布の時系列変化である密度軌跡が視覚的に分かるようにしてもよい。表示出力は、例えば、構造物解析システム10が備える表示装置で行われてもよいし、構造物解析システム10に接続された端末で行われてもよい。このように動画像上にICRの確率密度分布を可視化することで、それを確認した技術者等が直感的に構造物である支承部33の動きが適切なものであるか否かを判定することができる。なお、確率密度算出部13によるICRの確率密度分布を示す情報の出力は、上記以外の装置に対して、また、上記以外の形態で行われてもよい。
判定部14は、確率密度算出部13によって算出された確率密度に基づいて、解析対象の構造物である支承部33の動きが適切なものであるかを判定する機能部である。即ち、構造物解析システム10において、ICRの確率密度分布に基づいて支承部33の動きが適切なものであるかの判定が行われてもよい。判定部14は、確率密度算出部13から、フレーム毎のICRの確率密度分布を示す情報を入力して、当該情報を用いて上記の判定を行う。
例えば、判定部14は、確率密度算出部13によって算出された確率密度に基づく位置と解析対象の構造物である支承部33における予め設定されるICRとの距離を算出して、算出した距離から支承部33の動きが適切なものであるかを判定してもよい。この場合、図4の左側のフレームに示すように、判定部14は、予め設定された支承部33におけるICRの位置(座標)Cを記憶しておく。当該位置Cは、設計上又は構造解析上、回転中心となるべき位置である。支承部33の回転の場合、当該位置Cは、ピン33aの回転軸線に相当する位置(即ち、図4の左側のフレームにおけるピン33aの中心)である。判定部14は、確率密度算出部13から入力した情報に示されるICRの確率密度分布から確率密度が最も高い位置(即ち、図4の左側のフレームにおいて色が最も濃い位置)を特定する。判定部14は、確率密度が最も高い位置と予め設定される支承部33におけるICRの位置Cとの距離dを算出する。確率密度が最も高い位置はICRとなるべき位置であり、その位置が設計上又は構造解析上の回転中心に近い程、支承部33の動きは適切なものである。
判定部14は、動画像を構成する各フレームについて距離dを算出する。距離dは、図4の右側のグラフに示すように時刻(フレーム)毎の時系列の値となる。判定部14は、動画像について距離dの平均値Aを支承部33の動きの異常度として算出する。なお、平均値Aは、例えば、1台の車両の橋梁30の通過に対する時間帯の動画像に対して算出されればよい。即ち、1台の車両の橋梁30の通過に基づく判定が行われてもよい。但し、平均値Aは、上記以外の時間帯の動画像に対して算出されてもよい。例えば、平均値Aは、複数の時間帯(例えば、1日における複数の車両の橋梁30の通過)の動画像全体に対して算出されてもよい。即ち、1日単位での車両の橋梁30の通過に基づく判定が行われてもよい。
判定部14は、算出した平均値Aと予め設定された設計上又は構造解析上の許容範囲(許容誤差)とを比較する。平均値Aが許容範囲よりも大きい場合、判定部14は、支承部33の動きが適切なものではないと判定する。即ち、この場合、支承部33に異常が生じているとみなされる。一方で、平均値Aが許容範囲よりも大きくない場合、判定部14は、支承部33の動きが適切なものであると判定する。即ち、この場合、支承部33は正常である(支承部33に正常が生じていない)とみなされる。このように判定部14による判定は、確率密度算出部13によって算出されたICRの確率密度分布と設計情報又は構造解析結果とが照らし合わされて行われてもよい。
あるいは、判定部14は、確率密度算出部13によって算出された確率密度と、解析対象の構造物である支承部33について予め設定される支承部33における位置に応じたICRが存在する確率密度とを比較して、比較結果から支承部33の動きが適切なものであるかを判定してもよい。この場合、図5の左側のフレームに示すように、判定部14は、フレーム毎のICRの確率密度分布から、動画像についてのICRの確率密度分布D1を算出する。例えば、フレーム毎のICRの確率密度分布を位置(フレームの座標)毎に足し合わせて、確率密度の総和(積分値)が足し合わせ前と同じになるように確率密度の値を標準化して動画像についてのICRの確率密度分布D1を算出する。即ち、フレーム毎にICRの確率密度分布が移動する軌跡を、ICRの確率密度分布D1として算出する。なお、この場合に用いる動画像(時間帯)も、距離dを用いる場合とすればよい。
また、判定部14は、予め設定された支承部33におけるICRの確率密度分布D2を記憶しておく。当該確率密度分布D2は、設計上又は構造解析上、ICRとなるべき位置及び測定誤差のみを考慮した確率密度分布である。例えば、支承部33の動きがピン33aによる回転の場合、当該確率密度分布D2は、図5の右側に示すように、設計上又は構造解析上、回転中心となるべき位置を中心とした正規分布とする。あるいは、支承部33の動きがローラー33bによる平行移動の場合、当該確率密度分布D2は一様分布とする。確率密度算出部13によって算出されたICRの確率密度分布に基づく確率密度分布D1が、設計上又は構造解析上の回転中心に基づく確率密度分布D2に近い程、支承部33の動きは適切なものである。
判定部14は、これらの確率密度分布D1,D2を比較する。具体的には、判定部14は、これらの確率密度分布D1,D2からダイバージェンス(分布間距離)を算出する。例えば、判定部14は、ダイバージェンスとしてカルバック・ライブラー情報量(KL)を算出する。2つの確率密度分布D1,D2のKLの算出は、従来の方法によって行うことができる。判定部14は、算出したKLと予め設定した閾値とを比較する。KLが閾値よりも大きい場合、判定部14は、支承部33の動きが適切なものではないと判定する。即ち、この場合、支承部33に異常が生じているとみなされる。一方で、KLが閾値よりも大きくない場合、判定部14は、支承部33の動きが適切なものであると判定する。即ち、この場合、支承部33は正常である(支承部33に正常が生じていない)とみなされる。このように判定部14による判定は、ICRの確率密度分布の軌跡からダイバージェンスが求められて行われてもよい。
判定部14は、判定結果を示す情報を出力する。判定結果には、解析対象の構造物である支承部33の動きが適切なものであるか否かが含まれる。あるいは、判定結果には、解析対象の構造物である支承部33が、正常であるか否かが含まれてもよい。判定部14は、例えば、構造物解析システム10が備える表示装置又は構造物解析システム10に接続された端末に当該情報を送信して表示させる。判定部14による出力は、例えば、ユーザにより参照され、上述したように、構造物の補強又は改修等の判断に用いられる。なお、判定部14による出力は、上記以外の装置に対して、また、上記以外の形態で行われてもよい。以上が、本実施形態に係る構造物解析システム10の構成である。
引き続いて、図6のフローチャートを用いて、本実施形態に係る構造物解析システム10で実行される処理(構造物解析システム10が行う動作方法)を説明する。まず、カメラ20によって撮像された動画像がカメラ20から構造物解析システム10に送信されて、動画像取得部11によって受信されて取得される(S01)。続いて、速度ベクトル検出部12によって、動画像に基づいて、解析対象の構造物である支承部33の複数の箇所についての速度ベクトルが検出される(S02)。続いて、確率密度算出部13によって、複数の箇所についての速度ベクトルから、解析対象の構造物である支承部33におけるICRの確率密度分布が算出される(S03)。
続いて、判定部14によって、ICRの確率密度分布に基づいて、解析対象の構造物である支承部33の動きが適切なものであるかが判定される(S04)。続いて、判定部14によって、判定結果を示す情報が出力される(S05)。なお、情報の出力の際、ICRの確率密度分布を示す情報もあわせて出力されてもよい。例えば、ICRの確率密度分布が可視化できるような表示が行われてもよい。あるいは、判定部14による判定が行われず、ICRの確率密度分布を示す情報の出力のみが行われてもよい。以上が、本実施形態に係る構造物解析システム10で実行される処理である。
上述したように本実施形態では、解析対象の構造物である支承部33におけるICRの確率密度分布が算出される。ICRの確率密度分布は、支承部33全体の動きを表したものであり、支承部33全体の動きを考慮した支承部33の状態判定に用いられる。従って、本実施形態によれば、適切に橋梁30の支承部33等の構造物の状態判定を可能にすることができる。例えば、従来の目視点検では、技術者が表面上の錆及び腐食を確認したり、機構の周辺コンクリートのひび割れ等を見たりして経験的に機構の動きを予測しているに過ぎず実際の動きを加味できていない。本実施形態では、上記のような技術者の経験的な予測に基づく判定を定量化することができる。
また、本実施形態のようにICRの確率密度分布は、速度ベクトルに対応する線分の垂直二等分線に基づいて算出されてもよい。この構成によれば、適切かつ確実にICRの確率密度分布を算出することができ、実施形態を確実に実施することができる。但し、ICRの確率密度分布は、上記以外の方法で算出される必要はなく、速度ベクトルに基づいて算出されればよい。
また、本実施形態のようにICRの確率密度分布に基づく判定部14による判定が行われてもよい。この構成によれば、構造物の動きが適切なものであるかを確実かつ適切に判定することができる。また、判定部14による判定は、例えば、上述した距離dを用いる方法、又は確率密度分布D1,D2を比較する方法で行われればよい。この構成によれば、更に適切かつ確実に判定を行うことができる。但し、判定部14による判定は、必ずしも上記のように行われる必要はなく、確率密度算出部13によって算出されたICRの確率密度分布が用いられたものであればどのような方法で行われてもよい。その際、統計又は機械学習等による異常検知の手法が用いられてもよい。また、判定部14による判定は必ずしも行われる必要はなく、構造物解析システム10は、確率密度算出部13によるICRの確率密度分布の算出が行われるものであればよい。
なお、上記実施形態の説明に用いたブロック図は、機能単位のブロックを示している。これらの機能ブロック(構成部)は、ハードウェア及びソフトウェアの少なくとも一方の任意の組み合わせによって実現される。また、各機能ブロックの実現方法は特に限定されない。すなわち、各機能ブロックは、物理的又は論理的に結合した1つの装置を用いて実現されてもよいし、物理的又は論理的に分離した2つ以上の装置を直接的又は間接的に(例えば、有線、無線などを用いて)接続し、これら複数の装置を用いて実現されてもよい。機能ブロックは、上記1つの装置又は上記複数の装置にソフトウェアを組み合わせて実現されてもよい。
機能には、判断、決定、判定、計算、算出、処理、導出、調査、探索、確認、受信、送信、出力、アクセス、解決、選択、選定、確立、比較、想定、期待、見做し、報知(broadcasting)、通知(notifying)、通信(communicating)、転送(forwarding)、構成(configuring)、再構成(reconfiguring)、割り当て(allocating、mapping)、割り振り(assigning)などがあるが、これらに限られない。たとえば、送信を機能させる機能ブロック(構成部)は、送信部(transmitting unit)や送信機(transmitter)と呼称される。いずれも、上述したとおり、実現方法は特に限定されない。
例えば、本開示の一実施の形態における構造物解析システム10は、本開示の情報処理を行うコンピュータとして機能してもよい。図7は、本開示の一実施の形態に係る構造物解析システム10のハードウェア構成の一例を示す図である。上述の構造物解析システム10は、物理的には、プロセッサ1001、メモリ1002、ストレージ1003、通信装置1004、入力装置1005、出力装置1006、バス1007などを含むコンピュータ装置として構成されてもよい。
なお、以下の説明では、「装置」という文言は、回路、デバイス、ユニットなどに読み替えることができる。構造物解析システム10のハードウェア構成は、図に示した各装置を1つ又は複数含むように構成されてもよいし、一部の装置を含まずに構成されてもよい。
構造物解析システム10における各機能は、プロセッサ1001、メモリ1002などのハードウェア上に所定のソフトウェア(プログラム)を読み込ませることによって、プロセッサ1001が演算を行い、通信装置1004による通信を制御したり、メモリ1002及びストレージ1003におけるデータの読み出し及び書き込みの少なくとも一方を制御したりすることによって実現される。
プロセッサ1001は、例えば、オペレーティングシステムを動作させてコンピュータ全体を制御する。プロセッサ1001は、周辺装置とのインターフェース、制御装置、演算装置、レジスタなどを含む中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)によって構成されてもよい。例えば、上述の構造物解析システム10における各機能は、プロセッサ1001によって実現されてもよい。
また、プロセッサ1001は、プログラム(プログラムコード)、ソフトウェアモジュール、データなどを、ストレージ1003及び通信装置1004の少なくとも一方からメモリ1002に読み出し、これらに従って各種の処理を実行する。プログラムとしては、上述の実施の形態において説明した動作の少なくとも一部をコンピュータに実行させるプログラムが用いられる。例えば、構造物解析システム10における各機能は、メモリ1002に格納され、プロセッサ1001において動作する制御プログラムによって実現されてもよい。上述の各種処理は、1つのプロセッサ1001によって実行される旨を説明してきたが、2以上のプロセッサ1001により同時又は逐次に実行されてもよい。プロセッサ1001は、1以上のチップによって実装されてもよい。なお、プログラムは、電気通信回線を介してネットワークから送信されても良い。
メモリ1002は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、例えば、ROM(Read Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、RAM(Random Access Memory)などの少なくとも1つによって構成されてもよい。メモリ1002は、レジスタ、キャッシュ、メインメモリ(主記憶装置)などと呼ばれてもよい。メモリ1002は、本開示の一実施の形態に係る情報処理を実施するために実行可能なプログラム(プログラムコード)、ソフトウェアモジュールなどを保存することができる。
ストレージ1003は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、例えば、CD-ROM(Compact Disc ROM)などの光ディスク、ハードディスクドライブ、フレキシブルディスク、光磁気ディスク(例えば、コンパクトディスク、デジタル多用途ディスク、Blu-ray(登録商標)ディスク)、スマートカード、フラッシュメモリ(例えば、カード、スティック、キードライブ)、フロッピー(登録商標)ディスク、磁気ストリップなどの少なくとも1つによって構成されてもよい。ストレージ1003は、補助記憶装置と呼ばれてもよい。構造物解析システムが備える記憶媒体は、例えば、メモリ1002及びストレージ1003の少なくとも一方を含むデータベース、サーバその他の適切な媒体であってもよい。
通信装置1004は、有線ネットワーク及び無線ネットワークの少なくとも一方を介してコンピュータ間の通信を行うためのハードウェア(送受信デバイス)であり、例えばネットワークデバイス、ネットワークコントローラ、ネットワークカード、通信モジュールなどともいう。
入力装置1005は、外部からの入力を受け付ける入力デバイス(例えば、キーボード、マウス、マイクロフォン、スイッチ、ボタン、センサなど)である。出力装置1006は、外部への出力を実施する出力デバイス(例えば、ディスプレイ、スピーカー、LEDランプなど)である。なお、入力装置1005及び出力装置1006は、一体となった構成(例えば、タッチパネル)であってもよい。
また、プロセッサ1001、メモリ1002などの各装置は、情報を通信するためのバス1007によって接続される。バス1007は、単一のバスを用いて構成されてもよいし、装置間ごとに異なるバスを用いて構成されてもよい。
また、構造物解析システム10は、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP:Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などのハードウェアを含んで構成されてもよく、当該ハードウェアにより、各機能ブロックの一部又は全てが実現されてもよい。例えば、プロセッサ1001は、これらのハードウェアの少なくとも1つを用いて実装されてもよい。
本開示において説明した各態様/実施形態の処理手順、シーケンス、フローチャートなどは、矛盾の無い限り、順序を入れ替えてもよい。例えば、本開示において説明した方法については、例示的な順序を用いて様々なステップの要素を提示しており、提示した特定の順序に限定されない。
入出力された情報等は特定の場所(例えば、メモリ)に保存されてもよいし、管理テーブルを用いて管理してもよい。入出力される情報等は、上書き、更新、又は追記され得る。出力された情報等は削除されてもよい。入力された情報等は他の装置へ送信されてもよい。
判定は、1ビットで表される値(0か1か)によって行われてもよいし、真偽値(Boolean:true又はfalse)によって行われてもよいし、数値の比較(例えば、所定の値との比較)によって行われてもよい。
本開示において説明した各態様/実施形態は単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよいし、実行に伴って切り替えて用いてもよい。また、所定の情報の通知(例えば、「Xであること」の通知)は、明示的に行うものに限られず、暗黙的(例えば、当該所定の情報の通知を行わない)ことによって行われてもよい。
以上、本開示について詳細に説明したが、当業者にとっては、本開示が本開示中に説明した実施形態に限定されるものではないということは明らかである。本開示は、請求の範囲の記載により定まる本開示の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。したがって、本開示の記載は、例示説明を目的とするものであり、本開示に対して何ら制限的な意味を有するものではない。
ソフトウェアは、ソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェア、マイクロコード、ハードウェア記述言語と呼ばれるか、他の名称で呼ばれるかを問わず、命令、命令セット、コード、コードセグメント、プログラムコード、プログラム、サブプログラム、ソフトウェアモジュール、アプリケーション、ソフトウェアアプリケーション、ソフトウェアパッケージ、ルーチン、サブルーチン、オブジェクト、実行可能ファイル、実行スレッド、手順、機能などを意味するよう広く解釈されるべきである。
また、ソフトウェア、命令、情報などは、伝送媒体を介して送受信されてもよい。例えば、ソフトウェアが、有線技術(同軸ケーブル、光ファイバケーブル、ツイストペア、デジタル加入者回線(DSL:Digital Subscriber Line)など)及び無線技術(赤外線、マイクロ波など)の少なくとも一方を使用してウェブサイト、サーバ、又は他のリモートソースから送信される場合、これらの有線技術及び無線技術の少なくとも一方は、伝送媒体の定義内に含まれる。
本開示において使用する「システム」及び「ネットワーク」という用語は、互換的に使用される。
また、本開示において説明した情報、パラメータなどは、絶対値を用いて表されてもよいし、所定の値からの相対値を用いて表されてもよいし、対応する別の情報を用いて表されてもよい。
本開示で使用する「判断(determining)」、「決定(determining)」という用語は、多種多様な動作を包含する場合がある。「判断」、「決定」は、例えば、判定(judging)、計算(calculating)、算出(computing)、処理(processing)、導出(deriving)、調査(investigating)、探索(looking up、search、inquiry)(例えば、テーブル、データベース又は別のデータ構造での探索)、確認(ascertaining)した事を「判断」「決定」したとみなす事などを含み得る。また、「判断」、「決定」は、受信(receiving)(例えば、情報を受信すること)、送信(transmitting)(例えば、情報を送信すること)、入力(input)、出力(output)、アクセス(accessing)(例えば、メモリ中のデータにアクセスすること)した事を「判断」「決定」したとみなす事などを含み得る。また、「判断」、「決定」は、解決(resolving)、選択(selecting)、選定(choosing)、確立(establishing)、比較(comparing)などした事を「判断」「決定」したとみなす事を含み得る。つまり、「判断」「決定」は、何らかの動作を「判断」「決定」したとみなす事を含み得る。また、「判断(決定)」は、「想定する(assuming)」、「期待する(expecting)」、「みなす(considering)」などで読み替えられてもよい。
「接続された(connected)」、「結合された(coupled)」という用語、又はこれらのあらゆる変形は、2又はそれ以上の要素間の直接的又は間接的なあらゆる接続又は結合を意味し、互いに「接続」又は「結合」された2つの要素間に1又はそれ以上の中間要素が存在することを含むことができる。要素間の結合又は接続は、物理的なものであっても、論理的なものであっても、或いはこれらの組み合わせであってもよい。例えば、「接続」は「アクセス」で読み替えられてもよい。本開示で使用する場合、2つの要素は、1又はそれ以上の電線、ケーブル及びプリント電気接続の少なくとも一つを用いて、並びにいくつかの非限定的かつ非包括的な例として、無線周波数領域、マイクロ波領域及び光(可視及び不可視の両方)領域の波長を有する電磁エネルギーなどを用いて、互いに「接続」又は「結合」されると考えることができる。
本開示において使用する「に基づいて」という記載は、別段に明記されていない限り、「のみに基づいて」を意味しない。言い換えれば、「に基づいて」という記載は、「のみに基づいて」と「に少なくとも基づいて」の両方を意味する。
本開示において使用する「第1の」、「第2の」などの呼称を使用した要素へのいかなる参照も、それらの要素の量又は順序を全般的に限定しない。これらの呼称は、2つ以上の要素間を区別する便利な方法として本開示において使用され得る。したがって、第1及び第2の要素への参照は、2つの要素のみが採用され得ること、又は何らかの形で第1の要素が第2の要素に先行しなければならないことを意味しない。
本開示において、「含む(include)」、「含んでいる(including)」及びそれらの変形が使用されている場合、これらの用語は、用語「備える(comprising)」と同様に、包括的であることが意図される。さらに、本開示において使用されている用語「又は(or)」は、排他的論理和ではないことが意図される。
本開示において、例えば、英語でのa, an及びtheのように、翻訳により冠詞が追加された場合、本開示は、これらの冠詞の後に続く名詞が複数形であることを含んでもよい。
本開示において、「AとBが異なる」という用語は、「AとBが互いに異なる」ことを意味してもよい。なお、当該用語は、「AとBがそれぞれCと異なる」ことを意味してもよい。「離れる」、「結合される」などの用語も、「異なる」と同様に解釈されてもよい。