以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
図1および図2を参照して、一実施形態による細胞培養装置100および細胞培養方法について説明する。
(細胞培養装置)
図1に示すように、細胞培養装置100は、複数の培養チャンバ10を有する細胞培養デバイス1を用いて、各培養チャンバ10内に配置された細胞90の培養処理を行う装置である。細胞培養装置100は、細胞培養デバイス1を用いた細胞培養処理の少なくとも一部を自動化するように構成されている。なお、培養チャンバ10は、請求の範囲の「第1培養チャンバ」および「第2培養チャンバ」の一例である。
図1に示す例では、細胞培養装置100は、設置部110と、送液ガス供給部120と、ガス配管130と、読取部137と、制御部140と、を備える。
設置部110には、複数の培養チャンバ10を有する細胞培養デバイス1が設置される。設置部110は、細胞培養デバイス1を所定位置に保持可能に構成されている。設置部110は、少なくとも細胞培養デバイス1の一部と接触して細胞培養デバイス1を保持する接触面を有する。設置部110は、たとえば細胞培養デバイス1の下面と接触して細胞培養デバイス1を支持する載置面を有する。設置部110は、たとえば細胞培養デバイス1の両側面を挟持して細胞培養デバイス1を支持する一対の押圧面を有する。設置部110は、たとえば細胞培養デバイス1の一部と係合および係合解除が可能に構成された係合部を有し、係合状態では細胞培養デバイス1が固定的に保持され、係合が解除されることにより細胞培養デバイス1が取り外されるように構成される。
細胞培養デバイス1は、複数の培養チャンバ10を有する。培養チャンバ10は、細胞90および液体を収容可能に形成された収容空間である。液体は、たとえば細胞90の培養液である。培養チャンバ10内に細胞90が設置され、設置された細胞90は培養液に漬けられる。細胞培養デバイス1は、複数の培養チャンバ10の間で、液体(培養液)を送液する灌流培養が可能に構成されている。そのため、細胞培養デバイス1は、複数の培養チャンバ10の間を流体的に接続する流路20を有する。なお、灌流とは、臓器、組織、細胞に薬液などの液体を流し込むことである。本明細書において、「灌流培養」は、細胞培養デバイス1において、培養チャンバ10内に培養液を流通させて培養することを指し、培養チャンバ10内に培養液を静置して培養する静置培養と区別される。
細胞培養デバイス1には、細胞培養デバイス1を識別するための識別情報1aが付されている。細胞培養デバイス1には、1または複数の識別情報1aが付され得る。識別情報1aは、特に限られないが、たとえば、バーコードなどの一次元コード、QRコード(登録商標)などの二次元コード、RFID(Radio Frequency IDentifier)タグなどであり得る。また、識別情報1aは、たとえば細胞培養デバイス1の表面に貼付されるラベルであり得る。
送液ガス供給部120は、培養チャンバ10間の培養液の移動を行うための送液ガス101を供給するように構成される。送液ガス101は、特に限られないが、たとえば、大気(空気)、大気とは異なる調製ガスなどであり得る。
送液ガス供給部120は、たとえば、大気を供給可能なガス源を含む。ガス源は、たとえば、大気を圧縮して送るポンプである。送液ガス供給部120は、大気であるガス源の送液ガス101を、ガス配管130を介して細胞培養デバイス1に供給できる。送液ガス供給部120は、たとえば、予め調製された送液ガス101を貯留したガス源を含む。ガス源はたとえばガスボンベである。送液ガス供給部120は、調整ガスであるガス源の送液ガス101を、ガス配管130を介して細胞培養デバイス1に供給できる。送液ガス供給部120は、たとえば、送液ガス101の構成成分である成分ガスにより送液ガス101を調製するように構成される。この場合、送液ガス供給部120は、成分ガスを貯留したガス源を1つまたは複数含む。送液ガス供給部120は、たとえば複数の成分ガスを所定の濃度比で混合して、送液ガス101を調製する。送液ガス供給部120は、たとえば外部から取り込んだ空気と、1つまたは複数の成分ガスとを所定の濃度比で混合して、送液ガス101を調製する。送液ガス供給部120は、調製した送液ガス101を、ガス配管130を介して細胞培養デバイス1に供給できる。送液ガス供給部120は、ガス配管130を介して、複数の培養チャンバ10へ個別に送液ガス101を供給可能に構成されている。
ガス配管130は、設置部110に設置された細胞培養デバイス1と送液ガス供給部120とを着脱可能に接続するように設けられている。ガス配管130は、第1端と、第1端とは反対側の第2端とを有する管状部材であり、第1端と第2端とがそれぞれ開口している。ガス配管130は、第1端が細胞培養デバイス1に接続され、第2端が送液ガス供給部120に接続されている。これにより、ガス配管130は、送液ガス供給部120からの送液ガス101を第2端の開口を介して受け入れ、第1端の開口を介して細胞培養デバイス1へ送り出す。
ガス配管130は、細胞培養デバイス1の複数の培養チャンバ10へ個別に送液ガス101を供給できるように、複数の培養チャンバ10の各々と個別に接続されうる。図1の例では、2つの培養チャンバ10に対して、2つのガス配管130が別々に接続されている。
読取部137は、細胞培養デバイス1に付された識別情報1aを読み取るように構成されている。読取部137は、特に限られないが、識別情報1aが一次元コードである場合、一次元コードリーダであり得、識別情報1aが二次元コードである場合、二次元コードリーダであり得、識別情報1aがRFIDタグである場合、RFIDリーダであり得る。また、読取部137は、たとえばユーザが把持して使用可能な小型端末であり得る。
制御部140は、細胞培養装置100の各部の動作を制御するコンピュータ(コントローラ)により構成されている。制御部140は、たとえば送液ガス供給部120と電気的に接続されており、複数の培養チャンバ10への送液ガス101の供給を制御する。制御部140は、各培養チャンバ10への送液ガス101の供給によって、培養チャンバ10内の液体を別の培養チャンバ10へ送液する灌流制御を行う。すなわち、本実施形態では、制御部140は、送液ガス101を複数の培養チャンバ10の少なくとも1つに供給することによって、複数の培養チャンバ10を接続する少なくとも1つの流路20を介して、培養チャンバ10内の液体を他の培養チャンバ10へ移動させる制御を行うように構成されている。
具体的には、制御部140は、液体の移動元となる培養チャンバ10に送液ガス101を加圧供給させる制御を行う。制御部140は、液体の移動先となる培養チャンバ10を外部に開放させるか、または液体の移動先となる培養チャンバ10に負圧を供給する制御を行う。これにより、移動元の培養チャンバ10に収容された培養液が、供給された送液ガス101によって培養チャンバ10内から押し出され、流路20を介して移動先の培養チャンバ10へ移動する。移動先の培養チャンバ10では、流入した培養液の体積分だけ、培養チャンバ10内の送液ガス101が押し出される。
たとえば送液ガス供給部120が任意の培養チャンバ10へ送液ガス101を供給可能な場合、制御部140は、送液ガス供給部120を制御することにより、液体を移動させる。図1の例では、細胞培養装置100は、ガス配管130の途中に設けられた圧力制御機構135を備えている。圧力制御機構135は、たとえば、送液ガス供給部120から供給される送液ガス101の圧力を制御可能な圧力制御弁または圧力レギュレータを含む。制御部140は、液体の移動時に、送液ガス101で培養チャンバ10内を加圧することによって液体を移動させるように圧力制御機構135を制御する。すなわち、圧力制御機構135による送液ガス101の圧力制御により、制御部140は、移動元となる培養チャンバ10内の圧力を、移動先となる培養チャンバ10内の圧力よりも高くする。これにより、圧力差によって培養液が移動する。
また、図1の例では、細胞培養装置100は、細胞培養デバイス1に接続され培養チャンバ10内のガスを排出するリーク配管131と、リーク配管131の開閉を行うバルブ132と、を備える。リーク配管131は、ガス配管130とは別個に設けられ、設置部110に設置された細胞培養デバイス1に接続される。バルブ132は、常時閉鎖されており、制御部140の制御によって開放状態に切り替え可能である。図1の例では、リーク配管131およびバルブ132が、複数の培養チャンバ10に対して、個別に接続されている。制御部140は、移動先となる培養チャンバ10に接続するリーク配管131のバルブ132を開放させる。これにより、培養液の移動に伴って押し出された送液ガス101が外部に排出される。
また、制御部140は、バルブ132の開閉制御により、リーク配管131を介して培養チャンバ10内の送液ガス101の成分濃度を調節するように構成されている。制御部140は、送液ガス101の成分濃度が細胞培養に適した所定値に維持されるように、培養チャンバ10内の送液ガス101の成分濃度を調節する。
図1の例では、細胞培養装置100は、複数の培養チャンバ10間で、液体を循環させる循環培養を実施可能に構成されている。すなわち、一方の培養チャンバ10から他方の培養チャンバ10へ液体を移動させた後、制御部140は、移動元と移動先との関係を入れ替え、送液ガス101を供給させる培養チャンバ10を変更する。これにより、他方の培養チャンバ10から一方の培養チャンバ10へ、液体を逆方向に移動させる。制御部140は、一方の培養チャンバ10から他方の培養チャンバ10への灌流と、他方の培養チャンバ10から一方の培養チャンバ10への灌流とを、交互に繰り返し行うように制御する。これにより、複数の培養チャンバ10間で培養液を循環させながら細胞培養が行える。
図1では、細胞培養デバイス1が2つの培養チャンバ10を備えるが、後述するように、細胞培養デバイス1は、3つ以上の培養チャンバ10を備えていてもよい。その場合、送液時(培養液の移動時)には、移動先となる培養チャンバ10のリーク配管131のバルブ132を開放させ、移動先となる培養チャンバ10以外の各培養チャンバ10に、外部圧力よりも高い圧力で送液ガス101を供給すればよい。
ここで、細胞培養装置100では、互いに仕様が異なる細胞培養デバイス1が用いられる場合がある。すなわち、細胞培養装置100では、培養チャンバ10間の培養液の移動圧力、培養チャンバ10の位置、培養チャンバ10の数、流路20などの仕様が互いに異なる細胞培養デバイス1が、設置部110に設置される場合がある。このため、本実施形態では、制御部140は、読取部137により読み取られた識別情報1aに基づいて、細胞培養デバイス1に関する制御を行うように構成されている。具体的には、制御部140は、読取部137により読み取られた識別情報1aに基づいて、送液ガス101による培養チャンバ10間の培養液の移動に関する制御を行う。この場合、制御部140は、読取部137により読み取られた識別情報1aに基づいて、送液ガス101による培養チャンバ10間の培養液の移動に関する情報を取得する制御を行う。取得される送液ガス101による培養チャンバ10間の培養液の移動に関する情報は、識別情報1aに含まれていてもよいし、細胞培養装置100に記憶されていてもよい。細胞培養装置100に記憶されている場合、送液ガス101による培養チャンバ10間の培養液の移動に関する情報は、細胞培養デバイス1の識別情報1aに対応付けられた状態で記憶されている。
たとえば、制御部140は、読取部137により読み取られた識別情報1aに基づいて、送液ガス101による培養チャンバ10間の培養液の移動に関する情報として、送液ガス101による培養チャンバ10間の培養液の移動圧力の情報を取得する。この場合、制御部140は、たとえば、取得した送液ガス101による培養チャンバ10間の培養液の移動圧力の情報、または、この情報にユーザによる設定変更が加えられた情報を、細胞培養に用いる細胞培養デバイス1の培養チャンバ10間の培養液の移動圧力の情報として設定する。そして、制御部140は、設定した培養チャンバ10間の培養液の移動圧力の情報に基づいて、送液ガス101による培養チャンバ10間の送液制御を行う。培養チャンバ10間の培養液の移動圧力の情報は、たとえば、移動元(加圧側)となる培養チャンバ10内の圧力と、移動先(非加圧側)となる培養チャンバ10内の圧力とにより表すことができる。
また、たとえば、制御部140は、読取部137により読み取られた識別情報1aに基づいて、送液ガス101による培養チャンバ10間の培養液の移動に関する情報として、送液ガス101による培養チャンバ10間の培養液の移動タイミングの情報を取得する。この場合、制御部140は、たとえば、取得した送液ガス101による培養チャンバ10間の培養液の移動タイミングの情報、または、この情報にユーザによる設定変更が加えられた情報を、細胞培養に用いる細胞培養デバイス1の培養チャンバ10間の培養液の移動タイミングの情報として設定する。そして、制御部140は、設定した培養チャンバ10間の培養液の移動タイミングの情報に基づいて、送液ガス101による培養チャンバ10間の送液制御を行う。培養チャンバ10間の培養液の移動タイミングの情報は、たとえば、培養チャンバ10間の培養液の移動時間により表すことができる。
また、本実施形態では、制御部140は、細胞培養デバイス1に関する制御として、読取部137により読み取られた識別情報1aに基づいて、複数の培養チャンバ10のうちの培養チャンバ10内の吸引物の吸引に関する制御を行う。また、制御部140は、細胞培養デバイス1に関する制御として、読取部137により読み取られた識別情報1aに基づいて、培養チャンバ10内への吐出物の吐出に関する制御を行う。これらの場合、制御部140は、読取部137により読み取られた識別情報1aに基づいて、複数の培養チャンバ10の各々の位置の情報を取得する制御を行う。取得される複数の培養チャンバ10の各々の位置の情報は、識別情報1aに含まれていてもよいし、細胞培養装置100に記憶されていてもよい。細胞培養装置100に記憶されている場合、複数の培養チャンバ10の各々の位置の情報は、細胞培養デバイス1の識別情報1aに対応付けられた状態で記憶されている。
この場合、制御部140は、たとえば、取得した複数の培養チャンバ10の各々の位置の情報、または、この情報にユーザによる設定変更が加えられた情報を、細胞培養に用いる細胞培養デバイス1の培養チャンバ10の位置の情報として設定する。そして、制御部140は、設定した培養チャンバ10の位置の情報に基づいて、培養チャンバ10への吐出物である液体の吐出制御、培養チャンバ10からの吸引物である液体の吸引制御などを行う。複数の培養チャンバ10の各々の位置の情報は、たとえば、互いに直交する3軸座標(XYZ座標)により表すことができる。
(細胞培養方法)
次に、本実施形態の細胞培養方法について説明する。本実施形態の細胞培養方法は、細胞培養デバイス1を用いた細胞培養方法である。細胞培養方法は、上記した細胞培養装置100によって実施される。
図2に示すように、細胞培養方法は、少なくとも、培養チャンバ10間の送液を行うための送液ガス101を準備するステップ301と、準備した送液ガス101を複数の培養チャンバ10の少なくとも1つに供給することによって、流路20を介して、培養チャンバ10内の液体を他の培養チャンバ10へ移動させるステップ302と、を備える。
ステップ301は、たとえば、大気を圧縮して送るポンプを起動すること、予め調製された送液ガス101を貯留したガスボンベを送液ガス供給部120にセットすること、または、送液ガス供給部120により送液ガス101を調製すること、により実施される。
ステップ302は、液体の移動元となる培養チャンバ10に送液ガス101を加圧供給し、液体の移動先となる培養チャンバ10を外部に開放させるか、または液体の移動先となる培養チャンバ10に負圧を供給することにより実施される。これにより、移動元の培養チャンバ10に収容された培養液が、供給された送液ガス101によって培養チャンバ10内から押し出され、流路20を介して移動先の培養チャンバ10へ移動する。移動先の培養チャンバ10では、流入した培養液の体積分だけ、培養チャンバ10内の送液ガス101が押し出される。
細胞培養方法では、上記した循環培養を行うようにしてもよい。すなわち、細胞培養方法は、送液ガス101を供給する培養チャンバ10を変更して培養チャンバ10内の液体を他の培養チャンバ10へ移動させるステップを複数回実施することにより、複数の培養チャンバ10の間で液体を循環させるステップ(ステップ303およびステップ304)をさらに備えてもよい。
ステップ302において、一方の培養チャンバ10から他方の培養チャンバ10への灌流を行った後、ステップ303において、細胞培養を終了するか否かが判断される。細胞培養を終了しない場合、ステップ304に進み、送液ガス101を供給する培養チャンバ10が変更される。つまり、ステップ302で移送先であった他方の培養チャンバ10が、送液ガス101を供給する対象として設定される。そして、ステップ302に進み、今度は他方の培養チャンバ10から一方の培養チャンバ10への灌流が行われる。これにより、複数の培養チャンバ10間で培養液が循環される。循環培養は、ステップ303で細胞培養を終了すると判断されるまで、複数回実施される。細胞培養を終了するタイミングになると、ステップ303で細胞培養を終了すると判断され、循環培養が完了する。
(細胞培養デバイスの具体例)
図3~図9を参照して、細胞培養デバイス1の具体例を説明する。ここでは、3つ以上の、より多い数の培養チャンバ10を備えた細胞培養デバイス1を示す。図3の例では、細胞培養デバイス1は、16個の培養チャンバ10を備える。
細胞培養デバイス1は、カバー部材30、貫通孔板40、マイクロ流路プレート50、ベース部材60を備える。複数の培養チャンバ10は、カバー部材30、貫通孔板40、マイクロ流路プレート50によって囲まれた収容空間として形成されている。
貫通孔板40には、貫通孔板40を厚み方向(上下方向)に貫通する貫通孔41が並んで形成されている。貫通孔41は、培養チャンバ10の数だけ設けられている。貫通孔板40の貫通孔41の内周面が、培養チャンバ10の側壁面を構成する。
貫通孔板40の下側に、流路20が形成されたマイクロ流路プレート50が配置されている。マイクロ流路プレート50は、貫通孔板40の下面に密着するように設けられる。マイクロ流路プレート50は、貫通孔41の下面側開口を塞ぎ、培養チャンバ10の底面を構成する。
貫通孔板40の上側に、カバー部材30が配置されている。カバー部材30は、貫通孔板40の上面に密着するように設けられる。カバー部材30は、貫通孔41の上面側開口を塞ぎ、培養チャンバ10の上面を構成する。
なお、図3では図示を省略しているが、カバー部材30には、ガス配管130と接続するためのガス供給口31(図6および図7参照)と、ガス供給口31から流入する送液ガス101を培養チャンバ10に導入するためのガス通路32(図6および図7参照)と、ガス排出口36(図6および図7参照)とが設けられている。カバー部材30の構造は後述する。
ベース部材60は、カバー部材30、貫通孔板40およびマイクロ流路プレート50の積層体を設置するための凹部を有し、凹部に配置された積層体を支持するように構成されている。ベース部材60には、積層体を固定するための係止具61が取り付けられている。図4に示すように、係止具61によって積層体がベース部材60に固定されることにより、組立体としての細胞培養デバイス1が構成される。
培養チャンバ10は、直交し合うA方向およびB方向に沿ったマトリクス状に配列されている。図3では、培養チャンバ10は、A方向に4つ並び、B方向に4つ並んでいて、4×4のマトリクス状に配列されている。
マイクロ流路プレート50には、細胞90を設置するためのウェル51と、流路20とが設けられている。ウェル51は、マイクロ流路プレート50の上面に形成された凹部である。流路20は、マイクロ流路プレート50の内部を通って、1つの培養チャンバ10と、他の1つの培養チャンバ10とを流体的に接続する。流路20は、A方向に並んだ培養チャンバ10間を接続するように設けられている。
マイクロ流路プレート50に形成された流路20の形状を変更することによって、複数の培養チャンバ10の間の接続関係を変化させることができる。図3では、流路20の形状が異なる2種類のマイクロ流路プレート50aおよび50bを示している。マイクロ流路プレート50aは、2つの培養チャンバ10が流路20により接続される循環グループ71を形成する。マイクロ流路プレート50bは、4つの培養チャンバ10が流路20により接続される循環グループ72を形成する。マイクロ流路プレート50aおよび50bのいずれかを選択して積層体を構成することにより、任意の接続関係の培養チャンバ10を備えた細胞培養デバイス1が構築できる。
図5の構成例では、マイクロ流路プレート50に形成された流路20は、一方向に液体を通過させる逆流防止機構21を有し、複数の培養チャンバ10の各々をループ状に接続している。個々の培養チャンバ10は、流路20によってループ状に接続されることによって循環グループ71を形成している。循環グループ71を構成する培養チャンバ10間で培養液を循環させる循環培養が行える。
具体的には、1つの培養チャンバ10内には、マイクロ流路プレート50に形成された導入口52と導出口53とが配置されている。導入口52には、上流側の培養チャンバ10につながる流路20bが接続している。導出口53には、下流側の培養チャンバ10につながる流路20aが接続している。逆流防止機構21は、たとえば導入口52に設けられた逆止弁である。これにより、循環培養において、複数の培養チャンバ10間で液体が上流側から下流側に向かう一方向にのみ液体を移送することが可能である。これにより、本実施形態の細胞培養方法では、複数の培養チャンバ10の間で液体を循環させるステップにおいて、複数の培養チャンバ10間で液体を一方向に循環させる。
図5の構成例では、導出口53にガス流入防止機構22が設けられている。ガス流入防止機構22は、たとえばラプラス弁である。ラプラス弁は、所定圧力未満の圧力条件下では、液体を通過させる一方、ガスを通過させない。所定圧力は、少なくとも液体を移動させる際の加圧圧力よりも高い。これにより、液体の移動時に、送液ガス101などの培養チャンバ10のガスが流路20を介して別の培養チャンバ10へ流入することが防止される。
図3に示したマイクロ流路プレート50aの場合、A方向に並んだ2つの培養チャンバ10が循環グループを形成するように、流路20が形成されている。したがって、16個の培養チャンバ10によって、8個の循環グループが形成される。
図3のマイクロ流路プレート50bの場合、A方向に並んだ4つの培養チャンバ10が循環グループを形成するように、流路20が形成されている。したがって、16個の培養チャンバ10によって、4個の循環グループが形成される。
いずれのマイクロ流路プレート50a、50bも、同一の接続関係の循環グループ71、72が、B方向に並ぶように流路20が形成されている。そのため、液体を移動させる際、B方向に並んだ4つの培養チャンバ10に一括で送液ガス101を加圧供給するだけで、B方向に並ぶ各循環グループの送液動作(培養液の移動動作)をまとめて実施できる。
そのため、図6および図7に示す例では、A方向の同一位置でB方向に並んだ複数の培養チャンバ10に対して、一括で送液ガス101を加圧供給可能なように、ガス供給口31およびガス通路32が設けられている。
また、図6および図7に示す例では、A方向の同一位置でB方向に並んだ複数の培養チャンバ10に対して、一括で培養チャンバ10内のガスを排出可能なように、ガス排出口36が設けられている。このため、細胞培養デバイス1は、培養チャンバ10に送液ガス101を供給するガス供給口31と、培養チャンバ10内のガスをバルブ132へ排出するガス排出口36と、を含んでいる。
具体的には、図7に示す例では、カバー部材30は、上面側の蓋33と、貫通孔板40と接触する封止板34と、蓋33と封止板34との間に配置された中間板35とを含む。中間板35の内部に、ガス通路32が設けられている。蓋33は、中間板35の上面を覆い、ガス通路32を上面側から封止している。蓋33は、細胞培養デバイス1全体の上面を構成する。封止板34は、貫通孔板40(培養チャンバ10)と中間板35との間を封止し、ガス通路32以外の箇所からのリークを防止している。封止板34には、培養チャンバ10の直上位置で封止板34を厚み方向に貫通する貫通孔が形成されている。封止板34の貫通孔を介して、中間板35のガス通路32と培養チャンバ10とが流体的に接続されている。
図6に示す例では、同一の培養チャンバ10に連通するガス供給口31とガス排出口36とが、細胞培養デバイス1の互いに反対側の側面から横向きに突出するように設けられている。
具体的には、細胞培養デバイス1には、A方向に並んだ4つのガス供給口31と、A方向に並んだ4つのガス排出口36と、A方向に並んだ4つのガス通路32とが設けられている。B方向に並んだガス供給口31とガス排出口36とのペアが、B方向に延びる1つのガス通路32(図7参照)を介して連通している。各ガス通路32は、B方向に並んだ4つの培養チャンバ10に対して並列的に接続されている。いずれかのガス供給口31から送液ガス101が供給されると、ガス通路32を介して、B方向に並んだ4つの培養チャンバ10に対して送液ガス101が一括で供給される。このため、送液ガス101の供給は、4つのガス供給口31のいずれかを選択するだけでよい。同様に、培養チャンバ10内のガスの排出は、4つのガス排出口36のいずれかを選択するだけでよい。
このように、複数のガス配管130および複数のリーク配管131は、細胞培養デバイス1のうち、流路20を介して相互接続された各々の培養チャンバ10(循環グループに含まれる個々の培養チャンバ10)に対して、個別に接続されるように設けられている。一方、複数のガス配管130および複数のリーク配管131は、ガス通路32を介して、B方向に並んだ複数の循環グループに対して並列的に接続されている。
循環培養における具体的な動作例を説明する。
図8は、2つの培養チャンバ10aおよび10bにより構成された循環グループ71の動作例を示す。循環グループ71は、(A)および(B)の動作を繰り返すことにより液体を循環させる。(A)では、培養チャンバ10aに送液ガス101を加圧供給し、培養チャンバ10bを外部に開放する。これにより、培養チャンバ10a内の培養液が、流路20aを介して、培養チャンバ10bに移動する。(B)では、培養チャンバ10aを外部に開放し、培養チャンバ10bに送液ガス101を加圧供給する。これにより、培養チャンバ10b内の培養液が、流路20bを介して、培養チャンバ10aに移動する。
図9は、4つの培養チャンバ10a、10b、10cおよび10dにより構成された循環グループ72の動作例を示す。循環グループ72は、(A)~(D)の動作を繰り返すことにより液体を循環させる。(A)では、培養チャンバ10aに送液ガス101を加圧供給し、培養チャンバ10bを外部に開放する。これにより、培養チャンバ10a内の培養液が、流路20aを介して、培養チャンバ10bに移動する。(B)では、培養チャンバ10bに送液ガス101を加圧供給し、培養チャンバ10cを外部に開放する。これにより、培養チャンバ10b内の培養液が、流路20bを介して、培養チャンバ10cに移動する。(C)では、培養チャンバ10cに送液ガス101を供給し、培養チャンバ10dを外部に開放する。これにより、培養チャンバ10c内の培養液が、流路20cを介して、培養チャンバ10dに移動する。(D)では、培養チャンバ10dに送液ガス101を供給し、培養チャンバ10aを外部に開放する。これにより、培養チャンバ10d内の培養液が、流路20dを介して、培養チャンバ10aに移動する。
このような構成により、流路20により接続された複数の培養チャンバ10間で、培養液を循環させる循環培養が可能である。
本実施形態では、複数の培養チャンバ10には、それぞれ互いに異なる種類に分化した細胞90が配置されている。つまり、循環グループを構成する個々の培養チャンバ10のウェル51には、互いに異なる種類の細胞90が播種される。本実施形態では、複数の培養チャンバ10には、それぞれ互いに異なる臓器由来の臓器モデル細胞90が配置されている。
臓器モデル細胞90は、薬物動態解析などにおいて特定の臓器における吸収、代謝、排泄などの臓器内動態を模擬するために、その特定の臓器由来の細胞を培養細胞とするものである。循環グループ(71、72)を構成する個々の培養チャンバ10に、それぞれ異なる臓器モデル細胞90が播種し、循環培養を行うことにより、複数の臓器が関わる生体内の現象を、細胞培養デバイス1内で模擬することが可能となる。
臓器モデル細胞90は、心臓、肺、肝臓、腎臓、腸などの臓器由来の細胞である。臓器モデル細胞90は、これら以外の臓器由来の細胞であり得る。培養チャンバ10に播種される細胞90は、特定の臓器をモデル化するのではなく、特定の臓器の異なる複数部位をそれぞれモデル化した細胞であってもよい。細胞90は、たとえば特定のがん細胞であってもよい。たとえば図8の例では、培養チャンバ10aに肝臓の臓器モデル細胞90、培養チャンバ10bにがん細胞90が播種される。たとえば図9の例では、培養チャンバ10aに肺の臓器モデル細胞90、培養チャンバ10bに肝臓の臓器モデル細胞90、培養チャンバ10cに肝臓の臓器モデル細胞90、培養チャンバ10dに腎臓の臓器モデル細胞90、が播種される。
(細胞培養装置の具体例)
図10および図11を参照して、細胞培養装置100の具体例を説明する。
図10および図11の例では、細胞培養装置100は、細胞培養デバイス1を用いた細胞培養に伴う、各種の操作を自動的に実施可能に構成されている。具体的には、細胞培養装置100は、細胞の循環培養に加えて、培養チャンバ10への液体の分注、培養チャンバ10内の液体の吸引、細胞培養デバイス1の温度制御を行える。
図10の例では、細胞培養装置100は、クリーンエア環境の作業空間を形成する収容部102と、収容部102が設置された基台部103とを備える。細胞培養に伴う操作は、収容部102の内部で実施される。細胞培養装置100は、液体の送液を行う送液機構150を備える。なお、本明細書において、「クリーンエア」とは、大気中に含まれる埃や微生物などの夾雑物が除去された空気である。
収容部102は、クリーンエア環境で設置部110および送液機構150を収容するように構成されている。収容部102は、基台部103の上面上を覆う箱状形状を有する。収容部102内には、エアフィルタを備えた空気取込部(図示せず)から、クリーンエアが供給される。エアフィルタは、たとえばHEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタである。収容部102は、これにより内部空間をクリーンエア環境に維持するように構成されている。
図11に示すように、収容部102内には、設置部110、送液機構150、容器保冷ユニット160、加温ユニット170、容器移送機構180が配置されている。
設置部110には、細胞培養デバイス1が載置される。図11の構成例では、図示の便宜上、2つの設置部110を示している。設置部110の数は、2つに限られず、1つまたは3つ以上であってよい。設置部110の具体的な構成は、後述する。
送液機構150は、制御部140の制御の元、液体の吸引および吐出を行う。制御部140は、予め設定されたタイミングで、複数の培養チャンバ10のいずれかに収容された液体を吸引する処理、および、複数の培養チャンバ10のいずれかに液体を吐出する処理の少なくともいずれかを実施するように送液機構150を制御する。
図10に示したように、送液機構150は、液体の吸引および吐出を行う分注機構151と、分注機構151を吐出位置または吸引位置と設置部110との間で移動させる移動機構152とを含む。なお、分注機構151は、請求の範囲の「第1機構」の一例である。また、移動機構152は、請求の範囲の「第2機構」の一例である。
分注機構151は、先端にピペットチップ191を装着可能な吸引管153を備え、吸引管153に正圧および負圧を供給可能に構成されている。収容部102には、使い捨てのピペットチップ191を複数保持したチップラック192が載置されるチップラック設置部190が設けられている。図11の例では、チップラック設置部190には8個のチップラック192を設置可能であり、1つのチップラック192のみを図示している。収容部102には、使用済みのピペットチップ191などを廃棄するための廃棄口104と、吸引された液体を廃棄するための廃液口105とが設けられている。
図10に示すように、移動機構152は、収容部102の天井付近に設けられ、分注機構151を吊り下げ状態で支持している。移動機構152は、分注機構151を、収容部102内で上下方向および水平方向に移動させることが可能に構成されている。移動機構152は、たとえば直交3軸方向に移動可能なガントリタイプの直交ロボットである。移動機構152は、図11において、分注機構151を、設置部110、容器保冷ユニット160、加温ユニット170、チップラック設置部190、廃棄口104および後述する廃液口105のそれぞれの上方位置へ移動させることができる。
図11の例では、容器保冷ユニット160は、液体容器を、所定の保管温度に維持して保管するように構成されている。容器保冷ユニット160には、各種の液体容器を設置可能なように、複数の容器設置部が設けられている。
具体的には、容器保冷ユニット160は、サンプル容器161aが設置可能な容器設置部161を含む。容器保冷ユニット160は、試薬容器162aが設置可能な容器設置部162を含む。容器保冷ユニット160は、培養液容器163aが設置可能な容器設置部163を含む。
容器設置部161、容器設置部162、容器設置部163は、いずれも、複数の容器を保持した容器ラックを載置可能に構成されている。図11の例では、容器設置部161は、サンプル容器161aを保持可能な容器ラック161bを8個設置可能である。図11の例では、サンプル容器161aは、たとえば複数の収容凹部が一体形成されたウェルプレート(マイクロプレートともいう)であるが、容器ラック161bに1本ずつ保持されるサンプルチューブ(図12参照)でありうる。図11の例では、容器設置部162は、4本の試薬容器162aを保持可能な容器ラック162bを1個設置可能である。図11の例では、容器設置部163は、20本の培養液容器163aを保持可能な容器ラック163bを1個設置可能である。なお、容器設置部における容器または容器ラックの設置可能数は特に限定されない。
サンプル容器161aは、薬物動態解析などのために培養チャンバ10内の培養液を分析する際に、培養チャンバ10内から取得(サンプリング)された培養液(サンプル)を収容するための容器である。試薬容器162aは、薬物動態解析などで評価対象となる薬品(試薬)を収容した容器である。培養液容器163aは、細胞培養に用いられる未使用の培養液を収容した容器である。未使用の培養液は、細胞培養処理の過程で、培養チャンバ10内の培養液の交換または補充に用いられる。
容器保冷ユニット160は、容器設置部161、容器設置部162、容器設置部163に設置された容器を培養チャンバ10内よりも低い保管温度に調節する第2温調機構164を備える。第2温調機構164は、たとえばペルチェ素子を含み、制御部140の制御に基づき容器設置部を保管温度に維持する。容器保冷ユニット160は、たとえば、容器を10℃以下に冷蔵保管する。保管温度は、たとえば4℃である。
加温ユニット170は、容器保冷ユニット160で冷温保管された容器中の液体を培養チャンバ10内に分注する場合に、分注される液体を予め加温するように構成されている。
具体的には、加温ユニット170は、第3温調機構171を含む。第3温調機構171は、液体を収容する容器を設置可能に構成されている。図11の例では、第3温調機構171は、容器を受け入れて保持する保持孔172を、12個有する。保持孔172には、容器保冷ユニット160に保管された試薬容器162a、培養液容器163a、および、これらの容器中から必要量の液体を小分けするための使い捨て容器173を、設置することができる。第3温調機構171は、保持孔172に設置された容器内の液体の温度を培養チャンバ10内の温度に近づけるように調節する。第3温調機構171は、たとえば電熱線などのヒータ、またはペルチェ素子などにより構成される。第3温調機構171は、制御部140の制御に基づき、たとえば培養チャンバ10内の設定温度(後述する第1温調機構112の設置温度)と一致するように制御される。
容器移送機構180は、収容部102内で液体容器を移送することが可能に構成されている。容器移送機構180は、容器保冷ユニット160から容器を取り出して、加温ユニット170に移送することができる。容器移送機構180は、加温ユニット170に設置された容器を取り出して、容器保冷ユニット160に移送することができる。容器移送機構180は、容器保冷ユニット160または加温ユニット170において使用済みとなった容器を、廃棄口104に移送して廃棄することができる。
図10に示すように、容器移送機構180は、容器を解除可能に把持する把持機構181と、把持機構181を移動させる移動機構182と、を含む。把持機構181は、たとえば、容器を挟持するように動作可能なハンド機構、真空チャックまたは磁気チャックなどのチャック機構により構成されている。移動機構182は、把持機構181を、収容部102内で上下方向および水平方向に移動させることが可能に構成されている。移動機構182は、たとえば直交3軸方向に移動可能なガントリタイプの直交ロボットである。
図10の例では、基台部103には、送液ガス供給部120と、制御部140とが収容されている。また、基台部103には、廃棄物貯留庫106と廃液タンク107とが設置されている。
送液ガス供給部120は、圧力制御機構135と、流量制御機構136とを備えている。
制御部140は、CPUなどのプロセッサ141と、揮発性メモリである記憶部142とを備えている。プロセッサ141は、記憶部142に記憶されたプログラムを実行することにより、細胞培養装置100の各部を制御する制御部として機能する。記憶部142には、細胞培養装置100の設定情報が記憶されている。
設定情報は、たとえば、細胞培養デバイス1のデバイス情報を含む。デバイス情報は、細胞培養デバイス1の構造、たとえば培養チャンバ10の位置および数などの情報を含む。設定情報は、たとえば、消耗品情報を含む。消耗品情報は、容器保冷ユニット160に保管される容器(サンプル容器161a)の種類および保持位置、ピペットチップ191(またはチップラック192)の位置などの情報を含む。設定情報は、たとえば、液体情報を含む。液体情報は、試薬容器162a、培養液容器163aの種類、内容物、収容される液量、および保持位置などの情報を含む。
設定情報は、たとえば、スケジュール情報を含む。スケジュール情報は、細胞培養装置100による細胞培養に伴う動作のタイミングを設定した情報である。スケジュール情報は、たとえば、培養液のサンプリングを実施するタイミング、試薬分注を実施するタイミング、培養液の交換を実施するタイミング、などが設定されている。制御部140は、スケジュール情報に設定されたタイミングで、これらの動作を実施する。
廃棄物貯留庫106は、基台部103の上面に形成された廃棄口104(図11参照)と接続され、廃棄口104に投入された廃棄物を貯留するように構成されている。廃棄物は、使用済みのピペットチップ191や、使用済みの液体容器などである。
廃液タンク107は、基台部103の上面に形成された廃液口105(図11参照)と接続され、廃液口105に投入された液体を貯留するように構成されている。廃液は、分注機構151によって吸引された余剰量の液体、培養液交換の際に培養チャンバ10から吸引された使用済みの培養液、その他不要となった容器内の液体、などである。
(設置部)
図12に示すように、設置部110には、複数の培養チャンバ10を有する細胞培養デバイス1が設置される。設置部110は、細胞培養デバイス1を着脱可能に支持する。図12の例では、設置部110は、細胞培養デバイス1が載置される載置面111を含み、細胞培養デバイス1の下面を支持する。設置部110は、たとえば細胞培養デバイス1の外形形状に応じたスロットを有し、スロット内に細胞培養デバイス1が差し込まれる構成でもよい。
図12の例では、細胞培養装置100は、設置部110に設置された細胞培養デバイス1を細胞培養に適した温度に維持するよう温度調節するように構成されている。
すなわち、細胞培養装置100は、設置部110に設置された細胞培養デバイス1の温度調節を行う第1温調機構112を備える。第1温調機構112は、制御部140の制御の下、所定の設定温度に維持されるように構成されている。設定温度は、たとえば36℃~37℃である。第1温調機構112は、たとえばヒータを含み、熱を発生させて細胞培養デバイス1を加温する。ヒータの例としては、電熱線を保護管内に収容したカートリッジヒータが挙げられるが、特に限定されない。
第1温調機構112は、細胞培養デバイス1の下面、上面、側面のいずれか1つまたは複数に隣接するように設けられる。図12の例では、第1温調機構112は、細胞培養デバイス1を下面と隣接するように設けられている。つまり、第1温調機構112の上面が設置部110の載置面111を構成している。
また、図12の例では、細胞培養装置100は、細胞培養デバイス1が設置部110に設置されることによって、送液ガス供給部120と細胞培養デバイス1とがガス配管130を介して接続されるように構成されている。つまり、ユーザは、細胞培養デバイス1を設置部110にセットする作業を行うだけで、細胞培養デバイス1とガス配管130との接続が完了する。
具体的には、細胞培養装置100は、設置部110に配置され、複数のガス配管130と接続されたコネクタ機構113を備える。コネクタ機構113は、細胞培養デバイス1が設置部110に設置されることにより、複数のガス配管130と、対応する複数の培養チャンバ10とを接続するように構成されている。
図13に示した例では、細胞培養デバイス1には、ガス配管130と接続するためのガス供給口31が設けられている。コネクタ機構113は、細胞培養デバイス1のガス供給口31が挿入される挿入口114と、バルブ115とを有する。ガス供給口31が挿入口114に挿入されることにより、細胞培養デバイス1の培養チャンバ10と、コネクタ機構113の内部のガス配管130とが接続される。細胞培養デバイス1には、4つのガス供給口31が設けられている。この場合、コネクタ機構113には、4つの挿入口114(図12参照)および4つのバルブ115が4つのガス供給口31に対応して設けられる。細胞培養デバイス1が設置部110の載置面111上にセットされる際に、4つのガス供給口31が、それぞれ対応する4つの挿入口114に挿入される。
また、図13の例では、細胞培養装置100は、細胞培養デバイス1のガス排出口36に着脱可能に取り付けられる排出機構116を備える。排出機構116は、4つのリーク配管131および4つのバルブ132を含む。排出機構116は、細胞培養デバイス1の4つのガス排出口36に対応して、ガス排出口36が挿入される4つの挿入口117を有する。4つのリーク配管131および4つのバルブ132は、4つの挿入口114に対して別々に設けられている。リーク配管131は、排出機構116の外部である収容部102内の空間に開放されている。
4つのバルブ115および4つのバルブ132は、制御部140の制御により開閉可能である。これにより、培養液の送液(すなわち、循環培養)を、制御部140の制御下で任意に行うことが可能である。
コネクタ機構113は、ガス配管130を介して、送液ガス供給部120と流体的に接続されている。また、図13の例では、ガス配管130に接続されるリーク配管131と、リーク配管131の開閉を行うバルブ132とが、コネクタ機構113に設けられている。バルブ132は、たとえば三方弁である。バルブ132は、制御部140の制御により、たとえば、挿入口114と送液ガス供給部120とを接続する状態と、挿入口114とリーク配管131とを接続する状態と、挿入口114、送液ガス供給部120およびリーク配管131を互いに遮断する状態(全閉状態)と、に切り替え可能である。リーク配管131は、コネクタ機構113の外部である収容部102内の空間に開放されている。
リーク配管131およびバルブ132は、4つの挿入口114に対して別々に設けられている。そのため、細胞培養デバイス1の4つのガス供給口31に対して、個別に、送液ガス供給部120から送液ガス101を供給する処理と、リーク配管131を介してガス供給口31を外部に開放させる処理と、を切り替えることが可能である。これにより、図8および図9に示した培養液の送液(すなわち、循環培養)を、制御部140の制御下で任意に行うことが可能である。
また、図12に示した例では、細胞培養装置100は、分注機構151が細胞培養デバイス1内の培養チャンバ10内にアクセスできるように、細胞培養デバイス1の蓋33を自動で開閉可能に構成されている。
具体的には、細胞培養装置100は、細胞培養デバイス1の培養チャンバ10を封止する蓋33を開閉する蓋開閉機構210を備える。蓋開閉機構210は、設置部110に載置された細胞培養デバイス1の蓋33を動かして、蓋33を開閉するように構成されている。蓋開閉機構210は、蓋33の駆動源となるアクチュエータを含む。アクチュエータは、電動モータ、エアシリンダなどであり得る。制御部140は、蓋開閉機構210を制御するとともに、蓋開閉機構210により蓋33が開放された培養チャンバ10内に分注機構151がアクセスするように、移動機構152を制御する。
たとえば図3および図4に示した細胞培養デバイス1では、16個の培養チャンバ10の上部が、カバー部材30の蓋33によってまとめて覆われている。蓋開閉機構210は、たとえば、図4に示した蓋33をカバー部材30から分離させ、16個の培養チャンバ10の上部をまとめて開放する。分注機構151による吸引動作や吐出動作が行われた後、蓋開閉機構210は、カバー部材30から分離させた蓋33を、再び中間板35上に設置して培養チャンバ10を密閉させる。
複数の培養チャンバ10は、1つの蓋33によって封止されている必要はなく、図12に示すように、複数の蓋33が、いくつかの培養チャンバ10のまとまりを別々に覆ってもよい。図12に示す例では、細胞培養デバイス1には、A方向に並ぶ4つの培養チャンバ10を覆う蓋33が、B方向に4つ設けられている例を示している。つまり、図3に示した2つの培養チャンバ10から構成された2つの循環グループ71、または図3に示した4つの培養チャンバ10から構成された1つの循環グループ72、を単位として開閉可能なように、蓋33が設けられている。そして、蓋開閉機構210は、4つの蓋33を、個別に開閉可能に構成されている。これにより、特定の循環グループを構成する培養チャンバ10だけを、個別に開閉できる。
なお、たとえば培養チャンバ10の数と同数の蓋33を、培養チャンバ10毎に設けてもよい。この場合、蓋開閉機構210は、個々の蓋33を別々に開閉するように構成されうる。これにより、培養チャンバ10を1つずつ別々に開閉させることができる。
蓋開閉機構210は、蓋33を開放位置401と閉鎖位置402とに移動させることができる。蓋33が開放位置401にある状態で、培養チャンバ10の上部が収容部102内に開放され、分注機構151が培養チャンバ10内にアクセス可能となる。蓋33が閉鎖位置402にある状態で、ガス通路32を介して送液ガス101を培養チャンバ10へ加圧供給することが可能となる。
分注機構151は、たとえば加温ユニット170に保持された容器内から液体を吸引して、設置部110に設置された細胞培養デバイス1の培養チャンバ10内に吐出する。この場合、吸引位置は、加温ユニット170の容器の上方位置であり、吐出位置は、培養チャンバ10の上方位置である。分注機構151は、たとえば試薬容器162a内の液体を培養チャンバ10内に分注するように構成されている。
分注機構151は、たとえば設置部110に設置された細胞培養デバイス1の培養チャンバ10内から液体を吸引して、容器保冷ユニット160に保持された容器内、または廃液口105に吐出する。分注機構151は、たとえば培養チャンバ10内の液体をサンプル容器161a内に分注するように構成されている。分注機構151は、たとえば、培養チャンバ10内の培養液を吸引するとともに、培養液容器163a内の液体を培養チャンバ10内に分注することにより、培養液の交換を行うように構成されている。
(蓋開閉機構の具体例)
図14および図15に示す構成例では、蓋開閉機構210は、蓋33の移動を規制する規制部材223を動かすことによって、蓋33の開閉を行う。
図14の例では、A方向に並ぶ4つの培養チャンバ10を覆う蓋33が、B方向に4つ設けられている。図14では、便宜的に、蓋33にハッチングを付して図示している。図15に示すように、蓋33は、ヒンジ221を介して回動可能な状態で、中間板35に取り付けられている。ヒンジ221には、蓋33を開放する方向(中間板35から離れる方向)に付勢する付勢部材222が設けられている。付勢部材222は、たとえばトーションばねである。
蓋33の上面上に、A方向に延びる規制部材223が設けられている。図14に示すように、規制部材223は、蓋33の両外側までA方向に延びており、両端部がガイド部224によって上下方向に移動不能に保持されている。ガイド部224は、規制部材223を、蓋33の上面上の規制位置225と、蓋33よりもB方向に外れた解除位置226とに、B方向に移動可能に保持している。
図15に示すように、蓋開閉機構210は、規制部材223と係合する係合部211と、係合部211をB方向に移動させるアクチュエータである駆動部212とを含む。
蓋開閉機構210は、係合部211を移動させることにより、規制部材223を規制位置225から解除位置226へ移動させる。これにより、蓋33は規制部材223による規制が解除され、付勢部材222の付勢力に応じて開放位置401へ回動する。
蓋開閉機構210は、係合部211を移動させることにより、規制部材223を解除位置226から規制位置225へ移動させる。移動の過程で、規制部材223は、付勢部材222の付勢力に抗して蓋33を閉じる方向へ回動させる。規制部材223が規制位置225へ到達すると、蓋33が中間板35に密着する閉鎖位置402に移動して培養チャンバ10の上部が封止される。規制部材223は、規制位置225において、付勢部材222の付勢力によって回動しないように蓋33の動きを規制する。
(送液ガス供給部)
図16は、送液ガス供給部120の構成例を示している。図16の例では、送液ガス供給部120は、コネクタ機構113につながるガス配管130を介して、細胞培養デバイス1に接続される。
図16の構成例では、送液ガス供給部120は、空気取込部121と、二酸化炭素などの被混合ガスのガス源122と、空気と被混合ガスとを混合する混合チャンバ123とを含み、送液ガス101を調製するように構成されている。
空気取込部121は、配管を介して混合チャンバ123に接続されている。空気取込部121は、細胞培養装置100の外部から空気を取り込み、エアフィルタを透過させてクリーンエアを生成する。エアフィルタは、たとえばHEPAフィルタである。空気取込部121は、生成したクリーンエアを混合チャンバ123に供給する。
ガス源122は、被混合ガスを高圧で貯留したガスボンベである。ガス源122は、配管を介して混合チャンバ123に接続されている。ガス源122は、被混合ガスを混合チャンバ123に供給する。
混合チャンバ123は、所定量のガスを貯留可能な容積を有するガス容器である。混合チャンバ123は、供給制御ユニット124に接続されている。混合チャンバ123は、空気取込部121から供給された空気(クリーンエア)と、ガス源122から供給された被混合ガスとを混合する。
混合チャンバ123内には、水123aが貯留されている。混合チャンバ123は、水123aの内部で、空気および被混合ガスが吐出されるように構成されている。すなわち、混合チャンバ123は、空気および被混合ガスを水123a中でバブリングすることによって、供給されたガスを加湿するように構成されている。
混合チャンバ123内には、ガス中の被混合ガス濃度を検出する被混合ガスセンサ123bと、混合チャンバ123内のガスの圧力を検出する圧力センサ123cと、混合チャンバ123内のガスの温度を検出する温度センサ123dと、が設けられている。制御部140が、被混合ガスセンサ123b、圧力センサ123cおよび温度センサ123dの各検出信号に基づいて、混合チャンバ123への空気および被混合ガスの供給を制御する。これにより、混合チャンバ123内で、被混合ガス濃度が所定濃度の飽和蒸気圧の送液ガス101が調製される。
供給制御ユニット124は、ガス配管130を介してコネクタ機構113に接続されている。供給制御ユニット124は、制御部140による制御の下、混合チャンバ123内で調製された送液ガス101をガス配管130に送り出すように構成されている。
供給制御ユニット124は、コネクタ機構113を介して、細胞培養デバイス1の各ガス供給口31に対して個別に送液ガス101を供給することが可能である。そのため、供給制御ユニット124には、ガス供給口31(コネクタ機構113の挿入口114)と同数の接続ポート125が設けられ、それぞれの接続ポート125に1つずつガス配管130が接続されている。
供給制御ユニット124は、圧力制御弁または圧力レギュレータを含む圧力制御機構135、流量センサおよび流量制御弁を含む流量制御機構136を含んでいる。圧力制御機構135および流量制御機構136は、接続ポート125毎に個別に設けられている。制御部140は、圧力制御機構135および流量制御機構136を制御することにより、個々のガス配管130への送液ガス101の供給圧力およびガス流量を制御する。
以上のような構成の送液ガス供給部120の各部が、制御部140(図10参照)によって制御される。制御部140は、送液ガス101を供給する培養チャンバ10を順次切り替えることにより、複数の培養チャンバ10の間で液体を循環させる制御(循環培養)を行うように構成されている。
また、制御部140(図10参照)は、液体(培養液)の移動時に、送液ガス101で培養チャンバ10内を加圧することによって液体を移動させるように圧力制御機構135を制御し、培養チャンバ10内の液体を他の培養チャンバ10へ移動させた後、バルブ132を開放することにより、移動元の培養チャンバ10内を、加圧した圧力よりも低い圧力の送液ガス101の雰囲気下にするように圧力制御機構135を制御する。液体を移動させる場合の送液ガス101の圧力は、たとえば約5kPa(ゲージ圧)である。液体を移動させた後の送液ガス101の圧力は、たとえば大気圧(ゲージ圧で0kPa)である。制御部140は、液体の移動時に、培養チャンバ10に送液ガス101を加圧供給した後、一旦リーク配管131を介して培養チャンバ10を大気開放することにより、培養チャンバ10内を大気圧に維持する。
制御部140(図10参照)は、液体の移動時に、液体の移動元となる培養チャンバ10を送液ガス供給部120の送液ガス101により加圧し、液体の移動先となる培養チャンバ10内をリーク配管131により外部に開放する制御を行う。
(読取部、表示部、操作部)
図10の例では、制御部140には、読取部137と、表示部138と、操作部139とが電気的に接続されている。読取部137は、細胞培養デバイス1に付された識別情報1a(図1参照)を読み取って、制御部140に送信する。表示部138は、たとえば液晶モニタを含み、制御部140の制御の下、ユーザに通知する情報を表示する。操作部139は、ユーザの入力操作を受け付けて、受け付けた入力操作に応じた情報を制御部140に送信する。なお、表示部138は、操作部139を兼ねるタッチパネルにより構成されていてもよい。
たとえば、制御部140は、読取部137により読み取られた識別情報1aに基づいて、細胞培養デバイス1に関する情報を記憶部142から取得する。記憶部142には、互いに仕様が異なる複数の細胞培養デバイス1に関する情報が、それぞれの識別情報1aに対応付けた状態で予め記憶されている。また、個々の細胞培養デバイス1に関する情報としては、細胞培養デバイス1の複数の培養チャンバ10の数の情報、細胞培養デバイス1の複数の培養チャンバ10の各々の位置の情報、送液ガス101による培養チャンバ10間の培養液の移動圧力の情報、送液ガス101による培養チャンバ10間の培養液の移動タイミングの情報などが記憶されている。
たとえば、制御部140は、識別情報1aに基づいて、細胞培養デバイス1の複数の培養チャンバ10の各々の位置の情報を記憶部142から取得する。そして、制御部140は、図17に示すように、取得した細胞培養デバイス1の複数の培養チャンバ10の各々の位置の情報を、ユーザにより設定可能に、表示部138に表示させる制御を行う。すなわち、制御部140は、標準の培養チャンバ10の位置の情報を、ユーザによる設定変更が可能なように、表示部138に表示させる制御を行う。ユーザは、たとえば、操作部139を介して、標準の培養チャンバ10の位置の情報の設定変更を行うことができる。
図17の例では、制御部140は、培養チャンバ10の深さ方向の位置の情報、すなわち、サンプリング位置の情報を、ユーザにより設定可能に、表示部138に表示させる制御を行っている。サンプリング位置の情報を設定変更すれば、たとえば培養チャンバ10内の液体の上澄みのサンプリングなどを行うことができる。なお、表示部138には、培養チャンバ10の深さ方向の位置の情報だけでなく、培養チャンバ10の水平方向の位置の情報(すなわち、A方向の位置の情報およびB方向の位置の情報)を表示させてもよい。
制御部140は、ユーザによる設定変更が行われなかった場合、識別情報1aに基づいて取得した培養チャンバ10の位置の情報をそのまま、設定情報に登録する制御を行う。また、制御部140は、ユーザによる設定変更が行われた場合、識別情報1aに基づいて取得した培養チャンバ10の位置の情報に、ユーザによる設定変更を加えた情報を、設定情報に登録する制御を行う。
そして、細胞培養時には、制御部140は、登録された細胞培養デバイス1の複数の培養チャンバ10の各々の位置の情報に基づいて、送液機構150の分注機構151および移動機構152を制御する。具体的には、制御部140は、登録された培養チャンバ10の水平位置の情報に基づいて、送液機構150の水平方向の移動を制御する。すなわち、制御部140は、送液機構150の分注機構151が吸引対象または吐出対象の培養チャンバ10の上方位置に移動するように、送液機構150の移動機構152により分注機構151を水平方向に移動させる制御を行う。また、制御部140は、登録された培養チャンバ10の深さ方向の位置の情報に基づいて、送液機構150の上下方向の移動を制御する。すなわち、制御部140は、培養チャンバ10の深さ方向の位置の情報に基づいて、送液機構150の分注機構151のストローク量を決定して、決定したストローク量分だけ、吸引対象または吐出対象の培養チャンバ10に向かって、送液機構150の移動機構152により分注機構151を下降させる制御を行う。
また、たとえば、制御部140は、識別情報1aに基づいて、送液ガス101による細胞培養デバイス1の培養チャンバ10間の培養液の移動圧力の情報を記憶部142から取得する。そして、制御部140は、図18に示すように、取得した送液ガス101による細胞培養デバイス1の培養チャンバ10間の培養液の移動圧力の情報を、ユーザにより設定可能に、表示部138に表示させる制御を行う。すなわち、制御部140は、標準の培養チャンバ10間の培養液の移動圧力の情報を、ユーザによる設定変更が可能なように、表示部138に表示させる制御を行う。ユーザは、たとえば、操作部139を介して、標準の培養チャンバ10間の培養液の移動圧力の情報の設定変更を行うことができる。
図18の例では、制御部140は、移動元となる加圧側の培養チャンバ10の培養液の移動圧力の情報と、移動先となる非加圧側の培養チャンバ10間の培養液の移動圧力の情報とを、ユーザにより設定可能に、表示部138に表示させる制御を行っている。培養液の移動圧力の情報を設定変更すれば、培養チャンバ10間の送液速度を変更することができるので、たとえばシェアストレス(shear stress)に対する試験などの細胞90に負荷を掛けた試験を行うことができる。
制御部140は、ユーザによる設定変更が行われなかった場合、識別情報1aに基づいて取得した培養チャンバ10間の培養液の移動圧力の情報をそのまま、設定情報に登録する制御を行う。また、制御部140は、ユーザによる設定変更が行われた場合、識別情報1aに基づいて取得した培養チャンバ10間の培養液の移動圧力の情報に、ユーザによる設定変更を加えた情報を、設定情報に登録する制御を行う。
そして、細胞培養時には、制御部140は、登録された送液ガス101による細胞培養デバイス1の培養チャンバ10間の培養液の移動圧力の情報に基づいて、圧力制御機構135を制御する。すなわち、制御部140は、登録された培養チャンバ10の培養液の移動圧力により、培養チャンバ10内を送液ガス101により加圧するように圧力制御機構135を制御する。
また、たとえば、制御部140は、識別情報1aに基づいて、送液ガス101による細胞培養デバイス1の培養チャンバ10間の培養液の移動タイミングの情報を記憶部142から取得する。そして、制御部140は、図18に示すように、取得した送液ガス101による細胞培養デバイス1の培養チャンバ10間の培養液の移動タイミングの情報を、ユーザにより設定可能に、表示部138に表示させる制御を行う。すなわち、制御部140は、標準の培養チャンバ10間の培養液の移動タイミングの情報を、ユーザによる設定変更が可能なように、表示部138に表示させる制御を行う。ユーザは、たとえば、操作部139を介して、標準の培養チャンバ10間の培養液の移動タイミングの情報の設定変更を行うことができる。 図18の例では、制御部140は、培養チャンバ10間の培養液の移動時間の情報を、ユーザにより設定可能に、表示部138に表示させる制御を行っている。
制御部140は、ユーザによる設定変更が行われなかった場合、識別情報1aに基づいて取得した培養チャンバ10間の培養液の移動タイミングの情報をそのまま、設定情報に登録する制御を行う。また、制御部140は、ユーザによる設定変更が行われた場合、識別情報1aに基づいて取得した培養チャンバ10間の培養液の移動タイミングの情報に、ユーザによる設定変更を加えた情報を、設定情報に登録する制御を行う。
そして、細胞培養時には、制御部140は、登録された送液ガス101による細胞培養デバイス1の培養チャンバ10間の培養液の移動タイミングの情報に基づいて、圧力制御機構135を制御する。すなわち、制御部140は、登録された培養チャンバ10の培養液の移動タイミングにより培養チャンバ10間の培養液の移動が行われるように、培養チャンバ10内を送液ガス101により加圧するように圧力制御機構135を制御する。
また、図19に示すように、制御部140は、読取部137により読み取られた識別情報1aに基づいて、細胞培養デバイス1の処理手順(培養手順)を示すプロトコルを記憶部142から取得してもよい。この場合、記憶部142には、細胞培養デバイス1の処理手順(培養手順)を示すプロトコルが、識別情報1aに対応付けた状態で予め記憶されている。このようなプロトコルとしては、たとえば、細胞培養デバイス1に予め定められた標準のプロトコル(すなわち、細胞培養デバイス1の開発者が推奨する培養手順)、ユーザが予め登録しているプロトコル(すなわち、ユーザがよく行う培養手順)などを用いることができる。
制御部140は、細胞培養デバイス1の処理手順を示すプロトコルを取得すると、取得したプロトコルを、ユーザにより設定可能に、表示部138に表示させる制御を行う。すなわち、制御部140は、取得したプロトコルを、ユーザによる設定変更が可能なように、表示部138に表示させる制御を行う。ユーザは、たとえば、操作部139を介して、プロトコルの設定変更を行うことができる。
図19の例では、制御部140は、プロトコルによる処理手順の順序と項目とを、ユーザにより設定可能に、表示部138に表示させる制御を行っている。ユーザは、提示された処理手順の順序の変更、項目の変更、追加および削除、各項目の詳細設定などを行うことができる。各項目の詳細設定としては、たとえば、容器、試薬の配置位置の設定、試薬の添加量の設定、培養液のサンプリング量の設定などを行うことができる。なお、表示部138には、1つのプロトコルだけでなく、複数のプロトコルを表示させてもよい。この場合、ユーザは、複数のプロトコルから、実施するプロトコルを選ぶことができる。
制御部140は、ユーザによる設定変更が行われなかった場合、識別情報1aに基づいて取得したプロトコルをそのまま、設定情報に登録する制御を行う。また、制御部140は、ユーザによる設定変更が行われた場合、識別情報1aに基づいて取得したプロトコルに、ユーザによる設定変更を加えた情報を、設定情報に登録する制御を行う。そして、細胞培養時には、制御部140は、登録されたプロトコルに基づいて、容器搬送、試薬調整、試薬添加、サンプリング、培養液の交換などの制御動作を行う。
図20に示すように、細胞培養装置100では、サンプル容器161a、ピペットチップ191などの消耗品類に識別情報1bが付されるとともに、試薬容器162aなどの薬品類に識別情報1cが付されていてもよい。
この場合、制御部140は、読取部137により読み取られた消耗品類の識別情報1bに基づいて、消耗品類の種類、数、設置位置などを認識する。また、制御部140は、読み取られた薬品類の識別情報1cに基づいて、薬品類の種類、数、設置位置などを認識する。また、制御部140は、認識した消耗品類の情報および薬品類の情報と、設定情報とを比較して、設置位置または数のエラーの検知を行う。設置位置または数のエラーが検知された場合、制御部140は、たとえば表示部138に情報を表示させることにより、ユーザへの警告を行う。
(細胞培養装置の設定動作)
次に、図21を参照して、細胞培養装置100の設定動作を説明する。細胞培養装置100の動作は、制御部140によって制御される。細胞培養装置100の設定動作は、細胞培養デバイス1による細胞90の培養実験の前に行われる初期設定の動作である。
図21に示すように、ステップ305において、制御部140は、読取部137により読み取られた識別情報1a、1bおよび1cに基づいて、情報を取得する。すなわち、制御部140は、識別情報1aに基づいて、細胞培養デバイス1に関する情報を取得し、識別情報1bに基づいて、消耗品類に関する情報を取得し、識別情報1cに基づいて、薬品類に関する情報を取得する。
ステップ306において、制御部140は、設定情報を、表示部138に表示させる。すなわち、制御部140は、培養チャンバ10の位置の設定情報(図17参照)、培養チャンバ10間の培養液の移動の設定情報(図18参照)、プロトコルの設定情報(図19参照)などを、表示部138に表示させる。ユーザは、操作部139を用いて、所望の培養条件の設定情報を作成する。
ステップ307において、制御部140は、作成された設定情報を、培養実験に用いる設定情報として登録して記憶部142に記憶させる。そして、細胞培養装置100の設定動作が終了する。
(細胞培養装置の処理動作)
次に、図22~図25を参照して、細胞培養装置100の処理動作を説明する。細胞培養装置100の動作は、制御部140によって制御される。
図21に示すように、ステップ311において、制御部140は、記憶部142から設定情報を取得する。設定情報に含まれるデバイス情報、消耗品情報、液体情報に基づき、制御部140は、圧力制御機構135による培養液の移動圧力、圧力制御機構135による培養液の移動タイミング(すなわち、循環培養における送液タイミング)および分注機構151による吸引位置および吐出位置の位置座標を取得する。スケジュール情報(プロトコル)に基づき、制御部140は、培養液のサンプリングのタイミング、培養液の交換のタイミング、試薬添加のタイミングを取得する。
ステップ312において、制御部140は、送液ガス供給部120を制御して、送液ガス101を準備させる。送液ガス供給部120は、空気取込部121からの空気と、ガス源122から供給される二酸化炭素とを混合して、送液ガス101を調製する。このように、本実施形態の細胞培養方法において、送液ガス101を準備するステップは、空気と、ガス源122から供給される被混合ガスとを混合するステップを含む。
ステップ313において、制御部140は、細胞培養を開始する。制御部140は、設定情報に従って循環培養を実施するように、送液ガス供給部120やバルブ132を制御する。すなわち、図2に示したステップ301~304を実施させる。制御部140は、送液時以外では、培養チャンバ10が設定情報において指定された被混合ガス濃度およびガス圧力(大気圧)に維持されるように、送液ガス供給部120およびバルブ132を制御する。このように、本実施形態の細胞培養方法では、培養チャンバ10内の液体を他の培養チャンバ10へ移動させるステップにおいて、供給した送液ガス101で培養チャンバ10内を加圧することによって液体を移動させ、培養チャンバ10内の液体を他の培養チャンバ10へ移動させた後、培養チャンバ10内を、加圧した圧力よりも低い圧力に制御するステップを備える。
また、制御部140は、設定情報において指定された各設定温度を維持するように、第1温調機構112、第2温調機構164、第3温調機構171の各々を制御する。これらの制御動作は、後述するステップ321において細胞培養を停止するまで、継続して実行される。
ステップ314において、制御部140は、現在時刻とスケジュール情報とに基づき、サンプリングタイミングか否かを判断する。サンプリングタイミングに該当しない場合、制御部140は、ステップ316に処理を進める。サンプリングタイミングに該当する場合、制御部140は、ステップ315において、培養液のサンプリング動作制御を実施した後、処理をステップ316に進める。
ステップ316において、制御部140は、現在時刻とスケジュール情報とに基づき、培養液交換タイミングか否かを判断する。培養液交換タイミングに該当しない場合、制御部140は、ステップ318に処理を進める。培養液交換タイミングに該当する場合、制御部140は、ステップ317において、培養液の交換動作制御を実施した後、処理をステップ318に進める。
ステップ318において、制御部140は、現在時刻とスケジュール情報とに基づき、試薬添加タイミングか否かを判断する。試薬添加タイミングに該当しない場合、制御部140は、ステップ320に処理を進める。試薬添加タイミングに該当する場合、制御部140は、ステップ319において、試薬の添加動作制御を実施した後、処理をステップ320に進める。
ステップ320において、制御部140は、細胞培養を終了するか否かを判断する。制御部140は、たとえばスケジュール情報において指定された終了タイミングに到達した場合、または、操作部139を用いたユーザの操作入力を介して培養終了の指示を受け付けた場合、などに細胞培養を終了すると判断する。そうでない場合、制御部140は、細胞培養を終了しないと判断して、ステップ314に処理を戻す。
制御部140は、ステップ320において細胞培養を終了すると判断した場合、ステップ321において、細胞培養を停止させる。すなわち、ステップ313で開始した培養液を送液する制御、送液ガス101の雰囲気を維持する制御、温度調節の制御を停止させる。これにより、細胞培養装置100の細胞培養動作が終了する。
(サンプリング動作)
次に、図23を参照して、ステップ315のサンプリング動作制御について説明する。
ステップ331において、制御部140は、蓋開閉機構210を制御して、サンプリングが行われる培養チャンバ10を覆う蓋33を開放させる。
ステップ332において、制御部140は、移動機構152および分注機構151を制御して、ピペットチップ191を装着させ、サンプリングを行う培養チャンバ10の内部へピペットチップ191を移動させ、培養チャンバ10の内部の培養液を吸引させる。制御部140は、吸引後、分注機構151を培養チャンバ10の内部から退避させる。
ステップ333において、制御部140は、蓋開閉機構210を制御して、開放していた蓋33を閉鎖させる。
ステップ334において、制御部140は、移動機構152および分注機構151を制御して、ピペットチップ191の内部に吸引させた培養液を、容器保冷ユニット160のサンプル容器161aに吐出させる。このように、本実施形態の細胞培養方法では、複数の培養チャンバ10のいずれかに収容された液体をサンプル容器161aに送液するステップを備える。制御部140は、培養液の吐出後、余剰の培養液を廃液口105内に吐出させた後、ピペットチップ191を廃棄口104へ投入させるように、移動機構152および分注機構151を制御する。
(培養液の交換動作)
次に、図24を参照して、ステップ317の培養液の交換動作制御について説明する。
ステップ341において、制御部140は、容器移送機構180を制御して、容器保冷ユニット160に保管された培養液容器163aを、加温ユニット170の保持孔172に移送させる。培養液容器163aは、第3温調機構171により加温される。
ステップ342において、制御部140は、蓋開閉機構210を制御して、培養液の交換が行われる培養チャンバ10を覆う蓋33を開放させる。
ステップ343において、制御部140は、交換される培養液を排出させる制御を行う。制御部140は、移動機構152および分注機構151を制御して、ピペットチップ191を装着させ、培養チャンバ10の内部へピペットチップ191を移動させ、培養チャンバ10内の培養液を吸引させる。制御部140は、吸引した培養液を廃液口105内に吐出させた後、ピペットチップ191を廃棄口104へ投入させるように、移動機構152および分注機構151を制御する。
ステップ344において、制御部140は、移動機構152および分注機構151を制御して、ピペットチップ191を装着させ、加温ユニット170で温められた培養液容器163aから、新たな培養液を吸引させる。
ステップ345において、制御部140は、移動機構152および分注機構151を制御して、吸引した培養液を、培養チャンバ10内に吐出させる。制御部140は、余剰の培養液を廃液口105内に吐出させた後、ピペットチップ191を廃棄口104へ投入させるように、移動機構152および分注機構151を制御する。
ステップ346において、制御部140は、蓋開閉機構210を制御して、開放していた蓋33を閉鎖させる。
(試薬の添加動作)
次に、図25を参照して、ステップ319の試薬の添加動作制御について説明する。
ステップ351において、制御部140は、容器移送機構180を制御して、容器保冷ユニット160に保管された試薬容器162aを、加温ユニット170の保持孔172に移送させる。試薬容器162aは、第3温調機構171により加温される。
ステップ352において、制御部140は、試薬容器162a内の試薬を吸引させる制御を行う。制御部140は、移動機構152および分注機構151を制御して、ピペットチップ191を装着させ、加温ユニット170で温められた試薬容器162aから、試薬を吸引させる。
ステップ353において、制御部140は、蓋開閉機構210を制御して、試薬の添加が行われる培養チャンバ10を覆う蓋33を開放させる。
ステップ354において、制御部140は、移動機構152および分注機構151を制御して、吸引した試薬を、培養チャンバ10内に吐出させる。このように、本実施形態の細胞培養方法では、複数の培養チャンバ10のいずれかに試薬容器162a内の試薬を送液するステップを備える。制御部140は、余剰の試薬を廃液口105内に吐出させた後、ピペットチップ191を廃棄口104へ投入させるように、移動機構152および分注機構151を制御する。
ステップ355において、制御部140は、蓋開閉機構210を制御して、開放していた蓋33を閉鎖させる。
なお、上述の通り、培養液交換および試薬添加では、培養液容器163aおよび試薬容器162aを加温ユニット170で加温する代わりに、培養液容器163aおよび試薬容器162a内の液体の一部を吸引して、使い捨て容器173に分注させることにより、培養チャンバ10内に吐出させる液体を加温してもよい。たとえば、容器内の液体の全量を使用しない場合や、試薬の希釈などを行う場合には、液体を使い捨て容器173に分注させる制御が行われる。
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
本実施形態では、上記のように、細胞培養デバイス1に付された識別情報1aを読み取る読取部137と、読取部137により読み取られた識別情報1aに基づいて、送液ガス101による培養チャンバ10間の培養液の移動に関する制御を行う制御部140と、を設ける。これにより、ユーザが用いる細胞培養デバイス1に応じた初期設定操作を行う手間を省きつつ、用いる細胞培養デバイス1に適した、送液ガス101による培養チャンバ10間の培養液の移動に関する制御を行うことができる。その結果、互いに仕様が異なる細胞培養デバイス1が用いられる場合にも、初期設定の煩雑さを解消しつつ、用いる細胞培養デバイス1に適した制御を行うことができる。
また、上記実施形態では、以下のように構成したことによって、更なる効果が得られる。
すなわち、上記実施形態の細胞培養装置100では、制御部140は、読取部137により読み取られた識別情報1aに基づいて、識別情報1aに含まれるかまたは予め記憶部142に記憶された、送液ガス101による培養チャンバ10間の培養液の移動に関する情報を取得する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、用いる細胞培養デバイス1の送液ガス101による培養チャンバ10間の培養液の移動に関する情報を取得することができるので、用いる細胞培養デバイス1に適した、送液ガス101による培養チャンバ10間の培養液の移動に関する制御を容易に行うことができる。
上記実施形態の細胞培養装置100では、制御部140は、読取部137により読み取られた識別情報1aに基づいて、送液ガス101による培養チャンバ10a間の培養液の移動に関する情報として、送液ガス101による培養チャンバ10間の培養液の移動圧力の情報、および、送液ガス101による培養チャンバ10間の培養液の移動タイミングの情報のうちの少なくとも一方を取得する制御を行うように構成されている。このように、送液ガス101による培養チャンバ10間の培養液の移動圧力の情報を取得すれば、取得した送液ガス101による培養チャンバ10間の培養液の移動圧力の情報を用いて、送液ガス101による培養チャンバ10間の培養液の移動圧力に関する初期設定を行うことができる。その結果、ユーザが送液ガス101による培養チャンバ10間の培養液の移動圧力に関する初期設定操作を行う手間を軽減することができる。また、送液ガス101による培養チャンバ10間の培養液の移動タイミングの情報を取得すれば、取得した送液ガス101による培養チャンバ10間の培養液の移動タイミングの情報を用いて、送液ガス101による培養チャンバ10間の培養液の移動タイミングに関する初期設定を行うことができる。その結果、ユーザが送液ガス101による培養チャンバ10間の培養液の移動タイミングに関する初期設定操作を行う手間を軽減することができる。
上記実施形態の細胞培養装置100では、ガス配管130の途中に設けられた圧力制御機構135を備える。また、制御部140は、識別情報1aに基づいて取得した、送液ガス101による培養チャンバ10間の培養液の移動圧力の情報、および、送液ガス101による培養チャンバ10間の培養液の移動タイミングの情報のうちの少なくとも一方に基づいて、圧力制御機構135を制御するように構成されている。このように構成すれば、ユーザが送液ガス101による培養チャンバ10間の培養液の移動圧力に関する初期設定操作、および、送液ガス101による培養チャンバ10間の培養液の移動タイミングに関する初期設定を行う手間を軽減しつつ、圧力制御機構135を容易に制御することができる。
上記実施形態の細胞培養装置100では、表示部138を備える。また、制御部140は、識別情報1aに基づいて取得した、送液ガス101による培養チャンバ10間の培養液の移動圧力の情報、および、送液ガス101による培養チャンバ10間の培養液の移動タイミングの情報のうちの少なくとも一方を、ユーザにより設定可能に、表示部138に表示させる制御を行うように構成されている。このように構成すれば、識別情報1aに基づいて取得した、送液ガス101による培養チャンバ10間の培養液の移動圧力の情報、および、送液ガス101による培養チャンバ10間の培養液の移動タイミングの情報のうちの少なくとも一方に、ユーザによる設定変更を反映させることができる。その結果、ユーザが初期設定操作を行う手間を軽減しつつ、所望の培養条件により細胞培養を行うことができる。
上記実施形態の細胞培養装置100では、制御部140は、読取部137により読み取られた識別情報1aに基づいて、複数の培養チャンバ10のうちの培養チャンバ10内の吸引物の吸引に関する制御および培養チャンバ10内への吐出物の吐出に関する制御のうちの少なくとも一方を行うように構成されている。このように構成すれば、ユーザが用いる細胞培養デバイス1に応じた初期設定操作を行う手間を省きつつ、用いる細胞培養デバイス1に適した、複数の培養チャンバ10のうちの培養チャンバ10内の吸引物の吸引に関する制御および培養チャンバ10内への吐出物の吐出に関する制御のうちの少なくとも一方を行うことができる。その結果、互いに仕様が異なる細胞培養デバイス1が用いられる場合にも、初期設定の煩雑さを解消しつつ、用いる細胞培養デバイス1に適した制御を行うことができる。
上記実施形態の細胞培養装置100では、制御部140は、読取部137により読み取られた識別情報1aに基づいて、識別情報1aに含まれるかまたは予め記憶部142に記憶された、複数の培養チャンバ10の各々の位置の情報を取得する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、用いる細胞培養デバイス1の複数の培養チャンバ10の各々の位置の情報を取得することができるので、用いる細胞培養デバイス1に適した、複数の培養チャンバ10のうちの培養チャンバ10内の吸引物の吸引に関する制御および培養チャンバ内への吐出物の吐出に関する制御のうちの少なくとも一方を容易に行うことができる。
上記実施形態の細胞培養装置100では、培養チャンバ10内の吸引物の吸引および培養チャンバ10内への吐出物の吐出のうちの少なくとも一方を行う分注機構151(第1機構)と、分注機構151を吸引または吐出対象の培養チャンバ10に移動させる移動機構152(第2機構)と、を備える。また、制御部140は、識別情報1aに基づいて取得した細胞培養デバイス1の複数の培養チャンバ10の各々の位置の情報に基づいて、分注機構151および移動機構152を制御するように構成されている。このように構成すれば、ユーザが細胞培養デバイス1の培養チャンバ10の位置に関する初期設定操作を行う手間を軽減しつつ、送液機構150を容易に制御することができる。
上記実施形態の細胞培養装置100では、表示部138を備える。また、制御部140は、識別情報1aに基づいて取得した細胞培養デバイス1の複数の培養チャンバ10の各々の位置の情報を、ユーザにより設定可能に、表示部138に表示させる制御を行うように構成されている。このように構成すれば、識別情報1aに基づいて取得した細胞培養デバイス1の複数の培養チャンバ10の各々の位置の情報に、ユーザによる設定変更を反映させることができる。その結果、ユーザが初期設定操作を行う手間を軽減しつつ、所望の培養条件により細胞培養を行うことができる。
上記実施形態の細胞培養装置100では、制御部140は、読取部137により読み取られた識別情報1aに基づいて、細胞培養デバイス1の処理手順を示すプロトコルを取得する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、取得したプロトコルを用いて、細胞培養デバイス1の処理手順に関する初期設定を行うことができる。その結果、ユーザが細胞培養デバイス1の処理手順に関する初期設定操作を行う手間を軽減することができる。この効果は、細胞培養デバイス1の処理手順が煩雑である場合に、非常に有効である。
上記実施形態の細胞培養装置100では、表示部138を備える。また、制御部140は、識別情報1aに基づいて取得した細胞培養デバイス1の処理手順を示すプロトコルを、ユーザにより設定可能に、表示部138に表示させる制御を行うように構成されている。このように構成すれば、細胞培養デバイス1の処理手順を示すプロトコルに、ユーザによる設定変更を反映させることができる。その結果、ユーザが初期設定操作を行う手間を軽減しつつ、所望の培養条件により細胞培養を行うことができる。
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
たとえば、上記実施形態では、複数の培養チャンバ10の間で液体を循環させる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、複数の培養チャンバ10の間で液体を循環させる代わりに、いずれかの培養チャンバ10から、流路20で接続された他の培養チャンバ10に液体を移動させるだけでもよい。
また、上記実施形態では、複数の培養チャンバ10のいずれかに収容された培養液をサンプル容器161aに送液(サンプリング)する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、サンプリングをしなくてもよい。また、上記実施形態では、複数の培養チャンバ10のいずれかに試薬容器162a内の試薬を送液(試薬添加)する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、試薬添加をしなくてもよい。また、上記実施形態では、培養チャンバ10内の培養液の交換を行う例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、培養液の交換をしなくてもよい。
また、サンプリングを行わない場合、容器設置部161を設けなくてもよい。試薬添加を行わない場合、容器設置部162を設けなくてもよい。培養液の交換を行わない場合、容器設置部163を設けなくてもよい。容器設置部161~163を設けない場合、容器保冷ユニット160、第2温調機構164、第3温調機構171、チップラック設置部190および送液機構150を設けなくてもよい。
また、上記実施形態では、設置部110に設置された細胞培養デバイス1の温度調節を行う第1温調機構112を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば収容部102の内部空間を所定温度に維持する空調装置を設けて、収容部102の内部空間の全体の温度調節を行うことによって、細胞培養デバイス1の温度調節を行ってもよい。
また、上記実施形態では、細胞培養デバイス1に接続され培養チャンバ10内のガスを排出するリーク配管131を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。リーク配管131を、ガス配管130に接続してもよい。
また、上記実施形態では、コネクタ機構113を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、コネクタ機構113を設けなくてもよい。たとえば細胞培養デバイス1を設置部110に設置する際に、ユーザがガス配管130を1本ずつガス供給口31に接続する作業を行うようにしてもよい。排出機構116についても同様であり、排出機構116を設けなくてもよい。ユーザがリーク配管131を1本ずつガス排出口36に接続する作業を行うようにしてもよい。
また、上記実施形態では、細胞培養デバイス1の複数の培養チャンバ10の各々の位置の情報、送液ガス101による細胞培養デバイス1の培養チャンバ10間の培養液の移動圧力の情報、または、送液ガス101による細胞培養デバイス1の培養チャンバ10間の培養液の移動タイミングの情報を、ユーザにより設定可能に、表示部138に表示させる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、細胞培養デバイス1の複数の培養チャンバ10の各々の位置の情報、送液ガス101による細胞培養デバイス1の培養チャンバ10間の培養液の移動圧力の情報、または、送液ガス101による細胞培養デバイス1の培養チャンバ10間の培養液の移動タイミングの情報を、ユーザにより設定可能に、表示部138に表示させなくてもよい。たとえば、細胞培養デバイス1の複数の培養チャンバ10の各々の位置の情報、送液ガス101による細胞培養デバイス1の培養チャンバ10の培養液の移動圧力の情報、または、送液ガス101による細胞培養デバイス1の培養チャンバ10間の培養液の移動タイミングの情報を、そのまま設定情報として用いてもよい。
また、上記実施形態では、表示部138を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、表示部138を設けなくてもよい。たとえば、外部の表示装置に情報を表示させるようにしてもよい。
[態様]
上記した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
(項目1)
第1培養チャンバおよび第2培養チャンバを含む複数の培養チャンバを有する細胞培養デバイスが設置される設置部と、
前記第1培養チャンバおよび前記第2培養チャンバ間の培養液の移動を行うための送液ガスを供給する送液ガス供給部と、
前記設置部に設置された前記細胞培養デバイスと前記送液ガス供給部とを着脱可能に接続するガス配管と、
前記細胞培養デバイスに付された識別情報を読み取る読取部と、
前記読取部により読み取られた前記識別情報に基づいて、前記送液ガスによる前記第1培養チャンバおよび前記第2培養チャンバ間の培養液の移動に関する制御を行う制御部と、を備える、細胞培養装置。
(項目2)
前記制御部は、前記読取部により読み取られた前記識別情報に基づいて、前記識別情報に含まれるかまたは予め記憶部に記憶された、前記送液ガスによる前記第1培養チャンバおよび前記第2培養チャンバ間の培養液の移動に関する情報を取得する制御を行うように構成されている、項目1に記載の細胞培養装置。
(項目3)
前記制御部は、前記読取部により読み取られた前記識別情報に基づいて、前記送液ガスによる前記第1培養チャンバおよび前記第2培養チャンバ間の培養液の移動に関する情報として、前記送液ガスによる前記第1培養チャンバおよび前記第2培養チャンバ間の培養液の移動圧力の情報、および、前記送液ガスによる前記第1培養チャンバおよび前記第2培養チャンバ間の培養液の移動タイミングの情報のうちの少なくとも一方を取得する制御を行うように構成されている、項目2に記載の細胞培養装置。
(項目4)
前記ガス配管の途中に設けられた圧力制御機構をさらに備え、
前記制御部は、前記識別情報に基づいて取得した、前記送液ガスによる前記第1培養チャンバおよび前記第2培養チャンバ間の培養液の移動圧力の情報、および、前記送液ガスによる前記第1培養チャンバおよび前記第2培養チャンバ間の培養液の移動タイミングの情報のうちの少なくとも一方に基づいて、前記圧力制御機構を制御するように構成されている、項目3に記載の細胞培養装置。
(項目5)
表示部をさらに備え、
前記制御部は、前記識別情報に基づいて取得した、前記送液ガスによる前記第1培養チャンバおよび前記第2培養チャンバ間の培養液の移動圧力の情報、および、前記送液ガスによる前記第1培養チャンバおよび前記第2培養チャンバ間の培養液の移動タイミングの情報のうちの少なくとも一方を、ユーザにより設定可能に、前記表示部に表示させる制御を行うように構成されている、項目3または4に記載の細胞培養装置。
(項目6)
前記制御部は、前記読取部により読み取られた前記識別情報に基づいて、前記複数の培養チャンバのうちの培養チャンバ内の吸引物の吸引に関する制御および前記培養チャンバ内への吐出物の吐出に関する制御のうちの少なくとも一方を行うように構成されている、項目1~5のいずれか1項に記載の細胞培養装置。
(項目7)
前記制御部は、前記読取部により読み取られた前記識別情報に基づいて、前記識別情報に含まれるかまたは予め記憶部に記憶された、前記複数の培養チャンバの各々の位置の情報を取得する制御を行うように構成されている、項目6に記載の細胞培養装置。
(項目8)
前記培養チャンバ内の吸引物の吸引および前記培養チャンバ内への吐出物の吐出のうちの少なくとも一方を行う第1機構と、前記第1機構を吸引または吐出対象の前記培養チャンバに移動させる第2機構と、をさらに備え、
前記制御部は、前記識別情報に基づいて取得した前記細胞培養デバイスの前記複数の培養チャンバの各々の位置の情報に基づいて、前記第1機構および前記第2機構を制御するように構成されている、項目7に記載の細胞培養装置。
(項目9)
表示部をさらに備え、
前記制御部は、前記識別情報に基づいて取得した前記細胞培養デバイスの前記複数の培養チャンバの各々の位置の情報を、ユーザにより設定可能に、前記表示部に表示させる制御を行うように構成されている、項目7または8に記載の細胞培養装置。
(項目10)
前記制御部は、前記読取部により読み取られた前記識別情報に基づいて、前記細胞培養デバイスの処理手順を示すプロトコルを取得する制御を行うように構成されている、項目1~9のいずれか1項に記載の細胞培養装置。
(項目11)
表示部をさらに備え、
前記制御部は、前記識別情報に基づいて取得した前記細胞培養デバイスの処理手順を示すプロトコルを、ユーザにより設定可能に、前記表示部に表示させる制御を行うように構成されている、項目10に記載の細胞培養装置。