JP7325436B2 - タンパク質の相対酸化レベルを測定する方法 - Google Patents
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Description
本発明は、試料中のタンパク質の酸化状態を評価する方法に関する。本発明はまた、タンパク質酸化、特に活性酸素種(ROS)によって引き起こされる修飾を検出する方法及びキット、並びに本明細書に記載の方法の他の使用に関する。
ヒトでは、病気及び生理的動揺(例えば、低酸素、熱、運動、栄養)は、細胞機能に影響を与える活性酸素種(ROS)の生成をもたらし得る。ROSが細胞機能にどのように影響するかは、そのタイプ(例えば、ヒドロキシルラジカル)及び細胞の位置によって異なる。例えば、膜で生成されたヒドロキシルラジカルは、脂質の過酸化を開始し得、十分に重度の場合、結果として生じる膜漏出性は、細胞壊死を引き起こし得る。
第1の態様によれば、本発明は、試料中のタンパク質の酸化状態を評価する方法を提供し、方法は、
(a)試料を、その中のタンパク質の少なくとも1つの還元システイン基に選択的に結合するように適合された第1の標識と接触させて、第1の標識された試料を形成するステップ;
(b)第1の標識された試料のサブ試料を形成するステップ;
(c)サブ試料を処理して、その中のタンパク質の少なくとも1つの可逆的に酸化されたシステイン基を選択的に還元して、処理されたサブ試料を形成するステップ;
(d)処理されたサブ試料を、ステップ(c)中に形成されたタンパク質の還元システイン基に選択的に結合するよう適合された第2の標識と接触させて、第2の標識された試料を形成するステップ;並びに
(e)タンパク質の複数の酸化状態について、第1及び第2の標識された試料を評価するステップ
を含む。
(a)試料を、その中のタンパク質の少なくとも1つの還元システイン基に選択的に結合するように適合された第1の標識と接触させて、第1の標識された試料を形成するステップ;
(b)第1の標識された試料のサブ試料を形成するステップ;
(c)サブ試料を処理して、その中のタンパク質の少なくとも1つの可逆的に酸化されたシステイン基を選択的に還元して、処理されたサブ試料を形成するステップ;
(d)処理されたサブ試料を、ステップ(c)中に形成されたタンパク質の還元システイン基に選択的に結合するよう適合された第2の標識と接触させて、第2の標識された試料を形成するステップ;
(e)タンパク質の複数の酸化状態について、第1及び第2の標識された試料を評価するステップ;並びに
(f)ステップ(e)の評価をROSの効果と関連づけるステップ
を含む。
(a)対象からの試料を、その中のタンパク質の少なくとも1つの還元システイン基に選択的に結合するように適合された第1の標識と接触させて、第1の標識された試料を形成するステップ;
(b)第1の標識された試料のサブ試料を形成するステップ;
(c)サブ試料を処理して、その中のタンパク質の少なくとも1つの可逆的に酸化されたシステイン基を選択的に還元して、処理されたサブ試料を形成するステップ;
(d)処理されたサブ試料を、ステップ(c)中に形成されたタンパク質の還元システイン基に選択的に結合するよう適合された第2の標識と接触させて、第2の標識された試料を形成するステップ;
(e)タンパク質の複数の酸化状態について、第1及び第2の標識された試料を評価するステップ;並びに
(f)ステップ(e)の評価をROSに関連する病理と関連づけるステップ
を含む。
(a)対象からの試料を、その中のタンパク質の少なくとも1つの還元システイン基に選択的に結合するように適合された第1の標識と接触させて、第1の標識された試料を形成するステップ;
(b)第1の標識された試料のサブ試料を形成するステップ;
(c)サブ試料を処理して、その中のタンパク質の少なくとも1つの可逆的に酸化されたシステイン基を選択的に還元して、処理されたサブ試料を形成するステップ;
(d)処理されたサブ試料を、ステップ(c)中に形成されたタンパク質の還元システイン基に選択的に結合するよう適合された第2の標識と接触させて、第2の標識された試料を形成するステップ;
(e)タンパク質の複数の酸化状態について、第1及び第2の標識された試料を評価するステップ;並びに
(f)ステップ(e)の評価を、介入の存在下及び不存在下でのROSに関連する病理と関連づけるステップ
を含む。
(a)試料中のタンパク質の少なくとも1つの還元システイン基に選択的に結合するように適合された第1の標識;及び
(b)試料中のタンパク質の少なくとも1つの可逆的に酸化されたシステイン基を選択的に還元するための試薬
を含む。
第1の態様によれば、本発明は、試料中のタンパク質の酸化状態を評価する方法を提供し、方法は、
(a)試料を、その中のタンパク質の少なくとも1つの還元システイン基に選択的に結合するように適合された第1の標識と接触させて、第1の標識された試料を形成するステップ;
(b)第1の標識された試料のサブ試料を形成するステップ;
(c)サブ試料を処理して、その中のタンパク質の少なくとも1つの可逆的に酸化されたシステイン基を選択的に還元して、処理されたサブ試料を形成するステップ;
(d)処理されたサブ試料を、ステップ(c)中に形成されたタンパク質の還元システイン基に選択的に結合するよう適合された第2の標識と接触させて、第2の標識された試料を形成するステップ;並びに
(e)タンパク質の複数の酸化状態について、第1及び第2の標識された試料を評価するステップ
を含む。
(a)試料を、その中のタンパク質の少なくとも1つの還元システイン基に選択的に結合するように適合された第1の標識と接触させて、第1の標識された試料を形成するステップ;
(b)第1の標識された試料のサブ試料を形成するステップ;
(c)サブ試料を処理して、その中のタンパク質の少なくとも1つの可逆的に酸化されたシステイン基を選択的に還元して、処理されたサブ試料を形成するステップ;
(d)処理されたサブ試料を、ステップ(c)中に形成されたタンパク質の還元システイン基に選択的に結合するよう適合された第2の標識と接触させて、第2の標識された試料を形成するステップ;
(e)タンパク質の複数の酸化状態について、第1及び第2の標識された試料を評価するステップ;並びに
(f)ステップ(e)の評価をROSの効果と関連づけるステップ
を含む。
(a)対象からの試料を、その中のタンパク質の少なくとも1つの還元システイン基に選択的に結合するように適合された第1の標識と接触させて、第1の標識された試料を形成するステップ;
(b)第1の標識された試料のサブ試料を形成するステップ;
(c)サブ試料を処理して、その中のタンパク質の少なくとも1つの可逆的に酸化されたシステイン基を選択的に還元して、処理されたサブ試料を形成するステップ;
(d)処理されたサブ試料を、ステップ(c)中に形成されたタンパク質の還元システイン基に選択的に結合するよう適合された第2の標識と接触させて、第2の標識された試料を形成するステップ;
(e)タンパク質の複数の酸化状態について、第1及び第2の標識された試料を評価するステップ;並びに
(f)ステップ(e)の評価をROSに関連する病理と関連づけるステップ
を含む。
(a)対象からの試料を、その中のタンパク質の少なくとも1つの還元システイン基に選択的に結合するように適合された第1の標識と接触させて、第1の標識された試料を形成するステップ;
(b)第1の標識された試料のサブ試料を形成するステップ;
(c)サブ試料を処理して、その中のタンパク質の少なくとも1つの可逆的に酸化されたシステイン基を選択的に還元して、処理されたサブ試料を形成するステップ;
(d)処理されたサブ試料を、ステップ(c)中に形成されたタンパク質の還元システイン基に選択的に結合するよう適合された第2の標識と接触させて、第2の標識された試料を形成するステップ;
(e)タンパク質の複数の酸化状態について、第1及び第2の標識された試料を評価するステップ;並びに
(f)ステップ(e)の評価を、介入の存在下及び不存在下でのROSに関連する病理と関連づけるステップ
を含む。
(a)試料中のタンパク質の還元システイン基に選択的に結合するように適合された第1の標識;及び
(b)試料中のタンパク質の少なくとも1つの可逆的に酸化されたシステイン基を選択的に還元するための試薬
を含む。
当業者は、本明細書に記載された発明が、具体的に記載されたもの以外の変更及び修正を受け入れる余地があることを理解するであろう。
以下の方法は、上記の発明を使用する方法をより完全に説明するとともに、本発明の様々な態様を実行するために企図される最良の形態を説明するのに役立つ。これらの方法は、決して本発明の真の範囲を限定するのに役立つものではなく、むしろ例示の目的で提示されるものと理解される。
1.材料/方法
(a)参加者
18~32歳の健康な成人が参加し、西オーストラリア大学(University of Western Australia)の人間倫理委員会によって倫理が承認された。
全体を通して二重脱イオン(DDI)水を使用した。タンパク質分子量標準は、Bio-Rad(オーストラリア)から購入した。別段明記しない限り、全ての化学物質及び試薬はSigma-Aldrich(Castle Hill、オーストラリア)から入手した。ポリエチレングリコールマレイミド(malpeg),5000g/molは、JenKem Technology(米国)から購入した。
アルブミンチオール酸化の分析のために、血液9部を、DDI水中にpH7.4で希釈された、62.5mMのマルペグ、40mMのイミダゾール、及び154mMのNaClで構成されるトラッピング溶液1部を含有するK3EDTAチューブ(MinicollectチューブK3EDTA;Greiner Bio-One、オーストリア)に収集した。総血漿アルブミンの分析のために、トラッピング溶液なしで、追加の血液を第2のK3EDTAチューブに収集した。チューブを短時間ボルテックスし、次いで、遠心分離(3000g、10分間)し、血漿を収集した。トラッピング溶液を含まない血漿は直ちに液体窒素で凍結して-80℃で保存し、一方、トラッピング溶液を含む血漿は室温で20分間インキュベートした後、凍結して保存した。
マルペグを含有する血漿又はHSA試料を37℃で撹拌しながら解凍し、2つの2.5μlのアリコートに分割した。
ゲルは、ミニタンパク質プレート(Bio-Rad)を使用して手動でキャストした。簡潔には、Laemmli法[1]に従って、16%分離ゲルを作製した。蛍光イメージングのために、1%(v/v)の2,2,2-トリクロロエタノール[2]を添加した。分離ゲルが重合した後、4%濃縮ゲルを分離ゲル上に注ぎ、重合後、ゲルを使用前に少なくとも3時間、冷暗室で保管した。
血漿アルブミン上に形成されたカルボニル基は、陽性対照及び陰性対照での試料の処理を含むイムノブロッティングで決定された。血漿試料を6%SDSで1:120に希釈した。陽性対照試料は、50mMのHOClと1:1で1時間インキュベートし、次いで、6%(w/v)SDSで1:60に希釈した。希釈した試料又は陽性対照1部を、10mMジニトロフェニルヒドラジン(10mM DNPH/10%(w/v)TFA)1部に添加した。陰性対照試料は、10%(w/v)TFAの同じ条件で、DNPHは使用せずにインキュベートした。15分間のインキュベーション後、中和溶液(30%グリセロール/2M Tris)1部をDNPH及び陰性対照で処理した試料に添加した。次いで、処理した試料を還元条件下で10倍に希釈し、5μlの処理した試料をステインフリーSDS-PAGE(Biorad、4-20%Mini-PROTEAN(登録商標)TGX Stain-Free(商標)Precast Gels)で分離し、10分間、2.5A、最大25Vに設定した条件を使用して、ニトロセルロース膜(Biorad、Trans-Blot(登録商標)Turbo(商標)Mini Nitrocellulose Transfer Packs)に移した(Biorad、Trans-Blot(登録商標)Turbo(商標)Transfer System)。
別段明記しない限り、全てのデータは平均値±SEとして提示される。平均値は、t検定又は一元配置分散分析を使用して、必要に応じて反復測定と比較した。有意性はp<0.05で認めた。
(a)方法の開発
血漿アルブミンチオールの酸化状態の定量分析には、cys-34をマルペグでマレイミド標識し、次いで、標識アルブミンをSDS-PAGEで非標識アルブミンから分離する(図1及び2)。特に、試料1は、還元(RA)及び酸化アルブミン(OA;図1b)のパーセンテージを分析するために使用された。試料2を使用して、可逆的酸化型(OAR)及び不可逆的酸化型(OAI;図1b)のアルブミンのパーセンテージを計算した。試料1では、上部バンド(図2のA)は還元アルブミン(RA)であり、下部バンド(図2のB)は可逆的及び不可逆的に酸化されたアルブミン(OAR及びOAI)であった。試料2では、上部バンド(図2のC)は還元アルブミン(RA)及び可逆的に酸化されたアルブミン(OAR)であり、下部バンド(図2のA)は不可逆的に酸化されたアルブミン(OAI)であった。異なる形態のアルブミンのパーセンテージは、次のように計算された。
1.減少したアルブミンのパーセンテージ(%RA)=バンドA/(バンドA+バンドB)×100
2.不可逆的に酸化されたアルブミンのパーセンテージ(%OAI)=バンドD/(バンドD+バンドE)×100
3.可逆的に酸化されたアルブミンのパーセンテージ(%OAR)=100-%RA-%OAI
タンパク質のチオール基は酸化に敏感であるため、試料の調製中に人工的な酸化が発生する可能性がある。しかし、cys34のチオール基をマルペグと反応させると酸化が防がれる。マルペグが、収集されてすぐの血液;遠心分離後の血漿;解凍したての血漿;及び室温で2.5時間後の血漿、に添加される、3つの試料調製技術が試験された。全ての血漿試料で、マルペグが添加された血液試料のアルブミン酸化レベルと比較して、酸化が増加した(図5)。
クロマトグラフィーベースの技術は、酸化型のアルブミンの割合を測定するために使用されてきた。Turell et al[4]によって説明されるクロマトグラフィー技術を使用すると、ウシ血清アルブミン試料は36±0.7%(n=5)酸化されたと推定されるのに対し、マルペグ技術を使用すると、酸化レベルは42±0.1%(n=5)であると推定された。2つの測定値に相違があるため、ウシ血清アルブミン試料は、チオール基を完全に酸化するために使用された過酸化水素で処理された。クロマトグラフィーを使用すると、アルブミン試料は68±1.8%(n=5)酸化されたのに対し、マルペグ技術を使用すると、酸化レベルは98±0.1%(n=5)であると推定された。これらの観察は、Turell et al.のクロマトグラフィー技術がアルブミン酸化の程度を過小評価していたことを示唆している。
アルブミン酸化方法の感受性を、2つの活性酸素種、過酸化水素及び次亜塩素酸を使用したタンパク質カルボニルアッセイと比較した。過酸化水素の場合、0.5mM及び5mMの濃度では、アルブミンCys34酸化が有意に増加し、タンパク質カルボニル形成は有意に増加しなかった(図6)。同様の酸化パターンが次亜塩素酸でも明らかであり、アルブミンCys34酸化は有意に増加したが、タンパク質カルボニル形成は有意に増加しなかった(図6A及び6B)。同等の濃度で、次亜塩素酸は過酸化水素よりも多くのアルブミンの酸化を引き起こした。
ゲルベースの方法のアッセイの感受性は、運動後のヒト血漿アルブミンチオール酸化を測定することによって試験した。参加者は、50ワットの初期強度でVO2Peak定常サイクリング運動試験を実施し、随意の消耗まで、又は参加者が必要な出力を正常に維持できなくなるまで、3分間隔で強度を30ワットずつ増加させた。毛細血管血液試料は、運動の前後に収集された。運動直後、酸化アルブミンが増加し、運動後30分までに運動前のレベルに戻った(図7)。酸化されたアルブミンの増加は、不可逆的に酸化されたアルブミンではなく、可逆的に酸化されたアルブミンの増加の結果であった(図7)。
1.材料/方法
(a)参加者
健康なボランティア(n=12)及び慢性疲労症候群に罹患している人(n=12)は、エルゴメーターで片側膝伸展を伴う最大強度の30秒間にわたる自発性収縮を3回実施し、伸展の間に120秒回復を設けた。膝の角度は70度に固定された。
全体を通して二重脱イオン(DDI)水を使用した。タンパク質分子量標準は、Bio-Rad(オーストラリア)から購入した。別段明記しない限り、全ての化学物質及び試薬はSigma-Aldrich(Castle Hill、オーストラリア)から入手した。ポリエチレングリコールマレイミド(malpeg),5000g/molは、JenKem Technology(米国)から購入した。
アルブミンチオール酸化の分析のために、血液9部を、DDI水中にpH7.4で希釈された、62.5mMのマルペグ、40mMのイミダゾール、及び154mMのNaClで構成されるトラッピング溶液1部を含有するK3EDTAチューブ(MinicollectチューブK3EDTA;Greiner Bio-One、オーストリア)に収集した。総血漿アルブミンの分析のために、トラッピング溶液なしで、追加の血液を第2のK3EDTAチューブに収集した。チューブを短時間ボルテックスし、次いで、遠心分離(3000g、10分間)し、血漿を収集した。トラッピング溶液を含まない血漿は直ちに液体窒素で凍結して-80℃で保存し、一方、トラッピング溶液を含む血漿は室温で20分間インキュベートした後、凍結して保存した。
マルペグを含有する血漿又はHSA試料を37℃で撹拌しながら解凍し、2つの2.5μlのアリコートに分割した。
ゲルは、ミニタンパク質プレート(Bio-Rad)を使用して手動でキャストした。簡潔には、Laemmli法[1]に従って、16%分離ゲルを作製した。蛍光イメージングのために、1%(v/v)の2,2,2-トリクロロエタノール[2]を添加した。分離ゲルが重合した後、4%濃縮ゲルを分離ゲル上に注ぎ、重合後、ゲルを使用前に少なくとも3時間、冷暗室で保管した。
図16は、CFSを有する個人(n=12)及び健康な座りがちな個人(n=12)における血液中のタンパク質酸化レベルに対する等尺性収縮の影響を示す。運動前(pre)、及び運動後0、15及び30分の時点で血液を採取した。データは平均として示され、エラーバーは平均の標準誤差を示す。*は健康な参加者とCFS参加者の間の有意差(p<0.05)を示す。#は、運動前の測定からの有意性(p<0.05)を示す。
1.材料/方法
(a)材料
全体を通して二重脱イオン(DDI)水を使用した。タンパク質分子量標準は、Bio-Rad(オーストラリア)から購入した。別段明記しない限り、全ての化学物質及び試薬はSigma-Aldrich(Castle Hill、オーストラリア)から入手した。ポリエチレングリコールマレイミド(malpeg),2000g/molは、JenKem Technology(米国)から購入した。Perkin Elmar 226 Protein save 5スポットカードが使用された。
100mLの40mMイミダゾールを1.5mLマイクロフュージチューブ内の12.5mgのメトキシポリエチレングリコールに添加した。チューブをおよそ2分間ボルテックスした。得られたトラッピング剤は、62.5mMの最終メトキシポリエチレングリコール濃度を有する透明溶液であった。
トラッピング剤を含む血液カードを乾燥剤容器から取り出し、円が上を向くようにして平らな面に置いた。容器は再封された。ランスキャップを外してランセットを準備した。採取部位を穿刺する前に約20秒間擦り、ランセットを穿刺部位にしっかりと置き、リリースボタンを押して皮膚を穿刺した。穿刺部位を穏やかに圧迫して、一滴の血液を採取した。血液カードの円の中心に、1滴又は2滴の血液をつけた。試料は、日付、時刻及び試料識別子でラベル付けした。カードの上部を折って、収集した試料スポットの上を覆うように包み、カードを乾燥剤容器に戻した。
血液カードからの血液抽出
各血液カードの各スポットの中心に4.5mmの穴をあけた。各4.5mm血液カードディスクを96ウェルプレートの個別のウェルに配置した。血液カードディスクを含有する各ウェルに、100μlの20mMリン酸緩衝液、0.05%Tween20(pH7.1)を添加した。プレートミキサー上で、プレートを室温で2時間インキュベートした。
40μLのアリコートを、血液カード試料を含有する各ウェルから0.5mLのマイクロフュージチューブに移した。10mMのシステイン溶液は、3.5mgのL-システイン塩酸塩を100μLのDDIと1.5mlのマイクロフュージチューブ内で混合することにより調製し、これを溶解するまで30秒間穏やかにボルテックスして、200mMのシステイン含有量を有する溶液を提供した。200mM溶液を(DDIで)1:20に希釈して、最終濃度10mMのシステイン溶液を得た。40uLの10mMシステイン溶液を40uLの血液カード試料に添加し、試料をボルテックス上で、室温で30分間インキュベートして、全てのチオールを還元させた。
試料をボルテックスから取り出し、80μLの12.5mMメトキシポリエチレングリコール2000溶液(40mMイミダゾールpH7.4中の12.5mMメトキシポリエチレングリコール2000)を各試料に添加し、試料をボルテックス上で、室温で30分間インキュベートした。
シバクロンブルーの5μLアリコートを0.5mLマイクロフュージチューブにアリコートした。45μLの20mMリン酸緩衝液を添加し、チューブを軽くたたくことで穏やかに混合した。チューブを1分間遠心分離し、上清を除去して廃棄した。血液カードディスク溶液40μL及び還元血液カードディスク溶液160μLをシバクロンブルーに添加し、チューブを軽くたたくことで穏やかに混合した。チューブを室温で10分間インキュベートし、チューブを軽くたたくことで穏やかに混合した。チューブを1分間遠心分離し、上清(未結合のタンパク質全体を含有する)を除去して廃棄した。100μLの20mMリン酸緩衝液をシバクロンブルーゲルに添加し、穏やかに混合してから遠心分離し、次いで、上清を除去及び廃棄して、残留する不要な全血成分を洗い流した。結合したアルブミンは、25μLの1.4M塩化ナトリウムをチューブに添加し、チューブを軽くたたいて穏やかに混合することで溶出した。チューブを遠心分離し、上清を除去し、0.5mLマイクロフュージチューブに保管した。保存上清試料は、比較的精製されたアルブミンを含有していた。
精製したアルブミン溶液を等量の試料緩衝液(すなわち、20μLの試料緩衝液を含む20μlのアルブミン溶液)と混合した。試料をボルテックスし、次いで、20μLの試料を16%ポリアクリルアミドゲル上に充填した。ゲルを180V、70mAで2時間にわたって泳動した。ゲルは、5分間の曝露を使用してChemiDoc MP Imagingシステムで画像化した。画像Jを使用して、総アルブミンに対する酸化アルブミンの比率を定量化した。総アルブミンに対する酸化アルブミンの比率=[酸化バンドの強度/(還元バンド+酸化バンドの強度)]×100
別段明記しない限り、全てのデータは平均値±SEとして提示される。平均値は、t検定又は一元配置分散分析を使用して、必要に応じて反復測定と比較した。有意性はp<0.05で認めた。
可逆的に酸化されたアルブミンのレベルに対する運動の効果
1人の参加者が5kmのランニングを実施した。運動強度は、ランニング速度を上げることによって変更され、中強度と高強度の間で2倍になった。各ランニングの24時間後に血液試料を採取した。中強度のランニングと高強度のランニングとの間に2日間の安静期間をとった。
24歳の女性患者は、顔にマイクロニードル治療を受けた。血液試料は、治療前(ベースライン試料)、及び治療が完了してから24時間後に収集した。
訓練を受けていない参加者は、5kgのウェイトで6回の反復(二頭筋カール)を4セット実施した。血液試料は、運動を実施する前、及び運動後4日間にわたって毎日採取した。図11は、患者試料が持続的な筋肉損傷を示す高い酸化ストレスを示したことを示す。患者の酸化ストレスプロファイルは、4日目に運動前のレベルに回復していなかった。
1人の参加者が4日間の有酸素運動試験を2期間実施した。2期間は2週間の安静で区切られた。運動強度(ランニング時間及び速度)は、2日目及び4日目に増加し、各運動期間の4日目に最高強度であった。全ての試料は、運動の24時間後に取得された。
急性副鼻腔炎に罹患していると考えられた1人の男性対象。試料はおよそ24時間離して午前中に採取された。
有酸素運動の程度が異なる2人の患者が運動プログラムを受けた。患者1は良好な有酸素運動をしていると分類され、患者2は不良な有酸素運動をしていると分類された。運動プログラムは、5kmのランニング、20分のサッカー5回、及び100mのスプリントで構成された。運動プログラムの開始前及びプログラムの完了時に患者から試料を採取した。
患者はテニスをしてふくらはぎの損傷が持続していた。患者は筋肉が非常に痛いと訴え、大幅な力の喪失を経験した。理学療法士は、筋肉損傷の診断を確認し、1~2週間の回復期間を推奨した。血液試料は、損傷の24時間後から開始して10日間にわたって定期的に患者から採取した。
1.材料/方法
(a)材料
全体を通して二重脱イオン(DDI)水を使用した。タンパク質分子量標準は、Bio-Rad(オーストラリア)から購入した。別段明記しない限り、全ての化学物質及び試薬はSigma-Aldrich(Castle Hill、オーストラリア)から入手した。ポリエチレングリコールマレイミド(malpeg),5000g/molは、JenKem Technology(米国)から購入した。
アルブミンチオール酸化の分析のために、血液9部を、DDI水中にpH7.4で希釈された、62.5mMのマルペグ、40mMのイミダゾール、及び154mMのNaClで構成されるトラッピング溶液1部を含有するK3EDTAチューブ(MinicollectチューブK3EDTA;Greiner Bio-One、オーストリア)に収集した。総血漿アルブミンの分析のために、トラッピング溶液なしで、追加の血液を第2のK3EDTAチューブに収集した。チューブを短時間ボルテックスし、次いで、遠心分離(3000g、10分間)し、血漿を収集した。トラッピング溶液を含まない血漿は直ちに液体窒素で凍結して-80℃で保存し、一方、トラッピング溶液を含む血漿は室温で20分間インキュベートした後、凍結して保存した。
マルペグを含有するトラップされた血漿試料を37℃で撹拌しながら解凍し、2つの5μlのアリコートに分割した。
次いで、試料をLabChip GXIIに充填し、LabChip Protein Expressプロトコルを使用して、アルブミン濃度およそ0.023mg/mlで実行した。
図8Aは、未処理血漿試料中の総アルブミン(A)及び他の血液タンパク質(B)を示す。図8Bは、マルペグで処理された試料における酸化アルブミン(C)及び還元アルブミン(D)を示す。図8Cは、第1のマルペグ処理ステップ、還元ステップ(システインによる)、及び第2のマルペグ処理ステップを受けた試料における、不可逆的に酸化されたアルブミン(E)並びに可逆的に酸化及び還元されたアルブミン(F)を示す。
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Claims (42)
- 試料中のタンパク質の酸化状態を評価する方法であって、
前記タンパク質が、アルブミン、アルファ-2-マクログロブリン、フィブリノーゲンベータ鎖、ハプトグロビン、免疫グロブリンラムダ定常2、インターアルファ・トリプシン阻害剤重鎖H2、セロトランスフェリン、免疫グロブリンガンマ-1重鎖、フィブリノーゲンガンマ鎖及びトランスサイレチンを含むリストから選択されるタンパク質であり、
(a)前記試料を、その中の前記タンパク質の還元システイン基に選択的に結合するように、スルフヒドリル反応性化学基を含む第1の標識と接触させて、第1の標識された試料を形成するステップ;
(b)前記第1の標識された試料のサブ試料を形成するステップ;
(c)前記サブ試料を有効量のチオール含有剤で処理して、その中の前記タンパク質の少なくとも1つの可逆的に酸化されたシステイン基を、試料中の任意の不可逆的に酸化されたシステイン基よりも優先的に還元するチオール-ジスルフィド交換を引き起こして、処理されたサブ試料を形成するステップ;
(d)前記処理されたサブ試料を、ステップ(c)中に形成された前記タンパク質の還元システイン基に選択的に結合するよう、スルフヒドリル反応性化学基を含む第2の標識と接触させて、第2の標識された試料を形成するステップ;並びに
(e)前記タンパク質の複数の酸化状態について、前記第1及び第2の標識された試料を評価するステップ
を含む、方法。 - 前記タンパク質がアルブミンであり、前記少なくとも1つの可逆的に酸化されたシステイン基が、cys34に可逆的に酸化されたシステイン基である、請求項1に記載の方法。
- 前記試料が体液試料である、請求項1又は2に記載の方法。
- 前記試料が、血液、血漿、血清、尿、乳及び唾液を含む試料のリストから選択される、請求項3に記載の方法。
- 前記試料が細胞抽出物である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
- 前記第1の標識が、前記還元システイン基をトラップするようにさらに適合される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
- 前記第1の標識が、前記試料が採取された後1分未満で前記試料と接触される、請求項6に記載の方法。
- 前記第1の標識が、マレイミド基;ハロアセチル基、ヨードアセチル若しくはブロモアセチル基;及び/又はピリジルジスルフィド基を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
- 前記第1の標識が、マレイミド、フェニル水銀、ヨードアセトアミド、ビニルピリジン、臭化メチル、ヨードアセテート又はそれらの誘導体からなる群から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
- 前記第1の標識が、少なくとも3mM、3.6mM、5mM、6mM、6.25mM、7mM、8mM、9mM又は10mMの濃度で使用される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
- 前記第1の標識が、少なくとも5、10、15又は20分間にわたり、前記試料と接触される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
- 前記第1の標識が、非標識化合物と比較して標識化合物の分離を容易にするように適合された分離部材をさらに含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
- 前記分離部材が、重量差に基づく分離を容易にする、規定の分子量を有する化合物である、請求項12に記載の方法。
- 前記分離部材が、ポリマーである、請求項12又は13に記載の方法。
- 前記第1の標識が、蛍光化合物を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
- 前記サブ試料が、前記標識された試料の体積の約50%の体積を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
- 前記チオール含有剤が、1~2、1~3又は1~4の平衡定数(K)値を有する反応において、前記可逆的に酸化されたシステイン基と反応するように適合される、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
- 前記チオール含有剤が、単一のチオール基を含む化合物を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
- 前記チオール含有剤が、システイン、還元型グルタチオン、メルカプトエタノール、システアミン、ペニシラミン及びN-アセチルシステインから成る群から選択される、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
- 前記チオール含有剤が、少なくとも2mM、4mM、6mM、8mM、10mM、12mM、12.5mM、15mM又は20mMの最終濃度で使用される、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
- 前記チオール含有剤が、少なくとも5、10、15、20又は30分間にわたり、サブ試料と接触される、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
- 前記第2の標識が、前記第1の標識と同じである、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
- 前記第2の標識が、前記第1の標識に使用される濃度よりも高い濃度で使用される、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
- 前記第2の標識が、少なくとも5mM、7.5mM、10mM、12.5mM又は15mMの濃度を含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
- 前記第2の標識が、少なくとも5、10、15又は20分間にわたり、前記処理されたサブ試料と接触される、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
- 前記タンパク質の複数の酸化状態について、前記第1及び第2の標識された試料を評価するステップが、前記第1及び第2の標識された試料をサイズベースの分離に適用することを含む、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
- 前記タンパク質の同定された酸化状態の量を定量化するステップをさらに含む、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
- 前記酸化状態が、相対的に定量化される、請求項27に記載の方法。
- 前記酸化状態が、前記第1又は第2の標識からのシグナルの強度を参照することにより定量化される、請求項27又は28に記載の方法。
- 活性酸素種(ROS)に曝された試料中のタンパク質の酸化状態に対する前記ROSの影響をモニタリングするための方法であって、
前記タンパク質が、アルブミン、アルファ-2-マクログロブリン、フィブリノーゲンベータ鎖、ハプトグロビン、免疫グロブリンラムダ定常2、インターアルファ・トリプシン阻害剤重鎖H2、セロトランスフェリン、免疫グロブリンガンマ-1重鎖、フィブリノーゲンガンマ鎖及びトランスサイレチンを含むリストから選択されるタンパク質であり、
(a)前記試料を、その中の前記タンパク質の還元システイン基に選択的に結合するように、スルフヒドリル反応性化学基を含む第1の標識と接触させて、第1の標識された試料を形成するステップ;
(b)前記第1の標識された試料のサブ試料を形成するステップ;
(c)前記サブ試料を有効量のチオール含有剤で処理して、その中の前記タンパク質の少なくとも1つの可逆的に酸化されたシステイン基を、試料中の任意の不可逆的に酸化されたシステイン基よりも優先的に還元するチオール-ジスルフィド交換を引き起こして、処理されたサブ試料を形成するステップ;
(d)前記処理されたサブ試料を、ステップ(c)中に形成された前記タンパク質の還元システイン基に選択的に結合するよう、スルフヒドリル反応性化学基を含む第2の標識と接触させて、第2の標識された試料を形成するステップ;
(e)前記タンパク質の複数の酸化状態について、前記第1及び第2の標識された試料を評価するステップ;並びに
(f)ステップ(e)の前記評価を前記ROSの前記影響と関連づけるステップ
を含む、方法。 - 前記タンパク質がアルブミンであり、前記少なくとも1つの可逆的に酸化されたシステイン基が、cys34に可逆的に酸化されたシステイン基である、請求項30に記載の方法。
- 前記ROSが、スーパーオキシド、ヒドロキシルラジカル、ペルオキシルラジカル、アルコキシルラジカル、ヒドロペルオキシルラジカル、次亜塩素酸、過酸化水素、オゾン、一重項酸素及びペルオキシナイトライトを含む群から選択される、請求項30又は31に記載の方法。
- 試料中のタンパク質の酸化状態を評価するためのキットであって、
前記タンパク質が、アルブミン、アルファ-2-マクログロブリン、フィブリノーゲンベータ鎖、ハプトグロビン、免疫グロブリンラムダ定常2、インターアルファ・トリプシン阻害剤重鎖H2、セロトランスフェリン、免疫グロブリンガンマ-1重鎖、フィブリノーゲンガンマ鎖及びトランスサイレチンを含むリストから選択されるタンパク質であり、
(a)前記試料中の前記タンパク質の還元システイン基に選択的に結合するための、スルフヒドリル反応性化学基を含む第1の標識;
(b)前記試料中の前記タンパク質の少なくとも1つの可逆的に酸化されたシステイン基を、試料中の任意の不可逆的に酸化されたシステイン基よりも優先的に還元するチオール-ジスルフィド交換を引き起こすための有効量のチオール含有剤を含む試薬;及び
(c)ステップ(b)での前記試薬での処理によって形成された前記タンパク質の還元システイン基に選択的に結合するための、スルフヒドリル反応性化学基を含む第2の標識、
を含む、キット。 - 前記第1及び第2の標識が同じである、請求項33に記載のキット。
- 前記試料を受け取るために適合された基材をさらに含む、請求項33又は34に記載のキット。
- 前記基材が、前記第1の標識をさらに含む、請求項35に記載のキット。
- 前記基材が吸収紙である、請求項35に記載のキット。
- 前記基材が乾燥血液スポットカードである、請求項35に記載のキット。
- 前記乾燥血液スポットカードから血液試料の少なくとも一部を抽出するように適合された抽出試薬をさらに含む、請求項38に記載のキット。
- 前記タンパク質を前記第1の標識又は第2の標識から選択的に溶出するように適合されたタンパク質単離試薬をさらに含む、請求項33~39のいずれか一項に記載のキット。
- 試料収集デバイスをさらに含む、請求項33~40のいずれか一項に記載のキット。
- 請求項33~41のいずれか一項に記載のキットであって、請求項1~32のいずれか1つの方法に従って、前記キットを利用するための説明書をさらに含む、キット。
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