JP7330021B2 - 液状化対策としての格子状の地盤改良体の損傷判定システム及び損傷判定方法 - Google Patents
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Description
特許文献1には、液状化層の上端から液状化層の下の非液状化層に根入れする高さを有する鉛直固化壁(地盤改良体)を、平面視が格子状となるように形成し、鉛直固化壁の上部に増厚部を形成させた構造について開示されている。
このような格子状の地盤改良体は、格子に囲まれた地盤のせん断変形を抑止し、過剰間隙水圧を抑制することで上部構造物の変形を防ぐことを目的としている。
なお、地盤改良体の内部に線状センサーを埋め込むことで損傷の有無を検知する方法は実験的に検討されている(例えば、Tamura et al. (2018))が、実際の施工では地盤改良体を順に打設することから線状センサーの設置が困難であり、且つ局所的な損傷の有無しか検知できないという問題があった。検知が可能な場合であっても、損傷の有無のみの判断に留まり、損傷を受けた地盤改良体がその後も継続的に使用可能か否かを判断することが困難であり、その点で改善の余地があった。
本発明では、格子状の地盤改良体のせん断波速度を測定し、残留ひずみを算出するという簡単な方法により地盤改良体の損傷を求めることができる。
ここで、格子状の地盤改良体2の外周部において、縦壁21と横壁22とが交差する部分を外周交差部P(P1~P10)という。
損傷判定システム1は、発振器11及び受振器12によって、少なくとも地盤改良体2の格子内部を伝播する2方向のせん断波速度Vsを観測するようになっている。
測定したせん断波速度VSから残留ひずみγresを求める際には、せん断剛性比(G/G0)とせん断ひずみ(せん断ひずみ振幅γ)の関係に基づいて、せん断波速度比(VS/VS0)とせん断ひずみγとの関係に変換したものが使用される。ここで、G/G0とひずみの関係については、地盤改良体2の施工後の材齢28日で得られたデータ(図5参照)であって、詳しくは後述する。
図4に示すように、先ずステップS1では、原位置において格子状の地盤改良体2を施工する。
ここで、G0は初期のせん断剛性率、Gはせん断剛性率である。
ステップS4までは、地盤改良体2の施工後における材齢28日で実施されるフローである。
ステップS5では、地震後、原位置において、地盤改良体2のせん断波速度VSを測定する。なお、施工した地盤改良体2には、ステップS4までの適宜なタイミングで、図6に示すように、地盤改良体2に隣接するボーリング孔3を削孔し、そのボーリング孔3の内側に発振器11と受振器12を設置しておく。これら発振器11と受振器12の配置は、図1及び図2に示す通りである。そして、各発振器11からせん断波を発振し、各発振器11に対応する受振器12で地盤改良体2におけるせん断波によるせん断波速度VSを受振する。
例えば、図6に示すように、発振器11Baから発振し、受振器12Ba、12Bb及12Bcで発振波を受振することで各測定間のせん断波速度VSを測定する。せん断波速度VSを測定できない測定間においては、測定間内に損傷があるものと推定できる。受振器12で受振したせん断波速度VSからそれぞれの残留ひずみγresを算出し、それを基に地盤改良体2が継続的に使用可能かを判断する。
ここで、地盤改良体2は脆性的な挙動を示すので、震動中に発生した最大ひずみは残留ひずみγresとみなされる。これらの関係を用いることで、測定時の地盤改良体2のせん断波速度VSから地盤改良体2の残留ひずみγresを算出することができる。
表1は、格子状の地盤改良体2における残留ひずみγresに合せた損傷状態の判定表の一例を示している。
本実施形態では、図1及び図2に示すように、格子状の地盤改良体2の外周交差部Pに発振器11及び受振器12を組み込み、格子内部を伝播する2方向のせん断波速度VSを受振器12で観測することで、格子状の地盤改良体2の損傷を検知することができる。具体的には、受振器12で受振した格子状の地盤改良体2のせん断波速度VSに基づいて地盤改良体2に生じた残留ひずみγresを算出し、この残留ひずみγresを用いて地盤改良体2の損傷状態を求めて性能を評価し、地盤改良体2の継続使用の可否を判断することができる。
そして、本実施形態では、格子状の地盤改良体2のせん断波速度VSを測定し、残留ひずみγresを算出するという簡単な方法により地盤改良体2の損傷を求めることができる。
本実施例では、上述した図1及び図2に示す格子形状の改良体の模型を作成し、遠心模型試験を行い、せん断波速度VSを観測することによって改良体の損傷や破壊の状況を判定できることを確認したものである。
遠心模型試験に使用した改良体は、珪砂7号とカオリン粘土、普通ポルトランドセメント、水をそれぞれ質量比1.64:0.290:0.570:1.00で作製した。改良体の強度は、1.76N/mm2(7日強度)、及び3.76N/mm2(28日強度)程度である。また、本試験では、ベンダーエレメントを使用して、改良体のせん断波速度VSを観測した。
受振器12Bの観測点の場合、せん断波速度VSは500m/sec以上であるため、せん断波速度比VS/VS0は1以上となり、残留ひずみγresはほぼ発生していない。すなわち、使用限界には至らない判断できる。
最後に、受振器12Gの観測点の場合、せん断波速度比VS/VS0は0.5(G/G0=0.25)程度であり、残留ひずみγresが0.1%~1%と推定され、損傷限界状態を超えるが、終局限界状態には至っていないと判断できる。このような判定手法を用いることにより、地震後の地盤改良体の性能を容易に判定することができる。
2 地盤改良体
3 ボーリング孔
4 発振器(発振部)
5 受振器(受振部)
13 データ処理部
14 判定部
21 縦壁
22 横壁
P、P1~P10 外周交差部
X1 縦方向
X2 横方向
Claims (3)
- 地盤中に造成される縦壁と横壁とが交差してなる格子状の地盤改良体の損傷を判定するための液状化対策としての格子状の地盤改良体の損傷判定システムであって、
前記格子状の地盤改良体の外周部において前記縦壁と前記横壁とが交差する外周交差部の一部に設置され、せん断波を発振する発振部と、
前記外周交差部のうち他の部分に設けられ、前記縦壁に沿う縦方向又は前記横壁に沿う横方向で前記発振部と対向する位置に配置され、前記発振部から発振されたせん断波によるせん断波速度を受振する受振部と、
前記受振部で受振した前記せん断波速度に基づいて残留ひずみを算出するデータ処理部と、
前記残留ひずみから前記地盤改良体の損傷状態を求めて前記地盤改良体の使用の可否を判断する判定部と、
を備え、
少なくとも前記地盤改良体の格子内部を伝播する前記縦方向および前記横方向の2方向のせん断波速度が観測されることを特徴とする液状化対策としての格子状の地盤改良体の損傷判定システム。 - 前記判定部には、残留ひずみの大きさによって前記地盤改良体の損傷状態を複数の判定区分に区分した判定区分情報がデータベースとして組み込まれ、
前記判定部では、前記判定区分情報から前記データ処理部で算出した前記残留ひずみに対応した判定区分が選定されることを特徴とする請求項1に記載の液状化対策としての格子状の地盤改良体の損傷判定システム。 - 地盤中に造成される縦壁と横壁とが交差してなる格子状の地盤改良体の損傷を判定するための格子状の地盤改良の損傷判定方法であって、
前記格子状の地盤改良体の外周部において前記縦壁と前記横壁とが交差する外周交差部の一部に設置された発振部からせん断波を発振する工程と、
前記外周交差部のうち他の部分に設けられ、前記縦壁に沿う縦方向又は前記横壁に沿う横方向で前記発振部と対向する位置に配置された受振部で前記発振部から発振されたせん断波によるせん断波速度を受振する工程と、
前記受振部で受振した前記せん断波速度に基づいて残留ひずみを算出する工程と、
前記残留ひずみから前記地盤改良体の損傷状態を求めて前記地盤改良体の使用の可否を判定する工程と、
を有し、
少なくとも前記地盤改良体の格子内部を伝播する前記縦方向および前記横方向の2方向のせん断波速度を観測するようにしたことを特徴とする格子状の地盤改良体の損傷判定方法。
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JP2001208641A (ja) | 2000-01-27 | 2001-08-03 | Takenaka Komuten Co Ltd | 地震応答解析方法 |
JP2007170904A (ja) | 2005-12-20 | 2007-07-05 | Shimizu Corp | 改良地盤上の建屋の地震応答評価方法 |
JP2010133204A (ja) | 2008-12-08 | 2010-06-17 | Shimizu Corp | 部分改良地盤の液状化強度の簡易評価法、および部分改良地盤の変形量の簡易評価法 |
JP2018017112A (ja) | 2016-07-19 | 2018-02-01 | 積水化学工業株式会社 | 地盤調査装置及び地盤調査方法 |
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