JP7321799B2 - 多層複合化濾材及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、多層を積層した多層複合化濾材に関する。
エンジンのエアーやオイル、燃料用のフィルターとして種々の濾材が用いられている。この種の濾材には、ダストの捕捉量の向上と、ライフサイクルの延長が求められている。とくに、近年のエンジンにおいては、小型軽量化が求められており、これに応じて濾材の面積も小さくなる傾向にあり、このため限られた面積で濾過性能を発揮できる高性能化が求められている。
既存の技術として、上流側に配置される粗層となる不織布と、下流側に配置される密層となる濾紙を接合した多層構造の濾材(特許文献1参照)や、濾紙表面へナノファイバー層を形成してなる濾材(特許文献2参照)といった濾材の多層化による手法が提案されている。これらの濾材においては、前者は捕捉量が大きく向上し、後者は濾過効率が大きく向上する特徴を持っているが、両立には至っていない。
特開2011-45825号公報 特開2015-51434号公報
本発明は、上記問題点に鑑み、開発されたものであって、本発明の目的の一は、濾過性能と濾過寿命を高めた多層複合化濾材及びその製造方法を提供することにある。
課題を解決するための手段及び発明の効果
本発明の第1の側面にかかる多層複合化濾材は、主面を有する多層複合化濾材であって、第一平均細孔径を有する紙製の基材と、前記基材の上面に形成されたナノファイバーを含むナノコート層と、前記ナノコート層を形成した前記基材の上面側に配置された、前記第一平均細孔径よりも大きい第二平均細孔径を有する不織布からなる不織布層とを備え、前記ナノコート層を形成するナノファイバーの平均繊維径が、前記基材及び前記不織布層を形成する繊維の平均繊維径よりも小さく、前記不織布層と前記ナノコート層との間に空隙を形成するように、離間して設けられた複数の固定領域を介して前記不織布層を前記基材に固定しており、前記固定領域を除く濾過領域において、前記不織布層が前記ナノコート層から離間された状態で嵩高に維持されて、前記不織布層と前記ナノコート層との間に、前記不織布層を通過するが前記ナノコート層で捕捉されるダストを集合させるための前記空隙が形成されている。
上記構成により、目の粗い不織布層の上に、粒子径の大きなダストを捕捉し、不織布層を通過した粒子径の小さなダストをナノコート層で捕捉して空隙に捕集させることができ、濾材の目詰まりを抑制しながら長寿命化を図ることが可能となる。
本発明の第2の側面にかかる多層複合化濾材は、上記構成に加えて、前記不織布層の上面に、該不織布層で捕捉されるダストが集合された第一ケーク層を形成するための第一ケーク層形成領域を形成し、前記空隙に、前記ナノコート層で捕捉されるダストが集合された第二ケーク層を形成する第二ケーク層形成領域を形成している。
上記構成により、目の粗い不織布層の上に、主に大粒のダストを捕捉した第一ケーク層を形成し、これよりも小粒のダストを捕捉した第二ケーク層を空隙に形成することで、大きさの異なるダストを効率よく捕捉して濾過性能と濾過寿命を向上できる。
本発明の第3の側面にかかる多層複合化濾材は、上記いずれかの構成に加えて、前記複数の固定領域を、前記多層複合化濾材の主面上に、点状に離間して形成している。上記構成により、濾過性能の低減を防止しつつ、不織布層とナノコート層との間に空隙を広く形成することが可能となる。
本発明の第4の側面にかかる多層複合化濾材は、上記いずれかの構成に加えて、前記複数の固定領域の面積の総和を、前記多層複合化濾材の主面の面積に対して20%以下としている。
本発明の第5の側面にかかる多層複合化濾材は、上記いずれかの構成に加えて、前記固定領域を、超音波熱溶着、ホットメルト、熱圧着のいずれかにより形成している。
本発明の第6の側面にかかる多層複合化濾材は、上記いずれかの構成に加えて、前記基材が、湿式抄紙された紙製シートで構成されており、前記紙製シートは、これを形成する繊維の繊維径を100μm以下であって、平均繊維径を1μm~80μmとし、第一平均細孔径を0.5μm~200μmとしている。
本発明の第7の側面にかかる多層複合化濾材は、上記構成に加えて、前記基材が、前記紙製シートの全体または一部に樹脂を含浸させている。このように、紙製シートに樹脂を含浸させて樹脂加工することで、紙シートに強度を持たせることができる。
本発明の第8の側面にかかる多層複合化濾材は、上記構成に加えて、前記基材が、前記紙製シートの第一面側から樹脂を含浸させて、第二面に前記ナノコート層を設けている。上記構成により、紙製シートを樹脂で補強しながら、初期圧力損失の上昇を抑制できる利点が得られる。
本発明の第9の側面にかかる多層複合化濾材は、上記いずれかの構成に加えて、前記不織布層を構成する不織布が、これを形成する繊維の平均繊維径を0.5μm~100μmとし、第二平均細孔径を1μm~600μmとしている。
本発明の第10の側面にかかる多層複合化濾材は、上記いずれかの構成に加えて、前記不織布層をメルトブローにより形成している。
本発明の第11の側面にかかる多層複合化濾材は、上記いずれかの構成に加えて、前記ナノコート層が、前記ナノファイバーの繊維径を20nm~1000nmとしている。
本発明の第12の側面にかかる多層複合化濾材は、上記いずれかの構成に加えて、前記ナノコート層を、エレクトロスピニング法、又はエレクトロバブルスピニング法により形成している。
本発明の第13の側面にかかる多層複合化濾材は、上記いずれかの構成に加えて、前記基材を波形にコルゲート加工している。上記構成により、基材の表面積を広くしてダストの捕捉性能を高めることができると共に、基材を波形に形成することで空隙の容積を大きくしてダストの捕捉量を多くでき、濾過性能と濾過寿命を高めることができる。
本発明の第14の側面にかかる多層複合化濾材は、上記いずれかの構成に加えて、前記基材の表面をエンボス加工している。上記構成により、基材の表面積を広くしてダストの捕捉性能を高めることができると共に、基材の表面に凹凸を設けることで空隙の容積を大きくしてダストの捕捉量を多くでき、濾過性能と濾過寿命を高めることができる。
本発明の第15の側面にかかる多層複合化濾材は、エンジン用のエアーフィルタ、オイルフィルタ、燃料用フィルタ、空調設備用フィルタ、油圧機器用フィルタ、放電加工機器用フィルタ、コンプレッサー用フィルタ、プロセスフィルターのいずれかとしている。
本発明の第16の側面にかかる多層複合化濾材の製造方法は、第一平均細孔径を有する紙製の基材を準備する基材準備工程と、前記基材の上面にナノファイバーをコーティングしてナノコート層を形成するナノコート工程と、前記ナノコート層が形成された前記基材の上面側に、前記第一平均細孔径よりも大きい第二平均細孔径を有する不織布を配置して不織布層を形成する積層工程と、前記不織布層と前記ナノコート層との間に空隙を形成するように、複数の固定領域を離間して設けて、前記不織布層を前記基材に固定し、前記固定領域を除く濾過領域において、前記不織布層を前記ナノコート層から離間された状態で嵩高に維持して、前記不織布層と前記ナノコート層との間に、前記不織布層を通過するが前記ナノコート層で捕捉されるダストを集合させるための前記空隙を形成する接合工程とを含んでいる。
上記方法により、目の粗い不織布層の上に粒子径の大きなダストを捕集し、不織布層を通過した粒子径の小さなダストをナノコート層で捕捉して空隙に捕集することで、濾材の目詰まりを抑制しながら長寿命化を図ることが可能な多層複合化濾材を提供できる。
本発明の第17の側面にかかる多層複合化濾材の製造方法は、上記方法に加えて、前記基材準備工程が、前記基材を構成する紙製シートを湿式抄紙する抄紙工程と、前記抄紙工程で抄紙された前記紙製シートの第一面側から樹脂を含浸させる樹脂加工工程とを含んでおり、前記ナノコート工程において、前記紙製シートの第二面に前記ナノコート層を形成している。
本発明の第18の側面にかかる多層複合化濾材の製造方法は、上記いずれかの方法に加えて、前記接合工程において、前記複数の固定領域を、前記多層複合化濾材の主面上に点状に離間して設けて、前記複数の固定領域の面積の総和を、前記多層複合化濾材の主面の面積に対して20%以下としている。
本発明の一実施形態に係る多層複合化濾材の概略拡大断面図である。 図1に示す多層複合化濾材がダストを捕捉した状態を示す概略断面図である。 本発明の一実施形態に係る多層複合化濾材の平面図である。 本発明の他の実施形態に係る多層複合化濾材の平面図である。 本発明の他の実施形態に係る多層複合化濾材の概略拡大断面図である。 本発明の他の実施形態に係る多層複合化濾材の概略拡大断面図である。 図1に示す多層複合化濾材の製造工程を示す工程図である。 圧力差とダスト保持量の測定結果を示すグラフである。 圧力差とダスト捕集効率の測定結果を示すグラフである。 ダストサイズとダスト捕集効率の測定結果を示すグラフである。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明は以下のものに限定されない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
本発明に係る多層複合化濾材は、主として自動車のエンジン周りで空気やオイルを濾過し、あるいは、燃料を濾過してダストを除去する用途であって、例えばエンジン用のエアーフィルタ、オイルフィルタ、燃料用フィルタ等に使用される。さらに、本発明に係る多層複合化濾材は、用途を自動車用に限定せず、空調設備用フィルタ、油圧機器用フィルタ、放電加工機器用フィルタ、コンプレッサー用フィルタ、プロセスフィルター、エアコン用フィルタ、空気清浄機用フィルタ等に使用することもできる。
[実施形態1]
本発明の一実施形態に係る多層複合化濾材を、図1と図2の拡大断面図に示す。図1に示す多層複合化濾材100は、主面を有する濾材であって、紙製の基材1と、この基材1の上面に形成されたナノコート層2と、ナノコート層2が形成された基材1の上面に配置された不織布層3とを備えている。基材1は、第一平均細孔径を有している。ナノコート層2は、ナノファイバーを含んでいる。不織布層3は、第一平均細孔径よりも大きい第二平均細孔径を有する不織布としている。さらに、多層複合化濾材100は、不織布層3とナノコート層2との間に空隙4を形成するように、離間して設けられた複数の固定領域5を介して不織布層3を基材1に固定している。
なお、本明細書において、基材1及び不織布層3の平均細孔径の測定方法は、バブルポイント法(ASTM F316-86、JIS K 3832)により求められたものとする。また、以下において、多層複合化濾材の各層を形成する繊維の平均繊維径の測定方法は、走査電子顕微鏡(SEM)での観察により、4mm×3mmの平面からランダムに10点を選び、繊維幅を測定し、これを10回行い、計100点の平均値を平均繊維径とするものとする。
多層複合化濾材100は、全体の形状をシート状に形成しており、平面状に広がる主面に対して略垂直方向にエアーやオイル等の被濾過物を通過させて濾過する構造としている。この多層複合化濾材100は、図1の矢印で示す被濾過物の流れ方向において、不織布層3が上流側に配置されて、基材1が下流側に配置される状態で使用される。
(基材1)
基材1は紙製の濾紙であって、濾孔径である第一平均細孔径が、たとえば0.5μm~200μm、好ましくは1~100μmとなるように形成される。図1に示す基材1は、湿式抄紙された紙製シート1Aで構成されている。湿式抄紙された紙製シート1Aで構成される濾紙は、濾過性能と耐久性に優れた特性を実現できるので好ましい。基材1は、紙製シート1Aに樹脂を含浸させて補強することができる。
(紙製シート1A)
湿式抄紙される紙製シート1Aは、主体繊維として、有機繊維であるセルロース繊維や再生セルロース繊維、合成繊維等が使用される。セルロース繊維としては、パルプなどの天然繊維、レーヨンなどの化学繊維(再生繊維)のいずれでも良い。合成繊維には、合成樹脂からなる繊維であって、例えば、PET繊維等が使用できる。主体繊維には、これらの繊維を単独で、あるいは混合して使用することができる。また、紙製シート1Aの主体繊維には、強度付与のために、バインダー繊維を混合することもできる。バインダー繊維は、セルロース繊維よりも融点の低い(例えば80℃~160℃)合成繊維であり、例えば、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維、ポリビニルアルコール繊維等であり、これらを単独で、あるいは混合して用いることができる。あるいはまた、紙製シート1Aの主体繊維には、ガラス繊維などの無機繊維を混合してもよい。さらに、紙製シート1Aは、無機粉体を混合することもできる。このような無機粉体として、チタン酸カリウム、炭酸カルシウム、塩基性硫酸マグネシウム、炭素粉末等を使用することができる。
基材1の孔径である第一平均細孔径は、例えば、使用する主体繊維の繊維径、配合率又は目付け量を調整することによってコントロールすることができる。基材1の第一平均細孔径は、繊維径の大きい繊維(例えば、平均繊維径が30μm以上)を多く配合するほど、また、目付け量を小さくするほど大きくなる傾向にある。逆に、繊維径の小さい繊維(例えば、平均繊維径が5μm以下)を多く配合するほど、また、目付け量を高くするほど基材1の第一平均細孔径は小さくなる傾向にある。
基材1の目付け量は特に限定するものではないが、目付け量が少なすぎると基材1の強度の低下が生じ、濾材としての使用時において強度不足となる場合がある。また、目付け量が多すぎると、濾材全体の厚みが大きくなりすぎ、使用時における圧力損失が大きくなり易く濾過寿命が短くなる場合がある。したがって、基材1の目付け量は、これらのことも考慮して決定される。
以上のことから、紙製シート1Aは、濾孔径である第一平均細孔径を0.5μm~200μm、好ましくは1~100μmとするために、主体繊維の繊維径を100μm以下であって、その平均繊維径を1μm~80μm、好ましくは、5μm~50μmとし、単位面積当たりの質量である目付け量を10~500g/m、好ましくは80~250g/mとして抄紙される。
(樹脂加工)
シート状に抄紙された紙製シートは、強度を持たせるために、樹脂加工により樹脂を含浸させることができる。樹脂加工は、たとえば、回転するロールの外周面に対して紙製シート1Aを押圧しながら移動させて、ロールの表面に塗布された液状の樹脂材料を紙製シート1Aの表面に転写式に塗布する。この樹脂材料は、例えば、エマルジョンタイプのものが使用でき、紙製シート1Aに塗布されて、紙製シート1Aの全体または一部に含浸される。紙製シート1Aの全体または一部に含浸された樹脂は、乾燥されることにより、紙製シート1Aを内部から補強する。このような樹脂として、たとえば、フェノール、ビスフェノール、エポキシ、メラミン、アクリル、酢酸ビニル等が使用できる。
紙製シートは、例えば、片側面である第一面(図において下面)側から樹脂を含浸させることができる。このとき、紙製シートに含浸される樹脂は、シートの内部全体に含浸させることができるが、一部に含浸させることもできる。例えば、紙厚が大きい場合や樹脂の含浸量が少ない場合は、樹脂が含浸していない箇所ができて、紙製シートの一部、正確には第一面側にのみ含浸させることもできる。このように、紙製シートの片面のみを樹脂加工する場合、樹脂の浸潤度合いを調整することで、厚さ方向に樹脂付量の勾配をつけることもでき、これにより圧力損失を低減することもできる。紙製シート1Aの第一面(図において下面)から樹脂を含浸させた基材1は、反対側の第二面(図において上面)にナノコート層2を設けることができる。この基材1は、被濾過物の下流側となる紙製シート1Aの第一面側から樹脂を含浸させることで、シート1Aを補強しながら、紙製シート1Aで捕捉したダストが下流側に排出されるのを有効に防止できる。
以上の樹脂加工においては、繊維の目付量に対する樹脂付量が大きすぎると、紙製シートが緻密になり、圧力損失が増大し、またダスト保持量の低下を引き起こす可能性がある。これらのことを考慮して、紙製シートは、目付け量に対する樹脂付量を、好ましくは50%以下、より好ましくは30%以下とする。ただ、樹脂加工は、必ずしも必要ではなく、例えば、紙シート自体が十分な強度を有する場合には、樹脂含浸を省略することもできる。
(ナノコート層2)
ナノコート層2は、基材1の上面にナノファイバーをコーティングして形成される。ナノコート層2を形成するナノファイバーの平均繊維径は、基材1及び不織布層3を形成する繊維の平均繊維径よりも小さくする。これにより、不織布層3を通過した細かい粒子径のダストを効果的に捕捉できる。
ナノコート層2は、好ましくはエレクトロスピニング法を用いて設けられる。エレクトロスピニング法は、繊維となるポリマーの溶液に数千~数万ボルトというプラスの高電圧を与え、これをアース又はマイナスに帯電したターゲットに向かってスプレーする過程において、極細化する方法であり、ナノオーダーの繊維径を有するナノファイバーを製造する有効な方法として利用されている。この方法によると、繊維径を数10nmレベルとするナノファイバーが得られる。ナノファーバーの繊維系は、例えば、エレクトロスピニング法における印加電圧、ターゲットドラムの回転数、ノズルとターゲット間の距離によって、適宜調整される。ナノコート層は、基材の一方の表面であって、紙製シート1Aの第二面に設けられる。
ナノコート層には前述のナノファイバーを用いるが、ナノコート層を構成するナノファイバーの平均繊維径は20nm~1000nmとする。ナノファイバーの平均繊維径が1000nmより大きいとナノコート層の表面積が足りず十分な捕集効率が得られない。ナノファイバーの平均繊維径の下限は、ナノコート層の強度を考慮すると20nm以上であることが好ましい。これらのことを考慮して、ナノファイバーの平均繊維径は、20nm~1000nm、好ましくは、25nm~500nm、より好ましくは、50nm~300nmとする。
ナノファイバーとなるポリマーは、水又は有機溶媒などの溶媒に溶解できるものであれば、特に限定されるものではない。例えば、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエチレンオキシド、ポリ乳酸、ポリメタフェニレンイソフタルアミド、ポリエーテルスルホン、ポリメタクリル酸メチル、キトサン、キチン、セルロース、アラミド等が使用できる。
基材1上に設けるナノコート層2の目付け量は、0.02g/m~10g/m、好ましくは0.02g/m~0.2g/mである。ナノコート層2の目付け量が0.02g/mより少ないと、ナノコート層2におけるナノファイバーの絶対本数が不足して十分な捕集高効率を得ることができない。また、ナノコート層2の目付け量が10g/mよりも多いと圧力損失が大きくなるおそれがある。ナノコート層2の目付け量は、例えば紡糸時間によってコントロールする。紡糸時間を長くすると目付け量は大きくなり、時間を短くすると目付け量は小さくなる。ナノコート層2の目付け量は、例えば、基材1とナノコート層2との合計目付け量から基材1だけの目付け量を引いて求めることができる。
(不織布層3)
不織布層3は、不織布シートで構成されている。不織布シートで構成される不織布層3は、基材1の濾孔径である第一平均細孔径よりも大きい孔径である第二平均細孔径を有している。不織布層3の孔径である第二平均細孔径は、1μm~600μm、好ましくは、10μm~300μmとしている。この不織布層3は、基材1よりも上流側に配置されて、粒子サイズの大きなダストを効果的に捕捉する。
不織布層3は、上記の第二平均細孔径を実現するために、平均繊維径を0.5μm~100μm、好ましくは、0.8μm~40μmとしている。繊維径が小さすぎると通気抵抗が増加して、シートとしての剛性が不足し、反対に繊維径が大きすぎると、繊維表面積が小さくなり、ダストの捕集効率が著しく低下するからである。また、不織布層3の目付け量は、たとえば、5g/m~200g/m、好ましくは、10g/m~100g/mとする。目付け量が5g/mよりも小さいと、シートとしての剛性が不足し、また目付け量が100g/mよりも大きいと、通気抵抗が増加するからである。
このような不織布シートとして、たとえば、メルトブロー法により製造されたメルトブロー不織布が使用できる。メルトブロー不織布の材質には、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリメチルペンテン、ポリフェニレンサルファイド、ポリ乳酸等が使用できる。ただ、不織布シートは、メルトブローに限らず、ケミカルボンド、サーマルボンド、スパンレース、ニードルパンチ、ステッチボンド、スパンボンド等の一種類もしくは数種類を複合して製造することもできる。
(固定領域5)
不織布層3は、複数の固定領域5を介して、ナノコート層2を設けた基材1の上面に固定される。図に示す固定領域5は、平面視において円形状の接合部であって、互いに離間した状態で複数箇所に設けられている。固定領域5は、たとえば、超音波熱溶着により基材1に固定される。この方法は、ナノコート層2が形成された基材1の上面に不織布シートを積層した状態で、所定の間隔で押圧ロッドが押し当てられ、この状態で超音波振動が加えられて、不織布が熱溶融されて基材1に熱溶着される。このように、超音波熱溶着する方法は、不織布層3や基材1に含まれる樹脂繊維をバインダー繊維として熱溶融させて互いに接合するので、簡単かつ容易に、しかも低コストに固定できる特徴がある。
ただ、不織布シートは、ホットメルトを介して固定することもできる。この構造は、たとえば、ナノコートが形成された基材1の表面と不織布シートの間に、熱で溶融されるホットメルト接着剤を塗布した状態で挟着すると共に、接合部分を熱プレスすることで、複数の固定領域5を介して不織布シートを基材1の表面に熱溶着する。
以上のように、超音波熱溶着される固定領域5は、不織布シートや基材1に含まれる熱可塑性樹脂が溶融された状態で不織布シートを押しつぶして接合され、あるいは、熱プレスにより接合される固定領域5は、熱溶融されたホットメルトを不織布シートや基材1の内部まで浸透させるように押しつぶして接合される。したがって、これらの固定領域5は、図1の断面図に示すように不織布層3と基材1の一部が厚さ方向に潰れた状態で溶着されて、凹状に窪んだ形状に形成される。また、離間された固定領域5同士の間において、不織布層3は、押し潰されることなく嵩高に維持されて、ナノコート層2との間に空隙4が形成される。
図3に示す固定領域5は、多層複合化濾材100の主面上に無数の点状に離間して設けられて、複数箇所において不織布シートを基材1に固定する。このように、無数の点状に固定領域5が形成される多層複合化濾材100は、複数の固定領域5の面積の総和が、多層複合化濾材100の主面の面積に対して20%以下、好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下となるように設けられる。これにより、多層複合化濾材100の主面における濾過領域10を広く確保することができる。
点状に形成される固定領域5は、図3に示すように、平面視を円形状としている。このように固定領域5を円形状とする構造は、接合部の周縁部に均一に負荷を作用させることができるので、接合部の境界縁において、不織布層3や基材1が損傷するのを有効に防止できる。ただ、点状に配置される多数の固定領域5は、円形以外の形状、たとえば、多角形状や楕円形状、長円形状、あるいは短い線状とすることもできる。短い線状の固定領域は、たとえば、その全長を幅の5倍以下として、多層複合化濾材100の主面に多数を点在させて、不織布層3を基材1に固定できる。
複数の固定領域5は、図3に示すように、平面視において、碁盤格子状に配置することができる。この構造は、四角形を形成する4個の固定領域5によって区画される多数の濾過領域10が互いに直交する方向に連続する状態で配置される。これにより、多層複合化濾材100の主面に対して供給される被濾過物を複数の濾過領域10に対して均等に通過させて斑なく濾過できる。
さらに、複数の固定領域5は、図4に示すように、平面視において、斜眼紙状に配置することができる。この構造は、三角形を形成する3個の固定領域5によって区画される多数の濾過領域10が互いに傾斜する方向(図においては3方向)に連続する状態で配置される。この構造も、多層複合化濾材100の主面に対して供給される被濾過物を複数の濾過領域10に対して均等に通過させて斑なく濾過できる。とくに、図に示すように、近接する3個の固定領域5を正三角形状に配置する構造は、互いに隣接する固定領域5同士を全て等間隔に配置できるので、濾過領域10の内部に形成される空隙4の間隔の差を低減できる。すなわち、三角形状の濾過領域10の中央部と端部において、内部に形成される空隙4の間隔の差を少なくでき、これにより複数の濾過領域10に対して被濾過物を均等に通過させて斑なく濾過できる。
さらに、図示しないが、固定領域5は、全体または一部を線状とすることもできる。線状の固定領域5は、隣接する濾過領域において、境界部分を確実に接合できる特徴がある。ただ、固定領域5を線状にすると、隣接する濾過領域間において、各々の空隙が非連通状態となるので、隣接する空隙間において被濾過物の移動が抑制される。したがって、線状の固定領域5は、これらのことを考慮して、その長さや形状、接合箇所が特定される。
(空隙4)
不織布層3は、ナノコート層2との間に空隙が形成されるように、複数の固定領域5を介して基材1の上面に固定される。ナノコート層2と不織布層3との間に形成される空隙4は、不織布層3を通過した被濾過物が通過する通過隙間となる。以上のように、ナノコート層2と不織布層3との間に空隙を設ける構造は、不織布層3を通過した被濾過物を、この空隙を通過してナノコート層2に通過させるので、通過抵抗を小さくしながら通過できる特徴がある。
(第一ケーク層形成領域13、第二ケーク層形成領域14)
以上の多層複合化濾材100は、図2に示すように、不織布層3の上面に、不織布層3で捕捉されるダスト15が集合された第一ケーク層11が形成される。この多層複合化濾材100は、不織布層3の上面であって、濾過領域10の上面を、第二平均細孔径を有する不織布層3で捕捉される粒子径の大きなダスト15aが集合された第一ケーク層11を形成する第一ケーク層形成領域13としている。この第一ケーク層形成領域13では、粒子径の大きな大粒のダストの多くが捕捉されるが、粒子径の小さな小粒のダストも少量ながら捕捉される。また、多層複合化濾材100は、不織布層3とナノコート層2との間に形成される空隙4に、ナノファイバーで形成されるナノコート層2で捕捉されるダスト15が集合された第二ケーク層12が形成される。この多層複合化濾材100は、この空隙4を、ナノコート層2で捕捉される粒子径の小さなダスト15bからなる第二ケーク層12を形成する第二ケーク層形成領域14としている。
このように、多層複合化濾材100は、被濾過物を図の矢印で示す流れ方向に流動させる状態で、上流側に配置された不織布層3で、主に粒子径の大きなダスト15aを捕捉して第一ケーク層11を形成する。さらに、不織布層3で捕捉されない粒子径の小さな大きなダスト15bは、不織布層3を通過するが、ナノコート層2で捕捉されて、第二ケーク層12が形成される。以上のように、多層複合化濾材100は、平均細孔径の異なる多層構造とすることで、効果的に粒子径の異なるダストを捕捉して濾過効率を向上できると共に、粒子径にあったダストを理想的に捕捉することで濾過寿命を長くできる。
[実施形態2]
さらに、本発明の実施形態2に係る多層複合化濾材200を、図5の拡大断面図に示す。図5に示す多層複合化濾材200は、紙製の基材1Xを波形にコルゲート加工している。図に示す基材1Xは、波形にコルゲート加工された紙製シートの上面にナノコート層2を設けており、さらに、ナノコート層2が形成された基材1Xの上面に不織布層3を配置して、不織布層3とナノコート層2との間に空隙4を形成するように、複数の固定領域5を介して不織布層3を基材1Xに固定している。
図5に示すように、基材1Xは、断面視波形に加工することで、濾過領域10内における表面積を広くしており、これにより、ダストの捕捉性能を高めている。また、基材1Xは、波形に加工されることで、表面に複数列の溝部6が形成される。この多層複合化濾材200は、濾過領域10内において、基材1Xの表面に設けられた複数列の溝部6により、空隙4の容積を大きくすることができる。このため、第二ケーク層形成領域14を広くしてダストの捕捉量を多くでき濾過寿命を長くすることができる。
この多層複合化濾材200は、例えば、固定領域5を半径0.5mmの円形とすると共に、互いに隣接する固定領域5間の距離(D)を5mm~15mmとし、断面視波形にコルゲート加工された基材1Xの表面に形成される溝部6の間隔(d1)を2mm~10mmとし、溝部6の深さを0.1mm~1.0mmとすることができる。
[実施形態3]
さらに、本発明の実施形態3に係る多層複合化濾材300を、図6の拡大断面図に示す。図6に示す多層複合化濾材300は、紙製の基材1Yの表面をエンボス加工している。図に示す基材1Yは、表面がエンボス加工された紙製シートの上面にナノコート層2を設けており、さらに、ナノコート層2が形成された基材1Yの上面に不織布層3を配置して、不織布層3とナノコート層2との間に空隙4を形成するように、複数の固定領域5を介して不織布層3を基材1Yに固定している。
図6に示すように、基材1Yは、複数の凹部7を表面に設けることで、濾過領域10内における表面積を広くしており、これにより、ダストの捕捉性能を高めている。この多層複合化濾材300は、濾過領域10内において、基材1Yの表面に設けられた複数の凹部7により、空隙4の容積を大きくすることができる。このため、第二ケーク層形成領域14を広くしてダストの捕捉量を多くでき濾過寿命を長くすることができる。図6に示す基材1Yは、凹部7の形状を半球状としているが、凹部の形状はこれに限定されない。凹部は、例えば、平面視における形状を、楕円形状、長円形状、多角形状とすることができ、凹部の底に向かって次第に面積が小さくなる形状の他、開口部と底面の面積を等しくする形状とすることもできる。例えば、凹部は、逆円錐台形状や円柱形状とすることもできる。
この多層複合化濾材300は、例えば、固定領域5を半径0.5mmの円形とすると共に、互いに隣接する固定領域5間の距離(D)を5mm~15mmとし、エンボス加工により基材1Yの表面に形成される凹部7の単位面積あたりの個数を1個/cm~10個/cm、凹部7の間隔(d2)を2mm~10mm、凹部7の開口面積を3mm~50mm、凹部7の深さを0.1mm~1.0mmとすることができる。
(多層複合化濾材の製造方法)
以上の多層複合化濾材100は、図7に示す工程によって、以下のようにして製造される。
[基材準備工程]
この工程では、第一平均細孔径を有する紙製の基材1を準備する。紙製の基材1は、図7(A)で示すように、抄紙工程で抄紙される紙製シート1Aで構成される。抄紙工程で抄紙された紙製シート1Aは、図7(B)で示すように、樹脂加工工程において、全体または一部に樹脂が含浸される。この樹脂加工工程では、紙製シート1Aの片側面に、ロールを使用して液状の樹脂が転写される。液状の樹脂は、紙製シート1Aの第一面(図において下面)側から含浸する状態で塗布される。紙製シート1Aは、内部に含浸された樹脂が乾燥されて補強される。
[ナノコート工程]
図7(C)で示すように、紙製シート1Aの第二面にナノファイバーをコーティングしてナノコート層2を形成する。ナノコート層2は、好ましくは、エレクトロスピニング法により形成される。
[積層工程]
図7(D)で示すように、ナノコート層2が形成された基材1の上面に、第一平均細孔径よりも大きい第二平均細孔径を有する不織布を配置して不織布層3を形成する。不織布層3を形成する不織布には、メルトブローにより形成されたメルトブロー不織布を使用する。
[接合工程]
図7(E)で示すように、不織布層3の上面を押圧ロッド20で基材1に押圧しながら超音波振動させて固定領域5を形成し、不織布層3を基材1の上面に対して局部的に接合する。不織布層3は、図に示すように、不織布層3とナノコート層2との間に空隙4が形成されるように、離間して形成される複数の固定領域5を介して基材1に接合される。多層複合化濾材100は、図3又は図4に示すように、複数の固定領域5が主面上に点状に離間して設けられて不織布層3が基材1に固定される。
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。ただ、本発明は、下記の実施例に限定されるものではなく、前述の範囲内で適宜変更することも可能である。そして、それら適宜変更したものも本発明の技術的範囲に含まれる。
(実施例1)
以下の主体繊維を分散液に懸濁してなる抄紙用スラリーを湿式抄紙してシート状の紙製シート1Aを抄紙する。主体繊維を懸濁する分散液には、例えば水が使用できる。紙製シート1Aは、目付け量が100g/mであって、濾孔径である第一平均細孔径が20μm~90μmとなるように調整する。
天然繊維(天然セルロース繊維):平均繊維径20μm………90重量%
化学合成繊維(ポリエステル繊維):平均繊維径10μm……10重量%
湿式抄紙された紙製シート1Aの表面を樹脂加工する。紙製シート1Aは、第一面側から樹脂を含浸させる。樹脂は、たとえば、ロールの表面に塗布された液状のフェノール樹脂を紙製シート1Aの表面に転写して含浸させる。紙製シート1Aの表面に含浸された液状の樹脂を乾燥させる。
樹脂加工された紙製シート1Aの第二面にナノファイバーをコーティングしてナノコート層を設ける。ナノコート層2は、たとえば、エレクトロスピニング法により、ポリフッ化ビニリデン溶液をナノオーダーのナノファイバーとして基材1の上面にコーティングする。ナノファイバーは、平均繊維径を50nm~300nmとし、目付け量が0.02g/m~0.2g/mとなるように調整する。
ナノコート層2が形成された基材1の上面に不織布シートを配置して不織布層3を設ける。不織布シートには、メルトブロー法により製造されたメルトブロー不織布を使用する。メルトブロー不織布は、平均繊維径を0.8μm~40μmとするポリプロピレン繊維を使用して、目付け量が10g/m~100g/m、孔径である第二平均細孔径が30μm~200μmとなるように調整する。
基材1の上面に配置された不織布層3の上面に、所定の間隔で複数箇所に押圧ロッドを押し当てて超音波熱溶着により複数の固定領域5を設けて、不織布層3を基材1に接合させる。押圧ロッド20は先端面の形状を半径0.5mmの円形状としており、図3に示すように、複数の固定領域5を格子状とする配列で形成する。複数の固定領域5は、隣接する固定領域同士の間隔が3mmとなるように配置されて、複数の固定領域5の面積の総和が、多層複合化濾材100の主面の面積に対して約5%とする。
(比較例1)
実施例1と同様にして湿式抄紙された紙製シートの両面に実施例1と同様にして樹脂を含浸させて濾紙を製造し、この濾紙を比較例1の濾材とする。
(比較例2)
実施例1と同様にして湿式抄紙された紙製シートの第一面側から樹脂を含浸させると共に、第二面にナノファイバーをコーティングしてナノコート層を設けた濾材を比較例2の濾材とする。
(比較例3)
比較例1で製造された濾紙の表面に、実施例1と同様にして製造されたメルトブロー不織布を積層して接合する。メルトブロー不織布は、実施例1と同様に、超音波熱溶着により形成される複数の固定領域を介して濾紙に接合される。このようにして製造された濾材を比較例3の濾材とする。
上記実施例1および比較例1~3にて作成した濾材について、特性に関する各種測定を行った。その結果を図8~図10のグラフに示す。
なお、以下の測定において、試験機として、PALAS社製、フィルターテスターMFP3000Sを使用し、使用ダストには、ISO、ACダストFINEを使用した。
実施例1および比較例1~3にて作成した濾材について、単板濾過面積を100cmとする濾材の試験片をホルダーにセットし、流速15cm/secで鉛直方向に空気を通過させ、濾材上流側および下流側の圧力差ΔPに対するダスト保持量(DHC)[g/m](図8参照)及びダスト捕集効率[%](図9参照)を測定した。また、使用するダストの平均細孔径に対するダスト捕集効率[%](図10参照)を測定した。
図8~図10から明らかなように、実施例1における多層複合化濾材は、比較例1~3の濾材に比較して優れたダスト保持量(DHC)とダスト捕集効率を実現できることが明らかとなった。
本発明の多層複合化濾材は、濾過性能と濾過寿命を向上できる濾材として、自動車等のエンジン用のエアーフィルタ、オイルフィルタ、燃料用フィルタに好適に使用され、あるいは、空調設備用フィルタ、油圧機器用フィルタ、放電加工機器用フィルタ、コンプレッサー用フィルタ、プロセスフィルター等として好適に使用される。
100、200、300…多層複合化濾材
1、1X、1Y…基材
1A…紙製シート
2…ナノコート層
3…不織布層
4…空隙
5…固定領域
6…溝部
7…凹部
10…濾過領域
11…第一ケーク層
12…第二ケーク層
13…第一ケーク層形成領域
14…第二ケーク層形成領域
15…ダスト
15a…ダスト
15b…ダスト
20…押圧ロッド

Claims (18)

  1. 主面を有する多層複合化濾材であって、
    第一平均細孔径を有する紙製の基材と、
    前記基材の上面に形成されたナノファイバーを含むナノコート層と、
    前記ナノコート層を形成した前記基材の上面側に配置された、前記第一平均細孔径よりも大きい第二平均細孔径を有する不織布からなる不織布層と、
    を備え、
    前記ナノコート層を形成するナノファイバーの平均繊維径が、前記基材及び前記不織布層を形成する繊維の平均繊維径よりも小さく、
    前記不織布層と前記ナノコート層との間に空隙を形成するように、離間して設けられた複数の固定領域を介して前記不織布層が前記基材に固定されてなり、
    前記固定領域を除く濾過領域において、前記不織布層が前記ナノコート層から離間された状態で嵩高に維持されて、前記不織布層と前記ナノコート層との間に、前記不織布層を通過するが前記ナノコート層で捕捉されるダストを集合させるための前記空隙が形成されてなる多層複合化濾材。
  2. 請求項1に記載の多層複合化濾材であって、
    前記不織布層の上面に、該不織布層で捕捉されるダストが集合された第一ケーク層を形成するための第一ケーク層形成領域を形成し、
    前記空隙に、前記ナノコート層で捕捉されるダストが集合された第二ケーク層を形成する第二ケーク層形成領域を形成してなる多層複合化濾材。
  3. 請求項1又は2に記載の多層複合化濾材であって、
    前記複数の固定領域が、前記多層複合化濾材の主面上に、点状に離間して形成されてなる多層複合化濾材。
  4. 請求項1から3のいずれか一項に記載の多層複合化濾材であって、
    前記複数の固定領域の面積の総和が、前記多層複合化濾材の主面の面積に対して、20%以下である多層複合化濾材。
  5. 請求項1から4のいずれか一項に記載の多層複合化濾材であって、
    前記固定領域が、超音波熱溶着、ホットメルト、熱圧着のいずれかにより形成されてなる多層複合化濾材。
  6. 請求項1から5のいずれか一項に記載の多層複合化濾材であって、
    前記基材が、湿式抄紙された紙製シートで構成されており、
    前記紙製シートは、
    繊維径が100μm以下であって、平均繊維径が1μm~80μmで、
    第一平均細孔径が0.5μm~200μmである多層複合化濾材。
  7. 請求項6に記載の多層複合化濾材であって、
    前記基材が、前記紙製シートの全体または一部に樹脂を含浸させてなる多層複合化濾材。
  8. 請求項7に記載の多層複合化濾材であって、
    前記基材が、前記紙製シートの第一面側から樹脂を含浸させて、第二面に前記ナノコート層を設けてなる多層複合化濾材。
  9. 請求項1から8のいずれか一項に記載の多層複合化濾材であって、
    前記不織布層を構成する不織布は、
    平均繊維径が0.5μm~100μmで、
    第二平均細孔径が1μm~600μmである多層複合化濾材。
  10. 請求項1からのいずれか一項に記載の多層複合化濾材であって、
    前記不織布層が、メルトブローにより形成されてなる多層複合化濾材。
  11. 請求項1から10のいずれか一項に記載の多層複合化濾材であって、
    前記ナノコート層は、
    前記ナノファイバーの平均繊維径が20nm~1000nmである多層複合化濾材。
  12. 請求項1から11のいずれか一項に記載の多層複合化濾材であって、
    前記ナノコート層が、エレクトロスピニング法、又はエレクトロバブルスピニング法により形成されてなる多層複合化濾材。
  13. 請求項1から12のいずれか一項に記載の多層複合化濾材であって、
    前記基材が、波形にコルゲート加工されてなる多層複合化濾材。
  14. 請求項1から12のいずれか一項に記載の多層複合化濾材であって、
    前記基材の表面がエンボス加工されてなる多層複合化濾材。
  15. 請求項1から14のいずれか一項に記載の多層複合化濾材であって、
    エンジン用のエアーフィルタ、オイルフィルタ、燃料用フィルタ、空調設備用フィルタ、油圧機器用フィルタ、放電加工機器用フィルタ、コンプレッサー用フィルタ、プロセスフィルターのいずれかである多層複合化濾材。
  16. 第一平均細孔径を有する紙製の基材を準備する基材準備工程と、
    前記基材の上面にナノファイバーをコーティングしてナノコート層を形成するナノコート工程と、
    前記ナノコート層が形成された前記基材の上面側に、前記第一平均細孔径よりも大きい第二平均細孔径を有する不織布を配置して不織布層を形成する積層工程と、
    前記不織布層と前記ナノコート層との間に空隙を形成するように、複数の固定領域を離間して設けて、前記不織布層を前記基材に固定し、前記固定領域を除く濾過領域において、前記不織布層を前記ナノコート層から離間された状態で嵩高に維持して、前記不織布層と前記ナノコート層との間に、前記不織布層を通過するが前記ナノコート層で捕捉されるダストを集合させるための前記空隙を形成する接合工程と
    を含む多層複合化濾材の製造方法。
  17. 請求項16に記載の多層複合化濾材の製造方法であって、
    前記基材準備工程が、
    前記基材を構成する紙製シートを湿式抄紙する抄紙工程と、
    前記抄紙工程で抄紙された前記紙製シートの第一面側から樹脂を含浸させる樹脂加工工程とを含み、
    前記ナノコート工程において、
    前記紙製シートの第二面に前記ナノコート層を形成する多層複合化濾材の製造方法。
  18. 請求項16又は17に記載の多層複合化濾材の製造方法であって、
    前記接合工程において、
    前記複数の固定領域を、前記多層複合化濾材の主面上に点状に離間して設けて、
    前記複数の固定領域の面積の総和を、前記多層複合化濾材の主面の面積に対して、20%以下とする多層複合化濾材の製造方法。
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