JP7346475B2 - 三次元積層造形装置および三次元積層造形方法 - Google Patents

三次元積層造形装置および三次元積層造形方法 Download PDF

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Description

本発明は、三次元積層造形装置および三次元積層造形方法に関する。
近年、造形プレート上に層状に敷き詰められた粉末材料にビームを照射して粉末材料を溶融および凝固させるとともに、凝固させた層を造形プレートの移動により順に積み上げて三次元の造形物を形成する三次元積層造形装置が知られている。この種の三次元積層造形装置は、たとえば特許文献1に記載されている。
特開2015-167125号公報
特許文献1に記載された三次元積層造形装置では、造形プレート上に粉末材料を塗布する場合に、粉末材料が一様に塗布されず、粉末層の厚さが部分的に薄くなるなどの塗布不良が発生することがある。塗布不良の発生は、造形物の寸法精度を低下させる原因になる。
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、その目的は、粉末材料の塗布不良を検出し、塗布不良によって造形物の寸法精度が低下することを抑制することができる技術を提供することにある。
本発明に係る三次元積層造形装置は、造形プレートと、造形プレートを上下方向に移動させるプレート移動装置と、造形プレート上に粉末材料を塗布して粉末層を形成する装置であって、造形プレート上を移動して粉末材料を敷き詰めるスキージを有する粉末塗布装置と、造形プレートまたは粉末層にビームを照射するビーム照射装置と粉末塗布装置およびビーム照射装置を制御することにより、粉末塗布工程、パウダーヒート工程、本焼結工程およびアフターヒート工程を経て1層分の造形物を形成するとともに、プレート移動装置を制御して1層分の造形物を積層して三次元の造形物を造形する制御部と、粉末層の造形面を撮影するカメラと、スキージが造形面を通過中または通過直後にカメラによって撮影された画像を用いて、粉末材料の塗布不良が発生したか否かを判断する判断部と、を備える。判断部は、スキージが造形面を通過中にカメラによって撮影された画像を用いて、スキージが通過する前の画像の特徴量の経時変化から予測される、スキージが通過した直後の予測特徴量と、前記スキージが通過した直後の画像の特徴量との差を求めるとともに、求めた差に基づいて、粉末材料の塗布不良が発生したか否かを判断する。
本発明に係る三次元積層造形方法は、形プレート上でスキージを水平方向に移動させることにより、造形プレート上に粉末材料を塗布して粉末層を形成する粉末塗布工程と、粉末塗布工程の後に、造形プレート上の粉末層を予備加熱するパウダーヒート工程と、パウダーヒート工程の後に、粉末層を形成している粉末材料を本焼結させる本焼結工程と、本焼結工程の後に、造形プレート上の粉末層を予備加熱するアフターヒート工程と、を含み、粉末塗布工程では、スキージが粉末層の造形面を通過中または通過直後にカメラによって撮影された造形面の画像を用いて、粉末材料の塗布不良が発生したか否かを判断するとともに、スキージが造形面を通過中にカメラによって撮影された画像を用いて、スキージが通過する前の画像の特徴量の経時変化から予測される、スキージが通過した直後の予測特徴量と、スキージが通過した直後の画像の特徴量との差を求めるとともに、求めた差に基づいて、粉末材料の塗布不良が発生したか否かを判断する。
本発明によれば、粉末材料の塗布不良を検出し、塗布不良によって造形物の寸法精度が低下することを抑制することができる。
本発明の第1実施形態に係る三次元積層造形装置の構成を概略的に示す側面図である。 本発明の第1実施形態に係る三次元積層造形装置の制御系の構成例を示すブロック図である。 本発明の第1実施形態に係る三次元積層造形装置の基本的な処理動作の手順を示すフローチャートである。 本発明の第1実施形態に係る三次元積層造形装置の処理動作の手順を示すフローチャートである。 画像の実測輝度と近似式との関係を説明する図である。 カメラによって造形面を撮影して得られる画像の例を示す模式図である。 本発明の第2実施形態に係る粉末塗布工程の処理手順を示すフローチャートである。 塗布不良にともなう粉末層の厚みの変化を示す模式図である。 本発明の第3実施形態に係る粉末塗布工程の処理手順を示すフローチャートである。 カメラによって撮影した画像を二値化して得られる白黒画像の例を示す模式図である。 カメラによって撮影した画像を二値化して得られる白黒画像の第1具体例を示す図である。 カメラによって撮影した画像を二値化して得られる白黒画像を、スキージ移動方向上流側の画像とスキージ移動方向下流側の画像に分けた状態を示す模式図である。 カメラによって撮影した画像を二値化して得られる白黒画像の第2具体例を示す図である。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。本明細書および図面において、実質的に同一の機能または構成を有する要素については、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る三次元積層造形装置の構成を概略的に示す側面図である。以降の説明では、三次元積層造形装置の各部の形状や位置関係などを明確にするために、図1の左右方向をX方向、図1の奥行き方向をY方向、図1の上下方向をZ方向とする。X方向、Y方向およびZ方向は、互いに直交する方向である。また、X方向およびY方向は水平方向に平行な方向であり、Z方向は鉛直方向に平行な方向である。
図1に示すように、三次元積層造形装置10は、真空チャンバー12と、ビーム照射装置14と、粉末塗布装置16と、造形テーブル18と、造形ボックス20と、回収ボックス21と、造形プレート22と、インナーベース24と、プレート移動装置26と、輻射シールドカバー28と、マスクカバー30と、カメラ42と、シャッター44と、を備えている。
真空チャンバー12は、図示しない真空ポンプによってチャンバー内の空気を排気することにより、真空状態を作り出すためのチャンバーである。
ビーム照射装置14は、造形プレート22または粉末層32aに電子ビーム15を照射する装置である。電子ビーム15は、ビームの一例である。粉末層32aは、造形プレート22に金属粉末32を塗布することによって形成される層である。ビーム照射装置14は、図示はしないが、電子ビーム15の発生源となる電子銃と、電子銃が発生した電子ビームを集束させる集束レンズと、集束レンズで集束させた電子ビーム15を偏向する偏向レンズと、を有している。集束レンズは集束コイルを用いて構成され、集束コイルが発生する磁界によって電子ビーム15を集束させる。偏向レンズは偏向コイルを用いて構成され、偏向コイルが発生する磁界によって電子ビーム15を偏向する。
粉末塗布装置16は、造形物38の原材料となる粉末材料の一例として、金属粉末32を造形プレート22上に塗布して粉末層32aを形成する装置である。粉末塗布装置16は、ホッパー16aと、粉末投下器16bと、スキージ16cとを有している。ホッパー16aは、金属粉末を貯蔵するための容器である。粉末投下器16bは、ホッパー16aに貯蔵されている金属粉末を造形テーブル18上に投下する機器である。スキージ16cは、造形プレート22上を水平方向に移動して金属粉末32を敷き詰める。スキージ16cは、Y方向に長い長尺状の部材であり、粉末敷き詰め用のブレード16dを有している。スキージ16cは、粉末投下器16bによって投下された金属粉末32をブレード16dで押し込みながら、造形テーブル18上に金属粉末32を敷き詰める。スキージ16cは、造形テーブル18の全面に金属粉末32を敷き詰めるために、X方向に移動可能に設けられている。
造形テーブル18は、真空チャンバー12の内部に水平に配置されている。造形テーブル18は、粉末塗布装置16よりも下方に配置されている。造形テーブル18の中央部は開口している。造形テーブル18の開口形状は、平面視円形または平面視角形(たとえば、平面視四角形)である。
造形ボックス20は、造形用の空間を形成するボックスである。造形ボックス20の上端部は、造形テーブル18の開口縁に接続されている。造形ボックス20の下端部は、真空チャンバー12の底壁に接続されている。
回収ボックス21は、粉末塗布装置16によって造形テーブル18上に供給された金属粉末32のうち、必要以上に供給された金属粉末32を回収するボックスである。
造形プレート22は、金属粉末32を用いて造形物38を形成するためのプレートである。造形物38は、造形プレート22上に積層して形成される。造形プレート22は、造形テーブル18の開口形状に合わせて平面視円形または平面視角形に形成される。造形プレート22は、電気的に浮いた状態とならないよう、アース線34によってインナーベース24に接続(接地)されている。インナーベース24は、GND(グランド)電位に保持されている。造形プレート22およびインナーベース24の上には金属粉末32が敷き詰められる。
インナーベース24は、上下方向(Z方向)に移動可能に設けられている。造形プレート22は、インナーベース24と一体に上下方向に移動する。インナーベース24は、造形プレート22よりも大きな外形寸法を有する。インナーベース24は、造形ボックス20の内側面に沿って上下方向に摺動する。インナーベース24の外周部にはシール部材36が取り付けられている。シール部材36は、インナーベース24の外周部と造形ボックス20の内側面との間で、摺動性および密閉性を保持する部材である。シール部材36は、耐熱性および弾力性を有する材料によって構成される。
プレート移動装置26は、造形プレート22およびインナーベース24を上下方向に移動させる装置である。プレート移動装置26は、シャフト26aと、駆動機構部26bとを備えている。シャフト26aは、インナーベース24の下面に接続されている。駆動機構部26bは、図示しないモータと動力伝達機構とを備え、モータを駆動源として動力伝達機構を駆動することにより、造形プレート22およびインナーベース24をシャフト26aと一体に上下方向に移動させる。動力伝達機構は、たとえば、ラックアンドピニオン機構、ボールネジ機構などによって構成される。
輻射シールドカバー28は、Z方向において、造形プレート22とビーム照射装置14との間に配置されている。輻射シールドカバー28は、ステンレス鋼などの金属によって構成される。輻射シールドカバー28は、ビーム照射装置14によって金属粉末32に電子ビーム15を照射した際に発生する輻射熱をシールドする。金属粉末32を本焼結させるために金属粉末32に電子ビーム15を照射すると金属粉末32が溶融するが、このとき粉末層32aの造形面32bから放射される熱、すなわち輻射熱が真空チャンバー12内に広く拡散すると熱効率が悪くなる。これに対し、造形プレート22の上方に輻射シールドカバー28を配置した場合は、造形面32bから放射される熱が輻射シールドカバー28によってシールドされるとともに、シールドされた熱が輻射シールドカバー28により反射されて造形プレート22側に戻される。このため、電子ビーム15の照射によって発生する熱を効率良く利用することができる。造形面32bは、造形プレート22上に金属粉末32を敷き詰めて形成される粉末層32aの上面に相当する。
また、輻射シールドカバー28は、金属粉末32に電子ビーム15を照射した際に発生する蒸発物質が真空チャンバー12の内壁に付着(蒸着)することを抑制する機能を果たす。金属粉末32に電子ビーム15を照射すると、溶融した金属の一部が霧状の蒸発物質となって造形面32bから立ち昇る。輻射シールドカバー28は、この蒸発物質が真空チャンバー12内に拡散しないよう、造形面32bの上方空間を覆うように配置されている。
マスクカバー30は、開口部30aおよびマスク部30bを有する。マスクカバー30は、造形物38を形成するにあたって、金属粉末32の上面、すなわち造形面32bに被せて配置される。その際、開口部30aは、造形プレート22上に敷き詰められる金属粉末32を露出させ、マスク部30bは、開口部30aよりも外側に位置する金属粉末32を遮蔽する。開口部30aの形状は、造形プレート22の形状にあわせて設定される。たとえば、造形プレート22が平面視円形であれば、これにあわせて開口部30aの平面視形状は円形に設定され、造形プレート22が平面視角形であれば、これにあわせて開口部30aの平面視形状は角形に設定される。本実施形態では、一例として、開口部30aの平面視形状が円形であるものとする。
マスクカバー30は、輻射シールドカバー28の下方に配置されている。マスクカバー30の開口部30aおよびマスク部30bは、Z方向において、造形プレート22と輻射シールドカバー28との間に配置されている。マスクカバー30は囲い部30cを有する。囲い部30cは、開口部30aの上方空間を囲うように配置される。囲い部30cの一部(上部)は、Z方向において輻射シールドカバー28とオーバーラップしている。囲い部30cは、造形面32bから発生する輻射熱をシールドする機能と、造形面32bから発生する蒸発物質の拡散を抑制する機能とを果たす。つまり、囲い部30cは、輻射シールドカバー28と同様の機能を果たす。
マスクカバー30は、造形物38の原料として使用する金属粉末32よりも融点が高い金属で構成される。また、マスクカバー30は、金属粉末32との反応性が低い材料によって構成される。マスクカバー30の構成材料としては、たとえばチタンを挙げることができる。また、マスクカバー30は、使用する金属粉末32と同じ材質の金属によって構成してもよい。マスクカバー30は、電気的にGNDに接地されている。マスクカバー30は、後述する本焼結工程前の予備加熱工程において、電子ビーム15の照射により金属粉末32を仮焼結させる場合に、電気的なシールド機能を果たすことにより、粉末飛散の発生を小規模に抑える。
カメラ42は、粉末層32aの造形面32bを撮影可能なカメラである。カメラ42は、ビーム照射装置14と位置が干渉しないよう、ビーム照射装置14とはY方向に位置をずらして配置されている。カメラ42は、たとえばデジタルビデオカメラなどの可視光カメラによって構成することが好ましい。カメラ42は、粉末層32aの造形面32bを撮影して粉末層32aの画像(画像データ)を生成する。また、カメラ42は、マスクカバー30の開口部30aを通して造形面32bを撮影する。このため、マスクカバー30の開口部30aの平面視形状が円形である場合、カメラ42が撮影する造形面32bの画像は円形の画像になる。カメラ42による撮影は、三次元積層造形装置10が備える照明光源(図示せず)が発する照明光を粉末層32aの造形面32bに当てた状態で行われる。
本実施形態においては、ビーム照射装置14から粉末層32aに電子ビーム15を照射する場合に、マスクカバー30が粉末層32aの造形面32bに被せて配置されるため、実質的に、造形面32bとは、マスクカバー30の開口部30aを通してカメラ42から見える造形面32bを意味する。ちなみに、マスクカバー30を備えない三次元積層造形装置10の場合は、電子ビーム15の照射によって仮焼結される金属粉末32の上面が造形面32bに相当する。
シャッター44は、電子ビーム15の照射によって金属粉末32を溶融させる際に造形面32bから発生する蒸発物質がカメラ42や観察窓に付着しないよう、カメラ42や観察窓を保護するものである。カメラ42による造形面32bの撮影は、シャッター44を開けた状態で行われる。また、蒸発物質が発生しやすい工程や、蒸発物質の発生量が多い工程は、シャッター44を閉じた状態で行われる。
図2は、本発明の第1実施形態に係る三次元積層造形装置の制御系の構成例を示すブロック図である。
図2において、制御部50は、たとえば図示しないCPU(中央演算処理装置)50a、ROM(Read Only Memory)50bおよびRAM(Random Access Memory)50cを備え、CPU50aが、ROM50bに書き込まれたプログラムをRAM50cに読み出して所定の制御処理を実行することにより、三次元積層造形装置10の動作を統括的に制御する。制御部50には、上述したビーム照射装置14、粉末塗布装置16、プレート移動装置26およびカメラ42の他に、マスクカバー昇降装置52、シャッター駆動装置54および画像処理部56が接続されている。
プレート移動装置26は、制御部50から与えられる制御指令に基づいて造形プレート22を移動させる。粉末塗布装置16は、制御部50から与えられる制御指令に基づいて造形プレート22上に金属粉末32を塗布する。粉末塗布装置16が有するホッパー16a、粉末投下器16bおよびスキージ16cの動作は、制御部50によって制御される。マスクカバー昇降装置52は、制御部50から与えられる制御指令に基づいてマスクカバー30を昇降させる。シャッター駆動装置54は、上述したシャッター44を開閉する装置である。シャッター駆動装置54は、制御部50から与えられる制御指令に基づいてシャッター44を開閉する。たとえば、シャッター駆動装置54は、制御部50から与えられる制御指令に基づき、後述する本焼結工程においてシャッター44を閉じ状態に保持することにより、カメラ42の汚損を抑制する。
画像処理部56は、カメラ42が生成する画像を取り込むとともに、取り込んだ画像に所定の画像処理を施すものである。画像処理部56は、粉末塗布装置16が金属粉末32を塗布する場合に、塗布不良の有無を判断する判断部58を有する。判断部58は、カメラ42から取り込んだ画像を用いて、塗布不良が発生したか否かを判断する。画像処理部56は、たとえば画像処理プロセッサによって構成される。画像処理部56および判断部58が行う具体的な処理内容については後述する。なお、画像処理部56の機能は、制御部50を構成するCPU、ROMおよびRAMによって実現してもよい。つまり、画像処理部56を制御部50と一体に構成することも可能である。
<三次元積層造形装置の動作>
図3は、本発明の第1実施形態に係る三次元積層造形装置の処理動作の手順を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理動作は、制御部50の制御下で行われる。
まず、造形を開始する前の状態では、造形プレート22の上面を除いて、造形プレート22の三方が金属粉末32によって覆われた状態になる。また、造形プレート22の上面は、造形テーブル18上に敷き詰められた金属粉末32の上面とほぼ同じ高さに配置される。一方、マスクカバー30は、造形プレート22の上面まで降ろされる。この場合、造形プレート22の周囲に存在する金属粉末32はマスクカバー30のマスク部30bによって覆われた状態になる。また、マスク部30bは、金属粉末32に接触した状態になる。以上述べた状態のもとで造形が開始される。
(プレート加熱工程)
まず、ビーム照射装置14は、制御部50から与えられる制御指令に基づいて動作することにより、造形プレート22を加熱する(ステップS1)。
ステップS1において、ビーム照射装置14は、マスクカバー30の開口部30aを通して造形プレート22に電子ビーム15を照射するとともに、造形プレート22上で電子ビーム15を走査する。これにより、造形プレート22は、金属粉末32が仮焼結する程度の温度に加熱される。
(プレート下降工程)
次に、プレート移動装置26は、制御部50から与えられる制御指令に基づいて動作することにより、造形プレート22を所定量だけ下降させる(ステップS2)。
ステップS2において、プレート移動装置26は、造形テーブル18上に敷き詰められた金属粉末32の上面よりも造形プレート22の上面が僅かに下がった状態となるように、インナーベース24を所定量だけ下降させる。このとき、造形プレート22は、インナーベース24と共に所定量だけ下降する。ここで記載する所定量(以下、「ΔZ」とも記す)は、造形物38を積層によって造形するときの一層分の厚さに相当する。
(マスクカバー上昇工程)
次に、マスクカバー昇降装置52は、制御部50から与えられる制御指令に基づいて動作することにより、マスクカバー30を上昇させる(ステップS3)。
ステップS3において、マスクカバー昇降装置52は、次のステップS4でスキージ16cがマスクカバー30に接触しないよう、スキージ16cよりも高い位置までマスクカバー30を上昇させる。
(粉末塗布工程)
次に、粉末塗布装置16は、制御部50から与えられる制御指令に基づいて動作することにより、造形プレート22上に金属粉末32を塗布して粉末層32aを形成する(ステップS4)。
ステップS4において、粉末塗布装置16は、ホッパー16aから粉末投下器16bに供給された金属粉末32を、粉末投下器16bによって造形テーブル18上に投下した後、スキージ16cをX方向に移動させることにより、造形プレート22上に金属粉末32を敷き詰める。このとき、金属粉末32は、ΔZ相当の厚さで造形プレート22上に敷き詰められる。これにより、造形プレート22上に粉末層32aが形成される。また、余分な金属粉末32は、回収ボックス21に回収される。
(マスクカバー下降工程)
次に、マスクカバー昇降装置52は、制御部50から与えられる制御指令に基づいて動作することにより、マスクカバー30を下降させる(ステップS5)。
ステップS5において、マスクカバー昇降装置52は、金属粉末32の造形面32bに接触するようにマスクカバー30を降ろす。これにより、造形プレート22上の金属粉末32は、マスクカバー30の開口部30aを通して外部に露出した状態となる。また、造形プレート22の周囲に存在する金属粉末32は、マスクカバー30のマスク部30bによって覆われた状態になる。
(予備加熱工程)
次に、ビーム照射装置14は、制御部50から与えられる制御指令に基づいて動作することにより、造形プレート22上の粉末層32aを予備加熱する(ステップS6)。この予備加熱工程S6においては、金属粉末32を仮焼結させるために粉末層32aを予備加熱する。金属粉末32を仮焼結させると、金属粉末32に導電性を持たせることができる。このため、予備加熱工程の後に行われる本焼結工程での粉末飛散を抑制することができる。本焼結工程の前に行われる予備加熱は、パウダーヒートとも呼ばれる。
ステップS6において、ビーム照射装置14は、造形プレート22上の金属粉末32に電子ビーム15を照射する。このとき、金属粉末32の上にマスクカバー30を被せて電子ビーム15を照射することにより、予備加熱工程S6における粉末飛散の発生が、マスクカバー30の電気的なシールド効果によって抑制される。また、ビーム照射装置14は、造形物38を形成するための領域(以下、「造形領域」ともいう。)よりも広範囲に電子ビーム15を走査する。これにより、造形領域に存在する金属粉末32と、造形領域の周囲に存在する金属粉末32とが、共に仮焼結される。
なお、図1において、符号E1は、未焼結の金属粉末32が存在する未焼結領域を示し、符号E2は、仮焼結された金属粉末32が存在する仮焼結領域を示している。
(本焼結工程)
次に、ビーム照射装置14は、制御部50から与えられる制御指令に基づいて動作することにより、金属粉末32を溶融および凝固によって本焼結させる(ステップS7)。
ステップS7においては、上述のように仮焼結させた金属粉末32を電子ビーム15の照射によって溶融および凝固させることにより、仮焼結体としての金属粉末32を本焼結させる。ステップS7において、ビーム照射装置14は、目的とする造形物38の三次元CADデータを一定の厚み(ΔZに相当する厚み)にスライスした二次元データに基づいて造形領域を特定し、この造形領域を対象に電子ビーム15を走査することにより、造形プレート22上の金属粉末32を選択的に溶融する。電子ビーム15の照射によって溶融した金属粉末32は、電子ビーム15が通過した後に凝固する。これにより、1層目の造形物が形成される。
(プレート下降工程)
次に、プレート移動装置26は、制御部50から与えられる制御指令に基づいて動作することにより、造形プレート22を所定量(ΔZ)だけ下降させる(ステップS8)。
ステップS8において、プレート移動装置26は、造形プレート22およびインナーベース24をΔZだけ下降させる。
(第1予備加熱工程)
続いて、ビーム照射装置14は、制御部50から与えられる制御指令に基づいて動作することにより、造形プレート22上の粉末層32aを予備加熱する(ステップS9)。この第1予備加熱工程S9においては、次の層の金属粉末32を敷き詰めるための準備として、その前の層で本焼結工程を終えた粉末層32aを予備加熱する。本焼結工程の後に行われる予備加熱は、アフターヒートとも呼ばれる。
ステップS9において、ビーム照射装置14は、マスクカバー30の開口部30aを通して粉末層32aに電子ビーム15を照射するとともに、粉末層32a上で電子ビーム15を走査する。これにより、開口部30aに露出している粉末層32aは、金属粉末32が仮焼結する程度の温度に加熱される。
(マスク上昇工程)
次に、マスクカバー昇降装置52は、制御部50から与えられる制御指令に基づいて動作することにより、マスクカバー30を上昇させる(ステップS10)。
ステップS10において、マスクカバー昇降装置52は、次のステップS11でスキージ16cがマスクカバー30に接触しないよう、スキージ16cよりも高い位置までマスクカバー30を上昇させる。
(粉末塗布工程)
次に、粉末塗布装置16は、制御部50から与えられる制御指令に基づいて動作することにより、造形プレート22上に金属粉末32を塗布して粉末層32aを形成する(ステップS11)。
ステップS11において、粉末塗布装置16は、上記ステップS4と同様に動作する。これにより、造形プレート22上では、1層目の金属粉末32によって形成された焼結体の上に、2層目の金属粉末32が敷き詰められる。
(マスクカバー下降工程)
次に、マスクカバー昇降装置52は、制御部50から与えられる制御指令に基づいて動作することにより、マスクカバー30を下降させる(ステップS12)。
ステップS12において、マスクカバー昇降装置52は、上記ステップS5と同様に動作する。
(第2予備加熱工程)
次に、ビーム照射装置14は、制御部50から与えられる制御指令に基づいて動作することにより、2層目の粉末層32aを形成している金属粉末32を予備加熱する(ステップS13)。この第2予備加熱工程S13においては、この後に行われる本焼結工程での粉末飛散を抑制するために粉末層32aを予備加熱する。
ステップS13において、ビーム照射装置14は、上記ステップS6と同様に動作する。これにより、2層目の粉末層32aを形成している金属粉末32が仮焼結される。
(本焼結工程)
次に、ビーム照射装置14は、制御部50から与えられる制御指令に基づいて動作することにより、2層目の粉末層32aを形成している金属粉末32を溶融および凝固によって本焼結させる(ステップS14)。
ステップS14において、ビーム照射装置14は、上記ステップS7と同様に動作する。これにより、2層目の造形物が形成される。
次に、制御部50は、目的とする造形物38の造形が完了したか否かを確認する(ステップS15)。そして、制御部50は、造形物38の造形が完了していないと判断すると、上記ステップS8に戻る。これにより、制御部50は、3層目以降の各層についても、上記ステップS8~S14の工程を繰り返す。そして、造形物38の造形が完了したと判断すると、その時点で一連の処理を終える。
図4は、本発明の第1実施形態に係る粉末塗布工程の処理手順を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、制御部50の制御下で行われるとともに、図3のステップS11に適用される。
まず、図1に示す配置状態のもとで、粉末投下器16bは、制御部50からの制御指令に従って、造形テーブル18の上に金属粉末32を投下する(ステップS101)。このとき、粉末投下器16bが投下する金属粉末32の量は、ΔZの厚さで粉末層32aを形成するのに必要な塗布量に相当する。
次に、画像処理部56は、制御部50からの制御指令に従って、カメラ42からの画像の取り込みを開始する(ステップS102)。カメラ42は、制御部50の制御下でカメラ電源が投入された後、粉末層32aの造形面32bを継続的に撮影する。カメラ42が撮影する画像は、静止画でも動画でもよい。静止画の場合は、所定のフレームレートでカメラ42の画像が画像処理部56に取り込まれるものとする。
次に、スキージ16cは、制御部50からの制御指令に従って、図1に示す造形テーブル18上を左端から右端に向かって移動を開始する(ステップS103)。このとき、スキージ16cは、金属粉末32をブレード16dで押し込みながら移動する。スキージ16cが移動する様子は、カメラ42が撮影する画像に映し出される。本実施形態において、カメラ42は、マスクカバー30の開口部30aを通して粉末層32aの造形面32bを撮影する。このため、カメラ42が撮影する画像には、マスクカバー30の開口部30aを横切るように造形面32bを通過するスキージ16cの様子が映し出される。また、画像処理部56には、スキージ16cが造形面32bを通過している最中にカメラ42が撮影した画像が取り込まれる。
次に、判断部58は、スキージ16cが造形面32bを通過中に所定のフレームレートで得られるカメラ42の撮影画像を用いて、ΔAを画素毎に算出する(ステップS104)。ΔAは、造形面32bの状態を時系列に表すフレーム画像において、スキージ16cが通過した直後の画像の予測特徴量と、スキージ16cが通過した直後の画像の特徴量(実測特徴量)との差である。画像の特徴量は、粉末塗布工程前の予備加熱工程で加熱された造形面32bの温度変化に応じて数値が変化するものであればよい。好ましい一例を挙げると、画像の特徴量は、画像の輝度および彩度のうち少なくとも一方である。本実施形態においては、画像の特徴量が画像の輝度である場合を例に挙げて説明する。その場合、上述した画像の予測特徴量は、画像の予測輝度と置き換えられ、画像の特徴量は、画像の輝度(実測輝度)と置き換えられる。
画像の予測輝度は、スキージ16cが通過する前の画像の輝度の経時変化から予測される輝度である。スキージ16cが通過した直後とは、金属粉末32の塗布不良が発生した場合と発生しなかった場合とを判別できる程度に、画像の特徴量(輝度または彩度)に差が生じている時間の範囲をいう。予測特徴量と実測特徴量との差を確認するタイミングを、スキージ16cが通過した直後に限定する理由は、次の通りである。
まず、スキージ16cの通過により金属粉末32が正常に塗布された場合は、造形面32bの画像の輝度が一旦下がった後、時間の経過によって徐々に上昇し、その後で減少傾向に転じる。これに対して、金属粉末32が正常に塗布されなかった場合は、造形面32bの画像の輝度が一様に緩やかに低下する。そして、スキージ16cが通過した直後よりも長い時間が経過してしまうと、金属粉末32の塗布不良が発生した場合と発生しなかった場合で画像の輝度にほとんど違いが生じなくなる。つまり、スキージ16cが通過してから一定以上の時間が経過すると、金属粉末32の塗布不良が発生した場合と発生しなかった場合とを判別することが困難になる。このため、予測特徴量と実測特徴量との差を確認するタイミングを、スキージ16cが通過した直後に限定している。
判断部58は、スキージ16cが通過する前の画像の輝度の経時変化を基に、該輝度の経時変化を示す近似式を求めるとともに、求めた近似式に従って、スキージ16cが通過した直後の予測輝度を決定する。以下、予測輝度の決定方法について詳しく説明する。
図5は、画像の実測輝度と近似式との関係を説明する図であって、図5の縦軸は画像の輝度、横軸は時間を示している。
画像の実測輝度70は、カメラ42によって造形面32bを撮影して得られる画像が、図6A~Cに示すような画像74であるとすると、この画像74を構成する複数の画素のうち、任意の画素74aにおける輝度の変化を示している。画像の実測輝度70は、時間軸上で3つの期間に大別される。具体的には、実測輝度70は、図6Aに示すようにスキージ16cが画素74aを通過する前に得られる実測輝度70aと、図6Bに示すようにスキージ16cが画素74aを通過中に得られる実測輝度70bと、図6Cに示すようにスキージ16cが画素74aを通過した後に得られる実測輝度70cとに大別される。
実測輝度70aが徐々に低下している理由は、粉末塗布工程前の予備加熱工程で加熱されて赤熱した造形面32bの温度が時間の経過によって徐々に低下し、それにつれて造形面32bの色合いが徐々に暗くなるからである。実測輝度70bが急激に低下している理由は、カメラ42から見て造形面32bの手前にスキージ16cが存在し、スキージ16cが造形面32bよりも暗く映し出されるからである。実測輝度70cが徐々に上昇している理由は、スキージ16cの通過によって造形面32bを覆った新規の金属粉末32が、造形面32bから伝えられる熱で徐々に昇温し、赤みを増していくからである。
判断部58は、スキージ16cが通過する前に得られる実測輝度70aの経時変化を示す近似式を求める。近似式72は、たとえば最小二乗法によって求めることができる。この場合、近似式72は、図5に示す実測輝度70aの変化の傾きを示す直線、または、この直線に近い線で表すことができる。また、近似式72は、スキージ16cの通過中および通過後においては、造形面32b上に新たな金属粉末32が塗布されなかった場合に予測される輝度の変化を示している。
次に、判断部58は、先ほど求めた近似式72に従って予測輝度Lv1を決定する。予測輝度Lv1は、スキージ16cが通過した直後の時間(タイミング)をtとすると、この時間tを近似式72に入力して演算することにより得られる。
以上の方法により、スキージ16cが通過した直後の予測輝度を決定することができる。
次に、判断部58は、スキージ16cが通過した直後の時間tで得られる実測輝度Lv2を取得する。
次に、判断部58は、上述した予測輝度Lv1と実測輝度Lv2との差をΔAとして算出する。すなわち、判断部58は、ΔA=Lv1-Lv2の計算式により、輝度差ΔAを求める。輝度差ΔAの値は、スキージ16cの通過によって造形面32bに金属粉末32が正常に塗布された場合は大きな値となり、正常に塗布されなかった場合は小さな値になる。金属粉末32が正常に塗布された場合とは、造形面32bの上に新たな金属粉末32がΔZ相当の厚みで塗布された場合をいう。これに対し、金属粉末32が正常に塗布されなかった場合とは、造形面32bの上に新たな金属粉末32がまったく塗布されていないか、塗布されていても塗布厚がΔZに比べて不足している場合をいう。
上述した輝度差ΔAは、スキージ16cの移動中にカメラ42が撮影した造形面32bの画像を構成する画素ごとに算出される。このため、造形面32bの画像が合計M個の画素によって構成される場合、判断部58は、合計M個の輝度差ΔAを算出する。
次に、画像処理部56は、スキージ16cが造形面32bを完全に通過したか否かを判断する(ステップS105)。スキージ16cが造形面32bを完全に通過すると、スキージ16cがマスクカバー30のマスク部30bに隠れて見えなくなる。このため、画像処理部56は、カメラ42から取り込まれる画像にスキージ16cが映らなくなった時点で、スキージ16cが造形面32bを完全に通過したと判断する。そして、ステップS105でNOと判断した場合は、上記ステップS104に戻る。これにより、スキージ16cが造形面32bを完全に通過するまで輝度差ΔAの算出が継続される。このため、造形面32bの画像を構成するすべての画素について、輝度差ΔAの値が得られる。
一方、ステップS105でYESと判断した場合はステップS106に進む。ステップS106において、画像処理部56は、カメラ42からの画像の取り込みを終了する。
その後、スキージ16cが移動終点まで移動したことを、たとえば図示しない終点検出センサによって検出すると、この検出結果に基づく制御部50からの制御指令に従って、スキージ16cの移動が終了する(ステップS107)。スキージ16cの移動終点は、図1に示す造形テーブル18の右端に設定されている。また、図4のフローチャートには記載していないが、スキージ16cは移動終点まで移動した後、粉末層32aの上面を均しながら移動始点まで戻る。つまり、スキージ16cは、造形テーブル18上を往復移動する。
次に、判断部58は、上述のように算出した輝度差ΔAと予め設定された第1閾値SH1との大小関係を画素毎に比較し、この比較結果に基づいて、ΔA≦SH1の条件を満たす画素の総数Bを算出する(ステップS108)。第1閾値SH1は、判断部58において、金属粉末32が正常に塗布された画素と正常に塗布されなかった画素とを判別するために設定される閾値である。そして、ΔA≦SH1の条件を満たす画素は、金属粉末32が正常に塗布されなかったと判定される画素、つまり金属粉末32の塗布不良が疑われる画素(以下、「異常画素」ともいう。)である。また、ΔA>SH1の条件を満たす画素は、金属粉末32が正常に塗布されたと判定される画素(以下、「正常画素」ともいう。)である。
次に、判断部58は、上述のように算出した異常画素の総数Bと予め設定された第2閾値SH2との大小関係を比較する(ステップS109)。第2閾値SH2は、スキージ16cの移動によって造形プレート22上に新規に塗布された金属粉末32(粉末層32a)に、造形物の欠陥につながるおそれのあるレベルの塗布不良が発生したか否かを判別するために設定される閾値である。塗布不良に起因する造形物の欠陥としては、許容値を超える寸法精度の狂いなどが考えられる。第2閾値SH2は、カメラ42によって撮影される造形面32bの画像が合計M個の画素によって構成される場合に、Mよりも充分に小さい値に設定される。第2閾値SH2は、造形物に許容される欠陥のレベルに応じて任意に設定または変更することが可能である。
ステップS109において、異常画素の総数Bが第2閾値SH2を超える場合は、判断部58は、金属粉末32の塗布不良が発生したと判断(ステップS109でYESと判断)する。また、ステップS109において、異常画素の総数Bが第2閾値SH2以下である場合は、判断部58は、金属粉末32の塗布不良が発生しなかったと判断(ステップS109でNOと判断)する。
ステップS109でYESと判断した場合は、上記図3のステップS9に移行する。この場合、制御部50は、今回の層の造形について第1予備加熱工程S9および粉末塗布工程S11をやり直す。また、ステップS109でNOと判断した場合は、上記図3のステップS12に進む。この場合、制御部50は、今回の層の造形について第1予備加熱工程S9および粉末塗布工程S11をやり直すことなく、第2予備加熱工程S13および本焼結工程S14を行う。
なお、図4に示すフローチャートは、図3のステップS11だけでなくステップS4にも適用することが可能である。また、粉末塗布工程をやり直す場合、制御部50は、粉末塗布装置16による金属粉末32の塗布量(換言すると、粉末投下器16bによる金属粉末32の投下量)を、やり直し前よりも増やすように、粉末塗布装置16を制御してもよい。これにより、やり直し後の粉末塗布工程において、金属粉末32の塗布量の不足に起因する塗布不良の発生を抑制することができる。
以上説明したように、本発明の第1実施形態に係る三次元積層造形装置10は、スキージ16cが造形面32bを移動中にカメラ42によって撮影された画像を用いて、金属粉末32の塗布不良が発生したか否かを判断する判断部58を備えている。これにより、金属粉末32の塗布不良の発生を自動的に検出することができる。また、粉末塗布工程で塗布不良が発生したと判断部58が判断した場合は、塗布不良が発生しなかった場合と異なる態様で三次元積層造形装置10を動作させることにより、塗布不良が発生した後の造形作業を好適に継続することができる。その結果、塗布不良によって造形物の寸法精度が低下することが抑制することができる。
また、本発明の第1実施形態において、判断部58は、スキージ16cが造形面32bを通過中にカメラ42によって撮影された画像を用いて、スキージ16cが通過する前の画像の輝度の経時変化から予測される、スキージ16cが通過した直後の予測輝度Lv1と、スキージ16cが通過した直後の実測輝度Lv2との差(ΔA)を求めるとともに、求めた差に基づいて、金属粉末32の塗布不良が発生したか否かを判断する。これにより、粉末塗布工程におけるスキージ16cの移動と並行して、塗布不良の発生有無を判断するためのデータ(ΔA)をリアルタイムに取得することができる。このため、塗布不良の発生を早期に検出することが可能となる。
また、本発明の第1実施形態において、制御部50は、塗布不良が発生したと判断部58が判断した場合に、今回の層の造形について第2予備加熱工程および本焼結工程を行う前に、第1予備加熱工程および粉末塗布工程をやり直す。これにより、最初の粉末塗布工程で金属粉末32の塗布不良が発生した場合でも、その後に、第1予備加熱工程および粉末塗布工程をやり直すことで、粉末層32aの積層状態を良好な状態に回復させることができる。したがって、造形物に寸法精度の狂いなどの欠陥が生じることを抑制することができる。
また、本発明の第1実施形態によれば、真空チャンバー12内の汚染または破損を抑制することができる。その理由は下記の通りである。
粉末塗布工程で塗布不良が発生したことに伴って粉末層32aの厚さが部分的または全体的にΔZよりも薄くなった場合に、そのまま何も対策をとらずに通常どおり造形作業を継続すると、次の層について粉末塗布工程を行ったときに、粉末層32aの厚さが部分的または全体的にΔZよりも厚くなることがある。そうした場合、第1予備加熱工程(アフターヒート工程)で前層の粉末層32aに蓄えた熱量が、次の層を形成する粉末層32a全体に行き渡らず、仮焼結が十分に促進されないおそれがある。その結果、第2予備加熱工程(パウダーヒート工程)では、金属粉末32の粉末粒子が高い電気抵抗をもったまま電子ビーム15が金属粉末32に照射されるため、粉末の電荷の中和が促進されず、電荷同士の反発によって粉末が飛散する現象、すなわちスモークが発生する可能性が高くなる。スモークが発生すると、真空チャンバー12内に飛び散った粉末粒子が広範囲に散乱し、真空チャンバー12の内部を汚染したり、真空チャンバー12内に配置された部品を破損したりするおそれがある。
これに対し、本発明の第1実施形態においては、仮に塗布不良の発生によって粉末層32aの厚さが部分的または全体的に薄くなった場合でも、第1予備加熱工程および粉末塗布工程のやり直しにより、粉末層32aの厚さが全体的に均一(ΔZ)になるように金属粉末32を敷き詰めることができる。このため、仮焼結を十分に促進し、第2予備加熱工程におけるスモークの発生を抑制することができる。したがって、真空チャンバー12内の汚染または破損を抑制することができる。
なお、上記第1実施形態においては、異常画素の総数Bを算出し、算出した総数Bが第2閾値SH2を超える場合に、金属粉末32の塗布不良が発生したと判断しているが、本発明はこれに限らず、異常の総数Bに代えて異常画素の総面積を算出してもよい。そして、算出した異常画素の総面積が第2閾値を超える場合に、金属粉末32の塗布不良が発生したと判断してもよい。
<第2実施形態>
図7は、本発明の第2実施形態に係る粉末塗布工程の処理手順を示すフローチャートである。
図7に示すように、本発明の第2実施形態においては、上述した第1実施形態(図4参照)の処理手順と比較して、ステップS101からステップS109までの処理の流れは同じであるが、ステップS109でYESと判断した後の処理の流れが異なる。
具体的には、ステップS109でYESと判断すると、ステップS110に移行する。
ステップS110において、制御部50は、ステップS109で塗布不良が発生したと判断部58が2回以上連続で判断したか否かを確認する。そして、制御部50は、ステップS110でYESと判断した場合は、上記図3のステップS9に移行する。この場合、制御部50は、今回の層の造形について第1予備加熱工程S9および粉末塗布工程S11をやり直す。
これに対し、制御部50は、ステップS110でNOと判断した場合、つまり塗布不良が発生したと判断部58が判断した回数が1回(初回)である場合は、ステップS111に進む。
次に、ステップS111において、制御部50は、次の層の造形に適用される条件を予約した後、上記図3のステップS12に戻る。次の層の造形に適用される条件は、粉末飛散が無しの場合に適用される条件(以下、「通常条件」ともいう。)とは異なる内容で予約される。具体的には、制御部50は、第1予備加熱工程S9の実行時間を延長する予約、粉末塗布工程S11における粉末材料の塗布量を増やす予約、および、本焼結工程S14で粉末層32aに加えられるエネルギーを増強する予約を行う。第1予備加熱工程S9の実行時間とは、第1予備加熱工程S9において電子ビーム15の照射(走査)を開始してから終了するまでの時間である。第1予備加熱工程S9の実行時間を延長すると、通常条件を適用する場合に比べて電子ビーム15の照射時間が長くなり、その分だけ粉末層32aの温度が高くなる。このため、第1予備加熱工程S9の実行時間を延長する予約に代えて、第1予備加熱工程S9の加熱目標温度を通常条件よりも高くする予約を行ってもよい。粉末材料の塗布量は、粉末塗布工程S11で粉末投下器16bから投下される金属粉末32の投下量によって規定される。このため、制御部50は、粉末投下器16bによる金属粉末32の投下量を通常条件よりも増やす予約を行う。
本焼結工程S14で粉末層32aに加えられるエネルギーを増強する方法としては、たとえば下記(a)、(b)および(c)の方法が考えられる。
(a)本焼結工程S14で粉末層32aに照射する電子ビーム15のビーム電流を通常条件よりも大きくする。
(b)本焼結工程S14で粉末層32aに照射する電子ビーム15の走査速度を通常条件よりも低下させる。
(c)上記の(a)および(b)を同時に実施する。
なお、ステップS111において、制御部50は、第1予備加熱工程S9の実行時間を延長する予約、第1予備加熱工程S9の加熱目標温度を高くする予約、粉末塗布工程S11における粉末材料の塗布量を増やす予約、および、本焼結工程S14で粉末層32aに加えられるエネルギーを増強する予約のうち、すべての予約を行ってもよいし、いずれか3つ、いずれか2つ、または、いずれか1つの予約を行ってもよい。また、ステップS111で予約した条件は、次の層だけでなく、次の層を含む2以上の層に連続して適用してもよい。
このように、ステップS111で次の層の造形に適用される条件を予約してからステップS12に戻る場合、制御部50は、今回の層の造形について第1予備加熱工程S9および粉末塗布工程S11をやり直すことなく、第2予備加熱工程S13および本焼結工程S14を行う。そして、制御部50は、次の層についてステップS8~S14の処理を行う場合に、第1予備加熱工程S9では、上記ステップS111で予約した実行時間、および/または、加熱目標温度を適用し、粉末塗布工程S11では、上記ステップS111で予約した粉末材料(金属粉末32)の塗布量を適用し、本焼結工程S109では、上記ステップS111で予約したエネルギー量を適用する。
なお、図示はしないが、同じ層を対象にステップS109でYESと判断された回数が、既定の回数N(Nは2よりも大きい整数)に達した場合は、たとえばホッパー16aの粉末残量が空になったなど、粉末塗布工程をやり直しても回復不可能な異常が三次元積層造形装置10に発生した可能性がある。その場合は装置保全のために三次元積層造形装置10の動作を停止させることが好ましい。この点は、上述した第1実施形態についても同様である。
このように、本発明の第2実施形態において、制御部50は、粉末材料の塗布不良が発生したと判断部58が判断した場合に、次の層の造形に適用される条件を、粉末材料の塗布不良が発生しなかった場合に適用される条件とは異なる内容で予約したうえで、今回の層の造形について第2予備加熱工程13および本焼結工程S14を行う。そして、制御部50は、次の層の造形については上記予約した条件に従って、プレート下降工程S8、第1予備加熱工程S9、粉末塗布工程S11、第2予備加熱工程S13および本焼結工程S14を行う。
これにより、上述した第1実施形態に比べて、造形スループットの向上を図ることができる。その理由は下記の通りである。
まず、上述した第1実施形態においては、粉末材料の塗布不良が発生したと判断部58が判断した場合に、今回の層の造形について第1予備加熱工程S9および粉末塗布工程S11をやり直すようにしている。このような工程のやり直しは、粉末層32aの積層状態を回復させて欠陥の発生を抑制する効果が得られる反面、造形スループットの低下につながる。これに対し、本第2実施形態においては、粉末材料の塗布不良が発生したと判断部58が判断した場合に、次の層の造形に適用される条件を予約したうえで、今回の層の造形について第2予備加熱工程S13および本焼結工程S14を行う。このため、工程のやり直しにともなう造形スループットの低下を抑えることができる。
また、次の層の造形を、予約した条件に従って行うことにより、塗布不良にともなう粉末層32aの厚みの変化に適切に対応することができる。詳述すると、今回の層の造形について粉末塗布工程S11で塗布不良が発生すると、粉末層32aの厚さが部分的または全体的に薄くなる。このため、次の層の造形について粉末塗布工程を行うと、前層の薄さを補うように金属粉末32が厚く塗布される。たとえば、図8Aに示すように今回の層の造形について粉末層32a-1の厚みが部分的にΔZよりも薄くなった場合、その粉末層32aの上に次の層の粉末層32a-2を形成すると、図8Bに示すように造形面32b-2の厚みが部分的にΔZよりも厚くなる。そうした場合、通常条件と同じ内容で造形すると、第1予備加熱工程S9で加熱不足が発生したり、粉末塗布工程S14で塗布量不足が発生したり、本焼結工程S14でエネルギー不足が発生したりする。本第2実施形態においては、次の層の造形に適用される条件の予約として、第1予備加熱工程S9の実行時間を延長する予約、粉末塗布工程S11における粉末材料の塗布量を増やす予約、および、本焼結工程S14で粉末層32aに加えられるエネルギーを増強する予約を行う。このため、第1予備加熱工程S9での加熱不足や粉末塗布工程S11での塗布不足、さらには本焼結工程S14でのエネルギー不足を回避することができる。したがって、塗布不良にともなう粉末層32aの厚みの変化に適切に対応することができる。また、工程のやり直しを行わなくても、造形物の積層を良好な状態に回復させることができる。
<第3実施形態>
図9は、本発明の第3実施形態に係る粉末塗布工程の処理手順を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、制御部50の制御下で行われるとともに、図3のステップS11、および/または、ステップS4に適用される。
まず、図1に示す配置状態のもとで、粉末投下器16bは、制御部50からの制御指令に従って、造形テーブル18の上に金属粉末32を投下する(ステップS201)。ステップS201は、上述したステップS101と同様に行われる。
次に、スキージ16cは、制御部50からの制御指令に従って、図1に示す造形テーブル18上を左端から右端に向かって移動を開始する(ステップS202)。ステップS202は、上述したステップS103と同様に行われる。
次に、画像処理部56は、スキージ16cが造形面32bを完全に通過したか否かを判断する(ステップS203)。ステップS203は、上述したステップS105と同様に行われる。そして、ステップS203でNOと判断した場合は、スキージ16cが造形面32bを完全に通過するまで待ち、ステップS203でYESと判断した場合はステップS204に進む。ステップS204において、画像処理部56は、カメラ42からの画像を取り込む。これにより、スキージ16cが造形面32bを通過した直後の粉末層32aの状態を示す画像が得られる。スキージ16cが造形面32bを通過した直後のカメラ画像を用いる理由については後述する。
その後、スキージ16cが移動終点まで移動したことを、たとえば図示しない終点検出センサによって検出すると、この検出結果に基づく制御部50からの制御指令に従って、スキージ16cの移動が終了する(ステップS205)。ステップS205は、上述したステップS107と同様に行われる。また、スキージ16cは移動終点まで移動した後、粉末層32aの上面を均しながら移動始点まで戻る。
次に、判断部58は、上記ステップS204で画像処理部56が取り込んだ画像を用いて、金属粉末32の塗布不良が発生したか否かを以下の処理によって判断する。
まず、判断部58は、画像処理部56が取り込んだ画像を二値化する(ステップS206)。画像の二値化は、金属粉末32の塗布不良が発生したか否かを判断部58が判断するための前処理として行われる。以下、詳しく説明する。
予備加熱を終えた粉末層32aの上に、次の層の金属粉末32を敷き詰めると、造形面32bの温度が下がる。このため、カメラ42によって撮影される造形面32bの画像は、次の層の金属粉末32を敷き詰める前に比べて少し暗くなる。ただし、次の層の金属粉末32が正常に塗布されず、粉末層32aの厚みが部分的にΔZよりも薄くなった場合は、その部分の画像が、正常に塗布された場合に比べて明るくなる。このため、スキージ16cによって金属粉末32の塗布を終えた後の造形面32bの画像をカメラ42から取り込んで二値化することにより、その画像の輝度分布を白黒画像によって把握することができる。白黒画像は、白領域と黒領域の組み合わせからなる画像である。また、粉末層32aの造形面32bの画像において、金属粉末32が正常に塗布された部分は暗い画像となり、正常に塗布されなかった部分は明るい画像となって映し出される。
そこで、判断部58は、二値化後の白黒画像から把握される画像の輝度分布に基づいて、金属粉末32の塗布不良が発生したか否かを判断する。具体的には、ステップS207において、判断部58は、二値化後の白黒画像に占める白領域の割合が所定値を超える場合は、塗布不良が発生したと判断(ステップS207でYESと判断)し、それ以外の場合(ステップS207でNOと判断した場合)は、塗布不良が発生しなかったと判断する。そして、ステップS207でYESと判断した場合は、上記図3のステップS9に移行し、ステップS207でNOと判断した場合は、上記図3のステップS12に進む。
ここで、スキージ16cが造形面32bを通過した直後のカメラ画像を用いる理由について説明する。
まず、スキージ16cが金属粉末32を敷き詰めながら造形面32bを通過すると、金属粉末32が正常に塗布された部分は、下地となる下層(前層)の造形面32bが新たに塗布された金属粉末32に覆われるため、造形面32bの画像の輝度が低下する。ただし、その後の時間経過により、造形面32bの画像の輝度は徐々に上昇する。なぜなら、新たに塗布された金属粉末32が下地の造形面32bから伝えられる熱によって昇温し、造形面32bの画像が次第に明るくなるからである。造形面32bの画像が時間の経過により一定以上に明るくなると、金属粉末32が正常に塗布された場合と正常に塗布されなかった場合で、輝度分布に明瞭な差が現れなくなる。一方、スキージ16cが造形面32bを通過した直後のカメラ画像には、金属粉末32が正常に塗布された場合と正常に塗布されなかった場合で、輝度分布に明瞭な差が現れる。このため、塗布不良の有無を的確に判断するには、スキージ16cが造形面32bを通過した直後のカメラ画像を用いる必要がある。スキージ16cが造形面32bを通過した直後とは、金属粉末32の塗布不良が発生した場合と発生しなかった場合とを判別できる程度に、画像の輝度分布に差が生じている時間の範囲をいう。
以上説明したように、本発明の第3実施形態に係る三次元積層造形装置10は、スキージ16cがスキージ16cを通過した直後にカメラ42によって撮影された画像を用いて、金属粉末32の塗布不良が発生したか否かを判断する判断部58を備えている。これにより、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
また、本発明の第3実施形態において、判断部58が塗布不良の発生を検出した場合(ステップS207でYESと判断した場合)に、上記図7に示すステップS110に移行することにより、上記第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
なお、スキージ16cが造形面32bを通過した直後にカメラ42によって撮影された画像を二値化し、この二値化によって得られる白黒画像に基づいて、金属粉末32の塗布不良の発生有無を判断する方法は、上記の方法に限らず、たとえば下記のような種々の変形が可能である。
(第1の変形例)
まず、粉末投下器16bにより投下した金属粉末32をスキージ16cの移動によって敷き詰める場合に、その前に行われる予備加熱工程の設定温度や、使用する金属粉末32の種類によっては、粉末敷き詰め後の比較的早い段階で金属粉末32が加熱され、赤熱し始めることがある。このため、たとえばスキージ16cを図1の左から右に向かって移動させた場合は、スキージ16cの移動始点に近い左側から先に金属粉末32が赤熱し始める。したがって、カメラ42の撮影画像を二値化して得られる白黒画像には、図10Aに示すように、スキージ16cの移動方向上流側(図10Aの左側)に、金属粉末32の赤熱にともなって輝度の高い部分、すなわち白領域80が広く現れる可能性がある。この白領域80は塗布不良が発生していない場合でも現れるため、実際に塗布不良の発生有無を判断する場合は、二値化後の白黒画像から白領域80の部分を差し引くことが好ましい。
白領域80の部分を差し引くとは、実質的に、白領域80を黒領域とみなすことを意味する。差し引くべき白領域80がどの部分になるかは、予め実験等によって特定しておけばよい。これにより、たとえば図10Bに示すように、二値化後の白黒画像のなかに、塗布不良にともなう白領域82と、上述した白領域80とが存在する場合に、白領域80の影響を排除して白領域82だけを抽出し、白領域82の割合に基づいて塗布不良の発生有無を判断することができる。また、図10Bに示す白黒画像において、スキージ移動方向上流側の画像に現れる白領域80を無視し、スキージ移動方向下流側の画像に現れる白領域82の割合が所定値を超える場合に、金属粉末32の塗布不良が発生したと判断してもよい。参考までに、図11Aは、塗布不良が発生しなかった場合のカメラ画像を二値化して得られた白黒画像であり、図11Bは、塗布不良が発生した場合のカメラ画像を二値化して得られた白黒画像である。なお、図11においては、図面表記の都合により、造形面32bの外形を白線の円で示している。この点は、後述する図13においても同様である。
(第2の変形例)
金属粉末32の塗布不良は、主にスキージ16cの移動方向下流側で発生する。このため、判断部58は、カメラ42によって撮影された画像を二値化して得られる白黒画像において、スキージ移動方向下流側の画像に現れる白領域がスキージ移動方向上流側の画像に現れる白領域よりも広い場合に、金属粉末32の塗布不良が発生したと判断してもよい。具体的には、図12に示すように、スキージ移動方向であるX方向において、二値化後の白黒画像84を、X方向の中心位置を境に、スキージ移動方向上流側の画像84aと、スキージ移動方向下流側の画像84bとに分ける。そして、判断部58は、スキージ移動方向下流側の画像84bに現れる白領域86がスキージ移動方向上流側の画像84bに現れる白領域(図示せず)よりも広い場合に、金属粉末32の塗布不良が発生したと判断する。参考までに、図13Aは、塗布不良が発生しなかった場合のカメラ画像を二値化して得られた白黒画像であり、図13Bおよび図13Cは、いずれも、塗布不良が発生した場合のカメラ画像を二値化して得られた白黒画像である。図13Aから分かるように、塗布不良が発生しなかった場合でも、スキージ移動方向の上流側に位置する画像部分には白領域88が広く現れている。これは、上述したように粉末敷き詰め後の比較的早い段階で金属粉末32が赤熱し始めるためである。よって、この場合も、スキージ移動方向上流側の画像に現れる白領域88の部分を差し引く、あるいは無視して、スキージ移動方向下流側の画像に現れる白領域とスキージ移動方向上流側の画像に現れる白領域の広さを比較し、この比較結果に基づいて塗布不良の発生有無を判断するとよい。また、画像84aと画像84bとに分ける位置は、X方向の中心位置に限らず、X方向の中心位置よりも少し上流側または下流側に偏った位置であってもよい。
また、照明光源から造形面32bに光が照射された場合に、照明光源とカメラ42との位置関係等により、カメラ42から常に明るく見える領域(換言すると、二値化によって常に白領域となる画像部分)が存在する場合は、その領域についても差し引く、あるいは無視することにより、塗布不良の発生有無を的確に判断することができる。
また、上記第3実施形態においては、カメラ42によって撮影された画像を二値化することにより、白領域と黒領域とからなる白黒画像、すなわち2階調画像が表す輝度分布に基づいて、金属粉末32の塗布不良が発生したか否かを判断しているが、本発明はこれに限らない。たとえば、カメラ42によって撮影された画像をグレースケールの多階調画像に変換し、この多階調画像が表す輝度分布に基づいて、金属粉末32の塗布不良が発生したか否かを判断してもよい。
また、上記第3実施形態においては、スキージ16cが造形面32bを通過直後にカメラ42によって撮影された画像の輝度分布に基づいて、金属粉末32の塗布不良が発生したか否かを判断しているが、本発明はこれに限らず、画像の輝度分布に代えて画像の彩度分布を採用してもよい。その理由は、次の通りである。
まず、粉末塗布工程の前に行われる予備加熱工程(一次予備加熱工程)で粉末層32aに電子ビーム15を照射すると、粉末層32aの造形面32bが赤熱して赤くなる。次に、赤熱した状態の造形面32bの上に粉末塗布工程で金属粉末32を塗布すると、金属粉末32が正常に塗布された部分は赤みが弱まって黒っぽい色合い、すなわち彩度が低くなり、金属粉末32が正常に塗布されなかった部分は下地(赤熱状態)の造形面32bの色が浮き出て赤い色合い、すなわち彩度が高くなる。よって、輝度分布に代えて彩度分布を採用した場合でも、塗布不良の発生有無を判断することができる。
10…三次元積層造形装置
14…ビーム照射装置
15…電子ビーム(ビーム)
16…粉末塗布装置
22…造形プレート
26…プレート移動装置
32…金属粉末(粉末材料)
32a…粉末層
32b…造形面
38…造形物
42…カメラ
50…制御部
58…判断部

Claims (17)

  1. 造形プレートと、
    前記造形プレートを上下方向に移動させるプレート移動装置と、
    前記造形プレート上に粉末材料を塗布して粉末層を形成する装置であって、前記造形プレート上を移動して前記粉末材料を敷き詰めるスキージを有する粉末塗布装置と、
    前記造形プレートまたは前記粉末層にビームを照射するビーム照射装置と、
    前記粉末塗布装置および前記ビーム照射装置を制御することにより、粉末塗布工程、パウダーヒート工程、本焼結工程およびアフターヒート工程を経て1層分の造形物を形成するとともに、前記プレート移動装置を制御して前記1層分の造形物を積層して三次元の造形物を造形する制御部と、
    前記粉末層の造形面を撮影するカメラと、
    前記スキージが前記造形面を通過中または通過直後に前記カメラによって撮影された画像を用いて、前記粉末材料の塗布不良が発生したか否かを判断する判断部と、
    を備え、
    前記判断部は、前記スキージが前記造形面を通過中に前記カメラによって撮影された画像を用いて、前記スキージが通過する前の画像の特徴量の経時変化から予測される、前記スキージが通過した直後の予測特徴量と、前記スキージが通過した直後の画像の特徴量との差を求めるとともに、求めた差に基づいて、前記粉末材料の塗布不良が発生したか否かを判断する
    三次元積層造形装置。
  2. 前記判断部は、前記スキージが通過する前の画像の特徴量の経時変化を基に、該特徴量の経時変化を示す近似式を求め、前記近似式に従って前記予測特徴量を決定する
    請求項1に記載の三次元積層造形装置。
  3. 前記判断部は、前記スキージが通過した直後の予測特徴量と、前記スキージが通過した直後の画像の特徴量との差が第1閾値以下である画素の総数または総面積を算出し、前記画素の総数または総面積が第2閾値を超える場合に、前記粉末材料の塗布不良が発生したと判断する
    請求項1または2に記載の三次元積層造形装置。
  4. 前記画像の特徴量は、画像の輝度および彩度のうち少なくとも一方である
    請求項1に記載の三次元積層造形装置。
  5. 前記制御部は、前記塗布不良が発生したと前記判断部が判断した場合に、前記粉末塗布工程の後、前記アフターヒート工程、前記粉末塗布工程、前記パウダーヒート工程、前記本焼結工程、前記アフターヒート工程の順に造形を行って今回の1層分の造形を行う
    請求項1に記載の三次元積層造形装置。
  6. 前記制御部は、前記アフターヒート工程後の前記粉末塗布工程において、前記粉末塗布装置による粉末材料の塗布量を、前記塗布不良が発生する前の塗布量よりも増やすように、前記粉末塗布装置を制御する
    請求項5に記載の三次元積層造形装置。
  7. 前記制御部は、前記粉末材料の塗布不良が発生したと前記判断部が判断した場合に、今回の層の前記アフターヒート工程に適用される条件と次の層の造形に適用される条件を、前記粉末材料の塗布不良が発生しなかった場合に適用される条件とは異なる内容で予約したうえで、今回の層の造形について前記パウダーヒート工程および前記本焼結工程を行った後に前記アフターヒート工程を前記予約した条件に従って行い、次の層の造形については前記予約した条件に従って造形を行う
    請求項1に記載の三次元積層造形装置。
  8. 前記制御部は、前記塗布不良が発生したと前記判断部が2回以上連続で判断した場合に、前記粉末塗布工程の後、前記アフターヒート工程、前記粉末塗布工程、前記パウダーヒート工程、前記本焼結工程、前記アフターヒート工程の順に造形を行って今回の1層分の造形を行う
    請求項7に記載の三次元積層造形装置。
  9. 前記今回の層の前記アフターヒート工程に適用される条件の予約は、前記アフターヒート工程の実行時間を延長する予約、および、前記アフターヒート工程の加熱目標温度を高くする予約のうち少なくとも1つであり、
    前記次の層の造形に適用される条件の予約は、前記粉末塗布工程における前記粉末材料の塗布量を増やす予約、および、前記本焼結工程で前記粉末層に加えられるエネルギーを増強する予約のうち、少なくとも1つである
    請求項7に記載の三次元積層造形装置。
  10. 前記判断部は、前記スキージが前記造形面を通過直後に前記カメラによって撮影された画像の輝度分布または彩度分布に基づいて、前記粉末材料の塗布不良が発生したか否かを判断する
    請求項1に記載の三次元積層造形装置。
  11. 前記判断部は、前記カメラによって撮影された画像を二値化し、前記二値化によって得られる白黒画像に占める白領域の割合が所定値を超える場合に、前記粉末材料の塗布不良が発生したと判断する
    請求項10に記載の三次元積層造形装置。
  12. 前記判断部は、スキージ移動方向下流側における画像の白領域の割合が所定値を超える場合に、前記粉末材料の塗布不良が発生したと判断する
    請求項10に記載の三次元積層造形装置。
  13. 前記判断部は、前記スキージが前記造形面を通過直後に前記カメラによって撮影された画像で、且つ、前記粉末材料の塗布不良が発生しなかった場合の画像を予め基準画像として取得しておき、前記基準画像を二値化した場合にスキージ移動方向上流側の画像に現れる白領域の部分を差し引いた状態で、前記白領域の割合と前記所定値とを比較する
    請求項11または12に記載の三次元積層造形装置。
  14. 造形プレートと、
    前記造形プレートを上下方向に移動させるプレート移動装置と、
    前記造形プレート上に粉末材料を塗布して粉末層を形成する装置であって、前記造形プレート上を移動して前記粉末材料を敷き詰めるスキージを有する粉末塗布装置と、
    前記造形プレートまたは前記粉末層にビームを照射するビーム照射装置と、
    前記粉末塗布装置および前記ビーム照射装置を制御することにより、粉末塗布工程、パウダーヒート工程、本焼結工程およびアフターヒート工程を経て1層分の造形物を形成するとともに、前記プレート移動装置を制御して前記1層分の造形物を積層して三次元の造形物を造形する制御部と、
    前記粉末層の造形面を撮影するカメラと、
    前記スキージが前記造形面を通過中または通過直後に前記カメラによって撮影された画像を用いて、前記粉末材料の塗布不良が発生したか否かを判断する判断部と、
    を備え、
    前記判断部は、前記カメラによって撮影された画像を二値化し、スキージ移動方向下流側の画像に現れる白領域がスキージ移動方向上流側の画像に現れる白領域よりも広い場合に、前記粉末材料の塗布不良が発生したと判断する
    三次元積層造形装置。
  15. 前記判断部は、前記スキージが前記造形面を通過直後に前記カメラによって撮影された画像で、且つ、前記粉末材料の塗布不良が発生しなかった場合の画像を予め基準画像として取得しておき、前記基準画像を二値化した場合にスキージ移動方向上流側の画像に現れる白領域の面積分を差し引いた状態で、前記スキージ移動方向下流側の画像に現れる白領域と前記スキージ移動方向上流側の画像に現れる白領域の広さを比較する
    請求項14に記載の三次元積層造形装置。
  16. 造形プレート上でスキージを水平方向に移動させることにより、前記造形プレート上に粉末材料を塗布して粉末層を形成する粉末塗布工程と、
    前記粉末塗布工程の後に、前記造形プレート上の粉末層を予備加熱するパウダーヒート工程と、
    前記パウダーヒート工程の後に、前記粉末層を形成している前記粉末材料を本焼結させる本焼結工程と、
    前記本焼結工程の後に、前記造形プレート上の粉末層を予備加熱するアフターヒート工程と、
    を含む三次元積層造形方法であって、
    前記粉末塗布工程では、前記スキージが前記粉末層の造形面を通過中または通過直後にカメラによって撮影された前記造形面の画像を用いて、前記粉末材料の塗布不良が発生したか否かを判断するとともに、前記スキージが前記造形面を通過中に前記カメラによって撮影された画像を用いて、前記スキージが通過する前の画像の特徴量の経時変化から予測される、前記スキージが通過した直後の予測特徴量と、前記スキージが通過した直後の画像の特徴量との差を求めるとともに、求めた差に基づいて、前記粉末材料の塗布不良が発生したか否かを判断する
    三次元積層造形方法。
  17. 造形プレート上でスキージを水平方向に移動させることにより、前記造形プレート上に粉末材料を塗布して粉末層を形成する粉末塗布工程と、
    前記粉末塗布工程の後に、前記造形プレート上の粉末層を予備加熱するパウダーヒート工程と、
    前記パウダーヒート工程の後に、前記粉末層を形成している前記粉末材料を本焼結させる本焼結工程と、
    前記本焼結工程の後に、前記造形プレート上の粉末層を予備加熱するアフターヒート工程と、
    を含む三次元積層造形方法であって、
    前記粉末塗布工程では、前記スキージが前記粉末層の造形面を通過中または通過直後にカメラによって撮影された前記造形面の画像を用いて、前記粉末材料の塗布不良が発生したか否かを判断するとともに、前記カメラによって撮影された画像を二値化し、スキージ移動方向下流側の画像に現れる白領域がスキージ移動方向上流側の画像に現れる白領域よりも広い場合に、前記粉末材料の塗布不良が発生したと判断する
    三次元積層造形方法。
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