以下、本発明の実施の形態に係る結合体、それを備えた燃料噴射弁、及び、結合体の製造方法について図面を用いて説明する。本実施の形態においては、弁部材を電磁的に駆動する電磁式の燃料噴射弁に適用した例を用いて説明している。
[第1の実施の形態]
まず、本発明の第1の実施の形態に係る結合体を備えた燃料噴射弁の構成について図1を用いて説明する。図1は本発明の第1の実施の形態に係る結合体を備えた燃料噴射弁の構造を示す縦断面図である。以下の説明では、図1に基づいて上下方向を定義している。この上下方向は、燃料噴射弁の実装状態における上下方向とは必ずしも一致するものではない。
図1において、燃料噴射弁1は、弁部材30を電磁的に駆動させることで燃料噴射を行う電磁式のものである。具体的には、燃料噴射弁1は、内部に燃料を導入する燃料導入機構10と、導入された燃料を噴射するノズル機構20と、ノズル機構20の燃料噴射の許容及び遮断が可能な弁部材30と、弁部材30を電磁的に駆動させる電磁駆動機構40とを備えている。燃料噴射弁1は、燃料導入機構10に図示しない燃料配管が連結され、ノズル機構20が図示しない吸気管又は内燃機関の燃焼室形成部材(シリンダブロックやシリンダヘッド等)の取付穴に挿入されて取り付けられる。燃料噴射弁1は、燃料配管から燃料導入機構10内に導入された燃料をノズル機構20から吸気管又は燃焼室内に噴射する。燃料噴射弁1は、中心軸線Cを有し、中心軸線Cの延在する方向(図1中、上下方向)にほぼ沿って燃料が流れるように構成されている。
燃料導入機構10は、中心軸線Cに沿って延び、内部が燃料通路の一部を構成する燃料パイプ11と、燃料パイプ11の内部に配置されたフィルタ12とを備えている。燃料パイプ11は、燃料が導入される燃料導入口11aを一方側端部(図1中、上端部)に有している。フィルタ12は、燃料導入口11aにおいて燃料中に混入した異物を濾し取るものである。燃料パイプ11における燃料導入口11a側の外周部には、シール部材13が設けられている。シール部材13は、燃料パイプ11を燃料配管に取り付けた際に燃料配管との接続部からの燃料漏れを防止するものであり、例えば、Oリングで構成されている。燃料パイプ11の他方側端部(図1中、下端部)は、電磁駆動機構40の後述の固定コア41に取り付けられている。
ノズル機構20は、燃料を噴射する燃料噴射孔21a(図2も参照)を有するノズル部材21と、ノズル部材21を保持するノズルホルダ22とを備えている。ノズルホルダ22は、電磁駆動機構40の後述の固定コア41を介して燃料パイプ11に接続されており、燃料パイプ11の延在方向と同じ方向(中心軸線Cに沿って)延びる筒状体である。ノズルホルダ22は、内部が燃料通路の一部として機能すると共に内部に弁部材30及び電磁駆動機構40のいくつかの部材を収容するように構成されている。ノズルホルダ22は、外径が相対的に小さな小径筒状部23と、小径筒状部23よりも外径が大きい大径筒状部24とで構成されている。小径筒状部23の内部には弁部材30の大部分が配置され、大径筒状部24の内部には弁部材30の一部分及び電磁駆動機構40の後述の可動コア42及び空隙形成部材50などの部材が配置されている。
小径筒状部23の先端部の内部には、ノズル部材21が挿入された状態で固定されている。ノズル部材21は、例えば、カップ状に形成されたオリフィスカップと称する部材で構成されており、内面側に円錐状の弁座21b(図2も参照)を有している。オリフィスカップ21の先端面の外周端と小径筒状部23の先端部の開口端とが溶接されることで、オリフィスカップ21と小径筒状部23の接合部分がシールされている。オリフィスカップ21の内部には、ガイド部材26が圧入又は塑性結合により固定されている。ガイド部材26は、弁部材30の移動を開閉弁方向(中心軸線Cに沿った方向)に案内するものであり、弁部材30の外周面と摺接可能に構成されている。小径筒状部23におけるノズル部材21側の外周部には、環状の溝部23aが設けられている。当該溝部23aにはシール部材27が嵌め込まれている。シール部材27は、燃料噴射弁1が内燃機関に搭載される際に気密を維持するものであり、例えば、樹脂製のチップシールが用いられている。
弁部材30は、弁座21bに対して接離方向(図1中、上下方向)に移動可能にノズルホルダ22の内部に配置されている。弁部材30は、弁座21bに対する接離方向(中心軸線Cの延在方向)に延びる弁ロッド部31と、弁ロッド部31における弁座21b側の一方側端部(図1中、下端部)に設けられた弁体32と、弁ロッド部31における弁体32とは反対側の他方側端部(図1中、上端部)に設けられ、弁ロッド部31よりも径方向外側へ張り出した鍔部33と、鍔部33から弁ロッド部31とは反対側に延出する突起部34とを有している。弁体32は、オリフィスカップ21の弁座21bに対して着座及び離座が可能に構成されている。弁体32が弁座21bに当接する(着座する)ことで、燃料噴射孔21aへの燃料の流れが遮断される。一方、弁体32が弁座21bから離隔する(離座する)ことで、燃料噴射孔21aへの燃料の流れが許容される。鍔部33は、電磁駆動機構40の後述の可動コア42と係合する係合部として機能する部分である。弁部材30は、弁体32側(オリフィスカップ21側)に配置されたガイド部材26と鍔部33側に配置された可動コア42とによって、開閉弁方向(中心軸線Cの延在方向)に往復動するように案内される。弁部材30の突起部34の先端部には、キャップ37が圧入により結合されている。キャップ37は、電磁駆動機構40の後述の第1の付勢ばね61のばね座及び第3の付勢ばね63のばね座を構成する部品である。弁部材30とキャップ37は、ノズルホルダ22内で移動可能な可動部の一部を構成している。可動部を構成する弁部材30及びキャップ37の構造の詳細は後述する。
電磁駆動機構40は、ノズルホルダ22の大径筒状部24の開口部に取り付けられた固定コア41と、大径筒状部24の内部に移動可能に配置された可動コア42と、固定コア41及び大径筒状部24の外周側に配置された環状又は筒状の電磁コイル43と、大径筒状部24及び電磁コイル43の外周部を取り囲みヨークとして機能するハウジング44とを備えている。ノズルホルダ22の大径筒状部24、固定コア41、可動コア42、ハウジング44によって、電磁コイル43を囲む環状の磁気通路が形成されている。
固定コア41は、一方側端部(図1中、下端部)の外周部がノズルホルダ22の大径筒状部24の内周部に圧入され、接触位置で溶接されている。当該溶接により、固定コア41の外周面とノズルホルダ22の大径筒状部24の内周面との隙間が封止されている。固定コア41は、中心部に中心軸線Cに沿って延在する貫通孔41aを有している。固定コア41の貫通孔41aは、燃料パイプ11の燃料導入口11a及びノズルホルダ22の内部空間と連通しており、燃料通路の一部を構成している。当該貫通孔41aは、キャップ37が取り付けられた弁部材30(後述の結合体)が挿通可能に形成されている。すなわち、貫通孔41aの内径は、キャップ37の外径よりも大きくなるように設定されている。固定コア41における電磁コイル43よりも燃料導入口11a側の外周部には、環状の一部分が欠落したC字状のコア部材45が嵌合されている。固定コア41は、可動コア42との間に磁気吸引力を作用させるための部材であり、可動コア42に対向する端面41b(図1中、下端面)を有している。
可動コア42は、固定コア41よりもノズル部材21側に位置しており、磁気吸引力が作用することで固定コア41側に引き寄せられる部材である。可動コア42は、その外周面がノズルホルダ22の大径筒状部24の内周面に摺動することで、移動が開閉弁方向(大径筒状部24の延在方向)に案内される。すなわち、大径筒状部24が可動コア42の移動を案内するガイドとして機能している。可動コア42は、弁部材30の弁ロッド部31が挿通可能な挿通孔421を中心部に有しており、弁部材30に対して相対的に移動可能に構成されている。すなわち、可動コア42は、挿通孔421を形成する内周面が弁ロッド部31の外周面に対して摺動可能に構成されており、弁部材30の移動を案内するガイド機能を有している。可動コア42は、挿通孔421の周囲に、燃料通路を構成する貫通孔422を有している。可動コア42は、弁部材30の鍔部33に弁体32側(図1中、下側)から係合するように構成されている。可動コア42は、弁部材30と共に、ノズルホルダ22内で移動可能な可動部を構成している。可動部を構成する可動コア42の構造の詳細は後述する。
電磁コイル43は、断面がU字状で径方向外側に開口する環状のボビン46に巻きつけられている。電磁コイル43の両端部には、剛性の高い導体部47が取り付けられている。導体部47は、固定コア41の外周に嵌合したコア部材45の欠落部分の空間に設けられた穴部45aから引き出されている。
ハウジング44は、筒状に形成されており、ノズルホルダ22の大径筒状部24が内部に位置する状態で嵌合している。ハウジング44の内部には、固定コア41の大部分及び電磁コイル43がハウジング44の内周面から隙間を設けて配置されている。ハウジング44は、ノズルホルダ22の小径筒状部23と共に燃料噴射弁1の外郭の一部を構成している。
電磁コイル43、固定コア41、燃料パイプ11の固定コア41側の部分の外周側は、樹脂カバー48によって覆われている。樹脂カバー48は、ハウジング44の燃料導入口11a側の開口部から絶縁樹脂を注入することでモールド成形されている。樹脂カバー48は、高電圧電源やバッテリ電源からの電力を供給するためのプラグと接続可能なコネクタ48aを有している。導体部47は、その大部分が樹脂カバー48に埋設されているが、一部分がコネクタ48aのところで露出している。
ノズルホルダ22の大径筒状部24内には、空隙形成部材50が弁部材30の鍔部33(係合部)及び可動コア42に対して当接可能且つ弁部材30及び可動コア42に対して開閉弁方向(中心軸線Cの延在方向)に相対的に移動可能に配置されている。空隙形成部材50は、閉弁状態において弁部材30の鍔部33(係合部)と可動コア42との間にプレストロークを規定する開閉弁方向(中心軸線Cの延在方向)の空隙G1(図2参照)を形成する部材である。プレストロークは、開弁動作のときに、弁部材30の弁体32が閉弁状態のままで可動コア42が開弁方向へ移動することを指すものである。空隙形成部材50は、弁部材30及び可動コア42と共に、ノズルホルダ22内で移動可能な可動部を構成している。可動部を構成する空隙形成部材50の構造の詳細は後述する。
固定コア41の貫通孔41aの内部には、第1の付勢ばね61が弁部材30よりも燃料導入口11a側(図1中、上側)の位置に配置されると共に、調整子64が第1付勢ばねよりも燃料導入口11a側の位置で圧入により固定されている。第1の付勢ばね61は、弁部材30を閉弁方向(図1中、下方向)に付勢するものである。第1の付勢ばね61は、一端部(図1中、下端部)が弁部材30の突起部34に取り付けられたキャップ37に当接すると共に、他端部(図1中、上端部)が調整子64に支持されている。調整子64は、固定コア41の貫通孔41a内での位置を調整可能に構成されており、閉弁状態の弁部材30に対する第1の付勢ばね61の付勢力を調整するものである。調整子64の一方側端部(図1中、下端部)は、第1の付勢ばね61の他端側のばね座を構成している。
ノズルホルダ22の大径筒状部24の内部には、可動コア42よりもノズル部材21側の位置に第2の付勢ばね62が配置されている。第2の付勢ばね62は、可動コア42を介して弁部材30を開弁方向(図1中、上方向)に付勢するものである。第2の付勢ばね62は、一端部(図1中、下端部)が大径筒状部24の内側部分に支持されると共に、他端部(図1中、上端部)が可動コア42に当接している。
キャップ37と空隙形成部材50の間に、第3の付勢ばね63が配置されている。第3の付勢ばね63は、空隙形成部材50を可動コア42側に付勢するものである。第3の付勢ばね63は、一端部(図1中、下端部)が空隙形成部材50に当接すると共に、他端部(図1中、上端部)がキャップ37に当接している。
上述した3つの付勢ばね61、62、63は、付勢力が大きい方から順に、第1の付勢ばね61、第3の付勢ばね63、第2の付勢ばね62である。
次に、燃料噴射弁の可動部を構成する各部品(結合体の弁部材及びキャップ、可動コア、空隙形成部材)の構造の詳細について図2を用いて説明する。図2は図1の符号Yで示す燃料噴射弁の一部分を拡大した状態で示す断面図である。図2は、弁部材が閉弁した状態、且つ、可動コアが静止した状態を示している。
図2において、弁部材30は、上述したように、弁体32、弁ロッド部31、鍔部33、突起部34が一体に成形されたものである。弁体32は、先端面がノズル部材21の弁座21bに当接することで、燃料の燃料噴射孔21aへの流れを遮断するものである。弁ロッド部31は、可動コア42の挿通孔421に挿通されており、その外周面が挿通孔421の内周面に摺動可能に構成されている。すなわち、弁ロッド部31は、その移動が可動コア42に案内されている。鍔部33は、その外径が可動コア42の挿通孔421の孔径よりも大きく形成されており、可動コア42と係合する係合部として機能する。鍔部33は、弁体32側(図1中、下側)を向き、可動コア42と係合可能な環状の係合面33a(図2中、下端面)と、係合面33aとは反対側(図1中、上側)を向き、空隙形成部材50に当接可能な環状の当接面33b(図2中、上端面)とを有している。突起部34は、鍔部33側に位置して空隙形成部材50と摺動する摺動軸状部35と、摺動軸状部35よりも先端側に位置してキャップ37と結合する結合軸状部36とで構成されており、第3の付勢ばね63を配置可能な長さを有する部分である。
キャップ37は、固定コア41の貫通孔41aの内部に配置可能に構成されている。キャップ37は、例えば、弁部材30の突起部34の結合軸状部36と嵌合する筒状部38と、筒状部38の燃料導入口11a(図1参照)側(図2中、上側)の開口を閉塞すると共に筒状部38よりも径方向外側に張り出した底部39とで構成されている。筒状部38の内部空間は突起部34の結合軸状部36が圧入される穴部38aを構成するものであり、筒状部38の内周面は当該穴部38aの内周面380を構成するものである。
キャップ37の底部39には、底部39を貫通してキャップ37の内外を連通させる貫通孔391が設けられている。貫通孔391は、キャップ37を弁部材30の結合軸状部36に圧入する際の空気抜き用の孔として機能するものであり、キャップ37の結合軸状部36への圧入作業を容易にする。
キャップ37の底部39における燃料導入口11a側(図2中、上側)を向く第1外面39bは、第1の付勢ばね61の一方側のばね座を構成している。底部39における第1外面39bとは反対側を向く環状の第2外面39cは、第3の付勢ばね63の他方側のばね座を構成している。すなわち、キャップ37は、弁体32側に向かって(閉弁方向に)第1の付勢ばね61の付勢力を受ける一方、燃料導入口11a側に向かって(開弁方向に)第3の付勢ばね63の付勢力を受ける。上述したように、第1の付勢ばね61の付勢力が第3の付勢ばね63の付勢力よりも大きいので、キャップ37は、第1の付勢ばね61と第3の付勢ばね63の付勢力の差分よって突起部34に常時押し付けられている。
弁部材30(第1部品)の結合軸状部36とキャップ37(第2部品)の穴部38aとを圧入することで弁部材30(第1部品)とキャップ37(第2部品)とが結合した結合体が形成される。結合体の構造の詳細及び結合体の製造方法は後述する。
可動コア42は、固定コア41側(図2中、上側)を向く第1端面42a(図2中、上端面)と第1端面42aとは反対側(図2中、下側)を向く第2端面42b(図2中、下端面)とを有している。可動コア42は、第1端面42aが固定コア41のノズル部材21側(図2中、下側)の端面41b(図2中、下端面)に対して対向するように構成されている。可動コア42は、弁部材30が閉弁状態のときに、第1端面42aが固定コア41の端面41bに対して隙間をあけて対向している。可動コア42は、電磁吸引力により固定コア41側に引き寄せられたとき、第1端面42aが固定コア41の端面41bに衝突するように構成されている。可動コア42の第2端面42bは、第2の付勢ばね62の他方側端部(図2中、上端部)が当接する部分であり、第2の付勢ばね62のばね座を構成している。第2端面42bは、ノズルホルダ22の大径筒状部24と小径筒状部23との段差面に対面しているが、第2端面42bと大径筒状部24との間に第2の付勢ばね62が介在していることで段差面に接触することはない(図1参照)。
可動コア42の第1端面42a側における中央部には、例えば、固定コア41側に開口する凹部423が形成されている。凹部423は、弁部材30の鍔部33及び空隙形成部材50の全体を収容可能な内径及び高さを有している。凹部423の底面423aは、弁部材30の鍔部33の係合面33a(図2中、下端面)と係合可能かつ空隙形成部材50の後述の周壁部52の先端部52aと当接可能な部分である。
可動コア42の挿通孔421は、凹部423の底面423aから第2端面42bまでを貫通する孔である。挿通孔421の孔径は、弁ロッド部31の鍔部33の外径よりも小さく、弁ロッド部31が摺動可能な大きさに設定されている。すなわち、可動コア42の挿通孔421を形成する内周面が弁ロッド部31の外周面と摺動する摺動面を構成する。可動コア42は、凹部423の底面423aが弁部材30の鍔部33の係合面33aに係合することで、閉弁状態から開弁状態に移行する開弁動作時または開弁状態から閉弁状態に移行する閉弁動作時において、弁部材30と協働して移動する。なお、可動コア42を下方へ動かす力又は弁部材30を上方へ動かす力が独立して作用した場合には、可動コア42は、弁部材30に対して相対的に変位するように移動する。
空隙形成部材50は、弁部材30の鍔部33の全体を収容可能な内部空間50aを有する有底の筒状体である。空隙形成部材50は、弁部材30の鍔部33の当接面33b(図2中、上端面)と当接可能な底面51aを有する底部51と、底部51の外周縁部から立ち上がり可動コア42側(図2中、下側)に開口する周壁部52とを有している。底部51の外面51b(図2中、上面)は、第3の付勢ばね63の一方側端部(図2中、下端部)が当接する部分であり、第3の付勢ばね63の一方側のばね座を構成している。空隙形成部材50は、周壁部52の開口部が可動コア42側を向いており、周壁部52の開口側端部(先端部)52aが可動コア42の凹部423の底面423aに当接可能な当接部である。底部51には、挿通孔53が形成されている。挿通孔53は、弁部材30の突起部34の摺動軸状部35が摺動可能に挿通する部分であり、その内径は弁部材30の鍔部33の外径よりも小さくなるように設定されている。
空隙形成部材50は、弁部材30の鍔部33の当接面33b(基準位置)に位置づけられた状態において周壁部52の開口側端部52a(当接部)が可動コア42と当接することで、弁部材30の鍔部33の係合面33a(係合部)と可動コア42の凹部423の底面423a(係合部)との間にプレストロークを規定する空隙G1を形成させるものである。可動コア42が図2に示す状態から固定コア41側へ空隙G1が0になるまで変位するとき、弁部材30は変位せずに閉弁状態が維持される。
図2に示すように、弁部材30が閉弁状態かつ可動コア42が静止状態の場合、空隙形成部材50は、第3の付勢ばね63の閉弁方向の付勢力を受けて、底面51aが弁部材30の鍔部33の当接面33b(基準位置)と当接することにより、弁部材30の基準位置(鍔部33の当接面33b)に位置づけられている。すなわち、空隙形成部材50の底面51aと弁部材30の鍔部33の当接面33bとの隙間G2の大きさ(寸法)は0である。一方、可動コア42は、第2の付勢ばね62の付勢力を受けて、挿通孔421の凹部423の底面423aが空隙形成部材50の周壁部52の開口側端部(先端部)52aに当接する。このとき、第2の付勢ばね62の付勢力が第3の付勢ばね63の付勢力よりも小さく、且つ、空隙形成部材50の内部空間50aの高さ寸法が弁部材30の鍔部33の高さ寸法よりも大きいので、可動コア42は第3の付勢ばね63により付勢された空隙形成部材50を押し返すことはできず、可動コア42の底面423aは弁部材30の鍔部33の係合面33aに係合しない。すなわち、可動コア42の底面423aと弁部材30の鍔部33の係合面33aとの隙間G1の大きさは、プレストローク量に相当するものである。
次に、本発明の第1の実施の形態に係る結合体の製造方法及び結合体の構造について図3~図6を用いて説明する。図3は本発明の第1の実施の形態に係る結合体を構成する2部品(弁部材とキャップ)の結合前(圧入前)の構造を示す断面図である。図4は図3に示す本発明の第1の実施の形態に係る結合体を構成する2部品(弁部材とキャップ)の圧入途中の状態を示す断面図である。図5は図4に示す本発明の第1の実施の形態に係る結合体を構成する2部品(弁部材とキャップ)の圧入による部品表面のツールマークの形状変化を示す説明図である。図6は本発明の第1の実施の形態に係る結合体を構成する2部品の圧入完了時の状態(結合体の構造)を示す断面図である。
第1部品としての弁部材30と第2部品としてのキャップ37とで構成された結合体を製造する結合体の製造方法は、弁部材30の突起部34に結合軸状部36を形成する第1形成工程と、キャップ37に穴部38aを形成する第2形成工程と、弁部材30の結合軸状部36をキャップ37の穴部38aに圧入する圧入工程とを含んでいる。本実施の形態においては、第1部品である弁部材30の方が第2部品であるキャップ37よりも相対的に硬度が高い部品として構成されている。弁部材30は、例えば、マルテンサイト系の鋼材により形成されると共に焼き入れされた高硬度(高強度)の部品である。本実施の形態における圧入工程は、硬度が相対的に高い弁部材30の結合軸状部36の外周面の形状によって、硬度が相対的に低いキャップ37の穴部38aの内周面380に対して、第1段階の塑性域の変形と第1段階よりも小さな変形量の第2段階の変形の2段階の変形を生じさせることで、両部品30、37を結合させるものである。なお、圧入工程において弁部材30の結合軸状部36に生じる変形は、キャップ37の穴部38aの内周面380の変形に対して無視することが可能なものである。
具体的には、第2形成工程では、図3に示すように、キャップ37の穴部38aの内周面380を、開口側に位置するテーパ内周面381、及び、テーパ内周面381よりも底面39a側に位置する円筒内周面382を含むように形成する。テーパ内周面381は、穴部38aの開口側に向かうにつれて徐々に拡径するように形成されている。円筒内周面382の内径D1は、例えば、1ミリメートル程度である。
第1形成工程では、図3に示すように、弁部材30の結合軸状部36を、先端部である導入部361、導入部361よりも圧入方向Pの後方側(摺動軸状部35側)に位置する加工部362、加工部362よりも圧入方向Pの後方側に位置する結合部363、導入部361と加工部362とを繋ぐ第1テーパ部364、加工部362と結合部363を繋ぐ第2テーパ部365、及び、結合部363と摺動軸状部35とに繋がるネック部366を含むように形成する。導入部361は、キャップ37の穴部38a内への案内部である。加工部362は、圧入時にキャップ37の内周面380を塑性加工して拡径させる第1段階の変形のための部分であり、その軸方向の長さは塑性加工が可能な長さであればよい。結合部363は、キャップ37の内周面380と結合するための部分であり、その軸方向の長さは必要な結合強度が得られる長さに設定されている。
結合軸状部36の外周面368は、キャップ37の穴部38aの内径よりも小さな外径の導入部361の導入面3681、キャップ37の円筒内周面382の内径D1よりも大きな外径D2を有する加工部362の第1段円筒外周面3682、第1段円筒外周面3682の外径D2よりも大きな外径D3を有する結合部363の第2段円筒外周面3683、加工部362側から導入部361側(先端側)に向かって徐々に縮径する第1テーパ部364の第1テーパ外周面3684、及び、結合部363側から加工部362側(先端側)に向かって徐々に縮径する第2テーパ部365の第2テーパ外周面3685を含んでいる。第1テーパ外周面3684と第1段円筒外周面3682とは第1R面取り部3686を介して連続している。第2テーパ外周面3685と第2段円筒外周面3683とは第2R面取り部3687を介して連続している。
第1段円筒外周面3682の外径D2は、キャップ37の円筒内周面382の内径D1に対して、円筒内周面382に塑性域の変形を生じさせる変形代ΔD1を有する大きさに設定されている。第2段円筒外周面3683は、第1段円筒外周面3682に対して径方向外側に張り出して段差を形成している。第2段円筒外周面3683の外径D3は、第1段円筒外周面3682の外径D2に対して、第1段円筒外周面3682により塑性変形して拡径したキャップ37の内周面380(内径が外径D2と同じ寸法)を第1段円筒外周面3682によるキャップ37の内周面380の変形量よりも小さな変形量を生じさせる締め代ΔI1(圧入代)を有する大きさに設定されている。すなわち、第2段円筒外周面3683と第1段円筒外周面3682との外径差(D3-D2)が結合体の締め代ΔI1となる。締め代ΔI1は、具体的には、弾性域又は所定以下の塑性域内の変形(以下、弾塑性変形ということがある)を生じさせる大きさに設定されている。なお、本実施の形態において、所定以下の塑性域とは、圧入径(第1段円筒外周面3682の外径D2)の10%以下、好ましくは5%以下の変形量となる塑性域をいう。
圧入工程では、先ず図4に示すように、結合軸状部36の加工部362がキャップ37の穴部38aに圧入される。このとき、加工部362の第1段円筒外周面3682がキャップ37の内周面380の円筒内周面382を塑性加工する。これにより、キャップ37の円筒内周面382が加工部362の第1段円筒外周面3682の外径D2と同じ寸法なるように拡径して塑性加工面388が成形される。すなわち、塑性加工面388は、円筒内周面382に塑性域の変形が生じて形成されたものであり、塑性変形に伴う加工硬化により結合強度に対して有利に働く。
また、加工部362の第1段円筒外周面3682がキャップ37の円筒内周面382を塑性加工するとき、図5に示すように、円筒内周面382に形成されているツールマークの凹凸部の尖った先端部382a(図5の左図参照)が結合軸状部36の第1R面取り部3686(図4参照)によって刈り取られることなく均され、塑性加工面388の凹凸部の先端部388a(図5の右図参照)が変形して平坦面となっている。したがって、塑性加工面388の凹凸部の先端部388aに新生面が生じることを抑制することができる。
圧入工程では、さらに図6に示すように、結合軸状部36の結合部363の全体がキャップ37の穴部38aに圧入される。キャップ37の筒状部38の先端面38bが弁部材30の突起部34の摺動軸状部35の先端面35aに当接することで、キャップ37の穴部38aと結合軸状部36との圧入が規制される。
このとき、結合部363の第2段円筒外周面3683が、加工部362の第1段円筒外周面3682によって塑性域の変形が生じたキャップ37の塑性加工面388を弾性域又は所定以下の塑性域内で変形させる。これによって、塑性加工面388が弾性域又は所定以下の塑性域内で変形することで生じた結合内周面389と結合部363の第2段円筒外周面3683とが結合することで、キャップ37と弁部材30の結合体の結合強度が確保される。
すなわち、本実施の形態の結合体においては、硬度が相対的に高い弁部材30の結合軸状部36の外周面368が、第1段円筒外周面3682と、第1段円筒外周面3682よりも径方向外側に張り出して第1段円筒外周面3682に対して段差を形成する第2段円筒外周面3683とを有しており、第2段円筒外周面3683と第1段円筒外周面3682との段差(外径差D3-D2)がキャップ37の内周面380に対する締め代(圧入代)となるように構成されている。第1段円筒外周面3682の外径D2は、キャップ37の円筒内周面382の内径D1に対して、円筒内周面382が塑性域で変形するような範囲に設定されており、上記締め代(第2段円筒外周面3683と第1段円筒外周面3682との外径差)は、結合軸状部36の第1段円筒外周面3682の外径D2と同じ大きさ寸法に変形したキャップ37の塑性加工面388が弾性域または所定以下の塑性域内で変形するような範囲に設定されている。これにより、硬度が相対的に低いキャップ37の内周面380は、塑性変形した状態で第2段円筒外周面3683に対して結合する塑性加工面388を有すると共に、弾性域または所定以下の塑性域内で変形した状態で結合軸状部36の第2段円筒外周面3683に対して結合する結合内周面389を有している。
上述したように、圧入工程は、弁部材30の結合軸状部36の第1段円筒外周面3682によってキャップ37の内周面380を塑性域で変形させる第1段階と、塑性域の変形が生じたキャップ37の内周面380(塑性加工面388)を結合軸状部36の第2段円筒外周面3683によって第1段階の変形量よりも小さな変形量(具体的には、弾性域又は所定以下の塑性域内)で変形させる第2段階とを有している。
次に、本発明の第1の実施の形態に係る結合体及び結合体の製造方法の作用および効果を比較例の結合体及びその製造方法と比較して説明する。まず、比較例の結合体及び結合体の製造方法を図7~図9を用いて説明する。図7は本発明の第1の実施の形態に対する比較例の結合体を構成する2部品(弁部材とキャップ)の結合前(圧入前)の構造を示す断面図である。図8は図7に示す比較例の結合体を構成する2部品(弁部材とキャップ)の圧入完了時の状態(結合体の構造)を示す断面図である。図9は比較例の結合体を構成する2部品(弁部材とキャップ)の圧入工程においてかじりが発生したときの両部品間の結合状態を説明する概略図である。
比較例の結合体を製造する製造方法は、本実施の形態と同様に、弁部材90の突起部94に結合軸状部96を形成する第1形成工程と、キャップ97に穴部98aを形成する第2形成工程と、弁部材90の結合軸状部96をキャップ97の穴部98aに圧入する圧入工程とを含んでいる。比較例の結合体でも、本実施の形態の結合体と同様に、弁部材90の方がキャップ97よりも硬度が相対的に高い部品として構成されている。
第2形成工程では、図7に示すように、キャップ97の穴部98aの内周面980を、開口側に位置し穴部98aの開口側に向かうにつれて徐々に拡径するテーパ内周面981、及び、テーパ内周面981よりも底面99a側に位置する円筒内周面982を含むように形成している。比較例のキャップ97の内周面980は、本実施の形態のキャップ37の内周面380と同様な形状である。
第1形成工程では、図7に示すように、弁部材90の結合軸状部96を、先端部である導入部961、導入部961よりも圧入方向Pの後方側(摺動軸状部35側)に位置する結合部963、導入部961と結合部963とを繋ぐテーパ部964、及び、結合部963と摺動軸状部95とに繋がるネック部966を含むように形成している。導入部961は、キャップ97の穴部98a内への案内部である。結合部963は、キャップ97の内周面980と結合するための部分である。
結合軸状部96の外周面968は、キャップ97の内周面980の内径よりも小さな外径の導入部961の導入面9681、キャップ97の円筒内周面982の内径D11よりも大きな外径D12を有する結合部963の円筒外周面9683、結合部963側から導入部961側(先端側)に向かって徐々に縮径するテーパ部964のテーパ外周面9684を含んでいる。テーパ外周面9684と円筒外周面9683とはR面取り部9686を介して連続している。
円筒外周面9683の外径D12は、キャップ97の円筒内周面982の内径D11に対して、円筒内周面982に弾性域の変形を生じさせる締め代を有する大きさに設定されている。なお、円筒外周面9683の外径D12は、キャップ97の円筒内周面982の内径D11に対して、円筒内周面982に塑性域の変形を生じさせる締め代を有する大きさに設定することも可能である。
圧入工程では、図8に示すように、結合軸状部96の結合部963の全体がキャップ97の穴部98aに圧入される。このとき、結合部963の円筒外周面9683がキャップ97の内周面980の円筒内周面982(図7参照)を弾性域で変形させることで結合内周面989が生じる。この結合内周面989と円筒外周面9683とが結合することで、キャップ97と弁部材90の結合体の結合強度が確保される。
このように、比較例の弁部材90とキャップ97の結合体においては、締め代(圧入代)が結合軸状部96の結合部963の円筒外周面9683の外径D12とキャップ97の円筒内周面982の内径D11との径差によって決定されている。両部品90、97間の径差(D12-D11)に応じて決定される締め代は、弁部材90とキャップ97の両部品が異なる工作機械によって加工されるので、両部品90、97の寸法公差に起因してばらつきが大きくなってしまう。なお、締め代のばらつきを抑制するために、両部品90、97の寸法公差を極めて小さい範囲に設定することは、工作機械の加工精度や製造コストの観点から難しい。
一方、両部品90、97間の径差(D12-D11)で決定される締め代を大きく設定することで、塑性域の変形により結合させる場合には、両部品90、97にかじりが生じやすいという問題がある。両部品90、97の圧入開始時には、結合軸状部96のテーパ部964がキャップ97の内周面980に当接することで、結合軸状部96とキャップ97の穴部98aとのセンタリングがなされる。しかし、センタリング時に結合軸状部96がキャップ97の穴部98aに対して倒れが生じて片当たりすることがある。この場合、図9に示すように、結合軸状部96のテーパ外周面9684やR面取り部9686(図7参照)にかじりが発生することがある。
キャップ97の内周面980には、加工時にツールマークの凹凸が形成されている(図5の左図を参照)。ツールマークの凸部に接触する部分には、高い応力が発生するので、かじり易くなっている。結合軸状部96のテーパ外周面9684などの外周面968にかじりが発生すると、盛り上がったかじり部9688によってキャップ97の円筒内周面982が拡径されて両部品間の締め代が小さくなり、結合強度が低下してしまう。また、図9に示すように、かじり部9688の盛り上がりによって結合軸状部96の円筒外周面9683とキャップ97の内周面980との間に間隙が形成されると、両部品90、97間の締め代を確保することができず、両部品90、97の結合はかじり部9688の領域のみの線状的な結合となる。そのため、結合体の結合軸状部96に対して曲げ方向の力が作用すると、結合がガタつきやすくなっている。すなわち、かじりの発生により両部品90、97間の結合強度が低下する。
次に、本発明の第1の実施の形態に係る結合体及び結合体の製造方法の作用および効果について図3~図6及び図10を用いて説明する。図10は本発明の第1の実施の形態に係る結合体を構成する2部品(弁部材とキャップ)の圧入工程においてかじりが発生したときの両部品間の結合状態を説明する概略図である。
本実施の形態においては、結合体の両部品30、37の締め代(圧入代)が、図7に示す比較例の弁部材90とキャップ97の結合体の締め代のような両部品90、97間の径差によって決定されるものではなく、図3に示すように、結合軸状部36の加工部362の第1段円筒外周面3682と結合部363の第2段円筒外周面3683との段差(外径差)によって決定されるものである。すなわち、弁部材30の結合軸状部36とキャップ37の穴部38aとの締め代は、結合軸状部36(一部品)の寸法差によって規定される。したがって、両部品30、37の締め代は、弁部材30の寸法公差の範囲内でのばらつきしか生じない。したがって、両部品30、37の加工精度を高めることなく、結合強度のばらつきを低減することができる。
また、本実施の形態においては、両部品30、37の圧入開始時、結合軸状部36の第1テーパ部364のテーパ外周面3684がキャップ37の円筒内周面382に当接することで、結合軸状部36とキャップ37の穴部38aとのセンタリングがなされる。このとき、結合軸状部36がキャップ37の円筒内周面382に対して片当たりが生じると、図10に示すように、結合軸状部36の加工部362の第1段円筒外周面3682にかじりが発生することが想定される。この場合、キャップ37の円筒内周面382(図3及び図4参照)は、盛り上がったかじり部によって塑性変形されることで拡径された塑性加工面388Aが形成される。この塑性加工面388Aの内径は、第1段円筒外周面3682によって塑性変形が生じて拡径した塑性加工面388(図5参照)の内径よりも大きくなる。すなわち、かじり部により生じた塑性加工面388Aの内径は、第1段円筒外周面3682の外径D2よりも大きくなっている。
しかし、本実施の形態においては、第1段円筒外周面3682の外径D2よりも大きな外径D3を有する第2段円筒外周面3683とキャップ37の塑性加工面388Aとの間に締め代を確保することができる。第1段円筒外周面3682とキャップ37の内周面380との接触時にセンタリングがなされているので、第2段円筒外周面3683とキャップ37の内周面380は、片当たりせずに略全周に亘る接触が得られるので、両者3683、380間にかじりが発生することを抑制することができる。
また、第1段円筒外周面3682によってキャップ37の円筒内周面382を塑性加工することで、図5に示すように、円筒内周面382に形成されていたツールマークの凸部先端部382aが平坦となる。このため、円筒内周面382が塑性変形して生じた塑性加工面388に第2段円筒外周面3683が接触したとき、塑性加工面388の凸部先端部388aが平坦状なので、第2段円筒外周面3683に高い応力が発生することを抑制することができる。したがって、第2段円筒外周面3683と塑性加工面388とにかじりが発生することを抑制することができ、第2段円筒外周面3683とキャップ37の結合内周面389との全面的な結合面を確保することができる。その結果、両部品30、37間の結合強度を確保することができる。
上述したように、第1の実施の形態に係る結合体の製造方法は、弁部材30(第1部品)に結合軸状部36(ロッド状部)を形成する第1形成工程と、キャップ37(第2部品)に穴部38aを形成する第2形成工程と、弁部材30(第1部品)の結合軸状部36(ロッド状部)をキャップ37(第2部品)の穴部38aに圧入する圧入工程とを備える。弁部材30(第1部品)の結合軸状部36(ロッド状部)の外周面368及びキャップ37(第2部品)の穴部38aの内周面380のうちの硬度が相対的に高い弁部材30(高硬度部品)の外周面368(周面)に、硬度が相対的に低いキャップ37(低硬度部品)の内周面380(周面)に対して径差を有する第1段円筒外周面3682(第1段円筒面)と、第1段円筒外周面3682(第1段円筒面)よりも圧入方向Pの後方側に位置し、第1段円筒外周面3682(第1段円筒面)に対して径方向に張り出して段差を形成する第2段円筒外周面3683(第2段円筒面)とが形成される。圧入工程は、弁部材30(高硬度部品)の第1段円筒外周面3682(第1段円筒面)によってキャップ37(低硬度部品)の内周面380(周面)を塑性域で変形させる第1段階と、キャップ37(低硬度部品)の塑性域の変形が生じた塑性加工面388(周面)を弁部材30(高硬度部品)の第2段円筒外周面3683(第2段円筒面)によって第1段階の変形量よりも小さな変形量で変形させる第2段階とを備える。
この方法によれば、キャップ37(低硬度部品)の内周面380(周面)を弁部材30(高硬度部品)の第1段円筒外周面3682(第1段円筒面)よって塑性変形させて第1段円筒外周面3682(第1段円筒面)の径と同じ寸法に成形した第1段階の後に弁部材30(高硬度部品)の第2段円筒外周面3683(第2段円筒面)によって更に第1段階の変形量よりも小さな変形量で変形させる第2段階を経ることで両部品30、37を結合させるので、第2段階の変形による結合を得るための締め代(圧入代)が、弁部材30(高硬度部品)とキャップ37(低硬度部品)の両部品間の径差ではなく、弁部材30(高硬度部品)の第2段円筒外周面3683(第2段円筒面)と第1段円筒外周面3682(第1段円筒面)との段差(径差)によって決定される。このため、当該締め代(圧入代)は、弁部材30(高硬度部品)の加工精度(寸法公差)の範囲内でばらつくが、両部品30、37の加工精度(寸法公差)の相互の影響を受けずに済む。したがって、両部品30、37の加工精度を高めることなく、結合強度のばらつきを低減することができる。
また、本実施の形態に係る結合体の製造方法においては、第1形成工程において、弁部材30(第1部品)の結合軸状部36(ロッド状部)の外周面368に、第1段円筒外周面3682よりも先端側に位置し先端側に向かって縮径する第1テーパ外周面3684(テーパ外周面)を更に形成する。また、圧入工程において、弁部材30(第1部品)の結合軸状部36(ロッド状部)の第1テーパ外周面3684(テーパ外周面)をキャップ37(第2部品)の穴部38aの内周面380に接触させることで、結合軸状部36(ロッド状部)の穴部38aに対するセンタリングを行う。
この方法によれば、弁部材30(第1部品)の結合軸状部36(ロッド状部)とキャップ37(第2部品)の穴部38aとの締め代を全周方向で略均一にすることができ、結合強度が低い状態の結合を防ぐことができる。
また、本実施の形態に係る結合体の製造方法においては、弁部材30(第1部品)の第1テーパ外周面3684(テーパ外周面)と第1段円筒外周面3682とを第1R面取り部3686(R面取り部)を介して連続させている。また、圧入工程において、弁部材30(第1部品)の結合軸状部36(ロッド状部)の第1R面取り部3686(R面取り部)によってキャップ37(第2部品)の穴部38aの内周面380を押圧する。
この方法によれば、キャップ37(第2部品)の内周面380に形成されているツールマークの凹凸の尖った先端部382aを結合軸状部36(ロッド状部)の第1R面取り部3686(R面取り部)によって平坦に変形させることができる。したがって、結合軸状部36(ロッド状部)の第1段円筒外周面3682とキャップ37(第2部品)の内周面380との圧入時に発生する虞があるかじりを抑制することができ、かじりによる結合強度の低下を抑制することができる。
また、上述したように、本実施の形態に係る結合体は、結合軸状部36(ロッド状部)を有する弁部材30(第1部品)と穴部38aを有するキャップ37(第2部品)とが結合軸状部36(ロッド状部)と穴部38aとの圧入により結合したものである。弁部材30(第1部品)の結合軸状部36(ロッド状部)の外周面368及びキャップ37(第2部品)の穴部38aの内周面380のうち、硬度が相対的に高い弁部材30(高硬度部品)の外周面368(周面)は、第1段円筒外周面3682(第1段円筒面)と、第1段円筒外周面3682(第1段円筒面)よりも圧入方向Pの後方側に位置し、第1段円筒外周面3682(第1段円筒面)よりも径方向に張り出して第1段円筒外周面3682(第1段円筒面)に対して段差を形成する第2段円筒外周面3683(第2段円筒面)とを有している。弁部材30(第1部品)の結合軸状部36(ロッド状部)の外周面368及びキャップ37(第2部品)の穴部38aの内周面380のうち、硬度が相対的に低いキャップ37(低硬度部品)の内周面380(周面)は、その一部分が塑性変形した状態で第1段円筒外周面3682(第1段円筒面)に対して結合すると共に、他の一部分が弾性域又は所定以下の塑性域内で変形した状態で第2段円筒外周面3683(第2段円筒面)に対して結合している。
この構成によれば、弁部材30(高硬度部品)の外周面368(周面)に、段差を形成する第1段円筒外周面3682(第1段円筒面)と第2段円筒外周面3683(第2段円筒面)を設けることで、硬度が相対的に低いキャップ37(低硬度部品)の内周面380(周面)の一部分が塑性変形した状態で第1段円筒外周面3682(第1段円筒面)に対して結合すると共に、他の一部分が弾性域又は所定以下の塑性域内(弾塑性域)で変形した状態で第2段円筒外周面3683(第2段円筒面)に対して結合する。つまり、弾塑性域の変形による結合を得るための締め代(圧入代)が、弁部材30(高硬度部品)とキャップ37(低硬度部品)の両部品間の径差ではなく、弁部材30(高硬度部品)の第1段円筒外周面3682(第1段円筒面)と第2段円筒外周面3683(第2段円筒面)との段差(径差)によって決定されている。したがって、当該締め代(圧入代)は、弁部材30(高硬度部品)の加工精度(寸法公差)の範囲内でばらつくが、両部品30、37の加工精度(寸法公差)の相互の影響を受けずに済む。このため、両部品30、37の加工精度を高めることなく、結合強度のばらつきを低減することができる。
また、本実施の形態に係る結合体においては、結合軸状部36(ロッド状部)が第1段円筒外周面3682よりも先端側に位置し先端側に向かって縮径する第1テーパ外周面3684(テーパ外周面)を更に有している。
この構成によれば、圧入工程において、結合軸状部36(ロッド状部)の第1テーパ外周面3684(テーパ外周面)をキャップ37(第2部品)の穴部38aの内周面380に接触させることで、結合軸状部36(ロッド状部)の穴部38aに対するセンタリングを行うことができる。したがって、結合軸状部36(ロッド状部)とキャップ37(第2部品)の穴部38aとの締め代を全周方向で略均一にすることができ、結合強度が低い状態の結合を防ぐことができる。
また、本実施の形態に係る結合体においては、結合軸状部36(ロッド状部)の第1テーパ外周面3684(テーパ外周面)と第1段円筒外周面3682とが第1R面取り部3686(R面取り部)を介して連続している。
この構成によれば、圧入工程において、結合軸状部36(ロッド状部)の第1R面取り部3686(R面取り部)によってキャップ37(第2部品)の穴部38aの内周面380を押圧することができる。これにより、キャップ37(第2部品)の内周面380に形成されているツールマークの凹凸の尖った先端部382aを結合軸状部36(ロッド状部)の第1R面取り部3686(R面取り部)によって平坦に変形させることができる。その結果、結合軸状部36(ロッド状部)の第1段円筒外周面3682とキャップ37(第2部品)の内周面380との圧入時に発生する虞があるかじりを抑制することができ、かじりによる結合強度の低下を抑制することができる。
[第1の実施の形態の変形例]
次に、本発明の第1の実施の形態の変形例に係る結合体びその製造方法について図11~図13を用いて説明する。図11は本発明の第1の実施の形態の変形例に係る結合体を構成する2部品(弁部材とキャップ)の結合前(圧入前)の構造を示す断面図である。図12は図11に示す本発明の第1の実施の形態の変形例に係る結合体を構成する2部品(弁部材とキャップ)の圧入完了時の状態(結合体の構造)を示す断面図である。図13は本発明の第1の実施の形態の変形例に係る結合体を構成する2部品(弁部材とキャップ)の圧入工程においてかじりが発生したときの両部品間の結合状態を説明する概略図である。なお、図11~図13において、図1~図10に示す符号と同符号のものは、同様な部分であるので、その詳細な説明は省略する。
図11及び図12に示す本発明の第1の実施の形態の変形例に係る結合体及びその製造方法が第1の実施の形態と異なる点は、弁部材30Aの突起部34に結合軸状部36Aを形成する第1形成工程において、結合軸状部36Aにおける加工部362と結合部363の間であって第2テーパ部365よりも先端側に、環状の凹部367を形成することである。凹部367は、図12に示すように、第1段円筒外周面3682の外径D2よりも小さな外径を有しており、圧入工程時においてキャップ37の内周面380との間に空気溜まりを形成するものである。
本変形例においても、両部品30A、37の圧入開始時に結合軸状部36Aがキャップ37の円筒内周面382に対して片当たりすると、第1の実施の形態と同様、図13に示すように、結合軸状部36Aの加工部362の第1段円筒外周面3682にかじりが発生することが想定される。この場合、第1段円筒外周面3682にかじりによる新生面が生じても、結合軸状部36Aにおける第1段円筒外周面3682よりも圧入方向Pの後方に設けられた凹部367とキャップ37の内周面380とで空気溜まり(空間)を形成するので、第1段円筒外周面3682に生じたかじり部3688の新生面が空気溜まりの空気(酸素)により酸化し、新生面に酸化被膜が形成される。したがって、第1段円筒外周面3682のかじり部3688が焼き付くことを抑制することができる。
また、図11に示す第1R面取り部3686や第1段円筒外周面3682によってキャップ37の円筒内周面382に形成されていたツールマークの凸部先端部382a(図5参照)が刈り取られて新生面が現れた場合でも、結合軸状部36Aの凹部367とキャップ37の内周面380とで形成された空気溜まりの空気によって、新生面上に酸化被膜が形成される。したがって、第2段円筒外周面3683とキャップ37の内周面380との圧入時の焼き付きが発生し難くなる。
上述した第1の実施の形態の変形例に係る結合体及びその製造方法においても、第1の実施の形態と同様に、弾塑性域の変形による結合を得るための締め代(圧入代)が、弁部材30Aとキャップ37の両部品間の径差ではなく、弁部材30Aの第2段円筒外周面3683と第1段円筒外周面3682との段差(径差)によって決定される。このため、当該締め代(圧入代)は、弁部材30Aの加工精度(寸法公差)の範囲内でばらつくが、両部品30A、37の加工精度(寸法公差)の相互の影響を受けずに済む。したがって、両部品30A、37の加工精度を高めることなく、結合強度のばらつきを低減することができる。
また、上述したように、本変形例に係る結合体の製造方法においては、第1形成工程において、弁部材30A(第1部品)の結合軸状部36A(ロッド状部)に、第1段円筒外周面3682と第2段円筒外周面3683との間の位置に第1段円筒外周面3682の外径よりも小さな外径の環状の凹部367を形成する。また、圧入工程において、弁部材30A(第1部品)の結合軸状部36A(ロッド状部)の凹部367とキャップ37(第2部品)の内周面380とによって空気溜まりを形成する。
この方法によれば、かじりにより第1段円筒外周面3682に新生面が生じた場合でも、結合軸状部36Aの凹部367とキャップ37の内周面380とで形成した空気溜まり内の空気によって、第1段円筒外周面3682の新生面に酸化被膜が生じるので、第1段円筒外周面3682のかじり部3688の焼き付きを抑制することができる。
また、上述したように、本変形例に係る結合体においては、結合軸状部36A(ロッド状部)が、第1段円筒外周面3682と第2段円筒外周面3683との間に位置し第1段円筒外周面3682の外径よりも小さな外径の環状の凹部367を有している。
この構成によれば、圧入時に弁部材30A(第1部品)の結合軸状部36A(ロッド状部)の凹部367とキャップ37(第2部品)の内周面380とによって空気溜まりが形成されるので、かじりにより第1段円筒外周面3682に新生面が生じた場合でも、当該空気溜まり内の空気によって第1段円筒外周面3682の新生面に酸化被膜が生じる。したがって、第1段円筒外周面3682のかじり部3688の焼き付きを抑制することができる。
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態に係る結合体及び結合体の製造方法について図14及び図15を用いて説明する。図14は本発明の第2の実施の形態に係る結合体を構成する2部品(弁部材とキャップ)の結合前(圧入前)の構造を示す断面図である。図15は本発明の第2の実施の形態に係る結合体を構成する2部品(弁部材とキャップ)の圧入完了時の状態(結合体の構造)を示す断面図である。なお、図14及び図15において、図1~図13に示す符号と同符号のものは、同様な部分であるので、その詳細な説明は省略する。
図14及び図15に示す本発明の第2の実施の形態に係る結合体及びその製造方法が第1の実施の形態と異なる主な点は、第2部品であるキャップ37Bの方が第1部品である弁部材30Bよりも硬度が相対的に高い部品として構成されていること、及び、圧入工程では硬度が相対的に低い弁部材30Bの結合軸状部36Bの外周面368Bに対して、第1段階の塑性域の変形と第1段階よりも小さな変形量の第2段階の変形の2段階の変形を生じさせることで、両部品30B、37Bを結合させることである。弁部材30Bの結合軸状部36Bは、外周面368Bに塑性域及び弾塑性域の変形が生じる限り中実や中空の軸状部の構成が可能である。なお、圧入工程において硬度が相対的に高いキャップ37Bの内周面380に生じる変形は、硬度が相対的に低い弁部材30Bの結合軸状部36Bの外周面368Bの変形に対して無視することが可能なものである。
具体的には、第1形成工程では、図14に示すように、弁部材30Bの結合軸状部36Bを、先端部である導入部361、導入部361よりも摺動軸状部35側に位置する結合部363B、導入部361と結合部363Bとを繋ぐテーパ部364B、及び、結合部363Bと摺動軸状部35とに繋がるネック部366を含むように形成する。結合軸状部36Bの外周面368Bは、キャップ37Bの穴部38aの内周面380Bよりも小さな外径の導入部361の導入面3681、導入面3681の外径よりも大きな外径D4を有する結合部363Bの円筒外周面3683B、及び、結合部363B側から導入部361側(先端側)に向かって徐々に縮径するテーパ部364Bのテーパ外周面3684Bを含んでいる。テーパ外周面3684Bと円筒外周面3683BとはR面取り部3686Bを介して連続している。円筒外周面3683Bの外径D4は、例えば、1ミリメートル程度である。
第2形成工程では、図14に示すように、キャップ37Bの穴部38aの内周面380Bを、開口側に位置する第1テーパ内周面381、第1テーパ内周面381よりも圧入方向Pの後方側(底面39a側)に位置する第1段円筒内周面382B、第1段円筒内周面382Bよりも圧入方向Pの後方側(底面39a側)に位置する第2段円筒内周面383B、第1段円筒内周面382Bと第2段円筒内周面383Bとを繋ぐ第2テーパ内周面384を含むように形成する。
第1テーパ内周面381は、穴部38aの開口側に向かうにつれて徐々に拡径するように形成されている。第1段円筒内周面382Bは、結合軸状部36Bの円筒外周面3683Bの外径D4よりも小さな内径D5を有するように構成されている。第2段円筒内周面383Bは、第1段円筒内周面382Bの内径D5よりも小さな内径D6を有するように構成されている。第2テーパ内周面384は、第1段円筒内周面382B側から第2段円筒内周面383B側(底面39a側)に向かって徐々に縮径するように形成されている。第1テーパ内周面381と第1段円筒内周面382Bとは第1R面取り部385を介して連続している。第2テーパ内周面384と第2段円筒内周面383Bとは第2R面取り部386を介して連続している。
第1段円筒内周面382Bは、圧入時に弁部材30Bの結合軸状部36Bの外周面368Bを塑性加工して縮径させる第1段階の変形のための部分である。第1段円筒内周面382Bの内径D5は、結合軸状部36Bの円筒外周面3683Bの外径D4に対して、円筒外周面3683Bに塑性域の変形が生じさせる変形代ΔD2を有する大きさに設定されている。第1段円筒内周面382Bの軸方向の長さは、塑性加工が可能な長さであればよい。
第2段円筒内周面383Bは、第1段円筒内周面382Bに対して径方向内側に張り出して段差を形成しており、結合軸状部36Bの外周面368Bと結合するための部分である。第2段円筒内周面383Bの内径D6は、第1段円筒内周面382Bの内径D5に対して、第1段円筒内周面382Bにより塑性変形して縮径した結合軸状部36Bの外周面368B(外径が内径D5と同じ寸法)を第1段円筒内周面382Bによる結合軸状部36Bの外周面368Bの変形量よりも小さな変形量を生じさせる締め代ΔI2(圧入代)を有する大きさに設定されている。すなわち、第1段円筒内周面382Bと第2段円筒内周面383Bとの内径差(D5-D6)が結合体の締め代ΔI2となる。締め代ΔI2は、具体的には、弾性域又は所定以下の塑性域内の変形(以下、弾塑性変形ということがある)を生じさせる大きさに設定されている。本実施の形態において、所定以下の塑性域とは、圧入径(第1段円筒内周面382Bの内径D5)の10%以下、好ましくは5%以下の変形量となる塑性域をいう。第2段円筒内周面383Bの軸方向の長さは、必要な結合強度が得られる長さに設定されている。
圧入工程では、結合軸状部36Bがキャップ37Bの穴部38aの第1段円筒内周面382Bまで圧入されると、第1段円筒内周面382Bが結合軸状部36Bのテーパ外周面3684B及び円筒外周面3683Bを塑性加工する。これにより、結合軸状部36Bの円筒外周面3683Bがキャップ37Bの第1段円筒内周面382Bの内径D5と同じ寸法となるように縮径して塑性加工面3688が成形される。すなわち、塑性加工面3688は、円筒外周面3683Bに塑性域の変形が生じて形成されたものであり、塑性変形に伴う加工硬化により結合強度に対して有利に働く。
また、結合軸状部36Bの円筒外周面3683Bが塑性加工されるとき、円筒外周面3683Bに形成されているツールマークの凹凸部の尖った先端部(図5の左図参照)がキャップ37Bの内周面380Bの第1R面取り部385によって刈り取られることなく均され、塑性加工面3688の凹凸部の先端部(図7の右図参照)が変形して平坦面となる。したがって、塑性加工面3688の凹凸部の先端部に新生面が生じることを抑制することができる。
圧入工程では、図15に示すように、結合軸状部36Bの全体がキャップ37Bの穴部38aに圧入される。このとき、塑性域の変形が生じた結合軸状部36Bの塑性加工面3688をキャップ37Bの第2段円筒内周面383Bが弾性域又は所定以下の塑性域内(弾塑性域)で変形させる。これによって、塑性加工面3688が弾塑性域で変形することで生じた結合外周面3689と第2段円筒内周面383Bとが結合することで、キャップ37Bと弁部材30Bの結合体の結合強度が確保される。
すなわち、本実施の形態の結合体においては、硬度が相対的に高いキャップ37Bの穴部38aの内周面380Bが、第1段円筒内周面382Bと、第1段円筒内周面382Bよりも径方向内側に張り出して第1段円筒内周面382Bに対して段差を形成する第2段円筒内周面383Bとを有しており、第2段円筒内周面383Bと第1段円筒内周面382Bとの段差(内径差D5-D6)が結合軸状部36Bの外周面368Bに対する締め代(圧入代)となるように構成されている。第1段円筒内周面382Bの内径D5は、結合軸状部36Bの円筒外周面3683Bの外径D4に対して、円筒外周面3683Bが塑性域で変形するような範囲に設定されており、上記締め代(第2段円筒内周面383Bと第1段円筒内周面382Bとの内径差)は、キャップ37Bの第1段円筒内周面382Bの内径D5と同じ寸法に変形した結合軸状部36Bの塑性加工面3688が弾性域または所定以下の塑性域内で変形するような範囲に設定されている。これにより、硬度が相対的に低い結合軸状部36Bの外周面368Bは、塑性変形した状態で第1段円筒内周面382Bに対して結合する塑性加工面3688を有すると共に、弾性域または所定以下の塑性域内で変形した状態でキャップ37Bの第2段円筒内周面383Bに対して結合する結合外周面3689を有している。
上述したように、圧入工程は、キャップ37Bの第1段円筒内周面382Bによって結合軸状部36Bの外周面368Bを塑性域で変形させる第1段階と、塑性域の変形が生じた結合軸状部36Bの外周面368B(塑性加工面3688)をキャップ37Bの第2段円筒内周面383Bによって第1段階の変形量よりも小さな変形量(具体的には、弾性域又は所定以下の塑性域内)で変形させる第2段階とを有している。
本実施の形態においても、結合体の両部品30B、37Bの締め代(圧入代)は、図7に示す比較例の弁部材90とキャップ97の結合体の締め代のような両部品間の径差によって決定されるものではなく、図14に示すように、キャップ37Bの第1段円筒内周面382Bと第2段円筒内周面383Bとの段差(内径差)によって決定されるものである。すなわち、結合体の締め代は、キャップ37Bの寸法差によって規定される。したがって、両部品30B、37Bの締め代は、キャップ37Bの寸法公差の範囲内でのばらつきしか生じない。したがって、両部品30B、37Bの加工精度を高めることなく、結合強度のばらつきを低減することができる。
上述した第2の実施の形態に係る結合体の製造方法は、弁部材30B(第1部品)に結合軸状部36B(ロッド状部)を形成する第1形成工程と、キャップ37B(第2部品)に穴部38aを形成する第2形成工程と、弁部材30B(第1部品)の結合軸状部36B(ロッド状部)をキャップ37B(第2部品)の穴部38aに圧入する圧入工程とを備える。弁部材30B(第1部品)の結合軸状部36B(ロッド状部)の外周面368B及びキャップ37B(第2部品)の穴部38aの内周面380Bのうちの硬度が相対的に高いキャップ37B(高硬度部品)の内周面380B(周面)には、硬度が相対的に低い弁部材30B(低硬度部品)の結合軸状部36Bの外周面368B(周面)に対して径差を有する第1段円筒内周面382B(第1段円筒面)と、第1段円筒内周面382B(第1段円筒面)よりも圧入方向Pの後方側に位置し、第1段円筒内周面382B(第1段円筒面)に対して径方向に張り出して段差を形成する第2段円筒内周面383B(第2段円筒面)とが形成される。圧入工程は、キャップ37B(高硬度部品)の第1段円筒内周面382B(第1段円筒面)によって弁部材30B(低硬度部品)の結合軸状部36Bの外周面368B(周面)を塑性域で変形させる第1段階と、弁部材30B(低硬度部品)の塑性域の変形が生じた塑性加工面3688(周面)をキャップ37B(高硬度部品)の第2段円筒内周面383B(第2段円筒面)によって第1段階の変形量よりも小さな変形量で変形させる第2段階とを備える。
この方法によれば、弁部材30B(低硬度部品)の外周面368B(周面)をキャップ37B(高硬度部品)の第1段円筒内周面382B(第1段円筒面)によって塑性変形させて第1段円筒内周面382B(第1段円筒面)の径と同じ寸法に成形した第1段階の後にキャップ37B(高硬度部品)の第2段円筒内周面383B(第2段円筒面)によって更に第1段階の変形量よりも小さな変形量で変形させる第2段階を経ることで両部品30B、37Bを結合させるので、第2段階の変形による結合を得るための締め代(圧入代)が、弁部材30B(低硬度部品)とキャップ37B(高硬度部品)の両部品間の径差ではなく、キャップ37B(高硬度部品)の第2段円筒内周面383B(第2段円筒面)と第1段円筒内周面382B(第1段円筒面)との段差(径差)によって決定される。このため、当該締め代(圧入代)は、キャップ37B(高硬度部品)の加工精度(寸法公差)の範囲内でばらつくが、両部品30B、37Bの加工精度(寸法公差)の相互の影響を受けずに済む。したがって、両部品30B、37Bの加工精度を高めることなく、結合強度のばらつきを低減することができる。
また、本実施の形態に係る結合体の製造方法においては、第2形成工程において、キャップ37B(第2部品)の穴部38aの内周面380Bに、第1段円筒内周面382Bよりも開口側に位置し開口側に向かって拡径する第1テーパ内周面381(テーパ内周面)を更に形成し、第1テーパ内周面381(テーパ内周面)と第1段円筒内周面382Bとを第1R面取り部385(R面取り部)を介して連続させる。また、圧入工程において、キャップ37B(第2部品)の内周面380Bの第1R面取り部385(R面取り部)によって弁部材30B(第1部品)の結合軸状部36B(ロッド状部)の外周面368Bを押圧する。
この方法によれば、弁部材30B(第1部品)の結合軸状部36B(ロッド状部)の外周面368Bに形成されているツールマークの凹凸の尖った先端部をキャップ37B(第2部品)の第1R面取り部385(R面取り部)によって平坦に変形させることができる。したがって、キャップ37B(第2部品)の第1段円筒内周面382Bと結合軸状部36B(ロッド状部)の外周面368Bとの圧入時に発生する虞があるかじりを抑制することができ、かじりによる結合強度の低下を抑制することができる。
また、上述したように、本実施の形態に係る結合体は、結合軸状部36B(ロッド状部)を有する弁部材30B(第1部品)と穴部38aを有するキャップ37B(第2部品)とが結合軸状部36B(ロッド状部)と穴部38aとの圧入により結合したものである。弁部材30B(第1部品)の結合軸状部36B(ロッド状部)の外周面368B及びキャップ37B(第2部品)の穴部38aの内周面380Bのうち、硬度が相対的に高いキャップ37B(高硬度部品)の内周面380B(周面)は、第1段円筒内周面382B(第1段円筒面)と、第1段円筒内周面382B(第1段円筒面)よりも圧入方向Pの後方側に位置し、第1段円筒内周面382B(第1段円筒面)よりも径方向に張り出して第1段円筒内周面382B(第1段円筒面)に対して段差を形成する第2段円筒内周面383B(第2段円筒面)とを有している。弁部材30B(第1部品)の結合軸状部36B(ロッド状部)の外周面368B及びキャップ37B(第2部品)の穴部38aの内周面380Bのうち、硬度が相対的に低い弁部材30B(低硬度部品)の結合軸状部36Bの外周面368B(周面)は、その一部分が塑性変形した状態で第1段円筒内周面382B(第1段円筒面)に対して結合すると共に、他の一部分が弾性域又は所定以下の塑性域内(弾塑性域)で変形した状態で第2段円筒内周面383B(第2段円筒面)に対して結合している。
この構成によれば、キャップ37B(高硬度部品)の内周面380B(周面)に、段差を形成する第1段円筒内周面382B(第1段円筒面)と第2段円筒内周面383B(第2段円筒面)を設けることで、硬度が相対的に低い弁部材30B(低硬度部品)の結合軸状部36Bの外周面368B(周面)の一部分が塑性変形した状態で第1段円筒内周面382B(第1段円筒面)に対して結合すると共に、他の一部分が弾性域又は所定以下の塑性域内(弾塑性域)で変形した状態で第2段円筒内周面383B(第2段円筒面)に対して結合する。つまり、弾塑性域の変形による結合を得るための締め代(圧入代)が、弁部材30B(低硬度部品)とキャップ37B(高硬度部品)の両部品間の径差ではなく、キャップ37B(高硬度部品)の第2段円筒内周面383B(第2段円筒面)と第1段円筒内周面382B(第1段円筒面)との段差(径差)によって決定されている。このため、当該締め代(圧入代)は、キャップ37B(高硬度部品)の加工精度(寸法公差)の範囲内でばらつくが、両部品30B、37Bの加工精度(寸法公差)の相互の影響を受けずに済む。したがって、両部品30B、37Bの加工精度を高めることなく、結合強度のばらつきを低減することができる。
また、本実施の形態に係る結合体においては、キャップ37B(第2部品)の穴部38aは、第1段円筒内周面382Bよりも開口側に位置し開口側に向かって拡径する第1テーパ内周面381(テーパ内周面)を更に有し、穴部38aの第1テーパ内周面381(テーパ内周面)と第1段円筒内周面382Bとが第1R面取り部385(R面取り部)を介して連続している。
この構成によれば、圧入工程において、キャップ37B(第2部品)の内周面380Bの第1R面取り部385(R面取り部)によって結合軸状部36B(ロッド状部)の外周面368Bを押圧することができる。これにより、結合軸状部36B(ロッド状部)の外周面368Bに形成されているツールマークの凹凸の尖った先端部をキャップ37B(第2部品)の第1R面取り部385(R面取り部)によって平坦に変形させることができる。その結果、結合軸状部36B(ロッド状部)の外周面368Bとキャップ37B(第2部品)の第1段円筒内周面382Bとの圧入時に発生する虞があるかじりを抑制することができ、かじりによる結合強度の低下を抑制することができる。
[その他の実施の形態]
なお、上述した一実施の形態においては、弁部材30、30A、30Bとキャップ37、37Bの結合体を電磁的に駆動する電磁式の燃料噴射弁1の例を説明した。しかし、本発明は、圧電効果や磁歪現象によりを駆動する燃料噴射弁に対しても適用可能である。
また、本発明は上述した実施の形態に限られるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記した実施形態は本発明をわかり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。ある実施形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
また、本発明は、弁部材とキャップの結合体のうちの一方の構成部品を特徴部とすることも可能である。結合体の構成部品は、例えば、以下の構成を特徴とするものである。
第1部品(弁部材)のロッド状部(結合軸状部)と第2部品(キャップ)の穴部とを圧入することで結合される結合体を構成する2部品のうち、硬度が相対的に高い構成部品であって、前記ロッド状部の外周面及び前記穴部の内周面のうち硬度が相対的に高い構成部品の周面は、第1段円筒面と、前記第1段円筒面よりも圧入方向の後方側に位置し前記第1段円筒面よりも径方向に張り出して前記第1段円筒面に対して段差を形成する第2段円筒面とを有し、前記第1段円筒面の径は硬度が相対的に低い低硬度構成部品の周面との径差が前記低硬度構成部品の周面を塑性域で変形させるような大きさに設定され、前記第1段円筒面と前記第2段円筒面の段差は前記低硬度構成部品の塑性変形した周面を弾性域又は所定以下の塑性域内で変形させるような大きさに設定されている。