JP7349740B2 - 含ヘテロ環状化合物を用いた、ホウ素シート結晶、薄膜及び溶液の製造方法 - Google Patents

含ヘテロ環状化合物を用いた、ホウ素シート結晶、薄膜及び溶液の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、含ヘテロ環状化合物を用いた、ホウ素シート結晶、薄膜及び溶液の製造方法に関する。
原子層が積み重なった層状構造を持つ物質の多くは、層間に別の原子や分子を挿入すること(インターカレーション)ができる。粘土鉱物や層状ペロブスカイト酸化物などは層間にイオンが存在しており、層面の電荷密度差を機動力としてインターカレーションが進行する。グラファイトや遷移金属カルコゲナイドなどの層が中性の場合は、層間の弱いファンデルワールス力により層面と結合することのできる原子・分子が層間に容易に侵入する。
インターカレーションは層状物質の異方的な結合性のため原子層の格子はほとんど変化せず、ゲスト分子によるキャリアドーピングや層間距離の増大によって電子状態を変化させることができる。例えばグラファイトについて、層間にアルカリ金属をインターカレーションすることでグラファイトのπバンドへ電子が供与されるため電子伝導を増大させることが知られている。こうした電子特性からインターカレーション化合物はリチウムイオン電池材料や超伝導体として応用研究が行われてきた。
また、インターカレーション反応はクーロン力により積層している層状物質からナノシートを剥離する方法として使用されている。例としてバーネサイト型マンガン酸化物は層内にテトラブチルアンモニウム塩(TBA+)などのかさ高い四級アンモニウム塩をインターカレーションさせると層間が0.73nmから2.19nmへ増大する。これを水で洗浄することでTBA+イオンが層内から除かれ、単層のナノシートが得られる。
クラウンエーテルは、構造式(-CH2-CH2-O-)nで表される大環状のエーテルである。クラウンエーテルは環内の酸素原子とアルカリ金属イオンとの錯形成により、環の内部にアルカリ金属イオンを包接する性質を持つ。この性質のため、有機溶媒に難溶のイオン性化合物にクラウンエーテルを用いると、有機溶媒に溶解するようになる。またこの時、クラウンエーテルに包接されていない対アニオンはほとんど溶媒和されないため高活性になることが知られている。また、2つ以上の環からなる3次元的なケージ構造を持つクリプタンドはより高い選択性と包接力を持つ。
クラウンエーテルはそのイオン選択性から層状物質へのインターカレーションゲストとして用いられている。例えばリチウムイオン電池材料として一般的に使用されるグラファイトはLiよりもイオン半径の大きなNaなどでは熱力学的及び速度論的特性からインターカレーションが妨げられる。そこでイオンと選択的に錯形成するクラウンエーテルのインターカレーションに関する研究が行われている。
本発明者らは、ボロフェンに類似した骨格及びそれが積層した構造体を簡便な液相で合成することに成功した(特許文献1)。この構造体はホウ素と酸素による原子層とカリウムイオンが交互に積層した構造を持ち、ホウ素がボロフェンと類似した骨格を持つ。ホウ素シートの金属イオンとしては、カリウム(K)の他、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)をカチオンとするホウ素層状単結晶を、原料塩を変えることで合成している(特許文献2)。これまでにない新規なホウ素原子層シートおよび積層シートが得られ、更に結晶のみならず液晶性をも示すという知見、そして、これらは結晶面内と結晶面間の活性化エネルギーの違いや導電性の違いにより、特異的な異方性伝導を示す等、その特徴的な電気的挙動を明らかにした(特許文献2)。このホウ素原子層シート及び積層シートにおいて、ホウ素の原子層物質の大気圧中での液相合成、また大気中で安定であることは、それまでの従来技術と対比して特徴的な知見であり、このホウ素層状単結晶は物理的および化学的溶解法により単層化することができる。物理的な力を結晶に加えることで、基板上に単層に相当する厚さのシート物質を得ることができる。また、この層状単結晶は非プロトン性の一般的な有機溶媒には溶解しないが、層間の金属イオンを捕捉するクリプタンドやクラウンエーテルの添加によって溶解する。金属イオンが溶け出した状態では、ホウ素シートも単層として溶液中に分散していると推測される。具体的には、クラウンエーテル及びクリプタンドによるホウ素層状結晶の溶解、単層化を試み、CHCl3:MeCN=1:1の溶媒中に結晶を分散し、18-クラウン-6又はクリプタンドを過剰としてホウ素層状単結晶を溶解し、この溶液をHOPG基板にキャストし、クロロホルムで洗浄し、過剰の18-クラウン-6又はクリプタンドを除去して単層シートの観察を試みたところ、単層シートと思われるナノシートが観察された。しかし、これらをインターカレートした結晶の合成、単離は確認されていない。
また、ボロフェン類縁体(K-Borophene oxide Crystal K-BoC)へのクラウンエーテルインターカレーションにより、イオンの制御や溶解性の向上が見込まれる。
国際公開第2019/155979号 国際公開第2020/184662号
本発明者らが見出したホウ素シートにおいては、結晶の溶解性、単層シートへの薄膜化、層間からの物性や機能の制御、各種金属イオンを内包する品質の良いホウ素シート結晶を得ることが、各種分野への応用の観点より望まれていた。
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、ホウ素シートにおいて、結晶の溶解性と薄膜化に適した技術、層間からの物性や機能の制御に有用な技術、各種金属イオンを内包する品質の良いホウ素シート結晶が得られる技術を提供することを課題としている。
上記の課題を解決するために、以下の発明を提供する。
[1] 骨格元素にホウ素と酸素を有し、ホウ素-ホウ素結合を有する非平衡結合によりネットワーク化された、酸素とホウ素のモル比率(酸素/ホウ素)が1.5未満である複数の原子層シートが積層され、金属イオンを前記原子層シート間に含む結晶であって、前記金属イオンの包接能を持つ含ヘテロ環状化合物が前記原子層シート間にインターカレートされたホウ素シート結晶。
[2] 前記[1]に記載のホウ素シート結晶を製造する方法であって、以下の工程を含むホウ素シート結晶の製造方法:
骨格元素にホウ素と酸素を有し、ホウ素-ホウ素結合を有する非平衡結合によりネットワーク化された、酸素とホウ素のモル比率(酸素/ホウ素)が1.5未満である原子層シートと、前記金属イオンと、前記金属イオンの包接能を持つ含ヘテロ環状化合物とを有機溶媒を含む溶媒中に溶解した溶液を調製する工程;及び
前記溶液と、前記溶媒に対する貧溶媒とを混合して前記ホウ素シート結晶を沈殿させる工程。
[3] 以下の工程を含むホウ素シート薄膜の製造方法:
前記[1]に記載のホウ素シート結晶を、極性パラメーターP'が4.2以上で且つ溶解度パラメーターδが8.9以上の溶媒へ溶解し、溶液を調製する工程;及び
前記溶液を基材に塗布する工程。
[4] 骨格元素にホウ素と酸素を有し、ホウ素-ホウ素結合を有する非平衡結合によりネットワーク化された、酸素とホウ素のモル比率(酸素/ホウ素)が1.5未満である原子層シートの溶液の製造方法であって、以下の工程を含むホウ素シート溶液の製造方法:
不活性ガス雰囲気下で、MBH4(Mは金属イオンを示す。)と、金属イオンの包接能を持つ含ヘテロ環状化合物とを有機溶媒を含む溶媒中に含有する溶液を調製する工程;及び
前記溶液を、酸素を含む雰囲気に曝す工程。
[5] 前記[4]に記載のホウ素シート溶液を基材に塗布する工程を含むホウ素シート薄膜の製造方法。
[6] 以下の工程を含むホウ素シート結晶の製造方法:
骨格元素にホウ素と酸素を有し、ホウ素-ホウ素結合を有する非平衡結合によりネットワーク化された、酸素とホウ素のモル比率(酸素/ホウ素)が1.5未満である複数の原子層シートが積層され、金属イオン(a)を前記原子層シート間に含む結晶と、前記金属イオン(a)の包接能を持つ含ヘテロ環状化合物とを有機溶媒を含む溶媒中に含有する溶液を調製し、前記含ヘテロ環状化合物を前記原子層シート間にインターカレートする工程;及び
前記金属イオン(a)とは別異の金属イオン(b)を前記溶液中に含有させ、前記金属イオン(b)を前記原子層シート間にインターカレートする工程。
本発明によれば、含ヘテロ環状化合物を用いて、ホウ素シートの層間へインターカレートし、またボトムアップ、すなわち原料に対して予め含ヘテロ環状化合物を導入した後にホウ素シートを合成することで予め剥離したホウ素シートを合成し、あるいはトップダウン、すなわち合成したホウ素シートに対して金属イオン交換することで、結晶の溶解性と薄膜化に適した技術、層間からの物性や機能の制御に有用な技術、各種金属イオンを内包する品質の良いホウ素シート結晶が得られる技術が提供される。
X線構造解析によるホウ素層状結晶の構造を示した図であり、(a)は層状断面、(b)と(c)は平面の結晶構造を示す。 X線構造解析によるホウ素層状結晶の構造を示した図であり、(a)はホウ素原子層の単位格子の推定構造、(b)は末端・欠損部位の単位格子の推定構造、(c)はB-B結合とB-O結合の距離を示している。 [2.2.2]クリプタンドを添加したホウ素結晶の(a)顕微鏡写真及び(b)結晶長の時間変化グラフである。 K-BoC及び[2.2.2]クリプタンドをインタ-カレ-ションに用いたK-BoIC(インターカレーションしたK-BoC)のSEM画像である。 [2.2.2]クリプタンドを添加したホウ素結晶のXRDパターンである。K-BoCと比較して示している。 K-BoC中の[2.2.2]クリプタンドの概略図であり、(a)は上面図、(b)は側面図である。 [2.2.2]クリプタンドをインタ-カレ-ションに用いたK-BoICのFT-IRスペクトルである。 30~500℃に加熱したときの[2.2.2]クリプタンドをインタ-カレ-ションに用いたK-BoICのTG-DTAである。 (a)DMF中のK-BoC及び(b)CH3CN中の[2.2.2]クリプタンドをインタ-カレ-ションに用いたK-BoICの紫外-可視吸収スペクトルである。 18-クラウン6-エーテルをインタ-カレ-ションに用いたK-BoICを使用してCH3CNに溶解することにより剥離したホウ素ナノシートのAFMイメージ画像である。 KBH4及び18-クラウン6-エーテルをCH3CNに加えた溶液の紫外-可視吸収スペクトルである。 18-クラウン6-エーテルを添加することによりボトムアップで構築されたホウ素ナノシートのAFMトポグラフィー画像である。 ボトムアップで構築されたホウ素シートの厚さを示す。 イオン交換後のBoIC(インターカレーションしたBoC)のXRDパターンである。 イオン交換後のBoICのSEM画像である。上:Agイオン、下:Naイオン (a)Agイオン又は(b)Naイオンのイオン交換工程後のBoICのEDXスペクトル、(c)はK-BoCのEDXスペクトルである。 金属塩がホウ素シート結晶の層間にインターカレートする様子を概念的に説明する図である。
以下に、本発明を詳細に説明する。
(ホウ素原子層シート及び積層シート)
本発明において、「原子層シート」は、ホウ素及び酸素を主構成原子とする単原子層のシートであり、独立した単層シートの他、積層シート中の部分的な構成要素として存在する単層シート、アニオン性である独立した単層シートに電荷のバランスを保つ金属イオンが結合した金属イオン含有単層シート等も含む。「積層シート」は、この原子層シートと、当該原子層シート間の金属イオンとを含む層状物質であり、ホウ素シート結晶はこの積層シートを含む。ホウ素シート薄層は、単層シート、数層もしくはそれ以上の積層シート、及びこれらの混合物を包含する。
ボロフェンはホウ素単体からなるシート状物質であるが、ホウ素が作る三角形の格子と、sp2ホウ素からなる六角形の空孔の比率によってその構造と安定性が議論される。三角形格子が存在するのは、一般的にホウ素の単体及びクラスターが、多中心結合による三角格子を単位ユニットとして安定な構造を形成するためであるとされている。本発明において「ホウ素-ホウ素結合を有する非平衡結合によりネットワーク化された」とは、ボロフェン等のホウ素含有原子層シートにおける従来の結合様式の議論に沿う形で、二次元の結合態様を表現したものである。
(原子層シート)
本発明における原子層シートは、骨格元素にホウ素と酸素を有し、ホウ素-ホウ素結合を有する非平衡結合によりネットワーク化され、酸素とホウ素のモル比率(酸素/ホウ素)が1.5未満である。ある態様では、更に金属イオンを含む。金属イオンとホウ素のモル比率(金属イオン/ホウ素)は、特に限定されないが、金属イオンの価数が1である場合、例えば1未満である。これらの特定は、原子層シートがMBH4(Mは金属イオンを示す。)の酸化生成物である場合に基づいて、また従来のホウ酸はホウ素-酸素結合のみで、高分子化(重合)した場合は三次元的になり原子層シートにならないことを考慮している。酸素とホウ素のモル比率(酸素/ホウ素)は、1.2以下、1.0以下、0.8以下であってよい。また0.1以上、0.3以上であってよい。金属イオンとホウ素のモル比率(金属イオン/ホウ素)は、金属イオンの価数が1である場合、0.8以下、0.6以下、0.4以下であってよい。また0.01以上、0.05以上、0.1以上であってよい。
以上のような原子層シートのうち、その一つの例として、骨格組成がB53である原子層シートについて説明する。
<組成がB53である原子層シート>
上記において、原子層シートの「骨格」とは、組成がB53である図1(b)と(c)、図2(a)と(c)に示すような規則的な構造を持つ部位であり、主に末端部位や欠損部位以外のシート部分を占める。
この原子層シートは骨格組成がB53である。図1(b)と(c)、図2(a)と(c)に示すように、ホウ素と酸素から成る原子層であり、酸素と結合したホウ素同士が歪んだ六角形を作るように結合しながら、二次元状に広がった平面を形成している。
ホウ素原子は、結晶の単位構造において六角形の頂点を占めるものと、六角形の各辺を占めるものとに分類される。六角形の各辺を占めるものは、交互に辺の内側、外側に位置している。従って骨格は、ホウ素-ホウ素結合の3回対称性を有する。
酸素原子は、ホウ素原子による六角形の各辺で、3つのホウ素原子の隣接する2つのホウ素原子による2箇所のうち、1箇所を占有している(図1(b)と(c)、図2(a)と(c)において、便宜のために2箇所共に酸素原子を示しているが、図1(c)に示すようにその占有率は0.5である。)。
ホウ素-ホウ素の結合距離は、1.6Åから1.9Åの間にあり、X線構造解析による値は1.784Åである。この結合距離はボロフェンに存在する2種類のホウ素-ホウ素結合の距離の平均値に近い値であり、単結合として報告されている値と酸素架橋として報告されている値の中間の値である。
ホウ素-酸素の結合距離は、X線構造解析による値は六角形の辺に位置するホウ素で1.339Å、六角形の頂点に位置するホウ素で1.420Åである。
この原子層シートは、骨格部位である構成要素Xと、それ以外の構成要素Yとを含む。典型的な態様において、構成要素Yは、末端部位及び/又は欠損部位である。
典型的な態様において、構成要素Yは、B-OHを含むホウ素酸化物部位である。構成要素Yは、その構造が3価のB23やB(OH)3に類似する部位であり(図1(b))、骨格部位とはB-Oの結合状態が異なる。この原子層シートを含むホウ素層状結晶の測定による同定によれば、次のとおりである。
IR測定(赤外吸収スペクトル)において、B-O伸縮に由来する2種類のピークを1300~1500cm-1付近に有し、かつBO-H伸縮に由来するピークを3100cm-1付近に有する。B-O伸縮に由来する2種類のピークのうち低波数側のピークが構成要素Xに対応している。具体的には、B-O領域のピークのうち、低波数側(1350cm―1付近)のピークが構成要素Xのホウ素シートに対応し、B(OH)3で見られるB-O伸縮ピークと位置が類似する高波数側(1420cm―1付近)のピークが構成要素Yに対応する。3100cm―1付近におけるBO-H伸縮由来のピークも構成要素Yに対応する。
X線光電子分光測定において、190.5~193.0eVと、192.5~194.0eVに各々B-1s準位に由来するピークを有する。190.5~193.0eVのピークが構成要素Xに対応している。具体的には、構成要素Xに対応するピークはホウ素が3価の状態であるB23(193.3eV)と比較すると、やや低エネルギー側であることから、3価までの完全な酸化は進行していない。構成要素Xに対応するピークは2成分に分離可能であり、それぞれ構成要素Xのホウ素シート中の2種類のホウ素、すなわち結晶の単位構造において六角形の頂点を占めるものと、六角形の各辺を占めるものに対応している。最も酸化側の192.5~194.0eVのピークは、3価のホウ素を持つB23と一致し、構成要素Yに対応している。
紫外-可視吸収スペクトルにおいて、250nm以下の紫外領域に吸収を持ち、近赤外吸収スペクトルにおいて、1000~2500nmの近赤外領域にB-OやBO-Hの振動構造に由来するバンドを含む吸収を持つ。
以上のように、この原子層シートは、骨格部位である構成要素Xは組成がB53であり、B-OHを含むホウ素酸化物部位である構成要素Yはその構造が3価のB23やB(OH)3に類似する。この原子層シートにおいて、これらの構成要素X、Yを含むシート全体における酸素とホウ素のモル比率(酸素/ホウ素)は、1.5未満であり、1.2以下、1.0以下であってよい。また0.6以上であり、0.7以上であってよい。
(積層シート)
本発明における積層シートは、以上に説明したような複数の原子層シートと、当該原子層シート間の金属イオンとを含む。原子層シートは、以上に説明したとおりのものであり、骨格元素にホウ素と酸素を有し、ホウ素-ホウ素結合を有する非平衡結合によりネットワーク化され、酸素とホウ素のモル比率(酸素/ホウ素)が1.5未満である。また本発明の結晶は、この積層シートを含む。
この積層シートにおいて、原子層シート間の金属イオンとしては、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、3族から11族までの遷移金属元素のカチオン、12族から16族までの金属元素のカチオン等が挙げられる。アルカリ金属イオンとしては、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン等が挙げられる。アルカリ土類金属イオンとしては、例えば、ベリリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、バリウムイオン等が挙げられる。これらの中でも、アルカリ金属イオン、特にカリウムイオンは好ましい態様である。金属イオンとホウ素のモル比率(金属イオン/ホウ素)は、金属イオンの価数が1である場合、好ましくは1未満である。
骨格組成がB53である原子層シートの場合、図2(a)は積層シートの一例として参照される。この積層シートは、ホウ素と酸素を主原子とする原子層シートと、金属イオンが交互に積層する層状構造をなす。典型的な態様において、金属イオンは、積層面内において、原子層シートの単位構造におけるホウ素原子の六角形の内部に位置する。その結晶は、後述の製造方法では、ロッド状の単結晶として得られる。この針状の単結晶を含む典型的な態様では、結晶の伸長方向と積層方向であるc軸方向が一致し、伸長方向に沿って原子層シートが積層している。この積層シート(及び結晶)は、積層シートの層間結合が脆弱で、機械的に圧力をかけることで、c軸方向(伸長方向)と垂直な方向に対し容易にへき開できる。例えば、結晶に対してHOPG基板を上から押し付けることで結晶をへき開し、表面に付着した結晶片のナノシートが積み重なる様子を観測することができる。
(原子層シート、積層シートの製造方法)
本発明における原子層シートや積層シートのような、ホウ素と酸素を含む原子層シート及び/又は積層シートは、例えば、有機溶媒を含む溶媒中に、不活性ガス雰囲気下でMBH4(Mは金属イオンを示す。)を添加し溶液を調製し、この溶液を、酸素を含む雰囲気に曝すことによって製造することができる。酸素を含む雰囲気に曝す工程では、原子層シートや積層シートの結晶を成長させることができる。
MBH4の金属イオンMとしては、特に限定されないが、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、3族から11族までの遷移金属元素のカチオン、12族から16族までの金属元素のカチオン等が挙げられる。アルカリ金属イオンとしては、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン等が挙げられる。アルカリ土類金属イオンとしては、例えば、ベリリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、バリウムイオン等が挙げられる。これらの中でも、カリウムイオンは好ましい態様である。
MBH4の濃度は、特に限定されないが、好ましくは0.5~10mM、より好ましくは1~2mMである。
不活性ガスとしては、MBH4との反応性を有しないものであれば特に限定されないが、例えば、アルゴン等の希ガス、窒素等が挙げられる。例えば、グローブボックスのような大気中の酸素を遮断し得る環境下で、MBH4との反応性を有しない不活性ガスに置換して、有機溶媒を含む溶媒中にMBH4を添加し溶液を調製する。
有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、非プロトン性中極性溶媒(アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム(トリクロロメタン)、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、アセトン、2-ブタノン、メチルエチルケトン、イソブチルメチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、デカン酸メチル、ラウリル酸メチル、アジピン酸ジイソブチル等のエステル類、ピリジン等の含窒素化合物等)を含むことが好ましい。また、これらの非プロトン性中極性溶媒と共に、それらと相溶する、非プロトン性高極性溶媒(N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ジヘキサメチルリン酸トリアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N,N'-ジメチルプロピレン尿素、1-メチル-2-ピロリジノン等)、非プロトン性低極性溶媒(ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素類等)、プロトン性溶媒(メタノール、エタノール、2-プロパノール、1-ブタノール、1,1-ジメチル-1-エタノール、ヘキサノール、デカノール等のアルコール類、ギ酸、酢酸等のカルボン酸類、ニトロメタン等)から選ばれる少なくとも1種を混合した溶媒であってもよい。また、有機溶媒を含む溶媒としては、水を含むものであってもよい。
酸素を含む雰囲気としては、特に限定されないが、大気下に解放することは好ましい態様である。
酸素を含む雰囲気に曝した後、一旦加熱してもよい。加熱温度としては、特に限定されないが、30~40℃が好ましい。加熱時間は、30分~2時間が好ましい。
酸素を含む雰囲気に曝した後、当該雰囲気において静置することが好ましい。酸素を含む雰囲気に曝す温度と時間は、特に限定されないが、結晶を十分に成長させる点等から、上記加熱した場合はその後、温度は室温(15~25℃)が好ましく、時間は3日間~1ケ月が好ましい。
以下に、本発明の具体的態様を説明する。
(含ヘテロ環状化合物が原子層シート間にインターカレートされたホウ素シート結晶とその製造方法、並びにホウ素シート薄膜の製造方法)
本発明のホウ素シート結晶は、骨格元素にホウ素と酸素を有し、ホウ素-ホウ素結合を有する非平衡結合によりネットワーク化された、酸素とホウ素のモル比率(酸素/ホウ素)が1.5未満である複数の原子層シートが積層され、金属イオンを前記原子層シート間に含む結晶であって、前記金属イオンの包接能を持つ含ヘテロ環状化合物が前記原子層シート間にインターカレートされたものである。
含ヘテロ環状化合物としては、特に限定されないが、例えば、環状エーテル、環状チオエーテル、環状イミン、環状ホスフィン等が挙げられる。環状エーテルとしては、例えば、クラウンエーテル類、クリプタンド類、スフェランド類等が挙げられる。クラウンエーテルは、(-CH2-CH2-O-)nで表される大環状のエーテルであり、例えば、12-クラウン-4、15-クラウン-5、18-クラウン-6、ジベンゾ-18-クラウン-6、ジアザ-18-クラウン-6等が挙げられる。クリプタンドは、2つ以上の環からなるかご状の多座配位子であり、例えば、[2.2.2]クリプタンド等が挙げられる。
本発明のホウ素シート結晶は、前記原子層シートにおける構造単位の物質量を基準とする前記含ヘテロ環状化合物の物質量の含有割合は、特に限定されず、定量的に100%導入できる。成長過程の観察から適切なところで止めることで自在の導入が可能である。例えば、0%超から100%までであってよく、溶解性の点等を考慮し、10%以上、20%以上、30%以上、更に40%以上であってよく、ほぼ100%であってもよい。
金属イオン包接能を持つかさ高い含ヘテロ環状化合物がインターカレートすると、ホウ素シートの層間が膨張する。層間が広がり、活性化されて、非プロトン性中極性溶媒でも剥離し易くなり結晶の溶解性が向上する。
このホウ素シート結晶を製造する方法は、好ましくは、以下の工程を含む:
骨格元素にホウ素と酸素を有し、ホウ素-ホウ素結合を有する非平衡結合によりネットワーク化された、酸素とホウ素のモル比率(酸素/ホウ素)が1.5未満である原子層シートと、前記金属イオンと、前記金属イオンの包接能を持つ含ヘテロ環状化合物とを有機溶媒を含む溶媒中に溶解した溶液を調製する工程;及び
前記溶液と、前記溶媒に対する貧溶媒とを混合して前記ホウ素シート結晶を沈殿させる工程。
ここで原子層シートは、溶液中では剥離して溶解している。
前記溶液は、極性溶媒中でインターカレーションによりホウ素シートを剥離させ結晶を溶解させてもよく、後述のようにホウ素シートを製造する際に原料溶液に予め含ヘテロ環状化合物を加えてボトムアップで調製してもよい。
有機溶媒としては、特に限定されないが、極性が高い傾向の溶媒、中でも非プロトン性中極性溶媒を含むことが好ましい。また、これらの非プロトン性中極性溶媒と共に、それらと相溶する、非プロトン性高極性溶媒、非プロトン性低極性溶媒、プロトン性溶媒から選ばれる少なくとも1種を混合した溶媒であってもよい。これらの各溶媒の具体的な例は前記したとおりである。また、有機溶媒を含む溶媒としては、水を含むものであってもよい。
貧溶媒はとしては、特に限定されないが、極性が低い傾向の溶媒、中でも非プロトン性低極性溶媒を含むことが好ましい。また、これらの非プロトン性低極性溶媒と共に、それらと相溶する、非プロトン性高極性溶媒、非プロトン性中極性溶媒、プロトン性溶媒から選ばれる少なくとも1種を混合した溶媒であってもよい。これらの各溶媒の具体的な例は前記したとおりである。また、有機溶媒を含む溶媒としては、水を含むものであってもよい。
前記溶液を調製する工程において、含ヘテロ環状化合物の含有量は、特に限定されないが、インターカレートにおいて過剰量用いることが好ましい。
あるいは、このホウ素シート結晶を製造する方法は、以下の工程を含む:
骨格元素にホウ素と酸素を有し、ホウ素-ホウ素結合を有する非平衡結合によりネットワーク化された、酸素とホウ素のモル比率(酸素/ホウ素)が1.5未満である複数の原子層シートが積層され、金属イオンを前記原子層シート間に含む結晶を、有機溶媒を含む溶媒中に含有する溶液を調製する工程;及び
前記金属イオンの包接能を持つ含ヘテロ環状化合物を前記溶液中に含有させ、前記含ヘテロ環状化合物を前記結晶における前記原子層シート間にインターカレートする工程。
金属イオン包接能を持つかさ高い含ヘテロ環状化合物がインターカレートすると、層間が膨張し、積層方向の長さが増大する。
有機溶媒としては、ホウ素シート結晶が剥離して溶解せず、含ヘテロ環状化合物が溶解する溶媒であれば特に限定されないが、極性が低い傾向の溶媒、中でも非プロトン性低極性溶媒を含むことが好ましい。また、これらの非プロトン性低極性溶媒と共に、それらと相溶する、非プロトン性高極性溶媒、非プロトン性中極性溶媒、プロトン性溶媒から選ばれる少なくとも1種を混合した溶媒であってもよい。これらの各溶媒の具体的な例は前記したとおりである。また、有機溶媒を含む溶媒としては、水を含むものであってもよい。
前記溶液を調製する工程において、含ヘテロ環状化合物の含有量は、特に限定されないが、インターカレートにおいて過剰量用いることが好ましい。
含ヘテロ環状化合物をインターカレートした本発明のホウ素シート結晶を用いた、本発明のホウ素シート薄膜の製造方法は以下の工程を含む:
前記ホウ素シート結晶を、極性パラメーターP'が4.2以上で且つ溶解度パラメーターδが8.9以上の溶媒へ溶解し、溶液を調製する工程;及び
前記溶液を基材に塗布する工程。
極性パラメーターP'が4.2以上で且つ溶解度パラメーターδが8.9以上の溶媒としては、特に限定されないが、極性が高い傾向の溶媒、中でも非プロトン性中極性溶媒を含むことが好ましい。また、これらの非プロトン性中極性溶媒と共に、それらと相溶する、非プロトン性高極性溶媒、非プロトン性低極性溶媒、プロトン性溶媒から選ばれる少なくとも1種を混合した溶媒であってもよい。これらの各溶媒の具体的な例は前記したとおりである。また、有機溶媒を含む溶媒としては、水を含むものであってもよい。これらの中でも、極性パラメーターP'が4.4以上で且つ溶解度パラメーターδが9.3以上の溶媒が好ましい。
本発明における積層シートは、ファンデルワールス力で積層するグラファイトなどと異なり、アニオン性のホウ素シートとカチオン性の金属イオンのイオン性相互作用により積層しているため、含ヘテロ環状化合物で層間の金属イオン捕捉することで、金属イオンを有機溶媒中に溶出させ、シート構造を保持したまま積層シートを剥離することができる。層状物質の剥離は層電荷と対イオンの静電的な相互作用が弱まることにより進行する。ホウ素シート結晶は、高極性溶媒のDMF等によりカチオンを溶出させることでホウ素シートを単離できることが報告されているが(特許文献1)、熱に不安定である。含ヘテロ環状化合物をインターカレートした本発明のホウ素シート結晶は溶解性が向上し、薄膜化が可能な溶媒の制約を低減できる。
前記溶液をHOPG基板などの基材に塗布し、溶媒を除去することによって、基材表面に付着した結晶片をホウ素シート薄膜として得ることができる。ホウ素シート薄膜は、ナノシート、特に単層シートから数層あるいは数十層程度の薄いシート又はこれらの混合物として得ることができる。
以上の本発明によれば、ホウ素シートにおいて、結晶の溶解性と薄膜化に適した技術、層間からの物性や機能の制御に有用な技術が提供される。
(含ヘテロ環状化合物によるホウ素シートの合成)
本発明のホウ素シート溶液の製造方法は、骨格元素にホウ素と酸素を有し、ホウ素-ホウ素結合を有する非平衡結合によりネットワーク化された、酸素とホウ素のモル比率(酸素/ホウ素)が1.5未満である原子層シートの溶液の製造方法であって、以下の工程を含む:
不活性ガス雰囲気下で、MBH4(Mは金属イオンを示す。)と、金属イオンの包接能を持つ含ヘテロ環状化合物とを有機溶媒を含む溶媒中に含有する溶液を調製する工程;及び
前記溶液を、酸素を含む雰囲気に曝す工程。
この製造方法の具体的な例は、含ヘテロ環状化合物を加える以外の点については前記「原子層シート、積層シートの製造方法」の記載が参照される。
酸素を含む雰囲気に曝す工程では、原子層シートや積層シートを結晶化することなく形成することができる。
MBH4の金属イオンMとしては、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、3族から11族までの遷移金属元素のカチオン、12族から16族までの金属元素のカチオン等が挙げられる。アルカリ金属イオンとしては、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン等が挙げられる。アルカリ土類金属イオンとしては、例えば、ベリリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、バリウムイオン等が挙げられる。これらの中でも、カリウムイオンは好ましい態様である。
MBH4の濃度は、特に限定されないが、好ましくは0.5~10mM、より好ましくは1~2mMである。
不活性ガスとしては、MBH4との反応性を有しないものであれば特に限定されないが、例えば、アルゴン等の希ガス、窒素等が挙げられる。例えば、グローブボックスのような大気中の酸素を遮断し得る環境下で、MBH4との反応性を有しない不活性ガスに置換して、有機溶媒を含む溶媒中にMBH4を添加し溶液を調製する。
有機溶媒としては、特に限定されないが、非プロトン性中極性溶媒を含むことが好ましい。また、これらの非プロトン性中極性溶媒と共に、それらと相溶する、非プロトン性高極性溶媒、非プロトン性低極性溶媒、プロトン性溶媒から選ばれる少なくとも1種を混合した溶媒であってもよい。また、有機溶媒を含む溶媒としては、水を含むものであってもよい。これらの各溶媒の具体的な例は前記したとおりである。
酸素を含む雰囲気としては、特に限定されないが、大気下に解放することは好ましい態様である。
酸素を含む雰囲気に曝した後、一旦加熱してもよい。加熱温度としては、特に限定されないが、30~40℃が好ましい。加熱時間は、30分~2時間が好ましい。
酸素を含む雰囲気に曝した後、当該雰囲気において静置することが好ましい。酸素を含む雰囲気に曝す温度と時間は、特に限定されないが、原子層シートや積層シートを十分に成長させる点等から、上記加熱した場合はその後、温度は室温(15~25℃)が好ましく、時間は3日間~1ケ月が好ましい。
前記ホウ素シート溶液を用いた、本発明のホウ素シート薄膜の製造方法は、ホウ素シート溶液を基材に塗布する工程を含む。
前記したように、含ヘテロ環状化合物をインターカレートすることで非プロトン性中極性溶媒でも溶媒和剥離が可能となる。しかし、結晶から剥離されたシートの厚さは例えば10nm程度となる場合があり、その厚さの制御が煩雑であった。一方、含ヘテロ環状化合物の金属イオン包接能を生かし、ホウ素積層結晶の原料塩に含ヘテロ環状化合物を加えることで、結晶を介さないボトムアップ的な手法による単層のホウ素シート溶液の構築が可能である。
前記溶液をHOPG基板などの基材に塗布し、溶媒を除去することによって、基材表面に付着した結晶片をホウ素シート薄膜として得ることができる。ホウ素シート薄膜は、ナノシート、特に単層シートから数層あるいは数十層程度の薄いシート又はこれらの混合物としてナノシートとして得ることができる。単層シートを主成分とするホウ素シート薄膜の形成も可能である。
以上の本発明によれば、ホウ素シートにおいて、結晶の薄膜化に適した技術が提供される。
(ホウ素シートへのイオン交換)
本発明のホウ素シート結晶の製造方法は、以下の工程を含む:
骨格元素にホウ素と酸素を有し、ホウ素-ホウ素結合を有する非平衡結合によりネットワーク化された、酸素とホウ素のモル比率(酸素/ホウ素)が1.5未満である複数の原子層シートが積層され、金属イオン(a)を前記原子層シート間に含む結晶と、前記金属イオン(a)の包接能を持つ含ヘテロ環状化合物とを有機溶媒を含む溶媒中に含有する溶液を調製し、前記含ヘテロ環状化合物を前記原子層シート間にインターカレートする工程;及び
前記金属イオン(a)とは別異の金属イオン(b)を前記溶液中に含有させ、前記金属イオン(b)を前記原子層シート間にインターカレートする工程。
金属イオン(a)、(b)としては、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、3族から11族までの遷移金属元素のカチオン、12族から16族までの金属元素のカチオン等が挙げられる。アルカリ金属イオンとしては、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン等が挙げられる。アルカリ土類金属イオンとしては、例えば、ベリリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、バリウムイオン等が挙げられる。これらの中でも、金属イオン(a)としては、アルカリ金属イオン、特にカリウムイオンは好ましい態様である。
金属イオン(b)は、例えば、金属塩等の溶媒中でイオン化が可能な金属化合物又はその溶液として有機溶媒を含む溶媒中に添加することができる。
有機溶媒としては、特に限定されないが、極性が高い傾向の溶媒、中でも非プロトン性中極性溶媒を含むことが好ましい。また、これらの非プロトン性中極性溶媒と共に、それらと相溶する、非プロトン性高極性溶媒、非プロトン性低極性溶媒、プロトン性溶媒から選ばれる少なくとも1種を混合した溶媒であってもよい。これらの各溶媒の具体的な例は前記したとおりである。また、有機溶媒を含む溶媒としては、水を含むものであってもよい。
ホウ素シート結晶の溶液に金属イオン(b)を加えるトップダウンの手法によって、イオン交換を用いてボロフェン類縁体のカチオン種の展開が可能となる。含ヘテロ環状化合物をインターカレートした後、金属イオン(b)を作用させることでイオン交換反応を行うことで、イオン交換は部分的でも全てが置換されてもよいが、部分的にイオン交換することは好ましい例である。溶液中のホウ素シート層間に含ヘテロ環状化合物が部分的にインターカレートして層間の膨張が起き、続いて含ヘテロ環状化合物の脱着が起き、層間の電荷の中性を保つように金属イオンが置換することが考慮される。
前記溶液を調製する工程において、含ヘテロ環状化合物の含有量は、特に限定されないが、ホウ素シート結晶のアルカリ金属の量に対して過剰量用いることが好ましい。
金属イオン(b)を作用させイオン交換したホウ素シート結晶は、ホウ素シートで見られる積層構造を保つことができる。また、へき開した面ではマイクロスケールで平滑な面が見られる。
以上の本発明によれば、ホウ素シートにおいて、層間からの物性や機能の制御に有用な技術、各種金属イオンを内包する品質の良いホウ素シート結晶が得られる技術が提供される。結晶のカチオン交換は、品質の良いホウ素シート結晶が得られるカリウムイオン等の金属イオン(a)を出発原料として、様々な金属イオンをインターカレートした品質の良い結晶の製造を容易にする。
以上に説明した本発明によれば、含ヘテロ環状化合物を用いて、ホウ素シートの層間へインターカレートし、またボトムアップで予め剥離したホウ素シートを合成し、あるいはトップダウンで金属イオン交換することで、結晶の溶解性と薄膜化に適した技術、層間からの物性や機能の制御に有用な技術、各種金属イオンを内包する品質の良いホウ素シート結晶が得られる技術が提供される。従って、ホウ素シートを用いた物性や機能の制御、層間イオンによる電子物性の変化、フレキシビリティ向上等の観点より、導電性デバイス、誘電性デバイス、電池材料等の各種分野への応用が期待される。
以下に、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
ボロフェン類縁体(K-Borophene oxide Crystal K-BoC)の合成は、特許文献1、2に記載の方法に準じて行った。
嫌気下でKBH4をCH3CNに溶解させた。これを大気解放した後、湯浴を用いて35℃で1時間加熱した。この溶液を徐冷し数日間静置することで白色針状結晶を得た。
単結晶構造解析により、得られた結晶はホウ素と酸素による単原子層とカリウムイオンが交互に積層した構造であることが判明している。ホウ素と酸素の単原子層はホウ素同士が歪んだ六角形に結合し2次元に広がるシートを形成している。大気下での安定性や完全平面構造は酸素の架橋によるホウ素骨格への電子供与によるものと考えられている(図1、図2)。
1.K-BoCへの環状エーテルインターカレーション
K-BoCへアルカリ金属包接能を持つかさ高い環状エーテルのインターカレートを試みた。
1-1.クラウンエーテルをインターカレーションしたK-BoICの層間膨張挙動の観察
環状エーテルが溶解した非極性溶媒にK-BoCを浸漬させた様子を観察すると、インターカレーションに伴う層間の膨張を巨視的にとらえることができた。室温、大気下において、ヘキサン中でK-BoCに対して100当量の環状エーテルを加えたときの様子を顕微鏡により観察した。その結果時間経過に伴い結晶の積層方向の長さが増大することが分かった(図3(a))。結晶添加前1215μmに対して7日後は1255μmであり3.3%の膨張を確認した。長さの時間変化グラフを図3(b)に示す。ヘキサンのみのBlank溶液での長さ変化と比較すると、[2.2.2]クリプタンドを添加したものは明らかに積層方向の長さが増大していることが確認された。
層間が広がった様はSEMによる表面観察からも示唆された(図4)。インターカレーションをする前のK-BoCは層間の積層面が線状に観察された。[2.2.2]クリプタンドをインターカレーションした後は表面が粗くなっていることが観測された。
ここで層間が膨張した結晶についてX線構造回折法により構造の評価を行った(図5)。キャピラリーに結晶を入れ、真空封かんしたサンプルを測定した。K-BoCと比較すると(100)、(110)などによるa,b軸のピークが一致した。上述の顕微鏡観察では積層方向(c軸)と垂直な面内方向(ab面)にも結晶が膨張しているように見えたが、XRDによって面内における結晶構造の変化は観測されなかった。K-BoC層間方向の(001)に対応するピーク(2θ=25.8°,d=3.469Å)がK-BoIC結晶においても観察されたが、付近に新たなピーク(2θ=22.2°,d=4.004Å)が生じた。さらに低角側には2θ=8.3°,d=10.7Åを示すピークが新たに生じた。
[2.2.2]クリプタンドの大きさは環の炭素原子距離から8.2Å程度と見積もることができる。低角のd=10.7Åは[2.2.2]クリプタンドを内包するのに十分な層間距離であることから[2.2.2]クリプタンドのインターカレーションが示唆された(図6)。また、d=4.004Åに関しては[2.2.2]クリプタンド構造の部分的なインターカレーションによる層間の膨張が考えられる。
また、XRDのピーク強度から結晶内の層間隔d=3.469Åとd=10.7Åの割合は1:37と算出された。
1-2.BoICの合成と同定
XRD測定によりクラウンエーテル溶液に浸漬させた結晶について層間隔の増大が示された。そこで極性溶媒中でインターカレーションによりホウ素シートを剥離させ、再沈殿によりインターカレーション化合物を得た。以下に合成法を記載する。
合成はK-BoCとカリウムを内包する18-クラウン6-エーテル及び3次元的な[2.2.2]クリプタンドを用いて検討した。クラウンエーテルをアセトニトリルに溶解させ、得られた溶液にK-BoCを浸漬させた。アセトニトリルに不溶のK-BoCがクラウンエーテルインターカレーションにより溶解したのを確認した。この溶液に貧溶媒としてトルエンとヘキサンを加えると再沈殿により白色沈殿が生じたので、ろ過により白色固体を得た。
得られた固体を、赤外分光法を用いて同定を行った(図7)。ボロフェン類似骨格由来のB-O伸縮振動(1356cm-1)と末端・欠陥部分のB-OH由来の伸縮振動(3116cm-1)に加え、[2.2.2]クリプタンド由来のC-H伸縮振動(2959,2886,2817cm-1),C-O-C逆対称伸縮振動(1100cm-1),C-O-C対称伸縮振動(948cm-1)が帰属できたため、[2.2.2]クリプタンドのインターカレーションが示唆された。
インターカレーションの度合いは熱重量示差熱分析を用いて評価した。大気下、昇温速度10℃/min、温度範囲30~500℃で測定を行った(図8)。130℃付近と180℃付近に吸熱を伴う重量減少(3.0%,6.4%)が見られ、200~300℃で発熱を伴う大きな重量減少(51%)が確認された。吸熱を伴う重量減少について低温側は吸着水の脱水であり、高温側はホウ素結晶の脱水を伴う液晶変化であると推定される。層状粘土鉱物にインターカレーションしたクラウンエーテル類は酸素雰囲気で加熱すると200~450℃で熱分解することが報告されている。このことから発熱を伴う重量減少はクラウンエーテルの分解であると考えられる。重量減少量(51%,0.508mg)からインターカレーションした[2.2.2]クリプタンド(mw=376.49)の物質量は1.35×10-6molであり、全体の質量-(クラウンエーテル分解量+吸着水量)=0.433mgより結晶(KB53,mw=141.15)の物質量3.07×10-6molが求められる。よって結晶へのインターカレーション率は1.35×10-6mol/3.07×10-6mol=0.440(44%)と求められた。
2.カチオン交換ホウ素層状物質(BoIC)の溶解性と薄膜化
K-BoCへのクラウンエーテルのインターカレーションを達成した。次に、インターカレーションによる層間の増大に伴う溶解性の向上について検討を行った。また、インターカレーション化合物BoICのナノシート剥離に取り組んだ。さらに、その過程でクラウンエーテルを用いることで結晶を介さず基板上へ単層を作成できることを見出した。
2-1.K-BoCの溶解性
K-BoCはH2Oやメタノールといったプロトン性溶媒と、DMFやDMSOなどの非プロトン性高極性溶媒に溶解することが報告されている(特許文献1、2)。K-BoC溶解後の溶液の近赤外におけるUV-Vis吸収スペクトルから、非プロトン性高極性溶媒であるDMF溶液中ではK-BoCの固体拡散反射で得られたスペクトルと一致する吸収が得られ、非プロトン性溶媒中でホウ素シート構造を維持していることが示されている。一方でプロトン性溶媒である水溶液は時間経過とともに吸収スペクトルが消失していく様子が確認されており、プロトン性溶媒中では溶解後分解することが示唆されている。
2-2.BoICの溶解性
上述の通りK-BoCは非プロトン性高極性溶媒への溶解が知られるが、DMFやDMSOは沸点が高く取り扱いが不自由であることが懸念される。クラウンエーテルをインターカレートすることで層間が増大したBoICについて溶解性の向上が期待された。
実験は0.1mgのBoIC-[2.2.2]クリプタンドに3mLの溶媒を加え、溶解性を検討した。結果を以下の表1に示した。完全に溶解したものは〇、一部溶解したものは△、溶解しなかったものは×とした。P'はRohrschneiderの極性パラメーターと呼ばれ、溶媒のプロトン供与性・プロトン受容性及び双極子の寄与が含まれた溶媒の極性の大きさを示している。一方、δは溶解度パラメーターと呼ばれ凝集エネルギーEと分子容量Vとによってδ=(E/V)1/2で与えられ、δ値が大きいほど強い溶解度をもつ溶媒である。クラウンエーテルのインターカレーションによってアセトニトリルをはじめとする中極性の溶媒に溶解するようになったことがわかった。また極性が非常に低いヘキサンとトルエン以外の極性溶媒に溶解することが確認できた。
Figure 0007349740000002
2-3.K-BoCの溶媒和による原子層化
層状物質の剥離は層電荷と対イオンの静電的な相互作用が弱まることにより進行することが知られている。K-BoCはアニオン性のホウ素シートとカリウムカチオンのイオン性相互作用によって積層しており、高極性溶媒のDMFによりK+イオンを溶出させることでホウ素シートの単離が報告されている。一方、DMFは熱によってジメチルアミンとギ酸に分解されることが知られており安定性に乏しい。上述の通りクラウンエーテルをインターカレーションしたホウ素結晶BoICの溶解性が向上したことが確認された。以上よりBoICを用いることでDMF以外の溶媒を用いた薄膜化が期待された。
溶媒に安定性の高いアセトニトリルを用いて単層化に取り組んだ。K-BoCをアセトニトリルに分散させ、クラウンエーテルを加えることでBoIC溶液とした(当量比K-BoC:クラウンエーテル=1:5)。
アセトニトリル溶液中でのホウ素シートの存在はUV-Vis吸収スペクトル測定により確認した(図9)。近赤外における吸収ピークの一致からBoICのアセトニトリル溶液中でもホウ素シートが存在していることが示された。
BoIC溶液をHOPG基板にスピンコート(3000rpm,60sec)し、AFM観察を行った(図10)。100nm四方で厚さ10nm程度の2次元シートが得られたことから、薄膜化を行える溶媒の種類の拡張に成功したといえる。
3.クラウンエーテルによる基板上へのホウ素シートの合成
クラウンエーテルをインターカレーションすることでアセトニトリルでも溶媒和剥離できることが示された。しかし、結晶から剥離されたシートの厚さは10nm程度であり、その厚さの制御が煩雑であった。そこでクラウンエーテルのアルカリ金属イオン包接能を生かし、ホウ素積層結晶の原料塩にクラウンエーテルを加えることで結晶を介さないホウ素シート溶液の構築を試みた。
原料塩KBH4と、これと等量のクラウンエーテルを加えて、通常のホウ素結晶合成と同条件で加熱・部分酸化を行った。KBH4とクラウンエーテルは、嫌気下でCH3CNに溶解させた。その結果、7日間静置後も結晶は析出せず、無色透明溶液であった。
この溶液のUV-Vis吸収スペクトル測定から図7でみられるホウ素シート由来の近赤外領域のピークとの一致が確認され、原料塩にクラウンエーテルを加えた溶液でもホウ素シートが構築していることが示唆された(図11)。
この溶液をHOPG基板にスピンコートし、真空風乾した後AFM観察を行った。図12に示すように基板の大部分で膜厚1.0nm、1.3nm程度の2種類の厚みを持つナノシートが得られた。(測定条件:速度1Hz, P gain 0.001, I gain 50)
AFMのオフセットによりグラフェンなどの原子層物質では結晶構造から推定される高さよりも厚く観察されることが報告されている。これとカリウムイオンの直径0.226nmを考慮すると、1.0nmの高さが単原子層であり、より厚い1.3nmは単層のホウ素シートに包摂されたカリウムイオンが吸着していると考えられる(図13)。以上のことからボトムアップ的な手法による単層ホウ素シートの構築が示唆された。
4.K-BoCへのイオン交換反応
イオン交換を用いてボロフェン類縁体のカチオン種の展開を試みた。
4-1.K-BoCのイオン交換と構造の同定
上述したようにクラウンエーテルをインターカレーションした後、金属塩溶液を作用させることでイオン交換反応を行った。金属塩としてAgSbPF6、NaPF6を用いた。
結晶に等量のクリプタンドを添加し、結晶が残っている状態で金属塩を添加した。
得られた固体のXRD測定の結果を図14に示した。金属塩を添加したサンプルについて(100)や(110)の2θはK-BoCと一致した。一方、層間のc軸方向に関するピーク(001)、(101)、(111)は2θが低角側にシフトしており、層間の増大が示された。
(001)の2θから層間を算出するとAgイオンを作用させたものは2θ=25.18°,d=3.54Åであり、Naイオンを作用させたものは2θ=25.18°,d=3.54Åとなった。Agイオン、Naイオンを作用させたときK-BoC(2θ=25.68°,d=3.47Å)よりも層間が0.07Å程度増大したことがわかる。
4-2.SEM-EDXによるイオン交換体の元素分析
SEMにより金属イオンを作用させた試料の表面観察を行った(図15)。Agイオン、及びNaイオンを作用させたものについてK-BoCでみられる積層構造を保っていることが確認された。また、へき開した面について、マイクロスケールで平滑な面が見られた。
また、エネルギー分散型X線分析(EDX)を用いて元素分析を行うとAgイオン・Naイオンを作用させたものについてKのほかにAg、Naがそれぞれ検出されたことから、部分的にイオン交換が行われたことが示唆された(図16)。
極性溶媒であるアセトニトリル中のホウ素シート層間にクリプタンドが部分的にインターカレートし層間の膨張が起き、続いてクリプタンドの脱着が起き、層間の電荷の中性を保つように金属イオンが置換したと予想される(図17)。

Claims (6)

  1. 骨格元素にホウ素と酸素を有し、ホウ素-ホウ素結合を有する非平衡結合によりネットワーク化された、酸素とホウ素のモル比率(酸素/ホウ素)が1.5未満である複数の原子層シートが積層され、金属イオンを前記原子層シート間に含む、単離された結晶であって、前記金属イオンの包接能を持つ含ヘテロ環状化合物が前記原子層シート間にインターカレートされた、単離されたホウ素シート結晶。
  2. 請求項1に記載のホウ素シート結晶を製造する方法であって、以下の工程を含むホウ素シート結晶の製造方法:
    骨格元素にホウ素と酸素を有し、ホウ素-ホウ素結合を有する非平衡結合によりネットワーク化された、酸素とホウ素のモル比率(酸素/ホウ素)が1.5未満である原子層シートと、前記金属イオンと、前記金属イオンの包接能を持つ含ヘテロ環状化合物とを有機溶媒を含む溶媒中に溶解した溶液を調製する工程;及び
    前記溶液と、前記溶媒に対する貧溶媒とを混合して前記ホウ素シート結晶を沈殿させる工程。
  3. 以下の工程を含むホウ素シート薄膜の製造方法:
    請求項1に記載のホウ素シート結晶を、極性パラメーターP'が4.2以上で且つ溶解度パラメーターδが8.9以上の溶媒へ溶解し、溶液を調製する工程;及び
    前記溶液を基材に塗布する工程。
  4. 骨格元素にホウ素と酸素を有し、ホウ素-ホウ素結合を有する非平衡結合によりネットワーク化された、酸素とホウ素のモル比率(酸素/ホウ素)が1.5未満である原子層シートの溶液の製造方法であって、以下の工程を含むホウ素シート溶液の製造方法:
    不活性ガス雰囲気下で、MBH4(Mは金属イオンを示す。)と、金属イオンの包接能を持つ含ヘテロ環状化合物とを有機溶媒を含む溶媒中に含有する溶液を調製する工程;及び
    前記溶液を、酸素を含む雰囲気に曝す工程。
  5. 請求項4に記載のホウ素シート溶液を基材に塗布する工程を含むホウ素シート薄膜の製造方法。
  6. 以下の工程を含むホウ素シート結晶の製造方法:
    骨格元素にホウ素と酸素を有し、ホウ素-ホウ素結合を有する非平衡結合によりネットワーク化された、酸素とホウ素のモル比率(酸素/ホウ素)が1.5未満である複数の原子層シートが積層され、金属イオン(a)を前記原子層シート間に含む結晶と、前記金属イオン(a)の包接能を持つ含ヘテロ環状化合物とを有機溶媒を含む溶媒中に含有する溶液を調製し、前記含ヘテロ環状化合物を前記原子層シート間にインターカレートする工程;及び
    前記金属イオン(a)とは別異の金属イオン(b)を前記溶液中に含有させ、前記金属イオン(b)を前記原子層シート間にインターカレートする工程。
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