JP6944734B2 - 接合体および電子装置 - Google Patents

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Description

本発明は、接合体および電子装置に関する。詳しくは、耐酸化性金属製部材と銅製部材の接合体または銅製部材同士の接合体、および、耐酸化性金属製部材と銅製部材の接合体または銅製部材同士の接合体を有する電子装置に関する。
銀、銅、ニッケルなどの金属粉末を液状熱硬化性樹脂組成物中に分散させてなる導電性・熱伝導性ペーストは、加熱により硬化して導電性・熱伝導性被膜が形成される。したがって、プリント回路基板上の導電性回路の形成、抵抗器やコンデンサ等の各種電子部品及び各種表示素子の電極の形成、電磁波シールド用導電性被膜の形成、コンデンサ、抵抗、ダイオード、メモリ、演算素子(CPU)等のチップ部品の基板への接着、太陽電池の電極の形成、特に、アモルファスシリコン半導体を用いているために、高温処理のできない太陽電池の電極の形成、積層セラミックコンデンサ、積層セラミックインダクタ、積層セラミックアクチュエータ等のチップ型セラミック電子部品の外部電極の形成等に使用されている。
近年、チップ部品の高性能化により、チップ部品からの発熱量が増え、電気伝導性はもとより、熱伝導性の向上が要求される。したがって、金属粒子の含有率を可能な限り増加することにより電気伝導性、熱伝導性を向上しようとする。ところが、そうすると、ペーストの粘度が上昇し、作業性が著しく低下するという問題がある。
このような問題を解決するため、特許文献1(国際公開2006/126614号公報)と特許文献2(国際公開2007/034833号公報)には、銀粉末と揮発性分散媒とからなるペースト状銀組成物は、加熱すると揮発性分散媒が揮発し銀粉末が焼結して、極めて高い導電性と熱伝導性を有する固形状銀となり、金属製部材の接合や、導電回路の形成に有用なことが教示されている。
しかしながら、これら特許文献に開示された銀粉末と揮発性分散媒とからなるペースト状銀組成物を金属製部材同士の接合に用いた場合、銀粉末は多数の銀粒子同士が複数の接点で融着して連結した不規則な網目構造を有する多孔質焼結物となるが、銀粒子と金属製部材間の接合部が脆弱なため接合強度が劣るという問題がある。
この問題を解決するため、特許文献3(特開2010−053377号公報)には、平均粒径が0.1μmより大きく50μm以下である加熱焼結性金属粒子と揮発性分散媒とからなるペースト状金属粒子組成物を、複数の金属製部材間に介在させ、不活性ガス中で40℃以上200℃以下での加熱により、ペースト状金属粒子組成物中の揮発性分散媒の10重量%以上100重量%未満の量を揮散させた後、酸化性ガス中または還元性ガス中で70℃以上400℃以下での加熱により、ペースト状金属粒子組成物中に残存する揮発性分散媒を揮散させ、加熱焼結性金属粒子同士を焼結して複数の金属製部材同士を接合させる、金属製部材の接合方法が提案されている。
しかしながら、ペースト状金属粒子組成物中の揮発性分散媒を除去するため、酸素濃度が極めて低い不活性ガス中で加熱することを必要としており、加熱焼結性金属粒子同士を焼結して複数の金属製部材同士、特には、耐酸化性金属製部材と銅製部材または銅製部材同士を接合した直後における接合強度は優れるものの、接合強度の耐熱衝撃性が劣る、という問題がある。
国際公開2006/126614号公報 国際公開2007/034833号公報 特開2010−053377号公報
本発明者らは上記の問題点を解決するため鋭意研究した結果、耐酸化性金属製部材と銅製部材または銅製部材同士が、両部材間に介在する銀粒子焼結物により接合されている接合体であって、銀粒子焼結物に接している銅製部材の内部に微粒子状銅酸化物が散在する接合体は接合強度が大きく、接合強度の耐熱衝撃性が優れること、加熱焼結性銀微粒子と加熱焼結性銀粒子と揮発性分散媒からなるペースト状銀粒子組成物を、耐酸化性金属製部材と銅製部材間または銅製部材同士間に介在させ、低酸素濃度不活性ガス中で加熱して接合すると、銀粒子焼結物に接している銅製部材の内部に微粒子状銅酸化物が散在しており、当該接合体の接合強度が大きく、当該接合強度の耐熱衝撃性が優れることを見出して、本発明に到達した。
本発明の目的は、耐酸化性金属製部材と銅製部材または銅製部材同士が、両部材間に介在する銀粒子焼結物により接合されており、接合強度が大きく、接合強度の耐熱衝撃性が優れる接合体を提供すること、および、かかる接合体を有する電子装置を提供することにある。
この目的は、
[1] 耐酸化性金属製部材と銅製部材または銅製部材同士が、両部材間に介在する多孔質銀粒子焼結物により接合されている接合体であって、多孔質銀粒子焼結物に接している銅製部材の内部には、該銅製部材中の銅の酸化物であり、平均粒径が5nm以上50nm以下である微粒子状銅酸化物が散在することを特徴とする、耐酸化性金属製部材と銅製部材の接合体または銅製部材同士の接合体。
[2] 多孔質銀粒子焼結物に接している銅製部材の、電子顕微鏡による断面写真において、多孔質銀粒子焼結物との境界線に短辺が接する長方形(ただし、境界線に接する短辺の長さが100nmであり、境界線から銅製部材内部方向に延びる長辺の長さが300nmである)内に、微粒子状銅酸化物が3個以上存在することを特徴とする、[1]に記載の耐酸化性金属製部材と銅製部材の接合体または銅製部材同士の接合体。
[3] 微粒子状銅酸化物の形状が、球状、粒状または涙滴状であることを特徴とする、[1]または[2]に記載の耐酸化性金属製部材と銅製部材の接合体または銅製部材同士の接合体。
[4] 多孔質銀粒子焼結物の体積抵抗率が1×10−5Ω・cm以下であり、かつ、熱伝導率が100W/m・K以上であることを特徴とする、[1]から[3]のいずれかに記載の耐酸化性金属製部材と銅製部材の接合体または銅製部材同士の接合体。
[5] 耐酸化性金属製部材と銅製部材または銅製部材同士が、両部材間に介在する多孔質銀粒子焼結物により接合されている接合体を有する電子装置であって、多孔質銀粒子焼結物と接する銅製部材の内部には、該銅製部材中の銅の酸化物であり、平均粒径が5nm以上50nm以下である微粒子状銅酸化物が散在することを特徴とする、電子装置。
[6] 多孔質銀粒子焼結物に接している銅製部材の、電子顕微鏡による断面写真において、銀粒子焼結物との境界線に短辺が接する長方形(ただし、境界線に接する短辺の長さが100nmであり、境界線から銅製部材内部方向に延びる長辺の長さが300nmである)内に、微粒子状銅酸化物が3個以上存在することを特徴とする、[5]に記載の電子装置。
[7] 微粒子状銅酸化物の形状が、球状、粒状または涙滴状であることを特徴とする、[5]または[6]に記載の電子装置。
[8] 銅製部材が銅製もしくは銅メッキ回路基板または銅製もしくは銅メッキリードフレームであり、耐酸化性金属製部材が耐酸化性金属部分を有するコンデンサおよび抵抗から選択されるチップ部品、または、耐酸化性金属部分を有するダイオード、トランジスタ、メモリ、ICおよびCPUから選択される半導体チップであることを特徴とする、[5]から[8]のいずれかに記載の電子装置により達成される。
本発明の、耐酸化性金属製部材と銅製部材の接合体または銅製部材同士の接合体は、多孔質銀粒子焼結物に接している銅製部材の内部に、該銅製部材中の銅の酸化物である微粒子状銅酸化物が散在するため、接合体のせん断接着強さが大きく、せん断接着強さの耐熱衝撃性が優れる。また、銅製部材がほぼ変色していない。
本発明の電子装置は、耐酸化性金属製部材と銅製部材または銅製部材同士が、両部材間に介在する多孔質銀粒子焼結物により接合されている接合体を有するので、信頼性が高い。
実施例におけるせん断接着強さ測定用試験体Aの平面図である。銅基板1と金メッキシリコンチップまたは銅チップ3とが、銀粒子焼結物2により接合されている。 図1におけるX−X線断面図である。 実施例1の銅基板と金メッキシリコンチップの接合体における、銅基板と銀粒子焼結物の隣接部断面の電子顕微鏡写真である。 実施例1の銅基板と金メッキシリコンチップの接合体における、銅基板と銀粒子焼結物の隣接部断面の、電子顕微鏡写真に、銅基板と銀粒子焼結物との境界線,および, 該境界線に短辺が接する長方形(ただし、境界線に接する短辺の長さが100nmであり、境界線から銅基板内部方向に延びる長辺の長さが300nmである)を追記したものである。 実施例4の銅基板と金メッキシリコンチップの接合体における、銅基板と銀粒子焼結物の隣接部断面の電子顕微鏡写真である。 実施例4の銅基板と金メッキシリコンチップの接合体における、銅基板と銀粒子焼結物の隣接部断面の、電子顕微鏡写真に境界線と長方形を追記したものである。 実験例1の銅基板と金メッキシリコンチップの接合体における、銅基板と銀粒子焼結物の隣接部断面の電子顕微鏡写真である。 実験例1の銅基板と金メッキシリコンチップの接合体における、銅基板と銀粒子焼結物の隣接部断面の電子顕微鏡写真に境界線と長方形を追記したものである。 比較例3の銅基板と金メッキシリコンチップの接合体における、銅基板と銀粒子焼結物の隣接部断面の電子顕微鏡写真に境界線と長方形を追記したものである。 比較例3の銅基板と金メッキシリコンチップの接合体における、銅基板と銀粒子焼結物の隣接部断面の電子顕微鏡写真である。
本発明の、耐酸化性金属製部材と銅製部材または銅製部材同士が、両部材間に介在する銀粒子焼結物により接合されている接合体は、銀粒子焼結物に接している銅製部材の内部に微粒子状銅酸化物が散在する。
銀粒子焼結物は、加熱焼結性を有する銀粒子を所定温度以上で加熱して焼結したものであり、通常、多孔質の固体状銀である。加熱焼結性を有する銀粒子を、耐酸化性金属製部材と銅製部材間に介在させ、あるいは銅製部材同士間に介在させて接触状態で焼成すると、銀粒子焼結物は、耐酸化性金属製部材と銅製部材に強固に接着する。
耐酸化性金属製部材と銅製部材の接合体または銅製部材同士の接合体の接合部では、銀粒子焼結物が耐酸化性金属製部材と銅製部材に接着し、銀粒子焼結物に接している銅製部材の内部に微粒子状銅酸化物が散在している。
銀粒子焼結物に接している銅製部材の、電子顕微鏡による断面写真において、銅製部材と銀粒子焼結物との境界線に短辺が接する長方形(ただし、境界線に接する短辺の長さが100nmであり、境界線から銅製部材内部方向に延びる長辺の長さが300nmである)内に、微粒子状銅酸化物が少なくとも1個存在し、好ましくは2個以上存在し、より好ましくは3個以上存在し、もっとも好ましくは4個以上存在する。なお、本願において、銅製部材と銀粒子焼結物との境界線に短辺が接する長方形の「接する」とは、銅製部材と銀粒子焼結物との境界線に前記長方形の短辺が重なっていることを含む。
この長方形から粒子の一部がはみ出している微粒子状銅酸化物は測定の対象外である。
微粒子状銅酸化物の数が、1個以上であると、耐酸化性金属製部材と銅製部材または銅製部材同士が、両部材間に介在する銀粒子焼結物により接合されている接合体の接合強度および接合強度の耐熱衝撃性が優れており、3個以上であると接合強度の耐熱衝撃性が2個以下より顕著に優れている。微粒子状銅酸化物の数の上限は限定されないが、多すぎると銅製部材中への銀粒子焼結物の銀の拡散が妨げられ接合強度が低下する恐れがあるため、50個以下であることが好ましく、20個以下であることがより好ましく、11個以下であることがさらに好ましい。
微粒子状銅酸化物の平均粒径は、5nm以上50nm以下である。平均粒径は、前記接合体の任意の断面の電子顕微鏡写真により測定する。例えば、微粒子状銅酸化物の長径と短径の平均値をその微粒子の粒径とし、測定された全微粒子の算術平均径またはメジアン径を微粒子状銅酸化物の平均粒径とすることができる。あるいは、画像解析ソフトが利用できる場合は、その解析結果による平均粒径を用いても良い。なお、微粒子状銅酸化物は、上記長方形外に存在していても良く、また、平均粒径が5nm未満や50nmを越える微粒子状銅酸化物を含んでいても良い。
微粒子状銅酸化物の形状は限定されないが、微粒子状銅酸化物が銅製部材内部へ拡散しやすい、球状、粒状または涙滴状であることが好ましい。微粒子状銅酸化物の形状は、平面状である電子顕微鏡写真による銅製部材の断面における形状が、円形、一部変形した円形、楕円形、一部変形した楕円形、涙滴形、一部変形した涙滴形等として観察されるが、その形状は、JIS Z 2500、ISO/DIS 3252等の公的文書に記載された粒子形状の分類写真と比較して判断しても良い。微粒子状銅酸化物を観察する際に、電子顕微鏡写真は拡大もしくは縮小して用いても良い。
微粒子状銅酸化物の種類は限定されないが、CuO、CuO、Cu(OH)が例示され、またそれらの混合物であっても良い。これらの銅酸化物は、例えば、飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF−SIMS)で同定できるが、通常、銅の空気中における自然酸化ではこれらの混合物が生成される。
本発明の接合体の構成部材である銅製部材は、製造直後は表面に銅酸化物の被膜が存在しないが、通常、銅の空気中における自然酸化により表面に銅酸化物の被膜を有している。表面が酸化されていない銅製部材は低酸素濃度不活性ガス中で加熱されると、銀粒子や銀粒子焼結物の有無に関わらず極めて短時間で表面に銅酸化物の被膜が形成される。その厚さは、酸素ガス濃度や加熱温度にもよるが10nm以上50nm以下である。銅製部材表面の銅酸化物は、低酸素濃度不活性ガス中で加熱されると微小な粒子状となって銅製部材の内部へ拡散し、その際、それと同時または前後して、銀粒子焼結物の銀も銅製部材の内部へ拡散する結果、銀粒子焼結物が銅製部材に強固に接着すると推察される。
銅製部材表面の銅酸化物被膜の厚さは、公知の方法により測定できる。電気化学測定であるボルタンメトリー法、SERA法、質量分析法であるTOF−SIMS、銅製部材の断面を電子顕微鏡写真で観察する方法(SEM−EDS)等が例示される。
本発明の接合体中の銀粒子焼結物は、優れた導電性と熱伝導性を有するため、体積抵抗率が1×10−5Ω・cm以下であり、熱伝導率が100W/m・K以上であることが好ましい。体積抵抗率はJIS K 7194に規定されている方法より測定ができる。熱伝導率は通常の方法で測定でき、レーザーフラッシュ法、熱抵抗測定法が例示される。
本発明の耐酸化性金属製部材と銅製部材の接合体または銅製部材同士の接合体は、(A1)平均粒径が0.005μm以上0.5μm以下であり、極性基を有する有機物で被覆された加熱焼結性銀微粒子、(A2)平均粒径が0.6μm以上10μm以下であり、極性基を有する有機物で被覆された加熱焼結性銀粒子、および、(B)揮発性分散媒からなり、加熱焼結性銀微粒子(A1)と加熱焼結性銀粒子(A2)の合計質量に対する加熱焼結性銀微粒子(A1)の質量比率が5%以上40%以下であり、加熱焼結性銀粒子(A2)の質量比率が60%以上95%以下であるペースト状銀粒子組成物を、耐酸化性金属製部材と銅製部材間または銅製部材同士間に介在させ、酸素ガス濃度が0.01体積%以上2体積%以下の低酸素濃度不活性ガス中で、70℃以上300℃以下で加熱することにより、揮発性分散媒(B)を揮散させ、加熱焼結性銀微粒子(A1)と加熱焼結性銀粒子(A2)の混合物を焼結せしめることにより製造され、生成した銀粒子焼結物と接する銅製部材の内部には微粒子状銅酸化物が散在することを特徴とする。
銅製部材の内部に散在する微粒子状銅酸化物の数、平均粒径および形状は、本発明の耐酸化性金属製部材と銅製部材または銅製部材同士が、両部材間に介在する銀粒子焼結物により接合されている接合体について説明したとおりである。
加熱焼結性銀微粒子(A1)の平均粒径は0.005μm以上0.5μm以下である。平均粒径が0.5μmを越えると、耐酸化性金属製部材と銅製部材の接合部または銅製部材同士の接合部において、銀粒子焼結物に接している銅製部材と銀粒子焼結物との境界線に短辺が接する前記長方形内に微粒子状銅酸化物が生成できにくくなるため、平均粒径は小さい方が好ましい。このため0.5μm以下であることが必要であり、より好ましくは0.2μm以下であり、特に好ましくは0.1μm未満である。しかし、平均粒径が0.005μm未満であると、銀微粒子表面の活性が強すぎて凝集しやすくなるため、平均粒径は0.01μm以上であることが好ましく、より好ましくは0.02μm以上である。なお、加熱焼結性銀微粒子(A1)は単結晶、多結晶のいずれでもよいが、耐酸化性金属製部材と銅製部材への接着性の点で多結晶であることが好ましい。
加熱焼結性銀粒子(A2)の平均粒径は0.6以上10μm以下である。平均粒径が10μmを越えると、加熱焼結性が低下し耐酸化性金属製部材と銅製部材の優れた接合体や、銅製部材同士の優れた接合体ができにくくなるため、平均粒子径は小さい方が好ましく、5μm以下であることが好ましい。しかし、平均粒径が0.6μm未満であると、加熱焼結性銀微粒子(A1)と加熱焼結性銀粒子(A2)の混合物の銀粒子焼結物が脆くなる恐れがあるため、平均粒径は0.6μm以上であり、好ましくは0.7μm以上である。
なお、本願では、加熱焼結性銀微粒子(A1)と加熱焼結性銀粒子(A2)の混合物の焼結物は、厳密には、銀微粒子と銀粒子の焼結物であるが、便宜上、銀粒子焼結物と記載している。
加熱焼結性銀粒子(A2)は単結晶、多結晶のいずれでもよいが、耐酸化性金属製部材と銅製部材への接着性の点で多結晶であることが好ましい。
加熱焼結性銀微粒子(A1)と加熱焼結性銀粒子(A2)の合計質量に対する加熱焼結性銀微粒子(A1)の質量比率は5%以上40%以下であり、加熱焼結性銀粒子(A2)の質量比率は60%以上95%以下である。
加熱焼結性銀微粒子(A1)の質量比率が5%未満または40%を超える場合、および、加熱焼結性銀粒子(A2)の質量比率が60%未満または95%を超える場合は、前記ペースト状銀粒子組成物を、耐酸化性金属製部材と銅製部材間または銅製部材同士間に介在させ、酸素ガス濃度が0.01体積%以上2体積%以下の低酸素濃度不活性ガス中で、70℃以上300℃以下で加熱することにより、揮発性分散媒(B)を揮散させ、加熱焼結性銀微粒子(A1)と加熱焼結性銀粒子(A2)の混合物を焼結せしめて接合体を製造した場合、生成した銀粒子焼結物と接する銅製部材の内部に微粒子状銅酸化物が生成しにくくなるからである。
加熱焼結性銀微粒子(A1)および加熱焼結性銀粒子(A2)の平均粒径は、レーザ回折散乱式粒度分布測定装置を用いて測定した粒度分布の体積基準の積算分率50%値、すなわち、メジアン径(D50値)である。レーザ回折散乱式粒度分布測定装置を用いることができない場合は、電子顕微鏡の断面写真における単純平均粒径であっても良い。
加熱焼結性銀微粒子(A1)および加熱焼結性銀粒子(A2)の形状は限定されないが、球状、粒状、涙滴状またはフレーク状であることが好ましい。加熱焼結性銀微粒子(A1)および加熱焼結性銀粒子(A2)の形状は、JIS Z 2500、ISO/DIS 3252等の公的規格に記載された客観的な分類により確認できる。これによると、球状は表面に凹凸がほとんどなく、実質的に真球状である。
加熱焼結性銀微粒子(A1)および加熱焼結性銀粒子(A2)は、加熱焼結性の点で銀塩の湿式還元法により製造されたものであることが好ましく、凝集防止のため表面が極性基を有する有機物で被覆ないし処理されていることが好ましい。
そのような極性基を有する有機物としては、(a)脂肪酸またはそのアルカリ金属塩若しくはエステル、(b)酸性官能基および/または塩基性官能基を有する高分子分散剤、(c)含窒素有機化合物が例示される。
なお、銀塩の湿式還元法で銀粒子を製造する工程において使用する還元剤等の極性基を有する有機物が、加熱焼結性銀微粒子(A1)および加熱焼結性銀粒子(A2)中に微量残存する場合があるが、本発明における極性基を有する有機物に含まれる。また、本発明における極性基を有する有機物は、加熱焼結性銀微粒子(A1)および加熱焼結性銀粒子(A2)の表面に強く会合、結合または吸着しているため、水や溶剤で洗浄しても容易に除去されない。極性基を有する有機物は、加熱焼結性銀微粒子(A1)および加熱焼結性銀粒子(A2)を被覆できれば、常温で固体、半固体、液体のいずれでもよい。
極性基を有する有機物の極性基として、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、カルボン酸塩基、カルボン酸エステル基、水酸基、アルコキシ基、アルキルエーテル基、リン酸基、酸性リン酸エステル基、ホスホン酸基が例示されるが、カルボキシル基、カルボン酸塩基、カルボン酸エステル基、水酸基であることが好ましい。
また、アミノ基、イミノ基(=NH)、アンモニウム塩基、塩基性窒素原子を有する複素環基が例示されるが、アミノ基であることが好ましい。
炭素原子含有極性基の炭素原子数は好ましくは1以上54以下であり、より好ましくは1以上18以下である。
(a)脂肪酸またはそのアルカリ金属塩もしくはエステルにおける脂肪酸として、炭素原子数が3以上であるプロパン酸(プロピオン酸)、ブタン酸(酪酸)、ペンタン酸(吉草酸)、ヘキサン酸(カプロン酸)、ヘプタン酸(エナント酸)、オクタン酸(カプリル酸)、ノナン酸(ペラルゴン酸)、デカン酸(カプリン酸)、ドデカン酸(ラウリン酸)、テトラデカン酸(ミリスチン酸)、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、ヘプタデカン酸(マルガリン酸)、オクタデカン酸(ステアリン酸)、12−ヒドロキシオクタデカン酸(12−ヒドロキシオレイン酸)、エイコサン酸(アラキン酸)、ドコサン酸(ベヘン酸)、テトラコサン酸(リグノセリン酸)、ヘキサコサン酸(セロチン酸)、オクタコサン酸(モンタン酸)等の1価の直鎖飽和脂肪酸;炭素原子数が14以上である2−ペンチルノナン酸、2−ヘキシルデカン酸、2−ヘプチルドデカン酸、イソオレイン酸等の1価の分枝飽和脂肪酸;ソルビン酸、マレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、イソオレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸、ガドレン酸、エルカ酸、セラコレイン酸等の1価の不飽和脂肪酸が例示される。これら例示した脂肪酸の炭素原子数は最大24であるが、これに限定されるものではなく、例えば54であってもよい。
また、このような脂肪酸として、狭義の脂肪酸に限らず、広義の脂肪酸である、炭素原子数が2以上であるシュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマール酸、オキシジ酢酸(ジグリコール酸)、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ジグリコール酸等の多価の脂肪族カルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の多価の芳香族カルボン酸が例示される。これら脂肪酸の炭素原子数の最大値は特に限定されるものではなく、例えば54であってもよい。
脂肪酸のアルカリ金属塩として、ナトリウム塩とカリウム塩とリチウム塩が例示されるが、好ましくはナトリウム塩とカリウム塩である。
脂肪酸のエステルとして、アルキルエステル(例えば、メチルエステル、エチルエステル)、フェニルエステルが例示される。これらアルキルエステルのアルキル基は炭素原子数1以上6以下が好ましい。
(b)酸性官能基および/または塩基性官能基を有する高分子分散剤は、高分子からなる分散剤であり、重量平均分子量は通常1,000以上である。重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(キャリア:テトラヒドロフラン)によって測定されるポリスチレン換算重量平均分子量である。
酸性官能基として、カルボキシル基、酸無水物基、リン酸基、酸性リン酸エステル基、ホスホン酸基が例示されるが、カルボキシル基、リン酸基または酸性リン酸エステル基であることが好ましい。酸性リン酸エステル基は、一部のリン結合水酸基がアルコキシ化されたものである。アルコキシ基としてメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などの低級アルコキシ基が例示される。低級アルコキシ基の炭素原子数は好ましくは1以上8以下である。
また、塩基性官能基として、アミノ基、イミノ基(=NH)、アンモニウム塩基、塩基性窒素原子を有する複素環基が例示されるが、アミノ基、アンモニウム塩基(例えば、第3級アンモニウム塩基、第4級アンモニウム塩基)であることが好ましい。アミノ基は、第1級アミノ基(-NH2)、第2級アミノ基(-NHR)、第3級アミノ基(-NRR')のいずれでもよい。RとR'はアルキル基、フェニル基、アラルキル基などであり、炭素原子数は好ましくは1以上8以下である。
酸性官能基と塩基性官能基を有する高分子分散剤は、分子中の酸性官能基の一部を塩基性化合物により中和ないし塩化していてもよい。中和ないし塩化に用いる塩基性化合物として、たとえば、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物、アンモニア、アルキルアミン類、アマイドアミン類、アルカノールアミン類、モルホリン等の含窒素有機化合物が挙げられる。上記アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム等が挙げられ、アルキルアミン類の具体例としては、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミンが挙げられる。アルキル基とアルキレン基の炭素原子数は1以上8以下が好ましい。
また、分子中の塩基性官能基の一部を酸性化合物により中和ないし塩化していてもよい。中和ないし塩化に用いる酸性化合物として、たとえば、リン酸,部分アルキルエステル化リン酸(酸性リン酸エステル),カルボン酸(例えば、低級脂肪族モノカルボン酸,低級脂肪族ジカルボン酸)が挙げられる。これらカルボン酸の炭素原子数は1以上8以下が好ましい。酸性官能基の一部は、塩基性官能基との塩を形成していてもよい。
酸性官能基および/または塩基性官能基を有する高分子分散剤の酸価は、5mgKOH/g以上300mgKOH/g以下であることが好ましく、10mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であることがより好ましい。また、高分子分散剤のアミン価は、5mgKOH/g以上300mgKOH/g以下であることが好ましく、10mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であることがより好ましい。
酸価とは、高分子分散剤固形分1gあたりの酸価を表し、JIS K 0070に準じ、電位差滴定法によって求めることができる。アミン価とは、高分子分散剤固形分1gあたりのアミン価を表し、0.1Nの塩酸水溶液を用い、電位差滴定法によって求めたのち、水酸化カリウムの当量に換算した値をいう。
高分子分散剤において酸性官能基と塩基性官能基の高分子本体への結合位置は、特に限定されず、主鎖であってもよく、側鎖であってもよく、主鎖および側鎖に位置していてもよい。酸性官能基と塩基性官能基は、高分子本体へ直接結合しても良く、連結基を介して結合してもよい。連結基として、エチレン基からオクチレン基などの低級アルキレン基、フェニレン基、鎖中にエーテル結合を有する低中級アルキレン基、鎖中にカルボン酸エステル結合を有する低中級アルキレン基、鎖中にカルボン酸アミド結合を有する低中級アルキレン基が例示される。低級アルキレン基の炭素原子数は1以上8以下が好ましく、鎖中にエーテル結合などを有する低中級アルキレン基の合計炭素原子数は2以上12以下が好ましい。
市販の酸性官能基および/または塩基性官能基を有する高分子分散剤として、SOLSPERSE24000(酸価:24mgKOH/g、アミン価:47mgKOH/g),SOLSPERSE32000(酸価:15mgKOH/g、アミン価:180mgKOH/g)(Lubrizol,Ltd.製)(SOLSPERSEは、リューブリゾル リミテッドの登録商標である)等が例示される。
また、DISPERBYK-106(酸価:132mgKOH/g、アミン価:74mgKOH/g)、DISPERBYK-130(酸価:2mgKOH/g、アミン価:190mgKOH/g)、DISPERBYK-140(酸価:73mgKOH/g、アミン価:76mgKOH/g)、DISPERBYK-142(酸価:46mgKOH/g、アミン価:43mgKOH/g)、DISPERBYK-145(酸価:76mgKOH/g、アミン価:71mgKOH/g)、DISPERBYK-180(酸価:94mgKOH/g、アミン価:94mgKOH/g)、DISPERBYK-187(酸価:35mgKOH/g、アミン価:35mgKOH/g)、DISPERBYK-191(酸価:30mgKOH/g、アミン価:20mgKOH/g)、DISPERBYK-2001(酸価:19mgKOH/g、アミン価:29mgKOH/g)、DISPERBYK-2010(酸価:20mgKOH/g、アミン価:20mgKOH/g)、DISPERBYK-2020(酸価:37mgKOH/g、アミン価:36mgKOH/g)、DISPERBYK-2020N(酸価:36mgKOH/g、アミン価:36mgKOH/g)、DISPERBYK-2025(酸価:38mgKOH/g、アミン価:37mgKOH/g)、DISPERBYK-102(酸価:101mgKOH/g)、DISPERBYK-174(酸価:22mgKOH/g)、DISPERBYK-2096(酸価:40mgKOH/g)、DISPERBYK-2150(アミン価:57mgKOH/g)、などのディスパービックシリーズ品[ビックケミー・ジャパン株式会社販売品](DISPERBYKは、ビック−ケミー ゲゼルシヤフト ミツト ベシュレンクテル ハフツングの登録商標である)等が例示される。
また、BYK-9076(酸価:38mgKOH/g、アミン価:44mgKOH/g)、BYK-9077(アミン価:48mgKOH/g)、ANTI-TERRA-U(酸価:24mgKOH/g、アミン価:19mgKOH/g)、ANTI-TERRA-U100(酸価:50mgKOH/g、アミン価:35mgKOH/g)、ANTI-TERRA-204(酸価:41mgKOH/g、アミン価:37mgKOH/g)、ANTI-TERRA-205(酸価:40mgKOH/g、アミン価:37mgKOH/g)、ANTI-TERRA-250(酸価:46mgKOH/g、アミン価:41mgKOH/g)などのビックシリーズ品、アンチテラシリーズ品[ビックケミー・ジャパン株式会社販売品](BYKおよびANTI-TERRAは、ビック−ケミー ゲゼルシヤフト ミツト ベシュレンクテル ハフツングの登録商標である)が例示される。
また、ディスパロンDA−234(酸価:16mgKOH/g、アミン価:20mgKOH/g)、ディスパロンDA−325(酸価:14mgKOH/g、アミン価:20mgKOH/g)などのディスパロンシリーズ品[楠本化成株式会社製]ディスパロンは、楠本化成株式会社の登録商標である);アジスパーPB−821(酸価:17mgKOH/g、アミン価:10mgKOH/g)、アジスパーPB−822(酸価:14mgKOH/g、アミン価:17mgKOH/g)、アジスパーPB−881(酸価:17mgKOH/g、アミン価:17mgKOH/g)、アジスパーPN−411(酸価:6mgKOH/g、アジスパーPA−111(酸価:35mgKOH/g)、などのアジスパーシリーズ品[味の素ファインテクノ株式会社製]が例示される(アジスパーは、味の素株式会社の登録商標である)。
含窒素有機化合物は、1級、2級もしくは3級のアルキルアミン類、ジアミン類、トリアミン類、アルキルアミドアミン類、N-アルキルエタノールアミン類、N-アルキルモルホリン、その他の有機アミン化合物が例示される。含窒素有機化合物の炭素原子数は1以上54以下が好ましい。
アルキルアミン類、ジアミン類、トリアミン類として、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン等のアルキルアミン類;エチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N´−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N,N´−ジエチルエチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミン、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N−ジエチル−1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノ−2−メチルペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、N,N´−ジメチル−1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン等のジアミン類;ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、ジブチレントリアミン、N−アミノエチルピペラジン等のトリアミン類が例示される。
本発明の加熱焼結性銀微粒子(A1)および加熱焼結性銀粒子(A2)の表面を被覆している極性基を有する有機物の量は、銀粒子の粒径、比表面積、形状などにより変わるが、0.01質量%以上10質量%以下が好ましく、0.1質量%以上5質量%以下がより好ましい。少なすぎると、加熱焼結性銀微粒子(A1)および加熱焼結性銀粒子(A2)が凝集しやすくなって保存安定性が低下し、多すぎると、加熱焼結性銀微粒子(A1)および加熱焼結性銀粒子(A2)の加熱焼結性が低下する。
極性基を有する有機物の被覆量は通常の方法で測定できる。例えば、銀粒子を有機物の沸点、揮発温度または熱分解温度以上に加熱して重量減少を測定する熱重量分析、銀粒子を酸素気流中で加熱して銀粒子に付着していた有機物中の炭素を炭酸ガスに変え、赤外線吸収スペクトル法により定量分析する方法が例示される。後者の場合、有機物中の炭素含有量が測定されるが、有機物の構造、構成成分は、赤外線分光分析、質量分析等により容易に確認できるので、炭素量から有機物の種類と量の特定、算出ができる。
加熱焼結性銀微粒子(A1)および加熱焼結性銀粒子(A2)の表面は、このような極性基を有する有機物により表面の半分以上が被覆されていればよいが、全部が被覆されていることが好ましい。
揮発性分散媒(B)は、これら銀粒子表面を変質させず、その沸点は70℃以上であり、300℃以下であることが好ましい。沸点が70℃未満であるとペースト状銀粒子組成物を調製する作業中に揮発性分散媒(B)が揮散しやすく、沸点が300℃より高いと、加熱時に揮散し難くてペースト状銀粒子組成物の加熱焼結を阻害するからである。
揮発性分散媒(B)として、水;エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、ターピネオール等の揮発性一価アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキサンジオール、オクタンジオール等の揮発性多価アルコール;低級n−パラフィン、低級イソパラフィン等の揮発性脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン等の揮発性芳香族炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイゾブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール(4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン)、2−オクタノン、イソホロン(3,5,5−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−オン)、ジイブチルケトン(2,6−ジメチル−4−ヘプタノン)等の揮発性ケトン;酢酸エチル(エチルアセテート)、酢酸ブチルのような揮発性酢酸エステル;酪酸メチル、ヘキサン酸メチル、オクタン酸メチル、デカン酸メチルのような揮発性脂肪族カルボン酸エステル;テトラヒドロフラン、メチルセロソルブ、プロピレンブリコールモノメチルエーテル、メチルメトキシブタノール、ブチルカルビトール等の揮発性エーテル;低分子量の揮発性シリコーンオイルおよび揮発性有機変成シリコーンオイルが例示される。
揮発性分散媒(B)は2種類以上を併用しても良く、揮発性分散媒同士の相溶性は問わない。また、本発明のペースト状銀粒子組成物は使用する際にペースト状であればよいので、揮発性分散媒(B)は常温で固体状、例えば、ピロガロール、p−メチルベンジルアルコール、o−メチルベンジルアルコール、シル−3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジオール、ピナコールなどのアルコール類;ビフェニル、ナフタレン、デュレンなどの炭化水素類;ジベンゾイルメタン、カルコン、アセチルシクロヘキサンなどのケトン類;ラウリン酸、カプリン酸などの脂肪酸類を含有していてもよい。この際、融点、沸点、蒸気圧、粘度、誘電率、屈折率等が異なる、複数の揮発性分散媒を併用してもよい。なお、加熱焼結性銀粒子(A)の表面を被覆する極性基を有する被覆剤が撥水性の場合は、水は好ましくない。
揮発性分散媒(B)の配合量は、加熱焼結性銀微粒子(A1)および加熱焼結性銀粒子(A2)の混合物を常温においてペースト状にするのに十分な量である。加熱焼結性銀微粒子(A1)および加熱焼結性銀粒子(A2)の粒径、表面積、形状、配合比率など、および、揮発性分散媒の種類、粘度などにより、ペースト状にするのに十分な量は変動するが、具体的には、例えば、加熱焼結性銀微粒子(A1)および加熱焼結性銀粒子(A2)の混合物100質量部当たり5質量部以上20質量部以下である。
本発明の接合体を製造するのに使用するペースト状銀粒子組成物には、本発明の目的に反せず効果を低下させない限り、すなわち、加熱焼結性銀微粒子(A1)および加熱焼結性銀粒子(A2)の加熱焼結性を阻害せず、加熱焼結物の導電性や熱伝導性を低下させない限り、加熱焼結性銀微粒子(A1)および加熱焼結性銀粒子(A2)以外の金属系の粉体、はんだ合金粒子、セラミックス粒子、樹脂等の非金属系の粉体、金属化合物、金属錯体、分散性向上剤、チクソ剤、安定剤、着色剤等を配合しても良い。
本発明の接合体を製造するのに使用するペースト状銀粒子組成物は、少なくとも加熱焼結性銀微粒子(A1)および加熱焼結性銀粒子(A2)と揮発性分散媒(B)を、ミキサーに投入し、均一なペースト状になるまで撹拌混合することにより製造することができる。
本発明の接合体を製造するのに使用する雰囲気ガスは、酸素ガス濃度が0.01体積%以上2体積%以下の低酸素濃度不活性ガスであり、好ましくは酸素ガス濃度が1体積%以下であり、より好ましくは酸素ガス濃度が0.5体積%以下であり、特に好ましくは0.1体積%以下である。酸素ガス濃度が2体積%以下であるのは、2体積%を超えると銅製部材表面層の酸化が急速に進行し、銀粒子焼結物に接している銅製部材と銀粒子焼結物との境界線に短辺が接する前記長方形内に微粒子状銅酸化物ができにくいからである。
また、銅製部材表面が真新しい10円硬貨の色と同様の色から赤褐色、ついで黒褐色に変色し、半田付性が悪くなるからである。
酸素ガス濃度の下限値は、下記のとおり実用上の観点から0.01体積%である。
不活性ガスとして窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガスが例示されるが、調達容易性とコストの点で窒素ガスであることが好ましい。
低酸素濃度不活性ガス雰囲気は、例えば、一般的に高純度窒素ガスとして市販されている酸素濃度が0.1ppm程度の高純度窒素ガスをイナートガスオーブンに導入して形成するが、イナートガスオーブン内のデッドスペースの存在や、外気である空気の混入または侵入があるため、酸素ガス濃度は0.01体積%以上であれば良い。なお、本発明の目的に反しない限り、イナートガスオーブン中において部分的に酸素ガス濃度が0.01体積%未満となっても良い。酸素ガス濃度は酸素濃度計で測定でき、そのような酸素濃度計は多数市販されている。酸素ガス濃度の測定は、イナートガスオーブンの本体内またはイナートガスオーブン内のガスの排出口において測定できるが、連続的または断続的に測定した酸素ガス濃度の平均値が0.01体積%以上であれば良い。
また、前記ペースト状銀粒子組成物を、耐酸化性金属製部材と銅製部材間、または、銅製部材同士間に介在させてから加熱する温度は70℃以上300℃以下である。加熱温度が70℃未満であると、ペースト状銀粒子組成物中の加熱焼結性銀微粒子(A1)および加熱焼結性銀粒子(A2)の混合物が焼結しにくく、300℃を越えると、低酸素濃度不活性ガス中であっても銅製部材の表面の酸化が急速に進んで、銀粒子焼結物に接している銅製部材と銀粒子焼結物との境界線に短辺が接する前記長方形内も酸化銅になりかねないからである。このため、加熱温度は150℃から250℃の範囲であることが好ましい。
加熱焼結性銀微粒子(A1)および加熱焼結性銀粒子(A2)の混合物の加熱焼結物は、数多くの微細な空孔や連続した空孔、すなわち、細孔を有しており、多孔質である。その空間の割合を示す空孔率は、固体状銀の断面における面積比で40%以下であることが好ましい。また空孔率の下限値は限定されないが、面積比で5%以上であり、加圧して焼結した場合は0%もあり得る。
空孔率の測定は通常の測定方法が利用できる。焼結体の断面を電子顕微鏡で写真撮影し、画像解析ソフトにより、写真における銀部分と空間部分の面積比率を求める方法、電子顕微鏡により撮影した写真を均質な紙等に印刷し、銀部分と空間部分をはさみ等で切り分けて各々の質量を測定し、その質量比率を面積比率とする方法が例示される。
本発明の接合体を製造するのに使用する耐酸化性金属製部材と銅製部材または銅製部材同士は、部材間に介在する前記ペースト状銀粒子組成物を加熱することにより揮発性分散媒が揮発し、加熱焼結性銀微粒子(A1)および加熱焼結性銀粒子(A2)の混合物が融着した銀粒子焼結物により接合される。
本発明の接合体を製造するのに使用するペースト状銀粒子組成物は、酸素ガス濃度が0.01体積%以上2体積%以下の低酸素濃度不活性ガス中で、加熱することにより揮発性分散媒(B)が揮散し、加熱焼結性銀微粒子(A1)および加熱焼結性銀粒子(A2)の混合物が焼結して、導電性と熱伝導性が優れた多孔質固形状銀となり、耐酸化性金属製部材と銅製部材または銅製部材同士を強固に接合する。ペースト状銀粒子組成物の加熱時に圧力や超音波振動を加えても良い。
本発明の接合体における耐酸化性金属製部材の金属は、銀、金、白金、パラジウム、または、これら各金属の合金が例示される。耐酸化性金属製部材は、母材がこれらの金属でメッキされたものであってもよい。その母材は限定されないが、銅、鉄、ニッケル、シリコン等が例示される。
耐酸化性金属製部材として、全体または一部が耐酸化性金属部分を有するコンデンサおよび抵抗から選択されるチップ部品、または、耐酸化性金属部分を有するダイオード、トランジスタ、メモリ、ICおよびCPUから選択される半導体チップが例示される。
銅製部材と銅メッキの銅は、純度が99.9質量%以上である実質的に純銅であっても良く、例えば、鉄、リン、スズ、マグネシウム、亜鉛等の他の金属成分および/または非金属成分を合計量として、0.01質量%〜5質量%含む銅合金であっても良い。
また、その表面が酸化されて銅酸化物の被膜が形成されていても良いが、銅酸化膜の被膜が厚いと銀粒子焼結物と接合しにくくなるので、銅酸化物の被膜の厚さは100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましく、特には10nm以下であることが好ましい。銅は酸素により表面が酸化され、例えば、銅酸化物の被膜を有しない純銅を常温の大気中で保管すると、その表面は自然に酸化され、通常、厚さが3nm以上10nm以下である銅酸化物の被膜が形成される。
銅製部材は、母材が銅でメッキされたものであってもよい。母材として鉄、ニッケル、シリコンが例示される。
銅製部材として、銅メッキ半導体素子、銅製もしくは銅メッキ回路基板または銅製もしくは銅メッキリードフレームが例示される。
前記ペースト状銀粒子組成物中の銀粒子焼結物による耐酸化性金属製部材と銅製部材の接合体および銅製部材同士の接合体は、銅製部材と銀粒子焼結物の接合部において、銀粒子焼結物に接する銅製部材の内部、具体的には、銅製部材と銀粒子焼結物との境界線に短辺が接する前記長方形内に微粒子状銅酸化物が散在するため、接合強度と接合強度の耐熱衝撃性が優れる。
耐酸化性金属製部材と銅製部材の接合体は、1個の耐酸化性金属製部材と1個の銅製部材の接合体だけでなく、2個以上の耐酸化性金属製部材と1個の銅製部材の接合体、1個の耐酸化性金属製部材と2個以上の銅製部材の接合体、2個の耐酸化性金属製部材と2個以上の銅製部材の接合体であってもよい。銅製部材同士の接合体は、3個以上の銅製部材の接合体であってもよい。
本発明の接合体の製造時には、前記ペースト状銀粒子組成物を耐酸化性金属製部材と銅製部材間、または、銅製部材同士間に介在させ、酸素ガス濃度が0.01体積%以上2体積%以下の低酸素濃度不活性ガス中で、70℃以上300℃以下で加熱することにより、加熱焼結性銀微粒子(A1)および加熱焼結性銀粒子(A2)の混合物が焼結して耐酸化性金属製部材と銅製部材、または、銅製部材同士を接合する。その際、銅製部材の表面の銅酸化物が、銅製部材の内部へ拡散し、銅製部材と銀粒子焼結物との境界線に短辺が接する前記長方形内に、平均粒径が5nm以上50nm以下である微粒子状銅酸化物が形成されるが、それに伴って加熱焼結性銀微粒子(A1)および加熱焼結性銀粒子(A2)の混合物が焼結した銀粒子焼結物の銀も銅製部材の内部へ拡散する結果、耐酸化性金属製部材と銅製部材または銅製部材同士が強固に接合すると推察される。そして、加熱する際の雰囲気が、酸素ガス濃度が0.01体積%以上2体積%以下の低酸素濃度不活性ガスである場合に、最もその効果が促進される。
耐酸化性金属製部材と銅製部材の接合体の接合強度および銅製部材同士の接合体の接合強度は、通常の方法、例えば、接着強さ試験機(西進商事株式会社製のボンドテスター)で測定することができる。
熱衝撃試験は通常の方法で、具体的にはサーマルサイクル試験で行うことができる。その際、熱衝撃のかけ方は、低温と高温を交互にかける2ゾーン型、低温と高温の間に常温を入れる3ゾーン型が例示されるが、2ゾーン型のほうが好ましい。
試験体は低温と高温に交互に曝されることによりその温度差に相当する熱衝撃を受ける。低温側の温度は通常−20℃から−55℃の範囲であり、高温側の温度は通常100℃から150℃の範囲である。試験体はそれぞれの温度に通常10分間から60分間、暴露される。
本発明の接合体の製造時には、ペースト状銀粒子組成物が加熱により、揮発性分散媒(B)が揮散し、加熱焼結性銀微粒子(A1)および加熱焼結性銀粒子(A2)の混合物が焼結するので、耐酸化性金属製部材と銅製部材間、または、銅製部材同士間の接合に用いた場合、銀微粒子と銀粒子の焼結物は、焼結時に接触していた耐酸化性金属製部材と銅製部材、例えば金メッキ基板、銀基板、銀メッキ基板、銅基板、銅メッキ基板、ニッケルメッキ基板等の金属系基板へ強固に接着し、電気絶縁性基板上の電極等金属部分へ強固に接着し、さらには耐熱衝撃性が優れている。このため本発明の接合体は、耐酸化性金属製部材と銅製部材の接合体または銅製部材同士の接合体を有する電子装置の製造に有用である。
そのような接合体として、銅製部材が銅製もしくは銅メッキ回路基板または銅製もしくは銅メッキリードフレームと耐酸化性金属製部材が耐酸化性金属部分を有するコンデンサおよび抵抗から選択されるチップ部品との接合体、または、耐酸化性金属部分を有するダイオード、トランジスタ、メモリ、ICおよびCPUとの接合体が例示される。
本発明の電子装置は、耐酸化性金属製部材と銅製部材または銅製部材同士が、両部材間に介在する銀粒子焼結物により接合されている接合体を有する電子装置であって、銀粒子焼結物と接する銅製部材の内部には微粒子状銅酸化物が散在することを特徴とする。
さらには、耐酸化性金属製部材が耐酸化性金属部分を有するコンデンサおよび抵抗から選択されるチップ部品、または、耐酸化性金属部分を有するダイオード、トランジスタ、メモリ、ICおよびCPUから選択される半導体チップであり、銅製部材が銅製もしくは銅メッキ回路基板または銅製もしくは銅メッキリードフレームであことを特徴とする。
本発明の実施例と比較例を掲げる。実施例と比較例中でのペースト状銀粒子組成物の加熱は、実験室内に設置されたイナートガスオーブン中での加熱であり、イナートガスオーブン内の雰囲気は、低酸素濃度窒素ガス、酸素含有窒素ガス、または、窒素ガスである。
加熱焼結性銀微粒子(A1)および加熱焼結性銀粒子(A2)の被覆剤量、ペースト状銀粒子組成物の加熱焼結物の空隙率、体積抵抗率および熱伝導率、銅製部材中の微粒子状銅酸化物の形状、平均粒径および個数、ペースト状銀粒子組成物の加熱焼結物により接合された接合体のせん断接着強さおよび冷熱サイクル試験後のせん断接着強さは、下記のとおりに測定した。測定温度は特に記載のない場合は室温(約25℃)である。
実施例で用いた加熱焼結性銀微粒子(A1)、加熱焼結性銀粒子(A2)は、市販品もしくは試供品であり粉末状である。ともに、銀塩の湿式還元法によるものであり、多結晶である。
実施例で用いた銅製部材である銅基板(銅純度99.96質量%)および銅チップ(銅純度99.96質量%)は大気中保管により表面が自然酸化しており、表面を被覆している銅酸化物の厚さはともに約4nmである。銅基板および銅チップの色は、真新しい10円硬貨の色と同様である。
実施例と比較例で使用している加熱焼結性銀微粒子(A1)および加熱焼結性銀粒子(A2)の平均粒径は、レーザ回折散乱式粒度分布測定装置を用いて測定した粒度分布の体積基準の積算分率50%値、すなわち、メジアン径(D50値)である。
[加熱焼結性銀微粒子(A1)および加熱焼結性銀粒子(A2)の被覆剤量]
示差熱熱重量同時測定装置(島津製作所株式会社製DTG−60AH型)を用い、空気雰囲気中で加熱焼結性銀微粒子(A1)または加熱焼結性銀粒子(A2)を昇温速度10℃/分にて室温(約25℃)から500℃まで昇温して、加熱焼結性銀微粒子(A1)または加熱焼結性銀粒子(A2)の重量の減少率を、極性基を有する有機物の被覆剤量として算出した。
[ペースト状銀粒子組成物の加熱焼結物の空隙率]
幅50mm×長さ50mm×厚さ2.0mmのガラス板上に、15mm角の開口部を有する2mm厚のメタルマスクを用いてペースト状銀粒子組成物を塗布し、イナートガスオーブン内で、200℃または250℃で1時間加熱して、板状の銀粒子焼結物とした。
ガラス板からはがした板状の銀粒子焼結物を自動精密切断装置(日本電子株式会社製、商品名アイソメット)により削り出し、イオンミリング装置(日本電子株式会社製、商品名クロスセクションポリッシャ)により切削面を研磨して得られた銀粒子焼結物の断面を走査型電子顕微鏡で撮影し、その画像を均質な印刷用紙に印刷して多孔質銀粒子焼結物の固体部分と空間部分を切り分け、各々の質量を測定して空間部分の占める割合を空隙率として%で示した。
[ペースト状銀粒子組成物の加熱焼結物の体積抵抗率]
幅50mm×長さ50mm×厚さ2.0mmのガラス板上に、10mm角の開口部を有する2mm厚のメタルマスクを用いて、ペースト状銀粒子組成物を塗布し、イナートガスオーブン内で、200℃または250℃で1時間加熱して板状の銀粒子焼結物とした。
ガラス板からはがした板状の銀粒子焼結物について、JIS K 7194に準じた方法により体積抵抗率(単位;Ω・cm)を測定した。
[ペースト状銀粒子組成物の加熱焼結物の熱伝導率]
幅50mm×長さ50mm×厚さ2.0mmのガラス板上に、10mm角の開口部を有する2mm厚のメタルマスクを用いて、ペースト状銀粒子組成物を塗布し、イナートガスオーブン内で、200℃または250℃で1時間加熱して板状の銀粒子焼結物とした。
多孔質銀粒子焼結物が接着しているガラス板を該オーブンから取り出し、室温に冷却した。
ガラス板からはがした板状の多孔質銀粒子焼結物について、レーザーフラッシュ法により熱伝導率(単位;W/m・K)を測定した。
[銅基板中の微粒子状銅酸化物の形状、平均粒径および個数]
幅25mm×長さ70mm、厚さ1.0mmの銅基板(銅純度99.96質量%)上に、10mmの間隔をおいて4つの開口部(2.5mm×2.5mm)を有する100μm厚のメタルマスクを用いて、ペースト状銀粒子組成物を印刷塗布し、その上にサイズが2.5mm×2.5mm×0.5mmの表面が金メッキされたシリコンチップ(金純度99.9%質量以上)または銅チップ(銅純度99.96質量%)を載せ、イナートガスオーブン中で、200℃または250℃で1時間加熱して、銀粒子焼結物により銅基板と金メッキシリコンチップまたは銅チップを接合してそれらの接合体である板状の試験体を得た。この試験体を自動精密切断装置(日本電子株式会社製、商品名アイソメット)により切削し、切削面をイオンミリング装置(日本電子株式会社製、商品名クロスセクションポリッシャ)により研磨して、銅基板と金メッキシリコンチップの接合部または銅基板と銅チップの接合部の断面を透過型電子顕微鏡で撮影した。
銅基板と金メッキシリコンチップの接合体または銅基板と銅チップの接合体における、銅基板と銀粒子焼結物の隣接部断面の、電子顕微鏡写真に、 銅基板と銀粒子焼結物との境界線,および, 該境界線に短辺が接する長方形(ただし、境界線に接する短辺の長さが100nmであり、境界線から銅基板内部方向に延びる長辺の長さが300nmである)を追記し、該長方形中に存在する微粒子状銅酸化物の形状を目視で観察した。微粒子状銅酸化物の平均粒径は、その面積範囲内に存在する個々の微粒子状銅酸化物について、(長径+短径)/2の数値が5nm以上50nm以下の範囲内にあるすべての微粒子状銅酸化物の粒径の算術平均値を平均粒径とした。微粒子状銅酸化物の個数は、その範囲内に存在する(長径+短径)/2の粒径が5nm以上50nm以下の微粒子状銅酸化物の個数を測定した。なお、微粒子状銅酸化物の一部が該長方形外にはみ出しているもの、および、微粒子状銅酸化物の輪郭が明らかに不明確なものは除外した。なお、電子顕微鏡写真は拡大、縮小して用いても良い。
[接合体のせん断接着強さ]
幅25mm×長さ70mm、厚さ1.0mmの銅基板(銅純度99.96質量%)上に、10mmの間隔をおいて4つの開口部(2.5mm×2.5mm)を有する100μm厚のメタルマスクを用いて、ペースト状銀粒子組成物を印刷塗布し、その上にサイズが2.5mm×2.5mm×0.5mmの表面が金メッキされたシリコンチップ(金純度99.9質量%以上)または銅チップ(銅純度99.96質量%)を載せ、イナートガスオーブン中で、200℃または250℃で1時間加熱して、銀焼結物により銅基板と金メッキシリコンチップまたは銅チップを接合した。
得られた銅基板と金メッキシリコンチップの接合体または銅基板と銅チップの接合体である接合強度測定用試験体を、接着強さ試験機の試験体取付け具にセットし、金メッキシリコンチップまたは銅チップの側面を接着強さ試験機の押圧棒により押速度23mm/分で押圧し、接合部がせん断破壊したときの荷重をもってせん断接着強さ(単位;MPa)とした。4個の試験体の平均値をせん断接着強さとした。
[接合体の冷熱サイクル試験後のせん断接着強さ]
銅基板と金メッキシリコンチップの接合体または銅基板と銅チップの接合体である接合強度測定用試験体を冷熱衝撃試験機に入れて、−55℃で15分間放置と+150℃で15分間放置を1サイクルとする冷熱衝撃を500サイクルおこなった。かくして得られた冷熱サイクル試験後の接合強度測定用試験体を接着強さ試験機の試験体取付け具にセットし、金メッキシリコンチップまたは銅チップの側面を接着強さ試験機の押圧棒により押速度23mm/分で押圧し、接合部がせん断破壊したときの荷重をもってせん断接着強さ(単位;MPa)とした。4個の試験体の平均値をせん断接着強さとした。
[実施例1]
ミキサー中で、平均粒径が0.02μmであり、ヘキサン酸で表面被覆された球状の加熱焼結性銀微粒子(ヘキサン酸量2.5質量%)15質量部、平均粒径が1.0μmであり、ステアリン酸で表面被覆された粒状の加熱焼結性銀粒子(ステアリン酸量0.3質量%)85質量部、および、沸点が219℃であるα−ターピネオール(関東化学株式会社製)12質量部を均一に混合してペースト状銀粒子組成物を調製した。
このペースト状銀粒子組成物について、酸素ガス濃度が0.05体積%である低酸素濃度窒素ガス中で200℃で1時間の加熱による銀粒子焼結物の空隙率、体積抵抗率および熱伝導率を測定し、銅基板中の微粒子状銅酸化物の形状、平均粒径および個数を測定した。また、このペースト状銀粒子組成物の酸素ガス濃度が0.05体積%である低酸素濃度窒素ガス中での加熱による銀粒子焼結物により接合された銅基板と金メッキシリコンチップの接合体のせん断接着強さ、および、銅基板と金メッキシリコンチップの接合体を冷熱サイクル試験にかけた後のせん断接着強さを測定し、結果を表1にまとめて示した。ただし、表1−表4では、「金メッキシリコンチップ」を「金メッキチップ」と略記している。
なお、観察したところ、該接合体中の銅基板は、ほぼ変色なしであった。
以上の結果により、この接合方法が金メッキシリコンチップと銅基板を強固に接合し、耐熱衝撃性に優れる金メッキシリコンチップと銅基板の接合体を得るのに有用なことがわかった。
[実施例2]
ミキサー中で、平均粒径が0.02μmであり、ヘキサン酸で表面被覆された球状の加熱焼結性銀微粒子(ヘキサン酸量2.5質量%)10質量部、平均粒径が0.7μmであり、ステアリン酸で表面被覆された粒状の加熱焼結性銀粒子(ステアリン酸量0.3質量%)90質量部、および、沸点が219℃であるα−ターピネオール(関東化学株式会社製)11質量部を均一に混合してペースト状銀粒子組成物を調製した。
このペースト状銀粒子組成物について、酸素ガス濃度が0.5体積%である低酸素濃度窒素ガス中で200℃で1時間の加熱による銀粒子焼結物の空隙率、体積抵抗率および熱伝導率を測定し、銅基板中の微粒子状銅酸化物の形状、平均粒径および個数を測定した。また、このペースト状銀粒子組成物の酸素ガス濃度が0.5体積%である低酸素濃度窒素ガス中での加熱による銀粒子焼結物により接合された銅基板と金メッキシリコンチップのせん断接着強さ、および、銅基板と金メッキシリコンチップの接合体を冷熱サイクル試験にかけた後のせん断接着強さを測定し、結果を表1にまとめて示した。
なお、観察したところ、該接合体中の銅基板は、ほぼ変色なしであった。
以上の結果により、この接合方法が金メッキシリコンチップと銅基板を強固に接合し、耐熱衝撃性に優れる金メッキシリコンチップと銅基板の接合体を得るのに有用なことがわかった。
[実施例3]
ミキサー中で、平均粒径が0.2μmであり、オクタン酸で表面被覆された球状の加熱焼結性銀微粒子(オクタン酸量0.8質量%)30質量部、平均粒径が3.5μmであり、ステアリン酸で表面被覆された球状の加熱焼結性銀粒子(ステアリン酸量0.3質量%)70質量部、および、沸点が244℃であるオクタンジオール(関東化学株式会社製)12質量部を均一に混合してペースト状銀粒子組成物を調製した。
このペースト状銀粒子組成物について、酸素ガス濃度が0.5体積%である低酸素濃度窒素ガス中で250℃で1時間の加熱による銀粒子焼結物の空隙率、体積抵抗率および熱伝導率を測定し、銅基板中の微粒子状銅酸化物の形状、平均粒径および個数を測定した。また、このペースト状銀粒子組成物の酸素ガス濃度が0.5体積%である低酸素濃度窒素ガス中での加熱による銀粒子焼結物により接合された銅基板と金メッキシリコンチップのせん断接着強さ、および、銅基板と金メッキシリコンチップの接合体を冷熱サイクル試験にかけた後のせん断接着強さを測定し、結果を表1にまとめて示した。
なお、観察したところ、該接合体中の銅基板は、ほぼ変色なしであった。
以上の結果により、この接合方法が金メッキシリコンチップと銅基板を強固に接合し、耐熱衝撃性に優れる金メッキシリコンチップと銅基板の接合体を得るのに有用なことがわかった。
[実施例4]
実施例1において、酸素ガス濃度が0.05体積%である低酸素濃度窒素ガスの代わりに、酸素ガス濃度が1.5体積%の低酸素濃度窒素ガスを用いた以外は同様にして、酸素ガス濃度が1.5体積%である低酸素濃度窒素ガス中での加熱による銀粒子焼結物の空隙率、体積抵抗率および熱伝導率を測定し銅基板中の微粒子状銅酸化物の形状、平均粒径および個数を測定した。また、このペースト状銀粒子組成物の酸素ガス濃度が1.5体積%である低酸素濃度窒素ガス中での加熱による銀粒子焼結物により接合された銅基板と金メッキシリコンチップ接合体のせん断接着強さ、および、銅基板と金メッキシリコンチップの接合体を冷熱サイクル試験にかけた後のせん断接着強さを測定し、結果を表2にまとめて示した。
なお、観察したところ、該接合体中の銅基板は、ほぼ変色なしであった。
以上の結果により、この接合方法が金メッキシリコンチップと銅基板を強固に接合し、耐熱衝撃性に優れる金メッキシリコンチップと銅基板の接合体を得るのに有用なことがわかった。
[実施例5]
実施例1において、酸素ガス濃度が0.05体積%である低酸素濃度窒素ガスの代わりに、酸素ガス濃度が0.02体積%の低酸素濃度窒素ガスを用い、200℃の代わりに250℃で加熱した以外は同様にして、酸素ガス濃度が0.02体積%である低酸素濃度窒素ガス中での加熱による銀粒子焼結物の空隙率、体積抵抗率および熱伝導率を測定し、銅基板中の微粒子状銅酸化物の形状、平均粒径および個数を測定した。また、このペースト状銀粒子組成物の酸素ガス濃度が0.02体積%である低酸素濃度窒素ガス中での加熱による銀粒子焼結物により接合された銅基板と金メッキシリコンチップの接合体のせん断接着強さ、および、銅基板と金メッキシリコンチップの接合体を冷熱サイクル試験にかけた後のせん断接着強さを測定し、結果を表2にまとめて示した。
なお、観察したところ、該接合体中の銅基板は、ほぼ変色なしであった。
以上の結果により、この接合方法が金メッキシリコンチップと銅基板を強固に接合し、耐熱衝撃性に優れる金メッキシリコンチップと銅基板の接合体を得るのに有用なことがわかった。
[実施例6]
実施例1において、金メッキシリコンチップの代わりに、銅チップ用い、200℃の代わりに250℃で加熱した以外は同様にして、酸素ガス濃度が0.05体積%である低酸素濃度窒素ガス中での加熱による銀粒子焼結物の空隙率、体積抵抗率および熱伝導率を測定し、銅基板中の微粒子状銅酸化物の形状、平均粒径および個数を測定した。また、このペースト状銀粒子組成物の酸素ガス濃度が0.05体積%である低酸素濃度窒素ガス中での加熱による銀粒子焼結物により接合された銅基板と銅チップの接合体のせん断接着強さ、および、銅チップと銅基板の接合体を冷熱サイクル試験にかけた後のせん断接着強さを測定し、結果を表2にまとめて示した。
なお、観察したところ、該接合体中の銅基板は、ほぼ変色なしであった。
以上の結果により、この接合方法が銅チップと銅基板を強固に接合し、耐熱衝撃性に優れる銅チップと銅基板の接合体を得るのに有用なことがわかった。
[比較例1]
ミキサー中で、平均粒径が0.4μmであり、ヒドロキノンで表面被覆された球状の加熱焼結性銀微粒子(ヒドロキノン量0.1質量%)100質量部、および、沸点が100℃であるイオン交換水(自社製)7.5質量部を均一に混合してペースト状銀粒子組成物を調製した。
このペースト状銀粒子組成物について、酸素ガス濃度が0.5体積%である低酸素濃度窒素ガス中で200℃で1時間の加熱による銀粒子焼結物の空隙率、体積抵抗率および熱伝導率を測定し、銅基板中の微粒子状銅酸化物の形状、平均粒径および個数を測定した。また、このペースト状銀粒子組成物の酸素ガス濃度が0.5体積%である低酸素濃度窒素ガス中での加熱による銀粒子焼結物により接合された銅基板と金メッキシリコンチップの接合体のせん断接着強さ、および、銅基板と金メッキシリコンチップの接合体を冷熱サイクル試験にかけた後のせん断接着強さを測定し、結果を表3にまとめて示した。
なお、観察したところ、該接合体中の銅基板は、ほぼ変色なしであった。
以上の結果により、この接合方法では金メッキシリコンチップと銅基板を強固に接合できず、しかも、耐熱衝撃性に優れる金メッキシリコンチップと銅基板の接合体を得ることができないことがわかった。
[比較例2]
ミキサー中で、平均粒径が3.0μmであり、ステアリン酸で表面被覆されたフレーク状の加熱焼結性銀粒子(ステアリン酸量0.7質量%)100質量部、および、沸点が157℃である1−ヘキサノール(関東化学株式会社製)10質量部を均一に混合してペースト状銀粒子組成物を調製した。
このペースト状銀粒子組成物について、酸素ガス濃度が0.5体積%である低酸素濃度窒素ガス中で200℃で1時間の加熱による銀粒子焼結物の空隙率、体積抵抗率および熱伝導率を測定し、銅基板中の微粒子状銅酸化物の形状、平均粒径および個数を測定した。また、このペースト状銀粒子組成物の酸素ガス濃度が0.5体積%である低酸素濃度窒素ガス中での加熱による銀粒子焼結物により接合された銅基板と金メッキシリコンチップの接合体のせん断接着強さ、および、銅基板と金メッキシリコンチップの接合体を冷熱サイクル試験にかけた後のせん断接着強さを測定し、結果を表3にまとめて示した。
なお、観察したところ、該接合体中の銅基板は、ほぼ変色なしであった。
以上の結果により、この接合方法では金メッキシリコンチップと銅基板を強固に接合できず、しかも、耐熱衝撃性に優れる金メッキシリコンチップと銅基板の接合体を得ることができないことがわかった。
[比較例3]
ミキサー中で、平均粒径が1.1μmであり、ステアリン酸で表面被覆された粒状の加熱焼結性の球状銀粒子(ステアリン酸量0.3質量%)100質量部、および、沸点が245℃である酢酸2−(2−ブトキシエトキシ)エチル(関東化学株式会社製)10質量部を均一に混合してペースト状銀粒子組成物を調製した。
このペースト状銀粒子組成物について、酸素ガス濃度が0.005体積%である窒素ガス中での加熱による銀粒子焼結物の空隙率、体積抵抗率および熱伝導率を測定し、銅基板中の微粒子状銅酸化物の形状、平均粒径および個数を測定した。また、このペースト状銀粒子組成物の酸素ガス濃度が0.005体積%である窒素ガス中で200℃で1時間の加熱による銀粒子焼結物により接合された銅基板と金メッキシリコンチップの接合体のせん断接着強さ、および、銅基板と金メッキシリコンチップの接合体を冷熱サイクル試験にかけた後のせん断接着強さを測定し、結果を表3にまとめて示した。
なお、観察したところ、該接合体中の銅基板は、ほぼ変色なしであった。
以上の結果により、この接合方法では金メッキシリコンチップと銅基板の接合強度は実施例1−実施例6と遜色はないが、耐熱衝撃性に優れる金メッキシリコンチップと銅基板の接合体を得ることができないことがわかった。
[実験例1]
実施例1において、酸素ガス濃度が0.05体積%である低酸素濃度窒素ガスの代わりに、酸素ガス濃度が2.5体積%である酸素含有窒素ガスを用いた以外は同様にして、このペースト状銀粒子組成物の酸素ガス濃度が2.5体積%である酸素含有窒素ガス中での加熱による銀粒子焼結物の空隙率、体積抵抗率および熱伝導率を測定し、銅基板中の微粒子状銅酸化物の形状、平均粒径および個数を測定した。また、このペースト状銀粒子組成物の酸素ガス濃度が2.5体積%である低酸素濃度窒素ガス中での加熱による銀粒子焼結物により接合された銅基板と金メッキシリコンチップの接合体のせん断接着強さ、および、銅基板と金メッキシリコンチップの接合体を冷熱サイクル試験にかけた後のせん断接着強さを測定した。さらに、接合体中の銅基板の変色を観察した。これらの結果を表4にまとめて示した。
接合体の銅基板中に微粒子状銅酸化物が1個含まれるので、請求項1発明の実施例相当である。接合強度が実施例1−実施例6と遜色がなく、耐熱衝撃性が実施例1−実施例6ほどではないが、優れている。
しかし、観察したところ、接合体中の銅基板が赤褐色に変色しており、実用性がないことがわかった。
[実施例7]
ミキサー中で、平均粒径が0.5μmであり、オクタン酸で表面被覆された球状の加熱焼結性銀微粒子(オクタン酸量0.8質量%)15質量部、平均粒径が1.0μmであり、ステアリン酸で表面被覆された粒状の加熱焼結性銀粒子(ステアリン酸量0.3質量%)85質量部、および、沸点が219℃であるα−ターピネオール(関東化学株式会社製)10質量部を均一に混合してペースト状銀粒子組成物を調製した。
このペースト状銀粒子組成物について、酸素ガス濃度が0.5体積%である低酸素濃度窒素ガス中で200℃で1時間の加熱による銀粒子焼結物の空隙率、体積抵抗率および熱伝導率を測定し、銅基板中の微粒子状銅酸化物の形状、平均粒径および個数を測定した。また、このペースト状銀粒子組成物の酸素ガス濃度が0.5体積%である低酸素濃度窒素ガス中での加熱による銀粒子焼結物により接合された銅基板と金メッキシリコンチップの接合体のせん断接着強さ、および、銅基板と金メッキシリコンチップの接合体を冷熱サイクル試験にかけた後のせん断接着強さを測定し、接合体中の銅基板の変色を観察し、結果を表4にまとめて示した。
接合体の銅基板中に微粒子状銅酸化物が2個含まれるので、請求項1発明の実施例相当である。接合強度が実施例1−実施例6と遜色がなく、耐熱衝撃性が実施例1−実施例6ほどではないが、優れている。
[実験例2]
ミキサー中で、平均粒径が0.02μmであり、ヘキサン酸で表面被覆された球状の加熱焼結性銀微粒子(ヘキサン酸量2.5質量%)15質量部、平均粒径が0.5μmであり、ステアリン酸で表面被覆された粒状の加熱焼結性銀粒子(ステアリン酸量0.4質量%)85質量部、および、沸点が219℃であるα−ターピネオール(関東化学株式会社製)13質量部を均一に混合してペースト状銀粒子組成物を調製した。
このペースト状銀粒子組成物について、酸素ガス濃度が0.5体積%である低酸素濃度窒素ガス中で200℃で1時間の加熱による銀粒子焼結物の空隙率、体積抵抗率および熱伝導率を測定し、銅基板中の微粒子状銅酸化物の形状、平均粒径および個数を測定した。また、このペースト状銀粒子組成物の酸素ガス濃度が0.5体積%である低酸素濃度窒素ガス中での加熱による銀粒子焼結物により接合された銅基板と金メッキシリコンチップの接合体のせん断接着強さ、および、銅基板と金メッキシリコンチップの接合体を冷熱サイクル試験にかけた後のせん断接着強さを測定し、接合体中の銅基板の変色を観察し、これらの結果を表4にまとめて示した。
接合体の銅基板中に微粒子状銅酸化物が2個含まれるので、請求項1発明の実施例相当ということができる。接合強度が実施例1−実施例6と遜色がなく、耐熱衝撃性が実施例1−実施例6ほどではないが、優れている。
Figure 0006944734
Figure 0006944734
Figure 0006944734
Figure 0006944734
本発明の耐酸化性金属製部材と銅製部材または銅製部材同士が、両部材間に介在する銀粒子焼結物により接合されている接合体は、銀粒子焼結物と接している銅製部材の内部に微粒子状銅酸化物が散在しており、耐酸化性金属製部材と銅製部材または銅製部材同士が強固に接合しており、耐熱衝撃性に優れているので、コンデンサ、抵抗、ダイオード、メモリ、演算素子(CPU)等のチップ部品の基板への接合体、放熱用部材の接合体とするのに有用である。また、これら接合体を有する電子装置を製造するのに有用である。
また、回路基板またはリードフレームと銀粒子焼結物を介して耐酸化性金属部分を有するコンデンサおよび抵抗から選択されるチップ部品、または、耐酸化性金属部分を有するダイオード、トランジスタ、メモリ、ICおよびCPUから選択される半導体チップを銅製部材と強固に接続してなる信頼性の高い電子装置を製造するのに有用である。
A せん断接着強さ測定用試験体
1 銅基板
2 ペースト状銀粒子組成物(加熱焼結後は多孔質の銀粒子焼結物)
3 金メッキシリコンチップまたは銅チップ

Claims (8)

  1. 耐酸化性金属製部材と銅製部材または銅製部材同士が、両部材間に介在する多孔質銀粒子焼結物により接合されている接合体であって、多孔質銀粒子焼結物に接している銅製部材の内部には、該銅製部材中の銅の酸化物であり、平均粒径が5nm以上50nm以下である微粒子状銅酸化物が散在することを特徴とする、耐酸化性金属製部材と銅製部材の接合体または銅製部材同士の接合体。
  2. 多孔質銀粒子焼結物に接している銅製部材の、電子顕微鏡による断面写真において、多孔質銀粒子焼結物との境界線に短辺が接する長方形(ただし、境界線に接する短辺の長さが100nmであり、境界線から銅製部材内部方向に延びる長辺の長さが300nmである)内に、微粒子状銅酸化物が3個以上存在することを特徴とする、請求項1に記載の耐酸化性金属製部材と銅製部材の接合体または銅製部材同士の接合体。
  3. 微粒子状銅酸化物の形状が、球状、粒状または涙滴状であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の耐酸化性金属製部材と銅製部材の接合体または銅製部材同士の接合体。
  4. 多孔質銀粒子焼結物の体積抵抗率が1×10−5Ω・cm以下であり、かつ、熱伝導率が100W/m・K以上であることを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の耐酸化性金属製部材と銅製部材の接合体または銅製部材同士の接合体。
  5. 耐酸化性金属製部材と銅製部材または銅製部材同士が、両部材間に介在する多孔質銀粒子焼結物により接合されている接合体を有する電子装置であって、多孔質銀粒子焼結物と接する銅製部材の内部には、該銅製部材中の銅の酸化物であり、平均粒径が5nm以上50nm以下である微粒子状銅酸化物が散在することを特徴とする、電子装置。
  6. 多孔質銀粒子焼結物に接している銅製部材の、電子顕微鏡による断面写真において、多孔質銀粒子焼結物との境界線に短辺が接する長方形(ただし、境界線に接する短辺の長さが100nmであり、境界線から銅製部材内部方向に延びる長辺の長さが300nmである)内に、微粒子状銅酸化物が3個以上存在することを特徴とする、請求項5に記載の電子装置。
  7. 微粒子状銅酸化物の形状が、球状、粒状または涙滴状であることを特徴とする、請求項5または請求項6に記載の電子装置。
  8. 銅製部材が銅製もしくは銅メッキ回路基板または銅製もしくは銅メッキリードフレームであり、耐酸化性金属製部材が耐酸化性金属部分を有するコンデンサおよび抵抗から選択されるチップ部品、または、耐酸化性金属部分を有するダイオード、トランジスタ、メモリ、ICおよびCPUから選択される半導体チップであることを特徴とする、請求項5から請求項7のいずれか1項に記載の電子装置。
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