次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
まず、本実施形態に係る冷却方法を実施できる冷却装置1に適用するフリークーリングチラーCの構成について、図2-図4を参照して説明する。
フリークーリングチラーCは、図4に示すように、全体を直方体状に形成したキャビネット11を備え、このキャビネット11の上部内部を熱交換室Rcとして構成するとともに、下部内部を収納室Riとして構成する。この熱交換室Rcは送風空間Rcwとして機能する。そして、キャビネット11の上端に送風ファン9を配設するとともに、送風空間Rcw(熱交換室Rc)の内部に、送風により内部の冷却媒体が空冷される熱交換部Eを配設する。この熱交換部Eには、並列接続した一対の凝縮器8p,8q及び並列接続した一対の外気熱交換器3p,3qが含まれる。この場合、凝縮器8p,8qは、図2及び図4に示すように、冷却媒体となる冷媒が循環する冷凍サイクル7を用いて冷却液(例示は冷却水)Lを冷却するチラー冷却系Acを構成するとともに、外気熱交換器3p,3qは、空冷用空気(外気)Wとブライン(不凍液)の熱交換を行うフリークーリング系Afを構成する。したがって、このブラインが冷却媒体となる。
外気熱交換器3p,3qは、図4に示すように、熱交換室Rcの内部に、側面から見てV形となるように並べて配設する。これにより、送風ファン9は、二つの外気熱交換器3p,3qの内面により挟まれる内部空間の上方に配設されるとともに、送風方向Fwの下流側位置に配設される。二つの外気熱交換器3p,3qに対向するキャビネット11の側面(正面,背面)には吸気口lli,lliを設けるとともに、送風ファン9の上方に位置するキャビネット11の上端には排気口lleを設ける。
一つの外気熱交換器3pは、ブラインを通すブライン管をジグザグ形状に湾曲形成し、外周面に多数の放熱用フィンを付設した一般的な熱交換器の形態により実施可能である。そして、この外気熱交換器3pは、鉛直線に対して所定の傾倒角度(例えば、15〔°〕前後)で起立(傾斜)させて配設する。他の外気熱交換器3qも外気熱交換3pと同様に構成するとともに、鉛直線に対して所定の傾倒角度(例えば、15〔°〕前後)で起立(傾斜)させて配設する。これにより、並べて配した一対の外気熱交換器3p,3qは側面視がV形になる。
また、一つの凝縮器8pは、一般的な凝縮器構造、即ち、冷媒を通す冷媒管をジグザグ形状に湾曲形成した冷媒管ユニットの外周面に多数の放熱用フィンを付設した構造を有している。他の凝縮器8qも凝縮器8pと同様に構成する。そして、各凝縮器8p,8qは、図2及び図4に示すように、送風ファン9の送風方向Fwの下流側から、各外気熱交換器3p,3qに対してそれぞれ重なり合うように配設する。
他方、収納室Riには、図2に示す、凝縮器8p,8qを除く圧縮機15等のチラー冷却系Acにおける冷凍サイクル7の構成部品類,及び外気熱交換器3p,3qを除く循環ポンプ16等のフリークーリング系Afにおける構成部品類を配設する。また、冷却液Lを収容する冷却液タンク17,冷却液タンク17の冷却液Lを、フリークーリング系Afにおける間接熱交換器18及び冷凍サイクル7における熱交換器(冷却部)19(図2)を通して外部に送出する送液ポンプ20,及びインバータ等の電装部品が実装される制御盤をそれぞれ配設する。
図2は、フリークーリングチラーCの構成(全体系統)を示す。同図中、Ac及びAfは、前述したチラー冷却系及びフリークーリング系をそれぞれ示す。チラー冷却系Acにおいて、7は冷凍サイクルであり、前述した凝縮器8p,8qの冷媒入口は、圧縮機15を介して熱交換器(冷却部)19の一次側l9fの流出口に接続するとともに、一次側l9fの流入口は電子膨張弁21及びドライヤ22を介して凝縮器8p,8qの冷媒出口に接続する。これにより、冷媒が循環する公知の冷凍サイクルが構成され、後述する供給口Csから外部に供給する冷却液Lを冷却することができる。この場合、圧縮機15には圧縮機インバータl5iが接続され、圧縮機15における圧縮機モータの回転数が可変制御される。なお、23は圧縮機15の吐出側における冷媒圧力センサ、24は圧縮機15の吸入側における冷媒圧力センサ、25は圧縮機15の吐出側と熱交換器19の一次側l9fの流入口側間に接続した電子膨張弁を示す。
一方、フリークーリング系Afにおいて、26は、ブラインが循環するブライン循環回路であり、前述した外気熱交換器3p,3qのブライン入口は、間接熱交換器18の一次側l8fの流出口に接続するとともに、この一次側l8fの流入口は、循環ポンプ16を介して外気熱交換器3p,3qのブライン出口に接続する。この場合、循環ポンプ16には循環ポンプインバータl6iが接続され、循環ポンプ16におけるポンプモータの回転数が可変制御される。この間接熱交換器18には、前述した熱交換器19と同様に構成した熱交換器を用いることができる。なお、27はブライン圧力スイッチ、28はブライン注入用バルブをそれぞれ示す。
また、29は、冷却液Lを循環させる冷却液循環系を示す。冷却液循環系29は、熱交換器19の二次側l9sの冷却液入口を、間接熱交換器18の二次側18sの流出口に接続するとともに、この二次側l8sの流入口を送液ポンプ20を介して冷却液タンク17のタンク供給口l7iに接続する。この場合、送液ポンプ20の吸込口はタンク供給口17iを兼用する。また、熱交換器19の二次側l9sの冷却液出口は、外部の供給合流管Psが接続される供給口Csに接続するとともに、外部の戻り合流管Prが接続される戻り口Crは、冷却液タンク17のタンク戻り口17rに接続する。これにより、冷却液タンク17に収容した冷却液Lを供給口Csから外部の被冷却部に供給するとともに、被冷却部から戻り口Crに戻される熱交換後の冷却液Lを冷却液タンク17に収容する冷却液循環系29が構成される。
以上の構成により、チラー冷却系Acにおける熱交換器19を用いて冷媒と冷却液Lの熱交換を行なうことができるとともに、フリークーリング系Afにおける間接熱交換器18を用いてブラインと冷却液Lの熱交換を行なうことができる。このフリークーリング系Afとチラー冷却系Acは、フリークーリングチラーC(冷却装置1)における冷却機構部Cmを構成する。このように、冷却機構部Cmに、フリークーリングチラーCを構成する、送風空間Rcwに配設する凝縮器8p,8qを有する冷凍サイクル7を用いたチラー冷却系Ac,及び送風空間Rcwに配設して空冷する外気熱交換器3p,3qを用いたフリークーリング系Afを含ませれば、フリークーリング系Af及びチラー冷却系Acの双方に噴霧を作用させることができるため、噴霧の効率的利用を図ることができるとともに、フリークーリングチラーC全体の冷却性能向上及び省エネルギ性向上に寄与できる。その他、30はバイパスバルブ、31はタンクドレンバルブ、32はフロートスイッチ、33はボールタップ、34は冷却液圧力センサをそれぞれ示すとともに、l7pは冷却液タンク17の下部寄りに設けた後述する均圧管62に対する接続ポートを示す。
さらに、図2及び図4に示すように、基本形態のフリークーリングチラーCに対して、噴霧機構部2を配設する。噴霧機構部2は、前後一対の噴霧ノズル2n,2nを備え、各噴霧ノズル2n,2nは、それぞれ吸気口lli,lliの近傍に配設する。この場合、図2及び図4に示すように、各噴霧ノズル2n,2nは、熱交換部Eの上方となる外気熱交換器3p,3qの上端付近に配し、それぞれ下方に噴霧できるように配するとともに、外気熱交換器3p,3qの外面における、より広い範囲に拡散できるように最適位置及び角度を選定する。このように、噴霧ノズル2n,2nを配するに際し、送風空間Rcwに配設した熱交換部Eの上方に配して下方に噴霧を行う噴霧ノズル2n…を設ければ、基本的に、噴霧によるミストを下方に放出できるため、より迅速に分散させることにより、より効率的に気化、更には冷却することができる。
また、噴霧ノズル2nは、セミドライフォグ噴霧機能を備えている。セミドライフォグ(登録商標)噴霧機能は、平均粒径10-30〔μm〕の微細粒子(ミスト)による噴霧を行う。このようなセミドライフォグ噴霧機能を有する噴霧ノズル2nを使用すれば、微細粒子(ミスト)による噴霧、即ち、濡れの原因となる粗大粒子を含まない噴霧を行うことにより、迅速かつ効率的な気化を実現できるため、噴霧の無駄を生じることなく効率的な冷却を行うことができる。
そして、各噴霧ノズル2n,2nは、図2及び図3に示すように、噴霧制御ユニット2cを介して、給水口35及び給気口36に接続する。具体的には、図3に示すように、各噴霧ノズル2n…は並列接続し、各噴霧ノズル2n…の水入口は、水圧検出部37及びリニア電動弁38を介して給水口35の内端に接続するとともに、各噴霧ノズル2n…のエア入口は、レギュレータ39及び開閉弁(電磁開閉弁)40を介して給気口36の内端に接続する。他方、給水口35の外端には、外部における水道管等の給水部Pwを接続するとともに、給気口36の外端には、外部における圧縮エア供給部Paからの供給管等を接続する。
この場合、水圧検出部37には圧力トランスミッタを使用する。これにより、噴霧ノズル2n…に付与される噴霧用水Lwの水圧を検出し、水圧に係わる検出信号を後述するチラーコントローラ(冷却装置コントローラ)5に付与するとともに、リニア電動弁38は、チラーコントローラ5から付与される制御信号Scにより、噴霧ノズル2n…から噴霧する噴霧量Qを変更可能な制御弁2vとして機能し、弁開量制御により噴霧量Qの増減制御を行なうことができる。また、レギュレータ39は、圧縮エアの供給圧力を一定圧力に維持する機能を備える。
なお、噴霧用水Lwとして、水道管等の給水部Pwからの水道水を利用する場合を説明したが各種水を利用可能である。例えば、給水口35の内端を、仮想線で示すように、三方切換弁41を介して前述した供給口Ccに接続することもできる。これにより、噴霧用水Lwには、外部における給水部PWからの水とフリークーリングチラーCから吐出する冷却液Lとしての水を選択して使用することができる。このように、噴霧用水Lwに、外部の給水部Pwから供給される水,又は冷却機構部Cmにより冷却する冷却液としての水を用いれば、異なる用途の水を噴霧用水Lwとして選択的に利用できるため、設置環境や設置目的等に応じた柔軟な設置施工を行うことができる。また、他の例としては、冷却装置1の内外部で発生する結露水、即ち、冷却部(凝縮器8p…等の熱交換部,冷却液タンク17,配管等)で発生する結露水(凝縮水,ドレン水)を収集して利用することも可能である。通常、このような結露水は、外部に廃棄されるが、噴霧用水Lwとして再利用すれば、結露水(廃棄水)の有効利用を図ることができる。
他方、フリークーリングチラーCは、チラー全体の制御を司るチラーコントローラ(冷却装置コントローラ)5を内蔵する。このチラーコントローラ5は、図3に示すように、コンピュータ処理機能を有するチラーコントローラ本体51を備える。チラーコントローラ本体51は、CPU及び各種ドライブユニット等のハードウェアを含むとともに、内部メモリ52が付属する。この内部メモリ52には、フリークーリングチラーCにおける冷却液Lの温度制御及び一連の動作を実行するシーケンス制御プログラムによるチラー制御プログラム52pを格納するプログラムエリア52mpを有するとともに、設定データを含む各種データを書込むデータヱリア52mdを有する。また、チラーコントローラ本体51にはディスプレイ53を接続する。例示のディスプレイ53はタッチパネル53tが付属し、操作部(入力部)を兼ねている。
この場合、チラー制御プログラム52pには、本発明の要部を構成する噴霧機構部2を用いた冷却方法に係わる制御プログラムが含まれる。この制御プログラムは、基本的な機能として、湿度Hが高いときに噴霧量Qを減少させ、かつ湿度Hが低いときに噴霧量Qを増加させる予め設定した噴霧制御アルゴリズムDaに基づいて生成される制御信号Scを出力する処理機能を備える。
以下、この噴霧制御アルゴリズムDaについて、図5-図11を参照して具体的に説明する。
噴霧による冷却を行う場合、噴霧によるミストが無駄を生じることなく、有効かつ効率的に使用されることが必要である。そこで、噴霧の無駄を削減するには、熱交換部の前面における温湿度条件とエンタルピー条件を把握する必要があるとの観点からその検証(考察)を行った。検証は熱交換部として凝縮器を想定した。
即ち、凝縮器の前面に水を噴霧した場合、空気が飽和状態に近いほど、気化できる水量が減り、噴霧した水の一部が気化できなくなるため、冷却能力に寄与できない。したがって、一定の水量(噴霧量)を噴霧した場合、条件によって噴霧量に無駄を生じることが考えられる。
また、エンタルピーは、圧力一定条件で系が持つエネルギーであり、噴霧冷却である以上、反応前の系(反応系)よりも、反応後の系(生成系)が低くなければならない。具体的には、噴霧したミストを気化させた場合、空気から気化熱を奪う加湿冷却作用が生じ、このときの湿り空気の状態点は、図5に示すように、湿り空気線図Kaを右下から左上へ向かって移動する。つまり、凝縮器の前面における空気は飽和状態でなくても、エンタルピー量H(H0,H1,H2)は、「噴霧前>噴霧後」の関係になければ噴霧効果は少ないことになる。したがって、温度低下が見込めないにも関わらず、一定量の水を噴霧した場合、上述した湿度の場合と同様に、噴霧した水の一部が気化されず、冷却に寄与できなくなる。
このように、湿度条件を把握し、これに対応して噴霧量を変化させることが有効になるとともに、空気のエンタルピーを考慮することが必要との前提においてこれらの物理量に係わるシュミレーションを行った。
今、図6に示す冷却モデルにおいて、熱交換部(E(8p,8q))に対する空気条件(外気の温度Taが12.0〔℃〕,外気の湿度が48.0〔%〕)を想定し、シュミレーションにより、噴霧前と噴霧後の各空気条件項目を算出した。そのシュミレーション結果の一部を図7に示す。
図7において、湿分量が「噴霧前<噴霧後」の条件を満たすとともに、比エンタルピーが「噴霧前>噴霧後」の条件を満たし、噴霧量Q及び温度Taの低下が最大となるポイントは、枠線Zにより囲んだ条件、即ち、温度Taが6.0〔℃〕,湿度Hが93.0〔%RH〕のときとなる。そして、この空気条件を生み出すための噴霧量Qは0.327〔L/min〕が必要となることを確認できる。
図8及び図9は、このシュミレーション方法により、様々な吸気温湿度条件における、噴霧可能量を算出した結果を示している。図8は温度Taと噴霧量Qの関係を示す。図8の結果より、ランニングコストを算出した場合、温度Taが12〔℃〕以下ではランニングコストに係わる効果はほとんど無く、外気の温度Taが12〔℃〕以下では噴霧の必要性を生じない点を確認できた。
このため、本実施形態に係る冷却方法では、後述するように、温度センサ4tにより外気Wの温度Taを検出し、予め設定した非噴霧温度Ts以下のときは噴霧を行わない非噴霧機能を設けた。例示の場合、この非噴霧温度Tsを12〔℃〕に設定することができる。このような非噴霧機能を設ければ、外気Wの温度Taが所定の温度よりも低い領域では、噴霧効果が低下するため、適切な非噴霧温度Tsを設定することにより、省エネルギ化をより高めることができる。
また、図9は湿度Hと噴霧量Qの関係を示す。図9の結果より、湿度Hが高いときに噴霧量Qを減少させ、かつ湿度Hが低いときに噴霧量Qを増加させることが望ましい空気条件を設定できる可能性を確認できた。特に、図9に示すように、湿度Hと噴霧量Qの相関については、全体において、線形(一次関数的)に変化する傾向が見られることに加え、湿度Hが変化するに従って、噴霧量Qが段階的(ステップ的)に変化する傾向があることも確認できた。
図10は、段階形に変化する関係に近似した特性図であり、図11は、線形で変化する関係に近似した特性図を示す。これにより、実際の噴霧量Qの制御においては、湿度Hを検出し、検出した湿度Hに基づいて噴霧量Qの大きさを制御することにより、噴霧によるミストが無駄を生じることなく、有効かつ効率的に利用され得ることを確認できる。
このため、噴霧制御アルゴリズムDaとして、図10に基づく制御アルゴリズム、即ち、湿度Hの範囲Hs…に基づいて噴霧量Qの大きさQs…を段階的に変化させる制御アルゴリズムDasを構築すれば、湿度Hと噴霧量Qの固有の関係性に着目して、より近似させることが可能になるため、より望ましい噴霧量制御を行うことができるとともに、予め設定するデータテーブル等により制御処理の容易化を図ることができる。即ち、実際の制御においては、チラーコントローラ5に、湿度Hの大きさの範囲ΔH…とこの湿度の大きさの範囲ΔH…に対応する噴霧量Qs…のデータテーブルを設定して制御処理を行うことができる。
噴霧制御アルゴリズムDaとして、図11に基づく制御アルゴリズム、即ち、湿度H…に基づいて噴霧量Qの大きさQs…を一次関数により変化させる制御アルゴリズムDafを構築すれば、アルゴリズムDafの設定及び修正を容易に行うことができるため、使用環境やメンテナンス等において柔軟に対応(最適化)することができる。即ち、実際の制御においては、チラーコントローラ5に、一次関数により演算を行う演算処理部を設定し、湿度Hs…を検出することにより、この湿度Hsと一次関数から目的の噴霧量Qsを算出処理することができる。
他方、チラーコントローラ本体51のセンサポートには、図3に示す、圧縮機15の吐出側における冷媒温度センサ42,圧縮機15の吸入側における冷媒温度センサ43,冷却液温度センサ44等の各種温度センサをはじめ、前述した各種圧力センサ23,24,34及び圧力スイッチ27等の各種センサ類を含むセンサ群54を接続する。特に、このセンサ群54には、本実施形態に係る冷却方法に関連して、図2及び図3に示す外気湿度センサ4h及び外気温度センサ4tを接続するとともに、前述した圧力検出部37を接続する。一方、出力ポートには、前述した、圧縮機インバータl5i,ファンインバーク7i,循環ポンプインバータl6i,送液ポンプインバータ20i,電子膨張弁21,25等の各種アクチュエータを接続するとともに、本実施形態に係る冷却方法に関連して、前述したリニア電動弁38(制御弁2v)及び開閉弁40を接続する。
したがって、このように構成されるフリークーリングチラーCは、運転時には送液ポンプ20が作動し、冷却液タンク17内の冷却液Lは、間接熱交換器18,熱交換器(冷却部)19及び供給口Csを介して外部に供給され、供給管(例示は、供給合流管)Psを通して産業機械等の被冷却部を冷却できるとともに、被冷却部により熱交換された使用後の冷却液Lは、戻り管(例示は、戻り合流管)Prを通して戻り口Crに至り、再び冷却液タンク17に戻される。この際、供給口Csから供給される冷却液Lの温度は、供給口Cs付近に配した冷却液温度センサ44により検出されるとともに、チラーコントローラ5により、圧縮機15に接続した圧縮機インバータ15i及び電子膨張弁21等を含むチラー冷却系Acが制御され、冷却液Lの温度が予め設定した目標温度となるように温度制御される。また、送風ファン9の回転により、熱交換室Rc内が吸引されることにより、キャビネット11の側面(正面,背面)に設けた吸気口lli,lliから外気Wが吸入され、外気熱交換器3p,3q及び凝縮器8p,8qを通過してキャビネット11の上端に設けた排気口lleから排気される。一方、所定の温度条件及び湿度条件下で、噴霧ノズル2n…から噴霧用水Lwが噴霧され、蒸発時の潜熱の作用により外気Wが冷却されるとともに、循環ポンプ16が作動し、ブライン循環回路26をブラインが循環することにより、外気熱交換器3p,3q及び間接熱交換器18を含むフリークーリング系Afによる冷却液Lの冷却が行われる。
次に、本実施形態に係る冷却装置1(フリークーリングチラーC)による冷却方法について、図2-図12を参照しつつ、図1に示すフローチャートに従って説明する。
まず、フリークーリングチラーCの運転開始により、前述したチラー冷却系Ac及び/又はフリークーリング系Afによる冷却制御が行われる。
また、運転開始により、外気Wの温湿度の検出を行う(ステップS1)。即ち、外気温度センサ4tにより外気Wの温度Taを検出するとともに、外気湿度センサ4hにより外気Wの湿度Hsを検出する。検出結果は、チラーコントローラ5に付与されるため、チラーコントローラ5では噴霧条件か否かを判定する。具体的には、温度Taが12〔℃〕を越えているか否かを判断し、12〔℃〕を越えているときは噴霧モードにより噴霧処理を実行する(ステップS2)。
即ち、チラーコントローラ5では、噴霧制御アルゴリズムDaに基づいて必要な噴霧量Qsを求めるとともに、この噴霧量Qsに対応する噴霧用水Lwの水圧を求める(ステップS3)。この場合、前述したように、図10に基づく制御アルゴリズムDasの場合、検出した湿度Hsが範囲ΔHにあれば、この範囲ΔHに対応する噴霧量Qsを予め設定した図10に基づいて設定したデータテーブルから読み出すことにより求めることができるとともに、図11に基づく制御アルゴリズムDafの場合、図11に基づいて設定した一次関数を用いて、検出した湿度Hsから対応する噴霧量Qsを算出処理により求めることができる。そして、必要な噴霧量Qsが得られたなら、この噴霧量Qsに対応する水圧を求める。この場合、図12に示すように、噴霧量Qsと水圧は、ほぼリニアな相関関係を有しているため、噴霧量Qsから対応する噴霧用水Lwの水圧を容易に求めることが可能である。
一方、チラーコントローラ5は、初回検出時の場合、開閉弁40を開制御して圧縮エアを供給する(ステップS4,S5)。この場合、圧縮エアは、圧縮エア供給部Paから、開閉弁40及びレギュレータ39を介して噴霧ノズル2n…のエア入口に供給される。また、リニア電動弁38(制御弁2v)に制御信号Scを付与して噴霧用水Lwを供給する(ステップS4,S6)。この場合、予め、所定の水圧を得る開量(制御量)を知ることができるため、付与する制御信号Scは、目標とする水圧を得る制御量となる。これにより、噴霧用水Lwは、給水部Pwから、リニア電動弁38及び水圧検出部37を介して噴霧ノズル2n…の水入口に供給される。
この際、実際の水圧は、水圧検出部37により検出されてチラーコントローラ5に付与される(ステップS7)。チラーコントローラ5は、水圧検出部37により検出された水圧が目標とする水圧に対して異なる場合、制御信号Scの大きさを増減してリニア電動弁38を制御し、目標の水圧となるように、フィードバック制御を行う(ステップS8,S9,S7)。なお、フィードバック制御を例示したが、オープンループ制御による場合を排除するものではない。
そして、目標の水圧であれば、その水圧を維持する(ステップS10).この後、運転を停止することなく更新サイクル(例えば、5分)に基づく更新タイミングになったなら、外気Wの温度Ta及び湿度Hの検出(取込)を行う(ステップS11,S12,Sl)。また、検出結果に基づき、チラーコントローラ5では、噴霧条件か否かを判定、即ち、温度Taが12〔℃〕を越えていることを確認し、噴霧制御アルゴリズムDaに基づいて必要な噴霧量Qsを求めるとともに、この噴霧量Qsに対応する水圧を求める(ステップS2,S3)。この場合、初回検出ではないため、得られた水圧が変化した場合には、変化した後の水圧になるように、チラーコントローラ5によるフィードバック制御が行われる(ステップS4,S7,S8,S9)。そして、更新した水圧が維持される制御処理が行われるとともに、以降、一連の処理が同様に行われる(ステップS10…)。
なお、ステップS2における噴霧条件の判定時に、外気Wの温度Taが12〔℃〕以下のときは、非噴霧モードとなり噴霧処理は行わない(ステップS2,S13)。噴霧処理が行われない場合であっても、更新サイクル(5分)に基づく更新タイミングになったなら、外気Wの温度Ta及び湿度Hの検出(取込)を行い、噴霧条件の判定処理が行われる(ステップS13,S11,S12,S1)。
このように、冷却装置1(フリークーリングチラーC)による本実施形態に係る冷却方法によれば、基本手法として、送風空間Rcwに配設して所定の冷却媒体を空冷する熱交換部Eに対する送風方向Fw上流側に、噴霧機構部の噴霧ノズル2n…を配するとともに、この噴霧ノズル2n…から噴霧用水Lwを噴霧して冷却を行うに際し、予め、噴霧機構部2に、噴霧ノズル2n…から噴霧する噴霧量Qを、付与される制御信号Scにより制御可能な制御弁2vを設けるとともに、湿度Hが高いときに噴霧量Qを減少させ、かつ湿度Hが低いときに噴霧量Qを増加させる、予め設定した噴霧制御アルゴリズムDaに基づく制御信号Scを生成する機能を有する冷却装置コントローラ5を設け、運転時に、湿度センサ4hにより外気Wの湿度Hを検出し、冷却装置コントローラ5により、検出した湿度Hに基づいて生成される制御信号Scを制御弁2vに付与することにより噴霧量Qの増減制御を行うようにしたため、噴霧の無駄を無くし、必要とする条件下において噴霧を最大限効率的に利用することにより冷却性能の向上を図ることができるとともに、更なる省エネルギ化を実現することができる。
本実施形態に係る冷却方法を用いたフリークーリングチラーCの年間におけるランニングコストを、実際に運転した場合の消費電力データ(1年間の連続運転)から換算し、その削減効果を確認した。その結果、噴霧量Qの制御方式として、図10の制御アルゴリズムDasに基づく段階的制御を行った場合は、噴霧を行わない場合に対して、6.8〔%〕の削減効果が得られた。一方、図11の制御アルゴリズムDafに基づく一次関数による制御を行った場合は、噴霧を行わない場合に対して、6.4〔%〕の削減効果が得られた。段階的制御の方が一次関数による制御よりも良好な削減効果を得れることを確認できた。この理由は、段階的制御の場合、湿度Hと噴霧量Qの固有の関係性に着目し、より近似させることができることによるものと考えられる。
図13は、これらのランニングコストを求めるための基礎データとなる外気の温度Ta〔℃〕に対する消費電力〔kW〕の関係図を示す。図13は、段階的制御により噴霧を行った場合と噴霧を行わない場合の消費電力を、外気の温度に対応して示したものである。この結果によれば、例えば、外気の温度Taが20〔℃〕の場合、概ね22〔%〕の消費電力削減効果が得られることを確認できる。
次に、冷却装置1を適用したフリークーリングチラーCの連結運転システム100について、図14を参照して説明する。
図14中、Mは連結運転システム100から供給される冷却液Lにより冷却される産業機械等の被冷却部を示す。連結運転システム100は、各フリークーリングチラーC…と被冷却部Mを、供給合流管Ps及び戻り合流管Prにより接続する。この場合、供給合流管Psの一端口(流出口)は被冷却部Mの給入口Miに接続するとともに、他端口側は閉塞する。一方、戻り合流管Prの一端口(流入口)は被冷却部Mの排出口Meに接続するとともに、他端口側は閉塞する。また、各フリークーリングチラーC…における供給口Csは接続管Psr…を介して供給合流管Psの中途に合流接続するとともに、各フリークーリングチラーC…における戻り口Crは接続管Prmを介して戻り合流管Prの中途に分岐接続する。なお、接続管Psm,Prmの中途には、供給開閉弁及び流量を一定に維持する定流量弁及び戻り開閉弁等を含むバルブユユット61を接続する。これにより、各フリークーリングチラーC…における冷却液Lの循環経路は、供給合流管Ps及び戻り合流管Prを介して並列接続される。図14中、62は、各フリークーリングチラーC…間に共通接続した均圧管を示し、この均圧管62は、各冷却液タンク17…の接続ポート17p…(図2)に接続する。さらに、63は、供給合流管Ps及び戻り合流管Prの中途に接続した供給開閉弁及び戻り開閉弁等を含むバルブユニットを示す。そして、供給合流管Psには、この供給合流管Psの出口液温Teを検出する出口液温センサ65を付設するとともに、戻り合流管Prには、この戻り合流管Prの入口液温Tiを検出する入口液温センサ66を付設する。
他方、連結運転システム100には、別途、集中コントローラ101を配置し、この集中コントローラ101に、各液温センサ65,66,更には外気Wの温度Taを検出する外気温度センサ64を接続するとともに、ケーブルライン67を介して、各フリークーリングチラーC…におけるチラーコントローラ5…(チラーコントローラ本体51…)を遠隔制御可能に接続する。これにより、集中コントローラ101は、外気Wの温度Taと供給合流管Psの出口液温Teを監視し、少なくとも、温度Taが当該出口液温Teよりも高いときは第1モードを実行し、温度Taが当該出口液温Teよりも低いときは第2モードを実行する。
第1モードは、冷凍サイクル7を用いたチラー冷却系Acのみを制御して冷却液Lの冷却を行うモードである。したがって、フリークーリング系Afは、循環ポンプ16を停止した状態にするとともに、送風ファン9は凝縮器8p,8qの放冷用として定速回転により作動させることができる。第2モードは、当該チラー冷却系Acを停止又は補助的に使用し、外気熱交換器3p,3qを外気Wにより空冷する送風ファン9を用いたフリークーリング系Afを制御して冷却液Lの冷却を行うモードであり、チラー冷却系Acを補助的に使用する第2Aモードとチラー冷却系Acを停止する第2Bモードが含まれる。第2モードは、基本的にフリークーリング系Afを使用して冷却を行うが、負荷が大きくなり、フリークーリング系Afのみでは冷却能力が不足する場合に、チラー冷却系Acを補助的に使用する。
具体的には、集中コントローラ101は、外気の温度Taと供給合流管Psの出口液温Teを監視し、Ta>Teのときは、チラー冷却系Ac…のみを用いた台数制御を行う。この場合、チラー冷却系Ac…の運転開始前に、負荷の大きさに基づくチラー冷却系Ac…の台数Nを所定の演算式により求め、運転を開始する際は、求めたチラー冷却系Ac…の台数Nにより運転を開始するとともに、被冷却部Mの負荷の大きさを監視し、予め設定した低負荷判定値以下になったなら運転中のチラー冷却系Ac…の少なくとも一台のチラー冷却系Acを停止させ、かつ予め設定した高負荷判定値以上になったなら停止中のチラ一冷却系Ac…の少なくとも一台のチラー冷却系Acを追加運転する台数制御を行う。一方、Ta≦Teのときは、チラー冷却系Acを停止又は補助的に使用し、外気熱交換器3p,3qを外気Wにより空冷する送風ファン9を用いたフリークーリング系Afを制御して冷却液Lの冷却を行う。このため、チラー冷却系Acを補助的に使用する場合とチラー冷却系Acを停止する場合が含まれる。
したがって、このような連結運転システム100によれば、連結運転方式の基本的効果、即ち、連結するフリークーリングチラーC…の台数を容易に変更(増減)可能にし、様々な用途に対しても柔軟に対応できるなど、適応性及び汎用性に優れた連結運転システム100を提供できるという基本的効果を確保しつつ、特に、季節の変化に伴う外気の温度Taの変動を考慮することにより、自然エネルギを効果的に利用した大幅な省エネルギ化を実現することができる。
以上、好適実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,制御手法等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
例えば、噴霧制御アルゴリズムDaとして、段階的に変化させるアルゴリズムDasと一次関数により変化させるアルゴリズムDafを例示したが、特定のアルゴリズムに限定されるものではなく、他の例として、二次以上の関数など、様々なパターンを含む任意の変化パターンによるアルゴリズムを適用できる。さらに、噴霧機構部2に、セミドライフォグ噴霧機能を有する噴霧ノズル2n…を設けることが望ましいが、一般的な噴霧機能(散布機能)を有する各種噴霧ノズルを排除するものではない。なお、噴霧ノズル2n…の配設位置や配設数量等は、実施形態が望ましいが、例示の実施形態に限定されることなく、任意に選定可能である。一方、噴霧量Qを変化(制御)させる手法は、噴霧量Qを変化させることができる機能を有するものであれば、各種手段を利用できる。したがって、制御弁2vは、特定の弁タイプを意味するものではなく、噴霧量Qを変化させることができる弁(機能)の意味である。なお、冷却液Lとして、例示は冷却水を示したが、不凍液等の各種溶液を利用できるとともに、本発明における制御上の冷却とは加熱も含まれる概念である。