JP7361586B2 - 検査方法、検査装置、及び検査システム - Google Patents

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Description

本発明は、検査方法、検査装置、及び検査システムに関する。
位相差膜は、直線偏光を円偏光や楕円偏光に変換したり、逆に円偏光や楕円偏光を直線偏光に変換したりできることから、この位相差膜と直線偏光板とを組み合わせた(楕)円偏光板が、有機EL表示装置や反射型液晶表示装置に適用されている。位相差膜の中でも重合性液晶化合物を配向及び硬化させることで得られる位相差膜は極めて薄膜のものとなることから、薄型の表示装置を製造するうえで注目されてきている(例えば、特許文献1参照)。
このような位相差膜を製造する方法としては、通常、重合性液晶化合物を含む液状組成物を長尺状の基材フィルムに塗工して薄膜を形成し、その薄膜中の重合性液晶化合物を所望の方向に配向させた後、活性エネルギー線を照射する。これにより、配向した重合性液晶化合物が硬化し位相差膜となる。なお、重合性液晶化合物を配向させるにあたっては、液状組成物を基材フィルムに塗工する前に、基材フィルム上に配向膜を形成する場合もある。
特開2006-58546号公報
この製造方法では、基材フィルム上又は配向膜状にゴミ等があると、そのゴミの部分で重合性液晶化合物の配向が乱れて欠陥が生じることがある。そして、基材フィルムが面内位相差を有するものであると、当該基材フィルム上に形成した位相差膜の欠陥の有無を光学的手法で検査することが困難になりやすい。市場から安価に入手できる基材フィルムは一般に延伸して製造されていることから、安価な基材フィルムは上記方法で製造した位相差膜の検査には使いにくいという実態がある。
そこで本発明は、基材フィルムが有する面内位相差の影響を抑制しながら、重合性液晶化合物の硬化物からなる位相差膜の欠陥の有無の検査をすることができる検査方法、検査装置及び検査システムを提供することを目的とする。
本発明は、波長550nmにおける面内位相差値が50nm以上である基材フィルムと、基材フィルムの片面に形成された重合性液晶化合物の硬化物からなる位相差膜とを備えるフィルム状の被検査物に光を入射して位相差膜の欠陥の有無を判断する検査方法であって、第1の直線偏光板と、被検査物と、位相差フィルタと、第2の直線偏光板と、をこの順に並ぶように配置し、被検査物は、基材フィルム側の面が第1の直線偏光板側を向いており、基材フィルムの遅相軸と、第1の直線偏光板又は第2の直線偏光板の偏光軸とは互いに略直交しており又は略平行であり、位相差膜の遅相軸と、位相差フィルタの遅相軸とは互いに略直交しており、位相差膜の波長550nmにおける面内位相差値と、位相差フィルタの波長550nmにおける面内位相差値とは互いに略同一であり、第1の直線偏光板と第2の直線偏光板とはクロスニコルを構成しており、第1の直線偏光板側又は第2の直線偏光板側のいずれか一方側から、光軸が被検査物上の所定の検査領域を通過するように光を入射し、その他方側から第2の直線偏光板又は第1の直線偏光板を観察する、検査方法を提供する。
この検査方法では、位相差を有する基材フィルムの遅相軸に対して第1の直線偏光板又は第2の直線偏光板の偏光軸を互いに略直交するように又は略平行となるように配置するので、直線偏光板を通過した光の偏光状態が基材フィルムによって乱されることがない。すなわち、組んだ光学系が意図したとおりに機能し、位相差膜に欠陥があった場合に観察視野においてその欠陥を適切に認識することができる。したがって、この検査方法によれば、基材フィルムが有する面内位相差の影響を抑制しながら位相差膜の欠陥の有無を容易に判断することができる。
また、この検査方法では、第1の直線偏光板と第2の直線偏光板とはクロスニコルを構成している。この場合、観察視野全体を最も暗くすることができるので、輝点として観察される位相差膜の欠陥部分が観察視野の中で最も際立つ。したがって、位相差膜の欠陥の有無を一層容易に判断することができる。
この検査方法では、位相差膜が形成される前の基材フィルムを対象として、配向角測定器を用いて基材フィルムの遅相軸の方向を予め求める工程を有していてもよい。基材フィルムの遅相軸の方向が不明である場合は、予めこれを求めておくことで、第1の直線偏光板又は第2の直線偏光板の偏光軸を基材フィルムの遅相軸と互いに略直交するように又は略平行となるように配置することができる。
そしてこのとき、配向角測定器により基材フィルムの遅相軸を求めた後に、基材フィルムの片面に、重合性液晶化合物を含む液状組成物を塗工して基材フィルムの表面上に重合性液晶化合物を含む塗工膜を形成し、塗工膜に含まれる重合性液晶化合物を配向及び硬化させて位相差膜を形成する工程を有していてもよい。これにより、位相差膜の製造が効率化される。
また、本発明の検査方法では、被検査物を、第1の直線偏光板と位相差フィルタとの間で被検査物の長さ方向に搬送させながら、長さ方向に連続して検査を行ってもよい。これにより、被検査物の検査が効率化される。
また、本発明の検査方法では、検査領域を、被検査物の幅方向に複数箇所設けてもよい。基材フィルムは一般に、少なくとも一方向に延伸することで製造されているため、幅方向において遅相軸の方向が異なっていることが多い。したがって、被検査物の幅方向に亘って検査領域を区分しそれぞれの検査領域において当該検査を行うことで、幅方向の各部において、基材フィルムが有する面内位相差の影響を抑制した検査を行うことができる。
また、本発明は、波長550nmにおける面内位相差値が50nm以上である基材フィルムと、基材フィルムの片面に形成された重合性液晶化合物の硬化物からなる位相差膜とを備えるフィルム状の被検査物に光を入射して位相差膜の欠陥の有無を判断する検査装置であって、被検査物が配置される場所を挟むようにして配置された第1の直線偏光板及び位相差フィルタと、位相差フィルタに関して被検査物が配置される場所とは反対側の領域に配置された第2の直線偏光板と、第1の直線偏光板又は第2の直線偏光板に関して被検査物が配置される場所とは反対側の領域に配置された光源と、を備え、第1の直線偏光板又は第2の直線偏光板は、その偏光軸が基材フィルムの遅相軸と互いに略直交するように又は略平行となるように配置されており、第1の直線偏光板と第2の直線偏光板とはクロスニコルを構成しており、位相差フィルタは、その遅相軸が位相差膜の遅相軸と互いに略直交するように配置されており、位相差フィルタの波長550nmにおける面内位相差値は、位相差膜の波長550nmにおける面内位相差値と略同一とされており、光源は、その光軸上に第1の直線偏光板、被検査物上の所定の検査領域、位相差フィルタ、及び、第2の直線偏光板が並ぶ位置に配置されている、検査装置を提供する。
この検査装置では、位相差を有する基材フィルムの遅相軸に対して第1の直線偏光板又は第2の直線偏光板の偏光軸を互いに略直交するように又は略平行となるように配置するので、直線偏光板を通過した光の偏光状態が基材フィルムによって乱されることがない。すなわち、組んだ光学系が意図したとおりに機能し、位相差膜に欠陥があった場合に観察視野においてその欠陥を適切に認識することができる。したがって、この検査装置によれば、基材フィルムが有する面内位相差の影響を抑制しながら位相差膜の欠陥の有無を容易に判断することができる。
また、この検査装置では、第1の直線偏光板と第2の直線偏光板とはクロスニコルを構成している。この場合、観察視野全体を最も暗くすることができるので、輝点として観察される位相差膜の欠陥部分が観察視野の中で最も際立つ。したがって、位相差膜の欠陥の有無を一層容易に判断することができる。
また、本発明は、上記の検査装置と、位相差膜が形成される前の基材フィルムの遅相軸を求める配向角測定器と、配向角測定器で求められた基材フィルムの遅相軸と第1の直線偏光板の偏光軸とが互いに略直交するように又は略平行となるように第1の直線偏光板の角度を調節する角度調整機構とを備える、検査システムを提供する。基材フィルムの遅相軸の方向が不明である場合は、予めこれを求めておくことで、第1の直線偏光板又は第2の直線偏光板の偏光軸を基材フィルムの遅相軸と互いに略直交するように又は略平行となるように配置することができる。また、角度調節機構を備えることで、その角度調整を自動化することができる。
本発明によれば、基材フィルムが有する面内位相差の影響を抑制しながら、重合性液晶化合物の硬化物からなる位相差膜の欠陥の有無の検査をすることができる検査方法、検査装置及び検査システムを提供することができる。
第1の実施形態の検査装置を示す図である。 第1の実施形態の検査システムを示す図である。 第1の実施形態の検査システムにおける複数の検査装置の配置を示す部分斜視図である。 基材フィルムの遅相軸の様子を示す平面図である。 第2の実施形態の検査装置を示す図である。
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において同一部分又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
(用語および記号の定義)
本明細書における用語および記号の定義は下記のとおりである。
(1)屈折率(nx、ny、nz)
「nx」は面内の屈折率が最大となる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸と直交する方向、「nz」は厚み方向の屈折率である。
(2)面内位相差値
面内位相差値(Re(λ))は、23℃、波長λ(nm)におけるフィルムの面内の位相差値をいう。Re(λ)は、フィルムの厚みをd(nm)としたとき、Re(λ)=(nx-ny)×dによって求められる。
(3)厚み方向の位相差値
厚み方向の位相差値(Rth(λ))は、23℃、波長λ(nm)におけるフィルムの厚み方向の位相差値をいう。Rth(λ)は、フィルムの厚みをd(nm)としたとき、Rth(λ)=((nx+ny)/2-nz)×dによって求められる。
<第1の実施形態>
(検査装置と被検査物)
本実施形態の検査装置は、位相差膜の光学欠陥の有無を検査するものである。図1に示されているとおり、検査装置1Aは、光源2、第1の直線偏光板3、位相差フィルタ4、第2の直線偏光板5、及び、カメラ(検出手段)6がこの順に配置されてなるものである。検査装置1Aは、第1の直線偏光板3と位相差フィルタ4との間に、検査対象である被検査物10を配置する場所が用意されており、図1では、被検査物10をそこに配置した様子を描いている。
はじめに、検査対象であるフィルム状の被検査物10について説明する。被検査物10は、検査対象の本体である位相差膜7Aと、位相差膜7Aが片面に積層された基材フィルム8Aとを備えている。位相差膜7Aの1つの例としては、直線偏光板と組み合わせて表示装置、例えば液晶表示装置や有機EL表示装置に円偏光板として用いられるものである。なお、本明細書において「円偏光板」とは、円偏光板及び楕円偏光板を含むものとする。また、「円偏光」は、円偏光と楕円偏光を含むものとする。
位相差膜7Aの1つの例は、直線偏光を円偏光に変換する膜である。例えば、位相差膜7Aはλ/4板である。本実施形態において、位相差膜7Aは、重合性液晶化合物の硬化物からなる。重合性液晶化合物の硬化物からなる位相差膜7Aは、通常厚さが0.2μm~10μm程度と薄く、異物等を含む場合にその部分で位相差値が低下しやすい。
位相差膜7Aを形成し得る重合性液晶化合物は、例えば、特開2009-173893号公報、特開2010-31223号公報、WO2012/147904号公報、WO2014/10325号公報及びWO2017-43438号公報に開示されたものを挙げることができる。これらの公報に記載の重合性液晶化合物は、広い波長域において一様の偏光変換が可能な、いわゆる逆波長分散性を有する位相差膜を形成可能である。
位相差膜7Aの形成方法としては、当該重合性液晶化合物を含む溶液(重合性液晶化合物溶液;液状組成物)を基材フィルム8A上に塗布(塗工)して塗工膜をつくり、これを光重合させることで、上述のように極めて薄いものを形成することができる。かかる基材フィルム8Aには、重合性液晶化合物を配向させるために配向膜が設けられていてもよい。配向膜は偏光照射により光配向させるものや、ラビング処理により機械的に配向させたもののいずれでもよい。なお、かかる配向膜の具体例としては、上記公報に記載されているものを用いることができる。このようにして形成した位相差膜7Aは、別のフィルムに対して基材フィルム8Aごと貼合し、その後、基材フィルム8Aを剥がすことで、位相差膜7Aをその別のフィルム上に転写することができる。
位相差膜7Aの形成に際し、重合性液晶化合物溶液を塗布する基材フィルム8Aに異物等が存在していたり、基材フィルム8A自体に傷等があったりする場合に、重合性液晶化合物溶液を塗布して得られる塗布膜自体に欠陥が生じることがある。また、配向膜をラビング処理した場合には、ラビング布の屑が配向膜上に残り、これが重合性液晶化合物溶液(液晶硬化膜形成用組成物)の塗布膜に欠陥を生じさせることもある。このように、重合性液晶化合物から位相差膜を形成する場合、厚さが極めて薄い位相差膜を形成可能であるが、上記のような屑や傷等が当該位相差膜に光学欠陥を生じる要因となることがある。
重合性液晶化合物溶液を塗布する基材フィルム8Aは、位相差膜7Aの欠陥検査の際に位相差膜7Aと積層状態にあるものであるので、位相差値が小さいことが望ましい。しかしながら、本実施形態においては、基材フィルム8Aは、波長550nmにおける面内位相差値が50nm以上である。当該面内位相差値は、100nm以上であってもよく、500nm以上であってもよく、1000nm以上であってもよく、2000nm以上であってもよく、5000nm以上であってもよく、8000nm以上であってもよい。基材フィルム8Aがこのような位相差を有する場合であっても、本実施形態の検査装置によれば、基材フィルム8Aが有する位相差の影響を受けずに、位相差膜7Aの欠陥の有無の判断を容易に行うことができる。
基材フィルム8Aを構成する材料としては上述の公報に記載されたものを挙げることができ、なかでもポリエチレンテレフタレート(PET)が好ましい。基材フィルム8Aの厚さは、10~500μmであってもよく、30~300μmであってもよく、50~200μmであってもよく、80~150μmであってもよい。
検査装置1Aにおいて、第1の直線偏光板3は、光源2から入射した光を直線偏光に変換するフィルムであり、偏光フィルムの少なくとも一方の面に保護フィルムが貼合されてなるものである。偏光フィルムとしては、例えば、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素や二色性色素が吸着・配向されたものや、重合性液晶化合物を配向・重合したものに、二色性色素が吸着・配向したものが挙げられる。
ここで保護フィルムは、偏光フィルムを保護するためのものである。保護フィルムとしては、適度な機械的強度を有する偏光板を得る目的で、偏光板の技術分野で汎用されているものが用いられる。典型的には、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム等のセルロースエステル系フィルム;環状オレフィン系フィルム;ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等のポリエステル系フィルム:ポリメチルメタクリレート(PMMA)フィルム等の(メタ)アクリル系フィルム等である。また、偏光板の技術分野で汎用されている添加剤が、保護フィルムに含まれていてもよい。直線偏光板に用いられる保護フィルムの位相差は小さいことが好ましく、例えば、Re(550)では10nm以下が好ましく、5nm以下が特に好ましい。
光源2は、種々の市販品を用いることができるが、例えばレーザ光等の直線光(直線光に近似するものも含む)であることが有利である。光源2が発する光は無偏光であり、第1の直線偏光板3を通過し所定方向の偏光となり、更に位相差膜7Aを通過して円偏光となる。すなわち、無偏光の光が第1の直線偏光板3及び位相差膜7Aを通過することで、円偏光となる。
位相差フィルタ4は、位相差膜7Bを備えるものである。位相差フィルタ4は、波長550nmにおける面内位相差値が、検査対象である位相差膜7Aの波長550nmにおける面内位相差値と略同一であるものを用いる。光学欠陥を輝度(明度)情報ΔL*より判定する場合には、位相差フィルタ4は、被検査物10と同一の構成を有するフィルムを用いることが好ましい。また、光学欠陥を色差情報ΔE*より判定する場合には、位相差フィルタ4は、被検査物10と逆の波長分散性を有するフィルムを用いることが好ましい。位相差フィルタ4を配置する向きとしては、位相差膜7Aの遅相軸と、位相差フィルタ4の遅相軸とが互いに略直交するようにする。すなわち、位相差フィルタ4は、被検査物10を検査する場面では、常に被検査物10中の位相差膜7Aとクロスニコルを構成するように、その向きが調整される。
また位相差フィルタ4は、さらにポジティブCプレートを備えていてもよい。ポジティブCプレートは、位相差膜7Aと向かい合う側の面に備えていてもよく、その反対側の面に備えていてもよい。ポジティブCプレートを用いることで検査領域を拡大することができる。ポジティブCプレートの厚み方向の位相差値(Rth(550))は、検査する位相差膜7Aの厚み方向の位相差値によって適宜選択すればよいが、例えば、位相差膜7Aがλ/4板である場合には、厚み方向の位相差値(Rth(550))を-50nm~-300nmのものを用いることで効果を得られやすい。
位相差フィルタ4は、位相差膜7Bと、位相差膜7Bが積層された基材フィルム8Bとを備えるものでもよい。基材フィルム8Bは、位相差膜7Bの光学特性を損なわないように面内位相差値(Re(550))が、実質的にゼロのものを用いる。ここで面内位相差が実質的にゼロとは、面内位相差値(Re(550))が3nm以下であることをいう。
ここで、波長550nmにおける面内位相差値(Re(550))及び厚み方向の位相差値(Rth(550))の求め方を示しておく。上記のとおり、測定対象のフィルムから例えば、40mm×40mm程度の大きさの片を分取(長尺フィルムから、適当な切断具を用いて分取する等)する。この片のRe(550)を3回測定し、Re(550)の平均値を求める。片のRe(550)は、位相差測定装置KOBRA-WPR(王子計測機器株式会社製)を用い、測定温度室温(23℃)で測定することができる。
第2の直線偏光板5は、位相差フィルタ4を通過した光が入射するフィルムであり、その構成や材料については、第1の直線偏光板3と同様である。検査装置1Aにおいて、第2の直線偏光板5は、第1の直線偏光板3とクロスニコルを構成するように配置されている。
さらに、検査領域を拡大するために、第1の直線偏光板3と基材フィルム8Aの間に、ポジティブCプレートを配置してもよい。ポジティブCプレートの厚み方向の位相差値(Rth(550))は、基材フィルム8Aの厚み方向の位相差値によって適宜選択すればよいが、例えば、基材フィルム8Aの厚み方向の位相差値(Rth(550))の1/3~2/3程度の厚み方向の位相差値とすることで効果を得られやすい。
本実施形態の検査装置1Aでは、第1の直線偏光板3、被検査物10、位相差フィルタ4、及び、第2の直線偏光板5を通過した光を観察するために、光軸9上、且つ、位相差フィルタ4の両側のうち光源2がある側とは反対側の位置に、カメラ(検出手段)6が配置されている。カメラ6は、例えばCCDカメラであり、この場合CCDカメラと画像処理装置を組み合わせた画像処理解析により自動的に検出し、これによって被検査物10の検査を行うことができる。或いは、検出手段としては、カメラ6に代えて人間が第2の直線偏光板5を目視観察することであってもよい。
(検査方法)
検査装置1Aを用いた検査方法は、以下のとおりである。はじめに、検査装置1Aの内部のうち、第1の直線偏光板3と位相差フィルタ4との間に被検査物10を配置する。このとき、被検査物10は、その基材フィルム8Aの側が第1の直線偏光板3側を向くようにし、且つ、基材フィルム8Aの遅相軸と第1の直線偏光板3の偏光軸(透過軸)とが互いに略直交するように又は略平行となるように配置する。そして、位相差膜7Aの遅相軸と位相差フィルタ4の遅相軸とが互いに略直交するようにし、更に、第1の直線偏光板3と第2の直線偏光板5とがクロスニコルを構成するように配置する。
光源2から第1の直線偏光板3に向けて光を照射する。光源2が発した光は第1の直線偏光板3に入射し、ここで無偏光の光が直線偏光に変換される。そして、その直線偏光が被検査物10に対して基材フィルム8A側から入射する。基材フィルム8Aを通過した直線偏光は、位相差膜7Aを通過して円偏光となる。この円偏光が位相差フィルタ4に対して位相差膜7Bの側から入射する。ここで、位相差膜7Aの遅相軸と、位相差フィルタ4の遅相軸とは互いに略直交しており、且つ、位相差膜7Aの波長550nmにおける面内位相差値と位相差フィルタ4の波長550nmにおける面内位相差値とは互いに略同一であるため、位相差フィルタ4を通過した光は、元の直線偏光に変換されている。そして、位相差フィルタ4を通過した光は次に第2の直線偏光板5に入射する。第2の直線偏光板5は第1の直線偏光板3とクロスニコルの配置とされている、すなわち、第1の直線偏光板3の透過軸と第2の直線偏光板5の吸収軸とが平行となっているので、位相差フィルタ4を通過して直線偏光に戻った光は第2の直線偏光板5によって遮断される。この検査において、被検査物10中の位相差膜7Aに欠陥が存在しない場合は、カメラ6による観察では第2の直線偏光板5は全面が均一な黒色に見える。これに対し、被検査物10中の位相差膜7Aに欠陥が存在する場合、この欠陥部分を通過した光は想定される円偏光(楕円偏光)にはなりきらない状態で位相差フィルタ4に入射する。そして、その円偏光(楕円偏光)は位相差フィルタ4を通過したときに正常な直線偏光に戻ることができず、楕円偏光となる。したがって、第2の直線偏光板5では正規の遮断が行えず光が漏れ、カメラ6による観察では当該欠陥部分が輝点として観察される。
ここで、基材フィルム8Aは「波長550nmにおける面内位相差値が50nm以上」という位相差を有しているので、第1の直線偏光板3を通過した光の偏光状態が基材フィルム8Aによって乱され得る。しかしながら、本実施形態の検査方法では、位相差を有する基材フィルム8Aの遅相軸に対して第1の直線偏光板3の偏光軸を互いに略直交するように又は略平行となるように配置しているので、第1の直線偏光板3を通過した光の偏光状態が基材フィルム8Aによって乱されることがない。すなわち、組んだ光学系が意図したとおりに機能し、位相差膜7Aに欠陥があった場合に観察視野においてその欠陥を適切に認識することができる。従来は、基材フィルム8Aの面内位相差値が50nm以上である場合は、第1の直線偏光板3を通過した光が基材フィルム8Aが有する位相差によって円偏光(楕円偏光)とされ、その結果第2の直線偏光板5から漏れる光が多くなり、検査の障害となっていた。したがって、本実施形態の検査方法によれば、基材フィルム8Aが有する面内位相差の影響を抑制しながら位相差膜の欠陥の有無を容易に判断することができる。
(連続検査方法)
本実施形態の検査方法は、図2に示されているとおり、位相差膜7Aを基材フィルム8A上に連続形成する工程と併せて、これと同一の製造ラインにて連続的に行うことができる。図2に示されている検査システム100は、上述した検査装置1Aに加え、位相差膜7Aが形成される前の基材フィルム8Aの遅相軸(配向角)の方向を求める配向角測定器12と、配向角測定器12で求められた基材フィルム8Aの遅相軸と第1の直線偏光板3の偏光軸とが互いに略直交するように又は略平行となるように第1の直線偏光板3の角度を調節する角度調整機構14とを備えており、インラインにて被検査物10の検査を行う。ここで、被検査物10は搬送されながら検査装置1Aの光軸9内を通過し、欠陥の有無の検査を受ける。そして、検査を終えた被検査物10は巻き取られる。なお、ここで基材フィルム8Aの幅は、例えば0.5~2.0mであってもよく、1.0~1.5mであってもよい。
図3に示されているとおり、検査システム100は、被検査物10の幅方向(搬送方向に垂直な方向)に亘って複数の検査装置1Aが配置されている。検査装置1Aは、被検査物10の幅方向に亘って、例えば5~20箇所配置することが好ましい。図3では五個の検査装置1Aが配置されている。
図2に示されている製造ラインでは、長尺の基材フィルム8Aを搬送しながら、配向角測定器12で基材フィルム8Aの遅相軸の方向を測定する。このとき、基材フィルム8Aが延伸により製造されたものである場合、図4に示されているとおり、その幅方向において遅相軸の方向が変化している。図4において、矢印はその部分における遅相軸の方向を表している。したがって、配向角測定器12による測定は、基材フィルム8Aの幅方向に亘る複数の箇所で行う。配向角測定器12は、測定した遅相軸の情報を角度調整機構14へ提供する。その後、基材フィルム8Aを搬送しながら基材フィルム8A上に重合性液晶化合物溶液を塗工機16で塗布して塗工膜7aをつくり、塗工機16の下流側に配置された乾燥器18で塗工膜7aを乾燥させる。ここで、塗工された重合性液晶化合物は基材フィルム8A上で配向し、乾燥・重合により硬化し、位相差膜7Aとなる。乾燥したフィルムが被検査物10であり、搬送の下流側に配置されている検査装置1Aでの検査に供される。
角度調整機構14は、配向角測定器12から提供された基材フィルム8Aの遅相軸方向の情報に基づいて、第1の直線偏光板3を回転させ、第1の直線偏光板3の偏光軸が基材フィルム8Aの遅相軸と略直交又は略平行となるようにする。併せて、位相差フィルタ4及び第2の直線偏光板5についても上記所定の関係となるように回転させる。被検査物10の幅方向に配置された複数の検査装置1Aは、それぞれ検査領域A(図3参照)が割り当てられており、被検査物10は、幅方向全ての領域に亘って検査される。検査においては、基材フィルム8Aの遅相軸が幅方向に亘って変化していることに応じて、角度調整機構14が、検査領域Aごとに第1の直線偏光板3の偏光軸が向く方向を異ならせることになる。なお、図4に示している検査領域Aは、基材フィルム8A上における、図3に示している検査領域Aに対応する部分を示している。
検査システム100を用いることにより、基材フィルム8Aの搬送方向に亘って位相差膜7Aの形成と検査を連続的に効率よく実施することができるので、被検査物10の製造と検査が効率化される。また、検査システム100では被検査物10の幅方向に複数の検査装置1Aを配置しているので、基材フィルム8Aの遅相軸の方向が幅方向において異なっている場合でも、個々の検査装置1Aにおける第1の直線偏光板3の偏光軸と基材フィルム8Aのその検査領域Aにおける遅相軸との関係を所定の関係に調整することができる。すなわち、基材フィルム8Aの幅方向のあらゆる箇所において、基材フィルム8Aが有する面内位相差の影響を抑制した検査を行うことができる。
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態として図5に示されている検査装置1Bが第1の実施形態の検査装置1Aと異なる点は、光源2と検出手段との位置が逆になっている点である。すなわち、検査装置1Bは、カメラ(検出手段)6、第1の直線偏光板3、位相差フィルタ4、第2の直線偏光板5、及び、光源2がこの順に配置されてなるものである。図5では、第1の直線偏光板3と位相差フィルタ4との間に、検査対象である被検査物10を配置した様子を描いている。ここでは、被検査物10と第2の直線偏光板5との配置に関し、基材フィルム8Aの遅相軸と第2の直線偏光板5の偏光軸とが互いに略直交するように又は略平行となるように配置する。
この検査装置1Bを用いた被検査物10の検査においても、第1の実施形態と同様の原理によって位相差膜7Aの欠陥の有無を容易に検査することができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。
本発明は、位相差膜の欠陥の有無を判断する検査に利用することができる。
1A,1B…検査装置、2…光源、3…第1の直線偏光板、4…位相差フィルタ、5…第2の直線偏光板、6…カメラ(検出手段)、7A,7B…位相差膜、7a…塗工膜、8A,8B…基材フィルム、9…光軸、10…被検査物、12…配向角測定器、14…角度調整機構、16…塗工機、18…乾燥器、100…検査システム、A…検査領域。

Claims (7)

  1. 波長550nmにおける面内位相差値が50nm以上である基材フィルムと、前記基材フィルムの片面に形成された重合性液晶化合物の硬化物からなる位相差膜とを備えるフィルム状の被検査物に光を入射して前記位相差膜の欠陥の有無を判断する検査方法であって、
    第1の直線偏光板と、
    前記被検査物と、
    位相差フィルタと、
    第2の直線偏光板と、をこの順に並ぶように配置し、
    前記被検査物は、前記基材フィルム側の面が前記第1の直線偏光板側を向いており、
    前記基材フィルムの遅相軸と、前記第1の直線偏光板又は前記第2の直線偏光板の偏光軸とは互いに略直交しており又は略平行であり、
    前記位相差膜の遅相軸と、前記位相差フィルタの遅相軸とは互いに略直交しており、
    前記位相差膜の波長550nmにおける面内位相差値と、前記位相差フィルタの波長550nmにおける面内位相差値とは互いに略同一であり、
    前記第1の直線偏光板と前記第2の直線偏光板とはクロスニコルを構成しており、
    前記第1の直線偏光板側又は前記第2の直線偏光板側のいずれか一方側から、光軸が前記被検査物上の所定の検査領域を通過するように光を入射し、その他方側から前記第2の直線偏光板又は前記第1の直線偏光板を観察する、検査方法。
  2. 前記位相差膜が形成される前の前記基材フィルムを対象として、配向角測定器を用いて前記基材フィルムの遅相軸の方向を予め求める工程を有する、請求項1記載の検査方法。
  3. 前記配向角測定器により前記基材フィルムの遅相軸を求めた後に、前記基材フィルムの片面に、重合性液晶化合物を含む液状組成物を塗工して前記基材フィルムの表面上に前記重合性液晶化合物を含む塗工膜を形成し、前記塗工膜に含まれる前記重合性液晶化合物を配向及び硬化させて前記位相差膜を形成する工程を有する、請求項2記載の検査方法。
  4. 前記被検査物を、前記第1の直線偏光板と前記位相差フィルタとの間で前記被検査物の長さ方向に搬送させながら、前記長さ方向に連続して検査を行う、請求項1~3のいずれか一項記載の検査方法。
  5. 前記検査領域を、前記被検査物の幅方向に複数箇所設ける、請求項1~4のいずれか一項記載の検査方法。
  6. 波長550nmにおける面内位相差値が50nm以上である基材フィルムと、前記基材フィルムの片面に形成された重合性液晶化合物の硬化物からなる位相差膜とを備えるフィルム状の被検査物に光を入射して前記位相差膜の欠陥の有無を判断する検査装置であって、
    前記被検査物が配置される場所を挟むようにして配置された第1の直線偏光板及び位相差フィルタと、前記位相差フィルタに関して前記被検査物が配置される場所とは反対側の領域に配置された第2の直線偏光板と、前記第1の直線偏光板又は前記第2の直線偏光板に関して前記被検査物が配置される場所とは反対側の領域に配置された光源と、を備え、
    前記第1の直線偏光板又は前記第2の直線偏光板は、その偏光軸が前記基材フィルムの遅相軸と互いに略直交するように又は略平行となるように配置されており、
    前記位相差フィルタは、その遅相軸が前記位相差膜の遅相軸と互いに略直交するように配置されており、
    前記第1の直線偏光板と前記第2の直線偏光板とはクロスニコルを構成しており、
    前記位相差フィルタの波長550nmにおける面内位相差値は、前記位相差膜の波長550nmにおける面内位相差値と略同一とされており、
    前記光源は、その光軸上に前記第1の直線偏光板、前記被検査物上の所定の検査領域、前記位相差フィルタ、及び、前記第2の直線偏光板が並ぶ位置に配置されている、検査装置。
  7. 請求項6記載の検査装置と、
    前記位相差膜が形成される前の前記基材フィルムの遅相軸を求める配向角測定器と、
    前記配向角測定器で求められた前記基材フィルムの遅相軸と前記第1の直線偏光板の偏光軸とが互いに略直交するように又は略平行となるように前記第1の直線偏光板の角度を調節する角度調整機構と、を備える、検査システム。

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