JP7332226B1 - 銀合金ナノ粒子含有組成液の調製方法、銀合金被膜の形成方法及びこの銀合金被膜を用いた配線回路の製造方法 - Google Patents

銀合金ナノ粒子含有組成液の調製方法、銀合金被膜の形成方法及びこの銀合金被膜を用いた配線回路の製造方法 Download PDF

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【課題】加熱することなく短時間に調製でき、さらには鉛はんだ層よりも耐熱性が良好で電気抵抗率が低く、かつ耐イオンマイグレーション性に優れたAg合金被膜を形成できるAg合金ナノ粒子含有組成液の調製方法を提供する。【解決手段】本発明のAg合金ナノ粒子含有組成液の調製方法は、アルコール溶媒中に、スチレン-無水マレイン酸樹脂構造を有し、前記無水マレイン酸の一部が末端水酸基のポリアルキレングリコール又は末端アミノ基のポリアルキレングリコールで変性されているものからなる酸価が150以下の高分子分散剤を溶解させるとともに、酸化銀等のAg化合物と、Sn、In及びNiから選択される少なくとも1種の酸化物、フッ化物ないし酢酸化合物からなる異種金属化合物と、を分散させたアルコール溶液中に超音波を常温下で照射することによって、Ag合金ナノ粒子が分散したアルコール溶液を得ることからなる。【選択図】 図5

Description

本発明は、加熱することなく短時間に調製でき、さらには鉛はんだ層よりも耐熱性が良好で電気抵抗率が低く、かつ耐イオンマイグレーション性に優れた銀合金被膜を形成できる、銀合金ナノ粒子含有組成液の調製方法、これを用いた銀合金被膜の形成方法、及び、
この銀合金被膜を用いた配線回路の製造方法に関する。
家電、パソコン、自動車(電気自動車を含む)、太陽光発電施設、風力発電施設などについて、搭載されているパワー半導体のモジュール製品の高性能化が望まれている。これらのパワー半導体モジュールの高性能化を実現するためには、パワー半導体へ大電流を供給する必要があるが、その際に高温に発熱するため、使用する材料には高耐熱性のものが必要である。特に基板材料については、シリコン(Si)から次世代パワー半導体として高耐熱性材料である炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)が注目されている。しかし、基板材料以外の他の構成材料であるモールド樹脂や接合剤(鉛はんだ等)の耐熱性が不足しており、これらの改良が求められている。
銀(Ag)は、貴金属の中でも低い電気抵抗率を有しており、配線や接合材料として期待されている。しかし、硫黄(S)ないし硫黄化合物などによって硫化や腐食が起こりやすい点、湿度の高い環境条件中に配線を描写したプリント基板を設置して電圧を印加した場合に、電極間をイオン化した銀金属が移動して短絡が生じるイオンマイグレーションが起こりやすい点、銅(Cu)やニッケル(Ni)などに比べて高価である点などの課題がある。
一方、スズ(Sn)-銀(Ag)合金メッキ被膜については、Agの単一メッキ被膜と比較して硬度が高くなり、耐硫化性や耐イオンマイグレーション性に優れるということが知られている。しかしながら、電気メッキ法では、AgとSnとの析出電位に差位があるため、同時に析出させることが難しく、メッキ浴の管理も単一Agメッキの場合に比べると煩雑になり、今なお課題が多く存在している。そのため、Sn-Ag合金のみならず、硫黄ないし硫黄化合物などによる腐食やイオンマイグレーションが起こりがたく、電気抵抗率が小さい、鉛はんだに代わるAg合金被膜の形成方法の開発が要望されている。
一方、金属粒子の特異的な性質の一つとして、金属粒子をナノ粒子化することによって融点がバルクの融点よりも低下する融点降下という現象が知られている。このようなナノ粒子化された金属粒子を用いることで、バルクの融点よりも低温での焼結が可能となり、焼結後はバルクの融点へ近づくため、焼結後の耐熱性は向上する。そのことから、鉛はんだに代わる高耐熱性の接合剤となりうるAg合金を形成し得るナノ粒子の使用が検討されている。
例えば、特許文献1(特許第6975055号公報)には、AgないしAg合金のナノ粒子と、フィールド金属(Field’s metal、融点60.5℃、In51.0 Bi32.5 Sn16.5)からなる共晶低融点合金粒子を含む、ハイブリッド導電性インクの発明が開示されている。この特許文献1に開示されている発明は、基板の上に配置された導電性部品の上に上記のハイブリッド導電性インクを堆積させてその上に電子部品を配置し、これらの基板、導電性部品、ハイブリッド導電性インク及び電子部品を、130℃まで加熱することにより前記共晶低融点合金粒子を溶融させ、この溶融した共晶低融点合金がアニーリングされたAgないしAg合金の間の空間を占めるように流れさせた後に冷却して低融点共晶合金を硬化させ、前記電子部品及び前記導電性部品間にインターコネクトを形成するようになされているものである。
また、特許文献2(特開2020-020039号公報)には、有機極性溶媒と、有機アミン安定剤と、共晶金属合金とを混合して混合物を調製し、共晶金属合金の融点より高い温度で混合物を超音波処理することによって共晶金属合金ナノ粒子を製造する方法の発明、及び、AgないしAg合金ナノ粒子と前記共晶金属合金ナノ粒子とを含むハイブリッド導電性インク組成物(請求項16)の発明が開示されている。この特許文献2に開示されている発明における共晶金属合金としては、フィールド金属などの低融点合金からなる共晶合金が用いられており、形成された導電性被膜は、特許文献1に開示されている発明の場合と同様に、アニーリングされたAgないしAg合金ナノ粒子の間の空間を溶融した共晶低融点合金で占めるようになされているものである。
一方、直接Ag合金のナノ粒子を形成するものとして、たとえば、特許文献3(特開2006-257048号公報)には、パラジウムアセテート(Palladium acetate)及び銀アセテート(Ag acetate)をソジウムドデシルサルフェート(SDS)水溶液に溶解させた後、オイルバス内で130℃で9時間反応させて製造する、Ag-Pd合金ナノ粒子が分散されている導電性インクの発明が開示されている。
また、特許文献4(特表2021-530344号公報)には、少なくとも2種類の遷移金属錯体からなる金属イオン含有化合物を少なくとも300℃に加熱して金属合金ナノ粒子を形成する方法の発明が開示されている。この特許文献4に開示されている発明では、金属イオン含有化合物として、Pt、Pd、Fe、Ni、Co、Ir、Ru、Rh、Cu、Ag及びAuからなる群から選択される1つ以上の遷移金属イオンを含むものが用いられている。
なお、高電力・高容量下で高温動作可能な次世代パワー半導体電力モジュールには、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ケイ素(Si)等の高熱伝導性の非酸化物系セラミックス基板の表面や裏面に薄膜状の配線導体層を形成するとともに、必要に応じてセラミックス基板の表面と裏面との間の電気的導通を取るために、内壁面が導電性のスルーホールを形成したものが用いられている。
たとえば、特許文献7(特開2003-218518号公報)には、窒化アルミニウム(AlN)を主成分とするセラミックス基板の上面及び下面に回路パターンが形成され、上下両面の回路パターンが導体化されたスルーホールで電気的に接続された回路基板を製造する際、前記導体化されたスルーホールの形成を、前記セラミックス基板にレーザー加工によりスルーホールを形成した後、該スルーホールの内壁面に導体化膜を形成するようにした回路基板の製造方法の発明が開示されている。この回路基板の製造方法の発明によれば、スルーホールの位置精度が極めて高く、上下面の電気抵抗が小さく、セラミックス基板に形成したスルーホール内壁と導体化膜との界面に隙間を発生させることなく、且つ、金属層内部に亀裂を発生させることのない信頼性の高い回路基板を提供することができるようになる。
また、特許文献8(特開平4-116177号公報)には、AlNからなるセラミックス基板に、不活性雰囲気でレーザーを照射してスルーホールを形成すると共に、スルーホールの内壁面にセラミックスの成分金属であるAl層を析出させて内壁面に導電性を付与するようにした、セラミックス基板への導体形成方法の発明が開示されている。このセラミックス基板への導体形成方法の発明によれば、AlNからなるセラミックス基板に不活性雰囲気中でレーザー照射してスルーホールを形成するのみでスルーホールの内壁面にAlからなる導電性層が形成されるようになるが、このAlからなる導電性層はセラミックス基板を構成するAlNの還元反応により形成されるものであるため、Alの生成量が少なく、電気抵抗が大きい導電性層しか形成できないので、Alからなる導電性層の表面に無電解めっきによりNi膜を形成している。
特許第6975055号公報 特開2020-020039号公報 特開2006-257048号公報 特表2021-530344号公報 特許第5950427号公報 特許第6713662号公報 特開2003-218518号公報 特開平04-116177号公報
特許文献1及び2にそれぞれ開示されている発明によれば、ハイブリッド導電性インクを基板上に堆積させて乾燥させた後に加熱することによって、アニーリングされたAgないしAg合金ナノ粒子の間の空間を溶融した共晶低融点合金が占めるようにでき、導電性トレース、導電性ボンディングパッド、電極、インターコネクト等に用いることができる導電性被膜を形成できるようになる。しかしながら、特許文献1及び2に開示されている発明においては、予め個別に調製されたAgないしAg合金ナノ粒子と共晶低融点合金粒子とを用いてハイブリッド導電性インクが調製されており、しかもAgないしAg合金ナノ粒子と共晶低融点合金とは均質な合金を形成しているわけではないので、得られた導電性被膜の耐熱性は共晶低融点合金によって支配され、形成された導電性被膜の耐熱性は必ずしも良好となるものではない。さらに、特許文献2に開示されているハイブリッド導電性インク中の共晶金属合金ナノ粒子の形成には、溶媒中で共晶金属合金の融点より高い温度に加熱して超音波処理することが必要となっている。
また、特許文献3に開示されている発明によれば、Ag化合物とPd化合物から直接Ag-Pd合金ナノ粒子を形成することができるが、このAg-Pd合金ナノ粒子の形成には130℃で9時間という高温での処理が必要となっている。なお、Ag-Pd合金は、鉛はんだよりも耐熱性に優れ、かつ耐イオンマイグレーション性にも優れていることが知られているが、貴金属のPdを用いているために高価となるという課題がある。
さらに、特許文献4には、少なくとも2種類の遷移金属錯体を用いて金属合金ナノ粒子を形成する方法が開示されており、Agを含む金属合金ナノ粒子を形成する方法も開示されているが、金属合金ナノ粒子を形成する際には少なくとも300℃の温度に加熱する工程が必要となっている。
このように、少なくともSn-Ag合金メッキ被膜に匹敵する耐イオンマイグレーション性を備え、しかも電気抵抗率が小さく、鉛はんだに代わる高耐熱性の接合材を形成し得るAg合金ナノ粒子を、少なくとも100℃より低い温度、特に常温下で形成することについては知られていなかった。なお、Agナノ粒子そのものを含む組成液を常温下で形成することについては、たとえばこの出願の発明者等が既に特許文献5(特許第5950427号公報)に開示しているように公知である。なお、特許文献6には、特定の界面活性剤を含む金属塩溶液中に特定の界面活性剤を含む還元剤溶液を撹拌しながら滴下することにより、Snナノ粒子又はAgナノ粒子を含む分散液を形成した例が示されているが、Snナノ粒子及びAgナノ粒子を同時に含む分散液を調製することや、Sn-Ag合金ナノ粒子を形成することについては何も示されていない。
さらに、特許文献7及び8に開示されているように、従来、非酸化物系セラミックス基板に形成された内壁面が導電性のスルーホールは、一旦非酸化物系セラミックス基板にスルーホールを形成した後に、めっき法等によりスルーホールの内壁面に低抵抗の導電性層を形成する方法が採用されており、非酸化物系セラミックス基板にレーザー加工によってスルーホールを形成すると同時に、スルーホールの内壁面に低抵抗の導電性層を形成する方法は知られていなかった。
発明者等は、Sn-Ag合金メッキ被膜に匹敵する耐イオンマイグレーション性を備え、しかも電気抵抗率が小さく、鉛はんだに代わる高耐熱性の接合材を形成できるSn-Ag合金ナノ粒子等のAg合金ナノ粒子を調製すべく種々実験を重ねてきた結果、特定の高分子分散剤が含まれているアルコール溶液中に、酸化銀(AgO)、炭酸銀(AgCO)ないしシュウ酸銀(Ag)と、スズ(Sn)、インジウム(In)及びニッケル(Ni)から選択された少なくとも1種の金属の酸化物又は塩から選択される少なくとも1種の異種金属化合物を分散させたアルコール溶液中に超音波を照射しながら反応させると、特に加熱処理しなくても短時間で直接Agと他の金属とが合金化されたナノメータサイズの微粒子が分散された組成物を得ることができることを見出した。
さらに、発明者等は、上記のようにして形成されたナノメータサイズのAg合金の微粒子が分散された組成物を用いて、AlNやSi等の非酸化物系セラミックス基板の表面にAg合金被膜を形成し、このAg合金被膜にレーザー光を照射してスルーホールを形成すると、Ag合金被膜に開口が形成されると同時に非酸化物系セラミックス基板にスルーホールが形成され、しかもこのスルーホールの内壁面に低抵抗のAg合金からなる導電性層も形成されることも見出した。
すなわち、本発明は、特に加熱処理することなく短時間に調製でき、さらには、鉛はんだ層よりも耐熱性が良好で電気抵抗率が低く、かつ耐イオンマイグレーション性に優れたAg合金被膜を形成できる、Ag合金ナノ粒子含有組成液の調製方法、及び、これを用いたAg合金被膜の形成方法を提供することを第1の目的とする。
さらに,本発明は、上記のようにして調製されたAg合金ナノ粒子含有組成液を用いて非酸化物系セラミックス基板の表面に形成されたAg合金被膜に対し、Ag合金被膜部分に開口を形成すると同時に、非酸化物系セラミックス基板に、内壁面に低抵抗のAg合金からなる導電性層が形成されたスルーホールも形成する方法を提供することを目的とする。
本発明の一態様によれば、銀合金ナノ粒子が分散したアルコール溶液からなる銀合金ナノ粒子含有組成液の製造方法であって、アルコール溶媒中に、スチレン-無水マレイン酸樹脂構造を有し、前記無水マレイン酸の一部が末端水酸基のポリアルキレングリコール又は末端アミノ基のポリアルキレングリコールで変性されているものからなる酸価が150以下の高分子分散剤を溶解させるとともに、酸化銀、炭酸銀及びシュウ酸銀から選択される少なくとも1種の銀化合物と、スズ、ニッケル及びインジウムから選択される金属の酸化物又は塩から選択される少なくとも1種の異種金属化合物と、を分散させたアルコール溶液を用い、前記アルコール溶液中に100℃以下で超音波を照射することによって、前記銀と前記異種金属とが合金化した銀合金ナノ粒子が分散したアルコール溶液を得ることからなる、Ag合金ナノ粒子含有組成液の製造方法が提供される。
液体や溶剤中に超音波を照射すると、液体や溶剤中に激しく気泡(キャビテーション)が生じ、化学作用、侵食作用、発光作用などを示すことがある。このキャビテーションの生成・圧壊に伴う高温の局所反応場は、溶質・溶媒との相互作用によりラジカル生成を助け、様々な物理・化学的な作用をもたらす。これがソノケミカル反応である。
スチレン-無水マレイン酸樹脂構造を有し、前記無水マレイン酸の一部が末端水酸基のポリアルキレングリコール又は末端アミノ基のポリアルキレングリコールで変性されているものからなる酸価が150以下の高分子分散剤を溶解したアルコール系溶媒に、酸化Ag、炭酸Agないしシュウ酸Agから選択される少なくとも1種のAg化合物と、Sn、In及びNiから選択される少なくとも1種の金属の酸化物、フッ化物又は酢酸化合物から選択される少なくとも1種の異種金属化合物とを添加すると、これらのAg化合物及び異種金属化合物が分散した固-液二相の不均一状態のアルコール溶液が得られる。このアルコール溶液に超音波を照射すると、キャビテーションのもつ物理化学的な作用によってソノケミカル反応が進行し、別途還元剤を添加しなくてもAg化合物及び異種金属化合物に分解還元反応が生起され、たとえ100℃以下のアルコール溶液中であっても、Agと異種金属とが合金化してAg合金ナノ粒子が析出するとともに、副成物として酸素、二酸化炭素、フッ素、水等が発生する。
なお、Ag化合物が酸化銀の場合は酸素が、炭酸銀ないしシュウ酸銀の場合は酸素及び二酸化炭素が、それぞれ副成物として発生する。さらに、異種金属化合物が酸化物の場合は酸素が、異種金属が塩の場合は塩の種類に対応する揮発成分が発生する。これらの成分は、たとえば、塩が塩化物の場合は塩素が、フッ化物の場合はフッ素が、炭酸塩の場合は二酸化炭素が、硫酸塩の場合は二酸化硫黄が、硝酸塩の場合は一酸化窒素ないし二酸化窒素が、酢酸化合物の場合は酸素、二酸化炭素、水等が、それぞれ発生する。これらの成分は、いずれも揮発性成分であるので、得られたAg合金ナノ粒子含有組成液中からは揮発、除去されてしまう。そのため、得られたAg合金ナノ粒子含有組成液中には、Ag合金ナノ粒子以外には高分子分散剤のみが含まれている状態となる。そして、この高分子分散剤の作用により、Ag合金ナノ粒子は、アルコール溶媒中で、均質に、安定した状態で分散状態を維持できるようになる。
ただ、異種金属の塩が塩化物、硫酸塩ないし硝酸塩の場合、超音波照射後のAg合金ナノ粒子含有組成液中に塩素イオン,硫酸イオンないし硝酸イオンが残存していた場合には、これらのイオンはAgと反応しやすいために、Ag合金被膜を形成した際に表面にムラが生じることがあるので、異種金属の塩としてはフッ化物又は酢酸塩を用いることが好ましい。
なお、Ag化合物として水酸化銀(AgOH)を用いても一応Ag合金ナノ粒子の分散液からなるAg合金ナノ粒子含有組成液が得られるが、水酸化銀は不安定なため、Ag合金被膜を形成した際に表面にムラが生じるため、好ましくない。
なお、本発明のAg合金ナノ粒子含有組成液中に含まれるAg合金ナノ粒子は、Agナノ粒子と異種金属ナノ粒子との単なる混合物ではなく、Agと異種金属とが合金化したナノ粒子である。このように、100℃以下の温度でも直接Ag合金ナノ粒子が形成されることの理由は現在明らかではなく、今後の解明を待つ必要があるが、超音波照射に伴うキャビテーションによって局部的に高温な状態が発生することと、反応副成物である酸素、二酸化炭素、フッ素、水等が揮発・除去されるとともに、他に残留する陰イオンが存在していないので、安定なAg化合物や異種金属化合物が生成しないためと推定される。
本発明における、たとえばAg化合物としての酸化銀(AgO)と、異種金属化合物としての酸化スズ(SnO)、酸化インジウム(In)、フッ化スズ(SnF)、フッ化ニッケル(NiF)、酸化ニッケル(NiO)、酢酸ニッケル(Ni(CHCOO))との反応式は、それぞれ下記のとおりとなる。
Figure 0007332226000002
このように、本発明のAg合金ナノ粒子含有組成液の製造方法によれば、副生成物の酸素(O)、炭酸ガス(CO)、フッ素(F)、水(HO)等は揮発性であり、アルコール溶媒も揮発性であるから、本発明により製造されたAg合金ナノ粒子含有組成液中からは、Ag合金ナノ粒子及び高分子分散剤以外は全て揮発・除去することができる。したがって、高分子分散剤は微量添加成分であるから、得られたAg合金ナノ粒子含有組成液を用いて被塗装物の表面に塗布して常温で乾燥させるだけで、別途副成物の除去処理を行う必要がなく、容易にAg合金被膜を形成することができるようになる。
本発明のAg合金ナノ粒子含有組成液に用いられる高分子分散剤としては、スチレン-無水マレイン酸樹脂構造を有し、前記無水マレイン酸の一部が末端水酸基のポリアルキレングリコール又は末端アミノ基のポリアルキレングリコールで変性されているものからなるものを使用できるが、酸価は150以下であることが好ましい。本発明の一態様により製造されたAg合金ナノ粒子含有組成液においては、高分子分散剤の酸価が150以下の範囲であれば良好なAg合金被膜を形成できるが、高分子分散剤の酸価が150を超えるとAg合金被膜を形成しにくくなる。加えて、このような高分子分散剤を使用すると、特にAg合金ナノ粒子が凝集し難くなって沈殿が生じ難くなり、長時間にわたって分散状態を良好に維持することができるので、良好なAg合金被膜を形成することができるようになる。
また、超音波照射する際のアルコール溶液の温度は、100℃以下であっても溶液状態が維持されている範囲で適用可能であるが、取り扱いの容易性からして常温下で行うことが好ましい。なお、この明細書における「常温」とは、日本工業規格に定める「20℃±15℃」の範囲を示すものとして用いられている。
係る態様のAg合金ナノ粒子含有組成液の製造方法においては、前記アルコール溶液中のAg化合物及び異種金属化合物の濃度は合計で20~70wt%とすることが好ましい。アルコール溶液中のAg化合物及び異種金属化合物の濃度が合計で20wt%未満であると、接合用のAg合金被膜を形成する際に、必要な膜厚を得るために複数回の塗布及び乾燥を繰り返す必要が生じる。また、アルコール溶液中のAg化合物及び異種金属化合物の濃度が合計で70wt%を超えると、アルコール溶液の流動性がなくなり製造が困難になる。より好ましいアルコール溶液中のAg化合物及び異種金属化合物の濃度は合計で30~50wt%である。
また、係る態様のAg合金ナノ粒子含有組成液の製造方法においては、前記異種金属化合物の濃度は前記Ag化合物に対して0.1~30wt%であることが好ましい。前記異種金属化合物の濃度が前記Ag化合物に対して0.1wt%未満では、接合用のAg合金被膜を形成しても異種金属添加の効果が現れず、Ag被膜そのものの性質に近づくので、特に耐マイグレーション性に劣るようになる。さらに、前記異種金属化合物の濃度が前記Ag化合物に対して30wt%を超えると、接合用として用いた場合のAg合金被膜の耐マイグレーション性は良好となるが、鉛はんだ層よりも耐熱性が劣るようになると共に電気抵抗率が大きくなってしまうため、好ましくない。
係る態様のAg合金ナノ粒子含有組成液の製造方法においては、アルコール系溶媒として、メタノール、エタノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、プロピレングリコールからなる群から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
アルコール溶媒としてのメタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール及び1-メトキシ-2-プロパノールは、ソノケミカル法によるAg化合物を還元するための還元剤としても有効に作用し、高分子分散剤の溶解性にも優れている。加えて、これらのアルコール溶媒は、常温下での蒸発速度が速く、しかも、Ag合金被膜を形成する基材としてのプラスチック層、セラミックス層、金属層ないし半導体層に対して作用がマイルドであり、基材のクレージングなどの浸食作用がないので、短時間に、平坦性に優れ、均質なAg合金被膜を形成することができるようになる。
また、係る態様のAg合金ナノ粒子含有組成液の製造方法においては、前記高分子分散剤の添加量は、前記Ag化合物及び前記異種金属化合物の合計重量に対して、不揮発分の重量で0.5~10wt%であることが好ましい。
係る態様のAg合金ナノ粒子含有組成液の製造方法においては、高分子分散剤のAg化合物及び異種金属化合物の合計重量に対する添加量を0.5wt%未満とした場合及び10wt%を越えるようにした場合には、得られるAg合金被膜の表面状態の不均質性が目立つようになる。
また、本発明の別の態様によれば、上記何れかに記載のAg合金ナノ粒子含有組成液の製造方法によって製造されたAg合金ナノ粒子含有組成液を基材の表面に塗布する工程と、前記Ag合金ナノ粒子含有組成液が塗布された基材を常温下で乾燥する工程と、を備えることを特徴とする、基材の表面に銀合金被膜を形成する方法が提供される。
係る態様のAg合金被膜の形成方法によれば、特に加熱処理が不要であるため、常温下かつ短時間でAg合金被膜を形成でき、しかも、得られるAg合金被膜は、耐イオンマイグレーション性に優れているだけでなく、鉛はんだ層よりも耐熱性が良好で電気抵抗率が低いものを得ることができる。そのため、本発明により得られるAg合金被膜は、特にパワー半導体の接合材として適用した場合には、従来例のような高価な大型チャンバーや高温加熱装置等を必要とせず、工程の時間短縮、低温化が実現され、かつ、高耐熱性が発現できるので、高電力容量下での高温動作可能な次世代パワー半導体電力モジュールへの適用が可能となる。
なお、係る態様のAg合金被膜の形成方法においては、前記銀合金ナノ粒子含有組成液中の前記異種金属化合物の含有割合が、前記銀化合物及び前記異種金属化合物の合計重量に対して金属成分比で0.1~20重量%であり、前記銀合金ナノ粒子含有組成液中の前記高分子分散剤の含有量が、前記銀化合物及び前記異種金属化合物の合計重量に対して、不揮発分の重量で0.5~3.0重量%であるものを用いて製造されたものとすると、より安定的に表面抵抗が小さいAg合金被膜を形成することができるようになる。
本発明の更なる別の態様によれば、本発明の銀合金ナノ粒子含有組成液の製造方法によって製造された銀合金ナノ粒子含有組成液を非酸化物系セラミックス基板の表面に所定の配線パターンに塗布する工程と、前記銀合金ナノ粒子含有組成液を塗布された非酸化物系セラミックス基板を常温下で乾燥して前記非酸化物系セラミックス基板の表面に銀合金被膜からなる配線パターンを形成する工程と、前記配線パターの所定位置に、前記銀合金被膜の表面側からレーザー光を照射し、前記銀合金被膜に開口を形成すると同時に、前記非酸化物系セラミックス基板に内壁面に前記銀合金被膜からなる導体化層が形成されたスルーホールを形成する工程と、を有することを特徴とする、回路基板の製造方法が提供される。
かかる態様の回路基板の製造方法によれば、単に前述した本発明の銀合金ナノ粒子含有組成液を用いて非酸化物系セラミックス基板の表面に形成された銀合金からなる配線パターンの所定位置にレーザー光を照射するのみで、銀合金被膜に開口を形成すると同時に酸化物系セラミックス基板に内壁面に前記銀合金からなる低抵抗の導体化層が形成されたスルーホールを形成することができるようになるため、従来技術のように一旦非酸化物系セラミックス基板にスルーホールを形成してからメッキ等によりスルーホールの内壁面に低抵抗の導電性被膜を形成する必要がなくなる。そのため、本発明の配線基板を製造するまでに、従来例のような高価な大型チャンバーや高温加熱装置等を必要とせず、工程の時間短縮、低温化が実現され、かつ、高耐熱性が発現でき、高電力容量下での高温動作可能な次世代パワー半導体電力モジュールへの適用が可能な回路基板を得ることができるようになる。
かかる態様の回路基板の製造方法においては、前記銀合金ナノ粒子含有組成液中の前記異種金属化合物の含有割合が、前記銀化合物及び前記異種金属化合物の合計重量に対して金属成分比で0.1~20重量%であり、前記銀合金ナノ粒子含有組成液中の前記高分子分散剤の含有量が、前記銀化合物及び前記異種金属化合物の合計重量に対して、不揮発分の重量で0.5~3.0重量%であるものを用いることが好ましい。これにより、安定的に表面抵抗が小さいAg合金被膜からなる配線パターンを得ることができるだけでなく、同時にスルーホールの内壁面に低抵抗のAg合金からなる導電性被膜を形成することができるようになる。
実施例1~5のAg合金ナノ粒子の粒径分布を示す図である。 実施例6~10のAg合金ナノ粒子の粒径分布を示す図である。 実施例11~16のAg合金ナノ粒子の粒径分布を示す図である。 比較例1及び2のAgナノ粒子の粒径分布を示す図である。 実施例8のAg合金ナノ粒子のSEM-EDX法による測定結果を示す図である。 実施例10のSn-Ag合金ナノ粒子のSEM-EDX法による測定結果を示す図である。 実施例15のSn-Ag合金ナノ粒子のSEM-EDX法による測定結果を示す図である。 実施例11のNi-Ag合金ナノ粒子のSEM-EDX法による測定結果を示す図である。 図9Aは比較例1の、図8Bは実施例5の、図8Cは実施例15の、図8Dは実施例11の、それぞれ示差熱分析法による測定結果を示す図である。 図10Aはマイグレーション試験時の回路図であり、図10Bは実施例10及び比較例2のマイグレーション試験結果を示すグラフである。 耐荷重試験結果を示す図である。 基材接合試験の手順を説明する図である。 図13Aは実施例試料1のスルーホール部分を通るように切断した際のスルーホール部分の拡大写真であり、図13Bは図13Aの一部の更なる拡大写真である。 図14Aは比較実験例試料1のレーザー光照射処理後の拡大写真であり、図14Bは同じく比較実験例試料2の拡大写真である。 図15Aは図13Aに示した実施例試料1のスルーホール部分を表面側から見た拡大写真であり、図15B~図15Dはそれぞれ図15Aのα~γ部分のSEM-EDX法による測定結果を示す図である。 図16Aは、スルーホール形成後の実施例試料2をスルーホールの上部から拡大写真であり、図16Bは図16Aの一部の更なる拡大写真である。
以下、本発明に係るAg合金ナノ粒子含有組成液の製造方法及びAg合金被膜の形成方法について、各種実施例を用いて詳細に説明する。ただし、以下に示す各種実施例は、本発明の技術思想を具体化するための例を示すものであって、本発明をこれらの実施例に示したものに特定することを意図するものではない。本発明は特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものにも等しく適用し得るものである。
[実施例1]
200mLガラスビーカーを用い、高分子分散剤としてDisperbyk2015(不揮発分40%、酸価10、BYK社製)0.14gを1-メトキシ-2-プロパノール(別称:プロピレングリコールモノメチルエーテル、以下「PGM」と略称することがある)100g中に溶解し、酸化銀(AgO)粉末9.52gとフッ化スズ(SnF)粉末0.07gを分散させ、酸化銀及びフッ化スズの分散溶液を調製した。この分散溶液中の金属成分の含有割合は、重量比でAg99.5wt%、Sn0.5wt%となる。また、高分子分散剤の含有割合は、酸化銀とフッ化スズに対して重量比で0.6wt%となる。なお、Disperbyk2015は、スチレン-無水マレイン酸樹脂構造を有し、この無水マレイン酸の一部が末端水酸基のポリアルキレングリコールによって変性されたものからなる。
次いで、この酸化銀及びフッ化スズの分散液に超音波装置H3650((有)カワジリマシナリー社製)を使用して、15~25℃の室温下で1時間、20KHzで照射した。次に1μmのフィルターでろ過して実施例1の褐色のSn-Ag合金ナノ粒子含有組成液を得た。
[実施例2]
高分子分散剤としてのDisperbyk2015の0.35gをPGM100g中に溶解し、酸化銀(AgO)粉末8.70g、フッ化スズ(SnF)粉末0.06g及びフッ化ニッケル(NiF)0.02gを分散させ、酸化銀、フッ化スズ及びフッ化ニッケルの分散溶液を調製した。この分散溶液中の金属成分の含有割合は、重量比でAg99.4wt%、Sn0.45wt%、Ni0.15wt%となる。また、得られた分散溶液中の高分子分散剤の含有割合は、酸化銀及びフッ化スズに対して重量比で1.6wt%となる。それ以外は実施例1の場合と同様にして実施例2の褐色のSn-Ni-AgAg合金ナノ粒子含有組成液を得た。
[実施例3]
高分子分散剤としてのDisperbyk2015の0.33gをPGM100g中に溶解し、酸化銀(AgO)粉末8.34g、フッ化スズ(SnF)粉末0.05g及びフッ化ニッケル(NiF)粉末0.02gを分散させた。この分散溶液中の金属成分の含有割合は、重量比でAg99.4wt%、Sn0.4wt%、Ni0.2wt%となる。また、得られた分散溶液中の高分子分散剤の含有割合は、酸化銀、フッ化スズ及びフッ化ニッケルに対して重量比で1.6wt%となる。それ以外は実施例1の場合と同様にして実施例3の褐色のSn-Ni-Ag合金ナノ粒子含有組成液を得た。
[実施例4]
高分子分散剤としてのDisperbyk2015の1.00gをPGM100g中に溶解し、酸化銀(AgO)粉末10.00g、酸化スズ(SnO)粉末1.50g及びフッ化スズ(SnF)粉末2.00gを分散させた。この分散溶液中の金属成分の含有割合は、重量比でAg79.5wt%、Sn20.5wt%となる。また、得られた分散溶液中の高分子分散剤の含有割合は、酸化銀、酸化スズ及びフッ化スズに対して重量比で3.0wt%となる。それ以外は実施例1の場合と同様にして実施例4の褐色のSn-Ag合金ナノ粒子含有組成液を得た。
[実施例5]
高分子分散剤としてのDisperbyk2015の0.67gをPGM100g中に溶解し、酸化銀(AgO)粉末6.67g、酸化スズ(SnO)粉末0.23g及びフッ化スズ(SnF)粉末0.10gを分散させた。この分散溶液中の金属成分の含有割合は、重量比でAg96.2wt%、Sn3.8wt%となる。また、得られた分散溶液中の高分子分散剤の含有割合は、酸化銀、酸化スズ及びフッ化スズに対して重量比で3.8wt%となる。それ以外は実施例1の場合と同様にして実施例5の褐色のSn-Ag合金ナノ粒子含有組成液を得た。
[実施例6]
高分子分散剤としてのDisperbyk2015の0.47gをPGM100g中に溶解し、酸化銀(AgO)粉末6.25g、フッ化スズ(SnF)粉末0.03g及びフッ化ニッケル(NiF)粉末0.02gを分散させた。この分散溶液中の金属成分の含有割合は、重量比でAg99.5wt%、Sn0.33wt%,Ni0.16wt%となる。また、得られた分散溶液中の高分子分散剤の含有割合は、酸化銀、フッ化スズ及びフッ化ニッケルに対して重量比で3.0wt%となる。それ以外は実施例1の場合と同様にして実施例6の褐色のSn-Ni-Ag合金ナノ粒子含有組成液を得た。
[実施例7]
高分子分散剤としてのDisperbyk2015の0.50gをPGM100g中に溶解し、酸化銀(AgO)粉末6.67g及びフッ化スズ(SnF)粉末0.05gを分散させた。この分散溶液中の金属成分の含有割合は、重量比でAg99.5wt%、Sn0.5wt%となる。また、得られた分散溶液中の高分子分散剤の含有割合は、酸化銀及びフッ化スズに対して重量比で3.0wt%となる。それ以外は実施例1の場合と同様にして実施例7の褐色のSn-Ag合金ナノ粒子含有組成液を得た。
[実施例8]
高分子分散剤としてのDisperbyk2015の2.60gをPGM100g中に溶解し、酸化銀(AgO)粉末52.10g及び酸化スズ(SnO)粉末0.50gを分散させた。この分散溶液中の金属成分の含有割合は、重量比でAg99.2wt%、Sn0.8wt%となる。また、得られた分散溶液中の高分子分散剤の含有割合は、酸化銀及び酸化スズに対して重量比で2.0wt%となる。それ以外は実施例1の場合と同様にして実施例8の褐色のSn-Ag合金ナノ粒子含有組成液を得た。
[実施例9]
高分子分散剤としてのDisperbyk2015の2.60gをPGM100g中に溶解し、酸化銀(AgO)粉末52.10g及び酸化スズ(SnO)粉末2.60gを分散させた。この分散溶液中の金属成分の含有割合は、重量比でAg96.0wt%、Sn4.0wt%となる。また、得られた分散溶液中の高分子分散剤の含有割合は、酸化銀及び酸化スズに対して重量比で1.9wt%となる。それ以外は実施例1の場合と同様にして実施例9の褐色のSn-Ag合金ナノ粒子含有組成液を得た。
[実施例10]
高分子分散剤としてのDisperbyk2015の2.60gをPGM100g中に溶解し、酸化銀(AgO)粉末47.40g及び酸化スズ(SnO)粉末4.70gを分散させた。この分散溶液中の金属成分の含有割合は、重量比でAg92.2wt%、Sn7.8wt%となる。また、得られた分散溶液中の高分子分散剤の含有割合は、酸化銀及び酸化スズに対して重量比で2.0wt%となる。それ以外は実施例1の場合と同様にして実施例10の褐色のSn-Ag合金ナノ粒子含有組成液を得た。
[実施例11]
高分子分散剤としてのDisperbyk2015の1.00gをPGM100g中に溶解し、酸化銀(AgO)粉末6.68g及び酢酸ニッケル(Ni(CHCOO))粉末0.07gを分散させた。この分散溶液中の金属成分の含有割合は、重量比でAg99.7wt%、Ni0.3wt%となる。また、得られた分散溶液中の高分子分散剤の含有割合は、酸化銀及び酢酸ニッケルに対して重量比で5.9wt%となる。それ以外は実施例1の場合と同様にして実施例11の褐色のNi-Ag合金ナノ粒子含有組成液を得た。
[実施例12]
高分子分散剤としてのDisperbyk2015の2.60gをPGM100g中に溶解し、酸化銀(AgO)粉末52.20g及び酢酸ニッケル(Ni(CHCOO))粉末3.30を分散させた。この分散溶液中の金属成分の含有割合は、重量比でAg97.8wt%、Ni2.2wt%となる。また、得られた分散溶液中の高分子分散剤の含有割合は、酸化銀及び酢酸ニッケルに対して重量比で1.9wt%となる。それ以外は実施例1の場合と同様にして実施例12の褐色のNi-Ag合金ナノ粒子含有組成液を得た。
[実施例13]
高分子分散剤としてのDisperbyk2015の2.70gをPGM100g中に溶解し、酸化銀(AgO)粉末21.00g及び酸化インジウム(In)粉末1.20gを分散させた。この分散溶液中の金属成分の含有割合は、重量比でAg95.2wt%、In4.8wt%となる。また、得られた分散溶液中の高分子分散剤の含有割合は、酸化銀及び酸化インジウムに対して重量比で4.9wt%となる。それ以外は実施例1の場合と同様にして実施例13のIn-Ag合金ナノ粒子含有組成液を得た。
[実施例14]
高分子分散剤としてのDisperbyk2015の4.00gをPGM80.0g中に溶解し、酸化銀(AgO)粉末60.00g及び酸化インジウム(In)粉末4.00gを分散させた。この分散溶液中の金属成分の含有割合は、重量比でAg94.4wt%、In5.6wt%となる。また、得られた分散溶液中の高分子分散剤の含有割合は、酸化銀及び酸化インジウムに対して重量比で2.5wt%となる。それ以外は実施例1の場合と同様にして実施例14のIn-Ag合金ナノ粒子含有組成液を得た。
[実施例15]
高分子分散剤としてのDisperbyk2015の2.60gをPGM100g中に溶解し、酸化銀(AgO)粉末41.70g及び酸化スズ(SnO)粉末10.40gを分散させた。この分散溶液中の金属成分の含有割合は、重量比でAg82.5wt%、Sn17.5wt%となる。また、得られた分散溶液中の高分子分散剤の含有割合は、酸化銀及び酸化スズに対して重量比で2.0wt%となる。それ以外は実施例1の場合と同様にして実施例15の褐色のSn-Ag合金合金ナノ粒子含有組成液を得た。
[実施例16]
高分子分散剤としてのDisperbyk2015の1.7gをPGM100g中に溶解し、酸化銀(AgO)粉末24.30g及び酸化スズ(SnO)粉末10.40gを分散させた。この分散溶液中の金属成分の含有割合は、重量比でAg73.4wt%、Sn26.6wt%となる。また、得られた分散溶液中の高分子分散剤の含有割合は、酸化銀及び酸化スズに対して重量比で2.0wt%となる。それ以外は実施例1の場合と同様にして実施例16の褐色のSn-Ag合金ナノ粒子含有組成液を得た。
[比較例1]
高分子分散剤としてのDisperbyk2015の10.00gをPGM100g中に溶解し、酸化銀(AgO)粉末100.0gを分散させた。得られた分散溶液中の高分子分散剤の含有割合は、酸化銀に対して重量比で4.0wt%となる。それ以外は実施例1の場合と同様にして比較例1の褐色のAgナノ粒子含有組成液を得た。
[比較例2]
高分子分散剤としてのDisperbyk2015の5.00gをPGM100g中に溶解し、酸化銀(AgO)粉末100.0gを分散させた。得られた分散溶液中の高分子分散剤の含有割合は、酸化銀に対して重量比で2.0%wtとなる。それ以外は実施例1の場合と同様にして比較例2の褐色のAgナノ粒子含有組成液を得た。
このようにして調製した実施例1~16、比較例1及び2で使用した各種成分の量、金属成分組成ないし高分子分散剤含有量を纏めて下記表1に示した。
[粒度分析]
上述のようにして調製した実施例1~16のAg合金ナノ粒子含有組成液ないし比較例1及び2のAgナノ粒子含有組成液の動的光散乱法(DLS法)による粒径分布の測定結果を図1~図4に示し、キュムラント法により解析した平均粒子径の結果を下記表2に示した。なお、図1は実施例1~5のAg合金ナノ粒子の、図2は実施例6~10のAg合金ナノ粒子の、図3は実施例11~16のAg合金ナノ粒子の、図4は比較例1及び2のAgナノ粒子の、それぞれ粒径分布を示す図である。また、動的光散乱法による粒径分析測定装置としては大塚電子(株)社製nanoSAQLAを使用した。
Figure 0007332226000004
図1~図4及び表2に示した結果から、実施例1~16のAg合金ナノ粒子含有組成液ないし比較例1及び2のAgナノ粒子含有組成液中に含まれている粒子は何れもナノメータサイズの範囲内に治まっていることが確認できた。
[SEM-EDX試験]
次に、実施例1~16のAg合金ナノ粒子含有組成液中の粒子が、Agナノ粒子と他の金属のナノ粒子との混合物ではなく、Agと他の金属との合金のナノ粒子であることの確認するため、SEM-EDX法(走査型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分光法)を適用して測定を行った。測定用試料としては、溶融石英基板上に一滴の試料を滴下して乾燥させたものを用いた。SEM装置(走査型電子顕微鏡)としては株式会社日立ハイテクノロジーズ製S-3500Hを使用し、EDX装置(エネルギー分散型X線分光装置)としては株式会社堀場製作所製のEMAX7490-Hを使用した。
実施例1~16のSEM-EDX法による測定結果の内、Sn-Ag系成分からなる実施例8、実施例10及び実施例15のそれぞれの測定結果を図5~図7に、Ni-Ag系成分からなる実施例11の結果を図8に示した。なお、図5は実施例8の、図6は実施例10の、図7は実施例15の、図8は実施例11の、それぞれSEM-EDX法による測定結果を示す図である。そして、図5~図7において、それぞれ(a)は倍率5000倍の電子顕微鏡写真であり、(b)は蛍光X線スペクトルであり、(c)は(a)の枠部分のAgLa1線による画像であり、(d)は同じくSnLa1による画像であり、(e)は同じくOKa1線による画像であり、(f)は同じくCKa1_2線による画像である。また、図8において、(a)は倍率2000倍の電子顕微鏡写真であり、(b)は蛍光X線スペクトルであり、(c)はAgLa1線による画像であり、(d)は同じくNiKa1線による画像であり、(e)は同じくOKa1線による画像であり、(f)は同じくCKa1_2線による画像である。
まず、図5~図7は以下のことを示すものである。すなわち、それぞれの(a)図は表面状態を示すものであり、それぞれの(b)図は存在する元素の種類と量(ピーク高さ)を示すものであり、それぞれの(c)~(f)図のドットはそれぞれ対応する元素の存在位置と量(明るさ)を示しており、(c)図はAg元素を、(d)図はSnないしNi元素を、(e)図は酸素(O)元素を、(f)図は炭素(C)をそれぞれ示している。
図5~図7のそれぞれの(b)図を対比すると、Snの含有割合に比例してSnに対応する部分のピーク高さは、図7(b)(実施例15)>図6(b)(実施例10)>図5(b)(実施例8)と順に低下していることがわかる。同様にそれぞれの(d)図を対比すると、Snの含有割合に比例してSnに対応する部分の明るさも、図7(b)(実施例15)>図6(b)(実施例10)>図5(b)(実施例8)と順に低下していることがわかる。なお、一応含有していることが示されているO及びCは、図5~図7のそれぞれ(b)図のピーク高さ、(e)図及び(f)図のドットの数及び明るさからして、実質的に不純物と同レベルと見なすことができる。
さらに、図5~図7のそれぞれの(c)図と(d)図とを重ね合わせてみると、少なくともSnのドット部分は実質的にAgのドット部分と重複していることが認められた。このことは、AgとSnとがそれぞれ個別に分離した状態で、すなわち、Ag粒子とSn粒子とがそれぞれ個別に混合物の状態で存在していることを示しているものではなく、AgとSnとが合金化した状態で存在していることを示しているものである。このような傾向は、図8に示した、Ni-Ag系成分からなる実施例11の結果からしても確認することができる。したがって、実施例1~16におけるナノレベルサイズの粒子(前記[粒度分析]の結果を参照)は、全て合金化したAg合金ナノ粒子であると推定される。
[熱重量分析試験]
次に、実施例1~16のAg合金ナノ粒子含有組成液中の粒子が、Agナノ粒子と他の金属のナノ粒子との混合物ではなく、Agと他の金属との合金のナノ粒子であることの確認を、ナノメータサイズのAg粒子の場合を基準として、熱重量分析装置を用いた示差熱析法(DTA法)により行った。熱重量分析装置としては、(株)日立ハイテクサイエンス製のTG/DTA7300を用いた。ナノメータサイズのAg粒子のみの比較例1、ナノメータサイズのAg(96.2wt%)/Sn(3.8wt%)合金粒子の実施例5、ナノメータサイズのAg(82.5wt%)/Sn(17.5wt%)合金粒子の実施例15、及び、ナノメータサイズのAg(99.7wt%)/Ni(0.3wt%)合金粒子の実施例11のそれぞれの示差熱分析結果を図9に示した。なお、示差熱分析における昇温速度は10℃/分又は20℃/分で行った。また、図9Aは実施例11の、図9Bは実施例5の、図9Cは実施例15の、図9Dは実施例11の、それぞれ示差熱分析法による測定結果を示す図である。
図9に示した結果から以下のことが分かる。すなわち、図9Aに示したナノメータサイズのAg粒子のみのDTAの測定結果によれば、60℃近傍に下に凸の曲線部分すなわち吸熱反応が生起していることが示されているが、このことはナノメータサイズのAg粒子がこの温度領域で溶融して固体のAg金属を形成し始め、更なる温度の上昇にともなって焼結していくことを示しているものである。それに対し、図9B及び図9Cに示したSn-Ag系のDTAの測定結果では、いずれも100℃以下では吸熱反応が生じていない。このことは図9B及び図9Cに示した実施例5及び実施例15の試料は、ナノメータサイズのSn及びナノメータサイズのAgがそれぞれ単独で存在しているものではなく、合金化したナノメータサイズのSn-Ag合金として存在しているため、温度の上昇とともにナノメータサイズのSn-Ag合金が特に溶融することなく焼結してSn-Ag合金を形成していくことを示すものである。この点は、図9Dに示した実施例11のNi-Ag系の試料についても同様である。従って、実施例1~16の試料は全てナノメータサイズのAg合金となっていることが推定される。
[表面抵抗の測定]
上述のようにして調製された実施例1~16、比較例1及び2のそれぞれの試料をガラス板にバーコーターNo.3にて塗布し、100℃30分にて乾燥させて形成したAg合金被膜(実施例1~16)ないしAg被膜(比較例1及び2)を形成し、それぞれについて表面抵抗を測定した。表面抵抗の測定は、日東精工アナリテック社製ロレスタ-AX MCP-T370を使用し、4端子4深針法、定電流印加方式で行った。測定結果を下記表2にまとめて示した。
Figure 0007332226000005
なお、以下においては、Ag化合物やSn、Ni、In等の異種金属化合物の含有割合は、いずれも超音波照射前の各種成分の分散溶液中の銀化合物及び異種金属の合計重量に対する金属成分比を示すものであるが、単に「含有割合」と表現することがある。さらに、高分子分散剤の含有量も超音波照射前の各種成分の分散溶液中の銀化合物及び異種金属の合計重量に対する不揮発分の重量の割合を示すものであるが、単に「含有量」と表現することがある。
表3に示した結果から以下のことが分かる。すなわち、比較例1及び2の結果から、Agナノ粒子含有組成液を用いてAg被膜を形成した場合では、高分子分散剤の含有量の差異により表面抵抗値が2.5Ω~1.52×10Ωと大きく変化しているが、高分子分散剤の含有量が多くなると表面抵抗値が大きくなり、少なくなると表面抵抗値が小さくなる傾向がある。
ここで、実施例1、4、5、7~10,15及び16のSn-Ag合金ナノ粒子含有組成液から形成されたSn-Ag合金被膜について検討する。実施例1及び7は、Sn化合物の含有割合が0.5wt%と同じで、高分子分散剤の含有量が0.6wt%(実施例1)及び2.9wt%(実施例7)と異なっている分散溶液を用いて調製されたSn-Ag合金ナノ粒子分散液から形成されたSn-Ag合金被膜であるが、共に表面抵抗値はAg被膜からなる比較例1及び2のものよりも低い結果が得られている。この場合も高分子分散剤の含有量が少ない実施例1のものが実施例7のものよりも表面抵抗値が小さくなっている。
また、実施例4及び7は、高分子分散剤の含有量が同じ3.0wt%で、Sn化合物の含有割合が20.5wt%(実施例4)及び0.5wt%(実施例7)と異なっている分散溶液を用いて調製されたSn-Ag合金ナノ粒子分散液から形成されたSn-Ag合金被膜であるが、Sn化合物の含有割合が少ない実施例7のものが実施例4のものよりも表面抵抗値が小さくなっている。
さらに、実施例8~10、15及び16は、高分子分散剤の含有量が約2.0質量%であり、Sn化合物の含有割合が0.8wt%(実施例8)、4.0wt%(実施例9)、7.8wt%(実施例10)、17.5wt%(実施例15)及び26.6wt%(実施例16)と異なっている分散溶液を用いて調製されたSn-Ag合金ナノ粒子分散液から形成されたSn-Ag合金被膜であるが、Sn化合物の含有割合が最も少ない実施例8のものが最も表面抵抗値が小さくなっており、Sn化合物の含有割合が多くなるに従って表面抵抗値が大きくなり、Sn化合物の含有割合が17.5wt%以上(実施例15及び16)の分散溶液を用いて調製されたSn-Ag合金ナノ粒子分散液から形成されたSn-Ag合金被膜では表面抵抗値がOL(測定範囲外)となってしまっている。Agは、Snよりも遙かに低い電気抵抗率を有する金属であるから、形成されたSn-Ag合金被膜中のAgの含有割合が低下してそれに伴ってSnの含有割合が増加したことが、実施例8~10、15及び16のような結果が得られたものと推定される。
ただ、Sn化合物の含有割合が20.5wt%の実施例4のものでは同じく17.5wt%の実施例15のものよりも表面抵抗値が小さくなっていることから、異種金属としてのSn化合物の含有割合の上限は、高分子分散剤の含有量によっても変化するために臨界的限度は必ずしも明確ではないが、Snの含有割合が26.6wt%の実施例16の結果との対比からして、25wt%以下であれば一応表面抵抗値が小さい導電性部材として使用し得るSn-Ag合金被膜が得られると推定される。しかしながら、異種金属としてのSn化合物の含有量が20wt%以下であれば、高分子分散剤の含有量にかかわらず安定的に表面抵抗値が小さいSn-Ag合金被膜が得られると予測されるため、より好ましいSn化合物の含有量の上限値は金属成分比で20wt%であると認められる。なお、好ましい異種金属としてのSn化合物の含有割合の下限値は、一般的にSn-Ag合金においてマイグレーション現象が見られなくなる最少のSn濃度として知られている0.1wt%であると認められる。
また、高分子分散剤の含有量が3.8wt%である実施例5のものでは表面抵抗値が9.97×10Ωと大きくなっており、同じく4.0%の比較例1ではOLとなっているが、同じく3.0%以下の実施例1、4、7~10のものでは実施例5のものよりも表面抵抗値が小さくなっている。従って、表面抵抗値が小さい導電性部材として使用し得るSn-Ag合金が得られる高分子分散剤含有量の上限値及び下限値は、その臨界的限度は必ずしも明確ではないが、一応上限値は3.0wt%であると推定され、また、下限値は同じく0.6wt%である実施例1のものでは良好な表面抵抗値が得られていることからして、0.5wt%であると推定される。
また、実施例1及び8のSn-Ag合金被膜の表面抵抗値を対比すると、実施例1はSn化合物の含有割合が0.5wt%であるのに対し、実施例8では0.8wt%とわずかであるが多く含有しているにもかかわらず、表面抵抗値は実施例8の方が2.6×10-2Ωと全ての実施例の中でも最も低い値が得られている。このことは、Sn-Ag合金ナノ粒子分散液の調製に際しては異種金属化合物としてSnFよりもSnOを用いた方が良いことを示している。
また、実施例2、3及び6は、Sn-Ni-Ag合金ナノ粒子分散液を用いてSn-Ni-Ag合金被膜を形成したものであるが、高分子分散剤の含有量が1.6wt%(実施例2及び3)ないし3.0wt%(実施例6)の場合も、比較例1及び2のものとは高分子分散剤の含有量が異なっているが、Sn及びNiの含有割合が少ないこともあって比較例1及び2のものと実質的に同等の表面抵抗値が得られており、これらの場合も表面抵抗値が小さい導電性部材として使用し得るSn-Ni-Ag合金が得られている。
さらに、実施例11及び12は、それぞれNi-Ag合金ナノ粒子分散液を用いてNi-Ag合金被膜を形成した例であるが、実施例11はNi化合物の含有割合が0.3wt%と少ないにもかかわらず、高分子分散剤の含有量が5.9wt%と多いためか表面抵抗値はOLとなってしまっている。それに対し、実施例12はNi化合物の含有割合が2.2wt%と実施例11のものよりも多いにもかかわらず、高分子分散剤の含有量が1.9wt%と少ないためか、比較例1及び2のものよりも表面抵抗値が小さく、表面抵抗値が小さい導電性部材として使用し得るNi-Ag合金が得られている。
さらに、実施例13及び14は、それぞれIn-Ag合金ナノ粒子分散液を用いてIn-Ag合金被膜を形成した例であるが、実施例13はIn化合物の含有割合が4.8wt%と少ないにもかかわらず、高分子分散剤の含有量が4.9wt%と多いためか表面抵抗値はOLとなってしまっている。それに対し、実施例14はIn化合物の含有割合が2.2wt%と実施例13のものよりも多いにもかかわらず、高分子分散剤の含有量が2.5wt%と少ないためか、比較例1及び2のものと同程度の表面抵抗値となっており、表面抵抗値が小さい導電性部材として使用し得るIn-Ag合金が得られている。
なお、実施例2、3及び6のSn-Ni-Ag合金ナノ粒子分散液を用いて形成したSn-Ni-Ag合金被膜の場合も、実施例11のNi-Ag合金ナノ粒子分散液を用いて形成したNi-Ag合金被膜の場合も、さらには実施例14のIn-Ag合金ナノ粒子分散液を用いて形成したIn-Ag合金被膜の場合も、Sn-Ag合金ナノ粒子分散液を用いて形成したSn-Ag合金被膜について確認された好ましい異種金属の含有割合及び好ましい高分子分散剤の含有量の数値範囲に収まっている。
[マイグレーション試験]
上述のようにして調製された実施例1~10及び13~17のAg合金ナノ粒子含有組成液と、比較例1及び2のAgナノ粒子含有組成液を用い、IPC-TM650-2.6.13に準拠し、透明ガラス基板上に電極間隔が約0.2mmとなるようにした一対の電極を形成し、ウォータードロップテストによりマイグレーション試験を実施した。測定回路は、図10Aに示したように、5Vの直流定電圧原から過電流防止用抵抗R=100Ωを直列に接続した回路からなる。マイグレーション試験は、一対の電極間にイオン交換水約1μLを滴下し、流れる電流値の時間的変化を測定することによって行った。
このマイグレーション試験では、実施例1~10及び13~17のAg合金ナノ粒子含有組成液を用いた場合は25分程度の試験時間内では実質的にマイグレーション現象が認められず、また、比較例1及び2のAgナノ粒子分散を用いた場合は試験後1分程度でもマイグレーション現象の発現が確認できた。これらの測定結果の内、Sn-Ag合金ナノ粒子含有組成液を用いた実施例10及びAgナノ粒子含有組成液を用いた比較例2の場合の測定結果を図10Bに示した。
[硬度測定]
上述のようにして調製された実施例5のSn-Ag合金ナノ粒子含有組成液及び比較例2のAgナノ粒子組成液を用い、ガラスエポキシ基板上にバーコーターNo.3にて塗布し、100℃30分にて乾燥させた後、さらに120℃で30分間ベーキングし、硬度測定用のSn-Ag合金被膜試料及びAg被膜試料を作成した。それぞれの硬度測定用試料のサイズは、長さ50mm×幅5mmであり、Sn-Ag合金被膜試料の抵抗値は12.9Ωであり、Ag被膜試料の抵抗値は0.8Ωであった。
硬度測定は、超微小押込み硬さ試験機ENT-1100a(株式会社エリオニクス製)を用い、ISO14577に従ってナノインデンテーション法により行った。結果をまとめて下記表4に示した。
Figure 0007332226000006
表4に示した結果から、実施例5のSn-Ag合金ナノ粒子含有組成液を用いて製造したSn-Ag合金被膜は、比較例2のAgナノ粒子含有組成液を用いて調製したAg被膜に比べてビッカース硬さは約1.5倍と大きくなっており、また、ヤング率のばらつきは1/2以下となっており、硬さは向上しながらも剛性のばらつきが小さくなっていることが分かった。この性質は、半導体素子の接合に際しては、実施例5のSn-Ag合金ナノ粒子含有組成液を用いて製造したSn-Ag合金被膜を用いた方が、比較例2のAgナノ粒子含有組成液を用いて調製したAg被膜を用いた場合よりも好ましい結果が得られることを示唆するものである。
[耐荷重試験]
ま上述のようにして調製された実施例5のSn-Ag合金ナノ粒子含有組成液及び比較例2のAgナノ粒子含有組成液を用い、溶融石英基板上にバーコーターNo.3にて塗布し、100℃30分にて乾燥させたそれぞれの試料の表面に別の溶融石英基板を当接し、押圧しながら120℃で30分間ベーキングし、2種類の接合強度(せん断強度)試験用試料を作成した。次いで、材料強度試験機 オートグラフ AGX-100kNV(株式会社島津製作所製)を用い、それぞれの溶融石英基板に対してずれ方向の力を印加し、試験力とずれの量(変位量)との関係を調べた。結果を図11に示した。
図11に示した結果から、実施例5のSn-Ag合金ナノ粒子含有組成液を用いて形成したSn-Ag合金被膜の方が、比較例2のAgナノ粒子含有組成液を用いて形成したAg被膜よりも伸びが大きく、剪断強度が大きいことが分かった。この性質も半導体素子の接合に際しては、実施例5のSn-Ag合金ナノ粒子含有組成液を用いて製造したSn-Ag合金被膜を用いた方が、比較例2のAgナノ粒子含有組成液を用いて調製したAg被膜を用いた場合よりも好ましい結果が得られることを示唆するものである。
[基材接合試験]
実施例5のSn-Ag合金ナノ粒子含有組成液を用いて形成したSn-Ag合金被膜及び比較例2のAgナノ粒子含有組成液を用いて形成したAg被膜が各種基材に対してどの程度の接合強度を有しているかを確認するため、図12に示した手順により基材接合試験を行った、基材11としては、サイズ5mm×5mm、厚さ0.5mmのアルミニウム(Al)、銅(Cu)、シリコン(Si)を用いた。そして、一対の基材11の片面にSn-Ag合金ナノ粒子被膜12、Agナノ粒子被膜13の順で塗布し、一対の積層構造10a及び10bを形成した。基材の組合せとして、Al-Al、Cu-Cu、Al-Cu、Al-Siの4種類を用いた。そして、図12に示したように、両基材11の塗布面を向き合わせた後、押圧しながらはんだごてで数十秒間加熱した後、常温まで冷却して接合試験用試料10を作成した。
その後、接合試験用試料10における基材11の片方を保持し、接合試験用試料10を垂直方向に固定したところ、同種及び異種の何れの基材の組み合わせの場合でも、もう一方の基材11の脱落は発生しなかった。この基材接合試験は、パワー半導体等の発熱状態を模したものであり、本発明のAg合金ナノ粒子含有組成液を用いて形成されたAg合金被膜がパワー半導体素子等の発熱部を有する部材の接合用として良好な性質を備えていることを示唆するものである。
なお,上記のマイグレーション試験、耐荷重試験、基材接合試験等においては、Sn-Ag合金ナノ粒子含有組成液を用いて形成したSn-Ag合金被膜を用いて測定した例のみを示したが、他の実施例に係るAg合金ナノ粒子含有組成液を用いて形成したAg合金被膜の場合においても同様の試験結果が示されている。したがって,本発明に係るAg合金ナノ粒子含有組成液の製造方法により製造されたAg合金ナノ粒子含有組成液によれば、常温下かつ短時間でAg合金被膜を形成でき、しかも、得られるAg合金被膜は、鉛はんだ層よりも耐熱性が良好で耐イオンマイグレーション性に優れており、さらに電気抵抗率が低いものが得られるため、特にパワー半導体の接合材として適用した場合には、従来例のような高価な大型チャンバーや高温加熱装置等を必要とせず、工程の時間短縮、低温化が実現され、かつ、高耐熱性が発現でき、高電力・高容量下での高温動作可能な次世代パワー半導体電力モジュールへの適用が可能となることが確認された。
[スルーホール実験例]
以下では、上記のようにして調製された各種実施例の銀合金ナノ粒子含有組成液を用い、非酸化物系セラミックスの表面に各種銀合金被膜を形成し、それらの銀合金被膜に対してレーザー光を照射してスルーホールの形成状態を確認した。なお、参考例として、上記の比較例2の銀ナノ粒子含有組成液を用いて銀被膜を形成した例、及び、市販の鉛フリーはんだ塗膜を形成した例についても確認した。レーザー光としては、半導体レーザーによる波長808nm+940nmの2波長混合光を用い、レーザー出力400W、パルスレート1000msで行った。
[スルーホール形成実験例試料1、比較実験例試料1及び2]
まず、実施例5のようにして調製されたSn-Ag合金ナノ粒子含有組成液を用い、市販のAlN基板(セラテックジャパン株式会社製、AlN170W(商品名))の表面にバーコーターNo.3にて塗布し、常温にて30分乾燥することにより、Sn-Ag合金被膜が形成されたスルーホール形成実験例試料1を作成した。このAlN基板は、外形サイズ50.8mm×50.8mm、厚さ0.4mm、表面粗さRa≦0.6μm、熱伝導率170W/m・Kのものである。同様に、比較例2のようにして調製されたAgナノ粒子含有組成液を用い、スルーホール形成実験例試料1の場合と同様にして、Ag被膜が形成されたスルーホール形成実験用の比較実験例試料1を作成した。さらに、市販の鉛フリーはんだ(Sn:96.5%、Ag:3.0%、Cu:0.5%)を用い、スルーホール形成実験用の実験例試料1の場合と同様にして、鉛フリーはんだ被膜が形成されたスルーホール形成実験用の比較実験例試料2を作成した。
このようにして作成されたスルーホール形成実験例試料1、比較実験例試料1及び比較実験例試料2について、それぞれの被膜にレーザー光を照射し,スルーホールの形成状況を観察した。その結果、実験例試料1では、Sn-Ag合金被膜に開口が形成されると共に、AlN基板にスルーホールが形成され、しかもスルーホールの内壁面にSn-Ag合金残留物と思われる金属被膜が形成されていることが確認できた。このスルーホールが形成された実験例試料1について、スルーホール部分を通るように垂直に切断した状態の拡大写真を図13に示した。なお、図13Aは実験例試料1をスルーホール部分を通るように切断したスルーホール部分の拡大写真であり、図13Bは図13Aの一部の更なる拡大写真である。
さらに、比較実験例試料1に対して実験例試料1の場合と同様のレーザー照射条件でレーザー光を照射したところ、Ag被膜の表面にはレーザー光が照射された部分に白化部分が形成されたが、AlN基板にスルーホールは形成されなかった。同様に比較実験例試料2に対して実験例試料1の場合と同様のレーザー照射条件でレーザー光を照射したところ、鉛フリーはんだ表面が溶融ないし蒸発により丸く除去されたが、AlN基板にスルーホールは形成されなかった。これらのレーザー処理後の状態の比較実験例試料1及び比較実験例試料2の表面の拡大写真を図14に示した。なお、図14Aは比較実験例試料1のレーザー光照射処理後の拡大写真であり、図14Bは同じく比較実験例試料2の拡大写真である。
このように、実施例試料1、比較実験例試料1及び比較実験例試料2のそれぞれの被膜形成試料に対して、実質的に同一エネルギーのレーザー光照射処理を行っても、実施例試料1ではSn-Ag合金被膜に開口が形成されると共にAlN基板にスルーホールも形成されたのに対し、比較実験例試料1及び比較実験例試料2ではAlN基板にスルーホールが形成されなかったことの理由は、現在の所まだ明確ではないが、おそらくはAlN基板に形成された被膜の反射率の相違によるものではないかと推定される。
ここで実施例試料1においてスルーホール内壁面に形成されている金属被膜の組成について検討するため、この金属膜の表面の複数箇所において、上記と同様のSEM-EDX試験により元素分析を行った。結果を図14に纏めて示した。なお、図15Aは図13Aに示した実施例試料1のスルーホール部分を表面側から見た拡大写真であり、図15B~図15Dはそれぞれ図15Aのα~γ部分のSEM-EDX法による測定結果を示す図である。
図15Aのαの部分はスルーホールの内壁の最表面であり、この部分には図15Bに示したように、ピーク高さは低いがAg、Snのピークが現れていると共に、アルミニウム(Al)、窒素(N)及び酸素(O)の大きなピークが現れている。なお、このことは、このα部分には、Sn-Ag合金の存在の他、AlN基板の一部が露出していることと、レーザー光照射処理が空気中で行われていることに起因するAlの酸化物である酸化アルミニウム(Al)が存在していることを示しているものと思われる。なお、上記特許文献7には、AlN基板にレーザー光照射処理によりスルーホールを形成すると、AlNの還元反応によってAl被膜が形成されることが示されているが、このようなAlNの還元反応には、特許文献7に示されているように、不活性雰囲気中でレーザー光照射処理行う必要があり、空気中ではこのような還元反応は生じがたく、酸化反応によりAlが形成される。また、Yは、AlN基板に含まれていた焼結助剤としてのイットリウムと思われる。このことは、レーザー照射処理によってスルーホールを形成する際、AlN基板内部から噴出したAlN材の一部が表面側に存在しており、これに含まれていたYが検出されたものと推定される。
また、図15Aのβの部分は、スルーホール内壁表面からわずかに内部に入った部分であり、図15Cに示したように、ピーク高さは低いがAg、Snのピークが現れていると共に、Al及びOの大きなピークが現れている。このAl、N及びOは、レーザー光照射処理が空気中で行われていることに起因するAlの酸化物であるAlが存在していることを示しているものと思われる。
さらに、図15Aのγの部分は、スルーホールの内壁表面から最も奥に入った周辺部であって、それよりも奥はAlN基板そのものとなる部分であり、図15Cに示したように、Al及びOの大きなピークが現れているとともに、Ag及びSn共に大きなピークが現れている。このことは、このγ部分には、Sn-Ag合金層が形成されていると共に、Alの酸化物であるAlが存在していることを示しているものと思われる。なお、β及びγの部分には、αの部分で存在していることが示されているYのピークは見当たらないが、これは、レーザー照射処理によってスルーホールを形成する際、AlNが酸化されて酸化アルミに変化すると同時にYが気化したものと思われる。
したがって、実施例5のSn-Ag合金ナノ粒子含有組成液を用いてAlN基板の表面にSn-Ag合金被膜を形成し、このSn-Ag合金被膜の表面側からレーザー光照射処理を行うと、Sn-Ag合金被膜に開口が形成されると同時にAlN基板にスルーホールが形成され、しかもスルーホールの内壁面にSn-Ag合金からなる被膜が形成されることが確認できた。
[実施例試料2]
次いで、実施例試料2として、上記の実施例12のようにして調製されたNi-Ag合金ナノ粒子含有組成液を用いた他は、スルーホール形成実験用の実施例試料1の場合と同様にして、Ni-Ag合金被膜が形成されたスルーホール形成実験用の実施例試料2作成した。そして、このようにして作成された実施例試料2の被膜に対し、スルーホール形成実験用の実施例試料1の場合と同条件でのレーザー光を照射し,スルーホールの形成状況を観察した。その結果を図16に示した。なお、図16Aは、スルーホール形成後の実施例試料2をスルーホールの上部から拡大写真であり、図16Bは図16Aの一部の更なる拡大写真である。
図16に示した写真から、実施例12のようにして調製されたNi-Ag合金ナノ粒子含有組成液を用いてAlN基板の表面にNi-Ag合金被膜を形成した場合も、レーザー照射処理によりNi-Ag合金被膜に開口が形成されると共に、AlN基板にスルーホールを形成することができ、しかもスルーホールの内壁面にNi-Ag合金からなる被膜が形成されていることが確認できた。
したがって、本発明の回路基板の製造方法によれば、熱伝導性に優れているAlN等の非酸化物系セラミックス基板に、上記の各種実施例のようにして調製されたAg合金ナノ粒含有組成液を用いて各種Ag合金被膜を形成し、レーザー照射処理することにより、各種Ag合金被膜に開口を形成すると共に、AlN基板等の非酸化物セラミックス基板にスルーホールを形成することができ、しかもこのスルーホールの内壁面に各種Ag合金からなる被膜を同時に形成することができるようになる。そのため、本発明の回路基板の製造方法によれば、従来例のように非酸化物系セラミック基板にスルーホールを形成した後に、別途めっき法等によってスルーホールの内壁面に低抵抗の導電性層を形成する必要がなくなるので、従来例のような高価な大型チャンバーや高温加熱装置等を必要とせず、工程の時間短縮、低温化が実現され、かつ、高耐熱性が発現でき、高電力容量下での高温動作可能な次世代パワー半導体電力モジュールへの適用が可能な回路基板を容易に製造することができるようになる。
10…接合試験用試料
10a、10b…積層構造
11…基材
12…Sn-Ag合金ナノ粒子被膜
13…Agナノ粒子被膜

Claims (11)

  1. 銀合金ナノ粒子が分散したアルコール溶液からなる銀合金ナノ粒子含有組成液の製造方法であって、
    アルコール溶媒中に、スチレン-無水マレイン酸樹脂構造を有し、前記無水マレイン酸の一部が末端水酸基のポリアルキレングリコール又は末端アミノ基のポリアルキレングリコールで変性されているものからなる酸価が150以下の高分子分散剤を溶解させるとともに、酸化銀、炭酸銀及びシュウ酸銀から選択される少なくとも1種の銀化合物と、スズ、ニッケル及びインジウムから選択される少なくとも1種の金属の酸化物又は塩から選択される少なくとも1種の異種金属化合物と、を分散させたアルコール溶液を用い、前記アルコール溶液中に100℃以下で超音波を照射することによって、前記銀と前記異種金属とが合金化した銀合金ナノ粒子が分散したアルコール溶液を得ることを特徴とする、銀合金ナノ粒子含有組成液の製造方法。
  2. 前記異種金属化合物がスズ、ニッケル及びインジウムから選択される少なくとも1種の金属の塩から選択される少なくとも1種であって、前記塩がフッ化物又は酢酸化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の銀合金ナノ粒子含有組成液の製造方法。
  3. 前記超音波の照射を常温下で行うことを特徴とする、請求項1に記載の銀合金ナノ粒子含有組成液の製造方法。
  4. 前記アルコール溶液中の前記銀化合物及び前記異種金属化合物の濃度が合計20~70重量%であり、前記異種金属化合物の濃度が前記銀化合物に対して金属成分比で0.1~20重量%であることを特徴とする、請求項1に記載の銀合金ナノ粒子含有組成液の製造方法。
  5. 前記アルコール溶媒が、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール及び1-メトキシ-2-プロパノールからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1に記載の銀合金ナノ粒子含有組成液の製造方法。
  6. 前記高分子分散剤の添加量が、前記銀化合物及び前記異種金属化合物の合計重量に対して、不揮発分の重量で2~25%であることを特徴とする、請求項1に記載の銀合金ナノ粒子含有組成液の製造方法。
  7. 請求項1~6のいずれかの記載の銀合金ナノ粒子含有組成液の製造方法によって製造された銀合金ナノ粒子含有組成液を基材の表面に塗布する工程と、
    前記銀合金ナノ粒子含有組成液を塗布された基材を常温下で乾燥する工程と、
    を備えることを特徴とする、基材の表面に銀合金被膜を形成する方法。
  8. 前記銀合金ナノ粒子含有組成液中の前記異種金属化合物の含有割合が、前記銀化合物及び前記異種金属化合物の合計重量に対して金属成分比で0.1~20重量%であり、
    前記銀合金ナノ粒子含有組成液中の前記高分子分散剤の含有量が、前記銀化合物及び前記異種金属化合物の合計重量に対して、不揮発分の重量で0.5~3.0重量%であるものを用いていることを特徴とする、請求項7に記載の基材の表面に銀合金被膜を形成する方法。
  9. 前記銀合金被膜を所定の配線パターンに形成したことを特徴とする、請求項7に記載の基材の表面に銀合金被膜を形成する方法。
  10. 請求項1~6のいずれかの記載の銀合金ナノ粒子含有組成液の製造方法によって製造された前記銀合金ナノ粒子含有組成液を非酸化物系セラミックス基板の表面に所定の配線パターンに塗布する工程と、
    前記銀合金ナノ粒子含有組成液を塗布された非酸化物系セラミックス基板を常温下で乾燥して前記非酸化物系セラミックス基板の表面に前記銀合金の被膜からなる配線パターンを形成する工程と、
    前記配線パターの所定位置に、前記銀合金の被膜の表面側からレーザー光を照射し、前記銀合金の被膜に開口を形成すると同時に、前記非酸化物系セラミックス基板に内壁面に前記銀合金の被膜からなる導体化層が形成されたスルーホールを形成する工程と、
    を有することを特徴とする、回路基板の製造方法。
  11. 前記銀合金ナノ粒子含有組成液中の前記異種金属化合物の含有割合が、前記銀化合物及び前記異種金属化合物の合計重量に対して金属成分比で0.1~20重量%であり、
    前記銀合金ナノ粒子含有組成液中の前記高分子分散剤の含有量が、前記銀化合物及び前記異種金属化合物の合計重量に対して、不揮発分の重量で0.5~3.0重量%であるものを用いていることを特徴とする、請求項10に記載の回路基板の製造方法。
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