JP7349387B2 - ガスコンロ - Google Patents

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本発明は、バーナの燃焼により火炎から放射される赤外線を検知する赤外線センサを備えたガスコンロに関する。
従来、天板の下方に赤外線センサを配置し、赤外線センサで検知される赤外線強度に基づき、バーナに形成される火炎の有無の検知や、調理器具の温度を非接触で検知するガスコンロが提案されている(例えば、特許文献1)。
特開2006-275466号公報
ところで、一般に、赤外線の測定には、大気中の水分や二酸化炭素による影響の少ない大気の窓と呼ばれる波長範囲が利用される。そのため、特許文献1でも、火炎から放射される4.3μmの長波長の赤外線の赤外線強度に基づき火炎の有無が検知されている。
しかしながら、太陽光から放射される赤外線や加熱されたバーナ及び調理器具などの発熱体から放射される赤外線は、長波長の波長範囲で大きな赤外線強度を示す。また、ガスコンロの天板には、調理中に被調理物から飛散する水、油や、煮こぼれなどが付着するが、これらの付着物が火炎と赤外線センサとの間に介在すると赤外線の透過率が減衰する。そのため、特許文献1で利用されているような波長では、上記のような外乱の影響によって火炎から放射される赤外線を正確に検知することができないという問題がある。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、バーナの燃焼により火炎から放射される赤外線を赤外線センサにより精度よく検知して、バーナの状態を正確に判定可能なガスコンロを提供することにある。
本発明によれば、
バーナと、
バーナの燃焼により火炎から放射される1.3~1.5μmの第1特定波長範囲の赤外線を検知する第1赤外線センサと、
バーナの燃焼により火炎から放射される1.5~1.7μmの第2特定波長範囲の赤外線を検知する第2赤外線センサと、
第1赤外線センサによって検知される第1赤外線強度に基づいてバーナの着火状態を判定し、
第1赤外線強度に対する第2赤外線センサによって検知される第2赤外線強度の落ち込みが所定の閾値以下となるかどうかに基づいてバーナが正常燃焼状態か異常燃焼状態かどうかを判定する制御手段と、を有するガスコンロが提供される。
火炎から放射される赤外線は、第1特定波長範囲で一定の赤外線強度を示す分光特性を有する。一方、第1特定波長範囲で、太陽光や加熱されたバーナなどの発熱体から放射される赤外線は、赤外線強度が小さい。また、第1特定波長範囲では、水、油や、煮こぼれなどの付着物による赤外線の透過率の減衰が少ない。従って、上記ガスコンロによれば、バーナに火炎が形成されているかどうかを正確に検知することができる。
また、空気過剰率の変化などによってバーナが異常燃焼状態にあるときに火炎から放射される赤外線と、バーナが正常燃焼状態にあるときに火炎から放射される赤外線とは、第2特定波長範囲において赤外線強度が顕著に異なる。従って、上記ガスコンロによれば、バーナが着火状態であることを検知した上で、第2特定波長範囲の赤外線を検知することにより、バーナに形成されている火炎の燃焼状態を正確に判定することができる。
好ましくは、上記ガスコンロにおいて、
第1または第2特定波長範囲は、火炎と第1または第2赤外線センサとの間に配置された第1光学フィルタまたは第2光学フィルタによって規制される。
上記ガスコンロによれば、精度よく各特定波長範囲の赤外線を検知することができるから、より正確にバーナの着火状態や異常燃焼状態を判定することができる。
以上のように、本発明によれば、バーナの燃焼により火炎から放射される赤外線を赤外線センサにより精度よく検知して、バーナの状態を正確に判定可能なガスコンロを提供することができる。
図1は、本発明の実施の形態に係るガスコンロの一例を示す概略断面図である。 図2は、図1の要部拡大断面図である。 図3は、本発明の実施の形態に係るガスコンロが備えるコントローラの一例を示すブロック図である。 図4は、火炎及び太陽光からそれぞれ放射される赤外線の分光スペクトル図である。 図5は、各種付着物を透過する赤外線の分光スペクトル図である。 図6は、正常燃焼状態及び異常燃焼状態における火炎から放射される赤外線の分光スペクトル図である。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態に係るガスコンロを具体的に説明する。
図1に示すように、本実施の形態に係るガスコンロは、バーナ1を臨ませるバーナ用開口21が開設された天板2を備える。バーナ1は、混合管11の下流端から上方に延びてバーナ用開口21に挿通されるバーナボディ12と、バーナボディ12上に載置される環状のバーナキャップ16とを備える。
バーナボディ12は、内筒121と外筒122とを備え、中空環状に形成されている。外筒122の上端部には、内曲げフランジが形成されている。また、外筒122には、バーナ用開口21を上方から覆うバーナリング3が外挿されている。さらに、バーナリング3には、調理器具をバーナ1の上方に所定間隔で載置する五徳9が外挿されている。なお、図1では、調理器具の底面のみが図示されている。
バーナキャップ16の中央に位置する内周部には、内筒121の上端部に内嵌するシール筒部161が垂設されている。また、バーナキャップ16の下面外周部には、バーナボディ12の上面外周部を形成する外筒122の内曲げフランジの上面に当接する環状壁162が突設されている。環状壁162には、周方向に間隔を存して設けられた溝からなる複数の炎孔19が形成されている。従って、混合管11からの混合気(燃料ガスと一次空気との混合ガス)は、炎孔19から外方に噴出し、図示しないバーナ1に付設された点火電極によって混合気が着火すると、炎孔19に外方に延びる火炎が形成される。なお、バーナボディ12の上面外周部にバーナキャップ16の下面外周部に当接する環状壁を突設して、この環状壁に炎孔を形成してもよい。
バーナリング3の下面内周部には、バーナリング3を外筒122の外周に挿通するときにガイドするガイド部31が垂設されている。また、バーナリング3におけるバーナ用開口21の開口縁とガイド部31との間の径方向中間部には透孔窓33が形成されており、透孔窓33の下方の空間には、第1赤外線受光部5と第2赤外線受光部7とが並設されている。なお、ガラス製の天板2が用いられる場合、バーナリング3に透孔窓33を設けることなく、天板2の下方の所定位置に第1及び第2赤外線受光部5,7を配設してもよい。また、第1及び第2赤外線受光部5,7は、異なる位置に配設してもよい。
図2は、図1の要部拡大断面図である。第1赤外線受光部5は、第1赤外線センサ51と、第1赤外線センサ51を上方から覆う第1受光キャップ52とを有している。第1赤外線センサ51は、バーナ1の燃焼により炎孔19に形成される火炎から放射される赤外線を受光する。第1赤外線センサ51としては、従来公知の赤外線フォトダイオードや赤外線フォトトランジスタのような量子型、サーモパイル、焦電素子のような熱型のセンサを使用することができる。第1赤外線センサ51は、受光する赤外線強度に応じた出力信号を第1リード線57を介して後述するコントローラ100に出力する。
第1受光キャップ52は、ハット型の断面形状を有し、中央上面部に第1窓部53を有する。従って、火炎から放射される赤外線はバーナリング3の透孔窓33及び第1窓部53を介して第1赤外線センサ51に入射する。波長選択性のない第1赤外線センサ51を用いる場合、第1窓部53には、後述するように1.3~1.5μmの第1特定波長範囲の赤外線を選択的に透過する第1光学フィルタ55が設けられる。従って、この場合、第1赤外線センサ51は、第1光学フィルタ55によって規制された第1特定波長範囲の赤外線を検知する。なお、第1光学フィルタ55を配置することなく、波長選択性を有する第1赤外線センサ51を使用してもよい。
第1赤外線受光部5と同様に、第2赤外線受光部7は、第2赤外線センサ71と、第2赤外線センサ71を上方から覆う第2受光キャップ72とを有している。第2赤外線受光部7は、第2窓部73に1.5~1.8μmの第2特定波長範囲の赤外線を選択的に透過する第2光学フィルタ75が設けられている以外は、第1赤外線受光部7と同一の構成を有する。第2リード線77は、コントローラ100に接続されており、出力信号をコントローラ100に出力する。
図3に示すように、コントローラ100には、第1及び第2赤外線センサ51,71がそれぞれ受光して出力する第1及び第2赤外線強度に応じた出力信号が入力される。コントローラ100は、マイクロコンピュータを用いて構成され、所定のコンピュータプログラムを実行することにより、各種の制御を実行するように構成されている。また、コントローラ100は、機能的構成手段として、第1赤外線センサ51で検知される第1特定波長範囲の第1赤外線強度に基づき、バーナ1に火炎が形成されているかどうかを判定する着火状態判定部101、第2赤外線センサ71で検知される第2特定波長範囲の第2赤外線強度に基づき、バーナ1が異常燃焼状態であるかどうかを判定する異常燃焼状態判定部102、着火状態判定部101及び異常燃焼状態判定部102からの出力に基づき、図示しないガス流路に介設された元ガス電磁弁や流量制御弁などを制御して、バーナ1の燃焼を制御する燃焼制御部103などを備える。従って、本実施の形態では、コントローラ100がバーナ1の着火状態及び異常燃焼状態を判定する制御手段として機能する。コントローラ100の記憶部104には、バーナ1の着火状態や異常燃焼状態を判定するためのデータテーブルが格納されている。
(バーナの着火状態の判定)
次に、バーナ1の着火状態を判定するときの外乱による火炎から放射される赤外線への影響について説明する。図4は、太陽光から放射される赤外線による外乱の影響について検討した結果を示す。図4は、都市ガスの正常燃焼状態における火炎から放射される赤外線及び太陽光から放射される赤外線を赤外線分光器を用いてそれぞれ測定したときの分光スペクトルである。図中、線(A)が、正常燃焼状態の火炎を、線(B)が太陽光を示す。なお、図4を含めて、分光スペクトルの測定には、赤外線分光器としてInGaAsリニアイメージセンサを使用した。
図4から理解されるように、火炎から放射される赤外線は、1.3~1.5μm及び1.8~2.1μmの波長範囲で太陽光よりも大きな赤外線強度を示す。従って、これらの波長範囲の赤外線強度を測定すれば、太陽光から放射される赤外線による外乱の影響の少ない状態で火炎から放射される赤外線を検知することができると考えられる。
図5は、加熱されたバーナ1や調理器具などの発熱体から放射される赤外線及び付着物による外乱の影響について検討した結果を示す。図5は、バーナ1及び調理器具代替の発熱体として加熱した鉄板(温度:300℃,放射率:0.95)を用い、発熱体と赤外線分光器とをガラス板(厚さ:4mm,透過率:0.7~1.0)を介して対向配置させ(発熱体とガラス板との距離:40mm,ガラス板と赤外線分光器との距離:5mm)、ガラス板上に各種付着物を付着させて、発熱体から放射され、ガラス板を透過する赤外線の赤外線強度を測定した分光スペクトルである。図中、線(a)は、汚れのない状態、線(b)は、水が付着した状態、線(c)は、少量の油が付着した状態、線(d)は、大量の油が付着した状態、線(e)は、調味料を含んだ液状の煮こぼれが付着した状態、線(f)は、焦げた煮こぼれが付着した状態で、それぞれ測定したものである。
既述したようにバーナ1自体やバーナ1近傍の調理器具などの発熱体からも赤外線が放射されるが、図5に示すように、汚れのない状態(線(a))において、発熱体から放射される赤外線は、1.6μmを超えると赤外線強度が顕著に増加する。従って、火炎と第1赤外線センサ51との間に付着物が介在しない状態であっても、長波長になるほど発熱体から放射される赤外線による外乱の影響が大きい。また、図示しないが、火炎から放射される赤外線は4μm以上の長波長の波長範囲に大きな赤外線強度を示す一方、上記のような発熱体から放射される赤外線も、長波長側に大きな赤外線強度を示す。このため、ガスコンロのように火炎以外に高温の発熱体が第1赤外線センサ51の周囲にある環境では、従来公知の4μm以上の波長範囲の赤外線強度に基づき、火炎から放射される赤外線と発熱体から放射される赤外線とを区別して判定することが難しい。
また、調理時には調理器具から水、油や煮こぼれなどが飛散するが、付着物が火炎と第1赤外線センサ51との間に介在しても、赤外線の透過率の減衰が少ない波長範囲を選択すれば、火炎から放射される赤外線を正確に検知することができる。例えば、少量の油が付着している状態(線(c))では、いずれの波長でも汚れのない状態(線(a))と略同程度の赤外線強度を示している。従って、少量の油のみの付着物が火炎と第1赤外線センサ51との間に介在していても透過率の減衰が少なく、汚れのない状態と同等の赤外線強度で火炎から放射される赤外線を検知することができると考えられる。
これに対して、例えば、大量の油が付着している状態(線(d))では、2.0μm以上の長波長の波長範囲で、付着物がない状態(線(a))の赤外線強度との差が大きくなり、透過率が減衰する。また、1.7μm近辺でも透過率の減衰が観察される。また、焦げた煮こぼれが付着した状態(線(f))では、付着物がガラス板上に点在しているため、透過率は付着物がない状態(線(a))のそれに比べて全体的に減衰するが、長波長になるほど透過率の減衰が大きくなる。さらに、水及び液状の煮こぼれが付着した状態(線(b)及び(e))でも、長波長になるほど汚れのない状態(線(a))に比べて赤外線強度の差が大きくなり、1.9μmより長波長の赤外線は略透過しない。これは、短波長になるほど赤外線が透過しやすくなり、長波長になるほど赤外線が透過し難くなる水の特性が現れているためと考えられる。従って、火炎から放射される赤外線は既述した1.8~2.1μmの波長範囲で大きな赤外線強度を有するものの、この波長範囲の赤外線を検知対象とすると、付着物による透過率の減衰が大きくなり、赤外線を正確に検知することが難しい。また、従来公知の4μm以上の波長範囲では、付着物による透過率の減衰がさらに大きくなる。なお、図4では、長波長側の透過率の減衰を対比するため短波長側の赤外線強度が見え難くなっているが、1.6μm以下でも一定の赤外線強度が確認されている。
以上から、火炎から放射される赤外線の赤外線強度、太陽光及びバーナ1や調理器具などの発熱体から放射される赤外線による外乱の影響、並びに付着物による透過率の減衰による外乱の影響を考慮すれば、1.3~1.5μm、好ましくは1.3~1.4μm、より好ましくは1.35~1.4μmの第1特定波長範囲の赤外線を選択的に検知することにより、バーナ1に火炎が形成されているかどうかを正確に判定することができる。従って、第1特定波長範囲の赤外線を選択的に透過させる上記した第1光学フィルタ55を用いて、第1赤外線センサ51で第1赤外線強度を測定し、測定された第1赤外線強度が一定の閾値以下となるかどうかを検知することにより、バーナ1の着火状態(バーナ1の着火不良やバーナ1の失火)を正確に判定することができる。
(バーナの異常燃焼状態の判定)
次に、バーナ1の異常燃焼状態の判定について説明する。図6は、バーナ1の異なる燃焼状態を検討した結果を示す。図中、線(A)は、上記したバーナ1が青炎燃焼している正常燃焼状態の分光スペクトルであり、線(C)は、空気過剰率が低くバーナ1が輝炎燃焼している異常燃焼状態の分光スペクトルである。図6に示すように、1.3~1.5μm及び1.8~2.1μmの波長範囲では正常燃焼状態と異常燃焼状態との間で赤外線強度に大きな差は見られない一方、1.3μm未満、1.5~1.7μm、及び2.1μm以上の各波長範囲において正常燃焼状態と異常燃焼状態との間で顕著な赤外線強度の差が確認される。これらの赤外線強度で差が生じるのは、青炎燃焼では火炎の分光スペクトルのみが現れているのに対し、輝炎燃焼では発生した黒体である煤の分光スペクトルと火炎の分光スペクトルとが重なって現れていると考えられる。一方、上記3つの波長範囲のうち、1.3μm未満の波長範囲では、火炎から放射される赤外線の赤外線強度自体が小さく、また2.1μm以上の波長範囲では、付着物による赤外線強度の差が大きい。
以上から、火炎から放射される赤外線の赤外線強度、正常燃焼状態と異常燃焼状態とにおける赤外線強度の差、及び付着物による外乱の影響を考慮すれば、1.5~1.7μm、好ましくは1.6~1.7μmの第2特定波長範囲の赤外線を選択的に検知することにより、バーナ1が異常燃焼状態で燃焼しているかどうかを正確に判定することができる。従って、第2特定波長範囲の赤外線を選択的に透過させる上記した第2光学フィルタ75を用いて、第2赤外線センサ71で第2赤外線強度を測定し、第1赤外線センサ51でバーナ1が着火状態であることを判定した上で、第1特定波長範囲の第1赤外線強度と第2特定波長範囲の第2赤外線強度とを対比し、第1赤外線強度に対する第2赤外線強度の落ち込みが所定の閾値以下となるかどうかを検知することにより、バーナ1の異常燃焼状態を正確に判定することができる。これにより、無駄なエラー消火を防止することができる。
以上詳細に説明したように、本実施の形態によれば、バーナ1の燃焼により火炎から放射される赤外線を第1及び第2赤外線センサ51,71により精度よく検知して、バーナ1の状態を正確に判定可能なガスコンロを提供することができる。
1 バーナ
51 第1赤外線センサ
55 第1光学フィルタ
71 第2赤外線センサ
75 第2光学フィルタ
100 コントローラ

Claims (2)

  1. バーナと、
    バーナの燃焼により火炎から放射される1.3~1.5μmの第1特定波長範囲の赤外線を検知する第1赤外線センサと、
    バーナの燃焼により火炎から放射される1.5~1.7μmの第2特定波長範囲の赤外線を検知する第2赤外線センサと、
    第1赤外線センサによって検知される第1赤外線強度に基づいてバーナの着火状態を判定し、
    第1赤外線強度に対する第2赤外線センサによって検知される第2赤外線強度の落ち込みが所定の閾値以下となるかどうかに基づいてバーナが正常燃焼状態か異常燃焼状態かどうかを判定する制御手段と、を有するガスコンロ。
  2. 請求項1に記載のガスコンロにおいて、
    第1または第2特定波長範囲は、火炎と第1または第2赤外線センサとの間に配置された第1光学フィルタまたは第2光学フィルタによって規制されるガスコンロ。
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