JP7346850B2 - 車両 - Google Patents

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Description

本発明は、車両に関する。
従来から、走行コストを抑制する車両が知られている。例えば、特許文献1の構成では、EV(Electric Vehicle)走行に必要な電力コストと、HEV(Hybrid Vehicle)走行に必要な燃料コストが検討され、走行コストの抑制が図られている。
特開2011-915号公報
EV走行とHEV走行を併用する場合、走行が完了する時の電池の充電率を考慮しなければ、走行コストを十分に抑制することが難しい。
本発明の目的は、走行コストを十分に抑制できる車両を提供することにある。
かかる目的を達成するために、本発明の車両は、外部から充電された電力を放電して第1の駆動力を発生させる電池と、燃料を燃焼させて第2の駆動力を発生させるエンジンと、電池とエンジンとを制御する制御部と、を有している。制御部は、算出部と、判断部と、選択部を備えている。算出部は、入力された走行ルートに対応する走行データを参照して車速毎の走行距離に基づく複数の走行区間からなる走行パターンを算出する。判断部は、複数の走行区間の全てを第1の駆動力を使用して走行した場合に電池の充電率が所定値未満になるか否かを判断する。選択部は、判断部によって充電率が所定値未満になると判断された場合に、複数の走行区間のうち相対的に車速が低く区分された走行区間の走行に第1の駆動力を選択する。制御部は、第1の駆動力によって走行する第1の車速領域と、第2の駆動力によって走行し第1の車速領域よりも高速の第2の車速領域とを遷移させる閾値となる遷移車速を上下させて、複数の走行区間のうち相対的に車速が低く区分された走行区間を遷移車速よりも低い車速で走行させ、走行ルートを走行した後の充電率を所定値以上に保つように制御し、制御部は、遷移車速を、目的地に到着する時に充電率が所定値になるように設定し、目的地に到着する時にちょうど充電率が下限値となるような遷移車速の設定手順は、走行ルートから走行パターンを算出し、走行パターンを車速順に並べなおし、各車速区分の消費電力量を各車速区分の電費から算出し、充電率と消費電力量を比較して、充電率を使い切れる遷移車速を算出する。
本発明によれば、走行コストを十分に抑制できる車両を実現できる。
実施形態の車両の構成を示す模式図。 実施形態の走行モードを含む様々な走行モードについて、車両の速度と出力の関係を示すグラフ。 EV走行モードとHEV走行モードにおける走行コストについて、車両の速度とエネルギー消費量(電費及び燃費)の関係を示すグラフ。 図3Aの状態における車両の速度と走行距離単価の関係を示すグラフ。 EV走行モードにおける電費について、WLTCモードに基づく車両の速度区分と電費の関係を示している。 EV走行モードとHEV走行モードの遷移の第1例について、車両の走行時間と車速の関係を示すグラフ。 図5Aの状態における車両の走行時間と電池のSOCの関係を示すグラフ。 EV走行モードとHEV走行モードの遷移の第2例について、車両の走行時間と車速の関係を示すグラフ。 図6Aの状態における車両の走行時間と電池のSOCの関係を示すグラフ。 EV走行モードの優先度について、WLTCモードの4サイクル(S1、S2、S3、S4)における、走行時間と20km/h毎の車速区分に区切った車速の関係を示すグラフ。 20km/h毎の車速区分に区切った消費電力における、走行距離と車速の関係を示すグラフ。 EV走行モードとHEV走行モードの遷移車速を変えた場合における、走行時間と車速及びSOCの関係を示すグラフ。 EV走行モードとHEV走行モードのトータルコストにおける、HEV走行モードへの遷移車速と走行コストの関係を示すグラフ。 EV走行モードとHEV走行モードの遷移における制御の一例を示すフローチャート。 第1実施形態の車両の走行について、車両が、地点Aから地点Bまで市街地の一般道路を走行し、地点Bから地点Cまで高速道路を走行し、かつ、地点Cから地点Dまで郊外の一般道路を走行する走行ルートを示す模式図。 図9Aに示す走行ルートにおける走行履歴に基づき、算出した走行パターンの走行距離[km]と車速[km/h]の関係を示すグラフ。 第2実施形態の車両の走行について、車両が、地点Aから地点Bまで市街地の一般道路を制限速度で定常走行し、地点Bから地点Cまで高速道路を制限速度で定常走行し、かつ、地点Cから地点Dまで郊外の一般道路を制限速度で定常走行する走行ルートを示す模式図。 図10Aに示す走行ルートでの制限速度に基づき、走行距離と車速の関係を示すグラフ。 第3実施形態の車両の走行について、車両が、地点Eから地点Fまでの走行において、今回の走行履歴を次回の走行に反映させる状態を示す模式図。 図11Aの走行ルートに基づいて、EV走行モードとHEV走行モードの遷移車速を例えば100km/hに設定した場合(今回)における、走行距離と車速の関係を示すグラフ。 図11Bに示す今回の走行時の交通状況を考慮して、EV走行モードとHEV走行モードの遷移車速を例えば80km/hに変更した場合(次回)における、走行距離と車速の関係を示すグラフ。
[実施形態の車両1の構成]
図1を参照して、実施形態の車両1の構成を説明する。図1は、実施形態の車両1の構成を示している。
車両1は、HEV車両である。車両1は、電池10からインバータ20を介して電力が給電(放電)されるモータ30と、ガソリンタンク40からガソリンが供給されるエンジン50によって駆動される。電池10は、外部から充電された電力を放電して第1の駆動力を発生させる。電池10は、例えば、充放電可能なリチウムイオン二次電池等からなる。エンジン50は、ガソリン(燃料)を燃焼させて第2の駆動力を発生させる。制御部60は、電池10とエンジン50とを制御する。
車両1は、制御部60の制御に基づきモータ30によって駆動される場合、エンジン50が停止され、かつ、クラッチがタイヤの駆動機構から開放された状態において、電池10によってモータ30を作動させる。この場合、モータ30からタイヤにトルクが伝達される。一方、車両1は、制御部60の制御に基づきエンジン50によって駆動される場合、クラッチがタイヤの駆動機構に結合された状態において、ガソリンによってエンジン50を作動させる。この場合、エンジン50からタイヤにトルクが伝達される。
制御部60は、算出部61と、判断部62と、選択部63を備えている。
算出部61は、入力された走行ルートに対応する走行データを参照して車速毎の走行距離に基づく複数の走行区間からなる走行パターンを算出する。走行ルートは、車内に設置されているカーナビゲーション又は車内に持ち込まれる情報携帯端末から入力される。情報携帯端末は、スマートフォーン又は携帯型カーナビゲーション等である。走行データは、本人又は他人が走行した走行ルートにおける車速と当該車速で走行した走行区間の走行履歴を含んでいる。
判断部62は、複数の走行区間の全てを第1の駆動力(電池10から給電されるモータ30の駆動力)を使用して走行した場合に電池10の充電率(SOC:State Of Charge)が下限値(所定値)未満になるか否かを判断する。下限値は、発電機を作動させてエンジン50を始動させるために必要な最小限の充電率である。
選択部63は、判断部62によってSOCが下限値未満になると判断された場合に、複数の走行区間のうち相対的に車速が低く区分された走行区間の走行に電池10による駆動力を選択する。
特に、制御部60は、モータ30の駆動力によって走行する第1の車速領域と、第2の駆動力(エンジン50の駆動力)によって走行し第1の車速領域よりも高速の第2の車速領域とを遷移させる閾値となる遷移車速Vfcを上下させて、複数の走行区間のうち相対的に車速が低く区分された走行区間を遷移車速Vfcよりも低い車速で走行させ、走行ルートを走行した後のSOCを下限値以上に保つように制御する。ここで、制御部60は、電池10の充電に必要な電気代と、エンジン50に必要なガソリン代の和が最小になるように遷移車速Vfcを上下させる。更に、制御部60は、遷移車速Vfcを、目的地に到着する時に充電率が所定値になるように設定する。
又、制御部60は、判断部62によって複数の走行区間の全てを電池10の駆動力を使用して走行した後のSOCが下限値未満になると判断された場合に、選択部63に対して相対的に車速が低く区分された1以上の走行区間の走行にそれぞれ電池10の駆動力を選択させて、走行ルートを走行した後のSOCを下限値以上に保つように制御する。又、制御部60は、判断部62によって複数の走行区間の全てを電池10の駆動力を使用して走行した後のSOCが下限値以上に保たれると判断された場合に、複数の走行区間の全てを電池10の駆動力を使用して走行するように制御する。
制御部60は、ROM(Read Only Memory)と、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)を含んでいる。
[様々な走行モード]
図2を参照して、様々な走行モードを説明する。図2に、実施形態の走行モードを含む様々な走行モードについて、車両1の速度[km/h]と出力[kW]の関係を示している。
EV走行モードでは、電池10から給電(放電)されるモータ30を使用して、ガソリンが供給されるエンジン50を使用することなく、車両1を走行させる。EV走行モードは、例えば、渋滞が発生し易い市街地の一般道を走行する場合において、相対的に低速で走行することを想定している。ここで、EV走行モードからHEV走行モードに遷移させる場合、発電機を作動させてエンジン50を始動させるための始動電力Wbが必要である。始動電力は、例えば、10kWである。このため、電池10は、最大出力[kW]から10kWを除いた電力を、モータ30に供給する。したがって、図2では、始動電力Wbを-10kWと表している。換言すると、電池10は、HEV走行モードのために、常に10kWの電力を確保している。
特に、EV走行モードでは、車両1が停車しているときに外部の給電設備等から電池10に充電され、車両1が走行しているときに電池10からモータ30に放電されることによって、車両1の走行中に電池10のSOCが変動(減少)する構成を想定している。HEV走行モードの場合、EV走行モードの場合と比べて、SOCの変動(減少)は著しく少ない。このように、電池10は、車両1の外部から充電された電力によって走行するCD(Charge Depleting)レンジで主に使用されることを想定している。
シリーズ走行モードでは、一般的に、モータ30を用いて車両1を走行させつつ、電池10の容量が低下した場合や、負荷が増加して高電力を必要とする場合等にエンジン50を併用する。シリーズ走行モードは、EV走行モードと比較して、車両1の出力を高めることができ、更に、SOCを所定の値に維持できる。
パラレル走行モードでは、エンジン50を用いて車両1を走行させ、必要に応じて電池10から給電されるモータ30を併用する。パラレル走行モードは、EV走行モードやシリーズ走行モードと比較して、車両1の出力及び速度を高めることができる。パラレル走行モードは、例えば、高速道路や渋滞していない郊外の一般道路を比較的長い距離で走行する場合において、相対的に高速で走行することを想定している。
[実施形態の走行モード]
図2を参照して、実施形態の走行モードを説明する。
実施形態では、図2に示すように、一点鎖線の領域で示すEV走行モードと、二点鎖線の領域で示すHEV走行モードが使用される。車両1の駆動源には、EV走行モードの場合にモータ30が使用され、HEV走行モードの場合にモータ30とエンジン50が使用される。ここで、実施形態におけるHEV走行モードは、パラレル走行モードであるが、シリーズ走行モードを含めることもできる。実施形態におけるHEV走行モードは、EV走行モードと比較して、車両1の速度が相対的に高いが、車両1の最高出力は同等である。
実施形態では、図2に示すように、EV走行モードとHEV走行モードが、遷移車速Vfcを境にして切り替えられる。車両1の速度が、遷移車速Vfc未満の場合にはEV走行モードが優先的に選択され、遷移車速Vfc以上の場合にはHEV走行モードが優先的に選択される。
[EV走行モードとHEV走行モードにおける走行コスト]
図3A及び図3Bを参照して、EV走行モードとHEV走行モードにおける走行コストを説明する。
図3Aに、EV走行モードとHEV走行モードにおける走行コストについて、車両1の速度[km/h]とその車速で定常走行した場合のエネルギー消費量(電費[km/kWh]及び燃費[km/L])の関係を示している。定常走行とは、走行抵抗とつり合う駆動力で走行している状態をいう。図3Bに、図3Aの状態における車両1の速度[km/h]と走行距離単価[km/円]の関係を示している。
ここで、図3A及び図3Bでは、EV走行モードのグラフを一点鎖線で示し、HEV走行モードのグラフを二点鎖線で示している。図3Aでは、EV走行モードのエネルギー消費量を電費で示し、HEV走行モードのエネルギー消費量を燃費で示している。図3A及び図3Bにおいて、車速Vaは約140km/hであり、一例として、制限速度の上限が比較的高い外国の高速道路を走行する場合が想定される。同様に、車速Vbは約20km/hであり、一例として、渋滞している一般道路を走行する場合が想定される。同様に、車速Vcは約10km/hであり、一例として、工事等によって走行が制限されている一般道路を徐行して走行する場合が想定される。
図3Aに示すように、EV走行モードは、車速Vaから車速Vbまでの領域において、低速であるほど電費が良い。EV走行モードでは、電池10の充電に必要とする電気代を25円/kWhと想定している。一方、図3Aに示すように、HEV走行モードは、車速Vaから車速Vbまでの領域において、燃費が一定の範囲内で変動している。したがって、HEV走行モードは、EV走行モードと異なり、車速と燃費に規則性が無い。HV走行モードでは、エンジン50の作動に必要とするガソリン代を146円/Lと想定している。
図3Bに示すように、EV走行モードは、車速Vaから車速Vbまでの領域において、低速であるほど走行距離単価が安くなる。換言すると、EV走行モードは、相対的に高速である車速Vaから相対的に低速である車速Vbに向かってグラフが上昇しており、単価[円]当たり走行できる距離[km]が増加している。したがって、EV走行モードは、車速が低いほど、車両1の走行コストが良くなる。一方、図3Bに示すように、HEV走行モードは、車速Vaから車速Vbまでの領域において、走行距離単価が一定の範囲内で変動している。したがって、HEV走行モードは、EV走行モードと異なり、車速と走行コストに規則性が無い。
ここで、図3Bに示すように、走行コストの算出例1として、電気代を25円/kWh及びガソリン代を146円/Lと想定した場合、車速Vaから車速Vcまでの全ての領域において、EV走行モードの走行コストがHEV走行モードの走行コストよりも安い。これにより、同じ費用の場合、EV走行モードは、HEV走行モードよりも、車両1を相対的に長距離にわたって走行できる。EV走行モードとHEV走行モードにおける走行コストの差は、車速Vaから車速Vbまでの領域において、低速であるほど大きい。
又、図3Bに示すように、走行コストの算出例2として、電気代を50円/kWh及びガソリン代を100円/Lと想定した場合、EV走行モードの走行コストとのHEV走行モードの走行コストが、閾値車速Vthを境にして逆転する。走行コストの第2例では、走行コストの第1例と比較して、電気代が2倍に上がり、ガソリン代が約0.7倍に下がった状態を想定している。閾値車速Vthから低速側の車速Vcまでの領域では、EV走行モードの走行コストが、HEV走行モードの走行コストよりも安い。EV走行モードとHEV走行モードにおける走行コストの差は、閾値車速Vthから車速Vbまでの領域において、低速であるほど大きい。一方、閾値車速Vthから高速側の車速Vaまでの領域では、HEV走行モードの走行コストが、EV走行モードの走行コストよりも安い。
[EV走行モードにおける電費]
図4を参照して、EV走行モードにおける電費を説明する。図4に、EV走行モードにおける電費について、WLTCモードに基づく車両1の車速区分[km/h]と電費[km/kWh]の関係を示している。
図4に示すように、電費は、0以上20未満、20以上40未満、40以上60未満、60以上80未満、80以上100未満、100以上120未満及び120以上140未満の車速区分[km/h]で区切って表されている。EV走行モードにおける電費は、基本的に、低い速度区分ほど良い。具体的には、電費は、0以上20未満の車速区分の場合、例えば、20以上40未満、40以上60未満及び60以上80未満の3つの車速区分の場合と比較して約2倍以上良い。同様に、電費は、0以上20未満の車速区分の場合、例えば、100以上120未満の車速区分の場合と比較して、約3倍良い。
[EV走行モードとHEV走行モードの遷移]
図5A及び図5Bを参照して、EV走行モードとHEV走行モードの遷移の第1例を説明する。
図5Aに、EV走行モードとHEV走行モードの遷移の第1例について、車両1の走行時間[sec]と車速[km/h]の関係を示している。図5Bに、図5Aの状態における車両1の走行時間[sec]と電池10のSOC[%]の関係を示している。
第1例では、所定の遷移車速Vfcを基準にして、EV走行モードとHEV走行モードを相互に遷移させる。
車両1が、図5Aに示すように、WLTCモードに基づく4サイクル{1サイクル(S1)、2サイクル(S2)、3サイクル(S3)及び4サイクル(S4)}を、1サイクル毎に4つの車速領域K1、K2、K3及びK4(K1<K2<K3<K4)の順番で、合計2時間(2×60×60=7200秒)かけて走行することを想定している。
図5Aに示すように、第1例において、遷移車速Vfcは、一例として、80km/hに設定されている。この場合、車両1が加速して、遷移車速Vfcが80km/h以上になった場合、車両1をEV走行モードからHEV走行モードに遷移させる。一方、車両1が減速して、遷移車速Vfcが80km/h未満になった場合、車両1をHEV走行モードからEV走行モードに遷移させる。
図5Bに示すように、第1例における遷移車速Vfcの設定では、車両1がWLTCモードに基づく4サイクル(S1、S2、S3及びS4)の走行を終えるまで、電池10のSOCを下限値に到達させないことを前提条件にしている。この前提条件を満たす場合、車両1は、図5A及び図5BにおけるEVとHEVの領域に示すように、走行を終えるまで電池10を断続的に使用して、エンジン50の始動のために必要な電池容量を残しつつ、その電池10の使用可能な電池容量を使い切ることができる。
図6A及び図6Bを参照して、EV走行モードとHEV走行モードの遷移の第2例を説明する。
図6Aに、EV走行モードとHEV走行モードの遷移の第2例について、車両1の走行時間[sec]と車速[km/h]の関係を示している。図6Bに、図6Aの状態における車両1の走行時間[sec]と電池10のSOC[%]の関係を示している。
第2例では、電池10のSOCが下限値に到達する所定の走行時間Tpを基準にして、EV走行モードからHEV走行モードに遷移させる。
車両1が、図6Aに示すように、WLTCモードに基づく4サイクル(S1、S2、S3及びS4)を、1サイクル毎に4つの車速領域K1、K2、K3及びK4(K1<K2<K3<K4)の順番で、合計2時間かけて走行することを想定している。
図6Aに示すように、第2例において、走行時間Tpは、電池10のSOCが下限値に到達する時間である。第2例では、車両1を車速によらずEV走行モードで走行させ続け、電池10のSOCが下限値に到達した後、換言すると走行時間Tpに到達した後、車両1を車速によらずHEV走行モードで走行させ続ける。第2例において、それ以外の走行条件は、図5Aを参照して上記した第1例と同様である。
図6Bに示すように、第2例では、車両1がWLTCモードに基づく4サイクル(S1、S2、S3及びS4)の走行の途中に、電池10のSOCが下限値に到達する。このため、車両1は、図6A及び図6BにおけるEVとHEVの領域に示すように、例えば3サイクル中にエンジン50の始動のために必要な電池容量を残しつつ、その電池10の使用可能な電池容量を使い切った後、HEV走行モードのみで走行することになる。
[EV走行モードの優先度]
図7A、図7B、図7C及び図7Dを参照して、EV走行モードの優先度を説明する。
図7Aは、EV走行モードの優先度について、例としてWLTCモードの4サイクル(S1、S2、S3、S4)における、走行時間[sec]と20km/h毎の車速区分に区切った車速[km/h]の関係を示している。図7Bは、WLTCモードの4サイクル(S1、S2、S3、S4)を相対的に低い車速毎に走行ルートを並べ直した状態における、走行距離[km]と車速[km/h]の関係を示している。図7Bは、20km/h毎の車速区分に区切って電費から算出した消費電力[kWh]も示している。図7Cは、EV走行モードとHEV走行モードの遷移車速Vfcを変えた場合における、走行時間[sec]と車速[km/h]の関係を示している。図7Dは、EV走行モードとHEV走行モードのトータルコストにおける、EV走行モードへの遷移車速Vfc[km/h]と走行コスト[km/円]の関係を示している。
図7Aに示すように、WLTCモードに基づく4サイクル(S1、S2、S3及びS4)が、合計2時間の走行時間で表されている。1サイクル毎に、30分の走行時間が設定され、4つの車速領域K1、K2、K3及びK4によって区切られている。車速領域の高低は、K1<K2<K3<K4で表される。走行ルートは、図7A等に表された4サイクルに相当する。走行ルートに対応する走行データは、コネクティッド等によって入手される走行履歴である。
図7Bに示すように、図7Aの走行時間と車速のグラフから車速毎の走行距離に基づいて、横軸の走行時間を走行距離に変換し、相対的に低い車速毎に並べ直して表されている。
図7Bに示すように、EV走行モードにおける消費電力量E[kWh]を、E0-20、E20-40、E40-60、E60-80、E80-100、E100-120、E120-140で示している。具体的には、消費電力量Eは、0以上20未満、20以上40未満、40以上60未満、60以上80未満、80以上100未満、100以上120未満及び120以上140未満の車速区分[km/h]で区切って表されている。この消費電力量Eは、各車速区分の電費と走行距離から算出される。各車速区分の電費は過去の走行履歴から算出してもよいし、あらかじめ図4などの検討から設定されてもよい。各車速区分の電費は、図4を参照して電費について上記した通り、基本的に、低い速度区分ほど良い。この時、使用可能な電池容量がE0-20+E20-40+E60-E80と同等とすると、遷移車速Vfcを80km/hとした場合、使用可能な電池容量をちょうど走行終了時に使い切れることになる。このように、目的地に到着する時にちょうどSOCが下限値となるようなVfcの設定手順は、たとえば以下の通りである。(1)走行ルートから走行パターンを算出し、(2)走行パターンを車速順に並べなおし、(3)各車速区分の消費電力量を各車速区分の電費から算出し、(4)SOCと消費電力量を比較して、SOCを使い切れるVfcを算出する。
図7Cに示すように、EV走行モードとHEV走行モードの遷移車速Vfcの設定を変えることができる。図7Cの(a)では、第1例として、遷移車速Vfcを100km/hに設定している。図7Cの(a)の場合、電池10のSOCは、車両1の走行中に下限値に到達して、それ以降は車速によらずHEV走行モードのみの走行となる。次に、図7Cの(b)では、第2例として、遷移車速Vfcを80km/hに設定している。図7Cの(b)の場合、電池10のSOCは、車両1の走行終了時に下限値に到達して、エンジン50の始動のために必要な電池容量を残しつつ、その電池10の使用可能な電池容量が過不足なく使い切られる。図7Cの(b)の場合、車両1は、全ての走行ルートにおいて、EV走行モードとHEV走行モードを選択して、走行できる。次に、図7Cの(c)では、第3例として、遷移車速Vfcを60km/hに設定している。図7Cの(c)の場合、電池10のSOCは、車両1の走行終了時に下限値に到達せず、エンジン50の始動のために必要な電池容量を残しつつ、更にその電池10の使用可能な電池容量が余る。図7Cの(c)の場合、車両1は、全ての走行ルートにおいて、EV走行モードとHEV走行モードを選択して、走行できる。
図7Dに示すように、EV走行モードとHEV走行モードのトータルコストは、遷移車速Vfc[km/h]によって異なる。このトータルコストは、車両1が図7Aに示すWLTCモードに基づく4サイクルを、EV走行モードとHEV走行モードを併用して走行した場合のコストである。トータルコストは、一例として、図7Cの(b)に示す遷移車速Vfcを80km/hに設定した場合に一番安くなるように構成できる。又、検討したWLTCモードにおける走行パターンの最大車速が131km/hであり、最大車速までEV走行モードで走行する場合を考慮して、最も高い遷移車速Vfcを図7Dの左端に示すように131km/hとしている。
[EV走行モードとHEV走行モードの遷移の制御]
図8を参照して、EV走行モードとHEV走行モードの遷移の制御の一例を説明する。図8は、EV走行モードとHEV走行モードの遷移における制御の一例を示している。
ステップS01において、制御部60は、電池10の現在のSOCが、CS(Charge Sustaining)レンジで使用される場合のCS SOCよりも高く、かつ走行ルートの全てをEV走行モードで走行した場合に必要と予想される使用予想SOCよりも低いか否かを判断し、Yesの場合にはステップS02に進み、Noの場合には終了する。
ステップS02において、制御部60は、電池10の充電に必要とする電気代と、エンジン50に供給されるガソリンの入手に必要とするガソリン代を取得する。電気代は、電池10に充電した時点での価格、又は電池10から放電してモータ30を作動させる時点での価格とする。同様に、ガソリン代は、ガソリンをガソリンスタンドで給油した時点での価格、又はガソリンを燃焼させてエンジン50を作動させる時点での価格とする。制御部60は、給電設備やガソリンスタンドからの受信データ、又は運転者等によって手入力されるデータによって、電気代とガソリン代を取得する。
ステップS03において、制御部60は、最適な遷移車速Vfcを算出する。具体的には、電池10の現在のSOCを考慮して、複数の走行区間のうち相対的に車速が低く区分された走行区間を遷移車速Vfcよりも低い車速で走行させ、走行ルートを走行した後のSOCが下限値に到達する遷移車速Vfcを算出する。車両1が走行を終えた後の電池10のSOCに余裕を持たせるために、遷移車速Vfcを少し高く算出してもよい。第1の車速領域は、EV走行モードにおける車両1の領域に相当する。第2の車速領域は、HEV走行モードにおける車両1の速度領域に相当する。ステップS03における最適な遷移車速Vfcの算出は、図7A、図7B、図7C及び図7Dを参照して上記したEV走行モードの優先度等において説明している。
ステップS04において、制御部60は、車両1が走行ルートをEV走行モードによって走行するために必要な要求出力が、電池10の最大出力未満であるか否かを判断し、Yesの場合にはステップS05に進み、Noの場合には終了する。
ステップS05において、制御部60は、EV走行モードとHEV走行モードの遷移マップを、最適なものに切り替える。遷移マップは、車両1の速度[km/h]と出力[kW]の関係を示すグラフにおいて、EV走行モードとHEV走行モードを互いに遷移させる遷移車速Vfcを、低速側と高速側に異ならせたものである。現在の遷移マップから、遷移車速Vfcを低速側にシフトさせた遷移マップに切り替えた場合、EV走行モードよりもHEV走行モードが選択され易くなる。現在の遷移マップから、遷移車速Vfcを高速側にシフトさせた遷移マップに切り替えた場合、HEV走行モードよりもEV走行モードが選択され易くなる。
[第1実施形態におけるEV走行モードとHEV走行モードの遷移]
図9A及び図9Bを参照して、第1実施形態におけるEV走行モードとHEV走行モードの遷移を説明する。
図9Aは、第1実施形態の車両1の走行について、車両1が、地点Aから地点Bまで市街地の一般道路を走行し、地点Bから地点Cまで高速道路を走行し、かつ、地点Cから地点Dまで郊外の一般道路を走行する走行ルートを示している。図9Bは、図9Aに示す走行ルートにおける走行履歴に基づき、算出した走行パターンを走行距離[km]と車速[km/h]の関係で示している。
第1実施形態において、入力される走行ルートは、地点A及び地点Dのみ、又は地点Aと地点Bと地点C及び地点Dの全てである。走行ルートに対応する走行データは、コネクティッド等によって入手される走行履歴である。複数の走行区間からなる走行パターンは、図9Bに示す地点Aから地点Dに至る走行距離と車速によって表されるグラフである。
第1実施形態において、算出部61は、図9Bに表された走行パターンを算出する。判断部62は、地点Dにおいて、車両1に設けられた電池10のSOCが下限値未満になるか否かを判断する。選択部63は、判断部62による判断の結果を反映させて、地点Dにおいて電池10のSOCが下限値になる条件に基づいて、相対的に車速が低く区分された走行区間の走行にEV走行モードを選択する。具体的には、制御部60は、遷移車速Vfc1よりも車速が低い走行区間をEV走行モードで走行させ、遷移車速Vfc1よりも車速が高い走行区間をHEV走行モードで走行させる。
以下、第1実施形態の詳細について説明する。第1実施形態では、図9Aに示す地点Aから地点Bと地点Cを介して地点Dに至る走行ルートに基づいて、本人や他人の走行履歴が参照されて、図9Bに示す車両1の走行パターンが算出される。
ここで、走行パターンの算出において、走行ルートの終点である地点Dが、車両1に設けられた電池10を充電可能な充電ポイントを有していることを前提としている。充電ポイントは、住宅や商業施設に設置された給電設備によって充電可能な場所である。車両1が地点Dに到着した後、給電設備によって、電池10が充電される。このため、仮に地点Cが充電ポイントを有している場合、図9Aに示す地点Aから地点Bを介して地点Cに至る走行ルートに基づいて、本人や他人の走行履歴が参照されて、車両1の走行パターンが算出される構成としてもよい。換言すると、地点Cから地点Dに至る走行ルートを除外して、本人や他人の走行履歴が参照されて、車両1の走行パターンが算出される構成としてもよい。
走行ルートは、車両1に予め設置されているカーナビゲーションや、車両1に持ち込まれるスマートフォーン又は携帯型カーナビゲーションに入力される。走行ルートは、地点A及び地点Dのみを入力すると通過地点である地点Bと地点Cが自動的に算出される構成としてもよいし、地点A、地点B、地点C及び地点Dの全てを入力する構成としてもよい。走行ルートの入力は、車両1の運転手、同乗者又は管理者等によって行われる。走行ルートは、走行する度に入力してもよいし、予め入力しておいたものを選択してもよい。入力された走行ルートは、制御部60に送信される。第1実施形態における走行ルートは、市街地の一般道路を走行して移動可能な地点Aから地点B、高速道路を走行して移動可能な地点Bから地点C、及び郊外の一般道路を走行して移動可能な地点Cから地点Dである。この走行ルートは、例えば、都市部に位置する自宅から、高速道路を使用して、田舎に位置する実家に帰省する場合の帰省ルートに相当する。
走行履歴は、本人の車両1による走行履歴、又はコネクティッド等によって入手された他人の車両による走行履歴である。コネクティッドは、インターネットのような電気通信網を介して、車両1と、走行履歴が蓄積された外部の情報機器を接続することを称する。走行履歴は、基本的に走行を終えている過去の走行履歴であるが、走行中の他人の車両による走行履歴も含む。走行履歴が複数存在する場合は、走行条件が相対的に類似する走行履歴が選択される。走行条件とは、走行日(平日、祝祭日、又はいわゆる交通量が増加する五十日等)、走行時の時間帯、走行時の天気、又は催し物や交通障害等の有無に関する条件である。コネクティッドによって入手された走行履歴が、いわゆるビックデータとして蓄積されている履歴の場合、その有用性が高まる。
算出された走行パターンに基づいて、最適な遷移車速Vfcが算出される。ここで遷移車速Vfcの算出において、図9Bに示すように、車両1が地点Dに到着したときに、電池10のSOCが下限値になる条件に設定すると、エンジン50の始動のために必要な電池容量を残しつつ、その電池10の使用可能な電池容量を使い切ることになり好ましい。又、遷移車速Vfcは、モータ30の消費電力、電池10の電費、及びエンジン50の燃費等から算出される。車両1の速度が遷移車速Vfc1未満の場合は、EV走行モードが優先的に選択される。一方、車両1の速度が遷移車速Vfc1以上の場合は、HEV走行モードが優先的に選択される。制御部60は、遷移車速Vfcを、車両1が目的地に到着する時に充電率が所定値になるように設定する。
[第1実施形態の車両1の効果]
第1実施形態の車両1によれば、車両1は、外部から充電された電力を放電して第1の駆動力を発生させる電池10と、ガソリン(燃料)を燃焼させて第2の駆動力を発生させるエンジン50と、電池10とエンジン50とを制御する制御部60と、を有している。制御部60は、算出部61と、判断部62と、選択部63を備えている。算出部61は、入力された走行ルートに対応する走行データを参照して車速毎の走行距離に基づく複数の走行区間からなる走行パターンを算出する。判断部62は、複数の走行区間の全てを第1の駆動力を使用して走行した場合に電池10のSOCが下限値(所定値)未満になるか否かを判断する。選択部63は、判断部62によってSOCが下限値未満になると判断された場合に、複数の走行区間のうち相対的に車速が低く区分された走行区間の走行に第1の駆動力を選択する。
このような車両1によれば、走行コストが第2の駆動力よりも安くなる場合が多い第1の駆動力を優先して選択する。換言すると、HEV走行モードよりもEV走行モードを優先して選択する。更に、第1の駆動力の使用において、走行コストが高速領域よりも安くなる低速領域を優先して選択する。換言すると、EV走行モードは、相対的に低速で走行する場合に優先して選択する。この結果、車両1は、走行コストを十分に抑制できる。
第1実施形態の車両1によれば、制御部60は、第1の駆動力によって走行する第1の車速領域と、第2の駆動力によって走行し第1の車速領域よりも高速の第2の車速領域とを遷移させる閾値となる遷移車速Vfcを上下させて、複数の走行区間のうち相対的に車速が低く区分された走行区間を第1の駆動力で走行させ、走行ルートを走行した後のSOCが下限値付近になるように制御する。このような車両1によれば、制御部60は、遷移車速Vfcに基づいて、EV走行モードとHEV走行モードを選択できる。このため、車両1の走行中にSOCが下限値に到達して、それ以降は車速によらずHEV走行モードのみの走行となることを防止できる。換言すると、車両1の走行中にSOCが下限値に到達した後に、HEV走行モードと比較してEV走行モードの方が走行コストが安い低速領域の走行ルートを、HEV走行モードによって走行することを防止できる。この結果、車両1は、走行コストを十分に抑制できる。
第1実施形態の車両1によれば、制御部60は、電池10の充電に必要な電気代と、エンジン50に必要なガソリン代の和が最小になるように遷移車速Vfcを上下させる。このような車両1によれば、電気代と燃料代のトータルコストを考慮した遷移車速Vfcに基づいて、EV走行モードとHEV走行モードを選択できる。この結果、車両1は、走行コストを十分に抑制できる。
第1実施形態の車両1によれば、制御部60は、遷移車速Vfcを、目的地に到着する時に充電率が所定値になるように設定する。このような車両1によれば、電気代と燃料代のトータルコストを考慮して遷移車速Vfcを設定できる。この結果、車両1は、走行コストを十分に抑制できる。
第1実施形態の車両1によれば、SOCの下限値は、エンジン50の始動に必要な最小限の電力に基づき設定される。このような車両1によれば、EV走行モードからHEV走行モードに遷移する場合、エンジン50を始動させるための始動電力Wb(最小限の電力)を確保できる。この結果、車両1は、走行状態によらず、走行中にEV走行モードからHEV走行モードに遷移できる。
第1実施形態の車両1によれば、制御部60は、判断部62によって複数の走行区間の全てを第1の駆動力を使用して走行した後のSOCが下限値未満になると判断された場合に、選択部63に対して相対的に車速が低く区分された1以上の走行区間の走行にそれぞれ第1の駆動力を選択させて、走行ルートを走行した後のSOCを下限値以上に保つように制御する。このような車両1によれば、エンジン50の始動のために必要な電池10の電池容量を残した状態において、走行を終えるまで電池10を断続的に使用して、その電池10の使用可能な電池容量を使い切ることができる。この結果、車両1は、走行コストを十分に抑制できる。
第1実施形態の車両1によれば、制御部60は、判断部62によって複数の走行区間の全てを第1の駆動力を使用して走行した後のSOCが下限値以上に保たれると判断された場合に、複数の走行区間の全てを第1の駆動力を使用して走行するように制御する。このような車両1によれば、走行コストが第2の駆動力よりも安くなることが多い第1の駆動力のみを選択できる。換言すると、EV走行モードのみを選択できる。この結果、車両1は、走行コストを十分に抑制できる。
第1実施形態の車両1によれば、走行ルートは、車内に設置されているカーナビゲーション又は車内に持ち込まれる情報携帯端末から入力される。このような車両1によれば、汎用的で安価なカーナビゲーションや情報携帯端末を使用して、走行ルートを入力できる。情報携帯端末は、スマートフォーン又は携帯型カーナビゲーション等である。この結果、車両1は、汎用的で安価な構成によって、走行コストを十分に抑制できる。
第1実施形態の車両1によれば、走行データは、本人又は他人が走行した走行ルートにおける車速と当該車速が適用された走行区間の走行履歴を含んでいる。このような車両1によれば、制御部60は、有用性が高い走行履歴を参照して精度の高い走行パターンを算出できる。算出された走行パターンに基づいて、EV走行モードとHEV走行モードを選択できる。この結果、車両1は、走行コストを十分に抑制できる。
[第2実施形態におけるEV走行モードとHEV走行モードの遷移]
図10A及び図10Bを参照して、第2実施形態におけるEV走行モードとHEV走行モードの遷移を説明する。
図10Aは、第2実施形態の車両2の走行について、車両2が、地点Aから地点Bまで市街地の一般道路を制限速度で定常走行し、地点Bから地点Cまで高速道路を制限速度で定常走行し、かつ、地点Cから地点Dまで郊外の一般道路を制限速度で定常走行する走行ルートを示している。図10Bは、図10Aに示す走行ルートでの制限速度に基づき、走行距離[km]と車速[km/h]の関係を示している。
第2実施形態では、図10Aに示す地点Aから地点Bと地点Cを介して地点Dに至る走行ルートに基づいて、入手した制限速度に関する交通情報が参照されて、図10Bに示す車両2の走行パターンが算出される。入手した制限速度に関する交通情報は、走行データに相当し、走行する道路の制限速度と当該制限速度が適用される走行区間を含んでいる。
走行ルートは、図9Aを参照して上記した第1実施形態の走行ルートと同一である。走行ルートの入力は、図9Aを参照して上記した第1実施形態と同様に、車両2の運転手、同乗者又は管理者等によって行われる。
交通情報は、道路の制限速度である。交通情報は、車両2に予め設置されているカーナビゲーションや、車両2に持ち込まれるスマートフォーン又は携帯型カーナビゲーション等から入力される。
走行パターンに関して、地点Aから地点Bまでは、車両2が市街地の一般道路を走行する。この場合、車両2は、この一般道路の制限速度である例えば50km/hで走行すると想定される。同様に、走行パターンに関して、地点Bから地点Cまでは、車両2が高速道路を走行する。この場合、車両2は、この高速道路の制限速度である例えば120km/hで走行すると想定される。同様に、走行パターンに関して、地点Cから地点Dまでは、車両2が郊外の一般道路を走行する。この場合、車両2は、この一般道路の制限速度である例えば80km/hで走行すると想定される。
算出された走行パターンに基づいて、最適な遷移車速Vfc2が算出される。ここで、遷移車速Vfcの算出において、図10Bに示すように、車両2が地点Dに到着したときに、電池10のSOCが下限値になる条件に設定すると、エンジン50の始動のために必要な電池容量を残しつつ、その電池10の使用可能な電池容量を使い切ることになり好ましい。又、遷移車速Vfcは、モータ30の消費電力、電池10の電費、及びエンジン50の燃費等から算出される。車両2の速度が遷移車速Vfc2未満の場合は、EV走行モードが優先的に選択される。一方、車両2の速度が遷移車速Vfc2以上の場合は、HEV走行モードが優先的に選択される。
[第2実施形態の車両2の効果]
第2実施形態の車両2によれば、走行データは、走行する道路の制限速度と当該制限速度が適用される走行区間を含んでいる。
このような車両2によれば、制御部60は、走行する道路の制限速度と当該制限速度が適用される走行距離を参照して有効な走行パターンを算出できる。算出された走行パターンに基づいて、EV走行モードとHEV走行モードを選択できる。特に、このような車両2によれば、走行履歴が存在しない場合や、走行履歴が存在しても走行条件が大きく異なる場合に有効である。走行条件とは、走行日(平日、祝祭日、又はいわゆる交通量が増加する五十日等)、走行時の時間帯、走行時の天気、又は催し物や交通障害等の有無に関する条件である。この結果、車両2は、走行コストを十分に抑制できる。
[第3実施形態におけるEV走行モードとHEV走行モードの遷移]
図11A、図11B及び図11Cを参照して、第3実施形態におけるEV走行モードとHEV走行モードの遷移を説明する。
図11Aは、第3実施形態の車両3の走行について、車両3が、地点Eから地点Fまでの走行において、今回の走行履歴を次回の走行に反映させる状態を示している。図11Bは、図11Aの走行ルートに基づいて、EV走行モードとHEV走行モードの遷移車速Vfc3を例えば100km/hに設定した場合(今回)における、走行距離[km]と車速[km/h]の関係を示している。図11Cは、図11Bに示す今回の走行時の交通状況を考慮して、EV走行モードとHEV走行モードの遷移車速Vfc4を例えば80km/hに変更した場合(次回)における、走行距離[km]と車速[km/h]の関係を示している。
第3実施形態では、図11Aに示す地点Eから地点Fに至る走行ルートに基づいて、本人や他人の走行履歴が参照されて図11Bに示す今回の走行用の走行パターンが算出され、更に今回走行した時の道路状況の変化を含む走行履歴が参照されて図11Cに示す次回の走行用の走行パターンが算出される。
走行ルートは、車両3に予め設置されているカーナビゲーションや、車両3に持ち込まれる情報携帯端末に入力される。走行ルートの入力は、図9Aを参照して上記した第1実施形態と同様に、車両3の運転手、同乗者又は管理者等によって行われる。第3実施形態における走行ルートは、例えば、走行する頻度が比較的高いルートである。具体的には、地点Eから地点Fは、自宅から会社への通勤ルート、会社から取引先への営業ルート、自宅から病院への通院ルート等である。
今回の走行で使用される走行履歴は、本人の車両3による走行履歴、又はコネクティッド等によって入手された他人の車両による走行履歴である。
今回の走行で使用される走行パターンは、入手された本人や他人の走行履歴に基づいて、図11Bに示すように、遷移車速Vfc3が例えば100km/hに設定されている。この遷移車速Vfc3は、車両3が地点Fに到着したときに、電池10のSOCが下限値になる条件に基づいて算出されている。
今回の走行では、地点Eから地点Fまでの走行ルートの間で、道路状況の変化が発生した場合、走行履歴に基づく走行ができないことがある。道路状況の変化とは、例えば、一定期間にわたって行われる道路工事に伴う渋滞、商業施設の開店による交通量の増加に伴う渋滞、商業設備の閉店により交通量の減少に伴う渋滞の解消である。例えば、道路状況の変化により渋滞が発生した場合、図11Bに示すように、車両3が地点Fに到着する前に、電池10のSOCが下限値になる場合がある。この場合、それ以降の走行は、車速によらずHEV走行モードのみの走行となる。
次回の走行では、前回の走行における道路状況の変化を、走行パターンに反映させる。具体的には、今回は遷移車速Vfc3で走行したが、例えば渋滞のような交通状態の変化が発生した場合、その走行履歴に基づいて、最後までEV走行モードを選択できる遷移車速Vfc4を新たに算出して、図11Cに示す次回の走行パターンの算出に反映させる。次回の走行で使用される走行パターンでは、今回の走行で入手された交通状態の変化に基づいて、図11Cに示すように、遷移車速Vfc4が例えば80km/hに設定される。この遷移車速Vfc4は、例えば渋滞のような道路状況の変化が依然として解消していなくても、車両3が地点Fに到着するまで、電池10のSOCが下限値に到達しない条件に基づいて算出されている。
[第3実施形態の車両3の効果]
第3実施形態の車両3によれば、走行データは、本人又は他人が走行した走行ルートにおける今回の走行履歴に基づいて走行して入手された道路状況が反映された最新の走行履歴を含んでいる。
このような車両3によれば、制御部60は、今回の走行履歴に基づいて走行して入手した道路状況の変化が反映された最新の走行履歴を参照して有効な走行パターンを算出できる。算出された走行パターンに基づいて、EV走行モードとHEV走行モードを選択できる。特に、このような車両3によれば、走行履歴に直ぐには反映され難い道路状況の変化を、次回の走行に直ぐに反映できる。道路状況の変化とは、例えば、一定期間にわたって行われる道路工事に伴う渋滞、商業施設の開店による交通量の増加に伴う渋滞、商業設備の閉店により交通量の減少に伴う渋滞の解消である。この結果、車両3は、走行コストを十分に抑制できる。
[実施形態の車両1の態様]
本発明を実施するに当たり、上記の実施形態は一例であり、具体的な態様を種々に変更して実施できる。
1…車両(第1実施形態)、2…車両(第2実施形態)、3…車両(第3実施形態)、10…電池、20…インバータ、30…モータ、40…ガソリンタンク、50…エンジン、60…制御部、61…算出部、62…判断部、63…選択部、K…車速領域、Vfc…遷移車速。

Claims (9)

  1. 外部から充電された電力を放電して第1の駆動力を発生させる電池と、
    燃料を燃焼させて第2の駆動力を発生させるエンジンと、
    前記電池と前記エンジンとを制御する制御部と、を有し、
    前記制御部は、
    入力された走行ルートに対応する走行データを参照して車速毎の走行距離に基づく複数の走行区間からなる走行パターンを算出する算出部と、
    複数の前記走行区間の全てを前記第1の駆動力を使用して走行した場合に前記電池の充電率が所定値未満になるか否かを判断する判断部と、
    前記判断部によって前記充電率が所定値未満になると判断された場合に、複数の前記走行区間のうち相対的に車速が低く区分された前記走行区間の走行に前記第1の駆動力を選択する選択部と、を備え
    前記制御部は、前記第1の駆動力によって走行する第1の車速領域と、前記第2の駆動力によって走行し前記第1の車速領域よりも高速の第2の車速領域とを遷移させる閾値となる遷移車速を上下させて、複数の前記走行区間のうち相対的に車速が低く区分された前記走行区間を遷移車速よりも低い車速で走行させ、前記走行ルートを走行した後の前記充電率を前記所定値以上に保つように制御し、
    前記制御部は、前記遷移車速を、目的地に到着する時に前記充電率が所定値になるように設定し、
    目的地に到着する時にちょうど前記充電率が下限値となるような前記遷移車速の設定手順は、走行ルートから走行パターンを算出し、前記走行パターンを車速順に並べなおし、各車速区分の消費電力量を各車速区分の電費から算出し、前記充電率と前記消費電力量を比較して、前記充電率を使い切れる前記遷移車速を算出する車両。
  2. 前記制御部は、前記電池の充電に必要な電気代と、前記エンジンに必要な燃料代の和が最小になるように前記遷移車速を上下させる、請求項に記載の車両。
  3. 前記所定値は、前記エンジンの始動に必要な最小限の電力に基づき設定される、請求項1又は2に記載の車両。
  4. 前記制御部は、前記判断部によって複数の前記走行区間の全てを前記第1の駆動力を使用して走行した後の前記充電率が前記所定値未満になると判断された場合に、前記選択部に対して相対的に車速が低く区分された1以上の前記走行区間の走行にそれぞれ前記第1の駆動力を選択させて、前記走行ルートを走行した後の前記充電率を前記所定値以上に保つように制御する、請求項1からのいずれか1項に記載の車両。
  5. 前記制御部は、前記判断部によって複数の前記走行区間の全てを前記第1の駆動力を使用して走行した後の前記充電率が前記所定値以上に保たれると判断された場合に、複数の前記走行区間の全てを前記第1の駆動力を使用して走行するように制御する、請求項1からのいずれか1項に記載の車両。
  6. 前記走行ルートは、車内に設置されているカーナビゲーション又は車内に持ち込まれる情報携帯端末から入力される、請求項1からのいずれか1項に記載の車両。
  7. 前記走行データは、本人又は他人が走行した前記走行ルートにおける車速と当該車速が適用された前記走行区間の走行履歴を含む、請求項1からのいずれか1項に記載の車両。
  8. 前記走行データは、走行する道路の制限速度と当該制限速度が適用される前記走行区間を含む、請求項1からのいずれか1項に記載の車両。
  9. 前記走行データは、本人又は他人が走行した前記走行ルートにおける今回の走行履歴に基づいて走行して入手された道路状況が反映された最新の走行履歴を含む、請求項1からのいずれか1項に記載の車両。
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