本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。図1~図34に示す本実施形態の綴じ具0は、開閉可能な複数本の綴じ桿12、22を備えたリング綴じ具である。各綴じ桿12、22は、それぞれが予め紙葉類Sに穿たれた複数の綴じ孔に挿通されて、紙葉類Sを綴じ止める。図1に示しているように、この綴じ具0は、ノートの中紙となる複数枚のリーフやクリアブックのリフィル(さらには、表表紙や裏表紙)等Sを綴じることで、リングノートとしての用途に供することができる。このリングノートは、ページを180°の角度に開いた見開き状態とすることが可能である。
本実施形態の綴じ具0は、図1~図3、図7~図9、図12及び図24に示すように、互いに相対的に回動する第一の綴じ桿部材1及び第二の綴じ桿部材2と、両綴じ桿部材1、2が支持する綴じ桿12、22の閉止位置/開放位置を切り替えるために操作される背部材3と、背部材3を弾性付勢する弾性付勢部材たる引っ張りコイルばね4とを構成部材とする。
以後、説明の簡明化のため、上記リングノートの背幅方向をX軸方向、同リングノートの表紙幅方向をY軸方向、同リングノートの表紙高さ方向をZ軸方向と定義する。これらX軸、Y軸及びZ軸は、互いに直交する。Z軸方向は、綴じ桿部材1、2の回動の中心軸が伸びる軸心方向に該当する。
因みに、上掲の特許文献に開示されている従前の綴じ具は、B5サイズの紙葉類を綴じるものであった。本実施形態の綴じ具0は、それよりも大判の紙葉類S、具体的にはA4サイズの紙葉類Sを綴じるものである。それ故に、従前の綴じ具と比較して、綴じ桿部材1、2及び背部材3のZ軸方向に沿った寸法がより延長されており、また綴じ桿12、22の本数も増加している。
第一の綴じ桿部材1の形状と、第二の綴じ桿部材2の形状とは、相似している。図3、図4及び図7~図9に示すように、第一の綴じ桿部材1は、Z軸方向に沿って長尺な棒状の基体11と、基体11からY軸方向に伸び出した複数の綴じ桿12と、基体11から綴じ桿12とは反対側に垂下した第一の係留部13と、第一の係留部13からZ軸方向に沿って突出した突起部14と、基体11における係留部13及び突起部14とはZ軸方向に沿って偏倚した箇所から綴じ桿12とは反対側に膨出した膨出部15と、当該綴じ桿部材1の一端(背部材3の先端)側にある係合突起16と、当該綴じ桿部材1の他端(背部材3の基端)側にある被係合体17とを備える。本実施形態では、これら基体11、綴じ桿12、係留部13、突起部14、膨出部15、係合突起16及び被係合体17を樹脂一体成形している。
綴じ桿12は多数本存在し、図2~図4及び図7~図9に示すように、それらが軸心方向(Z軸方向)に沿って立ち並んでいる。個々の綴じ桿12は、図7~図9及び図13~図20に示すように、基体11の外側面111からX軸方向に沿って外側方に一旦直進して突き出し、その外方端から円弧または楕円弧を描くように湾曲しながらY軸方向に立ち上がっている。綴じ桿12の基端部12aの直進部分の上面121は、基体11のY軸方向を向く頂面113と略面一である。また、綴じ桿12の先端部12bは、相手方である第二の綴じ桿部材2の綴じ桿22に向かうようにX軸方向に直線的に伸びている。綴じ桿12の湾曲部分の断面は、軸心方向に少しく拡張した扁平な形状、略長円状または略角丸四角状をなす。綴じ桿12の先端部12bは、合决りの如く切り欠いてある。
図7~図9及び図13~図20に示すように、第一の係留部13は、基体11の内側面112の下半部から延出しており、Z軸方向から見たときに、X軸方向に沿って外側方に開放した略C字形をなす。この係留部13は、後述する背部材3に設けた第一の軸体J1を内側からくわえ込むようにして当該軸体J1に係合し、軸体J1とともに綴じ桿部材1の回動の中心軸C1となるヒンジを構成する。係留部13の内周面は、概ね部分円筒状をなしているが、基体11の底面114と交わる箇所については、当該底面114と直交または略直交してアングル状をなすような平面的な当たり面131となっている。
図7~図9に示すように、突出部14は、第一の係留部13の下端部位から、綴じ桿部材1の一端から他端に向かって突出している。この突出部14は、後述するロック位置(L)において背部材3に形成した内部空間34sに差し入る。
第二の綴じ桿部材2は、図3、図4及び図7~図9に示すように、Z軸方向に沿って長尺な棒状の基体21と、基体21からY軸方向に伸び出した複数の綴じ桿22と、基体21から綴じ桿22とは反対側に垂下した第二の係留部23と、第二の係留部23からZ軸方向に沿って突出した突起部24と、基体21における係留部23及び突起部24とはZ軸方向に沿って偏倚した箇所から綴じ桿22とは反対側に膨出した膨出部25と、当該綴じ桿部材2の一端(背部材3の先端)側にある被係合体27と、当該綴じ桿部材2の他端(背部材3の基端)側にある係合突起26とを備える。本実施形態では、これら基体21、綴じ桿22、係留部23、突起部24、膨出部25、係合突起26及び被係合体27を樹脂一体成形している。
綴じ桿22は多数本存在し、図2~図4及び図7~図9に示すように、それらが軸心方向(Z軸方向)に沿って立ち並んでいる。個々の綴じ桿22は、図7~図9及び図13~図20に示すように、基体21の外側面211からX軸方向に沿って外側方に一旦直進して突き出し、その外方端から円弧または楕円弧を描くように湾曲しながらY軸方向に立ち上がっている。綴じ桿22の基端部22aの直進部分の上面221は、基体21のY軸方向を向く頂面213と略面一である。また、綴じ桿22の先端部22bは、相手方である第一の綴じ桿部材1の綴じ桿12に向かうようにX軸方向に直線的に伸びている。綴じ桿22の湾曲部分の断面は、軸心方向に少しく拡張した扁平な形状、略長円状または略角丸四角状をなす。綴じ桿22の先端部は、合决りの如く切り欠いてある。
図7~図9及び図13~図20に示すように、第二の係留部23は、基体21の内側面212の下半部から延出しており、Z軸方向から見たときに、X軸方向に沿って外側方に開放した略C字形をなす。この係留部23は、後述する背部材3に設けた第二の軸体J2を内側からくわえ込むようにして当該軸体J2に係合し、軸体J2とともに綴じ桿部材2の回動の中心軸C2となるヒンジを構成する。係留部23の内周面は、概ね部分円筒状をなしているが、基体21の底面214と交わる箇所については、当該底面214と直交または略直交してアングル状をなすような平面的な当たり面231となっている。
図8及び図9に示すように、突出部24は、第二の係留部23の下端部位から、綴じ桿部材2の一端から他端に向かって突出している。この突出部24は、後述するロック位置(L)において背部材3に形成した内部空間34sに差し入る。
背部材3は、図5及び図6に示すように、Z軸方向に沿って長尺な棒状の背部材本体31と、この背部材本体31の基端側に一体に設けられた基端部32と、背部材本体31の先端側に一体に設けられた先端部33とを備えている。背部材本体31は、隔壁34によって長手方向に複数の領域R1、R2、R3に区画されている。すなわち、この実施形態の背部材3は、長手方向中央に前述した引っ張りコイルばね4を収容するための中央領域R3を備えているとともに、その中央領域R3と基端部32との間に第一枢着領域R1と第二枢着領域R2とを長手方向に交互に隣接させて設けている。また、中央領域R3と先端部33との間にも第一枢着領域R1と第二枢着領域R2とを長手方向に交互に隣接させて設けている。なお、図6の(j)、(k)、(l)、(m)、(n)及び(p)は、それぞれ図5におけるJ-J線、K-K線、L-L線、M-M線、N-N線及びP-P線に沿った断面図である。
第一枢着領域R1は、長手方向に離間する対をなす隔壁34間に形成されたもので、図6に示すように、隔壁34同士を連結する背壁35と、背壁35の一側縁からY方向に突設され隔壁34同士を連結する背の低い側壁36と、背壁35の他側縁に対応させて隔壁34間に架設され第一の綴じ桿部材1の第一の係留部13を枢支する第一の軸体J1とを備えている。第一の軸体J1は、第一の綴じ桿部材1の第一の係留部13を回動可能に支持する回動許容部分J1aと、第一の係留部13の回動を禁止する回動禁止部分J1bと、これら回動許容部分J1aと回動禁止部分J1bとを断面を変化させつつ接続する過渡案内部分J1cとを具備している。回動許容部分J1aは、基本的には断面円形状をなす軸状のもので、係留部13と接触しない外側部分を一部膨出させて綴じ桿部材1を係止するための係止面J1sを形成している。この係止面J1sは、綴じ桿部材1の基体11に当接して当該綴じ桿部材1の最大開成位置(Q)を規制するためのものである。回動禁止部分J1bは、綴じ桿部材1における基体11の底面114と係留部13の当たり面131とにより形成される直角の入隅1xに係合する角形エッジJ1eを備えている。この第一枢着領域R1を形成する先端側の隔壁34には、ロック位置(L)において第一の綴じ桿部材1の突起部14を収容する内部空間34sと、同じくロック位置(L)において第一の綴じ桿部材1の膨出部15と係合する係合段部34dとが設けられている。
第二枢着領域R2は、長手方向に離間する対をなす隔壁34間に形成されたもので、図6に示すように、隔壁34同士を連結する背壁35と、背壁35の他側縁からY方向に突設され隔壁34同士を連結する背の低い側壁36と、背壁35の一側縁に対応させて隔壁34間に架設され第二の綴じ桿部材2の第二の係留部23を枢支する第二の軸体J2とを備えている。第二の軸体J2は、第二の綴じ桿部材2の第二の係留部23を回動可能に支持する回動許容部分J2aと、第二の係留部23の回動を禁止する回動禁止部分J2bと、これら回動許容部分J2aと回動禁止部分J2bとを断面を変化させつつ接続する過渡案内部分J2cとを具備している。回動許容部分J2aは、基本的には断面円形状をなす軸状のもので、係留部23と接触しない外側部分を一部膨出させて綴じ桿部材2を係止するための係止面J2sを形成している。この係止面J2sは、綴じ桿部材2の基体21に当接して当該綴じ桿部材2の最大開成位置(Q)を規制するためのものである。回動禁止部分J2bは、綴じ桿部材2における基体21の底面214と係留部23の当たり面231とにより形成される直角の入隅2xに係合する角形エッジJ2eを備えている。この第二枢着領域R2を形成する先端側の隔壁34には、ロック位置(L)において第二の綴じ桿部材2の突起部24を収容する内部空間34sと、同じくロック位置(L)において第二の綴じ桿部材2の膨出部25と係合する係合段部34dとが設けられている。
以上説明した第一枢着領域R1と第二枢着領域R2とは、図5に示すように、中央領域R3と基端部32との間、及び中央領域R3と先端部33との間にそれぞれ、例えば3つずつ交互に配されている。そして、前述した第一の綴じ桿部材1における背部材3の第一枢着領域R1に対応する各部位には第一の係留部13がそれぞれ設けられており、これらの係留部13がそれぞれ対応する第一枢着領域R1の第一の軸体J1に係合させてある。前述した第二の綴じ桿部材2における背部材3の第二枢着領域R2に対応する各部位には第二の係留部23がそれぞれ設けられており、これらの係留部23がそれぞれ対応する第二枢着領域R2の第二の軸体J2に係合させてある。
しかして、第一の綴じ桿部材1が係合する第一の軸体J1と、第二の綴じ桿部材2が係合する第二の軸体J2とは、図5及び図6に示すように、互いにそれらの軸心方向(Z軸方向)と直交する幅方向(X軸方向)に偏倚しているように設けられている。その上で、第一の軸体J1と第二の係留部23とが一部オーバーラップし、前記第二の軸体J2と第一の係留部13とが一部オーバーラップして配置されている。すなわち、第一の係留部13は、Z軸方向から見たときに、X軸方向に沿って外側方に開放した略C字形をなすもので、対応する第一の軸体J1に内側から嵌合させてありこの軸体J1の内側を取り巻く係留部13と、隣接する第二の軸体J2とが、軸心方向から見た場合に一部オーバーラップするように配されており、ロック位置(L)においては係留部13の全体が第一の軸体J1の外側端よりも内側に配されている。同様に、第二の係留部23は、Z軸方向から見たときに、X軸方向に沿って外側方に開放した略C字形をなすもので、対応する第二の軸体J2に内側から嵌合させてありこの軸体J2の内側を取り巻く係留部23と、隣接する第一の軸体J1とが、軸心方向から見た場合に一部オーバーラップするように配されており、ロック位置(L)においては係留部23の全体が第二の軸体J2の外側端よりも内側に配されている。
なお、背部材3における背壁35と軸体J1、J2との間にはそれぞれ窓部3mが形成されており、図17及び図19に示すように、ロック位置(L)においてこれらの窓部3mに係留部13、23の先端がそれぞれ侵入している。
また、この背部材3の中央領域R3は、長手方向に離間する対をなす隔壁34間に形成されたもので、図5に示すように、隔壁34同士を連結する背壁35と、背壁35の一側縁からY方向に突設され隔壁34同士を連結する側壁36と、その側壁36の内面に突設されたばね掛け突起37とを備えたもので、この中央領域R3に収容された引っ張りコイルばね4の一端をこのばね掛け突起37を掛けている。この引っ張りコイルばね4の他端は、図12及び図24に示すように第二の綴じ桿部材2に設けたばね掛け突起29に掛けられており、この引っ張りコイルばね4の弾性力により背部材3を第二の綴じ桿部材2に対して基端方向に付勢している。
背部材3の基端部32は、図5に示すように、背壁35及び側壁36を介して背部材本体31と一体に設けられた基端ハウジング38と、この基端ハウジング38に枢着された拘束部材39とを備えている。基端ハウジング38は、図7及び図10~図12に示すように、両側壁381と、これら両側壁381の上端間を接続する頂壁382とを備えたもので、両側壁381間に第二の綴じ桿部材2の基端に突設した脱離防止ピン28が上下方向(Y軸方向)及び軸心方向(Z軸方向)に移動可能に遊嵌されている。頂壁382の上面には、第一及び第二の綴じ桿部材1、2の基体11、21に割り込んでこれら綴じ桿部材1、2を開成させるためのクサビ状をなすカム383が設けられている。拘束部材39は、軸384を介して基端ハウジング38に回動可能に設けられた対をなす外側壁391と、この外側壁391の下縁間を連結する底壁392とを備えたもので、底壁392の内面に、基端ハウジング38内に侵入する係止突起393を備えている。この拘束部材39は、その係止突起393が基端ハウジング38内に侵入する拘束位置(t)と、この拘束位置(t)から180度上方に回動した拘束解除位置(v)との間で回動しうるようになっており、拘束位置(t)においては係止突起393により綴じ桿部材2の脱離防止ピン28の先端を係止して背部材3が綴じ桿部材1、2に対して先端方向にスライドすることを規制している。また、拘束部材39には、図22、図23及び図25に示すように、拘束解除位置(v)において綴じ桿部材1、2を開成させるための方向を案内するための矢印39aや、滑り止めのための複数の突条39bが設けられている。
背部材3の先端部33は、図5に示すように、背壁35及び側壁36を介して背部材本体31と一体に設けられた先端ハウジング30を備えている。この先端ハウジング30は、図8及び図12~図14に示すように、両側壁301と、これら両側壁301の上端間を接続する頂壁302と、両側壁301の下端間を接続する背壁35とを備えたもので、両側壁301間に第一の綴じ桿部材1の先端に突設した脱離防止ピン18が上下方向(Y軸方向)、左右方向(X軸方向)及び軸心方向(Z軸方向)に移動可能に遊嵌されている。また、両側壁301には、図2、図3、図5及び図8に示すように、側方に開口する窓部30aがそれぞれ互い違いに配されている。
付言すれば、以上説明した綴じ具0は、綴じ桿12、22が使用者の意に反して開いてしまうのを防止するための少なくとも二つの開き防止機構と、落下等の衝撃で背部材3が綴じ桿部材1、2から脱離して綴じ桿としての機能が失われるのを防止するための少なくとも三つの脱離防止機構と、第一の綴じ桿部材1と第二の綴じ桿部材2とを同期して開閉させるための綴じ桿同期機構とを備えている。
一つ目の開き防止機構は、前述した軸体J1、J2の回動禁止部分J1b、J2bと、綴じ桿部材1、2に設けられた直角の入隅1x、2xとを備えたもので、図17及び図19に示すように、ロック位置(L)においてこの回動禁止部分J1b、J2bの角形エッジJ1e、J2eと直角の入隅1x、2xとが係合して綴じ桿部材1、2の回動が禁止されるようになっている。すなわち、ロック位置(L)において綴じ桿部材1、2が開こうとすると、入隅1x、2xを形成する係留部13、23の当たり面131、231と角形エッジJ1e、J2eを形成する起立面J1t、J2tとが干渉してその回動動作が禁止される。すなわち開き防止機構は、軸体J1、J2と係留部13、23とが干渉することで綴じ桿部材1、2が綴じ桿12、22を開放する方向に回動することを禁止するものである。
二つ目の開き防止機構は、第一、第二の綴じ桿部材1、2の膨出部15、25と、背部材3の各隔壁34に設けられロック位置(L)において図16及び図18に示すように膨出部15、25とそれぞれ係合する係合段部34dとを備えたものである。
一つ目の脱離防止機構は、綴じ桿部材1、2の各係留部13、23を、図17及び図19に示すように、綴じ状態すなわち綴じ桿部材1、2が閉止位置(R)にある状態において軸体J1、J2よりも下方(背部材3の背壁35側)に回り込む形状にしたものである。すなわち、各係留部13、23は、前述したように、Z軸方向から見たときに、X軸方向に沿って外側方に開放した略C字形をなしており、ロック位置(L)において背壁35と軸体J1、J2との間の窓部3mに各係留部12、23の先端がそれぞれ侵入する程度に回り込み量を最大限確保している。
二つ目の脱離防止機構は、図16及び図18に示すように、前述した綴じ桿部材1、2の各係留部13、23に設けられた突出部14、24と、背部材3の各隔壁34に設けられた内部空間34sとを備えたものであり、背部材3をロック位置(L)にスライドさせた状態で各突出部14、24が各内部空間34sに挿入されて脱離が禁止される。この脱離防止機構は、開き防止機構としても機能する。すなわち、背部材3がロック位置(L)をとるときに、内部空間34sと突出部14、24とが干渉することで綴じ桿部材1、2が綴じ桿12、22を開放する方向に回動することが禁止される。
三つ目の脱離防止機構は、第一の綴じ桿部材1の先端部に設けられた先端側の脱離防止ピン18と、第二の綴じ桿部材2の基端部に設けられた基端側の脱離防止ピン28とを具備してなるもので、図13、図14、図26及び図27に示すように、先端側の脱離防止ピン18を背部材3の先端部33に設けられた先端ハウジング30に遊嵌するとともに、図21及び図34に示すように、基端側の脱離防止ピン28を背部材3の基端部32に設けられた基端ハウジング38に遊嵌している。なお、先端側の脱離防止ピン18は第一の綴じ桿部材1の回転中心(第一の軸体J1の軸心C1)から偏心しているため、第一の綴じ桿部材1の開閉動作に伴って緩やかな円弧運動を行う。そのため、先端側の脱離防止ピン18と先端側ハウジング30との間には、図13、図14、図26及び図27に示すように、その円弧運動を許容しうるクリアランスが設けられている。また、基端側の脱離防止ピン28も第二の綴じ桿部材2の回転中心(第二の軸体J2の軸心C2)から偏心しているため、第二の綴じ桿部材2の開閉動作に伴って緩やかな円弧運動を行う。そのため、基端側の脱離防止ピン28と基端側ハウジング38との間にも、図21及び図34に示すように、その円弧運動を許容しうるクリアランスが設けられている。
綴じ桿同期機構は、図15、図20、図28及び図33に示すように、第一の綴じ桿部材1の基端側に設けられた係合突起16と、この係合突起16に係合する第二の綴じ桿部材2の被係合体27と、第二の綴じ桿部材2の先端側に設けられた係合突起26と、この係合突起26に係合する第一の綴じ桿部材1の被係合体17とを具備するものである。このような構成によれば、軸心方向(Z軸方向)に沿ってみた場合に、係合突起16、26が軸体J1、J2の軸心C1、C2から偏倚した位置に配置されているので、綴じ桿部材1、2が開閉動作を行う際に、係合突起16、26がY軸方向に移動することになる。そして、この係合突起16、26のY軸方向の動きが被係合体27、17にそれぞれ伝達されることにより、これらの綴じ桿部材1、2が同期して開閉することになる。なお、係合突起16、26は対応する綴じ桿部材1、2の回転中心すなわち軸体J1、J2の軸心C1、C2から偏倚しているので、緩やかな円弧運動を行う。そのため、被係合体17、27は、その円弧運動を許容する形状、すなわち外方に解放した溝状をなしている。
ついで、この綴じ具0の作動について説明する。
図10~図21は、綴じ桿部材1、2が閉じており、背部材3がロック位置(L)に配されてその綴じ桿12、22の開きを禁止した綴じ状態(綴じ桿部材1、2が閉止位置(R)にある状態)を示している。一方、図22~図34は、綴じ桿部材1、2が開いており、背部材3がアンロック位置(U)に配されてその綴じ桿12、22が開かれた綴じ解除状態(綴じ桿部材1、2が最大開成位置(Q)にある状態)を示している。
綴じ状態においては、綴じ桿部材1、2が閉止位置(R)にあり、綴じ桿12、22がリング状をなして係わり合っている。そして、背部材3はロック位置(L)にあり、綴じ桿部材1、2が開くのを禁止している。この綴じ状態では、図17及び図19に示すように、第一、第二の綴じ桿部材1、2の各係留部13、23の基端側の一部が対応する各軸体J1、J2の回動禁止部分J1b、J2bにそれぞれ係合しており、第一、第二の綴じ桿部材1、2の開き動作が禁止されている。また、図16及び図18に示すように、第一、第二の綴じ桿部材1、2の各膨出部15、25が対応する隔壁34の係合段部34dにそれぞれ係合しており、この点においても第一、第二の綴じ桿部材1、2の開き動作が禁止されている。さらに、図16及び図18に示すように、第一、第二の綴じ桿部材1、2の各突出部14、24が対応する内部空間34sに挿入されており、この点においても第一、第二の綴じ桿部材1、2の開き動作が禁止されている。従って、この綴じ具0によって紙葉類Sを安定して綴じておくことができる。
また、この綴じ状態では、図17及び図19に示すように、綴じ桿部材1、2の各係留部13、23を軸体J1、J2よりも下方(背部材3の背壁35側)に回り込んでいるとともに、図16及び図18に示すように、綴じ桿部材1、2の各突出部14、24が対応する内部空間34sに挿入されており、さらに、図13、図14及び図21に示すように、綴じ桿部材1、2の脱離防止ピン18、28がそれぞれ背部材3の先端部33、基端部32にそれぞれ遊嵌されているので、落下等により衝撃を受けた場合でも、綴じ桿部材1、2と背部材3とが分離するのを有効に防止することができる。
また、綴じ状態では、図10~図12に示すように、拘束部材39は拘束位置(t)に停止しており、拘束部材39の係止突起393は背部材3の基端ハウジング38内に挿入されて、綴じ桿部材2の脱離防止ピン28の先端と対面している。そのため、背部材3を綴じ桿部材1、2に対して先端方向にスライドすることが規制されている。
上述した綴じ状態から、拘束部材39を180度上方に回動した拘束解除位置(v)に回動させると、図22~図25に示すように、拘束部材39の係止突起393が背部材3の基端ハウジング38から抜けだし、背部材3のスライド規制が解除される。すなわち、背部材3を先端方向にスライドさせることが可能になる。この際、反転した拘束部材39の頂壁392には、矢印39aが刻印されており、背部材3のスライド可能方向が示唆される。
背部材3を矢印39aが示す方向すなわち先端方向にスライドさせてアンロック位置(U)まで移動させると、綴じ状態が解除され、綴じ解除状態となる。この綴じ解除状態では、綴じ桿部材1、2が最大開成位置(Q)にあり、図30及び図32に示すように、第一、第二の綴じ桿部材1、2の各係留部13、23と対応する各軸体J1、J2の回動禁止部分J1b、J2bとの係合が外れて、各係留部13、23は全面的に各軸体J1、J2の回動許容部分J1a、J2aに移動する。また、図29及び図31に示すように、第一、第二の綴じ桿部材1、2の各膨出部15、25と対応する隔壁34の係合段部34dとの係合も解除される。そして、図29及び図31に示すように、第一、第二の綴じ桿部材1、2の各突出部14、24が内部空間34sから抜け出る。そのため、第一の綴じ桿部材1は第一の軸体J1の軸心C1周りに回動可能になり、第二の綴じ桿部材2は第二の軸体J2の軸心C2周りに回動可能になる。このように背部材3をロック位置(L)からアンロック位置(U)まで先端方向にスライド移動させる際には、図22及び図23に示すように、背部材3の基端部32に設けられたクサビ状のカム383が第一の綴じ桿部材1の基体11と第二の綴じ桿部材2の基体21との間に割り込んでこれら両綴じ桿部材1、2を開く方向に付勢することになる。
開成した第一、第二の綴じ桿部材1、2は、図29~図32に示すように、軸体J1、J2に設けた係止面J1s、J2sに係止されて最大開成位置(Q)で停止させられる。この綴じ解除状態で紙葉類Sの装着や取り外しあるいは入れ替え等を行うことができる。
かかる紙葉類挿脱作業を終えた後、第一の綴じ桿部材1の綴じ桿12と第二の綴じ桿部材2の綴じ桿22とを相寄る方向に付勢すると、両綴じ桿部材1、2が綴じ状態に復帰する、換言すれば閉止位置(R)に復帰するとともに、背部材3が引っ張りコイルばね4の付勢力によりロック位置(L)に自己復帰し、図1~図3及び図10~図21に示すような元の綴じ状態となる。なお、図10~図34において、背部材3における拘束部材39以外の部分にはパターンを付している。
以上に述べたように、本実施形態によれば、第一の綴じ桿部材1を枢支する第一の軸体J1と、第二の綴じ桿部材2を枢支する第二の軸体J2とを、軸心方向(Z軸方向)と直交する幅方向(X軸方向)に偏倚させているので、両綴じ桿部材1、2を共通の軸心周りに回動させる場合に比べて、開き具合をより大きくすることができる。しかも、綴じ状態において軸心方向(Z軸方向)に沿って見た場合に、第一の軸体J1と第二の係留部23とを一部オーバーラップさせるとともに、第二の軸体J2と第一の係留部13とを一部オーバーラップさせて配置し、できるだけ2軸が近寄るように設計しているので、幅方向(X軸方向)の寸法をコンパクトにできる。
また、この実施形態では、前述した二種類の開き防止機構を設けているので、使用者の意思に反して綴じ桿12、22が開いてしまうことを効果的に防止できる。複数種類の開き防止機構を各所にちりばめて配置しているので、応力が集中することを抑制することができ、破損を招くことなく綴じ桿12、22の不当な開き動作を抑制できる。
さらに、この実施形態では、前述した三種類の脱離防止機構を設けているので、落下等による衝撃を受けても背部材3が綴じ桿部材1、2から外れて綴じ具としての機能を失うことを効果的に抑制することができる。しかも、複数種類の脱離防止機構を各所にちりばめて配置しているので、応力が集中することを抑制することができ、綴じ具0の長尺化を図ることも容易になる。
また、この実施形態では、クサビ状のカム383に加えて、前述した綴じ桿同期機構を基端側と先端側の双方に設けているので、第一及び第二の綴じ桿部材1、2をより円滑に連動させることができる。
なお、本発明は以上に述べた実施形態に限らない。
第一の綴じ桿部材を支持する第一の軸体と、第二の綴じ桿部材を支持する第二の軸体とを軸心を一致させて配置することも考えられるが、上述した実施形態のようにしておけば、開き具合をより大きくすることができる上に、綴じ桿部材同士の干渉を防ぐために複雑な形状となるのを避けることができる。
開き防止機構や脱離防止機構は、上述した実施形態に係るものに限らず、種々のものを採用してもよい。
綴じ桿同期機構も、上述した実施形態に係るものに限らず、種々のものを採用してもよく、また、綴じ桿同期機構は省略してもよい。
その他、本発明の趣旨を損ねない範囲で種々に変形してよい。