JP7320486B2 - レドックスメディエータ及び光触媒システム - Google Patents

レドックスメディエータ及び光触媒システム Download PDF

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Description

本発明は、レドックスメディエータ及び光触媒システムに関する。
地球環境問題や化石燃料の枯渇の解決策の一つとして、太陽光エネルギーを利用した光触媒による燃料(ソーラーフューエル)合成が注目されている。中でも、水を電子源とした、二酸化炭素の還元反応によるC1、C2化合物等の合成や、一酸化炭素と水素を含む合成ガスの合成、および水分解による水素生成はクリーンなエネルギー生成法として期待されており、最近、多くの研究が報告されている。
ここで、上記の光触媒を用いた技術としては、主に(1)光電極を用いた光触媒システムと、(2)粒子タイプの光触媒を用いた光触媒システムの2つがある。後者の粒子タイプは、前者に比べて、工業化における大規模化やコストの点で優れていると考えられている(T. F. Jaramillo, et al., Energy Environ. Sci., 2013, 6, 1983-2002、S. Ardo, et al., Energy Environ. Sci., 2015, 8, 2825)。したがって、粒子タイプの光触媒を用いて、水を電子源としたソーラーフューエル合成の技術開発は非常に重要である。
粒子タイプの光触媒を用いた光触媒システムは、酸化光触媒粒子と還元光触媒粒子が水性媒体中に分散している状態で、可視光を照射して、酸化反応/還元反応を進行させる。したがって、反応速度を増加させるためには、酸化光触媒粒子と還元光触媒粒子の両者の間の電子授受が高いレドックスメディエータを使用する必要がある。
例えば、特許文献1には、可視光CO還元に関する技術であり、酸化光触媒粒子と、還元光触媒粒子と、配位子に未置換のターピリジン、ビピリジンを有する錯体レドックスメディエータとを有するZスキーム型光触媒系が開示されている。特許文献1によれば、従来技術に比べ、大幅なCO還元選択率及び生成量の向上が実現されることが示されている。Zスキーム型光触媒系とは、2種類の半導体を用いて、一方の半導体(酸化光触媒)で光触媒酸化反応を行い、他方の半導体(還元光触媒)で光触媒還元反応を行う光触媒系である。
また、例えば、特許文献2~4には、可視光水分解に関する技術が開示されている。特許文献2には、半導体光触媒とヨウ素化合物(レドックスメディエータ)を含む水溶液に、光照射下で水分解を行い、水素を生成する技術が開示されている。また、特許文献3には、酸素生成系光触媒と、水素生成系光触媒と、Fe3+/Fe2+レドックス系を形成するFe化合物(レドックスメディエータ)とを含む水溶液に、光照射下で水分解を行い、水素を生成する技術が開示されている。
特開2019-84527号公報 特開2002-255502号公報 特開2005-199187号公報 特開2019-142800号公報
T. M. Suzuki, et al., Chem. Commun., 2018, 54, 10199-10202
2種類の光触媒粒子を用いたZスキーム型光触媒系では、酸化光触媒粒子及び還元光触媒粒子が媒体中に分散しているため、酸化光触媒粒子から還元光触媒粒子への電子の移動効率が低く、還元光触媒粒子側で生成する還元生成物の生成量が低いことが問題であった。そこで、従来は、光触媒粒子間の電子移動を媒介するレドックスメディエータを水性媒体に添加することで、上記問題の解決を図っていたが、更なる改善が望まれている。例えば、CO還元を優占してCO還元生成物の生成量を上げたいのに、プロトン還元が優占して、所望するCO還元生成物の生成量が低下する、或いは、プロトン還元による水素の生成量を上げたいのにも関わらず、十分な水素生成量が得られない等、所望する還元生成物の生成量を向上させることができない。
そこで、本発明の目的は、所望する還元生成物の生成量を向上させることを可能とするレドックスメディエータを提供すること、及び当該レドックスメディエータを有する光触媒システムを提供することである。
本発明は、水を酸化する酸化光触媒粒子と電子により物質を還元する還元光触媒粒子との間で電子を伝達するレドックスメディエータであって、
前記レドックスメディエータは、水性媒体中に溶解し、下記一般式
(式中、Mは周期表の第6族から第12族のいずれかに属する金属から選択される少なくとも1つの金属であり、Rは、C2n+1(n=1~5)であり、R、R、R、R、Rは、C2n+1(n=0~5)又はC2mX(m=0~4、X:CHOH又はCOOH))で表される金属錯体レドックスメディエータを含む。
また、前記レドックスメディエータにおいて、前記金属錯体レドックスメディエータは、硝酸イオン、硫酸イオン、炭酸イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオンから選択される少なくとも1つの対イオンを含むことが好ましい。
また、本発明の光触媒システムは、水性媒体と、水を酸化する酸化光触媒粒子と、電子により物質を還元する還元光触媒粒子と、前記酸化光触媒粒子と前記還元光触媒粒子との間で電子を伝達するレドックスメディエータと、を備え、
前記レドックスメディエータは、前記水性媒体中に溶解し、下記一般式
(式中、Mは周期表の第6族から第12族のいずれかに属する金属から選択される少なくとも1つの金属であり、Rは、C2n+1(n=1~5)であり、R、R、R、R、Rは、C2n+1(n=0~5)又はC2mX(m=0~4、X:CHOH又はCOOH))で表される金属錯体レドックスメディエータを含む。
また、前記光触媒システムにおいて、前記金属錯体レドックスメディエータは、硝酸イオン、硫酸イオン、炭酸イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオンから選択される少なくとも1つの対イオンを含むことが好ましい。
また、前記光触媒システムにおいて、前記還元光触媒粒子は、半導体粒子と金属錯体触媒とを含むことが好ましい。
また、前記光触媒システムにおいて、前記物質の還元生成物は、二酸化炭素の還元生成物、一酸化炭素と水素を含む合成ガス、水素のうちの少なくともいずれか1つを含むことが好ましい。
本発明に係るレドックスメディエータによれば、所望する還元生成物の生成量を向上させることが可能となる。
本実施形態に係る光触媒システムの構成の一例を示す図である。 本実施形態に係る光触媒システムの構成の他の例を示す図である。 実施例8のCO還元反応によるCO及び水素生成量の経時変化を示す。 比較例7のCO還元反応によるCO及び水素生成量の経時変化を示す。 比較例8のCO還元反応によるCO及び水素生成量の経時変化を示す。 実施例11におけるCO、H及びO生成量の経時変化を示す。
以下、本発明の実施形態について説明する。
[光触媒システム]
図1に、本実施形態に係る光触媒システムの構成を示す。光触媒システム1は、酸化光触媒粒子2と、還元半導体粒子3aを含んで構成される還元光触媒粒子3と、レドックスメディエータ(以下単に「メディエータ」ともいう)4と、を備える。メディエータ4は、酸化光触媒粒子2と還元光触媒粒子3との間で電子を伝達する。
光触媒システム1において、酸化光触媒粒子2に可視光5が照射されると、光触媒反応によって、水(HO)が酸化され、酸素((1/2)O)又は過酸化水素等を生成するとともに、励起された電子eが酸化光触媒粒子2の伝導帯に移動する。メディエータ4は、酸化光触媒粒子2の励起電子eを受け取り、還元光触媒粒子3を構成する還元半導体粒子3aの価電子帯に引き渡す。ここで、還元光触媒粒子3に可視光5が照射されると、光触媒反応によって、価電子帯の電子eが光励起されて還元半導体粒子3aの伝導帯に移動し、励起電子eが物質を還元する還元反応に利用される。還元される物質は、例えば、二酸化炭素やプロトンである。二酸化炭素の還元反応により、例えば、一酸化炭素(CO)、ギ酸(HCOOH)、メタン(CH)、エチレン(C)、エタン(C)、メタノール(CHOH)、エタノール(CHCHOH)等の還元生成物が生成する。また、プロトンの還元反応により、例えば、水素(H)が生成する。また、二酸化炭素及びプロトンの還元反応により、例えば、一酸化炭素(CO)及び水素(H)を含む混合ガス(合成ガス)が生成する。
図2に、本実施形態に係る光触媒システムの構成の他の例を示す。図2に示す光触媒システム1では、還元光触媒粒子3が還元半導体粒子3aと金属錯体触媒3bとを含んで構成されている。図2に示す光触媒システム1では、メディエータ4からの励起電子eは、還元光触媒粒子3の還元半導体粒子3aの価電子帯に引き渡される。還元光触媒粒子3に可視光5が照射されると、電子eが光励起されて還元半導体粒子3aの伝導帯に移動し、更に還元半導体粒子3aの伝導帯から金属錯体触媒3bへと移動して、金属錯体触媒3bにおける物質の還元反応に利用され、還元生成物が生成する。
[酸化光触媒粒子]
酸化光触媒粒子2は、可視光の照射によって光触媒機能を発揮し、水の酸化反応を生起する半導体化合物(以下「酸化半導体」とも記載する)で構成された粒子であれば、特に限定されない。ここで、可視光とは波長λが360nm以上である光を意味する。酸化半導体は、価電子帯上端の電位が水の酸化(O/HO)電位(標準水素電極(SHE)に対して1.23V)より貴(ポジティブ)であるものが好ましい。
酸化光触媒粒子2を構成する酸化半導体のバンドギャップは特に制限されないが、例えば、4.0eV以下が好ましい。4.0eV以下のバンドギャップを有する半導体粒子は、波長λが300nm~1000nmの光を吸収して、電子と正孔を形成することができる。また、酸化半導体は、n型半導体であってもp型半導体であってもよい。
酸化半導体としては、例えば、各種金属の酸化物(金属が部分的に酸化されているものを含む)、複合酸化物(金属が部分的に酸化されているものを含む)、窒化物(金属が部分的に窒化されているものを含む)、酸窒化物(金属酸化物が部分的に窒化されているもの、金属窒化物が部分的に酸化されているものを含む)、硫化物(金属が部分的に硫化されているものを含む)、酸硫化物(金属酸化物が部分的に硫化されているもの、金属硫化物が部分的に酸化されているものを含む)、窒弗化物(金属窒化物が部分的に弗化されているもの、金属弗化物が部分的に窒化されているものを含む)、酸弗化物(金属酸化物が部分的に弗化されているもの、金属弗化物が部分的に酸化されているものを含む)、酸窒素弗化物(金属酸窒化物が部分的に弗化されているもの、金属酸弗化物が部分的に窒化されているもの、金属窒弗化物が部分的に酸化されているものを含む)、炭化物(金属が部分的に炭化されているものを含む)、炭素含有酸化物(金属が部分的に酸化されているものを含む)、リン化合物、シリサイド化合物等が挙げられる。また、酸化半導体には、窒素、硫黄、炭素、リン及び金属元素のうち少なくとも1種の元素がドープされていてもよい。
更に具体的な酸化半導体としては、バナジウム化合物、チタン化合物、タンタル化合物、鉄化合物、亜鉛化合物、銅化合物等が挙げられる。
バナジウム化合物としては特に制限されないが、例えば、酸化バナジウム(V)、バナジン酸ビスマス(BiVO)、AgVO、AgVO、Bi11、CuV、FeVO、Cu、FeV等が挙げられる。また、これら以外のBiV、AgV、CuV、CoV、MnV、NiV、FeV、CrVの酸化物であってもよい。
チタン化合物としては特に制限はないが、例えば、TiO、M-TiO(元素MをドープしたTiOを表し、元素Mとしては、N、S、F、Ni、Ru、Rh、Fe、Cu、Co等が挙げられる。)、SrTiO、M-SrTiO(元素MをドープしたSrTiOを表し、元素Mとしては、Cr、Mn、Ru、Rh、Ir等が挙げられる。)、CaTiO、SrTi、SrTi、KLaTi10、RbLaTi10、CsLaTi10、CsLaTiNbO10、LaTiO、LaTi、LaTi、NaTi13、KTi13、KTiNbO等が挙げられる。
タンタル化合物としては特に制限はないが、例えば、Ta、N-Ta(窒素ドープ酸化タンタル)、TaON、Ta、CaTaON、SrTaON、BaTaON、LaTaON、YTaN、InTaO、Ni-TaO(ニッケルドープTaO)等が挙げられる。
鉄化合物としては特に制限はないが、例えば、Fe、M-Fe(元素MをドープしたFeを表し、元素Mとしては、N、Zn、(N,Zn)、Cu、Ni、Ti、Si、Nb等が挙げられる。)、CaFe、CuFe、CuFeO、ZnFe、BiFeO等が挙げられる。
亜鉛化合物としては特に制限はないが、例えば、ZnS、Ni-ZnS(ニッケルドープ硫化亜鉛)、Cu-ZnS(銅ドープ硫化亜鉛)等が挙げられる。
銅化合物としては特に制限はないが、例えばCuO、CuO、CuBi、CuI、Cu(InGa)S、Cu(InGa)Se、CuGaS、CuGaSSe、CuGaSe等が挙げられる。また、銅化合物としては、例えばCu-Zn-S系化合物、Cu-Zn-Sn-S系化合物、Cu-Sn-S系化合物、Cu-In-Ga-Se系化合物、Cu-In-Ga-S系化合物、Cu-In-Se系化合物等が挙げられる。
また、WO、BiMoO、Nb、NiO、ZnO、SnO、ZrO、CeO、ZrO/CeO固溶体等の金属酸化物や、InP、InAs、GaP、GaAs、GaAsP、GaN、GaInAsP、GaSb、CdS、CdSe、Si、SiC、Ge、SiC、各種金属(Mo、W、Ti、Co、Ni、Fe等)のシリサイド等の半導体化合物も、酸化光触媒粒子2を構成する酸化半導体として使用できる。
本実施形態では、より高い光触媒活性が発現する観点から、酸化光触媒粒子2を構成する酸化半導体が、バナジウム、タンタル、チタン、タングステン、ビスマス及び鉄からなる群から選択される少なくとも1種を含む化合物であることが好ましく、上記の群から選択される少なくとも1種を含む酸化物であることがより好ましい。好適な酸化半導体の具体的な例としては、例えば、BiVO、TiO、Fe、BiWO、BiMoO、TaON、N-TiO及びWO等が挙げられる。
本実施形態に係る酸化光触媒粒子2の粒径は特に制限はないが、平均一次粒子径が100μm以下であることが好ましく、10μm以下がより好ましい。酸化光触媒粒子2の粒径が大きすぎると、粒子の比表面積が減少し、粒子同士の接触確率が低下する場合がある。平均一次粒子径の下限は特に制限はなく、例えば、1nm以上である。酸化光触媒粒子2の平均一次粒子径は、公知の方法によって測定でき、例えば、X線回折(XRD)測定、透過型電子顕微鏡(TEM)観察、走査型電子顕微鏡(SEM)観察等で得られた画像から、任意に選択した複数個の粒子サンプルについて、長径及び短径の平均を取り、これを複数個の粒子サンプルについて平均化することによって、算出することができる。また、酸化光触媒粒子2の形状は特に制限されない。
また、本実施形態に係る酸化光触媒粒子2の比表面積としては特に制限はないが、例えば5m/g以上が好ましい。酸化光触媒粒子2の比表面積が小さすぎると、粒子同士の接触確率や光触媒活性が低下する場合があるためである。
酸化光触媒粒子2は、公知の方法により合成した半導体粒子であってもよく、市販の半導体粒子を使用してもよい。酸化光触媒粒子2に粉砕、研磨等の処理を施して粒子径を調整してもよい。
[還元光触媒粒子]
還元光触媒粒子3は、可視光の照射によって光触媒機能を発揮し、水の酸化反応を生起する半導体化合物(以下「還元半導体」とも記載する)からなる還元半導体粒子3aを含んで構成される。還元光触媒粒子3は、少なくとも還元半導体粒子3aを含むものであれば、特に限定されない。
(還元半導体粒子)
還元半導体粒子3aを構成する還元半導体としては、還元半導体の伝導帯下端(CBM)の電位が、酸化光触媒粒子2を構成する酸化半導体の価電子帯上端(VBM)の電位より貴(ポジティブ)であるものが挙げられる。これにより、酸化光触媒粒子2において光励起した電子がメディエータ4を介して還元半導体粒子3aの価電子帯へ移動し、その電子が再び還元半導体粒子3aの伝導帯に光励起する、という2段階光励起システムが形成される。還元光触媒粒子3は、還元半導体のCBMの電位から酸化半導体のVBMの電位を差し引いた電位差が0.1V以上であるものが好ましい。
還元半導体粒子3aを構成する還元半導体のバンドギャップは特に制限されず、例えば、4.0eV以下が好ましい。4.0eV以下のバンドギャップを有する半導体粒子は、波長λが300nm~1000nmの光を吸収して、電子と正孔を形成することができる。また、還元半導体は、n型半導体であってもp型半導体であってもよい。
還元半導体としては、例えば、各種金属の硫化物(金属が部分的に硫化されているものを含む)、酸硫化物(金属酸化物が部分的に硫化されているもの、金属硫化物が部分的に酸化されているものを含む)、酸化物(金属が部分的に酸化されているものを含む)、複合酸化物(金属が部分的に酸化されているものを含む)、窒化物(金属が部分的に窒化されているものを含む)、酸窒化物(金属酸化物が部分的に窒化されているもの、金属窒化物が部分的に酸化されているものを含む)、窒弗化物(金属窒化物が部分的に弗化されているもの、金属弗化物が部分的に窒化されているものを含む)、酸弗化物(金属酸化物が部分的に弗化されているもの、金属弗化物が部分的に酸化されているものを含む)、酸窒素弗化物(金属酸窒化物が部分的に弗化されているもの、金属酸弗化物が部分的に窒化されているもの、金属窒弗化物が部分的に酸化されているものを含む)、炭化物(金属が部分的に炭化されているものを含む)、炭素含有酸化物(金属が部分的に酸化されているものを含む)、リン化合物、シリサイド化合物等が挙げられる。また、還元半導体には、窒素、硫黄、炭素、リン並びに金属元素(銀、アルカリ金属、アルカリ土類金属及びランタノイド等)のうち、1種又は2種以上の元素がドープされていてもよい。
還元半導体粒子3aを構成する還元半導体の好適な具体例として、硫化物半導体が挙げられる。還元半導体粒子3aを構成する硫化物半導体としては、金属硫化物からなる還元半導体であれば特に制限されない。硫化物半導体としては、例えば、カドミウム(Cd)及び亜鉛(Zn)等のII族元素(第12族元素)の硫化物、ビスマス(Bi)及びアンチモン(Sb)等のV族元素(第15族元素)の硫化物、スズ(Sn)、鉛(Pb)等のIV族元素(第14族元素)の硫化物、銅ガリウム(CuGa)、銅インジウム(CuIn)、銀インジウム(AgIn)、銅アルミニウム(CuAl)、銀ガリウム(AgGa)等のI族元素(第11族元素)及びIII族元素(第2族元素又は第13族元素)の硫化物、銅亜鉛(CuZn)等のI族元素及びII族元素の硫化物、銅ガリウム亜鉛(CuGaZn)、銅インジウム亜鉛(CuInZn)、銀インジウム亜鉛(AgInZn)等のI族元素、II族元素及びIII族元素の硫化物、並びに、これらの硫化物の固溶体が挙げられる。
硫化物半導体が亜鉛(Zn)を含有することが好ましい。Znを含有する硫化物半導体は比較的卑電位側の(ネガティブな)CBMを有することから、Znを含有する硫化物半導体からなる還元半導体粒子3aは、例えば、COの還元反応又は金属錯体触媒3bへの電子移動に有利である。Znを含有する硫化物半導体としては、ZnSとI族元素及びIII族元素を含む金属硫化物との固溶体が好ましく、より具体的には、例えば組成式が(CuGa)1-xZn2x、(AgIn)1-xZn2x、又は、(CuIn)1-xZn2x(いずれも0<x<1)で表される化合物がより好ましい。また、Znを含有する硫化物半導体における金属総量に対するZnの含有率は、20モル%以上が好ましく、40モル%以上がより好ましい。上限は特に制限されないが、例えば、金属総量に対するZnの含有率が、99質量%以下であればよく、太陽光の有効利用の観点からは95質量%以下が好ましい。
還元半導体粒子3aとして使用される硫化物半導体の製造方法は特に制限されず、公知の方法で製造すればよい。また、硫化物半導体として、市販の硫化物半導体の粒子を使用してもよい。硫化物半導体は、例えば、硫化物半導体を構成する金属の化合物を溶媒に溶解させ、その溶液に硫黄化合物を含有する溶液を投入して攪拌した後、遠心分離及び再分散を行い、上澄みを除去した上で乾燥させることによって、合成することができる。使用する金属化合物としては、用いる金属によって異なるが、例えば、金属の塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、亜硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、過塩素酸塩等が挙げられる。また、複数の金属を含有する複合金属硫化物半導体を製造する場合、各金属の硫化物を使用してもよい。硫化物半導体の合成に使用する硫黄化合物としては、例えば、硫化水素、硫化ナトリウム水和物、SCl、SBr、SI、チオ酢酸、チオ尿素、チオアセトアミド、チオシナミン等が挙げられる。
また、硫化物半導体は、上記の金属化合物の溶液中で硫化水素ガスをバブリングさせた後、得られた沈殿物を洗浄及び乾燥し、次いで焼成することにより、製造してもよい。加えて、複数の金属を含有する金属硫化物の固溶体を製造する場合は、各金属硫化物を目的とする組成比で混合して得た混合物を焼成することにより、製造してもよい。製造された硫化物半導体の粒子に粉砕、研磨等の処理を施して粒子径を調整してもよい。更に、金属錯体触媒3bの担持をスムーズに行うため、硫化物半導体に予め前処理を施してもよい。
還元半導体粒子3aを構成する還元半導体は、例えば、COの還元性能を向上させる点で、そのCBMの電位がpH0における標準水素電極の電位に対して(以下「vs.NHE」と記載する)-0.3V以下であることが好ましく、-0.5V以下であることがより好ましく、-1.0V以下であることが特に好ましい。
CBM電位が上記の範囲である還元半導体の種類は特に限定されず、例えばタンタル、鉄、銅、インジウム及びガリウムからなる群から選択される少なくとも1種を含む半導体化合物等が挙げられ、上記群から選択される少なくとも1種を含む酸化物半導体が好ましい。また、CBM電位が上記の範囲である還元半導体としては、上述の硫化物半導体が挙げられる。
当該タンタル化合物としては特に制限はないが、例えば、Ta、TaON、Ta、CaTaON、SrTaON、BaTaON、LaTaON、YTaN、InTaO、LiTaO、KTaO、AgTaO、RbTaO、CSTaO、NaTa、KTa、CaTa、SrTa、BaTa、NiTa、CaTa、SrTa及びLaTaO、並びに、これらの化合物に窒素、アルカリ金属、アルカリ土類金属及びランタノイドからなる群より選択される1種又は2種以上の元素がドープされた化合物(例えばN-Ta、Ni-TaO、Na‐TaO、La-TaO等)が挙げられる。
当該鉄化合物としては特に制限はないが、例えば、Fe、AFeの組成を有するフェライト化合物(元素Aとしては、Ca、Sr、Cu、Mg、Ni、Zn、Ba等が挙げられる)、並びに、元素Mをドープした化合物であるM‐Fe及びM‐Fe(元素Mとしては、N、Ag、Zn、Cu、Mg、Ni、Ti、Si、Nb等が挙げられる)等が挙げられる。
当該銅化合物としては特に制限はないが、例えば、銅酸化物、銅と他の元素との酸化物(例えば銅アルミニウム酸化物、銅ビスマス酸化物等)、ヨウ化銅、Cu-In-Ga-Se系化合物、Cu-In-Se系化合物等が挙げられ、より具体的には、CuO、CuO、CuAlO、CuBi、CuI、Cu(InGa)Se、CuGaSe等が挙げられる。
CBMの電位が-0.3(vs.NHE)以下である硫化物半導体以外の還元半導体としては、酸化タンタル、酸化鉄(フェライト)及びそれらが窒素又は銀によりドープされた化合物が好ましい。当該酸化物半導体の好ましい具体例としては、例えば、窒素ドープ酸化タンタル(N-Ta、CBM:約-1.3V)、窒素ドープ酸化鉄(N-Fe、CBM:約-0.6V)、カルシウム酸化鉄(CaFe、CBM:約-0.6V)、銀ドープカルシウム酸化鉄(Ag-CaFe、CBM:約-0.6V)等が挙げられる。
硫化物半導体以外の還元半導体粒子3aの製造方法は特に制限されず、公知の方法で製造すればよい。また、還元半導体粒子3aとして、市販の半導体化合物の粒子を使用してもよい。例えば、窒素ドープ酸化タンタルは、酸化タンタルをアンモニアガスを含む雰囲気で加熱処理することによって生成することができる。アンモニアは非酸化性のガス(アルゴン、窒素等)によって希釈することが好適であり、例えば、アンモニアとアルゴンとを流量の比率が1:1~3:1となるように混合したガス流中に酸化タンタルを配して加熱することが好適である。加熱温度は500℃以上900℃以下が好ましく、さらには550℃以上850℃以下がより好ましい。処理時間は6時間以上15時間以下が好ましい。窒素をドープする前の酸化タンタルは、市販品であってもよく、又は、塩化タンタル、タンタルアルコキシド等のタンタル含有化合物の溶液に加水分解処理等を施すことによって調製してもよい。他の窒素ドープ金属酸化物もまた上記の製造方法に準じて製造することができる。
(金属錯体触媒)
還元光触媒粒子3は、還元半導体粒子3aと金属錯体触媒3bとを含んで構成されていてもよい。金属錯体触媒3bとしては、金属と非金属の配位子とが結合した構造を有し、電子を利用することにより、物質(例えば、COやプロトン)の還元活性を示す化合物であれば特に制限なく使用できる。金属錯体触媒3bは、例えば、還元半導体粒子3aを構成する半導体化合物のCBMの準位が金属錯体触媒3bの最低空軌道(LUMO)の準位に対して+0.2V以下である化合物であればよい。電子移動の効率の観点から、還元半導体粒子3aのVBMの準位が金属錯体触媒3bのLUMOの準位よりも卑であることが好ましい。
金属錯体触媒3bとしては、例えば、周期表の第6族から第10族のいずれかに属する金属から選ばれる少なくとも1種の金属と配位子との錯体が挙げられる。金属錯体触媒3bを構成する金属としては、例えば、Cr、Mo、W、Ru、Re、Mn、Fe、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Ptが挙げられ、Ruが好ましい。このような錯体は、単核であっても2核以上の多核であってもよい。また、2種以上の金属が含まれていてもよい。
金属錯体触媒3bにおける配位子としては、特に制限はなく、例えば、典型的な主配位子としては、含窒素複素環化合物、含酸素複素環化合物、含酸素化合物、含硫黄複素環化合物等が挙げられ、補助配位子としては、CO、ハロゲン、シアン、ホスフィン類等が挙げられる。補助配位子は、反応の過程でCO、塩基、又は水と接触して一部解離し、副配位子へ変換されてもよい。副配位子としては、例えば-CO、-CO、-COOH、-COH、-(CO)-、-OH、-OH等が挙げられる。これらの配位子は、1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。これらの配位子において、金属に配位する元素としては特に制限はないが、例えば、O、N、C、P、S、Si、ハロゲン等が挙げられる。このような元素は、1種が配位していても2種以上が配位していてもよい。
主配位子となる含窒素複素環化合物としては、例えば、ピリジン、ビピリジン、ジホスホネートビピリジン、フェナントロリン、ターピリジン、クアテルピリジン、ピロール、インドール、カルバゾール、イミダゾール、ピラゾール、キノリン、イソキノリン、アクリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン及びそれらの誘導体等が挙げられる。主配位子となる含酸素複素環化合物としては、フラン、ベンゾフラン、オキサゾール、ピラン、ピロン、クマリン、ベンゾピロン及びそれらの誘導体等が挙げられる。主配位子となる含酸素化合物としては、ポリオキソメタレート及びその誘導体が挙げられる。主配位子となる含硫黄複素環化合物としては、チオフェン、チオナフテン、チアゾール及びそれらの誘導体等が挙げられる。
還元半導体粒子3aと金属錯体触媒3bとを含んで構成される還元光触媒粒子3は、例えば、金属錯体触媒3bを還元半導体粒子3aに担持することにより調製される。金属錯体触媒3bの担持方法としては特に制限はなく、例えば、吸着担持法、光析出法(光電着法、光電析法等ともいう)、沈着沈殿法、ナノ粒子担持法、物理的気相成長法(PVD法)等が挙げられる。例えば、金属錯体触媒3bに対応する金属錯体イオンを含有する溶液に還元半導体粒子3aを含浸させ、所定の時間(例えば6時間以上、好ましくは12時間以上)攪拌した後、洗浄及び乾燥することにより、金属錯体触媒3bが還元半導体粒子3aに担持(吸着)してなる還元光触媒粒子3が得られる。これらの担持方法は2種以上を併用してもよい。また、還元半導体粒子3aに上述の配位子を吸着させた後、金属錯体触媒3bを合成してもよい。
還元半導体粒子3aと金属錯体触媒3bとは連結基によって化学的に結合していることが好ましい。この連結基は、還元半導体粒子3aと化学的に結合可能な官能基であれば特に限定されず、例えば、カルボキシル基、ホスホン酸基、ホスホン酸エステル基、ホスホリル基、スルホン酸基、シラノール基、メルカプト基及びこれらの誘導体が挙げられる。ここで、連結基は、還元半導体粒子3aと連結した状態では、プロトンが脱離した構造、又は金属と酸素原子が配位している構造を有し得る。これらの連結基は、1種単独であってもよいし、2種以上の組合せを用いてもよい。金属錯体触媒3bの具体例としては、ビピリジン(bpy)、ビス(ホスホネート)ビピリジン(dpbpy)、ビス(ホスホネートエチル)ビピリジン(dpebpy)、ビス(メチルホスホネート)ビピリジン(dmpbpy)、ビス(ジエチルメチルホスホネート)ビピリジン(dmpebpy)、ビス(ジメチルメチルホスホネート)ビピリジン(dmpmbpy)、ビス(ジエチルエチルホスホネート)ビピリジン(depebpy)、(ピロリルプロピルカーボネート)ビピリジン(pypcbpy)、ビス(カルボキシル)ビピリジン(dcbpy)、ビス(メチルカルボキシ)ビピリジン(dmcbpy)、ビス(ジメチルメチルカルボキシ)ビピリジン(dmcmbpy)等からなる群より選択される少なくとも一つを主配位子として有するRu、Re、Co等の金属錯体が挙げられる。より具体的には、[Ru(bpy)(CO)Cl]、[Ru(dpbpy)(CO)Cl]、[Ru(bpy)(dpbpy)(CO)2+、[Ru(dpbpy)(CO)2+、[Ru(dmpbpy)(CO)Cl]、[Ru(dmpebpy)(CO)Cl]、[Ru(dmpmbpy)(CO)Cl]、[Ru(dpebpy)(CO)Cl]、[Ru(dpebpy)(CO)Cl]、[Ru(pypcbpy)(CO)(MeCN)Cl2+、[Ru(dcbpy)(CO)Cl]、[Ru(dmcbpy)(CO)Cl]、[Ru(dmcmbpy)(CO)Cl]等が挙げられる。また、これらを重合させた金属錯体ポリマーであっても構わない。
連結基により還元半導体粒子3aと金属錯体触媒3bとを結合する方法は、両者が連結基を介して化学的に結合するものであれば、特に制限されない。例えば、(1)配位子に連結基を導入した金属錯体触媒3bを硫化物半導体に吸着させる、(2)連結基を導入した配位子を硫化物半導体に吸着させた後に直接金属錯体触媒3bを形成させる、(3)連結基を導入した硫化物半導体に金属錯体触媒3bを結合させる、等の方法が挙げられる。
還元光触媒粒子3が金属錯体触媒3bを含む場合の金属錯体触媒3bの含有量は特に制限はないが、例えば、100質量部の還元半導体粒子3aに対して0.01質量部以上50質量部以下であることが好ましく、0.03質量部以上40質量部以下がより好ましい。金属錯体触媒3bの含有量(担持量)が少なすぎると、金属錯体触媒3bの触媒活性が低下する場合がある。金属錯体触媒3bの担持量が多すぎると、還元半導体粒子3aの光吸収を妨げ、或いは、再結合中心として作用することにより還元光触媒粒子3の触媒活性が低下する場合がある。還元光触媒粒子3における金属錯体触媒3bの含有量は、例えば吸着後の溶液の吸収スペクトル測定、又は、錯体担持半導体サンプルの誘導結合プラズマ(ICP)分析により測定することができる。
本実施形態に係る還元光触媒粒子3の粒径は特に制限はないが、平均一次粒子径が100μm以下であることが好ましく、10μm以下がより好ましい。還元光触媒粒子3の粒径が大きすぎると、粒子の比表面積が減少し、粒子同士の接触確率が低下する場合がある。平均一次粒子径の下限は特に制限はなく、例えば、1nm以上である。還元光触媒粒子3の平均一次粒子径は、上述の酸化光触媒粒子2の平均一次粒子径と同様の方法で測定すればよい。また、本実施形態に係る還元光触媒粒子3の比表面積は、特に制限はないが、例えば5m/g以上が好ましい。還元光触媒粒子3の比表面積が小さすぎると、粒子同士の接触確率や光触媒活性が低下する場合があるためである。
本実施形態に係る光触媒システム1において、酸化光触媒粒子2及び還元光触媒粒子3の含有量は特に制限はないが、光触媒システム1全体としての酸化還元反応の効率の観点から、酸化光触媒粒子2及び還元光触媒粒子3が質量比で1:20以上20:1以下で存在することが好ましく、1:10以上10:1以下がより好ましい。
[レドックスメディエータ]
本実施形態に係る光触媒システム1で使用されるメディエータ4は、酸化光触媒粒子2と還元光触媒粒子3との間で電子を伝達可能な化合物である。更に言えば、メディエータ4は、光触媒システム1を含有する水性媒体中において、酸化光触媒粒子2から電子eを受け取ることで酸化体から還元体となり、且つ、還元光触媒粒子3(還元半導体粒子3a)に電子eを引き渡すことで還元体から酸化体に戻ることができる化合物である。
メディエータ4は、水性媒体中に溶解し、下記一般式
(式中、Mは周期表の第6族から第12族のいずれかに属する金属から選択される少なくとも1つの金属であり、Rは、C2n+1(n=1~5)であり、R、R、R、R、Rは、C2n+1(n=0~5)又はC2mX(m=0~4、X:CHOH又はCOOH))で表される金属錯体レドックスメディエータを含む。以下、水性媒体中に溶解し、上記一般式で表される金属錯体レドックスメディエータを本実施形態の金属錯体レドックスメディエータと言う。
本実施形態の金属錯体レドックスメディエータに含まれるM(中心金属)は、周期表の第6族から第12族のいずれかに属する金属から選択される少なくとも1つの金属であり、具体的にはFe、Co、Cu、Cr、Mo、W、Ru、Re、Mn、Os、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Zn等が挙げられ、例えば、物質の還元反応性を向上させる点で、Fe、Co及びCuが好ましく、特にCoが好ましい。例えば、中心金属がCoである本実施形態の金属錯体レドックスメディエータは、酸化光触媒粒子2上では、可視光照射により生成した電子eを受け取り、3価のCo錯体から2価のCo錯体となる。一方、還元光触媒粒子3上では、中心金属がCoである本実施形態の金属錯体レドックスメディエータは、還元光触媒粒子3(還元半導体粒子3a)に電子eを引き渡し、2価のCo錯体から3価のCo錯体となる。
本実施形態の金属錯体レドックスメディエータは、単核であっても2核以上の多核であってもよく、また、周期表の第6族から第12族のいずれかに属する金属のうちの2種以上の金属が含まれていてもよい。
本実施形態の金属錯体レドックスメディエータの配位子は、置換基が導入されたビピリジン(bpy)である。上記一般式に示すように、置換基Rは、C2n+1(n=1~5)であり、R、R、R、R、Rは、C2n+1(n=0~5)又はC2mX(m=0~4、X:CHOH又はCOOH)である。本実施形態の金属錯体レドックスメディエータが水性媒体中に溶解し易く、メディエータとしての機能が向上する等の点で、C2n+1のnは、Rの場合1~3が好ましく、R~Rの場合0~3が好ましく、C2mXのmは、0~3が好ましい。置換基R、R、R、R、R、Rは、全て同じ置換基であってもよいし、それぞれ異なっていてもよい。また、置換基はビピリジンの3~6位、及び3’~6’位のどこに導入されていても構わないが、錯体形成の点等から、4及び4’位、又は5及び5’位に導入されることが好ましい。
本実施形態の金属錯体レドックスメディエータは、水性媒体中への溶解性等の点で、アニオン性の対イオンを含むことが好ましく、具体的には、硝酸イオン、硫酸イオン、炭酸イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオンから選択される少なくとも1つの対イオンを含むことが好ましい。
水性媒体中に含まれる本実施形態の金属錯体レドックスメディエータの含有量は、例えば、水性媒体の総量に対して、0.005mM(mmol/L)以上であればよく、0.01mM(mmol/L)以上であることが好ましい。本実施形態の金属錯体レドックスメディエータの含有量の上限は、水性媒体における飽和濃度であることが好ましい。
[水性媒体]
水性媒体としては、水を主成分として含有する媒体であれば適宜使用可能である。水性媒体は、例えば、電解質を含有していてもよく、メタノール及びエタノール等の水溶性有機溶媒を含有していてもよい。
水性媒体に含まれる電解質としては、水の電解反応における支持電解質として一般的に使用される化合物であって、光触媒システム1の作用を阻害しないものであれば特に制限なく使用することができ、例えばオキソ酸及びオキソ酸塩が挙げられる。本実施形態では、水性媒体が電解質の水溶液であることが好ましい。理由は定かではないが、水性溶媒が電解質を含有することにより、還元反応の選択性(例えば、プロトンよりCOを選択的に還元する)、及び還元生成物の生成量がより一層優れる傾向にあるためである。なお、本明細書では便宜上、「電解質」と記載した場合、水性媒体中で陽イオン及び陰イオンに電離した電解質も含むものとする。
電解質を構成するオキソ酸としては、例えば炭酸、リン酸、硝酸、硫酸、ホウ酸、ハロゲンオキソ酸(次亜塩素酸、塩素酸及び過塩素酸等)等が挙げられる。オキソ酸塩を構成する陽イオンとしては、例えばナトリウム及びカリウム等のアルカリ金属が挙げられる。具体的な電解質としては、例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸塩、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の重炭酸塩、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム等のリン酸塩(リン酸二水素塩、リン酸水素塩を含む)、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム等の硫酸塩、過塩素酸ナトリウム、及び、過塩素酸カリウム等の過塩素酸塩が挙げられる。水性媒体に使用される電解質としては、炭酸塩、重炭酸塩及びリン酸塩からなる群より選択される少なくとも1つが好ましい。
電解質の水性媒体における濃度は特に制限されないが、例えば水性媒体の総量に対する電解質のモル濃度が0.001M(mol/L)以上2M以下が好ましく、0.005M以上0.5M以下がより好ましい。電解質の濃度が上記の範囲にあると、例えば、光触媒間及び触媒と反応物との間の電子の移動に優れるためである。炭酸塩を用いた場合において電解質濃度が高いと、酸化側の酸素生成反応が阻害され、全体の光触媒活性が低下する場合がある。
[光触媒システムの形成]
本実施形態に係る光触媒システム1は、水性媒体、酸化光触媒粒子2、還元光触媒粒子3及びメディエータ4を混合することによって得ることができる。例えば、酸化光触媒粒子2と還元光触媒粒子3とを混合し、メディエータ4を含有する水性媒体に添加することにより、本実施形態に係る光触媒システム1が形成される。
このようにして形成された光触媒システム1に、可視光5を照射すると、上述したように、水を電子供与剤として利用しつつ、還元光触媒粒子3における還元反応によって、水中の二酸化炭素やプロトン等の物質を還元して、ギ酸及び一酸化炭素等の炭素化合物や水素等の還元生成物が生成するとともに、酸化光触媒粒子2における酸化反応によって、酸素ガスが生成する。本実施形態の光触媒システム1は、光触媒粒子が懸濁した粒子懸濁型であるため、酸化触媒電極及び還元触媒電極を用いた系に比べて、大規模化及び製造コストの抑制が可能である点で優れる。加えて、本実施形態の光触媒システム1では水を電子供与剤として利用するため、クリーンなエネルギー生成法を提供することができる。
また、本実施形態に係る光触媒システム1では、本実施形態の金属錯体レドックスメディエータを用いることで、所望の還元生成物の生成量を向上させることが可能となる。当該効果を奏するメカニズムは十分に明らかでないが以下のことが推察される。本実施形態の金属錯体レドックスメディエータの配位子であるビピリジンに導入された置換基R~Rはアルキル基ベースであるため、(1)両光触媒粒子と金属錯体レドックスメディエータの親和性が向上し、両光触媒粒子間における電子授受効率が向上する、(2)本実施形態の金属錯体レドックスメディエータが吸着した光触媒粒子表面が疎水性気味になり、副反応を抑制する(例えば、CO還元の場合、プロトン還元による水素生成を抑制する)。また、Ra~Rfは電子供与性基であるため、(3)本実施形態の金属錯体レドックスメディエータの酸化還元電位が卑電位側へシフトし、還元光触媒粒子上での金属錯体レドックスメディエータの還元反応の進行を抑制する等の効果が得られると考えられる。そして、これらの効果が、所望の還元生成物の生成量の向上に繋がると考えられる。
また、本実施形態の光触媒システム1では、還元光触媒として還元半導体粒子3a及び金属錯体触媒3bからなる還元光触媒粒子3を利用することにより、物質還元の中で、特にCOの還元性能を向上させることができる。即ち、還元光触媒として還元半導体粒子3a及び金属錯体触媒3bからなる還元光触媒粒子3を利用することにより、CO還元反応による還元生成物の生成量を向上させることができ、及び/又は、水の還元反応に対するCO還元反応の選択性を向上させることができる。
また、本実施形態に係る光触媒システム1では、還元光触媒粒子3における還元半導体粒子3a又は金属錯体触媒3bを選択し、適正な環境で触媒反応を生起することで、例えば、ギ酸及び一酸化炭素に限らず、エタノール等の有用な炭素化合物を二酸化炭素から合成することも可能となる。
本実施形態に係る光触媒システム1は、紫外線も含む光及び紫外線も利用し得る。本実施形態の光触媒システム1は、波長λが360nmより長い可視光において十分な光触媒活性が得られるため、太陽光等の光エネルギーをより一層効果的に利用することができる。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
〔酸化光触媒粒子の調製〕
<バナジン酸ビスマス半導体(BiVO)粒子の合成>
20mmolの硝酸ビスマス水和物(Bi(NO・5HO、関東化学株式会社製)、及び、10mmolの五酸化バナジウム(V、和光純薬工業株式会社製)を0.5mol/Lの硝酸水溶液100mLに添加し、得られた混合液を室温で72時間撹拌した。生成した粒子をろ過した後、水で洗浄し、120℃で乾燥することにより、バナジン酸ビスマス半導体(BiVO)からなる酸化光触媒粒子を得た。
〔還元光触媒粒子の調製〕
硫化銅(II)(CuS、株式会社高純度化学研究所製)、硫化ガリウム(III)(Ga、株式会社高純度化学研究所製)、及び、硫化亜鉛(ZnS、株式会社高純度化学研究所製)を、モル比がCu:Ga:Zn=0.3:0.36:1.4となる量で混合した。得られた混合物を石英管に入れ密封した後、1073Kで10時間焼成することにより結晶化させて、組成式(CuGa)0.3Zn1.4で表される複合金属硫化物半導体からなる還元半導体粒子を得た。
Inorganic Chemistry, 1995, Vol.34, No.24, p.6145-6157に記載の方法に従って、[Ru(CO)Clとジエチルメチルホスホネートビピリジンとを、メタノール中、N気流下にて80℃で3時間還流することにより、ジエチルメチルホスホネートビピリジン配位子を有するルテニウム錯体触媒[Ru(4,4’-ビス(ジメチルエチルホスホネート)-2,2’-ビピリジン)(CO)Cl]を合成した(以下、Ru-dmpebpyと称する場合がある)。
次いで、上記還元半導体粒子200mgに、上記Ru-dmpebpyのメタノール溶液5mLを添加し、16時間撹拌することにより、還元半導体粒子表面にRu-dmpebpyを吸着させた。得られた混合物を遠心分離して上澄みを除去後、メタノールで洗浄し、乾燥することにより、Ru-dmpebpy/(CuGa)0.3Zn1.4を得た。
〔レドックスメディエータの調製〕
(1)Co(NO・6HO(和光純薬工業株式会社製)1.5mmol、及び、4,4’-ジメチル-2,2’-ビピリジン(東京化成工業株式会社製)4.5mmolをメタノールに溶解し、撹拌及び減圧濃縮した。次いで、得られた残渣を再結晶化することにより、[Co(4,4’-ジメチル-2,2’-ビピリジン)](NO(以下、[Co-1(+2)](NOと称する場合がある)で表されるレドックスメディエータを合成した。
(2)[Co-1(+2)](NOを0.01MのNaHCO水溶液に溶解し、電気化学的処理を施すことにより、[Co(4,4’-ジメチル-2,2’-ビピリジン)](NO(以下、[Co-1(+3)](NOと称する場合がある)で表されるレドックスメディエータを合成した。
(3)上記(1)の合成において、Co(NO・6HOの代わりに、Co(SO)・6HOを用いたこと以外は同じ条件で合成し、[Co(4,4’-ジメチル-2,2’-ビピリジン)](SO)(以下、[Co-1(+2)](SO)と称する場合がある)で表されるレドックスメディエータを得た。
(4)上記(1)の合成において、Co(NO・6HOの代わりに、CoClを用いたこと以外は同じ条件で合成し、[Co(4,4’-ジメチル-2,2’-ビピリジン)]Cl(以下、[Co-1(+2)]Clと称する場合がある)で表されるレドックスメディエータを得た。
(5)上記(1)の合成において、4,4’-ジメチル-2,2’-ビピリジンの代わりに、5,5’-ジメチル-2,2’-ビピリジンを用いたこと以外は同じ条件で合成し、[Co(5,5’-ジメチル-2,2’-ビピリジン)](NO(以下、[Co-2(+2)](NOと称する場合がある)で表されるレドックスメディエータを得た。
(6)上記(1)の合成において、4,4’-ジメチル-2,2’-ビピリジンの代わりに、4-メチル-4’-ヒドロキシメチル-2,2’-ビピリジンを用いたこと以外は同じ条件で合成し、[Co(4-メチル-4’-ヒドロキシメチル-2,2’-ビピリジン)](NO(以下、[Co-3(+2)](NOと称する場合がある)で表されるレドックスメディエータを得た。
(7)上記(1)の合成において、4,4’-ジメチル-2,2’-ビピリジンの代わりに、2,2’-ビピリジンを用いたこと以外は同じ条件で合成し、[Co(2,2’-ビピリジン)](NO(以下、[Co-R1(+2)](NOと称する場合がある)で表されるレドックスメディエータを得た。
(8)上記[Co-R1(+2)](NOを0.01MのNaHCO水溶液に溶解し、電気化学的処理を施すことにより、[Co(2,2’-ビピリジン)](NO(以下、[Co-R1(+3)](NOと称する場合がある)で表されるレドックスメディエータを合成した。
(9)上記(1)の合成において、4,4’-ジメチル-2,2’-ビピリジンの代わりに、2,2’:6’,2’’-ターピリジンを用いたこと以外は同じ条件で合成し、[Co(2,2’ :6’,2’’-ターピリジン)](NO(以下、[Co-R2(+2)](NOと称する場合がある)で表されるレドックスメディエータを得た。
上記(1)~(6)の合成で得たCo-1、Co-2、Co-3の化学構造を以下に示す。
上記(7)~(9)の合成で得たCo-R1、Co-R2の化学構造を以下に示す。
〔試験管法によるCO還元反応評価(光照射16時間)〕
<実施例1>
0.1mMのレドックスメディエータ([Co-1(+2)](NO)を含むNaHCO水溶液4mLに、還元光触媒粒子としての(CuGa)0.3Zn1.4を2.7mg、酸化光触媒粒子としてのBiVOを2,7mg添加して、試料液を調製した。
上記で得られた試料液を容量8mLのガラス製の試験官に入れ、試料液中にCOガスを15分間通気して試料液を飽和させ、ゴム栓で試験管を密閉した。この試験管をメリーゴーラウンド方式の回転装置に装着した。スターラーで試料液を攪拌しながら、光源としてキセノンランプ(ウシオ電機株式会社製)を使用して、熱線吸収フィルタ(旭硝子株式会社製「SCF-1」)を通過した可視光(λ>390nm)を試料液に16時間照射した。光照射後、試験管内の気相部分に含まれるガス成分をガスクロマトグラフ(株式会社島津製作所製「GC-2014」)を用いて分析及び定量し、液相部分に含まれる化合物をイオンクロマトグラフ(Thermo Fisher SCIENTIFIC社製「DIONEX ICS-2100」)を用いて分析及び定量した。
<実施例2>
0.1mMのRu-dmpebpy/(CuGa)0.3Zn1.4を還元光触媒粒子として用いたこと以外は、実施例1と同様に試料液を調製し、CO還元反応を評価した。
<実施例3>
0.1mMの[Co-1(+3)](NOをレドックスメディエータとして用いたこと以外は、実施例2と同様に試料液を調製し、実施例1と同様にCO還元反応を評価した。
<実施例4>
0.1mMの[Co-1(+2)](SO)をレドックスメディエータとして用いたこと以外は、実施例2と同様に試料液を調製し、実施例1と同様にCO還元反応を評価した。
<実施例5>
0.1mMの[Co-1(+2)]Clをレドックスメディエータとして用いたこと以外は、実施例2と同様に試料液を調製し、実施例1と同様にCO還元反応を評価した。
<実施例6>
0.1mMの[Co-2(+2)]Clをレドックスメディエータとして用いたこと以外は、実施例2と同様に試料液を調製し、実施例1と同様にCO還元反応を評価した。
<実施例7>
0.1mMの[Co-3(+2)](NOをレドックスメディエータとして用いたこと以外は、実施例1と同様に試料液を調製し、実施例1と同様にCO還元反応を評価した。
<比較例1>
0.1mMの[Co-R1(+2)](NOをレドックスメディエータとして用いたこと以外は、実施例1と同様に試料液を調製し、実施例1と同様にCO還元反応を評価した。
<比較例2>
0.1mMの[Co-R1(+3)](NOをレドックスメディエータとして用いたこと以外は、実施例1と同様に試料液を調製し、実施例1と同様にCO還元反応を評価した。
<比較例3>
0.02mMの[Co-R2(+2)](NOをレドックスメディエータとして用いたこと以外は、実施例2と同様に試料液を調製し、実施例1と同様にCO還元反応を評価した。
<比較例4>
0.1mMの[Co-1(+2)]BFをレドックスメディエータとして用いたこと以外は、実施例2と同様に試料液を調製し、実施例1と同様にCO還元反応を評価した。
<比較例5>
実施例2の試料液を用いたこと、光触媒性能の評価試験を行う際、光照射を行わずに暗室内で16時間反応を行ったこと以外は実施例1と同様にCO還元反応を評価した。
<比較例6>
レドックスメディエータを含まないこと以外は、実施例1と同様に試料液を調製し、実施例1と同様にCO還元反応を評価した。
表1に、各実施例及び各比較例におけるCO還元反応の評価結果を示す。
実施例1~7の結果から分かるように、上記Co-1、Co-2、Co-3の化学構造を有するレドックスメディエータを使用することにより、CO還元選択率は0.5を超えた。すなわち、実施例1~7では、水中での反応にも関わらず、水素生成反応を抑制し、CO生成反応が優勢に進行した。実施例2及び3の結果から分かるように、レドックスメディエータにおける錯体の価数は2価でも3価でも、同様のCO還元選択率を示した。実施例3、4、5の結果から分かるように、対イオン種も硝酸イオン、硫化物イオン、塩化物イオンのいずれにおいても、同様の触媒活性を示した。また、実施例2及び6の結果から分かるように、ビピリジンへ導入する置換基の位置を4,4’から5,5’に変更した場合には、CO生成量は低下したものの、CO還元選択率は0.5を超える特性を維持していた。ビピリジンへメチル基とヒドロキシメチル基の両方を導入した実施例7においても、CO還元選択率は0.5を超えていた。一方、ビピリジンやターピリジンにアルキル基ベースの置換基を導入していない比較例1、2、3の場合、CO還元選択率は0.17~0.47であり、水素生成反応が優勢に進行した。また、対イオンに水溶液に不溶のBFを用いた比較例4の場合、還元生成物の生成量が著しく低下した。また、比較例5、6の結果から分かるように、物質の還元反応は、可視光照射及びレドックスメディエータが必要である。
〔試験管法によるCO還元反応の経時的評価〕
<実施例8>
実施例2で得られた試料液に対して、光照射時間を1時間、2時間、4時間、6時間、8時間及び16時間とした光照射試験を行い、生成物を分析及び定量したこと以外は、実施例1の方法に従って、CO還元反応を評価した。
<比較例7>
0.04質量%のRu-dmpebpy/(CuGa)0.3Zn1.4を還元光触媒粒子として用いたこと以外は、比較例1と同様に試料液を調製し、実施例8と同様にCO還元反応を評価した。
<比較例8>
比較例3で得られた試料液を用いたこと以外は、実施例8と同様にCO還元反応を評価した。
図3~5に、実施例8及び比較例7~8のCO還元反応によるCO及び水素生成量の経時変化を示す。横軸には光照射時間を示し、縦軸には気相成分のCO及び水素の生成量(μmol)を示す。
上記Co-R1の化学構造を有するレドックスメディエータを用いた比較例7は、図4に示すように、CO及び水素は経時的に生成しているものの、光照射4時間後から水素生成反応の方が優勢に進行した。また、上記Co-R2の化学構造を有するレドックスメディエータを用いた比較例8は、図5に示すように、比較例7と比べて、CO還元選択性は改善されているものの、水素生成反応の方がわずかに優勢に進行した。一方、水性媒体に溶解し、上記Co-1の化学構造を有するレドックスメディエータを用いた実施例8は、光照射開始から4時間までは水素生成反応が優勢であるものの、その後はCO生成反応が優勢に進行した。また、CO生成速度も比較例7,8に比べて大幅に改善した。この結果は、前述したように、レドックスメディエータの配位子であるビピリジンに導入された電子供与性の置換基が影響しているものと考えられる。
〔試験管法による水分解反応の評価(光照射16時間)〕
<実施例9>
0.1mMのレドックスメディエータ([Co-1(+2)](NO)を含む水4mLに、還元光触媒粒子としての(CuGa)0.3Zn1.4を2mg、酸化光触媒粒子としてのBiVOを2mg添加して、試料液を調製した。
上記で得られた試料液を容量8mLのガラス製の試験官に入れ、試料液中にArガスを15分間通気した後、ゴム栓で試験管を密閉した。この試験管をメリーゴーラウンド方式の回転装置に装着した。スターラーで試料液を攪拌しながら、光源としてキセノンランプ(ウシオ電機株式会社製)を使用して、熱線吸収フィルタ(旭硝子株式会社製「SCF-1」)を通過した可視光(λ>390nm)を試料液に16時間照射した。光照射後、試験管内の生成物の分析及び定量した。分析及び定量方法は前述の通りである。
<実施例10>
0.04質量%のRu-dmpebpy/(CuGa)0.3Zn1.4を還元光触媒粒子として用いたこと以外は、実施例9と同様に水分解反応を評価した。
<比較例9>
0.02Mの[Co-R2(+2)](NOをレッドクスメディエータとして用いたこと以外は、実施例9と同様に水分解反応を評価した。
表2に、実施例9~10及び比較例9における水分解反応の評価結果を示す。
表2に示すように、Ar雰囲気中では、可視光照射による水分解に伴い、ソーラーフューエルの1種である水素が生成する。そして、ビピリジンにメチル基が導入された上記Co-1の化学構造を有するレドックスメディエータを使用した実施例9及び10は、置換基が導入されていないターピリジンを配位子とするCo-R2の化学構造を有するレドックスメディエータを使用した比較例9と比べて、高い水素生成量を示した。
〔流通式反応装置を用いた光触媒反応の評価〕
Zスキーム型反応のうち酸化反応に伴う酸素(O)を正確に定量するために、以下に示す流通式反応装置を用いた光触媒反応評価を行った。
<実施例11>
NaHCOを0.01Mの濃度で含有する電解質水溶液に、レドックスメディエータとして[Co-1(+2)](NOを0.1mMの濃度となるように添加して、水性媒体を調製し、得られた水性媒体120mLをガラス製の容器に入れた。次いで、ガラス製の容器に、還元光触媒粒子としてのRu-dmpebpy/(CuGa)0.3Zn1.4を0.1g、酸化光触媒粒子としてのBiVOを0.1g添加し、試料液を調製した。容器中の試料液に、COガスを毎分15mLの流量で通気しながら、可視光(λ>420nm)を照射した。照射時間が所定時間を経過する毎に、容器内の気相成分に含まれるガス成分をガスクロマトグラフ(株式会社島津製作所製「GC-8A」)を用いて分析及び定量した。
図6に、実施例11におけるCO、H及びO生成量の経時変化を示す。可視光照射に伴い、水の酸化反応に伴うO生成と同時に、約95%の選択性でCOの生成が確認された。すなわち、光触媒反応は水を電子源として進行していることが示唆された。
1 光触媒システム、2 酸化光触媒粒子、3 還元光触媒粒子、3a 還元半導体粒子、3b 金属錯体触媒、4 メディエータ。

Claims (4)

  1. 光照射下で、水を酸化する酸化光触媒粒子と電子により物質を還元する還元光触媒粒子との間で電子を伝達するレドックスメディエータであって、
    前記レドックスメディエータは、水性媒体中に溶解し、下記一般式
    (式中、MはCoであり、Rは、C2n+1(n=1~5)であり、R、R、R、R、Rは、C2n+1(n=0~5)又はC2mX(m=0~4、X:CHOH又はCOOH))で表される金属錯体レドックスメディエータを含み、
    前記金属錯体レドックスメディエータは、硝酸イオン、硫酸イオン、炭酸イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオンから選択される少なくとも1つの対イオンを含むことを特徴とするレドックスメディエータ。
  2. 水性媒体と、
    光照射下で、水を酸化する酸化光触媒粒子と、
    光照射下で、電子により物質を還元する還元光触媒粒子と、
    光照射下で、前記酸化光触媒粒子と前記還元光触媒粒子との間で電子を伝達するレドックスメディエータと、を備え、
    前記レドックスメディエータは、前記水性媒体中に溶解し、下記一般式
    (式中、MはCoであり、Rは、C2n+1(n=1~5)であり、R、R、R、R、Rは、C2n+1(n=0~5)又はC2mX(m=0~4、X:CHOH又はCOOH))で表される金属錯体レドックスメディエータを含み、
    前記金属錯体レドックスメディエータは、硝酸イオン、硫酸イオン、炭酸イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオンから選択される少なくとも1つの対イオンを含むことを特徴とする光触媒システム。
  3. 前記還元光触媒粒子は、半導体粒子と金属錯体触媒とを含むことを特徴とする請求項に記載の光触媒システム。
  4. 前記物質の還元生成物は、二酸化炭素の還元生成物、一酸化炭素と水素を含む合成ガス、及び水素のうちのいずれか1つを含むことを特徴とする請求項2又は3に記載の光触媒システム。
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