以下、図面に基づいて複数の実施形態を説明する。複数の実施形態において、機能的におよび/または構造的に対応する部分および/または関連付けられる部分には同一の参照符号が付される場合がある。対応する部分および/または関連付けられる部分については、他の実施形態の説明を参照することができる。
(第1実施形態)
本実施形態の半導体装置は、たとえば、回転電機を駆動源とする移動体の電力変換装置に適用される。移動体は、たとえば、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HV)、燃料電池車(FCV)などの電動車両、ドローンなどの飛行体、船舶、建設機械、農業機械である。以下では、車両に適用される例について説明する。
(第1実施形態)
先ず、図1に基づき、車両の駆動システムの概略構成について説明する。
<車両の駆動システム>
図1に示すように、車両の駆動システム1は、直流電源2と、モータジェネレータ3と、電力変換装置4を備えている。
直流電源2は、充放電可能な二次電池で構成された直流電圧源である。二次電池は、たとえばリチウムイオン電池、ニッケル水素電池である。モータジェネレータ3は、三相交流方式の回転電機である。モータジェネレータ3は、車両の走行駆動源、すなわち電動機として機能する。モータジェネレータ3は、回生時に発電機として機能する。電力変換装置4は、直流電源2とモータジェネレータ3との間で電力変換を行う。
<電力変換装置>
次に、図1に基づき、電力変換装置4の回路構成について説明する。電力変換装置4は、平滑コンデンサ5と、インバータ6を備えている。
平滑コンデンサ5は、主として、直流電源2から供給される直流電圧を平滑化する。平滑コンデンサ5は、高電位側の電力ラインであるPライン7と低電位側の電力ラインであるNライン8とに接続されている。Pライン7は直流電源2の正極に接続され、Nライン8は直流電源2の負極に接続されている。平滑コンデンサ5の正極は、直流電源2とインバータ6との間において、Pライン7に接続されている。同じく負極は、直流電源2とインバータ6との間において、Nライン8に接続されている。平滑コンデンサ5は、直流電源2に並列に接続されている。
インバータ6は、DC-AC変換回路である。インバータ6は、図示しない制御回路によるスイッチング制御にしたがって、直流電圧を三相交流電圧に変換し、モータジェネレータ3へ出力する。これにより、モータジェネレータ3は、所定のトルクを発生するように駆動する。インバータ6は、車両の回生制動時、車輪からの回転力を受けてモータジェネレータ3が発電した三相交流電圧を、制御回路によるスイッチング制御にしたがって直流電圧に変換し、Pライン7へ出力する。このように、インバータ6は、直流電源2とモータジェネレータ3との間で双方向の電力変換を行う。
インバータ6は、三相分の上下アーム回路9を備えて構成されている。上下アーム回路9は、レグと称されることがある。上下アーム回路9は、上アーム9Hと、下アーム9Lをそれぞれ有している。上アーム9Hと下アーム9Lは、上アーム9HをPライン7側として、Pライン7とNライン8との間で直列接続されている。上アーム9Hと下アーム9Lとの接続点は、出力ライン10を介して、モータジェネレータ3における対応する相の巻線3aに接続されている。インバータ6は、6つのアームを有している。Pライン7、Nライン8、および出力ライン10それぞれの少なくとも一部は、たとえばバスバーなどの導電部材により構成されている。
本実施形態では、各アームを構成するスイッチング素子として、nチャネル型の絶縁ゲートバイポーラトランジスタ11(以下、IGBT11と示す)を採用している。IGBT11のそれぞれには、還流用のダイオード12(以下、FWD12と示す)が逆並列に接続されている。上アーム9Hにおいて、IGBT11のコレクタが、Pライン7に接続されている。下アーム9Lにおいて、IGBT11のエミッタが、Nライン8に接続されている。そして、上アーム9HにおけるIGBT11のエミッタと、下アーム9LにおけるIGBT11のコレクタが相互に接続されている。FWD12のアノードは対応するIGBT11のエミッタに接続され、カソードはコレクタに接続されている。
電力変換装置4は、電力変換回路として、コンバータをさらに備えてもよい。コンバータは、直流電圧を異なる値の直流電圧に変換するDC-DC変換回路である。コンバータは、直流電源2と平滑コンデンサ5との間に設けられる。コンバータは、たとえばリアクトルと、上記した上下アーム回路9を備えて構成される。この構成によれば、昇降圧が可能である。電力変換装置4は、直流電源2からの電源ノイズを除去するフィルタコンデンサを備えてもよい。フィルタコンデンサは、直流電源2とコンバータとの間に設けられる。
電力変換装置4は、インバータ6などを構成するスイッチング素子の駆動回路を備えてもよい。駆動回路は、制御回路の駆動指令に基づいて、対応するアームのIGBT11のゲートに駆動電圧を供給する。駆動回路は、駆動電圧の印加により、対応するIGBT11を駆動、すなわちオン駆動、オフ駆動させる。駆動回路は、ドライバと称されることがある。
電力変換装置4は、スイッチング素子の制御回路を備えてもよい。制御回路は、IGBT11を動作させるための駆動指令を生成し、駆動回路に出力する。制御回路は、図示しない上位ECUから入力されるトルク要求、各種センサにて検出された信号に基づいて、駆動指令を生成する。各種センサとして、たとえば電流センサ、回転角センサ、電圧センサがある。電流センサは、各相の巻線3aに流れる相電流を検出する。回転角センサは、モータジェネレータ3の回転子の回転角を検出する。電圧センサは、平滑コンデンサ5の両端電圧を検出する。制御回路は、駆動指令として、たとえばPWM信号を出力する。制御回路は、たとえばマイコン(マイクロコンピュータ)を備えて構成されている。ECUは、Electronic Control Unitの略称である。PWMは、Pulse Width Modulationの略称である。
<半導体装置>
次に、図2~図6に基づき、半導体装置の概略構成について説明する。図2は、エミッタ電極側から見た半導体装置の平面図である。図3は、図2のIII-III線に沿う断面図である。図4は、図2のIV-IV線に沿う断面図である。図5は、図2に対して封止樹脂体を省略した図である。図6は、図5に対してエミッタ電極側のヒートシンクを省略した図である。図5および図6では、便宜上、タイバーカット前のリードフレームの状態を示している。
以下では、半導体装置を構成する要素の一部について、符号末尾に上アーム9H側を示す「H」を付与し、下アーム9L側を示す「L」を付与する。要素の他の一部について、便宜上、上アーム9Hと下アーム9Lとで共通の符号を付与する。
また、半導体素子の板厚方向をZ方向、Z方向に直交する一方向、具体的には2つの半導体素子の並び方向をX方向と示す。Z方向およびX方向の両方向に直交する方向をY方向と示す。特に断わりのない限り、Z方向から平面視した形状、換言すればX方向およびY方向により規定されるXY面に沿う形状を平面形状とする。Z方向からの平面視を単に平面視と示す。
図2~図6に示すように、半導体装置15は、封止樹脂体20と、半導体素子30と、ヒートシンク40と、ヒートシンク50およびターミナル60と、継手部70~72と、主端子80~82および信号端子85を備えている。半導体装置15は、上記した一相分の上下アーム回路9を構成する。
封止樹脂体20は、半導体装置15を構成する他の要素の一部を封止している。他の要素の残りの部分は、封止樹脂体20の外に露出している。封止樹脂体20は、たとえばエポキシ系樹脂を材料とする。封止樹脂体20は、たとえばトランスファモールド法により成形されている。図2~図4に示すように、封止樹脂体20は平面略矩形状をなしている。封止樹脂体20は、一面20aと、Z方向において一面20aとは反対の面である裏面20bを有している。一面20aおよび裏面20bは、たとえば平坦面となっている。
半導体素子30は、シリコン(Si)、シリコンよりもバンドギャップが広いワイドバンドギャップ半導体などを材料とする半導体基板に、素子が形成されてなる。ワイドバンドギャップ半導体としては、たとえばシリコンカーバイド(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、酸化ガリウム(Ga2O3)、ダイヤモンドがある。半導体素子30は、半導体チップと称されることがある。
素子は、Z方向に主電流が流れるように縦型構造をなしている。縦型素子として、IGBT、MOSFET、ダイオードなどを採用することができる。本実施形態では、縦型素子として、ひとつのアームを構成するIGBT11およびFWD12が形成されている。縦型素子は、RC(Reverse Conducting)-IGBTである。半導体素子30は、図示しないゲート電極を有している。ゲート電極は、たとえばトレンチ構造をなしている。
半導体素子30は、自身の板厚方向、すなわちZ方向における両面に、素子の主電極を有している。具体的には、主電極として、一面側にエミッタ電極31を有し、裏面側にコレクタ電極32を有している。エミッタ電極31は、FWD12のアノード電極を兼ねている。コレクタ電極32は、FWD12のカソード電極を兼ねている。エミッタ電極31が、主電極に相当する。
半導体素子30は、平面略矩形状をなしている。図6に示すように、半導体素子30は、表面においてエミッタ電極31とは異なる位置に形成されたパッド33を有している。エミッタ電極31およびパッド33は、半導体基板の一面の図示しない保護膜からそれぞれ露出している。エミッタ電極31は、半導体素子30の一面の一部分に形成されている。コレクタ電極32は、裏面のほぼ全面に形成されている。
パッド33は、信号用の電極である。パッド33は、エミッタ電極31と電気的に分離されている。パッド33は、Y方向において、エミッタ電極31の形成領域とは反対側の端部に形成されている。パッド33は、少なくともゲート電極用のパッドを含む。本実施形態において、半導体素子30は、5つのパッド33を有している。具体的には、ゲート電極用、エミッタ電極31の電位を検出するケルビンエミッタ用、電流センス用、半導体素子30の温度を検出する感温ダイオードのアノード電位用、同じくカソード電位用を有している。5つのパッド33は、平面略矩形状の半導体素子30において、Y方向の一端側にまとめて形成されるとともに、X方向に並んで形成されている。
半導体装置15は、2つの半導体素子30を備えている。具体的には、上アーム9Hを構成する半導体素子30Hと、下アーム9Lを構成する半導体素子30Lを備えている。半導体素子30H、30Lは、互いに同様の構成を有している。半導体素子30H、30Lは、X方向に並んでいる。半導体素子30H、30Lは、Z方向において互いにほぼ同じ位置に配置されている。
ヒートシンク40、50は、Z方向において半導体素子30を挟むように配置されている。ヒートシンク40、50は、Z方向において互いに対向するように配置されている。ヒートシンク40、50は、平面視において半導体素子30を内包している。ヒートシンク40、50は、半導体素子30の生じた熱を、半導体装置15の両面側で外部に放熱する。ヒートシンク40、50として、たとえばCu、Cu合金などを材料とする金属板、DBC(Direct Bonded Copper)基板などを採用することができる。ヒートシンク40、50は、表面に、NiやAuなどのめっき膜を備えてもよい。本実施形態のヒートシンク40、50は、Cuを材料とする金属板である。
ヒートシンク40は、Z方向において半導体素子30の裏面側に配置され、はんだ90を介して、コレクタ電極32に電気的に接続された配線部材である。はんだ90は、ヒートシンク40とコレクタ電極32とを接続(接合)している。ヒートシンク40は、半導体素子30との対向面である実装面40aと、実装面40aとは反対の面である裏面40bを有している。ヒートシンク40の実装面40aと半導体素子30のコレクタ電極32との間にはんだ90が介在し、はんだ接合部が形成されている。
ヒートシンク40は、リードフレーム86の一部分として構成されている。ヒートシンク40は、異形条のリードフレーム86において厚肉部である。半導体装置15は、2つのヒートシンク40をそれぞれ備えている。半導体装置15は、上アーム9Hを構成するヒートシンク40Hと、下アーム9Lを構成するヒートシンク40Lをそれぞれ備えている。
図6に示すように、ヒートシンク40H、40Lは、平面略矩形状をなしている。ヒートシンク40H、40Lは、X方向に並んでいる。図3および図4に示すように、ヒートシンク40H、40Lは、互いにほぼ同じ厚みを有し、Z方向において互いにほぼ同じ位置に配置されている。ヒートシンク40Hの実装面40aと半導体素子30Hのコレクタ電極32との間、および、ヒートシンク40Lの実装面40aと半導体素子30Lのコレクタ電極32との間に、はんだ90による接合部がそれぞれ形成されている。
ヒートシンク40H、40Lは、Z方向からの平面視において、対応する半導体素子30を内包している。ヒートシンク40H、40Lの裏面40bは、封止樹脂体20から露出している。裏面40bは、放熱面、露出面と称されることがある。裏面40bは、封止樹脂体20の裏面20bと略面一である。ヒートシンク40H、40Lの裏面40bは、X方向に並んでいる。
ヒートシンク50は、ターミナル60を介して、エミッタ電極31に接続されている。本実施形態のヒートシンク50は、ターミナル60を介してエミッタ電極31に電気的に接続され、エミッタ電極31の配線部材として機能する。半導体素子30のエミッタ電極31とターミナル60との間にはんだ91による接合部が形成され、ターミナル60とヒートシンク50との間にはんだ92による接合部が形成されている。ヒートシンク50が、放熱部材に相当する。
ヒートシンク50は、半導体素子30側の面である実装面50aと、実装面50aとは反対の面である裏面50bを有している。半導体装置15は、2つのヒートシンク50をそれぞれ備えている。半導体装置15は、上アーム9Hを構成するヒートシンク50Hと、下アーム9Lを構成するヒートシンク50Lをそれぞれ備えている。
図5に示すように、ヒートシンク50H、50Lは、平面略矩形状をなしている。ヒートシンク50H、50Lは、X方向に並んでいる。図3および図4に示すように、ヒートシンク50H、50Lは、互いにほぼ同じ厚みを有し、Z方向において互いにほぼ同じ位置に配置されている。ヒートシンク50H、50Lは、Z方向からの平面視において、対応する半導体素子30およびターミナル60を内包している。
ヒートシンク50H、50Lの実装面50aには、溢れたはんだ92を収容する溝51が形成されている。溝51は、実装面50aにおいてはんだ接合部を取り囲んでいる。溝51は、たとえば環状に形成されている。ヒートシンク50H、50Lの裏面50bは、封止樹脂体20から露出している。裏面50bは、放熱面、露出面と称されることがある。裏面50bは、封止樹脂体20の一面20aと略面一である。ヒートシンク50H、50Lの裏面50bは、X方向に並んでいる。
ターミナル60は、半導体素子30(エミッタ電極31)とヒートシンク50との熱伝導経路の途中に位置する。ターミナル60は、Cu、Cu合金などの金属材料を含んでいる。表面に、めっき膜を備えてもよい。ターミナル60は、平面視においてエミッタ電極31とほぼ同じ大きさを有する平面略矩形状の柱状体である。ターミナル60は、Z方向においてエミッタ電極31と対向する端面60aと、ヒートシンク50と対向する端面60bを有している。ターミナル60は、金属ブロック体、中継部材と称されることがある。端面60aが第1端面に相当し、端面60bが第2端面に相当する。
半導体装置15は、2つのターミナル60を備えている。具体的には、上アーム9Hを構成するターミナル60Hと、下アーム9Lを構成するターミナル60Lを備えている。ターミナル60Hの端面60aと半導体素子30Hのエミッタ電極31との間、および、ターミナル60Lの端面60aと半導体素子30Lのエミッタ電極31との間に、はんだ91による接合部がそれぞれ形成されている。ヒートシンク50Hの実装面50aとターミナル60Hの端面60bとの間、および、ヒートシンク50Lの実装面50aとターミナル60Lの端面60bとの間に、はんだ92による接合部がそれぞれ形成されている。
継手部70~72は、上下アーム回路9を構成する要素間をつないでいる。継手部は、半導体装置15を構成する要素間をつないでいる。図3および図6に示すように、継手部70は、ヒートシンク40Lに連なっている。継手部70の厚みは、ヒートシンク40Lよりも薄い。継手部70は、ヒートシンク40Lに対して、実装面40aと略面一の状態で、ヒートシンク40H側の面に連なっている。継手部70は、2つの屈曲部を有することで、ZX平面において略クランク状をなしている。継手部70は、封止樹脂体20によって覆われている。継手部70は、ヒートシンク40Lに対して一体的に設けられることで連なってもよいし、別部材として設けられ、接続により連なってもよい。本実施形態において、継手部70は、リードフレーム96の一部として、ヒートシンク40Lと一体的に設けられている。
図3および図5に示すように、継手部71、72は、対応するヒートシンク50に連なっている。継手部71は、ヒートシンク50Hに連なっている。継手部72は、ヒートシンク50Lに連なっている。継手部71、72の厚みは、対応するヒートシンク50よりも薄い。継手部71、72は、封止樹脂体20によって覆われている。継手部71、72は、ヒートシンク50に対して一体的に設けられることで連なってもよいし、別部材として設けられ、接続により連なってもよい。本実施形態において、継手部71、72は、対応するヒートシンク50H、50Lに対して一体的に設けられている。継手部71、72は、2つのヒートシンク50H、50Lにおいて、互いに対向する側面からX方向に延設されている。
継手部71を含むヒートシンク50Hと、継手部72を含むヒートシンク50Lとが共通部材となっている。継手部71を含むヒートシンク50Hと、継手部72を含むヒートシンク50Lとの配置は、Z軸を回転軸とする2回対称となっている。継手部70と継手部71との対向面間にはんだ93が介在し、はんだ接合部が形成されている。
継手部71の接合面には、溢れたはんだ93を収容する溝73が形成されている。溝73は、はんだ接合部を取り囲むように環状に形成されている。同様に、継手部72の接合面にも、溢れたはんだを収容する溝73が形成されている。本実施形態において、溝73がプレス加工により形成されている。このため、継手部71、72は、溝73の裏面側に凸部74を有している。
主端子80~82および信号端子85は、外部接続端子である。主端子80、81は、電源端子である。主端子80は、平滑コンデンサ5の正極端子に電気的に接続される。主端子81は、平滑コンデンサ5の負極端子に電気的に接続される。主端子80は、P端子、高電位電源端子と称されることがある。主端子81は、N端子、低電位電源端子と称されることがある。
図5および図6に示すように、主端子80は、ヒートシンク40HにおけるY方向の一端に連なっている。主端子80の厚みは、ヒートシンク40Hよりも薄い。主端子80は、実装面40aと略面一でヒートシンク40Hに連なっている。主端子80は、ヒートシンク40HからY方向に延設され、封止樹脂体20の側面20cから外部に突出している。側面20cは、一面20aと裏面20bとをつなぐ面である。主端子80は、封止樹脂体20により覆われる部分の途中に屈曲部を有し、側面20cにおいてZ方向の中央付近から突出している。
図4および図5に示すように、主端子81は、継手部72に接続されている。主端子81と継手部72との対向面間にはんだ94が介在し、はんだ接合部が形成されている。主端子81は、Y方向に延設されて、主端子80と同じ側面20cから封止樹脂体20の外に突出している。なお、本実施形態のはんだ90~94は、たとえば、Snの他に、Cu、Niなどを含む多元系の鉛フリーはんだである。
主端子81は、Y方向の一端付近に継手部72との接続部81aを有している。主端子81のうち、接続部81aを含む一部分が封止樹脂体20により覆われ、残りの部分が封止樹脂体20から突出している。接続部81aは、封止樹脂体20から突出した部分よりも板厚が厚い。接続部81aの板厚は、たとえばヒートシンク40とほぼ同じ厚みである。主端子81も、主端子同様に屈曲部を有し、側面20cにおいてZ方向の中央付近から突出している。
主端子82は、上アーム9Hと下アーム9Lとの接続点に接続されている。主端子82は、モータジェネレータ3の対応する相の巻線3a(固定子コイル)に電気的に接続される。主端子82は、出力端子、交流端子、O端子と称されることがある。主端子82は、ヒートシンク40LにおけるY方向の一端に連なっている。主端子82の厚みは、ヒートシンク40Lよりも薄い。主端子82は、実装面40aと略面一でヒートシンク40Lに連なっている。主端子82は、ヒートシンク40LからY方向に延設され、主端子80と同じ側面20cから封止樹脂体20の外に突出している。主端子82も、主端子80同様に屈曲部を有し、側面20cにおいてZ方向の中央付近から突出している。3本の主端子80~82は、X方向において主端子80、主端子81、主端子82の順に配置されている。
信号端子85は、対応する半導体素子30のパッド33に電気的に接続されている。本実施形態では、ボンディングワイヤ95を介して電気的に接続されている。信号端子85は、Y方向に延設されており、封止樹脂体20の側面20dから外部に突出している。側面20dは、Y方向において側面20cとは反対の面である。本実施形態では、ひとつの半導体素子30に対して5本の信号端子85が設けられている。
なお、図2、図5、および図6に示す符号97は、吊りリードである。ヒートシンク40(40H、40L)と、継手部70と、主端子80~82と、信号端子85は、共通部材であるリードフレーム96に構成されている。このリードフレーム96は部分的に厚みが異なる異形条である。信号端子85は、カット前の状態で、タイバー98を介して吊りリード97に接続される。複数の信号端子85は、タイバー98のカットにより、互いに電気的に分離されている。複数の主端子80~82も、タイバー98のカットにより、互いに電気的に分離されている。タイバー98など、リードフレーム96の不要部分は、封止樹脂体20の成形後にカット(除去)されている。
上記したように、半導体装置15では、封止樹脂体20によって一相分の上下アーム回路9を構成する複数の半導体素子30が封止されている。封止樹脂体20は、複数の半導体素子30、ヒートシンク40それぞれの一部、ヒートシンク50それぞれの一部、ターミナル60、継手部70~72、主端子80~82および信号端子85それぞれの一部を、一体的に封止している。
Z方向において、ヒートシンク40、50の間に、半導体素子30が配置されている。これにより、半導体素子30の熱を、Z方向において両側に放熱することができる。半導体装置15は、両面放熱構造をなしている。ヒートシンク40の裏面40bは、封止樹脂体20の裏面20bと略面一となっている。ヒートシンク50の裏面50bは、封止樹脂体20の一面20aと略面一となっている。裏面40b、50bが露出面であるため、放熱性を高めることができる。
<ターミナル>
次に、図7~図9に基づき、ターミナルについて説明する。図7は、ターミナルを図6に示すX1方向から見た平面図である。すなわち、ターミナルの側面図である。図8は、ターミナルを図7に示すZ1方向、すなわち半導体素子側から見た平面図である。図8では、便宜上、側面において半導体素子側の端部付近の粗化領域のみを図示している。図8では、領域の明確化のために、粗化領域にハッチングを施している。図9は、図7のIX-IX線に沿う断面図である。図7~図9では、上アーム側のターミナルについて例示するが、下アーム側のターミナルも同様の構成を有している。
図7および図8に示すように、ターミナル60(ターミナル60H)は、端面60a、60bをつなぐ側面60cを有している。側面60cは、端面60aおよび端面60bに連なっている。上記したように、本実施形態のターミナル60は、平面略矩形状の柱状体である。側面60cは、4つの平面部600、601、602、603と、4つの角部604、605、606、607を有している。平面部600~603は、平面視において矩形状の辺に相当するため、辺部と称されることがある。平面部600、601はX方向において両端に設けられており、平面部602、603はY方向において両端に設けられている。平面部603が、パッド33側の面である。
角部604~607は、隣り合う平面部の間に設けられている。角部604は平面部600、602の間に設けられ、角部605は平面部600、603の間に設けられている。角部606は平面部601、602の間に設けられ、角部607は平面部601、603の間に設けられている。本実施形態の角部604~607は、丸みを帯びている。
ターミナル60は、側面60cに、粗化領域61と非粗化領域62を有している。粗化領域61はターミナル60の表面が粗化された領域であり、非粗化領域62は粗化されていない領域である。非粗化領域62は、粗化領域61に較べてはんだに対する濡れ性が高い。ターミナル60の側面60cは、一部が粗化領域61であり、残りの部分が非粗化領域62である。側面60cにおいて、半導体素子30側の端部の一部が粗化領域61であり、端部の残りの部分が非粗化領域62である。側面60cにおいて、半導体素子30側の端部とは、端面60aとの境界からZ方向に途中までの領域である。
図9に示すように、ターミナル60は、母材63と、母材63の表面上に設けられた金属膜64および凹凸酸化膜65を有している。母材63は、ターミナル60の主たる部分をなしている。母材63は、Cu系の材料を用いて形成されている。金属膜64は、母材63よりもはんだに対する濡れ性が高い材料を含んで形成されている。金属膜64は、側面60cの全域に形成されている。本実施形態の金属膜64は、母材63の表面の全域に形成されている。凹凸酸化膜65は、側面60cにおいて局所的に形成されている。
凹凸酸化膜65は、金属膜64にレーザ光を照射することで、側面60cにおいて金属膜64上に局所的に形成されている。金属膜64は、Ni(ニッケル)を主成分とする下地膜と、Au(金)を主成分とする上地膜を有している。本実施形態では、下地膜として、P(リン)を含む無電解Niめっき膜を採用している。凹凸酸化膜65から露出する金属膜64のうち、はんだが接触する部分の上地膜(Au)は、リフロー時にはんだ中に拡散する。金属膜64のうち、凹凸酸化膜65が形成される部分の上地膜(Au)は、凹凸酸化膜65を形成する際にレーザ光の照射により除去される。凹凸酸化膜65は、Niを主成分とする酸化物の膜である。たとえば、凹凸酸化膜65を構成する成分のうち、80%がNI2O3、10%がNiO、10%がNiとなっている。
金属膜64の表面の凹部66は、パルス発振のレーザ光の照射により形成される。1パルスごとに、ひとつの凹部66が形成される。凹凸酸化膜65は、レーザ光の照射により、金属膜64の表層部分が溶融、気化し、蒸着することで形成される。凹凸酸化膜65は、金属膜64由来の酸化膜である。凹凸酸化膜65は、金属膜64の主成分の金属(Ni)の酸化物の膜である。凹凸酸化膜65は、凹部66を有する金属膜64の表面の凹凸に倣って形成されている。凹凸酸化膜65の表面には、凹部66の幅よりも細かいピッチで凹凸が形成されている。すなわち、非常に微細な凹凸(粗化部)が形成されている。
側面60cにおいて、凹凸酸化膜65が形成された領域が、粗化領域61である。側面60cにおいて、凹凸酸化膜65が形成されていない領域、すなわち金属膜64が露出する領域が、非粗化領域62である。端面60a、60bも、凹凸酸化膜65が形成されていない領域である。
本実施形態の粗化領域61は、図7および図8に示すように、側面60cの半導体素子30側の端部において、角部604~607にそれぞれ設けられている。非粗化領域62は、側面60cの半導体素子30側の端部において、平面部600~603にそれぞれ設けられている。つまり、矩形環状の四隅に粗化領域61がそれぞれ設けられ、四隅の間の辺部に非粗化領域62が設けられている。
粗化領域61は、側面60cのヒートシンク50側の端部において全周に設けられている。粗化領域61は、ヒートシンク50側の端部において、平面部600~603と角部604~607に設けられている。非粗化領域62は、Z方向において端面60bまで延設されていない。Z方向において、非粗化領域62と粗化領域61とが並設されている。
側面60cにおける粗化領域61および非粗化領域62の配置は、平面視においてターミナル60の中心C1を通り、X方向に平行な仮想的な直線VL1に対して線対称である。同様に、中心C1を通り、Y方向に平行な仮想的な直線VL2に対して線対称である。粗化領域61および非粗化領域62の配置は、中心C1を通り、Z方向に平行な軸に対して回転対称性を有している。ターミナル60が平面正方形の場合、4回対称性を有している。平面長方形の場合、2回対称性を有している。X方向が第1方向に相当し、直線VL1が第1仮想線に相当する。Y方向が第2方向に相当し、直線VL2が第2仮想線に相当する。
<半導体装置の製造方法>
次に、上記した半導体装置の製造方法の一例について説明する。以下では、溶融状態のはんだについては、溶融はんだと示すことがある。
先ず、粗化領域61および非粗化領域62を有するターミナル60を準備する。
母材63上に金属膜64が形成されたターミナル60の側面60cに対して、パルス発振のレーザ光を照射し、金属膜64の表面を溶融および蒸発させる。パルス発振のレーザ光は、エネルギー密度が0J/cm2より大きく100J/cm2以下で、パルス幅が1μ秒以下となるように調整される。この条件を満たすには、YAGレーザ、YVO4レーザ、ファイバレーザなどを採用することができる。たとえばYAGレーザの場合、エネルギー密度が1J/cm2以上であればよい。無電解Niめっきの場合、たとえば5J/cm2程度でも金属膜64を加工することができる。
このとき、レーザ光の光源とターミナル60とを相対的に移動させることにより、レーザ光を走査し、複数の位置に順に照射する。レーザ光を照射し、金属膜64の表面を溶融、気化させることで、金属膜64の表面には、凹部66が形成される。金属膜64のうち、レーザ光を照射した部分の平均厚みは、レーザ光を照射しない部分の平均厚みよりも薄くなる。また、レーザ光のスポットに対応して形成される複数の凹部66は連なり、たとえば鱗状となる。スポットとは、1パルスによる照射範囲である。
たとえば、X方向において隣り合うレーザ光のスポットが一部重なるとともに、Y方向において隣り合うレーザ光のスポットが一部重なるように、レーザ光を走査する。その際、X方向の基準座標からレーザ光をX方向に走査して第1列の照射を行う。第1列の照射が完了したら、Y方向の座標をずらし、X方向の基準座標からレーザ光をX方向に走査し、第2列の照射を行ってもよい。
本実施形態では、第1列の照射が完了したら、レーザ光をX方向において逆向きに走査し、第2列の照射を行う。このように、基準座標への復帰を待たずに、折り返し走査する。これにより、レーザ光の照射時間を短縮することができる。また、第1列のスポットと第2列のスポットを、X方向においてずらす。具体的には、X方向において、第1列における隣り合う2つのスポット間の中心位置と、第2列のスポットの中心位置とが、略一致するようにスポットの位置をずらす。
次いで、溶融した金属膜64の部分を凝固させる。具体的には、溶融して気化した金属膜64を、レーザ光が照射された部分やその周辺部分に蒸着させる。このように、溶融して気化した金属膜64を蒸着させることにより、金属膜64の表面上に凹凸酸化膜65を形成する。上記したように、スポットの千鳥配置(千鳥配列)により、凹凸酸化膜65の形成ばらつきを、粗化領域61の全域において低減することができる。すなわち、単位面積当たりの凹凸酸化膜65の膜厚を、粗化領域61の全域においてほぼ均一にすることができる。以上のようにして、ターミナル60を準備する。
次いで、リードフレーム96を準備する。
具体的には、ヒートシンク40、継手部70、主端子80~82、および信号端子85を有するリードフレーム96を準備する。リードフレーム96の準備は、ターミナル60の準備と並行して行ってもよいし、ターミナル60の準備の前に行ってもよい。
次いで、図6に示したように、ヒートシンク40上に半導体素子30およびターミナル60が配置された積層体を形成する。
具体的には、ヒートシンク40の実装面40a上に溶融はんだ90を塗布し、コレクタ電極32が実装面40a側となるように、溶融はんだ90上に半導体素子30を配置する。次いで、半導体素子30のエミッタ電極31上に溶融はんだ91を塗布し、端面60aが半導体素子30側となるように溶融はんだ91上にターミナル60を配置する。さらにターミナル60の端面60b上に溶融はんだ92を塗布する。また、継手部70および接続部81a上にも溶融はんだ93、94を塗布する。
溶融はんだ90~94は、たとえば転写法を用いて塗布することができる。塗布した溶融はんだ90、91が固化(凝固)することで、積層体が得られる。溶融はんだ90~94については、積層順に固化させてもよいし、すべてを一括で固化させてもよい。ボンディングワイヤ95の接続は、積層体の形成後に行ってもよいし、溶融はんだ90が固化した状態で、エミッタ電極31上に溶融はんだ91を塗布する前に行ってもよい。すべてのはんだ90~94の塗布が完了した積層体の状態でのボンディングのほうが、塗布装置の接触等による不良を抑制できるため好ましい。
両面放熱構造の半導体装置15は、図示しない冷却器の熱交換部によってZ方向の両面側から挟まれる。よって、Z方向において表面の高い平行度と表面間の高い寸法精度が求められる。このため、はんだ92については、半導体装置15の高さばらつきを吸収可能な量を配置する。すなわち、はんだ90、91よりも多めのはんだ92を配置する。はんだ93、94についても同様である。
次いで、積層体とヒートシンク50とを接続する。
実装面50aが上になるように、ヒートシンク50を図示しない台座上に配置する。そして、ターミナル60の端面60b、すなわちはんだ92が実装面50aと対向するように、積層体をヒートシンク50上に配置し、リフローを実施する。リフローでは、ヒートシンク40側からZ方向に荷重を加えることで、半導体装置15の高さが所定高さとなるようにする。詳しくは、荷重を加えることで、図示しないスペーサを、ヒートシンク40の実装面40aと台座の載置面との両方に接触させる。このようにして、半導体装置15の高さが所定高さとなるようにする。
リフローにより、はんだ92を介して、ターミナル60とヒートシンク50が接続(接合)される。すなわち、エミッタ電極31とヒートシンク50とが電気的に接続される。はんだ92は、半導体装置15を構成する要素の寸法公差や組み付け公差による高さばらつきを吸収する。たとえば、半導体装置15の高さを所定高さにするために、はんだ92の全量が必要な場合には、はんだ92の全量が溝51よりも内側の領域に留まる。一方、所定高さにするために、はんだ92が余る場合、余剰分のはんだ92は、溝51に収容される。なお、リフローにより、はんだ93を介して、継手部70とヒートシンク50に連なる継手部71が接続される。また、はんだ94を介して、ヒートシンク50Lに連なる継手部71と、主端子81の接続部81aが接続される。
次いで、トランスファモールド法により封止樹脂体20を成形する。
図示を省略するが、本実施形態では、ヒートシンク40、50が完全に被覆されるように封止樹脂体20を成形し、成形後に切削を行う。封止樹脂体20をヒートシンク40、50の一部ごと切削する。これにより、裏面40b、50bを露出させる。裏面40bは裏面20bと略面一となり、裏面50bは一面20aと略面一となる。
次いで、リードフレーム96からタイバー98などの不要部分を除去することで、半導体装置15を得ることができる。
半導体装置15の製造方法は、上記した例に限定されない。たとえば、ヒートシンク40、50の裏面40b、50bを成形金型のキャビティ壁面に押し当て、密着させた状態で、封止樹脂体20を成形してもよい。この場合、封止樹脂体20を成形した時点で、裏面40b、50bが封止樹脂体20から露出する。このため、成形後の切削が不要となる。
積層体を形成後にヒートシンク50を配置し、リフローを実施する例を示したが、これに限定されない。ターミナル60の端面60b上に溶融はんだ92を塗布した後、溶融はんだ92上にヒートシンク50を配置してもよい。また、すべてのはんだ90~94を一括で固化(凝固)させ、ヒートシンク50まで含む積層体を一括で形成してもよい。すなわち、リフローを実施せずに、半導体装置15を得ることもできる。
また、ソルダダイボンド法に限定されない。溶融はんだに代えて、はんだ箔等を用いてもよい。2段階のリフローによって、半導体装置15を形成してもよい。具体的には、1段目ではんだ90、91をリフローして上記した積層体を形成し、2段目ではんだ92をリフローしてヒートシンク50を積層体に接続してもよい。この場合も、多めのはんだ92によって、半導体装置15の高さばらつきを吸収することができる。
<第1実施形態のまとめ>
図10は、参考例を示す部分断面図である。参考例では、本実施形態の要素と同一または関連する要素について、本実施形態の符号の末尾にrを付け加えて示している。図10では、エミッタ電極とターミナルとのはんだ接続構造を示している。図10は、図7に対応する図であるが、はんだ接合部を示すために保護膜を断面で示した部分断面図である。
参考例では、ターミナル60rの側面60crの全域に、粗化領域61rが設けられている。つまり、側面60crの全域に、上記した凹凸酸化膜が形成されている。酸化膜(凹凸酸化膜)は、金属膜に較べて、はんだに対する濡れ性が低い。凹凸酸化膜は、表面に微細な凹凸を有しているため、はんだとの接触面積が小さくなり、はんだの一部は表面張力によって球状になる。すなわち、接触角が大きくなる。これにより、はんだに対する濡れ性が低い。
よって、凹凸酸化膜が形成された粗化領域61r、すなわち側面60crに、はんだ91rが濡れ拡がり難い。はんだ91rは、端面60arのみを濡れ拡がる。このため、はんだ91rを固化(凝固)する前に、平面視においてターミナル60rの一部がエミッタ電極31rの外側にはみ出していると、はみ出した状態(位置ずれ状態)のまま、はんだ91rが固化する。このため、平面視において、ターミナル60rの一部がエミッタ電極31rではなく、保護膜34rと重なる。よって、ターミナル60rの全体がエミッタ電極31rの直上に位置する構成に較べて、半導体素子30の生じた熱をターミナル60(ヒートシンク50)側に逃がし難い。このように、放熱性が低下してしまう。
放熱性の低下を抑制すべく、側面60crにおいて、少なくとも半導体素子30r側の端部の全周を非粗化領域にすることも考えられる。この場合、端面60ar側において側面60cの全周に、はんだ91rが濡れ拡がる。よって、上記したように、はんだ91rを固化(凝固)する前に、ターミナル60rの一部がエミッタ電極31rの外側にはみ出していても、はんだ91rの表面張力により、ターミナル60rの位置がエミッタ電極31rの直上に自動的に修正される。このように、セルフアライメントの効果が期待できる。
しかしながら、上記したように非粗化領域を設けると、側面60crの半導体素子30r側の端部の全周において、封止樹脂体との密着力が低下する。これにより、パワーサイクルや冷熱サイクル等の熱応力がエミッタ電極31rに集中し、図10に示す参考例に較べてエミッタ電極31rの歪が増加する。この結果、エミッタ電極31rの寿命が低下してしまう。なお、熱応力は、半導体素子30r(半導体基板)とターミナル60r等の金属部材との線膨張係数差に起因して生じる。
図11および図12は、本実施形態の半導体装置において、エミッタ電極とターミナルのはんだ接続構造を示している。図11は、図7に対応する図であるが、図10同様、保護膜を断面で示した部分断面図である。図12は、ヒートシンク側から見た平面図である。図12では、便宜上、粗化領域および非粗化領域について、半導体素子側の端部の配置を示している。図12では、領域の明確化のために、粗化領域にハッチングを施している。
図11および図12に示すように、本実施形態では、ターミナル60の側面60cのうち、半導体素子30側の端部の一部分に非粗化領域62を設け、端部の残りの部分に粗化領域61を設けている。非粗化領域62には、凹凸酸化膜65が形成されておらず、金属膜64が露出している。金属膜64は、凹凸酸化膜65よりもはんだ91に対する濡れ性が高い。図11に示すように、はんだ91は側面60cの非粗化領域62に濡れ拡がり、フィレット91aを形成する。フィレット91a(はんだ91)の表面張力は、ターミナル60をエミッタ電極31上にとどめようとする。したがって、エミッタ電極31に対するターミナル60の位置ずれを抑制し、ひいては放熱性の低下を抑制することができる。
また、粗化領域61には、凹凸酸化膜65が形成されている。上記したように、凹凸酸化膜65のはんだ91に対する濡れ性は、金属膜64に較べて低い。図11に示すように、側面60cの粗化領域61には、はんだ91が濡れ拡がらない。一方、凹凸酸化膜65の表面には、非常に微細な凹凸が形成されており、封止樹脂体20が絡みつき、アンカー効果が生じる。また、封止樹脂体20との接触面積が増える。これにより、粗化領域61における封止樹脂体20と密着力は、非粗化領域62よりも高い。ターミナル60の半導体素子30側の端部は、封止樹脂体20によって拘束される。したがって、エミッタ電極31の歪を低減し、ひいてはエミッタ電極31の寿命を向上することができる。
以上より、本実施形態の半導体装置15によれば、エミッタ電極31(主電極)の寿命を向上しつつ、放熱性の低下を抑制することができる。凹凸酸化膜65の形成には、上記したようにレーザ光を用いるため、粗化領域61と非粗化領域62とのパターニングが容易である。
ターミナル60の平面形状は、特に限定されない。たとえば、多角形状、円形状、楕円形状を採用することができる。
本実施形態では、ターミナル60が平面略矩形状をなしている。そして、側面60cの半導体素子30側の端部において、平面部600~603のそれぞれに非粗化領域62を設け、角部604~607のそれぞれに粗化領域61を設けている。図12に示すように、側面60cの四面に、はんだ91のフィレット91aが形成される。4つの平面部600~603にはんだ91の表面張力が作用し、ターミナル60はエミッタ電極31の直上にセルフアライメントされる。ターミナル60は、平面視において保護膜34とは重ならない。このように、ターミナル60の位置ずれを効果的に抑制することができる。
また、粗化領域61を複数箇所に分散配置し、粗化領域61と非粗化領域62とを周方向に交互に設けている。ターミナル60を取り囲むように、封止樹脂体20の高密着部が形成されるため、エミッタ電極31の歪を効果的に低減することができる。なお、矩形状以外の多角形状においても同様の効果を奏することができる。
側面60cの半導体素子30側の端部における粗化領域61と非粗化領域62の配置は、特に限定されない。特段の対称性を有さない配置としてもよい。本実施形態では、粗化領域61および非粗化領域62の配置を、上記した直線VL1に対して線対称としている。これにより、Y方向において、ターミナル60の位置ずれを効果的に抑制することができる。また、粗化領域61および非粗化領域62の配置を、上記した直線VL2に対して線対称としている。これにより、X方向において、ターミナル60の位置ずれを効果的に抑制することができる。さらに、粗化領域61および非粗化領域62の配置に、回転対称性をもたせている。これにより、XY平面において、ターミナル60の位置ずれを効果的に抑制することができる。
ターミナル60の側面60cにおいて、ヒートシンク50側の端部の配置は、上記した例に限定されない。たとえば、半導体素子30側の端部における粗化領域61および非粗化領域62の配置を、そのままヒートシンク50側の端部まで延設してもよい。ヒートシンク50側の端部を全周で非粗化領域62とし、半導体素子30側の端部とヒートシンク50側の端部の間の領域を全周で粗化領域61としてもよい。
側面60cの半導体素子30側の端部において、平面部600~603の全域を非粗化領域62とし、角部604~607の全域を粗化領域61とする例を示したが、これに限定されない。平面部600~603のそれぞれの少なくとも一部を非粗化領域62とし、角部604~607のそれぞれの少なくとも一部を粗化領域61とすればよい。
(第2実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例であり、先行実施形態の記載を援用できる。先行実施形態では、平面部に非粗化領域を設け、角部に粗化領域を設けた。これに代えて、平面部に粗化領域を設け、角部に非粗化領域を設けてもよい。
図13および図14は、本実施形態の半導体装置において、ターミナルを示す平面図である。図13は、図7に対応している。図14は、図8に対応している。図8同様、図14では、側面において半導体素子側の端部付近の粗化領域のみを図示している。また、領域の明確化のために、粗化領域にハッチングを施している。図13、図14では、上アーム側のターミナルについて例示するが、下アーム側のターミナルも同様の構成を有している。
本実施形態の粗化領域61は、図13および図14に示すように、側面60cの半導体素子30側の端部において、平面部600~603にそれぞれ設けられている。非粗化領域62は、側面60cの半導体素子30側の端部において、角部604~607にそれぞれ設けられている。つまり、矩形環状の四隅に非粗化領域62がそれぞれ設けられ、四隅の間の辺部に粗化領域61が設けられている。
非粗化領域62は、側面60cのヒートシンク50側の端部において全周に設けられている。非粗化領域62は、ヒートシンク50側の端部において、平面部600~603と角部604~607に設けられている。粗化領域61は、Z方向において端面60bまで延設されていない。平面部600~603において、粗化領域61と非粗化領域62とがZ方向に並設されている。角部604~607において、非粗化領域62が端面60aとの境界から端面60bとの境界まで、設けられている。
第1実施形態同様、側面60cにおける粗化領域61および非粗化領域62の配置は、直線VL1に対して線対称である。同様に、直線VL2に対して線対称である。粗化領域61および非粗化領域62の配置は、中心C1を通り、Z方向に平行な軸に対して回転対称性を有している。ターミナル60が平面正方形の場合、4回対称性を有している。平面長方形の場合、2回対称性を有している。
<第2実施形態のまとめ>
図15および図16は、本実施形態の半導体装置において、エミッタ電極とターミナルのはんだ接続構造を示している。図15は、図11に対応する部分断面図である。図16は、図12に対応する平面図である。図15では、便宜上、粗化領域および非粗化領域について、半導体素子側の端部の配置を示している。図15では、領域の明確化のために、粗化領域にハッチングを施している。
本実施形態でも、ターミナル60の側面60cのうち、半導体素子30側の端部の一部分に非粗化領域62を設け、端部の残りの部分に粗化領域61を設けている。したがって、先行実施形態同様、エミッタ電極31の寿命を向上しつつ、放熱性の低下を抑制することができる。
本実施形態では、図15および図16に示すように、側面60cの半導体素子30側の端部において、平面部600~603のそれぞれに粗化領域61を設け、角部604~607のそれぞれに非粗化領域62を設けている。側面60cの四隅に、はんだ91のフィレット91aが形成される。4つの角部604~607にはんだ91の表面張力が作用し、ターミナル60はエミッタ電極31の直上にセルフアライメントされる。よって、ターミナル60の位置ずれを効果的に抑制することができる。また、粗化領域61を複数箇所に分散配置し、粗化領域61と非粗化領域62とを周方向に交互に設けている。ターミナル60を取り囲むように、封止樹脂体20の高密着部が形成されるため、エミッタ電極31の歪を効果的に低減することができる。なお、矩形状以外の多角形状においても同様の効果を奏することができる。
また、平面部600~603にレーザ光を照射して凹凸酸化膜65を形成する。角部604~607よりも平面部600~603のほうが、所望の位置に凹凸酸化膜65を形成しやすい。すなわち、粗化領域61を位置精度よく設けることができる。これにより、封止樹脂体20に対する密着力のばらつき、ひいてはエミッタ電極31の寿命のばらつきを低減することができる。
本実施形態でも、先行実施形態同様、粗化領域61および非粗化領域62の配置を、直線VL1、直線VL2に対して線対称としている。また、回転対称性をもたせている。よって、ターミナル60の位置ずれを効果的に抑制することができる。
ターミナル60の側面60cにおいて、ヒートシンク50側の端部の配置は、上記した例に限定されない。たとえば、半導体素子30側の端部における粗化領域61および非粗化領域62の配置を、そのままヒートシンク50側の端部まで延設してもよい。ヒートシンク50側の端部を全周で粗化領域61としてもよい。
側面60cの半導体素子30側の端部において、平面部600~603の全域を粗化領域61とし、角部604~607の全域を非粗化領域62とする例を示したが、これに限定されない。平面部600~603のそれぞれの少なくとも一部を粗化領域61とし、角部604~607のそれぞれの少なくとも一部を非粗化領域62とすればよい。
(第3実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例であり、先行実施形態の記載を援用できる。先行実施形態では、平面部および角部の一方に粗化領域を設け、他方に非粗化領域を設けた。これに代えて、粗化領域と非粗化領域を平面部で交互に設けてもよい。
図17および図18は、本実施形態の半導体装置において、ターミナルを示す平面図である。図17は、図7に対応している。図18は、図8に対応している。図8同様、図18では、側面において半導体素子側の端部付近の粗化領域のみを図示している。また、領域の明確化のために、粗化領域にハッチングを施している。図17、図18では、上アーム側のターミナルについて例示するが、下アーム側のターミナルも同様の構成を有している。
図17および図18に示すように、本実施形態でも、側面60cの半導体素子30側の端部に、粗化領域61と非粗化領域62が設けられている。粗化領域61および非粗化領域62は、平面部600~603のそれぞれの面内において、周方向に沿って交互に設けられている。たとえば、図17に示す平面部600において、粗化領域61と非粗化領域62とがY方向に沿って交互に設けられている。平面部600~603のそれぞれにおいて、両端は粗化領域61とされている。角部604~607は、非粗化領域62とされている。
非粗化領域62は、側面60cのヒートシンク50側の端部において全周に設けられている。非粗化領域62は、ヒートシンク50側の端部において、平面部600~603と角部604~607に設けられている。粗化領域61は、Z方向において端面60bまで延設されていない。平面部600~603において、粗化領域61と非粗化領域62とがZ方向に並設されている。角部604~607において、非粗化領域62が端面60aとの境界から端面60bとの境界まで、設けられている。平面部600~603のそれぞれの一部においても、非粗化領域62が端面60aとの境界から端面60bとの境界まで、設けられている。
第1実施形態同様、側面60cにおける粗化領域61および非粗化領域62の配置は、直線VL1に対して線対称である。同様に、直線VL2に対して線対称である。粗化領域61および非粗化領域62の配置は、中心C1を通り、Z方向に平行な軸に対して回転対称性を有している。ターミナル60が平面正方形の場合、4回対称性を有している。平面長方形の場合、2回対称性を有している。
<第3実施形態のまとめ>
図19および図20は、本実施形態の半導体装置において、エミッタ電極とターミナルのはんだ接続構造を示している。図19は、図11に対応する部分断面図である。図20は、図12に対応する平面図である。図20では、便宜上、粗化領域および非粗化領域について、半導体素子側の端部の配置を示している。図20では、領域の明確化のために、粗化領域にハッチングを施している。
本実施形態でも、ターミナル60の側面60cのうち、半導体素子30側の端部の一部分に非粗化領域62を設け、端部の残りの部分に粗化領域61を設けている。したがって、先行実施形態同様、エミッタ電極31の寿命を向上しつつ、放熱性の低下を抑制することができる。
本実施形態では、図19および図20に示すように、側面60cの半導体素子30側の端部であって、平面部600~603のそれぞれにおいて、粗化領域61と非粗化領域62とを交互に設けている。これにより、側面60cの四辺に、はんだ91のフィレット91aが形成される。4つの平面部600~603にはんだ91の表面張力が作用し、ターミナル60はエミッタ電極31の直上にセルフアライメントされる。よって、ターミナル60の位置ずれを効果的に抑制することができる。また、粗化領域61と非粗化領域62とを周方向に交互に設けているため、エミッタ電極31の歪を効果的に低減することができる。なお、矩形状以外の多角形状においても同様の効果を奏することができる。
本実施形態でも、先行実施形態同様、粗化領域61および非粗化領域62の配置を、直線VL1、直線VL2に対して線対称としている。また、回転対称性をもたせている。よって、ターミナル60の位置ずれを効果的に抑制することができる。
ターミナル60の側面60cにおいて、ヒートシンク50側の端部の配置は、上記した例に限定されない。たとえば、半導体素子30側の端部における粗化領域61および非粗化領域62の配置を、そのままヒートシンク50側の端部まで延設してもよい。ヒートシンク50側の端部を全周で粗化領域61としてもよい。
側面60cの半導体素子30側の端部における交互配置は、上記した例に限定されない。角部604~607を非粗化領域62としたが、粗化領域61としてもよい。この場合、平面部600~603のそれぞれにおいて両端は非粗化領域62となる。粗化領域61と非粗化領域62の数も上記した例に限定されない。
(第4実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例であり、先行実施形態の記載を援用できる。先行実施形態では、複数の平面部のすべて、または、複数の角部のすべてに、非粗化領域を設けた。これに代えて、複数の平面部の一部のみ、または、複数の角部の一部のみ、非粗化領域を設けてもよい。
図21は、本実施形態の半導体装置において、ターミナルを示す平面図である。図21は、図8に対応している。図8同様、図21では、側面において半導体素子側の端部付近の粗化領域のみを図示している。また、領域の明確化のために、粗化領域にハッチングを施している。図21では、上アーム側のターミナルについて例示するが、下アーム側のターミナルも同様の構成を有している。
図21に示すように、本実施形態でも、側面60cの半導体素子30側の端部に、粗化領域61と非粗化領域62が設けられている。非粗化領域62は、互いに対向する2つの平面部600、601のみに設けられている。平面部602、603および角部604~607には、粗化領域61が設けられている。
第1実施形態同様、側面60cにおける粗化領域61および非粗化領域62の配置は、直線VL1に対して線対称である。同様に、直線VL2に対して線対称である。粗化領域61および非粗化領域62の配置は、中心C1を通り、Z方向に平行な軸に対して2回対称性を有している。
<第4実施形態のまとめ>
本実施形態でも、ターミナル60の側面60cのうち、半導体素子30側の端部の一部分に非粗化領域62を設け、端部の残りの部分に粗化領域61を設けている。したがって、先行実施形態同様、エミッタ電極31の寿命を向上しつつ、放熱性の低下を抑制することができる。
本実施形態では、互いに対向する平面部600、601のみに、非粗化領域62を設けている。これにより、側面60cの互いに対向する二辺に、はんだ91のフィレット91aが形成される。したがって、はんだ91の表面張力により、特に平面部600、601の対向方向であるX方向において、ターミナル60の位置ずれを効果的に抑制することができる。また、粗化領域61と非粗化領域62とを周方向に交互に設けているため、エミッタ電極31の歪を効果的に低減することができる。
なお、非粗化領域62を、平面部602、603のみに設けてもよい。同様の効果を奏することができる。また、矩形状以外の多角形状、たとえば六角形、八角形などにおいても、対向配置により、同様の効果を奏することができる。
本実施形態でも、先行実施形態同様、粗化領域61および非粗化領域62の配置を、直線VL1、直線VL2に対して線対称としている。また、回転対称性をもたせている。よって、ターミナル60の位置ずれを効果的に抑制することができる。
<変形例>
図22は、変形例を示す平面図である。図22は、図21に対応している。図22では、非粗化領域62を、平面部603のみに設けている。平面部600~602および角部604~607には、粗化領域61を設けている。平面部603は、ターミナル60の側面60cのうち、パッド33側の面である。パッド33側の平面部603にはんだ91のフィレット91aが形成されるため、平面部603がY方向においてパッド33側にはみ出すのを抑制することができる。ボンディングワイヤ95の接続前であれば、ボンディングワイヤの接続箇所を確保することができる。接続後であれば、ボンディングワイヤ95にターミナル60が接触するのを抑制することができる。
図23は、別の変形例を示す平面図である。図23は、図21に対応している。図23では、非粗化領域62を、平面部600、603のみに設けている。平面部601、602および角部604~607には、粗化領域61を設けている。非粗化領域62を、隣り合う平面部600、603に設けている。非粗化領域62を、対角の平面部600、603に設けている。なお、非粗化領域62を、平面部601、602のみに設けてもよい。
図24は、別の変形例を示す平面図である。図24は、図21に対応している。図24では、非粗化領域62を、平面部600、601、603のみに設けている。平面部602および角部604~607には、粗化領域61を設けている。非粗化領域62を、3つの平面部600、601、603に設けている。なお、3面の組み合わせは、上記例に限定されない。非粗化領域62を、平面部601~603のみに設けてもよいし、平面部600、602、603のみに設けてもよい。平面部600~602のみに設けてもよい。平面部603に非粗化領域62を設けると、図22に示した構成と同等の効果を奏することができる。
非粗化領域62を、平面部600~603に代えて、角部604~607のひとつのみ、2つのみ、3つのみに設けてもよい。図25は、別の変形例を示す平面図である。図25は、図21に対応している。図25では、非粗化領域62を、互いに対向する角部604、607のみに設けている。平面部600~603および角部605、606には、粗化領域61が設けられている。対角の角部604、607に非粗化領域62を設けているため、図21に示した構成と同様の効果を奏することができる。なお、非粗化領域62を角部605、606のみに設けた場合にも、同様の効果を奏することができる。
図示を省略するが、非粗化領域62を、パッド33側の角部605、607のみに設けてもよい。これによれば、図22に示した構成と同様の効果を奏することができる。
(第5実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例であり、先行実施形態の記載を援用できる。先行実施形態では、ターミナルの側面に、粗化領域と非粗化領域を設けた。これに代えて、半導体素子のパッドに、粗化領域と非粗化領域を設けてもよい。
図26は、本実施形態の半導体装置において、半導体素子周辺を示す平面図である。図26は、図12に対応している。図26では、領域の明確化のために、粗化領域にハッチングを施している。図26では、上アーム側の半導体素子を示すが、下アーム側も同様の構成を有している。
図26に示すように、本実施形態の半導体素子30において、パッド33は、粗化領域330と、非粗化領域331を有している。図示を省略するが、粗化領域330は、ターミナル60の粗化領域61同様、凹凸酸化膜が形成された領域である。非粗化領域331は、凹凸酸化膜が形成されていない領域である。
非粗化領域331は、ボンディングワイヤ95の接続箇所を含んでいる。粗化領域330は、非粗化領域331の周りに設けられている。粗化領域330は、非粗化領域331を取り囲んでもよい。本実施形態の粗化領域330は、平面視において環状をなしており、粗化領域330の内側の領域が非粗化領域331となっている。
パッド33は、エミッタ電極31と同様の構成を有している。パッド33は、下地電極と、下地電極上に積層された接続電極を有する多層構造をなしている。下地電極は、たとえばAl(アルミニウム)を主成分とする材料を用いて形成されている。本実施形態では、AlSi、AlSiCuなどのAl合金を材料としている。接続電極は、Ni(ニッケル)層を少なくとも含んでいる。Niは、下地電極を構成するAl合金よりも硬い。接続電極は、Ni層上に、さらにAu(金)層を備えてもよい。
上記した構成のパッド33において、下地電極がターミナル60の母材63に相当し、接続電極が金属膜64に相当する。よって、接続電極にレーザ光を照射することで、凹凸酸化膜65と同様の凹凸酸化膜を形成することができる。
たとえば、パッド33の外周縁部にレーザ光を照射し、外周縁部に凹凸酸化膜を形成して環状の粗化領域330を設けてもよい。また、図27に示すように、パッド33の全域に凹凸酸化膜を形成して粗化領域330とした後、ボンディングワイヤ95を超音波接合によりパッド33に接続してもよい。超音波接合により酸化膜が除去されるため、パッド33において、ボンディングワイヤ95の接続箇所を含む所定の領域が非粗化領域331となる。
<第5実施形態のまとめ>
本実施形態では、半導体素子30のパッド33の一部を粗化領域330とし、残りの部分を非粗化領域331としている。粗化領域330を構成する図示しない凹凸酸化膜は、先行実施形態に示した凹凸酸化膜65同様、表面に非常に微細な凹凸を有している。このため、封止樹脂体20が絡みつき、アンカー効果が生じる。また、封止樹脂体20との接触面積が増える。粗化領域330における封止樹脂体20と密着力は、非粗化領域331よりも高いため、パッド33からの封止樹脂体20の剥離を抑制することができる。よって、ボンディングワイヤ95にかかる応力を低減し、ひいてはボンディングワイヤ95の破断を抑制することができる。
特に本実施形態では、非粗化領域331の周囲に粗化領域330を設けている。ボンディング周りの全周において、パッド33から封止樹脂体20が剥離するのを抑制することができる。よって、ボンディングワイヤ95にかかる応力をさらに低減することができる。
本実施形態に示した構成は、先行実施形態に記載した種々の構成との組み合わせが可能である。
(他の実施形態)
この明細書および図面等における開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。たとえば、開示は、実施形態において示された部品および/または要素の組み合わせに限定されない。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品および/または要素が省略されたものを包含する。開示は、ひとつの実施形態と他の実施形態との間における部品および/または要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示されるいくつかの技術的範囲は、請求の範囲の記載によって示され、さらに請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものと解されるべきである。
明細書および図面等における開示は、請求の範囲の記載によって限定されない。明細書および図面等における開示は、請求の範囲に記載された技術的思想を包含し、さらに請求の範囲に記載された技術的思想より多様で広範な技術的思想に及んでいる。よって、請求の範囲の記載に拘束されることなく、明細書および図面等の開示から、多様な技術的思想を抽出することができる。
ある要素または層が「上にある」、「連結されている」、「接続されている」または「結合されている」と言及されている場合、それは、他の要素、または他の層に対して、直接的に上に、連結され、接続され、または結合されていることがあり、さらに、介在要素または介在層が存在していることがある。対照的に、ある要素が別の要素または層に「直接的に上に」、「直接的に連結されている」、「直接的に接続されている」または「直接的に結合されている」と言及されている場合、介在要素または介在層は存在しない。要素間の関係を説明するために使用される他の言葉は、同様のやり方で(例えば、「間に」対「直接的に間に」、「隣接する」対「直接的に隣接する」など)解釈されるべきである。この明細書で使用される場合、用語「および/または」は、関連する列挙されたひとつまたは複数の項目に関する任意の組み合わせ、およびすべての組み合わせを含む。
空間的に相対的な用語「内」、「外」、「裏」、「下」、「低」、「上」、「高」などは、図示されているような、ひとつの要素または特徴の他の要素または特徴に対する関係を説明する記載を容易にするためにここでは利用されている。空間的に相対的な用語は、図面に描かれている向きに加えて、使用または操作中の装置の異なる向きを包含することを意図することができる。例えば、図中の装置をひっくり返すと、他の要素または特徴の「下」または「真下」として説明されている要素は、他の要素または特徴の「上」に向けられる。したがって、用語「下」は、上と下の両方の向きを包含することができる。この装置は、他の方向に向いていてもよく(90度または他の向きに回転されてもよい)、この明細書で使用される空間的に相対的な記述子はそれに応じて解釈される。
車両の駆動システム1は、上記した構成に限定されない。たとえば、ひとつのモータジェネレータ3を備える例を示したが、これに限定されない。複数のモータジェネレータを備えてもよい。電力変換装置4が、電力変換部として、インバータ6を備える例を示したが、これに限定されない。複数の電力変換部を備えてもよい。たとえば、複数のインバータを備えてもよい。インバータとコンバータを備えてもよい。
半導体素子30が、RC-IGBT素子を有する例を示したが、これに限定されない。IGBT11とFWD12を別チップ(別の半導体素子)としてもよい。スイッチング素子としてIGBT11の例を示したが、これに限定されない。たとえばMOSFETを採用することもできる。
半導体装置15が、一相分の上下アーム回路9を構成する複数の半導体素子30(30H、30L)を備える例を示したが、これに限定されない。ひとつのアームを構成する半導体素子30のみを備えてもよい。半導体装置15は、たとえば、一面に主電極を有し、ひとつのアームを構成する半導体素子と、半導体素子の熱を放熱する放熱部材と、主電極と放熱部材との間に介在するターミナルと、主電極とターミナルとの間に接合部を形成するはんだを備えればよい。
ヒートシンク40、50の裏面40b、50bが、封止樹脂体20から露出する例を示したが、これに限定されない。裏面40b、50bの少なくとも一方が、封止樹脂体20によって覆われた構成としてもよい。裏面40b、50bの少なくとも一方が、封止樹脂体20とは別の図示しない絶縁部材によって覆われた構成としてもよい。
信号端子85がボンディングワイヤ95を介してパッド33に接続される例を示したが、これに限定されない。たとえば信号端子85を、はんだを介してパッド33に接続してもよい。
ヒートシンク50が溝51を有する例を示したが、溝51を排除した構成としてもよい。同様に、継手部71、72の溝73を排除した構成としてもよい。