JP7342523B2 - 電動垂直離着陸機および電動垂直離着陸機の制御装置 - Google Patents

電動垂直離着陸機および電動垂直離着陸機の制御装置 Download PDF

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Description

本開示は、電動垂直離着陸機の制御に関する。
近年、ガスタービンエンジンを有する飛行機とは異なる種類の航空機として、電動垂直離着陸機(eVTOL:electric Vertical Take-Off and Landing aircraft)と呼ばれる有人または無人の航空機の開発が活発化している。電動垂直離着陸機は、モータを有する電駆動システム(EDS:Electric Drive System)を複数備え、複数のモータによって複数のロータが回転駆動されることで、機体の揚力や推力を得ている。それぞれの電駆動システムの交換後や点検後には、かかる電駆動システムが正常に動作してロータが回転することを確認するための機能試験が実行されることが望ましい。特許文献1には、ガスタービンエンジンの機能を解析するための方法が開示されている。ガスタービンエンジンと同様に、電動垂直離着陸機の電駆動システムも、交換時や定期点検等において機能試験が行われることが求められる。
特開2017-146299号公報
電動垂直離着陸機は、ガスタービンエンジンを備える固定翼機等と比較して狭い場所でも離着陸することができるため、様々な場所で運用されることが想定される。他方、電駆動システムの機能試験は、ロータを回転駆動させる際に電駆動システムを地面等に固定するための治具等の専用設備が必要であるため、ガスタービンエンジンを有する飛行機と同様に、専用設備を備える検査場等において実行されることが想定される。これらのことから、本願発明者らは、機能試験を実行するために電動垂直離着陸機を運用場所から検査場等へと移動させることが非効率的であると考えた。このため、電動垂直離着陸機の運用場所において電駆動システムの機能試験を実行可能な技術が望まれる。
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
本開示の一形態によれば、電動垂直離着陸機の制御装置(50)が提供される。この制御装置は、ロータ(30)を回転駆動させる駆動用モータ(12)を有する複数の電駆動システム(10)を備える電動垂直離着陸機(100)の制御装置であって、前記複数の電駆動システムのうち試験対象となる前記電駆動システムである試験対象システム(18)に対して前記ロータを回転駆動させることを含む機能試験を実行する際に、前記電動垂直離着陸機を鉛直方向に見たときに前記試験対象システムに対して機体重心位置(CM)を対称中心とした点対称の位置または前記機体重心位置を通る機体軸(AX)を対称軸とした線対称の位置にある前記電駆動システムである対称システム(19)と、前記試験対象システムと、におけるそれぞれの前記駆動用モータの回転数を互いに同じに制御し、且つ、それぞれの前記駆動用モータの回転方向を互いに反対方向に制御するバランス制御処理を実行する。
この形態の電動垂直離着陸機の制御装置によれば、試験対象システムに対して機能試験を実行する際に、電動垂直離着陸機を鉛直方向に見たときに試験対象システムに対して対称の位置にある対称システムと試験対象システムとにおけるそれぞれの駆動用モータの回転数を互いに同じに制御し、且つ、回転方向を互いに反対方向に制御するので、機能試験を実行する際に電動垂直離着陸機の姿勢のバランスが崩れることを抑制できる。このため、試験対象システムを地面等に固定するための治具等の専用設備を省略でき、かかる機能試験を電動垂直離着陸機の運用場所において実行できる。
本開示は、種々の形態で実現することも可能である。例えば、制御装置を備える電動垂直離着陸機、電動垂直離着陸機の制御方法等の形態で実現することができる。
制御装置を搭載した電動垂直離着陸機の構成を模式的に示す上面図である。 電動垂直離着陸機の構成を模式的に示す側面図である。 電動垂直離着陸機の構成を示すブロック図である。 バランス制御処理の手順を示すフローチャートである。 対称システムを説明する説明図である。 第2実施形態におけるバランス制御処理の手順を示すフローチャートである。 第3実施形態におけるバランス制御処理の手順を示すフローチャートである。
A.第1実施形態:
A-1.装置構成:
図1および図2に示すように、本開示の一実施形態としての制御装置50は、電動垂直離着陸機100(以下、「eVTOL(electric Vertical Take-Off and Landing aircraft)100」とも呼ぶ)に搭載されて、eVTOL100の動作を制御する。
eVTOL100は、電気により駆動され、鉛直方向に離着陸可能な有人航空機として構成されている。eVTOL100は、制御装置50に加えて、機体20と、複数のロータ30と、複数の電駆動システム10(以下、「EDS(Electric Drive System)10とも呼ぶ」と、図3に示すバッテリ40と、コンバータ42と、分配器44と、機体通信部64と、報知部66とを備えている。図1に示すように、本実施形態のeVTOL100は、ロータ30とEDS10とをそれぞれ8つずつ備えている。なお、図3では、図示の便宜上、eVTOL100が備える8つのロータ30およびEDS10のうち、2つのロータ30およびEDS10を代表して示している。
図1および図2に示すように、機体20は、eVTOL100において8つのロータ30およびEDS10を除いた部分に相当する。機体20は、機体本体部21と、支柱部22と、6つの第1支持部23と、6つの第2支持部24と、主翼25と、尾翼28とを備える。
機体本体部21は、eVTOL100の胴体部分を構成する。機体本体部21は、機体軸AXを対称軸として左右対称の構成を有する。本実施形態において、「機体軸AX」とは、機体重心位置CMを通り、eVTOL100の前後方向に沿った軸を意味している。また、「機体重心位置CM」とは、乗員が搭乗していない空虚重量時におけるeVTOL100の重心位置を意味している。機体本体部21の内部には、図示しない乗員室が形成されている。また、機体本体部21には、加速度センサ29が搭載されている。加速度センサ29は、三軸センサにより構成され、eVTOL100の加速度を測定する。加速度センサ29による測定結果は、制御装置50へと出力される。
支柱部22は、鉛直方向に延びる略柱状の外観形状を有し、機体本体部21の上部に固定されている。本実施形態において、支柱部22は、鉛直方向に見てeVTOL100の機体重心位置CMと重なる位置に配置されている。支柱部22の上端部には、6つの第1支持部23の一方の端部がそれぞれ固定されている。6つの第1支持部23は、それぞれ略棒状の外観形状を有し、鉛直方向に垂直な面に沿って延びるように、互いに等角度間隔で放射状に配置されている。各第1支持部23の他方の端部、すなわち支柱部22から遠ざかる位置にある端部には、それぞれロータ30とEDS10とが配置されている。6つの第2支持部24は、それぞれ略棒状の外観形状を有し、互いに隣り合う第1支持部23他方の端部(支柱部22と接続されていない側の端部)同士を接続している。
主翼25は、右翼26と左翼27とにより構成されている。右翼26は、機体本体部21から右方向に延びて形成されている。左翼27は、機体本体部21から左方向に延びて形成されている。右翼26と左翼27とには、それぞれロータ30とEDS10とが1つずつ配置されている。尾翼28は、機体本体部21の後端部に形成されている。
8つのロータ30のうちの6つは、各第2支持部24の端部に配置され、主に機体20の揚力を得るためのリフト用ロータ31として構成されている。8つのロータ30のうちの2つは、右翼26と左翼27とにそれぞれ配置され、主に機体20の推力を得るためのクルーズ用ロータ32として構成されている。各ロータ30は、それぞれの回転軸を中心として、互いに独立して回転駆動される。各ロータ30は、互いに等角度間隔で配置された3つのブレード33をそれぞれ有する。本実施形態において、各ロータ30のブレード角は、それぞれ可変に構成されている。具体的には、制御装置50からの指示に従い図示しないアクチュエータによってブレード角が調整される。図3に示すように、各ロータ30には、回転数センサ34と、トルクセンサ35とがそれぞれ設けられている。回転数センサ34は、ロータ30の回転数を測定する。トルクセンサ35は、ロータ30の回転トルクを測定する。各センサ34、35による測定結果は、制御装置50へと出力される。
図1に示す8つのEDS10は、各ロータ30をそれぞれ回転駆動させるための駆動装置として構成されている。8つのEDS10のうちの6つは、それぞれリフト用ロータ31を回転駆動させる。8つのEDS10のうちの2つは、それぞれクルーズ用ロータ32を回転駆動させる。
図3に示すように、各EDS10は、駆動部11と、駆動用モータ12と、ギアボックス13と、回転数センサ14と、電流センサ15と、電圧センサ16と、トルクセンサ17とを有する。
駆動部11は、図示しないインバータ回路と、かかるインバータ回路を制御する図示しないコントローラとを含む電子機器として構成されている。インバータ回路は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)等のパワー素子により構成され、コントローラから供給される制御信号に応じたデューティ比により駆動用モータ12に駆動電圧を供給する。コントローラは、制御装置50と電気的に接続されており、制御装置50からの指令に応じてインバータ回路に制御信号を供給する。
駆動用モータ12は、本実施形態ではブラシレスモータにより構成され、駆動部11のインバータ回路から供給される電圧および電流に応じた回転運動を出力する。なお、ブラシレスモータに代えて、誘導モータやリラクタンスモータ等の任意のモータにより構成されていてもよい。
ギアボックス13は、駆動用モータ12とロータ30とを物理的に接続している。ギアボックス13は、図示しない複数のギアを有し、駆動用モータ12の回転を減速してロータ30へと伝達する。なお、ギアボックス13が省略されて駆動用モータ12にロータ30の回転軸が直接的に接続されていてもよい。
回転数センサ14とトルクセンサ17とは、それぞれ駆動用モータ12に設けられており、駆動用モータ12の回転数と回転トルクとをそれぞれ測定する。電流センサ15と電圧センサ16とは、それぞれ駆動部11と駆動用モータ12との間に設けられており、駆動電流と駆動電圧とをそれぞれ測定する。各センサ14~17による測定結果は、駆動部11を介して制御装置50へと出力される。
バッテリ40は、リチウムイオン電池により構成され、eVTOL100における電力供給源の1つとして機能する。バッテリ40は、主に、各EDS10がそれぞれ有する駆動部11へと電力を供給して各駆動用モータ12を駆動させる。なお、リチウムイオン電池に代えて、ニッケル水素電池等の任意の二次電池により構成されていてもよく、バッテリ40に代えて、またはバッテリ40に加えて、燃料電池や発電機等の任意の電力供給源が搭載されていてもよい。
コンバータ42は、バッテリ40と接続されており、バッテリ40の電圧を降圧してeVTOL100が備える図示しない補機類や制御装置50へと供給する。分配器44は、バッテリ40の電圧を各EDS10が備える駆動部11へと分配する。なお、各EDS10がバッテリ40等の電力供給源をそれぞれ備えることにより、分配器44が省略されてもよい。
制御装置50は、記憶部51とCPU(Central Processing Unit)とを備えるマイクロコンピュータであり、ECU(Electronic Control Unit)として構成されている。記憶部51は、ROM(Read Only Memory)とRAM(Random Access Memory)とを有する。CPUは、記憶部51に予め記憶されている制御プログラムを実行することにより、eVTOL100の全体動作を制御する制御部52として機能するとともに、バランス制御部54として機能する。
eVTOL100の全体動作としては、例えば、垂直離着陸動作、飛行動作や、各EDS10の機能試験の実行動作等が該当する。垂直離着陸動作および飛行動作は、設定された航空経路情報に基づいて実行されてもよく、乗員の操縦により実行されてもよく、後述する外部装置500が備える外部制御部510からの指令に基づいて実行されてもよい。制御部52は、eVTOL100の動作において、各EDS10が有する駆動用モータ12の回転数および回転方向や、各ロータ30のブレード角等を制御する。
バランス制御部54は、後述するように、各EDS10の機能試験を実行する際に、eVTOL100の姿勢のバランスが崩れることを抑制する処理(以下、「バランス制御処理」と呼ぶ)を実行する。各EDS10の機能試験は、定期点検や不具合発生時の点検等を含むEDS10の点検や、EDS10の構成部品の交換等の保守が行なわれた後に、点検や保守対象となったEDS10を対象として簡易的な動作確認のために実行される。本実施形態では、機能試験の対象となるEDS10を、「試験対象システム」と呼ぶ。機能試験では、試験対象システムが正常に動作して、試験対象システムが回転駆動するロータ30(以下、「試験対象ロータ」とも呼ぶ」が正常に回転することが確認される。具体的には、機能試験では、ロータ30に対して所定の試験パターンで電圧および電流を供給し、このときの電圧値、電流値、モータ回転数、ロータ回転数、温度等を測定し、目標値と実測値との差分に基づき、試験対象システムおよび試験対象ロータの正常性が判断される。
機体通信部64は、無線通信を行なう機能を有し、外部装置500が備える外部通信部520とeVTOL100との間で情報の送受信を行なうとともに、制御装置50と通信可能に構成されている。無線通信としては、例えば、4G(第4世代移動体通信システム)や5G(第5世代移動体通信システム)等の電気通信事業者が提供する無線通信や、IEEE802.11規格に従った無線LAN通信等が該当する。また、例えば、USB(Universal Serial Bus)や、IEEE802.3規格に従った有線通信であってもよい。なお、外部装置500としては、例えば、機能試験の制御や試験結果の記録等を行うサーバ装置等の管理および制御用のコンピュータが該当する。かかる管理・制御用コンピュータは、例えば、航空管制室に配置されているサーバ装置であってもよく、また、機能試験を含む保守や点検を行う保守作業員がeVTOL100の運用場所に持ち込んだパーソナルコンピュータであってもよい。
報知部66は、制御装置50からの指示に従って報知を行う。本実施形態において、報知部66は、乗員室に搭載されて文字や画像等を表示する表示装置や、音声や警告音等を出力するスピーカ等により構成され、視覚情報や聴覚情報によって乗員に各種情報を報知する。
A-2.バランス制御処理:
図4に示すバランス制御処理は、試験対象システムに対して試験対象ロータを回転駆動させることを含む機能試験を実行する際に併せて実行される。なお、eVTOL100の出荷時における各EDS10は、ロータ30と組み合わされた状態において、工場や検査場において予め推力測定試験等が実行されている。同様に、交換部品としてのEDS10についても、工場や検査場においてロータ30と組み合わされて予め推力測定試験等が実行されている。
バランス制御部54は、試験対象システムに対して機能試験を実行するか否かを検出する(ステップS110)。例えば、保守作業員が外部装置500において、試験対象システムを指定して機能試験実行を指示すると、かかる指示は、無線通信を介して制御装置50において受信される。この場合、バランス制御部54は、試験対象システムに対して機能試験を実行すると検出する。なお、制御装置50が有する図示しないユーザインターフェイスから保守作業委員が機能試験実行の指示を入力できる構成においては、かかる指示の入力があった場合に、試験対象システムに対して機能試験を実行すると検出してもよい。機能試験を実行しないと検出された場合(ステップS110:NO)、ステップS110を繰り返す。すなわち、機能試験を実行すると検出されるまで待機する。他方、機能試験を実行すると検出された場合(ステップS110:YES)、バランス制御部54は、試験対象システム(以下、「試験対象システム18」とも呼ぶ)に対して対称の位置に搭載されている対称システム(以下、「対称システム19」とも呼ぶ)を特定する(ステップS120)。
図5を用いて、対称システム19について説明する。対称システム19は、eVTOL100を鉛直方向に見たときに試験対象システム18に対して対称の位置にあるEDS10に相当する。以下の説明では、対称システム19が回転駆動するロータ30を、「対称ロータ39」とも呼ぶ。
例えば、eVTOL100の前方右側に位置するリフト用ロータ31を回転駆動させるEDS10が試験対象システム18である場合、eVTOL100の後方左側に位置するリフト用ロータ31を回転駆動させるEDS10が対称システム19に相当する。すなわち、対称システム19は、eVTOL100を鉛直方向に見たときに試験対象システム18に対して機体重心位置CMを対称中心とした点対称の位置にあるEDS10であってもよい。なお、本実施形態において、「点対称の位置」とは、点対称の位置に最も近い位置を意味している。
また、例えば、図5とは異なるが、右翼26に配置されたクルーズ用ロータ32を回転駆動させるEDS10が試験対象システム18である場合、左翼27に配置されたクルーズ用ロータ32を回転駆動させるEDS10が対称システム19に相当する。すなわち、対称システム19は、eVTOL100を鉛直方向に見たときに試験対象システム18に対して機体重心位置CMを通る機体軸AXを対称軸とした線対称の位置にあるEDS10であってもよい。なお、本実施形態において、「線対称の位置」とは、線対称の位置に最も近い位置を意味している。
図4に示すように、バランス制御部54は、試験対象システム18と対称システム19とにおける駆動用モータ12の回転数を互いに同じに制御し、且つ、駆動用モータ12の回転方向を互いに反対方向に制御して、試験対象ロータ38と対称ロータ39とをそれぞれ回転駆動させる(ステップS130)。
図5に示すように、eVTOL100の前方右側に位置するリフト用ロータ31を回転駆動させるEDS10が試験対象システム18であり、eVTOL100の後方左側に位置するリフト用ロータ31を回転駆動させるEDS10が対称システム19である場合、バランス制御部54は、太線の矢印で示す方向に試験対象ロータ38と対称ロータ39とをそれぞれ回転させるように、試験対象システム18と対称システム19とをそれぞれ制御する。図5の例では、試験対象システム18の駆動用モータ12を時計回りに回転させることにより、試験対象ロータ38が時計回りに回転する。また、対称システム19の駆動用モータ12を時計回りとは反対方向に回転させることにより、対称ロータ39がかかる方向に回転する。本実施形態において、「回転数が互いに同じ」とは、両システム18、19における回転数の誤差が約10%以下である場合も含むものとする。なお、機能試験の実行時において、eVTOL100は、機体20が備える図示しない脚部等において、フックやロープ等の固定部材を介して地面等と互いに固定されることが望ましい。ただし、両者が固定されていなくてもよい。
図4に示すように、バランス制御部54は、試験対象システム18に対する機能試験がすべて終了したか否かを検出する(ステップS140)。機能試験がすべて終了していないと検出された場合(ステップS140:NO)、ステップS130に戻る。他方、機能試験が終了したと検出された場合(ステップS140:YES)、試験対象システム18と対称システム19との駆動を停止して、バランス制御処理を完了する。
以上説明した本実施形態のeVTOL100に搭載された制御装置50によれば、試験対象システム18に対して機能試験を実行する際に、eVTOL100を鉛直方向に見たときに試験対象システム18に対して対称の位置にある対称システム19と試験対象システム18とにおけるそれぞれの駆動用モータ12の回転数を互いに同じに制御し、且つ、回転方向を互いに反対方向に制御するバランス制御処理を実行する。このため、機能試験を実行する際に、試験対象ロータ38による推力と対称ロータ39による推力とを同じにでき、且つ、試験対象ロータ38による回転トルクと対称ロータ39による回転トルクとを打ち消すことができる。このため、機能試験を実行する際に、機体重心位置CMを通る鉛直方向に沿った軸を中心としてeVTOL100が回転することを抑制でき、eVTOL100の姿勢のバランスが崩れることを抑制できる。したがって、試験対象システム18を地面等に固定するための治具等の専用設備を省略して機能試験を実行できる。
ここで、eVTOL100は、ガスタービンエンジンを備える固定翼機等と比較して狭い場所でも離着陸することができるため、様々な場所で運用されることが想定される。本実施形態の制御装置50によれば、専用設備を省略してEDS10の機能試験を実行できるので、機能試験を実行するためにeVTOL100を運用場所から検査場等へと移動させることを省略できる。したがって、EDS10の機能試験をeVTOL100の運用場所において実行でき、効率の悪化を抑制できる。
また、eVTOL100を鉛直方向に見たときに試験対象システム18に対して機体重心位置CMを対称中心とした点対称の位置にあるEDS10を対称システム19とすることにより、機体重心位置CMまわりにeVTOL100が回転することを抑制できる。このため、機能試験を実行する際にeVTOL100の姿勢のバランスが崩れることを効果的に抑制できる。
また、eVTOL100を鉛直方向に見たときに試験対象システム18に対して機体重心位置CMを通る機体軸AXを対称軸とした線対称の位置にあるEDS10を対称システム19とすることにより、機体軸AXを中心としてeVTOL100が傾くことを抑制できる。このため、機能試験を実行する際にeVTOL100の姿勢のバランスが崩れることを効果的に抑制できる。
また、制御装置50がeVTOL100に搭載されているので、機能試験実行中およびバランス制御処理を実行中における外部装置500との通信を省略でき、通信障害等に起因して機能試験およびバランス制御処理の中断等が発生することを抑制できる。
B.第2実施形態:
図6に示すように、第2実施形態の制御装置50は、バランス制御部54が実行するバランス制御処理において、ステップS130に代えてステップS130aが実行される点において、第1実施形態の制御装置50と異なる。装置構成を含めた他の構成は第1実施形態の制御装置50と同じであるので、同一の構成には同一の符号を付し、それらの詳細な説明を省略する。
バランス制御部54は、ステップS120において対称システム19が特定されると、試験対象システム18と対称システム19とにおける駆動用モータ12の回転数を互いに同じに制御し、且つ、駆動用モータ12の回転方向を互いに反対方向に制御し、且つ、試験対象ロータ38と対称ロータ39とにおけるブレード角を互いに同じに制御する(ステップS130a)。本実施形態において、「ブレード角が互いに同じ」とは、両ロータ38、39におけるブレード角の誤差が指令角度の10%以下である場合も含むものとし、また、両ロータ38、39におけるブレード角の差が約2°以下である場合も含むものとする。ステップS130aの後、ステップS140に進む。
以上説明した第2実施形態の制御装置50によれば、第1実施形態の制御装置50と同様な効果を奏する。加えて、バランス制御処理において、試験対象ロータ38と対称ロータ39とにおけるブレード角を互いに同じに制御するので、機能試験を実行する際にeVTOL100の姿勢のバランスが崩れることをより抑制できる。
C.第3実施形態:
図7に示すように、第3実施形態の制御装置50は、バランス制御部54が実行するバランス制御処理において、ステップS132、S134、S136およびS138がさらに実行される点において、第1実施形態の制御装置50と異なる。装置構成を含めた他の構成は第1実施形態の制御装置50と同じであるので、同一の構成には同一の符号を付し、それらの詳細な説明を省略する。
バランス制御部54は、ステップS130において試験対象システム18と対称システム19とがそれぞれ駆動されると、各種センサにより測定される測定結果を取得する(ステップS132)。より具体的には、バランス制御部54は、試験対象システム18と対称システム19とのそれぞれに対し、駆動用モータ12の回転数と駆動電流と駆動電圧との測定結果を取得し、また、eVTOL100の加速度の測定結果を取得する。
バランス制御部54は、駆動用モータ12の回転数と駆動電流と駆動電圧とのいずれについても試験対象システム18と対称システム19との差が予め定められた閾値以下であるか否かを判定する(ステップS134)。両システム18、19における駆動用モータ12の回転数と駆動電流と駆動電圧と差がいずれも予め定められた閾値以下でない、すなわち、少なくともいずれか1つが閾値を超えていると判定された場合(ステップS134:NO)、ステップS138に進む。
駆動用モータ12の回転数と駆動電流と駆動電圧とのうちの少なくとも1つについて、両システム18、19の測定結果の値の差が大きい場合、eVTOL100の姿勢のバランスが崩れている可能性がある。そこで、バランス制御部54は、閾値を超えていると判定された場合(ステップS134:NO)、機能試験を安全に緊急停止させる(ステップS138)。「安全に緊急停止」とは、試験対象システム18と対称システム19とのそれぞれに対し、駆動用モータ12の回転数を次第に減少させて駆動用モータ12を停止させることを意味する。ステップS138において機能試験を安全に緊急停止させた場合、制御装置50は、かかる緊急停止について機体通信部64を介して外部装置500に通知してもよく、報知部66を介してeVTOL100の乗員や利用者に報知してもよい。ステップS138の後、バランス制御処理を完了する。
ステップS134において、駆動用モータ12の回転数と駆動電流と駆動電圧とのいずれについても両システム18、19の差が予め定められた閾値以下であると判定された場合(ステップS134:YES)、バランス制御部54は、加速度センサ29により測定されるeVTOL100の加速度が予め定められた閾値以下であるか否かを判定する(ステップS136)。eVTOL100の加速度が予め定められた閾値以下でない、すなわち、閾値を超えていると判定された場合、eVTOL100の姿勢のバランスが取れておらず、例えば、前進、後退、回転などのeVTOL100の動きが発生している可能性がある。そこで、閾値を超えていると判定された場合(ステップS136:NO)、上述のステップS138が実行され、機能試験が安全に緊急停止される。
他方、eVTOL100の加速度が予め定められた閾値以下であると判定された場合(ステップS136:YES)、バランス制御部54は、eVTOL100の姿勢のバランスが取れていると判断して、機能試験を継続させる。バランス制御部54は、機能試験が終了したか否かを検出し(ステップS140)、機能試験が終了していないと検出された場合(ステップS140:NO)、ステップS130に戻り、機能試験が終了したと検出された場合(ステップS140:YES)、試験対象システム18と対称システム19との駆動を停止して、バランス制御処理を完了する。
以上説明した第3実施形態の制御装置50によれば、第1実施形態の制御装置50と同様な効果を奏する。加えて、機能試験の実行によりeVTOL100の姿勢のバランスが崩れていることが推定される場合に機能試験を安全に緊急停止するので、安全性の低下を抑制できる。
また、駆動用モータ12の回転数と駆動電流と駆動電圧とのいずれについても試験対象システム18と対称システム19との差が閾値を超えていると判定された場合に機能試験を安全に緊急停止するので、eVTOL100の姿勢のバランスが崩れていることを精度良く推定して機能試験を停止できる。また、eVTOL100の加速度が予め定められた閾値を超えていると判定された場合にeVTOL100の姿勢のバランスが取れていないと判断するので、eVTOL100の姿勢のバランスが崩れていることを精度良く推定して機能試験を停止できる。
D.他の実施形態:
D-1.他の実施形態1:
上記第3実施形態では、試験対象システム18と対称システム19とにおける駆動用モータ12の回転数と駆動電流と駆動電圧とeVTOL100の加速度とを利用して、eVTOL100の姿勢のバランスが取れているか否かを判断していたが、これらの値のうちの一部を用いてかかる判断を行なう態様であってもよい。かかる態様において、バランス制御部54は、駆動用モータ12の回転数と駆動電流と駆動電圧とeVTOL100の加速度とのうちの少なくとも1つの測定結果を取得してもよい。かかる構成によっても、上記第3実施形態と同様な効果を奏する。
D-2.他の実施形態2:
上記各実施形態の制御装置50は、eVTOL100に搭載されていたが、外部装置500に搭載されて用いられる態様であってもよい。かかる態様においては、eVTOL100に搭載される制御装置(制御装置50とは別の制御装置)に接続された機体通信部64と外部通信部520との間で制御信号の送受信が行なわれてもよい。すなわち一般には、制御装置50は、eVTOL100が備える機体通信部64と通信可能な外部通信部520をさらに備え、eVTOL100の外部に存在していてもよい。かかる構成によれば、外部装置500において複数のeVTOL100の機能試験およびバランス制御処理を制御できる。
D-3.他の実施形態3:
上記各実施形態におけるeVTOL100の構成は、あくまで一例であり、種々変更可能である。例えば、各EDS10は、それぞれ駆動部11を有していたが、共通の駆動部11により複数の駆動用モータ12がそれぞれ駆動されてもよい。また、例えば、ロータ30とEDS10とは、8つに限らず任意の複数であってもよく、任意の位置に搭載されていてもよい。また、例えば、リフト用ロータ31とクルーズ用ロータ32とに代えてティルトロータにより構成されていてもよい。また、例えば、eVTOL100は、有人航空機に代えて無人航空機として構成されていてもよい。
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した形態中の技術的特徴に対応する各実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
10…EDS(電駆動システム)、12…駆動用モータ、18…試験対象システム、19…対称システム、30…ロータ、50…制御装置、100…eVTOL(電動垂直離着陸機)

Claims (9)

  1. ロータ(30)を回転駆動させる駆動用モータ(12)を有する複数の電駆動システム(10)を備える電動垂直離着陸機(100)の制御装置(50)であって、
    前記複数の電駆動システムのうち試験対象となる前記電駆動システムである試験対象システム(18)に対して前記ロータを回転駆動させることを含む機能試験を実行する際に、前記電動垂直離着陸機を鉛直方向に見たときに前記試験対象システムに対して機体重心位置(CM)を対称中心とした点対称の位置または前記機体重心位置を通る機体軸(AX)を対称軸とした線対称の位置にある前記電駆動システムである対称システム(19)と、前記試験対象システムと、におけるそれぞれの前記駆動用モータの回転数を互いに同じに制御し、且つ、それぞれの前記駆動用モータの回転方向を互いに反対方向に制御するバランス制御処理を実行する、
    電動垂直離着陸機の制御装置。
  2. 請求項1に記載の電動垂直離着陸機の制御装置において、
    前記対称システムは、前記電動垂直離着陸機を鉛直方向に見たときに前記試験対象システムに対して前記機体重心位置(CM)を対称中心とした点対称の位置にある前記電駆動システムである、
    電動垂直離着陸機の制御装置。
  3. 請求項1に記載の電動垂直離着陸機の制御装置において、
    前記対称システムは、前記電動垂直離着陸機を鉛直方向に見たときに前記試験対象システムに対して前記機体軸(AX)を対称軸とした線対称の位置にある前記電駆動システムである、
    電動垂直離着陸機の制御装置。
  4. 請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の電動垂直離着陸機の制御装置において、
    前記ロータが有するブレード(33)のブレード角が可変に構成されており、
    前記バランス制御処理において、前記試験対象システムが回転駆動する前記ロータである試験対象ロータ(38)と前記対称システムが回転駆動する前記ロータである対称ロータ(39)とにおけるそれぞれの前記ブレード角を互いに同じに制御する、
    電動垂直離着陸機の制御装置。
  5. 請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の電動垂直離着陸機の制御装置において、
    前記バランス制御処理において、前記試験対象システムと前記対称システムとのそれぞれに対し、前記駆動用モータの回転数と駆動電流と駆動電圧とのうちの少なくとも1つの測定結果を取得し、前記試験対象システムと前記対称システムとのそれぞれに対して取得された前記測定結果を比較して、前記電動垂直離着陸機の姿勢のバランスが取れているか否かを判断する、
    電動垂直離着陸機の制御装置。
  6. 請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の電動垂直離着陸機の制御装置において、
    前記バランス制御処理において、前記電動垂直離着陸機の加速度を取得し、取得された前記加速度を利用して前記電動垂直離着陸機の姿勢のバランスが取れているか否かを判断する、
    電動垂直離着陸機の制御装置。
  7. 請求項5または請求項6に記載の電動垂直離着陸機の制御装置において、
    前記バランス制御処理において、前記バランスが取れていないと判断された場合に、前記試験対象システムと前記対称システムとのそれぞれに対し、前記駆動用モータの回転数を次第に減少させて前記駆動用モータを停止させる、
    電動垂直離着陸機の制御装置。
  8. 請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の電動垂直離着陸機の制御装置において、
    前記電動垂直離着陸機が備える機体通信部(64)と通信可能な外部通信部(520)をさらに備え、
    前記電動垂直離着陸機の外部に存在する、
    電動垂直離着陸機の制御装置。
  9. 請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の電動垂直離着陸機の制御装置を備える、
    電動垂直離着陸機。
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