JP7321770B2 - 毛状体を有する樹脂シート及びその成形品 - Google Patents

毛状体を有する樹脂シート及びその成形品 Download PDF

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Description

本発明は、毛状体を有する樹脂シート及びその成形品に関する。
従来から、自動車の内装材や付属部品の筐体、電子機器や家電の筐体、壁紙などの建材用、玩具やゲーム機の筐体、生活用品の部材用として、紙材、高分子素材のシートが用いられている。また、シート表面に良い触感性を付与する方法として、例えば、特許文献1には、表面に規則的に配列された毛状体を有する樹脂シートが提案されている。
国際公開第2018/016562号
本発明は、良い触感性を有し、かつ紫外線による黄変が抑制された樹脂シート及びその成形品を提供することを目的とする。
すなわち、本発明者は、様々な手段を検討した結果、一方の面に規則的に配列された毛状体を有する下地層と、下地層の毛状体とは反対側の面に基材層とを有する樹脂シートにおいて、下地層が熱可塑性ポリウレタン樹脂を含み、基材層がアクリロニトリル-エチレン・プロピレンゴム-スチレン(AES)樹脂を含む構成とすることにより、キセノンランプ式促進耐候性試験による色差ΔE*が10以下となることを見出し、本発明を完成するに至った。
上記課題を解決する本発明は、下記より構成される。
(1)一方の面に規則的に配列された毛状体を有する下地層と、下地層の毛状体とは反対側の面に基材層とを有する樹脂シートであって、下地層が熱可塑性ポリウレタン樹脂を含み、基材層がアクリロニトリル-エチレン・プロピレンゴム-スチレン(AES)樹脂を含み、キセノンランプ式促進耐候性試験による色差ΔE*が10以下である、樹脂シート。
(2)基材層が、ポリカーボネート系樹脂をさらに含む、(1)に記載の樹脂シート。
(3)熱可塑性ポリウレタン樹脂が、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)及びカーボネート系ポリオールを原料として含む樹脂である、(1)又は(2)に記載の樹脂シート。
(4)下地層と基材層との間にシーラント層を有する、(1)から(3)のいずれかに記載の樹脂シート。
(5)毛状体の平均高さが30μm以上500μm以下、毛状体の平均径が1μm以上50μm以下、毛状体の平均間隔が20μm以上200μm以下である、(1)から(4)のいずれかに記載の樹脂シート。
(6)(1)から(5)のいずれかに記載の樹脂シートの成形品。
(7)自動車内装部材、電子機器、電子機器外装材、化粧品容器又は容器部材の表面に成形された、(6)に記載の成形品。
(8)(1)から(5)のいずれかに記載の樹脂シートを真空圧空成形、インサート成形又はインモールド成形することを含む、(6)又は(7)に記載の成形品の製造方法。
本発明によれば、紫外線による黄変が抑制された樹脂シート及びその成形品を提供することができる。
本発明の第一実施形態に係る樹脂シートを示す概略縦側断面図である。 本発明の第一実施形態に係る樹脂シートの下地層の変形例を示す概略縦側断面図である。 本発明の第一実施形態に係る樹脂シートの下地層のさらなる変形例を示す概略縦側断面図である。 図1の樹脂シートの概略平面図である。 本発明の第二実施形態に係る樹脂シートの積層構造を示す概略縦側断面図である。
以下、樹脂シートの種々の実施形態を説明し、ついで樹脂シートの製造方法について説明するが、一実施形態について記載した特定の説明が他の実施形態についても当てはまる場合には、他の実施形態においてはその説明を省略している。
[第一実施形態]
本発明の第一実施形態に係る樹脂シートは、一方の面に規則的に配列された毛状体を有する下地層と、下地層の毛状体とは反対側の面に基材層とを有し、下地層が熱可塑性ポリウレタン樹脂を含み、基材層がアクリロニトリル-エチレン・プロピレンゴム-スチレン(AES)樹脂を含み、キセノンランプ式促進耐候性試験による色差ΔE*が10以下である、樹脂シートである。
図1に示すように、毛状体及び下地層と基材層とが直接積層されたものである。すなわち、第一実施形態に係る樹脂シートの層構成は、上から下に向かって、毛状体及び下地層/基材層という構成を有している。本実施形態における基材層は、下地層と十分な接着性を備えたものとするのが好ましい。
<下地層>
下地層(1a)は、毛状体の下地になる層であり、符号1のうち、表面の毛状体1b以外の部分をいう。下地層の厚みは、毛状体の根元から下地層の反対側の表面までの厚みをいう。下地層の平均厚みは15μm~1000μmであることが好ましく、150μm~800μmであることがより好ましい。15μm以上とすることで、毛状体の高さを十分に発現することができる。また、1000μm以下とすることで、毛状体を効率よく形成することができる。下地層と毛状体との間には構造的な境界がなく、連続相を形成していてもよい。構造的に境界がないとは、下地層と毛状体とが一体型に形成され、これらの間に構造的に明確な境界部がないことを意味している。また、連続相を形成しているとは、下地層と毛状体との間に継ぎ目がなく、不連続でない(連続相となっている)状態をいう。この点で、下地層に毛状体を植毛している構造とは異なっている。下地層及び毛状体は同組成であってもよく、下地層と毛状体との結合には共有結合が含まれてもよい。共有結合とは、電子対が2つの原子に共有されることによって形成される化学結合をいうが、モノマーが連なった鎖状分子である熱可塑性樹脂において、個々のポリマーは共有結合により結合しており、ポリマー分子間で働くファンデルワールス結合や水素結合よりも強く結合している。
また、下地層及び毛状体は、別個ではない同一固体の熱可塑性樹脂シートに由来してもよい。同一固体の熱可塑性樹脂シートに由来するとは、例えば、毛状体及び下地層が同一の樹脂シートに基づいて直接的又は間接的に得られることを意味する。
また、下地層及び毛状体は、同一固体の熱可塑性樹脂シートから形成されたものであってもよい。同一固体の熱可塑性樹脂シートから形成されるとは、毛状体及び下地層が一の樹脂シートを加工することにより直接的に形成されることを意味する。
下地層と毛状体との間には構造的な境界がなく、連続相を形成していることにより、外的刺激によって毛状体が下地層から分離することが抑制され、触感性が良いシートとなる。また、毛状体を植毛する場合よりも少ない工程で製造することができる。
下地層及び毛状体は、熱可塑性樹脂を主成分とする同一の樹脂組成物からなる。ここで、主成分とするとは、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、又は90質量%以上含有することを意味する。本発明の一実施形態における熱可塑性樹脂としては、熱可塑性ポリウレタン樹脂を用いることができる。他の実施形態において、スチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、熱可塑性エラストマー、フッ素系樹脂の少なくとも1種類以上の熱可塑性樹脂をさらに含むことができる。
熱可塑性ポリウレタン樹脂は、イソシアネートとポリオールとを原料とする樹脂であり、その組み合わせとして、イソシアネートがジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)系、H12MDI系、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)系、ポリオールがポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系のいずれの組み合わせを選択しても良く、また複数を組み合わせても良い。本発明の一実施形態においては、HDI系のイソシアネート及びカーボネート系のポリオールの組み合わせを好適に用いることができる。
スチレン系樹脂としては、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ジメチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、クロロスチレン等のスチレン系モノマーの単独又は共重合体、それらスチレン系モノマーと他のモノマーとの共重合体、例えばスチレン-アクリルニトリル共重合体(AS樹脂)、又は前記スチレン系モノマーと更に他のポリマー、例えばポリブタジエン、スチレン-ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、ポリクロロプレン等のジエン系ゴム質重合体の存在下にグラフト重合したグラフト重合体、例えばハイインパクトポリスチレン(HIPS樹脂)、スチレン-アクリルニトリルグラフト重合体(ABS樹脂)等のポリスチレンを用いることができる。また、スチレン系の熱可塑性エラストマーも用いることができる。
ポリオレフィン系樹脂は、α-オレフィンを単量体として含む重合体からなる樹脂を意味し、ポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂を含む。ポリエチレン樹脂としては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、直鎖状中密度ポリエチレン等を用いることができ、また単体のみならず、それらの構造を有する共重合物やグラフト物やブレンド物も用いることができる。後者の樹脂としては、例えばエチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、エチレン-メタクリル酸エステル共重合体、エチレン-酢酸ビニル-塩化ビニル共重合体やさらに酸無水物との3元共重合体等とブレンドしたもののようにポリエチレン鎖に極性基を有する樹脂を共重合およびブレンドしたものが挙げられる。
また、ポリプロピレン樹脂としては、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン等を用いることができる。ホモポリプロピレンを用いる場合、該ホモポリプロピレンの構造は、アイソタクチック、アタクチック、シンジオタクチックのいずれであってもよい。ランダムポリプロピレンを用いる場合、プロピレンと共重合させるα-オレフィンとしては、好ましくは炭素数2~20、より好ましくは炭素数4~12のもの、例えばエチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセンを用いることができる。ブロックポリプロピレンを用いる場合、ブロック共重合体(ブロックポリプロピレン)、ゴム成分を含むブロック共重合体あるいはグラフト共重合体等を用いることができる。これらオレフィン樹脂を単独で使用する以外に、他のオレフィン系樹脂を併用することもできる。
ポリ塩化ビニル樹脂としては、塩化ビニル単独重合体または塩化ビニルと他の共単量体との共重合体を用いることができる。ポリ塩化ビニルが共重合体である場合は、ランダム共重合体であってもよく、またグラフト共重合体であってもよい。グラフト共重合体の一例として、たとえばエチレン-酢酸ビニル共重合体や熱可塑性ウレタン重合体を幹ポリマーとし、これに塩化ビニルがグラフト重合されたものを挙げることができる。本実施形態のポリ塩化ビニルは、押出成形可能な軟質ポリ塩化ビニルを示し、高分子可塑剤などの添加物を含有している組成物である。高分子可塑剤としては、公知の高分子可塑剤を用いることができるが、たとえばエチレン-酢酸ビニル-一酸化炭素共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル-一酸化炭素共重合体、酢酸ビニル含有量の多いエチレン-酢酸ビニル共重合体などのエチレン共重合体高分子可塑剤を好ましい例として挙げることができる。
熱可塑性エラストマーとしては、軟質高分子物質と硬質高分子物質を組み合わせた構造を有するものが含まれる。具体的には、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、これらエラストマーは一般的に市販されているものの中から選択して用いることが出来る。
フッ素系樹脂としては、フッ化ビニリデンの単独重合体、及びフッ化ビニリデンを主成分とするフッ化ビニリデン共重合体を用いることができる。ポリフッ化ビニリデン(PVDF)樹脂は、α型、β型、γ型、αp型などの様々な結晶構造を示す結晶性樹脂であるが、フッ化ビニリデン共重合体としては、例えば、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン-クロロトリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン-トリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン三元共重合体、フッ化ビニリデン-クロロトリフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン三元共重合体、及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
熱可塑性樹脂の190℃から300℃におけるメルトマスフローレートは4g/10分以上であることが好ましい。4g/10分以上とすることで、毛状体の形状の転写性を向上することができる。なお、メルトマスフローレートは、JIS K 7210に従って、試験温度190℃から300℃の温度範囲で、荷重(2.16Kgから10.0Kg)の条件下で測定した値である。
熱可塑性樹脂は、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記の各熱可塑性樹脂と任意の割合でアロイしてあってもよい。さらに、他の添加物を含有してもよい。他の添加物としては、本発明の効果を阻害しない範囲で、撥水・撥油剤、顔料、染料などの着色剤、シリコンオイルやアルキルエステル系等の離型剤、ガラス繊維等の繊維状強化剤、充填剤として、タルク、クレイ、シリカなどの粒状微粒子やマイカなどの鱗片状の微粒子、スルホン酸とアルカリ金属などとの塩化合物等の低分子型帯電防止剤やポリエーテルエステルアミド等の高分子型帯電防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、熱安定剤のような添加剤などを添加することができる。また、樹脂シート製造工程で発生したスクラップ樹脂を混合して用いることもできる。
撥水・撥油剤としては、シリコン系撥水剤、カルナバワックス、フッ素系撥水撥油剤が挙げられる。シリコンとしては、オルガノポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等が挙げられ、なかでも、ジメチルポリシロキサンが好適に用いられる。市販品としては、例えばシリコンを樹脂にアロイした「クリンベルCB50―PP」、「クリンベルCB-30PE」、「クリンベルCB-1」、「クリンベルCB-50AB」(富士ケミカル社製)などが挙げられる。カルナバワックスは、市販品としては、「カルナバ1号」(日興リカ社製)などが挙げられ、フッ素系撥水撥油剤はパーフルオロアルキル基を有する界面活性剤が挙げられ、市販品としては、「サーフロンKT-PA」(AGCセイミケミカル社製)が挙げられる。撥水・撥油剤の添加量は0.5質量%から25質量%が好ましい。0.5質量%未満では、十分な撥水・撥油性効果が得られない虞があり、25質量%を超えると成形性が悪くなる虞がある。
帯電防止剤としては、ポリエーテルエステルアミド系高分子型帯電防止剤、アイオノマー系高分子型帯電防止剤などが挙げられる。ポリエーテルエステルアミド系高分子型帯電防止剤は、市販品としては、「ペレスタット230」、「ペレスタット6500」、「ぺレクトロンAS」、「ぺレクトロンHS」(三洋化成社製)などが挙げられる。アイオノマー系高分子型帯電防止剤は、市販品としては、「エンティラSD100」、「エンティラMK400」(三井・デュポンポリケミカル社製)などが挙げられる。帯電防止剤の添加量は5質量%から30質量%が好ましい。5質量%未満では十分な帯電防止性が得られない虞があり、30質量%を超えると生産コストが上がる。
抗菌剤としては、無機系、有機系のうち、どちらを添加してもよい。分散性を考慮すると無機系が好ましい。具体的には金属イオン(Ag、Zn、Cu)の無機系抗菌剤、貝殻焼成カルシウム系抗菌剤などが挙げられる。金属イオンの無機系抗菌剤の市販品としては、「バクテキラーBM102VT」(富士ケミカル社製)、「ノバロンVZF200」、「ノバロン(AG300)」(東亜合成社製)、「KM-10D-G」、「IM-10D-L」(シナネンゼオミック社製)などが挙げられる。貝殻焼成カルシウム系抗菌剤としては、「スカロー」(FID社製)などが挙げられる。抗菌剤の添加量は0.5質量%から5質量%が好ましい。0.5質量%未満では、十分な抗菌性が得られない虞があり、5質量%を超えると生産コストが上がる。
紫外線吸収剤として、無機系あるいは有機系の紫外線吸収剤を用いることができる。
無機系紫外線吸収剤としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セシウム、酸化鉄及びその他多くの種類のものが使用できる。その中でも特に酸化亜鉛は、透明性や紫外線不透過性の点で優れ好ましい。市販品としては、例えば、トリアジン系紫外線吸収剤「TINUVIN 1600」(BASF社製)などを用いることができる。
無機系紫外線吸収剤を使用する場合、その添加量は樹脂組成物の合計100質量部に対し1~5質量部が好ましい。添加量が1質量部未満では紫外線によるシートの劣化を抑制する効果が低くなる虞があり、5質量部を超えると生産コストが高くなる。
また、無機系紫外線吸収剤を予め、熱可塑性樹脂にアロイしたマスターバッチなども用いることもできる。例えば、ウレタン系熱可塑性エラストマーをベースとしたマスターバッチの市販品として、「耐候マスター UNS(ポリエステル系)」(エフ・アイ・シー社製)、「耐候マスター UNE(ポリエーテル系)」(エフ・アイ・シー社製)が挙げられ、生産効率を考慮すると、マスターバッチを用いた方が好ましい。マスターバッチの添加量は樹脂組成物100質量部に対して、1~5質量部であることが好ましい。
また、有機系紫外線吸収剤としては、例えば、トリアジン系、ベンゾトリアゾール系、オキザリックアシッド系、ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系及びその他多くの種類のものが使用できる。好ましくは、フィルムの製造時や使用時での揮散を最小限にするため、分子量が300以上の高分子量タイプの紫外線吸収剤が好適に使用される。
有機系紫外線吸収剤を使用する場合、その添加量は樹脂組成物の合計100質量部に対し4質量部以上が好ましい。含有量が4質量部未満では紫外線によるシートの劣化を抑制する効果が十分に得られない虞がある。一方で、8質量部を超えても、紫外線によるシートの劣化を抑制する効果が頭打ちになるだけでなく、コスト面からも好ましくない。
滑剤・離型剤として、脂肪族炭化水素系化合物、高級脂肪酸系化合物、高級脂肪族アルコール系化合物、脂肪酸アマイド系化合物などのアルキル系離型剤、シリコン系離型剤、フッ素系離型剤などを使用することができる。離型剤を使用する場合、その添加量は樹脂組成物との合計100質量部のうち、0.01~5質量部が好ましく、0.05~3質量部がより好ましく、0.1~2質量部がさらに好ましい。添加量が0.01質量部未満では離型効果が低くなる虞があり、5質量部を超えるとシート表面にブリードアウトする虞がある。
また、滑剤・離型剤を予め、熱可塑性樹脂にアロイしたマスターバッチなども用いることもできる。例えば、ウレタン系熱可塑性エラストマーをベースとしたマスターバッチの市販品として、「ワックスマスターV」(エフ・アイ・シー社製)が挙げられ、生産効率を考慮すると、マスターバッチを用いた方が好ましい。マスターバッチの添加量は樹脂組成物との合計100質量部のうち、1~8質量部であることが好ましく、2~7質量部がより好ましく、3~6質量部がさらに好ましい。
<毛状体>
毛状体(1b)とは、図1に示すように下地層(1a)の表面から毛状に伸びている部分をいう。毛状体は、下地層の表面に規則的に配列されている。ここで、規則的に配列されているとは、毛状体がランダムではない配列状態、即ち、一方向又は二方向に整然と(例えば一定の間隔で)配列されている状態を意味するものである。毛状体の根元の配列状態をもって毛状体の配列が規則的であるか否かを判断する。ある実施形態では、毛状体は所定の間隔で下地層上に位置し、毛状体の底面の位置が下地層の長手方向及び短手方向に整然と配列している。また、毛状体の配置形態は特に限定はされず、縦横に配置した碁盤目配置や千鳥配置などを選択することができる。毛状体が下地層の表面に規則的に配列されていることにより、均一でムラがなく、良触感性が発現しやすくなる。毛状体は、例えば指でなぞるなど荷重がかかることによって毛倒れが起こり、周囲の部分とは光沢、色調が異なって見えるフィンガーマークを形成し得る。また、毛状体により、スエード調の起毛シートのような触感となり得る。
毛状体の平均高さ(h)は、30μm~500μmであることが好ましく、30μm~250μmであることがより好ましく、30μm~200μmであることがさらに好ましい。平均高さを30μm以上とすることで良触感性が十分に確保でき、平均高さを500μm以下とすることでしっとり感、やわらか感、ふんわり感などの良触感性が得られる。
毛状体が下地層に対してほぼ直立している場合は、毛状体の根元から先端までの長さが毛状体の高さを表すことになる。一方、図2に示すように毛状体が下地層に対して傾斜している場合や、図3に示すように毛状体が巻回する部分を有する場合は、毛状体が下地層の表面から最も離間している箇所における、下地層の表面からの距離を毛状体の高さhとする。また、毛状体の先端から根元の中央部までを多点間計測により細分化した間隔の合計値を毛状体の長さLとする。
毛状体の平均高さ、および毛状体の平均長さは、電子顕微鏡及び画像処理ソフトを用いて、樹脂シートの任意の数箇所において毛状体の高さ、および毛状体の長さを測定し、その測定値の算術平均値を用いることができる。
毛状体の平均径(d)は1μm~50μmであることが好ましく、5μm~30μmであることが好ましい。毛状体の平均径を1μm以上とすることで良触感性を確保することができ、毛状体の平均径を50μm以下とすることでしっとり感、やわらか感、ふんわり感などの良触感性が得られる。毛状体の平均径は、電子顕微鏡及び画像処理ソフトを用いて、樹脂シートの数箇所から、毛状体の中間高さ(h/2)の径を測定し、その測定値の算術平均値を用いた値とする。
また、毛状体のアスペクト比は、(毛状体の平均高さ/毛状体の平均径)として表すことができる。毛状体のアスペクト比は、2~20であることが好ましく、2~10であることがより好ましく、2~5であることがさらに好ましい。アスペクト比を2以上とすることで、良触感性が確保でき、アスペクト比を20以下とすることで、しっとり感、やわらか感、ふんわり感などの良触感性が得られるだけでなく、毛状体の長さに対する高さの比が一定以下となる虞を低減することができる。
一方、アスペクト比は、毛状体の平均底面径を基準とすることもできる。毛状体の平均底面径は10μm~150μmであることが好ましい。毛状体の平均底面径は、樹脂シートの数箇所において、隣接する毛状体の間隔を測定し、その測定値の算術平均値を用いた値とする。毛状体の底面径を基準とした場合のアスペクト比は、1.0~10であることが好ましく、1.0~5であることがより好ましく、1.0~2.5であることがさらに好ましい。アスペクト比を1.0以上とすることで、良触感性が確保でき、アスペクト比を10以下にすることで、しっとり感、やわらか感、ふんわり感などの良触感性が得られるだけでなく、毛状体の長さに対する高さの比が一定以下となる虞を低減することができる。
毛状体の平均間隔(t)は、20μm~200μmであることが好ましく、40μm~150μmであることがより好ましい。毛状体の間隔とは、例えば図4に示されるように、毛状体の根元の中心と隣接する毛状体の根元の中心との距離を意味する。平均間隔を20μm以上とすることで、良触感性が確保され、200μm以下とすることで、しっとり感、やわらか感、ふんわり感などの良触感性が得られる。毛状体の平均間隔は、樹脂シートの数箇所において、隣接する毛状体の間隔を測定し、その測定値の算術平均値を用いた値とする。
毛状体の形状は特に限定されないが、下地層から離間する方向に毛状に伸び、先端に近づくにつれ、漸次細くなる形状や、その先端にふくらみが形成された構成となっていてもよい。つまり、下地層から離れるにつれ、断面積が漸次小さくなった後に一旦大きくなってから終端する形状であってもよい。また、毛状体の先端部の形状が、つぼみ状又はきのこ形状であってもよい。また、毛状体は、下地層から離れる方向に延び出る基端に位置する部分と、この基端に位置する部分から延び出て一定の曲率をもって、又は漸次曲率を変化させて曲がった部分、さらには螺旋状又は渦巻状に巻かれた部分とを有していてもよい。この場合、毛状体の先端部が内側に折りたたまれている形状であってもよい。このような形状であることにより良好な触感が発現する。また、つぼみ状又はきのこ形状の部分が中空であることにより、より良好な触感が発現する。つぼみ状又は、きのこ形状を毛状先端に形成する場合、毛状体の平均径に対するつぼみ状又は、きのこ形状の幅の平均径の比が1.1倍以上であることが好ましい。つぼみ状又は、きのこ形状の高さは7μm以上であることが好ましい。毛状体の平均径、つぼみ状又は、きのこ形状の幅の平均径、高さは電子走査型顕微鏡写真より測定し、算術平均値を用いた値とする。毛状体は、熱可塑性樹脂からなる。熱可塑性樹脂としては、上記下地層で用いることができる樹脂と同様の樹脂を用いることができる。
下地層および毛状体が少なくとも部分的に架橋構造を有するとは、下地層および毛状体に含有される熱可塑性樹脂が少なくとも部分的に三次元的な架橋構造(例えば三次元網状構造)を形成していることを意味する。ある実施形態において、毛状体の少なくとも一部が架橋体となっており、別の実施形態においては毛状体の表面全体が架橋体となっており、さらに別の実施形態においては毛状体の全体(下地層との境界から先端部)が架橋体となっている。架橋体を形成する方法としては、例えば、樹脂シートを成形した後、毛状体を有する面に電子線を照射する方法や、有機過酸化物を添加し、樹脂シートの成形時または成形後に、加熱及び加湿により形成する方法が挙げられる。有機過酸化物が添加された樹脂として、市販品では、三菱ケミカル社製「リンクロン」などが挙げられる。本実施形態においては、電子線の照射により架橋体(電子線架橋体)を形成することが好ましい。
<基材層>
第一実施形態に係る樹脂シートにおける基材層としては、下地層との接着性に優れる熱可塑性樹脂を使用することが好ましく、AES樹脂を主成分とする樹脂を用いることができる。
また、スチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ナイロン系樹脂、アクリル系樹脂、熱可塑性エラストマーなどの熱可塑性樹脂と任意の割合でアロイしたものも用いることができ、特にポリカーボネート系樹脂とアロイしたものを好適に用いることができる。その割合としては、99:1~20:80が好ましく、80:20~30:70がより好ましく、60:40~40:60が更に好ましい。また、積層する場合、共押出成形による積層や無延伸フィルム、二軸延伸フィルムを用いた押出ラミネート成形、ドライラミネート成形による積層がある。
ポリカーボネート系樹脂としては、脂肪族ジヒドロキシ化合物から誘導されたものや芳香族ジヒドロキシ化合物から誘導されたものが挙げられる。例えば、芳香族ジヒドロキシ化合物から誘導されたものを好適に用いることができ、特に二つの芳香族ジヒドロキシ化合物がある種の結合基を介して結合した芳香族ジヒドロキシ化合物(ビスフェノール)から誘導されたものが好ましい。これらはジヒドロキシ化合物とホスゲン又は炭酸エステルとの重縮合による公知の製法により製造されたものを使用でき、その製法に限定されるものではなく、市販の樹脂を使用することもできる。
ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレート、ポリメチレンテレフタレート、および共重合成分として、例えば、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリアルキレングリコールなどのジオール成分や、アジピン酸、セバチン酸、フタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸などのジカルボン酸成分などを共重合したポリエステル樹脂などを用いることができる。
ナイロン系樹脂としては、カプロラクタム、ラウロラクタム等のラクタム重合体、6-アミノカプロン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸等のアミノカルボン酸の重合体、ヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4-又は2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3-又は1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(p-アミノシクロヘキシルメタン)等の脂環式ジアミン、m-又はp-キシリレンジアミン等の芳香族ジアミン等のジアミン単位と、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸等のジカルボン酸単位との重縮合体、及びこれらの共重合体等を用いることができる。例えば、ナイロン6、ナイロン9、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン611、ナイロン612、ナイロン6T、ナイロン6I、ナイロンMXD6、ナイロン6/66、ナイロン6/610、ナイロン6/6T、ナイロン6I/6T等があり、なかでもナイロン6、ナイロンMXD6が好適である。
メタクリル酸エステル単量体に基づくビニル重合体であれば、アクリル系樹脂として用いることができ、その構造などは特に限定されない。メタクリル酸エステル単量体としては、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ペンチル及びメタクリル酸ヘキシルなどが挙げられる。また、メタクリル酸エステル単量体におけるプロピル基、ブチル基、ペンチル基及びヘキシル基などのアルキル基は、直鎖であってもよく、分岐していてもよい。メタクリル酸エステル樹脂は、メタクリル酸エステル単量体の単独重合体や、複数のメタクリル酸エステル単量体の共重合体であってもよく、メタクリル酸エステル以外の公知のビニル化合物であるエチレン、プロピレン、ブタジエン、スチレン、α-メチルスチレン、アクリロニトリル及びアクリル酸などに由来する単量体単位を有してもよい。
基材層には、必要に応じて、他の添加物を含有してあってもよい。他の添加物としては、本発明の効果を阻害しない範囲で、撥水剤、撥油剤、顔料、染料などの着色剤、シリコンオイルやアルキルエステル系等の滑材・離型剤、ガラス繊維等の繊維状強化剤、充填剤として、タルク、クレイ、シリカなどの粒状微粒子やマイカなどの鱗片状の微粒子、スルホン酸とアルカリ金属などとの塩化合物等の低分子型帯電防止剤やポリエーテルエステルアミド等の高分子型帯電防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、熱安定剤のような添加剤などを添加することができる。また、樹脂シート製造工程で発生したスクラップ樹脂を混合して用いることもできる。また、本実施形態において、本発明の効果を阻害しない範囲で、基材層が部分的に架橋構造を有していてもよい。
また、本実施形態において、本発明の効果を阻害しない範囲で、基材層が部分的に架橋構造を有していてもよい。
本実施形態において、基材層の平均厚みは、50μm~1500μmが好ましく、100μm~1000μmであることがより好ましく、150μm~500μmであることがさらに好ましい。50μm以上とすることで、製膜工程が容易になり、1500μm以下とすることで、生産コストを抑えることができる。
<樹脂シート>
本発明の一実施形態において、キセノンランプ式促進耐候性試験機を用いて、ブラックパネル温度63℃、放射照度60W/mで500時間照射した際の、試験前後の樹脂シートの色差ΔE*が10以下であることが好しく、5以下であることがより好ましく、3以下であることがさらに好ましい。樹脂シートの色差ΔE*が10以下であれば、紫外線光などが照射される場所に用いても変色が少ないことから、車内装材としての使用などに適している。
本発明の一実施形態において、樹脂シートの厚みとは、毛状体の平均高さと下地層の平均厚みを合わせたシート厚みをいう。シート厚みは、好ましくは50μm~1500μm、より好ましくは50μm~1050μm、さらに好ましくは120μm~500μmである。厚みを50μm以上とすることで良触感性が十分に確保でき、1500μm以下とすることで製造コストを抑えることができる。
本実施形態において、「触感性」とは、樹脂シートの表面の風合い、肌触りを意味する。樹脂シート表面を触った際に心地よさを感じるかを判断し、感じる場合、しっとり、やわらか、ふんわりなどの具体的な肌触り感が良いものを良触感とする。また、良触感性は、肌触り感などの官能試験以外に、樹脂シートの摩擦係数(MIU)、摩擦係数の変動(MMD)、粗さの変動(SMD)や、前述したアスペクト比により規定することができる。
本実施形態において、摩擦係数(MIU)はKES法に従い測定される。樹脂シートに心地よい触感を付与することとフィルムの生産性を両立させる観点から、毛状体を有する表面の摩擦係数は0.5以上1.2以下であることが好ましく、0.6以上1.0以下であることがより好ましく、0.7以上0.95以下であることがさらに好ましい。KES法に従い測定される摩擦係数を0.5以上とすることで、フィルムが心地よい触感を有し、また1.2以下とすることで、フィルムのすべり性が不足し、製造工程でフィルムをロール状に巻き取る際にエア抜けが悪くなることによって巻き形状不良が起こるのを抑制することができる。
なお、上記の摩擦係数は、樹脂シートの原料を選択したり、毛状体の高さを変更することで達成することができる。
本実施形態において、摩擦係数の変動(MMD)はKES法に従い測定される。フィルムに滑らかな触感を付与するため、シート毛状体を有する表面の摩擦係数の変動は0.010以上0.025以下であることが好ましく、0.012以上0.022以下であることがより好ましく、0.013以上0.021以下であることがさらに好ましい。KES法に従い測定される摩擦係数の変動を0.010以上とすることで、毛状体の独特の感触を感じることができる。また0.025以下とすることで、触ったときに指が引っかかり、滑らかさを感じなくなるのを抑制することができる。
なお、上記の摩擦係数の変動は、樹脂シートの原料を選択したり、毛状体の高さを変更することで達成することができる。
本実施形態において、粗さの変動(SMD)はKES法に従い測定される。フィルム表面の形状を間接的に確認でき、シート毛状体を有する表面の粗さの変動は0.2以上1.5以下であることが好ましく、0.22以上1.0以下であることがより好ましく、0.24以上0.7以下であることがさらに好ましい。KES法に従い測定される粗さの変動を0.2以上とすることで、平坦な表面形状に近くなり毛状体の独特の感触を感じることができ、また1.5以下とすることで、表面形状が粗くざらざらとした触感となるのを抑制することができる。
なお、上記の粗さの変動は、毛状体の高さや形状を変更することで達成することができる。
本発明の一実施形態において、毛状体を有する面におけるKES法に従い測定される摩擦係数と、KES法に従い測定される摩擦係数の変動との比(MIU/MMD)が40以上55未満であることが好ましく、41以上55未満であることがより好ましく、42以上55未満であることがさらに好ましい。毛状体を有する面におけるMIU/MMDが高いと、より滑らかな肌触りの柔らかい毛の触感性を感じられるが、55以上である場合は触ったときに指への引っ掛かりを感じることがある。毛状体を有する面におけるMIU/MMDが低いと、乾いた感触がしてしっとり感を感じられないことがある。
[第二実施形態]
本発明の第二実施形態に係る樹脂シートの例としては、図5に示すように、下地層(1)と基材層(3)との間に、シーラント樹脂層(2)が形成された樹脂シートである。すなわち、第二実施形態に係る樹脂シートの層構成は、上から下に向かって、毛状体及び下地層(1)、シーラント樹脂層(2)、基材層(3)である。ここで、毛状体は、第一実施形態において説明したものと同じであるので、説明を省略する。但し、毛状体の平均高さ及び下地層の平均厚みの合計で表される毛状体及び下地層の厚みは、150μm~1500μmが好ましく、150μm~1050μmであることがより好ましく、150μm~500μmであることがさらに好ましい。150μm以上とすることで良触感性を確保でき、1500μm以下とすることで生産コストを抑えることができる。
<シーラント樹脂層>
シーラント樹脂層は、下地層と基材層との接着性を発現させるためのものであり、樹脂成分としては、変性オレフィン系樹脂、水添スチレン系熱可塑性エラストマー等を用いることができる。
変性オレフィン系樹脂としては、エチレン、プロピレン、ブテン-1等の炭素数2~8程度のオレフィン、それらのオレフィンとエチレン、プロピレン、ブテン-1、3-メチルブテン-1、ペンテン-1、4-メチルペンテン-1、ヘキセン-1、オクテン-1、デセン-1等の炭素数2~20程度の他のオレフィンの共重合体や酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン等のビニル化合物との共重合体等のオレフィン系樹脂や、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体、エチレン-ブテン-1共重合体、プロピレン-ブテン-1共重合体等のオレフィン系ゴムを、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、テトラヒドロフタル酸等の不飽和カルボン酸、または、その酸ハライド、アミド、イミド、無水物、エステル等の誘導体、具体的には、塩化マレニル、マレイミド、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸グリシジル等でグラフト反応条件下に変性したものを用いることができる。
なかでも、不飽和ジカルボン酸またはその無水物、特にマレイン酸またはその無水物で変性した「エチレン-プロピレン-ジエン共重合体」又はエチレン-プロピレン又はブテン-1共重合体ゴムが好適である。
水添スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系モノマーとブタジエンやイソプレンの共重合体の水素添加物、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体の水素添加物(スチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロック共重合体)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体の水素添加物(スチレン-エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体)等を用いることができ、特にスチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロック共重合体が好ましい。
シーラント樹脂層の平均厚みは、好ましくは20μm~90μm、より好ましくは40μm~80μmである。20μm以上とすることで、下地層と基材層間で層間剥離が発生するのを抑制でき、90μm以下とすることで、生産コストを抑えることができる。
シーラント樹脂層には、必要に応じて、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記の各熱可塑性樹脂を任意の割合でアロイしてあってもよい。さらに、他の添加物を含有してあってもよい。他の添加物としては、本発明の効果を阻害しない範囲で、撥水剤、撥油剤、顔料、染料などの着色剤、シリコンオイルやアルキルエステル系等の滑材・離型剤、ガラス繊維等の繊維状強化剤、充填剤として、タルク、クレイ、シリカなどの粒状微粒子やマイカなどの鱗片状の微粒子、スルホン酸とアルカリ金属などとの塩化合物等の低分子型帯電防止剤やポリエーテルエステルアミド等の高分子型帯電防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、熱安定剤のような添加剤などを添加することができる。また、本実施形態において、本発明の効果を阻害しない範囲で、シーラント樹脂層が部分的に架橋構造を有していてもよい。
[樹脂シートの製造]
本発明に係る樹脂シートの製造方法は、限定されず、如何なる方法によってもよいが、典型的には、原料樹脂を溶融押出し、得られた押出し樹脂シートの少なくとも一方の面に規則的に配列された毛状体を付与する工程を含んでなる。
単層シート又は多層樹脂シートの作製に際しては、任意の樹脂シート成形方法を使用できる。例えば、単層の場合は1台の単軸押出機を、複層の場合は複数台の単軸押出機を用いて、各々の原料樹脂を溶融押出し、Tダイによって樹脂シートを得る方法が挙げられる。多層の場合は、フィードブロックやマルチマニホールドダイを使用することが出来る。尚、本発明の樹脂シートの各実施形態の層構成は、基本的に前述した通りであるが、他に、例えば、本発明の樹脂シートや成形容器の製造工程で発生したスクラップ原料を、物性等の劣化が見られない限り、基材層へ添加してもよいし、更なる層として積層してもよい。
毛状体を付与する方法は、特に制限はなく、当業者に知られている任意の方法を使用することができる。例えば、押出成形方式を用いて製造する方法、ロール・ツー・ロール方式を用いて製造する方法、フォトリソグラフィー方式を用いて製造する方法、熱プレス方式を用いて製造する方法、パターンロールとUV硬化樹脂とを用いて製造する方法、3Dプリンターを用いて製造する方法、毛状体を樹脂層に埋め込んだ後に重合反応により共有結合させる方法等である。
例えば、押出成形方式を用いる場合、Tダイ法により、樹脂シートを押し出し、この樹脂シートの表面に毛状体形状を付与するように、凹凸加工が成された転写ロールと、タッチロールでキャスティングすることにより、本発明に係る樹脂シートを製造することができる。
凹凸加工が成された転写ロールとして、レーザー彫刻法や電鋳法、エッチング法、ミル彫刻法などによりロールの表面に数μm~数百μmサイズの微細な凹凸が規則的に施されたものを用いることができる。ここで、規則的とは、凹凸がランダムではない配列状態、即ち、一方向又は二方向に整然と配列した状態を意味するものである。ある実施形態における凹凸の配置として、縦横に配置した碁盤目配置や千鳥配置などを選択することができる。凹凸部の形状としては、例えば、凹部の形状であれば、錐形(円錐、四角錐、三角錐、六角錐など)、半円形、矩形(四角柱)などが挙げられる。サイズとしては、凹部の開口径、凹部深さ、凹部形状の間隔が数μmから数百μmである。転写ロールの材質として、例えば金属、セラミック等を用いることができる。転写ロールの凹部の間隔を調節することで毛状体の間隔を調節することができ、転写ロールの凹部深さを調節することで毛状体高さを調節することができ、それにより触感を調節することもできる。
また、転写ロール表面に高アスペクト比の凹凸加工することが好ましい。例えば、転写ロール表面に凹部形状を加工する場合のアスペクト比(凹部深さ/凹部開口径)は1.0~9.0であることが好ましい。転写ロール表面に高アスペクト比の凹凸加工をするには、レーザー彫刻法または、電鋳法が、エッチング法やブラスト法、ミル彫刻法等に比べて、深さ方向に精密な加工をする場合に適するため、特に好適に用いられる。
転写ロールの材質としては、例えば金属、セラミック等を用いることができる。一方、タッチロールとしては、様々な材質のものを用いることができるが、例えばシリコン系ゴム、NBR系ゴム、EPT系ゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、フッ素ゴム製のロールを用いることができる。ある実施形態において、ゴム硬度(JIS K 6253)40~100のタッチロールを用いることができる。また、タッチロールの表面に、テフロン(登録商標)層が形成されていてもよい。
タッチロールとしては、様々な材質のものを用いることができるが、例えばシリコン系ゴム、NBR系ゴム、EPT系ゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、フッ素ゴム製のロールを用いることができる。ある実施形態において、ゴム硬度(JIS K 6253)40~100のタッチロールを用いることができる。また、タッチロールの表面に、テフロン(登録商標)層が形成されていてもよい。
上記の転写ロール及びタッチロールのロールセットを用いることで、本実施形態の樹脂シートを製造することができる。
ある実施形態において、転写ロールの温度を熱可塑性樹脂の結晶融解温度、ガラス転移点または融点の付近の温度(例えば、ランダムポリプロピレンを用いる場合は100~150℃)に調節し、転写ロールとタッチロールとのピンチ圧を30~120Kg/cmとしてキャスティングすることで、本実施形態の樹脂シートを製造することができる。キャスティングした樹脂シートは、ピンチロール等を用いて0.5~30m/分のライン速度で引き取られる。
また、上記実施形態を具体的に示しているが、これらに限定されるものではない。
[成形品]
本発明の成形品は、本発明の樹脂シートを用いた成形品である。本発明の樹脂シートは、一般的な成形への対応が可能であり、成形方法としては、インサート成形、インモールド成形の他にも、一般的な真空成形、圧空成形やこれらの応用として、樹脂シートを真空状態化で加熱軟化させ、大気圧下に開放することで既存の成形品表面へオーバーレイ(成形)する方法等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、成形前にシートを加熱軟化させる方法として非接触加熱である赤外線ヒーター等による輻射加熱等、公知のシート加熱方法を適応することができる。ある実施形態の真空圧空成形において、例えば樹脂シートは表面温度が60℃~220℃で、20秒~480秒間加熱してから既存の成形品表面へと成形され、表面の形状により1.05~2.50倍に延伸され得る。
[物品]
本発明にかかる毛状体を表面に付与した樹脂シートは、前記に示した良触感性が必要とされる用途に適用できる。例えば、本発明の樹脂シートは、自動車内装部材、電子機器、電子機器外装材、化粧品容器又は容器部材、文房具部材、照明器具部材、生活用品部材として適用できる。
自動車内装材としては、自動車社内で手の触れる部分として、ハンドル、ダッシュボード、レバー、スイッチなどが挙げられる。例えば、公知のインストルメントパネル、ピラー(例えば、特開2009-184421号公報)に、上記した樹脂シートを貼り合わせた内装材を挙げることができる。樹脂シートを貼り合わせることで、良触感性を付与した内装材とすることができる。貼り合せる樹脂シートの材質としては、耐候性、耐薬品性を考慮し、オレフィン系樹脂、塩ビ系樹脂、ウレタン系エラストマーが好ましい。樹脂シートと内装材とを貼り合せる方法は、特に限定されない。
電子機器外装材としては、キーレスエントリーシステムの送信機筐体、スマートフォン筐体、スマートフォンケース、ミュージックプレーヤーケース、ゲーム機筐体、デジタルカメラ筐体、電子手帳筐体、電卓筐体、タブレット筐体、モバイルパソコン筐体、キーボード、マウス、などが挙げられる。例えば、公知のキーレスエントリーシステムの携帯用送信機筐体(例えば、特開2005-228911号公報)に、本発明樹脂シートを貼り合せた携帯用送信機を挙げることができる。樹脂シートを貼り合せることで、良触感性を付与した携帯用送信機とすることができる。貼り合せる樹脂シートの材質としては、オレフィン系樹脂、ウレタン系エラストマーが好ましい。樹脂シートと筐体とを貼り合わせる方法は、特に限定されない。
化粧品容器部材としては、フェイスクリーム、パッククリーム、ファンデーション、アイシャドウの容器が挙げられ、例えば、公知のファンデーション用容器(特開2017-29608号公報)の蓋部材に、本発明樹脂シートを貼り合せた化粧品容器を挙げることができる。樹脂シートを貼り合せることで、良触感性を付与した化粧品容器とすることができる。貼り合せる樹脂シートの材質としては、オレフィン系樹脂、ウレタン系エラストマーが好ましい。樹脂シートと貼り合せる方法は、特に限定されない。
文房具部材としては、ブックカバー、手帳カバー、ペンケースカバーなどが挙げられ、例えば、公知のブックカバー(例えば、特開2007-246122号公報)を本発明シートを用いて作製し、良触感性、防水性を付与したブックカバーとすることができる。また、ブックカバー形態は特に限定されない。シートの材質としては、オレフィン系樹脂、ウレタン系エラストマーが好ましい。樹脂シートを用いて作製する方法は、特に限定されない。
照明機器部材としては、室内用、車内用の照明機器が挙げられ、例えば、公知のLED照明装置のカバー部材に、本発明樹脂シートを貼り合せた照明装置を挙げることができる。樹脂シートを貼り合せることで、良触感性、光の拡散性を付与したLED照明装置とすることができる。貼り合せる樹脂シートの材質としては、オレフィン系樹脂、フッ素系樹脂が好ましい。樹脂シートと貼り合せる方法は、特に限定されない。
生活用品部材としては、トイレ用品、室内用マット、テーブル用シートなどが挙げられ、例えば、トイレ装置の便座部材に、本発明樹脂シートを貼り合せたトイレ装置を挙げることができる。樹脂シートを貼り合せることで、良触感性を付与した便座のトイレ装置とすることができる。貼り合せる樹脂シートの材質としては、オレフィン系樹脂、塩ビ樹脂、フッ素系樹脂が好ましい。樹脂シートと貼り合せる方法は、特に限定されない。
さらには、毛状体の表面に、一般的な印刷方法(オフセット印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、箔押しなど)で、文字、絵柄を印刷した毛状体シートを作製し、上記の用途に適用することが出来る。印刷する樹脂シートの材質としては、特に限定されないが、印刷に使用するインキ剤との印刷性を考慮することが好ましい。
また、本発明樹脂シートは、文字、絵柄などが印刷された印刷物(紙、金属薄膜など)、不織布などとラミネート成形(ドライラミネート成形、押出ラミネート成形)した積層体を作製し、例えば、名刺の印刷面にラミネート成形し、触感性のある名刺を作製することができる。ラミネートする樹脂シートの材質は特に限定はされない。
以下、本発明を実施例及び比較例を挙げてより具体的に説明するが、本発明は実施例等の内容に何ら限定されるものではない。
実施例等で用いた各種原料は以下の通りである。
(1)毛状体及び下地層
・(A-1)TPU(ウレタン系エラストマー)「XN2001:HDI/ポリカーボネート系」(東ソー社製)
・(A-2)TPU(ウレタン系エラストマー)「HD1085A:HDI/ポリカーボネート系」(BASF社製)
・(A-3)TPU(ウレタン系エラストマー)「ET880:MDI/ポリエーテル系」(BASF社製)
・(B)離型剤 「ワックスマスターV」(エフ・シー・アイ社製)
(2)基材層
・(C-1)AES 「ユニブライト UB-311」(日本エイアンドエル社製)
・(C-2)PC/AES 「テクニエース W-101」(日本エイアンドエル社製)
・(C-3)ABS 「デンカABS GT-R-61A」(デンカ社製)
実施例および比較例で作製した樹脂シートとその樹脂シートを真空圧空成形した成形品についての各種特性の評価方法は以下の通りである。
(1)耐候性試験
毛状体及び下地層の熱可塑性樹脂原料について、熱プレス機により厚さ約0.3mmのシートを作製し、キセノンランプ式促進耐候性試験機(キセノンウェザーメーター、スガ試験機製)にて、ブラックパネル温度63±3℃、照射強度60W/m、500時間照射し、色差計Color meter ZE6000(日本電色工業製)を用いて、シートの試験前後の色差(透過法)ΔE*を測定した。
(2)毛状体の平均高さ、毛状体の平均長さ、毛状体の平均径、毛状体の平均間隔、下地層の平均厚み
樹脂シートの毛状体の高さ(h)、毛状体の径(d)、毛状体の間隔(t)、下地層の厚みを、レーザー顕微鏡(VK-X100、キーエンス社製)を用いて測定した。なお、測定した試料は、ミクロトームを用いて樹脂シートの任意の3箇所より断面切片を切り出し用いた。毛状体の平均高さは、それぞれの試料について毛状体10個の高さを測定し、その30測定値の算術平均値を用いた。毛状体の平均径については、それぞれの試料について10個の毛状体の中間高さ(h/2)における径を測定し、その30測定値の算術平均値を用いた。毛状体の平均間隔については、それぞれの試料について毛状体の根元の中心と隣接する毛状体の根元の中心との距離を10箇所測定し、その30測定値の算術平均値を用いた。下地層の平均厚みについては、それぞれの試料について毛状体の根元から他方の層界面までの厚みを10箇所測定し、その30測定値の算術平均値を用いた。
(3)良触感性官能評価
良触感性は、男性5人、女性5人の計10人に樹脂シートを触ってもらう官能評価を実施した。樹脂シート表面を触った際の感触を5段階で評価し、特に点数の高かった触感(滑らかさやしっとり感等)で分別した。
(4)賦形性評価
両面真空成形機(NGF-0709-S型、布施真空社製)で樹脂シートを真空雰囲気下で加熱し、その後、大気圧雰囲気下で準備したスマートフォンカバーの表面へ真空圧空成形することにより成形品を作製した。シートの表面温度80℃~220℃の範囲でシートを40秒間~300秒間で加熱し、最も延伸された箇所では1.5倍に延伸された。
賦形性の評価は、スマートフォンカバー側面におけるシート追従性を外観により行った。評価基準として、追従できている場合に○とし、追従できない場合(スマートフォンカバーとシートとの間に隙間がある場合)に×とした。
成形前と成形後の毛状体10個の高さを測定し、その30測定値の算術平均値を用い測定し、(成形後の毛状体の平均高さ)/(成形前の毛状体の平均高さ)を算出し、毛状体の平均高さ維持率とした。
(5)摩擦係数(MIU)
風合い試験機「KES-FB4-A表面試験機(カトーテック製)」を用いて、20cm×20cmの大きさの樹脂シートを、毛状体形状を付与した面を上にして、試験台に取り付け、荷重25gf、1mm/secの速度で測定子をサンプルの表面で移動させ、室温23℃、相対湿度50%の雰囲気の条件下にてシートの摩擦係数(MIU)を測定した。機械方向、幅方向ともに測定を3回(合計6回)行い、その全てのデータの平均値の少数第3位を四捨五入した値をそのシートの摩擦係数とした。なお接触子としては、標準摩擦子(指紋タイプ)を使用した。
(6)摩擦係数の変動(MMD)
風合い試験機「KES-FB4-A表面試験機(カトーテック製)」を用いて、20cm×20cmの大きさの樹脂シートを、毛状体形状を付与した面を上にして、試験台に取り付け、荷重25gf、1mm/secの速度で測定子をサンプルの表面で移動させ、室温23℃、相対湿度50%の雰囲気の条件下にてシートの摩擦係数の変動(MMD)を測定した。機械方向、幅方向ともに測定を3回(合計6回)行い、その全てのデータの平均値の少数第4位を四捨五入した値をそのシートの摩擦係数の変動とした。なお接触子としては、標準摩擦子(指紋タイプ)を使用した。
(7)表面粗さの変動(SMD)
風合い試験機「KES-FB4-A表面試験機(カトーテック製)」を用いて、20cm×20cmの大きさの樹脂シートを、毛状体形状を付与した面を上にして、試験台に取り付け、荷重10gf、1mm/secの速度で測定子をサンプルの表面で移動させ、室温23℃、相対湿度50%の雰囲気の条件下にてシートの表面粗さの変動(SMD)を測定した。機械方向、幅方向ともに測定を3回(合計6回)行い、その全てのデータの平均値の少数第4位を四捨五入した値をそのシートの表面粗さの変動とした。なお接触子としては、1本の直径0.5mmのピアノ線を使用した。
[実施例1~4、比較例1~5]
1台の40mm単軸押出機から、毛状体及び下地層となる(A)熱可塑性樹脂と(B)離型剤のドライブレンド品を流し、1台の65mm単軸押出機から、基材層となる(C)熱可塑性樹脂を流し、Tダイ法により押出された樹脂シートを、酸化クロム溶射かつレーザー彫刻法で凹凸加工がなされ、60℃~150℃に調節された凹凸加工が成された転写ロールと、10℃~90℃に調節されたゴム硬度70のシリコン系ゴム製のタッチロールとを用い、キャスティングすることで、ピンチロールを用いてライン速度1m/分~15m/分で引き取った。これにより表1に示す組成、厚み及び表面形状の樹脂シートを得た。
[比較例6]
1台の40mm単軸押出機から、毛状体及び下地層となる(A)熱可塑性樹脂と(B)離型剤のドライブレンド品を流し、Tダイ法により押出された樹脂シートを、酸化クロム溶射かつレーザー彫刻法で凹凸加工がなされ、60℃~150℃に調節された凹凸加工が成された転写ロールと、10℃~90℃に調節されたゴム硬度70のシリコン系ゴム製のタッチロールとを用い、キャスティングすることで、ピンチロールを用いてライン速度1m/分~15m/分で引き取った。
各実施例、比較例で得られた樹脂シートを用いて、各種特性について評価試験を実施し、結果を表1及び表2に示した。
Figure 0007321770000001
Figure 0007321770000002
表1及び表2に示した結果から以下のことが明らかになった。
実施例1~4の全ての樹脂シートは、耐候性試験において、試験前後の色差(透過法)ΔE*が10以下を示した。また、良触感性に関する評価物性であるKES法に従い測定される摩擦係数、摩擦係数の変動、粗さの変動を満足し、特定の触感性を有することが示された。
また、実施例1~4で得られた樹脂シートの形状について、電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM、日本電子株式会社JSM-7001F型)を用いて観察した。
走査電子顕微鏡像から、毛状体同士が絡合することなく一定方向に伸びていることが観察された。また、毛状体の形状は、下地層から離れるにつれ、断面積が漸次小さくなる形状のものや、断面積が漸次小さくなった後に一旦大きくなってから終端する形状のものがあった。また、下地層から離れるにつれ、断面積が漸次小さくなった後に一旦大きくなってから終端する形状の毛状体の先端部は、つぼみ状又はきのこ形状であり、つぼみ状又はきのこ形状の部分が一部中空となっていることが観察された。このような形状を有することにより、より良好な触感が発現していることが推察された。
以上、様々な実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれうることは、特許請求の範囲の記載から明らかである。
1 毛状体及び下地層
1a 下地層
1b 毛状体
d 毛状体径
h 毛状体の高さ
t 毛状体の間隔
2 シーラント樹脂層
3 基材層

Claims (6)

  1. 一方の面に規則的に配列された毛状体を有する下地層と、下地層の毛状体とは反対側の面に基材層とを有する樹脂シートであって、下地層がヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)及びカーボネート系ポリオールを原料として含む熱可塑性ポリウレタン樹脂を含み、基材層がアクリロニトリル-エチレン・プロピレンゴム-スチレン(AES)樹脂を含み、キセノンランプ式促進耐候性試験機を用いて、ブラックパネル温度63℃、放射照度60W/m で500時間照射した際の、試験前後の樹脂シートの色差ΔE*が10以下であり、毛状体の平均高さが30μm以上500μm以下、毛状体の平均径が1μm以上50μm以下、毛状体の平均間隔が20μm以上200μm以下である、樹脂シート。
  2. 基材層が、ポリカーボネート系樹脂をさらに含む、請求項1に記載の樹脂シート。
  3. 下地層と基材層との間にシーラント層を有する、請求項1又は2に記載の樹脂シート。
  4. 請求項1から3のいずれか一項に記載の樹脂シートの成形品。
  5. 自動車内装部材、電子機器、電子機器外装材、化粧品容器又は容器部材の表面に成形された、請求項に記載の成形品。
  6. 請求項1から3のいずれか一項に記載の樹脂シートを真空圧空成形、インサート成形又はインモールド成形することを含む、請求項4又は5に記載の成形品の製造方法。
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