次いで、本発明に係る家庭用薄葉紙を、トイレットペーパーを例に図面を参照しながら説明する。なお、本発明に係る家庭用薄葉紙は、トイレットペーパーの使用形態において特に効果的であるがトイレットペーパーに限定されるものではない。なお、図面は説明のための模式図である。
[第一実施形態]
第一実施形態のトイレットペーパーを主に図1~図11を参照しながら説明する。
第一実施形態のトイレットペーパー2は、一方の最外層シート20と他方の最外層シート30のみが積層一体化された二プライと称される二積層シートからなるトイレットペーパー2である(図1)。
その各シート20,30には、エンボス加工により幾何学的に反復及び連続する凹部及び凸部が形成されている。その一方の最外層シート20は、底部平面部21Bを有する凹部21が、格子の交点に配置された凹部群を有する。なお、格子の交点とは、一方の最外層シート20上に格子状に配した仮想線の交点位置である。特に、凹部が、略直交する格子の交点にあるのがよい。
図示の形態は、一の凹部群のみ、つまり、最も深い凹部21による凹部群のみが形成されている形態であるが、本発明においては、一方の最外層シート20には、この凹部群を構成する凹部21よりも深さの浅い他の凹部や、深さの浅い凹部により構成される深さの浅い他の凹部群があってもよい。
図示の形態の凹部群は、好ましい形態であり、紙面全体に、底面が対角L1×対角L1=1.0~1.5×1.0~1.5mmの正方形の四方角が対角線外方に向かって延在された略方形をなす凹部21が、中心間隔L2が4.5~5.5mmで幅方向に対する配列角度が45°で格子状に配列されている。
また、凹部21と凹部21との間に凹部21の各四方角四隅から隣接する各四方角四隅同士へ延在する谷線部21Aが形成されており、この谷線部21Aは、凹部21の四方角側が最も深く、凹部間の中間が最も浅くなるように漸次緩やかに断面弓なりに配されている。
この凹部21及び凹部21の配置により、一方の最外層シート20は、凹部21及び谷線部21Aにより囲まれる部分が鳥瞰で見てややドーム状の略円形台地状の凸部22が形成されている。但し、本発明に係る一方の最外層シート20の凹部21は、上記配列角度、中心間隔が限定されているわけではない。
上記の好ましい凹部21の形状及び配置であると、図1の(A)を例にすれば、幅方向の45°に向かって谷線部21Aによって、ロール状に巻く際のテンションが分散されるため、ロール状にしてもエンボス加工による凹凸が潰れずに明瞭に残り、しわ等も発生しがたい。また、トイレットペーパー自体の柔らかさや便の拭き取り性についても優れる。
また、図示の形態では、一方の最外層シート20の凹部21の形状は、上記のとおり正方形の四方角が対角線外方に向かって延在された略方形をなしているが、凹部21の形状は、上記の形状に限定されず、例えば、正方形の四方角が対角線外方に向かって延在された略方形ではなく、単なる正方形であってもよい。底部平面部21Bの平面視での形状も必ずしも限定されるわけではない。また、凸部22の頂部の形状及び全体形状も、必ずしも限定されるものではない。
他方で、一方の最外層シート20に形成される凹部21の前記底部平面部21Bは、ある程度の平坦な底面であればよく、完全な平坦面である必要はないが、いわゆるニードルエンボス加工やピンエンボス加工のように頂部先端が尖っている凸部の押し当てにより形成される凹部よりも、円錐台形状や角錐台形状のように頂部が平坦な凸部の押し当てにより形成される凹部であるのが望ましい。
また、一方の最外層シート20に形成されている各凹部21,21…の底部平面部21B,21B…は、一平面上に形成されている。一平面上にあるとは、各凹部21,21…の底部平面部21B,21B…が実質的に同一深さで形成されていることを意味する。もちろん、シートは繊維の集合体であり厚み方向への弾性を有していることから深さが完全一致である必要はない。例えば、エンボス加工用のロール周面に形成された、多数の同一深さの凹部を形成することを想定した、頂部の高さが同一の凸部によって押されて形成された面であればよい。
他方で、他方の最外層シート30は、凸部32と深さの異なる二水準の底部を有する凹部31とが形成されている。この深さの異なる二水準の底部を有する凹部31は、図1に示されるように、一つの凹部範囲31Lにおいて少なくとも深さの浅い凹部31aと深さの深い凹部31bがあり段差を有するようになっているものである。但し、図示の本実施形態では、他方の最外層シート30には、この深さの異なる二水準の底部を有する凹部31のみが形成されているが、本発明においては、他方の最外層シート30には、深さの異なる二水準の底部を有する凹部31以外に、この凹部群を構成する深さの浅い凹部31aよりも深さの浅い他の凹部や、深さの浅い凹部により構成される深さの浅い他の凹部群が配置されていてもよい。
他方の最外層シート30における深さの異なる二水準の底部の凹部31は、少なくともその深さの深い凹部31bが略直交する格子の交点に配置されている。なお、ここでの深さの深い凹部31bとは、深さの異なる二水準の底を有する凹部31である場合には、最も深さの深い凹部を意味する。
同様に、他方の最外層シート30における深さの異なる二水準の底部の凹部31は、少なくともその深さの浅い凹部31aが略直交する格子状の交点に配置されている。なお、ここでの深さの浅い凹部31aとは、深さの異なる二水準の底を有する凹部31である場合には、最も深さの深い凹部31bに隣接する深さの浅い凹部を意味する。
本発明においては、他方の最外層シート30に複数の水準の底を有する凹部31がある場合、その最も深さの深い部分が31b(以下の他の形態でも同様)である。また、他方の最外層シート30に複数の水準の底を有する凹部31がある場合、最も深さの深い凹部31bに隣接する深さの浅い凹部が31a(以下の他の形態でも同様)である。
また、凸部32も略直交する格子状の交点に配置されており、その頂面は実質同一平面上にある。
また、図示の形態は好ましい形態として、前記他方の最外層シート30の凸部32と、前記一方の最外層シート20における凸部22と同位置にあり同じ格子間隔の配列となっている。つまり、一方の最外層シート20の凸部22と、他方の最外層シート30の凹部31の浅い凹部31aとが全て略同位置にあり、一方の最外層シート20の凸部22と他方の最外層シート30の凸部32は全て互いにずれた位置関係となっている。このような表裏シートの凹凸の関係により、表裏において肌触りの差が小さく、また、滑らかさを感じやすくなる。
他方で、この2プライのトイレットペーパー2では、特徴的に、前記一方の最外層シート20の最も深い凹部21の底部平面部21Bと、他方の最外層シート30の最も高い凸部32の頂部が平面視で重なる位置となっており、その前記一方の最外層シート20の最も深い凹部21の底部平面部21Bに対応する平面部である前記底部平面部21Bの裏面側の一部と、前記他方の最外層シートの最も高い凸部32の頂部の裏面側が接着されている(接着部分を符号34で示す)。なお、本実施形態は、2プライであるため一方の最外層シート20の最も深い凹部21の底部平面部21Bの裏面側が直接に他方の最外層シート30に接着されているが、本発明は、例えば、後述の3プライや4プライのトイレットペーパーのように、最外層間に一又は二以上の中層シートが存在する形態では、平面視において一方の最外層シート20の前記底部平面部21Bと同位置にある中層シートの平面部において、隣接する他のシートと接着する。
ここで、本実施形態の2プライのトイレットペーパー2において、一方の最外層シート20と他方の最外層シート30との接着部分34は、一方の最外層シート20の最も深い凹部21の底部平面部21Bの裏面側位置である。この底部平面部21Bは、平面視で格子の交点に位置しているため、一方の最外層シート20と他方の最外層シート30との間が、シート全面で均等な配置で略同面積の接着部を形成し接着されている。このため、平面視の各位置において裁断してもプライ間が接着されていない部分がなく、プライ離れが生じない。なお、接着部の位置は、接着しているエンボス部を剥離した両シート表面に残る接着剤の固化した状態もしくは固化した接着剤に付着したパルプ繊維から確認することができる。
また、本発明に係るトイレットペーパーは、一方の最外層シート20に、その一方の最外層シート側上から見てエンボス加工による凸部22、特に図示の形態では略円形台地状の凸部22が形成されている。そして、他方の最外層シート30に、その他方の最外層シート側からみてエンボス加工による凸部32が、前記一方の最外層シート20の凹部21の底部平面部21Bに対応する位置、つまり平面視で格子の交点となる位置に形成されている。このため、紙面の表裏全体にわたって凸部22,凸部32及び凹部21,凹部31が格子状に各々略等間隔で均一に存在するため、手等で触れた際に、触れた部分が均一に、且つ、指に当たる面積が広くなるため、肌触りのよい感触となる。
さらに、一方の最外層シート20における凹部21の底部平面部21Bに対応する位置に他方の最外層シート30側に突出するように凸部32が形成されており、また、凸部32に隣接して凹部31(凹部31b、凹部31a)が存在している。このため、両最外層シートはエンボス加工による凹凸の起伏が大きく、折り曲げ時の抵抗が小さく柔らかい紙質となる。
また、このトイレットペーパー2では、底部平面部21Bの裏面側は、その一部のみが接着部34となっており、接着剤によってシートが過度に硬くならず、また、接着剤による水解性の低下も小さい。特に、底部平面部21Bのシート層及び凸部32のシート層は、エンボス加工時の圧力により繊維が押されることで密になるため、この底部平面部21Bのシート層裏面側及び凸部32のシート層裏面側の全体に接着剤が付与されていない構成とすることで、底部平面部21Bのシート層裏面側及び凸部32のシート層裏面側の一部のみが接着され、水解性や柔らかさの発現において優れるようになる。
また、本実施形態に係る好ましいトイレットペーパー2では、上記のとおり一方の最外層シート20の凹部21の底部平面部21Bと、他方の最外層シート30の凹部31の深さの浅い凹部31aと最も深い凹部31bとが、全て互いにずれた位置にある。この形態は、よりエンボス加工による凹凸の散在具合と紙面の起伏とのバランスに優れ、表面の滑らかさとともに、柔らかさ、さらに厚み方向のクッション性を感じやすいものとなる。
他方で、本実施形態の2プライのトイレットペーパー2は、一方の最外層シート20の凹部21の底部平面部21Bの裏面側の一部が、他方の最外層シート30の凸部32の裏面の一部と接着されているとともに、さらに、その一方の最外層シート20の凹部21に隣接して他方の最外層シート30の二水準の凹部31の最も深い凹部31b、つまり他方の最外層シート30が内側に対して凸(外側に対して凹)となっている凸部33の頂部(他方の最外層シート30の凹部31bの内側面側)に接着剤33aが付与されているともに、その頂部は付与された接着剤33aによって一方の最外層シート20に対して実質的に接着されていない。接着剤33aが付与されているこの凸部33は、接着剤33aによって硬質になっているため、シート20,30の間に維持されやすい柱構造を形成する。
このような柱構造を有することで、トイレットペーパー全体として厚み方向の圧力に対する回復性、弾力性に優れ、厚み感と使用時の破れにくさを感じられやすいものとなる。そのうえで、当該部分において接着剤によってシート同士が接着していないため柔らかさ、特に曲げ方向の柔らかさに優れるとともに、水解性を過度に低下させることがない。
なお、本発明に係る家庭用薄葉紙では、後述の3プライ(図15)及び4プライ(図17)においても、上記のような一方のシートの凹部の底部の裏面側の一部が隣接する他のシートと接着され、前記凹部に隣接する他のシートの凸部の頂部に接着剤が付与されているとともに、その頂部においては隣接するシート同士が接着されていない、構造を有するのが望ましい。
他方で、本発明に係る一方の最外層シート20の凹部21の底部平面部21Bの面積及び平面視での全体面積は、限定されるわけではないが、好ましくは1.0~2.5mm2である。凹部21の密度も限定されるわけではないが、好ましくは密度が0.01~0.5個/mm2である。また、一方の最外層シート20の凹部21の深さは、必ずしも限定されないが0.02~0.5mmである。さらに、他方の最外層シート30の凹部31の深さは、必ずしも限定されないが、他方の最外層シートにおける底部平面部を有する最も深い凹部31bにおいて0.02~0.5mm程度である。
ここで、本発明に係る凹部の深さは、株式会社キーエンス社製ワンショット3D測定マクロスコープ VR-3200又はその相当機と、画像解析ソフトウェア「VR-H2A」又はその相当ソフトウェアにより測定する。測定は、倍率12倍、視野面積24mm×18mmの条件で測定する。但し、倍率と視野面積は、エンボス(凹部)の大きさによって、適宜変更することができる。
具体的な測定手順は、なだらかなドーム型の凸部と規則的な配列の凹部のある一方の最外層シートの外側面、外側形状を示す図5、図6を参照して説明すると、上記ソフトウェア等を用いて、平面視点で示される図5の画像部の中の連続する二つの凸部22の中央に跨り、上記連続する二つの凸部22の間にある凹部21の中央を通る線分Q1を設定し、エンボス深さ(測定断面曲線)プロファイルを得る。エンボス深さ(測定断面曲線)プロファイルが試験台に平行となるよう試験片を調整する。このエンボス深さプロファイルの断面曲線からλc:800μm(但し、λcはJIS-B0601「3.1.1.2」に記載の「粗さ成分とうねり成分との境界を定義するフィルタ」)より短波長の表面粗さの成分を低域フィルタによって除去して得られる断面視点で示される図6の画像部の「輪郭曲線Q2」のうち、凹部21の左側の曲線の曲率極大点よりも左側で凹部21の最下点から左へ移動して初めて曲線の傾きが0と見なされる点をP1(左側の凸部22の右端部)、凹部21の右側の曲線で曲率極大点よりも右側で凹部21の最下点から右へ移動して初めて曲線の傾きが0と見なされる点をP2(右側の凸部22の左端部)とする。P1とP2の高さの平均値と凹部21の最下点の高さP3の差異をエンボス深さとする。
一方の最外層シートに2つ以上の凹部があると認められる場合は、各々の凹部の深さを上記と同様の方法で求め最も深さの深い凹部を一方の最外層シートの凹部の深さとして求めることができる。
以上の測定を、トイレットペーパー表面の任意の5個のエンボスについて行い、その平均値を最終的な凹部の深さとする。
ここで、規則的な配列のエンボス凸部と深さの異なる2つ以上の凹部を持つ他方の最外層シート側の面の上記ソフトウェアを用いた平面視点で示される画像部を図7及び断面視点で示される画像部を図8に示す。具体的な測定手順を他方の最外層シートの外側面、外側形状を示す図7、図8を参照して説明すると、上記ソフトウェア等を用いて、平面視点で示される図7の画像部の中の連続する二つの凸部32の中央に跨り、上記連続する二つの凸部32の間にある凹部31の中央を通る線分Q1’を設定し、エンボス深さ(測定断面曲線)プロファイルを得る。エンボス深さ(測定断面曲線)プロファイルが試験台に平行となるよう試験片を調整する。このエンボス深さプロファイルの断面曲線からλc:800μm(但し、λcはJIS-B0601「3.1.1.2」に記載の「粗さ成分とうねり成分との境界を定義するフィルタ」)より短波長の表面粗さの成分を低域フィルタによって除去して得られる断面視点で示される図8の画像部の「輪郭曲線Q2’」のうち、凹部31bの最下点の左側の曲線で曲率極大点よりも左側で凹部31bの最下点から左へ移動して初めて曲線の傾きが0と見なされる点をP1’、凹部31bの右側の曲線で曲率極大点よりも右側で、凹部31bの凹部の最下点から右へ移動して初めて曲線の傾きが0と見なされる点をP2’とする。P2’(P2’>P1’)の高さと凹部31bの最下点の高さP3’高さの差異を凹部31bのエンボス深さとする。P1’の高さとP2’の高さの差異を凹部31aのエンボス深さとする。
他方の最外層シートに3つ以上の凹部があると認められる場合は、各々の凹部の深さを上記と同様の方法で求め最も深さの深い凹部を一方の最外層シートの凹部の深さとして求めることができる。
また、凹部31bの選択にあたっては、当該測定中に線分Q1’の位置を動かしながら画像部の「輪郭曲線Q2’」と見比べ参考としてよい。以上の測定を、トイレットペーパー表面の任意の5個のエンボスについて行い、その平均値を最終的な凹部の深さとする。
また、本発明に係るトイレットペーパーでは、10枚相当分の重ね高さ減少率が15.0%以下であるのが望ましい。この範囲であれば、従来のラミネートした積層の衛生薄葉紙よりクッション性のある品質となる。この重ね高さ減少率は、9.12gf/cm2の圧力で20分間加圧した後に測定した重ね高さH0に対し、81.12gf/cm2の圧力で20分間加圧した後、再び9.12gf/cm2の圧力で20分間静止状態で保持したときの高さHfの減少率を(H0-Hf)/H0×100で算出した値である。なお、10枚相当分とは、2プライの場合は、2プライ×5組で測定するが、3プライ以上の場合は、5組で測定し10枚に相当するように値を除する。例えば、3プライの場合は、3プライ×5組で測定した値を2/3倍する。重ね高さ減少率が15.0%以下であれば、手触りの良さ及びクッション性がよく感じられる。重ね高さ減少率が15.0%超のときはクッション性が悪く感じられる。
本願発明の積層トイレットペーパーは、市場にある従来のデザインラミネートのトイレットペーパーの中で最も重ね高さ減少率が小さく、厚さ方向に加えた力を解放した時の復元性が最も優れている。
本発明における重ね高さ減少率は、株式会社キーエンス社製ワンショット3D測定マクロスコープ VR-3200又はその相当機と、画像解析ソフトウェア「VR-H2A」又はその相当ソフトウェアにより測定する。具体的な測定方法としては、(1)前記ワンショット3D測定マクロスコープの水平な台に2プライ×5組(計10枚)を5cm×5cm角の大きさに揃えて嵩ねる。(2)その上に、下面側に黒マジック等で直径5mmの印を描いたアクリル板(10cm×10cm×厚さ3mm)を試料に載せ、(3)更に錘をアクリル板を水平にした状態で載せて9.12gf/cm2の圧力で20分間加圧し、前記ワンショット3D測定マクロスコープの線粗さの2点設定機能により前記印の中央点で試料の高さを計測(高さH0)する、(4)更に、試料の位置を変えずにアクリル板が水平になるよう錘を載せ81.12gf/cm2の圧力で20分間加圧した後、(5)再び9.12gf/cm2の圧力で20分間静止状態で保持したときの高さHfを計測し、重ね高さ減少率を(H0-Hf)/H0×100で算出した値として求める。以上の測定を、各トイレットペーパーについて5回行い、その平均値を最終的な重ね高さ減少率(%)とする。
ここで、実施形態であるトイレットペーパーは、例えば、図3に示すように、紙管(管芯とも称される)5にロール状に巻いた形態(以下、トイレットロールという)で市販されることが一般的であり、本発明においてもこの製品形態とすることができる。なお、トイレットロールの幅L3は100~120mm、トイレットペーパーの巻径L4(直径)110~115mmである。紙管の直径L5は、35~45mmである。特に、トイレットロールの巻径は、JIS P 4501において、120mm以下と定められており、一般的なトイレットロールをセットするためのホルダーはこの120mmを基準として作成されている。本発明のトイレットペーパーは、この市販形態で使用される場合に十分に柔らかさ、表面の肌触りのよさを発現できる。ここで、巻径は、ムラテックKDS株式会社製ダイヤメータールール又はその相当機を用いて測定することができる。
本発明に係るシートは、公知の抄紙技術により抄紙したトイレットペーパー等の原紙である。トイレットペーパー以外の家庭用薄葉紙であれば、その種類に応じて適宜に抄紙されたシートとすればよい。
本発明に係るシートの坪量は、家庭用薄葉紙の用途により適宜に調整されるものであり必ずしも限定されるわけではないが、トイレットペーパーであれば、13.0~20.0g/m2の範囲とするのがよい。この範囲においてプライ数に応じて適宜に調整する。
本発明に係る各シートを構成する繊維は、限定されないが、バージンパルプ70~100質量%、古紙パルプ0~30質量%であるのが望ましい。古紙パルプを配合すると、バージンパルプ100質量%からなるものに比して、安価に製造することができる。
古紙パルプはいくつかに分けられるが、使用する古紙パルプは上級白物古紙(LBKPを主原料とした上質紙や上質コート紙のチラシ古紙など)から作る上級古紙パルプ(FDIP)やミルクカートン古紙パルプが好ましい。一般に古紙を再生する工程においては、再生前のパルプ繊維に比して繊維が細かくなる傾向にあり、このような繊維の性質上、紙厚を厚くせずに紙層が密となる。このため過度に配合すると柔軟性などの風合いが低下する。本発明においては、雑誌古紙などを主体とした古紙パルプ(MDIP)あるいは、新聞古紙などを主体とした古紙パルプ(新聞DIP)は退色や強度劣化があり推奨されない。牛乳パックなどの良質のNBKPを多く含む包装紙にPEラミネートしたものからパルプ繊維を得たミルクカートン古紙パルプやLBKPを多く含む上質古紙を原料とする古紙パルプを使用するのが望ましい。これらは原料由来のクラフトパルプ(LBKPやNBKP)が多く配合されているため、紙力を発現させやすいとともに柔らかさを保持することができる。
バージンパルプとしては、針葉樹クラフトパルプ(NBKP)と広葉樹クラフトパルプ(LBKP)が望ましい。配合比率は、NBKP:LBKPを20:80~50:50とするのが望ましい。なお、このバージンパルプと上記の上質古紙パルプとからなる繊維素材を用いて製造されたトイレットペーパーは、古紙由来の機械パルプが5質量%以下、灰分が3質量%以下とすると、白色度が80~85%程度となるため、所望の白色度に応じて配合比率を変えることができる。
また、シート中には、紙力や柔軟性を高める適宜の薬剤が内添されていてもよい。但し、湿潤紙力剤の添加は、水解性を低下させるため、湿潤紙力剤は添加しないようにしてもよいし、一次性湿潤紙力増強剤は水解性に支障のない程度に適宜添加してもよいし、添加しなくてもよい。
本発明に係るシート同士の接着に用いられる接着剤は、限定されるわけではないが、良好な風合いや水解性を保つという観点からは水溶性の高分子、例えばメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールなどに加え、これらの誘導体ならびにこれらの混合物を挙げることができる。また、紙同士を接着可能な印刷用インキやデンプン等も接着剤として使用できる。
次に、上記の特徴的な構造の第一実施形態に係る2プライのトイレットペーパー1の製造方法を特に図9~図11を参照しながら説明する。
まず、一方の最外層20を構成する一方の最外層シート20aと、他方の最外層を構成する他方の最外層シート30aとを各原反ロール20A,30Aより繰り出して、エンボス加工により幾何学的に反復及び連続する凹部及び凸部を形成する。
このエンボス加工は、スチールラバー方式のシングルエンボス加工により行うのが望ましい。図示の形態では、周面にエンボス付与凸部が形成された表面金属性のエンボスロール71,72と、このエンボスロール71,72と対になる弾性ロール81,82との間にシート20a,30aを通し、一方面の凹部が他方面の凸部となるように形成している。
このエンボス加工において形成する凹部21b,凹部31cの配置パターン(図10参照)は、凹部21b,凹部31cが格子状の交点となるパターンとする。この際、各シート20a,30aには、凹部21b,凹部31cが形成された面の裏面側に、凹部21b,凹部31cのパターンと同じパターンで配置される格子状の凸部22b,凸部34bが形成される。なお、凹部21b,凹部31c及び凸部22b,凸部34bの配置は、上記の第一実施形態における一方の最外層シート20における好ましい凹部21及び凸部22の形状及び配置形態(図1参照)となるようにするのが望ましい。
また、エンボス加工によって各シート20a,30aに形成する格子状の交点に位置する凹部21b,凹部31cについては、前記一方の最外層シート20a及び前記他方の最外層シート30aともに同様の中心間隔となるようにするのが望ましい。凹部21b,凹部31cの底部平面部の形状については、前記の最外層一方シート20aと前記他方の最外層シート30aで必ずしも同一である必要はないが、後述する凹部の裏面側の凸部同士が対面するとき位置決めしやすいために、同一であるのが望ましい。
次に、図9にあるようにエンボスロール71,72と弾性ロール81,82との間を通して凹凸を形成した各シート20a,30aのうち、図において、他方の最外層シート30aをエンボスロール72と弾性ロール82との間に通してエンボスを形成し、他方の最外層シート30aの凸部34b(図10(D))の頂部平面部34Bに対して、ドクターチャンバー、印刷機などの公知の接着剤付与手段7aにより接着剤34aを付与する。接着剤34aの付与の方法も限定されない。例えば、弾性ロール82との間を通された後、エンボスロール72の周面に巻きかけられて搬送される表面凹凸の他方の最外層シート30aに対して、接着剤付与ロールを接触させて、接着剤を転写するようにして行うことができる。
次に、特に図10及び図11に示すように、接着剤34aが付与された他方シート30aの凸部34bの頂部平面部34Bに対して、接着剤が付与されていない一方の最外層シート20aの凸部22bの頂部平面部22Bを平面視で一部が重なるように対面位置させつつ両最外層シート20a,30aを圧接する。この時、各凸部21b,34bの各位置は、ともに同パターンで格子状の交点に位置しているため、各シート20a,30aの頂部平面部の位置をややずらして重なるように配置することになり、すべての凸部22b,34bの頂部平面部が一様にずれて、全ての凸部で頂部平面部の一部だけが重なるように対面配置される。
そして、一方の最外層シート20a及び他方の最外層シート30aを圧接させるにあたっては、図示の形態のように、凸部の頂部34bの頂部平面部34Bに接着剤34aが付与されている他方シート30aを、その凸部34bが内側(一方の最外層シート20a側)に向くようにマリッジロール91とも称される弾性の受けロール上に導き、接着剤が付与されていない一方の最外層シート20aはエンボスロール71上に巻きかけられた状態のまま圧接位置に導く。両最外層シート20a,30aの圧接位置においては、マリッジロール91により他方の最外層シート30aがエンボスロール71上の一方の最外層シート20aに押し込まれるようにして圧接させられる。その際、両最外層シート20a,30aの凸部22bの頂部平面部22B,34bの頂部平面部34B同士が衝突する部分、つまり凸部22bの頂部平面部22B,34bの頂部平面部34Bが接して重なっている部分においては、表面が金属等の硬質なエンボスロール71上の一方の最外層シート20aの凸部22bの頂部平面部22Bは、マリッジロール91側から押されても潰れず形状が維持される。その一方で、他方シート30aの凸部34bの頂部平面部34Bは、前記一方の最外層シート20aの凸部22bの頂部平面部22Bからずれた位置にある部分が、その他の部分とともに、マリッジロール91に押されて、エンボスロール71の特にエンボス付与凸部が形成されていない部分に押し込まれる。その結果、図11に示すように、他方の最外層シート30aには二水準の底を有する凹部31が形成されるとともに、一方の最外層シート20aには凹部21b(最も深い凹部)が形成され、さらにその最も深い凹部21bの底部平面部21Bの裏面側の一部(接着部34)において他方の最外層シート30aと接着される。さらに、その底部平面部21Bの位置が他方の最外層シート30aの最も高い凸部32の頂部となる。
さらに、この製造方法例では、一方の最外層シート20の凹部21bに隣接するようにして、他方の最外層シート30aの二水準の底を有する凹部31の最も深さの深い部分31b(図11)が形成される。そして、凹部31の底部平面部31Bの裏面側の位置に接着剤33aが付与されているとともに、その頂部においては隣接する一方の最外層シート20に接着されていないものとなる。つまり、他方の最外層シートに上記の接着していない凸部33がシート間に形成される。
かくして、一方の最外層シート20aと他方の最外層シート30aが積層一体化され、図1及び図2に示す第一実施形態に係る一方の最外層シート20aと他方の最外層シート30aで構成される2プライのトイレットペーパー2が形成される。なお、マリッジロール91とエンボスロール71との接触圧や、エンボスロール71,72と弾性ロール81,82との間のエンボス圧は、紙厚や製造速度等によって適宜に調整すればよく、必ずしも限定されるわけではない。また、本発明においては、トイレットペーパーの原紙の抄造や製品化に至るなど他の工程については特に限定されない。
[第一実施形態の他の例]
第一実施形態の他の例としては、図9に示す上記の第一実施形態の製造方法において、原反ロール30A及び原反ロール20Aの少なくとも一方を2プライのシートとしたものとし、一方の最外層シート又は他方の最外層シートと平面直視同位置に凹凸がある同様の断面構造の積層シートが積層された、3~4プライの家庭用薄葉紙がある。
具体的には、例えば、図9において、原反ロール30Aを他方の最外層シートと中層シートが予め積層された2プライのシートが巻かれたものである場合、接着剤の濃度や浸透性を調整し、中層シートの凸部に接着剤を付与することで、最外層シート裏面まで浸透させ、一方の最外層シートと接着させれば、3プライの家庭用薄葉紙となる。
さらに、図9において、原反ロール20Aも2プライの積層シートが巻かれたものとすれば、4プライの家庭用薄葉紙となる。なお、この場合、原反ロール20Aを構成する積層シートは、予め別の工程でコンタクトエンボス等の圧着処理で接合してもよい。
もちろん、原反ロール30Aを1プライのシート、原反ロール20Aを2プライのシートとして積層し、3プライの家庭用薄葉紙としてもよい。
また、上記の第一実施形態の製造方法において、原反ロール30A又は原反ロール20Aの一方を3プライのシートとしたものとすると、一方の最外層シート又は他方の最外層シートと平面直視同位置に凹凸がある同様の断面構造の積層シートが積層された、4プライの家庭用薄葉紙となる。
具体的には、図9において、原反ロール30Aを3プライ積層シートを巻かれたものとすれば、4プライの家庭用薄葉紙となる。もちろん、原反ロール20Aを3プライのシートとすることもできる。この場合、各原反ロールに巻かれている積層シートについては、予め別の工程でコンタクトエンボス等の圧着処理で接合しておいてもよい。
上記の第一実施形態の製造方法により製造される3~4プライの家庭用薄葉紙は、エンボスによる凹凸は、第一実施形態の一方及び他方の最外層シートに形成されるエンボス形態と同様となる。
[第二実施形態]
次いで、本発明の第二実施形態を主に図12~図16を参照しながら説明する。この第二実施形態は、一方の最外層シート20aと他方の最外層シート30aとの間に中層シート40aを有する3プライといわれる3プライ積層シートのトイレットペーパー3である。なお、上記第一実施形態と同様の構成及び作用効果については、説明を省略する。
この3プライのティシュペーパー3は、他方の最外層シート30aにおける凹部31及び凸部32の配置及び断面構造は、上記第一実施形態と同様となっている。
一方の最外層シート20aは、最も深さの深い凹部21と、これよりも深さの浅い凹部25の2種類の凹部21,凹部25が形成されており、それらの深さの深い凹部21と深さの浅い凹部25がともに平面視において、格子の交点に位置するように配置されて凹部群を形成している。本実施形態では、一方の最外層シート20aのこの凹部21,凹部25以外の部分が凸部32となっている。なお、本実施形態においても、上記の最も深さの深い凹部21よりも深さの浅い他の凹部があってもよい。
他方で、本実施形態に係る中層シート40aには、エンボス加工による凹凸が形成されており、特に、その凹部の形状及び位置は、前記一方の最外層シート20aの凹部21,凹部25と平面視において各々同じ形状及び同じ位置となっている。なお、本実施形態における中層シート40aの凹部とは、一方の最外層シート20a側からみて凹となる部分である。
本実施形態の3プライのトイレットペーパー3においても、一方の最外層シート20における最も深い凹部21の底部平面部21Bと、他方の最外層シート30aの最も高い凸部32の頂部は対応する位置にある。
但し、本実施形態の3プライのトイレットペーパー3では、一方の最外層シート20aが、その一方の最外層シート20aの深さの最も深い凹部21の底部平面部21Bの裏側において隣接する中層シート40aと接着されておらず、前記一方の最外層シート20aの深さの最も深い凹部21の底部平面部21Bに対応する他方の最外層シート30aの凸部32の頂部の裏面の一部分34において、その他方の最外層シート30aと隣接する中層シート40aとが接着されている。
さらに、この3プライのトイレットペーパー3では、一方の最外層シート20aに形成された深さの浅い凹部25の底部平面部25Bの裏面側の一部において、前記一方の最外層シート20aと中層シート40aとが接着剤45aにより接着されている。その一方で、平面視でこの浅い凹部25に対応する位置においては、他方の最外層シート30aと中層シート40aとが接着されていない。
この3プライのトイレットペーパー3は、上記のように特徴的に、前記一方の最外層シート20aと他方の最外層シート30aとが中層シート40aに対して平面視の同一位置で接着されていない。したがって、一方の最外層シート20aから他方の最外層シート30aまで平面視で見て同一箇所で接着されている部分がないため、接着剤の固着部分が分散していて硬い質感がなく、3プライのラミネートエンボスでありながら柔らかさが感じられやすい。また、一方の最外層シート20aから見て、エンボス加工時に繊維が密となる一方の最外層シート20aの凹部21の底部平面部21B、及びその裏面にある中層シート40aに形成される凹部41bの底部平面部41B、それと、他方の最外層シート30aの凸部32の底部平面部32Bの位置、あるいは、中層シートaに形成される凹部45に形成される凹部45Bと一方の最外層シート20aの凹部25bはその全体ではなく一部のみが接着剤で隣接するシートと接着されているため、第一実施形態と同様に、柔らかさの点で優れ、水解性を過度に低下させることもない。
さらに、一方の最外層シート20aと中層シート40aと他方の最外層シート30aとが、各シートにおいて格子上に散在する凹部21,凹部25に対応する位置で接着しているため、どの位置で裁断・カットしてもプライ離れが生じない。
また、図示の形態の3プライのトイレットペーパー3では、一方の最外層シート20aの凹部21の平面視位置に中層シート40aが隣接し凹部41を形成し、その凹部41の裏面の片側の側方に他方の最外層シート30aの二水準の凹部31のうち深さの最も深い凹部31bがあり、その裏面側は、他方の最外層シート30aの内側へ向いた凸部33を形成している。凸部33の頂部33bの頂部平面部33Bに接着剤33aが付与されているともに、その頂部33bの頂部平面部33Bに付与された接着剤33aによって中層シート40aに対して接着されていない。さらに、一方の最外層シート20aの深さの浅い凹部25に隣接して、中層シート40aに一方の最外層シート20aに向かう凸部46が形成されており、その凸部46の頂部の頂部平面部46Bにも、前記一方の最外層シートとの接着に寄与しない接着剤46aが付与されている。
この接着剤33aが付与された凸部33の頂部33bの頂部平面部33B,接着剤46aが付与された凸部46の頂部46bの頂部平面部46Bが、一方の最外層シート20aと中層シート40a、さらに中層シート40aと他方の最外層シート30aとの間に柱構造を形成するため、トイレットペーパー全体として厚み方向の圧力に対する回復性、弾力性に優れ、厚み感と使用時の破れにくさを感じられやすいものとなる。なお、この凸部33,凸部46も格子状の交点位置に存在するのが望ましい。シート全体に散在することで、シート全体での弾力性に優れるようになる。
次に、上記の特徴的な構造の第二実施形態に係る3プライのトイレットペーパー3の製造方法を特に図13~図15を参照しながら説明する。
まず、一方の最外層20を構成する一方の最外層シート20aと、他方の最外層を構成する他方シート30aと、それらの間に位置される中層シート40となる中層用シート40aを各原反ロール20A,30A,40Aより繰り出して、エンボス加工により幾何学的に反復及び連続する凹部及び凸部を形成する。
各シート20a,30a,40aに凹凸を形成するエンボス加工は、第一実施形態の製造方法と同様に、周面にエンボス付与凸部が形成された表面金属性のエンボスロール71,72,73,74と、このエンボスロール71,72,73,74と対になる弾性ロール81,82,83,84との間にシート20a,40a、及び、30a,2A(20aと40aをエンボス加工した2プライ積層シート)を通して行う。
このエンボス加工において各シート20a,30a,40aに形成する凹部25b,31c,41cの配置パターンは、凹部が格子状の交点となるパターンとする。この際、各シート20a,30a,40aには、凹部25b,凹部31c,凹部41cが形成された面と反対面に、凹部25b,凹部31c,凹部41cのパターンと同じパターンで配置される格子状の凸部26b,凸部34b,凸部44bが製品で外から確認できない形状も含み形成される。なお、上記凹部及び凸部の配置は、上記の第一実施形態における一方の最外層シート20aにおける好ましい凹部21及び凸部22の形状及び配置形態となるようにするのが望ましい。
また、エンボス加工によって各シート20a,30a,40aに形成する格子状の交点に位置する凹部については、一方の最外層シート20a、他方の最外層シート30a及び中層シート40aともに同様の中心間隔となるようにするのが望ましい。各凹部、各凹部の底部の立体及び平面視形状、及び、各凹部の底部の底部平面部の平面視形状については、必ずしも同一である必要はないが、第一実施形態と同様に凸部同士の対面するように位置決めしやすいため、同一であるのが望ましい。
次に、一方の最外層シート20aと中層シート40aとにより、上記第一実施形態の製造方法と同様の工程によって、第一実施形態の2プライのトイレットペーパー2と同様の構造の二層積層シート2Aを形成する。図示の形態は、図14(G)に示すように、中層シート40aを第一実施形態における他方の最外層シート30aとして、その凸部44bの頂部平面部44Bに接着剤44aを付与し、マリッジロール91上にて両シート20a,40aを圧接するようにしている。したがって、二層積層シート2Aは、図14(H)に示すように、中間層シート40aに二水準の底の凹部41の最も深さの深い凹部41bと深さの浅い凹部41aとが形成され、一方の最外層シート20aと中間シート40aとが、一方の最外層シート20aに形成した凹部25の底部25bの底部平面部25Bの裏面の凸部25BBの一部が、中間シート40aに形成された凸部41cの頂部44bの頂部平面部44Bに付与された接着剤44aにより接着されていて、さらにその凹部25bに隣接して、中間層シート40aに形成された内側を向いた凸部46の頂部46bの頂部平面部46Bに接着剤46aが付与されているものの、一方の最外層シートと接着されていない凸部46が形成されたものとなっている。また、一方の最外層シート20aの凹部25bの裏面側に中間シート40aの凸部41cがずれて配置し接着剤により接着して形成されたものとなっている。
次に、この一方の最外層シート20aと中層用シート40aとにより形成された二層積層シート2Aにエンボス加工によって凹凸を形成する。ここでのエンボス加工は、前段の一方の最外層シート20a及び中層シート40aに対するシングルエンボス加工と同様であり、二層積層シート2Aを二段目のエンボスロール74と弾性ロール84との間に通して行う。
さらに、この二層積層シート2Aに対するエンボス加工は、図14(I)に示すように、エンボスロール74側が一方の最外層シート20a、弾性ロール84側が中層用シート40aとなるようにして、このエンボスロール74により一方の最外層シート20a側に凹部21bが形成されるように行う。この二段目のエンボスロール74において二層積層シート2Aに対して形成する凹部21bの形状、配置パターンは、前段のエンボス加工による凹部の形状、配置パターンとするのが望ましい。つまり、一方の最外層シート20a及び中層用シート40aに形成した凹部25b,41cの配置パターンと同様のピッチで格子状の交点に位置するものとするのが望ましい。
さらに、この二層積層シート2Aに形成する凹部21bの位置は、前記一方の最外層シート20aの凹部25b及び中層シート40aの凹部41cの最も深さの深い凹部46と平面視でかからない位置とする。したがって、凹部の位置がずれるようにしてエンボス加工を行う。このようにすると、少なくとも前記中層シート40aにおける接着剤付与位置ではない位置、さらに言えば、平面視にて接着剤が存在していない位置に凹部が形成される。
このようにして形成された二層積層シート2Bは、図14(J)に示すように、二段目のエンボスロール74によって凹部21b,21b…が形成される際に、一段目のエンボスロールによって付与された凹部25b,凸部46が潰されるため、二段目のエンボスロール74によって付与される凹部21b,21b…が最も深いものとなるとともに、その反対面にこの深い凹部に対応する中間シートaの凸部40d,40d…が形成される。
3プライのトイレットペーパー3では、二層積層シート2Bの形成とともに、図15に示すように、二層積層シート2Bにしていない他方の最外層シート30aの凸部34bの頂部に対して、接着剤付与手段7bによって他方の最外層シート30aの凹部31cの裏面側の凸部34bの頂部平面部34cに接着剤34aを付与する。この接着剤34aの付与は、第一実施形態の製造方法と同様に行うことができる。
次に、接着剤34aが付与された他方の最外層シート30aの凸部34bの頂部平面部34cに対して、前記二層積層シート2Bの最も深い凹部21bに対応する凸部42bの頂部平面部42cを平面視で一部が重なるように対面位置させつつ他方の最外層シート30aと二層積層シート2Bを圧接する。
この時、各々の凸部34bの頂部平面部34c,凹部21bに対応する凸部42bの頂部平面部42cの各位置は、ともに同パターンで格子状の交点に位置しているため、各シート頂部平面部34c,頂部平面部42cの平面位置をややずらして重なるように配置すると、すべての各シート頂部平面部34c,頂部平面部42cが一様にずれて、全ての凸部で一部だけが重なるように対面配置される。そして、この対面配置された状態では、二層積層シート2Bの最も深い凹部21bに対応する凸部42bの位置は、二層積層シート2Bにおいては平面視で接着剤が付与されていないため、この位置に接着剤が付与された他方の最外層シート30aの凸部34bの頂部34cが対面位置しても、一方の最外層シート20aと中層シート40aとの間が接着されていないものとなる。つまり、一方の最外層シート20aと中層シート40aとの間、他方の最外層シート30aと中間シート40aとの間の平面視の同一位置に接着剤が存在しない。
二層積層シート2B及び他方の最外層シート30aを圧接させるにあたっては、第一実施形態の製造方法と同様に、凸部34bの頂部平坦部34cに接着剤34aが付与されている他方の最外層シート30aを、その凸部34bが外面側に向くようにマリッジロール92上に導き、凸部2tに接着剤が付与されていない二層積層シート2Bはエンボスロール74上に巻きかけられた状態のまま圧接位置に導く。
二層積層シート2Bと他方の最外層シート30aの圧接位置においては、マリッジロール92により他方の最外層シート30aがエンボスロール74上の二層積層シート2Bに押し込まれるようにして圧接させられる(図13)。その際、二層積層シート2Bの凹部21bの裏面にある凸部42cの頂部平面部42dと、他方の最外層シート30aの凹部31cの裏面の凸部34bの頂部平坦部34cが衝突する部分、つまり凸部同志が重なっている部分においては、表面が金属等の硬質なエンボスロール74上の二層積層シート2Bの凹部21bの裏面側に形成される凸部21c、凸部42cは、マリッジロール92側から押されても潰れず形状が維持される。
その一方で、他方の最外層シート30aの凸部34bの頂部は、前記二層積層シート2Bの凸部2tの頂部からずれた位置にある部分が、その他の部分とともに、マリッジロール92に押されて、エンボスロール74の特にエンボス付与凸部が形成されていない部分に押し込まれる。
その結果、三層積層シート、つまり3プライの状態となった際に、他方の最外層シート30aに二水準の底を有する凹部31が形成されるともに、一方の最外層シート20aの凸部20aに、最も深さが深い凹部21と深さが浅い凹部25とが形成され、前記中層シート40aが、一方の最外層シート20と他方の最外層シート30との間に位置する。特に、二層積層シート2Bにおける深さの最も深い凹部21には、一方の最外層シート20aの最も深さの深い底部平面部21Bがあり、底部平面部21Bの裏面側に中間シート40aが凹部42を形成し、その凹部42の裏面側の凸部42bの頂部平面部42cと、一方の最外層シート30aに形成された凸部32の裏面の凹部32bの底部平面部32Bが、その平面部の一部で接着剤34aにて接着されるとともに、その位置が他方の最外層シート30aの最も高さが高い凸部32となる。
さらに、この製造方法例では、一方の最外層シート20の凹部21に隣接するようにして、他方の最外層シート30の二水準の底を有する凹部31の最も深さの深い凹部31bが形成される。そして、その裏面側位置である内側に凸部33cの頂部平面部凸部33dに接着剤33aが付与されているとともに、その頂部においては隣接する中層シート40aに接着されていないものとなる。さらに、三層積層前の一方の最外層シート20aと中層シート40aとで構成される二層積層シート2Bにも同様の構造が存在しているため、一方の最外層シート20の浅い凹部25に隣接する位置に、中層シート40aに形成した二水準の底の凹部41の深さの深い部分41b(図14(H))に由来する中層シート40の凸部46が形成され、その頂部には前記一方の最外層シート20との接着に寄与しない接着剤46aが付与されたものとなる。これらの頂部に接着剤33aが付与された凸部33,接着剤46aが付与された凸部46は、一方の最外層シート20aと中層シート40a、さらに中層シート40aと他方の最外層シート30aとの間に柱構造を形成するため、トイレットペーパー全体として厚み方向の圧力に対する回復性、弾力性に優れ、厚み感と使用時の破れにくさを感じられやすいものとなる。
かくして、一方の最外層シート20aと中層シート40aと他方の最外層シート30aが積層一体化され、第二実施形態に係る一方の最外層シート20と中層シート40と他方の最外層シート30で構成される三プライのトイレットペーパー3が製造される。
[第二実施形態の他の例]
第二実施形態の他の例としては、図13に示す第二実施形態の製造方法において、原反ロール20A、原反ロール30A又は原反ロール40Aのいずれかを2プライのシートとしたものとした4プライの家庭用薄葉紙がある。
具体的には、図13において、原反ロール30Aを2プライの積層シートが巻かれたものとし、4プライの家庭用薄葉紙とすることができる。この場合、接着剤の濃度や浸透性を調整して、各層の接着を調整することができる。なお、このエンボスの凹凸形状は第二実施形態の一方及び他方の最外層シートに形成されるエンボス形態と同様となる。
[第三実施形態]
次いで、本発明の第三実施形態を主に図17~図20を参照しながら説明する。図17は、他方の最外層シート30a側から見た図である。この第三実施形態は、一方の最外層シート20aと他方の最外層シート30aとの間に、第一中層シート50a及び第二中層シート60aとを有する4プライといわれる四積層シートである。なお、第一実施形態及び第二実施形態と同様の構成及び作用効果については、説明を省略する。また、本第三の実施形態の詳細な構造は製造方法からも明らかにされる。
図17のように、この4プライのティシュペーパー4は、一方の最外層シート20a及び第一中層シート50aの凹凸パターンは、第二実施形態における一方の最外層シート20a及び中層シート40aの凹凸パターンと同様となっている。したがって、一方の最外層シート20a側から見た凹部の配置も、第二実施形態と同様である。つまり、一方の最外層シート20aにおいては、最も深さの深い凹部21bと深さの浅い凹部25bの少なくとも二種類の凹部が形成されており、それらの深さの深い凹部21b及び深さの浅い凹部25bともに平面視において、格子の交点に位置する配置となっている。
一方、他方の最外層シート30aには、三水準の底の凹部31があり、前記三水準の底の凹部31の最も深さの深い凹部31bと、より深さの浅い凹部31aがある。また、その深さの浅い凹部31aには、更に他の凹部35が形成されている。
また、この4プライのトイレットペーパー4では、平面視で、前記一方の最外層シート20の最も深さの深い凹部21の底部平面部21Bと、他方の最外層シート30aの最も高い凸部32の裏面とが対応しており、その対応する位置において、一方の最外層シート20と第一中層シート50は接着しておらず、更に、他方の最外層シート30と第二中層シート60とが接着されておらず、第一中層シート50aと第二中層シート60aとが平面部の一部で、接着部58を介して接着されている。
さらに、図示の形態では、一方の最外層シート20aと第一中層シート50aとが、一方の最外層シート20aの深さの浅い凹部25の裏面側の一部で、接着剤55bによって接着され、他方の最外層シート30aと第二中層シート60aとが、他方の最外層シート30aの他の深さの浅い凹部35の裏面側の一部で、接着剤65bによって接着されている。
そして、この4プライのトイレットペーパー4では、前記一方の最外層シート20aと第一中層シート50との接着位置と、他方の最外層シート30aと第二中層シート60aとの接着位置は平面視で同一位置であっていてもよく、同一位置でなくてもよいが、前記一方の最外層シート20aと第一中層シート50aとの接着位置と第一中層シート50aと第二中層シート60aとの接着位置は平面視で同一位置になく、また、他方の最外層シート30aと第二中層シート60aとの接着位置と第一中層シート50と第二中層シート60との接着位置もまた平面視で同一位置にない。
この4プライのトイレットペーパー4も、3プライの第2実施形態と同様に、各シート20,30,50,60同士が各シートに形成された凹部の裏面側の全体ではなく一部のみで接着されているため柔軟で硬質感がなく、4プライにおいても柔らかさ感じられやすい。また、各シートが各面において格子上に散在する凹部に対応する位置で接着しているため、どの位置で裁断・カットしてもプライ離れが生じない。
さらに、図示の形態では、一方の最外層シート20a,他方の最外層シート30a,第一中層シート50a,第二中層シート60aの接着部を有する平面視における凹部21,凹部25,凹部35に隣接する他のシートの凸部56,凸部66,凸部68に、シート同士の接着に寄与しない接着剤56a,接着剤66a,接着剤68aが付与されている。この頂部に接着剤が付与された凸部56,凸部66,凸部68が、シート間に柱構造を形成し、トイレットペーパー全体として厚み方向の圧力に対する回復性、弾力性に優れ、厚み感と使用時の破れにくさを感じられやすいものとなる。なお、この凸部も格子状の交点位置に存在するのが望ましい。シート全体に散在することで、シート全体での弾力性に優れるようになる。
次に、上記の特徴的な構造の第三実施形態に係る4プライのトイレットペーパー4の製造方法を特に図18~図20を参照しながら説明する。
まず、一方の最外層を構成する一方の最外層シート20aと、他方の最外層シートを構成する他方の最外層シート30aと、それらの間に位置される第一中層シート50a及び第二中層シート60aを各原反ロール20A,30A,50A,60Aより繰り出して、エンボス加工により幾何学的に反復及び連続する凹部及び凸部を形成する。
図18を参考に各シートに凹凸を形成するエンボス加工は、第一実施形態の製造方法と同様に、周面にエンボス付与凸部が形成された表面金属性のエンボスロール71,72,73,74と、このエンボスロール71,72,73,74と対になる弾性ロール81,82,83,84との間にシート20a,30a,50a,60aを通して行うことができる。
各シート20a,30a,50a,60aに形成する凹部の配置パターンは、各凹部が直交する格子の交点となるパターンとする。この際、各シート20a,30a,50a,60aには、凹部が形成された面と反対面に、凹部のパターンと同じパターンで配置される格子状の凸部が形成される。なお、凹部及び凸部の配置は、上記の第一実施形態における一方の最外層シート20aにおける好ましい凹部21及び凸部22の形状及び配置形態となるようにするのが望ましい。
また、エンボス加工によって各シート20a,30a,50a,60aに形成する格子状の交点に位置する凹部については、各シート20a,30a,50a,60aともに同様の中心間隔となるようにするのが望ましい。凹部の底部平面部の形状については、必ずしも同一である必要はないが、第一実施形態と同様に凸部同士の対面するように位置決めしやすいため、同一であるのが望ましい。
次に、本実施形態に係る製造方法の例では、上記第一実施形態の製造方法と同様の方法によって、一方の最外層シート20aと第一中層シート50aとを積層して、第一実施形態と同様の構造の一方の二層積層シート2Aを形成するとともに、他方の最外層シート30aと第二中間シート60aを積層して、同様に第一実施形態と同様の構造の他方の二層積層シート3Aを形成する。この製造方法では、一方及び他方の各二層積層シート2A,3Aを製造するにあたり、一方の最外層シート20a及び第二中層シート60aに形成した凹部に対応する凸部の頂部に接着剤を付与し、これらをマリッジロール91側として、二層積層シート2Aにする。そして、他方の最外層シート30a及び第三中層シート50aに形成した凹部に対応する凸部の頂部に接着剤を付与し、これらをマリッジロール93側として、二層積層シート3Aにする。
次に、各二層積層シート2A,3Aは、それぞれを二段目のエンボスロール75,76と弾性ロール85,86との間に通して、エンボス加工を施して凹凸を形成する。ここでのエンボス加工は、前段の各シートに対するシングルエンボス加工と同様である。
この二段目のエンボスロール75,76において各二層積層シート2A,3Aに対して形成するエンボス加工は、上記第二実施形態における二層積層シート2Aと他方の最外層シート30aと同様に行う。つまり、二層積層シート2Aに形成する最も深さの深い凹部21b,二層積層シート3Aに形成する最も深さの深い凹部31cの位置は、平面視で、ずれるようにしており、一部重なり、一部重ならない位置でエンボス加工を行う。このようにすると、少なくとも二層積層シート3Aにおける凹部31cの裏面側の中層シート60aの裏面側の凸部61bの頂部平面部61cに接着剤61aを付与し、凸部61bの位置は、二層積層シート2Aの最も深さの深い凹部21bの裏面側の中層シート50aの裏面側の凸部51bの頂部平面部51cの位置とずれており、さらに言えば、平面視で、頂部平面部61cの接着剤61aが内層シート50aに接地も接着もしていない位置に二層積層シート3Aの他方側に深さの最も深い凹部(内側に向かって凸部)が形成される。
また、凹部の形状、中心間隔についても、第二実施形態の二層積層シート2Aと同じように、前段のエンボスロール71,72,73,74において各シート20a,30a,50a,60aに形成した凹部の配置パターンと同様の中心間隔で格子の交点に位置するようにする。なお、この製造方法例では、この二層積層シート2A、3Aに対するエンボス加工は、一方の最外層シート20a及び他方の最外層シート30aがエンボスロール75,76に接し、第一中層用シート50a及び第二中層用シート60aが弾性ロール85,86に接するようにして、一方の最外層シート20a及び他方の最外層シート30a側面に凹部21b,31cが形成されるように行う。
このようにして形成された各二層積層シート2A,3Aは、図19に示すように、二段目のエンボスロール75,76によって凹部21b,31cが形成される際に、一段目のエンボスロールによって付与された凹部25b,35bが潰されるため、二段目のエンボスロール74によって付与される凹部21b,31cが一時的に最も深さの深いものとなるとともに、その反対面には、第一中間シート50a及び第二中間シート60aに対して、前記深い凹部21b,31cに対応する凸部51b,61bが形成される。
次に、4プライのトイレットペーパーでは、他方の二層積層シート3Aの最も深い凹部31cに対応する凸部61bの頂部に対して、接着剤付与手段7cによって接着剤61aを付与する。この接着剤の付与は、第一実施形態の製造方法と同様に行うことができる。つまり、エンボスロール76と弾性ロール86との間を通された後、エンボスロール76の周面に巻きかけられて搬送されるシートに対して、糊付ロールによる転写方式などにより接着剤を付与するようにすればよい。
次に、接着剤61aが付与された他方の二層積層シート3Aの凸部61bの頂面に対して、前記一方の二層積層シート2Aの最も深い凹部に対応する凸部51bを平面視で一部が重なるように対面位置させつつ両シートを圧接する。
この時、各凸部61b,51bの位置が、ともに同パターンで格子状の交点に位置しているため、各シートをややずらして重なるように配置すると、すべての凸部61b,51bが一様にずれて、全ての凸部で一部だけが重なるように対面配置される。
そして、この対面配置された状態では、二層積層シート2Aの最も深い凹部21bに対応する凸部51bの位置では、平面視で接着剤が付与されていない位置であるため、この位置に接着剤61aが付与された他方の二層積層シート3Aの凸部61bが対面しても、各シートの積層状態で平面視の同一位置に接着剤が存在しないものとなる。
一方の二層積層シート2Aと他方の二層積層シート3Aとを圧接させるにあたっては、凸部61bの頂部に接着剤61aが付与されている他方の二層積層シート3Aを、その凸部61bが外面側に向くようにマリッジロール92上に導き、接着剤が付与されていない一方の二層積層シート2Aはエンボスロール75上に巻きかけられた状態のまま圧接位置に導く。両シート2A,3Aの圧接位置においては、マリッジロール92により他方の二層積層シート3Aがエンボスロール75上の二層積層シート2Aに押し込まれるようにして圧接させられる。その際、両シート2A,3Aの凸部51b,61b同士が衝突する部分、つまり凸部が重なっている部分においては、表面が金属等の硬質なエンボスロール75上の二層積層シート2Aの凸部51bの頂部は、マリッジロール93側から押されても潰れず形状が維持される。
その一方で、他方の二層積層シート3Aの凸部61bの前記一方の二層積層シート2Aの凸部51bからずれた位置にある部分は、その他の部分とともに、マリッジロール92に押されて、エンボスロール75のエンボス付与凸部が形成されていない部分に押し込まれる。
その結果、図20に示すように、四層積層シート、つまり4プライの状態となった際に、他方の二層積層シート3Aが他方の最外層シート30及び第二中層シート60となり、特に、二水準の底の凹部31が形成された他方の最外層シート30となる。また、一方の二層積層シート2Aが一方の最外層シート20a及び第一中層シート50aとなり、その一方の最外層シート20aの最も深さの深い凹部21bの底部平面部の裏面側においては、第一中層シート50aと第二中層シート60aとが接着部58において接着され、その位置のある一方の最外層シート20aの凹部21bが第一中層シートの凹部51bに平面視で一致し、他方の最外層シート30aの最も高さの高い凸部32と平面視で一致する。
さらに、この製造方法例では、一方の二層積層シート2Aの凹部21bに平面視で隣接する位置に、他方の二層積層シート3Aの複数水準の底を有する凹部のうち深さの最も深い部分31bが形成される。そして、その裏面側位置に対応する第二中層シート60に接着剤68aが付与されている凸部68が形成され、その部分で隣接する第一中層シート50aに接着されていない。
また、四層積層前の一方の最外層シート20aと第一中層用シート50aとで構成される一方の二層積層シート2A、他方シート30aと第二中層用シート60aとで構成される他方の二層積層シート3Aにも同様の構造が存在しているため、一方の最外層シート20aの最も深さの浅い凹部25に隣接する位置に、第一中層シート50aに形成した凹部の最も深さの深い部分に由来する第一中層シート50aの凸部56が形成され、その頂部には前記一方の最外層シート20aとの接着に寄与しない接着剤56aが付与されたものとなる。さらに、他方の最外層シート30aの浅い凹部35に隣接する位置に、第二中層シート60aに形成した凹部の深い部分に由来する第二中層シート60aの凸部66が形成され、その頂部には前記一方の最外層シート20aとの接着に寄与しない接着剤66aが付与されたものとなる。これらの頂部に接着剤が付与された各凸部は、これらの頂部に接着剤が付与された各凸部が、上記各形態のトイレットペーパーと同様に、シート間にしっかりとした柱構造を形成するため、トイレットペーパー全体として厚み方向の圧力に対する回復性、弾力性に優れ、厚み感と使用時の破れにくさを感じられやすいものとなる。なお、この凸部も格子状の交点位置に存在するのが望ましい。シート全体に散在することで、シート全体での弾力性に優れるようになる。
かくして、一方の最外層シート20aと第一中層シート及び第二中層シートと他方シートが積層一体化され、第三実施形態に係る一方の最外層シートと第一中層シートと第二中層シートと他方の最外層シートで構成される4プライのトイレットペーパー4が形成される。
次いで、本発明のトイレットロールの実施例及び比較例について、圧縮前後の紙厚を測定し、重ね高さ減少率を算出した。また、水解性の測定と官能評価を行った。各試料の物性・組成は、結果とともに下記表1に示す。
実施例1は、図1及び図2に示す第1実施形態に示す2プライのトイレットペーパーである。比較例2は、図1に示す一方の最外層シートを二枚重ねとして接着剤を用いずにコンタクトエンボスにより積層一体化したトイレットペーパーである。比較例2は、エンボス加工した凸部の頂面全体に付与された接着剤により二枚のシートが接着されている従来構造のラミネートエンボス加工のトイレットペーパーである。比較例3は、比較例2より接着部が少ないデザインエンボス加工と称される従来品のラミネートエンボス加工のトイレットペーパーである。
なお、ソフトネスは、JIS L 1096(2010) E法に準じたハンドルオメータ法に基づいて測定した値である。
MMDは、摩擦子の接触面を所定方向に20g/cmの張力が付与された測定試料の表面に対して25gの接触圧で接触させながら、張力が付与された方向と略同じ方向に速度0.1cm/sで2cm移動させ、このときの、摩擦係数を、摩擦感テスター KES-SE(カトーテック株式会社製)又はその相当機を用いて測定し、その摩擦係数を摩擦距離(移動距離=2cm)で除した値である。なお、摩擦子は、直径0.5mmのピアノ線Pを20本隣接させてなり、長さ及び幅がともに10mmとなるように形成された接触面を有するものとし、接触面には、先端が20本のピアノ線P(曲率半径0.25mm)で形成された単位膨出部が形成されているものとする。
乾燥引張強度は、JIS P 8113(2006)の引張試験に基づいて測定する。試験片は縦・横方向ともに巾25mm(±0.5mm)×長さ150mm程度に裁断したものを用いる。試験機は、ミネベア株式会社製ロードセル引張り試験機TG-200Nを用いる。つかみ間隔は100mmに設定する。測定は、試験片の両端を試験機のつかみに締め付け、紙片を上下方向に引張り荷重をかけ、紙が破断する時の指示値(デジタル値)を読み取る手順で行う。引張速度は100mm/minとする。縦方向、横方向ともに各々5組の試料を用意して各5回ずつ測定し、その測定値の平均を各方向の乾燥引張強度とする。試料の調整は、JIS P 8111(1998)にしたがう。
水解性は、JIS S 3104により測定した。
重ね高さ減少率は、9.12gf/cm2の圧力で20分間加圧した後に測定した重ね高さH0(加圧前の紙厚)に対し、81.12gf/cm2の圧力で20分間加圧した後、再び9.12gf/cm2の圧力で20分間静止状態で保持したときの高さHf(加圧後の紙厚)の減少率を(H0-Hf)/H0×100で算出した値である。
官能評価は、「柔らかさ」、「滑らかさ」、「しっとり感」、「厚み」、「エンボス鮮明度」、「総合評価とし、N=15で、比較例3を基準試料4点として、1~7点の点数付けにより行った。なお、7点が最もよく、1点が最も悪い。表中は、平均値である。
表1に示される結果のとおり、水解性については、接着糊を使用していない比較例2と同程度であり、一般的なラミネートエンボス加工の比較例3よりかなり良好な結果となった。坪量が低く、エンボス加工による凹凸の部分が少ない比較例3と比べても遜色がない。本発明に係る積層構造では、接着糊を使用しているにもかかわらず水解性が悪化しない。さらに、乾燥引張強度、ソフトネス、MMD、重ね高さ減少率が、比較例3と比較例1の間の値となっている。凸部の頂面に付与した接着剤の一部のみがシート間の接着に寄与する本発明の積層構造によるものである。つまり、本発明は、使用時にプライ離れが発生し難く、紙粉の発生がないというラミネートエンボス加工の利点を有し、紙全体の柔らかさ、表面の肌触りのよさ、十分な水解性を有するものとなっている。