以下、本開示の実施の形態を説明する。なお、同一の構成には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
実施の形態1.
図1から図6を参照して、実施の形態1の光走査装置1を説明する。光走査装置1は、基板2と、複数の可動ミラー素子3と、コントローラ7とを備える。
基板2は、第1方向(x方向)と第1方向(x方向)に垂直な第2方向(y方向)とに延在する主面2aを含む。基板2は、例えば、100μm以上1000μm以下の厚さを有する。
図3及び図4に示されるように、本実施の形態では、基板2は、導電性基板10と、導電性基板10上に設けられている第1絶縁膜11とを含む。導電性基板10は、例えば、ドーパントを含むシリコン基板であり、第1絶縁膜11は、例えば、窒化シリコン膜、二酸化シリコン膜、または、窒化シリコン膜と二酸化シリコン膜との積層膜である。基板2は、絶縁基板であってもよい。第1絶縁膜11は、例えば、0.01μm以上1.0μm以下の厚さを有する。基板2が絶縁基板である場合には、第1絶縁膜11は省略され得る。
複数の可動ミラー素子3は、基板2の主面2aの平面視において、基板2の主面2a上に二次元的に配列されている。複数の可動ミラー素子3は、互いに独立して動作可能であり、かつ、回折格子を形成可能である。複数の可動ミラー素子3は、それぞれ、電極12aと、電極12bと、配線13aと、配線13bと、電極14と、配線15と、アンカー17aと、アンカー17bと、梁18aと、可動ミラー20と、柱23とを含む。複数の可動ミラー素子3は、それぞれ、電極12cと、電極12dと、配線13cと、配線13dと、アンカー17cと、アンカー17dと、梁18bとをさらに含んでもよい。
電極12aと電極12bとは、基板2の主面2a上に設けられている。具体的には、電極12aと電極12bとは、第1絶縁膜11上に設けられており、かつ、互いに離間されている。配線13aと配線13bとは、基板2の主面2a上に設けられている。具体的には、配線13aと配線13bとは、第1絶縁膜11上に設けられている。配線13aは、電極12aに接続されており、電極12aへの電圧の供給路である。配線13bは、電極12bに接続されており、電極12bへの電圧の供給路である。電極12aと電極12bと配線13aと配線13bとは、例えば、導電性ポリシリコン、または、アルミニウム、金もしくは白金のような金属で形成されている。電極12aと電極12bと配線13aと配線13bとは、各々、例えば、0.10μm以上10μm以下の厚さを有する。
電極12cと電極12dは、基板2の主面2a上に設けられている。具体的には、電極12cと電極12dとは、第1絶縁膜11上に設けられており、かつ、互いに離間されている。配線13cと配線13dとは、基板2の主面2a上に設けられている。具体的には、配線13cと配線13dとは、第1絶縁膜11上に設けられている。配線13cは、電極12cに接続されており、電極12cへの電圧の供給路である。配線13dは、電極12dに接続されており、電極12dへの電圧の供給路である。電極12cと電極12dと配線13cと配線13dとは、例えば、アルミニウム、金もしくは白金のような金属、または、導電性ポリシリコンで形成されている。電極12cと電極12dと配線13cと配線13dとは、例えば、0.10μm以上10μm以下の厚さを有する。
電極14は、基板2の主面2a上に設けられている。具体的には、電極14は、第1絶縁膜11上に設けられており、かつ、電極12a,12bと電極12c,12dとから電気的に絶縁されている。電極14は、第3方向(z方向)において柱23に対向している。配線15は、基板2の主面2a上に設けられている。具体的には、配線15は、第1絶縁膜11上に設けられている。配線15は、電極14に接続されており、電極14への電圧の供給路である。電極14と配線15とは、例えば、アルミニウム、金もしくは白金のような金属、または、導電性ポリシリコンで形成されている。電極14と配線15とは、例えば、0.10μm以上10μm以下の厚さを有する。
アンカー17aとアンカー17bとは、基板2の主面2a上に設けられている。特定的には、アンカー17aは、電極12a上に設けられており、電極12aを介して基板2の主面2a上に設けられている。アンカー17bは、電極12b上に設けられており、電極12bを介して基板2の主面2a上に設けられている。アンカー17aとアンカー17bとは、梁18aを支持する。具体的には、アンカー17aは、梁18aの第1端部を支持している。アンカー17bは、梁18aの第1端部とは反対側の梁18aの第2端部を支持している。アンカー17aとアンカー17bとは、導電性を有してもよい。アンカー17aとアンカー17bとは、例えば、導電性ポリシリコンで形成されている。アンカー17aは、電極12aに電気的に接続されている。アンカー17bは、電極12bに電気的に接続されている。
アンカー17cとアンカー17dとは、基板2の主面2a上に設けられている。特定的には、アンカー17cは、電極12c上に設けられており、電極12cを介して基板2の主面2a上に設けられている。アンカー17dは、電極12d上に設けられており、電極12dを介して基板2の主面2a上に設けられている。アンカー17cとアンカー17dとは、梁18bを支持する。具体的には、アンカー17cは、梁18bの第3端部を支持している。アンカー17dは、梁18bの第3端部とは反対側の梁18bの第4端部を支持している。アンカー17cとアンカー17dとは、導電性を有してもよい。アンカー17cとアンカー17dとは、例えば、導電性ポリシリコンで形成されている。アンカー17cは、電極12cに電気的に接続されている。アンカー17dは、電極12dに電気的に接続されている。
図3及び図4に示されるように、梁18aは、基板2の主面2aに垂直な第3方向(z方向)に撓み得る。梁18aは、アンカー17aとアンカー17bとにおいて、基板2に固定されている。具体的には、梁18aの第1端部は、アンカー17aによって支持されている。梁18aの第2端部は、アンカー17bによって支持されている。梁18aは、導電性を有してもよい。梁18aは、例えば、導電性ポリシリコンで形成されている。梁18aは、アンカー17aを介して、電極12aに電気的に接続されている。梁18aは、アンカー17bを介して、電極12bに電気的に接続されている。
梁18bは、基板2の主面2aに垂直な第3方向(z方向)に撓み得る。梁18bは、アンカー17cとアンカー17dとにおいて、基板2に固定されている。具体的には、梁18bの第3端部は、アンカー17cによって支持されている。梁18bの第4端部は、アンカー17dによって支持されている。梁18bは、導電性を有してもよい。梁18bは、例えば、導電性ポリシリコンで形成されている。梁18bは、アンカー17cを介して、電極12cに電気的に接続されている。梁18bは、アンカー17dを介して、電極12dに電気的に接続されている。
図6に示されるように、基板2の主面2aの平面視では、梁18bのうち柱23に接続される部分における梁18bの長手方向は、梁18aのうち柱23に接続される部分における梁18aの長手方向に交差している。特定的には、基板2の主面2aの平面視では、梁18bのうち柱23に接続される部分における梁18bの長手方向は、梁18aのうち柱23に接続される部分における梁18aの長手方向に垂直である。具体的には、基板2の主面2aの平面視では、梁18aのうち柱23に接続される部分における梁18aの長手方向は、第2方向(y方向)である。基板2の主面2aの平面視では、梁18bのうち柱23に接続される部分における梁18bの長手方向は、第1方向(x方向)である。
基板2の主面2aの平面視において、可動ミラー20は、例えば、正方形の形状を有している。可動ミラー20は、可動板21と、ミラー膜22とを含む。可動板21は、梁18aから第3方向(z方向)に離間されている。可動板21は、梁18bから第3方向(z方向)に離間されている。可動板21は、例えば、導電性シリコンで形成されている。ミラー膜22は、可動板21上に設けられている。ミラー膜22は、例えば、Cr/Ni/Au膜またはTi/Pt/Au膜である。Cr膜とTi膜とは、シリコンで形成されている可動板21へのミラー膜22の密着性を向上させる。ミラー膜22の最上層がAu膜であるため、ミラー膜22は、光走査装置1に入射する光に対して、高い反射率を有する。
柱23の長手方向は、第3方向(z方向)である。柱23は、可動板21と、梁18aの第1端部及び梁18aの第2端部とは異なる梁18aの部分とを接続する。特定的には、梁18aの部分は梁18aの中央部であり、柱23は梁18aの中央部に接続されている。柱23は、可動板21と、梁18bの第3端部及び梁18bの第4端部とは異なる梁18bの部分とを接続する。特定的には、梁18bの部分は梁18bの中央部であり、柱23は梁18bの中央部に接続されている。柱23は、ミラー膜22が形成される可動板21のおもて面とは反対側の可動板21の裏面に接続されている。柱23は、第2絶縁膜24を介して、可動板21の裏側に接続されてもよい。柱23は、例えば、導電性シリコンで形成されている。第2絶縁膜24は、例えば、二酸化シリコン膜である。
柱23と、柱23に接続されている梁18aの部分とは、第3方向(z方向)において、電極14に対向している。柱23と、柱23に接続されている梁18bの部分とは、第3方向(z方向)において、電極14に対向している。可動ミラー20と柱23とは、梁18aで支持されている。可動ミラー20と柱23とは、梁18aと梁18bとで支持されてもよい。可動ミラー20と柱23とが梁18aと梁18bとで支持されることによって、可動ミラー20の変位方向をより確実に基板2に垂直な第3方向(z方向)とすることができる。
コントローラ7は、例えば、中央演算ユニット(CPU)のような半導体プロセッサで形成されている。コントローラ7は、第3方向(z方向)における可動ミラー20の垂直変位量を制御して、複数の可動ミラー素子3に回折格子を形成する。
具体的には、図1に示されるように、コントローラ7は、電圧制御部8を含む。電圧制御部8は、配線13a,13bを介して、電極12a,12bに接続されている。電圧制御部8は、配線13c,13dを介して、電極12c,12dに接続されている。梁18aは、アンカー17aを介して電極12aに電気的に接続されている。梁18aは、アンカー17bを介して電極12bに電気的に接続されている。具体的には、電極12aは、アンカー17aを介して、梁18aの第1端部に電気的に接続されている。電極12bは、アンカー17bを介して、梁18aの第1端部とは反対側の梁18aの第2端部に電気的に接続されている。
梁18bは、アンカー17cを介して電極12cに電気的に接続されている。梁18bは、アンカー17dを介して電極12dに電気的に接続されている。具体的には、電極12cは、アンカー17cを介して、梁18bの第3端部に電気的に接続されている。電極12dは、アンカー17dを介して、梁18bの第3端部とは反対側の梁18bの第4端部に電気的に接続されている。電圧制御部8は、電極12a,12bに電気的に接続されている梁18aの電圧を制御する。電圧制御部8は、電極12c,12dに電気的に接続されている梁18bの電圧を制御する。
電圧制御部8は、配線15を介して、電極14に接続されている。電圧制御部8は、電極14の電圧を制御する。こうして、電圧制御部8は、梁18aと電極14との間の電圧を制御する。電圧制御部8は、梁18bと電極14との間の電圧を制御する。コントローラ7は、第3方向(z方向)における可動ミラー20の垂直変位量を制御することができる。
例えば、図2の白色の可動ミラー素子3では、図2の斜線の可動ミラー素子3よりも、梁18aと電極14との間の電圧が相対的に小さい。図3に示されるように、図2の白色の可動ミラー素子3の可動ミラー20の垂直変位量は、第1垂直変位量である。特定的には、図2の白色の可動ミラー素子3では、梁18aと電極14との間の電圧がゼロであり、梁18aと電極14との間に静電引力が作用しない。図2の白色の可動ミラー素子3では、梁18aは撓まず、可動ミラー20の第1垂直変位量はゼロである。
これに対し、図4に示されるように、図2の斜線の可動ミラー素子3の可動ミラー20の第2垂直変位量は、第1垂直変位量より大きい。第3方向(z方向)において、図2の斜線の可動ミラー素子3の可動ミラー20は、図2の白色の可動ミラー素子3の可動ミラー20よりも、基板2の主面2aに近位している。具体的には、図2の斜線の可動ミラー素子3では、梁18aと電極14との間の電圧が非ゼロであり、梁18aと電極14との間に静電引力が作用する。図2の斜線の可動ミラー素子3では、梁18aは、基板2の主面2aに近づくように撓んで、可動ミラー20の第2垂直変位量は第1垂直変位量より大きくなる。以上の梁18aに関する説明は、梁18bにも同様に適用され得る。
コントローラ7は、図2に示されるように、複数の可動ミラー素子3から、複数の第1可動ミラー列4と複数の第2可動ミラー列5とを形成する。複数の第1可動ミラー列4は、可動ミラー20の垂直変位量が第1垂直変位量である複数の可動ミラー素子3の一部からなる。複数の第2可動ミラー列5は、可動ミラー20の垂直変位量が第1垂直変位量より大きな第2垂直変位量である複数の可動ミラー素子3の残部からなる。基板2の主面2aの平面視において、複数の第1可動ミラー列4の各々の第1長手方向は、複数の第2可動ミラー列5の各々の第2長手方向に平行である。複数の第1可動ミラー列4と複数の第2可動ミラー列5とは、第1長手方向に垂直な方向に交互にかつ周期的に配列されている。こうして、複数の可動ミラー素子3は、回折格子を形成し得る。
図7に示されるように、光40が、第3方向(z方向)に沿って、複数の可動ミラー素子3の可動ミラー20に入射する。光40は、複数の可動ミラー素子3の可動ミラー20によって形成される回折格子で回折される。複数の可動ミラー素子3によって回折される光の回折角θ、すなわち、光走査装置1の偏向角は、下記式(1)で与えられる。回折角θは、複数の可動ミラー素子3へ入射する光40と、複数の可動ミラー素子3で発生する回折光(例えば、+1次回折光41)との間の角度として定義される。dは、複数の第1可動ミラー列4の周期(すなわち、複数の第2可動ミラー列5の周期)を表す。λは、複数の可動ミラー素子3へ入射される光40の波長を表す。mは、整数を表す。
d・sinθ=mλ (1)
複数の可動ミラー素子3の可動ミラー20によって形成される回折格子は、例えば、+1次回折光41と-1次回折光42を発生させる。+1次回折光41は、+1の回折次数を有する回折光である。-1次回折光42は、-1の回折次数を有する回折光である。回折光の回折次数は、mに等しい。
複数の可動ミラー素子3は、互いに独立して動作可能である。コントローラ7は、複数の可動ミラー素子3を互いに独立して制御可能である。そのため、コントローラ7は、複数の第1可動ミラー列4の各々に含まれる可動ミラー20の列の数を変更して、複数の第1可動ミラー列4の周期dを変更することができる。コントローラ7は、複数の第2可動ミラー列5の各々に含まれる可動ミラー20の列の数を変更して、複数の第2可動ミラー列5の周期dを変更することができる。具体的には、図2に示される例では、複数の第1可動ミラー列4の各々に含まれる可動ミラー20の列の数は二であるが、複数の第1可動ミラー列4の各々に含まれる可動ミラー20の列の数が一または三以上に変更されてもよい。図2に示される例では、複数の第2可動ミラー列5の各々に含まれる可動ミラー20の列の数も二であるが、複数の第2可動ミラー列5の各々に含まれる可動ミラー20の列の数が一または三以上に変更されてもよい。
複数の第1可動ミラー列4の周期d及び複数の第2可動ミラー列5の周期dを変更することによって、複数の可動ミラー素子3によって回折される光の回折角θ、すなわち、光走査装置1の偏向角を変更することができる。光走査装置1によって光走査される領域が変更され得る。
図7を参照して、第1垂直変位量と第2垂直変位量との差の絶対値uは、下記式(2)で与えられてもよい。λは複数の可動ミラー素子3へ入射される光40の波長を表し、nはゼロまたは自然数を表す。そのため、光40が複数の可動ミラー素子3によって形成される回折格子において光40の入射方向(第3方向(z方向))に向けて(すなわち、垂直に)反射されることが、抑制され得る。
u=(1/4+n/2)λ (2)
複数の可動ミラー素子3は、互いに独立して動作可能である。コントローラ7は、複数の可動ミラー素子3を互いに独立して制御可能である。そのため、図2、図8及び図9に示されるように、基板2の主面2aの平面視において、コントローラ7は、複数の第1可動ミラー列4の各々の第1長手方向と複数の第2可動ミラー列5の各々の第2長手方向とを、第1方向(x方向)と第2方向(y方向)とで規定される面内(基板2の主面2aに沿う面内、xy面内)において、変更することができる。複数の可動ミラー素子3で回折された光は、第3方向(z方向)に平行な軸(z軸)周りに走査され得る。
図7に示されるように、絶対値uは、下記式(3)を満たしてもよい。Wは、複数の第1可動ミラー列4のうち互いに隣り合う一対の第1可動ミラー列4の間の間隔を表し、θは複数の可動ミラー素子3によって回折される光の回折角(光走査装置1の偏向角)を表す。そのため、光走査に不要な回折光を、第1可動ミラー列4で遮ることができる。
u≧W/tanθ (3)
図7に示されるように、光走査装置1は、回折格子によって生じる+1次回折光41と-1次回折光42のうちの一つを遮断する遮光部材43をさらに備える。例えば、光走査のために-1次回折光42を利用しない場合、遮光部材43は-1次回折光42を遮る。遮光部材43は、例えば、光吸収部材であってもよい。
遮光部材43は、光シャッターであってもよい。光走査装置1の用途に応じて、光走査に用いる光として、-1次回折光42が不要である場合と、+1次回折光41に加えて-1次回折光42も必要である場合とがある。光走査に用いる光として-1次回折光42が不要である場合、光シャッターは-1次回折光42を遮る。光走査に用いる光として+1次回折光41に加えて-1次回折光42も必要である場合、光シャッターは-1次回折光42を通過させる。
光シャッターは、例えば、機械式光シャッターであってもよいし、電気光学式光シャッターであってもよい。電気光学式光シャッターは、例えば、一対の偏光板と、一対の偏光板の間に配置された電気光学媒質(例えば、液晶またはチタン酸ジルコン酸ランタン鉛(PLZT))とで形成されている。
図3、図5、図6及び図10から図16を参照して、実施の形態1の光走査装置1の製造方法を説明する。実施の形態1の光走査装置1の製造方法は、基板2と梁18a,18bとを含む第1構造体を形成する第1工程(図6及び図10から図12を参照)と、ミラー膜22と柱23とを含む第2構造体を形成する第2工程(図13及び図14を参照)と、第2構造体を第1構造体に接合する第3工程(図3、図5、図6、図15及び図16を参照)とを含む。第1工程は、第2工程に先だって行われてもよいし、第2工程の後に行われてもよい。
図6及び図10から図12を参照して、基板2と梁18a,18bとを含む第1構造体を形成する第1工程を説明する。
図10を参照して、基板2を準備する。本実施の形態では、基板2は、導電性基板10と、導電性基板10上に設けられている第1絶縁膜11とを含む。導電性基板10は、例えば、ドーパントを含むシリコン基板である。第1絶縁膜11は、例えば、窒化シリコン膜、二酸化シリコン膜、または、窒化シリコン膜と二酸化シリコン膜との積層膜である。第1絶縁膜11は、例えば、プラズマ増強化学気相堆積(PECVD)法を用いて、導電性基板10上に形成される。基板2は、絶縁基板であってもよい。
図6及び図10に示されるように、基板2の主面2a(または第1絶縁膜11)上に、電極12a,12b,12c,12d,14と配線13a,13b,13c,13d,15とを形成する。
具体的には、基板2の主面2a(または第1絶縁膜11)上に導電膜を形成する。導電膜は、導電性ポリシリコン、または、アルミニウム、金もしくは白金のような金属で形成されている。導電膜が導電性ポリシリコンで形成されている場合には、導電膜は、例えば、低圧化学気相堆積(LPCVD)法を用いて、基板2の主面2a上に形成される。導電膜がアルミニウム、金または白金のような金属で形成されている場合には、導電膜は、例えば、スパッタ法を用いて、基板2の主面2a上に形成される。基板2が絶縁基板である場合には、導電膜は、絶縁基板上に直接形成されてもよい。導電性基板10と、第1絶縁膜11と、導電膜とは、シリコンオンインシュレータ基板(SOI基板)を構成してもよい。導電性基板10と第1絶縁膜11と導電膜とがSOI基板を構成する場合、導電膜は、高いドーパント濃度を有する導電性シリコン膜で形成されている。
それから、導電膜をパターニングして、電極12a,12b,12c,12d,14と配線13a,13b,13c,13d,15とを形成する。具体的には、電極12a,12b,12c,12d,14と配線13a,13b,13c,13d,15とが形成されるべき導電膜の一部上に、レジスト(図示せず)を形成する。レジストから露出している導電膜の残部を、例えば、誘導結合プラズマ反応性イオンエッチング(ICP-RIE)法のような反応性イオンエッチング(RIE)法を用いて、エッチングする。レジストを、例えば、酸素アッシング法などを用いて除去する。
図11に示されるように、電極12a,12b,12c,12d,14と配線13a,13b,13c,13d,15と基板2の主面2aとの上に、犠牲層30を形成する。犠牲層30は、例えば、リンケイ酸ガラス(PSG)で形成されている。犠牲層30は、例えば、LPCVD法を用いて形成される。犠牲層30は、例えば、0.01μm以上20μmの厚さを有している。
図11に示されるように、犠牲層30の一部を除去して、犠牲層30に孔31を設ける。孔31は、犠牲層30のうち電極12a,12b,12c,12dに対応する部分に設けられる。電極12a,12b,12c,12dは、孔31において、犠牲層30から露出する。具体的には、犠牲層30上にレジスト(図示せず)を形成する。レジストには、孔(図示せず)が設けられている。レジストの孔においてレジストから露出している犠牲層30の一部を、例えば、RIE法のようなドライエッチング法またはウェットエッチング法を用いて、除去する。レジストを、例えば、酸素アッシング法などを用いて除去する。
図6及び図12に示されるように、アンカー17a,17b,17c,17dと、梁18a,18bとを形成する。
具体的には、犠牲層30の表面上と犠牲層30の孔31内とに、膜を形成する。犠牲層30の孔31内に充填された膜は、アンカー17a,17b,17c,17dに相当する。膜は、例えば、導電性ポリシリコンのような導電性材料である。膜が導電性ポリシリコンで形成されている場合、膜は、例えば、LPCVD法を用いて、形成される。膜の表面を平坦にするために、膜の表面は、例えば、化学機械研磨(CMP)が施されてもよい。それから、犠牲層30の表面上に形成された膜をパターニングして、梁18a,18bを形成する。膜の一部は、ICP-RIE法のようなRIE法を用いて、エッチングされる。こうして、基板2と梁18a,18bとを含む第1構造体が得られる。
図13及び図14を参照して、ミラー膜22と柱23とを含む第2構造体を形成する第2工程を説明する。
図13を参照して、シリコンオンインシュレータ基板(SOI基板36)を用意する。SOI基板36は、シリコン基板33と、シリコン基板33上に設けられている絶縁膜34と、絶縁膜34上に設けられているシリコン層35とを含む。シリコン基板33は、例えば、10μm以上1000μm以下の厚さを有している。絶縁膜34は、例えば、0.01μm以上2.0μm以下の厚さを有している。シリコン層35は、例えば、1.0μm以上100μm以下の厚さを有している。シリコン基板33は、導電性を有してもよい。シリコン層35は、導電性を有してもよい。絶縁膜34は、シリコン基板33とシリコン層35との間に配置されており、シリコン基板33とシリコン層35とを互いに電気的に絶縁している。
図13に示されるように、SOI基板36上に、ミラー膜22を形成する。
具体的には、SOI基板36上に、反射膜を形成する。反射膜は、例えば、スパッタ法を用いて、シリコン層35上に形成される。反射膜は、例えば、0.01μm以上1.0μm以下の厚さを有している。反射膜は、例えば、Cr/Ni/Au膜またはTi/Pt/Au膜である。Cr膜とTi膜とは、シリコン層35へのミラー膜22の密着性を向上させる。反射膜の最上層がAu膜であるため、反射膜は、光走査装置1に入射する光に対して、高い反射率を有する。それから、反射膜をパターニングして、ミラー膜22を形成する。反射膜の一部は、例えば、ウェットエッチング法、リフトオフ法、または、イオンビームエッチング法を用いて、除去される。
図14に示されるように、シリコン基板33の一部を除去して、柱23を形成する。シリコン基板33の一部は、例えば、ICP-RIE法を用いて除去される。絶縁膜34の一部を除去して、第2絶縁膜24を形成する。絶縁膜34の一部、例えば、ICP-RIE法を用いて除去される。こうして、ミラー膜22と柱23とを含む第2構造体が得られる。
図3、図5、図6、図15及び図16を参照して、第2構造体を第1構造体に接合する第3工程を説明する。
図15に示されるように、柱23を、梁18a,18bに接合する。柱23は、例えば、常温接合法またはプラズマ表面活性化接合法を用いて、梁18a,18bに接合される。柱23は、第3方向(z方向)において、電極14に対向している。
図16に示されるように、シリコン層35の一部を除去して、可動板21を形成する。シリコン層35の一部は、例えば、ICP-RIE法を用いて除去される。
それから、フッ酸等を用いるウェットエッチング法またはドライエッチング法を用いて、犠牲層30を除去する。こうして、図3、図5及び図6に示される光走査装置1が得られる。
図17から図19を参照して、本実施の形態の変形例を説明する。本実施の形態の変形例では、基板2の主面2aの平面視において、可動ミラー20は、正三角形の形状を有している。そのため、第1方向(x方向)と第2方向(y方向)とで規定される面内(基板2の主面2aに沿う面内、xy面内)において互いに60°ずつ異なる複数の方向に光を走査することが容易になる。基板2の主面2aの平面視において、可動ミラー20は、正六角形の形状を有してもよいし、正八角形の形状を有してもよい。
本実施の形態の光走査装置1の効果を説明する。
本実施の形態の光走査装置1は、基板2と、複数の可動ミラー素子3とを備える。基板2は、第1方向(x方向)と第1方向(x方向)に垂直な第2方向(y方向)とに延在する主面2aを含む。複数の可動ミラー素子3は、基板2の主面2aの平面視において、基板2の主面2a上に二次元的に配列されている。複数の可動ミラー素子3は、互いに独立して動作可能であり、かつ、回折格子を形成可能である。複数の可動ミラー素子3は、それぞれ、梁(例えば、梁18a)と、第1アンカー(例えば、アンカー17a)と、第2アンカー(例えば、アンカー17b)と、可動ミラー20と、柱23とを含む。梁は、基板2の主面2aに垂直な第3方向(z方向)に撓み得る。第1アンカーは、基板2の主面2a上に設けられており、かつ、梁の第1端部を支持する。第2アンカーは、基板2の主面2a上に設けられており、かつ、第1端部とは反対側の梁の第2端部を支持する。可動ミラー20は、梁から第3方向(z方向)に離間されている可動板21と、可動板21上に設けられているミラー膜22とを含む。柱23は、可動板21と、第1端部及び第2端部とは異なる梁の部分とを接続する。
光走査装置1では、光走査装置1へ入射する光40を、複数の可動ミラー素子3の可動ミラー20で受光する。そのため、可動ミラー20の各々のサイズ及び質量が減少して、可動ミラー20を高速に動かすことができる。光走査装置1は、より高速に光を走査することを可能にする。また、光走査装置1では、互いに独立して動作可能な複数の可動ミラー素子3に形成される回折格子を用いて、光走査装置1へ入射する光40を偏向している。そのため、光走査装置1は、より大きな偏向角で光を走査することを可能にする。
梁(例えば、梁18a)は、基板2の主面2aに垂直な第3方向(z方向)に撓み得るため、梁に接続されている可動ミラー20は第3方向(z方向)に移動する。梁をねじることなく、可動ミラー20を動かすことができる。可動ミラー20を駆動する際に梁にねじれ破壊が発生することが防止され得る。そのため、光走査装置1は、より長い寿命を有する。さらに、光走査装置1によれば、可動ミラー20の駆動周波数を可動ミラー20の共振周波数に設定しなくても、より大きな偏向角で光を走査することができる。そのため、光走査装置1は、可動ミラー20の駆動周波数に依らずに、より安定的により大きな偏向角で光を走査することを可能にする。
本実施の形態の光走査装置1は、第3方向(z方向)における可動ミラー20の垂直変位量を制御するコントローラ7をさらに備える。コントローラ7は、複数の可動ミラー素子3から、複数の第1可動ミラー列4と複数の第2可動ミラー列5とを形成する。複数の第1可動ミラー列4は、可動ミラー20の垂直変位量が第1垂直変位量である複数の可動ミラー素子3の一部からなる。複数の第2可動ミラー列5は、可動ミラー20の垂直変位量が第1垂直変位量より大きな第2垂直変位量である複数の可動ミラー素子3の残部からなる。基板2の主面2aの平面視において、複数の第1可動ミラー列4の各々の第1長手方向は、複数の第2可動ミラー列5の各々の第2長手方向に平行である。複数の第1可動ミラー列4と複数の第2可動ミラー列5とは、第1長手方向に垂直な方向に交互にかつ周期的に配列されている。基板2の主面2aの平面視において、コントローラ7は、第1長手方向と第2長手方向とを変更することができる。
そのため、光走査装置1は、第3方向(z方向)に平行な軸周りに、より高速に光を走査することを可能にする。
本実施の形態の光走査装置1では、第1垂直変位量と第2垂直変位量との差の絶対値uは、下記式(4)で与えられる。λは複数の可動ミラー素子3へ入射する光の波長を表し、nはゼロまたは自然数を表す。
u=(1/4+n/2)λ (4)
そのため、光40が複数の可動ミラー素子3によって形成される回折格子において光40の入射方向(第3方向(z方向))に向けて(すなわち、垂直に)反射されることが、抑制され得る。
本実施の形態の光走査装置1では、絶対値uは、下記式(5)を満たす。Wは、複数の第1可動ミラー列4のうち互いに隣り合う一対の第1可動ミラー列4の間の間隔を表し、θは複数の可動ミラー素子3によって回折される光の回折角を表す。
u≧W/tanθ (5)
そのため、光走査に不要な回折光を、第1可動ミラー列4で遮ることができる。
本実施の形態の光走査装置1は、回折格子によって生じる一対の回折光のうちの一つを遮断する遮光部材43をさらに備える。そのため、光走査に不要な回折光を遮ることができる。
本実施の形態の光走査装置1では、遮光部材43は光シャッターである。そのため、光走査装置1の用途に応じて、一対の回折光のうちの一つは、遮断されたり、あるいは、透過されたりする。光走査装置1の用途を拡げることができる。
本実施の形態の光走査装置1では、梁(例えば、梁18a)は、導電性を有している。複数の可動ミラー素子3は、各々、第1電極(例えば、電極12a)と、第2電極(例えば、電極12b)とを含む。第1電極と第2電極とは、基板2の主面2a上に設けられており、かつ、互いに電気的に絶縁されている。第1電極は、梁に電気的に接続されている。第2電極は、第3方向(z方向)において柱23と梁の部分とに対向している。
そのため、第1電極(例えば、電極12a)と第2電極(例えば、電極12b)との間に印加される電圧に応じて、梁(例えば、梁18a)は駆動される。光走査装置1は、より高速にかつより大きな偏向角で光を走査することを可能にする。
実施の形態2.
図20及び図21を参照して、実施の形態2の光走査装置1bを説明する。本実施の形態の光走査装置1bは、実施の形態1の光走査装置1と同様の構成を備えるが、主に以下の点で、実施の形態1の光走査装置1と異なっている。
光走査装置1bは、磁石51,52をさらに備える。磁石51,52は、例えば、永久磁石または電磁石である。磁石51,52は、第1方向(x方向)における基板2の両側に配置されている。基板2は、第1方向(x方向)において、磁石51と磁石52とに挟まれている。磁石51,52は、梁18aにおいて基板2の主面2aに沿う磁界を形成する。具体的には、磁石51,52は、柱23に接続される梁18aの部分での梁18aの長手方向(第2方向(y方向))に垂直で、かつ、基板2の主面2aに沿う方向(第1方向(x方向))に沿う磁界を形成する。
光走査装置1bは、磁石53,54をさらに備えてもよい。磁石53,54は、例えば、永久磁石または電磁石である。磁石53,54は、第2方向(y方向)における基板2の両側に配置されている。基板2は、第2方向(y方向)において、磁石53と磁石54とに挟まれている。磁石53,54は、梁18bにおいて基板2の主面2aに沿う磁界を形成する。具体的には、磁石53,54は、柱23に接続される梁18bの部分での梁18bの長手方向(第1方向(x方向))に垂直で、かつ、基板2の主面2aに沿う方向(第2方向(y方向))に沿う磁界を形成する。
図21を参照して、配線13aは、電極12aに接続されており、電極12aへの電流の供給路である。配線13bは、電極12bに接続されており、電極12bへの電流の供給路である。配線13cは、電極12cに接続されており、電極12cへの電流の供給路である。配線13dは、電極12dに接続されており、電極12dへの電流の供給路である。本実施の形態の複数の可動ミラー素子3bは、実施の形態1の複数の可動ミラー素子3と異なり、電極14と配線15とを含んでいない。
図20に示されるように、コントローラ7bは、電流制御部8bまたは磁界制御部9bの少なくとも一つを含む。
電流制御部8bは、配線13a,13bを介して、電極12a,12bに接続されている。電流制御部8bは、配線13c,13dを介して、電極12c,12dに接続されている。電極12aは、アンカー17aを介して、梁18aの第1端部に電気的に接続されている。電極12bは、アンカー17bを介して、梁18aの第1端部とは反対側の梁18aの第2端部に電気的に接続されている。電極12cは、アンカー17cを介して、梁18bの第3端部に電気的に接続されている。電極12dは、アンカー17dを介して、梁18bの第3端部とは反対側の梁18bの第4端部に電気的に接続されている。梁18a,18bは、導電性を有している。電流制御部8bは、電極12a,12bに電気的に接続されている梁18aに流れる電流を制御する。電流制御部8bは、電極12c,12dに電気的に接続されている梁18bに流れる電流を制御する。
磁石51,52が電磁石である場合、磁界制御部9bは磁石51,52を制御して、磁石51,52が梁18aに形成する磁界を制御する。磁石53,54が電磁石である場合、磁界制御部9bは磁石53,54を制御して、磁石53,54が梁18bに形成する磁界を制御する。こうして、コントローラ7bは、第3方向(z方向)における可動ミラー20の垂直変位量を制御することができる。
第一の例として磁石51,52が永久電磁である場合、電流制御部8bは、梁18aにゼロの電流を流す。梁18aにローレンツ力は作用しない。梁18aは撓まず、可動ミラー20の第1垂直変位量はゼロである。こうして、可動ミラー20の垂直変位量が第1垂直変位量である可動ミラー素子3bを実現することができる。これに対し、電流制御部8bが梁18aに非ゼロの電流を流すと、梁18aにローレンツ力が作用する。梁18aは、基板2の主面2aに近づくように撓んで、可動ミラー20の第2垂直変位量は第1垂直変位量より大きくなる。こうして、可動ミラー20の垂直変位量が第2垂直変位量である可動ミラー素子3bを実現することができる。以上の梁18aに関する説明は、梁18bにも同様に適用され得る。
第二の例として磁石51,52が電磁石である場合、電流制御部8bは、梁18aに電流を流し、かつ、磁界制御部9bは磁石51,52をオフ状態にする。磁石51,52は梁18aに磁界を形成しないので、梁18aにローレンツ力は作用しない。梁18aは撓まず、可動ミラー20の第1垂直変位量はゼロである。こうして、可動ミラー20の垂直変位量が第1垂直変位量である可動ミラー素子3bを実現することができる。これに対し、電流制御部8bは梁18aに電流を流し、かつ、磁界制御部9bは磁石51,52をオン状態にする。磁石51,52は梁18aに磁界を形成するため、梁18aにローレンツ力が作用する。梁18aは、基板2の主面2aに近づくように撓んで、可動ミラー20の第2垂直変位量は第1垂直変位量より大きくなる。こうして、可動ミラー20の垂直変位量が第2垂直変位量である可動ミラー素子3bを実現することができる。以上の梁18aに関する説明は、梁18bにも同様に適用され得る。
本実施の形態の光走査装置1bの効果は、実施の形態1の光走査装置1の効果に加えて、以下の効果を奏する。
本実施の形態の光走査装置1bは、梁(例えば、梁18a)において基板2の主面2aに沿う第1磁界を形成する第1磁石(例えば、磁石51,52の少なくとも一つ)をさらに備える。梁は、導電性を有している。複数の可動ミラー素子3bは、第1電極(例えば、電極12a)と第2電極(例えば、電極12b)とを含む。第1電極と第2電極とは、基板2の主面2a上に設けられており、かつ、互いに離間されている。第1電極は、梁の第1端部に電気的に接続されている。第2電極は、梁の第2端部に電気的に接続されている。
そのため、梁(例えば、梁18a)を流れる電流と第1磁石(例えば、磁石51,52の少なくとも一つ)によって梁に形成される第1磁界とに応じて、梁は駆動される。光走査装置1bは、より高速にかつより大きな偏向角で光を走査することを可能にする。
実施の形態3.
図1及び図22を参照して、実施の形態3の光走査装置1cを説明する。本実施の形態の光走査装置1cは、実施の形態1の光走査装置1と同様の構成を備えるが、主に以下の点で、実施の形態1の光走査装置1と異なっている。
複数の可動ミラー素子3cは、圧電膜61,62を含む。複数の可動ミラー素子3cは、圧電膜63,64をさらに含んでもよい。圧電膜61,62,63,64は、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、チタン酸鉛(PbTiO3)または酸化亜鉛(ZnO)で形成されている。
圧電膜61,62は、梁18aに設けられている。具体的には、圧電膜61,62は、基板2の主面2aに対向する梁18aの裏面とは反対側の梁18aのおもて面上に設けられている。圧電膜61は、梁18aのうち、柱23に接続されている梁18aの部分(例えば、梁18aの中央部)に対して電極12aまたはアンカー17aに近位する部分に設けられている。圧電膜62は、梁18aのうち、柱23に接続されている梁18aの部分(例えば、梁18aの中央部)に対して電極12bまたはアンカー17bに近位する部分に設けられている。圧電膜63は、梁18bのうち、柱23に接続されている梁18bの部分(例えば、梁18bの中央部)に対して電極12cまたはアンカー17cに近位する部分に設けられている。圧電膜64は、梁18bのうち、柱23に接続されている梁18bの部分(例えば、梁18bの中央部)に対して電極12dまたはアンカー17dに近位する部分に設けられている。
本実施の形態の複数の可動ミラー素子3cは、実施の形態1の複数の可動ミラー素子3cと異なり、電極14と配線15とを含んでいない。
コントローラ7cは、電圧制御部8cを含む。電圧制御部8cは、配線13a,13bを介して、電極12a,12bに接続されている。電圧制御部8cは、配線13c,13dを介して、電極12c,12dに接続されている。圧電膜61は、アンカー17aと梁18aとを介して電極12aに電気的に接続されている。圧電膜62は、アンカー17bと梁18aとを介して電極12bに電気的に接続されている。圧電膜63は、アンカー17cと梁18bとを介して電極12cに電気的に接続されている。圧電膜64は、アンカー17dと梁18bとを介して電極12dに電気的に接続されている。
電圧制御部8cは、電極12aに電気的に接続されている圧電膜61の電圧を制御する。電圧制御部8cは、電極12bに電気的に接続されている圧電膜62の電圧を制御する。電圧制御部8cは、電極12cに電気的に接続されている圧電膜63の電圧を制御する。電圧制御部8cは、電極12dに電気的に接続されている圧電膜64の電圧を制御する。こうして、コントローラ7cは、第3方向(z方向)における可動ミラー20の垂直変位量を制御することができる。
例えば、電圧制御部8cは、圧電膜61,62のゼロの電圧を印加する。梁18aは撓まず、可動ミラー20の第1垂直変位量はゼロである。こうして、可動ミラー20の垂直変位量が第1垂直変位量である可動ミラー素子3cを実現することができる。これに対し、電圧制御部8cは、圧電膜61,62の非ゼロの電圧を印加する。梁18aは、基板2の主面2aに近づくように撓んで、可動ミラー20の第2垂直変位量は第1垂直変位量より大きくなる。以上の梁18aに関する説明は、梁18bにも同様に適用され得る。こうして、可動ミラー20の垂直変位量が第2垂直変位量である可動ミラー素子3cを実現することができる。
本実施の形態の光走査装置1cの効果は、実施の形態1の光走査装置1の効果に加えて、以下の効果を奏する。
本実施の形態の光走査装置1cでは、複数の可動ミラー素子3cは、梁(例えば、梁18a)に設けられている圧電膜(例えば、圧電膜61,62の少なくとも一つ)を含む。そのため、圧電膜に印加される電圧に応じて、梁は駆動される。光走査装置1cは、より高速にかつより大きな偏向角で光を走査することを可能にする。
実施の形態4.
図1及び図23を参照して、実施の形態4の光走査装置1dを説明する。本実施の形態の光走査装置1dは、実施の形態1の光走査装置1と同様の構成を備えるが、主に以下の点で、実施の形態1の光走査装置1と異なっている。
光走査装置1dは、梁18a,18bを第1方向(x方向)または第2方向(y方向)の少なくとも一つに移動させ得る面内駆動部70をさらに備える。面内駆動部70は、櫛歯電極71a,71bと、櫛歯電極74a,74bとを含む。
複数の可動ミラー素子3dは、それぞれ、櫛歯電極71a,71bと、配線72a,72bと、駆動電極73a,73bと、櫛歯電極74a,74bとを含む。配線72a,72bは、基板2の主面2a上に設けられている。配線72a,72bは、例えば、配線13a,13b,13c,13d,15と同じ材料で形成されている。配線72a,72bは、例えば、配線13a,13b,13c,13d,15が形成される工程と同じ工程で形成される。
駆動電極73aは、配線72aを介して、基板2の主面2a上に設けられている。駆動電極73aは、例えば、アンカー17aと同じ材料で形成されている。駆動電極73bは、配線72bを介して、基板2の主面2a上に設けられている。駆動電極73a,73bは、例えば、アンカー17bと同じ材料で形成されている。駆動電極73a,73bは、例えば、アンカー17a,17bが形成される工程と同じ工程で形成される。
櫛歯電極74aは、駆動電極73aに設けられている。櫛歯電極74aは、駆動電極73aの側面から第1方向(x方向)に突出している。櫛歯電極74bは、駆動電極73bに設けられている。櫛歯電極74bは、駆動電極73bの側面から第1方向(x方向)に突出している。櫛歯電極74a,74bは、例えば、梁18aと同じ材料で形成されている。櫛歯電極74a,74bは、例えば、梁18aが形成される工程と同じ工程で形成される。櫛歯電極74a,74bは、固定櫛歯電極として機能する。
櫛歯電極71aは、梁18aに設けられている。具体的には、櫛歯電極71aは、梁18aのうち、柱23に接続されている梁18aの部分(例えば、梁18aの中央部)に対して電極12aまたはアンカー17aに近位する部分に設けられている。櫛歯電極71aは、梁18aの第1側面から第1方向(x方向)に突出している。櫛歯電極71bは、梁18aに設けられている。具体的には、櫛歯電極71bは、梁18aのうち、柱23に接続されている梁18aの部分(例えば、梁18aの中央部)に対して電極12bまたはアンカー17bに近位する部分に設けられている。櫛歯電極71bは、梁18aの第1側面とは反対側の梁18aの第2側面から第1方向(x方向)に突出している。櫛歯電極71a,71bは、例えば、梁18aと同じ材料で形成されている。櫛歯電極71a,71bは、例えば、梁18aが形成される工程と同じ工程で形成される。櫛歯電極71a,71bは、可動櫛歯電極として機能する。
櫛歯電極71aと櫛歯電極74aとは、互いに対向している。櫛歯電極71bと櫛歯電極74bとは、互いに対向している。
面内駆動部70は、櫛歯電極71c,71dと、櫛歯電極74c,74dとをさらに含んでもよい。
複数の可動ミラー素子3dは、それぞれ、櫛歯電極71c,71dと、配線72c,72dと、駆動電極73c,73dと、櫛歯電極74c,74dとをさらに含む。配線72c,72dは、基板2の主面2a上に設けられている。配線72c,72dは、例えば、配線13a,13b,13c,13d,15と同じ材料で形成されている。配線72c,72dは、例えば、配線13a,13b,13c,13d,15が形成される工程と同じ工程で形成される。
駆動電極73cは、配線72cを介して、基板2の主面2a上に設けられている。駆動電極73cは、例えば、アンカー17cと同じ材料で形成されている。駆動電極73dは、配線72dを介して、基板2の主面2a上に設けられている。駆動電極73c,73dは、例えば、アンカー17dと同じ材料で形成されている。駆動電極73c,73dは、例えば、アンカー17c,17dが形成される工程と同じ工程で形成される。
櫛歯電極74cは、駆動電極73cに設けられている。櫛歯電極74cは、駆動電極73cの側面から第2方向(y方向)に突出している。櫛歯電極74dは、駆動電極73dに設けられている。櫛歯電極74dは、駆動電極73dの側面から第2方向(y方向)に突出している。櫛歯電極74c,74dは、例えば、梁18bと同じ材料で形成されている。櫛歯電極74c,74dは、例えば、梁18bが形成される工程と同じ工程で形成される。櫛歯電極74c,74dは、固定櫛歯電極として機能する。
櫛歯電極71cは、梁18bに設けられている。具体的には、櫛歯電極71cは、梁18bのうち、柱23に接続されている梁18bの部分(例えば、梁18bの中央部)に対して電極12cまたはアンカー17cに近位する部分に設けられている。櫛歯電極71cは、梁18bの第3側面から第2方向(y方向)に突出している。櫛歯電極71dは、梁18bに設けられている。具体的には、櫛歯電極71dは、梁18bのうち、柱23に接続されている梁18bの部分(例えば、梁18bの中央部)に対して電極12dまたはアンカー17dに近位する部分に設けられている。櫛歯電極71dは、梁18bの第3側面とは反対側の梁18bの第4側面から第2方向(y方向)に突出している。櫛歯電極71c,71dは、例えば、梁18bと同じ材料で形成されている。櫛歯電極71c,71dは、例えば、梁18bが形成される工程と同じ工程で形成される。櫛歯電極71c,71dは、可動櫛歯電極として機能する。
櫛歯電極71cと櫛歯電極74cとは、互いに対向している。櫛歯電極71dと櫛歯電極74dとは、互いに対向している。
コントローラ7dは、電圧制御部8dを含む。本実施の形態の電圧制御部8dは、実施の形態1の電圧制御部8と同様であるが、以下の点で実施の形態1の電圧制御部8と異なっている。
電圧制御部8dは、梁18aの電圧をさらに制御する。梁18aは、導電性を有している。そのため、電圧制御部8dは、梁18aに設けられている櫛歯電極71a,71bの電圧をさらに制御する。電圧制御部8dは、梁18bの電圧をさらに制御する。梁18bは、導電性を有している。そのため、電圧制御部8dは、梁18bに設けられている櫛歯電極71c,71dの電圧をさらに制御する。
電圧制御部8dは、配線72aを介して、駆動電極73aに接続されている。そのため、電圧制御部8dは、櫛歯電極74aの電圧をさらに制御する。電圧制御部8dは、配線72bを介して、駆動電極73bに接続されている。そのため、電圧制御部8dは、櫛歯電極74bの電圧をさらに制御する。電圧制御部8dは、配線72cを介して、駆動電極73cに接続されている。そのため、電圧制御部8dは、櫛歯電極74cの電圧をさらに制御する。電圧制御部8dは、配線72dを介して、駆動電極73dに接続されている。そのため、電圧制御部8dは、櫛歯電極74dの電圧をさらに制御する。
電圧制御部8dは、櫛歯電極71aと櫛歯電極74aとの間の電圧を制御する。電圧制御部8dは、櫛歯電極71bと櫛歯電極74bとの間の電圧を制御する。電圧制御部8dは、櫛歯電極71cと櫛歯電極74cとの間の電圧を制御する。電圧制御部8dは、櫛歯電極71dと櫛歯電極74dとの間の電圧を制御する。こうして、コントローラ7dは、第1方向(x方向)または第2方向(y方向)における可動ミラー20の水平変位量を制御することができる。
例えば、複数の可動ミラー素子3dの可動ミラー20が、図2及び図7に示されているように配置されている場合において、第1方向(x方向)における複数の第1可動ミラー列4の周期と複数の第2可動ミラー列5の周期とを変化させることによって、回折角θを変化させることができる。
具体的には、電圧制御部8dは、櫛歯電極71aと櫛歯電極74aとの間の電圧を制御して、櫛歯電極71aと櫛歯電極74aとの間に静電引力を発生させる。可動ミラー20は、梁18aとともに、正の第1方向(+x方向)に移動する。これに対し、電圧制御部8dは、櫛歯電極71bと櫛歯電極74bとの間の電圧を制御して、櫛歯電極71bと櫛歯電極74bとの間に静電引力を発生させる。可動ミラー20は、梁18aとともに、負の第1方向(-x方向)に移動する。
可動ミラー20毎に、第1方向(x方向)への可動ミラー20の移動量を変える。こうして、第1方向(x方向)における複数の第1可動ミラー列4の周期と複数の第2可動ミラー列5の周期とを変化させることができる。例えば、第1方向(x方向)における複数の第1可動ミラー列4の周期と複数の第2可動ミラー列5の周期とが小さくなると、回折角θが大きくなる。第1方向(x方向)における複数の第1可動ミラー列4の周期と複数の第2可動ミラー列5の周期とが大きくなると、回折角θが小さくなる。以上の梁18aに関する説明は、梁18bにも同様に適用され得る。
複数の可動ミラー素子3dの可動ミラー20が、図9に示されているように配置されている場合において、第2方向(y方向)における複数の第2可動ミラー列5の周期と複数の第2可動ミラー列5の周期とを変化させることによって、回折角θを変化させることができる。
具体的には、電圧制御部8dは、櫛歯電極71cと櫛歯電極74cとの間の電圧を制御して、櫛歯電極71cと櫛歯電極74cとの間に静電引力を発生させる。可動ミラー20は、梁18bとともに、正の第2方向(+y方向)に移動する。これに対し、電圧制御部8dは、櫛歯電極71dと櫛歯電極74dとの間の電圧を制御して、櫛歯電極71dと櫛歯電極74dとの間に静電引力を発生させる。可動ミラー20は、梁18bとともに、負の第2方向(-y方向)に移動する。
可動ミラー20毎に、第2方向(y方向)への可動ミラー20の移動量を変える。こうして、第2方向(y方向)における複数の第1可動ミラー列4の周期と複数の第2可動ミラー列5の周期とを変化させることができる。例えば、第2方向(y方向)における複数の第1可動ミラー列4の周期と複数の第2可動ミラー列5の周期とが小さくなると、回折角θが大きくなる。第2方向(y方向)における複数の第1可動ミラー列4の周期と複数の第2可動ミラー列5の周期とが大きくなると、回折角θが小さくなる。以上の梁18aに関する説明は、梁18bにも同様に適用され得る。
本実施の形態の光走査装置1dの効果は、実施の形態1の光走査装置1の効果に加えて、以下の効果を奏する。
本実施の形態の光走査装置1dでは、梁(例えば、梁18a)を第1方向(x方向)または第2方向(y方向)の少なくとも一つに移動させ得る面内駆動部70をさらに備える。そのため、光走査装置1dの偏向角を変化させることができる。光走査装置1dは、光走査される領域を変更することを可能にする。
本実施の形態の光走査装置1dでは、梁(例えば、梁18a)は、導電性を有している。面内駆動部70は、梁に設けられている第1櫛歯電極(例えば、櫛歯電極71a)と、基板2の主面2a上に設けられている駆動電極(例えば、駆動電極73a)と、駆動電極に設けられている第2櫛歯電極(例えば、櫛歯電極74a)とを含む。第1櫛歯電極と第2櫛歯電極とは互いに対向している。
そのため、第1櫛歯電極と第2櫛歯電極との間に印加される電圧に応じて、光走査装置1dの偏向角を変化させることができる。光走査装置1dは、光走査される領域を変更することを可能にする。
実施の形態5.
図24及び図25を参照して、実施の形態5の光走査装置1eを説明する。本実施の形態の光走査装置1eは、実施の形態1の光走査装置1と同様の構成を備えるが、主に以下の点で、実施の形態1の光走査装置1と異なっている。
光走査装置1eは、梁18a,18bを第1方向(x方向)または第2方向(y方向)の少なくとも一つに移動させ得る面内駆動部70eをさらに備える。面内駆動部70eは、磁石77を含む。磁石77は、例えば、永久磁石または電磁石である。磁石77は、基板2に対して、可動ミラー20から遠位する側に配置されている。磁石77は、梁18a,18bにおいて基板2の主面2aに垂直な磁界を形成する。磁石77は、梁18a,18bにおいて第3方向(z方向)に沿う磁界を形成する。
配線13aは、電極12aに接続されており、電極12aへの電圧及び電流の供給路である。配線13bは、電極12bに接続されており、電極12bへの電圧及び電流の供給路である。配線13cは、電極12cに接続されており、電極12cへの電圧及び電流の供給路である。配線13dは、電極12dに接続されており、電極12dへの電圧及び電流の供給路である。
電極12aは、アンカー17aを介して、梁18aの第1端部に電気的に接続されている。電極12bは、アンカー17bを介して、梁18aの第1端部とは反対側の梁18aの第2端部に電気的に接続されている。電極12cは、アンカー17cを介して、梁18bの第3端部に電気的に接続されている。電極12dは、アンカー17dを介して、梁18bの第3端部とは反対側の梁18bの第4端部に電気的に接続されている。
図24に示されるように、コントローラ7eは、電圧制御部8と、電流制御部8bまたは磁界制御部9eの少なくとも一つとを含む。
本実施の形態の電流制御部8bは、実施の形態2の電流制御部8bと同様である。電流制御部8bは、配線13a,13bを介して、電極12a,12bに接続されている。電流制御部8bは、配線13c,13dを介して、電極12c,12dに接続されている。電流制御部8bは、電極12a,12bに接続されている梁18aに流れる電流を制御する。電流制御部8bは、電極12c,12dに接続されている梁18bに流れる電流を制御する。梁18a,18bは、導電性を有している。
磁石77が電磁石である場合、磁界制御部9eは磁石77を制御して、磁石77が梁18a,18bに形成する磁界を制御する。こうして、コントローラ7eは、第1方向(x方向)または第2方向(y方向)における可動ミラー20の水平変位量を制御することができる。
例えば、複数の可動ミラー素子3dの可動ミラー20が、図2及び図7に示されているように配置されている場合において、第1方向(x方向)における複数の第1可動ミラー列4の周期と複数の第2可動ミラー列5の周期とを変化させることによって、回折角θを変化させることができる。
第一の例として磁石77が永久電磁である場合、電流制御部8bは、梁18aにゼロの電流を流す。梁18aにローレンツ力は作用しない。梁18aは撓まず、可動ミラー20は、水平方向に移動しない。可動ミラー20の水平変位量はゼロである。これに対し、電流制御部8bが梁18aに非ゼロの電流を流すと、梁18aにローレンツ力が作用する。梁18aに作用するローレンツ力の向きは、柱23が接続されている梁18aの部分における梁18aの長手方向(第2方向(y方向))と磁石77が梁18aに形成する磁界の方向(第3方向(z方向))とに垂直な第1方向(x方向)である。梁18aは、第1方向(x方向)に撓んで、可動ミラー20は第1方向(x方向)に移動する。可動ミラー20の水平変位量は非ゼロとなる。
第二の例として磁石77が電磁石である場合、電流制御部8bは、梁18aに電流を流し、かつ、磁界制御部9eは磁石77をオフ状態にする。磁石77は梁18aに磁界を形成しないので、梁18aにローレンツ力は作用しない。梁18aは撓まず、可動ミラー20の水平変位量はゼロである。これに対し、電流制御部8bは梁18aに電流を流し、かつ、磁界制御部9eは磁石77をオン状態にする。磁石77は梁18aに磁界を形成するため、梁18aにローレンツ力が作用する。梁18aに作用するローレンツ力の向きは、柱23が接続されている梁18aの部分における梁18aの長手方向(第2方向(y方向))と磁石77が梁18aに形成する磁界の方向(第3方向(z方向))とに垂直な第1方向(x方向)である。梁18aは、第1方向(x方向)に撓んで、可動ミラー20は第1方向(x方向)に移動する。可動ミラー20の水平変位量は非ゼロとなる。
可動ミラー20毎に、第1方向(x方向)への可動ミラー20の移動量を変える。こうして、第1方向(x方向)における複数の第1可動ミラー列4の周期と複数の第2可動ミラー列5の周期とを変化させることができる。例えば、第1方向(x方向)における複数の第1可動ミラー列4の周期と複数の第2可動ミラー列5の周期とが小さくなると、回折角θが大きくなる。第1方向(x方向)における複数の第1可動ミラー列4の周期と複数の第2可動ミラー列5の周期とが大きくなると、回折角θが小さくなる。以上の梁18aに関する説明は、梁18bにも同様に適用され得る。
複数の可動ミラー素子3dの可動ミラー20が、図9に示されているように配置されている場合において、第2方向(y方向)における複数の第2可動ミラー列5の周期と複数の第2可動ミラー列5の周期とを変化させることによって、回折角θを変化させることができる。
第一の例として磁石77が永久電磁である場合、電流制御部8bは、梁18bにゼロの電流を流す。梁18bにローレンツ力は作用しない。梁18bは撓まず、可動ミラー20は、水平方向に移動しない。可動ミラー20の水平変位量はゼロである。これに対し、電流制御部8bが梁18bに非ゼロの電流を流すと、梁18bにローレンツ力が作用する。梁18bに作用するローレンツ力の向きは、柱23が接続されている梁18bの部分における梁18bの長手方向(第1方向(x方向))と磁石77が梁18aに形成する磁界の方向(第3方向(z方向))とに垂直な第2方向(y方向)である。梁18bは、第2方向(y方向)に撓んで、可動ミラー20は第2方向(y方向)に移動する。可動ミラー20の水平変位量は非ゼロとなる。
第二の例として磁石77が電磁石である場合、電流制御部8bは、梁18bに電流を流し、かつ、磁界制御部9eは磁石77をオフ状態にする。磁石77は梁18bに磁界を形成しないので、梁18bにローレンツ力は作用しない。梁18bは撓まず、可動ミラー20の水平変位量はゼロである。これに対し、電流制御部8bは梁18bに電流を流し、かつ、磁界制御部9eは磁石77をオン状態にする。磁石77は梁18bに磁界を形成するため、梁18bにローレンツ力が作用する。梁18bに作用するローレンツ力の向きは、柱23が接続されている梁18bの部分における梁18bの長手方向(第1方向(x方向))と磁石77が梁18bに形成する磁界の方向(第3方向(z方向))とに垂直な第2方向(y方向)である。梁18bは、第2方向(y方向)に撓んで、可動ミラー20は第2方向(y方向)に移動する。可動ミラー20の水平変位量は非ゼロとなる。
可動ミラー20毎に、第2方向(y方向)への可動ミラー20の移動量を変える。こうして、第2方向(y方向)における複数の第1可動ミラー列4の周期と複数の第2可動ミラー列5の周期とを変化させることができる。例えば、第2方向(y方向)における複数の第1可動ミラー列4の周期と複数の第2可動ミラー列5の周期とが小さくなると、回折角θが大きくなる。第2方向(y方向)における複数の第1可動ミラー列4の周期と複数の第2可動ミラー列5の周期とが大きくなると、回折角θが小さくなる。以上の梁18aに関する説明は、梁18bにも同様に適用され得る。
本実施の形態の光走査装置1eの効果は、実施の形態1の光走査装置1の効果に加えて、以下の効果を奏する。
本実施の形態の光走査装置1eでは、面内駆動部70eは、梁(例えば、梁18a)において基板2の主面2aに垂直な第2磁界を形成する第2磁石(例えば、磁石77)を含む。梁は、導電性を有している。複数の可動ミラー素子3dは、第1電極(例えば、電極12a)と第2電極(例えば、電極12b)とを含む。第1電極と第2電極とは、基板2の主面2a上に設けられており、かつ、互いに離間されている。第1電極は、梁の第1端部に電気的に接続されている。第2電極は、梁の第2端部に電気的に接続されている。
そのため、梁(例えば、梁18a)を流れる電流と第2磁石(例えば、磁石77)によって梁に形成される第2磁界とに応じて、光走査装置1eの偏向角を変化させることができる。光走査装置1eは、光走査される領域を変更することを可能にする。
実施の形態6.
図26及び図27を参照して、実施の形態6の距離測定装置80を説明する。距離測定装置80は、例えば、光検出と測距(Light Detection and Ranging(LiDAR))システムである。
図26に示されるように、距離測定装置80は、光源82と、光走査装置83と、受光器86とを備える。距離測定装置80は、ビームスプリッタ84と、ケース81と、透明窓85と、遮光部材43とをさらに備えてもよい。
光源82は、光40を光走査装置83に向けて出射する。光源82は、例えば、半導体レーザのようなレーザ光源である。光源82から出射される光40は、例えば、レーザ光である。光源82から出射される光40の波長は、800nm以上1600nm以下の近赤外の波長域の光であってもよい。近赤外の波長域の光は、太陽光による影響を受けにくく、かつ、人の眼に障害が起きることを防止することができる。そのため、近赤外の波長域の光は、距離測定装置80に用いられる光40として好ましい。光源82から出射される光40は、30μm以上1000μm以下の波長を有するテラヘルツ波であってもよい。テラヘルツ波は、人体に無害でありかつ物体に対して高い透過性を有するため、距離測定装置80に用いられる光として好ましい。
特定的には、光源82は、波長可変光源であってもよい。光源82は、例えば、波長可変半導体レーザであってもよい。光源82は、光40を、例えば、第3方向(z方向)に出射する。光源82から出射された光40は、ビームスプリッタ84を透過して、光走査装置83に入射する。
光走査装置83は、例えば、実施の形態1から実施の形態5の光走査装置1,1b,1c,1d,1eのいずれかである。光走査装置83は、光源82から放射された光40を、距離測定装置80の周囲に向けて回折させかつ走査する。
光走査装置83の周囲に出射された光(例えば、+1次回折光41)は、光走査装置83の周囲にある物体で反射または拡散反射される。受光器86は、距離測定装置80の周囲で反射または拡散反射された光41bを受光する。具体的には、距離測定装置80の周囲で反射または拡散反射された光41bは、光走査装置83に戻る。距離測定装置80の周囲で反射または拡散反射された光41bは、光走査装置83で回折され、ビームスプリッタ84で反射されて、受光器86に入射する。受光器86は、例えば、フォトダイオードである。
ケース81は、光源82と、光走査装置83と、受光器86と、ビームスプリッタ84とを収容している。ケース81には、透明窓85が設けられてもよい。透明窓85は、光走査装置83で回折された+1次回折光41と、距離測定装置80の周囲で反射または拡散反射された光41bとを透過させる。透明窓85は、透明ガラスまたは透明樹脂で形成されている。ケース81には、遮光部材43が設けられてもよい。遮光部材43は、実施の形態1で説明したとおりである。
コントローラ7fは、光源82に通信可能に接続されている。図27に示されるように、コントローラ7fは、光源制御部91を含む。光源制御部91は、光源82を制御して、例えば、光源82の発光タイミングまたは発光レートを制御する。コントローラ7fは、受光器86に通信可能に接続されている。コントローラ7fは、距離演算部92を含む。コントローラ7fは、受光器86から、信号を受信する。距離演算部92は、この信号を処理して、距離測定装置80の周囲にある物体の距離測定装置80からの距離を算出するように構成されている。遮光部材43が光シャッターである場合、コントローラ7fは光シャッター制御部93を含む。光シャッター制御部93は、光シャッターの光透過率を制御する。
コントローラ7fは、光走査装置83の構成に応じて、電圧制御部8などをさらに含む。例えば、光走査装置83が実施の形態1の光走査装置1である場合、コントローラ7fは実施の形態1の電圧制御部8をさらに含む。
本実施の形態の距離測定装置80の効果は、実施の形態1の光走査装置1の効果に加えて、以下の効果を奏する。
本実施の形態の距離測定装置80は、光源82と、光走査装置83と、受光器86とを備える。光走査装置83は、光源82から放射された光40を距離測定装置80の周囲に向けて回折させかつ走査する。受光器86は、距離測定装置80の周囲で反射または拡散反射された光41bを受光する。
距離測定装置80は、より高速に光を走査することができる光走査装置83を備えている。そのため、距離測定装置80は、より高速に距離測定装置80の周囲の距離を測定することを可能にする。距離測定装置80は、より大きな偏向角で光を走査することができる光走査装置83を備えている。そのため、距離測定装置80は、より容易に距離測定装置80の周囲の距離を測定することを可能にする。
本実施の形態の距離測定装置80では、光源82は、波長可変光源である。光源82から出射される光の波長を変化させることによって、光走査装置83で回折される光の回折角(光走査装置83の偏向角)を変化させることができる。距離測定装置80は、より広い領域にわたって周囲の距離を測定することを可能にする。
今回開示された実施の形態1から実施の形態6はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。矛盾のない限り、今回開示された実施の形態1から実施の形態6の少なくとも2つを組み合わせてもよい。例えば、実施の形態4の面内駆動部70または実施の形態5の面内駆動部70eを、実施の形態2の光走査装置1bまたは実施の形態3の光走査装置1cに追加してもよい。本開示の範囲は、上記した説明ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることを意図される。