JP7348860B2 - 研磨パッド及び研磨パッドの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、研磨パッド及びその製造方法に関し、特に光透過領域を有する化学機械研磨(CMP)用研磨パッド及びその製造方法に関する。
半導体製造工程(特に、多層配線形成工程における層間絶縁膜の平坦化、金属プラグ形成、又は、埋め込み配線形成)において化学機械研磨(以下、「CMP」という)法が利用されている。CMPは、半導体製造工程(特に、多層配線形成工程における層間絶縁膜の平坦化、金属プラグ形成、埋め込み配線形成等)に適用されている。
近年、半導体素子の多層化、高精細化が飛躍的に進み、半導体素子の歩留まり及びスループット(収量)の更なる向上が要求され、研磨パッドに対してはディフェクトフリーとともに、ディッシングのない高平坦化特性が要望されている。これらの要求を達成させるためには、希望の表面特性や平面状態に到達した時点を検知する必要があり、検出方法として光学的手法によるものが精度良く検出可能であるため広く使用されている。
この方法では、例えば、研磨パッドを構成する研磨層の少なくとも一部に研磨終点検出用の光透過性を有する窓部を形成し、この窓部を通して加工面に光を照射し加工面からの光の反射状態を観測して研磨状態を判定する。このため、イン・シチュウ(in situ)で研磨終点を検出することができ、過剰研磨による収率の悪化を抑制することが出来る。
終点検出用の窓を有するパッドとして、特許文献1には、研磨層と基礎層を有する研磨パッドであって、研磨層を貫通する第1開口が基礎層を貫通する第2開口を露出するとともに基礎層の一部を露出しており、第1開口と基礎層の露出部分で囲まれた部分に窓を取付けてなる研磨パッドが開示されている。
また、特許文献2には、研磨表面よりも凹んだ位置に窓部材を配した研磨パッドが開示されている。
特表2018-533489号公報 特開2014-104521号公報
しかしながら、特許文献1の研磨パッドは、研磨表面とほぼ同一平面に窓部材表面が存在するため、被研磨物の研磨時に無発泡で圧縮性の無い窓部材が被研磨物と接触することとなり、被研磨物に研磨傷が付くという問題がある。
特許文献2の研磨パッドでは、窓部材との接触により被研磨物が傷つくことを避けるため、光透過領域の表面を研磨表面よりも凹ませている。しかしながら、特許文献2の研磨パッドは、研磨表面から窓部材表面の凹み量が大きいと光透過領域内にスラリーが溜まり、光学検知精度が低下するという問題があるため、光透過領域の凹み量が研磨層表面に設けられた溝の深さの30~100%に制限している。従って、光透過領域の凹み量が溝の深さを超えることができず、研磨領域の磨耗によって短時間で光透過領域表面が研磨領域表面と同じ高さになるため、短時間で研磨パッドを交換しなければならず長寿命化に限界がある。
本発明者は、上記課題に対し鋭意検討した結果、研磨表面側の貫通孔をその下層に存在する貫通孔よりも大きくし且つ窓部材上部の凹み量を溝の凹み量以上にすることによって、窓部材由来の研磨傷を防止するとともに研磨屑による光検知精度の低下を防止することできる研磨パッドが得られることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下を提供する。
〔1〕 第1貫通孔を有する第1の層と、
第1貫通孔よりも小さい円相当径を有する第2貫通孔を有する第2の層と、
透明樹脂部材と、
を含む研磨パッドであって、
前記第1の層は被研磨物を研磨するための研磨表面を有し、前記第1の層の研磨表面とは反対側の面には前記第2の層が接着されており、
前記研磨パッドを研磨表面側から厚さ方向に見た場合に、前記第1貫通孔と前記第2貫通孔とが少なくとも部分的に重なっており、
前記透明樹脂部材は、前記第1貫通孔内に設けられており、
前記第1の層の研磨表面には溝が設けられており、且つ
前記研磨表面を上面とし前記第2の層の前記第1の層と接着している面とは反対側の面を下面とした場合に、前記透明樹脂部材の最上部が前記溝の最下部と同じ位置にあるかそれよりも低い、
前記研磨パッド。
〔2〕 研磨パッドの研磨表面側から厚さ方向に見た場合に、第1貫通孔の外周部が第2貫通孔の外周部を覆うようにして設けられている、〔1〕に記載の研磨パッド。
〔3〕 前記第1貫通孔の円相当径が前記第2貫通孔の円相当径より5~30mm大きい、〔1〕又は〔2〕に記載の研磨パッド。
〔4〕 前記研磨表面を上面とし前記第2の層の前記第1の層と接着している面とは反対側の面を下面とした場合に、前記透明樹脂部材の最上部が前記溝の最下部よりも低い、〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載の研磨パッド。
〔5〕 研磨パッドの研磨表面側から研磨パッド厚さ方向に見た場合の前記第1貫通孔の形状及び前記第2貫通孔の形状が共に円形である、〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の研磨パッド。
〔6〕 前記第2の層の密度が前記第1の層の密度よりも大きい、〔1〕~〔5〕のいずれか1項に記載の研磨パッド。
〔7〕 前記第1の層の密度が0.1~0.5g/cm3である、〔1〕~〔6〕のいずれか1項に記載の研磨パッド。
〔8〕 前記第1の層の圧縮弾性率が50~100%である、〔1〕~〔7〕のいずれか1項に記載の研磨パッド。
〔9〕 前記第1の層の圧縮率が1~60%である、〔1〕~〔8〕のいずれか1項に記載の研磨パッド。
〔10〕 前記溝が、エンボス溝である、〔1〕~〔9〕のいずれか1項に記載の研磨パッド。
〔11〕 第1の層、第2の層及び透明樹脂部材を用意する工程、
前記第1の層に第1貫通孔を設ける工程、
前記第1の層と前記第2の層とを貼り合わせる工程、
前記第2の層に前記第1貫通孔よりも小さい断面積を有する第2貫通孔を設ける工程、及び
前記第1貫通孔内に前記透明樹脂部材を設ける工程、
を含む、〔1〕~〔10〕のいずれか1項に記載の研磨パッドの製造方法。
本発明によれば、窓部材由来の研磨傷を防止するとともに研磨屑による光検知精度の低下を防止し、長期間に渡って使用可能な研磨パッドを得ることができる。
図1は、本発明の研磨パッドの厚さ方向略断面図(切断部端面図)である。 図2は、本発明の研磨パッドの研磨表面から厚さ方向に見た場合の図である。 図3Aは、本発明の研磨パッドを用いて被研磨物を研磨しているときの略断面図(切断部端面図)である。 図3Bは、本発明の研磨パッドを用いて被研磨物を研磨しているときの図2のA-A線での略断面図(切断部端面図)である。 図3Cは、本発明ではない研磨パッドを用いて被研磨物を研磨しているときの略断面図(切断部端面図)である。
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
<<研磨パッド>>
本発明の研磨パッドは、第1貫通孔を有する第1の層と、第1貫通孔よりも小さい円相当径を有する第2貫通孔を有する第2の層と、透明樹脂部材と、を含む研磨パッドであって、前記第1の層は被研磨物を研磨するための研磨表面を有し、前記第1の層の研磨表面とは反対側の面には前記第2の層が接着されており、前記研磨パッドを研磨表面側から厚さ方向に見た場合に、前記第1貫通孔と前記第2貫通孔とが少なくとも部分的に重なっており、前記透明樹脂部材は、前記第1貫通孔内に設けられており、前記第1の層の研磨表面には溝が設けられており、且つ前記研磨表面を上面とし前記第2の層の前記第1の層と接着している面とは反対側の面を下面とした場合に、前記透明樹脂部材の最上部が前記溝の最下部と同じ位置にあるかそれよりも低い、前記研磨パッドである。
<1.第1の層>
第1の層は、厚さ方向に貫通した第1貫通孔を有する。
第1の層は、第1貫通孔が厚さ方向に貫通している限り、1層で構成されていてもよく、2層以上で構成されていてもよい。但し、第2の層との区別がつくよう、第1の層が2層以上で構成されている場合は、前記2層以上の全層が第1貫通孔によって貫通されていることを条件とする。第1の層が複数の層から構成されていると、研磨表面側の層が柔らかい樹脂で構成されていてもある程度の硬さが確保でき取扱いが容易となるため、第2の層との接着を容易に行うことができる。
第1の層は透明であっても不透明であってもよいが、不透明であることが好ましい。
第1の層は被研磨物を研磨するための研磨表面を有する。研磨表面とは、研磨パッドを用いて被研磨物を研磨する際に被研磨物と接する表面を意味する。被研磨物に特に制限はなく、例えば、製品基板(たとえば、複数のメモリダイまたはプロセッサダイを含む)、試験基板、ベア基板、およびゲート基板などが挙げられる。基板は、集積回路製造の様々な段階のものとすることができ、たとえば、基板はベアウエハとすることができ、あるいは1つまたは複数の堆積層および/またはパターン形成層とすることができる。第1の層は研磨層と呼んでもよい。
(第1貫通孔)
第1貫通孔は、研磨パッドの研磨表面側から研磨パッド厚さ方向に見た場合に、第1の層の研磨表面から第1の層の反対側の表面へと貫通している孔である。第1貫通孔は、厚み方向に対して平行に又は研磨表面に対して垂直に第1の層を貫通していることが好ましい。
第1貫通孔は第1の層中に1個設けられていてもよく、互いに離間し且つ独立している2個以上の貫通孔が設けられていてもよい。
研磨パッドの研磨表面側から研磨パッド厚さ方向に見た場合の第1貫通孔の形状、研磨パッドの厚さ方向に対して垂直に切断した場合の第1貫通孔の断面形状、及び/又は研磨表面における第1貫通孔の形状としては、円形、楕円形、三角形、四角形、六角形、八角形等が挙げられる。或いは、同一又は異なる複数の上記形状が互いに部分的に重なり合った形状であってもよい。これらの中でも、円形が特に好ましい。
(円相当径)
本明細書及び特許請求の範囲において、円相当径とは、測定対象の図形が有する面積に相当する、真円の直径のことである。
第1貫通孔の円相当径は、研磨パッドの研磨表面側から研磨パッド厚さ方向に見たときの第1貫通孔の円相当径であり、研磨パッドの研磨表面側から研磨パッド厚さ方向に見た時の第1貫通孔の形状が円形である場合は直径に相当する。
本発明の研磨パッドは、研磨パッドの第1の層を厚さ方向に対して垂直に(又は研磨表面に対して平行に)切断して得られる任意の第1の層断面における第1貫通孔の円相当径が、第1の層を厚さ方向に対して垂直に切断して得られる他の任意の第1の層断面における第1貫通孔の円相当径と等しい。従って、第1貫通孔の円相当径は研磨表面における第1貫通孔の円相当径としてもよい。
第1貫通孔の円相当径に特に制限はないが、5~40mmが好ましく、7~30mmがより好ましく、10~28mmがさらにより好ましい。
(第1の層の構成)
第1の層を構成する樹脂としては、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂などが挙げられる。これらの中でも、圧縮特性や柔軟性を考慮すれば、ポリウレタン樹脂がより好ましい。
第1の層は1種類の樹脂から構成されていてもよく、2種以上の樹脂から構成されていてもよい。
また、第1の層は連続気泡を有するものが好ましい。ここでいう連続気泡とは隣り合う気泡同士が互いに連通孔によりつながった空間を有する発泡を示す。具体的には湿式成膜法による樹脂や乾式成形、射出成形によるフォームでよい。好ましくは湿式成膜法によるもので、良好な屈曲運動が期待できる。
第1の層が2層以上から構成されている場合は、少なくとも研磨表面に最も近い層が連続気泡を有することが好ましい。第1の層を構成する全ての層が連続気泡を有していてもよい。取扱い性の面より、連続気泡を有する樹脂層とポリエチレンテレフタレート樹脂からなる可撓性シートが貼り合わされた構成が好ましい。
本明細書において、湿式成膜法による樹脂とは、湿式成膜法により成膜された樹脂(好ましくはポリウレタン樹脂)を意味する。湿式成膜法は、成膜する樹脂を有機溶媒に溶解させ、その樹脂溶液をシート状の基材に塗布後に凝固液(水)中に通して樹脂を凝固させる方法である。湿式成膜された樹脂は、一般に、有機溶媒を脱溶媒させることにより形成される複数の涙形状(teardrop-shaped)気泡(異方性があり、研磨パッドの研磨表面から下部に向けて径が大きい構造を有する形状)を有する。従って、湿式成膜された樹脂は、複数の涙形状気泡を有する樹脂と言い換えることもできる。複数の涙形状気泡は連続気泡の形態であることが好ましい。
(溝)
本発明の研磨パッドは、第1の層の研磨表面に溝が設けられている。前記溝は第1の層を貫通していないため、第1貫通孔と区別することができる。
溝としては、研磨表面にエンボス加工を施すことで得られるエンボス溝、切削工具により切削加工を施すことで得られる切削溝が挙げられる。エンボス溝などの溝を設けることにより、研磨表面にバリが出にくく、仕上げ研磨に適した研磨パッドを得ることができる。
溝の深さは第1の層の厚みよりも小さい限り特に制限はないが、第1の層の厚みの50~90%であることが好ましく、60~80%であることがより好ましい。被研磨物の研磨により溝が消失すると研磨スラリーの流排出性が失われ研磨性能が低下するため研磨パッドは寿命となることから、溝深さは深いことが好ましい。他方、エンボス溝の溝深さを大きくするためには加工圧力を上げる、或いは加工温度を上げる必要があり、それにより第1の層裏面の基材(PET)が変形したり、第1の層表面が劣化する可能性がある。溝の深さが上記範囲内であると、これらの問題が生じにくい。
溝の数や形状に特に制限はなく、研磨パッドの使用目的などに合わせて適宜溝数や形状を調整すればよい。形状としては、格子状、放射状、同心円状、ハニカム状などが挙げられ、それらを組み合わせてもよい。
また、本発明の研磨パッドは、第1の層の表面を研削(バフ処理)により開孔していてもよく、スライスしていてもよい。
(密度)
第1の層の密度は、0.1~0.5g/cm3が好ましく、0.12~0.45g/cm3がより好ましく、0.15~0.35g/cm3がさらにより好ましい。第1の層の密度が上記範囲内であることにより、スラリーの保持性を良好なものとし、研磨屑を被研磨物に押し付ける力を弱めることができるので、研磨レートとスクラッチ性能とをバランスよく兼ね備えることができる。
(ショアA硬度)
本発明の研磨パッドのショアA硬度は、5~70度であることが好ましく、8~65度であることがより好ましい。ショアA硬度が上記の範囲内であると、研磨屑が被研磨物に過度に当たることを抑制し仕上げ用研磨において特に重視される研磨傷を低減することができる。
(圧縮率及び圧縮弾性率)
本明細書において、圧縮率とは、軟らかさの指標であり、圧縮弾性率とは、圧縮変形に対する戻りやすさの指標である。
圧縮率は、日本工業規格(JIS L 1021)に従い、ショッパー型厚さ測定器(加圧面:直径1cmの円形)を使用して求めることが出来る。具体的には、以下の通りである。
無荷重状態から初荷重を30秒間かけた後の厚さt0を測定し、次に、厚さt0の状態から最終荷重を5分間かけた後の厚さt1を測定する。次に、厚さt1の状態から全ての荷重を除き、5分間放置(無荷重状態とした)後、再び初荷重を30秒間かけた後の厚さt0’を測定する。圧縮率は、圧縮率(%)=100×(t0-t1)/t0の式で算出することができる(なお、初荷重は100g/cm2、最終荷重は1120g/cm2である)。圧縮弾性率は、圧縮弾性率(%)=100×(t0’-t1)/(t0-t1)の式で算出することが出来る(なお、初荷重は100g/cm2、最終荷重は1120g/cm2である)。
第1の層の圧縮率は、1~60%が好ましく、2~55%がより好ましく、3~50%がさらにより好ましい。第1の層の圧縮弾性率は、50~100%であることが好ましく、60~98%であることがより好ましい。圧縮率及び/又は圧縮弾性率が上記範囲内であることにより、第1貫通孔状を被研磨物が通過する際に研磨パッドが被研磨物により押し込まれやすくなり、回復性も優れるため、第1の層が圧縮、開放される際の屈伸運動により開口壁に集まった研磨屑の固着を抑制しやすく、さらに第1貫通孔内部でスラリーの流れができ、第1貫通孔外周側に寄せ集められた研磨屑がスラリーの流れに乗り排出されやすくなる。これにより、開口内にスラリーがとどまることを防ぎやすい。
(厚み)
厚みは、日本工業規格(JIS K 6505)に従い、ショッパー型厚さ測定器(加圧面:直径1cmの円形)を使用して求めることが出来る。具体的には、以下の通りである。
縦、横10cm角の試料を準備する。試料の表面を上にして測定器に載せる。荷重100g/cm2をかけた加圧面を試料上に下し、5秒後の厚さを測定する。1枚につき5ヶ所測定しその平均値を厚さとする。なお、10cm角の試料が取れない場合は5ヶ所の平均とする。
第1の層の厚みに特に制限はないが、0.5~2mmであることが好ましく、0.6~1.8mmがより好ましく、0.75~1.55mmがさらにより好ましい。
<2.第2の層>
本発明の研磨パッドは、厚さ方向に貫通した第2貫通孔を備える第2の層を有する。第2の層は、第1の層の研磨表面とは反対側の面に接着されている層である。第2の層は支持層と呼んでもよい。
第2貫通孔が厚さ方向に貫通している限り、第2の層は1層で構成されていてもよく、2層以上で構成されていてもよい。但し、第1の層との区別がつくよう、第2の層が2層以上で構成されている場合は、第2貫通孔が前記2層以上の全層を貫通していることを条件とする。
第2の層が2層以上で構成されている場合、2層以上の層同士は直接接着されていてもよく、接着剤を介して接着されていてもよい。また、第2の層と第1の層は、直接接着されていてもよく、接着剤を介して接着されていてもよい。また、第2の層を構成する材料が片面又は両面テープの形態である場合には、片面又は両面テープの粘着面を利用して第2の層を構成する2以上の層同士を接着させていてもよく、同様にして第1の層と第2の層とを接着させていてもよい。
第2の層は透明樹脂部材よりも透明度が低く、好ましくは不透明である。
(第2貫通孔)
第2貫通孔は、研磨パッドの研磨表面側から研磨パッド厚さ方向に見た場合に、第2の層の第1の層側と接している表面から第2の層の第1の層と接している表面とは反対側の表面へと貫通している孔である。第2貫通孔は、厚み方向に対して平行に又は研磨表面に対して垂直に第2の層を貫通していることが好ましい。
研磨パッドの研磨表面側から研磨パッド厚さ方向に見た場合の第2貫通孔の形状、研磨パッドの厚さ方向に対して垂直に切断した場合の第2貫通孔の断面形状、及び/又は第2の層表面における第2貫通孔の形状としては、円形、楕円形、三角形、四角形、六角形、八角形やこれらの形状が複合された形状等が挙げられる。或いは、同一又は異なる複数の上記形状が互いに部分的に重なり合った形状であってもよい。これらの中でも、研磨屑が溜りやすい隅部を形成しないことから、円形が特に好ましい。
本発明の研磨パッドは、厚さ方向に対して垂直に切断した場合の第1貫通孔の断面形状と第2貫通孔の断面形状とが同じ形状を有していても異なる形状を有していてもよいが、同じ形状を有することが好ましい。これらの中でも、厚さ方向に対して垂直に切断した場合の第1貫通孔の断面形状と第2貫通孔の断面形状とが、いずれも円形であることが好ましい。
本発明の研磨パッドは、研磨表面側から厚さ方向に見た場合に、第1貫通孔と第2貫通孔とが少なくとも部分的に重なっている。すなわち、本発明の研磨パッドは、研磨パッドの研磨表面側から厚さ方向に見た場合に、第1貫通孔の外周部5’が第2貫通孔の外周部6’の一部又は全部を覆うようにして設けられている。好ましくは、本発明の研磨パッドは、研磨パッドの研磨表面側から厚さ方向に見た場合に、第1貫通孔の外周部5’が第2貫通孔の外周部6’の全部を覆うようにして設けられている(図2参照)。より好ましくは、第1貫通孔及び第2貫通孔がともに円柱形状であり、第1貫通孔の円柱中心軸と第2貫通孔の円柱中心軸とが一致する。
ここで、研磨表面側から厚さ方向に見た場合に、第1貫通孔と第2貫通孔が少なくとも部分的に重なっているとは、研磨表面側から厚さ方向に見た場合に、第1貫通孔の開孔位置と第2貫通孔の開孔位置とが少なくとも部分的に一致していることをいう。本発明の研磨パッドは、厚さ方向に見た場合に、第1貫通孔の開孔位置と第2貫通孔の開孔位置とが少なくとも部分的に一致しているため、第1貫通孔と第2貫通孔とが研磨パッドの厚さ方向につながっている。研磨表面側から厚さ方向に見た場合に第1貫通孔と第2貫通孔の位置が少なくとも部分的に重なっていることにより、第1貫通孔内に設けられた透明樹脂部材を介して第2貫通孔側から第1貫通孔側へと光を透過させることができ、研磨加工中の被研磨物の表面状態を光学的に検知することができる。
また、第1貫通孔5は、研磨パッドを研磨表面側から厚さ方向に見た場合に、第2の層3の一部(以下、第2の層の露出部7という)と第2貫通孔6の少なくとも一部とが露出されるように配置される。これにより、透明樹脂部材を、第1貫通孔内であって且つ第2の層3の第2貫通孔及び露出部上に配することができる。好ましくは、第1貫通孔5は、第1貫通孔を研磨表面側から見た場合に、第2の層3の一部と第2貫通孔の全てとが露出されるように配置される。
図1を参照すると、本発明の研磨パッド1の厚さ方向断面において、第1貫通孔5は、第2貫通孔6と露出部7上にある第1の層2に設けられている。
第2貫通孔は第2の層中に1個設けられていてもよく、互いに離間し且つ独立している2個以上の貫通孔が設けられていてもよい。第1貫通孔の個数と第2貫通孔の個数は等しいことが好ましい。複数の第1貫通孔と複数の第2貫通孔が設けられている場合、各第1貫通孔は、第2の層に設けられた各第2貫通孔とその露出部上に設けられていることが好ましい。
(円相当径)
本明細書及び特許請求の範囲において、第2貫通孔の円相当径は、研磨パッドの研磨表面側から研磨パッド厚さ方向に見たとき又は第2の層を厚さ方向に見たときの第2貫通孔の円相当径であり、研磨パッドの研磨表面側から研磨パッド厚さ方向に見た時の第2貫通孔の形状が円形である場合は直径に相当する。
本発明の研磨パッドは、研磨パッドの第2の層を厚さ方向に対して垂直に切断して得られる任意の第2の層断面における第2貫通孔の円相当径が、第2の層を厚さ方向に対して垂直に切断して得られる他の任意の第2の層断面における第2貫通孔の円相当径と等しい。従って、第2貫通孔の円相当径は第2の層の第1の層と接する側の表面における第2貫通孔の円相当径としてもよい。
本発明の研磨パッドは、第1貫通孔の円相当径が第2貫通孔の円相当径よりも大きい。第1貫通孔の円相当径が第2貫通孔の円相当径よりも大きい限り、第1貫通孔と第2貫通孔との大きさの違いに特に制限はないが、研磨屑による光路の塞ぎを十分に抑制でき且つ窓部材の剥離を防止できるという観点から、本発明の研磨パッドは、第1貫通孔の円相当径が第2貫通孔の円相当径よりも5~30mm大きいことが好ましく、6~25mm大きいことがより好ましく、7~20mm大きいことがさらにより好ましい。また、研磨パッドの研磨表面側から厚さ方向に見た場合に、第1貫通孔の外周部5’が第2貫通孔の外周部6’の全部を覆うようにして設けられており、且つ第1貫通孔の円相当径が第2貫通孔の円相当径よりも5~30mm大きいことが好ましく、6~25mm大きいことがより好ましく、7~20mm大きいことがさらにより好ましく、8~20mm大きいことがさらにより好ましく、9~20mm大きいことがさらにより好ましく、10~20mm大きいことがさらにより好ましい。また、研磨パッドの研磨表面側から厚さ方向に見た場合に、第1貫通孔の外周部5’が第2貫通孔の外周部6’の全部を覆うようにして設けられており、且つ第1貫通孔の円相当径が、第2貫通孔の円相当径の1.5~4倍であることが好ましく、2~4倍であることがより好ましく、2.5~3倍であることがさらにより好ましい。
また、本発明の研磨パッドは、研磨パッドの研磨表面側から研磨パッド厚さ方向に見たときに、第2貫通孔の外周部6’と第1貫通孔の外周部5’との最短距離(すなわち、第2貫通孔の外周部6’の任意の点と第1貫通孔の外周部5’の任意の点との間の最短距離)が0より大きいことが好ましく、最短距離が2~15mmであることがより好ましく、最短距離が3~12mmであることがさらにより好ましく、最短距離が4~10mmであることがさらに好ましい。
第1貫通孔と第2貫通孔との大きさの違いが上記範囲内であると、研磨中の遠心力により研磨スラリー及び研磨屑は第1貫通孔の外周側に移動するため研磨屑が光路を塞ぎにくい。従って、優れた光透過率を維持することができ、研磨中に安定した終点検出の信号強度を得ることができる。また、第2の層の露出部が十分に広いため、透明樹脂部材と第2の層との接着強度を保つことができ、窓部材の剥離を防止できる。
第1貫通孔の円相当径が第2貫通孔の円相当径より大きい限り第2貫通孔の円相当径に特に制限はないが、第2貫通孔の円相当径は1~20mmが好ましく、2~18mmがより好ましく、5~15mmがさらにより好ましい。
(第2の層の構成)
第2の層を構成するものとしては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン・プロピレン共重合体等のポリオレフィン系シート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系シート、塩化ビニル系シート、酢酸ビニル系シート、ポリイミド系シート、ポリアミド系シート、フッ素樹脂系シートや樹脂含浸不織布、不織布や織布等が挙げられる。また、第2の層は、スラリーが内部に浸透しない非多孔質なシートであることが好ましい。これら中でも、スラリーが内部に浸透しない非多孔質なシートであって、物理的特性(例えば、寸法安定性、厚み精度、加工性、引張強度)、経済性等の観点から、第2の層はポリエステル系シートがより好ましく、そのなかでもポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略記する。)製シートが特に好ましい。
第2の層と第1の層とを貼り合わせる方法としては、例えば、片面又は両面に粘着剤を塗着したPETシート等のシートを第2の層として用い、この粘着剤を介して第2の層と第1の層とを接着させることができる。粘着剤を塗着していないPETシート等のシートを第2の層として用意し、これとは別に第1の層と粘着剤とを用意して、粘着剤を介して第2の層と第1の層とを接着させることもできる。
(密度)
第2の層の密度は、第1の層の密度以上であることが好ましく、第1の層の密度よりも大きいことがより好ましい。第2の層の密度は、0.4~1.5g/cm3がより好ましく、0.5~1.4g/cm3がさらにより好ましく、0.6~1.35g/cm3がさらにより好ましい。第2の層の密度が上記範囲内であると、研磨パッド全体の剛性が高まり、研磨定盤貼付け作業や研磨パッドの剥離作業時の作業性が向上する。
(圧縮率)
第2の層の圧縮率は、第1の層の圧縮率以下であることが好ましく、第1の層の圧縮率よりも小さいことがより好ましい。第2の層の圧縮率は、0~10%がより好ましく、0~8%がさらにより好ましく、0~6%がさらにより好ましい。第2の層の圧縮率が上記範囲内であると、研磨層が第2の層に沈みこまず、圧縮性の高い研磨層のみで被研磨物の凹凸を吸収することができ、被研磨物全体の平坦性を向上させることができる。
(厚み)
第2の層の厚みに特に制限はないが、0.01~2.0mmが好ましく、0.02~2.0mmがより好ましく、0.1~2.0mmがさらにより好ましく、0.15~1.5mmがさらにより好ましく、0.2~1.0mmがさらにより好ましい。
本発明において、第1の層や第2の層がそれぞれ複層構造を有する場合には、複数の層同士を接着剤などを用いて、必要により加圧しながら接着・固定すればよい。この際用いられる接着剤に特に制限はなく、当技術分野において公知の接着剤の中から任意に選択して使用することが出来る。或いは、複数の層同士を加圧及び/又は加熱して直接接着・固定してもよい。
<3.透明樹脂部材>
本発明の研磨パッドは、透明樹脂部材、即ち窓部材を有する。透明樹脂部材を通して被研磨物に光を照射することにより、被研磨物が希望の表面特性や平面状態に到達した時点を検出することができる。
透明樹脂部材は、前記第1貫通孔内に配置される。好ましくは、第1貫通孔内であって且つ第2の層の第2貫通孔及び露出部上に配される。また、好ましくは、透明樹脂部材は、第2貫通孔内には配置されていない。
図1を参照すると、透明樹脂部材4は、厚さ方向断面で見た場合に、第1貫通孔5内であって、第2の層3の第2貫通孔6と露出部7上に設けられている。
透明樹脂部材は、第2の層の露出部と接着していてもよく、第1の層の第1貫通孔の側面と接着してもよく、その両方と接着していてもよい。好ましくは、透明樹脂部材は、第2の層の露出部と接着している。透明樹脂部材の接着には、接着剤を用いてもよく、両面テープを用いてもよく、透明樹脂部材と第1の層の側面及び/又は第2の層の露出部との間で直接接着させてもよい。
(透明樹脂部材の樹脂)
本発明の研磨パッドは透明樹脂部材(窓部材)を有する。透明樹脂部材を構成する樹脂は、光を透過させる程度の透明性を備えている限り特に制限はないが、波長400~700nmの全範囲で光透過率が20%以上である材料を用いることが好ましく、さらに好ましくは光透過率が50%以上の材料である。そのような材料としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、及びアクリル樹脂などの熱硬化性樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース系樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ハロゲン系樹脂(ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなど)、ポリスチレン樹脂、及びオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)などの熱可塑性樹脂、ブタジエンゴムやイソプレンゴムなどのゴム、紫外線や電子線などの光により硬化する光硬化性樹脂、及び感光性樹脂などが挙げられる。中でも、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂が0.1~0.5mmの厚みにおいて適度なハリを持ち、厚み精度に優れ、接着剤との相性が良いため好ましい。
透明樹脂部材の円相当径は第1貫通孔の円相当径以下である限り特に制限はないが、「第1貫通孔の円相当径の0.8倍」~「第1貫通孔の円相当径」の範囲内であることが好ましく、「第1貫通孔の円相当径の0.9倍」~「第1貫通孔の円相当径」の範囲内であることがより好ましく、「第1貫通孔の円相当径の0.95倍」~「第1貫通孔の円相当径」の範囲内であることがさらにより好ましく、第1貫通孔の円相当径と等しくてもよい。
透明樹脂部材は、連通孔を有さないことが好ましい。また、透明樹脂部材は、連続気泡を有さないことが好ましい。また、透明樹脂部材は、開孔を有さないことが好ましい。これにより、光透過性を向上させることができる。
(透明樹脂部材の上部位置)
本発明の研磨パッドは、研磨表面を上面とし第2の層の第1の層と接着している面とは反対側の面を下面とした場合に、透明樹脂部材4の最上部4’が溝8の最下部8’と同じかそれよりも低いことが好ましく、溝の最下部よりも低いことがより好ましい(図1、図3A)。すなわち、透明樹脂部材の最も研磨表面に近い位置が、第1の層に設けられた溝の最も深い位置(研磨表面から最も遠い位置)と同じであるか当該位置よりも低いことがより好ましい。
また、第1貫通孔は溝と接続されていても接続されていなくてもよいが、接続されていることが好ましい(図2、図3B)。図3Bは、図2の研磨パッドをA-A間で切断したときの端面を示したものであるが、被研磨物の研磨加工時に発生した研磨屑10は、遠心力により第1貫通孔の外周部に集まった後、第1貫通孔と接続されている溝8へと流出し得る。この結果、研磨屑が第一貫通孔内から排出されやすくなり、研磨屑が凝集して生じる研磨屑凝集塊の発生を防ぐことができ、研磨屑凝集塊に起因するスクラッチの発生を抑制しやすくなる。
溝8の最下部8’と透明樹脂部材4の最上部4’のギャップは0~300μmであることが好ましく、0超過~300μmであることがより好ましい。溝8の最下部8’と透明樹脂部材4の最上部4’のギャップが上記範囲内であると、溝の下部と透明樹脂部材の上部の段差が小さくなるため、第1貫通孔の外周側に移動した研磨屑がスラリーと共に溝に容易に流出しやすくなる。溝8の最下部8’と透明樹脂部材4の最上部4’のギャップは溝深さを調整することや、第1の層を2層以上とし、溝が形成されない2層目以上の層厚みにより調整することができる。
(利点)
本発明の研磨パッドは、透明樹脂部材の最上部が溝の最下部と同じかそれよりも低い。従って、研磨パッドを用いて被研磨物を研磨しても、透明樹脂部材が被研磨物と接触することがなく、透明樹脂部材由来の研磨傷が生じない。また、摩耗により透明樹脂部分が研磨表面と等しくなるまでの時間が長くなるため、研磨パッドの長寿命化につながる。さらに、一般に透明樹脂部材の最上部が研磨表面よりも低くなればなるほど(例えば、透明樹脂部材の最上部が溝の最下部よりも低くなると)、透明樹脂部材上の凹み部に移動してきた研磨屑が凹みの深さによってトラップされてしまい、排出されずに凹み部内に溜まってしまう。そのため、研磨屑が徐々に透明樹脂部材表面を塞いでしまい、時間を追うごとに安定な光検出が困難となる(図3C)。従って、上記の通り研磨特性の観点からは長寿命化が達成できても、光検出の観点からは長寿命化を達成することが難しいという問題がある。これに対し、本発明の研磨パッドは、図3A、図3Bに示すとおり、第1貫通孔5の円相当径が第2貫通孔6の円相当径よりも大きく、且つ溝8以上の大きな凹み部を第1貫通孔内に有するため、研磨時の遠心力11により第1貫通孔の外周側(すなわち、光検知領域外)に被研磨物9由来の研磨屑10を移動させることができ、時間が経っても光検知精度が低下しづらい。さらに、圧縮回復性に優れる第1の層が圧縮、開放される際の屈伸運動により第1貫通孔の外周側に集まった研磨屑の固着を抑制しやすく、さらに第1貫通孔内部でスラリーの流れができ、第1貫通孔外周側に寄せ集められた研磨屑がスラリーの流れに乗り排出されやすくなる。これにより経時的に安定な光検出が可能となる。その結果、研磨溝がなくなるまで研磨パッドを使用することができ、研磨特性の観点だけではなく光検出の観点からも長寿命化を達成することができる。
他方、特許文献1の研磨パッドは、研磨表面とほぼ同一平面に窓部材表面が存在しており、透明樹脂部材の上部を溝の下部よりも低くするという思想がない。従って、長寿命化を達成することが出来ない。また、研磨時の遠心力により第1貫通孔の外周側(すなわち、光検知領域外)に研磨屑を移動させるという思想がなく、仮に凹み部を設けたとしてもこの凹み部に溜まった研磨屑による光検知精度の低下を防止する手段を容易に想起できない。
特許文献2の研磨パッドは、窓部材表面が研磨表面よりも低い位置にあるため、窓部材と被研磨物の接触により生じる研磨傷の発生を防止することはできる。しかしながら、第1貫通孔よりも円相当径の小さい第2貫通孔を設けておらず、窓部材の上部を研磨表面に設けられた溝よりも低くするという思想や、研磨時の遠心力により第1貫通孔の外周側(すなわち、光検知領域外)に研磨屑を移動させるという思想もない。従って、光検知精度の低下を防止する手段を容易に想起できず、本発明ほどの長寿命化を達成することができない。
本発明の研磨パッドは、例えば、下記の方法により製造することができる。
<<研磨パッドの製造方法>>
本発明の研磨パッドの製造方法は、第1の層、第2の層及び透明樹脂部材を用意する工程、前記第1の層に第1貫通孔を設ける工程、前記第1の層と第2の層とを貼り合わせる工程、前記第2の層に前記第1貫通孔よりも小さい円相当径を有する第2貫通孔を設ける工程、及び前記第1貫通孔内に前記透明樹脂部材を設ける工程を含む。
各工程について説明する。
<1.第1の層、第2の層、透明樹脂部材を用意する工程>
本工程において第1の層、第2の層、透明樹脂部材を用意する。第1の層、第2の層及び透明樹脂部材としては、それぞれ上記のものを挙げることができる。第1の層、第2の層、透明樹脂部材は、それぞれ市販のものを用いてもよく、製造したものを用いてもよい。市販の透明樹脂部材としては、ポリエステル樹脂からなる三菱ケミカル株式会社製「ダイアホイルT910E」、「ダイアホイルT600E」、東洋紡株式会社製「コスモシャインA4300」、「コスモシャインA2330」、「コスモシャインTA017」、「コスモシャインTA015」、「コスモシャインTA042」、「コスモシャインTA044」、「コスモシャインTA048」、「ソフトシャインTA009」ポリメチルメタクリレート樹脂からなる三菱ケミカル株式会社製「アクリプレンHBS006」、「アクリプレンHBXN47」、「アクリプレンHBS010」、帝人化成株式会社製「パンライトフィルムPC-2151」、株式会社カネカ製「サンデュレンSD009」、「サンデュレンSD010」、ポリカーボネート樹脂からなる住友化学株式会社製「C000」、帝人化成株式会社製「ユーピロンH-3000」、アクリル樹脂/ポリカーボネート樹脂からなる住友化学株式会社製「C001)脂環式ポリオレフィン樹脂からなる日本ゼオン株式会社製「ゼオノアZF14」、「ゼオノアZF16」JSR株式会社製「アートンフィルム」等を市販品として入手することができる。第1の層を製造する場合は、例えば、特許第5421635号、特許第5844189号を参照してポリウレタン樹脂を湿式成膜し、ポリエチレンテレフタレート樹脂からなる可撓性シートと貼り合わせることで製造することができる。
第1の層を製造後、その研磨表面にスキン層が存在する場合には当該スキン層をバフ処理してもよい。バフ処理(研削処理)する場合には、サンドペーパーなどを用いて、研磨表面を50~300μm、好ましくは80~250μm程度研削すればよい。
また、第1の層を製造した後、透明樹脂部材の最上部が溝の最下部と同じ位置かそれよりも低くなるように、研磨表面に溝を設ける。溝は、例えば、エンボス加工を施すことにより得ることができる。溝を設ける工程は、下記工程2~4の前であってもよく、工程2~4の後であってもよいが、工程2~4の前であることが好ましい。
<2.第1の層に第1貫通孔を設ける工程>
本工程において、第1の層に第1貫通孔を設ける。第1貫通孔は、例えば、円形、楕円形等の抜型(好ましくは円形の抜型)で第1の層の厚さ方向に穴を開けることにより設けることができる。抜型を用いることにより、研磨パッドの第1の層を厚さ方向に対して垂直に切断して得られる任意の第1の層断面における第1貫通孔の円相当径が、第1の層を厚さ方向に対して垂直に切断して得られる他の任意の第1の層断面における第1貫通孔の円相当径と同一とすることができる。
<3.第1の層と第2の層とを貼り合わせる工程>
本工程において、第1の層と第2の層を貼り合わせる。第1の層と第2の層は、直接接着させてもよく、例えば、接着剤を用いて接着させてもよい。また、第2の層を構成する材料が片面又は両面テープの形態である場合には、片面又は両面テープの粘着面を利用して第1の層と第2の層とを接着させていてもよい。
本工程は、上記工程2「第1の層に第1貫通孔を設ける工程」の前であってもよく、上記工程2の後であってもよい。また、本工程は、下記工程4「第2の層に第1貫通孔よりも小さい円相当径を有する第2貫通孔を設ける工程」の前であってもよく、下記工程4の後であってもよい。好ましくは、本工程は、上記工程2の後であって且つ下記工程4の前である。
<4.第2の層に第1貫通孔よりも小さい円相当径を有する第2貫通孔を設ける工程>
本工程において、第2の層に第1貫通孔よりも小さい円相当径を有する第2貫通孔を設ける。第2貫通孔は、例えば、第1貫通孔を設けるときに用いたものよりも円相当径の小さい円形、楕円形等の抜型(好ましくは円形の抜型)で第2の層の厚さ方向に穴を開けることにより設けることができる。抜型を用いることにより、研磨パッドの第2の層を厚さ方向に対して垂直に切断して得られる任意の第2の層断面における第2貫通孔の円相当径が、第2の層を厚さ方向に対して垂直に切断して得られる他の任意の第2の層断面における第2貫通孔の円相当径と同一とすることができる。
本工程は、上記工程2「第1の層に第1貫通孔を設ける工程」の前であってもよく、上記工程2の後であってもよい。また、本工程は、上記工程3「第1の層と第2の層とを貼り合わせる工程」の前であってもよく、上記工程3の後であってもよい。好ましくは、本工程は、上記工程2の後であって且つ上記工程3の後である。
上記1~4の工程を全て終えると、研磨パッドは、研磨表面側から見た場合に、第1貫通孔と第2貫通孔とが少なくとも部分的に重なっており、第2貫通孔の少なくとも一部と第2の層の一部とが露出していることとなる。
<5.第1貫通孔内に透明樹脂部材を設ける工程>
本工程において、第1貫通孔内に透明樹脂部材を設ける。第1貫通孔内に透明樹脂部材を設ける方法としては、例えば、接着剤や両面テープを用いて第1貫通孔内であって第2の層の露出部上に透明樹脂部材を接着させることが挙げられる。上記3の工程で用いた接着剤やテープの粘着面が第2の層の露出部上に存在する場合は、その接着剤や粘着面を透明樹脂部材の露出部上への接着にそのまま利用してもよいし、上記3の工程で用いたもの以外に新たに接着剤を第2の層の第1開口内の前記露出部上及び/又は第1貫通孔側面に塗着して、透明樹脂部材を露出部上に及び/又は第1貫通孔側面に接着させてもよい。
本工程は、上記工程2「第1の層に第1貫通孔を設ける工程」の後であればよく、上記工程3「第1の層と第2の層とを貼り合わせる工程」の前であっても、上記工程3の後であってもよい。また、本工程は、上記工程4「第2の層に第1貫通孔よりも小さい円相当径を有する第2貫通孔を設ける工程」の前であってもよく、上記工程4の後であってもよい。好ましくは、本工程は、上記工程3の後であって且つ上記工程4の後である。
以上により、本発明の研磨パッドを得ることができる。
本発明の研磨パッドを使用するときは、研磨パッドを第1の層の研磨面が被研磨物と向き合うようにして研磨機の研磨定盤に取り付ける。そして、スラリーを供給しつつ、研磨定盤を回転させて、被研磨物の加工表面を研磨する。このときの遠心力により、研磨加工中に発生して第1貫通孔内に入り込んだ研磨屑が、第1貫通孔の側面側に移動する。これにより、透明樹脂部材の中心付近には研磨屑が堆積しにくくなり、長期間に渡り光検出することが可能となる。
本発明の研磨パッドにより加工される被研磨物としては、ベアシリコン、半導体デバイスが挙げられる。中でも、本発明の研磨パッドは、半導体デバイスの研磨、特に仕上げ研磨に特に適しており好ましい。
本発明の研磨パッドを用いて、例えば、光源から透明樹脂部材に通して光を基板に照射し、基板の表面から反射によって生成された干渉信号を解析することにより、被研磨物を研磨しつつ、半導体ウエハ等の被研磨物の表面特性や平面状態に到達した時点を光学的に検知することができる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
[実施例1]
100%モジュラス7.8MPaのポリエステル系ポリウレタン樹脂の(30質量部)及びDMF(70質量部)を含む溶液100質量部に、別途DMF60質量部、水5質量部を添加し、混合することにより樹脂含有溶液を得た。
得られた樹脂含有溶液を、濾過することにより、不溶成分を除去した。前記溶液をポリエステルシート上にナイフコータを用いて塗布厚みが0.8mmとなるようキャストした。その後、樹脂含有溶液をキャストしたポリエステルシートを凝固浴(凝固液は水)に浸漬し、該樹脂含有溶液を凝固させた後、ポリエステルシートを剥離し洗浄・乾燥させて、ポリウレタン樹脂シートを得た。得られたポリウレタン樹脂シートの表面をバフ処理し厚みを0.73mmとしたのち、バフ処理面と反対面側に厚み0.188μmのPET製の樹脂基材を接着剤で貼り合わせ、ポリウレタン樹脂シートの表面側からエンボス加工を施し、表面に溝幅を1mm、溝間隔を4mm、溝深さを0.45mmとした断面矩形状で格子パターンの溝を設けた。溝処理面側の研磨パッドの中心となる位置から研磨パッドの半径の1/2となる位置の同心円上に、直径18mmの円形抜型で等間隔且つ互いに独立して3か所に穴を開け、第1貫通孔を設けた。上記樹脂基材のポリウレタン樹脂シートが貼り合わされていない面側に、第2の層として片側に離型紙を有する厚さ約0.1mmの両面テープ(PET基材厚み0.023mm、PET基材の表面及び裏面における粘着性成分厚みは共に0.04mm)を接着し、直径18mmの第1貫通孔に直径9mmの円形抜型を嵌め込み、両面テープと離型紙を貫通させるよう第2貫通孔を開けた。この時、第1貫通孔の中心と第2貫通孔の中心が略同一となるよう穴あけを行った。透明樹脂部材としてアクリル樹脂シート(三菱ケミカル(株)製、アクリプレン HBS006、厚み150μm)を用意し、直径17mmとなるよう3枚切り出し、第1貫通孔内にリング状に露出した両面テープと透明樹脂部材を接着させ研磨パッドを製造した。
[実施例2]
直径25mmの円形抜型を使用して第1貫通孔を3か所形成し、透明樹脂部材として直径24mmのアクリル樹脂シート(三菱ケミカル(株)製、アクリプレン HBS006、厚み150μm)を3枚用意し、第1貫通孔内にリング状に露出した両面テープと透明樹脂部材を接着させたこと以外は、実施例1と同様にして研磨パッドを製造した。
上記のとおり製造した研磨パッドは、第1貫通孔の円相当径が第2貫通孔の円相当径よりも大きいため、研磨加工時の遠心力によって研磨屑をスラリーと共に第1貫通孔の外周部付近に移動させることができる。従って、透明樹脂部材の凹みが深く研磨屑が溜まりやすい構造であっても、光検出部を塞ぐことがなく、長時間に渡って研磨パッドを使用することができる。また、実施例2は実施例1よりも、第2貫通孔の外周部と第1貫通孔の外周部の距離が大きいため、第1貫通孔の外周部付近に移動した研磨屑と光検出部との距離を大きくすることができ、光検出部の透光性をより確実なものとすることができる。また、透明樹脂部材の最上部が溝の最下部よりも低いため、透明樹脂部材に起因するスクラッチの問題が発生しにくく、溝がなくなるまで研磨パッドを使用することができるため、長寿命化を図ることができる。
本発明によれば、窓部材由来の研磨傷を防止するとともに研磨屑による光検知精度の低下を防止できる研磨パッドを得ることができる。よって、本発明の研磨パッドは、産業上極めて有用である。
1…研磨パッド
2…第1の層
3…第2の層
4…透明樹脂部材
4’…透明樹脂部材の最上部
5…第1貫通孔
5’…第1貫通孔の外周部
6…第2貫通孔
6’…第2貫通孔の外周部
7…露出部
8…溝
8’…溝の最下部
9…被研磨物
10…研磨屑
11…遠心力

Claims (8)

  1. 第1貫通孔を有する第1の層と、
    第1貫通孔よりも小さい円相当径を有する第2貫通孔を有する第2の層と、
    透明樹脂部材と、
    を含む研磨パッドであって、
    前記第1の層は被研磨物を研磨するための研磨表面を有し、前記第1の層の研磨表面とは反対側の面には前記第2の層が接着されており、
    前記研磨パッドを研磨表面側から厚さ方向に見た場合に、第1貫通孔の外周部が第2貫通孔の外周部を覆うようにして設けられており
    前記第1貫通孔の円相当径が前記第2貫通孔の円相当径より5~30mm大きく、
    前記透明樹脂部材は、前記第1貫通孔内に設けられており、
    前記第1の層の研磨表面には溝が設けられており、且つ
    前記研磨表面を上面とし前記第2の層の前記第1の層と接着している面とは反対側の面を下面とした場合に、前記透明樹脂部材の最上部が前記溝の最下部りも低い、前記研磨パッド。
  2. 研磨パッドの研磨表面側から研磨パッド厚さ方向に見た場合の前記第1貫通孔の形状及び前記第2貫通孔の形状が共に円形である、請求項1に記載の研磨パッド。
  3. 前記第2の層の密度が前記第1の層の密度よりも大きい、請求項1又は2に記載の研磨パッド。
  4. 前記第1の層の密度が0.1~0.5g/cm3である、請求項1~のいずれか1項に記載の研磨パッド。
  5. 前記第1の層の圧縮弾性率が50~100%である、請求項1~のいずれか1項に記載の研磨パッド。
  6. 前記第1の層の圧縮率が1~60%である、請求項1~のいずれか1項に記載の研磨パッド。
  7. 前記溝が、エンボス溝である、請求項1~のいずれか1項に記載の研磨パッド。
  8. 第1の層、第2の層及び透明樹脂部材を用意する工程、
    前記第1の層に第1貫通孔を設ける工程、
    前記第1の層と前記第2の層とを貼り合わせる工程、
    前記第2の層に前記第1貫通孔よりも小さい断面積を有し、かつ前記第1貫通孔の円相当径より5~30mm小さい円相当径を有する第2貫通孔を設ける工程であって、研磨パッドを研磨表面側から厚さ方向に見た場合に、前記第2貫通孔の外周部が前記第1貫通孔の外周部に覆われるように設ける工程、及び
    前記第1貫通孔内に前記透明樹脂部材を設ける工程、
    を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の研磨パッドの製造方法。
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