以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
以下では、本実施形態における故障判定回路を用いた機器として、物理量処理装置(角速度処理装置)を例にとり説明する。
1.物理量検出装置
1.1 第1実施形態
[物理量検出装置の構成]
図1は、物理量検出装置(角速度処理装置)1の第1実施形態の構成例を示す図である。物理量検出装置1は第1実施形態において、物理量検出素子100と、物理量検出回路200と、を含み構成され、さらに、物理量検出装置1から出力されたデータを用いて、各種の計算処理や制御を行うMCU(Micro Control Unit)3を含んで構成されてもよい。
物理量検出素子100は、駆動電極と検出電極が配置された振動片を有し、一般的に、振動片のインピーダンスをできるだけ小さくして発振効率を高めるために、振動片は気密性が確保されたパッケージに封止されている。物理量検出装置1は第1実施形態では、物理量検出素子100は、平面形状がT型の2つの駆動振動腕を有するいわゆるダブルT型の振動片を有する。
図2は、物理量検出装置1の第1実施形態における物理量検出素子100の振動片の平面図である。物理量検出素子100は、例えば、Zカットの水晶基板により形成されたダブルT型の振動片を有する。水晶を材料とする振動片は、温度変化に対する共振周波数の変動が極めて小さいので、角速度の検出精度を高めることができるという利点がある。なお、図2におけるX軸、Y軸、Z軸は水晶の軸を示す。
図2に示すように、物理量検出素子100の振動片は、2つの駆動用基部104a、104bからそれぞれ駆動振動腕101a、101bが+Y軸方向及び-Y軸方向に延出している。駆動振動腕101aの側面及び上面にはそれぞれ駆動電極112及び113が形成されており、駆動振動腕101bの側面及び上面にはそれぞれ駆動電極113及び112が形成されている。駆動電極112、113は、それぞれ、図1に示した物理量検出回路200のDS端子,DG端子を介して駆動回路20に接続される。
駆動用基部104a、104bは、それぞれ-X軸方向と+X軸方向に延びる連結腕105a、105bを介して矩形状の検出用基部107に接続されている。
検出振動腕102は、検出用基部107から+Y軸方向及び-Y軸方向に延出している。検出振動腕102の上面には検出電極114及び115が形成されており、検出振動腕102の側面には共通電極116が形成されている。検出電極114、115は、それぞれ、図1に示した物理量検出回路200のS1端子,S2端子を介して検出回路30に接続される。また、共通電極116は接地される。
駆動振動腕101a、101bの駆動電極112と駆動電極113との間に駆動信号として交流電圧が与えられると、図3に示すように、駆動振動腕101a、101bは逆圧電効果によって矢印Bのように、2本の駆動振動腕101a、101bの先端が互いに接近と離間を繰り返す屈曲振動(励振振動)をする。
この状態で、物理量検出素子100の振動片にZ軸を回転軸とした角速度が加わると、駆動振動腕101a、101bは、矢印Bの屈曲振動の方向とZ軸の両方に垂直な方向にコリオリの力を得る。その結果、図4に示すように、連結腕105a、105bは矢印Cで示すような振動をする。そして、検出振動腕102は、連結腕105a、105bの振動(矢印C)に連動して矢印Dのように屈曲振動をする。このコリオリ力に伴う検出振動腕102の屈曲振動と駆動振動腕101a、101bの屈曲振動(励振振動)とは位相が90°ずれている。
ところで、駆動振動腕101a、101bが屈曲振動(励振振動)をするときの振動エネルギーの大きさ又は振動の振幅の大きさが2本の駆動振動腕101a、101bで等しければ、駆動振動腕101a、101bの振動エネルギーのバランスがとれており、物理量検出素子100に角速度がかかっていない状態では検出振動腕102は屈曲振動しない。ところが、2つの駆動振動腕101a、101bの振動エネルギーのバランスがくずれると、物理量検出素子100に角速度がかかっていない状態でも検出振動腕102に屈曲振動が発生する。この屈曲振動は漏れ振動と呼ばれ、コリオリ力に基づく振動と同様に矢印Dの屈曲振動であるが、駆動信号とは同位相である。
そして、圧電効果によってこれらの屈曲振動に基づいた交流電荷が、検出振動腕102の検出電極114、115に発生する。ここで、コリオリ力に基づいて発生する交流電荷は、コリオリ力の大きさ(言い換えれば、物理量検出素子100に加わる角速度の大きさ)に応じて変化する。一方、漏れ振動に基づいて発生する交流電荷は、物理量検出素子100に加わる角速度の大きさに関係せず一定である。
なお、駆動振動腕101a、101bの先端には、駆動振動腕101a、101bよりも幅の広い矩形状の錘部103が形成されている。駆動振動腕101a、101bの先端に錘部103を形成することにより、コリオリ力を大きくするとともに、所望の共振周波数を比較的短い振動腕で得ることができる。同様に、検出振動腕102の先端には、検出振動腕102よりも幅の広い錘部106が形成されている。検出振動腕102の先端に錘部106を形成することにより、検出電極114、115に発生する交流電荷を大きくすることができる。
以上のようにして、物理量検出素子100は、Z軸を検出軸としてコリオリ力に基づく交流電荷(角速度成分)と、励振振動の漏れ振動に基づく交流電荷(振動漏れ成分)とを検出電極114、115を介して出力する。
図1に戻り、物理量検出装置1の第1実施形態における物理量検出回路200は、基準電圧回路10、駆動回路20、検出回路30、物理量処理回路40、発振回路60、温度センサー70及び記憶部80を含んで構成されており、例えば、1チップの集積回路(IC:Integrated Circuit)であってもよい。なお、物理量検出回路200は、これらの要素の一部を省略又は変更し、あるいは他の要素を追加した構成としてもよい。
基準電圧回路10は、物理量検出回路200のVDD端子より供給される電源電圧から基準電圧(アナロググランド電圧)などの定電圧や定電流を生成し、駆動回路20、検出回路30、物理量処理回路40に含まれるデジタル演算回路41等に供給する。ここで、物理量処理回路40に入力される電圧を特に基準電圧VREFとする。
駆動回路20は、物理量検出素子100を励振振動させるための駆動信号を生成し、DS端子を介して物理量検出素子100の駆動電極112に供給する。また、駆動回路20は、物理量検出素子100の励振振動により駆動電極113に発生する発振電流がDG端子を介して入力され、この発振電流の振幅が一定に保持されるように駆動信号の振幅レベルをフィードバック制御する。また、駆動回路20は、駆動信号と位相が同じ検波信号SDETを生成し、検出回路30に出力する。
検出回路30は、S1端子とS2端子を介して、物理量検出素子100の2つの検出電極114、115に発生する交流電荷(検出電流)がそれぞれ入力され、検波信号SDETを用いて、これらの交流電荷(検出電流)に含まれる角速度成分を検出し、角速度成分の大きさに応じた電圧レベルの信号(角速度信号)VAO10,VAO20を生成して出力する。
記憶部80は、不図示の不揮発性メモリーを有し、当該不揮発性メモリーには、駆動回路20や検出回路30に対する各種のトリミングデータ(調整データや補正データ)等が記憶されている。不揮発性メモリーは、例えば、MONOS(Metal Oxide Nitride Oxide Silicon)型メモリーやEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)として構成することができる。さらに、記憶部80は、不図示のレジスターを有し、物理量検出回路200の電源投入時(VDD端子の電圧が0Vから所望の電圧まで立ち上がる時)に不揮発性メモリーに記憶されている各種のトリミングデータ、処理データ等がレジスターに転送されて保持され、レジスターに保持された各種のトリミングデータ、処理データ等が駆動回路20及び検出回路30に供給されるように構成してもよい。
温度センサー70は、その周辺の温度に応じた電圧レベルの信号(温度信号)VTOを出力するものであり、温度が高いほど出力電圧が高い正極性のものであってもよいし、温度が高いほど出力電圧が低い負極性のものであってもよい。温度センサー70は、例えば、絶対温度に比例した電圧(PTAT(Proportional To Absolute Temperature)電圧)を出力する回路であってもよい。
物理量処理回路40は、デジタル演算回路41及びインターフェイス回路42を含んで構成されている。
デジタル演算回路41は、マスタークロック信号MCLKによって動作し、検出回路30が出力する角速度信号VAO10,VAO20の電圧レベルをデジタル値に変換した後、所定の演算処理を行ってデジタルデータ(角速度データ)VDO1を生成し、インターフェイス回路42に出力する。
インターフェイス回路42は、MCU3が発信する各種のコマンドを受信し、コマンドに応じたデータをMCU3に発信する処理を行う。また、インターフェイス回路42は、MCU3からの要求に応じて記憶部80(不揮発性メモリーやレジスター)に記憶されているデータを読み出してMCU3に出力する処理や、MCU3から入力されたデータを記憶部80(不揮発性メモリーやレジスター)に書き込む処理などを行う。インターフェイス回路42は、例えば、SPI(Serial Peripheral Interface)バスのインターフェイス回路であり、MCU3が発信する選択信号、クロック信号、データ信号が、それぞれ、物理量検出回路200のSS端子,SCLK端子,SI端子を介して入力され、物理量検出回路200のSO端子を介してデータ信号をMCU3に出力する。なお、インターフェイス回路42は、SPIバス以外の各種のバス(例えば、I2C(Inter Integrated Circuit)バス等)に対応するインターフェイス回路であってもよい。
発振回路60は、マスタークロック信号MCLKを発生させて、物理量処理回路40に含まれるデジタル演算回路41に出力するクロック生成回路として機能する。発振回路60は、例えば、リングオシレーターやCR発振回路として構成される。
[駆動回路の構成]
次に、駆動回路20について説明する。図5は、駆動回路20の構成例を示す図である。図5に示すように、物理量検出装置1の第1実施形態における駆動回路20は、I/V変換回路210、ハイパスフィルター(HPF)220、コンパレーター230、全波整流回路240、積分器250及びコンパレーター260を含んで構成されている。なお、駆動回路20は、これらの要素の一部を省略又は変更し、あるいは他の要素を追加した構成としてもよい。
I/V変換回路210は、物理量検出素子100の励振振動により発生し、DG端子を介して入力された発振電流を交流電圧信号に変換する。
ハイパスフィルター220は、I/V変換回路210の出力信号のオフセットを除去する。
コンパレーター230は、ハイパスフィルター220の出力信号の電圧を基準電圧と比較して2値化信号を生成し、この2値化信号がハイレベルの時はNMOSトランジスターを導通させてローレベルを出力し、2値化信号がローレベルの時はNMOSトランジスターを非導通にし、抵抗を介してプルアップされる積分器250の出力電圧をハイレベルとして出力する。そして、コンパレーター230の出力信号は、駆動信号として、DS端子を介して物理量検出素子100に供給される。この駆動信号の周波数(駆動周波数)を物理量検出素子100の共振周波数と一致させることで、物理量検出素子100を安定発振させることができる。
全波整流回路240は、I/V変換回路210の出力信号を整流(全波整流)して直流化された信号を出力する。
積分器250は、基準電圧回路10から供給された電圧に基づき生成された所望の電圧VRDRを基準に、全波整流回路240の出力電圧を積分して出力する。この積分器250の出力電圧は、全波整流回路240の出力が高いほど(I/V変換回路210の出力信号の振幅が大きいほど)低くなる。したがって、発振振幅が大きいほど、コンパレーター230の出力信号(駆動信号)のハイレベルの電圧が低くなり、発振振幅が小さいほど、コンパレーター230の出力信号(駆動信号)のハイレベルの電圧が高くなるので、発振振幅が一定に保持されるように自動利得制御(AGC:Auto Gain Control)がかかる。
コンパレーター260は、ハイパスフィルター220の出力信号の電圧を増幅して2値化信号(方形波電圧信号)を生成し、検波信号SDETとして出力する。
[検出回路の構成]
次に、検出回路30について説明する。図6は、検出回路30の構成例を示す図である。図6に示すように、物理量検出装置1の第1実施形態における検出回路30は、チャージアンプ310,320、差動アンプ330、ハイパスフィルター(HPF)340、ACアンプ350、同期検波回路360、可変ゲインアンプ370、スイッチトキャパシタフィルター(SCF)380、出力バッファー390を含んで構成されている。なお、第1実施形態の検出回路30は、これらの要素の一部を省略又は変更し、あるいは他の要素を追加した構成としてもよい。
チャージアンプ310には、S1端子を介して物理量検出素子100の振動片の検出電極114から角速度成分と振動漏れ成分を含む交流電荷(検出電流)が入力される。同様に、チャージアンプ320には、S2端子を介して物理量検出素子100の振動片の検出電極115から角速度成分と振動漏れ成分を含む交流電荷(検出電流)が入力される。
このチャージアンプ310,320は、それぞれ入力された交流電荷(検出電流)を交流電圧信号に変換する。チャージアンプ310に入力される交流電荷(検出電流)とチャージアンプ320に入力される交流電荷(検出電流)は互いに位相が180°異なり、チャージアンプ310の出力信号とチャージアンプ320の出力信号の位相は互いに逆位相である(180°ずれている)。
差動アンプ330は、チャージアンプ310の出力信号とチャージアンプ320の出力信号を差動増幅する。差動アンプ330により、同相成分はキャンセルされ、逆相成分は加算増幅される。
ハイパスフィルター340は、差動アンプ330の出力信号に含まれる直流成分を除去する。
ACアンプ350は、ハイパスフィルター340の出力信号を増幅し、同期検波回路360に出力する。
同期検波回路360は、2つの同期検波回路361,362を含み構成される。同期検波回路361,362のそれぞれには、ACアンプ350の出力信号が共通に入力される。なお、物理量検出装置1の第1実施形態において、同期検波回路361,362は同じ構成である。そのため、同期検波回路361,362は、同期検波回路360として説明を行う。
同期検波回路360は、駆動回路20から入力される検波信号SDETを用いてACアンプ350の出力信号(被検波信号)に含まれる角速度成分を同期検波する。同期検波回路360は、例えば、検波信号SDETがハイレベルの時はACアンプ350の出力信号をそのまま選択し、検波信号SDETがローレベルの時はACアンプ350の出力信号を基準電圧に対して反転した信号を選択する回路として構成することができる。
ACアンプ350の出力信号には角速度成分と振動漏れ成分が含まれているが、この角速度成分は検波信号SDETと同位相であるのに対して、振動漏れ成分は逆位相である。
そのため、同期検波回路360により角速度成分は同期検波されるが、振動漏れ成分は検波されないようになっている。
可変ゲインアンプ370は、可変ゲインアンプ371,372を含み構成される。可変ゲインアンプ371には、同期検波回路361の出力信号が入力され、可変ゲインアンプ372には、同期検波回路362の出力信号が入力される。なお、第1実施形態において、可変ゲインアンプ371,372は入力される信号が異なるのみで、同じ構成である。
そのため、可変ゲインアンプ371,372は可変ゲインアンプ370として説明を行う。
可変ゲインアンプ370は、同期検波回路360から出力された出力信号を増幅又は減衰させて所望の電圧レベルの信号を出力する。可変ゲインアンプ370の出力信号は、スイッチトキャパシタフィルター380に入力される。
スイッチトキャパシタフィルター380は、スイッチトキャパシタフィルター381,382を含み構成される。スイッチトキャパシタフィルター381には、可変ゲインアンプ371の出力信号が入力され、スイッチトキャパシタフィルター382には、可変ゲインアンプ372の出力信号が入力される。なお、第1実施形態においてスイッチトキャパシタフィルター381,382は、入力される信号が異なるのみで、同じ構成である。そのため、スイッチトキャパシタフィルター381,382は、スイッチトキャパシタフィルター380として説明を行う。
スイッチトキャパシタフィルター380は、可変ゲインアンプ370の出力信号に含まれる高周波成分を除去するとともに、仕様で決められる周波数範囲の信号を通過させるローパスフィルターとして機能する。このスイッチトキャパシタフィルター380(ローパスフィルター)の周波数特性は、物理量検出素子100の安定発振により得られるクロック信号(不図示)の周波数とキャパシター(不図示)の容量比によって決まるため、RCローパスフィルターと比較して、周波数特性のばらつきが極めて小さいという利点がある。
スイッチトキャパシタフィルター380の出力信号は、出力バッファー390でバッファリングされるとともに、必要に応じて所望の電圧レベルの信号に増幅又は減衰される。
出力バッファー390は、出力バッファー391,392を含み構成される。出力バッファー391は、スイッチトキャパシタフィルター381が出力する信号を、必要に応じて所望の電圧レベルの信号に増幅又は減衰する。この出力バッファー391の出力信号が、角速度信号VAO10として検出回路30から出力され、出力バッファー392の出力信号が、角速度信号VAO20として検出回路30から出力される。
以上より、検出回路30には、物理量検出素子100が検出した角速度検出信号がS1端子及びS2端子から入力される。そして、角速度検出信号は、チャージアンプ320により電圧信号に変換されたのち、差動アンプ330により増幅され、ハイパスフィルター340により直流成分が除去された信号が、ACアンプ350で増幅される。ACアンプ350から出力された信号は、それぞれが同じ構成を有する、同期検波回路361,362のそれぞれに入力され、可変ゲインアンプ371,372、スイッチトキャパシタフィルター381,382、出力バッファー391,392を介して、角速度信号VAO10,VAO20として出力される。
すなわち、角速度信号VAO10と,角速度信号VAO20とは、同一の角速度検出信号(「第1物理量検出信号」の一例)に基づき生成されたアナログ信号であって、同じ回路構成により生成されたアナログ信号である。換言すれば、角速度信号VAO10(「第1アナログ信号」の一例)と,角速度信号VAO20(「第2アナログ信号」の一例)とは、同等の信号として検出回路30から出力される。
角速度信号VAO10と,角速度信号VAO20と、はそれぞれ後述する物理量処理回路40に入力されデジタル信号に変換される。このとき、角速度信号VAO10は、A/D変換回路410(図7参照)に連続的に入力されA/D変換されるのに対し、角速度信号VAO20は、マルチプレクサ-430(図7参照)により切り替えられ、時分割にA/D変換回路420に入力される。すなわち、角速度信号VAO20には、マルチプレクサ-430の出力が切り換えられた際のノイズが重畳する可能性がある。物理量検出装置1の第1実施形態に示すように、角速度信号VAO10と、角速度信号VAO20とを、検出回路30において分離し出力することで、マルチプレクサ-430により生じたノイズが、角速度信号VAO10に重畳することを低減することが可能となる。
なお、物理量検出装置1の第1実施形態においては、同じ角速度検出信号に基づくアナログ信号である角速度信号VAO10と,角速度信号VAO20と、寄与することなく生成できればよい。よって、検出回路30において、角速度検出信号に基づく信号が分離される点は、同期検波回路360に入力される直前に限定されるものではない。
[物理量検出回路の構成及び動作]
次に、物理量処理回路40の詳細について説明する。図7は、物理量処理回路40の構成例を示す図である。物理量処理回路40は、デジタル演算回路41及びインターフェイス回路42を含んで構成される。
図7に示すように、デジタル演算回路41は、A/D変換回路410、A/D変換回路420、マルチプレクサ-430、電圧生成部440、切替制御部450、クロック生成回路460及びDSP(Digital Signal Processor)50を含む。なお、デジタル演算回路41は、これらの要素の一部を省略又は変更し、あるいは他の要素を追加した構成としてもよい。
クロック生成回路460は、マスタークロック信号MCLK(発振回路60の出力信号)を基に、A/D変換回路410のサンプリングクロック信号CLK1と、A/D変換回路420のサンプリングクロック信号CLK2とを生成し出力する。
A/D変換回路410(「第1変換部」の一例)は、サンプリングクロック信号CLK1に同期して、検出回路30が出力する角速度信号VAO10をA/D変換して角速度デジタル信号VD10(「第1デジタル信号」の一例)を出力する。
第1実施形態における、A/D変換回路410には、検出回路30を介して物理量検出素子100の検出信号である角速度信号VAO10が入力される。物理量検出装置1の検出精度を高めるためにも、A/D変換回路410は、高い分解能及びサンプリングレートで構成されることが好ましい。また、物理量検出装置1は第1実施形態において、任意のタイミングで角速度を検出し、出力する必要がある。すなわち、A/D変換回路410は、物理量検出素子100が不意に検出した角速度信号VAO10においても正確に検出する必要がある。そのため、A/D変換回路410は、連続的にA/D変換を行う必要がある。これより、第1実施形態におけるA/D変換回路410は、高い分解能を有するΔΣ型のA/Dコンバータ、若しくは逐次比較(SAR)型のA/Dコンバータを用いて連続的にA/D変換する構成であることが好ましい。
ここで、本実施形態における「連続的にA/D変換する」とは、連続して入力される信号(連続時間信号)を所定の周期でサンプリングし、離散時間信号に変換するA/D変換することを意味する。すなわち、「連続的に」とは「連続して」および「動作期間に対して十分短い休止期間を挟んで動作を続ける。」等の「実質的に連続して」を意味する。
電圧生成部440は、基準電圧回路10から入力された基準電圧VREF(図1参照)に基づき、物理量処理回路40で用いる種々の電圧レベルを生成する。具体的には、入力された基準電圧VREFを例えばレギュレータや抵抗分圧等で変圧し、既知の電圧である第1電圧VREF1(「第1基準電圧」の一例)及び第2電圧VREF2(「第2基準電圧」の一例)を生成し、マルチプレクサ-430に出力する。また、電圧生成部440は、例えばA/D変換回路410,420のA/D変換の基準電圧や、その他の構成の駆動電圧も生成し出力する。
第1電圧VREF1及び第2電圧VREF2は、電圧生成部440が生成する例えばA/D変換回路410,420のA/D変換の基準電圧や、その他の構成の駆動電圧と同様に、設計段階において決定される電圧である。そのため、物理量検出装置1において既知の電圧として取り扱うことが可能となる。
マルチプレクサー430(「切替部」の一例)は、検出回路30から入力された角速度
信号VAO20、温度センサー70から入力された温度信号VTO、第1電圧VREF1
、第2電圧VREF2及び制御信号Ctr1が入力され、MUX出力信号VMOを出力す
る。すなわち、マルチプレクサー430は、角速度信号VAO20と、第1電圧VREF
1と、第2電圧VREF2と、温度センサー70(「第2物理量検出素子」の一例)が検
出した温度信号VTO(「第2物理量検出信号」の一例)と、を含む複数の信号を入力し
、時分割にMUX出力信号VMOとして出力する。換言すれば、MUX出力信号VMOは
、角速度信号VAO20、温度信号VTO、第1電圧VREF1及び第2電圧VREF2
を含む一つの信号である。なお、マルチプレクサー430に入力される信号は、これらに
限られず、例えば、圧力、湿度等の信号が入力されてもよい。
切替制御部450は、マルチプレクサ-430及びDSP50に対して、制御信号Ctr1,Ctr2を出力する。
制御信号Ctr1(「選択信号」の一例)は、マルチプレクサ-430からの出力される信号を選択する。例えば、制御信号Ctr1は2ビットの信号であって、“11”のとき、マルチプレクサ-430は、角速度信号VAO20を選択し、MUX出力信号VMOとして出力する。また、制御信号Ctr1が、“00”のとき、マルチプレクサ-430は、温度信号VTOを選択し、MUX出力信号VMOとして出力する。また、制御信号Ctr1が、“10”のとき、マルチプレクサ-430は、第1電圧VREF1を選択し、MUX出力信号VMOとして出力する。また、制御信号Ctr1が、“01”のとき、マルチプレクサ-430は、第2電圧VREF2を選択し、MUX出力信号VMOとして出力する。
すなわち、マルチプレクサ-430は、制御信号Ctr1により入力される複数の信号を選択し、時分割に出力する。これにより、MUX出力信号VMOに含まれる角速度信号VAO20と、温度信号VTOと、第1電圧VREF1と、第2電圧VREF2と、が出力される周期を、制御信号Ctr1により、設定、変更することが可能となる。MUX出力信号VMOに含まれる角速度信号VAO20と、温度信号VTOと、第1電圧VREF1と、第2電圧VREF2と、が出力される周期の変更が可能となることで、物理量検出装置1の使用用途や使用環境に応じ、最適な設定を行うことが可能となる。よって、汎用的な故障判定回路を含む物理量検出装置1を実現することができる。
制御信号Ctr2は、制御信号Ctr1に同期し、DSP50に含まれる故障判定部530、故障判定部540、デジタル補正部550に入力される。すなわち、制御信号Ctr2は、制御信号Ctr1で制御されるマルチプレクサ-430の出力信号が、角速度信号VAO20、温度信号VTO、第1電圧VREF1及び第2電圧VREF2のいずれであるかを、DSP50に含まれる故障判定部530、故障判定部540、デジタル補正部550に伝達する。ここで、物理量検出装置1の第1実施形態において、制御信号Ctr2と、制御信号Ctr1と、は同じ構成の信号として示すがこの限りではない。
A/D変換回路420(「第2変換部」の一例)は、サンプリングクロック信号CLK2に同期して、マルチプレクサ-430が出力するMUX出力信号VMO(「切替部の出力」の一例)のA/D変換を行い、MUX出力デジタル信号VDMOを出力する。したがって、A/D変換回路420が出力するMUX出力デジタル信号VDMOは、角速度信号VAO20がデジタル信号に変換された角速度デジタル信号VD20(「第2デジタル信号」の一例)と、温度信号VTOがデジタル信号に変換された温度デジタル信号VDTO(「第3デジタル信号」の一例)と、第1電圧VREF1がデジタル信号に変換された第1デジタル電圧VDREF1と、第2電圧VREF2がデジタル信号に変換されて第2デジタル電圧VDREF2と、が時分割に含まれたデジタル信号である。
DSP50は、デジタルフィルター510,520、故障判定部530,540、デジタル補正部550を含み構成されている。
デジタルフィルター510は、マスタークロック信号MCLKに同期して、A/D変換回路410から出力された角速度デジタル信号VD10に対してフィルタリング処理を行う。
デジタルフィルター520は、マスタークロック信号MCLKに同期して、A/D変換回路420から出力されたMUX出力デジタル信号VDMOに対してフィルタリング処理を行う。
故障判定部540(「自己判定部」の一例)は、デジタルフィルター520の出力信号と、制御信号Ctr2と、マスタークロック信号MCLKと、が入力される。故障判定部540は、マスタークロック信号MCLKに同期して、入力されたMUX出力デジタル信号VDMOに含まれる第1デジタル電圧VDREF1及び第2デジタル電圧VDREF2が、所定の値の範囲内であるか否かを判定することで、A/D変換回路420の故障判定を行う。
詳細には、故障判定部540は、例えば、入力される制御信号Ctr2が、“10”のとき、デジタルフィルター520の出力信号は、第1デジタル電圧VDREF1に基づく信号であると判断する。そして、故障判定部540に入力されたデジタルフィルター520の出力信号(第1デジタル電圧VDREF1に基づく信号)が、記憶されている所定の範囲内の値であるかの判定をする。デジタルフィルター520の出力信号(第1デジタル電圧VDREF1に基づく信号)が所定の値の範囲内であるとき、故障判定部540は、A/D変換回路420が正常であると判定する。一方、デジタルフィルター520の出力信号(第1デジタル電圧VDREF1に基づく信号)が所定の値の範囲外であるとき、故障判定部540は、A/D変換回路420が故障していると判定する。そして故障判定部540は、例えば、不図示のレジスターに対し、故障フラグを立てるための信号を出力する。
故障判定部540は、例えば、入力される制御信号Ctr2が、“01”のとき、デジタルフィルター520の出力信号は、第2デジタル電圧VDREF2に基づく信号であると判断する。そして、故障判定部540に入力されたデジタルフィルター520の出力信号(第2デジタル電圧VDREF2に基づく信号)が、記憶されている所定の範囲内の値であるかの判定をする。デジタルフィルター520の出力信号(第2デジタル電圧VDREF2に基づく信号)が所定の値の範囲内であるとき、故障判定部540は、A/D変換回路420が正常であると判定する。一方、デジタルフィルター520の出力信号(第2デジタル電圧VDREF2に基づく信号)が所定の値の範囲外であるとき、故障判定部540は、A/D変換回路420が故障していると判定する。そして故障判定部540は、例えば、不図示のレジスターに対し、故障フラグを立てるための信号を出力する。
ここで、第1電圧VREF1及び第2電圧VREF2は、電圧生成部440に基づき生成された既知の電圧である。このため、A/D変換回路420でデジタル信号に変換された第1デジタル電圧VDREF1及び第2デジタル電圧VDREF2の期待値も既知であり、故障判定部540に記憶させておくことが可能となる。よって、故障判定部540は、A/D変換回路420の故障の有無を判定することが可能となる。
また、A/D変換回路420の故障を判定するための基準電圧は、第1電圧VREF1又は第2電圧VREF2どちらか一方だけでもよく、また3つ以上の基準電圧で構成されてもよいが、本実施形態に示すように、第1電圧VREF1及び第2電圧VREF2の2つの基準電圧を用いて判定されることが好ましい。第1電圧VREF1及び第2電圧VREF2の2つの基準電圧を用いて判定されることで、たとえば、A/D変換回路420に、一定の値を出力する故障が生じた場合、一つの基準電圧では、正確に故障が判定できない場合がある。本実施形態に示すように、第1電圧VREF1及び第2電圧VREF2の二つの基準電圧に基づきA/D変換回路420の故障の判定を行うことで、判定精度を向上させることが可能となる。
故障判定部530(「比較判定部」の一例)は、デジタルフィルター510の出力信号と、デジタルフィルター520の出力信号と、制御信号Ctr2と、マスタークロック信号MCLKと、が入力される。故障判定部530は、マスタークロック信号MCLKに同期して、入力されるデジタルフィルター510の出力信号と、デジタルフィルター520の出力信号と、を比較することで、A/D変換回路410の故障判定を行う。
詳細には、故障判定部530は、例えば、入力される制御信号Ctr2が、“11”のとき、デジタルフィルター520の出力信号は、角速度デジタル信号VD20に基づく信号であると判断する。そして、故障判定部530は、デジタルフィルター510の出力信号である角速度デジタル信号VD10に基づく信号と、デジタルフィルター520の出力信号である角速度デジタル信号VD20に基づく信号と、の比較を行う。そして、デジタルフィルター510の出力信号である角速度デジタル信号VD10に基づく信号が正しいか否かの判定を行うことで、A/D変換回路410の故障判定を行う。
前述のとおり、角速度デジタル信号VD10は、角速度信号VAO10をA/D変換して得られたデジタル信号であって、角速度デジタル信号VD20は、角速度信号VAO20をA/D変換して得られたデジタル信号である。また、角速度信号VAO10と、角速度信号VAO20と、は同じ角速度検出信号に基づくアナログ信号である。すなわち、デジタルフィルター510の出力信号である角速度デジタル信号VD10に基づく信号と、デジタルフィルター520の出力信号である角速度デジタル信号VD20に基づく信号とは、同等の信号である。
よって、故障判定部530は、角速度デジタル信号VD10に基づく信号と、角速度デジタル信号VD20に基づく信号と、の比較結果が、所定の範囲内であるとき、A/D変換回路410が正常であると判断することが可能となる。また、一方、故障判定部530は、角速度デジタル信号VD10に基づく信号と、角速度デジタル信号VD20に基づく信号と、の比較結果が、所定の範囲外であるとき、A/D変換回路410が故障していると判断することが可能となる。そして、故障判定部530は、例えば、不図示のレジスターに対し、故障フラグを立てるための信号を出力する。
すなわち、本実施形態では、マルチプレクサ-430と、A/D変換回路410と、A/D変換回路420と、故障判定部530と、故障判定回路を構成し、連続的に動作するA/D変換回路410の故障判定を実現している。さらに、マルチプレクサ-430と、A/D変換回路420と、故障判定部540と、で時分割に動作するA/D変換回路420の故障判定(自己判定)を行うことで、連続的に動作するA/D変換回路410の故障判定の精度を向上させることを可能としている。
デジタル補正部550(「補正部」の一例)は、デジタルフィルター510の出力信号と、デジタルフィルター520の出力信号と、制御信号Ctr2と、マスタークロック信号MCLKと、が入力される。デジタル補正部550は、マスタークロック信号MCLKに同期して、入力されるデジタルフィルター510の出力信号を、デジタルフィルター520の出力信号に基づき補正する。
詳細には、デジタル補正部550は、例えば、入力される制御信号Ctr2が、“00”のとき、デジタルフィルター520の出力信号は、温度デジタル信号VDTOに基づく信号であると判断する。そして、デジタル補正部550は、デジタルフィルター510の出力信号である角速度デジタル信号VD10に基づく信号に対して、オフセット補正、感度補正、出力レンジ調整、ビット制限等の各種の処理を行う。
なお、デジタル補正部550の補正データは、温度デジタル信号VDTOが入力されたとき、温度デジタル信号VDTOに基づき補正される。
そして、デジタル補正部550は、入力されたデジタルフィルター520の出力信号を補正し、角速度データVDO1としてインターフェイス回路42に出力する。
インターフェイス回路42は、MCU3が発信する各種のコマンドを受信し、コマンドに応じたデータをMCU3に発信する処理を行う。
前述のとおり、A/D変換回路410は、連続的に、又は突発的に入力される物理量を検出するために、A/D変換を連続的に行う必要がある。これより、第1実施形態におけるA/D変換回路410は、高い分解能を有するΔΣ型のA/Dコンバータ、若しくは逐次比較(SAR)型A/Dコンバータを用いて連続的にA/D変換する構成であることが好ましい。一方で、A/D変換回路420は、マルチプレクサ-430から、時分割に入力される角速度信号VAO20と、温度信号VTOと、第1電圧VREF1と、第2電圧VREF2と、をA/D変換できる性能であればいい。すなわち、A/D変換回路410のサンプリングレートは、A/D変換回路420のサンプリングレートに比べも高く、A/D変換回路410の分解能は、A/D変換回路420の分解能に比べ高い、ことが好ましい。これにより、物理量検出装置1の消費電力の低減および小型化が可能となる。
これにより、連続的に高精度のA/D変換を行うA/D変換回路410の動作状態での故障判定を可能とした、さらに、物理量検出装置1の消費電力の低減および小型化が可能となる。
[故障判定方法]
図8は、物理量検出装置1の第1実施形態における故障判定方法を示すフローチャート図である。また、図9は、図8に含まれるステップS600の詳細を説明するためのフローチャート図である。図10は、図8に含まれるステップS700の詳細を説明するためのフローチャート図である。
物理量検出装置1の第1実施形態における故障検出は、A/D変換回路420の故障判定(ステップS600)とA/D変換回路410の故障判定(ステップS700)の順で行われることが好ましい。これにより、連続的に動作するA/D変換回路410の故障判定に用いられる、A/D変換回路420のA/D変換結果の信頼性が向上し、A/D変換回路410の故障判定の精度を向上させることが可能となる。
A/D変換回路420の故障判定(ステップS600)の詳細を、図9を用いて説明する。
A/D変換回路420は、マルチプレクサ-430から入力された第1電圧VREF1をA/D変換する。詳細には、前述のとおり、マルチプレクサ-430から出力される第1電圧VREF1を含む、MUX出力信号VMOをA/D変換する。(ステップS610)。
次に、A/D変換回路420によりデジタル信号に変換された第1デジタル電圧VDREF1が、正常の範囲であるかを故障判定部540において判定する(ステップS620)。詳細には、故障判定部540には、A/D変換回路420においてMUX出力信号VMOをデジタル信号に変換した、MUX出力デジタル信号VDMOが入力される。故障判定部540は、制御信号Ctr2が“10”であるとき、入力されるMUX出力デジタル信号VDMOは、第1デジタル電圧VDREF1であると判断する。そして、故障判定部540は、MUX出力デジタル信号VDMO(第1デジタル電圧VDREF1)が、正常の範囲内であるか否かの判定を行う。
第1電圧VREF1は、物理量検出装置1において生成された既知の電圧である。よって、デジタル信号に変換された第1デジタル電圧VDREF1も既知である。これにより、故障判定部540は、入力される第1デジタル電圧VDREF1の期待値を把握することができる。そして、第1デジタル電圧VDREF1の期待値と、第1デジタル電圧VDREF1の実測値とを比較することで、A/D変換回路420の故障を判定することが可能となる。なお、第1デジタル電圧VDREF1を判定するための正常値範囲とは、既知の第1電圧VREF1がA/D変換回路420によりA/D変換されたときの期待値に対し、第1電圧VREF1のばらつき、A/D変換回路420の読み取り誤差を含めた値により決定される。
故障判定部540は、入力された第1デジタル電圧VDREF1が、正常の範囲外であると判定したとき、A/D変換回路420が故障していると判断し、レジスター等に故障フラグを立てる(ステップS630)。故障フラグは、例えば、インターフェイス回路42を介し、外部に故障を通知するために用いてもよく、また、物理量検出装置1の動作を停止させるために使用されてもよい。なお、故障判定部540は、入力された第1デジタル電圧VDREF1が、正常の範囲内であると判定したとき、A/D変換回路420は正常に動作していると判定する。
次に、A/D変換回路420は、マルチプレクサ-430から入力された第2電圧VREF2をA/D変換する。詳細には、前述のとおり、マルチプレクサ-430から出力される第2電圧VREF2を含む、MUX出力信号VMOをA/D変換する。(ステップS640)。
そして、A/D変換回路420によりデジタル信号に変換された第2デジタル電圧VDREF2が、正常の範囲であるかを故障判定部540において判定する(ステップS650)。詳細には、故障判定部540には、A/D変換回路420においてMUX出力信号VMOをデジタル信号に変換した、MUX出力デジタル信号VDMOが入力される。故障判定部540は、制御信号Ctr2が“01”であるとき、入力されるMUX出力デジタル信号VDMOは、第2デジタル電圧VDREF2であると判断する。そして、故障判定部540は、MUX出力デジタル信号VDMO(第2デジタル電圧VDREF2)が、正常の範囲内であるか否かの判定を行う。
第2電圧VREF2は、物理量検出装置1において生成された既知の電圧である。よって、デジタル信号に変換された第2デジタル電圧VDREF2も既知である。これにより、故障判定部540は、入力される第2デジタル電圧VDREF2の期待値を把握することができる。そして、第2デジタル電圧VDREF2の期待値と、第2デジタル電圧VDREF2の実測値とを比較することで、A/D変換回路420の故障を判定することが可能となる。なお、第2デジタル電圧VDREF2を判定するための正常値範囲とは、既知の第2電圧VREF2がA/D変換回路420によりA/D変換されたときの期待値に対し、第2電圧VREF2のばらつき、A/D変換回路420の読み取り誤差を含めた値により決定されてもよい。
故障判定部540は、入力された第2デジタル電圧VDREF2が、正常の範囲外であると判定したとき、A/D変換回路420が故障していると判断し、レジスター等に故障フラグを立てる(ステップS660)。故障フラグは、例えば、インターフェイス回路42を介し、外部に故障を通知するために用いてもよく、また、物理量検出装置1の動作を停止させるために使用されてもよい。なお、故障判定部540は、入力された第2デジタル電圧VDREF2が、正常の範囲内であると判定したとき、A/D変換回路420は正常に動作していると判定する。
以上により、A/D変換回路420の故障判定を行うことが可能となる。
図8に戻り、物理量検出装置1の第1実施形態では、A/D変換回路420の故障判定(ステップS600)により、A/D変換回路420の故障の有無を判定した後、A/D変換回路410の故障判定(ステップS700)をおこなう。
A/D変換回路410の故障判定(ステップS700)の詳細を、図10を用いて説明する。
A/D変換回路410は、入力された角速度信号VAO10をデジタル信号に変換する(ステップS710)。
A/D変換回路420は、マルチプレクサ-430から入力された角速度信号VAO20をA/D変換する。詳細には、前述のとおり、マルチプレクサ-430から出力される角速度信号VAO20を含む、MUX出力信号VMOをA/D変換する(ステップS720)。
次に、A/D変換回路410によりデジタル信号に変換された角速度デジタル信号VD10と、A/D変換回路420によりデジタル信号に変換された角速度デジタル信号VD20と、を故障判定部530で比較する(ステップS730)。詳細には、故障判定部530に、A/D変換回路410によりデジタル信号に変換された角速度デジタル信号VD10と、A/D変換回路420においてMUX出力信号VMOをデジタル信号に変換した、MUX出力デジタル信号VDMOと、が入力される。
故障判定部530は、角速度デジタル信号VD10と、角速度デジタル信号VD20と、を比較し、比較結果が正常の範囲であるかを判定する(ステップS730)。詳細には、故障判定部530には、A/D変換回路420においてMUX出力信号VMOをデジタル信号に変換した、MUX出力デジタル信号VDMOが入力される。故障判定部530は、制御信号Ctr2が“11”であるとき、入力されるMUX出力デジタル信号VDMOは、角速度デジタル信号VD20であると判断する。そして、故障判定部530は、角速度デジタル信号VD10と、MUX出力デジタル信号VDMO(角速度デジタル信号VD20)とを比較し、比較結果が正常の範囲内であるか否かの判定を行う。
故障判定部530は、角速度デジタル信号VD10と、角速度デジタル信号VD20と、の比較結果が、正常の範囲外であると判定したとき、A/D変換回路410が故障していると判断し、レジスター等に故障フラグを立てる(ステップS740)。故障フラグは、例えば、インターフェイス回路42を介し、外部に故障を通知するために用いてもよく、また、物理量検出装置1の動作を停止させるために使用されてもよい。なお、故障判定部530は、角速度デジタル信号VD10と、角速度デジタル信号VD20と、の比較結果が、正常の範囲内であると判定したとき、A/D変換回路410は正常に動作していると判定する。
以上により、連続的に動作するA/D変換回路410の動作を止めることなく故障の有無を判定することが可能となる。
[作用・効果]
以上に説明した容易に、第1実施形態の物理量検出装置1では、A/D変換回路410は、物理量検出素子100で検出された角速度検出信号に基づく角速度信号VAO10をA/D変換し角速度デジタル信号VD10を生成し、A/D変換回路420は、物理量検出素子100で検出された角速度検出信号に基づく角速度信号VAO20をA/D変換し角速度デジタル信号VD20を生成する。すなわち、角速度デジタル信号VD10と、角速度デジタル信号VD20とは、物理量検出素子100で検出された角速度検出信号に基づく同等の信号である。そして故障判定部530において、角速度デジタル信号VD10と角速度デジタル信号VD20との比較を行う。角速度デジタル信号VD10と、角速度デジタル信号VD20とは、同等の信号であるため、故障判定部530は、例えば、角速度デジタル信号VD10と、角速度デジタル信号VD20との差分を検出するなどの比較を行うことで、A/D変換回路410及びA/D変換回路420のA/D変換の結果が正しいかの判断が可能となる。よって、連続的に動作するA/D変換回路410の動作を停止させることなく、A/D変換回路410の故障判定ができる。
第1実施形態の物理量検出装置1では、A/D変換回路420は、第1電圧VREF1をA/D変換する。第1電圧VREF1は、物理量処理回路40の基準となる電圧であり、既知の電圧である。すなわち、第1電圧VREF1をA/D変換回路420でA/D変換し得られる第1デジタル電圧VDREF1の期待値は、既知である。故障判定部540は、第1デジタル電圧VDREF1の期待値と、第1電圧VREF1をA/D変換回路420でA/D変換し得られる第1デジタル電圧VDREF1の実測値と、を比較することで、A/D変換回路420の故障判定を行うことができる。
さらに第1実施形態の物理量検出装置1では、A/D変換回路420は、第2電圧VREF2をA/D変換する。第2電圧VREF2も、第1電圧VREF1とは異なる基準となる電圧であり、既知の電圧である。すなわち、第2電圧VREF2をA/D変換回路420でA/D変換し得られる第2デジタル電圧VDREF2の期待値は、既知である。故障判定部540は、第2デジタル電圧VDREF2の期待値と、第2電圧VREF2をA/D変換回路420でA/D変換し得られる第2デジタル電圧VDREF2の実測値とを比較することで、A/D変換回路420の故障判定を行うことができる。
第1実施形態の物理量検出装置1では、第1電圧VREF1及び第2電圧VREF2によりA/D変換回路420の故障判定が行われる。これにより、故障判定部530に入力される角速度デジタル信号VD20は、A/D変換回路420により正常に変換された信号である。これにより、故障判定部530は、角速度デジタル信号VD10と、角速度デジタル信号VD20とを比較することで、精度よくA/D変換回路410の故障を判定することが可能となる。
第1実施形態の物理量検出装置1では、マルチプレクサ-430に温度センサー70が検出した温度信号VTOが入力される。すなわち、A/D変換回路420は、時分割にA/D変換を行うため、複数の信号のA/D変換器を兼用することができる。そのため、例えば、物理量検出装置1に用いられる温度補正用の温度センサー70が検出した温度信号VTOが検出した信号をA/D変換する素子と、兼用し用いることで、物理量検出装置1を小型化することが可能となる。
1.2 第2実施形態
図11は、第2実施形態における物理量検出装置1の構成を示す図である。また、図12は第2実施形態における物理量処理回路40の構成を示す図である。第1実施形態の物理量検出装置1では、一つの物理量検出素子100が検出した信号を、連続的にA/D変換を行う1つのA/D変換回路410に入力し物理量を取得したのに対し、第2実施形態の物理量検出装置1は、複数(第2実施形態では3個)の物理量検出素子100A,100B,100Cが検出した信号を、複数(第2実施形態では3個)のA/D変換回路410,411,412のそれぞれに入力することで物理量を取得する。
なお、第2実施形態の物理量検出装置1について、第1実施形態と同様の構成要素には同じ符号を付して、第1実施形態と重複する説明を省略し、第1実施形態と異なる内容について説明する。
図11は、第2実施形態における物理量検出装置1の構成を示す図である。第2実施形態における物理量検出装置1は、3つの物理量検出素子100A,100B,100Cと、物理量検出回路200と、を含み構成され、さらに、物理量検出装置1の出力データを用いて各種の計算処理や制御を行うMCU3を含んで構成されてもよい。
3つの物理量検出素子100A,100B,100Cのそれぞれは、第1実施形態と同様に、T型の2つの駆動振動腕を有するいわゆるダブルT型の振動片を有する構成であり、その詳細の説明を省略する(図2~図4参照)。
第2実施形態の物理量検出回路200は、第1実施形態と同様に、基準電圧回路10、駆動回路20、検出回路30、物理量処理回路40、発振回路60、温度センサー70及び記憶部80を含んで構成されている。また、第2実施形態における物理量検出回路200は、3つの物理量検出素子100A,100B,100Cのそれぞれに対応した駆動回路20、検出回路30を備える。なお、それぞれの駆動回路20及び検出回路30の詳細の構成は、第1実施形態と同様であり、その説明を省略する(図5、図6参照)。
物理量検出素子100Aの検出電極に接続された検出回路30は、角速度信号VAO10,VAO20を出力する。また、物理量検出素子100Bの検出電極に接続された検出回路30は、角速度信号VAO11,VAO21を出力する。また、物理量検出素子100Cの検出電極に接続された検出回路30は、角速度信号VAO12,VAO22を出力する。ここで、第1実施形態と同様に、それぞれの検出回路30から出力される2つの角速度信号VAO1i(i=0~2)と角速度信号VAO2i(i=0~2)とは同等の信号となる。すなわち、角速度信号VAO10と角速度信号VAO20とは、同等の信号であり、角速度信号VAO11と角速度信号VAO21とは、同等の信号であり、角速度信号VAO12と角速度信号VAO22とは、同等の信号である。
なお、第2実施形態にける基準電圧回路10、発振回路60、温度センサー70及び記憶部80は、第1実施形態と同様の構成であり、その説明を省略する。
図12は、第2実施形態における物理量処理回路40の構成を示す図である。第1実施形態と同様に、物理量処理回路40は、デジタル演算回路41及びインターフェイス回路42を含む。
デジタル演算回路41は、A/D変換回路410,411,412、A/D変換回路4
20、マルチプレクサー430、電圧生成部440、切替制御部450、クロック生成回
路460及びDSP50を含む。デジタル演算回路41は、これらの要素の一部を省略又
は変更し、あるいは他の要素を追加した構成としてもよい。
クロック生成回路460は、マスタークロック信号MCLK(発振回路60の出力信号)を基に、A/D変換回路410,411,412のサンプリングクロック信号CLK1と、A/D変換回路420のサンプリングクロック信号CLK2を生成して出力する。
A/D変換回路410は、サンプリングクロック信号CLK1に同期して、物理量検出素子100Aの角速度検出信号に基づき、検出回路30が出力する角速度信号VAO10をA/D変換して角速度デジタル信号VD10を出力する。
A/D変換回路411(「第3変換部」の一例)は、サンプリングクロック信号CLK1に同期して、物理量検出素子100Bの角速度検出信号(「第3物理量検出信号」の一例)に基づき、検出回路30が出力する角速度信号VAO11(「第3アナログ信号」の一例)をA/D変換して角速度デジタル信号VD11(「第4デジタル信号」の一例)を出力する。
A/D変換回路412は、サンプリングクロック信号CLK1に同期して、物理量検出素子100Cの角速度検出信号に基づき、検出回路30が出力する角速度信号VAO12をA/D変換して角速度デジタル信号VD12を出力する。
なお、第2実施形態におけるA/D変換回路410,411,412は、高い分解能を有するΔΣ型のA/Dコンバータ、若しくは逐次比較(SAR)型のA/Dコンバータを用いて連続的にA/D変換する構成であることが好ましい。
電圧生成部440は、第1実施形態と同様に、基準電圧回路10から出力された基準電圧VREF(図1参照)が入力され、物理量処理回路40で用いる種々の電圧に変換する。
マルチプレクサ-430は、検出回路30から入力された角速度信号VAO20、角速度信号VAO21(「第4アナログ信号」の一例)、角速度信号VAO22、温度センサー70から入力された温度信号VTO、第1電圧VREF1、第2電圧VREF2及び制御信号Ctr1が入力され、MUX出力信号VMOを出力する。すなわち、マルチプレクサ-430は、角速度信号VAO20,VAO21,VAO22と、第1電圧VREF1と、第2電圧VREF2と、温度センサー70が検出した温度信号VTOと、を含む複数の信号を入力し、時分割にMUX出力信号VMOとして出力する。換言すれば、MUX出力信号VMOは、角速度信号VAO20、温度信号VTO、第1電圧VREF1及び第2電圧VREF2を含む一つの信号である。なお、マルチプレクサ-430に入力される信号は、これらに限られず、例えば、圧力、湿度等の信号が入力されてもよい。
切替制御部450は、マルチプレクサ-430及びDSP50に対して、制御信号Ctr1,Ctr2を出力する。
制御信号Ctr1は、マルチプレクサ-430からの出力される信号を選択する。例えば、制御信号Ctr1は3ビットの信号であって、“101”のとき、マルチプレクサ-430は、角速度信号VAO20を選択し、MUX出力信号VMOとして出力する。また、制御信号Ctr1が、“110”のとき、マルチプレクサ-430は、角速度信号VAO21を選択し、MUX出力信号VMOとして出力する。また、制御信号Ctr1が、“111”のとき、マルチプレクサ-430は、角速度信号VAO22を選択し、MUX出力信号VMOとして出力する。また、制御信号Ctr1が、“000”のとき、マルチプレクサ-430は、温度信号VTOを選択し、MUX出力信号VMOとして出力する。また、制御信号Ctr1が、“010”のとき、マルチプレクサ-430は、第1電圧VREF1を選択し、MUX出力信号VMOとして出力する。また、制御信号Ctr1が、“001”のとき、マルチプレクサ-430は、第2電圧VREF2を選択し、MUX出力信号VMOとして出力する。
制御信号Ctr2は、制御信号Ctr1に同期し、DSP50に含まれる故障判定部530、故障判定部540、デジタル補正部550に入力される。すなわち、制御信号Ctr2は、制御信号Ctr1で制御されているマルチプレクサ-430の出力信号が、角速度信号VAO20,VAO21,VAO22、温度信号VTO、第1電圧VREF1及び第2電圧VREF2のいずれであるかを、DSP50に含まれる故障判定部530、故障判定部540、デジタル補正部550に伝達する。ここで、物理量検出装置1の第1実施形態において、制御信号Ctr2と、制御信号Ctr1と、は同じ構成の信号として示すがこの限りではない。
A/D変換回路420は、第1実施形態と同様に、サンプリングクロック信号CLK2に同期して、マルチプレクサ-430が出力するMUX出力信号VMOのA/D変換を行い、MUX出力デジタル信号VDMOを出力する。したがって、A/D変換回路420が出力するMUX出力デジタル信号VDMOは、角速度信号VAO20がデジタル信号に変換された角速度デジタル信号VD20と、角速度信号VAO20がデジタル信号に変換された角速度デジタル信号VD21(「第5デジタル信号」の一例)と、角速度信号VAO20がデジタル信号に変換された角速度デジタル信号VD22と、温度信号VTOがデジタル信号に変換された温度デジタル信号VDTOと、第1電圧VREF1がデジタル信号に変換された第1デジタル電圧VDREF1と、第2電圧VREF2がデジタル信号に変換されて第2デジタル電圧VDREF2と、が時分割に含まれたデジタル信号である。
DSP50は、デジタルフィルター510,511,512,520、故障判定部530,540、デジタル補正部550を含む。
デジタルフィルター510は、マスタークロック信号MCLKに同期して、A/D変換回路410から出力された角速度デジタル信号VD10に対してフィルタリング処理を行う。
デジタルフィルター511は、マスタークロック信号MCLKに同期して、A/D変換回路411から出力された角速度デジタル信号VD11に対してフィルタリング処理を行う。
デジタルフィルター512は、マスタークロック信号MCLKに同期して、A/D変換回路412から出力された角速度デジタル信号VD12に対してフィルタリング処理を行う。
デジタルフィルター520は、マスタークロック信号MCLKに同期して、A/D変換回路420から出力されたMUX出力デジタル信号VDMOに対してフィルタリング処理を行う。
故障判定部540は、デジタルフィルター520の出力信号と、制御信号Ctr2と、マスタークロック信号MCLKと、が入力される。故障判定部540は、マスタークロック信号MCLKに同期して、入力されたMUX出力デジタル信号VDMOに含まれる第1デジタル電圧VDREF1及び第2デジタル電圧VDREF2が、所定の値の範囲内であるか否かを判定することで、A/D変換回路420の故障判定を行う。
詳細には、故障判定部540は、例えば、入力される制御信号Ctr2が、“010”のとき、デジタルフィルター520の出力信号は、第1デジタル電圧VDREF1に基づく信号であると判断する。そして、故障判定部540に入力されたデジタルフィルター520の出力信号(第1デジタル電圧VDREF1に基づく信号)が、記憶されている所定の範囲内の値であるかの判定をする。デジタルフィルター520の出力信号(第1デジタル電圧VDREF1に基づく信号)が所定の値の範囲内であるとき、故障判定部540は、A/D変換回路420が正常であると判定する。一方、デジタルフィルター520の出力信号(第1デジタル電圧VDREF1に基づく信号)が所定の値の範囲外であるとき、故障判定部540は、A/D変換回路420が故障していると判定する。そして故障判定部540は、例えば、不図示のレジスターに対し、故障フラグを立てるための信号を出力する。
故障判定部540は、例えば、入力される制御信号Ctr2が、“001”のとき、デジタルフィルター520の出力信号は、第2デジタル電圧VDREF2に基づく信号であると判断する。そして、故障判定部540に入力されたデジタルフィルター520の出力信号(第2デジタル電圧VDREF2に基づく信号)が、記憶されている所定の範囲内の値であるかの判定をする。デジタルフィルター520の出力信号(第2デジタル電圧VDREF2に基づく信号)が所定の値の範囲内であるとき、故障判定部540は、A/D変換回路420が正常であると判定する。一方、デジタルフィルター520の出力信号(第2デジタル電圧VDREF2に基づく信号)が所定の値の範囲外であるとき、故障判定部540は、A/D変換回路420が故障していると判定する。そして故障判定部540は、例えば、不図示のレジスターに対し、故障フラグを立てるための信号を出力する。
第1実施形態と同様に、第1電圧VREF1及び第2電圧VREF2は、既知であるため、故障判定部540は、A/D変換回路420の故障の有無を判定することが可能となる。
故障判定部530は、デジタルフィルター510の出力信号と、デジタルフィルター511の出力信号と、デジタルフィルター512の出力信号と、デジタルフィルター520の出力信号と、制御信号Ctr2と、マスタークロック信号MCLKと、が入力される。
故障判定部530は、マスタークロック信号MCLKに同期して、入力されるデジタルフィルター510の出力信号と、デジタルフィルター520の出力信号と、を比較することで、A/D変換回路410,411,412の故障判定を行う。
詳細には、故障判定部530は、例えば、入力される制御信号Ctr2が、“101”のとき、デジタルフィルター520の出力信号は、角速度デジタル信号VD20に基づく信号であると判断する。そして、故障判定部530は、デジタルフィルター510の出力信号である角速度デジタル信号VD10に基づく信号と、デジタルフィルター520の出力信号である角速度デジタル信号VD20に基づく信号と、の比較を行う。そして、デジタルフィルター510の出力信号である角速度デジタル信号VD10に基づく信号が正しいか否かの判定を行うことで、A/D変換回路410の故障判定を行う。
また、故障判定部530は、例えば、入力される制御信号Ctr2が、“110”のとき、デジタルフィルター520の出力信号は、角速度デジタル信号VD20に基づく信号であると判断する。そして、故障判定部530は、デジタルフィルター511の出力信号である角速度デジタル信号VD11に基づく信号と、デジタルフィルター520の出力信号である角速度デジタル信号VD21に基づく信号と、の比較を行う。そして、デジタルフィルター511の出力信号である角速度デジタル信号VD11に基づく信号が正しいか否かの判定を行うことで、A/D変換回路410の故障判定を行う。
また、故障判定部530は、例えば、入力される制御信号Ctr2が、“111”のとき、デジタルフィルター520の出力信号は、角速度デジタル信号VD22に基づく信号であると判断する。そして、故障判定部530は、デジタルフィルター512の出力信号である角速度デジタル信号VD12に基づく信号と、デジタルフィルター520の出力信号である角速度デジタル信号VD22に基づく信号と、の比較を行う。そして、デジタルフィルター512の出力信号である角速度デジタル信号VD12に基づく信号が正しいか否かの判定を行うことで、A/D変換回路410の故障判定を行う。
角速度デジタル信号VD10は、角速度信号VAO10をA/D変換して得られたデジタル信号であって、角速度デジタル信号VD20は、角速度信号VAO20をA/D変換して得られたデジタル信号である。また、角速度信号VAO10と、角速度信号VAO20と、は物理量検出素子100Aが検出した角速度検出信号に基づくアナログ信号である。すなわち、デジタルフィルター510の出力信号である角速度デジタル信号VD10に基づく信号と、デジタルフィルター520の出力信号である角速度デジタル信号VD20に基づく信号とは、同等の信号である。
よって、故障判定部530は、角速度デジタル信号VD10に基づく信号と、角速度デジタル信号VD20に基づく信号と、を比較することで、A/D変換回路410の故障の有無を判定することができる。
同様に、デジタルフィルター511の出力信号である角速度デジタル信号VD11に基づく信号と、デジタルフィルター520の出力信号である角速度デジタル信号VD21に基づく信号とは、物理量検出素子100Bが検出した角速度検出信号に基づく信号であり、同等の信号である。
よって、故障判定部530は、角速度デジタル信号VD11に基づく信号と、角速度デジタル信号VD21に基づく信号と、を比較することで、A/D変換回路411の故障の有無を判定することができる。
同様に、デジタルフィルター512の出力信号である角速度デジタル信号VD12に基づく信号と、デジタルフィルター520の出力信号である角速度デジタル信号VD22に基づく信号とは、物理量検出素子100Cが検出した角速度検出信号に基づく信号であり、同等の信号である。
よって、故障判定部530は、角速度デジタル信号VD12に基づく信号と、角速度デジタル信号VD22に基づく信号と、を比較することで、A/D変換回路412の故障の有無を判定することができる。
また、故障判定部530は、A/D変換回路410,411,412の故障判定において、いずれかのA/D変換回路が故障であると判定されたとき、不図示のレジスターに対し、故障フラグを立てるための信号を出力する。
デジタル補正部550は、デジタルフィルター510の出力信号と、デジタルフィルター511の出力信号と、デジタルフィルター512の出力信号と、デジタルフィルター520の出力信号と、制御信号Ctr2と、マスタークロック信号MCLKと、が入力される。デジタル補正部550は、マスタークロック信号MCLKに同期して、入力されるデジタルフィルター510の出力信号、デジタルフィルター511の出力信号、デジタルフィルター512の出力信号のそれぞれを、デジタルフィルター520の出力信号に基づき補正する。
詳細には、デジタル補正部550は、例えば、入力される制御信号Ctr2が、“000”のとき、デジタルフィルター520の出力信号は、温度デジタル信号VDTOに基づく信号であると判断する。そして、デジタル補正部550は、デジタルフィルター510の出力信号である角速度デジタル信号VD10に基づく信号に対し、オフセット補正、感度補正、出力レンジ調整、ビット制限等の各種の処理を行いデジタルデータ(角速度データ)VDO10を生成し、インターフェイス回路42に出力する。また、デジタルフィルター511の出力信号である角速度デジタル信号VD11に基づく信号に対し、オフセット補正、感度補正、出力レンジ調整、ビット制限等の各種の処理を行いデジタルデータ(角速度データ)VDO11を生成し、インターフェイス回路42に出力する。また、デジタルフィルター512の出力信号である角速度デジタル信号VD12に基づく信号、に対し、オフセット補正、感度補正、出力レンジ調整、ビット制限等の各種の処理を行いデジタルデータ(角速度データ)VDO12を生成し、インターフェイス回路42に出力する。
以上のように、物理量検出装置1の第2実施形態によれば、複数の物理量検出素子100(100A,100B,100C)から出力される角速度信号VAO10,11,12を連続的にA/D変換するA/D変換回路410,411,412のいずれにおいても、動作を停止させることなく、故障判定を行うことが可能となる。すなわち、第2実施形態における物理量検出装置1は、例えば3軸角速度センサー等においても、高い信頼性を実現することが可能となる。
1.3 変形例
上述した実施形態では、角速度を検出する物理量検出素子を含む物理量検出装置(角速度検出装置)を例に挙げて説明したが、本発明は、種々の物理量を検出する物理量検出素子を含む物理量検出装置にも適用することができる。また、物理量検出素子が検出する物理量は、角速度に限らず、角加速度、加速度、地磁気、傾斜などであってもよい。また、物理量検出素子の振動片は、ダブルT型でなくてもよく、例えば、音叉型やくし歯型であってもよいし、三角柱、四角柱、円柱状等の形状の音片型であってもよい。また、物理量検出素子の振動片の材料としては、水晶(SiO2)の代わりに、例えば、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)等の圧電単結晶やジルコン酸チタン酸鉛(PZT)等の圧電セラミックスなどの圧電性材料を用いてもよいし、シリコン半導体を用いてもよい。また、例えば、シリコン半導体の表面の一部に、駆動電極に挟まれた酸化亜鉛(ZnO)、窒化アルミニウム(AlN)等の圧電薄膜を配置した構造であってもよい。また、物理量検出素子は、圧電型の素子に限らず、動電型、静電容量型、渦電流型、光学型、ひずみゲージ型等の振動式の素子であってもよい。あるいは、物理量検出素子の方式は、振動式に限らず、例えば、光学式、回転式、流体式であってもよい。
2.電子機器
次に、本実施形態に係る電子機器について、図面を参照しながら説明する。本実施形態に係る電子機器は、本発明に係る物理量検出装置1を含む。以下では、本発明に係る物理量検出装置1として、物理量検出器400を含む電子機器について、説明する。
図13は、本実施形態に係る電子機器として、携帯電話機(PHSも含む)1200を模式的に示す斜視図である。
図13に示すように、携帯電話機1200は、複数の操作ボタン1202、受話口1204及び送話口1206を備え、操作ボタン1202と受話口1204との間には、表示部1208が配置されている。
このような携帯電話機1200には、物理量検出器400が内蔵されている。
図14は、本実施形態に係る電子機器として、デジタルスチルカメラ1300を模式的に示す斜視図である。なお、図14には、外部機器との接続についても簡易的に示している。
ここで、通常のカメラは、被写体の光像により銀塩写真フィルムを感光するのに対し、デジタルスチルカメラ1300は、被写体の光像をCCD(Charge Coupled Device)などの撮像素子により光電変換して撮像信号(画像信号)を生成する。
デジタルスチルカメラ1300におけるケース(ボディー)1302の背面には、表示部1310が設けられ、CCDによる撮像信号に基づいて表示を行う構成になっており、表示部1310は、被写体を電子画像として表示するファインダーとして機能する。
また、ケース1302の正面側(図中裏面側)には、光学レンズ(撮像光学系)やCCDなどを含む受光ユニット1304が設けられている。
撮影者が表示部1310に表示された被写体像を確認し、シャッターボタン1306を押下すると、その時点におけるCCDの撮像信号が、メモリー1308に転送・格納される。
また、このデジタルスチルカメラ1300においては、ケース1302の側面に、ビデオ信号出力端子1312と、データ通信用の入出力端子1314とが設けられている。そして、ビデオ信号出力端子1312には、テレビモニター1430が、データ通信用の入出力端子1314には、パーソナルコンピューター1440が、それぞれ必要に応じて接続される。さらに、所定の操作により、メモリー1308に格納された撮像信号が、テレビモニター1430や、パーソナルコンピューター1440に出力される構成になっている。
このようなデジタルスチルカメラ1300には、物理量検出器400が内蔵されている。
なお、物理量検出器400を備えた電子機器は、図13に示す携帯電話機、図14に示すデジタルスチルカメラの他にも、例えば、パーソナルコンピューター(モバイル型パーソナルコンピューター)、インクジェット式吐出装置(例えばインクジェットプリンター)、ラップトップ型パーソナルコンピューター、テレビ、ビデオカメラ、ビデオテープレコーダー、各種ナビゲーション装置、ページャー、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ヘッドマウントディスプレイ、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニター、電子双眼鏡、POS端末、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電図計測装置、超音波診断装置、電子内視鏡)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、ロケット、船舶の計器類)、ロボットや人体などの姿勢制御、フライトシミュレーターなどに適用することができる。
本実施形態に係る電子機器は、回路規模の増加を抑えながら、安定した特性で角速度及び加速度を検出可能な物理量検出器400を含む。したがって、より低コストでより信頼性の高い電子機器を実現することができる。
3.移動体
次に、本実施形態に係る移動体について、図面を参照しながら説明する。本実施形態に係る移動体は、本発明に係る物理量センサーを含む。以下では、本発明に係る物理量センサーとして、物理量検出器400を含む移動体について、説明する。
図15は、本実施形態に係る移動体として、自動車1500を模式的に示す斜視図である。
自動車1500には、物理量検出器400が内蔵されている。具体的には、図15に示すように、自動車1500の車体1502には、自動車1500の角速度を検知する物理量検出素子100を内蔵してエンジンの出力を制御する電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)1504が搭載されている。また、物理量検出器400は、他にも、車体姿勢制御ユニット、アンチロックブレーキシステム(ABS)、エアバック、タイヤ・プレッシャー・モニタリング・システム(TPMS:Tire Pressure Monitoring System)、に広く適用することができる。
本実施形態に係る電子機器は、回路規模の増加を抑えながら、安定した特性で角速度及び加速度を検出可能な物理量検出器400を含む。したがって、より低コストでより信頼性の高い電子機器を実現することができる。
本発明は本実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
上述した実施形態及び変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば、各実施形態及び各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。