JP7340420B2 - トンネル施工方法および空隙探査システム - Google Patents
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Description
一方、シールド掘削機の外周上部に崩落や土砂取り込み過多などによる大きな空隙が形成されていると、設計時に設定された裏込め材の量では裏込めが不十分になるおそれがある。裏込め材による充填が不十分だと、覆工の背面に空隙が残存してしまい、地盤沈下の原因になるおそれがある。そのため、トンネルの施工では、覆工の背面の空隙を適切に把握し、裏込め材の注入を適切に行う必要がある。
地山状況を把握する方法として、例えば特許文献1には、シールド掘削機の外殻から発信された超音波の往復時間によりシールド掘削機の外周囲の空隙の大きさを計測する空隙検出方法が開示されている。また、特許文献2には、地山に向けて発信した電磁レーダの反射レーダを受信することにより、地山状況を把握する探査方法が開示されている。ところが、地山に対して発信された電磁レーダ等は、地質や破砕帯の有無等に応じて反射状況(反射速度や反射方向等)が変化する。そのため、特許文献2の探査方法では、本坑の掘削に先立って施工された先進導坑等の掘削時に得られたデータに基づいて地質状態の均一性や連続性を仮定し、これを電磁レーダによる探査結果に適用して地山状況を推定している。ところが、先進導坑を有しないトンネル施工では、予め地質状態を把握することはできない。
また、本発明の空隙探査システムは、シールド掘削機内から当該シールド掘削機の周囲の地山に向けて発信した電磁レーダにより前記シールド掘削機の周囲の空隙の大きさを計測する電磁レーダ探査装置と、前記シールド掘削機から周囲の地山に向けて貫入部材を押し出すことで前記掘削機の背面の空隙の大きさを実測する貫入探査装置と、前記貫入探査装置による探査結果に基づいて、前記電磁レーダ探査装置による探査結果を校正するとともに、校正後の探査結果に基づき前記空隙の大きさを推定する処理装置とを備えるものである。
前記空隙推定作業では、前記貫入探査作業を実施した位置におけるレーダ探査作業により得られた空隙の深さが前記貫入探査作業の実測値になるように逆算することで、その他の位置におけるレーダ探査作業により得られた探査結果に乗ずる係数を設定するのが望ましい。このようにすれば、空隙部に堆積する土砂の状況や土質等が不明な場合であっても、実測値に基づいてレーダ探査結果を校正できるので、より正確な計測を行うことができる。また、貫入探査作業は、シールド機が推進している間は、実施できないため、貫入探査結果は、断片的なデータとなる。そのため、貫入探査による測定が行われていない区間については、シールド機が推進している間も連続して計測を行うレーダ探査結果により補完することで、精度よく空隙量のデータを計測する。
電磁レーダ探査装置3は、図4(a)に示すように、シールド掘削機1の前部に形成された隔壁13の近傍に設けられている。本実施形態では、図5に示すように、電磁レーダ探査装置3をシールド掘削機1の上半に六基装備する。電磁レーダ探査装置3は、本体部11の頂点から中心角が約15°、約35°、約55°になる左右の位置にそれぞれ配設する。なお、電磁レーダ探査装置3の配置および数は限定されるものではなく、シールド掘削機1の大きさや想定される地山状況などに応じて適宜決定すればよい。
シールド掘削機1の本体部11には、電磁レーダ探査装置3の設置個所に応じて貫通孔15が形成されている。電磁レーダ本体31は、防護材34を介して貫通孔15に面した状態で設置する。防護材34は、貫通孔15を遮蔽するように設ける板材であって、取付台32にボルト接合されている。防護材34は、電磁レーダ本体31から発信された電磁レーダおよび反射レーダが通過可能で、かつ、シールド掘削機1の掘進時における地山Gとの摩擦に対して十分な耐力を有した材質であるのが望ましい。このような材料として、本実施形態ではガラス繊維強化プラスチックを使用する。なお、防護材34として使用可能な材料は、ガラス繊維強化プラスチックの他に、例えば、超高強度繊維補強コンクリート(UFC)、ガラス長繊維入り硬質発泡ウレタン樹脂等がある。
空隙Cには、地山Gの崩落等により、土砂が堆積している場合がある。一方、レーダ探査による計測結果には、地質により反射状況が変化する。そのため、本実施形態では、予め算出された係数をレーダ探査作業S11により得られた探査結果に乗ずることで、土質や空隙C内の状況(土砂の有無等)による誤差を抑制する。なお、係数は、前回の施工サイクルにおいて実施した貫入探査作業S21の探査結果に基づいて設定する。具体的には、貫入探査作業S21を実施した位置におけるレーダ探査作業S11により得られた空隙Cの深さd1が、貫入探査作業S21の実測値d2と同じになるような係数(=d2/d1)を算出し、その他の位置におけるレーダ探査作業S11により得られた探査結果に乗ずる係数とする。
空隙Cの形状(深さ)を算出したら、セグメントSの背面と地山Gとの隙間(空隙C)に裏込め材Fを充填する(充填作業S13)。充填作業S13において充填される裏込め材Fの量は、空隙探査システム2により推定された空隙Cの大きさに応じて設定する。本実施形態では、シールド掘削機1の外周囲上部またはセグメントSの外周囲上部から裏込め材Fを注入する。なお、電磁レーダ探査装置3による探査の結果、大きな空隙Cが存在すると判断された場合には、シールド掘削機1の胴体注入管16(図4(a)参照)を利用して直ちに空隙Cへの裏込め材Fの充填を行うのが望ましい。
貫入探査装置4は、図7(a)に示すように、電磁レーダ探査装置3と同様に、シールド掘削機1の前部に形成された隔壁13の近傍に設けられている。なお、貫入探査装置4の隔壁13からの離隔距離は、電磁レーダ探査装置3の中心から隔壁13までの間隔と同等とするのが望ましい。貫入探査装置4は、図7(b)に示すように、貫入部材41と、保持部材42とを備えている。貫入部材41は、棒状部材からなり、保持部材42の内部に進退可能に収納されている。貫入部材41の先端には、圧力計43が取り付けられている。圧力計43は、貫入部材41が地山Gに向けて押し出された際の圧力を測定する。保持部材42は、筒状の部材からなる。保持部材42の中空部分には、貫入部材41が内挿されている。また、保持部材42の後端部には、貫入部材41を押し出した際のストローク長を計測するストローク計44が設置されている。
(1)開口寸法決定試験
開口寸法決定試験では、取付台32の凹部35の大きさを決定する。本実験では、コンクリート製の供試体Tの深さ70mmの位置に埋め込まれた鉄筋T1を供試体Tの表面から電磁レーダ探査装置3を利用して測定する。なお、電磁レーダ本体31は、側部や後部からも微弱な電磁波を発信しているため、鉄板により形成された収納箱(取付台32)により覆われた際に、鉄板によるノイズが発生するおそれがある。そのため、本実験では、図8(a)および(b)に示すように、電磁レーダ本体31と収納箱の内面との間に2cm以下、2cmまたは5cmのクリアランスを確保した場合におけるノイズの影響を確認した。比較例として、収納箱により電磁レーダ本体31を覆わない状態でも測定を行った。
試験の結果、収納箱の有無による明確なノイズの変化は見られなかった。また、クリアランスが2cmと5cmの場合におけるノイズの変化も確認できなかった。一方、クリアランスが2cm以下の場合は、発信側でのノイズが確認された。
したがって、電磁レーダ本体31を、2cm以上のクリアランスを確保した状態で取付台32を介してシールド掘削機1に固定すれば、空隙探査を実施することに支障は生じないことが確認できた。
電磁波レーダ試験では、図9に示すように、深さ0~30cmの土砂(地山G)が収納された容器Bの上において、電磁レーダ本体31を移動させながら電磁波を発信して計測を行った。実験では、電磁レーダ本体31を、対向するように配設された二つの容器Bの上を移動させた。このとき、電磁波の周波数を900MHz、1600MHzおよび2600MHzに変化させて行った。
図10(a)および(b)に示すように、周波数が2600MHzと1600MHzの場合では、地山Gのラインを確認することができたものの、図10(c)に示すように、周波数が900MHzの場合では、地山Gのラインがはっきり確認することができなかった。したがって、深さ30cmまでの空隙の探査に対しては、電磁レーダ本体31の周波数は1600MHz以上で行うのが望ましいことが確認できた。なお、レーダ探査における電磁波の周波数は、地山条件や計測範囲に応じて適宜決定する。
防護材選定試験では、電磁レーダ本体31の表面に設定する防護材34に適した材料の選定を行った。防護材34は、電磁波の送信を妨げることがなく、また、シールド掘削機1の掘進時に地山Gとの摩擦力により破損することがない強度を有した材料であるのが望ましい。本実験では、大深度(高水圧)で、長距離掘進する場合を想定して、防護材34として望ましい材料を選定する。
まず、ガラス繊維強化プラスチック、炭素繊維強化プラスチック、超高強度繊維補強コンクリートおよびガラス長繊維入り硬質発泡ウレタンからなる板材(防護材34)に対して、電磁レーダへの影響を調査した。調査は、不純物が埋設された土砂の上から、防護材34が張り付けられた電磁レーダ本体31による試験を行い、不純物を検出できるか否かについて検証を行った。調査の結果、炭素繊維強化プラスチック製の板材を用いると、不純物を検出できず、それ以外の材料は検出可能であることが確認できた。
次に、スキンプレート(SM490)、ガラス繊維強化プラスチック、超高強度繊維補強コンクリートおよびガラス長繊維入り硬質発泡ウレタンからなる板材に対して、テーパー摩耗試験機を使用して摩耗試験を行い、耐摩耗性について検証を行った。テーパー摩耗試験機を利用した摩耗試験の結果を表1に示す。
防護材34に作用する荷重等から推測される各材料の荷重に対して必要な板厚(対荷重板厚)は、表2に示すように、ガラス繊維強化プラスチックは20mm、超高強度繊維補強コンクリートは70mm、ガラス長繊維入り硬質発泡ウレタンは50mmであった。これに、予測される摩耗量を加えたガラス繊維強化プラスチック、超高強度繊維補強コンクリートおよびガラス長繊維入り硬質発泡ウレタンの板厚(必要板厚)は、それぞれ37.6mm、84.2mm、118.7mmとなる。そのため、防護材34の設計板厚100mmに対する各材料の必要板厚の安全率は、ガラス繊維強化プラスチック:2.66、超高強度繊維補強コンクリート:1.19、ガラス長繊維入り硬質発泡ウレタン:0.84となる。したがって、大深度で長距離掘進する場合の防護材34には、安全率が最も高いガラス繊維強化プラスチックが最も望ましい。なお、防護材34を構成する材料は、施工条件(深度、掘進距離)等に応じて、適宜決定すればよい。
前記実施形態では、レーダ探査作業S11を常時行う場合について説明したが、レーダ探査作業S11は一定時間毎に行ってもよい。
レーダ探査作業S11、空隙推定作業S12、充填作業S13および貫入探査作業S21の順序は限定されるものではなく、適宜設定すればよい。例えば、レーダ探査作業S11と貫入探査作業S21を実施してから、空隙推定作業S12および充填作業S13を実施してもよい。このとき、レーダ探査作業S11と貫入探査作業S21との順序はどちらを先に実行してもよい。
2 空隙探査システム
3 電磁レーダ探査装置
4 貫入探査装置
41 貫入部材
5 処理装置
C 空隙
F 裏込め材
G 地山
Claims (3)
- シールド掘削機から地山に向けて貫入部材を押し出して前記シールド掘削機の周囲の空隙の深さを実測する貫入探査作業と、
前記シールド掘削機から電磁レーダを発信するとともに前記電磁レーダの反射データを受信するレーダ探査作業と、
前記貫入探査作業による探査結果に基づいて、前記レーダ探査作業による探査結果を校正し、校正後の探査結果に基づいて、前記空隙の大きさを推定する空隙推定作業と、
前記空隙の大きさに応じた量の裏込め材を前記空隙に充填する充填作業と、を備えることを特徴とする、トンネル施工方法。 - 前記空隙推定作業では、前記貫入探査作業を実施した位置におけるレーダ探査作業により得られた空隙の深さが前記貫入探査作業の実測値になるように逆算することで、その他の位置におけるレーダ探査作業により得られた探査結果に乗ずる係数を設定することを特徴とする、請求項1に記載のトンネル施工方法。
- シールド掘削機内から当該シールド掘削機の周囲の地山に向けて発信した電磁レーダにより前記シールド掘削機の周囲の空隙の大きさを計測する電磁レーダ探査装置と、
前記シールド掘削機から周囲の地山に向けて貫入部材を押し出すことで前記シールド掘削機の背面の空隙の大きさを実測する貫入探査装置と、
前記貫入探査装置による探査結果に基づいて、前記電磁レーダ探査装置による探査結果を校正するとともに、校正後の探査結果に基づき前記空隙の大きさを推定する処理装置と、を備える空隙探査システム。
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