JP7346146B2 - ポリイミド及びポリイミドフィルム - Google Patents
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Description
で表されるポリイミドは、全芳香族ポリイミドの中でも無着色透明なフィルムを与える限られたケースである(例えば非特許文献2参照)。このポリイミドフィルムの透明性は、電子吸引基として作用し、高分子鎖間の凝集力を弱める働きを持つトリフルオロメチル基(CF3)の効果によるものであり、この効果によりこのポリイミドは優れた溶媒溶解性すなわち溶液加工性も有している。しかしながら、このポリイミドフィルムは低熱膨張特性を示さない(例えば非特許文献2参照)。
で表される汎用の脂環式ジアミンと下式(18):
で表される汎用の芳香族テトラカルボン酸二無水物すなわちピロメリット酸二無水物(以下「PMDA」と称する)より得られる下式(19):
で表されるポリイミドは無色透明なフィルムを与える。しかしながら、脂肪族ジアミンの塩基性が芳香族ジアミンのそれよりもはるかに高いことに起因して、脂肪族ジアミンを使用して等モル重付加反応(以下単に「重合反応」という)を行った際、重合反応の初期段階で塩が形成される(例えば非特許文献4参照)。この塩は架橋した構造をとり、無水の重合溶媒(通常、アミド系溶媒)に溶けにくいため、塩が沈殿として析出し、重合反応が全く進行しなくなる場合がある。生成した塩が重合溶媒に僅かでも溶解する場合は、一旦析出後室温で撹拌することで徐々に重合が進行する場合があり、塩が完全に溶解して均一なワニスとなるまで、非常に長時間の重合時間が必要となる。また均一化までに要する重合反応時間の再現性や、生成するポリイミド前駆体の分子量の再現性が低い。
で表されるトランス-1,4-シクロヘキサンジアミン(以下「t-CHDA」と称する)が知られているが、PMDAと通常の重合方法で反応を行おうとすると、初期段階で形成される塩が極めて強固なため、如何なる反応条件でも析出した塩が全く溶解せず、ポリイミド前駆体は得られない(例えば非特許文献4参照)。
で表される芳香族テトラカルボン酸二無水物すなわち3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下「s-BPDA」と称する)とは反応するので、最終的に均一で高粘度のポリイミド前駆体ワニスを得ることは可能であるが、重合初期に一旦析出した塩を溶解させるのに短時間の加熱操作が必要であるため、このプロセスは大規模生産にとって不都合である。得られたポリイミド前駆体を基板上に塗布乾燥後、300℃以上に加熱して脱水閉環反応(イミド化反応)させると下式(22):
で表されるポリイミドが得られ、そのフィルムは比較的透明で低熱膨張性を示す(例えば非特許文献5参照)。しかしながら、このポリイミドフィルムは実用的な膜靱性を有していない。また、このポリイミドは溶媒に全く不溶であり、溶液加工性に乏しい。
で表される剛直構造の脂環式テトラカルボン酸二無水物すなわち1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(以下「CBDA」と称する)が知られているのみである。これと、例えば下式(24):
で表される剛直で直線的な構造を有する芳香族ジアミンすなわち2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(以下「TFMB」と称する)との重合反応により、容易に高分子量のポリイミド前駆体が得られ、これをキャスト製膜し熱イミド化して得られる下式(25):
で表されるポリイミドのフィルムは無着色透明で低いCTEを示す(例えば非特許文献5参照)。しかしながら、このポリイミドフィルムは自立膜とはなるものの可撓性が十分でなく、ポリイミド自身の溶液加工性も有していない(例えば非特許文献6参照)。
(式(26)中、中央のシクロヘキサン部位は舟型構造である。)
で表されるシス,シス,シス-1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(以下「H-PMDA」又は「(1S,2R,4S,5R)-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物」と称する)は安価なPMDAを接触還元して得られ、大規模生産が可能であるため、現在入手可能な脂環式テトラカルボン酸二無水物の中で最も低コストで実用的である。
で表されるポリイミドはその代表的なものであるが、これらのポリイミドフィルムは主鎖の非直線状構造に起因して、主鎖の面内配向が妨害されて低熱膨張特性を示さない。
すなわち、本発明が解決しようとする課題は、無色透明性、耐熱性(物理的耐熱性)、寸法安定性、熱安定性(化学的耐熱性)、機械的特性及び靱性に優れるフィルムの形成が可能であるポリイミド、並びに該ポリイミドを含むポリイミドワニス及びポリイミドフィルムを提供することである。
<1> 下式(1):
又は下式(2):
で表されるジアミン。
<2> 下記一般式(3):
で表される繰り返し単位を有し、式(3)中、2価の有機基Arが下式(4)~(7)のいずれか1つで表される構造単位であるポリイミド。
<3> 上記<2>に記載のポリイミドが有機溶媒に溶解してなるワニス。
<4> 上記<2>に記載のポリイミドを含む耐熱性フィルム。
<5> ガラス転移温度が320℃以上であり、線熱膨張係数が40ppm/K以下であり、かつ波長400nmにおける光透過率が70%以上である、上記<4>に記載の耐熱性フィルム。
<6> 上記<4>又は<5>に記載の耐熱性フィルムを含む、画像表示装置用プラスチック基板。
本発明のジアミンは、テトラカルボン酸二無水物と従来にない極めて高い重合反応性を有し、且つ嵩高い置換基を有するため、H-PMDAと反応させた場合においても、反応溶液のゲル化や沈殿析出を抑制しながら十分高い分子量のポリイミドを得ることができる。また、本発明のポリイミドは既存の製膜工程に適合するため、容易に高品質なポリイミドを作製することができ、更に得られたポリイミドフィルムは、優れた特性すなわち高い透明性、高いガラス転移温度、低熱膨張係数及び十分な可撓性を有しているため、現行の画像表示装置に使用されているガラス基板の代わりに、本発明のポリイミドをプラスチック基板材料として適用することが可能となり、ディスプレイデバイスの軽量化及び柔軟化を実現するための有用な材料を提供することができる。
本発明のジアミンは、下式(1):
又は下式(2):
で表されるジアミンである。以下、式(1)で表されるジアミンを「AMB-mTOL」と称する場合があり、式(2)で表されるジアミンを「AB-MP-HPMDI」と称する場合がある。
以下に本発明のジアミンの製造方法の一例としてアミド化反応について説明するが、本発明はこれに限定されない。
m-トリジンを溶媒に溶解し、セプタムキャップで密栓し、A液とする。次に3-メチル-4-ニトロベンゾイルクロリド(以下「3M4NBC」と称する)を同一溶媒に溶解し、これに適当量の塩基(脱酸剤)を添加し同様に密封してB液とする。A液を氷浴中で冷却し、撹拌子で撹拌しながら、A液にB液をシリンジにてゆっくり滴下し、数時間反応させ、続いて室温で12時間撹拌する。反応後、析出した沈殿物を濾別し、少量の反応溶媒で洗浄、続いて水で洗浄して副生成物である水溶性の塩酸塩を除去し、50~120℃の温度範囲で5~12時間真空乾燥してジニトロ体を得る。これを適当な溶媒から再結晶して精製してから、次の水素還元工程に用いることもできるが、上記洗浄及び乾燥工程のみで十分高純度のジニトロ体が得られるため、精製工程を省略してもよい。
得られたジニトロ体の末端ニトロ基の還元反応は、一例として以下のようにして行うことができる。まずジニトロ体を溶媒に溶解し、これに適当量のパラジウム/カーボン(Pd/C)触媒を添加する。この反応溶液を使用した溶媒の沸点以下の温度すなわち、水素雰囲気中、室温~150℃の範囲で一定温度に加熱しながら2~24時間反応させる。反応の終点は薄層クロマトグラフィーにより、上記ジニトロ体の完全な消失と新たなスポットが1つのみ出現することをもって確認することができる。反応終了後、触媒残渣を濾過して除去する。濾液は適宜エバポレータで濃縮してもよい。濃縮により沈殿が析出する場合は濾別して、少量の反応溶媒続いて水及びメタノールでよく洗浄し、最後に生成物の融点以下の温度すなわち50~120℃の温度範囲で5~12時間真空乾燥することで、式(1)で表されるジアミンを得ることができる。これをそのまま次の重合工程に用いてもよいが、適当な溶媒から再結晶して更に精製してもよい。
上記のAMB-mTOLの製造において、3M4NBCの代わりに、メチル置換基を含まない4-ニトロベンゾイルクロリド(以下「4-NBC」と称する)を使用し、これと下式(8)で表されるジアミンとを上記と同様な方法でアミド化反応させることでジニトロ体が得られ、続いて上記と同様な方法で接触還元を行ってニトロ基を還元することで、式(2)で表されるジアミンを得ることができる。
本発明のポリイミドは、下記一般式(3):
で表される繰り返し単位を有し、式(3)中、2価の有機基Arが下式(4)~(7)のいずれか1つで表される構造単位であるポリイミドである。すなわち、本発明のポリイミドは、H-PMDAに由来する構造単位を有し、かつ、下式(4)~(7)のいずれか1つで表される構造単位を有する。
テトラカルボン酸二無水物としては、H-PMDAが用いられる。
上記重合反応の際、ジアミンとの重合反応性及びポリイミドの要求特性を損なわない範囲で、H-PMDAと共に、H-PMDA以外の脂環式テトラカルボン酸二無水物を共重合成分として使用することができる。
その際に使用可能な脂環式テトラカルボン酸二無水物としては、特に限定されないが、例えば(1S,2S,4R,5R)-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(以下「H’-PMDA」と称する)、(1R,2S,4S,5R)-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(以下、「H”-PMDA」と称する)、ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物(以下「BTA」と称する)、ビシクロ[2.2.2]オクタン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]ヘプタンテトラカルボン酸二無水物、5-(ジオキソテトラヒドロフリル-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-テトラリン-1,2-ジカルボン酸無水物、テトラヒドロフラン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、3c-カルボキシメチルシクロペンタン-1r,2c,4c-トリカルボン酸1,4:2,3-二無水物、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
共重合成分としてこれらの脂環式テトラカルボン酸二無水物を使用する場合、その使用量は、H-PMDAを含めた脂環式テトラカルボン酸二無水物総量のうち、好ましくは1~70mol%、より好ましくは10~50mol%の範囲である。
その際に使用可能な芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、特に限定されないが、例えばピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタリックアンハイドライド、3,4’-オキシジフタリックアンハイドライド、3,3’-オキシジフタリックアンハイドライド、ハイドロキノン-ジフタリックアンハイドライド、4,4’-ビフェノール-ジフタリックアンハイドライド、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
共重合成分としてこれらの芳香族テトラカルボン酸二無水物を使用する場合、その使用量は、H-PMDAも含めたテトラカルボン酸二無水物総量のうち、好ましくは1~30mol%、より好ましくは1~20mol%の範囲である。
ジアミンとしては、上記式(4)~(7)のいずれか1つで表される構造単位を与える化合物が用いられる。
上記式(4)で表される構造単位を与える化合物は、AMB-mTOL(上記式(1)で表されるジアミン)である。
上記式(5)で表される構造単位を与える化合物は、AB-MP-HPMDI(上記式(2)で表されるジアミン)である。
上記式(6)で表される構造単位を与える化合物は、下式(9):
で表されるジアミン(以下「AB-mTOL」と称する)である。AB-mTOLの製造方法は特に限定されないが、例えば後述の合成例1の方法で得ることができる。
上記式(7)で表される構造単位を与える化合物は、下式(10):
で表されるジアミン(以下「AB-44ODA」と称する)である。AB-44ODAの製造方法は特に限定されないが、例えば後述の合成例2の方法で得ることができる。
その際に使用可能な脂肪族ジアミンとしては、特に限定されないが、例えば4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、4,4’-メチレンビス(3-メチルシクロヘキシルアミン)、4,4’-メチレンビス(3-エチルシクロヘキシルアミン)、4,4’-メチレンビス(3,5-ジメチルシクロヘキシルアミン)、4,4’-メチレンビス(3,5-ジエチルシクロヘキシルアミン)、イソホロンジアミン、トランス-1,4-シクロヘキサンジアミン、シス-1,4-シクロヘキサンジアミン、1,4-シクロヘキサンビス(メチルアミン)、2,5-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、3,8-ビス(アミノメチル)トリシクロ[5.2.1.0]デカン、1,3-ジアミノアダマンタン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)ヘキサフルオロプロパン、1,3-プロパンジアミン、1,4-テトラメチレンジアミン、1,5-ペンタメチレンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、1,7-ヘプタメチレンジアミン、1,8-オクタメチレンジアミン、1,9-ノナメチレンジアミン)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
共重合成分としてこれらの脂肪族ジアミンを使用する場合、その使用量は、上記式(4)~(7)のいずれか1つで表される構造単位を与える化合物を含めたジアミン総量のうち、好ましくは1~50mol%、より好ましくは5~30mol%の範囲である。
その際に使用可能な芳香族ジアミンとしては、特に限定されないが、例えばp-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノトルエン、2,5-ジアミノトルエン、2,4-ジアミノキシレン、2,4-ジアミノデュレン、4,4’-メチレンジアニリン、4,4’-メチレンビス(3-メチルアニリン)、4,4’-メチレンビス(3-エチルアニリン)、4,4’-メチレンビス(2-メチルアニリン)、4,4’-メチレンビス(2-エチルアニリン)、4,4’-メチレンビス(3,5-ジメチルアニリン)、4,4’-メチレンビス(3,5-ジエチルアニリン)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルアニリン)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジエチルアニリン)、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、2,4’-ジアミノジフェニルエーテル、2,2’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノベンズアニリド、ベンジジン、3,3’-ジヒドロキシベンジジン、3,3’-ジメトキシベンジジン、o-トリジン、m-トリジン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、p-ターフェニレンジアミン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、2,4’-ジアミノジフェニルエーテル、2,2’-ジアミノジフェニルエーテル、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’-メチレンジアニリン、4,4’-メチレンビス(3-メチルアニリン)、4,4’-メチレンビス(3-エチルアニリン)、4,4’-メチレンビス(2-メチルアニリン)、4,4’-メチレンビス(2-エチルアニリン)、4,4’-メチレンビス(3,5-ジメチルアニリン)、4,4’-メチレンビス(3,5-ジエチルアニリン)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルアニリン)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジエチルアニリン)等を例示できる。これらは単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
共重合成分としてこれらの芳香族ジアミンを使用する場合、その使用量は、ジアミン総量のうち、好ましくは1~50mol%、より好ましくは5~30mol%の範囲である。
例えば、窒素導入管、撹拌装置、ディーン・スタークトラップ及びコンデンサーを備えた反応容器中、ジアミン、共沸剤及びイミド化触媒を室温で重合溶媒に溶かしておき、撹拌しながらテトラカルボン酸二無水物粉末を添加し、150~250℃で0.5~12時間還流することでポリイミドワニスが得られる。ワニスの着色を抑制するという観点から、重合反応は窒素等の不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましいが、不活性ガスの導入を省略することもできる。
使用する溶媒は場合によっては低吸湿性であることが好ましい。低吸湿性溶媒用いることで、塗工の際、吸湿によりポリイミドが部分的に析出して塗膜が白化するリスクが低減することに加え、塗工時の湿度管理が不要になるなど低コスト化にも有利である。この観点から使用する溶媒としてγ-ブチロラクトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ジグライム、トリグライム等が好適である。
本発明のポリイミドの固有粘度は、0.2~5dL/gの範囲であることが好ましく、0.5~2dL/gの範囲であることがより好ましい。固有粘度が0.2dL/g以上であれば、ポリイミドの分子量が十分高いためにポリマー鎖同士の絡み合いが十分であり、製膜時にひび割れ等が発生するのを抑制することができる。一方、固有粘度が5dL/g以下であれば、ワニスの粘度が適切であり、脱泡に長時間を要することなく、塗工時のハンドリングも良好である。
全光線透過率(Ttot)は、厚さ約20μmのフィルムとした際に、好ましくは85%以上、より好ましくは86%以上、更に好ましくは87%以上である。この範囲であると、透明性に優れる。
黄色度(YI)は、厚さ約20μmのフィルムとした際に、好ましくは5.0以下、より好ましくは4.0以下、更に好ましくは3.0以下である。この範囲であると、無色透明性に優れる。
ヘイズは、厚さ約20μmのフィルムとした際に、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.8以下、更に好ましくは1.5以下である。この範囲であると、透明性に優れる。
破断強度(σb)は、好ましくは0.08GPa以上、より好ましくは0.10GPa以上、更に好ましくは0.12GPa以上である。
破断伸び(εb)は、平均値(av)が、好ましくは5%以上、より好ましくは7%以上、更に好ましくは10%以上であり、最大値(max)が、好ましくは10%以上、より好ましくは12%以上、更に好ましくは15%以上である。
これらの範囲であると、フィルムの機械的特性に優れ、特に靱性に優れる。
本発明のポリイミドは、溶媒溶解性が十分に高いため、室温で安定な高固形分濃度のワニスとすることができる。本発明のポリイミドワニスは、本発明のポリイミドが有機溶媒に溶解してなるものである。即ち、本発明のポリイミドワニスは、本発明のポリイミド及び有機溶媒を含み、当該ポリイミドは当該有機溶媒に溶解している。有機溶媒はポリイミドが溶解するものであればよく、特に限定されないが、ポリイミドの製造に用いられる反応溶剤として上述した化合物を、単独又は2種以上を混合して用いることが好ましい。
本発明のポリイミドワニスは、重合法により得られるポリイミドが反応溶剤に溶解したポリイミド溶液そのものであってもよいし、又は当該ポリイミド溶液に対して更に希釈溶剤を追加したものであってもよい。
上記のように一段階で得られたポリイミドワニスをそのまま用いるか又はこれを同一溶媒で適宜希釈してから大量の貧溶媒中にゆっくりと滴下して析出させ、濾過、洗浄及び乾燥して、ポリイミド粉末として単離することができる。その際に使用可能な貧溶媒としては、重合溶媒とよく混和し、ポリイミドを溶解しない溶媒であれば特に制限はないが、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール等が用いられる。これらを2種類以上混合して使用してもよい。得られたポリイミド粉末を5~40質量%の固形分濃度で溶媒に再溶解してポリイミドワニスとしてもよい。この際に使用可能な溶媒として、ポリイミドの重合反応の際に使用可能な前述の溶媒と同一なものが用いられる。ポリイミド粉末を溶媒に再溶解する際に、ワニスが著しく着色しない範囲であれば40~200℃で1分~24時間加熱しても差し支えない。
本発明の耐熱性フィルムは、本発明のポリイミドを含む。したがって、本発明のポリイミドフィルムは、無色透明性、耐熱性(物理的耐熱性)、寸法安定性、熱安定性(化学的耐熱性)、機械的特性及び靱性に優れる。本発明のフィルムが有する好適な物性値は上述の通りである。
本発明のポリイミドフィルムの製造方法には特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。例えば、本発明の耐熱性フィルムは、上記の方法で得られたポリイミドワニスを基板上に塗布及び乾燥することで得ることができる。また必要に応じて更に高温で熱処理してもよい。
具体的には、ポリイミドのワニスをガラス、銅、アルミニウム、ステンレス、シリコン等の基板上に塗布し、好ましくは40~220℃、より好ましくは60~200℃で、好ましくは10分~4時間、より好ましくは0.5~2時間乾燥する。続いて更に昇温し、好ましくは200~350℃、より好ましくは250~330℃で、好ましくは10分~2時間、より好ましくは0.5~1時間熱処理することでポリイミドフィルムが得られる。ポリイミドフィルムの着色を抑制するという観点からは、熱処理温度は350℃以下で行うことが好ましく、更に真空中又は窒素等の不活性ガス中で熱処理を行うことが好ましい。また、ポリイミドフィルム表面の平滑性及び低熱膨張特性の観点からは、上記乾燥及び熱処理工程は緩やかな昇温となるようにできるだけ多段階で行うことが好ましく、更に200℃を超える乾燥及び熱処理工程は真空中又は窒素等の不活性ガス中で行うことが好ましい。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、これら実施例に限定されるものではない。なお、以下の例における物性値は、次の方法により測定した。
ジアミンの赤外線吸収スペクトルは、フーリエ変換赤外分光光度計「FT/IR-4100」(日本分光株式会社製)を用い、KBrプレート法で測定した。
ジアミンの1H-NMRスペクトルは、重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO-d6)を溶媒として、NMR分光光度計「ECP400」(日本電子株式会社製)を用いて測定した。
ジアミンの融点及び融解曲線は、示差走査熱量分析装置「DSC3100」(ネッチ・ジャパン株式会社製)を用い、窒素雰囲気中、昇温速度5℃/分で測定した。
ポリイミドの還元粘度は、固形分濃度0.5質量%、30℃においてオストワルド粘度計を用いて測定した。この値は固有粘度と見なすことができ、この値が高い程分子量が高いことを表す。
ポリイミドフィルムの透明性は以下の光学特性から評価した。紫外-可視分光光度計「V-530」(日本分光株式会社製)を用いて波長200~800nmの範囲でポリイミドフィルム(約20μm厚)の光透過率曲線を測定し、波長400nmにおける光透過率(T400)及び光透過率が事実上ゼロとなる波長(カットオフ波長、λcut)を求めた。またこのスペクトルを基に、色彩計算プログラム(日本分光株式会社製)を用い、ASTM E313規格に基づいて黄色度(YI)を求めた。更に、ヘイズメーター「NDH4000」(日本電色工業株式会社製)を用い、JIS K7361-1及びJIS K7136規格に基づき、全光線透過率(Ttot)及び濁度(ヘイズ)を求めた。
ポリイミドフィルム(約20μm厚)のガラス転移温度(Tg)は、熱機械分析装置「TMA4000」(ネッチ・ジャパン株式会社製)を用い、周波数0.1Hz、昇温速度5℃/分における損失エネルギー曲線のピーク温度からを求めた。Tgが高いほど、物理的耐熱性が高いことを表す。
ポリイミドフィルム(約20μm厚)のCTEは、熱機械分析装置「TMA4000」(ネッチ・ジャパン株式会社製)を用い、荷重0.5g/膜厚1μm当たり、昇温速度5℃/分における試験片の伸びより、100~200℃の範囲での平均値として求めた。CTE値が0に近いほど寸法安定性に優れていることを表す。
ポリイミドフィルム(約20μm厚)の機械的特性は、引張試験機「テンシロンUTM-2」(株式会社エー・アンド・デイ製)を用いて評価した。試験片(30mm長×3mm幅×約20μm厚)を作製し、引張試験(延伸速度:8mm/分)を実施して、応力-歪曲線の初期の初期勾配から引張弾性率(E)、破断点応力から破断強度(σb)、判断時の伸び率から破断伸び(εb)を求めた。破断伸びが高いほどフィルムの靭性が高いことを表す。
ポリイミドフィルム(約20μm厚)の5%質量減少温度(Td 5)は、熱重量分析装置「TG-DTA2000」(ネッチ・ジャパン株式会社製)を用いて、窒素中及び空気中、昇温速度10℃/分での昇温過程において、ポリイミドフィルム(20μm厚)の質量が、初期質量の5%減少した時の温度から求めた。Td 5値が高いほど化学的耐熱性(熱安定性)が高いことを表す。
ポリイミドフィルムの表面硬度は、鉛筆硬度試験器「BEVS 1301/750」(BEVS社製、鉛筆先端負荷荷重:750g)を用い、ASTM D3363規格に準じて、ガラス基板上に形成したポリイミドフィルムに対して鉛筆引っかき試験(三菱鉛筆Uni、鉛筆硬度範囲:6B~6H)を行い、フィルム表面の傷跡の有無から評価した。
以下に本発明のジアミンの製造方法を具体的に示すが、これら実施例に限定されるものではない。
<AMB-mTOLの合成>
上記式(1)で表される本発明のジアミン(AMB-mTOL)は以下のようにして合成した。
まず、反応容器中、m-トリジン(25mmol)をよく脱水したDMAc(20mL)に溶解し、これに脱酸剤としてピリジン6.0mLを加え、セプタムキャップで密封してA液とした。次に別の容器中、3-メチル-4-ニトロベンゾイルクロリド(3M4NBC、60mmol)を脱水DMAc(10mL)に溶解し、同様に密封してB液とした。B液を氷浴で冷やして撹拌しながら、これにA液をシリンジで徐々に滴下し、数時間撹拌した後、更に室温で24時間撹拌を続けた。析出した黄色沈殿物を濾別し、トルエンで洗浄して過剰な3M4NBCを除去し、次いで水で十分に洗浄して副生成物のピリジン塩酸塩を除去し、120℃で12時間真空乾燥し、収率85%で黄色粉末を得た。この生成物の分析結果を以下に示す。
融点(DSC):251℃。
FT-IRスペクトル(KBrプレート法、cm-1):3274(アミド基、N-H伸縮振動)、3103/3033(芳香族C-H伸縮振動)、2984/2929/2857(脂肪族C-H伸縮振動)、1651/1588(アミド基、C=O伸縮振動)、1523/1343(ニトロ基、N-O伸縮振動)。
1H-NMRスペクトル(400MHz,DMSO-d6,δ,ppm):10.48〔s、2H(実測積分強度:2.00)NHCO〕、8.13〔d、2H(1.98H)、J=8.4Hz、末端ニトロベンゼン(NB)の6,6’-プロトン)、8.06〔sd、2H(2.00H)、J=1.4Hz、NBの3,3’-プロトン〕、7.99〔dd、2H(1.95H)、J=8.4、1.6Hz、NBの5,5’-プロトン〕、7.73〔sd、2H(2.05H)、J=1.8Hz、中央ビフェニル(BP)の3,3’-プロトン〕、7.68〔dd、2H(2.02H)、J=8.3、2.0Hz、BPの5,5’-プロトン〕、7.09〔d、2H(2.06H)、J=8.2Hz、BPの6,6’-プロトン〕、2.61〔s、6H(5.97H)、NBの2,2’-CH3〕。2.05〔s、6H(6.01H)、BPの2,2’-CH3〕。
で表されるジニトロ体であることが同定された。
融点(DSC):210℃。
FT-IRスペクトル(KBrプレート法、cm-1):3442(アミノ基、N-H伸縮振動)、3350/3291(アミノ基+アミド基、N-H伸縮振動)、3026(芳香族C-H伸縮振動)、2917/2859(脂肪族C-H伸縮振動)、1625/1578(アミド基、C=O伸縮振動)、1500(1,4-フェニレン基)。
1H-NMRスペクトル(400MHz,DMSO-d6,δ,ppm):9.76〔s、2H(2.00H)、NHCO〕、7.70-7.62〔m、8H(8.07H)、末端アニリン(AN)の3,3’,5,5’-プロトン+中央BPの3,3’,5,5’-プロトン〕、7.01〔d、2H(1.99H)、J=8.3Hz、BPの6,6’-プロトン〕、6.66〔d、2H(1.98H)、J=8.3Hz、ANの6,6’-プロトン〕、5.53〔s、4H(3.99H)、NH2〕、2.13〔s、6H(6.07H)、BPの2,2’-CH3〕。2.02〔s、6H(5.89H)、ANの2,2’-CH3〕。
元素分析(分子量478.59):推定値(%)C;75.29、H;6.32、N;11.71、分析値C;74.67、H;6.46、N;11.55。
<AB-MP-HPMDIの合成>
上記式(2)で表される本発明のジアミン(AB-MP-HPMDI)は以下のようにして合成した。
まず出発原料として、下式(12):
で表されるジニトロ体を次のようにして合成した。三口フラスコ中、2-メトキシ-4-ニトロアニリン(2MeO-4NA)11.271g(67mmol)をDMAc(30mL)に溶解し、この溶液にH-PMDA粉末6.763g(30mmol)を加え、窒素雰囲気中、180℃で5時間還流した。反応後、室温まで冷却し、反応溶液をエバポレータで濃縮した後、エタノール(200mL)を加えて沈殿を析出させた。沈殿を濾別し、エタノールで洗浄後、120℃で12時間真空乾燥し、収率53%で薄黄色粉末を得た。
FT-IRスペクトル(KBrプレート法、cm-1):3088/3006(芳香族C-H伸縮振動)、2953/2879(脂肪族C-H伸縮振動)、1777/1718(イミド基、C=O伸縮振動)、1527/1350(ニトロ基、N-O伸縮振動)、1390(イミド基、N-Ar伸縮振動)、1255/1194(エーテル基、C-O伸縮振動)。
FT-IRスペクトル(KBrプレート法、cm-1):3463/3370/3234(アミノ基、N-H伸縮振動)、2943/2874(脂肪族C-H伸縮振動)、1774/1709(イミド基、C=O伸縮振動)、1398(イミド基、N-Ar伸縮振動)、1254/1193(エーテル基、C-O伸縮振動)。
で表されるジアミンと4-NBCより、実施例1に記載した方法と同様にして、DMF中でアミド化反応を行い、収率69%で下式(13):
で表される薄黄色粉末の生成物を得た。
FT-IRスペクトル(KBrプレート法、cm-1):3344(アミド基、N-H伸縮振動)、3111/3078(芳香族C-H伸縮振動)、2942/2867(脂肪族C-H伸縮振動)、1775/1718(イミド基、C=O伸縮振動)、1685(アミド基、C=O伸縮振動)、1516/1347(ニトロ基、N-O伸縮振動)、1389(イミド基、N-Ar伸縮振動)、1200(エーテル基、C-O伸縮振動)。
FT-IRスペクトル(KBrプレート法、cm-1):3451(アミノ基、N-H伸縮振動)、3358/3227(アミノ基+アミド基、N-H伸縮振動)、3137/3033(芳香族C-H伸縮振動)、2938/2875(脂肪族C-H伸縮振動)、1775/1711(イミド基、C=O伸縮振動)、1656(アミド基、C=O伸縮振動)、1390(イミド基、N-Ar伸縮振動)、1254/1202(エーテル基、C-O伸縮振動)。
1H-NMRスペクトル(400MHz,DMSO-d6,δ,ppm):9.91〔s、2H(2.00H)、NHCO〕、7.75-7.64〔m、6H(6.03H)、末端ANの3,3’,5,5’-プロトン+N-(2-メトキシフェニル基の6,6’-プロトン〕、7.48-7.40〔m、2H(1.98H)、N-(2-メトキシフェニル基の3,3’-プロトン〕、7.24-7.01〔m、2H(1.99H)、N-(2-メトキシフェニル基の5,5’-プロトン〕、6.62〔d、4H(4.01H)、J=10.8Hz、末端ANの2,2’,6,6’-プロトン〕、5.80〔s、4H(3.95H)、NH2〕、3.74〔s、6H(5.84H)、CH3〕、3.40-1.80〔m、8H、中央シクロヘキシル基〕。
<AB-mTOLの合成>
上記式(9)で表されるジアミン(AB-mTOL)は、実施例1に記載した方法と同様にして、m-トリジンと4-NBCとのアミド化反応、次いでニトロ基の還元反応を行って合成した。この生成物の分析結果を以下に示す。
融点(DSC):295℃。
FT-IRスペクトル(KBrプレート法、cm-1):3458(アミノ基、N-H伸縮振動)、3376/3305(アミノ基+アミド基、N-H伸縮振動)、3037(芳香族C-H伸縮振動)、2917(脂肪族C-H伸縮振動)、1650/1530(アミド基、C=O伸縮振動)、1508(1,4-フェニレン基)。
1H-NMRスペクトル(400MHz,DMSO-d6,δ,ppm):9.75〔s、2H(2.00H)、NHCO〕、7.74〔d、4H(4.03H)、J=8.6Hz、末端ANの3,3’,5,5’-プロトン〕、7.69〔sd、2H(1.93H)、J=1.9Hz、中央BPの3,3’-プロトン〕、7.61〔dd、2H(1.99H)、J=8.3、2.0Hz、中央BPの5,5’-プロトン〕、7.00〔d、2H(1.96H)、J=8.2Hz、BPの6,6’-プロトン〕、6.61〔d、4H(4.02H)、J=8.6Hz、末端ANの2,2’,6,6’-プロトン〕、5.75〔s、4H(4.10H)、NH2〕、2.01〔s、6H(6.03H)、CH3〕。
元素分析(分子量450.54):推定値(%)C;74.65、H;5.82、N;12.44、分析値C;74.44、H;5.99、N;12.38。
<AB-44ODAの合成>
上記式(10)で表されるジアミン(AB-44ODA)は、実施例1に記載した方法と同様にして、4,4’-オキシジアニリンと4-NBCとのアミド化反応、次いでニトロ基の還元反応を行って合成した。この生成物の分析結果を以下に示す。
融点(DSC):282℃。
FT-IRスペクトル(KBrプレート法、cm-1):3409(アミノ基、N-H伸縮振動)、3375/3322/3221(アミノ基+アミド基、N-H伸縮振動)、3036(芳香族C-H伸縮振動)、1658/1572(アミド基、C=O伸縮振動)、1509(1,4-フェニレン基)、1257(エーテル基、C-O伸縮振動)。
1H-NMRスペクトル(400MHz,DMSO-d6,δ,ppm):9.78〔s、2H(2.00H)、NHCO〕、7.76-7.71〔m、8H(8.04H)、末端ANの3,3’,5,5’-プロトン+中央ビフェニルエーテル(BE)基の3,3’,5,5’-プロトン〕、6.97〔d、4H(3.92H)、J=9.1Hz、中央BEの2,2’,6,6’-プロトン〕、6.61〔d、4H(4.08H)、J=8.6Hz、末端ANの2,2’,6,6’-プロトン〕、5.75〔s、4H(4.02H)、NH2〕。
元素分析(分子量438.49):推定値(%)C;71.22、H;5.06、N;12.78、分析値C;71.21、H;5.16、N;12.64。
実施例3
実施例1で得た前記式(1)で表される本発明のジアミン(5mmol)をセパラブルフラスコに入れ、モレキュラーシーブス4Aで十分に脱水したγ-ブチロラクトン(GBL)を加えて溶解した。この際、溶媒は全溶質濃度が40質量%になるように計算して加えた。このジアミン溶液に触媒として1-エチルピペリジン(1-EPD、10mmol)及び安息香酸(10mmol)を加え、次いでH-PMDA(三菱ガス化学株式会社製)粉末(5mmol)を添加し、撹拌しながら200℃まで昇温し、窒素雰囲気中4時間攪拌して均一で粘稠なポリイミドワニス(溶液)を得た。このポリイミドワニスを同一の溶媒で適度に希釈後、大量の貧溶媒(メタノール)にゆっくり滴下して白色、繊維状のポリイミドを析出させ、濾別及び洗浄後、120℃で12時間真空乾燥を行ってポリイミド粉末を得た。これを純粋なGBLに再溶解して固形分濃度10質量%の均一なポリイミドワニスとした。GBL中、30℃、0.5質量%の濃度でオストワルド粘度計にて測定したポリイミドの還元粘度は3.82dL/gであった。
このポリイミドワニスをガラス基板に塗布し、熱風乾燥器中80℃で2時間乾燥後、真空中150℃で30分、200℃で30分、250℃で1時間段階的に加熱した。残留応力を除去するためにこのフィルムを基板から剥がして更に真空中3250℃で1時間熱処理を行い、膜厚約20μmの透明で柔軟なポリイミドフィルムを得た。
上記式(1)で表されるジアミンの代わりに、実施例2で得た前記式(2)で表される本発明のジアミンを使用し、触媒として1-EPDを単独で用いた以外は実施例3に記載した方法と同様にして重合し、製膜を行って物性評価した。表1に膜物性を示す。このポリイミドフィルムは比較的低いCTEを示し、高い透明性と耐熱性も保持していた。これは実施例2に記載の本発明のジアミンを使用したためである。
上記式(1)で表されるジアミンの代わりに、合成例1で得た前記式(9)で表されるジアミン(AB-mTOL)を使用し、触媒として1-EPDを単独で用いた以外は実施例3に記載した方法と同様にして重合し、製膜を行って物性評価した。表1に膜物性を示す。このポリイミドフィルムは比較的低いCTEを示し、高い透明性と耐熱性も保持していた。これは、H-PMDAとAB-mTOLを組み合わせることで、初めて発現した効果である。
上記式(1)で表されるジアミンの代わりに、合成例2で得た前記式(10)で表されるジアミン(AB-44ODA)を使用し、触媒として1-EPDを単独で用いた以外は実施例3に記載した方法と同様にして重合し、製膜を行って物性評価した。表1に膜物性を示す。このポリイミドフィルムは比較的低いCTEを示し、高い透明性と耐熱性も保持していた。これは、H-PMDAとAB-44ODAを組み合わせて初めて発現した効果である。
上記式(1)で表されるジアミンの代わりに、4,4’-オキシジアニリン(4,4’-ODA)を使用し、触媒として1-EPDを単独で用いた以外は実施例3に記載した方法と同様にして重合し、製膜を行って物性評価した。表1に膜物性を示す。このポリイミドフィルムのCTEは46.6ppm/Kであり、低熱膨張特性を示さなかった。これはジアミンの分子構造中に、精密に分子設計された構造単位を含んでいないためである。
上記式(1)で表されるジアミンの代わりに、m-トリジンを使用し、触媒として1-EPDを単独で用いた以外は実施例3に記載した方法と同様にして重合し、製膜を行って物性評価した。表1に膜物性を示す。このポリイミドフィルムの非常に高いTgを有していたが、CTEは57.5ppm/Kであり、低熱膨張特性を示さなかった。これはm-トリジンの分子構造中に、精密に分子設計された構造単位を含んでいないためである。
上記式(1)で表されるジアミンの代わりに、4,4’-ジアミノベンズアニリド(DABA)を使用し、触媒として1-EPDを単独で用いた以外は実施例3に記載した方法と同様にして重合を行った。しかしながら重合反応中に析出物が生じ、均一なワニスが得られなかった。これは、DABAの分子構造中に、精密に分子設計された構造単位を含んでおらず、生成したポリイミドの溶解性が不十分であるためである。
Claims (6)
- 下式(1):
で表されるジアミン。 - 下記一般式(3):
で表される繰り返し単位を有し、式(3)中、2価の有機基Arが下式(4)で表される構造単位であるポリイミド。
- 請求項2に記載のポリイミドが有機溶媒に溶解してなるワニス。
- 請求項2に記載のポリイミドを含む耐熱性フィルム。
- ガラス転移温度が320℃以上であり、線熱膨張係数が40ppm/K以下であり、かつ波長400nmにおける光透過率が70%以上である、請求項4に記載の耐熱性フィルム。
- 請求項4又は5に記載の耐熱性フィルムを含む、画像表示装置用プラスチック基板。
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