実施の形態1.
以下、図面に基づいてこの発明の実施の形態1について説明する。なお、図1を含め、以下の図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。また、図1を含め、以下の図面において、同一の符号を付したものは、同一又はこれに相当するものであり、このことは明細書の全文において共通することとする。さらに、明細書全文に表わされている構成要素の形態は、あくまでも例示であって、これらの記載に限定されるものではない。
実施の形態1では、ペットの中でも、特にネコを対象として説明する。まず、ネコの身体的及び生態的な特徴について説明する。図1は、ネコの被毛の生え方を模式的に示した模式図である。図2は、家庭内で一般的に使用されている掃除機の音圧レベルと被毛回収速度との関係を示すグラフである。図3は、家庭内で一般的に使用されている掃除機の音圧レベルと風量との関係を示すグラフである。
ネコの体表には、1cm四方につき平均すると、600本ほどの被毛が生えている。図1に示すように、ネコの被毛には、ガードヘアと、オーンヘアと、ダウンヘアと、がある。ネコの平均的な体長は、首から尻尾の付け根までが約40±αcmである。また、ネコの平均的な胴回りは、30±αcmである。よって、ネコの胴体の表面積は、40×30=1200cm2である。したがって、1cm四方に600本だから、1200×600=720000本である。ただし、ネコの体の部位によって被毛の濃密部分があるため、結果的には80万本~100万本前後の被毛が体表面に存在すると考えられる。なお、比較として、人間の髪の毛は約10万本である。
人間の毛は、一つの毛穴から一本生えるが、ネコの被毛は、図1に示すように、一つの毛穴から6本前後生える。そして、ネコの被毛は、おおよそ3ヶ月で全て生え変わる。つまり、ネコを多頭飼いしている場合は、飼っている頭数分の被毛が日常的に飛散していることになる。なお、比較として、イヌも同様な被毛の生え方をしている。
イヌとネコの被毛の太さを比較すると、何れも平均的ではあるが、ネコの被毛の直径は0.02~0.03mmであるのに対して、イヌの被毛の直径は0.05~0.1mmである。イヌの被毛の直径の最小値と最大値との幅が広いのは、イヌの種類によって被毛の太さが異なるからである。
また、ネコの被毛の一本当たりの平均長は、短被毛種で3cm~4cmであり、長被毛種で5cm~8cmである。
被毛は、主として「ケラチン」と呼ばれるタンパク質によって構成されている。毛包の根元には、皮脂腺と呼ばれる皮脂を分泌する器官がある。毛包とは、毛根を包む袋状の上皮組織である。
しかしながら、ネコの被毛は柔らかく、皮脂腺から分泌された皮脂が被毛に十分に行き渡らないために、ネコの被毛は常に柔らかい毛質状態である。対してイヌは、その逆でネコより太い被毛のため、被毛に皮脂分が行き渡りやすい。
ネコは、単独行動する動物であるため、自身の体臭を防ぐために念入りなセルフグルーミングを行う。対してイヌは、複数行動する動物であるため、動物行動学的には体臭が必要であり、体臭があることを問題としないことから、セルフグルーミングをあまり行わない。
すなわち、ネコは、自身の体表面をなめることで臭い及び汚れを除去して清潔性を保つグルーミング行動を行う時間が多くなり、必然的に自身の被毛を飲み込んでしまう。また、セルフグルーミングにより、被毛の飛散も同時に発生している。
ネコが自分の被毛を飲み込み、毛玉が体内に溜まり過ぎると「毛球症」になる。ネコは、飲み込んで体内で処理しきれない被毛を嘔吐するが、「毛球症」になると吐き気、食欲不振、便秘、あるいは、下痢などの症状が起こり、酷くなると開腹手術が必要になる。
ネコの飼育者は、ネコの性質を保つために、ネコ自身の体の清潔さと被毛の飲み込み防止行為とを併せて、ネコとのコミュニケーションの一環として、ネコの体のブラッシングを行うことが多い。このブラッシングによって、無駄な被毛の回収ができ、加えてネコが飼育者に体をなでられることでネコ自身の快適性を向上できる。つまり、ブラッシングをすることによって、被毛回収とストレス対策とを同時に実現できる。
また、ブラッシングをすることにより、ネコのストレス軽減と同時に、飼育者自身の脳内ホルモンの「オキシトシン」分泌によるストレス軽減効果を生んでいることが近年の研究で明らかになっている。
従来、飛散してしまった被毛の回収は、家庭内で一般的に使用されている掃除機又は粘着紙等の掃除道具を用いて行っていた。また、動物種、特にネコに特化したブラシは少なかった。一般的に市販されているペット用のブラシは、基本的に「イヌ」と兼用したものがほとんどである。つまり、ネコの体質及び性格に対応させたネコ専用のブラシと謳うものは非常に少なかった。「イヌ」と兼用したブラシを使用したときの極端な場合は、ブラッシングを行うことによりネコがストレス状態になる。結果的に、ネコがブラッシング行為そのものを嫌がるという結果を招くことになっていた。
また、ネコの性質を無視して、粘着紙をネコの体表に押し付けて、被毛を回収しようとする飼育者もいる。この行為は、被毛を強制的に抜く行為に等しく、痛みなどを招き、ネコに対する虐待行為として捉えられる場合もある。
また、一般的に使用されている掃除機は、ゴミを集めることを基本的な仕事としており、ゴミを吸い込むのに必要な流体を生み出すために高速で回転するモータを備えている。このような、高速で回転し、強力な吸込力を生み出す掃除機は、図2及び図3に示すように、回転に伴う大きな音を発生する。掃除機から発生する音は、騒音として、社会問題にもなっている。加えて、モータの回転に伴って、電磁成分による音、モータの回転成分による音、及び空気が羽根を通過するときの変動音など、様々なピーク周波数も同時に発生している。且つ、発生する音は、20kHz以上の超音波帯域でもある、高い周波数帯域まで及んでいることは周知の事実である。
ここで、ネコの聴覚及び視界に対するストレス反応を実験検証で調べた結果を説明する。ネコは、短毛種と長毛種の2種類であり、肥満傾向などの特別な理由がない限り、飼いネコの外観寸法及び重量は平均的に略同じようなサイズとなっている。
ただし、「耳の聞こえ」及び「視力」には年齢層なども加味された個体差はある。
なお、ネコに対する身体能力面については様々な見解があるが、イヌほどの研究が多く行われていないために、確実なことは少ない。イヌは人間に対する服従心が強いため、様々な試験及び研究に対しての反応が確実に取得でき、研究対象として使われることが多いことから、結果も様々発表されている。対してネコは、人間に対する服従心が少ないために、イヌと同様の試験を行っても反応を示さないばかりか、試験による外的要因に対しストレス反応として回避行動をする。そのため、ネコでは、試験結果が得にくく、研究題材としては困難なことから、以前から言われている研究報告内容と今現在の研究結果とは異なる結果になっていることが多い。
そこで、音、物及び色などに対するネコのストレス状態を、身体的な反応から確認した実験を行った。なお、ネコの場合、ストレスを受けている状態を身体的外観動作で容易に確認することができる。例えば、尻尾を大きく振る、被毛を逆立てる、耳が横向きになる、物を見た途端に逃げるなどの身体的外観動作によりストレス状態を確認することができる。物を見た途端に逃げる場合、物に対する学習能力が高いと判断することもできる。
この実験のネコのサンプル数は30匹であり、ネコの性別、ネコの年齢及びネコの被毛の種類等に依存性はないが、室内での飼育ネコを中心とした点は共通事項である。
何れの手段による被毛回収は、ネコが上記のようなストレス反応を発しており、全てのネコがストレスを感じることなく、被毛回収を行うことはできていなかった。何れの手段とは、掃除機、粘着紙、及び「イヌ」と兼用したブラシのことである。
また、音が大きいということが大きなストレス要因になっていたこともわかった。
以上のことから、何れの手段においても、ネコ目線での構成にはなっておらず、ネコ専用の被毛の回収手段は、存在しなかった。
ネコの音に対する聴感特性の実験結果は以下となった。
音圧レベルは、実空間において、ネコに近接している場所で音の出る機器、ここでは掃除機を使う場合は30dB未満が必須であることがわかった。特にネコの体に接触させて掃除機を使用する場合は20dB±3dB以下が必須であることもわかった。
周波数帯域は、1kHz以下、特に800Hz以下の低い周波数帯域に対しては、音圧レベルが30dB以下であればストレス反応が少ない傾向であることがわかった。800Hz以上の場合では音圧レベルが25dB前後から、聴感に対する身体的反応が目視で確認できた。場合によっては、音が聞こえないような距離又は場所を求めて回避行動を開始することも確認できた。
また、特異的な周波数帯域、例えば1/3オクターブの音をネコに近接した場所で出した場合、ネコは10kHz以上の帯域では20dB前後から音が聞こえるような動作を示す。また、ネコは最大で80kHz前後までは音が聞こえていると思われるような行動を示すことがわかった。
さらに、ピーク突出量は、1kHz以下でベースレベルから10dB以下が必須であることがわかった。
このことから、電源に対する運転周波数も考慮する必要があるということがわかった。
ネコの物に対する視覚特性の実験結果は以下となった。
物の大きさに対しては、ネコは敏感に反応することがわかった。飼育者が、例えば500mlのペットボトルを持ってネコに近づいた場合、比較的、回避行動を行わないことがわかった。これは、ネコが、自身に危害が加えられないと判断したからであると考えられる。
ただし、5cm単位でサイズが大きくなると、物から回避する行動が見られるようになった。つまり、ネコは自身の体よりも大きな物、その中でも特に動く物に強い警戒心を抱くことがわかった。このため、一般的な家庭で使用されている掃除機では、音だけでなく、大きさによってもネコにストレスを与えていることになる。なお、一般的な家庭で使用されている掃除機には、コードレスのハンディクリーナーも含まれる。
ネコの色に対する視覚特性の実験結果は以下となった。
なお、色についても、500mlのペットボトルを利用して反応を確認した。
ネコは、色弱と一般に言われているが、虹に代表される7色を用いた場合、暖色系よりも寒色系の色に対しては移動行動を伴わない傾向があるということがわかった。白い物に対しては、反応が最も鈍い傾向でもあった。
このことから、ネコは、物の色も認識していると考えられる。
以上のような実験結果から、ネコに近接させる機器には、以下のような仕様が必要であると想定することができる。
機器から発生する音に対する仕様としては、周波数帯域が800Hz以下までの動作音であって、音圧レベルが25dB以下とする。
機器の大きさに対する仕様としては、一般的な500mlのペットボトルの大きさを最大とする。
機器の色に対する仕様としては、白若しくはグレー系統とする。
このような仕様を満足する機器構成であれば、ネコに与えるストレスは少なくなると想定される。この結果を踏まえて機器を開発することにより、空中飛散してしまう前に被毛を効率的に回収でき、ペット及び飼育者のストレスを軽減できる機器の開発が可能である。つまり、人がペットをなでる動作に近い動作によってペットをリラックスさせると同時にペットの被毛回収が効果的に進められ、同時にペットとふれあえることで飼育者自身もストレス軽減効果を得られる機器の開発が可能である。
また、ネコの体にはツボが複数あることが知られている。このツボをブラッシングと同時に刺激することで、ネコのリラックス向上及びネコの健康向上に寄与するということが学術的に明らかにされている。例えば、http://cat-guide.net/wp/wp-content/uploads/2015/05/猫 体ツボ.jpgを参照。
なお、周波数帯域が800Hzの場合は、電源周波数が関係してくるために、動作させる電源の周波数、高調波成分、及びその際の音圧レベルにも十分に注意する必要がある。この点を考慮すると、電源としては電池などによるDC電源駆動が有効である。
図4は、実施の形態1に係る被毛回収装置100の構成を概略的に示す斜視図である。被毛回収装置100は、上記ネコの身体的及び生態的な特徴を加味して構成されたものである。そのため、ここでは、対象となるペットの一例としてネコを挙げて説明する。
被毛回収装置100は、ネコがリラックスでき、使用者とコミュニケーションをとることでネコだけでなく使用者のストレスも軽減し、かつ、被毛を効率的に回収することにより被毛飛散を低減できるようにしたものである。具体的には、被毛回収装置100は、使用者が片手で持てる大きさに構成され、ペットの体表面に付着している剥がれそうな被毛及び既に剥がれた被毛を吸引回収するものである。
まず、被毛回収装置100を構成する上での前提について説明する。
被毛回収装置100は、全体の重量を250g以下の軽量物とする。また、被毛回収装置100は、全長を30cm以下の長さとする。なお、全長とは図4に示されている被毛回収装置100の長手方向の長さのことを意味している。
被毛回収装置100は、幅方向を15cm以下の長さとする。なお、幅方向の長さとは、図4に示す平面視状態において、長手方向に直交する方向の長さのうち最大のものを意味している。
被毛回収装置100は、自身から発生する音圧レベルを30dB以下とし、ピーク突出量を5dB以内とする。
また、被毛回収装置100は、外観を白若しくはグレー系統の色にすることが望ましい。ただし、一色だけで構成しなくてもよい。また、模様及び文字などの少なくとも1つを装飾として用いてもよい。また、マーク、文字及びロゴなどを刻印などで装飾してもよい。
これらを前提として、被毛回収装置100の具体的な構成について説明する。
図4に示されるように、被毛回収装置100は、吸引風路部10と、駆動部40と、を有する。被毛回収装置100は、吸引風路部10と、駆動部40と、を一体に組み合わせて構成されている。吸引風路部10は吸入口25から流入した空気が流れる風路を形成する。駆動部40は、吸入口25から空気を吸い込むためのファン部50及びファン部50を駆動するための電源部60を備えている。被毛回収装置100は、ネコの身体に吸入口25を当てることにより、吸入口25から空気と共に被毛を吸込み、被毛回収を行う装置である。
図5は、実施の形態1に係る被毛回収装置100のファン部50周辺の断面構造の説明図である。図4及び図5に示される様に、駆動部40は、吸入口25から空気と共に被毛を吸い込むためのファン部50の吸引風路部10側に、被毛回収部45を備える。被毛回収部45は、吸引風路部10内に吸い込まれた被毛がファン部50に進入しないように構成されている。
被毛回収部45は、吸引風路部10の下流側に、吸引風路部10と連通するように設けられ、吸引風路部10を通ってきた被毛を回収する。被毛回収部45にはフィルター部42が設けられており、被毛はフィルター部42によって回収されることになる。フィルター部42は、被毛を回収しつつ被毛を運んできた空気を流通させるものである。つまり、フィルター部42は、ファン部50に被毛が入り込まないようにする役目を果たすものである。フィルター部42を着脱自在としておけば、取り外して洗浄できる。
フィルター部42は、例えばメッシュフィルターで構成されている。メッシュフィルターの寸法は、5mm角~7mm角とした四角形又は半径2mm~3mmの円形とし、開口面積は50%以上とする。フィルター部42は、上記具体的な寸法に限定するものではなく、被毛がフィルター部42に絡まることなく、回収した被毛を取り除きやすいものであればよい。ネコの被毛の長さは上記の通りであるので、メッシュフィルターの寸法及び開口面積であれば、被毛を確実に回収でき、かつ下流側のファン部50の回転に圧力損失を与えることなくファン部50を運転させることができる。
なお、フィルター部42を構成しているメッシュフィルターの構成素材についても特に限定するものではなく、金属、樹脂、又は紙などを構成素材として構成された何れのものであってもよい。
ファン部50は、被毛を吸引する空気の流れを生成するものであり、風速を5m/s以下とするシロッコファン又は軸流ファンで構成されている。従来、ファン部50を駆動すると、ファン部50の回転成分による周波数が突出したピークとして現れる。しかし、シロッコファン又は軸流ファンをファン部50とすることで、ファン部50が出す音の周波数のうち、ファン部50の回転成分によって発生する周波数を抑えることができる。ファン部50には排気口55が開口形成されている。これにより、吸入口25から排気口55までを空気が流れることになる。
図5に示される様に、排気口55は、被毛回収装置100の底面70側に開口している。排気風路56は、ファン部50と外部の空間とを連通し、風路部30の中心軸に沿った方向に延びている。このように構成されることにより、被毛回収装置100の長手方向の端部に排気口55が開口するため、飼育者が被毛回収装置100を持って被毛回収を実施したときに飼育者の手で排気口55が塞がれることを抑制することができる。また、排気の吹出方向が、被毛回収装置100の底面70に対し垂直方向であるため、被毛回収装置100の吸入口25をネコに向けること無く被毛回収を行うことができる。
図5に示される様に、電源部60は、ファン部50の後方、つまりファン部50の被毛回収部45とは反対側に設けられ、ファン部50に駆動電力を供給する。電源部60には、例えばスイッチ61及び図示されていないファン回転数用ボリュームが接続されていても良い。スイッチ61は、操作されることで、ファン部50への電源供給を開始又は停止するON/OFFスイッチとして機能するものである。風速を5m/s以下とするファン部50の駆動には、最大24VのDC電源が必要である。電源部60は、スイッチ61が操作されると、最大24VのDC電源をファン部50に供給する。
ファン回転数用ボリュームは、ファン部50の回転数を調整する際に使用者によって操作されるものである。ファン回転数用ボリュームは、ファン部50へ供給する電圧を変更し、ファン部50の回転の強弱を段階的に調整することが可能とするものである。ファン回転数用ボリュームが操作されたとき、電源部60からファン部50に対して9V程度の電源供給を開始する。ネコの体表面の状態によっては、風速を速くしたり、遅くしたりすることが考えられるので、ファン部50の回転数の増減を実行可能とするために、ファン部50は、回転数制御を可能にしておくとよい。ファン回転数用ボリュームの具体例としては、強弱スイッチ又は大小スイッチなどが挙げられる。ただし、ファン部50の回転を一定速とする場合には、ファン回転数用ボリュームを設ける必要はない。
ファン部50を動作させる電源はDC電源である。そのため、電源部60は、一度の使用時間が5分程度で、且つ、被毛回収装置100のサイズ及び重量を考慮して、DC24Vを最大として、300mA程度の電池容量とするとよい。また、駆動部40に図示されていない接点部を設けて、電源部60に内蔵されている充電池に充電する充電式としてもよい。接点部は、プラス接点部及びマイナス接点部で構成される。被毛回収装置100を充電式とすることで、被毛回収装置100への電力供給に外部電源との配線が必要なくなり、外部電源との配線がないためブラッシング動作の妨げにもならない。なお、乾電池により電源を供給してもよく、ブラッシング動作の妨げにはなるが配線によって電源を供給してもよい。
充電式とした場合には、図示省略の充電ボックスに被毛回収装置100又は電源部60のみを装着保管し、保管中に充電を行うようにしても良い。また、被毛回収装置100によれば、運転時間を短くすることができ、かつ、ファン部50の回転容量を小さくできるため、充電池の大きさも小さくできる。充電池を小さくすることによって、重量も軽くなる。さらに、例えば充電装置としての機能を有した被毛回収装置置き台により充電池を充電しても良い。
なお、被毛回収装置100は、スイッチ61及びファン回転数用ボリュームの設置位置を特に限定するものではない。例えば、電源部60の背面に設けてもよいし、ファン部50の排気口55と並ぶように設けてもよい。また、スイッチ61とファン回転数用ボリュームとを離れた位置に設けてもよい。さらに、スイッチ61及びファン回転数用ボリュームの大きさ及び形状についても、特に限定するものではない。
図6は、実施の形態1の被毛回収装置100のファン部50の内部構成を拡大して概略的に示す模式図である。図6に基づいて、ファン部50について詳しく説明する。ファン部50は、外郭を構成する外装ケース50Aを有している。外装ケース50Aの内部には、ファン50a、ベルマウス部50b、ガード部51が設置されている。
ファン50aは、シロッコファン又は軸流ファンで構成されている。NZ音の周波数は、Nをファン50aの回転周波数、Zを羽根枚数としたときに、N×Zで求まる。ファン50aが2000回転/分程度で回るシロッコファンである場合、回転に伴う音の周波数のピーク成分は33Hz前後に発生する。ファン50aの羽根が30枚であれば、ファン50aの回転に伴うNZ音の周波数は、990Hzとなり、その音圧のピーク突出量は5dB以下である。
また、ファン50aが軸流ファンである場合、ファン50aが2000回転/分程度で回る場合、回転に伴う音の周波数のピーク成分は33Hz前後に発生する。ファン50aの羽根が6枚とすると、ファン50aの回転に伴うNZ音の周波数は約200Hz程度である。
吸入口25での風速を5m以下で保つためには、吸入口25の開口面積を2m2程度とする。こうすることで、吸入口25のサイズと本体のサイズが決まる。ファン50aの仕様及び吸入口25の開口面積が決まれば、被毛回収装置100のサイズを「手のひらサイズ」とすることが可能になる。
ベルマウス部50bは、ファン部50の最上流側に開口形成されている吸入路54に設置され、ファン部50への空気の吸い込みを促す役目を果たす。ベルマウス部50bは、駆動部40内の被毛回収部45のフィルター部42の下流側に位置している。ベルマウス部50bは、端部50cを介して外装ケース50Aに取り付けられている。端部50cよりも外側に外装ケース50Aの内壁を設けることは特に問題とならないが、端部50cからファン部50の中心側に外装ケース50Aの内壁を設けることはベルマウス部50bよりも下流側に配置されているファン50aに圧力損失を与えることになる。そのため、外装ケース50Aは、ベルマウス部50bの端部50cの外側に内壁が位置するように構成されている。
外装ケース50Aの吸入路54と対向する面、つまり電源部60側の面は閉塞されている。そして、外装ケース50Aの図6における上側の部分は、開口されている。外装ケース50Aの開口57は、排気風路56に連通する。ファン部50が駆動することによって吸入口25から吸入された空気は、外装ケース50Aによって直角方向に曲げられる。そして、ファン50aから吹き出された空気は、外装ケース50Aの開口57から排気風路56に接続される部分において直角方向に曲げられ、排気口55から被毛回収装置100の外部に排出される。図5に示される様に、排気口55は、被毛回収装置100を使用している際に、ネコに向かない位置かつ使用者が保持する部分ではない位置に形成される。即ち、排気口55は、被毛回収装置100の底面70側に開口している。そして、外装ケース50Aの開口に連通する排気風路56は、ファン部50と外部の空間とを連通し、風路部30の中心軸に沿った方向に延びている。
次に、吸引風路部10の構造について説明する。
図4に示される様に、吸引風路部10は、筒状体であり、一方の端部に吸入口25が設けられ、他方の端部に駆動部40が接続されている。吸引風路部10は、駆動部40側から吸入口25側に向かうに従い断面形状が小さくなるように形成されている。ここで、断面形状とは、筒状体である吸引風路部10の中心軸に垂直な断面における形状を指す。ただし、吸引風路部10の断面形状は、駆動部40側から吸入口25側に向かうに従い一律に小さくなるものに限定されず、外観のデザインなどに応じて駆動部40側から吸入口25に到る途中で断面形状が一部大きくなっても良い。なお、吸引風路部10の中心軸は図面に示されるz軸に平行である。各図に示されるx、y、z方向は、各図において共通である。
吸引風路部10は、背面部31及び正面部32を有している。背面部31は、吸引風路部10を仮想平面Pで分割した場合に、y方向側の部分である。正面部32は、y方向逆向き側の部分である。仮想平面Pは、吸引風路部10の中心軸を含み、xz平面に平行な平面である。
側面視した状態において吸引風路部10の正面部32は、側面視において仮想平面Pに向かって凸となっている湾曲形状になっているとよい。吸入口25をネコの身体に当接させたときに、正面部32は、ネコの身体にぶつかるのが抑制される。ただし、正面部32の側面視における形状は、この形状に限定されない。なお、実施の形態1において、背面部31は、吸入口25の周辺を除き、仮想平面Pについて正面部32と対称な形状になっている。
図7は、実施の形態1に係る被毛回収装置100の吸入口25の断面図である。吸引風路部10のz方向の端部、つまり先端部には、吸い込まれる空気の入口となる吸入口25が形成されている。吸入口25は、筒状体である吸引風路部10の中心軸上に形成されている。また、吸引風路部10は、吸入口25から駆動部40の内部に設置されたファン部50までを接続し、空気が流れる風路を形成している。ファン部50を駆動することにより吸入口25からファン部50に向かって空気の流れが生ずる。この空気の流れは、吸引風路部10内部に形成される風路の中心軸に垂直な断面において、中央部の流速が最も速くなる。そのため、吸入口25は、吸引風路部10の中心軸上に位置することにより、吸入口25から被毛91を吸入しやすくなる。なお、実施の形態1において風路の中心軸は、吸引風路部10の中心軸に一致する。
また、低騒音を実現するためには、吸引風路部10の流路断面略中央部以外で発生する空気の流れによる乱流等が発生しにくくすることが重要である。それには、吸入口25の流路断面略中央部とファン部50の吸入路流路断面略の中央部とを同一軸上に位置させる必要がある。この点からも、吸入口25は、ファン部50の吸入路54の流路断面略中央部に位置する軸上に形成するのが望ましい。また、吸入口25の幅は、駆動部40の被毛回収部45に設けられファン部50と連通する吸入開口部の幅よりも小さく構成されている。このように構成されることにより、吸入口25の幅方向の各点において風速分布が略均一になり、被毛91の捕集効率が向上する。
吸入口25は、背面側周縁部22と正面側周縁部23とにより囲まれた領域であり、吸引風路部10の内部の空洞部11と外部の空間とを連通している。図4に示される様に、被毛回収装置100の吸入口25は、扁平形状の開口である。吸入口25の長手方向は、x方向に平行である。背面側周縁部22は、吸入口25の周縁部のうち背面側に位置している。正面側周縁部23は、吸入口25の周縁部のうち正面側に位置し、2つの突起部21の間を繋いでいる。図7に示される断面において、背面側周縁部22は、正面側周縁部23よりもファン部50から遠い位置にある。
図7に示される様に、背面側周縁部22及び正面側周縁部23により形成される吸入口25は、吸引風路部10の中心軸Sに対し傾斜して開口されており、y方向逆向きに向いている。つまり、背面側周縁部22が正面側周縁部23よりもz方向に位置するように吸入口25が形成されている。
実施の形態1において、吸引風路部10は、吸入口部20と風路部30とを組み合わせて構成されている。吸入口部20と風路部30とが一体となって筒状体を形成している。吸入口部20と風路部30とは着脱自在に構成されている。また、吸入口部20は、逆向きにしても風路部30に取り付けることが可能になっていることが望ましい。つまり、吸入口部20の接続部は仮想平面Pについて面対称形状になっており、かつ、風路部30の接続部も仮想平面Pについて面対称形状になっている。このように構成されることにより、図7においてy方向逆向きに向いて斜めに開口している吸入口25を、y方向に向けることができる。吸入口25を逆向きに取り付けられることにより、ネコの身体の向き、及び被毛回収装置100の使用者の被毛回収装置100を持つ手が右手又は左手のどちらか等の様々な状況においても、駆動部40の向きは所定の方向に向けた状態で使用することができる。
吸引風路部10の背面側周縁部側の内壁71には、集毛部80が設置されている。集毛部80は、吸入口25と対向する内壁71の吸入口25に向かって壁面から突出するように設置されている。集毛部80は、少なくともその一部が吸入口25から突出している。集毛部80の先端は、吸入口25がネコの被毛表面90に当接された状態において、被毛91に当接する様に構成されている。また、集毛部80の根元側、即ち集毛部80の内壁71側の端部は、開口が設けられている。開口部81は、吸引風路部10の吸入口25側とファン部50側とを連通している。
図8は、実施の形態1に係る被毛回収装置100の集毛部80の斜視図である。集毛部80は、先端に接触部85が設けられており、接触部85の長手方向の両端に内壁71と接続する接続部88が設けられている。開口部81は、接触部85、2つの接続部88、及び内壁71により囲まれた空間である。
接触部85は、集毛部80のうち被毛に接触し、体表から抜けた被毛91を集める部分である。接触部85は、表面82がなめらかな波形の曲面で構成されている凹凸形状を備える。実施の形態1においては、接触部85の表面82は、複数の凸部84が等間隔に並んでおり、2つの凸部84の間に凹部83が形成されている。接触部85の表面82は、図7に示される被毛回収装置100を動かす方向A1に向いている。図8に示される接触部85の表面82は、吸入口25及び吸入口25が接触している被毛表面90とに囲まれる空間において、被毛91と接触する。そして、被毛回収装置100が移動することにより新たに吸入口25に入ってくる被毛91は、次々に接触部85の表面82に当たり、既に体表から剥がれた被毛91及び抜けかかっている被毛91が接触部85の表面82に集積される。
図7に示される様に、接触部85の表面82は、被毛回収装置100を動かす方向A1に向けられている。従って、接触部85の表面82の凹凸形状の凸部84は、A1方向に向かって突出している。なお、凸部84の突出する方向を第1方向と称する場合がある。また、凸部84は、凸部84が突出する方向である第1方向に交差する第2方向に延びている。なお、実施の形態1においては、第1方向と第2方向とは直交しているが、これだけに限定されるものではない。接触部85を被毛表面90に接触させる場合は、表面82の下端の稜線、即ち集毛部80の先端にある稜線のうち、凸部84の先端稜線89が被毛表面90に当接するように集毛部80が設置されると良い。即ち、図8に示されている、接触部85の表面82の凹凸形状の第2方向の端である先端稜線89が被毛表面90に当接する様に構成されると良い。このように構成されることにより、凸部84の先端稜線89が櫛のように被毛表面90に当接し、被毛回収の効率が向上する。
図9は、実施の形態1に係る被毛回収装置100において集毛部80に被毛91が集積する過程の説明図である。図9(a)は、被毛91が接触部85に集積する前の状態を示している。被毛回収装置100の吸入口25が、被毛表面90に接触する前においては、接触部85の表面82に被毛91は付着していない。図9(b)は、被毛91が接触部85に集積し始めた状態を示している。被毛回収装置100の吸入口25が被毛表面90に接触し、接触部85の表面82に被毛91が接触すると、既に体表から剥がれた被毛91及び抜けかかっている被毛91が表面82の凸部84に引っかかる。凸部84は、接触部85が被毛表面90に沿って動いたときに、被毛91に最初に接触する部分であるため、被毛91が引っかかり易い。そのため、被毛91は、凸部84の頂部に引っかかり、ファン50aにより生ずる空気の流れにより吸引風路部10に引き込まれていく。
図9(c)は、被毛91が接触部85に集積した状態を示している。被毛回収装置100の吸入口25を被毛表面90に接触させ動かしているうちに、凸部84は、次々に被毛91を引っかける。そのため、凸部84に引っかかっていた被毛91のうち吸引風路部10に引き込まれないものは、次第に凹部83に移動し、凹部83に被毛91が集積する。集積した被毛91は、互いに絡まり合い、徐々に塊となる。被毛91の塊は、凹凸形状の隣合う凹部83同士の間でつながるように集積されていく。しかし、被毛91の塊は、接触部85の表面82上を凸部84が延びる第2方向に移動することができるため、吸引風路部10に引き込まれていく。
図10は、実施の形態1に係る被毛回収装置100の集毛部80の比較例である集毛部180に被毛91が集積する過程の説明図である。集毛部180は、実施の形態1の集毛部80と同様に、吸引風路部10の内壁71から吸入口25に向かって突出するものである。ただし、図10(a)に示される様に、集毛部180は、複数の棒状の突起により接触部185が形成されている。被毛回収装置100が被毛表面90に沿って動かされると、被毛91は、図10(b)に示される様に、接触部185に引っかかる。
図10(c)は、被毛91が接触部185に集積した状態を示している。接触部185は、実施の形態1の集毛部80の接触部85とは異なり、複数の棒状の突起の間に空間がある。そのため、突起に引っかかった被毛91は、棒状の突起である接触部182の周囲を囲むように絡まる。接触部185に絡まった被毛91は、絡み合いながら次第に塊となり、やがて隣合う突起に絡んだ被毛91の塊同士が絡みあい、接触部185から外れない状態になる。よって、ファン50aにより生ずる空気の流れがあっても、接触部185に絡まった被毛91は、接触部185に絡まったまま保持され、やがて吸入口25の大部分を塞いだ状態になる。
一方、実施の形態1の集毛部80の接触部85は、表面82の少なくとも凸部84がなめらかな波形の曲面で構成されている凹凸形状を備える。そのため、凹凸形状の凸部84の頂部が被毛91と接触し、比較例の接触部185のような櫛歯形状の突起と同様に被毛91を引っかけることができる。さらに、接触部85の凸部84の間には凹部83が形成されているため、凸部84に引っかかった被毛91は、接触部85の表面82において互いに絡み合って塊になる場合があるが、接触部85自体に絡みつくことがない。つまり、塊になった被毛91は、接触部85の表面82上を移動することができる。従って、実施の形態1の集毛部80に集積した被毛91は、吸入口25を閉塞することなく、ある程度の大きさの塊の状態で吸引風路部10内に吸引される。
特に、実施の形態1に係る被毛回収装置100は、例えばネコに対し使用されるものであるため、ファン50aによる騒音の音量及び周波数帯が調整されており、ファン50aによる吸引力が制限される。このような場合において、実施の形態1の集毛部80の接触部85の形状によれば、ファン50aによる風量が小さくても被毛91が集積されたまま滞留することを抑制することができる。
図11は、実施の形態1の集毛部80の接触部85の部分断面図である。図12は、図11の集毛部80の接触部85の比較例である集毛部180aの接触部185aの部分断面図である。図11及び図12は、凹凸形状の凹部83が延びる第2方向に垂直な断面を示している。なお、図11及び図12に示される断面を第1断面と称する場合がある。接触部85の表面82の波形形状は、第1断面において、凸部84の頂点を含む第1部分87と凹部83の頂点を含む第2部分86とが円弧形状である。第1部分87の円弧形状の半径寸法R1は、第2部分86の円弧形状の半径寸法R2以下に形成されると良い。なお、図11に示される接触部85の表面82の形状においては、半径寸法R1と半径寸法R2とはほぼ等しい。
一方、図12に示される様に、凸部84の頂点を含む第1部分87の半径寸法R1が凹部83の頂点を含む第2部分86の半径寸法R2よりも大きい場合、被毛91の塊が凹部83に引っかかり、吸引風路部10に被毛91が吸い込まれない場合がある。そのため、図11に示される様に、第1部分87の円弧形状の半径寸法R1は、第2部分86の円弧形状の半径寸法R2よりも小さいことが望ましい。
なお、実施の形態1の集毛部80の接触部85の表面82の形状は、図11に示される様な凸部84と凹部83とが円弧形状で形成されたものに限定されるものではない。例えば、凸部84の断面形状は、楕円弧で形成された場合、台形の角部を丸めた形状で形成された場合、又は三角形の頂点を丸めた形状で形成された場合等、そのほかの形態であっても良い。これらのような場合、図11に示される実施の形態1に係る集毛部80の接触部85と同様に、凸部84の幅Aは、凹部83の幅Bよりも小さいことが望ましい。図12に示される様に、凸部84の幅Aが凹部83の幅Bより大きい場合、凹部83に被毛91の塊が引っかかり、吸引風路部10に被毛91が吸い込まれない場合がある。
図7及び図8に戻り、実施の形態1の集毛部80は、吸引風路部10内において開口部81を形成している。集毛部80は、吸入口25が被毛表面90に接触している状態において吸入口25を2つに仕切り、正面側周縁部23側に第1吸入口25a、背面側周縁部22側に第2吸入口25bを形成する。開口部81は、第2吸入口25bとファン部50側の吸引風路部10を連通するものである。
第1吸入口25a側の風路は、集毛部80の第1吸入口25a側、即ち被毛回収装置100を動かす方向A1を向いた面である、接触部85の表面82に集積された被毛91を吸入する。また、第2吸入口25b側の風路は、集毛部80の接触部85の表面82の裏側の領域に集積された被毛91を吸入する。このように構成されることにより、被毛回収装置100は、集毛部80と背面側周縁部22との間に集積される被毛91を開口部81から吸入することができる。そのため、被毛回収装置100は、集毛部80に引っかからずに背面側周縁部22に引っかかった被毛91も回収できるため、被毛91の回収効率を向上させることができる。また、開口部81を設けることにより、集毛部80と背面側周縁部22との間に被毛91がたまることがないため、手作業等により第2吸入口25b周辺にたまった被毛91を除去する必要もない。
(集毛部80の変形例)
図13は、実施の形態1に係る被毛回収装置100の集毛部80の変形例である集毛部80aの斜視図である。集毛部80aは、集毛部80のように被毛回収装置100を動かす方向の面に凹凸形状が形成されているのではなく、被毛表面90に対向している面に凹凸形状が形成されている。なお、凹凸形状が形成されている接触部85の表面82aは、凹凸形状が延びる第2方向が吸入口25が形成する仮想面に平行でなくともよく、吸入口25に対し傾斜していても良い。このように構成された場合であっても、接触部85の表面82aは、被毛91の引っかかりによる吸入口25の閉塞を抑制することができ、効率良く被毛回収を行うことができる。
図14は、実施の形態1に係る被毛回収装置100の集毛部80の変形例である集毛部80bの斜視図である。図15は、図14の集毛部80bの正面図及び側面図である。集毛部80bは、集毛部80aと同様に被毛表面90に対向している面に凹凸形状が形成されているが、さらに集毛部80bの先端側に突出部89bを備える。突出部89bは、凹凸形状となっている接触部85の表面82bとともに被毛表面90に当接される。このように構成された場合であっても、接触部85の表面82a及び突出部89bは、被毛91の引っかかりによる吸入口25の閉塞を抑制することができ、効率良く被毛回収を行うことができる。
図16は、実施の形態1に係る被毛回収装置100の集毛部80の変形例である集毛部80cの斜視図である。集毛部80cは、集毛部80bに開口部81を追加したものである。集毛部80cのように開口部81を追加することにより、集毛部80と同様に、集毛部80cは、集毛部80cに引っかからずに背面側周縁部22に引っかかった被毛91も回収できる。
図17は、実施の形態1に係る被毛回収装置100の集毛部80の変形例である集毛部80dの斜視図である。集毛部80dは、集毛部80b及び80cに対し、表面82bの凹凸形状から突出部89cの間をなだらかに接続したものである。つまり、表面82bの凹凸形状が突出部89cにも形成され、突出部89cの先端に向かうに従い凹凸形状の凹凸の差が徐々に小さくなっている。このような構成であっても、接触部85の表面82b及び突出部89cは、被毛91の引っかかりによる吸入口25の閉塞を抑制することができ、効率良く被毛回収を行うことができる。
実施の形態2.
実施の形態2に係る被毛回収装置200について説明する。被毛回収装置200は、実施の形態1に係る被毛回収装置100の集毛部80を変更したものである。なお、実施の形態1と同一の機能及び作用を有する構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
図18は、実施の形態2に係る被毛回収装置200の集毛部80eの斜視図である。集毛部80eは、先端に接触部85eが設けられており、接触部85eの長手方向の両端に内壁71と接続する接続部88が設けられている。接触部85eは、集毛部80eが内壁71から突出する方向の先端に板状部分を有し、板状部分の表面82eにディンプル加工が施されている。つまり、接触部85eは、接触部85eの先端の板状部分の表面82eに深さの浅い凹部83eが形成されており、表面82eの凹部83e以外の平坦な部分が凸部84eとなっている。
図19は、実施の形態2に係る被毛回収装置200の吸入口25の断面図である。接触部85eの表面82eは、被毛表面90に沿って設けられている。よって、接触部85eの表面82eは、吸入口25に平行又は若干傾斜している。図19に示される様に、実施の形態2に係る被毛回収装置200においては、接触部85eの表面82eは、被毛回収装置200を動かす方向に向くように傾斜して設けられている。このように構成することにより、実施の形態2に係る被毛回収装置200は、実施の形態1に係る被毛回収装置100と同様の効果を得ることができる。また、凹部83eは、表面82eに対し垂直方向から見たときに円形状の凹みであるが、円形状の凹みの直径寸法よりも深さが小さい。そのため、ディンプルには、被毛91が引っかかったり詰まったりすることがない。
実施の形態3.
実施の形態3に係る被毛回収装置300について説明する。被毛回収装置300は、実施の形態1に係る被毛回収装置100の集毛部80を変更したものである。なお、実施の形態1と同一の機能及び作用を有する構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
図20は、実施の形態3に係る被毛回収装置300の正面図である。図21は、実施の形態3に係る被毛回収装置300の側面図である。図22は、実施の形態3に係る被毛回収装置300の背面図である。図23は、実施の形態3に係る被毛回収装置300の吸入口25周辺の拡大図である。図24は、実施の形態3に係る被毛回収装置300の吸入口25の断面図である。実施の形態1においては、集毛部80が吸引風路部10の内壁71から突出し、その先端部に接触部85が設けられていたが、実施の形態3においては、吸引風路部10の内壁71に接触部385の凹凸形状が形成されている。つまり、実施の形態2における集毛部380は、吸引風路部10の内壁71のうち、背面側周縁部22側に位置する内壁71に設けられ、接触部385は、吸入口25の背面側周縁部22に隣接した内壁71に形成されている。
吸入口25は、2つの突起部21と背面側周縁部22と正面側周縁部23とにより囲まれた領域であり、吸引風路部10の内部の空洞部11と外部の空間とを連通している。吸入口25の長手方向は、x方向に平行であり、仮想平面P上にある。吸入口25の長手方向の両端部に突起部21が1つずつ設けられている。背面側周縁部22は、吸入口25の周縁部のうち背面側に位置し、2つの突起部21の間を繋いでいる。正面側周縁部23は、吸入口25の周縁部のうち正面側に位置し、2つの突起部21の間を繋いでいる。
突起部21は、吸入口25のx方向の両端部に配置されており、z方向に突起先端26を向けて設けられている。実施の形態において、突起先端26は仮想平面P上に位置している。図21に示される様に、突起部21は、側面視において吸入口25側の幅が広く突起先端26に向かって幅が狭くなるように形成されており、側面視において略三角形状となっている。側面視において、突起部21の背面側に位置する背面稜線27と正面側に位置する正面稜線28は、仮想平面Pについて対称に、突起先端26から吸入口25側へ斜めに延びている。背面稜線27は、吸入口25側の端が背面側周縁部22に接続されている。正面稜線28は、吸入口25側の端が正面側周縁部23に接続されている。
また、図20及び図22に示される様に、突起部21は、正面視又は背面視において吸入口25側の幅が広く突起先端26に向かって幅が狭くなるように形成されており、正面視又は背面視において略三角形状になっている。図22に示される様に、背面側から見て突起部21の内側に背面稜線27があり、背面稜線27は背面側周縁部22と接続されている。突起部21の外側は、側面稜線29がある。側面稜線29は、吸引風路部10の側面の稜線と滑らかに接続されている。
図20及び図22に示される様に、背面側周縁部22は、第1周縁22Aを頂点とする曲線状であり、中央部22aが凸で両端の突起部21に向かうに従い緩やかにz方向逆向きに下がる形状になっている。正面側周縁部23は、x方向に平行になっている。
図23に示される様に、背面側周縁部22は、中央部22aが最もy方向に突出して位置しており、両端の突起部21に向かうに従い緩やかにy方向逆向きに下がる形状になっている。これは、平面視の状態、つまり仮想平面Pを水平方向とし吸引風路部10を中心軸方向から見たときにおいても同様である。なお、背面側周縁部22の中央部22aは、y方向に凸の曲線形状でも良いし、直線形状であっても良い。また、正面側周縁部23は、中央部23aがy方向逆向きに突出して位置しており、両端の突起部21に向かうに従い緩やかにy方向に上がる形状になっている。これは、平面視の状態においても同様である。なお、正面側周縁部23の中央部23aは、y方向逆向きに凸の曲線形状でも良いし、直線形状であっても良い。
図24に示される様に、背面側周縁部22、正面側周縁部23、及び2つの突起部21に囲まれる吸入口25は、傾斜して開口されており、y方向逆向きに向いている。つまり、背面側周縁部22が正面側周縁部23よりもz方向に位置するように吸入口25が形成されている。背面側周縁部22の中央の第1周縁22Aと正面側周縁部23の中央の第2周縁23Aとを通り、x軸に平行な平面を吸入口仮想平面Qとしたときに、突起部21は、吸入口仮想平面Qよりも突出している。実施の形態において、突起部21の正面稜線28は、吸入口仮想平面Qに対し平行に近い角度で交差している。突起部21の背面稜線27は、正面稜線28よりも吸入口仮想平面Qに対し直角に近い角度で交差している。
図24に基づいて、被毛回収装置300の使用状態例について説明する。図24では、被毛回収装置300の動きを矢印A1で示し、空気の流れを矢印A2で示している。
被毛回収装置300の使用者は、被毛回収装置300のスイッチ61を操作して、被毛回収装置100に電源をいれる。使用者は、被毛回収装置300を自身の手で持ち、吸入口25をネコCaの体表面に接触させる。そして、使用者は、被毛回収装置300をネコCaの毛並みの方向に沿って動かす。矢印A1の方向が、被毛回収時の被毛回収装置100の移動方向である。こうすることで、被毛回収装置300の吸入口25から被毛91が吸引風路部10に吸入される。
すなわち、このとき、吸入口25が当接しているネコCaの体表面に付着している剥がれそうな被毛91及び既に剥がれた被毛91は、外部から吸入口25に流れ込む空気の流れにより吸引風路部10の内部に吸い込まれる。突起部21は、吸入口25よりも被毛回収装置300の先端側に配置されており、使用時には吸入口25が接する被毛表面90よりもネコCaの身体側に位置することになる。そのため、突起部21は、ネコCaの被毛91の内部に入り込んでいる。突起部21は、吸入口25の長手方向の両端において被毛91をかき分けながら移動することになる。従って、2つの突起部21によってかき分けられた被毛91のうち、既に体表面から剥がれた被毛91、及び体表面から剥がれそうな被毛91が、2つの突起部21の間の吸入口25に向かう空気の流れA2と共に効率よく吸入口25に導かれる。そして、被毛91は吸入口25から吸引風路部10に吸入されることになる。つまり、突起部21が吸入口25の長手方向の両端に形成されているので、突起部21により掻き出され突起部21の周辺にある剥がれた被毛91は、吸入口25に導かれることになる。
また、突起部21がネコCaの被毛91の内部に入り込むとともに、背面側周縁部22に隣接した内壁71に設けられた凸部384の先端稜線389もネコCaの被毛91の内部に入り込む。接触部385の表面382に形成された凸部384は、複数形成されており、複数の凸部384の先端稜線389は、被毛表面90を櫛のようにかき分けながら移動する。そのため、凸部384の頂部には実施の形態1に係る接触部85の凸部84と同様に、被毛91が引っかかる。凸部84に引っかかった被毛91は、矢印A2で示される空気の流れにより、吸引風路部10の内部へと吸い込まれる。また、凸部384に引っかかった被毛91は、互いに絡み合い、被毛91の塊となって凹部383に集積される場合がある。しかし、接触部385の表面382は、波形の凹凸形状となっているため、実施の形態1に係る接触部85と同様に、被毛91の塊が表面382に引っかかることがない。そのため、被毛回収装置300は、少ない風量であっても被毛91が吸入口25を閉塞するのを抑制できる。
図23に示される様に、吸入口25の背面側周縁部22のうち中央部22aが最も凸になっている。そのため、背面側周縁部22の中央部22aが最もネコCaの体表に近く、突起部21の近傍の端部領域22bは、中央部22aよりもネコCaの体表から離れた位置にある。背面側周縁部22の中央部22aが最も被毛91を体表側に押さえつけるが、その両脇にある端部領域22bは、被毛の押さえつけが中央部22aよりも弱くなっている。これにより、突起部21の近傍領域では被毛の押さえつけが弱く被毛が立っている状態になっているため、突起部21が直接当たる被毛だけでなく、その周囲の被毛も動かすことができる。また、接触部385は、被毛91を体表側に押しつける中央部22aを中心にして設けられている。そのため、複数の凸部384は、被毛91の内部に比較的深く入り込み、被毛91を引っかけ易い。よって、突起部21だけでなく接触部385の複数の凸部384が被毛91をかき分けることにより、被毛91の中で既に体表面から剥がれた被毛91及び体表面から剥がれそうな被毛91をかき出せる領域が増える。そのため、被毛回収装置300は、効率良く被毛回収を行うことができる。また、接触部385の凸部384は、内壁71に沿って延びており、吸引風路部10の奥側に向かうに従い凹凸の高低差がなくなるように形成されている。そのため、接触部385は、内壁71となめらかな曲面で接続され、空気の流れを阻害することがなく、効率良く被毛回収を行うことができる。
また、背面側周縁部22は、図20等に示される正面図の様に中央部22aがz方向に凸になっているが、端部領域22bが中央部22aよりもy方向逆向き、即ち正面側に下がる曲線を描いている。従って、図24に示される様に吸入口25を被毛表面90に当接させた状態においては、背面側周縁部22が被毛を押さえつける量は、中央部22aから端部領域22bに向かうに従い徐々に少なくなるように構成されている。ネコCaの身体は、一般的に背骨に沿った方向及び身体の胴回りの方向において湾曲した三次元的な曲面になっているが、被毛回収装置300の背面側周縁部22は、その曲面に沿いやすい様に設定されている。
また、実施の形態3において突起部21の形状は、正面側、背面側、側面側から見た時に略三角形状に形成されている。だが、図面に示された形状だけに限定されるものではなく、吸入口25をネコCaの被毛表面90に当接させた状態において、突起部21の正面側の面が被毛表面90に緩やかな角度で当接する様に構成されていれば良い。このように構成されることにより、被毛回収と同時に突起部21がネコCaに対し適度な刺激を与えることができ、かつネコCaの身体を傷つけることがない。また、突起部21は、吸入口25の両端部に設けられており、被毛が吸入口25に滞留することがないため、被毛の吸引回収を阻害することが抑制される。さらに、突起部21は、略三角形状になっているため、突起部21に被毛が絡むのを抑制することができる。
また、接触部385もネコCaの身体の表面に沿いやすい形状に形成された背面側周縁部22に隣接した内壁72に設けられている。そのため、吸入口25を被毛表面90に当接させた状態において、接触部385の凸部384は、被毛91の内部に入り込み、被毛回収と同時にネコCaに対し適度な刺激を与えることができる。また、被毛91の内部に入り込む接触部385の凸部384の先端稜線389は、凸部384が延びる第2方向に沿った断面において、丸みを帯びた形状であることが望ましい。先端稜線389が丸みを帯びた形状になっていることにより、ネコCaに対し過度な刺激を与えることがない。また、先端稜線389は、少なくとも凸部384の部分が丸められていれば良く、凹部383の部分が角になっていても丸められていてもよい。
吸引風路部10に吸入された、被毛は、被毛回収部45のフィルター部42で回収される。このとき、被毛と一緒に吸入された空気は、被毛回収部45のフィルター部42を通過し、ファン部50を経由した後、ファン部50の排気口55から被毛回収装置100の外部へと排気される。実施の形態1と同様に排気口55は、被毛回収装置300の底面側に設けられている。そして、図5に示される様に排気風路56は、底面70に垂直方向に空気が流れるように形成されている。これにより、被毛回収装置300は、吸入口25をネコCaに当接させている状態において、排気がネコに当たらないため、ネコにストレスを与えることがない。この構成によれば、ネコの身体が向いている方向及び使用者が被毛回収装置100を持つ手が右手又は左手に拘わらず、排気口55をネコCaに向けずに使用することができる。
また、使用者が被毛回収装置300を動かすことで、突起部21は、ネコCaの身体への刺激を同時に行っている。つまり、被毛回収装置100は、ネコCaを手で撫でるような動作を行うと同時に、ネコCaの被毛を飛散させることなく、回収することを可能にしている。また、ネコCaの被毛回収を行うと同時に、突起部21がネコの体にあるツボを刺激することにもなり、ネコCaのリラックス向上及び健康向上を図ることができる。
ブラッシング時間はネコの性格にもよるが、一回当たり10分以下が一般的である。また、生え換わる被毛が多い換毛期を含め、一度に回収する被毛の重量は平均2g以下である。このことから、2つの突起部21同士の幅は40mm~50mmの間に設定され、吸入口25の幅は、y方向の幅で15~20mmに設定すると良い。また、被毛回収装置100の直径は15cm以下、被毛回収装置100の全長は30cm以下の長さ、容積が170cm3以下で被毛回収装置300を構成すると良い。すなわち、使用者が被毛回収を行う間中、片手で持てる程度の大きさ及び重量で被毛回収装置300を構成するのが望ましい。なお、吸引風路部10を構成する風路部30の外観面となる表面には、周方向、つまり吸引風路部10の中心軸周りに延びるくぼみ形状が設けられていても良い。これにより、使用者が吸引風路部10を掴んだ際に滑りにくく、落とすのを抑制することができる。また、くぼみ形状を表面に設けることにより、使用者が手の大きさに関係なく保持し易くなる。
また、吸引風路部10は、金属材料又は帯電防止剤が含まれた樹脂材料で構成されるとよい。被毛回収装置300は、吸入口部20をネコの身体に沿って移動させることにより被毛回収を行う。そのときに、吸引風路部10を構成する材料によっては、静電気により帯電する場合がある。吸引風路部10が帯電すると、静電気による放電により、ネコにストレスを与えるだけでなく、使用者にも不快感を与える場合がある。従って、吸引風路部10の少なくとも一部、例えば吸入口部20を金属材料、又は帯電防止材が含まれた樹脂材料で構成するとよい。
また、被毛回収装置300によれば、被毛回収時に発生する音も小さく、音によるストレスをネコに与えることがない。そのため、被毛回収装置300の使用時においても、ネコ自身が安心して、使用者との交流時間を持つことができる。
以上に本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上述した実施の形態の構成のみに限定されるものではない。特に構成要素の組み合わせは、各実施の形態における組み合わせのみに限定するものではなく、他の実施の形態に記載した構成要素を別の実施の形態に適用することができる。また、いわゆる当業者が必要に応じてなす種々なる変更、応用、利用の範囲をも本発明の要旨(技術的範囲)に含むことを念のため申し添える。