本発明者らは、高いスケーラビリティでVHGを製造する技術を開発してきた(例えば、英国特許出願公開GB2552551号参照)。この技術は、特定の角度で特定の波長を遮断する感光性ポリマーフィルムを横切ってレーザをスキャンし、当該フィルムにVHGを作成することを含む。英国特許出願公開GB2552551号は、特定の角度および波長領域を遮断できるフィルタに使用するための、VHGを備えるフィルムを製造する方法を開示する。その後このフィルムは、複数の波長または複数の角度を遮断するデバイスを作るために積層することができる。
第1の態様によれば、空間的に変化する体積型ホログラフィック回折格子(VHG)を持つ光学デバイスを製造する方法は、感光性材料にVHGを生成するために、第1の光ビーム(例えばレーザ)を感光性材料に照射するステップを備える。感光性材料は、媒体内で屈折率変化を生むために変化する光の強度に反応する任意の材料であってよい。VHGは、第1の光ビームと第2の光ビームとの干渉の結果生じる感光性材料内の干渉パターンによって生成される。干渉パターンを作るために、2つのビームは、互いにある角度で交差し、お互いの間に干渉が起きるように配置される。例えば2つのビームはいずれも、十分に、または部分的に、または実質的にコヒーレントである。すなわちこれらは、互いに干渉するために十分長いコヒーレント長(またはコヒーレント時間)を持つ。
干渉パターンによって生成されるVHGは、格子方向に沿って格子間隔を置いて配置された周期的な格子特性を持つものということができる。周期的な格子特性は、屈折率のパターンの繰り返しである。例えば個々の格子特性は、感光性材料を横切って繰り返される、屈折率の局所的な増加または減少であってよい。屈折率の局所的な変化は、典型的には、比較的低い屈折率領域から比較的高い屈折率領域への段階的遷移(またはその逆)であってもよい。しかしながら局所的な変化は、急激な遷移または階段状の変化であってもよい。例えば格子特性は、正弦波の形で繰り返す(正弦関数に従う格子方向に沿って変化する)屈折率のパターンであってもよい。単純な正弦関数を超えた周期的パターンも可能である。典型的には周期的パターンは、一方向にのみ繰り返す。すなわち周期的パターンは、局所的に屈折率が増加する一連の平面であると定義する(または近似する)ことができる。繰り返しのパターンは、感光性材料を横切って格子方向に複数回繰り返す。格子特性の格子間隔は、局所的な屈折率の隣接する増分の大きさ(言い換えれば、屈折率の周期的パターンの周期)として定義されてもよい。実際には、間隔といったときは、近似値として、複数の周期にわたる平均間隔が使われてもよい。この場合、格子間隔という用語もそのように理解される。周期的パターンの周期は、格子方向(屈折率のプロファイル自身は、この方向に沿って繰り返す)に沿った長さを表す。局所的に屈折率が増加する一連の平面を含む繰り返しのパターンの場合、格子方向は、局所的に屈折率が増加する平面に垂直な方向と定義することができる。
格子方向は、感光性材料の表面に対する傾斜角を形成する。傾斜角は、格子方向と、感光性材料の表面に垂直な方向とがなす角として定義することができる。従って、VHGの傾斜角がゼロの場合、格子方向は感光性材料の表面に垂直であり、格子特性(または格子面)は感光性材料の表面に垂直な方向に繰り返す。繰り返しのパターンが局所的に屈折率が増加する一連の平面を含む場合、傾斜角がゼロであることは、これらの平面が感光性材料の表面に平行であることを意味する。VHGの傾斜角がゼロでない場合、感光性材料の表面への垂線と、格子方向とのなす角はゼロではない。従って、屈折率プロファイルの周期的な繰り返しの方向(同様に、格子特性間の格子間隔が定義される方向)は傾斜している。従って、局所的に屈折率が増加する平面は、感光性材料の表面に対して傾斜している。傾斜角は、要求されるアプリケーションに応じて任意の好適な値を取ってよい。
さらに格子間隔および傾斜角は、VHGの特性を定める。理論上、格子間隔は、感光性材料の格子方向への厚さより小さい任意の値を取ることができる。しかし実際には、厚さを横切って複数回繰返されるパターンが使われる。傾斜角は、0度(このとき、格子方向は感光性材料の法線に平行である)から90度までの範囲にある。傾斜角が増えるにつれ、格子方向は、感光性材料の表面と平行となる方向(このとき、傾斜角は90度となる)に近づく。格子間隔および傾斜角は、感光性材料上の一点で、または感光性材料の局所領域横切って定義することができる。言い換えればVHGは、格子間隔および傾斜角を感光性材料の各点で定義することによって定めることができる。慣例では、ある点におけるVHGの格子間隔および傾斜角は、その点の周辺の領域におけるVHGの格子間隔および傾斜角として、あるいは当該領域における値の平均として定義することができる。例えば格子間隔および傾斜角は、格子間隔および傾斜角が実質的に一定である領域上で定義することができる。VHGの格子間隔または傾斜角のいずれか一方の値が感光性材料を横切って一定であり、他方の値が感光性材料の異なる場所で異なっていてもよい。同様に、格子間隔および傾斜角の両方が、異なる場所で異なる値を持っていてもよい。言い換えればVHGの格子間隔および/または傾斜角は、感光性材料の場所ごとに互いに独立に異なっていてもよい。
感光性材料は、放射に曝されると局所的に屈折率が変化し、応用に応じた好適な厚さを持つ、任意の強固なまたは柔軟な材料の層であってよい。感光性材料の例として、フィルム、プレート、ジェルなどがある。
本方法は、感光性材料上の領域で第1のビームおよび第2のビームをスキャンするために、第1のビームおよび第2のビームまたは感光性材料を他に対して動かすステップを備える。このようにして、感光性材料の個々の領域を個別にパターン化することができる。本法によればVHGがスキャンによって生成されるため、従来のVHGの製造方法に比べ、感光性材料を横切って広範囲にわたってVHGを生成することができる。
本方法は、感光性材料を横切って、VHGの格子間隔および傾斜角のいずれかまたはその両方を変化させるステップをさらに備える。格子間隔および/または傾斜角が感光性材料を横切って変化する(例えば、感光性材料を横切って、装置のパラメータを変化させることによって)ので、結果として生じるVHGは、感光性材料を横切って異なる特性を持つ。言い換えれば、空間的に変化するVHGが生成される。このようなVHGは、設計の自由度が大きく改善され、より多くの応用と実施の形態を持つ。例えば、異なる波長および/または入射角の光を遮断するデバイスを生成するために、単一の感光性材料を使うことができる。これにより、複数の異なる特性を持つ異なるVHGの層を組み合わせることが不要になる。その結果、製造ステップの数を低減することができ、VHGを持つ光デバイスのより簡易でより効率的な製造方法が得られる。
VHGの格子間隔および/または傾斜角は、感光性材料上を横切って段階的に変化してよい。段階的な変化とは、階段状の変化、急激な変化、あるいは、格子間隔および/または傾斜角が狭い範囲で大きく変化する領域などがないことを意味する。例えば、格子間隔および/または傾斜角の変化が、概ね感光性材料の第1のビームの波長より長い距離にわたる変化に限られるような場合は、変化は段階的である。VHGを備える光デバイスが設計に要求される所定の波長使われるとき、収差を防ぐためには、格子間隔および/または傾斜角の変化が十分段階的である必要がある。目安として、入射光の波長の距離にわたるVHGの変化は、格子間隔および/または傾斜角の値の20%未満であってよい。選択的に、入射光の波長の距離にわたるVHGの変化は、格子間隔および/または傾斜角の値の10%未満または5%未満であってよい。第1のビームは、反射ビーム(これは第2のビームである)を形成するために、感光性材料を通過した後に反射する入射ビームであってもよい。言い換えれば、第1のビームは、自分自身の反射と干渉する。これにより、感光性材料内で干渉パターンを生成するための簡略化された配置が与えられる。
本方法は、第1のビーム若しくは第2のビームの波長のいずれか一方若しくはその両方の波長、または、感光性材料における第1のビームまたは第2のビームの感光性材料への入射角を変えるステップをさらに備えてもよい。入射波長のパラメータおよび第1のビームと第2のビームと間の相対角度は、作成されるVHG、すなわち格子間隔および傾斜角に影響を与える。例えば、第1のビームと第2のビームとが反平行である(すなわち、平行であって向きが反対である。例えば、第1のビームが反射板に直角入射して反射されるような場合)ような簡単な場合、干渉パターンで強度が最大になる部分の格子間隔は、波長と屈折率とによって決定される。第1のビームと第2のビームとが反平行でなく、両者の間に一定の角度がある場合、格子間隔はその角度にも依存する。第1のビームの波長を変えることは、VHGの格子間隔を変える効果を持つ。波長は、調整可能な光源を使うことによって変えられてもよい。第1のビームが静的な平面鏡で反射される場合、第1のビームの反射角の変化は、第1のビームと第2のビームとの間の角度を変化させる。その結果、フリンジ間隔とVHG間隔とが変化する。
第1のビームは、さらなる波長を含んでもよい。この場合、それぞれの波長(すなわち、前述の「波長」および「さらなる波長」)での相対的なビームパワーは、波長からさらなる波長にスムーズに移行するように、感光性材料を横切って変化する。例えば、第1のビームがレーザで生成され制御されたパワーを持つ場合、VHGで使えるパラメータの範囲(例えば、格子特性間の格子間隔の特定の範囲)は、得られる波長および第1および第2のビームの間でとり得る角度の範囲により決定される。従って、レーザの範囲外にある格子間隔のさらなる値に関しては、第2のレーザを与える必要がある。従って第1のビームは、第1の光源からの第1の波長と、第2の光源からの第2の波長と、を備えてよい。これにより、VHGのために使うことができるパラメータの範囲が増加する。従って、VHGを備える光デバイスの製造方法の汎用性が向上する。さらに、感光性材料を2つ以上の別個の波長に同時に曝すことにより、VHGを製造するために生成することができる周期的パターンの形状の数が増す。2つの波長の各々における相対的なビームパワーは、1つ以上の光変調器(例えば、音響光学変調器)によって制御することができる。さらに、VHGのパラメータに大きな不連続性(これは収差の原因となる)がないことを保証するために、それぞれの波長の相対パワーの値は、第1のビームが感光性材料をスキャンする間に、スムーズに変化してよい。特定の波長でのパワーは、それぞれのビームのパワースペクトル(例えば、当該ビームの波長でのパワーのピーク値)を通して、または、当該波長の近接領域におけるパワーの積分として定義することができる。円滑な移行とは、結果として生じるデバイスに著しい収差や分散が生じないことを目的に、十分連続的であること、あるいは、感光性材料を横切って値に急激な変化のないことを意味すると理解できる。例えば第1の波長でのパワーが徐々に減少するにつれ、第2の波長でのパワーが徐々に増加する。そして最終的に、感光性材料が移行領域を横切って曝されることにより、特性に急激な収差のないVHGが生成される。いくつかの実施の形態では、一方のレーザのパワーが円滑に減少し、他方のレーザのパワーが円滑に増加し、移行に影響を与える。特に、第1のレーザと第2のレーザの結合されたパワーは、一定であってもよいし、所定のパワー変化関数に応じて変化してもよい。
VHGの傾斜角は、感光性材料に対する干渉パターンの向きを制御することにより、感光性材料を横切って変化してもよい。一般的に干渉パターンは、第1および第2のビームにより(特に、これらのビームの相対波長およびこれらのビーム間の角度により)決定される。ある位置で強め合う干渉と別の位置で弱め合う干渉は、最大強度と最小強度の空間的パターンを生成する。この強度パターンにより、各位置での強度に応じて、感光性材料内の屈折率変化を生成することができる。従って、感光性材料に対するVHGの向きは、干渉パターンに対する感光性材料の向きに依存する。例えば、干渉パターンに対して異なる角度の向きを持つ感光性材料により、異なる傾斜角が作られる。
材料内で干渉パターンの異なる向きを作るための1つの方法に、第1のビームを反射して第2のビームを作り出す反射部品を使うことがある。例えばこの反射部品は、感光性材料内を通過した第1のビームが、反射して第2のビームが生成されるように構成された平面鏡であってよい。ここで第2のビームは、折り返して感光性材料内に入射し、第1のビームと重なり合うことにより干渉パターンを生成する。
感光性材料に生成されたVHGの傾斜角は、感光性材料に対する反射部品の反射面の向きを制御することにより変化してもよい。VHG傾斜角の極傾斜角は、感光性材料表面に対する反射部品の反射面の角度を変えることにより変化してもよい。個別にまたは追加的に、VHGの方位傾斜角は、反射部品の反射面を感光性材料表面の垂直軸周りに回転することにより変化してもよい。反射部品の反射面は、当該反射面に垂直に入射する光が再帰反射する(すなわち、入射方向に沿って反対側に反射する)平面として定義することができる。一例として、平面鏡の反射面は、当該鏡面自身の面である。別の例として、至るところで一定の傾斜角および格子間隔を持ち、特定の波長を反射するように設計されたVHGは、当該VHGを形成する格子面に平行な反射面を持つ。これは、感光性材料表面とは本質的に異なる。本方法はまた、異なる傾斜角を持つ部品の組み合わせに比べ、より効率的でステップの数が少ない。
第1のビームと反射部品で反射された第2のビームとの干渉の結果生じた干渉パターンのフリンジは、反射部品の反射面に垂直な方向に分離する。従って、感光性材料に対する反射部品の反射の向きを制御することにより、生成されたVHGの傾斜角が変化する。これは、第1のビームを感光性材料の上でスキャンすることにより実現される。この技術に従って傾斜角を制御することにより、VHGを備えるより多様な光デバイス(すなわち、感光性材料の異なる位置全体にわたり異なる傾斜角を持ち、空間的に変化するVHGを持つ光デバイス)を製造することができる。有利なことに、これにより本方法の汎用性が向上し、このような光デバイスに関する潜在的な応用が増える。
感光性材料を横切って傾斜角を変化させるための1つの方法に、第1のビームをスキャンさせながら反射部品の角度をスキャンすることがある。例えば反射部品は、第1のビームをスキャンさせながら、反射部品の表面に入射した第1のビームが反射して第2のビームを生成するようにスキャンされてもよい。第1のビームが感光性材料の表面を動かされる場合、反射部品は、第1のビームの移動後の新たな位置と調和するように動かされてもよい。同様に反射部品は、第1のビームの軌跡を追跡してもよい。その結果、反射部品は、第1のビームの軌跡に沿った感光性材料のほぼすべての領域で、第1のビームを反射して第2のビームを生成する。代替的にまたは追加的に、反射部品は、スキャン中に、反射面内の軸周りに回転してもよい。これにより傾斜角は、感光性材料上を横切って変化する。
いくつかの実施形態では、反射部品の回転は、感光性材料を照射する第1のビームの角度の制御に合わせて行われる。例えば第1のビームの入射角は、当該第1のビームが反射部品の反射面に垂直に入射するように調整される。これは、第1のビームが反射し、次にような第2のビームを生成することを意味する。すなわちこの第2のビームは、第1のビームの光路を戻って進み、感光性材料内で第1のビームに反平行であり、干渉パターンを生成する。感光性材料を横切って変化する傾斜角を持つVHGを製造するために、第1のビームのスキャンと入射角は、反射部品に合わせて制御することができる。これにより、第1のビームは、スキャンの各点で反射部品により再帰反射する(すなわち、反射面に垂直に入射する)。反射部品および第1のビームは互いに調和するように回転する。これによりVHGの傾斜角は、感光性材料を横切って変化する。
本法は、感光性材料のスキャンされた各位置で反射部品の反射面の向きを制御するために、実質的に透明なサポートを使うステップを含んでもよい。例えばサポートは、平面鏡の頂部に配置され、曲面状のまたは波立つ頂部表面を持ってもよい。材料がサポート上に配置されると、当該材料は各位置で反射部品に対して特定の角度を持つ。第1のサポートの反転した形状を持つ第2の透明な基部が、屈折率を合わされ、感光性材料の頂部に配置されてもよい。これにより、第1のビームの焦点屈折または非焦点屈折が補償される。別の例では、材料を支えるサポートの表面は実質的に平面であってよい。このとき、曲面状のまたは波立つ反射部品は、材料に対するサポートの反対側の面に沿って配置される。例えば反射部品は、サポート自身の表面であってもよく、選択的に反射コーティングを有してもよい。別の例では、サポートの傾斜が、反射部品と感光性材料の相対方向を制御する。第1のビームは、当該第1のビームが反射部品で再帰反射されるような入射角で、感光性材料を横切ってスキャンされる。反射部品が静的であるため、本方法は、動的な部品が少なくて済むという利点を持つ。
VHGの傾斜角を変化させる別の方法は、反射部品であって、当該反射部品を横切って変化するVHGを備える反射部品を用いるものであってもよい。言い換えればこの反射部品の反射面は、当該反射部品の位置ごとに異なる。従って、反射部品の表面と感光性材料とが平行であっても、反射部品上の各位置における反射面は、感光性材料に対して異なる方向を向く。従って、第1のいビームと反射部品で反射されて生じる第2のビームとの間の干渉パターンは、傾斜角を持つVHGを生成する。この構成は、動的な部品が少なくて済む、すなわち誤差が生じにくいという利点を持つ。さらにこの構成は感光性材料と接触する反射部品がコンパクトにできるが、やはり変化する傾斜角を生成することができる。さらに本方法は、製造をより容易にすることができる。なぜなら反射部品内のVHGは、感光性材料内に効率的にコピーされるからである。言い換えれば、反射部品の各位置における傾斜角のパターンは、感光性材料内に形成される。従って反射部品は、特定の空間的に変化するVHGの「マスターコピー」と考えることができる。これは、高速かつ簡単にコピーすることができる。
本方法は、反射部品のタイルから反射部品を形成するステップをさらに含んでもよい。例えば、反射部品が空間的に変化するVHGを備える構成では、空間的に変化するVHGは反射部品のタイルを用いて形成することができる。各タイル自身は、一定のまたは空間的にかへんなVHGを有し、および/または他のタイルに対する異なる格子間隔若しくは傾斜角を有する。タイルの回転軸もまた、方位傾斜角を制御する。反射部品を形成するために、タイルが組み合わされて(例えば、隣接してタイル張りされてまたは配置されて)、前述の方法が実行されると、タイル内のVHGに対応する領域を有するVHGを備える単一の感光性材料となる。有利なことに、これにより、VHGを備えるより小さな光デバイスを組み合わせて、感光性材料上全体にわたる格子間隔および傾斜角に関して特定の値を持つ、より大きな光デバイスを製造することができる。従って本方法により、製造プロセスのスケーラビリティが改善され、大きなサイズ(従って、広い領域の)のVHGが得られる。これは、他のVHG製造技術では実現できないものである。
本方法は、第1のビームが感光性材料に入射する前に、当該第1のビームの発散を増すために、第1のビームをビーム発散部品に通すステップをさらに備えてもよい。これにより、異なる傾斜角および/または格子間隔を持つ領域間の、よりスムーズな移行が可能となる。さらに、タイル張りされた反射部品が使われるか否かに関わらず、第1のビームが感光性材料でスキャンされるとき、ビーム分岐部品により、感光性材料の各位置における入射角度の範囲が生じる。これにより、各位置において、対応する範囲で格子間隔と角度に変化が生じる。これにより、各位置において、波長および/または角度の範囲の増加に効果を持つVHGが生成される。従って、第1のビームの発散を増すことにより、各位置におけるVHGの角度帯域またはスペクトル帯域が増す。
入射角度が変化する実施の形態では、本方法は、入射角が変化するときに第1のビームのパワーを調整するステップをさらに含んでもよい。第1のビームの入射角が変化することにより、感光性材料上に照射領域が形成される。これにより、一定の強度をパワーを持つビームに関し、単位領域あたりの強度変化が発生する。入射角の増加とともにパワーが増加することにより、この効果が補償されてもよい(すなわち、感光性材料上の単位領域あたりの強度が実質的に一定に保たれてもよい)。感光性材料を現像するのに必要な強度は、実質的に一定の最小値に保たれる。
本方法は、入射角が変化するときにときに第1のビームのスキャン経路を調整するステップをさらに含んでもよい。このとき、入射角度の変化により、ビームの感光性材料への入射位置にオフセットが生じる。このオフセットは、所望のスキャン経路からのずれを生む可能性がある。このずれは、光源自身を動かすか、ビームを感光性材料に導くミラーアセンブリを動かすことにより、補償することができる。代替的にまたは追加的に、第1のビームのスキャン経路は、入射ビームのサイズが変わったとしても、入射ビームで照射される領域を横切って単位領域あたりのエネルギー量が実質的に一定に保たれるように調整されてもよい。
本方法は、第1のビームで照射される領域全体にわたり単位領域あたりのエネルギー量を制御するために第1のビームをスキャンする、スキャン速度を調整するステップをさらに含んでもよい。これは、パワーの変化と同様の方法で、ビームスポットサイズへの露出の変化を補償することに使うことができる。感光性材料の露出は、スキャン速度およびビームパワーの変化の任意の組み合わせで単位領域あたりのエネルギーを変化させることにより(例えば、入射角/ビームスポットサイズが変わったときに、単位領域あたりのエネルギーを実質的に一定に保つことにより)、制御することができる。第1のビームで照射される領域を横切って単位領域あたりのエネルギー量を実質的に一定に保つとは、例えば、第1のビームのスポットサイズが増加したときに(または入射角が増加したときに)、スキャン速度を増加させる(またはその逆)ことを意味する。代替的に、スキャン速度は、第1のビームで照射される領域全体にわたり単位領域あたりのエネルギー量が閾値(例えば、感光性材料内にVHGパターンを生成するのに必要な値)を超えるように調整することができる。
いくつかの実施の形態は、第1のビームの入射角を変化させるまたは調整するステップを含む。これらの実施の形態では、本方法は、ミラーアセンブリを用いて、当該ミラーアセンブリの第1のミラーを回転させることにより、第1のビームの入射角を制御するステップを含んでもよい。例えば第1のビームは、光源(例えばレーザ)により生成され、1つ以上のミラーにより感光性材料に導かれてもよい。第1のミラー(これは、感光性材料に衝突するビームの前に存在する最後のミラーであってもよい)は、感光性材料に向けて入射角を設定する。従って第1のミラーが回転すると、入射角は変化する。第1のミラー(例えば、ガルバノミラー)は、回転マウント上の軸回りに回転してもよく、複数の軸回りに回転してもよい。
ミラーアセンブリは、第1のミラーからのビームを受光するように構成された、楕円形の第2のミラーをさらに備えてもよい。第1のミラーおよび第2のミラーは、第1のミラーの角度が変わったときに、第1のミラーの変化が第1のビームの入射角を変えるが、感光性材料上の第1のビームの入射位置を変えないように構成される。これは、第1のミラー上のビームスポットおよび感光性材料上のビームスポットを、楕円形のミラーの2つの焦点のそれぞれに配置することによって実現することができる。この目的のために、第2のミラーは、第1のミラー(特に、第1のミラー上の回転軸上のビームスポット)に一致する第1の焦点と、感光性材料に一致する第2の焦点と、を有してよい。その結果、入射角が変化しても、感光性材料上のビームスポットのスキャン経路は変化しない。これにより、入射角に合わせてスキャン経路を変える必要がなくなる。その結果スキャン経路と入射角とが切り離されるので、より簡易な製造方法が得られる。楕円形の第2のミラーのサイズが焦点の分離に比べて大きければ、楕円の曲率の変化に起因する第1のビームの発散の変化は小さい。
追加的にまたはミラーアセンブリの代わりに、第1のビームの入射角は、第1のビームを放射するデバイスに結合されたジンバルを動かすことにより制御することができる。例えば光ファイバは、ビーム光源その他の、ジンバルマウントに結合された光ファイバの端部を持つ光部品からの第1のビームを伝送することができる。ジンバルマウントは、第1のビームの感光性材料への入射角を制御するために、光ファイバの端部を回転させることができる。この構成は、光源からの第1のビームを感光性材料に伝送するために、正確に調整されることが必要な部品が少なくて済むという利点を持つ。一般に光ファイバは柔軟で、外部環境の影響を良好に遮断する。さらにシングルモード光ファイバは空間モードフィルタを構成し、空間収差が極めて小さいガウス出力ビームを与える。従って結果として得られる方法は、より簡易であり、調整が少なくて済み、外乱の影響を受けにくい。
本方法における、第1のビームをスキャンするために、第1のビームおよび感光性材料を相対的に動かすステップは、いくつかの方法で実現することができる。例えば、スキャンするステップは、第1のビームを感光性材料に導くためのスキャンヘッド、および感光性材料を相対的に動かすステップを含む。例えばスキャンヘッドは、第1のビームが放射される位置および入射角を制御してよい。スキャンヘッドは、スライドするおよび/または回転するステージを備えてよく、ガントリーに固定されてよい。一般に、スキャンヘッドおよび感光性材料は、スキャンヘッドと感光性材料との間隔をほぼ一定に保ったまま2次元上で任意の方向に動くことができる。言い換えれば、スキャンヘッドと感光性材料とは、実質的に感光性材料と平行に、互いに2次元運動する。
スキャンヘッドと感光性材料との間の相対的運動は、感光性材料を(例えば、現場などの基準系に対して)空間的に固定し、スキャンヘッドを感光性材料を横切ってスキャンさせてもよい。代替的に、スキャンヘッドを固定し、感光性材料をスキャンヘッドからの第1のビームの光路横切って動かしてもよい。別の例では、スキャンヘッドと感光性材料の両方が、独立に動くように構成される。例えばスキャンヘッドおよび感光性材料は、感光性材料の平面と平行に、互いに異なる方向に動いてもよい。2つの向きが互いに平行でなければ(すなわち、2つ方向の間に角度があれば)、第1および第2の運動方向を的確に組み合わせることにより、第1のビームを感光性材料上の任意の位置に到達させることができる。
いくつかの実施の形態では、第1のビームと感光性材料とを相対的に動かすステップは、感光性材料を第1のスプールから展開するステップと、第1のビームが感光性材料の表面全体をスキャンするように、感光性材料をスキャンヘッドを通って巻取り方向に動かすステップと、ビームを通った後の感光性材料を第2のスプールに巻き取るステップと、を含んでもよい。スキャンヘッドは、特定の角度で(例えば、巻取り方向に垂直に)動くように構成されてもよい。このロール・ツー・ロール技術により、コンパクトなセットアップに比べて、感光性材料の広い領域でVHGを生成することができる。ロール・ツー・ロール技術を使うことにより、製造の速度と効率が増す。なぜなら、感光性材料を装置に固定し、最後にこれを取り外すといったセットアップのステップが削減または回避できるからである。
いくつかの実施の形態では、スキャンヘッドは複数の入射ビームを感光性材料に導き、各入射ビームのそれぞれの入射角は独立に制御される。これらの実施の形態では、前述の方法が入射ビームの各々に適用される。例えば、第2のおよびその後の入射ビームは、対応する反射ビームを形成するように反射してもよい。複数の入射ビームおよび反射ビームの各々は、感光性材料に対して動かされる。その後、ビームのそれぞれのペアが、感光性材料の別々の部分からVHGのパーツを生成する。
本開示の別の態様では、光デバイスが、空間的に変化する体積型ホログラフィック回折格子を含む。体積型ホログラフィック回折格子は、格子方向に沿って間隔を置いて配置された周期的な格子特性を備える。格子方向は、感光性材料の表面に対する傾斜角を形成する。ただし格子間隔および傾斜角は、上で説明したものである。体積型ホログラフィック回折格子の格子間隔および傾斜角のいずれかまたはその両方は、光デバイスを横切って変化する。こうした特性を持つ光デバイスは、通常より高い機能を持つ。なぜなら、VHGの異なる位置は、入射光に対して異なる効果を生む、および/または、異なる波長に影響を及ぼすからである。
VHGは、前述の方法を用いて光デバイスの感光性材料内で形成されてもよい。VHGは、永久化するまたは感光性材料を非感光性材料とするために、さらなる処理を受けても(または「現像」されても)よい。光デバイスは、複数のセグメントをさらに備えてもよい。これらのセグメントの各々は、同一のまたは異なるVHG特性(例えば、格子間隔および/または傾斜角)を有するVHGを備える。
VHGの格子間隔および/または傾斜角は、光デバイスを横切って段階的に変化してよい。例えば、格子間隔および/または傾斜角の変化が、概ね感光性材料の第1のビームの波長より長い距離にわたる変化に限られるような場合は、変化は段階的である。VHGを備える光デバイスが設計に要求される所定の波長使われるとき、収差を防ぐためには、格子間隔および/または傾斜角の変化が十分段階的とすることができる。目安として、入射光の波長の距離にわたるVHGの変化は、格子間隔および/または傾斜角の値の20%未満であってよい。選択的に、入射光の波長の距離にわたるVHGの変化は、格子間隔および/または傾斜角の値の10%未満または5%未満であってよい。
体積型ホログラフィック回折格子の格子間隔および/または傾斜角は、光デバイスの面上で2次元方向に変化してよい。例えばVHGの傾斜角は、第1および第2の方向が光デバイスの面に拡がるように、光デバイスを横切って第1の方向に変化し、光デバイスの位置を横切って第2の方向に変化してよい。代替的にまたは追加的に、VHGの格子間隔がそのように変化してもよい。代替的に、格子間隔が第1の方向に変化し、傾斜角が第2の方向に変化してもよい。一般に、光デバイスの面は、VHGを備える感光性材料の表面に平行である。光デバイスの面は、均一または不均一に曲がっていてもよい。
2次元の空間的に変化するVHGは、光デバイスの面内に複数の等高線(すなわち、領域の閉じたループ)を有してもよい。それぞれの等高線に沿った各点でのVHGは、定まった特徴と、対応する傾斜角および格子間隔のVHGパラメータと、を有する。異なる等高線は、特徴および対応するVHGパラメータに関し、異なる値を持つ。特徴は、光デバイスが遮断する光の入射角および波長であってよい。対応するVHGパラメータは、上記の角度で入射する光を遮断する極傾斜角および間隔であってよい。任意の方向から入射する光の入射角を遮断するために、方位角は、各等高線の周りで0度から360度の範囲で変化してもよい。各等高線が遮断するときの入射角は、中心から外側に向けて増えてよい。従って、光デバイスの後側に、任意の方向から入射する光のある波長から遮断された領域が存在する。
本開示の別の態様では、感光性材料内で空間的に変化する体積型ホログラフィック回折格子を製造する装置が、感光性材料を配置するように構成されたサポートを含む。例えば、感光性材料は、感光性材料を位置づけるためのサポート上に配置されてもよい。選択的に感光性材料は、前述の方法を実行するために、サポートに取り外し可能に固定されてもよい。
装置は、1つ以上の光源を備えたビーム生成システムを備える。このビーム生成システムは、感光性材料内に体積型ホログラフィック回折格子を生成するために、光の第1のビームと光の第2のビームとを生成するように構成される。例えばビーム生成システムは、第1の光源により生成されたビームを第1のビームと第2のビームとに分割するための、ビームスプリッタを備えてもよい。別の例として、第1のビームが反射部品で反射されて、第2のビームが生成されてもよい。代替的にビーム生成システムは、例えば異なる光源を用いて、第1のビームと第2のビームとを独立に生成してもよい。ビーム生成システムの光源は、光(例えば、レーザ)を生成する部品であってもよく、他のどこか(例えば、光ファイバの端部に接続されたレーザ)で生成された光を導く部品であってもよい。VHGは、前述の方法を用いて感光性材料内で第1および第2のビームの間の干渉パターンを生成することにより、感光性材料内で生成される。VHG体積型ホログラフィック回折格子は、ある間隔で格子方向に沿って間隔を置いて配置された周期的な格子特性を備える。この格子方向は、感光性材料の表面に対して傾斜角を形成する。ただし格子間隔および傾斜角は、上で説明したものである。
装置は、感光性材料を横切って第1のビームおよび第2のビームをスキャンするためのガントリーシステムと、感光性材料を横切って第1のビームおよび第2のビームをスキャンするためのガントリーシステムを制御するように構成された制御器と、をさらに備える。制御器は、制御を必要とする装置の他の部品に送信される、1つ以上の制御信号を生成する部品または部品の組み合わせであってもよい。例えば制御信号は、第1および第2のビームをサポート上に(および、そこに備えられている場合は感光性材料上にも)位置づけるためのモータに送信されてもよい。ガントリーシステムを制御することは、例えばスキャン経路を設定すること、並びにスキャン経路に沿った各位置でのスキャン速度およびスキャン方向を設定することを含む。1つ以上の制御信号は、通信システムを介して、電気的にまたは無線で送られてもよい。
制御器はさらに、感光性材料を横切って体積型ホログラフィック回折格子の格子間隔および傾斜角のいずれか一方またはその両方を変えるために、第1および第2のビームの1つ以上のパラメータを変化させるように、光源および/またはガントリーシステムを制御するように構成される。従って制御器の制御信号は、波長可変光源の波長を決定してもよい。制御信号はさらに、第1および第2のビームのいずれかまたはその両方の入射角度を変えるためのモータを制御してもよい。これは、第1または第2のビームの角度を回転することにより、あるいはサポートおよび/または感光性材料の角度を変えることにより実現することができる。第1のビームを反射して第2のビームを生成するための反射部品を備える装置では、制御器は、モータが反射部品の位置および/または回転を制御するための制御信号を生成してもよい。制御器は、装置の任意の可動部品および/または様々な光源を制御するための制御信号を生成してもよい。制御器の一例は、装置の他の部品に制御信号を送るために、当該部品と通信する電気回路である。別の例では制御器は、装置の動作を命令するために、部品に制御信号を送るコンピュータまたはプロセッサである。
ガントリーシステムは、感光性材料を横切って2次元に第1および第2のビームをスキャンするように構成された、2次元のガントリーシステムであってもよい。例えば、第1および第2のビームがスキャンされる位置は2次元領域であってよい。従ってこの装置は、傾斜角および/または格子間隔が変化するVHGを生成することができ、さらに汎用的な光デバイスを製造することができる。
制御器は、第1および第2のビームの波長を変えるために、ビーム生成システムを制御するように構成されてもよい。第2のビームが第1のビームから生成される場合(例えば、反射またはビームスプリッタによって)は、第1のビームの波長を制御することにより、第2のビームの波長も決定される。第1および第2のビームが独立に生成される場合、制御器は、第1および第2のビームのいずれか一方のみの波長を変化させてもよく、両方が調和するように変化させてもよく、両方を独立に変化させてもよい。
ガントリーシステムは、ビーム生成システムからの第1のビームを感光性材料に導く導くように構成された第1のスキャンヘッドを備えてもよい。制御器は、第1のビームおよび/または第2のビームの感光性材料への入射角を変えるために、第1のスキャンヘッドを制御するように構成されてもよい。第1のスキャンヘッドは、第1のミラーを有するミラーアセンブリをさらに備えてもよい。ここで第1のミラーは、第1のビームの感光性材料への入射角を変えるために、回転可能である。例えばビーム生成システムは、光源からの第1のビームを第1のミラー(おそらく中間部品を介して)に導いてもよい。第1のミラーは、第1のビームを、サポートまたはサポート上に配置された感光性材料に向けて反射する。第1のミラーは、1つ以上の方向に回転してもよい。この場合第1のミラーは、例えばガルバノミラーであってよい。ミラーアセンブリは、第2のミラーをさらに備えてもよい。この第2のミラーは、第1および第2の焦点を有する楕円形のミラーである。このとき第1のミラーは、第1の焦点に相当する位置に配置される。サポートは、感光性材料を第2の焦点が相当する位置に配置されるように構成される。例えば、第1のビームは第1のミラーに入射する。この第1のミラーは、楕円形の第2のミラーの入射位置を制御するために回転する。この楕円形の第2のミラーは、第1のビームを、サポートまたはサポート上に配置された感光性材料に向けて反射する。このように構成されたミラーアセンブリにより、入射位置を変えることなく、ビームの入射角を変えることができる。これにより、第1のスキャンヘッドが通るスキャン経路が簡略化される。
第1のスキャンヘッドは、第1または第2のビームの感光性材料への入射角を変えるためのジンバルを備えてもよい。このジンバルは、光源からの光を伝送するように構成された光ファイバの端部に結合される。代替的にまたは追加的に、第1のスキャンヘッドは、第2のビームを同じように制御するためのジンバルを備えてもよい。これにより、複数のミラーでビームを感光性材料に導くことが不要となるので、ガントリーシステムを簡略化することができる。
サポートは、第1のビームを反射して第2のビームを生成するように構成された反射部品であってもよい。これは構成を簡略化するので、特に傾斜角がゼロのVHGを生成するのに好適である。代替的に、ビーム生成システムは、第1のビームを反射して第2のビームを生成するように構成された反射部品を備えてもよい。さらに代替的に、反射部品は、平面鏡、曲面鏡、傾斜角がゼロでない体積型ホログラフィック回折格子を備える平面光デバイス、または傾斜角がゼロでない体積型ホログラフィック回折格子を備える曲面光デバイスのいずれかであってもよい。
装置は、第1のビームのスキャンと調和して反射部品をスキャンするように構成された反射部品ガントリーさらに備えてもよい。反射部品は、第1のビームのスキャンと調和して回転するように構成されてもよい。例えば制御器は、以下のように、すなわち反射部品が第1のビームを経路に沿って反射させ、これにより感光性材料内の干渉パターンがサポート上に来るように、反射部品ガントリーを制御してもよい。これにより、傾斜角が変化するVHGの製造装置が与えられる。
サポートは、感光性材料がサポート上にあるとき、当該感光性材料の傾斜が当該感光性材料を横切って変化するように制御されてもよい。サポートに起因する感光性材料の傾斜は、1次元または2次元方向に、均一または不均一に変化してよい。代替的に、感光性材料が配置されるサポートの面は、サポートの反射面(等高線のある面)の裏面である。使用中、感光性材料各点の下に位置する裏面の傾斜角は、感光性材料内の干渉パターンの向きを決定し、その点におけるVHGの傾斜角を制御する。
装置は、サポートが設置される表面をさらに備えてもよい。この表面は、空気穴を備える。この空気穴は、サポートと表面との間の摩擦を低減するために、サポートと表面との間に空気の流れを与えるように構成され、表面にサポートを固定するための空気吸い込みを与える。この空気の流れは、サポートおよびその上に配置された感光性材料を、固定するまたは装置の他の部分に対して運動させるために、制御器により制御されてもよい。
装置は、ガントリーシステムに対して感光性材料を動かすように構成されたアクチュエータをさらに備えてもよい。アクチュエータは、感光性材料を動かすために、制御器により(選択的に、サポートを制御することにより)制御されてもよい。アクチュエータはさらに、第1のビームおよび第2のビームを通して、感光性材料を第1のスプールから第2のスプールに展開するように構成されてもよい。これにより、広い領域のVHGおよび/または多数のVHGを製造するための、自動化されたシステムが与えられる。
本開示の別の態様では、感光性材料内で空間的に変化する体積型ホログラフィック回折格子を備えた光デバイスを製造するためのシステムが、前述の装置と、処理ユニットと、を備える。この処理ユニットは、制御器に、感光性材料を横切って体積型ホログラフィック回折格子の格子間隔および傾斜角を制御することを命令する。処理ユニットはまた、制御器に、他の任意のパラメータまたは前述の装置の部品を制御することを命令してもよい。
以下の図面を参照して特定の実施形態を説明する。
均一なVHGを備える2つの光デバイスの図である。
空間的に変化するVHGを有する光デバイスの図である。
一定のVHGパラメータを示す等高線を持つVHGマップである。
入射光とミラーによるその反射とに起因する干渉パターンである。
異なる傾斜角を持つ材料内でVHGを生成する、3つの構成を示す図である。
ガントリーシステムの概観図である。
スキャンヘッドの4つの構成の図である。
傾斜したVHGを製造する装置の模式的な側面図である。
傾斜したVHGを製造する装置の等角図である。
傾斜したVHGを製造する装置の等角図である
傾斜したVHGを製造する装置の等角図である
図11に示される装置の俯瞰図である。
傾斜したVHGを製造する装置の模式的な側面図である。
傾斜したVHGを製造する装置の模式的な側面図である。
傾斜したVHGを製造する2つの構成の模式的な側面図である。
空間的に変化するVHGを有する光デバイスを作成する方法を示す図である。
図16の方法の動きをスキャンする様子を示す図である。
材料内でVHGを製造する装置の図である。
スキャン経路をトレースするスキャンガントリーシステムの俯瞰図である。
空間的に変化するVHGを横切る線に沿った位置の関数で表された遮断角度のグラフである。
スキャン経路をトレースするスキャンガントリーシステムの俯瞰図である。
スキャン経路をトレースするスキャンガントリーシステムの側面図である。
スキャン経路をトレースするスキャンガントリーシステムの俯瞰図である。
空間的に変化するVHGを製造するシステムの図である。
概要として、空間的に変化する体積型ホログラフィック回折格子(VHG)を有する光デバイスを製造する方法、当該方法を実行するための装置、およびこれらの方法/装置を用いて製造された光デバイスが開示される。
[VHGの概論]
空間的に変化するVHGの背景を与えるために、以下、均一な特性を持つ従来の均一なVHGを説明する。
この開示の目的に関し、均一なVHGは、均一なVHGがデバイス全体にわたって均一な特性を持つパターンとして記述できるという点で、一般的なホログラム(例えば、物体のホログラム)と実質的に異なる。これとは違い空間的に変化するVHGは、デバイスの領域(これは、デバイスの機能が目標とする光の波長より大きい)にわたって、僅かに変化してもよい。パラメータを定義するVHGの変化が、目標とする波長と同じオーダの長さのスケールで発生した場合、デバイスの性能に影響を与える収差が発生する。注意深く設計しなければ(例えば、2次元または3次元のフォトニック結晶の周期的構造のように)、性能は妥協的なものとなる。
図1Aおよび1Bでは、光デバイス10は、感光性材料15に実装された均一なVHGを備える。均一なVHGは、感光性材料の屈折率の周期的なまたはほぼ周期的な変調の格子方向Gおよび格子間隔Λにより、局所的に記述することができる。屈折率は、VHGの格子方向に沿って、高い値と低い値との間で交代する。すなわち、VHGは、高い値と低い値との間で交代する、格子間隔がΛの面12を備える。図1Aでは、均一で共形の反射VHGが、この材料に平行な格子面を持つ。すなわち格子方向Gは、表面の垂線方向Nfに平行である。図1Bでは、均一で傾斜したVHGが、材料表面に対して極傾斜角θで傾斜した格子面を持つ。このとき、格子方向Gと表面の垂線方向Nfとは、同じ角度θを挟む。さらに、傾斜したVHGの格子方向Gの材料表面への射影は、傾斜したVHGの方位方向を与える。この方位方向は、方位傾斜角φで測られる。この方位傾斜角φは、方位方向と材料表面と平行な基本方向とで挟まれる。傾斜角θ=0の共形VHGでは、方位傾斜角は定義されない。本明細書全体を通じて、傾斜角は、極傾斜角θ、および、極傾斜角がゼロでないときは方位傾斜角φ、の両方を含むと理解される。
特定の波長λ
0の光のビームがVHG格子方向Gに対して角度δで入射するとき、強め合う干渉に起因する最大回折に以下のブラッグ条件が満たされれば、ビームはVHGで反射される。
ここでnは、VHGを含む材料の平均屈折率である。ただし波長λ
0は真空中で定義され、媒体内の波長λとλ=λ
0/nの関係にある。角度δは、VHGを含む媒体内のδの値、およびδと光デバイスに入射する光の入射角との関係が、以下のスネルの法則を通して議論されるものと理解される。ブラッグ条件は、VHGを備えるデバイスで反射された波長が、格子間隔Λおよび相対角度δのいずれか一方またはその両方を変えることにより設計できることを意味する。ここで相対角度δは、デバイス上の光の入射角とVHGの極傾斜角とを含む。
ブラッグ条件から小さなずれがあると、VHGの反射が少し減少する。これにより、VHGが効果的になる条件を満たす相対入射角δおよび波長λに一定の範囲が生じる。ずれがより大きくなると、反射は実質的に増加し消失する。VHGがある閾値より大きな反射を持つときの入射角または波長の範囲は、それぞれ角度帯域またはスペクトル帯域と呼ばれる。所定のスペクトル帯域に関し、角度帯域は小さな相対角度δで最大となる。なぜなら、ブラッグ条件におけるコサインは、δ=0の近辺でほぼ2次のオーダで変化するからである。相対角度がより大きい場合、ブラッグ条件におけるコサインはほぼ1次のオーダで変化し、所定のスペクトル帯域に関する角度帯域はより小さくなる。
屈折率n
envの周辺環境(典型的には、n
env≒1.0の空気)から、VHGを含む媒体の表面に光が入射する応用では、光は当該表面で屈折する。このとき入射角は、以下のスネルの法則に従い、周辺環境でのαからVHGを含む媒体でのβに変化する。
光が表面を通過するとき、媒体の表面に平行な基本方向に対する光の方位角は変わらない。この方位角がVHGの方位傾斜角に一致する場合、媒体への入射ビームとVHG格子方向Gとがなす相対角は以下となる。
従ってβはブラッグ条件を直接満たす。共形VHG(θ=0)の場合、δ=βである。このときVHGの角度帯域はβ=0の周辺で最大となり、従ってα=0である。周辺環境での入射角αがより大きい場合、VHGの角度帯域はより小さくなる。なぜなら、入射角がαとβが大き過ぎない限り、スネルの法則により、αとβとの間にはほぼ線形の関係が成り立つからである。n>n
envの場合は、VHGを含む媒体内での最大の入射角β=β
maxは、すれすれ入射となるからである。すなわち、α
maxに関し、以下となる。
すれすれ入射の周辺では、スネルの法則により、αとβとの間にほぼ2次の関係が成立する。結果として、VHGを含むデバイスの、周辺環境において効果的な角度帯域は再び大きくなる。
[空間的に変化するVHGの構成]
本発明者らは、格子間隔および/または傾斜角が空間的に変化するVHGを有する光デバイスを製造する方法および装置を開発してきた。こうした空間的に変化するVHGの構造および性能を以下で説明する。
図2Aおよび2Bでは、感光性フィルム15内で形成されたVHGを有する光デバイス20は、空間的に変化する傾斜角/格子間隔を有する。格子特性12の原理並びに格子間隔Λおよび傾斜角(これは、極傾斜角θおよび方位傾斜角φを含む)のパラメータは、前述と同じである。
図2Aでは、典型的な光デバイス20が、フィルムを横切って異なる格子間隔の値を有するVHGを備える。特に、VHGは、第1の領域21aに第1の格子間隔Λ1を有し、第2の領域21bに第2の格子間隔Λ2を有する。図2Bでは、別の典型的な光デバイス20が、フィルムを横切って異なる傾斜角を有するVHGを有する。ここで異なる傾斜角は、第1の領域22aにおける第1の傾斜角θ1および第2の領域22bにおける第2の傾斜角θ2である。これらに対応する格子方向は、それぞれG1およびG2である。格子間隔および傾斜角は別々に変化するのに対し、光デバイス20内のVHGは、フィルムを横切って傾斜角および格子間隔の両方と同じ変化量を持ってもよいことが理解されるだろう。VHGは、同じ傾斜角および異なる格子間隔を有する領域、同じ格子間隔および異なる傾斜角を有する領域、並びに、傾斜角および格子間隔の両方が異なる領域、の任意の組み合わせを含んでもよい。同様に、本開示は、2つの領域間の違いに限られず、任意の数の領域にも当てはまることは明らかであろう。さらに、2つの領域並びに/または異なる傾斜角および/若しくは格子間隔間の移行は、連続的な移行があってもよい。すなわち、第1の領域および第2の領域またはさらなる領域の間の傾斜角および/または波長には、段階的な変化がある。光デバイスが使われると、傾斜角および格子間隔の移行は、収差を防ぐのに十分に段階的である。図2Bでは極傾斜角の違いだけが示されるが、追加的にまたは代替的に、方位傾斜角が違っていてもよい。
図の簡略化のため、図1A,1B、2Aおよび2Bには数個の格子特性の繰り返しパターンのみが示されるが、実際には数10個、数100個あるいはそれより格子特性の多い繰り返しパターン12が、フィルム15を横切って格子方向Gの向きに存在し得ることが理解できるだろう。同様に図の格子間隔は模式的であり、光デバイス内の格子間隔は一般に、ブラッグ条件が満足されるように、サブ波長のスケールで存在する。図1A,1B、2Aおよび2Bは、概説を目的として、光デバイスのセクションの一例を模式的に示す。実際には光デバイスは、図示されるセクションを超えて広がっていてもよい。
図3では、VHGの空間的に変化するパラメータが、VHGマップにより示される。VHGマップは、VHGの特性が感光性フィルム15を横切ってどのように変化するかを視覚的に説明するものである。等高線66は、あるパラメータについて同じ値を持つ位置をつなげたものである。例えば各等高線は、遮断される(例えば、反射される)同一の特定の入射角を持つ感光性フィルム15上の位置を表してもよい。逆に各等高線は、VHGの格子間隔および/またはVHGの傾斜角の値に関係してもよい。異なる等高線は、表示されるパラメータの異なる特定の値を表す。表示される等高線の数には、特別な要求条件はない。等高線が多いことは、感光性フィルム15の表面を横切って変化するVHGのパラメータの様子を、より正確に表現するに過ぎない。
例えば図3に示されるように、VHGマップの等高線は、VHGに関する任意の特定のパラメータを表してよい。例えばVHGマップは、VHGの効果(例えば、各位置で遮断される光の角度または垂直入射で遮断される波長など)を示すパラメータを表してよい。別の例ではVHGマップは、傾斜角および格子間隔を有するVHGの構造を示すパラメータを表してよい。1つ以上のVHGマップ(例えば、1つは格子間隔に関するもので、もう1つは傾斜角に関するもの)を持つことにより、VHGを完全に記述することができる。
各等高線が特定のパラメータの単一の値を示すとき、VHGの他のパラメータが投稿線に沿って変化してもよい。例えば完全なループを形成する等高線は、一定の極傾斜角を持つが、ループの周辺でφ=0度からφ=360度まで変化する方位傾斜角を持つものを表してよい。
VHGマップは、特定のVHG、およびこれらが感光性フィルム15の面を横切って変化する様子を定量化し記録するのに有用である。例えば、特定の応用に望ましいVHGマップは、コンピュータのメモリ内に記憶し、VHGを生成する方法の一部として装置で利用することができる。VHGマップから、各位置において所望のVHGを生成するのに必要な波長、入射角その他の任意のパラメータを決定することができる。特別な利点または一般的に製造されたVHGのVHGマップは、コンピュータのメモリ内に記憶し、当該VHGを製造するたびに読み出すことができる。
[空間的に変化するVHGの動作]
上述のように、VHGの異なる位置における領域間の変化の結果、ブラッグ条件を満足する波長および入射角の値は、領域ごとに異なる。これは、異なる角度および/または波長は、領域21a、21b、22a、22bの各々で反射されることを意味する。いくつかの実施の形態では、格子間隔および傾斜角の特定の組み合わせは、各位置で、入射光が所望の効果を生むように、ブラッグ条件に基づいて制御される。例えば結果として得られる光デバイスは、フィルタとして機能してよく、光デバイス上の各位置で遮断される(すなわち、反射される)特定の光の波長および入射角を有してよい。
段階的に変化する格子間隔および/または傾斜角を有する光デバイスに関し、実質的に一定の値を持つVHGの各局所的領域(例えば、サブ波長スケールの)は、均一のVHGと同様に動作する。従って、格子間隔および/または傾斜角の変化は、VHGの性能に有害な収差を引き起こさない。しかしながらVHGパラメータの変化は、より広い領域にわたって、入射光に異なる影響を及ぼす。従って光デバイスは、デバイスの位置全体にわたって、有利に制御された機能を持つ。
[空間的に変化するVHGを製造する装置]
以下、図4-8を参照して、空間的に変化するVHGを製造するための典型的な装置の所要部品を説明する。
感光性材料内でVHGを製造するために、2つの光ビーム間の干渉パターンを作成する装置が与えられる。図4では、入射ビーム22と反射部品25(平面鏡またはVHG)で反射した反射ビーム28との間の干渉の結果、干渉パターン26が生じる。入射ビーム22は入射線光線Iで表すことができ、反射ビーム28は反射線光線Rで表すことができる。しかし実際には、これらのビームはゼロでないビーム幅を持つ。入射ビーム22と反射ビーム28とが重なる領域では、干渉パターン26が生成される。干渉パターンは、強め合う干渉が発生するところで最大強度26aを持ち、最大強度26a同士の間の弱め合う干渉が発生するところで最小強度で最小強度を持つ。最大強度26aの面は、反射面(図4では、平面鏡の面)に平行である。ビームが十分長いコヒーレント長を持てば(例えば、単色レーザであれば)、干渉パターンを生成することができる。最大強度26a同士の間隔は、入射光Iの波長およびミラー面への入射角に、以下のように依存する。
ここで、d
fは最大強度(フリンジとも呼ばれる)間の間隔、λは光の波長、θ
iはミラー面への入射角(従って、2θ
iは入射ビームと反射ビームとのなす角)である。波長および/または入射ビームの入射角を変えることにより、最大強度間の間隔が(従って、この干渉パターンを用いて作られたVHGの格子間隔Λが)変わる。
干渉パターンを生成できる装置に加えて、VHGを製造する装置は、少なくとも部分的に干渉パターン内に配置された感光性材料をさらに備える。図5A-Cでは、感光性フィルム15のような材料内でVHGを製造する3つの構成が示される。説明を簡単にするためフィルム15を参照するが、フィルム15に代えて、プレートその他の任意の形の材料が可能であることが理解できるだろう。図5Aでは、図4に似た構成が、平面鏡で反射される入射ビーム22を備える。しかし図5Aでは、入射ビーム22(入射光線Iで表される)は、平面鏡の垂線NRに沿って入射している。従って入射ビーム22は、平面鏡で再帰反射する。すなわち入射ビーム22は、同じ入射角に沿って後方に反射する。入射ビーム22の反射は、反射光線Rで表される。従って、入射ビームと反射ビームは、実質的にビーム経路全体で重なり合う。従って、ビーム経路に配置されたフィルム15は、干渉パターンに対応する強度プロファイルに曝される。その後上述のように、最大強度に相当する格子特性を持ったVHGが、感光性フィルム15内に形成される。図5Bを参照すると、フィルム15が平面鏡に対して角度を持って配置されると、干渉パターンはフィルム15に対して角度を持ち、結果として傾斜したVHGが生成されることが理解されるだろう。
図5Cを参照すると、いくつかの実施の形態では、反射部品25自体がVHGを備えるデバイスであることが分かる。入射ビームが反射部品で反射されると、結果として生じる干渉パターン26は、フィルム15内に、反射部品25のVHGと同じ傾斜角を持つVHGを生成する。しかしながら、生成されたVHGの格子間隔は、反射部品へ入射する入射ビームの入射角に依存するだろう。入射ビーム22が反射部品の反射面に垂直な場合、すなわち反射部品25のVHGの格子方向(NR)に平行な場合、フィルム15内に生成されるVHGは、反射部品25のVHGと同じ格子間隔を持つだろう。従ってVHGは、反射部品25のVHGからフィルム15に「コピーされる」。そうではなくて、入射角が格子方向(NR)に平行でない場合、格子間隔は異なるだろう。この場合は、傾斜角だけがコピーされる。上記と同じ反射部品のVHGを備えるデバイスは、前述の任意の実施の形態に使うことができる。
実際には感光性フィルム15は、図5A-Cに示されていない保持手段によって保持されることが理解できるだろう。しかしながら保持手段は、例えば図18に示されるように、平面鏡/反射部品そのものであってもよい。この場合、保持手段は感光性材料のサポートである。代替的に、保持手段は別の部品であってもよい。このようなサポートは、図8-15を参照して後で詳述する。
ゼロでない傾斜角を持つVHGを生成することは、大きな入射角を設計するためのフィルタを製造するときに、角度帯域が改善されるという利点を持つ。上述のようにブラッグの法則は、小さな入射角に対しては2次の効果を持ち、入射角が大きくなると線形の効果を持つ。後者は、著しい遮断角の下では、特定の波長を遮断するように設計された共形フィルタが、小さな角度帯域の後に隠れる原因となる。しかしながら、設計された媒体内遮断角に合致する傾斜角を持つ傾斜した格子は、角度帯域の改善をもたらす。なぜならこうした格子は、ブラッグの法則の2次状態(すなわち、反射面への近垂直入射)を再び利用するからである。
空間的に変化するVHGを製造する装置は、感光性材料に対して入射ビームを動かす手段をさらに備えてもよい。図6では、入射ビームを動かす手段は、スキャンガントリーシステム40である。スキャンガントリーシステム40は、感光性フィルム内のVHGを記録する目的で感光性フィルム(図示せず)が配置された記録領域46を横切って、入射ビームをスキャンするように構成されたスキャンヘッド32を備える。スキャンガントリーシステム40は、記録領域46の側部にそれぞれ配置された第2のレール34bの組に移動可能に取り付けられた第1のレール34aを備える。第2のレール34bは、記録領域の上に第1のレール34aを吊るす。スキャンヘッド32は、記録領域46の上で、第1のレール34aに移動可能に取り付けられる。スキャンヘッド32のx方向の位置は、第1のレール34a上のスキャンヘッドの位置によって決まる。スキャンヘッド32のy方向の位置は、第2のレール34b上の第1のレール34aの位置によって決まる。記録領域46は、スキャンヘッド32がレール34によって位置づけられたとき、当該スキャンヘッド32が到達できるx-y平面内の領域の全体を定める。別の実施の形態では、記録領域46上のスキャンヘッド32の高さ(例えば、z方向の位置)を制御することもできる。スキャンヘッド32は、スキャンの位置および速度を正確に制御するために、モータ(図示せず。例えば、スキャンヘッド32に設置されたモータ。具体的には、サーボモータなど)を用いて制御されてもよい。代替的にスキャンヘッド32は、スキャンヘッドの反対側に取り付けられたワイヤその他の好適なアクチュエート手段を用いてスキャンされてもよい。スキャンヘッドアクチュエート手段は、所望の位置にまたは所望のスキャン経路に沿ってスキャンヘッドを動かすことをアクチュエート手段に命令する制御ユニットを用いて制御される。制御ユニットは、所望の位置または所望のスキャン経路を、ユーザ入力から、コンピュータ読み取り可能媒体から、またはプロセッサのオペレーションの出力として受信することができる。
反射部品は、記録領域46の下に設置されてもよい。これにより、入射ビーム22が可能媒体を通過したとき、当該入射ビーム22の反射ビームが入射ビーム22と干渉する。ガントリーシステム40は、光源(図示せず)からの入射ビーム22を記録領域46に導くミラーアセンブリ42、44を備える。ミラーアセンブリの第1のミラー42は、入射ビーム22が記録領域46に導かれる角度を制御する。そしてミラーアセンブリの第1のミラー42は、光源からの光を、第2のミラー44を介して受光するように構成される。
図7A-Dでは、記録領域46内の感光性フィルム15に対する入射ビーム22の角度を制御するための、スキャンヘッド32の4つの構成が示される。従ってスキャンヘッド32は、入射ビームの入射角を制御することもできる。これらの構成は、反射部品25に接触する感光性フィルム15の文脈で記述される。しかしスキャンヘッド32の構成は、反射部品25に対するフィルムの構成とは独立であり、従って上述のすべての実施の形態に適用可能であることが理解されるだろう。
図7Aでは、スキャンヘッド32は、回転ステージに固定された第1のミラー42とともに配置される。スキャンヘッドがスキャンされると、回転ステージは、第1のミラー42の角度を回転させることができ、これにより感光性フィルム15に入射ビーム22が入射する角度を変えることができる。図7Bでは、スキャンヘッド32が、第1のミラー42とともに配置される。第1のミラー42は、特定の極角および/または方位角に沿って入射ビーム22の向きを制御するための、2次元で回転可能なガルバノミラーである。図7Cでは、スキャンヘッド32が、光ファイバ54を通して入射ビーム22を受光する。光ファイバ54の一端がジンバル52に取り付けられる。これによりジンバル52は、光ファイバ54の端部の角度を制御することができ、これにより入射ビーム22の記録領域46内の入射角を制御することができる。必要に応じて、ジンバル52は、1つまたは2つの回転自由度を持つように配置されてもよい。
別の実施の形態では、ミラーアセンブリで楕円形のミラーが使われる。図7Dでは、スキャンヘッドがミラーアセンブリ80を含む。ミラーアセンブリ80は、第1のミラー42で入射ビーム22を受光し、楕円形の第2のミラー82に向けて反射する。楕円形のミラー82は、入射ビーム22を感光性フィルム15に向けて反射する。ミラーアセンブリ80は、楕円形ミラーの第1の焦点Aが、入射ビームと第1のミラー42とが衝突する位置(すなわち、両者が一致する位置)にあるように構成される。さらにミラーアセンブリ80は、楕円形ミラーの第2の焦点Bが、感光性フィルム15の上に(または感光性フィルム15の中に)にあるように構成される。図7Aおよび7Bを参照して説明したように、ミラーアセンブリの第1のミラー42が回転すると、入射ビーム22の入射角は変化する。しかしながら楕円形ミラーの二焦点性に起因して、第1のミラー42の角度が変わったとき、第2の焦点Bにおける入射位置は変化しない。従って、感光性フィルム15を横切ってミラーアセンブリ80をスキャンすることにより、感光性フィルム15を横切って入射ビームをスキャンすることができる。これにより、第2の焦点Bおよび感光性フィルム15の入射位置をスキャンすることができる。ミラーアセンブリはまた、さらなるミラー84を備えてもよい。このさらなるミラー84は、スキャンヘッド32を第1のレール34aに沿ってスキャンする。従って入射ビーム22は、第1のレール34aに沿ってスキャンヘッド32に到達することができ、さらなるミラー84によって第1のミラー42に向けて反射されることができる。
図7A-Dに示される上述の各例において、スキャンヘッドは、入射ビーム22の感光性フィルムへの入射角を制御するように構成される。スキャンヘッドは、制御ユニット(図示せず)によって制御される。この制御ユニットは、上述のヘッドアクチュエート手段をスキャンするための制御ユニットと同じものであってよいし、同等の機能を実行する別個の制御ユニットであってもよい。状況に応じて、第1のミラー42若しくはジンバル52の角度、回転速度および/または他のパラメータを決定するために、制御ユニットは、第1のミラー42またはジンバル52を動かすためのモータまたはその他のアクチュエータ(図示せず)を制御してよい。従って制御ユニットは、空間的に変化するVHGを製造する方法に関し以下の所望の結果を得るために、適切な制御パラメータまたは制御機能に従い、ビームの記録領域46の各位置における入射角を制御するように構成される。
いくつかの実施の形態では、入射ビーム22が感光性フィルム15に到達する前に入射ビーム22の発散を増すために、スキャンヘッド32は発散部品(図示せず)を含む。いくつかの例では、発散部品は、第1のミラー42またはジンバル52の間に配置されたレンズである。このレンズにより、入射ビーム22がフィルム15に到達するとき、入射角に小さな広がりが生じる。発散部品により、異なる傾斜角および/または格子間隔を持つ領域間の、よりスムーズな移行が可能となる。
傾斜したVHGを用意するときに使われる装置のいくつかの実施の形態では、当該装置は、反射部品25の反射面が動くことを可能にする部品を備える。以下でさらに詳述するように、これは反射部品25を物理的に回転させることで実現される。代替的に、反射部品25は、表面を横切って異なる反射面を有してもよい。あるいは、フィルム15の位置が異なると、反射面に対する角度が異なるように、フィルム15は等高線を与えられてもよい。これらの特性を備える装置により、感光性フィルムを横切って変化する傾斜角を持つVHGを製造することができる。
図8では、VHGを製造する装置の実施の形態が、感光性フィルムのそれぞれの側に、第1のミラー42と、反射部品25と、を備える。感光性フィルム15は、フィルムサポート94(例えば、ガラス基板)によって支えられる。フィルムサポート94は、入射ビーム22を反射部品に透過させ、反射したビームを、フィルムサポートを通して感光性フィルム15に逆向きに透過させる。フィルムサポート94および感光性フィルム15は、保持手段(図示せず)によって、所定の位置に保持される。図6を参照して説明したように、第1のミラー42は、ガントリーシステムを用いて配置される。第1のミラー42に代えて、図7A-Dを参照して説明した任意の形態のスキャンヘッドが使われてもよい。図9-11を参照して説明したように、反射部品の反射面を制御するために、および/または、反射部品を動かすために、反射部品25はアクチュエート手段(図示せず)によりアクチュエートされる。例えば、アクチュエート手段は、感光性フィルムの下方で反射部品を動かすために、および/または、反射部品25の角度を制御するためのステージを回転させるために、ガントリー装置を含んでもよい。精密な制御と同期を目的として、第1のミラー42および反射部品25の制御は、制御ユニット(図示せず)およびモータ(図示せず。例えば、サーボモータ)を用いて行われる。
入射ビーム22および反射ビーム28の最適な重なりのために、図8を参照して記述された上記の装置は、コリメートされた入射ビーム22を利用する。これは、入射ビーム22と反射ビーム28の横調整(これは、反射部品の反射面で定まる)に敏感である。従ってこの構成で高品質なVHGを記録することは、任意の場所における反射部品25とフィルムサポート94との間の光路の安定性に依存する。光路長は、フィルムサポート94と反射部品25との間の物理的距離、および、フィルムサポート94と反射部品25との間のビーム経路に沿った屈折率の積分に依存する。従って、反射部品の平坦性と機械的安定性とが、製造されたVHGの品質に与える影響は、共形記録を製造する装置の場合より大きい。
いくつかの実施の形態では、記録内で高い機械的安定性を実現するために、フィルムサポート94は、ガラスの振動を最小化するための厚いガラスシートと、ガラス基板を保持するための堅牢なフレームと、を備える。その一例として、固定されたガラスを保持するための機械的または真空ホルダーを備えたスライドメカニズムがある。その詳細は、後で図11および12を参照して説明する。
空間的に変化するVHGを製造する装置の典型的な構成および典型的な変形例は、後で図9-15参照して説明する。
図8を参照して説明した上記の装置の特定の実施の形態を、図9を参照して以下で説明する。空間的に変化するVHGを有する光デバイスを製造する装置100は、スキャン手段を支えるためのフレーム102を備える。ただし、スキャン手段は、感光性フィルム15を横切ってスキャンヘッド32をスキャンするためのものであり、レール34aおよび34bの形を取る。スキャン手段は、例えば図6に示されるスキャンガントリーシステム40である。フレームは、フレーム内のサポートスロット106により、フィルムサポート94を所定の位置で保持する。フレーム102は、フィルムサポート94を、スキャンヘッド32と反射部品25との間で保持する。感光性フィルム15は、フィルムサポート94によって支えられる。フレーム102およびフィルムサポート94は、囲まれたチェンバー104を形成する。囲まれたチェンバー104により流れおよび/または振動が制限されることで、反射部品および感光性フィルムの安定性が改善される。これにより、空気の流れに起因する誤差が低減する。この空気の流れは、反射部品の角度、または、反射部品と感光性フィルムとの間の空気の屈折率に不規則な微小変動を発生させる原因となる。こうした微小変動は、光路長に影響を与える。反射部品は、ジャッキ108によりアクチュエートされる。反射部品の角度を制御するために、ジャッキ108は、反射部品の一方の側を昇降させることにより、反射部品を、他方の側の周りで旋回させる。代替的に、反射部品の角度および高さの両方を制御するために、ジャッキは、反射部品のそれぞれの側を独立に昇降させてもよい。反射部品を感光性フィルム15に対して位置づけるために、任意のアクチュエート手段が適用されてよい。
スキャンヘッド32は、図7A-Dに記述された任意のタイプのスキャンヘッドであってよく、単数であっても複数であってもよい。スキャンヘッドは、感光性フィルム15を入射ビーム22で照射し、感光性フィルム15を横切って入射ビーム22をスキャンするように構成される。スキャンヘッドの位置に関わらず、光源からの入射ビーム22をスキャンヘッドに向けて反射させるために、ミラー44が第1のレール34a上に取り付けられる。
装置100は、光源(例えば、レーザ)からの入射ビーム22を受光し、スキャンヘッド32の第1のミラー42を介して入射ビーム22を感光性フィルムに導くために使うことができる。スキャンヘッド32は、感光性フィルム15への入射ビームの入射角を制御する。選択的に、入射ビーム22は、第2のミラー44を用いてスキャンヘッドに導かれる。図9にはレール34a、34bを有するガントリーシステムが示されるが、装置100には、本明細書に記載の任意のスキャン手段を使うことができる。
装置100は、感光性フィルム15内でVHG(空間的に変化するVHGを含む)を製造する方法に使うことができる。感光性フィルム15を横切ってスキャンヘッド32が入射ビーム22をスキャンすると、ジャッキ108が反射部品をアクチュエートする。これにより、反射部品25の反射面(すなわち、鏡面)が、感光性フィルム15に対して変化する。これは、感光性フィルム15内における入射ビーム22と反射ビーム28との間の干渉パターンの向きを変え、その結果、感光性フィルム15内のVHGの傾斜角を制御する。ミラーの角度を調整するために、ジャッキ108に代えて他の精密な回転手段が用いられてもよい。
図10を参照すると、いくつかの実施の形態では、感光性フィルムと同じサイズの反射部品25に代えて、図9に示されるようなより小型の反射部品が使えることが分かる。この構成は、反射部品の任意の構成(例えば、平面鏡、共形のまたは傾斜したVHG等)と組み合わせることができる。特に反射部品25は、スキャンされる方向に低減されたサイズを持つ。反射部品25は、反射部品ガントリー112によって、スキャンまたは回転される。反射部品ガントリー112は、上述のスキャンガントリーシステム40(図6に示される、スキャンヘッドをスキャンするためのもの)と同じ形を取ってもよい。反射部品は、各マウントに回転可能に取り付けられる。これにより反射部品は、感光性フィルム15の下方で前方または後方にスキャンすることができる。反射部品はまた、感光性フィルム内で生成されたVHGの傾斜角を制御するために回転する。より大型の反射部品(これは、回転するがスキャンはしない)を持つ実施の形態に比べて、フレーム102の高さは低い。これは、囲まれたチェンバー104のサイズが小さい場合でも、反射部品25を約180度回転可能とするためである。
上述のようなより小型の反射部品25を持つ装置を用いて感光性フィルム15内に傾斜したVHGを製造するプロセスでは、反射部品25はスキャンされ回転される。これにより、入射ビーム22は反射部品25から再帰反射し、反射ビーム28を生成する。この反射ビーム28は、感光性フィルム15内で、入射ビーム22と干渉する。この傾斜したVHGを製造するプロセスの詳細は、図16を参照して以下で説明する。
図10に示されるようなより小型の反射部品は、その軽量さゆえに、スキャン装置の機械的安定性とマウンティングの改善に特に効果的である。機械的安定性が向上すると、感光性フィルム15内で大型の(すなわち、長さと幅が大きい)VHGを製造するプロセスの信頼性が向上する。
動く反射部品25を持つ空間的に変化するVHGを作成するときの問題の1つは、入射ビーム22をスキャン中、反射部品25が静止しる必要がある点にある。これは、反射部品25が反射面に平行でない方向に連続的に動くと、干渉パターン内の最大強度位置が連続的にずれるからである。これは、格子特性が不鮮明となる原因となる。なぜなら、感光性フィルム15の最大強度に曝される部分が、時間の経過とともに変わるからである。その結果、VHGを形成する屈折率変調が消える、または最良でも不明瞭となる。これを防ぐために、感光性フィルムはその一部が干渉パターンに曝される。その後反射部品25が新たなy方向の位置に、および/または、新たな回転位置に動き、感光性フィルムは別の部分が干渉パターンに曝される。精密な調整を実現するためには、反射部品ガントリー112およびスキャンガントリーシステム40は、反射部品25およびスキャンヘッド32が同期して動くように制御される必要がある。
VHGを感光性フィルム15内に、連続的にではなく有限のパッチで記録するときの問題の1つは、2つの記録領域の間に、目に見えるラインが生じる点にある。これは、各領域の格子間にオフセットが生じることによる。これは、ブラッグ条件(式(1))に関しては、VHGの光学性能に影響を及ぼさないかも知れない。しかし、このラインはユーザの目に見える。一般にこれは、より幅の広い反射部品に関しては余り問題とならない。なぜなら、より大きな領域は、反射部品を動かすことなくスキャンできるからである。それにも関わらず、以下で概説するように、感光性フィルムのパターン化された領域間の境界効果を低減する方法がさらに存在する。
境界効果を低減するための可能な構成の1つは、鋭い境界を薄れさせることにより、異なるVHGパラメータを持つ2つの領域をまとめるものである。これは、反射部品が新たな位置に動いた後に、レーザのパワーを絞り、感光性フィルム上の同じ境界領域を上書きして、境界近くのVHG特性をフェードアウトすることにより実現できる。
境界効果を低減する別の構成では、スキャン装置にフィードフォワードシステムを統合することができる。この構成では、反射部品25に干渉計システムが付加される。この干渉系システムは、フィルムサポートと反射部品25との間隔を正確に測定する。この測定は、ガラス基板での反射を介して、またはVHGのすでに記録された部分での反射を介して行うことができる。反射部品がy方向に移動するとき、アルゴリズムが、移動前と移動後の間の位相ずれのオフセットを計算することができる。これは、入射ビームと反射ビームとの間における、干渉パターンの最大強度位置のずれに相当する。その後装置は、例えば圧電部品を用いて、反射部品と感光性フィルムとの間で光路長を調整する。これは、感光性フィルム内の干渉パターンの位置を正確に調整するために行われる。これにより、結果物としてのVHGは、2つの領域間を連続的かつスムーズに移行する。
代替的に、記録ビームの波長は、感光性フィルムの厚さ全体で認識可能な干渉パターンの消失を防ぐのに必要な小さな量だけ調整されてもよい。フィルムと反射部品ミラーとの間隔はフィルムの厚さに比べて非常に大きく取れるので、このような小さな波長の変化は、フィルム内の干渉パターンの位置を調整するのに向く。この第2のアプローチは、波長可変レーザ、音響光学デバイス、電気光学デバイスのいずれかまたはこれらの任意の組み合わせを使うことにより実現できる。
図11および12を参照すると、いくつかの実施の形態では、VHGを有する光デバイスを製造する装置は、フィルムサポート94を支えるためのテーブル124を含むことが分かる。テーブル124は、フィルムサポート94および感光性フィルム15が位置づけられる任意の表面であってよい。テーブル124は、フィルムサポート94および感光性フィルム15を、曲げや振動に対抗して支える。一般にテーブル124は、堅牢で平坦な面である。テーブル124およびサポート94は、スキャン領域の下方にある溝122を取り囲む。反射部品25は、この溝122に取り付けられる。溝の幅は、フィルムサポート94の幅より狭い。従って、フィルムサポート94は、溝122の両側でテーブル124によって支えられる。これにより、反射部品の上方で(すなわち、スキャンヘッドの下方にある記録領域で)、フィルムサポートの支えられていない領域が低減される。従って、スキャン領域内のフィルムサポート94は、より高い機械的安定性を持ち、振動および/または曲げが生じにくい。この構成は、上述の装置の任意の構成(例えば、図9および10に記載されたもの)と組み合わせることができる。特に反射部品は、前述の図9および10の記載のように構成されてもよく、後述の図13の記載のように構成されてもよい。あるいは反射部品は、平面鏡、共形または傾斜したVHGとして構成されてもよく、これらのいずれの場合も、ガントリーに静的に取り付けられてもよく、さらなる自由度で(例えば、回転して)動いてもよい。
反射部品25は、回転ステージおよび/またはガントリー112(図10に示される)に取り付けられたアクチュエート手段(図示せず)によって動かされる。これにより、反射部品25はガントリーシステム40上のスキャンヘッド32と同期し、製造されるVHGの傾斜角を調整することができる。反射部品25およびアクチュエート手段は、図9および10に示されるものと同じであってよい。いくつかの実施の形態では、フィルムサポート94をテーブル124の上に浮かせるために、テーブルは空気の流れ(または、空気の噴射)を与えるための空気穴126を備える。これによりフィルムサポートは、テーブル表面から実質的な摩擦や擦れを受けることなく、テーブルを横切って自由に動くことができる。空気の流れを逆転することもできる。この場合、吸引により、フィルムサポートをテーブル固定することができる。所望の結果を得るために必要な正または負の圧力は、マニホールドおよびコンジット(図示せず)を用いて空気穴に接続された1つ以上のポンプ(望ましくはコンピュータで制御されるもの)によって与えられる。
フィルムサポートおよび感光性フィルムは、スキャンヘッド32と反射部品との間の正確な調整のために、制御することができる。これは、フィルムサポートの両側に取り付けられたアクチュエート手段(例えば、ガントリーシステム)またはアクチュエータ(例えば、スキャンヘッド32と反射部品との間の領域を横切って、フィルムサポート94を押すおよび/または引くロッドまたはワイヤ)により実現できる。
図11および12に示される装置であって空気穴126を備えたテーブル124を有するものを用いて、装置120は、感光性フィルム15をスキャンし、有限の領域でVHGを記録することができる。感光性フィルム15内でVHGを作成するために、スキャンヘッド32が第1の領域を領域をスキャンすると、空気穴126は、フィルムサポート94および感光性フィルム15の下に空気の流れを供給する。この間、アクチュエート手段は、別の領域をスキャンするために、フィルムサポート94および感光性フィルム15新たな位置に動かす。フィルムサポート94および感光性フィルム15が新たな位置に動くと、空気穴126は空気の流れを逆転することができる。これによりフィルムサポートはテーブルに吸引され、記録プロセスの間、堅固な機械的安定性が保たれる。
図11および12に示される装置を用いて空間的に変化するVHGを製造するプロセスは、改善された機械的安定性および改善された信頼性の下で実行されてもよい。所定のサイズ(例えば、1メートル以上のスケール)の大きなサイズのフィルムでVHGを製造するプロセスの場合、プロセスの信頼性は、フィルムサポート94の安定性により制限される。感光性フィルムのサイズが大きいと、フィルムサポート(およびその上の感光性フィルム)を振動や曲げがないように保つのは難しい。振動も曲げも、結果物のVHGの品質を低下させる可能性がある。非常に大きいフィルムが必要な場合、前述のフィルムサポートを支持するためのテーブル124を含む装置を用いて、フィルムサポートを機械的に支持することができる。
例えば記録領域間の境界効果を防ぐために、前述の技術をすべてこの構成に統合することもできる。
上記の装置のいくつかの典型的な変形、特に異なるタイプの反射部品25を持つものを以下で説明する。
図13を参照すると、いくつかの実施の形態では、表面に垂直でない反射面を持つ反射部品25を使うことができる。例えば、ゼロでない傾斜角のVHGを備えた光部品である(「傾斜したミラー」とも呼ばれる)。前述の装置の反射部品に代えて、この反射部品を使うことができる。このタイプの反射部品を使う形態では、入射ビームが再帰反射する角度は、反射部品の表面に垂直ではない。従って、感光性フィルムに対する反射部品の25の角度は、平面鏡を使う場合ほど大きくなくてもよい。従って、感光性フィルムのより近くに、反射部品25を設置することができる。これにより、よりコンパクトな構成が可能となり、感光性フィルムと反射部品との間の隙間に起因する望ましくない効果(例えば、光路長の変化)を低減することができる。これらの実施の形態における反射部品は、本明細書に記載の実施の形態に従い、固定的または可動的(例えば、スキャンされるおよび/または回転される)である。例えば、反射部品は、ジャッキ108、前述の反射部品ガントリー112または他の任意のアクチュエート手段によってアクチュエートされてよい。
前述の技術は、特に大領域のVHGに有用である。例えば一定の傾斜角を持つ傾斜したVHGを製造するとき、平面鏡とガラス基板との間隔は、VHGの幅の増加とともに線型に増加する。これにより、装置の機械的安定性および幾何学的広がりの向上が要求される。反射部品自体が、理想的なVHGの傾斜角に近い有効傾斜角を有する傾斜したVHGを持てば、こうした要求を低減することができる。有効傾斜角は、入射ビーム22がスネルの法則(式(2)参照)に従ってフィルム15の表面でどのように屈折するかを考慮した後でVHGが振る舞う傾斜角の値である。さらに、反射部品として傾斜したミラーを用いることにより、結果物のVHGの傾斜角の調整の柔軟性を保った上で、要求される感光性フィルム15に対する反射部品の傾斜が低減される。反射部品25は、回転角の範囲ほど大きくなくてもよい。なぜなら、反射部品25はVHGの内部傾斜角を持つからである。さらにこの構成により、方位傾斜角の制御の実行が簡単となる。これは、傾斜したVHG反射部品を、傾斜した反射部品の垂直軸回りに回転することにより、方位角を制御できるからである。この回転のために必要なデバイス内の物理的空間は、同程度に傾斜した通常のミラーを回転させるために必要な空間より小さい。
反射部品は、フレネル反射を軽減するためのさらなる特性を含んでもよい。フレネル反射は、感光性フィルムと反射部品との間に隙間を持つ任意の形態における潜在的な問題である。このような形態では、ガラス基板表面でのフレネル反射は、干渉パターンに影響を与える可能性があり、これは結果物のVHGにおける誤差の要因となる。これを軽減するために、フィルムサポート94の表面(特に、反射部品25に対向する表面)は、入射角のそれぞれの範囲に関し、反射防止コーティングを備えてもよい。入射ビーム22が入射する感光性フィルム15の表面でのフレネル反射を低減するために、好適な反射防止コーティングを備えた屈折率の合った被覆層が使われてもよい。低い角度の傾斜したVHGの記録に関しては、反射ビーム28が反射部品25から戻ったとき、フィルムサポート94の下面での反射ビーム28からのフレネル反射をブロックするために、囲まれたチェンバー104の内部に可動バッファが配置されてもよい。
VHGを備えた反射部品を持つ実施の形態のさらなる変形には、より小型の反射部品をタイル張りして大型の反射部品とすることが含まれる。図14では、反射部品が第1のタイル16aと第2のタイル16bとを備え、これらのタイルの各々がVHGを備える。第1および第2のタイルは、(例えば、フィルムサポート94上で隣接して配置されて)タイル張りされる。そして感光性フィルム15が、入射ビーム22とタイルとの間に配置される。入射ビーム22は、上述の方法に従って、感光性フィルム15を照射する。各タイル16a、16bの上のにある感光性フィルム15の領域では、VHGが感光性フィルム15内に各タイル16a、16bから生成される。明確化のため、図14の点線は、結果物のVHGの一部のみを示す。第1のタイル16aと第2のタイル16bは異なるVHGパラメータ(すなわち、傾斜角および/または格子間隔)を持つため、第1のタイルおよび第2のタイルの上にある領域もまたそれぞれ異なるVHGパラメータを持つ。従って、空間的に変化するVHGが感光性フィルム15内に生成される。入射ビーム22と反射部品タイルで反射された反射ビーム28との間の干渉パターンを生成するために、感光性フィルム15を横切る入射ビーム22のスキャンは制御される。
上記のタイル張り技術により、空間的に変化するパラメータを持つ大きなスケールのVHG(および、サイズに関係なく空間的に変化するパラメータ持つVHG)を製造する方法が与えられる。このタイル張り技術は、後述する任意の方法と組み合わせて使うことができる。このタイル張り技術はまた、2つ以上のタイル16a、16bを備える反射部品25を用いる任意の装置のために使うこともできる。いくつかの例では、図14に示されるように、感光性フィルム15は、反射部品タイル16a、16bの上に直接配置される。別の例では、別の図面に示されるように、感光性フィルム15は、フィルムサポートまたは空隙を用いて、反射部品タイルから離して配置される。
いくつかの実施の形態では、第1および第2のタイル16a、16bは異なるVHGパラメータを持つのではなく、同じ傾斜角および/または格子間隔を持つ。これらの例では、より小型のVHGを組み合わせて、同じパラメータを持つより大型のVHGを生成することができる。すなわち、VHGはサイズに関して増殖される。
反射部品25がタイル16a、16bを備えるいくつかの実施の形態では、各タイルの上にある領域間の移行をスムーズにするために、前述の発散部品が使われる。
本装置の別の変形では、反射部品の反射面の向きは、フィルムサポートによって制御される。これは、反射部品の物理的回転に代えてまたは反射部品の物理的回転に追加して行うことができる。これはまた、上述の任意の装置構成と組み合わせて行うこともできる。
図15を参照すると、いくつかの実施の形態では、フィルムサポート94は、少なくとも1つの一様に平らでない表面を持つ。実際、感光性フィルムを横切って変化するフィルムサポート94には、特定の傾斜がある。図15Aに、この例を示す。これは一方向に変化する傾斜を示す側面図である。しかし一般には、フィルムサポートの傾斜は、表面を横切って2次元的に変化する。フィルムサポート94の変化する傾斜と反対側の表面は反射性を持ち、反射部品25として振る舞う。例えば、この表面を反射コーティング処理してもよい。
感光性フィルム15はフィルムサポート94上に配置されるため、フィルムサポートの傾斜は、感光性フィルム15に対する反射部品の向きを制御する(すなわち、感光性フィルム15の傾斜を形成することにより)。感光性フィルム15の向きを変えることにより、入射ビームと反射ビームとの間の干渉パターンは、感光性フィルム15の表面に対して斜めになる。従って、感光性フィルム15がフィルムサポート94から取り除かれると、格子特性が感光性フィルム15の表面に対して斜めになる。従って、空間的に変化する(特に、傾斜角が空間的に変化する)VHGを備える光デバイスが製造される。感光性フィルム15を横切った入射ビーム22のスキャンは、他の実施の形態と同じ方法で実行される。ただし、入射ビーム22の入射角が制御されることにより、反射部品25での反射(好ましくは、垂直方向での再帰反射)が入射ビーム22と干渉する点で異なる。例えば、入射ビーム22は、ガントリーシステム40(図示せず)によって制御されるスキャンヘッド32(図示せず)の第1のミラー42により、感光性フィルム15に導かれる。入射ビーム22は、感光性フィルムを通過し、反射部品25で反射して反射ビームを形成する。この反射ビームが感光性フィルム内で入射ビームと干渉し、VHGが生成される。
図15Bでは、代替的な装置に同じ原理が適用され、フィルムサポート94は、フィルム15を支えるための平坦な表面を持つ。そしてフィルムサポート94の低い方の面(これが反射部品25である)が、変化する傾斜を持つ。従って、反射部品25の反射面は、フィルムサポート94を横切って変化する、従って、感光性フィルム15の各位置に関し、反射部品の反射面の向きは、フィルムサポート94の傾斜によって制御される。感光性フィルム15内で発生する、入射ビーム22と反射部品25で反射された反射ビームとの間の干渉パターンを確実なものとするために、入射ビーム22のスキャンは、フィルムサポート94の傾斜と調和するように制御される。
上記の傾斜が変化するフィルムサポート94を持つ構成により、特定の空間的に変化するパラメータを持つVHGを製造するための、設計自由度と精度とが向上する。
[空間的に変化するVHGの製造方法]
以下、図16-23を参照して、空間的に変化するVHGの製造装置の使用方法を説明する。
図16では、空間的に変化するVHGを備える光デバイスを製造する方法は、感光性フィルムを光源からの光の第1のビームで照射するステップ140を含む。好適な光源は、レーザ、光パラメトリック発振器(OPOs)、準インコヒーレント単色光源(例えば、閾値未満レーザダイオード)その他の、フィルムの厚さのスケール長を超えて干渉可能な任意の光源を含む。例えばある種の応用では、光源に関する最小コヒーレンス閾値は、光の波長の5倍のコヒーレンス長で十分である。好適な感光性フィルムの例は、Covestro(登録商標)、Bayfol(登録商標)またはこれらの誘導体である。
いくつかの典型的な方法では、第1のビームは、選択的に入射ビームであり、反射部品で反射されて反射ビームを形成する。反射部品は、上述の任意の形態を取ってよい。代替的に、入射および反射ビームに代えて2つ以上の別々のビームが使われ、本明細書に記載の方法を実行するために制御されてもよい。基本的な条件は、これらのビームが共同して干渉パターンを生成できることにある。
本方法は、第1および第2のビームの間で干渉パターンを生成することにより、感光性フィルム15内でVHGを生成するステップ142をさらに含む。図5A-Cの装置では、感光性フィルム15が一致する(少なくとも部分的に重なる)ように構成されると、光のビームにより干渉パターン26が生成される。強度が最大となる位置26aで、感光性フィルムを「露光」するために、フィルムは十分強い光で照射される。これにより強度が最大となるところで、屈折率が変化する(典型的には増加する)。典型的には、感光性フィルムは露光の後で、変化した屈折率を永久化する処理として、「現像」される必要がある。一般にこの処理は、使用される特定の感光性材料に依存し、製造者の命令に応じて特定の材料ごとに知られる。現像処理の間、屈折率のパターンは、間隔および方向が少し変化してもよい。典型的には、この変化は、一定の処理パラメータとして再現可能である。現像が不要なフィルムもある。VHGは、上述のパラメータ(すなわち、格子間隔および傾斜角)で記述される。
本方法は、第1のビーム、第2のビームまたは感光性材料(感光性フィルム15)を互いに相対的に動かすステップ144をさらに含む。従って、静的なセットアップで広がったビームを使う従来のホログラフィとは対照的に、入射ビーム22が、感光性フィルム15の上と下方の平面鏡とを横切ってスキャンされることにより、感光性フィルム15のより広い領域でVHGが生成される。これにより、静的なセットアップに必要な、より強力なレーザや、ビームを広げるための光学レンズや、2つのビームを重ね合わせるための領域を必要とすることなく、VHGの製造方法のスケーラビリティを高めることができる。第1のビームおよび第2のビームがそれぞれ入射ビームおよび反射ビームである場合、感光性材料に対して第1のビームを動かすことは、感光性材料に対して第2のビームを動かすことにもなる。
感光性フィルムに対して第1および第2のビームを動かすステップは、図6を参照して説明した前述の装置を用いて、以下のプロセスに従うことによって実行することができる。
図17では、スキャンヘッド32が、感光性フィルム15を横切ってスキャンする。この間、スキャンヘッド32は、光源(図示せず)からの入射ビーム22を受光し、この入射ビームを感光性フィルム15に導く。さらにスキャンヘッド32は、入射ビーム22が感光性フィルム15に導かれる角度を制御する。スキャンヘッド32は、レール34に沿って、図17に矢印で示される方向にスキャンされる。例えば、第1の位置33aにあるスキャンヘッド32は、第1の領域でVHGを生成するために、入射ビーム22を感光性フィルム15の第1の領域に導く。その後スキャンヘッド32は、レール34に沿って第2の位置33bに移動する。第2の位置33bでスキャンヘッド32は、第2の領域でVHGを生成するために、入射ビーム22を感光性フィルム15の第2の領域に導く。
本方法は、感光性フィルムを横切って、VHGの格子間隔および傾斜角のいずれか一方またはその両方を変えるステップ146をさらに含む。これは、干渉パターンに関し、感光性フィルムの干渉パターンの間隔および/または方向を変化させることによって実行される。
望ましいVHGの格子間隔は、典型的に、第1および第2のビームの間の相対角度を制御することによって得られる。ビームの相対角度は、ビームの波長とともに、結果として生じる干渉パターンの最大強度の間隔によって定まる。第1および第2のビームの間の相対角度の制御は、様々な方法で実現できる。例えば図18を参照すると、感光性フィルムの下方に入射ビームを反射するためのミラーを備えた装置では、入射ビーム22の入射角を制御することにより、入射および反射ビームの間の角度が定まる。例えば、0度で入射する波長がλ0のレーザは、Λ=λ0/2のVHGを生成する。VHGは、波長がλ0で入射角がほぼ0の光を反射またはブロックする。より急角度で入射するλ0の光をブロックするVHGを製造するためには、間隔Λ>λ0/2のVHGが必要となる。より大きい間隔を持つVHGは、より急角度で同じ単色光を用いるか(図18A参照)、より小角度で波長λ>λ0の異なる単色光を用いる(図18B参照)ことにより、製造することができる。
図18Aおよび18Bを参照すると、いくつかの実施の形態では、フィルム15は、反射部品25(例えば、平面鏡)に隣接して設置される。入射ビーム22は、空気中の入射角αで感光性フィルム15に衝突する。入射ビームは、感光性フィルム15の表面で屈折し、平面鏡に角度β(図示せず)で入射する。ただしβはスネルの法則(式(2))で定まる。入射ビーム22は、平面鏡で反射し、反射ビーム28を形成する。その後反射ビーム28は、感光性フィルムを離れる前に、感光性フィルム15内で入射ビーム22と干渉する。図18Aは、入射および反射ビーム22、28を光線で示すが、ビームはビーム幅を持つ。これによりビームは重なり合い、干渉パターン26が生成される。この構成における干渉パターンの最大強度の間隔は以下で表される。
ここで、Λは間隔、λ0は感光性フィルム15の媒体内の入射ビームの波長、βは媒体内の入射角(αとスネルの法則で関係する)である。従って、干渉パターンの間隔(従って、感光性フィルム内で生成されるVHGの格子間隔)は、入射ビームの波長および入射角αで定まる。上記で図5Aおよび5Bを参照して説明したように、フィルム15が平面鏡25に接触するか、それとも離れるかに関し、同じ関係が成り立つことが理解されるだろう。
図18Bを参照すると、別の実施の形態では、入射ビーム22は、フィルム15の表面に垂直である(すなわち、入射角は90度である)。垂直入射では、間隔の表現は、Λ=λ/2nと簡略化される。所望の間隔Λを実現するために、フィルム15内の入射ビーム22の波長は、λ0からλに増加される。これは、波長可変レーザのような波長可変光源を用いて実現できる。VHGの間隔を制御するために光ビームの波長を制御することは、図18に示されるような共形のVHGに限られず、傾斜したVHGを製造する方法にも適用される。この点については、以下でさらに説明する。
傾斜したVHGを製造する装置を用いると、感光性材料に対する干渉パターンの向きを制御することによって、傾斜角を変えることができる。反射ビームを形成するために入射部品で射ビームを反射する方法では、干渉パターンの向きは、反射部品の反射面の向きによって制御することができる。
図8に示される装置を用いると、第1のミラー42および反射部品25が、感光性フィルム15に対して配置される。これにより、感光性フィルム15内でVHGの傾斜角を変化させる以下のプロセスを実行することができる。静的な感光性フィルム15の場合、反射部品25の向き(特に、反射部品の反射面の垂線)を変えることにより、結果物のVHGの傾斜角が変わる。入射ビーム22と反射部品25で反射した反射ビーム28とが、感光性フィルム15内で重なり合うことを(従って、干渉パターンが生成されることを)確実にするために、第1のミラー42はビームを導く。これにより、入射ビーム22は再帰反射し、反射ビーム28を形成する。この場合、入射および反射ビームは、互いに平行に逆向きに伝播する。従って、これらは感光性フィルム15内で重なり合う。従って、これら2つのビームは、感光性フィルム15内でVHGを生成するための干渉パターンを生成する。別の例では、入射および反射ビームが感光性フィルム内で重なり合えば、入射ビーム22は反射部品で再帰反射しなくてもよい。これは、感光性フィルム15と反射部品25との距離が十分小さければ、あるいは入射ビーム22の幅が十分広ければ、当てはまるだろう。この場合、入射および反射ビームの間の角度は、感光性フィルム15内で重なり合いが存在しないようになるほど、ビームを発散させないからである。
感光性フィルム15内で傾斜したVHGを製造するプロセスを実行する間、入射ビーム22は、例えばスキャンヘッド(例えば図7に示されるもの)を用いて、感光性フィルム15を横切ってスキャンされる。第1のミラー42をスキャンする間、感光性フィルム15内の干渉パターンを維持するために、第1のミラーと反射部品25との角度は、互いに調和するように回転される。これは、干渉パターンの向きを制御し、従って生成された対応する傾斜角を制御する。このようにして、図8に模式的に示される装置は、空間的に変化する傾斜角を持つVHGを製造する。
図8を参照して上記で概説した原理は、本明細書に記載された、傾斜角を持つVHGを製造するための任意の装置に当てはまる。例えば、反射部品および反射部品アクチュエート手段の各タイプは、反射部品の反射面の向きを制御することにより、VHG内の傾斜角を制御するために使うことができる。例えば図13に示されるような傾斜したミラーを反射部品として持つ装置に関し、反射部品は、任意の方向に回転または移動されてもよい。これにより、入射ビームが反射される位置での反射面が変わる。これは、例えば方位傾斜角を制御することにより、反射部品を、その表面に垂直な軸回りに回転させることを含む。
VHGの傾斜角を変える別の方法は、現存する空間的に変化するVHGを「コピー」する技術を使うことによる。この方法では、入射ビームを感光性フィルムに対して動かすステップ144は、第1のビームの入射角を制御するステップと調和するように実行される。これにより、スキャンの間、入射ビームは、各位置における元となるVHGで再帰反射する。入射ビームの波長もまた、元となるVHGで反射される波長に合うように選ぶ必要がある。入射および反射ビームによって製造される干渉パターンは、元となるVHGの傾斜角および格子間隔に相当する。従って、新たに製造されたVHGは、元となるVHGのコピーとなる。
上記のコピー技術を用いると、VHGをコピーする方法は、感光性フィルム15をマスターVHGを含むデバイス上に設置するプロセスと、感光性フィルムを入射ビーム22で照射するプロセスと、を含む。これにより、感光性フィルム内に、マスターVHGと同じ傾斜角および/または格子間隔を持つVHGが製造される。いくつかの実施の形態では、照射ビーム22は、感光性フィルム15を横切ってスキャンされる。このとき、感光性フィルム内でマスターVHGのコピーVHGを製造するために、入射ビームの入射角および/または波長は、各位置でVHGのパラメータと調和するように制御される。マスターVHGが空間的に変化する傾斜角および/または格子間隔のパラメータを持つ実施の形態では、コピーVHGもまたこれらの空間的に変化するパラメータを持つ。さらに、図14を参照して以下で詳述する例では、より小さなサイズのVHGを組み合わせてより大きなサイズの1つのVHGを作るために、感光性フィルム15は、それぞれのVHGを備える2つ以上のタイルの上に配置される。いくつかの実施の形態では、傾斜したパッチまたはタイルの境界をスムーズにするステップを含む。
上記の方法に従って空間的に変化するVHGを製造した後、複合フィルタを形成するために、感光性フィルムレイヤ内の任意の傾斜したVHGが、積層内で、他の任意の傾斜したまたは共形のVHGレイヤや複屈折レイヤなどと組み合わされてもよい。
感光性フィルム上で入射ビームをスキャンするときの性能を改善するためのさらなる技術を、図19-23を参照して説明する。
図19を参照すると、図6に示されるタイプのスキャンガントリーシステム40が、図3に示されるVHGマップの特定の等高線を追跡するように制御されてよい。このプロセスは、スキャンヘッド32がスキャンヘッド経路62に沿って移動するように、スキャンヘッド32を制御するステップを含む。これにより、入射ビーム22は、VHGマップの等高線上の領域を横切ってスキャンする。等高線に関して特定の値を持つ等高線に沿ってVHGを記録するために、スキャンヘッドは、入力パラメータを固定する。例えば、スキャンヘッドの第1のミラー42の回転位置を設定することにより、入射角が固定した値を持つように制御することができる。入射角の固定値により、結果物のVHGがブロックまたは屈折する光の角度が定められる。スキャンヘッド32は、入射ビーム22が等高線上の位置をスキャンするように動く。この場合、第1のミラー42が回転する必要はない。なぜなら、必要とされる同じ入射角を持つ位置を、等高線が示すからである。この等高線に沿った位置でのVHG部分が生成された後、第2の等高線が選択される。その後、スキャンヘッド32の第1のミラー42が、第2の等高線のために必要な新たな回転位置に設定される。その後、第2の等高線の位置を横切って、ビームがスキャンされる。感光性フィルム15全体でVHGを製造するために、入射ビーム22が感光性フィルム15全体をスキャンするまでこれが繰り返されてよい。
図20-22を参照すると、感光性フィルム15内に所望のVHGマップを生成するための代替的なアプローチは、スキャン経路を選択し、当該経路に沿った各位置で必要なVHGパラメータを決定することである。例えば、感光性フィルムを一連の列でスキャンする必要がある場合、VHGマップは、特定の列の上で変化するVHGパラメータの値を表すだろう。例えば、図20に示されるように、点1-2-3の間の列に沿ったスキャン経路によって、ブロッキングの角度を、この列に沿った位置の関数で示すグラフが生成される。列に沿った各位置におけるこのグラフの値は、VHGマップに従う位置でのブロッキング角を示す。その後、スキャン経路上の各点における可変パラメータの値により、その点において入射ビーム22が持つべき入射角(および/または、波長)の値が定まる。従って、VHGマップで表されたVHGが、各位置で所望の値で生成される。
図21を参照すると、入射ビーム22がスキャン経路76に沿ってスキャンされると、スキャンヘッド32が、入射ビーム22の入射角を変えるように制御される。これにより、VHGマップで表された所望のVHGを製造するために必要な入射角が、スキャン経路76に沿った各位置で設定される。図22を参照すると、いくつかの実施の形態では、入射ビーム22の入射角は、入射位置に影響を与えることが分かる。例えば、低い角度で入射する(垂直入射に近い)位置1では、入射位置は、よりスキャンヘッド32の真下に近い。一方、大角度で入射する位置2では、入射位置は、よりスキャンヘッド32の真下から離れている。従って、スキャン経路76を直線に保ち、かつスキャン経路76に沿った異なる入射角を持つようにするためには、入射角の変化に起因して生じる入射位置の変化をずらすためにスキャンヘッドは、スキャン方向と垂直な方向にあるように制御される必要がある。例えば、スキャン経路76に沿ったVHGが小さなブロッキング角を必要とする場合(例えば、点1または3)、スキャンヘッド32およびスキャンヘッド経路62は、y方向に関し、よりスキャン経路76に近いところにあるだろう。スキャン経路76に沿ったVHGがより大きなブロッキング角を必要とする(すなわち、すれすれ入射に近い)場合(例えば、点2)、スキャンヘッド32およびスキャンヘッド経路62は、y方向に関し、よりスキャン経路76から遠いところにあるだろう。いずれの場合も、スキャン経路76に沿った各位置で、所望のブロッキング角を生成するための適切な格子間隔および/または傾斜角を持つVHGを生成するために、入射角は、例えば図7に示される第1のミラー42またはジンバル52によって制御される。
図23を参照すると、入射角を変えるためのスキャン中にスキャンヘッド位置がずれることを防ぐために、図7Dに示されるスキャンヘッド32が使われる。第1のミラー42および楕円形の第2のミラー82を備えるミラーアセンブリ80を持つことは、入射角を変えても、入射ビーム22の入射位置が変わらないことを意味する。すなわち入射ビーム22は常に、第2の焦点Bで感光性フィルム15に衝突する。このアプローチを使うと、異なる入射角を必要とする直線的なスキャン経路76を横切って感光性フィルム内にVHGを記録するためには、スキャンヘッド経路のスキャンもまた直線的な経路でなければならない。これにより、1つの列をスキャンする間は、第1のレール34aの位置を第2のレール34bに沿って動かすことが不要となる。
図19-23を参照して説明した、スキャン経路を制御するための上記の技術はいずれも、本明細書に記載された、VHGを製造するための方法/装置と組み合わせることができる。例えばこれらの技術は、任意のタイプのスキャンシステムを用いた、共形のまたは傾斜したVHGの製造に好適である。
上記のスキャン経路を制御するための技術に追加して、またはこれに代えて、スキャンの他のパラメータを制御することもできる。例えば、感光性フィルムの均一な露光を保証するために、光源(例えば、レーザ)のパワーまたは感光性フィルムを横切るスキャンの速度を変えることができる。スキャンヘッド経路62の折り返し点における感光性フィルムの過度な露光を防ぐために、通常、スキャンされたVHGの製造は、スキャンヘッド32の連続的な加速および減速を伴う。このため、入射ビーム22のパワーは動的に調整される。すなわち、スキャンヘッド32が低速でスキャンするとき(例えば、向きを変える前に減速するとき)は、レーザ光源のパワーは絞られてよい。これにより、より低速で入射ビーム22が通過する領域が、過度に露光されることがなくなる。言い換えれば、入射ビームによって照射される単位領域(これは、ビーム幅とスキャン距離との積で定義できる)当たりのエネルギー量(パワーの時間的な積分)を実質的に一定に保つために、入射ビーム22はスキャンされる。このアプローチによりより高速な方向転換が可能となるので、スキャン領域をよりコンパクトにすることができる。さらに、過度に露光された領域(これは、使うことができない)を低減することができる。さらにこのアプローチは露光を調整できるので、可変露光が必要な感光性フィルムを使うことができる。さらにこのアプローチにより、連続的なスキャンで、広いシート上のより狭い領域のVHGを、横並びで記録することができる。
逆に、入射ビーム22の光源のパワーレベルを一定に保つことが好ましい場合は、入射ビームによって照射される単位領域当たりのエネルギー量を実質的に一定に保つ場合と同じ原理を用いて、スキャンヘッド32の速度を制御することができる。一般に、所望の効果を得るために、パワーの調整とスキャン速度の調整とを組み合わせて使うことができる。
感光性フィルム内の露光レベルを制御するための別の技術は、入射角が増加したときに(すなわち、入射ビーム22のスポットサイズが増加したときに)、入射ビーム22のパワーを増加するものである。より広いスポットでパワーが一定のレベルで拡散すると、光の強度が減少し、露光不足の原因となる。そこで、所望の強度を保つために、パワーを増加することにより、これを防ぐことができる。その結果、感光性フィルム内でVHGを製造する方法の信頼性が向上する。
入射ビームのパワーをスキャンの動きと同期して調整するために、音響光学変調器(AOM)または音響光学チューナブルフィルタ(AOTF)を使うことにより、好適な帯域および消光比が得られる。さらに、AOTFにより、任意のパワー比での複数の記録波長の多重化が可能となる。従って、レシピベースのスキャンフィルタの製造に関し、工業的レーザの設定に対して好適となる。光学機械素子および可変減衰器による機械的調整を用いた別の実装により、同じ機能を、より低い解像度と帯域で実現することが可能となる。
フィルタを横切るブロッキング角の変化が大きい実施の形態では、1つの記録セッション中に、記録レーザを切り替えることが必要となる。これは、2つの間に、目に見える鋭い気を散らす遷移が発生する原因となる。これを防ぐために、可変角度制御に加えて、AOTFを用いることにより、2つの領域を段階的に混ぜ合わせて、スムーズな遷移とすることができる。
上記の任意の技術と組み合わせてまたは独立に、VHGの製造中に、入射ビーム22の波長を変える制御をすることができる。これにより、入射ビーム22および反射ビーム(例えば、反射部品で反射したもの)で生成された干渉パターンの周期が変わる。これは今度は結果物のVHGの格子間隔を変えるので、所望のVHGを精度よく生成するためのさらなる制御として機能する。例えばこれは、既知の波長可変レーザを用いることにより、または前述のAOTFを使って2つのレーザを切り替えることにより、順次実行することができる。
上記のVHGの製造を制御する任意の技術は、本明細書に記載の、フィルム15を横切って入射ビーム22をスキャンする方法と組み合わせることができる。同様に、上記の入射角、パワー、スキャン経路、波長等をスキャンまたは制御する技術はすべて、本明細書に記載の任意の装置に適用可能である。特にこれらのプロセスは、共形のVHG(傾斜角がゼロのVHG)および傾斜したVHGのいずれにも適用可能である。なぜなら、これらはいずれも入射ビームのスキャンおよび制御特性を使うからである。
[VHGを製造するシステム]
図24を参照すると、空間的に変化するVHGを製造するシステム130が、レーザ132、図面を参照して上記で詳述した空間的に変化するVHGを製造する装置100、110、120、処理ユニット134、ユーザインタフェース135およびメモリ136を含む。空間的に変化するVHGを製造する装置は、装置内に配置された感光性フィルム15内でVHGを生成するためにレーザ132の出力を使う。処理ユニット138は、レーザ132の設定および機能を制御する。これは、on/offの設定、パワーレベル、波長チューニングを含み、さらに複数のレーザを使う場合は、複数のレーザの出力を組み合わせるためのAOTFの制御に加えて各レーザの設定を含む。処理ユニット134は、空間的に変化するVHGを製造する装置の設定を制御する。これは、スキャンヘッド32の位置およびスキャン経路を制御するためのガントリー、反射部品25および/または感光性フィルム15といった装置の任意の可動部品の配置に関する制御を含み、同様に、スキャンヘッドおよび/または反射部品の回転角度を設定する部品の向き付けに関する制御を含む。処理ユニットは、空間的に変化するVHGを製造する方法のステップを実行するために、上記の各々または上記の任意のサブセットを制御する。これは、所望のVHGを備える光デバイスの製造に従って、アクチュエート手段およびレーザ132の出力を用いる装置の部品を調和させること含む。所望のVHGに要求されるパラメータは、ユーザインタフェース135を介してユーザから入力され、メモリ136に記憶され、新たなVHGを製造するときに読み出すことができる。