JP7352238B2 - 樹脂部材及びその製造方法 - Google Patents
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Description
[1]アクリル樹脂基材又はポリカーボネート樹脂基材にカーボンが被覆されており、カーボンに金属が被覆された、樹脂部材;
[2]アクリル樹脂基材又はポリカーボネート樹脂基材が表面処理されており、アクリル樹脂基材又はポリカーボネート樹脂基材に金属が被覆された、樹脂部材;
[3]アクリル樹脂基材又はポリカーボネート樹脂基材が表面処理されており、アクリル樹脂基材又はポリカーボネート樹脂基材にカーボンが被覆されており、カーボンに金属が被覆された、樹脂部材;
[4]表面処理が、水素の逆スパッタリングによる処理である、[2]又は[3]の樹脂部材;
[5]金属がステンレス又はアルミニウム合金である、[1]~[4]のいずれかの樹脂部材;
[6]アクリル樹脂基材又はポリカーボネート樹脂基材を、スパッタリングによりカーボンで被覆する工程と、カーボンで被覆された樹脂基材を、スパッタリングにより金属で被覆する工程とを有する樹脂部材の製造方法;
[7]アクリル樹脂基材又はポリカーボネート樹脂基材を、水素の逆スパッタリングにより表面処理する工程と、表面処理された樹脂基材を、スパッタリングにより金属で被覆する工程とを有する樹脂部材の製造方法;
[8]アクリル樹脂基材又はポリカーボネート樹脂基材を、水素の逆スパッタリングにより表面処理する工程と、表面処理された樹脂基材を、スパッタリングによりカーボンで被覆する工程と、カーボンで被覆された樹脂基材を、スパッタリングにより金属で被覆する工程とを有する樹脂部材の製造方法;
を提供することにより達成される。
本発明にかかる第一の実施の形態は、アクリル樹脂基材又はポリカーボネート樹脂基材にカーボンが被覆されており、カーボンに金属が被覆された樹脂部材に関するものである。このような樹脂部材は、例えば、アクリル樹脂基材又はポリカーボネート樹脂基材を、スパッタリングによりカーボンで被覆し、カーボンで被覆された樹脂基材を、スパッタリングにより金属で被覆することにより得られる。アクリル樹脂基材又はポリカーボネート樹脂基材へのカーボン層のスパッタリング成膜により、その後に形成される金属皮膜の密着性が大きく向上する。また、このような方法を用いることで、同一のスパッタリング装置で、樹脂基材をカーボンで被覆し、さらに金属で被覆することができる。また、従来からアクリル樹脂基材への下地処理として行われているSiO2の成膜は、RFスパッタリング装置のみで実施可能であるが、導電性を有するカーボンの成膜は、DCスパッタリング装置でも実施可能であるため、装置選択の自由度が高い。
本発明にかかる第二の実施の形態は、アクリル樹脂基材又はポリカーボネート樹脂基材が表面処理されており、アクリル樹脂基材又はポリカーボネート樹脂基材に金属が被覆された、樹脂部材に関するものである。このような樹脂部材は、例えば、アクリル樹脂基材又はポリカーボネート樹脂基材を、水素を利用した逆スパッタリングにより表面処理し、表面処理された樹脂基材を、スパッタリングにより金属で被覆することにより得られる。アクリル樹脂基材又はポリカーボネート樹脂基材への水素の逆スパッタリングによる表面処理により、その後に形成される金属皮膜の密着性が大きく向上する。また、このような方法を用いることで、同一のスパッタリング装置で、水素を利用した逆スパッタリングにより表面処理を行い、さらに、表面処理された樹脂基材を金属で被覆することができる。
本発明にかかる第三の実施の形態は、アクリル樹脂基材又はポリカーボネート樹脂基材が表面処理されており、アクリル樹脂基材又はポリカーボネート樹脂基材にカーボンが被覆されており、カーボンに金属が被覆された、樹脂部材に関するものである。このような樹脂部材は、例えば、アクリル樹脂基材又はポリカーボネート樹脂基材を、水素の逆スパッタリングにより表面処理し、表面処理された樹脂基材を、スパッタリングによりカーボンで被覆し、カーボンで被覆された樹脂基材を、スパッタリングにより金属で被覆することにより得られる。樹脂基材への水素の逆スパッタリングによる表面処理、及び、樹脂基材へのカーボン層のスパッタリング成膜により、その後に形成される金属皮膜の密着性が、第一の実施の形態及び第二の実施の形態と比べても向上する。また、このような方法を用いることで、同一のスパッタリング装置で、水素を利用した逆スパッタリングによる表面処理、及び、カーボン層のスパッタリング成膜を行い、カーボン層で被覆された樹脂基材を金属で被覆することができる。
成膜には、キャノンアネルバ株式会社製のRFマグネトロンスパッタリング装置(SPF-332H)を用いた。なお、本装置は真空チャンバー内で、ターゲットが上部に配置され、樹脂基材をその直下のターンテーブルに置く状態で成膜するデポダウンと呼ばれる形式で、ターゲットや樹脂基材の回転機構は有さない。また、ターゲットと樹脂基材は、最大で3枚を設置でき、いずれの組み合わせでの成膜も可能であり、任意の連続成膜も可能である。ターゲットとして、市販の純カーボン(C)ターゲット(直径76.2mm×厚さ5mm)及びSUS310Sの板材(板厚:2mm)を、同サイズになるように円盤状に切り取って使用した。樹脂基材は50mm×50mm×3mmのポリカーボネート(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製、ユーピロンML-300)である。樹脂基材を装置内のターンテーブルに設置し、真空排気を行った。このとき到達した最高真空度は2~3×10-3Paだった。次に、カーボンターゲットにより、カーボンを樹脂基材に成膜した。プラズマガス:アルゴン(Ar)、Ar圧力:5Pa、ターゲットへの投入電力:300W、成膜時間:6minである。次にカーボンターゲットからSUS310Sターゲットに切り替え、プラズマガス:アルゴン(Ar)、Ar圧力:3Pa、ターゲットへの投入電力:200W、成膜時間:7minで成膜を行った。SUS310Sを成膜した後の金属膜は光沢が十分あり、視覚的に光線を全く透過しないため、100nm以上の膜厚があると見られた。
実施例1において得られた樹脂部材の密着性を、JIS K5600-5-6に定められているクロスカット法試験に準じて評価した。密着性評価試験の概要は以下の通りである。まず、鋭利なカッターを用いて、得られた樹脂部材について、ポリカーボネート樹脂基材まで達する碁盤目状(1マス:1mm×1mm)の10マス×10マスの切り込みを入れた。次に、20mmt程度の幅で市販のテープ(例えばセロテープ(登録商標))を樹脂部材の表面に貼り、テープを引き剥がした。10マス×10マス内において、金属皮膜の剥離が生じているクロスカット部分の表面の状態を観察し、「剥離してはならない」とした評価基準に従い、樹脂基材と金属皮膜との密着性を評価した。評価結果は、合格であった。密着性評価試験後の樹脂部材の様子を図1に示す。
実施例1において得られた樹脂部材について、耐食性をCASS試験により評価した。まず、実施例1の樹脂部材について、温度50±1℃の条件下で、32時間、噴霧量1.0~2.0ml/80cm2・hで、塩化ナトリウム、塩化第二銅、酢酸の水溶液(塩化ナトリウム4.0~6.0g/L、塩化第二銅0.26g/L、酢酸0.1~0.3g/L pH:3.0~3.1)を噴霧した。噴霧が終了した後に、樹脂部材の表面に付着した水分を拭き取り、樹脂部材の表面を目視により観察した。結果は、クラックや膨れ等の外観異常が無く合格であった。
実施例1において得られた樹脂部材について、ヒートサイクル試験により評価した。まず、実施例1の樹脂部材について、温度80±2℃で4時間保持し、室温にして0.5時間保持し、温度-40±2℃で1.5時間保持し、室温にして0.5時間保持し、温度50±2℃、相対湿度98%で3時間保持し、室温にして0.5時間保持し、温度-40±2℃で1.5時間保持し、室温にして12.5時間保持した。このような24時間を1サイクルとして、2サイクルで試験を行い、試験終了後、常温における金属皮膜の表面について、目視により観察した。結果は膨れ、剥がれ、割れ等の外観異常が無く合格であった。
カーボンの成膜を行わずに、代わりに樹脂基材の水素による逆スパッタリングを行ったこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂部材を製造した。水素による逆スパッタリングの処理条件は、水素圧力:5Pa、ターンテーブルへの投入電力:100W、処理時間:9minとした。SUS310Sの成膜の条件は実施例1と同一である。
カーボンの成膜を行う前に、水素による逆スパッタリングを行ったこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂部材を製造した。水素による逆スパッタリングの処理条件は、水素圧力:5Pa、ターンテーブルへの投入電力:100W、処理時間:9minとした。得られた樹脂部材について、実施例1と同一の試験を実施した。自動車外装部品を想定した密着性試験の結果は、剥離せず合格であった。密着性評価試験後の樹脂部材の様子を図3に示す。耐食性の評価のためのCASS試験(32H)の結果は、外観上クラックや膨れ等が無く合格であったであった。-40~80℃の温度変化にさらすヒートサイクル試験の結果は、膨れ、剥がれ、割れ等の異常が無く合格であった。
樹脂基材をポリカーボネート樹脂基材の代わりに、50mm×50mm×3mmのアクリル樹脂(三菱ケミカル株式会社製、アクリペットVH001)とした以外は、実施例1と同様にして樹脂部材を製造した。得られた樹脂部材について、簡易的な密着性評価として25mm幅で10±1Nの付着強さを有するテープを貼ったうえで、引きはがし、剥離の有無を評価した。その結果、ほとんど剥離しなかった。
樹脂基材をポリカーボネート樹脂基材の代わりに、50mm×50mm×3mmのアクリル樹脂(三菱ケミカル株式会社製、アクリペットVH001)とした以外は、実施例2と同様にして樹脂部材を製造した。得られた樹脂部材について、簡易的な密着性評価として25mm幅で10±1Nの付着強さを有するテープを貼ったうえで、引きはがし、剥離の有無を評価した。その結果、ほとんど剥離しなかった。
樹脂基材をポリカーボネート樹脂基材の代わりに、50mm×50mm×3mmのアクリル樹脂(三菱ケミカル株式会社製、アクリペットVH001)とした以外は、実施例3と同様にして樹脂部材を製造した。得られた樹脂部材について、簡易的な密着性評価として25mm幅で10±1Nの付着強さを有するテープを貼ったうえで、引きはがし、剥離の有無を評価した。その結果、ほとんど剥離しなかった。
SUS310Sの代わりにアルミニウム合金(Al:La:Cr=93%:5%:2%)をターゲットとして用い、プラズマガス:アルゴン(Ar)、Ar圧力:2Pa、ターゲットへの投入電力:200W、成膜時間:7minの条件で成膜を行ったこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂部材を製造した。得られた樹脂部材について、簡易的な密着性評価として25mm幅で10±1Nの付着強さを有するテープを貼ったうえで、引きはがし、剥離の有無を評価した。その結果、全く剥離しなかった。
樹脂基材をポリカーボネート樹脂基材の代わりに、50mm×50mm×3mmのアクリル樹脂(三菱ケミカル株式会社製、アクリペットVH001)とした以外は、実施例7と同様にして樹脂部材を製造した。得られた樹脂部材について、簡易的な密着性評価として25mm幅で10±1Nの付着強さを有するテープを貼ったうえで、引きはがし、剥離の有無を評価した。その結果、全く剥離しなかった。
カーボンの成膜を行わずに、ポリカーボネート樹脂基材にSUS310Sを直接的にスパッタリングにより成膜したこと以外は、実施例1と同様にして樹脂部材を製造した。しかし、得られた樹脂部材について、金属皮膜の密着性は得られなかった。
カーボンの成膜を行わずに、アクリル樹脂基材にSUS310Sを直接的にスパッタリングにより成膜したこと以外は、実施例4と同様にして樹脂部材を製造した。しかし、得られた樹脂部材について、金属皮膜の密着性は得られなかった。
カーボンの成膜を行わずに、ポリカーボネート樹脂基材にアルミニウム合金を直接的にスパッタリングにより成膜したこと以外は、実施例7と同様にして樹脂部材を製造した。しかし、得られた樹脂部材について、金属皮膜の密着性は得られなかった。
カーボンの成膜を行わずに、アクリル樹脂基材にアルミニウム合金を直接的にスパッタリングにより成膜したこと以外は、実施例8と同様にして樹脂部材を製造した。しかし、得られた樹脂部材について、金属皮膜の密着性は得られなかった。
Claims (3)
- アクリル樹脂基材又はポリカーボネート樹脂基材が、水素の逆スパッタリングにより表面処理されており、表面処理されたアクリル樹脂基材又はポリカーボネート樹脂基材にカーボンが被覆されており、カーボンに金属が被覆された、樹脂部材。
- 金属がステンレス又はアルミニウム合金である、請求項1に記載の樹脂部材。
- アクリル樹脂基材又はポリカーボネート樹脂基材を、水素の逆スパッタリングにより表面処理する工程と、
表面処理された樹脂基材を、スパッタリングによりカーボンで被覆する工程と、
カーボンで被覆された樹脂基材を、スパッタリングにより金属で被覆する工程と
を有する樹脂部材の製造方法。
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