JP7352272B2 - 除振装置 - Google Patents
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Description
非特許文献2には、てこの原理を利用した変位拡大機構、または複数のコイルばね、座屈後のはり構造、ローラー機構、円錐振り子等を用いた上下方向および水平方向の除振装置が記載され、それぞれの概要や特徴が記載されている。
非特許文献3には、形状記憶合金線材のばねを用いた水平方向免震装置の地震応答解析と設計指針が記載されている。ばねとしては、円環ばねと座屈ばねが記載されており、それぞれのばねの復元力特性と、それらを用いた免震装置の免震効果を実験的に検証した結果が記載されている。
非特許文献2に記載の除振装置は、座屈後のはり構造を利用した装置もあるが、ここでも正確なピン支持機構の実現が必要である。また、その他の装置も含めて装置は複雑かつ大型化する場合が多い。
非特許文献3に記載の免震装置は、座屈後形状記憶合金の復元力の漸軟非線形性を用いて免震を行っている。この際、水平方向変位に対する復元力は常に正の勾配(正剛性)を示しているため、固有振動数の低減化効果、すなわち除振性能は限られたものとなっている。
本発明は、簡易な構造の除振装置を提供することを目的とする。
座屈後の静的復元挙動が負剛性特性を示し、前記除振対象物に加わる前記振動を抑制するための第2の弾性体(ただし、前記第2の弾性体の長手方向が前記振動の方向に対して直交するように配置されているものを除く。)と、を備え、前記第2の弾性体が、単一の座屈モードで変形する除振装置である。
本発明の第1の実施の形態に係る除振装置10は、振動源(不図示)が除振対象物12に対して与える上下方向の振動(図1に示す矢印参照)を抑制できる。
除振装置10は、図1に示すように、フレーム20、リニアガイド14、コイルばね16及び形状記憶合金18を備えている。
なお、案内部はリニアガイド14に限定されるものではない。
なお、第1の弾性体はコイルばね16に限定されるものではない。
ただし、形状記憶合金18は、チタン・ニッケル合金に限定されるものではない。形状記憶合金18として、例えば、Ti-Nb系形状記憶合金、Ti-Al系形状記憶合金、Cu-Al系形状記憶合金、Cu-Zn系形状記憶合金、Fe-Mn-Si系形状記憶合金及びFe-Ni-Co-Al系形状記憶合金が挙げられる。
更に言うと、形状記憶合金18は、超弾性特性又は擬弾性特性を有していればよい。
なお、形状記憶合金18は、同図3に示すように、環境温度(30℃、40℃、50℃、60℃及び70℃)に応じて異なった復元力特性及び負剛性特性を示す。
付言すると、ばね定数を大きさKに設定することに代えて、形状記憶合金の温度を制御することにより剛性をゼロに近づけることも可能である。
(1)除振対象物12の質量:2,494g
(2)形状記憶合金18(株式会社吉見製作所製):ニッケル(55.5wt%)及びチタン(45.5wt%)の合金であって、真直状に形状記憶させた板材(寸法110mm×5.5mm×0.5mm)
(3)コイルばね16のばね定数:0.083N/mm
(4)形状記憶合金18の環境温度:70℃
(5)加振器の加振条件と測定条件:2Hz~100Hzの周波数範囲で1Hz刻みに変位または加速度を測定
また、加振前の状態(静止した状態)で、除振対象物12の上下方向の静的変位は約11mm、すなわち形状記憶合金18の座屈後静的変位は約11mmであった。
同図4から、このシステムの1次固有振動数は約3Hzであることが分かった。また、1次固有振動数よりも大きい周波数領域においては、伝達率は低下しており、除振されていることが分かった。更に、周波数100Hzまで共振等はなく良好に除振されていることが分かった。
第1の比較試験においては、数値計算により、前述の本試験と同じ静的変位(約11mm)で除振対象物12を支持するコイルばね(ばね定数は2.22N/m)のみを用いて除振し、固有振動数を求めた。
その結果、固有振動数が約4.75Hzとなったことから、本除振装置10により固有振動数がより低減化されていることが明らかとなった。
その結果、固有振動数は約4Hzとなったことから、本除振装置10により固有振動数がより低減化される効果が明らかとなった。
従って、本実施の形態に係る除振装置10によれば、形状記憶合金18の負剛性特性を利用した簡易な構造で除振対象物12に加わる振動を抑制できる。
FEM解析では、長さ50mm、厚さ0.42mm及び幅7.2mmの板状の材料特性モデルMを作成した後、モデルMの材料特性として形状記憶合金の機械的特性データを入力し、座屈解析を行った。今回使用した形状記憶合金の材料特性モデルMは、引張試験を実施すると、図5に示すようなヒステリシスを伴った変形-回復挙動を示す。FEM解析では、このヒステリシスの形状を決定する1)マルテンサイト誘起ひずみεM、2)ヤング率E及び3)プラトー領域における剛性値Epを変化させ、それぞれの数値が座屈後特性に及ぼす影響について調べた。
まず初期状態として、図6(A)に示すように、材料下端を固定する。
次のステップ1では、図6(B)に示すように、材料特性モデルMの上端に下方向に0.5mmの変位を与える。ここで、現実では完全な鉛直方向の負荷を与えることはほぼ不可能なため、薄板材料を上下方向に圧縮すると必ず座屈するが、FEM解析では完全な鉛直方向に負荷を加えるため単純な圧縮変形がシミュレートされ、座屈が起こらない。そこで変位を与えることに加え、座屈させるための外乱として、材料特性モデルMの中央部の横方向に10Nの力を加える。
ステップ2では、図6(C)に示すように、外乱のために加えた10Nを取り除く。
ステップ3では、図6(D)に示すように、この材料特性モデルMの10%の長さである5mmの変位を加え座屈させる。
ステップ4では、図6(E)に示すように、その変位を取り除き座屈のシミュレーションを終える。
マルテンサイト誘起ひずみεMが異なる5種類の材料特性モデル(図7(A)参照)について、それぞれ座屈シミュレーションを行った。
その結果、図7(B)に示すように、マルテンサイト誘起ひずみεMの減少に伴い、座屈中の負剛性の大きさが増加する傾向にあることが分かった。特に、マルテンサイト誘起ひずみεMが1.25%と1.5%の場合は負剛性特性を示さず、通常の金属の座屈挙動と同様の特性を示している。これは座屈によって生じる変形においてマルテンサイト変態が全く起こっていないことが原因であると考えられる。
ヤング率Eが異なる4種類の材料特性モデル(図8(A)参照)について、それぞれ座屈シミュレーションを行った。
その結果、図8(B)に示すように、ヤング率Eの増加に伴い負剛性領域が増大することが分かった。またヤング率Eが20GPaの場合は、負剛性特性が現れていなかった。これも、座屈変形中のマルテンサイト変態が行われていないことが原因であると考えられる。
プラトー領域における剛性値Epが異なる5種類の材料特性モデル(図9(A)参照)について、それぞれ座屈シミュレーションを行った。
その結果、図9(B)に示すように、剛性値Epの減少に伴い座屈中の負剛性の大きさが増加する傾向にあることが分かった。また、今回使用したTi-Ni系形状記憶合金が示す超弾性特性とは異なる、Fe系形状記憶合金が示す擬弾性特性のような挙動(剛性値Epが50GPaの場合の材料特性モデルに近い挙動)においても負剛性特性を発現することが分かった。
発明者らは、前述のFEM解析1~3の結果から、形状記憶合金の座屈中の負剛性特性の発現の条件は、マルテンサイト誘起ひずみεMと、ヤング率Eとプラトー領域における剛性値Epとの差ΔE(=E-Ep)の変化であると考えた。
そこで、マルテンサイト誘起ひずみεMを0.5%に固定し、ヤング率E及びプラトー領域における剛性値Epはそれぞれ異なるが差ΔEは同一の30GPaとなる3種類の材料特性モデル(図10(A)参照)について、それぞれ座屈シミュレーションを行った。
その結果、図10(B)に示すように、差ΔEを固定すると、負剛性特性の発現応力は変動するものの、変位-力の関係の形状は同一であることがわかった。このことから、形状記憶合金形状記憶合金の座屈中の負剛性の大きさは、マルテンサイト誘起ひずみεMの減少及び差ΔE(=E-Ep)の増加により増大することが判明した。
また、擬弾性特性を有する形状記憶合金18も座屈変形中に負剛性特性を示し、第2の弾性体として適用できることが明らかとなった。
続いて、本発明の第2の実施の形態に係る除振装置50について説明する。第1の実施の形態に係る除振装置10と同一の構成要素については、同じ符号を付して詳しい説明を省略する。
本実施の形態に係る除振装置50は、図11に示すように、リニアガイド52、除振マウント54、コイルばね56a、56b及び形状記憶合金58を備えている。
除振マウント54は、除振対象物62を下側に固定するための部材である。除振マウント54は、リニアガイド52によって、上下方向に案内される。
コイルばね56a、56bの合成ばね定数は、形状記憶合金58の負剛性を相殺できる大きさに設定されている。
形状記憶合金58は座屈した状態でコイルばね56a、56bの間に配置されており、一端はフレーム60に、他端は除振マウント54に取り付けられている。形状記憶合金58は、除振マウント54の側の端部がフレーム60に対して振動方向に変位することによって除振対象物62に加わる振動を抑制できる。
形状記憶合金58の静的復元挙動については、前述の図3に示した通りである。
すなわち、除振装置50は、形状記憶合金58の負剛性をコイルばね56a、56bが相殺することによって、振動方向の剛性をゼロに近づけ、システムの固有振動数をより低減するように機能する。
従って、本実施の形態に係る除振装置50によれば、形状記憶合金58の負剛性特性を利用した簡易な構造で除振対象物62に加わる振動を抑制できる。
前述の実施の形態において、振動源による振動方向は上下方向であったが、この振動方向は限定されるものではなく、例えば水平方向であってもよい。
また、第2の弾性体は、板状の形状記憶合金に限定されるものではなく、座屈後の静的復元挙動が負剛性特性を示すものであれば、任意の弾性体でよい。
12 除振対象物
14 リニアガイド
16 コイルばね
18 形状記憶合金
20 フレーム
50 除振装置
52 リニアガイド
54 除振マウント
56a、56b コイルばね
58 形状記憶合金
60 フレーム
62 除振対象物
64 振動源
M 材料特性モデル
Claims (7)
- 除振対象物に加わる振動を抑制するための第1の弾性体と、
座屈後の静的復元挙動が負剛性特性を示し、前記除振対象物に加わる前記振動を抑制するための第2の弾性体(ただし、前記第2の弾性体の長手方向が前記振動の方向に対して直交するように配置されているものを除く。)と、を備え、
前記第2の弾性体が、単一の座屈モードで変形する除振装置。 - 請求項1記載の除振装置において、
前記第2の弾性体が、超弾性特性を有する形状記憶合金である除振装置。 - 請求項1記載の除振装置において、
前記第2の弾性体が、擬弾性特性を有する形状記憶合金である除振装置。 - 請求項1記載の除振装置において、
前記第2の弾性体が、チタンとニッケルの合金である除振装置。 - 請求項2~4のいずれか1記載の除振装置において、
前記第2の弾性体が、板状の形状記憶合金である除振装置。 - 請求項5記載の除振装置において、
前記第1の弾性体のばね定数が、前記形状記憶合金の負剛性特性を相殺できる大きさに設定されている除振装置。 - 請求項6記載の除振装置において、
前記振動の方向が上下方向であり、
前記除振対象物を上下方向に案内する案内部を備えた除振装置。
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